説明

ナタリズマブを用いて炎症性疾患および自己免疫性疾患を治療する方法

ナタリズマブは、多発性硬化症、クローン病、および関節リウマチ等の炎症性疾患および自己免疫性疾患についての安全で有効性のある治療である。治療している間に進行性多病巣性白質脳障害が稀に発症することから、それがナタリズマブ治療と関連している可能性があることが示唆される。JCVに関してモニタリングすること、そして進行性多病巣性白質脳障害の兆候に関して介護人や患者を情報を提供することにより、ナタリズマブ治療の安全性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
PRIORITY CLAIM
[001] 本出願は、米国仮出願No. 60/776,931(2006年2月28日出願)の優先権の利益を主張し、あらゆる目的のために、その全体を本明細書中に参考文献として援用する。
【0002】
技術分野
[002] 本発明は、組換え抗体を用いて炎症性疾患および自己免疫性疾患を治療する方法に関する。これらの方法では、抗体治療を受ける患者に情報を提供することにより、そしてそのような患者をモニタリングすることにより、治療の安全性を向上する。
【0003】
背景技術
[003] 末梢血から血液脳関門を介したリンパ球の遊走が、いくつかの中枢神経系(CNS)炎症性疾患の発症を開始させることが報告された。CNSへのリンパ球の侵入は、細胞接着分子により媒介される(O'Neill et al., Immunology 72:520-525 (1991);Raine et al, Lab. Invest. 63:476-489 (1990);Yednock et al., Nature 356:63-66 (1992);Baron et al., J. Exp. Med. 177:57-68 (1993);Steffen et al., Am. J. Path. 145:189-201 (1994);Christensen et al., J. Immunol. 154:5293-5301 (1995))。
【0004】
[004] 細胞表面に存在する細胞接着分子は、細胞と別の細胞との直接的な結合を媒介する(Long et al., Exp. Hematol. 20:288-301 (1992))。接着分子のインテグリンおよび免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーは、CNSへのリンパ球トラフィックを制御する(Hemler et al., Annu. Rev. Immunol. 8:365-400 (1990);Springer et al., Cell 76:301-314 (1994);Issekutz et al., Curr. Opin. Immunol 4:287-293 (1992))。接着分子は、炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば、喘息、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、AIDS認知症、糖尿病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、組織移植拒絶、および腫瘍転移など、を媒介することが、広く報告されてきた。
【0005】
[005] インテグリンは、非共有結合されたαおよびβ鎖のヘテロ二量体である(Hemler et al., Annu. Rev. Immunol. 8:365-400 (1990))。α4β1インテグリン(最後期活性化抗原(very late activation antigen)-4、VLA-4とも呼ばれる)およびα4β7インテグリンは、ほとんどの種類の白血球表面上に存在し、そこでそれらがそれらの同種受容体である内皮細胞表面上の血管細胞接着分子-1(VCAM-1)や粘膜接着細胞接着分子-1(MAdCAM-1)との相互作用により内皮細胞に対する白血球結合を媒介する。インテグリンは、血管の内皮細胞層への免疫細胞接着において、重要な役割を果たしていると考えられており、引き続いて生じる炎症組織中への遊走を促進する。いくつかの研究により、CNS炎症へのVLA-4および特にα4インテグリンサブユニットの関与が示された(Yednock et al., Nature 356:63-66 (1992);Baron et al, J. Exp. Med. 177:57-68 (1993);Steffen et al., Am. J. Path. 145:189-201 (1994);Christensen et al., J. Immunol. 154:5293-5301 (1995))。VCAM-1発現が、正常脳組織と比較して、炎症脳組織において上昇していることも報告された(Cannella and Raine, Ann. Neurol. 37:424-435 (1995);Washington et al., Ann. Neurol. 35:89-97 (1994);Dore-Duffy et al., Frontiers in Cerebral Vascular Biology: Transport and Its Regulation, 243-248 (Eds. Drewes & Betz, Plenum, N. Y. 1993))。
【0006】
[006] α4β1とその標的との間の相互作用は、多発性硬化症(MS)を伴う患者のCNS中で生じる炎症の構成要素である。正常条件下において、VCAM-1は、脳実質においては発現されない。しかしながら、前炎症性サイトカインの存在下においては、VCAM-1は内皮細胞上および炎症部位そばのミクログリア細胞上で亢進制御される(Elices et al., Cell 60:577-584 (1990);Lobb and Hemler, J. Clin. Invest. 94:1722-1728 (1994);Peterson et al., J. Neuropathy Exp. Neurol. 61 :539- 546 (2002))。さらに、前炎症性サイトカインの多数の特徴を示すオステオポンチンもまた、MS病巣中で亢進制御される(Chabas et al., Science 294:1731-1735 (2001))。
【0007】
[007] MSは、若年成人の重症で身体に障害を生じさせる炎症性疾患および自己免疫疾患であり、発症のピーク年齢は20歳代である。ほとんどの個体は、再発寛解型の疾患を示し、そして再発性発作を経験し、それが時間と共に、結果的に永続的な身体障害や認識衰退の蓄積を引き起こす。これらの個体の約70%は、結果的に、混合型の再発(superimposed relapses)を伴うかまたは伴わずに、進行性の神経減少(二次進行型MS)のフェーズに突入する。現在の治療法は、二次進行型MSに対しては、有効性が低い。患者の大半が永続的な神経学的機能不全を患っており、そして平均して疾患の発症後、6〜7年の平均余命である。
【0008】
[008] 現在のところ、米国において、再発型MSの治療に関しては、4種類の治療方法が承認されている。インターフェロン類、Betaseron(登録商標)(インターフェロンβ-1b SC(皮下))、AVONEX(登録商標)(インターフェロンβ-1a IM(筋肉内))、およびRebif(登録商標)(インターフェロンβ-1a SC)は、抗ウィルス性活性、抗増殖性活性、および免疫調節性活性を有するサイトカインである。Copaxone(登録商標)(ガラティラメルアセテート)は、作用機序がほとんど分かっていない合成ポリペプチドの混合物である。β-インターフェロン類は、重度の有害事象を生じる可能性があり、そしていくつかの証拠は、Copaxoneが効果のないものであると示唆している(Munari, et al., The Cochrane Library, Issue 1, Chichester, UK: John Wiley & Sons, Ltd. (2004))。
【0009】
[009] β-インターフェロン類の重度の有害事象には、過敏性反応、抑うつ症および自殺についてのまれな報告、末梢血カウントの減少、肝臓損傷、心筋症、および様々な自己免疫障害が含まれる(Betaseron Package Insert, 2003;Rebif Package Insert, 2004;AVONEX(登録商標)Package Insert, 2005)。インターフェロン類に対する中和抗体の発生は、有効性の喪失と関連している。β-インターフェロンに対して発生させた抗体は、他のインターフェロン類と交叉反応し、そのような患者のすべてのクラスに関して有効性の喪失を引き起こす(IFNB MS Study Group, Neurology 47:889-894 (1996);PRISMS Study Group, Neurology 56:1628-1636 (2001);Kappos et al., Neurology 65:40-47 (2005))。その結果、米国内だけで、以前に治療を受けた50,000人の患者が、もはや治療を受けられない。このように、現在のところ承認された治療を何も受けていない進行性のMSを伴う患者が多数存在する。
【0010】
[010] 実際に治療を受けている患者の間では、臨床的に観察される場合、そして磁気共鳴イメージング(MRI)により、かなりの数が、疾患の進行を経験し続けている。治療(例えば、治療法の転換、インターフェロンの用量および頻度の変更、組み合わせ治療)をしているあいだ、疾患の進行を管理するために、様々な治療戦略が現在臨床現場では使用されているが、利用可能な薬物治療間での同様な有効性、および進行性の患者におけるこれらの戦略のいずれかの有効性を示す臨床データが存在しないことにより、これらの患者に対して何をすべきかについての決定は、多くは経験的なものとなる。部分的に有効な承認された薬物治療のそれぞれにより、再発率がおよそ30%低下し、そして障害の進行に対しては限定的な効果が引き起こされる(IFNB MS Study Group, Neurology 43:655-661 (1993);Jacobs et al., Ann. Neurol. 39:285- 289 (1996);PRISMS Study Group, Lancet 352:1498-1504 (1998));Johnson et al., Neurology 45:1268-1276 (1995))。MSにおけるβ-インターフェロンのフェーズ3試験から得られたデータは、62%〜75%の被検体が、この2年間の試験の間、インターフェロン治療を行ったにも関わらず少なくとも1回の再発を経験したことを示す(IFNB MS Study Group, Neurology 43:655-661 (1993);Jacobs et al., Ann. Neurol. 39:285-289 (1996);PRISMS Study Group, Lancet 352:1498-1504 (1998))。同様に、ガラティラメルアセテートのフェーズ3のMS試験における被検体の66%が、2年間の期間のあいだに少なくとも1回の再発を経験したが、この比率はプラセボと大きな差はなかった(Johnson et al., Neurology 45:1268-1276 (1995))。
【0011】
[011] 進行性多病巣性白質脳障害(PML)は、神経細胞を保護するミエリンコーティングを破壊する、重症の急速進行性の疾患である。PMLは、重症の免疫抑制患者においてほぼ限定的に生じ、そしてリンパ球増殖性疾患、および例えば、AIDS、ホジキン病、慢性リンパ球性白血病、サルコイドーシス、結核、全身性エリテマトーデス、および臓器移植などのその他の慢性疾患としばしば関連する。JCウィルス(JCV)は、PMLの病原体であり、そして1次感染の結果として引き起こされるか、または潜伏性ウィルスの再活性化に引き続く可能性がある。
【0012】
[012] α4-インテグリンアンタゴニストであるナタリズマブを使用して、炎症性構成成分および/または自己免疫性構成成分を伴う疾患、例えば、MS、クローン病、および関節リウマチ、を治療することに成功した。ナタリズマブの投与中または投与後に生じるPMLには3例の既知の症例が存在し、そのうち2例は致死であることがわかり、そして1例の患者は回復した。3例の症例すべてが、免疫抑制に寄与したはずの薬物治療に付随して、患者において生じた。
【0013】
[013] このように、ナタリズマブ治療とPMLの発症との間の関係を決定することについての要望、そしてPMLに罹る可能性を考慮する、ナタリズマブを用いて患者を治療する、より安全な方法についての要望が、当該技術分野においては存在する。
【0014】
概要
[014] 本発明は、ナタリズマブを使用して、炎症性疾患および自己免疫疾患を有する患者を治療する、より安全な方法を提供する。
【0015】
[015] 第一の側面において、本発明は、医薬的有効量のナタリズマブを投与し;患者を進行性多病巣性白質脳障害の指標についてモニタリングし;そして、進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合にナタリズマブの投与を中止すること;により、ナタリズマブを使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者を治療する方法を提供し;ここで、モニタリングにより、治療の安全性を向上させる。本発明の態様において、疾患は多発性硬化症である。態様において、多発性硬化症は、再発寛解型多発性硬化症、二次進行型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、および慢性進行型多発性硬化症から選択される。この方法の態様において、疾患は、炎症性腸疾患または関節リウマチである。態様において、炎症性腸疾患はクローン病である。この方法の態様において、モニタリングにより、患者の尿、血液、および/または脳脊髄液中のJCVを検出し、そしてそのような方法の態様において、モニタリングは、患者の血液サンプルを連続的に取り出し、サンプル中のJCVに対するIgG抗体量を測定し、そしてサンプル中の抗体量を比較することを含む。
【0016】
[016] 態様において、この方法には、サンプル中のJCVに対するIgM抗体量を測定し、そしてサンプル中のIgM抗体量とIgG抗体量とを比較することが含まれる。態様において、モニタリングにより、セロコンバージョンおよび/または患者の尿および/または血液中のJCVの増加性の力価を検出し、そしてモニタリングにはさらに、連続的な尿サンプルおよび/または血液サンプルの比較から、セロコンバージョンおよび/またはJCVの増加性の力価が検出される場合に、患者の脳脊髄液サンプルを取りだし;そして、脳脊髄液をJCVの存在について試験すること;が含まれる。
【0017】
[017] この方法の態様において、モニタリングが、進行性多病巣性白質脳障害の臨床的症候および/または放射線学的症候について試験することを含む。態様において、臨床的症候についての試験が、新規のまたは進行性の神経学的症候について試験することを含む。態様において、神経学的症候が、1またはそれ以上の中枢盲、精神錯乱、人格変化、および運動障害を含む。態様において、放射線学的症候についての試験が、Gd-活性化磁気共鳴画像スキャンを行うことを含む。
【0018】
[018] 態様において、この方法には、進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合に、静脈内免疫グロブリン治療、プラスマフェレーシス、および抗ウィルス治療から選択される少なくとも1つの治療を行うことがさらに含まれる。態様において、抗ウィルス治療が、シトシンアラビノシド(シタラビン)、シドフォビル、およびセロトニンアンタゴニストから選択される治療的有効用量の少なくとも1つの抗ウィルス剤を投与することを含む。この方法の態様において、セロトニンアンタゴニストが5HT2aアンタゴニストである。
【0019】
[019] 本発明の態様において、患者は、ナタリズマブと免疫抑制剤または抗腫瘍剤とにより同時に治療されない。態様において、免疫抑制剤または抗腫瘍剤は、クロラムブシル、メルファラン、6-メルカプトプリン、チオテパ、イフォドファミド(ifodfamide)、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロマイド、ヘキサメチルメラミン、ドキソルビシン、ダウナルビシン、イダルビシン、エピルビシン、イリノテカン、メトトレキセート、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、シタラビン、ブスルファン、アモニフィド(amonifide)、5-フルオロウラシル、トポテカン、マスタージェン、ブレオマイシン、ロムスチン、セムスチン、マイトマイシンC、ムタマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メトトレキセート、トリメトレキサート、ラルチトレキシド(raltitrexid)、フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、フトラフール、5-エチニルウラシル、6-チオグアニン、クラドリビン、ペントスタチン、テニポシド、ミトキサントロン、ロソキサントロン、アクチノマイシンD、ビンデシン、ドセタキセル、アミフォスチン、インターフェロンα、タモキシフェン(tamoxefen)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ラロキシフェン、レトロゾール、アナストラゾール(anastrzole)、フルタミド、ビカルタミド、レチノイン酸類、三酸化ヒ素、リツキシマブ、CAMPATH-1、マイロターグ、ミコフェノール酸、タクロリムス、グルココルチコイド類、スルファサラジン、ガラティラメル、フマレート、ラキニモド、FTY-720、インターフェロンタウ、ダクリズマブ(daclizumab)、インフリキシマブ、IL10、抗-IL2受容体抗体、抗-IL-12抗体、抗-IL-6受容体抗体、CDP-571、アダリムマブ、エンタネラセプト(entaneracept)、レフルノミド、抗-インターフェロンガンマ抗体、アダタセプト(abatacept)、フルダラビン、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリン、静注用免疫グロブリン、5-ASA(メサラミン)、およびβ-インターフェロン、の1またはそれ以上のものから選択される。
【0020】
