ナット及び接続構造並びに支持具
【課題】 筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成する上で、その作業を簡素化できるナット及び接続構造を要素技術として提供する。
【解決手段】 ナット3の胴部33のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体2の開口端部20の部位と係合すべく、筒状体2の開口端部20の部位と挿入方向にて重なる凸状部31を備えることにより、ナット3が筒状体2の開口端部20に胴部33が内挿されて固定されることを特徴とする。
【解決手段】 ナット3の胴部33のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体2の開口端部20の部位と係合すべく、筒状体2の開口端部20の部位と挿入方向にて重なる凸状部31を備えることにより、ナット3が筒状体2の開口端部20に胴部33が内挿されて固定されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定されるナット及びその接続構造に関する。さらに、本発明は、基礎部の上方に配設される支持対象物を支持する支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎部の上方に配設される支持対象物を支持する支持具として、例えば、地盤及び床板間に介設され、床板を支持する支持具(「床板支持具」又は「鋼製束」或いは「束部材」ともいう)が知られている(例えば、特許文献1)。かかる支持具は、図17に示すように、基礎部Xに載置される基部材201と、支持対象物Yを下方から支持する支持部材202と、下端部に基部材201が固定され且つ上端部に支持部材202が固定される本体部203とを備える。
【0003】
そして、かかる支持具の本体部203は、上下方向に配設され且つ両端部に螺子孔が設けられる胴体204と、胴体204の下端側の螺子孔と螺合し且つ下端部が基部材201に固定される下部ボルト部材205と、胴体204の上端側の螺子孔と螺合し且つ上端部が支持部材202に固定される上部ボルト部材206とを備え、胴体204を周方向に回転することにより、基部材201及び支持部材202間の離間距離が調整可能に構成される。
【0004】
ここで、かかる支持具の胴体204は、例えば、まず、厚肉のパイプの両端部に絞り加工を施し、タップにより、絞り加工を施した上端側の開口端部内面に右螺子を形成すると共に、絞り加工を施した下端側の開口端部内面に左螺子を形成する。これにより、所謂、パイプ式ターンバックルと呼ばれる本体部203が形成される。
【0005】
そして、タップにより形成された下端側の螺子孔に、基部材201が固定された下部ボルト部材205を螺着すると共に、タップにより形成された上端側の螺子孔に、支持部材202が固定された上部ボルト部材205を螺着することにより製造される。
【特許文献1】特開2002−201790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる支持具は、胴体204を製造するに際し、パイプの端部に絞り加工を施した後に、タップにより、絞り加工を施した開口端部内面に螺子を形成するといった、非常に煩雑な作業が必要となる。そのため、胴体204の生産性は低く、それに伴い、支持具の生産性も低い。
【0007】
よって、本発明は、かかる事情に鑑み、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成する上で、その作業を簡素化できるナット及び接続構造を要素技術として提供することを課題とし、併せて、その要素技術を用いて生産性を向上することができる支持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るナットは、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定されるナットであって、挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、挿入される部位のうち少なくとも一部が筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えるため、かかる重なる部位が、挿入される際に、例えば、筒状体の開口端部の部位を径方向に拡げたり、筒状体の開口端部の部位を切削したり、又は筒状体の開口端部に切削されたりして、筒状体の開口端部の部位と係合する。
【0010】
そして、例えば、筒状体の開口端部の部位が径方向に縮んだり、又は縮められたりすることにより、筒状体の開口端部の部位に径方向の内方に向けて押圧されるため、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定される。したがって、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成することができる。
【0011】
本発明に係るナットにおいては、前記挿入方向にて重なる部位は、径方向に突出し、軸方向に対して凸状に形成されてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、挿入方向にて重なる部位が径方向に突出し且つ軸方向に対して凸状に形成されるため、例えば、筒状体の開口端部の部位がかかる重なる部位よりも端部側で縮む又は縮められると、かかる重なる部位が筒状体の縮む又は縮められる部位に脱離する方向にて係止される。したがって、固定された筒状体からナットが脱離するのを規制できる。
【0013】
本発明に係るナットにおいては、前記挿入方向にて重なる部位は、開口端部の内縁が円形状に形成される筒状体に対し、径方向に突出し、周方向に対して凸状に形成されてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、挿入方向にて重なる部位が径方向に突出し且つ周方向に対して凸状に形成されるため、例えば、かかる重なる部位が円形状の内縁である筒状体の開口端部の部位と係合すると、かかる重なる部位が筒状体の係合された部位に周方向にて係止される。したがって、筒状体に対してナットが周方向に回転するのを規制できる。
【0015】
本発明に係るナットにおいては、開口端部の内縁が円形状に形成される筒状体に対し、外径が筒状体の内径と略同径の円筒状に形成され且つ開口端部に挿入される胴部を備え、胴部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる凸状部を備え、凸状部は、径方向に突出し、軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成されてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、外径が筒状体の内径と略同径の円筒状に形成される胴部が開口端部に挿入される際に、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる凸状部が筒状体の開口端部の部位と係合する。そして、例えば、筒状体の開口端部の部位が径方向に縮んだり、縮められたりすることにより、筒状体の開口端部の部位に径方向の内方に向けて押圧されるため、胴部が内挿された状態で固定される。
