ドーム状ばね及びスイッチ
【課題】ドーム状ばねを設けた装置を小型化するとともに、クリックアクションを確実に得ることである。
【解決手段】ドーム状ばね2は、押下により座屈を起こすドーム状ばねであって、当該ドーム状ばねの座屈時の可動部分の少なくとも一部の中立面が非球面形状である。この非球面形状は、6次以上の偶関数で表され、ドーム状ばね2の中心及び外径の間の位置に対応する前記偶関数の変曲点におけるドーム状ばね2と基板3との間の角度αと、ドーム状ばね2の外径に対応する前記偶関数の変曲点におけるドーム状ばね2と基板3との間の角度βとにおいて、α<βを満たす。
【解決手段】ドーム状ばね2は、押下により座屈を起こすドーム状ばねであって、当該ドーム状ばねの座屈時の可動部分の少なくとも一部の中立面が非球面形状である。この非球面形状は、6次以上の偶関数で表され、ドーム状ばね2の中心及び外径の間の位置に対応する前記偶関数の変曲点におけるドーム状ばね2と基板3との間の角度αと、ドーム状ばね2の外径に対応する前記偶関数の変曲点におけるドーム状ばね2と基板3との間の角度βとにおいて、α<βを満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーム状ばねと、ドーム状ばねを備えるスイッチとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機等の電子機器の操作部に、クリックアクション付きの押釦スイッチを用いる構成が知られている。クリックアクション付きの押釦スイッチは、操作者に、押下入力時にクリック感を与えることができる。クリックアクション付きの押釦スイッチは、ドーム状接点ばねを備える。
【0003】
上記押釦スイッチとして、全面が球面のドーム状接点ばねを備えるスイッチが知られている。図14を参照して、従来の全面が球面のドーム状接点ばねとを備えるスイッチ100の装置構成を説明する。図14に、ドーム状接点ばね21を備えるスイッチ100の断面構成を示す。
【0004】
図14に示すように、スイッチ100は、ドーム状接点ばね21と、基板3と、固定接点4,5,6と、を備える。ドーム状接点ばね21は、全面が球面でドーム形状の金属導体からなる接点用のばねである。図14は、ドーム状接点ばね21の平面の中心に位置する可動接点21aを通る面の断面図である。
【0005】
基板3は、ドーム状接点ばね21が載置される基板である。基板3には、固定接点4,5,6が設けられている。固定接点4,5,6は、金属導体からなる電気的な接点である。固定接点4,5は、ドーム状接点ばね21の端部に常時接触されている。固定接点6は、ドーム状接点ばね21の可動接点21aに対応する位置に設けられている。
【0006】
図15を参照して、スイッチ100の動作を説明する。図15に、スイッチ100における可動接点21aの変位に対する動作荷重Fの特性を示す。
【0007】
スイッチ100において、ドーム状接点ばね21が操作者により上から押下される。そして、ドーム状接点ばね21の可動接点21aが固定接点6と接触すると、ドーム状接点ばね21を介して固定接点4,5が固定接点6と電気的に導通される。この導通により、ドーム状接点ばね21の押下を示す電気信号がスイッチ1を有する操作部から出力される。
【0008】
このようなスイッチ100において、ドーム状接点ばね21の可動接点21aを操作者が上から動作荷重F[gf]で押した場合を考える。可動接点21aに力を加えない初期状態で、動作荷重Fと、基板3に対する垂直方向の可動接点21aの変位[mm]とを、0にとる。
【0009】
スイッチ100の初期状態において、操作者の押下により動作荷重Fを増加開始する。すると、図15に示すように、動作荷重Fは、変位0から変位S11までほぼ比例して増加される。そして、変位S11に対応する動作荷重F11でドーム状接点ばね21が座屈を起こす。すると、ドーム状接点ばね21の中央部分が反転し、動作荷重F11よりも小さな動作荷重で可動接点21aが変位する。その後、可動接点21aが固定接点6に接触する変位S12に至るまで、動作荷重は減少し続ける。そして、変位S12に対応する動作荷重F12がなくなれば、ドーム状接点ばね21が逆方向に反転し、初期状態に復帰する。
【0010】
また、球面の球面部と台座部とを有するドーム状接点ばねを備えるスイッチが知られている(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。図16を参照して、球面部及び台座部を有するドーム状接点ばねを備えるスイッチ200を説明する。図16に、ドーム状接点ばね22を備えるスイッチ200の断面構成を示す。
【0011】
図16に示すように、スイッチ200は、ドーム状接点ばね22と、基板3と、固定接点4,5,6と、を備える。ドーム状接点ばね22は、球面部22Aと、台座部22Bと、を有する。球面部22Aは、球面でドーム状の金属導体からなる接点用のばねである。台座部22Bは、球面部22Aに接続された円錐形状の金属導体である。球面部22Aは、可動接点22aを含み、動作荷重により可動する部分である。台座部22Bは、動作荷重によりほとんど動かない部分である。
【0012】
スイッチ200について、ドーム状接点ばね22により、スイッチ100に比べて、基板3からの高さを低くすることができる。このため、スイッチ200を小型化できる。なお、ドーム状接点ばね22には、製造時のプレス加工により、クリックアクションのための残留応力が加えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4079431号公報
【特許文献2】特許第3753676号公報
【特許文献3】特開2004−139997号公報
【特許文献4】特開2000−322974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近年、スイッチが搭載される携帯機器等の電子機器について、さらなる小型化の要請がある。しかし、従来のスイッチ200では、基板3からの高さをさらに低くすると、動作荷重を加えても座屈が発生せず、クリックアクションが得られなかった。
【0015】
本発明の課題は、ドーム状ばねを設けた装置を小型化するとともに、クリックアクションを確実に得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のドーム状ばねは、
押下により座屈を起こすドーム状ばねであって、
当該ドーム状ばねの座屈時の可動部分の少なくとも一部の中立面が非球面形状である。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドーム状ばねにおいて、
前記非球面形状は、6次以上の偶関数で表され、
前記ドーム状ばねの中心及び外径の間の位置に対応する前記偶関数の変曲点における当該ドーム状ばねと当該ドーム状ばねの端部が接触される基板との間の角度αと、当該ドーム状ばねの外径に対応する前記偶関数の変曲点における当該ドーム状ばねと前記基板との間の角度βとにおいて、
α<β
を満たす。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のドーム状ばねにおいて、
前記ドーム状ばねの一部がカットされた形状を有する。
【0019】
請求項4に記載の発明のスイッチは、
請求項1から3のいずれか一項に記載のドーム状ばねと、
前記ドーム状ばねに常時接触された第1の固定接点と、
前記ドーム状ばねの座屈時に可動接点が接触される第2の固定接点と、
前記第1の固定接点及び前記第2の固定接点が設けられた基板と、を備え、
前記ドーム状ばねは、導体であり、
押下により座屈された前記ドーム状ばねを介して、前記第1の固定接点と前記第2の固定接点とが電気的に導通される。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のスイッチにおいて、
前記ドーム状ばねに貼り付けられたばね押えシートを備える。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のスイッチにおいて、
押下入力を受け付けて前記ドーム状ばねに伝える操作ボタンを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ドーム状接点ばねを設けた装置を小型化できるとともに、クリックアクションを確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る実施の形態のスイッチの断面図である。