[020] 別の側面において、本発明は、患者から血液サンプルを取り出し;サンプルの血清または血漿をJCVに対するIgG抗体の存在について試験し;サンプルがJCVに対するIgG抗体について陰性である場合に、ナタリズマブを用いて、患者の治療を開始し;進行性多病巣性白質脳障害の指標について、患者をモニタリングし;そして、進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合に、ナタリズマブの投与を終了すること;により、ナタリズマブを使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者を治療する方法を提供し;ここで、試験およびモニタリングにより、治療の安全性が向上する。本方法の態様において、疾患は多発性硬化症である。態様において、多発性硬化症は、再発寛解型多発性硬化症、二次進行型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、および慢性進行型多発性硬化症から選択される。本方法の態様において、疾患は炎症性腸疾患または関節リウマチである。態様において、炎症性腸疾患はクローン病である。態様において、この方法には、サンプルの血清または血漿をJCVに対するIgM抗体について試験し、そして血清または血漿がJCVに対するIgG抗体およびIgM抗体の両方共について陰性である場合に治療を開始すること、がさらに含まれる。本方法の態様において、モニタリングにより、患者の尿、血液および/または脳脊髄液中のJCVを検出する。そのような方法の態様において、モニタリングは、患者の血液サンプルを連続的に取りだし、サンプル中のJCVに対するIgG抗体量を測定し、そしてサンプル中の抗体量を比較すること、を含む。態様において、モニタリングは、サンプル中のJCVに対するIgM抗体量を測定し、そしてサンプル中のIgM抗体量およびIgG抗体量を比較すること、をさらに含む。態様において、連続的な尿および/または血液サンプルの比較によりセロコンバージョンおよび/またはJCVの増加性の力価を検出する場合、患者の脳脊髄液を取り出し;そして、JCVの存在について脳脊髄液を試験すること;により、モニタリングでは、セロコンバージョンおよび/または患者の尿および/または血液中のJCVの増加性の力価をさらに検出する。本方法の態様において、モニタリングは、進行性多病巣性白質脳障害の臨床的症候および/または放射線学的症候について試験することを含む。態様において、臨床的症候についての試験は、新規のまたは進行性の神経学的症候について試験することを含む。態様において、神経学的症候が、中枢盲、精神錯乱、人格変化、および運動障害の1またはそれ以上のものを含む。態様において、放射線学的症候についての試験は、Gd-活性化磁気共鳴画像スキャンを行うことを含む。
【0021】
[021] 態様において、この方法にはさらに、進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合、静脈内免疫グロブリン治療、プラスマフェレーシス、および抗ウィルス治療から選択される、少なくとも1つの治療を行うことがさらに含まれる。態様において、抗ウィルス治療は、シトシンアラビノシド(シタラビン)、シドフォビル、およびセロトニンアンタゴニストから選択される、少なくとも1つの治療的有効用量の抗ウィルス剤を投与することを含む。態様において、セロトニンアンタゴニストは5HT2aアンタゴニストである。
【0022】
[022] 本方法の態様において、患者は、ナタリズマブと免疫抑制剤または抗腫瘍剤とにより同時に治療されない。態様において、免疫抑制剤または抗腫瘍剤は、クロラムブシル、メルファラン、6-メルカプトプリン、チオテパ、イフォドファミド(ifodfamide)、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロマイド、ヘキサメチルメラミン、ドキソルビシン、ダウナルビシン、イダルビシン、エピルビシン、イリノテカン、メトトレキセート、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、シタラビン、ブスルファン、アモニフィド(amonifide)、5-フルオロウラシル、トポテカン、マスタージェン、ブレオマイシン、ロムスチン、セムスチン、マイトマイシンC、ムタマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メトトレキセート、トリメトレキサート、ラルチトレキシド(raltitrexid)、フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、フトラフール、5-エチニルウラシル、6-チオグアニン、クラドリビン、ペントスタチン、テニポシド、ミトキサントロン、ロソキサントロン、アクチノマイシンD、ビンデシン、ドセタキセル、アミフォスチン、インターフェロンα、タモキシフェン(tamoxefen)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ラロキシフェン、レトロゾール、アナストラゾール(anastrzole)、フルタミド、ビカルタミド、レチノイン酸類、三酸化ヒ素、リツキシマブ、CAMPATH-1、マイロターグ、ミコフェノール酸、タクロリムス、グルココルチコイド類、スルファサラジン、ガラティラメル、フマレート、ラキニモド、FTY-720、インターフェロンタウ、ダクリズマブ(daclizumab)、インフリキシマブ、IL10、抗-IL2受容体抗体、抗-IL-12抗体、抗-IL-6受容体抗体、CDP-571、アダリムマブ、エンタネラセプト(entaneracept)、レフルノミド、抗-インターフェロンガンマ抗体、アダタセプト(abatacept)、フルダラビン、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリン、静注用免疫グロブリン、5-ASA(メサラミン)、およびβ-インターフェロン、の1またはそれ以上のものから選択される。
【0023】
[023] 別の側面において、本発明は、患者から血液サンプルを取り出し;サンプルの血清または血漿をJCVに対するIgG抗体の存在について試験し;サンプルがJCVに対するIgG抗体について陽性である場合に、ナタリズマブを用いて患者の治療を開始し;進行性多病巣性白質脳障害の指標について、患者をモニタリングし;そして、進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合に、ナタリズマブの投与を終了すること;により、ナタリズマブを使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者を治療する方法を提供し;ここで、試験およびモニタリングにより、治療の安全性が向上する。本方法の態様において、疾患は多発性硬化症である。態様において、多発性硬化症は、再発寛解型多発性硬化症、二次進行型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、および慢性進行型多発性硬化症から選択される。本方法の態様において、疾患は、炎症性腸疾患または関節リウマチである。態様において、炎症性腸疾患はクローン病である。本方法の態様において、モニタリングにより、患者の尿、血液、および/または脳脊髄液中のJCVを検出する。態様において、モニタリングは、連続的に患者の血液サンプルを取り出し、サンプル中のJCVに対するIgG抗体量を測定し、そしてサンプル中の抗体量を比較することを含む。態様において、モニタリングにより、患者の尿および/または血液中のJCVの増加性の力価を検出し、そしてそのモニタリングには、連続的な尿サンプルおよび/または血液サンプルの比較から、JCVの増加性の力価が検出される場合に、患者の脳脊髄液サンプルを取りだし;そして、脳脊髄液をJCVの存在について試験すること;がさらに含まれる。本方法の態様において、モニタリングは、進行性多病巣性白質脳障害の臨床的症候および/または放射線学的症候について試験することを含む。態様において、臨床的症候についての試験は、新規のまたは進行性の神経学的症候について試験することを含む。態様において、神経学的症候は、中枢盲、精神錯乱、人格変化、および運動障害の1またはそれ以上のものを含む。態様において、放射線学的症候についての試験は、Gd-活性化磁気共鳴画像スキャンを行うことを含む。
【0024】
[024] 態様において、この方法には、進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合、静脈内免疫グロブリン治療、プラスマフェレーシス、および抗ウィルス治療から選択される、少なくとも1つの治療を行うこと、がさらに含まれる。態様において、抗ウィルス治療は、シトシンアラビノシド(シタラビン)、シドフォビル、およびセロトニンアンタゴニストから選択される、少なくとも1つの治療的有効用量の抗ウィルス剤を投与することを含む。態様において、セロトニンアンタゴニストは5HT2aアンタゴニストである。
【0025】
[025] 本方法の態様において、患者はナタリズマブと免疫抑制剤または抗腫瘍剤とにより同時に治療されない。態様において、免疫抑制剤または抗腫瘍剤は、クロラムブシル、メルファラン、6-メルカプトプリン、チオテパ、イフォドファミド(ifodfamide)、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロマイド、ヘキサメチルメラミン、ドキソルビシン、ダウナルビシン、イダルビシン、エピルビシン、イリノテカン、メトトレキセート、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、シタラビン、ブスルファン、アモニフィド(amonifide)、5-フルオロウラシル、トポテカン、マスタージェン、ブレオマイシン、ロムスチン、セムスチン、マイトマイシンC、ムタマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メトトレキセート、トリメトレキサート、ラルチトレキシド(raltitrexid)、フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、フトラフール、5-エチニルウラシル、6-チオグアニン、クラドリビン、ペントスタチン、テニポシド、ミトキサントロン、ロソキサントロン、アクチノマイシンD、ビンデシン、ドセタキセル、アミフォスチン、インターフェロンα、タモキシフェン(tamoxefen)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ラロキシフェン、レトロゾール、アナストラゾール(anastrzole)、フルタミド、ビカルタミド、レチノイン酸類、三酸化ヒ素、リツキシマブ、CAMPATH-1、マイロターグ、ミコフェノール酸、タクロリムス、グルココルチコイド類、スルファサラジン、ガラティラメル、フマレート、ラキニモド、FTY-720、インターフェロンタウ、ダクリズマブ(daclizumab)、インフリキシマブ、IL10、抗-IL2受容体抗体、抗-IL-12抗体、抗-IL-6受容体抗体、CDP-571、アダリムマブ、エンタネラセプト(entaneracept)、レフルノミド、抗-インターフェロンガンマ抗体、アダタセプト(abatacept)、フルダラビン、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリン、静注用免疫グロブリン、5-ASA(メサラミン)、およびβ-インターフェロン、の1またはそれ以上のものから選択される。
【0026】
[026] 別の側面において、本発明は、患者から血液サンプルを取り出し;JCVに対するIgG抗体の存在についてサンプルを試験し;ナタリズマブを用いた患者の治療を開始し;進行性多病巣性白質脳障害の精神的症候および身体的症候について処方医師に情報を提供し;進行性多病巣性白質脳障害の精神的症候および身体的症候について患者に情報を提供し、そして患者に対して、少なくとも1つの症候が存在する場合に医師に対して報告するよう指示をし;進行性多病巣性白質脳障害の指標について患者をモニタリングし;そして、進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合に、ナタリズマブの投与を終了すること;により、ナタリズマブを使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者を治療する方法を提供し;ここで、試験、情報、およびモニタリングにより、治療の安全性が向上する。本方法の態様において、疾患は多発性硬化症である。態様において、多発性硬化症は、再発寛解型多発性硬化症、二次進行型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、および慢性進行型多発性硬化症から選択される。本方法の態様において、疾患は、炎症性腸疾患または関節リウマチである。態様において、炎症性腸疾患はクローン病である。本方法の態様において、モニタリングにより、患者の尿、血液、および/または脳脊髄液中のJCVを検出する。態様において、モニタリングが、連続的に患者の血液サンプルを取り出し、サンプル中のJCVに対するIgG抗体量を測定し、そしてサンプル中の抗体量を比較することを含む。態様において、モニタリングが、サンプル中のJCVに対するIgM抗体量を測定し、そしてサンプル中のIgM抗体量とIgG抗体量とを比較することをさらに含む。態様において、モニタリングにより、セロコンバージョンおよび/または患者の尿および/または血液中のJCVの増加性の力価を検出し、そしてモニタリングには、連続的な尿および/または血液サンプルの比較からセロコンバージョンおよび/またはJCVの増加性の力価が検出される場合に、患者の脳脊髄液サンプルを取りだし;そしてJCVの存在について脳脊髄液を試験すること、がさらに含まれる。
【0027】
[027] 本方法の態様において、モニタリングは、進行性多病巣性白質脳障害の臨床的症候および/または放射線学的症候について試験することを含む。態様において、臨床的症候についての試験は、新規のまたは進行性の神経学的症候について試験することを含む。態様において、神経学的症候は、中枢盲、精神錯乱、人格変化、および運動障害の1またはそれ以上のものを含む。態様において、放射線学的症候についての試験は、Gd-活性化磁気共鳴画像スキャンを行うことを含む。
【0028】
[028] 態様において、この方法には、進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合、静脈内免疫グロブリン治療、プラスマフェレーシス、および抗ウィルス治療から選択される少なくとも1つの治療を行うことがさらに含まれる。態様において、抗ウィルス治療は、シトシンアラビノシド(シタラビン)、シドフォビル、およびセロトニンアンタゴニスト、から選択される少なくとも1つの治療的有効用量の抗ウィルス剤を投与することを含む。態様において、セロトニンアンタゴニストは5HT2aアンタゴニストである。
【0029】
[029] 本方法の態様において、患者はナタリズマブと免疫抑制剤または抗腫瘍剤とにより同時に治療されない。態様において、免疫抑制剤または抗腫瘍剤は、クロラムブシル、メルファラン、6-メルカプトプリン、チオテパ、イフォドファミド(ifodfamide)、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロマイド、ヘキサメチルメラミン、ドキソルビシン、ダウナルビシン、イダルビシン、エピルビシン、イリノテカン、メトトレキセート、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、シタラビン、ブスルファン、アモニフィド(amonifide)、5-フルオロウラシル、トポテカン、マスタージェン、ブレオマイシン、ロムスチン、セムスチン、マイトマイシンC、ムタマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メトトレキセート、トリメトレキサート、ラルチトレキシド(raltitrexid)、フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、フトラフール、5-エチニルウラシル、6-チオグアニン、クラドリビン、ペントスタチン、テニポシド、ミトキサントロン、ロソキサントロン、アクチノマイシンD、ビンデシン、ドセタキセル、アミフォスチン、インターフェロンα、タモキシフェン(tamoxefen)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ラロキシフェン、レトロゾール、アナストラゾール(anastrzole)、フルタミド、ビカルタミド、レチノイン酸類、三酸化ヒ素、リツキシマブ、CAMPATH-1、マイロターグ、ミコフェノール酸、タクロリムス、グルココルチコイド類、スルファサラジン、ガラティラメル、フマレート、ラキニモド、FTY-720、インターフェロンタウ、ダクリズマブ(daclizumab)、インフリキシマブ、IL10、抗-IL2受容体抗体、抗-IL-12抗体、抗-IL-6受容体抗体、CDP-571、アダリムマブ、エンタネラセプト(entaneracept)、レフルノミド、抗-インターフェロンガンマ抗体、アダタセプト(abatacept)、フルダラビン、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリン、静注用免疫グロブリン、5-ASA(メサラミン)、およびβ-インターフェロン、の1またはそれ以上のものから選択される。
【0030】
発明の詳細な説明
態様の簡単な説明
定義
[030] 本明細書中で使用される用語は、以下に記載するようにそれらの通常の意味を有し、そして本明細書の文脈においてさらに理解することができる。
【0031】
[031] 本明細書中で互換的に使用される“患者”または“被検体”は、別に示されない限り、ヒトである。
【0032】
[032] “治療”は、疾患についての治療法のどのような投与または適用をも意味し、そして“治療”には、疾患を阻害し、その発症を捕捉し、そして例えば、退縮を引き起こすことにより、または喪失した、失われた、または欠損した機能の回復または修復することによりまたは効率的ではないプロセスを刺激することにより、疾患を軽減する、ことが含まれる。
【0033】