【0017】
しかも、凸状部が径方向に突出し且つ軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成されるため、例えば、筒状体の開口端部の部位が凸状部よりも端部側で縮む又は縮められると、凸状部が筒状体の縮む又は縮められる部位に脱離する方向にて係止され、さらに、例えば、円形状の内縁である筒状体の開口端部の部位と係合すると、筒状体の係合された部位に周方向にて係止される。したがって、固定された筒状体からナットが脱離するのを規制できると共に、筒状体に対してナットが周方向に回転するのを規制できる。
【0018】
また、本発明に係る接続構造は、中央部に螺子孔を有するナットが筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定される接続構造であって、ナットの挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、中央部に螺子孔を有するナットの挿入される部位のうち少なくとも一部が、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えるため、かかる重なる部位が、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合する。そして、筒状体の開口端部の部位に径方向の内方に向けて押圧されることにより、筒状体の開口端部にナットの少なくとも一部が内挿されて固定される。したがって、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成することができる。
【0020】
本発明に係る支持具は、基礎部の上方に配設される支持対象物を支持すべく、基礎部に載置される基部材と、支持対象物を下方から支持する支持部材と、下端部に基部材が固定され且つ上端部に支持部材が固定される本体部とを備え、本体部は、基部材及び支持部材間の離間距離を調整可能に構成される支持具において、本体部は、上下方向に配設され且つ少なくとも一端側に開口端部を有する筒状体と、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定され且つ中央部に螺子孔を有するナットと、ナットの螺子孔と螺合し且つ筒状体の外部に配置される端部が基部材又は支持部材に固定されるボルト部材とを備え、ナットの挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とする。
【0021】
かかる構成によれば、中央部に螺子孔を有するナットにおける、筒状体の開口端部に挿入される部位のうち少なくとも一部が、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えるため、かかる重なる部位が、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合する。そして、筒状体の開口端部の部位に径方向の内方に向けて押圧されることにより、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定される。したがって、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成することができる。
【0022】
そして、ボルト部材が上下方向に配設された筒状体の端部に固定されたナットの螺子孔と螺合すると共に、ボルト部材における筒状体の外部に配置される端部が基部材又は支持部材に固定されることにより、本体部が形成され、さらに、基礎部に載置される基部材が本体部の下端部に固定されると共に、支持対象物を下方から支持する支持部材が本体部の上端部に固定される。したがって、基部材及び本体部間や、支持部材及び本体部間が相対回転変位することにより、基部材及び支持部材間の離間距離が調整できるため、基礎部の上方に配設される支持対象物を支持することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の如く、本発明に係るナット及び接続構造によれば、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成する上で、その作業を簡素化できるという優れた効果を奏する。また、本発明に係る支持具によれば、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成する作業を簡素化できるため、生産性を向上することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る支持具(ナット、接続構造)における一実施形態について、図1〜図11を参酌して説明する。
【0025】
本実施形態に係る支持具は、図1及び図2に示すように、基礎部Xの上方に配設される支持対象物Yを支持すべく、基礎部Xに載置される基部材6と、支持対象物Yを下方から支持する支持部材7と、下端部に基部材6が固定され且つ上端部に支持部材7が固定される本体部1とを備える。
【0026】
本体部1は、基部材6及び支持部材7間の離間距離を調整可能に構成される。具体的には、本体部1は、上下方向に配設され且つ少なくとも一端側に開口端部20を有する筒状体2と、筒状体2の開口端部20に少なくとも一部が内挿されて固定され且つ中央部に螺子孔30を有するナット3と、ナット3の螺子孔30と螺合し且つ筒状体2の外部に配置される端部40(50)が基部材6又は支持部材7に固定されるボルト部材4(5)とを備える。
【0027】
より具体的には、本体部1は、両端部に開口端部20,20を有する筒状体2と、筒状体2の開口端部20に一部が内挿され、且つ互いに逆螺子(右螺子及び左螺子)となる螺子孔30を中央部に有する一対のナット3,3と、筒状体2の下端側におけるナット3の螺子孔30と螺合し、且つ下端部40が基部材6に固定される下部ボルト部材4と、筒状体2の上端側におけるナット3の螺子孔30と螺合し、且つ上端部50が支持部材7に固定される上部ボルト部材5とを備える。
【0028】
なお、本体部1は、例えば、ターンバックル(パイプ式ターンバックル)とも呼ばれ、また、筒状体2及び一対のナット3,3で構成され且つ互いに逆螺子となる一対の螺子孔を両端部に有する構成部材は、例えば、ターンバックル胴(パイプ式ターンバックル胴)とも呼ばれる。
【0029】