【図2】実施の形態のドーム状ばねの平面図である。
【図3】実施の形態のドーム状ばねの動径に対する高さを示す図である。
【図4】実施の形態のドーム状ばねの角度を示す断面図である。
【図5】(a)は、実施の形態の一例としてのドーム状ばねの平面図である。(b)は、実施の形態の一例としてのドーム状ばねの断面図である。
【図6】(a)は、従来の一例としてのドーム状接点ばねの平面図である。(b)は、従来の一例としてのドーム状接点ばねの断面図である。
【図7】実施の形態の一例のドーム状ばね及び従来の一例のドーム状接点ばねの可動接点の変位に対する動作荷重の特性を示す図である。
【図8】第1の変形例のスイッチの断面図である。
【図9】(a)は、第2の変形例の第1のドーム状ばねの平面図である。(b)は、第1の変形例の第1のドーム状ばねの断面図である。
【図10】(a)は、第2の変形例の第2のドーム状ばねの平面図である。(b)は、第1の変形例の第2のドーム状ばねの側面図である。
【図11】(a)は、第2の変形例の第3のドーム状ばねの平面図である。(b)は、第1の変形例の第3のドーム状ばねの断面図である。
【図12】実施例1のスイッチの断面図である。
【図13】実施例2のスイッチの断面図である。
【図14】従来の第1のスイッチの断面図である。
【図15】従来の第1のスイッチにおける可動接点の変位に対する動作荷重の特性を示す図である。
【図16】従来の第2のスイッチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態、第1及び第2の変形例、並びに実施例1,2を順に詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0025】
図1〜図6を参照して、本発明に係る実施の形態を説明する。先ず、図1及び図2を参照して、本実施の形態のスイッチ1の装置構成を説明する。図1に、スイッチ1の断面構成を示す。図2に、ドーム状ばね2の平面構成を示す。図1は、図2のI−I線におけるドーム状ばね2の断面を含むスイッチ1の断面図である。
【0026】
本実施の形態のスイッチ1は、例えば、電子機器用の操作部に用いられるスイッチである。当該電子機器は、押下操作入力を行う操作部を備える電子機器であり、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ハンディターミナル等の携帯機器であることが好ましい。
【0027】
図1に示すように、スイッチ1は、ドーム状ばね2と、基板3と、固定接点4,5,6と、を備える。ドーム状ばね2は、全面が非球面形状であるドーム形状の金属導体からなる接点用のばねである。ドーム状ばね2の材料は、SUS301(ばね用ステンレス鋼帯)等のステンレス、ベリリウム銅、ばね用りん青銅等の金属導体である。しかしこれらの材料に限定されるものではなく、一般的にばね用途として用いられる材料であればよい。
【0028】
また、図2に示すように、ドーム状ばね2は、平面形状が円形である。ドーム状ばね2の平面の中心点を可動接点2aとする。また、ドーム状ばね2の断面の中立面を中立面2bとする。中立面とは、圧縮側と引張側との境目にあり伸びも縮みもしない断面である。中立面2bが、非球面形状である。ドーム状ばね2の非球面形状については、詳細に後述する。また、ドーム状ばね2は、操作者の押下方向と逆方向に凸形状を有する。
【0029】
基板3は、ガラス−エポキシ樹脂等からなる基板である。基板3には、ドーム状ばね2が載置されている。基板3には、固定接点4,5,6が設けられている。固定接点4,5,6は、銅箔等の金属導体からなる固定された接点である。固定接点4,5は、ドーム状ばね2の端部に常時接触されている。固定接点6は、ドーム状ばね2の可動接点2aに対応する位置に設けられている。固定接点6は、ドーム状ばね2が押下されていない状態でドーム状ばね2に接触されていない。
【0030】
次いで、図3及び図4を参照して、ドーム状ばね2の非球面形状を説明する。図3に、ドーム状ばね2の動径ρに対する高さを示す。図4に、ドーム状ばね2の角度を示す。
【0031】
図3及び図4に示すように、ドーム状ばね2は、非球面形状を有するように設計される。図3におけるのドーム状ばね2の高さは、基板3の表面からドーム状ばね2の下側の面までの垂直方向の長さである。基板3の表面上におけるドーム状ばね2の中心点を中心とした端部までの円の直径を外径Dとする。基板3の表面上におけるドーム状ばね2の中心点からの長さを動径ρとする。つまり、外径Dに対応する動径ρはD/2である。また、ドーム状ばね2の中心点に対応するドーム状ばね2の高さを、高さhとする。
【0032】
ドーム状ばね2は、上側の面、中立面及び下側の面に同様の非球面形状を有する。少なくとも、ドーム状ばね2の中立面が非球面形状であればよい。このため、ドーム状ばね2の下側の面の形状を、ドーム状ばね2の中立面の形状と見なして以下説明する。
【0033】
ドーム状ばね2の非球面形状は、次式(1)の6次の偶関数の非球面方程式で表される形状である。
f(ρ)=a6・ρ6+b6・ρ4+c6・ρ2+h …(1)
但し、a6,b6,c6は、任意の係数である。
【0034】
また、式(1)において、ドーム状ばね2の変曲点の位置に対応する直径を長さD1とする。式(1)は、3つの変曲点を有する。3つの変曲点は、動径ρ=0、D1/2、D/2に対応する位置に存在する。動径ρ=D1/2におけるドーム状ばね2と基板3との間の角度を角度αとする。動径ρ=D/2におけるドーム状ばね2と基板3との間の角度を角度βとする。
【0035】
ドーム状ばね2において動作荷重Fにより座屈が起こる条件として、次式(2)を満たすことが必要である。
α<β …(2)
式(1)において、式(2)を満たすa6,b6,c6が決定される。
【0036】
式(1)では、ドーム状ばね2の非球面形状を6次の偶関数の非球面方程式で表したが、8次以上の偶関数で表してもよい。つまり、次式(3)、(4)〜の何れか一つを満たす非球面形状である。
f(ρ)=a8・ρ8+b8・ρ6+c8・ρ4+d8・ρ2+h …(3)
f(ρ)=a10・ρ10+b10・ρ8+c10・ρ6+d10・ρ4+e10・ρ2+h …(4)
:
つまり、本実施の形態の非球面形状は、まとめて次式(5)で表される。
f(ρ)=an1・ρn+bn・ρn−2+cn・ρn−4+…+γn・ρ2+h …(5)
但し、n:6以上の任意の偶数、γ:2次に対応する係数、である。
【0037】
6次以上の偶関数を用いたのは、動径ρ=0(ドーム状ばね2の中心点)を含めて、3つ以上の変曲点を得るためである。3つ以上の変曲点のうち、一つの変曲点が動径ρ=0に対応し、もう一つの変曲点が動径ρ=ドーム状ばね2の外径に対応し、他の変曲点が0<ρ<外径を満たす動径ρに対応する。3つ以上の変曲点を有する場合に、ドーム状ばね2を座屈が起こる形状にすることできる。つまり、式(5)の6次以上の偶関数を用いて、式(2)の条件を満たすドーム状ばね2を設計することで、ドーム状ばね2が動作荷重Fにより座屈を起こす。
【0038】
ドーム状ばね2を設計する場合に、式(5)の次数nを高くするほど、非球面形状を理想的な形状に設定できるが、計算量も多くなる。このため、6次、8次等の適切な次数の非球面方程式でドーム状ばね2を設計するのが好ましい。
【0039】
次いで、図5〜図7を参照して、ドーム状ばね2の一例における動作を説明する。図5(a)に、本実施の形態の一例としてのドーム状ばね2Aの平面構成を示す。図5(b)に、ドーム状ばね2Aの断面構成を示す。図6(a)に、従来の一例としてのドーム状接点ばね23の平面構成を示す。図6(b)に、ドーム状接点ばね23の断面構成を示す。図7に、ドーム状ばね2A及びドーム状接点ばね23の可動接点2Aa,23aの変位に対する動作荷重の特性を示す。
【0040】
図5(a),(b)に示すドーム状ばね2Aは、式(2)及び8次の非球面方程式の式(3)を用いて設計されたドーム状ばね2の一例である。図5(b)は、図5(a)のドーム状ばね2AのV−V線での断面図である。図6(a),(b)に示すドーム状接点ばね23は、従来のドーム状接点ばね22の一例である。ドーム状ばね2A及びドーム状接点ばね23には、プレス加工により、クリックアクションのための残留応力が加えられていないものとする。図6(b)は、図6(a)のドーム状接点ばね23のVI−VI線での断面図である。ドーム状接点ばね23は、球面形状の球面部23Aと、円錐形状の台座部23Bと、を有する。