[033] “ナタリズマブ"または“ナタリズマブ(登録商標)”は、U.S.特許Nos. 5,840,299および6,033,665に記載される、VLA-4に対するヒト化抗体であり、これらの文献は参照により本明細書中に援用される。同様に、本明細書中においては、U.S.特許Nos. 6,602,503および6,551,593に記載され、ReltonらによりU.S.出願No. 20020197233として公開される免疫グロブリン類を含む(しかし、これらには限定されない)、VLA-4に対して特異的な他の抗体も企図される。これらの文献中で開示された方法により、哺乳動物細胞発現システムにより、そしてトランスジェニック動物発現システム、例えば、トランスジェニックヤギ、により、これらの抗体を調製することができる。
【0034】
[034] 互換的に使用される“医薬的有効量”または“治療的有効量”は、治癒するためまたは少なくとも部分的には疾患の症候および/または疾患の合併症の症候を捕捉するために十分な量である。
【0035】
[035] “セロトニンアンタゴニスト”は、セロトニンの1またはそれ以上の効果を減少させるいずれかの物質である。
【0036】
[036] “セロコンバージョン”は、陰性から陽性への血清学的試験の変化であり、このことは抗体の発生を示唆している。
【0037】
[037] “力価”は、溶液中の抗体の濃度である。
【0038】
ナタリズマブ
[038] ナタリズマブは、α-4インテグリン類、α4β1およびα4β7に対するヒト化IgG4κモノクローナル抗体である。Yednockおよびその他による研究は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)や、MSの動物モデルにおいて、α4-インテグリン阻害の臨床的有効性を示した(Yednock et al., Nature 1992;356:63-66 (1992);Baron et al., J. Exp. Med. 177:57-68 (1993);Kent et al., J. Neuroimmunol 58: 1-10 (1995);Brocke et al., Proc. Natl Acad. ScL 96:6896- 6901 (1999))。これらのデータは、結合された抗体によるα4-インテグリン阻害が、脳内への白血球遊走を阻害することができ、そしてしたがって、α4-インテグリンがMS治療法のための標的であるという仮説をサポートすることを示した。さらに、これらの観察は、脳内での白血球の蓄積を防止することにより、MS損傷の特徴である、ミエリン、神経繊維をカバーする絶縁性髄鞘(insulating sheath)、そしてニューロンの局所的な破壊を阻害するであろうという仮説をサポートする。ナタリズマブは、この標的に対する初めての抗体であり、そして臨床データからは、この治療戦略の関連性が示される。
【0039】
[039] ナタリズマブは、選択的接着分子(Selective Adhesion Molecule;SAM)阻害剤として知られる物質の新しい分類の構成分子である。α4β1(VLA-4とも呼ばれる)やα4β7インテグリンに対して結合するナタリズマブは、内皮細胞上の同族インテグリン受容体であるVCAM-1およびMAdCAM-1とのそれらの分子相互作用をそれぞれ阻害する。これらの分子相互作用を阻害することにより、ナタリズマブは、白血球が炎症部位へと導入されることそして脱出することを防止する。ナタリズマブのさらなる作用機序は、疾患組織中で現在進行中の炎症性反応を、細胞外マトリクス中での他のリガンド(オステオポンチンおよびフィブロネクチン)、およびミクログリア細胞等の実質細胞上での他のリガンド(VCAM-1)との、α4-発現性白血球の相互作用を阻害することにより、抑制することであってもよい。このように、ナタリズマブは、疾患部位での現在進行中の炎症性活性を抑制し、そして免疫細胞が炎症組織中にさらに導入されることを阻害することができる。このように、MS患者をナタリズマブを用いて治療することは、単核白血球がCNS中に進入することを防止し、そしてミエリン脱落や軸索損傷を引き起こす炎症性プロセスを減弱化することができ、そして究極的には、臨床的な再発の数や、運動機能、視覚機能、および認知機能を含む障害の進行を減少させることにより、臨床的利益をもたらすことができる。
【0040】
ナタリズマブの安全性
[040] ナタリズマブの安全性は、MS、クローン病、および関節リウマチについての臨床試験において3,919例の被検体をナタリズマブを用いて治療した結果に基づいて本明細書中で示されており、結果として5,505例の患者・年のナタリズマブ曝露を受けた。ナタリズマブを用いた治療は一般的に十分に良好な耐容性を示す。18例の治療-突発的な死がナタリズマブプログラム全体において生じた。試験において生じた有害事象は、一般的なものおよび重度なものの両方とも、ナタリズマブ-治療患者および対照において同様であった。ナタリズマブの中止を引き起こした有害事象は、ナタリズマブ-治療MS患者の5.8%において、およびプラセボ-治療MS患者の4.8%において生じ、蕁麻疹が、ナタリズマブ-治療患者での中止の最も一般的な理由であった(1.2%)。
【0041】
[041] 自己免疫疾患を治療するために使用されたその他の高度に活性な薬物と同様に、ナタリズマブは、リスクがないものである。残念なことに、ナタリズマブ等の免疫調節性薬物の臨床的有効性により、メカニズムに基づく顕著な副作用のリスクが生じる。重度の慢性疾患を治療するために免疫機能を修飾する薬物治療のリスクは、過去数年かけて十分に理解されてきた。TNFαアンタゴニストなどの薬剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、およびエタネルセプト)は、強力な免疫機能修飾物質であり、そして関節リウマチ、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、および強直性脊椎炎などの多数の重度の自己免疫疾患のために承認されている。非常に有効であるが、これらの薬物は、重度の有害事象、特に有意な罹患率および致死率と関連する感染、と関連する。
【0042】
[042] 本発明は、詳細な安全性解析を介して、PMLを、ナタリズマブ治療の稀な、しかし顕著なリスクとして、同定することをもたらす。さらに、重度の非-PML日和見感染が、同時的な免疫抑制的用途またはその他の顕著な同時罹患率と組み合わせて、ナタリズマブ-治療患者において、主としてクローン病患者において、観察された。さらに、利益-リスクプロファイルが十分に特定されていない患者個体群を、我々は同定した。これらの感染の発生により、適切な使用条件やPMLリスクおよびその他の重度の日和見感染リスクのアセスメントや最小化に焦点を当てた、市場流通後設定における、包括的なリスク管理プログラムの必要性の重要性が指摘される。
【0043】

[043] 臨床試験中に生じた18例の死亡例のうち、5例は、プラセボ-対照MS試験において生じた(ナタリズマブを投与された2例の患者およびプラセボを投与された3例を含む)。ナタリズマブを投与された患者は、アルコール中毒および転移性悪性メラノーマで亡くなった。プラセボを投与された患者は、心拍停止、呼吸停止、および発作を伴う肺癌腫症で亡くなった。4例の死亡例は、非盲検MS試験中に生じ、それらは呼吸困難、PML、自殺、およびMSによる発作によるものであった。
【0044】
[044] ナタリズマブ-治療クローン病患者の6例の死亡例が、試験中に観察された。ナタリズマブへの曝露は、これらの試験中において、プラセボに対する曝露よりもおよそ3倍高いものであった。死亡の原因は、急性心筋梗塞、急性腎不全、二酸化炭素窒息、PML、カリニ肺炎、および気管支肺アスペルギルス症であった。
【0045】
[045] 3例の死亡例が関節リウマチ試験中に生じ、このうち、2例はナタリズマブ-治療患者におけるものであり、そして1例はプラセボで治療された患者におけるものである。ナタリズマブ-治療患者は、呼吸不全による喀血および末期リウマチ様肺疾患で亡くなった。プラセボ-治療患者は、循環不全および呼吸不全で亡くなった。
【0046】
[046] MSの研究において、PMLとは別に、他の安全性シグナルは何も、死亡の研究からは明らかではなかった。クローン病の研究において、1例の患者が、PMLにより亡くなった。クローン病における2例のさらなる死亡例は、日和見感染、すなわち気管支肺アスペルギルス症およびカリニ肺炎、と関連していた。これらの患者は、顕著な同時罹患率を有し、そのことがこらの感染の発症に寄与していた可能性がある。
【0047】
有害事象
[047] 少なくとも1つの重度の有害事象が、1,617例のナタリズマブ-治療MS患者のうち251例(15.5%)により、そしてプラセボ-対照試験において1,135例のプラセボ-治療患者のうち214例(18.9%)により、引き起こされた。臓器系により分類された最も一般的な重度の有害事象は、神経系の障害であった(5.9%ナタリズマブ、10.2%プラセボ)。MSの再発は、この発生に顕著に寄与した(4.7%ナタリズマブ、9.0%プラセボ)。二番目に最も一般的な重度の有害事象は、感染および外寄生であり(2.4%ナタリズマブ、2.2%プラセボ)、虫垂炎および尿路感染が最も一般的であった(両群において<1%)。
【0048】
[048] 治療用タンパク質を用いた治療の結果として予測される事象である過敏性反応の発生は、およそ4%であり、重度の全身性反応が1%未満の症例において発生した。反応は治療経過の初期に発生する傾向があったが、しかし輸液の経過中全体にわたって観察された。反応の特異的メカニズムは決定されなかったが、臨床的には、反応が典型的なIgE-媒介性またはIgG-媒介性即時型過敏性反応であるようであった。すべての患者は、続発症なしに回復した。
【0049】
[049] ナタリズマブ治療の間の悪影響の発生は、ほとんど見あたらなかった。悪性の症例は、ナタリズマブ群と対照群との間で平衡化された。ナタリズマブ治療の間に観察された悪性の比率は、存在する癌登録、例えばNational Cancer InstituteのSurveillance Epidemiology and End Results、との比較あたり、予測された割合の範囲内であった。
【0050】
PML症例の評価
[050] 3例の確認されたPMLの症例が同定され、そのうち2例が致死であった。2例は、MS患者中で生じ、そして1例はクローン病を有する患者において生じた。MS患者は両方とも、AVONEX(登録商標)に加えて、2年以上にわたってナタリズマブの投与を受けていた。クローン病患者は、18ヶ月の期間にわたって8回のナタリズマブ投与を受け、そして持続性のリンパ球減少症により示されたように、慢性アザチオプリン使用のために免疫不全状態であった。3例のPML患者のすべてが、僅かな臨床的変化を示し、それについて疾患経過の初期に患者またはその家族が気付いた。
【0051】
[051] PMLの死亡事例に罹った最初の患者は、MSを有する46歳女性であり、彼女の神経科医に右側の知覚障害と感覚異常および右上部四肢不自由を見せた。MRI脳スキャニングにより、放線冠中で双方向性の4箇所の非-造影性T2-高信号病変を示した。6週間後、彼女は彼女の右目視野の新たなぼやけを示した。視力は、左目では20/15であり、そして右目では20/100であった。髄液解析から、1種類の白血球、正常タンパク質、およびグルコースが得られ、そしてオリゴクローナルなバンドは存在しなかった。追跡MRI脳スキャンは、右頭頂部の2箇所の新たな皮質下病変を示し、それはFLAIR画像化では高信号であり、そしてTlでは低信号であった。
【0052】
[052] AVONEX(登録商標)治療が開始されたが、しかし彼女は続けて3回の再発を発症し、その内の最も最近のものは腹部周辺の帯状痛(band-like pain)、下肢衰弱、およびメチルプレドニゾロンを用いた治療が必要な痙縮が関連していた。以下においてさらに詳細に説明する様に、プラセボ-対照MS研究に入る前の彼女の拡張型障害状況スケール(Expanded Disability Status Scale;EDSS)スコアは、2.5であった。彼女は、非盲検拡張試験にはいる前に30回のナタリズマブ注射を受け、そしてさらに7回の注射を受けた。彼女は、悪化はしておらず、またはプラセボ-対照研究における間に再発が疑われた。彼女は、プラセボ-対照研究の一年目の間に5つの新たなまたは拡大性のT2-高信号病変を発症し、そして2年目の間に1つを発症した。彼女は、抗ナタリズマブ抗体については陰性であり、そしてナタリズマブの彼女の血清濃度は、彼女が参加している間ずっと研究個体群の平均と同様であった。
【0053】
[053] 2004年11月には、彼女は運動機能障害、そして認知障害および言語障害を経験し始め、それが翌月までには右側片側不全麻痺へと進行した。2004年12月に行ったMRI脳スキャンは、Gd-造影なしで半卵円中心(centrum semiovale)および放線冠へと進展した左前部T2-高信号およびT1-低信号を示した。彼女は、次の数ヶ月にわたり2回の高用量ステロイドを投与されたが、衰退し続けた。彼女は、2005年1月18日にナタリズマブの最終投与を受けた。彼女は、臨床的状態が悪化してきたため、2005年2月12日に病院に再入院した。2005年2月の反復MRI脳スキャンは、以前に見られた病変の拡大が示された。次の週にかけてさらに十分な検査が行われ、CSF中にJCウィルスDNAが存在することが示され、結果としてPMLと診断された。彼女は、2005年2月24日に亡くなった。死後検査により、日和見感染の証拠のない正常な器官が示された。脳検査により、主として左脳半球において広範囲の重度の空洞化が示され、同時に、拡大した過染色性の核を持つ反応性アストロサイトを有する、PMLの典型である両脳半球の白質全体にる、複数の非空洞化の卵形領域が示された(Kleinschmidt-DeMasters and Tyler, N. Engl J. Med. 353:369-374 (2005))。
【0054】
[054] 二番目の患者は、46歳の男性であり、再発性/緩解性MSの最初の症候を1983年に経験した。彼の過去の履歴は、耳介帯状疱疹(auricular zoster)、Ramsay-Hunt症候群、およびメラノーマについて、顕著である。彼の家族歴は、MSを有する妹について注目に値する。彼は、1998年以来AVONEX(登録商標)を用いて治療を続けており、そしてプラセボ-対照MS研究に登録される前の年には3回の再発を経験し、その間に彼は、再発または進行の証拠はなにも経験しなかった。彼は、抗-ナタリズマブ抗体について陰性であり、そして彼のナタリズマブ血清濃度は、彼が参加している間ずっと研究個体群の平均と同様であった。
【0055】
[055] 2004年10月には、彼のMRIスキャンは、右半球に小さな脳室周囲Gd-造影性病変を、そして小脳右前頭部、皮質下、非-造影、T2-高信号病変を示した。2004年11月には、彼は、行動変化を示し、その後片側不全麻痺および認識機能障害を示した。彼の最後のナタリズマブ投与は、2004年12月であった。2005年2月には、高用量静脈内メチルプレドニゾロンによる治療にもかかわらず、彼は悪化し続けた。2005年2月の脳MRIスキャンにより、以前に同定された病変が拡大されたことが示された。彼は、CSF解析および脳バイオプシーを含む詳細な精密検査を受け、その結果PMLと診断された。シドフォビル(Cidofovir)治療が開始されたが、臨床的効果は存在しなかった。JCウィルスの負荷は、その後数ヶ月間かけて、彼の血漿およびCSF中で減少した。これは、免疫再構築炎症性症候群と一致した、彼の臨床経過のさらなる悪化や、MRIでのGd-造影性病変の発生に対応していた。彼は、シドフォビルを用いた治療を受け続け、そしてシタラビンが追加された。ナタリズマブの中止後およそ3ヶ月後に、彼は改善し始めた。彼は会話することができ、そして彼の医学的経過や治療について高いレベルの会話をすることができるが、しかし左片側不全麻痺および運動失調を伴う、顕著な後遺認識機能障害を有している(Langer-Gould et al., N. Eng. J. Med. 353:375-381 (2005))。
【0056】
[056] 最後の患者は、28年のクローン病歴を有する60歳の男性であった。彼の病気の経過にわたり、彼は、アザチオプリン、経口ブデソニド、コルチコステロイド、および4回のインフリキシマブ投与により治療を受けた。彼は、1996年から、造血機能低下、主としてリンパ球減少症および貧血の既存の症状を示し、そして1999年から始めたアザチオプリン治療を受けた。彼は、活性型クローン病を有する患者におけるナタリズマブのフェーズ3試験に、2002年3月に登録され、そしてアザチオプリンと同時に3回の投与を受け、その後フェーズ3管理試験におけるプラセボに無作為化された。彼は、2002年11月までアザチオプリンおよびプラセボを継続したが、2002年11月に、難治性汎血球減少症のためにアザチオプリンを中止した。2003年2月には、彼はナタリズマブを用いた非盲検治療を開始した。彼は、抗-ナタリズマブ抗体について陰性であり、そして彼のナタリズマブ血清濃度は、彼が参加しているあいだの研究個体群の平均と同様であった。
【0057】
[057] 2003年7月、彼の5回目のナタリズマブ投与の1ヶ月後には、彼は、1週間の認識衰退歴を提示した。脳MRIスキャンは、右前頭葉において大型のT2-高信号病変を示し、そして左前頭葉および側頭葉においてガドリニウムでは造影されなかったさらなる高信号病変を示した。彼は、病変の部分切除を受けたが、その病理は、その時点で、悪性星状細胞腫、WHOグレードIIIと評価された。彼は、コルチコステロイドおよび抗けいれん剤を用いて治療されたが、放射線治療には非常に不適切であった。外科手術後6週間の追跡MRIにより、腫瘍の拡大が示された。彼は、臨床的に悪化し、そして2003年12月に死亡した。この症例は、治療を行った医師により、最終病理報告に基づいて、悪性星細胞腫として報告された。2月には、上述したPML確認症例1例およびPMLと疑われる症例1例の結果として、彼の症例が再評価され、そしてPMLの専門知識を有する2例の無関係な神経病理学者の評価の後、PMLと診断された(Van Assche et al., N. Engl. J. Med. 353:362-368 (2005))。
【0058】
[058] ナタリズマブに曝露された臨床試験患者は、初期のPMLまたはその他の何らかの日和見感染の証拠について、全身的に評価された。患者は、彼らがPMLを診断として排除することができなかった何らかの活発な神経学的悪化を有するかどうか、PMLを排除できなかったMRIの異常を示すかどうか、または彼らのCSFが検出可能なJCV DNA力価を有しているかどうか、について評価された。
【0059】