筒状体2は、図3に示すように、少なくとも一方の開口端部20の内縁が円形状に形成される。具体的には、筒状体2は、少なくとも一方の端部が円筒状に形成される。より具体的には、筒状体2は、両端部が円筒状に形成され、中央部が角筒状に形成される。また、筒状体2は、金属又は硬質樹脂等の材料で形成される。
【0030】
そして、筒状体2は、例えば、金属製の丸パイプを上下方向の中央部でプレス処理することにより、両端部に円筒部21,21が設けられ、且つ中央部に角筒部22が設けられる。かかる角筒部22は、レンチ等の工具が嵌め込まれ、筒状体2を周方向に(上下方向を中心に)回転させるためのものである。
【0031】
さらに、筒状体2は、一方側(図3においては、角筒部22の一端側)に突条又は溝状に形成された識別手段23を備える。かかる識別手段23は、一方側の開口端部20に固定されるナット3が右螺子(又は左螺子)であることを識別するためのものである。
【0032】
ナット3は、図4〜図7に示すように、内周面に螺子溝が形成される螺子孔30を径方向の中央部に備え、筒状体2の開口端部20に少なくとも一部が内挿されて固定される。また、ナット3は、挿入される部位のうち少なくとも一部が、挿入される際に筒状体2の開口端部20の部位と係合すべく、筒状体2の開口端部20の部位と挿入方向にて重なる部位31,32,…を備える。
【0033】
そして、ナット3は、前記挿入方向にて重なる部位31,32,…が、径方向に突出し、軸方向に対して凸状に形成される。さらに、ナット3は、前記挿入方向にて重なる部位31,32,…が、開口端部20の内縁が円形状に形成される筒状体2に対し、径方向に突出し、周方向に対して凸状に形成される。
【0034】
具体的には、ナット3は、開口端部20の内縁が円形状に形成される筒状体2に対し、外径が筒状体2の内径と略同径の円筒状に形成され且つ開口端部20に挿入される胴部33を備え、胴部33は、挿入される際に筒状体2の開口端部20の部位と係合すべく、筒状体2の開口端部20の部位と挿入方向にて重なる凸状部31,32,…を備え、凸状部31,32,…は、径方向に突出し、軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成される。
【0035】
より具体的には、ナット3は、胴部33の外周部に、周方向に沿って断続的に(図4〜図7においては、四つの部位からなる)形成される凸状部31,32,…が軸方向に複数並設される(図4〜図7においては、二つ並設されている)。さらに具体的には、ナット3は、一端側(挿入される端部側)に周方向に沿って断続的に形成される凸状部(以下、「一端側の凸状部」ともいう)31,…と、他端側に周方向に沿って断続的に形成される凸状部(以下、「他端側の凸状部」ともいう)32,…とを備え、凸状部31,32同士が軸方向で重ならないように配置される。
【0036】
また、ナット3は、一端側、即ち、胴部33の一端側がテーパー状に形成される。そして、ナット3は、軸方向の他端側に、径方向の外方に突出する鍔部34を備え、筒状体2に挿入される際に、鍔部34は、筒状体2の開口端部20の部位に当接するように構成される。
【0037】
かかるナット3は、金属又は硬質樹脂等の材料で形成される。例えば、金属製の丸パイプの端部を押圧して鍔部34を形成し、一端側から軸方向に外周部を切削することにより、溝部35を形成すると共に、かかる切削する際に押圧しているため、端縁が盛り上がって他端側の凸状部32が形成される。
【0038】
そして、溝部35及び凸状部32を周方向に沿って複数並設する(図4〜図7においては、四つ並設されている)ように、同様に、外周部を軸方向に押圧しつつ切削すると、溝部35,35間に、周方向に対して凸状となる突条部36が形成される(図4〜図7においては、周方向に沿って四つ並設されている)。
【0039】
さらに、一端側をテーパー状にすべく、軸方向に押圧しつつ切削することにより、端縁が盛り上がって一端側の凸状部31が形成される。具体的には、一端側をテーパー状にすべく、突条部36の部位を一端側から他端側に向けて軸方向に押圧しつつ切削することにより、端縁が盛り上がって一端側の凸状部31が形成される。
【0040】
以上の如く形成されたナット3は、胴部33の径方向の外幅寸法が筒状体2の開口端部20の内幅寸法より大きく形成される部位を備える。具体的には、ナット3は、胴部33の外幅寸法(外径)が挿入される際に同方向となる(対応する)筒状体2の開口端部20の内幅寸法(内径)より大きい部位を備える。
【0041】
より具体的には、ナット3は、一端側の凸状部31,31を含む外径、他端側の凸状部32,32を含む外径、及び突条部36,36を含む外径が、筒状体2の開口端部20の内径より大きく、また、溝部35,35を含む外径が、筒状体2の開口端部20の内径より小さく形成される。
【0042】
そして、図1及び図2に戻り、下部ボルト部材4は、外周面に螺子溝が形成され、本体部1の下端側に固定されるナット3の螺子孔30と螺合する。具体的には、下部ボルト部材4は、ナット3の螺子孔30と上端側から螺合する。また、下部ボルト4は、基部材6に対して、下端部40が抜け止め及び回転止めされた状態で(例えば、溶接されて)固定される。
【0043】
上部ボルト部材5は、外周面に螺子溝が形成され、本体部1の上端側に固定されるナット3の螺子孔30と螺合する。具体的には、上部ボルト部材5は、ナット3の螺子孔30と下端側から螺合する。また、上部ボルト5は、支持部材7に対して、上端部50が抜け止め及び回転止めされた状態で(例えば、溶接されて)固定される。
【0044】
基部材6は、図8に示すように、平板状に形成される。そして、基部材6は、下部ボルト部材4の下端部40が挿通するための第1貫通孔60を中央部に備える。また、基部材6は、基礎部Xに固定されるべく、固定部材(例えば、ボルト)が挿通するための第2貫通孔61,…を複数備える(図8においては、四つ設けられている)。さらに、基部材6は、強度を確保すべく、円形の膨出部62を複数備える(図8においては、二つ設けられている)。
【0045】
支持部材7は、図8に示すような基部材6と略同一の構成であり、平板状に形成される。そして、支持部材7は、上部ボルト部材5の上端部50が挿通するための第1貫通孔70を中央部に備える。また、支持部材7は、支持対象物Yに固定されるべく、固定部材(例えば、釘)が挿通するための第2貫通孔71,…を複数備える。さらに、支持部材7は、強度を確保すべく、円形の膨出部72を複数備える。
【0046】
再び図1及び図2に戻り、上記構成により、支持具は、基部材6が基礎部Xに固定され且つ支持部材7が支持対象物Yに固定された(あるいは何れか一方が仮止めされた)状態で、筒状体2が周方向に回転されることにより、本体部1の上下寸法、即ち、基部材6及び支持部材7間の離間距離を調整可能に構成される。
【0047】
また、支持具は、本体部1の上下寸法(基部材6及び支持部材7間の距離)を維持するために、筒状体2が周方向に回転するのを防止すべく、筒状体2の上端部又は下端部に当接する六角ナット及びワッシャ(何れも採番しない)を備える。
【0048】