【0041】
ドーム状ばね2A及びドーム状接点ばね23の平面上の外径を長さL1とし、断面における基板からのドーム状ばね2A及びドーム状接点ばね23の上面までの高さを長さL2とする。
【0042】
図7において、ドーム状ばね2Aの基板3に対する垂直方向の可動接点2Aaの変位[mm]に対する動作荷重F[gf]の曲線が実線で表されている。同じく、ドーム状接点ばね23の可動接点23aの変位[mm]に対する動作荷重F[gf]の曲線が破線で表されている。図7は、一例として、L1=4[mm]、L2=0.24[mm]とした場合のドーム状ばね2A及びドーム状接点ばね23の特性を示している。
【0043】
ドーム状ばね2A又はドーム状接点ばね23を備えるスイッチにおいて、ドーム状ばね2A又はドーム状接点ばね23の中心の可動接点2Aa又は23aを操作者が上から動作荷重Fで押下した場合を考える。可動接点2Aa又は23aに力を加えない初期状態での動作荷重及び変位を0とする。
【0044】
スイッチの初期状態において、ドーム状接点ばね23に動作荷重Fを与える場合に、先ず、操作者が押下により動作荷重Fを増加開始する。図7に示すように、動作荷重Fは、変位が0から変位量S1までほぼ比例して増加される。しかし、変位量S1を超えても、変位の増加ともに動作荷重も増加し続ける。このため、動作荷重F1でドーム状接点ばね23に座屈が起こらない。
【0045】
これに対し、スイッチの初期状態において、ドーム状ばね2Aに動作荷重Fを与える場合に、図7に示すように、動作荷重Fは、変位が0から変位量S1までほぼ比例して増加される。そして、変位量S1に対応する動作荷重F1でドーム状ばね2Aが座屈を起こす。すると、ドーム状ばね2Aの中央部分が反転し、動作荷重F1よりも小さな動作荷重で可動接点2Aaが変位する。その後、可動接点2Aaが固定接点5に接触する変位量S2に至るまで、動作荷重は減少し続ける。そして、変位量S2に対応する動作荷重F2がなくなれば、ドーム状ばね2Aが逆方向に反転し、初期状態に復帰する。
【0046】
以上、本実施の形態によれば、押下により座屈を起こすドーム状ばね2の中立面2bが非球面形状である。そして、ドーム状ばね2の非球面形状は、式(5)で表され、式(2)を満たす。このため、ドーム状ばね2の高さを小さくして、ドーム状ばね2を設けたスイッチ1を小型化できるとともに、クリックアクションを確実に得ることができる。つまり、操作者にクリック感を確実に与えることができる。
【0047】
(第1の変形例)
図8を参照して、上記実施の形態の第1の変形例を説明する。図8に、本変形例のスイッチ10の断面構成を示す。
【0048】
上記実施の形態のスイッチ1は、操作者の押下方向と逆方向に凸形状を有するドーム状ばね2を備える構成であった。これに対し、本変形例のスイッチ10は、操作者の押下方向と同じ方向に凸形状を有するドーム状ばね2Bを備える構成である。
【0049】
図8に示すように、スイッチ10は、ドーム状ばね2Bと、基板3A,3Bと、固定接点4A,5A,6Aと、を備える。ドーム状ばね2Bは、中立面がドーム状ばね2と同様の非球面形状であるドーム形状のステンレス等の金属導体からなる接点用のばねである。また、ドーム状ばね2Bは、平面形状が円形である。ドーム状ばね2Bの平面の中心点を可動接点2Baとする。
【0050】
基板3Aは、ドーム状ばね2Bの上方に設けられ、ドーム状ばね2Bに載置される基板である。基板3Bは、ドーム状ばね2Bの下方に設けられ、ドーム状ばね2Bが載置される基板である。基板3Aには、固定接点4A,5A,6Aが設けられている。固定接点4A,5A,6Aは、銅箔等の金属導体からなる電気的な接点である。固定接点4A,5Aは、ドーム状ばね2Bの端部に常時接触されている。固定接点6Aは、ドーム状ばね2Bの可動接点2Baに対応する位置に設けられている。固定接点6Aは、ドーム状ばね2Bが押下されていない状態で、ドーム状ばね2Bに接触されていない。基板3Bは、ドーム状ばね2Bが押下されていない状態で、可動接点2Baに接触されている。
【0051】
スイッチ10についても、スイッチ1と同様に、動作荷重Fがない初期状態において、ドーム状ばね2Bの押下により、動作荷重Fを可動接点2Baに加えて増加していくと、ある変位でドーム状ばね2Bが座屈を起こして中央部分が反転し、小さな動作荷重Fで可動接点2Baが変位していく。その後、可動接点2Baが固定接点6Aに接触して、動作荷重Fは減少し続ける。そして、動作荷重Fがなくなれば、ドーム状ばね2Bが逆方向に反転し、初期状態に復帰する。
【0052】
以上、本変形例によれば、上記実施の形態と同様に、ドーム状ばね2Bにより、スイッチ10を小型化できるとともに、クリックアクションを確実に得ることができる。
【0053】
また、固定接点4A,5A,6Aが基板3Aに設けられている。このため、固定接点4A,5A,6Aをドーム状ばね2の上方に設けることができる。
【0054】
(第2の変形例)
図9〜図11を参照して、上記実施の形態の第2の変形例を説明する。図9(a)に、本変形例のドーム状ばね2Cの平面構成を示す。図9(b)に、ドーム状ばね2Cの断面構成を示す。図10(a)に、本変形例のドーム状ばね2Dの平面構成を示す。図10(b)に、ドーム状ばね2Dの側面構成を示す。図11(a)に、本変形例のドーム状ばね2Eの平面構成を示す。図11(b)に、ドーム状ばね2Eの断面構成を示す。
【0055】
上記実施の形態のスイッチ1は、平面形状が円形のドーム状ばね2を備える構成であった。これに対し、本変形例のスイッチは、ドーム状ばね2に代えて、ドーム状ばね2の一部がカットされたドーム状ばね2C,2D又は2Eを備える構成である。
【0056】
図9(a)、(b)に示すように、ドーム状ばね2Cは、ドーム形状の上下の一部がカットされた俵型のドーム形状を有する。図9(b)は、図9(a)のドーム状ばね2CのIX−IX線における断面図である。ドーム状ばね2Cは、ドーム状ばね2の上下の端部をカットすることにより製造される。このため、ドーム状ばね2Cは、ドーム状ばね2と同様の非球面形状を有する。但し、ドーム状ばね2Cにおいて、カットされていない端部のうち、中心の可動接点2Caを挟んで対向する2つの端部2C1,2C2が、基板3の固定接点4,5に接触される。
【0057】
図10(a)、(b)に示すように、ドーム状ばね2Dは、ドーム形状の4つの一部がカットされた十字型のドーム形状を有する。図10(b)は、図10(a)のドーム状ばね2Dの側面図である。ドーム状ばね2Dは、ドーム状ばね2の4つの端部をカットすることにより製造される。このため、ドーム状ばね2Dは、ドーム状ばね2と同様の非球面形状を有する。但し、ドーム状ばね2Dにおいて、カットされていない端部のうち、中心の可動接点2Daを挟んで対向する2つの端部2D1,2D2、又は2D3,2D4が、基板3の固定接点4,5に接触される。
【0058】
図11(a)、(b)に示すように、ドーム状ばね2Eは、ドーム形状の中央部がカットされた穴あき型のドーム形状を有する。図11(b)は、図11(a)のドーム状ばね2EのXI−XI線における断面図である。ドーム状ばね2Eは、ドーム状ばね2の中心部を円形にカットすることにより製造される。ドーム状ばね2Eの穴側の端部を可動接点2Eaとする。このため、ドーム状ばね2Eは、ドーム状ばね2と同様の非球面形状を有する。ドーム状ばね2Eにおいて、ドーム状ばね2と同様に、中心の可動接点2Eaを挟んで対向する任意の2つの端部が、基板3の固定接点4,5に接触される。固定接点6は、ドーム状ばね2Eの座屈時に可動接点2Eaに接触されるように形成及び配置される。
【0059】
以上、本変形例によれば、上記実施の形態と同様に、ドーム状ばね2C,2D又は2Eにより、スイッチを小型化できるとともに、クリックアクションを確実に得ることができる。
【0060】
また、ドーム状ばね2C,2D又は2Eは、一部がカットされている。このため、ドーム状ばね2C,2D又は2Eの材料を少なくすることができ、ドーム状ばね及びスイッチの軽量化を実現できる。
【実施例1】
【0061】
図12を参照して、上記実施の形態のスイッチ1の第1の実施例としてのスイッチ30を説明する。図12に、本実施例のスイッチ30の断面構成を示す。
【0062】