[059] 基準は、神経放射線学的証拠およびPMLの診断についての研究室的アッセイについてあらかじめ確立された。“確認されたPML”の診断は、進行性の臨床的疾患の存在、PMLに典型的なMRIの兆候、CSF中のJCV DNAの検出、または病理学的確認、により規定された。PMLを排除するための十分な証拠は、進行性の神経学的疾患の不存在、PMLに典型的ではないMRI病変または長期的な安定性、またはMRIが疑わしい場合のCSF中での検出可能なJCV DNAの不存在として定義された。症例は、臨床的なPMLの疑いまたはMRIでのPMLの疑いが存在する場合、そして追跡臨床データ、MRIデータ、またはCSFデータが得られなかった場合、“不確定”とみなされた。
【0060】
[060] 全体で3,826例の適格な試験参加者(2,248例のMS患者、および1,578例のクローン病/関節リウマチ患者)が、治療を行う医師/評価を行う研究者に対して報告するように通知された。研究者たちは、病歴、神経学的検査、脳MRI、およびCSF回収を含む、評価手順を行うように要請された。血液サンプルもまた、予備的付属物としてJCV DNAのPCR解析のために回収された。MRIスキャンが、元々のフェーズ3 MS試験のための2箇所のCentral Reader Centersを含め、Central Reader Centersで、神経学的症状の専門家により評価された。MS白質異常をPMLの白質異常と区別することを補助するための分類を標準化するため、総合指針があらかじめ開発された。
【0061】
[061] 全体で3,389例(89%)のMS、クローン病、または関節リウマチを有する試験患者を、彼らを治療する医師が評価し、そのうちの3,116例が、ナタリズマブの投与を受けた。残りの273例の患者は、臨床試験の一環としてプラセボの投与を受け、そして対照群に含まれた。評価されなかった437例のうち、60例(22例のMS患者、38例のクローン病/関節リウマチ患者)を、追跡することができなかった。参加した3,389例の患者のうち、2,046例がMS試験患者であり、その97%以上を患者の最後のナタリズマブ投与から3ヶ月以内に検診した。6例のMS患者が、さらなる評価に供された。これらの臨床試験患者のうち、5例が神経学的進行のために参照され、そして1例がMRIでの知見に基づいて、PMLの可能性があるために参照された。MRIスキャンレビューは、臨床的関心事に基づいて参照した5人の患者におけるPMLの診断を効果的に排除した。繰り返しMRIおよびCSF解析により、MRIでの知見に基づいて参照された症例におけるPMLを排除した。
【0062】
[062] 安全性評価に参加した1,349例のクローン病/関節リウマチ患者のうち、21%を最後の投与から3ヶ月以内に検診し、91%を6ヶ月以内に検診した。臨床的症候または神経学的症候のための1例、MRIで変化が疑われたための32例、高い血漿JCVコピー数のための1例、そして通常の神経学的検査では患者におけるMRIを行うことができなかったための1例、を含む、35例の患者を評価した。MSと比較してクローン病の検査比率が高いことは、主として、クローン病個体群における比較のための基準MRIスキャンが不足していることにより、導かれた。ほとんどの症例は、神経学的検査、MRI、および利用可能であればCSF試験のレビューに基づいて、PMLではないとみなされた。懸念が依然として残っている10例の症例に関して、繰り返しMRI評価を行い、そして臨床的な進行が存在しないこと、最初のMRIから2ヶ月にわたりMRI的な進行が存在しないことに基づいて、すべてを“非PML”として診断し、結果的に評価のための照会およびいくつかの症例ではCSF試験の結果を導いた。
【0063】
[063] Gd-造影およびFLAIR配列を用いた脳のMRIスキャンおよび用いない脳のMRIスキャンは、時には、MS症例におけるPMLの診断を排除するために有用なツールとなった。治療前MRIスキャンおよび治療時MRIスキャンが存在すると、特異性を増強し、そしてさまざまな時点、特に患者の神経学的症状が悪化している場合において、得られる追跡のMRIスキャンの解釈を補助した。安全性評価プロセスの間、PMLを明確に除外できなかった病変の存在のために、およそ35%のMS症例において以前のスキャンとの比較が必要となった。以前のスキャンとの比較後、神経科医は、99%より多くのMS症例において、PMLを除外することができた。
【0064】
[064] ナタリズマブを用いてMSまたはクローン病を治療された396人の患者において試験をするために、CSFが利用可能であった。臨床的基準またはMRIの基準に基づいて評価された19人の患者を含む、これらの症例のいずれにおいても、JCVは検出されなかった。MSおよび他の神経学的疾患を有する患者411人に由来するサンプルが、CSF対照および血漿対照として提供され、そしてカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)および国立衛生研究所(National Institutes of Health)の協力の下で評価された(Yousry et al., N. Engl. J. Med. 2006年3月2日に発行予定)。これらのCSFサンプル中に検出可能なJCVは見いだされず、PMLの活性症例のみに対するCSFアッセイの特異性が確認された。確定されたPMLを有する3人の患者のそれぞれは、検出可能なJCVのDNAを有していた。以前の研究によって、121例の試験されたMS患者の生物学的試料のうち11%においてJCVが見いだされたことが示されていた(Ferrante et al., Multiple Sclerosis 4:49-54 (1998))。
【0065】
[065] 予備的な測定として、JCVのDNAの存在について血漿を試験した。同意した研究個体群全体(2370人の患者)は、DNA抽出およびPCR解析のハイスループットの自動化系を用いて評価された。さらに、無作為小集団のサンプルを、手動ロースループット法を用いて評価した。手動の方法はハイスループットシステムよりも一桁高い感度であることが示されたが、関与する技術を前提として、この方法を用いた試験は全個体群の約10%(209人の患者)にだけ可能であった。JCウイルス血症について試験された安全性評価に由来する2370人の患者のうち、5人の患者(0.2%)のみが検出可能なJCVのDNAを有し、そのうち3人は一度もナタリズマブを投与されてなかった。さらに、治療を受けていないMS患者および他の神経学的疾患を有する患者に由来する411サンプルのいずれにおいても、JCVのDNAは検出されなかった。これらの結果は、手動の抽出方法を使用して確認された。さらに、手動の方法によって試験された209人の患者の無作為化小集団のうち、さらに5サンプル(2.4%)が検出可能なJCVのDNAを有していた。いずれかの方法によって血漿中に検出可能なJCVのDNAを有する患者は誰も、PMLを示唆する臨床上の特徴またはMRIの所見を有していなかった。
【0066】
[066] 確定されたPMLを有する3人の患者から、診断の前後両方で得られた、血清サンプルが利用可能であった。クローン病を有する患者であったただ1人の患者は、彼の症状が発症する前の血清中に、検出可能なJCVのDNAを有していた。他の2人の患者は、臨床的には疾患に関する症状を示し、そして脳MRIスキャンにおいて変化を示していたにもかかわらず、検出可能なJCVのDNAを有していなかった。これらの患者群における観察は、血漿中のJCVのDNAの単なる存在ではPMLの予測にも診断にもならないことを示す文献のデータと一致する。
【0067】
[067] 要約すれば、ナタリズマブ治療患者におけるPMLの同定後に実施された包括的な安全性評価は、試験した3000人を超える患者において、さらなるPMLの確定症例を見いださなかった。最近のMS、クローン病、および関節リウマチの研究においてナタリズマブを投与された患者のほぼ全ては、評価の間に説明がなされ、PMLのあらゆる症例が見逃されるということは起こりそうもないこととなった。PMLの発生は、最初に記載したように、2例のMS症例と1例のクローン病症例に限定された。MSおよびクローン病の臨床試験においてナタリズマブを用いて治療された被検体におけるPMLの発生率は、したがって、約1/1000であり、0.2から2.8/1000の範囲の95%の信頼区間を有する。血漿試験は、PMLの予測にも診断にもならないことを証明しており、これは公知文献と一致した(Kitamura et al., J. Infect. Dis. 161:1128-1133 (1990);Tornatore et al., Ann. Neurol. 31:454-462 (1992);Dorries et al., Virology 198:59-70 (1994);Agostini et al., J. Clin. Microbiol. 34:159-164 (1996);Dubois et al., AIDS 10:353-358 (1996);Knowles et al., J. Med. Virol. 59:474-479 (1999);Dorries et al., J. Neurovirol. 9(Suppl l):81-87 (2003))。血漿中にJCVのDNAが検出される前に、PMLを有する3人の患者のうち2人で、臨床上の異常およびMRIの異常が存在した。さらに、ナタリズマブを投与されたことのない3人を含む、PMLの臨床的兆候または放射線学的兆候を有さなかった本研究では、数人の被検体の血漿中おいてJCVのDNAが検出された。これらの結果は、1つの静的な血漿JCVレベルを確立することが、症状を示さない患者におけるPMLの可能性を予測するためには有用でないことを示唆する。医師および患者は、PMLの兆候および症候に気を配り続けるべきであり、そして治療を中止する低い閾値を持つべきであり、そして新しい神経減少を示すナタリズマブ治療患者に対して適切な診断のための精密検査(MRI、CSF解析)を開始すべきである。
【0068】
治療中止の結果
[068] ナタリズマブ治療を中止することの結果を、プラセボ、3 mg/kgナタリズマブ、または6 mg/kgナタリズマブを毎月1回の注入を6回行うように無作為化された213人の患者が関与した、フェーズ2研究において注意深く評価した。患者を、最後の注入後7ヶ月間追跡した。その間、再発およびその他の有害事象を記録し、そしてナタリズマブの最後の投与ののち4ヶ月後および7ヶ月後にMRIスキャンを行った。プラセボ群および2群のナタリズマブ投与群の間で比較を行った。予想されたように、再発を起こした患者の比率、並びに再発の頻度は、研究薬の停止の後に、プラセボ群における比率および頻度と同程度にまで、ナタリズマブ群において上昇した。さらに、ナタリズマブ群における活発なMRIスキャンの比率が、治療の停止の後に、プラセボ群の比率と同程度にまで、徐々に上昇した。したがって、ナタリズマブ治療の停止の結果、有効性の喪失が引き起こされたが、ナタリズマブを用いた治療を受けなかった場合に予想された様な疾患活性を超える疾患活性の増加の証拠は見られず、すなわち、リバウンド効果は見られなかった。したがって、ナタリズマブ治療を中止したMS患者は、疾患活性の顕著な増加についてのリスクは増加しない。
【0069】
薬物相互作用
[069] プラセボ-対照MS研究において、AVONEX(登録商標)の投与は、集中的な薬物動態のサンプリングを実施した小集団におけるナタリズマブの血清濃度の増加に関与しているようであった。しかしながら、薬物動態解析からの平均事後パラメーター推定の比較に基づいて、定常期クリアランスおよび半減期の値は、AVONEX(登録商標)を同時に投与した患者およびナタリズマブ単剤療法の患者の間で異なったが、それはおよそ5%のみの違いであり、そして臨床上有意でないと考えられた。さらに、ナタリズマブは、120週までAVONEX(登録商標)と組み合わせて589人の患者に投与された場合、良好な耐容性を示した。同時にAVONEX(登録商標)を投与された患者において、MSデータベース中にPMLの報告が2例生じたことに注目すべきである。したがって、単なる偶然によって併用療法を受けている2人の患者において起こった可能性はあるが(p=0.23)、ナタリズマブ治療によるPMLのリスクは、インターフェロンβを用いた併用治療によって増加する可能性がある。
【0070】
[070] 酢酸ガラティラメルとの併用におけるナタリズマブの安全性は、毎日20 mgの酢酸ガラティラメルを投与し続けていた患者に対して、6ヶ月にわたってナタリズマブを投与することによって評価された。酢酸ガラティラメルとナタリズマブ薬物動態またはそのα4-インテグリン受容体飽和の間の相互作用は存在しなかった。しかしながら、この研究は、この個体群において長期間の安全性または有効性を確立するには十分なサイズまたは期間ではなかった。
【0071】
ナタリズマブの有効性
多発性硬化症
[071] MSは脳および脊髄の慢性疾患である。合衆国のような温暖な地帯では、MSの発症率は1年あたり約1/100000から5/100000であり(US National MS Society; NMSS)、合衆国の患者数は350000から400000人であると推定されている。MSは若年成人の、主として女性の疾患であり、疾患の発症が典型的には20から40歳の間に起こる。MSの最初の臨床的兆候は、通常は、視神経(視神経炎)、脊髄(横断性脊髄炎)、または脳幹/小脳に影響する、臨床上単離される症状の形態をとる(Runmarker and Anderson, Brain 116:117-134 (1993))。結果的にMSを発症し始める患者数の推定値は大きくばらつくが、視神経炎の症例では、発病時のMRIでのMS様病変の存在は、10年以内に臨床上確実なMSを発症する確率が80%より大きいことを示す(O'Riordan et al., Brain 121:495-503 (1998);Sailer et al., Neurology 52:599-606 (1999))。
【0072】
[072] ミエリン脱落および神経線維切断は、活性化Tリンパ球が血液脳関門を通過し、そして内皮細胞の活性化、さらなるリンパ球および単球の動員、および前炎症性サイトカインの放出を導く一連の事象を開始する時に、起こると考えられる。MS病変は、典型的には、免疫細胞、ミエリンが脱落した軸索、再ミエリン化を試みるオリゴデンドロサイト、増殖する星状膠細胞、およびさまざまな程度の軸索切断からなる。腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)およびインターフェロンガンマ(IFN-γ)といったサイトカインが免疫細胞と相互作用し、この過程を増幅する。炎症カスケードを開始する事象は未知である;しかしながら、血液脳関門を通過して血流から中枢神経系(CNS)の中に入る炎症性細胞の接着および経内皮遊走が、この過程の初期のそして決定的な工程と考えられる。
【0073】
[073] 新たなデータにより、MSの経過中の初期に、非可逆的軸索損傷が起こることが示される。CNS中では切断された軸索は再生されないので、MS病変形成を抑制することを目的とする初期の効果的な治療が、決定的に重要である。早ければ疾患の開始時に、軸索は活性な炎症を伴う病変において切断される(Trapp et al., N. Engl. J. Med. 338:278-285 (1998);Bjartmar and Trapp, Curr. Opin. Neurol. 14:271-278 (2001);Ferguson et al., Brain 120 (Pt 3): 393-399 (1997))。ミエリン脱落の程度は、炎症の程度、並びに炎症環境および非炎症メディエーターへのミエリンが脱落した軸索の曝露に関連する(Trapp et al., N. Engl. J. Med.;338:278-285 (1998);Kornek et al., Am. J. Pathol. 157:267-276 (2000);Bitsch et al., Brain 123:1174-1183 (2000))。ミエリンが脱落する病変中には、再ミエリン化が低下したオリゴデンドロサイトの破壊が存在する(Peterson et al., J. Neuropathy Exp. Neurol. 61:539-546 (2002);Chang et al., J. Neurovirol. 8:447-451 (2002))。オリゴデンドロサイトの損失は、再ミエリン化の能力の低下を導き、そしてニューロンおよび軸索を支持する栄養因子の損失をもたらす可能性がある(Bjartmar et al., J. Neurocytol. 28:383-395 (1999))。
【0074】
[074] MSの典型的炎症病変は、CNSのあらゆるところで起こる可能性があるが、視神経、脳幹、脊髄、大脳の脳質周囲領域などの特定の場所は特に損傷を受けやすいようである。結果としてもたらされるこれらの領域中のミエリンおよび神経線維の損失こそが、ニューロンの伝導の低下、並びに衰弱、感覚喪失、視覚喪失、複視、および平衡失調などの症候を導く。再発寛解型MSにおいて、これらミエリン脱落の発症は、典型的には数週間の神経学的機能不全をもたらし、その後部分的または完全に回復する。しかしながら、より重篤な発病は、永続的な欠失をもたらす。長期にわたる再発性の発病は、身体的障害および認識衰退の蓄積を導く。
【0075】
[075] 臨床上の測定結果、MRIスキャンに基づく測定結果、およびクオリティーオブライフに基づく測定結果を含む、多くの測定結果を使用して、MSを治療する際における製品の有効性を評価することができる。総合障害度(Expanded Disability Status Scale;EDSS)は、MSにおける障害の経過を追跡するためのツールとして幅広く使用される。EDSSは、最も一般的なMS関連の神経学的機能障害を、0から10の範囲の障害レベルに分類するものであり、一連の工程により疾患の悪化を記述する。より低い範囲のEDSSスケールでは、疾患の進行は、神経学的検査中に測定される特定の機能的システムにおける障害のレベルの上昇によって主として定義される。1.0から3.5のスコアは、機能的システムにおける軽度から中程度の障害を記述する。4.0以上の範囲のより高いスコアは、歩行に影響するようなますます重篤な障害を示し、杖(6.0のEDSS)、歩行器(6.5のEDSS)、または車椅子(7.0のEDSS)といった補助装置の必要性が含まれる。7.0より高いスコアには、寝たきりの患者が分類される。
【0076】
[076] MS機能性複合(MS Functional Composite;MSFC)(Whitaker et al., Multiple Sclerosis 1:37-47 (1995))もまた使用して、有効性を評価する。標準的な神経学的検査に由来する従来のMSの臨床転帰測定とは異なり、MSFCは、脚機能/歩行(25歩の時間測定)、腕機能(九穴釘試験(Nine-Hole Peg Test))、および認知機能(ペース聴覚連続足し算試験(Paced Auditory Serial Addition Test)(PASAT3))の定量試験に基づいており、EDSSの測定をさらに詳しく説明し、そしてこの基準によっては十分に捕らえられない臨床的特質における効果を評価する。