本実施形態に係る支持具の構成は以上の通りであり、次に、本実施形態にかかる支持具において、ナット3が筒状体2に固定される状況について説明する。
【0049】
まず、図9に示すように、両端部が円筒状に形成される筒状体2の開口端部20に向けて、ナット3を軸方向(図9(a)におけるI矢印方向)に移動させる。ここで、ナット3は、図9(b)に示すように、一端側の凸状部31,31を含む外径が筒状体2の開口端部20の内径より大きく形成され、溝部35,35を含む外径が筒状体2の開口端部20の内径より小さく形成されている。即ち、一端側の凸状部31,31が筒状体2の開口端部20の部位と挿入方向にて重なっている(図9(b)における網掛け部)。
【0050】
そして、ナット3がテーパー状の一端側から筒状体2の開口端部20に内挿され、図10(a)に示すように、ナット3を軸方向(図10(a)におけるI矢印方向)に押圧させると、ナット3の一端側の凸状部31が、筒状体2の開口端部20に内挿され、筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げるように変形(拡径)させる。また、筒状体2の周方向においては、図10(b)に示すように、ナット3の一端側の凸状部31が筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げるが、ナット3の溝部35は、筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げることはない。
【0051】
さらに、ナット3を軸方向に押圧させると、図11に示すように、筒状体2の開口端部20の部位がナット3の鍔部34に当接するため、ナット3の筒状体2への挿入が規制される。そして、例えば、筒状体2の変形の大きさが弾性限界(弾性限度)を超えない程度であれば、ナット3の一端側の凸状部31で径方向に拡げられた筒状体2の開口端部20の部位は、ナット3が挿入されるのに伴い、凸状部31より端部側が径方向に自然と縮むことになる。
【0052】
よって、筒状体2の開口端部20が径方向に縮むことにより、ナット3の胴部33(特に、凸状部31)が筒状体2から径方向内方に向けて押圧されるため、ナット3が筒状体2の開口端部20に固定される。そして、ナット3が筒状体2の開口端部20に挿入されるのに伴い、筒状体2の端部側の部位が縮むことにより、ナット3の凸状部31は、軸方向(脱離する方向)にて筒状体2の縮んだ部位に係止されている。
【0053】
さらに、ナット3の凸状部31が筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げ、溝部35が筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げないため、筒状体2の開口端部20には、ナット3の凸状部31に対応した凹状の部位が形成される。これにより、ナット3の凸状部31が、周方向にて筒状体2の凹状の部位に係止されている。
【0054】
なお、ナット3の一端側の凸状部31について、図9〜図11に図示したが、ナット3の他端側の凸状部32においても、同様に、筒状体2から径方向の内方に向けて押圧され、軸方向(脱離する方向)にて筒状体2の開口端部20の部位に係止され、さらに、周方向にて筒状体2の開口端部20の部位に係止されている。
【0055】
以上より、本実施形態に係る支持具は、挿入される部位(胴部)33のうち一部が筒状体2の開口端部20の部位と挿入方向にて重なる部位(凸状部)31,32を備えるため、かかる重なる部位(凸状部)31,32が、挿入される際に、筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げるようにして、筒状体2の開口端部20の部位と係合する。
【0056】
そして、筒状体2の開口端部20が径方向に縮むことにより、筒状体2の開口端部20の部位に径方向の内方に向けて押圧されるため、筒状体2の開口端部20に一部が内挿されて固定される。したがって、筒状体2の端部に螺子孔30を形成することができ、かかる作業を簡素化できるため、その結果、生産性を向上することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る支持具は、挿入方向にて重なる部位(凸状部)31,32が径方向に突出し且つ軸方向に対して凸状に形成されるため、筒状体2の開口端部20の部位がかかる重なる部位(凸状部)31,32よりも端部側で縮むことにより、かかる重なる部位(凸状部)31,32が筒状体2の縮んだ部位に脱離する方向にて係止され、その結果、固定された筒状体2からナット3が脱離するのを規制できる。
【0058】
また、本実施形態に係る支持具は、挿入方向にて重なる部位(凸状部)31,32が径方向に突出し且つ周方向に対して凸状に形成されるため、かかる重なる部位(凸状部)31,32が円形状の内縁である筒状体2の開口端部20の部位と係合することにより、かかる重なる部位(凸状部)31,32が筒状体2の係合された部位に周方向にて係止され、その結果、筒状体2に対してナット3が周方向に回転するのを規制できる。
【0059】
なお、本発明に係るナット、接続構造、及び支持具は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0060】
例えば、上記実施形態においては、筒状体2が全長に亘って筒状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、筒状体は、筒状に形成された一対の部材をそれぞれ離間して配置し、一対の部材を棒状の部材の各端部に連結させて形成される場合でもよい。要するに、筒状体は、少なくとも一端側が筒状に形成されていればよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、筒状体2が円筒状、即ち、開口端部20の内縁が円形状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、筒状体は、角筒状、即ち、開口端部の内縁が矩形状に形成される場合でもよい。