スイッチ30は、携帯機器等の操作部等に設けられる押釦スイッチである。スイッチ30は、ドーム状ばね2と、基板3Cと、固定接点4C,5C,6Cと、操作ボタン7と、スイッチケース8と、を備える。基板3C、固定接点4C,5C,6Cは、順に、基板3、固定接点4,5,6に対応する。以下、実施の形態と同じ部材には、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0063】
基板3Cは、ガラス−エポキシ樹脂等からなる基板である。基板3Cは、ドーム状ばね2に接続される固定接点4C,5C,6Cが載置されている。固定接点4C,5C,6Cは、銅箔等の金属導体からなる電気的な接点である。固定接点4C,5Cは、ドーム状ばね2の端部に常時接触されている。固定接点6Cは、ドーム状ばね2の可動接点2aに対応する位置に設けられている。固定接点6Cは、ドーム状ばね2が押下されていない状態で、ドーム状ばね2に接触されていない。
【0064】
操作ボタン7は、ABS樹脂等の樹脂等からなり、操作者の押下入力を受け付ける操作ボタンである。操作ボタン7は、ドーム状ばね2の上方に接触されており、操作者の押下入力を受け付け、この押下入力に応じてスイッチケース8に沿って上下に移動し、当該押下入力に対応する動作荷重Fをドーム状ばね2に伝える。スイッチケース8は、プラスチック等の樹脂等からなるケースである。スイッチケース8は、ドーム状ばね2、基板3C、固定接点4C,5C,6C、操作ボタン7を覆うとともに、操作ボタン7の一部を露出させる。また、スイッチケース8は、操作ボタン7を上下方向にガイドする。
【0065】
また、スイッチケース8は、固定部8aを有する。固定部8aは、上面から見たドーム状ばね2の位置を固定している。この位置は、ドーム状ばね2が固定接点4C,5Cに接触し、且つドーム状ばね2の可動接点2Aaが座屈時に固定接点6Cに接触する位置である。
【0066】
以上、本実施例1によれば、上記実施の形態と同様に、ドーム状ばね2により、スイッチ30を小型化でき、クリックアクションを確実に得ることができる。また、スイッチ30は、操作ボタン7を備える。このため、操作ボタン7により、操作者に押下入力の操作を容易に行わせることができる。
【0067】
また、スイッチ30は、固定部8aを有するスイッチケース8を備える。このため、固定部8aにより、ドーム状ばね2を、固定接点4C,5Cに常時接触させ、座屈時に固定接点6Cに接触させる位置に確実に配置することができる。
【実施例2】
【0068】
図13を参照して、上記実施の形態のスイッチ1の第2の実施例としてのスイッチ40を説明する。図13に、本実施例のスイッチ40の断面構成を示す。
【0069】
スイッチ40は、携帯機器等の操作部等に設けられる押釦スイッチである。スイッチ40は、ドーム状ばね2と、基板3と、固定接点4,5,6と、ばね押えシート9と、を備える。
【0070】
ばね押えシート9は、ポリエステルフィルム等の絶縁性のシートである。ばね押えシート9は、ドーム状ばね2及び基板3の上面に貼り付けられている。ばね押えシート9は、上面から見たドーム状ばね2の位置を固定している。この位置は、ドーム状ばね2が固定接点4,5に接触し、且つドーム状ばね2の可動接点2Aaが座屈時に固定接点6に接触する位置である。
【0071】
以上、本実施例2によれば、上記実施の形態と同様に、ドーム状ばね2により、スイッチ40を小型化でき、クリックアクションを確実に得ることができる。また、スイッチ40は、ばね押えシート9を備える。このため、ばね押えシート9により、ドーム状ばね2を固定接点4,5に常時接触させ、座屈時に固定接点6に接触させる位置に確実に配置することができる。さらに、ばね押えシート9により、スイッチ40を実施例1のスイッチ30よりも高さを低くしてより小型化できる。
【0072】
なお、上記実施の形態、各変形例及び各実施例における記述は、本発明に係るドーム状ばね及びスイッチの一例であり、これに限定されるものではない。
【0073】
例えば、上記実施の形態、各変形例及び各実施例の構成の少なくとも2つを適宜組み合わせることとしてもよい。例えば、上記実施例1のスイッチ30のドーム状ばね2を、上記第2の変形例に記載のドーム状ばね2C,2D,2Eに代える構成としてもよい。また、例えば、上記実施例1のスイッチ30において、固定部8aが無く、ドーム状ばね2に上記実施例2のばね押えシート9を貼り付けて位置決めした構成としてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態、各変形例及び各実施例のドーム状ばねは、全面の中立面が非球面形状である構成としたが、これに限定されるものではない。ドーム状ばねの座屈時の可動部分の少なくとも一部が非球面である構成としてもよい。例えば、ドーム状ばねの中心の円部分を球面形状にし、それ以外の部分を非球面形状とした構成としてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態、各変形例及び各実施例において、ドーム状ばねを設けた装置として、スイッチを説明したが、これに限定されるものではない。非球面のドーム状ばねをコネクタ等、他の装置に設ける構成としてもよい。例えば、非球面のドーム状ばねをコネクタに用いる構成では、コネクタの接点を、非球面のドーム状ばねとし、コネクタを接続する際に、ドーム状ばねによりクリックアクションが起こる構成とする。つまり、コネクタを接続先に接続する際に、ドーム状ばねの座屈により、クリックアクションが起こるとともに、ドーム状ばねを介してコネクタの接点とその接続先の接点とが電気的に導通される。このため、操作者にクリック感を与えることができるとともに、コネクタを小型化できる。
【0076】
さらに、非球面のドーム状ばねを接点として用いることなくコネクタ等の装置に設ける構成としてもよい。例えば、非球面のドーム状ばねをコネクタに用いる構成では、ドーム状ばねがコネクタのハウジング等に設けられ、コネクタを接続する際に、ドーム状ばねによりクリックアクションが起こる構成とする。つまり、コネクタ接続時に、コネクタの接点とその接続先の接点とが電気的に導通され、それと別に、ドーム状ばねの座屈により、クリックアクションが起こる。このため、操作者に、接続完了を知らせるクリック感を与えることができるとともに、コネクタを小型化できる。
【0077】
その他、上記実施の形態、各変形例及び各実施例におけるドーム状ばね及びスイッチの細部構成及び詳細動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0078】
1,10,30,40 スイッチ
2,2A,2B,2C,2D,2E ドーム状ばね
2a,2Aa,2Ba,2Ca,2Da,2Ea 可動接点
2b 中立面
2C1,2C2,2D1,2D2,2D3,2D4 端部
3,3A,3B,3C 基板
4,5,6,4A,5A,6A,4C,5C,6C 固定接点
7 操作ボタン
8 スイッチケース
8a 固定部
9 ばね押えシート
100,200 スイッチ
21,22,23 ドーム状接点ばね
21a,22a,23a 可動接点
22A,23A 球面部
22B,23B 台座部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーム状ばねと、ドーム状ばねを備えるスイッチとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機等の電子機器の操作部に、クリックアクション付きの押釦スイッチを用いる構成が知られている。クリックアクション付きの押釦スイッチは、操作者に、押下入力時にクリック感を与えることができる。クリックアクション付きの押釦スイッチは、ドーム状接点ばねを備える。
【0003】
上記押釦スイッチとして、全面が球面のドーム状接点ばねを備えるスイッチが知られている。図14を参照して、従来の全面が球面のドーム状接点ばねとを備えるスイッチ100の装置構成を説明する。図14に、ドーム状接点ばね21を備えるスイッチ100の断面構成を示す。
【0004】
図14に示すように、スイッチ100は、ドーム状接点ばね21と、基板3と、固定接点4,5,6と、を備える。ドーム状接点ばね21は、全面が球面でドーム形状の金属導体からなる接点用のばねである。図14は、ドーム状接点ばね21の平面の中心に位置する可動接点21aを通る面の断面図である。
【0005】