【0077】
[077] MRIは、MSを治療する際の有効性を評価するための別のツールであり、これを単独で使用するか、またはこれを使用して再発および障害の評価項目に対する治療的効果を評価するための臨床的データを支持することができる。MRIは疾患活性をモニタリングするための感度の高いツールであり、再発寛解型MSおよび二次進行型MSの両方における疾患活性を、臨床上明らかなものと比較して約5倍から10倍多く検出する(Isaac et al., Neurology 38:1511-1515 (1988); Willoughby et al., Ann. Neurol. 25:43-44 (1989); Khoury et al., Neurology 44:2120-2124 (1994); Thompson et al., Ann. Neurol. 9:53-62 (1991); Thompson et al., Neurology 42:60-63 (1992))。MS患者におけるT2強調のシーケンスは、急性ミエリン脱落の新しい領域、並びにミエリン脱落および神経膠症のより慢性の領域を検出する。このため、T2強調MRIは、活性な病変のカウントとしてか、あるいはそのような病変の全体積の変化として、長期にわたって病変の蓄積をモニタリングするためのよい手法である。
【0078】
[078] T1強調のシーケンス取得中におけるガドリニウム-ジエチレントリアミン五酢酸(Gd-DPTA)の注入は、急性MS病変の炎症特性に続く血液脳関門の崩壊を可視化することを可能にする。今日までの証拠は、ガドリニウム(Gd)造影が臨床上の再発と相関する疾患活性の有用なマーカーであることを示唆する(Molyneux et al., Ann. Neurol. 43:332-339 (1998);Kappos et al., Lancet 353:964-969 (1999);McFarland et al., Multiple Sclerosis 8:40-51 (2002))。
【0079】
[079] MS患者におけるT1強調のシーケンスでの新しい低信号の病変は、炎症性のGd造影性病変(浮腫、ミエリン脱落、軸索損傷、またはこれらの病変の組合せを含む)(Bruck et al., Ann. Neurol. 42:783-793 (1997))または相当な軸索損傷を伴う慢性病変としてのどちらかに対応する。MRIでの急性T1低信号の約半分は、慢性の“T1ブラックホール”に発展し、これは障害の進行に相関する(Simon et al., Neurology 55:185-192 (2000))。
【0080】
[080] 実施例1に詳述されるように、2つのフェーズ3研究を実施して、ナタリズマブを用いた2年間の治療の効果を研究した。研究のうち一方はナタリズマブを単独で使用し(単剤療法研究)、他方はAVONEX(登録商標)と併用してナタリズマブを使用した(追加的治療の研究)。これらのフェーズ3研究は両方共、2セットの主要評価項目および二次評価項目を考慮して計画された。主要評価項目および二次評価項目は、それぞれの研究における1年の追跡調査の中頃以降に、疾患の炎症性側面に対するナタリズマブの効果を測定するために選択された(単剤療法研究において観測の900患者・年;追加的治療の研究において1200患者・年)。
【0081】
[081] これらの研究の主要評価項目は、臨床上の再発の年率であった。二次評価項目の2つは、炎症性疾患活性の2つの支持MRI測定値、つまり、新しいまたは新たに拡大したT2-高信号病変の平均病変数(長期にわたる病変蓄積の測定)およびGd造影性病変の平均病変数(急性疾患活性の測定)であって、重要性で順位付けされた。再発しないままの患者の比率は、第3の二次評価項目を提供した。
【0082】
[082] 別の一連の評価項目を、2年間のナタリズマブ治療後、それぞれの研究の終わりに評価した。この最後の解析のための評価項目を選択して、MS疾患進行に関する測定値に対するナタリズマブの効果を決定した。2年の時点での主要評価項目は、障害の持続的進行の開始までの時間であり、EDSSスコアにおける変化によって測定された。1年の解析と同様に、二次評価項目は、一次の解析を支持するような追加のMRIおよび臨床上の測定値であった。重要性で順位付けされた2年の時点での二次評価項目は、MS再発率(1年間の再発観察を確認)、T2高信号病変の平均体積(全てのMS疾患の負担を測定)、T1低信号病変の平均病変数(軸索損傷の測定)、およびMSFCにおける変化によって決定される障害の進行(EDSSによって測定される障害の効果を確認しそしてそれから発展される)であった。
【0083】
[083] 2つの異なる時点での2つの主要評価項目(1年の時点での年率での再発率、2年の時点での障害進行までの時間)を前提として、複数比較のためのHochbergの手順(Hochberg, Biometrika 75:800-802 (1988))を使用して、主要評価項目を評価した。二次評価項目のそれぞれのセットは、上に掲げたように重要性の順に優先順位を決めた。それぞれのセットのために閉手順(closed testing procedure)が使用され、あるセットの中で統計的有意が評価項目について満たなかった場合、そのセットの中のより低い順位の全ての評価項目(1つまたは複数)は統計的に有意でないと見なされた。第三の評価項目の解析には、複数比較のための補正が含まれなかった。
【0084】
ナタリズマブを用いた単剤療法
[084] これらの単剤療法研究の結果により、ナタリズマブが再発寛解型MSのための単剤療法として効果的な治療であることが示された。ナタリズマブ治療は、再発率、障害の進行、および全てのMRI測定値、研究の主要評価項目および二次評価項目に対して顕著な影響をもたらした。カプラン・マイヤー曲線の解析により、再発率および障害の進行に対する影響が治療開始後の早期に明らかにみられ、そして治療期間の間ずっと維持され、患者集団は最終時点で発散し続けた。さらに、これらの結果は、小集団を超えて一致していた。さらなる正の作用が、再発の重症度の測定値とおよびクオリティーオブライフの測定値に対して見られた。
【0085】
[085] ナタリズマブのみを用いて治療されたMS患者は、2年の時点での研究の主要評価項目であるEDSSについての変化によって測定される場合、プラセボと比較して障害の進行鬼ついて42%低いリスクを有した(p<0.001)。進行が推測された患者の%は、ナタリズマブおよびプラセボでそれぞれ17%と29%であった。EDSSに加えて、ナタリズマブは、年率での再発率がプラセボと比較して68%減少することを含め、2年にわたって研究された全ての再発の評価項目に対する顕著な影響を有し、プラセボでの患者の41%が再発無しであったのに対して、67%のナタリズマブ治療患者が再発無しを持続した。MRIスキャンは、これらの臨床上観測された影響を支持した。また、ナタリズマブ治療は、SF-36の身体的および精神的要素により測定される場合に患者のクオリティーオブライフを改善した。これらの影響は全て、ベースラインデモグラフィックおよび疾患活性によって定義される小集団を超えて一致しそして有意であった。
【0086】
ナタリズマブおよびAVONEX(登録商標)の併用療法
[086] 現在認可されている療法を受けている非常に多くの患者は、臨床的におよびMRIによって測定された場合に、疾患活性を経験し続けた。これは、これらの部分的に有効な認可医薬の予想された結果であり、それらそれぞれは、再発率について30%の減少を導いた(IFNB MS Study Group, Neurology 43:655- 661 (1993);Jacobs et al., Ann. Neurol. 39:285-289 (1996);PRISMS Study Group, Lancet 352: 1498-1504 (1998);Johnson et al., Neurology 45: 1268-1276 (1995))。MSの治療のためのβ-インターフェロンのフェーズ3試験からのデータは、インターフェロン治療にも関わらず、62%から75%の患者がこの2年間の試験中に少なくとも1回の再発を経験していたことを示す(IFNB MS Study Group, Neurology 43:655-661 (1993); Jacobs et al., Ann. Neurol. 39:285-289 (1996); PRISMS Study Group, Lancet 352:1498-1504 (1998))。同様に、酢酸ガラティラメルのフェーズ3のMS試験において66%の被検体は、2年間に少なくとも1回の再発を経験し、その数はプラセボとの有意な違いがなかった(Johnson et al., Neurology 45: 1268-1276 (1995))。さまざまな治療戦略を臨床診療において現在使用して、治療中に治療効果を打破する疾患を管理しているが(例えば、切り替え療法、インターフェロンの用量および頻度の変化、併用療法)、これらの診療は、これらの取り組みの効果を評価する無作為化比較試験が存在しないので、概して経験的なものになる。
【0087】
[087] 追加的治療の研究は、AVONEX(登録商標)の単剤療法を打破する患者について、実対照薬(active control)と比較したナタリズマブの効果を評価するように計画された。β-インターフェロンの選択は、利用可能な薬の提案された作用機序に関する利用可能なデータによって支持された。上述のように、ナタリズマブは、α4-インテグリンを介して細胞接着および経内皮遊走を特異的に標的化する、明確な作用機序を有する。MSにおいてインターフェロン-βが有効性を発揮するための正確な機構はわかっていないが、インターフェロン-βはサイトカイン分泌および細胞の表現型変化に関わる多くの細胞過程を誘導する。インターフェロン-βは、インターフェロン-γ誘導性MHCクラスII分子産生を下方制御し、TH1前炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-2、およびインターフェロン-γ)の分泌を減らし、そしてTH2抗炎症性サイトカイン(IL-4およびIL-10)の分泌を減らす(Rep et al., J. Neuroimmunol. 67:111-118 (1996);Kozovska et al., Neurology 53:1692-1697 (1999);Rudick et al., Neurology 50:1266-1272 (1998))。さらに、インターフェロン-βは、ケモカインRANTESおよびMIP-1α並びにそれらの受容体CCR5の抑制を通して、白血球輸送に影響を与える可能性がある(Zang et al., J. Neuroimmunol. 112:174-180 (2001))。したがって、ナタリズマブによるα4-インテグリンの遮断は、インターフェロン-βに追加した際に、インターフェロン-βのみを加えた際の相加効果または相乗効果を有する可能性があると推定する、科学的論拠がある。
【0088】
[088] ナタリズマブはまた、AVONEX(登録商標)を用いて同時に治療を受けている患者を治療するために用いた場合もまた有効であることが証明された。ナタリズマブを投与する前、活性のある治療にも関わらず、これらの患者は疾患活性を経験していた。よって、AVONEX(登録商標)は実対照薬として機能した。この研究によって、ナタリズマブは、AVONEX(登録商標)に追加した際、EDSSの変化によって測定されるように、障害の進行のリスクを24%減少させる結果をもたらしたことが示された(p=0.024)。進行したと推定された患者の%は、AVONEX(登録商標)のみでの29%と比較して、ナタリズマブとAVONEX(登録商標)では23%であった。
【0089】
[089] ナタリズマブは、2年にわたるAVONEX(登録商標)と比較した場合、年率での再発率の55%の減少を含め、試験された全ての再発の評価項目に対して有意な効果を有し、AVONEX(登録商標)における患者の32%と比較して、54%のナタリズマブ治療患者が再発無しであった。MRIスキャンは、これらの臨床的に観測された効果を支持した。また、ナタリズマブは、AVONEX(登録商標)療法のみと比較した場合、精神的要素の傾向を伴うSF-36の身体的要素によって測定される場合に、患者のクオリティーオブライフを改善した。これらの効果は全て、ベースラインデモグラフィックおよび疾患活性によって定義される小集団を越えて一致しそして有意であった。
【0090】
進行性多病巣性白質脳障害
[090] PMLは、オリゴデンドロサイトのJCV感染によって引き起こされる、中枢神経系の感染性疾患である。JCVは、幼い頃に健康個体の大多数に感染すると考えられているヒトポリオーマウイルスである。健康個体における抗JCV抗体の血清陽性率は、試験手法に依存して20%から80%の範囲と推定されている(Knowles et al., J. Med. Virol. 71:115-123 (2003)); Knowles and Sasnauskas, J. Virol. Methods. 109:47-54 (2003))。
【0091】
[091] PMLはほとんどの場合免疫不全個体において発症し、PMLによる年齢調整死亡率は100万人あたり3.3人であり(1994年)、そのうち89%はエイズ患者であった(Holman et al., Neuroepidemiol. 17:303-309 (1998))。しかしながら、稀なPML症例が、免疫抑制療法を受けていた自己免疫障害の患者においてもまた報告されており、これらの中で3人の患者が関節リウマチであり(Sponzilli et al., Neurology 25:664-668 (1975);Rankin et al., J. Rheumatol 22:777-79 (1995);Durez et al, Arthritis Rheum. 46 (9S):536 (2002))、そのうちの1人は腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニストを用いて治療されていた(Durez et al., Arthritis Rheum. 46 (9S):536 (2002))。クローン病の患者においてもPMLの報告があったが、付随的な治療は特定されなかった(Garrels et al., Am. J. Neuroradiol. 17:597-600 (1996))。
【0092】
[092] PMLの病状は独特であり、針先ほどの病変から数センチの領域までさまざまな大きさの複数のミエリン脱落の病巣を含む。病変はどこにでも生じる可能性があるが、通常は大脳半球に生じ、頻度は低いものの小脳および脳幹に生じ、そして稀に脊髄に生じる。ミエリン脱落の領域を囲む周辺帯のオリゴデンドロサイトは極めて異常である。異常なオリゴデンドロサイトの核は、JCビリオンでパッキングされている。典型的には、PMLは徐々に発症し、精神機能障害および言語と視覚の障害を伴う。運動にも影響する可能性がある。疾患は次いで急速に進行し、患者は重篤な身体障害を患い、最終的に認知症、失明、および麻痺になり、それに昏睡および死が続く。
【0093】
[093] PML患者および健康で免疫正常の個体の血液および尿中のJCVの存在が述べられている(Kitamura et al., J. Infect. Dis. 161:1128- 1133 (1990);Tornatore et al., Ann. Neurol. 31:454-462 (1992);Dorries et al., Virology 198:59-70 (1994);Sundsfjord et al., J. Infect. Dis. 169:485-490 (1994);Agostini et al., J. Clin. Microbiol. 34: 159-164 (1996);Dubois et al., AIDS 10:353-358 (1996);Knowles et al., J. Med. Virol. 59:474-479 (1999);Dorries et al., J. Neurovirol. 9(Suppl l):81-87 (2003))。これらの知見は、これらの患者におけるPMLの予測または診断とはならない;したがって、血液または尿のウイルス量とPMLとの関係は不明である。
【0094】
[094] PMLの臨床所見は、概して、ウイルス感染、ミエリン脱落、およびグリア細胞溶解の結果として発症する白質病変のサイズまたは分布に依存する。しかしながら、所見の臨床的特徴は、PMLの所見とMSに関わるミエリン脱落との区別を補助する。MSと対照的に、脊髄または視神経のPML関与は稀である。そのかわり、約3分の1の患者が、視界の喪失または皮質盲を示すことになり、別の3分の1は、意識障害または行動変化を示すことになる(Dworkin et al., Curr. Clin. Top. Infect. Dis. 22:181-195 (2002))。同様にMSと異なり、片側不全麻痺が一般的に示される症状である。これらの症状は、典型的には、発症において亜急性であり、そしてゆっくりした進行経過が続く。しばしば、患者とその家族は、神経学的検査における変化が現れる前でさえ、日常生活の習慣的活動を行う能力における変化を通して、PMLの発症に最初に気付く。
【0095】
[095] MRIは、特異性には欠ける可能性があるが、臨床上の兆候または症候の設定におけるPML病変の検出のための、感度の高いツールである。典型的なMS病変、他の原因によるミエリン脱落(例えば、脳脊髄炎、HIV脳症)、グリオーシス、および浮腫は、しばしば初期PML病変と同じ外観を有する。しかしながら、表1に示されるように、他の病因との区別を助けるPML病変の特徴が存在する(Post et al., Am. J. Neuroradiol. 20:1896-1906 (1999);Yousry et al.-iV. Engl. J. Med. in press(2006);(Berger et al., Ann. Neurol. 44:341-349 (1998);Hoffmann et al., J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 74:1142-1144 (2003);Langer-Gould et al., N. Engl. J. Med. 353:375- 381 (2005)).