そして、かかる場合、ナットも、筒状体の開口端部の内縁に対応して、外縁が矩形状に形成されてもよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、開口端部20の内縁が円形状に形成されるのに対応して、ナット3の外縁が円形状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、ナット3の外縁、即ち、軸方向に直交する面における断面が、例えば、楕円形状である場合や、多角形状である場合でもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、ナット3が溝部35,…を備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、図12に示すように、ナット8は、溝部を備えることなく、径方向に突出して且つ軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成される凸状部80,…を複数備える(図12においては、周方向に沿って四つ並設されている)場合でもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、ナット3が周方向に沿って凸状部31(32),…を四つ備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、図13に示すように、ナット9は、径方向に突出して且つ軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成される凸状部90,…を周方向に沿って六つ備える場合でもよい。要するに、ナットは、径方向に突出して且つ軸方向及び周方向の少なくとも何れか一方に対して凸状に形成される凸状部を一つ以上備えればよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、ナット3が、径方向に突出して且つ軸方向及び周方向に対して凸状に形成される、即ち、周方向に沿って断続的な凸状部31,32,…を複数備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、図14に示すように、ナット10は、周方向に沿って連続的な凸状部100を備え、凸状部100は、径方向に突出して軸方向に対してのみ凸状に形成される場合でもよい。あるいは、ナットは、径方向に突出して周方向に対してのみ凸状に形成される場合でもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、ナット3が他端側に鍔部34を備える場合を説明したが、鍔部34は必須の構成ではなく、ナットが鍔部34を備えない場合でもよい。そして、ナット全体が筒状体2の開口端部20に内挿されて固定される場合でもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、筒状体2の変形の大きさが弾性限界(弾性限度)を超えない程度であるため、筒状体2の開口端部20の部位が、自然に径方向に縮む場合を説明したが、かかる場合に限られない。
【0068】
例えば、図15(a)に示すように、軸方向(図15(a)におけるL矢印方向)に、ナット3が移動されて、図15(b)に示すように、ナット3が筒状体2の開口端部20に内挿すると、筒状体2の変形の大きさが弾性限界(弾性限度)を超える場合でもよい。かかる場合は、筒状体2の開口端部20の部位を径方向の内側(図15(b)におけるM矢印方向)に向けて押圧し、図15(c)に示すように、筒状体2の開口端部20の部位を径方向に縮められてもよい。
【0069】
また、例えば、ナット3が筒状体2の開口端部20に挿入されるに伴い、凸状部31(32),…が筒状体2の開口端部20の部位(内周部)を切削することにより、筒状体2の開口端部20の部位(外径)が径方向に拡がることがない場合でもよい。かかる場合は、その上で、筒状体2の開口端部20の部位が径方向の内方に向けて縮む又は縮められてもよい。
【0070】
したがって、ナットと筒状体(開口端部)との硬度差や、筒状体の開口端部の変形の大きさ等を考慮して、ナットや筒状体をそれぞれ設計することにより、以上のような、筒状体の開口端部の部位を径方向に拡げた後に、自然と径方向に縮んだり、加工により径方向に縮められたり、筒状体の開口端部の部位を切削させたりすることで、ナットを筒状体の開口端部に固定することができる。
【0071】
また、図16に示すように、ナット11が筒状体2の開口端部20の部位を径方向に縮めるように案内する案内部110を備える場合でもよい。具体的には、ナット11は、他端側に設けられる鍔部111から一端側に延設される案内部110を備え、案内部110は、一端側から他端側に向けて縮径するように形成される場合でもよい。
【0072】
かかる構成によれば、まず、図16(a)に示すように、軸方向(図16(a)におけるN矢印方向)に、ナット11が移動されて、図16(b)に示すように、ナット11の凸状部112が筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げる。そして、ナット11が筒状体2の開口端部20にさらに挿入されると、図16(c)に示すように、ナット11が筒状体2の先端部を径方向に縮めるように案内する。これにより、ナット11を筒状体2の開口端部20に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に係る支持具の全体図であって、分解斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る支持具の全体図であって、軸方向の断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る支持具を構成する筒状体の全体図であって、(a)は正面図、(b)はA−A線における断面図、(c)はB−B線における断面図を示す。
【図4】同実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は上方からの斜視図、(b)は下方からの斜視図を示す。
【図5】同実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は底面図、(b)は平面図を示す。
【図6】同実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は図5(a)におけるC方向からの側面図、(b)は図5(a)におけるD方向からの側面図を示す。
【図7】同実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は図5(a)のE−E線における断面図、(b)は図5(a)のF−F線における断面図を示す。
【図8】同実施形態に係る支持具の基部材(支持部材)の全体図であって、(a)は平面図、(b)はG−G線における断面図、(c)は側面図を示す。
【図9】同実施形態に係るナットが筒状体に固定される状況を説明する要部拡大図であって、ナットが筒状体に挿入する前の状態における、(a)は軸方向の断面図、(b)はH−H線における断面図を示す。
【図10】同実施形態に係るナットが筒状体に固定される状況を説明する要部拡大図であって、ナットが筒状体に挿入されている状態における、(a)は軸方向の断面図、(b)はJ−J線における断面図を示す。
【図11】同実施形態に係るナットが筒状体に固定される状況を説明する要部拡大図であって、ナットが筒状体に挿入された状態における、(a)は軸方向の断面図、(b)はK−K線における断面図を示す。