基板3は、ドーム状接点ばね21が載置される基板である。基板3には、固定接点4,5,6が設けられている。固定接点4,5,6は、金属導体からなる電気的な接点である。固定接点4,5は、ドーム状接点ばね21の端部に常時接触されている。固定接点6は、ドーム状接点ばね21の可動接点21aに対応する位置に設けられている。
【0006】
図15を参照して、スイッチ100の動作を説明する。図15に、スイッチ100における可動接点21aの変位に対する動作荷重Fの特性を示す。
【0007】
スイッチ100において、ドーム状接点ばね21が操作者により上から押下される。そして、ドーム状接点ばね21の可動接点21aが固定接点6と接触すると、ドーム状接点ばね21を介して固定接点4,5が固定接点6と電気的に導通される。この導通により、ドーム状接点ばね21の押下を示す電気信号がスイッチ1を有する操作部から出力される。
【0008】
このようなスイッチ100において、ドーム状接点ばね21の可動接点21aを操作者が上から動作荷重F[gf]で押した場合を考える。可動接点21aに力を加えない初期状態で、動作荷重Fと、基板3に対する垂直方向の可動接点21aの変位[mm]とを、0にとる。
【0009】
スイッチ100の初期状態において、操作者の押下により動作荷重Fを増加開始する。すると、図15に示すように、動作荷重Fは、変位0から変位S11までほぼ比例して増加される。そして、変位S11に対応する動作荷重F11でドーム状接点ばね21が座屈を起こす。すると、ドーム状接点ばね21の中央部分が反転し、動作荷重F11よりも小さな動作荷重で可動接点21aが変位する。その後、可動接点21aが固定接点6に接触する変位S12に至るまで、動作荷重は減少し続ける。そして、変位S12に対応する動作荷重F12がなくなれば、ドーム状接点ばね21が逆方向に反転し、初期状態に復帰する。
【0010】
また、球面の球面部と台座部とを有するドーム状接点ばねを備えるスイッチが知られている(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。図16を参照して、球面部及び台座部を有するドーム状接点ばねを備えるスイッチ200を説明する。図16に、ドーム状接点ばね22を備えるスイッチ200の断面構成を示す。
【0011】
図16に示すように、スイッチ200は、ドーム状接点ばね22と、基板3と、固定接点4,5,6と、を備える。ドーム状接点ばね22は、球面部22Aと、台座部22Bと、を有する。球面部22Aは、球面でドーム状の金属導体からなる接点用のばねである。台座部22Bは、球面部22Aに接続された円錐形状の金属導体である。球面部22Aは、可動接点22aを含み、動作荷重により可動する部分である。台座部22Bは、動作荷重によりほとんど動かない部分である。
【0012】
スイッチ200について、ドーム状接点ばね22により、スイッチ100に比べて、基板3からの高さを低くすることができる。このため、スイッチ200を小型化できる。なお、ドーム状接点ばね22には、製造時のプレス加工により、クリックアクションのための残留応力が加えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4079431号公報
【特許文献2】特許第3753676号公報
【特許文献3】特開2004−139997号公報
【特許文献4】特開2000−322974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近年、スイッチが搭載される携帯機器等の電子機器について、さらなる小型化の要請がある。しかし、従来のスイッチ200では、基板3からの高さをさらに低くすると、動作荷重を加えても座屈が発生せず、クリックアクションが得られなかった。
【0015】
本発明の課題は、ドーム状ばねを設けた装置を小型化するとともに、クリックアクションを確実に得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のドーム状ばねは、
押下により座屈を起こすドーム状ばねであって、
当該ドーム状ばねの座屈時の可動部分の少なくとも一部の中立面が非球面形状である。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドーム状ばねにおいて、
前記非球面形状は、6次以上の偶関数で表され、
前記ドーム状ばねの中心及び外径の間の位置に対応する前記偶関数の変曲点における当該ドーム状ばねと当該ドーム状ばねの端部が接触される基板との間の角度αと、当該ドーム状ばねの外径に対応する前記偶関数の変曲点における当該ドーム状ばねと前記基板との間の角度βとにおいて、
α<β
を満たす。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のドーム状ばねにおいて、
前記ドーム状ばねの一部がカットされた形状を有する。
【0019】
請求項4に記載の発明のスイッチは、
請求項1から3のいずれか一項に記載のドーム状ばねと、
前記ドーム状ばねに常時接触された第1の固定接点と、
前記ドーム状ばねの座屈時に可動接点が接触される第2の固定接点と、
前記第1の固定接点及び前記第2の固定接点が設けられた基板と、を備え、
前記ドーム状ばねは、導体であり、
押下により座屈された前記ドーム状ばねを介して、前記第1の固定接点と前記第2の固定接点とが電気的に導通される。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のスイッチにおいて、
前記ドーム状ばねに貼り付けられたばね押えシートを備える。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のスイッチにおいて、
押下入力を受け付けて前記ドーム状ばねに伝える操作ボタンを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ドーム状接点ばねを設けた装置を小型化できるとともに、クリックアクションを確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る実施の形態のスイッチの断面図である。
【図2】実施の形態のドーム状ばねの平面図である。
【図3】実施の形態のドーム状ばねの動径に対する高さを示す図である。
【図4】実施の形態のドーム状ばねの角度を示す断面図である。
【図5】(a)は、実施の形態の一例としてのドーム状ばねの平面図である。(b)は、実施の形態の一例としてのドーム状ばねの断面図である。
【図6】(a)は、従来の一例としてのドーム状接点ばねの平面図である。(b)は、従来の一例としてのドーム状接点ばねの断面図である。
【図7】実施の形態の一例のドーム状ばね及び従来の一例のドーム状接点ばねの可動接点の変位に対する動作荷重の特性を示す図である。
【図8】第1の変形例のスイッチの断面図である。
【図9】(a)は、第2の変形例の第1のドーム状ばねの平面図である。(b)は、第1の変形例の第1のドーム状ばねの断面図である。
【図10】(a)は、第2の変形例の第2のドーム状ばねの平面図である。(b)は、第1の変形例の第2のドーム状ばねの側面図である。
【図11】(a)は、第2の変形例の第3のドーム状ばねの平面図である。(b)は、第1の変形例の第3のドーム状ばねの断面図である。
【図12】実施例1のスイッチの断面図である。
【図13】実施例2のスイッチの断面図である。
【図14】従来の第1のスイッチの断面図である。
【図15】従来の第1のスイッチにおける可動接点の変位に対する動作荷重の特性を示す図である。
【図16】従来の第2のスイッチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態、第1及び第2の変形例、並びに実施例1,2を順に詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0025】
図1〜図6を参照して、本発明に係る実施の形態を説明する。先ず、図1及び図2を参照して、本実施の形態のスイッチ1の装置構成を説明する。図1に、スイッチ1の断面構成を示す。図2に、ドーム状ばね2の平面構成を示す。図1は、図2のI−I線におけるドーム状ばね2の断面を含むスイッチ1の断面図である。
【0026】