【0096】
【表1】

【0097】
[096] MRI解析は、ナタリズマブを受ける患者におけるMSおよびPMLの鑑別診断を提供することができる。PMLが疑われる患者は、MRIにより、ミエリン脱落を反映する多病巣性、非対称性、白質病変の存在を示す。T2-強調および流体減弱性反転回復(fluid-attenuated inversion recovery)(FLAIR)MRIは、テント上皮質下白質全体を通じた高信号病変を明らかにする(Post et al., Am. J. Neuroradiol. 20: 1896-1906 (1999))。PMLの白質病変は、典型的には、浮腫によって囲まれておらず、圧迫所見を引き起こさず、そしてガドリニウム造影剤の存在下でも造影されない(Post et al., Am. J. Neuroradiol 20: 1896-1906 (1999))。しかしながら、高信号T2-強調画像およびFLAIR画像は、ミエリン脱落に特異的ではなく、そしてグリオーシスまたは浮腫を示す可能性がある。MS、ウイルス感染後の脳炎、HIV脳炎、および梗塞症などの、他のミエリンが脱落した、脳障害または虚血過程は、同様の非特異的な画像化の特徴を示す可能性があるOther ミエリンが脱落した(Olsen et al., Radiology 169:445-448 (1988), Hurley et al., J. Neuropsychiatry Clin. NeuroscL 15:1-6 (2003))。病変の位置およびその形態学的特徴、T1強調画像におけるガドリニウム造影の非存在または非典型的存在、並びに磁化移動MRIの実行もまた、PMLのミエリン脱落を、他のミエリンが脱落するプロセス、浮腫またはグリオーシスから区別することを補助する(Ernst et al., Radiology 210:439-543 (1999);Hurley et al., J. Neuropsychiatry Clin. Neurosci. 15:1-6 (2003))。
【0098】
[097] PMLの臨床学的診断は、脳バイオプシーによってまたは死体解剖において得られる脳材料の組織学的およびウイルス学的試験によって確かめられる。バイオプシーを行う前に、血清およびCSFが両方共、抗JCV抗体について試験されるべきである。陽性の結果はPMLを確定しないが、陰性の結果によって、PMLの診断が非常に疑わしいものになる。CSF中に抗JC抗体を検出することは稀であり、そしてそのような抗体が検出された場合には、CNS中でのJCVの活性な増殖が示唆される。脳バイオプシーまたは死体解剖材料は、電子顕微鏡または免疫組織学的電子顕微鏡によって、試験することができる。試料を、免疫蛍光染色または免疫ペルオキシダーゼ染色によって、JCV抗原について直接調べることもできる。JCVのウイルス単離は困難であると報告されているが、初期のヒト胎児グリア細胞から試みらることができる。培地中のウイルスの存在は、電子顕微鏡、免疫蛍光、または血球凝集によって確かめる。
【0099】
[098] JCウイルスDNAについてのCSFのPCR解析は、PMLの診断のための非常に感度が高くそして特異的な試験である。この試験の特異性は100%に達し、感度が60〜90%の範囲である(Henson et al., Neurology 41:1967-1971 (1991);Gibson et al., J. Med. Virol 39:278-281 (1993);Weber et al., AIDS 8:49-57 (1994a);Weber et al. J. Infect Dis. 169:1138-1141 (1994b);Vago et al., J. Acquir. Imm. Defic. Syndr. Hum. Retrovirol. 12: 139-146 (1996))。PMLの臨床的疑いが高くそして陰性CSFの結果の場合、繰り返しの試験によって、しばしばJCウイルスDNAの検出が導かれる。そのようにして、JCウイルスDNAについてのCSFのPCR解析は、PMLの診断を確かめるための好ましい方法として成熟してきた。
【0100】
[099] 非処置のPML患者は、最初の3ヶ月のあいだの致死率が30から50%である(Koralnik, Curr. Opt. Neurol. 17:365-370 (2004))。HIVのための高活性抗レトロウイルス治療(HAART)導入の前は、PMLを有する患者の約10%が1年以上生存した。しかしながら、HAARTの登場以降は、PMLを有する患者の約50%が、免疫再構築炎症性症候群の結果としてCD4カウントが増加するにつれて、免疫機能が回復するために、1年以上生存する(Geschwind et al., J. Neurovirol. 7:353-357 (2001);Berger et al., Ann. Neurol. 44:341-349 (1998);Clifford et al., Neurology 52:623-625 (1999);Tantisiriwat et al., Clin. Infect. Dis. 28:1152-1154 (1999))。
【0101】
[0100] 現在、PMLための確立された薬物治療は存在しない。アシクロビル、イドクスウリジン、ビダラビン、アマンタジン、アデニンアラビノシド、シトシンアラビノシド(シタラビン)、シドフォビル、インターフェロンα、インターロイキン-2(IL-2)、ジドブジン、カンプトテシン、およびトポテカンを含む、さまざまな薬物治療が試験されてきた(Koralnik, Curr. Opt. Neurol. 17:365-370 (2004);Dworkin et al., Curr. Clin. Top. Infect. Dis. 22: 181-195 (2002);Seth et al., J. Neurovirol 9:236-246 (2003);Collazos, CNS Drugs 17:869-887 (2003);Mamidi et al., J. Neurovirol. 8:158-167 (2002);Przepiorka et al., Bone Marrow Transplant;20:983-987 (1997);Redington et al., Arch. Neurol. 59:712-718 (2002);Padgett et al., Prog. CUn. Biol. Res. 105: 107-117 (1983))。しかしながら、PMLを有する患者の生存は、免疫再構築と最も相関しているようである。PMLを有する移植患者において、初期投与量の低減および/または免疫抑制療法の中断は、PML診断後の好ましい臨床転帰に関連した(Crowder et al., Am. J. Transplant 5: 1 1 Sil l 58 (2005);Shitrit et al., Transpl. Int. 17:658-665 (2005))。
【0102】
JCウィルス(JCV)
[0101] JCVは、ヒトポリオーマウイルスのクラスの構成物であり、小型の非エンベロープ化閉環状二本鎖DNA鎖ゲノムを有している、パポバウィルス科(Papovaviridae)に属す。ポリオーマウイルスは、そのビリオンサイズがより小さいこと、そしてゲノムサイズおよびゲノム構成が異なることによって、パピローマウイルスと区別することができる。ポリオーマウイルスは、自然界において偏在性であり、そして多くの種から単離することができる。JCVは、進行性多病巣性白質脳障害(PML)を有する患者の脳組織から最初に単離された。JCVは、BKVは術後尿管狭窄を有する腎臓移植患者の尿から単離されたBKヒトポリオーマウイルス(BKV)と75%の核酸配列相同性を共有する。BKVおよびJCVは、それぞれSV40と70%の相同性を共有する。これら2種は、血清学的に交差反応性ではなく、抗体についての血清学的試験は、BKVとJCVを区別することができる(Demeter, in Mandell et al., eds., Mandell, Douglas and Bennett's Principles and Practice of Infectious Disease, 4th edition, Vol. 2. New York, NY: Churchill Livingstone;1995:1400-1406)。
【0103】
[0102] JCV感染は、通常は無症状であり、ほぼ普遍的であり、子供の頃に発生し、そして一生持続する。欧州および合衆国では、成人の60〜80%がJCVに対する抗体を有し、そして30〜39歳の年齢範囲では、若年成人の50%がJCVに感染したことがあると、推定されている。JCVおよびBKVは、無関係に広まると考えられている。JCVは、一次感染後に、腎臓および/またはCNS中での不顕性感染を確立すると考えられてきた(Demeter,. in Mandell et al.,- eds., Mandell, Douglas and Bennett's Principles and Practice of Infectious Disease, 4th edition, Vol. 2. New York, NY: Churchill Livingstone;1995: 1400-1406)。免疫抑制のあいだ、不顕性JCVが腎臓内で再活性化し、ウイルス尿症へと導かれる可能性が主張されている。ウイルス尿症はPMLについていくらかの予測的価値を有するが、PML症例の大部分ではウイルス尿症が起こらないので、尿中のJCVを測定するのみでは、JCVを診断するために十分ではない。
【0104】
[0103] JCVが血流を通して脳へ移動する際に、JCVはミエリン産生細胞を攻撃する可能性がある。結果として生じる脳感染は、運動失調、認知機能の喪失、視覚障害、平衡および協調性の変化、および感覚の喪失が含まれる可能性のある神経学的症状を生じる。死は一般に、診断後2年以内に生じる。
【0105】
[0104] JCVに効果的であることが証明された特異的抗ウイルス治療はなく、そして免疫不全患者の現在の治療は、主として対症的でありそして免疫抑制を減らすことを意図したものである。シドフォビル(Cidofovir)は、移植患者に対する治療オプションとして現在研究中であり、そして現在、シタラビンの有効性については相反するデータが存在するが、MPLの治療においてシタラビンを用いることができる(Demeter, in Mandell et al., eds., Mandell, Douglas and Bennett's Principles and Practice of Infectious Disease, 4th edition, Vol. 2. New York, NY: Churchill Livingstone;1995:1400-1406;Salmaggi, Neurol ScL 22:17-20 (2001))。
【0106】
[0105] JCVに対する細胞受容体は、セロトニン5HT2(A)受容体であると報告された(Elphick et al., Science 306: 1380-1383 (2004))。In vitroにおいて、抗精神病薬物治療クロルプロマジンおよびクロザピンが、セロトニン5HT2(A)受容体をブロックし、そしてJCVの細胞侵入をブロックしたことが示された。しかしながら、残念ながら、クロルプロマジンおよびクロザピンは、臨床上使用するには問題のある重大な副作用および毒性、例えば、錐体外路系症状および骨髄悪液質の可能性など、を有する。本発明は、ジプラシドン、リスペリドン、およびオランザピンなどのより新しい非定型抗精神病薬〜より古い抗精神病薬に比べてよりよい副作用プロフィールおよび毒性プロフィールを有する薬剤〜が、クロプロマジンおよびクロザピンと比べてin vitroで顕著により強力な5HT2(A)受容体アンタゴニストであることを提示する。
【0107】
[0106] さまざまな血清学的試験、例えば、補体結合(CFT)、赤血球凝集阻害(HAI)、酵素結合免疫アッセイ(RIA)、放射免疫アッセイ(RIA)、粒子凝集、免疫蛍光(IF)、一元放射溶血、およびウェスタンブロット、が、JCVを検出するために利用可能である。感度および特異性は、異なる技術の間で大きく異なる。ほとんどの技術は、全てのクラスの抗体を検出するだろうが、一方で、例えばRIA、EIA、およびIFなどのいくつかのアッセイは、例えばIgM、IgG、またはIgAなどの1つの特定のクラスを検出するように設計することができる。
【0108】
安全性および有効性に基づく患者の選択
[0107] 適切な患者選択は、ナタリズマブの利益-リスク特性を最大化することの補助となる。ナタリズマブは、最近の臨床上の疾患活性を伴う(例えば、研究に入る前の年に一回の再発)軽度から中程度の障害(EDSS 0から5.0)の未治療患者における有効性を示している。ナタリズマブはまた、β-インターフェロンを用いた治療にも関わらず疾患活性が続いている(例えば、AVONEX(登録商標)を投与される一方で、研究に入る前の年に一回の再発)軽度から中程度の障害を有する患者に対する有効性も示している。
【0109】
[0108] 利益/リスク比は、特定の他の患者個体群において変化する。再発性疾患の兆候がない患者、すなわち、比較的“良性”で不活性な疾患または慢性進行型のMSなどの、臨床上またはMRIによって炎症活性の兆候がみられない患者は、フェーズ3試験から除外され、したがって、ナタリズマブはこれらのコホートについては完全に評価されていない。利益-リスクはまたさらに、MSを示唆する特徴を持たない単一の臨床的事象を有する患者においても変化する。
【0110】
[0109] 現在の治療に関して臨床的に安定な患者もまた、変化した利益/リスク比を有する。現在の治療に関して安全性または耐容性の問題が存在する場合、または画像化研究によって活動的な炎症性の無症状疾患が示された場合、ナタリズマブ治療は適切であろう。利益-リスク比を考慮して、患者が以前に過敏性反応を患ったことがあるかどうか、またはナタリズマブに対する持続性抗体を産生したかどうかが考慮されるべきである。過敏性反応後のナタリズマブの再投与は、フェーズ3試験において評価されなかった。ナタリズマブに対する持続性抗体は、有効性の喪失および注入に関する副作用の増加を引き起こす。免疫抑制薬物治療を使用することを含めて、何らかの原因によって免疫不全である患者は、PMLおよび他の日和見感染症に関して独立した危険因子を有し、そしてナタリズマブを受けるべきでない。
【0111】
[0110] 患者選択のための別の基準は、注入する看護師によって使用され、PMLの初期検出を促進し、そしてナタリズマブの不適切な使用を最小化する、注入前チェックリストである。チェックリストは、数日にわたって続く神経学的症候の持続的悪化、例えば新規または突然の思考、視野、平衡、または力の低下などについて、患者に質問するよう看護師に指示する。チェックリストに記載されている何らかの症状を有すると患者が報告した場合、看護師は、ナタリズマブを投与しないように、そして患者をその主治医に照会するよう、指導される。
【0112】
[0111] このチェックリストは、患者が再発性MSの治療のためにナタリズマブを受けていること、PMLと診断されたことがないこと、そして数日にわたって続く持続的に悪化する症状を現在全く経験していないこと、も確かめる。チェックリストはさらに、患者がHIVまたは血液学的悪性腫瘍を患っていると知られていないこと、そしてまた臓器移植をしていないことを確かめる。チェックリストは、患者が現在、抗腫瘍剤、免疫調節剤、または免疫抑制剤を用いた治療を受けていないこと、および患者がナタリズマブ患者情報リーフレットを読んだこと(この点については、実施例2においてさらに記載する)、を確認する。
【0113】
治療方法
[0112] ナタリズマブの医薬組成物は、静脈内に投与することができる。ナタリズマブの医薬組成物は、約1〜5 mgの抗体/kg体重の投与量で投与される。一態様において、100 mlの0.9%塩化ナトリウムを用いて希釈した標準的な投与量の300 mgのナタリズマブを、4週間に1回静脈内に注入する。投与を、2週間〜8週間の間隔で繰り返してもよい。例えば、治療計画は、およそ4週間間隔で繰り返す3 mgの抗体/kg体重を含んでもよい。間欠的な静脈投与、例えば毎月1回の静脈投与、が、毎日、1日おき、または毎週1回の自己注射は思いとどまらされる患者により、好ましいものとして受け取られる可能性がある。
【0114】
患者および介護人に情報を与えること
[0113] USにおいては、MSを有する患者は、主として神経科医である比較的小さな医師グループによる医学的治療を受ける。およそ6,000人の医師が、MSを有する患者の90%を治療する。このことは、USにおいて一次医療疾患を治療する170,000人の一般開業医がいることと対照的である。医師と営業販売員とのひたむきな力により、神経科医とMSを有する患者をケアする他の医療従事者と交流することができる。結果的に、MSに対してナタリズマブを処方するほぼすべての医師と、容易に接触することができる。
【0115】
[0114] PMLが中枢神経系の疾患であるため、標的となるナタリズマブの処方者は、PMLを診断しそして管理するための最適の(best-qualified)医師でもある。神経科医は、被検体をPMLの指標となる兆候および症候についてモニターするための専門的知識を有し、そして適切な診断テストを選択してPMLを有する患者を診断する。
【0116】
[0115] 同様に、MSを有する患者は、彼らの治療選択肢について精通している。彼らは、一般的に若くそして高いやる気を有している。最近の調査では、94%〜99%のMSを有する患者が、β-インターフェロンや酢酸ガラティラメル(Biogen Idec)を含む彼らの治療選択肢を知っていた。ナタリズマブが商業的に利用可能であった期間のあいだ、MSを有する患者の79%がナタリズマブ治療の導入を知っていた。同様に、MSを有する患者からのフィードバックは、ナタリズマブによるPMLのリスクが、MSコミュニティー中に広く流布されたことを示した。したがって、標的となる患者個体群は、ナタリズマブによるPMLのリスクについて、もっと知識を得たいと考えている。
【0117】
[0116] したがって、本発明は、処方医師および患者に、進行性多病巣性白質脳障害の精神的症候および身体的症候について通知し、そして少なくとも1つの症候が存在している場合には医師に対して報告するよう、患者に指示することを提供する。これらの情報化の努力は、認識されているリスクを積極的に管理しつつ、この非常に効果的な治療を使用することについて、情報に基づく利益-リスク決定を行うために彼らが必要な情報を、再発性MS患者および彼らの医師に提供する。本発明はまた、患者および医師に対する情報ツールを提供して、情報に基づく利益-リスク決定を促進し、ナタリズマブの適切な使用を確実にし、そして臨床的な慎重性を通じてPMLの初期検出を強化する。例えば、本発明は、医師および患者にナタリズマブ治療のリスクを知らせるためのためのプロトコル、そしてこれらのリスクを継続的に積極的に評価しそして管理するためのプロトコルを提供する。これらのプロトコルは、PMLについての現在の医学的知識および科学的知識およびナタリズマブ-治療患者の安全性評価から得られた情報に基づくものである。
【0118】
[0117] この情報は、適切な患者がナタリズマブを投与されるという状況をもたらす。したがって、本発明は、患者および医師が、ナタリズマブに関連するリスクについての重要な情報を受けとり、それにより、ナタリズマブ治療の開始に関して、情報に基づく利益-リスク決定を行うことができる、ということをもたらす。
【0119】
[0118] 本発明はまた、ナタリズマブについての処方が、PMLについてのリスク因子に関する情報を収集する、医師用の登録フォームそして患者用の登録フォームとして機能し、そしてナタリズマブ治療と関連するリスクを彼らが理解することについての、医師および患者による確認を必要とする。
【0120】
[0119] 注入部位は、その部位へのナタリズマブの輸送の前に完了されていなければならない、強制的な認証プロセスを経る。制御された集中型の分配システムは、認証された注入部位にのみナタリズマブを輸送し、情報ツールの指向性送達および新たな安全情報の適時の受け取りが可能になる。輸送分配およびすべてのバイアル数は、分配システムを通じて追跡される。制御された分配システムを通じて、PMLの治療の開始時にナタリズマブを使用するすべての医師および患者は、PMLのリスクについての情報の提供を継続しそしてPMLのリスクの評価を継続する調査プログラムに登録される。例えば、大規模な登録研究は、商業的設定におけるナタリズマブの安全性を継続的に評価する。
【0121】
[0120] 調査プログラムは、ナタリズマブ治療を受けた患者を、PMLについて患者を日常的に評価することにより、注入の時点で、医療提供者と患者との間の定期的な交流を通じて与えられる機会を使用して、モニターする。一態様において、これらの定期的な交流は、およそ1ヶ月に1回生じる。したがって、PMLの可能性を有する患者が、迅速に同定され、それによりナタリズマブをすぐに中止し、そして適切な評価を完了することができる。この情報、調査、およびモニタリングプログラムは、ナタリズマブに関連する安全性の問題に関して、適時の情報を提供する。