【図12】本発明の他の実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は正面図、(b)は底面図を示す。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は正面図、(b)は底面図を示す。
【図14】本発明のさらに他の実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は正面図、(b)は底面図を示す。
【図15】本発明のさらに他の実施形態に係るナットが筒状体に固定される状況を説明する要部拡大図であって、軸方向の断面図を示す。
【図16】本発明のさらに他の実施形態に係るナットが筒状体に固定される状況を説明する要部拡大図であって、軸方向の断面図を示す。
【図17】従来における支持具の全体図であって、軸方向の断面図を示す。
【符号の説明】
【0074】
1…本体部、2…筒状体、3…ナット、4…ボルト部材(下部ボルト部材)、5…ボルト部材(上部ボルト部材)、6…基部材、7…支持部材、20…開口端部、30…螺子孔、31,32…凸状部(挿入方向に重なる部位)、33…胴部(挿入される部位)、40…端部(下端部)、50…端部(上端部)、X…基礎部、Y…支持対象物
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定されるナット及びその接続構造に関する。さらに、本発明は、基礎部の上方に配設される支持対象物を支持する支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎部の上方に配設される支持対象物を支持する支持具として、例えば、地盤及び床板間に介設され、床板を支持する支持具(「床板支持具」又は「鋼製束」或いは「束部材」ともいう)が知られている(例えば、特許文献1)。かかる支持具は、図17に示すように、基礎部Xに載置される基部材201と、支持対象物Yを下方から支持する支持部材202と、下端部に基部材201が固定され且つ上端部に支持部材202が固定される本体部203とを備える。
【0003】
そして、かかる支持具の本体部203は、上下方向に配設され且つ両端部に螺子孔が設けられる胴体204と、胴体204の下端側の螺子孔と螺合し且つ下端部が基部材201に固定される下部ボルト部材205と、胴体204の上端側の螺子孔と螺合し且つ上端部が支持部材202に固定される上部ボルト部材206とを備え、胴体204を周方向に回転することにより、基部材201及び支持部材202間の離間距離が調整可能に構成される。
【0004】
ここで、かかる支持具の胴体204は、例えば、まず、厚肉のパイプの両端部に絞り加工を施し、タップにより、絞り加工を施した上端側の開口端部内面に右螺子を形成すると共に、絞り加工を施した下端側の開口端部内面に左螺子を形成する。これにより、所謂、パイプ式ターンバックルと呼ばれる本体部203が形成される。
【0005】
そして、タップにより形成された下端側の螺子孔に、基部材201が固定された下部ボルト部材205を螺着すると共に、タップにより形成された上端側の螺子孔に、支持部材202が固定された上部ボルト部材205を螺着することにより製造される。
【特許文献1】特開2002−201790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる支持具は、胴体204を製造するに際し、パイプの端部に絞り加工を施した後に、タップにより、絞り加工を施した開口端部内面に螺子を形成するといった、非常に煩雑な作業が必要となる。そのため、胴体204の生産性は低く、それに伴い、支持具の生産性も低い。
【0007】
よって、本発明は、かかる事情に鑑み、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成する上で、その作業を簡素化できるナット及び接続構造を要素技術として提供することを課題とし、併せて、その要素技術を用いて生産性を向上することができる支持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るナットは、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定されるナットであって、挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、挿入される部位のうち少なくとも一部が筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えるため、かかる重なる部位が、挿入される際に、例えば、筒状体の開口端部の部位を径方向に拡げたり、筒状体の開口端部の部位を切削したり、又は筒状体の開口端部に切削されたりして、筒状体の開口端部の部位と係合する。
【0010】
そして、例えば、筒状体の開口端部の部位が径方向に縮んだり、又は縮められたりすることにより、筒状体の開口端部の部位に径方向の内方に向けて押圧されるため、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定される。したがって、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成することができる。
【0011】
本発明に係るナットにおいては、前記挿入方向にて重なる部位は、径方向に突出し、軸方向に対して凸状に形成されてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、挿入方向にて重なる部位が径方向に突出し且つ軸方向に対して凸状に形成されるため、例えば、筒状体の開口端部の部位がかかる重なる部位よりも端部側で縮む又は縮められると、かかる重なる部位が筒状体の縮む又は縮められる部位に脱離する方向にて係止される。したがって、固定された筒状体からナットが脱離するのを規制できる。
【0013】
本発明に係るナットにおいては、前記挿入方向にて重なる部位は、開口端部の内縁が円形状に形成される筒状体に対し、径方向に突出し、周方向に対して凸状に形成されてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、挿入方向にて重なる部位が径方向に突出し且つ周方向に対して凸状に形成されるため、例えば、かかる重なる部位が円形状の内縁である筒状体の開口端部の部位と係合すると、かかる重なる部位が筒状体の係合された部位に周方向にて係止される。したがって、筒状体に対してナットが周方向に回転するのを規制できる。
【0015】