本実施の形態のスイッチ1は、例えば、電子機器用の操作部に用いられるスイッチである。当該電子機器は、押下操作入力を行う操作部を備える電子機器であり、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ハンディターミナル等の携帯機器であることが好ましい。
【0027】
図1に示すように、スイッチ1は、ドーム状ばね2と、基板3と、固定接点4,5,6と、を備える。ドーム状ばね2は、全面が非球面形状であるドーム形状の金属導体からなる接点用のばねである。ドーム状ばね2の材料は、SUS301(ばね用ステンレス鋼帯)等のステンレス、ベリリウム銅、ばね用りん青銅等の金属導体である。しかしこれらの材料に限定されるものではなく、一般的にばね用途として用いられる材料であればよい。
【0028】
また、図2に示すように、ドーム状ばね2は、平面形状が円形である。ドーム状ばね2の平面の中心点を可動接点2aとする。また、ドーム状ばね2の断面の中立面を中立面2bとする。中立面とは、圧縮側と引張側との境目にあり伸びも縮みもしない断面である。中立面2bが、非球面形状である。ドーム状ばね2の非球面形状については、詳細に後述する。また、ドーム状ばね2は、操作者の押下方向と逆方向に凸形状を有する。
【0029】
基板3は、ガラス−エポキシ樹脂等からなる基板である。基板3には、ドーム状ばね2が載置されている。基板3には、固定接点4,5,6が設けられている。固定接点4,5,6は、銅箔等の金属導体からなる固定された接点である。固定接点4,5は、ドーム状ばね2の端部に常時接触されている。固定接点6は、ドーム状ばね2の可動接点2aに対応する位置に設けられている。固定接点6は、ドーム状ばね2が押下されていない状態でドーム状ばね2に接触されていない。
【0030】
次いで、図3及び図4を参照して、ドーム状ばね2の非球面形状を説明する。図3に、ドーム状ばね2の動径ρに対する高さを示す。図4に、ドーム状ばね2の角度を示す。
【0031】
図3及び図4に示すように、ドーム状ばね2は、非球面形状を有するように設計される。図3におけるのドーム状ばね2の高さは、基板3の表面からドーム状ばね2の下側の面までの垂直方向の長さである。基板3の表面上におけるドーム状ばね2の中心点を中心とした端部までの円の直径を外径Dとする。基板3の表面上におけるドーム状ばね2の中心点からの長さを動径ρとする。つまり、外径Dに対応する動径ρはD/2である。また、ドーム状ばね2の中心点に対応するドーム状ばね2の高さを、高さhとする。
【0032】
ドーム状ばね2は、上側の面、中立面及び下側の面に同様の非球面形状を有する。少なくとも、ドーム状ばね2の中立面が非球面形状であればよい。このため、ドーム状ばね2の下側の面の形状を、ドーム状ばね2の中立面の形状と見なして以下説明する。
【0033】
ドーム状ばね2の非球面形状は、次式(1)の6次の偶関数の非球面方程式で表される形状である。
f(ρ)=a6・ρ6+b6・ρ4+c6・ρ2+h …(1)
但し、a6,b6,c6は、任意の係数である。
【0034】
また、式(1)において、ドーム状ばね2の変曲点の位置に対応する直径を長さD1とする。式(1)は、3つの変曲点を有する。3つの変曲点は、動径ρ=0、D1/2、D/2に対応する位置に存在する。動径ρ=D1/2におけるドーム状ばね2と基板3との間の角度を角度αとする。動径ρ=D/2におけるドーム状ばね2と基板3との間の角度を角度βとする。
【0035】
ドーム状ばね2において動作荷重Fにより座屈が起こる条件として、次式(2)を満たすことが必要である。
α<β …(2)
式(1)において、式(2)を満たすa6,b6,c6が決定される。
【0036】
式(1)では、ドーム状ばね2の非球面形状を6次の偶関数の非球面方程式で表したが、8次以上の偶関数で表してもよい。つまり、次式(3)、(4)〜の何れか一つを満たす非球面形状である。
f(ρ)=a8・ρ8+b8・ρ6+c8・ρ4+d8・ρ2+h …(3)
f(ρ)=a10・ρ10+b10・ρ8+c10・ρ6+d10・ρ4+e10・ρ2+h …(4)
:
つまり、本実施の形態の非球面形状は、まとめて次式(5)で表される。
f(ρ)=an1・ρn+bn・ρn−2+cn・ρn−4+…+γn・ρ2+h …(5)
但し、n:6以上の任意の偶数、γ:2次に対応する係数、である。
【0037】
6次以上の偶関数を用いたのは、動径ρ=0(ドーム状ばね2の中心点)を含めて、3つ以上の変曲点を得るためである。3つ以上の変曲点のうち、一つの変曲点が動径ρ=0に対応し、もう一つの変曲点が動径ρ=ドーム状ばね2の外径に対応し、他の変曲点が0<ρ<外径を満たす動径ρに対応する。3つ以上の変曲点を有する場合に、ドーム状ばね2を座屈が起こる形状にすることできる。つまり、式(5)の6次以上の偶関数を用いて、式(2)の条件を満たすドーム状ばね2を設計することで、ドーム状ばね2が動作荷重Fにより座屈を起こす。
【0038】
ドーム状ばね2を設計する場合に、式(5)の次数nを高くするほど、非球面形状を理想的な形状に設定できるが、計算量も多くなる。このため、6次、8次等の適切な次数の非球面方程式でドーム状ばね2を設計するのが好ましい。
【0039】
次いで、図5〜図7を参照して、ドーム状ばね2の一例における動作を説明する。図5(a)に、本実施の形態の一例としてのドーム状ばね2Aの平面構成を示す。図5(b)に、ドーム状ばね2Aの断面構成を示す。図6(a)に、従来の一例としてのドーム状接点ばね23の平面構成を示す。図6(b)に、ドーム状接点ばね23の断面構成を示す。図7に、ドーム状ばね2A及びドーム状接点ばね23の可動接点2Aa,23aの変位に対する動作荷重の特性を示す。
【0040】
図5(a),(b)に示すドーム状ばね2Aは、式(2)及び8次の非球面方程式の式(3)を用いて設計されたドーム状ばね2の一例である。図5(b)は、図5(a)のドーム状ばね2AのV−V線での断面図である。図6(a),(b)に示すドーム状接点ばね23は、従来のドーム状接点ばね22の一例である。ドーム状ばね2A及びドーム状接点ばね23には、プレス加工により、クリックアクションのための残留応力が加えられていないものとする。図6(b)は、図6(a)のドーム状接点ばね23のVI−VI線での断面図である。ドーム状接点ばね23は、球面形状の球面部23Aと、円錐形状の台座部23Bと、を有する。
【0041】
ドーム状ばね2A及びドーム状接点ばね23の平面上の外径を長さL1とし、断面における基板からのドーム状ばね2A及びドーム状接点ばね23の上面までの高さを長さL2とする。
【0042】
図7において、ドーム状ばね2Aの基板3に対する垂直方向の可動接点2Aaの変位[mm]に対する動作荷重F[gf]の曲線が実線で表されている。同じく、ドーム状接点ばね23の可動接点23aの変位[mm]に対する動作荷重F[gf]の曲線が破線で表されている。図7は、一例として、L1=4[mm]、L2=0.24[mm]とした場合のドーム状ばね2A及びドーム状接点ばね23の特性を示している。
【0043】
ドーム状ばね2A又はドーム状接点ばね23を備えるスイッチにおいて、ドーム状ばね2A又はドーム状接点ばね23の中心の可動接点2Aa又は23aを操作者が上から動作荷重Fで押下した場合を考える。可動接点2Aa又は23aに力を加えない初期状態での動作荷重及び変位を0とする。
【0044】
スイッチの初期状態において、ドーム状接点ばね23に動作荷重Fを与える場合に、先ず、操作者が押下により動作荷重Fを増加開始する。図7に示すように、動作荷重Fは、変位が0から変位量S1までほぼ比例して増加される。しかし、変位量S1を超えても、変位の増加ともに動作荷重も増加し続ける。このため、動作荷重F1でドーム状接点ばね23に座屈が起こらない。
【0045】
これに対し、スイッチの初期状態において、ドーム状ばね2Aに動作荷重Fを与える場合に、図7に示すように、動作荷重Fは、変位が0から変位量S1までほぼ比例して増加される。そして、変位量S1に対応する動作荷重F1でドーム状ばね2Aが座屈を起こす。すると、ドーム状ばね2Aの中央部分が反転し、動作荷重F1よりも小さな動作荷重で可動接点2Aaが変位する。その後、可動接点2Aaが固定接点5に接触する変位量S2に至るまで、動作荷重は減少し続ける。そして、変位量S2に対応する動作荷重F2がなくなれば、ドーム状ばね2Aが逆方向に反転し、初期状態に復帰する。
【0046】