【0122】
[0121 本発明のさらなる対象および利点は、この後の記載において一部分が説明され、そして一部分はその記載から明らかであろうし、または発明を実施することによって認識されるかもしれない。本発明の対象および利点は、添付の請求の範囲において具体的に指摘されている要素および組合せによって、理解されそして達成されるだろう。さらに、明細書の本文中に記載される利点は、請求の範囲に含まれない場合、請求の範囲に記載される発明を本質的に制限するわけではない。
【0123】
[0122] 前述の一般的記載および以下の詳細な記載は両方とも、単なる例示および説明であり、そして請求の範囲に記載の発明を限定するものではないと理解されるべきである。さらに、本発明は、もちろん多様であってもよいので、記載される具体的な態様に限定されないと理解されなければならない。さらに、本発明の範囲はその請求の範囲によってのみ限定されるので、具体的な態様を記載するために使用される専門用語は、限定的であることを意図しない。請求の範囲には、公知となっている態様は含まれない。
【0124】
[0123] 値の範囲に関して、文脈が明らかにそうではないと示していなければ、本発明には、下限の単位の少なくとも10分の1の範囲までの上限および下限の間に介在するそれぞれの値が含まれる。さらに、本発明には、その他いずれかの記載された介在する値が含まれる。さらに、特に記載された範囲から除外されていなければ、本発明にはまた、範囲の上限または下限の一方または両方を除外した範囲が含まれる。
【0125】
[0124] 別の定義がされていなければ、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語の意味は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味である。当業者はまた、本明細書に記載のものと同様または均等ないずれの方法および物質を使用して、本発明を実施または試験することができることも理解するだろう。本明細書は、本明細書に引用される参考文献を考慮して、最も完全に理解される。
【0126】
[0125] 本明細書および添付の請求の範囲において使用されるように、“ある”および“その”(“a”、“or”および“the”)という単数形には、文脈上そうでないと明らかに解釈されなければ、複数の指示対象が含まれる。よって、例えば、“ある対象ポリペプチド”という場合には複数のそのようなポリペプチドが含まれ、そして“その薬剤”という場合には1以上の薬剤および当業者に既知の均等物が含まれる、などである。
【0127】
[0126] さらに、本明細書および請求の範囲において使用されている、成分の量、反応条件、%純度、ポリペプチドの長さおよびポリヌクレオチドの長さなどを表す全ての数字は、そうでないと示されていなければ、“約”という用語によって修飾される。したがって、本明細書および請求の範囲において説明される数値パラメーターは、本発明の所望の特性に依存して変化可能であるような近似値である。最低限でも、そして請求の範囲への均等論の適用を限定する試みとしてでなく、それぞれの数値パラメーターは、普通の数字を丸める手法を適用して報告される有効桁の数字を考慮して少なくとも解釈されるべきである。それでもなお、特定の実施例において説明される数値は、できるだけ正確に報告される。いずれの数値も、しかしながら、その実験測定の標準偏差に由来する特定の誤差を本質的に含む。
【0128】
実施例
[0127] 以下の実施例は、純粋に本発明を例示することを意図しており、そしてしたがってどのような方法によっても本発明を限定することを意図していないが、上述した本発明の側面および態様を記載しそして詳述する。実施例は、以下の実験が行われたすべての実験であるとかまたは唯一の実験であるということを示すことを意図していない。使用された数値(例えば、量、温度など)についての正確性を保証するために、努力が払われてきたが、いくつかの実験の誤差や偏差を説明しなければならない。特に示さない場合、割合は重量による割合であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、そして圧力は大気圧での圧力またはそれに近い圧力である。
【0129】
実施例1:ナタリズマブの有効性
[0128] 2年間の期間にわたるナタリズマブの有効性が、2回のフェーズ3臨床試験において示された(Polman et al, N. Engl J. Med. in press(2006);Rudick et al. N. Engl. J. Med. in press(2006))。一方の研究において、ナタリズマブを単剤療法として、治療を受けたことがないMS患者に対して投与し、そしてその有効性をプラセボと比較した。もう一方の研究において、ナタリズマブを、同時のAVONEX(登録商標)治療にもかかわらず再発を経験した患者に対して与え、そしてその有効性をAVONEX(インターフェロンβ-la)+プラセボの有効性と比較した。2年間にわたるデータは、1年での迅速承認を導いた利点を確認した。これらのデータは、ナタリズマブが、障害の持続的な進行の開始時期を遅らせる際に、年率での再発率を低下させる際に、MRI病変を弱める際に、そしてプラセボおよび活性のAVONEX(登録商標)対照群の両方と比較して、患者のクオリティーオブライフを向上させる際に、非常に有効であることをしめす。
【0130】
[0129] フェーズ3試験は両方とも、同様の計画であった。単剤療法試験では、942例の非治療再発寛解型MS患者を、120週間にわたりナタリズマブまたはプラセボを受けるように(30回の注入)、2:1の割り当てを使用して、無作為化した。追加的な研究において、毎週30μgのAVONEX(登録商標)の筋肉内注射を受けているが、しかしこの治療にもかかわらず再発した1,171例の患者を、1:1の割り当てを使用して無作為化し、ナタリズマブまたはプラセボをそれぞれの治療計画に追加し、やはり120週間にわたり与えた。
【0131】
[0130] 有効性パラメータには、EDSSスコア、MS再発、脳MRIスキャン、MSFCスコア、視覚機能テスト、そしてクオリティーオブライフが含まれる。EDSSおよびMSFCは、12週間ごとに調べられ、脳MRIスキャンおよびクオリティーオブライフのアンケートははじめの時点および毎年調べられ、そしてMS再発は継続的に調べられた。
【0132】
[0131] 治療を受けたことがない患者における単剤療法としてのナタリズマブを用いた治療は、2つの主要評価項目である、障害の持続的な進行の開始時期と年率での再発率とに対して、表2に示されるように、顕著な効果を有した。これらの顕著な効果は、AVONEX(登録商標)単独と比較して確認された。
【0133】
【表2】

【0134】
[0132] 2つのフェーズ3試験における患者個体群は、多発性硬化症の診断についての国際パネル(International Panel on the Diagnosis of Multiple Sclerosis)の分類にしたがうと、再発性MS患者であった(McDonald et al., Ann. Neurol. 50:121-127 (2001))。幅広い範囲の年齢および疾患重症度を包含し、そして承認された適応症と一致した、活動している疾患を有する現在の再発性MS個体群を示した。一次進行型MSまたは二次進行型MSを有する患者は排除した。
【0135】
[0133] 2つの試験について標的とされる患者個体群は異なった。単剤療法試験における患者は、MSに対する免疫調節性薬物を用いた治療を本質的に受けたことがなかった。具体的には、患者は、いずれかの免疫調節薬(β-インターフェロンまたは酢酸ガラティラメル)を用いて6ヶ月以上の長期にわたり治療を行っておらず、そして本試験の開始の6ヶ月以内にも治療を行っていなかった。結果は、中程度の基準的な疾患活性(一般的なMS個体群に典型的なもの)を伴う若年性のMS個体群、その多くは女性の個体群であり、その中の非常に稀な個体が、試験の開始前に別の免疫調節薬を試してみた。
【0136】
[0134] 追加的な治療試験の患者は、前年にAVONEX(登録商標)を投与されており、そしてAVONEX(登録商標)治療にもかかわらず、その間に再発したことが必要であった。これは、結果として、個体群が、単剤療法試験における個体群よりも若干年齢が高く、より長い疾患期間を有していた。しかしながら、追加的な治療試験における患者は、AVONEX(登録商標)治療にもかかわらず、単剤療法試験における場合と同様の程度の疾患活性を有していた。
【0137】
実施例2:介護者および患者の情報
[0135] ナタリズマブ治療を開始する前に、医師は、患者に対して患者情報リーフレットを渡し、患者にそれを読むように依頼し、そして患者と情報を検討する。患者情報リーフレットは、MSを有する患者に対して、PMLのリスクを含めてナタリズマブ治療のリスクについての情報を提供することを意図している。さらに、このリーフレットは、何らか進行性の事象、すなわち進行性の神経学的症候、を彼らの医師に対して迅速に報告することを患者に対して指示し、それによりPMLの初期検出の重要性を補強する。患者情報リーフレットは、広く配布される。さらに、処方者および導入センターへも配布するため、このリーフレットを、インターネット上でも利用可能にし、そして全国多発性硬化症協会(National Multiple Sclerosis Society;NMSS)などの患者のグループに配布する。
【0138】
[0136 いったんナタリズマブを使用するという決断がなされたら、医師および患者は、登録フォームを完備する。登録フォームには、ナタリズマブ処方および患者-医師確認が含まれる。医師および患者は、患者-医師確認にサインし、彼らがナタリズマブの利点とPMLのリスクを含むリスクとについて検討し、そして理解したこと、そして医師が再発性MSの治療のためにナタリズマブを処方しようとしている旨、を記録する。
【0139】
[0137] 患者-医師確認にサインすることにより、医師はまた、彼または彼女がナタリズマブについての完全な処方情報を読んだことを確認し、ナタリズマブが死または障害を引き起こすPMLのリスクを増大することに関連することを理解したことを確認し、そして彼または彼女の患者とナタリズマブ治療のリスクと利点について検討することを確認し、そして再発性MS治療のためにナタリズマブを処方することを確認する。医師はまた、患者が免疫不全状態でないことを確認し、そして何らかの進行性の事象、すなわち数日にわたり維持される進行性の症候、を、彼または彼女の医師に対して迅速に報告することを患者に対して指示したことを確認する。
【0140】
[0138] 患者-医師確認にサインすることにより、患者は、彼または彼女が患者情報リーフレットを読んだことを確認し、ナタリズマブが死または障害を引き起こすPMLのリスクを増大することに関連することを理解したことを確認し、彼または彼女の医師とナタリズマブのリスクと利点について検討したことを確認し、そして何らかの進行性の事象、すなわち数日にわたり維持される進行性の症候、を、彼または彼女の医師に対して迅速に報告することが重要であることを理解することを確認する。患者医師との情報は、中央データベースに入力され、その結果ナタリズマブリスク管理プログラムへの登録が開始される。
【0141】
[0139] それぞれの登録された患者は、ナタリズマブについての質問に回答することができ、保険金の調査を提供することができ、そして患者を適切な導入施設に割り当てることができる、ケース・マネージャーを割り当てられる。これらのサービスは、ナタリズマブの再導入に際しては再び提供され、そしてこれが登録フォームを使用するために患者および医師に取ってもう一つの理由である。さらに、ナタリズマブについての情報材料は、ナタリズマブで治療された患者のすべてが登録フォームを使用するために、必要とする医師に知らされ、そしてBiogen Idee and Elanの営業担当者は、すべての神経科医がこのフォームを使用することの重要性を補強するように訓練される。最終的に、神経学者およびMS患者は、ナタリズマブリスク管理プログラムへのフィードバックを提供し、そして登録フォームの使用を協力にサポートした。ナタリズマブの再導入の場合には、本明細書中に記載される手順がモニタリングされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナタリズマブを使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者を治療する方法であって、以下の工程:
(a) 医薬的有効量のナタリズマブを投与し;
(b) 患者を進行性多病巣性白質脳障害の指標についてモニタリングし;そして
(c) 進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合にナタリズマブの投与を中止すること;
を含み、ここで、モニタリングにより、治療の安全性を向上させる、前記方法。
【請求項2】
疾患が多発性硬化症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多発性硬化症が、再発寛解型多発性硬化症、二次進行型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、および慢性進行型多発性硬化症から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
疾患が、炎症性腸疾患または関節リウマチである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
炎症性腸疾患がクローン病である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
モニタリングにより、患者の尿、血液、および/または脳脊髄液中のJCVを検出する、請求項1 に記載の方法。
【請求項7】
モニタリングが、患者の血液サンプルを連続的に取り出し、サンプル中のJCVに対するIgG抗体量を測定し、そしてサンプル中の抗体量を比較することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
モニタリングが、サンプル中のJCVに対するIgM抗体量を測定し、そしてサンプル中のIgM抗体量とIgG抗体量とを比較すること、をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
モニタリングが、セロコンバージョンおよび/または患者の尿および/または血液中のJCVの増加性の力価を検出し、そして
(a) 連続的な尿サンプルおよび/または血液サンプルの比較から、セロコンバージョンおよび/またはJCVの増加性の力価が検出される場合に、患者の脳脊髄液サンプルを取りだし;そして
(b) 脳脊髄液をJCVの存在について試験すること;
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
モニタリングが、進行性多病巣性白質脳障害の臨床的症候および/または放射線学的症候について試験することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
臨床的症候についての試験が、新規のまたは進行性の神経学的症候について試験することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
神経学的症候が、1またはそれ以上の中枢盲、精神錯乱、人格変化、および運動障害を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
放射線学的症候についての試験が、Gd-活性化磁気共鳴画像スキャンを行うことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合に、静脈内免疫グロブリン治療、プラスマフェレーシス、および抗ウィルス治療から選択される少なくとも1つの治療を行うことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
抗ウィルス治療が、シトシンアラビノシド(シタラビン)、シドフォビル、およびセロトニンアンタゴニストから選択される治療的有効用量の少なくとも1つの抗ウィルス剤を投与することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
セロトニンアンタゴニストが5HT2aアンタゴニストである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者がナタリズマブと免疫抑制剤または抗腫瘍剤とにより同時に治療されない、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
免疫抑制剤または抗腫瘍剤が、クロラムブシル、メルファラン、6-メルカプトプリン、チオテパ、イフォドファミド(ifodfamide)、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロマイド、ヘキサメチルメラミン、ドキソルビシン、ダウナルビシン、イダルビシン、エピルビシン、イリノテカン、メトトレキセート、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、シタラビン、ブスルファン、アモニフィド(amonifide)、5-フルオロウラシル、トポテカン、マスタージェン、ブレオマイシン、ロムスチン、セムスチン、マイトマイシンC、ムタマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メトトレキセート、トリメトレキサート、ラルチトレキシド(raltitrexid)、フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、フトラフール、5-エチニルウラシル、6-チオグアニン、クラドリビン、ペントスタチン、テニポシド、ミトキサントロン、ロソキサントロン、アクチノマイシンD、ビンデシン、ドセタキセル、アミフォスチン、インターフェロンα、タモキシフェン(tamoxefen)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ラロキシフェン、レトロゾール、アナストラゾール(anastrzole)、フルタミド、ビカルタミド、レチノイン酸類、三酸化ヒ素、リツキシマブ、CAMPATH-1、マイロターグ、ミコフェノール酸、タクロリムス、グルココルチコイド類、スルファサラジン、ガラティラメル、フマレート、ラキニモド、FTY-720、インターフェロンタウ、ダクリズマブ(daclizumab)、インフリキシマブ、IL10、抗-IL2受容体抗体、抗-IL-12抗体、抗-IL-6受容体抗体、CDP-571、アダリムマブ、エンタネラセプト(entaneracept)、レフルノミド、抗-インターフェロンガンマ抗体、アダタセプト(abatacept)、フルダラビン、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリン、静注用免疫グロブリン、5-ASA(メサラミン)、およびβ-インターフェロン、の1またはそれ以上のものから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
免疫抑制剤がβ-インターフェロンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(a) 患者から血液サンプルを取り出し;
(b) サンプルの血清または血漿をJCVに対するIgG抗体の存在について試験し;
(c) サンプルがJCVに対するIgG抗体について陰性である場合に、ナタリズマブを用いて、患者の治療を開始し;
(d) 進行性多病巣性白質脳障害の指標について、患者をモニタリングし;そして
(e) 進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合に、ナタリズマブの投与を終了すること;
を含み、ここで、試験およびモニタリングにより、治療の安全性が向上する、
ナタリズマブを使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者を治療する方法。
【請求項21】
疾患が多発性硬化症である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
多発性硬化症が、再発寛解型多発性硬化症、二次進行型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、および慢性進行型多発性硬化症から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
疾患が炎症性腸疾患または関節リウマチである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
炎症性腸疾患がクローン病である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