本発明に係るナットにおいては、開口端部の内縁が円形状に形成される筒状体に対し、外径が筒状体の内径と略同径の円筒状に形成され且つ開口端部に挿入される胴部を備え、胴部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる凸状部を備え、凸状部は、径方向に突出し、軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成されてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、外径が筒状体の内径と略同径の円筒状に形成される胴部が開口端部に挿入される際に、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる凸状部が筒状体の開口端部の部位と係合する。そして、例えば、筒状体の開口端部の部位が径方向に縮んだり、縮められたりすることにより、筒状体の開口端部の部位に径方向の内方に向けて押圧されるため、胴部が内挿された状態で固定される。
【0017】
しかも、凸状部が径方向に突出し且つ軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成されるため、例えば、筒状体の開口端部の部位が凸状部よりも端部側で縮む又は縮められると、凸状部が筒状体の縮む又は縮められる部位に脱離する方向にて係止され、さらに、例えば、円形状の内縁である筒状体の開口端部の部位と係合すると、筒状体の係合された部位に周方向にて係止される。したがって、固定された筒状体からナットが脱離するのを規制できると共に、筒状体に対してナットが周方向に回転するのを規制できる。
【0018】
また、本発明に係る接続構造は、中央部に螺子孔を有するナットが筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定される接続構造であって、ナットの挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、中央部に螺子孔を有するナットの挿入される部位のうち少なくとも一部が、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えるため、かかる重なる部位が、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合する。そして、筒状体の開口端部の部位に径方向の内方に向けて押圧されることにより、筒状体の開口端部にナットの少なくとも一部が内挿されて固定される。したがって、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成することができる。
【0020】
本発明に係る支持具は、基礎部の上方に配設される支持対象物を支持すべく、基礎部に載置される基部材と、支持対象物を下方から支持する支持部材と、下端部に基部材が固定され且つ上端部に支持部材が固定される本体部とを備え、本体部は、基部材及び支持部材間の離間距離を調整可能に構成される支持具において、本体部は、上下方向に配設され且つ少なくとも一端側に開口端部を有する筒状体と、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定され且つ中央部に螺子孔を有するナットと、ナットの螺子孔と螺合し且つ筒状体の外部に配置される端部が基部材又は支持部材に固定されるボルト部材とを備え、ナットの挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とする。
【0021】
かかる構成によれば、中央部に螺子孔を有するナットにおける、筒状体の開口端部に挿入される部位のうち少なくとも一部が、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えるため、かかる重なる部位が、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合する。そして、筒状体の開口端部の部位に径方向の内方に向けて押圧されることにより、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定される。したがって、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成することができる。
【0022】
そして、ボルト部材が上下方向に配設された筒状体の端部に固定されたナットの螺子孔と螺合すると共に、ボルト部材における筒状体の外部に配置される端部が基部材又は支持部材に固定されることにより、本体部が形成され、さらに、基礎部に載置される基部材が本体部の下端部に固定されると共に、支持対象物を下方から支持する支持部材が本体部の上端部に固定される。したがって、基部材及び本体部間や、支持部材及び本体部間が相対回転変位することにより、基部材及び支持部材間の離間距離が調整できるため、基礎部の上方に配設される支持対象物を支持することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の如く、本発明に係るナット及び接続構造によれば、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成する上で、その作業を簡素化できるという優れた効果を奏する。また、本発明に係る支持具によれば、筒状体の少なくとも一方の端部に螺子孔を形成する作業を簡素化できるため、生産性を向上することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る支持具(ナット、接続構造)における一実施形態について、図1〜図11を参酌して説明する。
【0025】
本実施形態に係る支持具は、図1及び図2に示すように、基礎部Xの上方に配設される支持対象物Yを支持すべく、基礎部Xに載置される基部材6と、支持対象物Yを下方から支持する支持部材7と、下端部に基部材6が固定され且つ上端部に支持部材7が固定される本体部1とを備える。
【0026】
本体部1は、基部材6及び支持部材7間の離間距離を調整可能に構成される。具体的には、本体部1は、上下方向に配設され且つ少なくとも一端側に開口端部20を有する筒状体2と、筒状体2の開口端部20に少なくとも一部が内挿されて固定され且つ中央部に螺子孔30を有するナット3と、ナット3の螺子孔30と螺合し且つ筒状体2の外部に配置される端部40(50)が基部材6又は支持部材7に固定されるボルト部材4(5)とを備える。
【0027】
より具体的には、本体部1は、両端部に開口端部20,20を有する筒状体2と、筒状体2の開口端部20に一部が内挿され、且つ互いに逆螺子(右螺子及び左螺子)となる螺子孔30を中央部に有する一対のナット3,3と、筒状体2の下端側におけるナット3の螺子孔30と螺合し、且つ下端部40が基部材6に固定される下部ボルト部材4と、筒状体2の上端側におけるナット3の螺子孔30と螺合し、且つ上端部50が支持部材7に固定される上部ボルト部材5とを備える。
【0028】
なお、本体部1は、例えば、ターンバックル(パイプ式ターンバックル)とも呼ばれ、また、筒状体2及び一対のナット3,3で構成され且つ互いに逆螺子となる一対の螺子孔を両端部に有する構成部材は、例えば、ターンバックル胴(パイプ式ターンバックル胴)とも呼ばれる。
【0029】