以上、本実施の形態によれば、押下により座屈を起こすドーム状ばね2の中立面2bが非球面形状である。そして、ドーム状ばね2の非球面形状は、式(5)で表され、式(2)を満たす。このため、ドーム状ばね2の高さを小さくして、ドーム状ばね2を設けたスイッチ1を小型化できるとともに、クリックアクションを確実に得ることができる。つまり、操作者にクリック感を確実に与えることができる。
【0047】
(第1の変形例)
図8を参照して、上記実施の形態の第1の変形例を説明する。図8に、本変形例のスイッチ10の断面構成を示す。
【0048】
上記実施の形態のスイッチ1は、操作者の押下方向と逆方向に凸形状を有するドーム状ばね2を備える構成であった。これに対し、本変形例のスイッチ10は、操作者の押下方向と同じ方向に凸形状を有するドーム状ばね2Bを備える構成である。
【0049】
図8に示すように、スイッチ10は、ドーム状ばね2Bと、基板3A,3Bと、固定接点4A,5A,6Aと、を備える。ドーム状ばね2Bは、中立面がドーム状ばね2と同様の非球面形状であるドーム形状のステンレス等の金属導体からなる接点用のばねである。また、ドーム状ばね2Bは、平面形状が円形である。ドーム状ばね2Bの平面の中心点を可動接点2Baとする。
【0050】
基板3Aは、ドーム状ばね2Bの上方に設けられ、ドーム状ばね2Bに載置される基板である。基板3Bは、ドーム状ばね2Bの下方に設けられ、ドーム状ばね2Bが載置される基板である。基板3Aには、固定接点4A,5A,6Aが設けられている。固定接点4A,5A,6Aは、銅箔等の金属導体からなる電気的な接点である。固定接点4A,5Aは、ドーム状ばね2Bの端部に常時接触されている。固定接点6Aは、ドーム状ばね2Bの可動接点2Baに対応する位置に設けられている。固定接点6Aは、ドーム状ばね2Bが押下されていない状態で、ドーム状ばね2Bに接触されていない。基板3Bは、ドーム状ばね2Bが押下されていない状態で、可動接点2Baに接触されている。
【0051】
スイッチ10についても、スイッチ1と同様に、動作荷重Fがない初期状態において、ドーム状ばね2Bの押下により、動作荷重Fを可動接点2Baに加えて増加していくと、ある変位でドーム状ばね2Bが座屈を起こして中央部分が反転し、小さな動作荷重Fで可動接点2Baが変位していく。その後、可動接点2Baが固定接点6Aに接触して、動作荷重Fは減少し続ける。そして、動作荷重Fがなくなれば、ドーム状ばね2Bが逆方向に反転し、初期状態に復帰する。
【0052】
以上、本変形例によれば、上記実施の形態と同様に、ドーム状ばね2Bにより、スイッチ10を小型化できるとともに、クリックアクションを確実に得ることができる。
【0053】
また、固定接点4A,5A,6Aが基板3Aに設けられている。このため、固定接点4A,5A,6Aをドーム状ばね2の上方に設けることができる。
【0054】
(第2の変形例)
図9〜図11を参照して、上記実施の形態の第2の変形例を説明する。図9(a)に、本変形例のドーム状ばね2Cの平面構成を示す。図9(b)に、ドーム状ばね2Cの断面構成を示す。図10(a)に、本変形例のドーム状ばね2Dの平面構成を示す。図10(b)に、ドーム状ばね2Dの側面構成を示す。図11(a)に、本変形例のドーム状ばね2Eの平面構成を示す。図11(b)に、ドーム状ばね2Eの断面構成を示す。
【0055】
上記実施の形態のスイッチ1は、平面形状が円形のドーム状ばね2を備える構成であった。これに対し、本変形例のスイッチは、ドーム状ばね2に代えて、ドーム状ばね2の一部がカットされたドーム状ばね2C,2D又は2Eを備える構成である。
【0056】
図9(a)、(b)に示すように、ドーム状ばね2Cは、ドーム形状の上下の一部がカットされた俵型のドーム形状を有する。図9(b)は、図9(a)のドーム状ばね2CのIX−IX線における断面図である。ドーム状ばね2Cは、ドーム状ばね2の上下の端部をカットすることにより製造される。このため、ドーム状ばね2Cは、ドーム状ばね2と同様の非球面形状を有する。但し、ドーム状ばね2Cにおいて、カットされていない端部のうち、中心の可動接点2Caを挟んで対向する2つの端部2C1,2C2が、基板3の固定接点4,5に接触される。
【0057】
図10(a)、(b)に示すように、ドーム状ばね2Dは、ドーム形状の4つの一部がカットされた十字型のドーム形状を有する。図10(b)は、図10(a)のドーム状ばね2Dの側面図である。ドーム状ばね2Dは、ドーム状ばね2の4つの端部をカットすることにより製造される。このため、ドーム状ばね2Dは、ドーム状ばね2と同様の非球面形状を有する。但し、ドーム状ばね2Dにおいて、カットされていない端部のうち、中心の可動接点2Daを挟んで対向する2つの端部2D1,2D2、又は2D3,2D4が、基板3の固定接点4,5に接触される。
【0058】
図11(a)、(b)に示すように、ドーム状ばね2Eは、ドーム形状の中央部がカットされた穴あき型のドーム形状を有する。図11(b)は、図11(a)のドーム状ばね2EのXI−XI線における断面図である。ドーム状ばね2Eは、ドーム状ばね2の中心部を円形にカットすることにより製造される。ドーム状ばね2Eの穴側の端部を可動接点2Eaとする。このため、ドーム状ばね2Eは、ドーム状ばね2と同様の非球面形状を有する。ドーム状ばね2Eにおいて、ドーム状ばね2と同様に、中心の可動接点2Eaを挟んで対向する任意の2つの端部が、基板3の固定接点4,5に接触される。固定接点6は、ドーム状ばね2Eの座屈時に可動接点2Eaに接触されるように形成及び配置される。
【0059】
以上、本変形例によれば、上記実施の形態と同様に、ドーム状ばね2C,2D又は2Eにより、スイッチを小型化できるとともに、クリックアクションを確実に得ることができる。
【0060】
また、ドーム状ばね2C,2D又は2Eは、一部がカットされている。このため、ドーム状ばね2C,2D又は2Eの材料を少なくすることができ、ドーム状ばね及びスイッチの軽量化を実現できる。
【実施例1】
【0061】
図12を参照して、上記実施の形態のスイッチ1の第1の実施例としてのスイッチ30を説明する。図12に、本実施例のスイッチ30の断面構成を示す。
【0062】
スイッチ30は、携帯機器等の操作部等に設けられる押釦スイッチである。スイッチ30は、ドーム状ばね2と、基板3Cと、固定接点4C,5C,6Cと、操作ボタン7と、スイッチケース8と、を備える。基板3C、固定接点4C,5C,6Cは、順に、基板3、固定接点4,5,6に対応する。以下、実施の形態と同じ部材には、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0063】
基板3Cは、ガラス−エポキシ樹脂等からなる基板である。基板3Cは、ドーム状ばね2に接続される固定接点4C,5C,6Cが載置されている。固定接点4C,5C,6Cは、銅箔等の金属導体からなる電気的な接点である。固定接点4C,5Cは、ドーム状ばね2の端部に常時接触されている。固定接点6Cは、ドーム状ばね2の可動接点2aに対応する位置に設けられている。固定接点6Cは、ドーム状ばね2が押下されていない状態で、ドーム状ばね2に接触されていない。
【0064】
操作ボタン7は、ABS樹脂等の樹脂等からなり、操作者の押下入力を受け付ける操作ボタンである。操作ボタン7は、ドーム状ばね2の上方に接触されており、操作者の押下入力を受け付け、この押下入力に応じてスイッチケース8に沿って上下に移動し、当該押下入力に対応する動作荷重Fをドーム状ばね2に伝える。スイッチケース8は、プラスチック等の樹脂等からなるケースである。スイッチケース8は、ドーム状ばね2、基板3C、固定接点4C,5C,6C、操作ボタン7を覆うとともに、操作ボタン7の一部を露出させる。また、スイッチケース8は、操作ボタン7を上下方向にガイドする。
【0065】
また、スイッチケース8は、固定部8aを有する。固定部8aは、上面から見たドーム状ばね2の位置を固定している。この位置は、ドーム状ばね2が固定接点4C,5Cに接触し、且つドーム状ばね2の可動接点2Aaが座屈時に固定接点6Cに接触する位置である。
【0066】
以上、本実施例1によれば、上記実施の形態と同様に、ドーム状ばね2により、スイッチ30を小型化でき、クリックアクションを確実に得ることができる。また、スイッチ30は、操作ボタン7を備える。このため、操作ボタン7により、操作者に押下入力の操作を容易に行わせることができる。
【0067】