サンプルの血清または血漿をJCVに対するIgM抗体について試験し、そして血清または血漿がJCVに対するIgG抗体およびIgM抗体の両方共について陰性である場合に治療を開始すること、をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
モニタリングにより、患者の尿、血液および/または脳脊髄液中のJCVを検出する、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
モニタリングが、患者の血液サンプルを連続的に取りだし、サンプル中のJCVに対するIgG抗体量を測定し、そしてサンプル中の抗体量を比較すること、を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
モニタリングが、サンプル中のJCVに対するIgM抗体量を測定し、そしてサンプル中のIgM抗体量およびIgG抗体量を比較すること、をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
モニタリングが、セロコンバージョンおよび/または患者の尿および/または血液中のJCVの増加性の力価を検出し、そして
(a) 連続的な尿サンプルおよび/または血液サンプルを比較した場合にセロコンバージョンおよび/またはJCVの増加性の力価を検出する場合、患者の脳脊髄液を取り出し;そして
(b) JCVの存在について脳脊髄液を試験すること;
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
モニタリングが、進行性多病巣性白質脳障害の臨床的症候および/または放射線学的症候について試験することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
臨床的症候についての試験が、新規のまたは進行性の神経学的症候について試験することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
神経学的症候が、中枢盲、精神錯乱、人格変化、および運動障害の1またはそれ以上のものを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
放射線学的症候についての試験が、Gd-活性化磁気共鳴画像スキャンを行うことを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合に、静脈内免疫グロブリン治療、プラスマフェレーシス、および抗ウィルス治療から選択される、少なくとも1つの治療を行うことをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
抗ウィルス治療が、シトシンアラビノシド(シタラビン)、シドフォビル、およびセロトニンアンタゴニストから選択される、少なくとも1つの治療的有効用量の抗ウィルス剤を投与することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
セロトニンアンタゴニストが5HT2aアンタゴニストである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
患者がナタリズマブと免疫抑制剤または抗腫瘍剤とにより同時に治療されない、請求項20に記載の方法。
【請求項38】
免疫抑制剤または抗腫瘍剤クロラムブシル、メルファラン、6-メルカプトプリン、チオテパ、イフォドファミド(ifodfamide)、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロマイド、ヘキサメチルメラミン、ドキソルビシン、ダウナルビシン、イダルビシン、エピルビシン、イリノテカン、メトトレキセート、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、シタラビン、ブスルファン、アモニフィド(amonifide)、5-フルオロウラシル、トポテカン、マスタージェン、ブレオマイシン、ロムスチン、セムスチン、マイトマイシンC、ムタマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メトトレキセート、トリメトレキサート、ラルチトレキシド(raltitrexid)、フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、フトラフール、5-エチニルウラシル、6-チオグアニン、クラドリビン、ペントスタチン、テニポシド、ミトキサントロン、ロソキサントロン、アクチノマイシンD、ビンデシン、ドセタキセル、アミフォスチン、インターフェロンα、タモキシフェン(tamoxefen)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ラロキシフェン、レトロゾール、アナストラゾール(anastrzole)、フルタミド、ビカルタミド、レチノイン酸類、三酸化ヒ素、リツキシマブ、CAMPATH-1、マイロターグ、ミコフェノール酸、タクロリムス、グルココルチコイド類、スルファサラジン、ガラティラメル、フマレート、ラキニモド、FTY-720、インターフェロンタウ、ダクリズマブ(daclizumab)、インフリキシマブ、IL10、抗-IL2受容体抗体、抗-IL-12抗体、抗-IL-6受容体抗体、CDP-571、アダリムマブ、エンタネラセプト(entaneracept)、レフルノミド、抗-インターフェロンガンマ抗体、アダタセプト(abatacept)、フルダラビン、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリン、静注用免疫グロブリン、5-ASA(メサラミン)、およびβ-インターフェロン、の1またはそれ以上のものから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
免疫抑制剤がβ-インターフェロンである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
(a) 患者から血液サンプルを取り出し;
(b) サンプルの血清または血漿をJCVに対するIgG抗体の存在について試験し;
(c) サンプルがJCVに対するIgG抗体について陽性である場合に、ナタリズマブを用いて、患者の治療を開始し;
(d) 進行性多病巣性白質脳障害の指標について、患者をモニタリングし;そして
(e) 進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合に、ナタリズマブの投与を終了すること;
を含み、ここで、試験およびモニタリングにより、治療の安全性が向上する
ナタリズマブを使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者を治療する方法。
【請求項41】
疾患が多発性硬化症である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
多発性硬化症が、再発寛解型多発性硬化症、二次進行型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、および慢性進行型多発性硬化症から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
疾患が、炎症性腸疾患または関節リウマチである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
炎症性腸疾患がクローン病である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
モニタリングにより、患者の尿、血液、および/または脳脊髄液中のJCVを検出する、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
モニタリングが、連続的に患者の血液サンプルを取り出し、サンプル中のJCVに対するIgG抗体量を測定し、そしてサンプル中の抗体量を比較することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
モニタリングが、患者の尿および/または血液中のJCVの増加性の力価を検出し、そして
(a) 連続的な尿サンプルおよび/または血液サンプルの比較から、JCVの増加性の力価が検出される場合に、患者の脳脊髄液サンプルを取りだし;そして
(b) 脳脊髄液をJCVの存在について試験すること;
をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
モニタリングが、進行性多病巣性白質脳障害の臨床的症候および/または放射線学的症候について試験することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
臨床的症候についての試験が、新規のまたは進行性の神経学的症候について試験することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
神経学的症候が、中枢盲、精神錯乱、人格変化、および運動障害の1またはそれ以上のものを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
放射線学的症候についての試験が、Gd-活性化磁気共鳴画像スキャンを行うことを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合に、静脈内免疫グロブリン治療、プラスマフェレーシス、および抗ウィルス治療から選択される、少なくとも1つの治療を行うことをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項53】
抗ウィルス治療が、シトシンアラビノシド(シタラビン)、シドフォビル、およびセロトニンアンタゴニストから選択される、少なくとも1つの治療的有効用量の抗ウィルス剤を投与することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
セロトニンアンタゴニストが5HT2aアンタゴニストである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
患者がナタリズマブと免疫抑制剤または抗腫瘍剤とにより同時に治療されない、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
免疫抑制剤または抗腫瘍剤クロラムブシル、メルファラン、6-メルカプトプリン、チオテパ、イフォドファミド(ifodfamide)、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロマイド、ヘキサメチルメラミン、ドキソルビシン、ダウナルビシン、イダルビシン、エピルビシン、イリノテカン、メトトレキセート、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、シタラビン、ブスルファン、アモニフィド(amonifide)、5-フルオロウラシル、トポテカン、マスタージェン、ブレオマイシン、ロムスチン、セムスチン、マイトマイシンC、ムタマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メトトレキセート、トリメトレキサート、ラルチトレキシド(raltitrexid)、フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、フトラフール、5-エチニルウラシル、6-チオグアニン、クラドリビン、ペントスタチン、テニポシド、ミトキサントロン、ロソキサントロン、アクチノマイシンD、ビンデシン、ドセタキセル、アミフォスチン、インターフェロンα、タモキシフェン(tamoxefen)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ラロキシフェン、レトロゾール、アナストラゾール(anastrzole)、フルタミド、ビカルタミド、レチノイン酸類、三酸化ヒ素、リツキシマブ、CAMPATH-1、マイロターグ、ミコフェノール酸、タクロリムス、グルココルチコイド類、スルファサラジン、ガラティラメル、フマレート、ラキニモド、FTY-720、インターフェロンタウ、ダクリズマブ(daclizumab)、インフリキシマブ、IL10、抗-IL2受容体抗体、抗-IL-12抗体、抗-IL-6受容体抗体、CDP-571、アダリムマブ、エンタネラセプト(entaneracept)、レフルノミド、抗-インターフェロンガンマ抗体、アダタセプト(abatacept)、フルダラビン、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリン、静注用免疫グロブリン、5-ASA(メサラミン)、およびβ-インターフェロン、の1またはそれ以上のものから選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
免疫抑制剤がβ-インターフェロンである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
(a) 患者から血液サンプルを取り出し;
(b) JCVに対するIgG抗体の存在についてサンプルを試験し;
(c) ナタリズマブを用いて患者の治療を開始し;
(d) 進行性多病巣性白質脳障害の精神的症候および身体的症候について処方医師に情報を提供し;
(e) 進行性多病巣性白質脳障害の精神的症候および身体的症候について患者に情報を提供し、そして患者に対して、少なくとも1つの症候が存在する場合に医師に対して報告するよう指示をし;
(f) 進行性多病巣性白質脳障害の指標について患者をモニタリングし;そして
(g) 進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合に、ナタリズマブの投与を終了すること;
を含み、ここで、試験、情報、およびモニタリングにより、治療の安全性が向上する、
ナタリズマブを使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者を治療する方法。
【請求項59】
疾患が多発性硬化症である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
多発性硬化症が、再発寛解型多発性硬化症、二次進行型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、および慢性進行型多発性硬化症から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
疾患が、炎症性腸疾患または関節リウマチである、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
炎症性腸疾患がクローン病である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
モニタリングにより、患者の尿、血液、および/または脳脊髄液中のJCVを検出する、請求項58に記載の方法。
【請求項64】
モニタリングが、連続的に患者の血液サンプルを取り出し、サンプル中のJCVに対するIgG抗体量を測定し、そしてサンプル中の抗体量を比較することを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
モニタリングが、サンプル中のJCVに対するIgM抗体量を測定し、そしてサンプル中のIgM抗体量とIgG抗体量を比較することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
モニタリングが、セロコンバージョンおよび/または患者の尿および/または血液中のJCVの増加性の力価を検出し、そして
(a) 連続的な尿サンプルおよび/または血液サンプルの比較により、セロコンバージョンおよび/またはJCVの増加性の力価が検出される場合に、患者の脳脊髄液サンプルを取りだし;そして
(b) JCVの存在について脳脊髄液を試験する;
ことをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
モニタリングが、進行性多病巣性白質脳障害の臨床的症候および/または放射線学的症候について試験することを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項68】
臨床的症候についての試験が、新規のまたは進行性の神経学的症候について試験することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
神経学的症候が、中枢盲、精神錯乱、人格変化、および運動障害の1またはそれ以上のものを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
放射線学的症候についての試験が、Gd-活性化磁気共鳴画像スキャンを行うことを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
進行性多病巣性白質脳障害の指標が存在する場合、静脈内免疫グロブリン治療、プラスマフェレーシス、および抗ウィルス治療から選択される少なくとも1つの治療を行うことをさらに含む、請求項58に記載の方法。
【請求項72】
抗ウィルス治療が、シトシンアラビノシド(シタラビン)、シドフォビル、およびセロトニンアンタゴニスト、から選択される少なくとも1つの治療的有効用量の抗ウィルス剤を投与することを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
セロトニンアンタゴニストが5HT2aアンタゴニストである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
患者がナタリズマブと免疫抑制剤または抗腫瘍剤とにより同時に治療されない、請求項58に記載の方法。
【請求項75】
免疫抑制剤または抗腫瘍剤クロラムブシル、メルファラン、6-メルカプトプリン、チオテパ、イフォドファミド(ifodfamide)、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロマイド、ヘキサメチルメラミン、ドキソルビシン、ダウナルビシン、イダルビシン、エピルビシン、イリノテカン、メトトレキセート、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、シタラビン、ブスルファン、アモニフィド(amonifide)、5-フルオロウラシル、トポテカン、マスタージェン、ブレオマイシン、ロムスチン、セムスチン、マイトマイシンC、ムタマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メトトレキセート、トリメトレキサート、ラルチトレキシド(raltitrexid)、フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、フトラフール、5-エチニルウラシル、6-チオグアニン、クラドリビン、ペントスタチン、テニポシド、ミトキサントロン、ロソキサントロン、アクチノマイシンD、ビンデシン、ドセタキセル、アミフォスチン、インターフェロンα、タモキシフェン(tamoxefen)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ラロキシフェン、レトロゾール、アナストラゾール(anastrzole)、フルタミド、ビカルタミド、レチノイン酸類、三酸化ヒ素、リツキシマブ、CAMPATH-1、マイロターグ、ミコフェノール酸、タクロリムス、グルココルチコイド類、スルファサラジン、ガラティラメル、フマレート、ラキニモド、FTY-720、インターフェロンタウ、ダクリズマブ(daclizumab)、インフリキシマブ、IL10、抗-IL2受容体抗体、抗-IL-12抗体、抗-IL-6受容体抗体、CDP-571、アダリムマブ、エンタネラセプト(entaneracept)、レフルノミド、抗-インターフェロンガンマ抗体、アダタセプト(abatacept)、フルダラビン、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリン、静注用免疫グロブリン、5-ASA(メサラミン)、およびβ-インターフェロン、の1またはそれ以上のものから選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
免疫抑制剤がβ-インターフェロンである、請求項75に記載の方法。

【公表番号】特表2009−528359(P2009−528359A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557327(P2008−557327)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/004943
【国際公開番号】WO2007/100770
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(399013971)エラン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (75)
【Fターム(参考)】