また、スイッチ30は、固定部8aを有するスイッチケース8を備える。このため、固定部8aにより、ドーム状ばね2を、固定接点4C,5Cに常時接触させ、座屈時に固定接点6Cに接触させる位置に確実に配置することができる。
【実施例2】
【0068】
図13を参照して、上記実施の形態のスイッチ1の第2の実施例としてのスイッチ40を説明する。図13に、本実施例のスイッチ40の断面構成を示す。
【0069】
スイッチ40は、携帯機器等の操作部等に設けられる押釦スイッチである。スイッチ40は、ドーム状ばね2と、基板3と、固定接点4,5,6と、ばね押えシート9と、を備える。
【0070】
ばね押えシート9は、ポリエステルフィルム等の絶縁性のシートである。ばね押えシート9は、ドーム状ばね2及び基板3の上面に貼り付けられている。ばね押えシート9は、上面から見たドーム状ばね2の位置を固定している。この位置は、ドーム状ばね2が固定接点4,5に接触し、且つドーム状ばね2の可動接点2Aaが座屈時に固定接点6に接触する位置である。
【0071】
以上、本実施例2によれば、上記実施の形態と同様に、ドーム状ばね2により、スイッチ40を小型化でき、クリックアクションを確実に得ることができる。また、スイッチ40は、ばね押えシート9を備える。このため、ばね押えシート9により、ドーム状ばね2を固定接点4,5に常時接触させ、座屈時に固定接点6に接触させる位置に確実に配置することができる。さらに、ばね押えシート9により、スイッチ40を実施例1のスイッチ30よりも高さを低くしてより小型化できる。
【0072】
なお、上記実施の形態、各変形例及び各実施例における記述は、本発明に係るドーム状ばね及びスイッチの一例であり、これに限定されるものではない。
【0073】
例えば、上記実施の形態、各変形例及び各実施例の構成の少なくとも2つを適宜組み合わせることとしてもよい。例えば、上記実施例1のスイッチ30のドーム状ばね2を、上記第2の変形例に記載のドーム状ばね2C,2D,2Eに代える構成としてもよい。また、例えば、上記実施例1のスイッチ30において、固定部8aが無く、ドーム状ばね2に上記実施例2のばね押えシート9を貼り付けて位置決めした構成としてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態、各変形例及び各実施例のドーム状ばねは、全面の中立面が非球面形状である構成としたが、これに限定されるものではない。ドーム状ばねの座屈時の可動部分の少なくとも一部が非球面である構成としてもよい。例えば、ドーム状ばねの中心の円部分を球面形状にし、それ以外の部分を非球面形状とした構成としてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態、各変形例及び各実施例において、ドーム状ばねを設けた装置として、スイッチを説明したが、これに限定されるものではない。非球面のドーム状ばねをコネクタ等、他の装置に設ける構成としてもよい。例えば、非球面のドーム状ばねをコネクタに用いる構成では、コネクタの接点を、非球面のドーム状ばねとし、コネクタを接続する際に、ドーム状ばねによりクリックアクションが起こる構成とする。つまり、コネクタを接続先に接続する際に、ドーム状ばねの座屈により、クリックアクションが起こるとともに、ドーム状ばねを介してコネクタの接点とその接続先の接点とが電気的に導通される。このため、操作者にクリック感を与えることができるとともに、コネクタを小型化できる。
【0076】
さらに、非球面のドーム状ばねを接点として用いることなくコネクタ等の装置に設ける構成としてもよい。例えば、非球面のドーム状ばねをコネクタに用いる構成では、ドーム状ばねがコネクタのハウジング等に設けられ、コネクタを接続する際に、ドーム状ばねによりクリックアクションが起こる構成とする。つまり、コネクタ接続時に、コネクタの接点とその接続先の接点とが電気的に導通され、それと別に、ドーム状ばねの座屈により、クリックアクションが起こる。このため、操作者に、接続完了を知らせるクリック感を与えることができるとともに、コネクタを小型化できる。
【0077】
その他、上記実施の形態、各変形例及び各実施例におけるドーム状ばね及びスイッチの細部構成及び詳細動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0078】
1,10,30,40 スイッチ
2,2A,2B,2C,2D,2E ドーム状ばね
2a,2Aa,2Ba,2Ca,2Da,2Ea 可動接点
2b 中立面
2C1,2C2,2D1,2D2,2D3,2D4 端部
3,3A,3B,3C 基板
4,5,6,4A,5A,6A,4C,5C,6C 固定接点
7 操作ボタン
8 スイッチケース
8a 固定部
9 ばね押えシート
100,200 スイッチ
21,22,23 ドーム状接点ばね
21a,22a,23a 可動接点
22A,23A 球面部
22B,23B 台座部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押下により座屈を起こすドーム状ばねであって、
当該ドーム状ばねの座屈時の可動部分の少なくとも一部の中立面が非球面形状であるドーム状ばね。
【請求項2】
前記非球面形状は、6次以上の偶関数で表され、
前記ドーム状ばねの中心及び外径の間の位置に対応する前記偶関数の変曲点における当該ドーム状ばねと当該ドーム状ばねの端部が接触される基板との間の角度αと、当該ドーム状ばねの外径に対応する前記偶関数の変曲点における当該ドーム状ばねと前記基板との間の角度βとにおいて、
α<β
を満たす請求項1に記載のドーム状ばね。
【請求項3】
前記ドーム状ばねの一部がカットされた形状を有する請求項1又は2に記載のドーム状ばね。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のドーム状ばねと、
前記ドーム状ばねに常時接触された第1の固定接点と、
前記ドーム状ばねの座屈時に可動接点が接触される第2の固定接点と、
前記第1の固定接点及び前記第2の固定接点が設けられた基板と、を備え、
前記ドーム状ばねは、導体であり、
押下により座屈された前記ドーム状ばねを介して、前記第1の固定接点と前記第2の固定接点とが電気的に導通されるスイッチ。
【請求項5】
前記ドーム状ばねに貼り付けられたばね押えシートを備える請求項4に記載のスイッチ。
【請求項6】
押下入力を受け付けて前記ドーム状ばねに伝える操作ボタンを備える請求項4又は5に記載のスイッチ。
【請求項1】
押下により座屈を起こすドーム状ばねであって、
当該ドーム状ばねの座屈時の可動部分の少なくとも一部の中立面が非球面形状であるドーム状ばね。
【請求項2】
前記非球面形状は、6次以上の偶関数で表され、
前記ドーム状ばねの中心及び外径の間の位置に対応する前記偶関数の変曲点における当該ドーム状ばねと当該ドーム状ばねの端部が接触される基板との間の角度αと、当該ドーム状ばねの外径に対応する前記偶関数の変曲点における当該ドーム状ばねと前記基板との間の角度βとにおいて、
α<β
を満たす請求項1に記載のドーム状ばね。
【請求項3】
前記ドーム状ばねの一部がカットされた形状を有する請求項1又は2に記載のドーム状ばね。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のドーム状ばねと、
前記ドーム状ばねに常時接触された第1の固定接点と、
前記ドーム状ばねの座屈時に可動接点が接触される第2の固定接点と、
前記第1の固定接点及び前記第2の固定接点が設けられた基板と、を備え、
前記ドーム状ばねは、導体であり、
押下により座屈された前記ドーム状ばねを介して、前記第1の固定接点と前記第2の固定接点とが電気的に導通されるスイッチ。
【請求項5】
前記ドーム状ばねに貼り付けられたばね押えシートを備える請求項4に記載のスイッチ。
【請求項6】
押下入力を受け付けて前記ドーム状ばねに伝える操作ボタンを備える請求項4又は5に記載のスイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−34927(P2011−34927A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182939(P2009−182939)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】
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