筒状体2は、図3に示すように、少なくとも一方の開口端部20の内縁が円形状に形成される。具体的には、筒状体2は、少なくとも一方の端部が円筒状に形成される。より具体的には、筒状体2は、両端部が円筒状に形成され、中央部が角筒状に形成される。また、筒状体2は、金属又は硬質樹脂等の材料で形成される。
【0030】
そして、筒状体2は、例えば、金属製の丸パイプを上下方向の中央部でプレス処理することにより、両端部に円筒部21,21が設けられ、且つ中央部に角筒部22が設けられる。かかる角筒部22は、レンチ等の工具が嵌め込まれ、筒状体2を周方向に(上下方向を中心に)回転させるためのものである。
【0031】
さらに、筒状体2は、一方側(図3においては、角筒部22の一端側)に突条又は溝状に形成された識別手段23を備える。かかる識別手段23は、一方側の開口端部20に固定されるナット3が右螺子(又は左螺子)であることを識別するためのものである。
【0032】
ナット3は、図4〜図7に示すように、内周面に螺子溝が形成される螺子孔30を径方向の中央部に備え、筒状体2の開口端部20に少なくとも一部が内挿されて固定される。また、ナット3は、挿入される部位のうち少なくとも一部が、挿入される際に筒状体2の開口端部20の部位と係合すべく、筒状体2の開口端部20の部位と挿入方向にて重なる部位31,32,…を備える。
【0033】
そして、ナット3は、前記挿入方向にて重なる部位31,32,…が、径方向に突出し、軸方向に対して凸状に形成される。さらに、ナット3は、前記挿入方向にて重なる部位31,32,…が、開口端部20の内縁が円形状に形成される筒状体2に対し、径方向に突出し、周方向に対して凸状に形成される。
【0034】
具体的には、ナット3は、開口端部20の内縁が円形状に形成される筒状体2に対し、外径が筒状体2の内径と略同径の円筒状に形成され且つ開口端部20に挿入される胴部33を備え、胴部33は、挿入される際に筒状体2の開口端部20の部位と係合すべく、筒状体2の開口端部20の部位と挿入方向にて重なる凸状部31,32,…を備え、凸状部31,32,…は、径方向に突出し、軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成される。
【0035】
より具体的には、ナット3は、胴部33の外周部に、周方向に沿って断続的に(図4〜図7においては、四つの部位からなる)形成される凸状部31,32,…が軸方向に複数並設される(図4〜図7においては、二つ並設されている)。さらに具体的には、ナット3は、一端側(挿入される端部側)に周方向に沿って断続的に形成される凸状部(以下、「一端側の凸状部」ともいう)31,…と、他端側に周方向に沿って断続的に形成される凸状部(以下、「他端側の凸状部」ともいう)32,…とを備え、凸状部31,32同士が軸方向で重ならないように配置される。
【0036】
また、ナット3は、一端側、即ち、胴部33の一端側がテーパー状に形成される。そして、ナット3は、軸方向の他端側に、径方向の外方に突出する鍔部34を備え、筒状体2に挿入される際に、鍔部34は、筒状体2の開口端部20の部位に当接するように構成される。
【0037】
かかるナット3は、金属又は硬質樹脂等の材料で形成される。例えば、金属製の丸パイプの端部を押圧して鍔部34を形成し、一端側から軸方向に外周部を切削することにより、溝部35を形成すると共に、かかる切削する際に押圧しているため、端縁が盛り上がって他端側の凸状部32が形成される。
【0038】
そして、溝部35及び凸状部32を周方向に沿って複数並設する(図4〜図7においては、四つ並設されている)ように、同様に、外周部を軸方向に押圧しつつ切削すると、溝部35,35間に、周方向に対して凸状となる突条部36が形成される(図4〜図7においては、周方向に沿って四つ並設されている)。
【0039】
さらに、一端側をテーパー状にすべく、軸方向に押圧しつつ切削することにより、端縁が盛り上がって一端側の凸状部31が形成される。具体的には、一端側をテーパー状にすべく、突条部36の部位を一端側から他端側に向けて軸方向に押圧しつつ切削することにより、端縁が盛り上がって一端側の凸状部31が形成される。
【0040】
以上の如く形成されたナット3は、胴部33の径方向の外幅寸法が筒状体2の開口端部20の内幅寸法より大きく形成される部位を備える。具体的には、ナット3は、胴部33の外幅寸法(外径)が挿入される際に同方向となる(対応する)筒状体2の開口端部20の内幅寸法(内径)より大きい部位を備える。
【0041】
より具体的には、ナット3は、一端側の凸状部31,31を含む外径、他端側の凸状部32,32を含む外径、及び突条部36,36を含む外径が、筒状体2の開口端部20の内径より大きく、また、溝部35,35を含む外径が、筒状体2の開口端部20の内径より小さく形成される。
【0042】
そして、図1及び図2に戻り、下部ボルト部材4は、外周面に螺子溝が形成され、本体部1の下端側に固定されるナット3の螺子孔30と螺合する。具体的には、下部ボルト部材4は、ナット3の螺子孔30と上端側から螺合する。また、下部ボルト4は、基部材6に対して、下端部40が抜け止め及び回転止めされた状態で(例えば、溶接されて)固定される。
【0043】
上部ボルト部材5は、外周面に螺子溝が形成され、本体部1の上端側に固定されるナット3の螺子孔30と螺合する。具体的には、上部ボルト部材5は、ナット3の螺子孔30と下端側から螺合する。また、上部ボルト5は、支持部材7に対して、上端部50が抜け止め及び回転止めされた状態で(例えば、溶接されて)固定される。
【0044】
基部材6は、図8に示すように、平板状に形成される。そして、基部材6は、下部ボルト部材4の下端部40が挿通するための第1貫通孔60を中央部に備える。また、基部材6は、基礎部Xに固定されるべく、固定部材(例えば、ボルト)が挿通するための第2貫通孔61,…を複数備える(図8においては、四つ設けられている)。さらに、基部材6は、強度を確保すべく、円形の膨出部62を複数備える(図8においては、二つ設けられている)。
【0045】
支持部材7は、図8に示すような基部材6と略同一の構成であり、平板状に形成される。そして、支持部材7は、上部ボルト部材5の上端部50が挿通するための第1貫通孔70を中央部に備える。また、支持部材7は、支持対象物Yに固定されるべく、固定部材(例えば、釘)が挿通するための第2貫通孔71,…を複数備える。さらに、支持部材7は、強度を確保すべく、円形の膨出部72を複数備える。
【0046】
再び図1及び図2に戻り、上記構成により、支持具は、基部材6が基礎部Xに固定され且つ支持部材7が支持対象物Yに固定された(あるいは何れか一方が仮止めされた)状態で、筒状体2が周方向に回転されることにより、本体部1の上下寸法、即ち、基部材6及び支持部材7間の離間距離を調整可能に構成される。
【0047】
また、支持具は、本体部1の上下寸法(基部材6及び支持部材7間の距離)を維持するために、筒状体2が周方向に回転するのを防止すべく、筒状体2の上端部又は下端部に当接する六角ナット及びワッシャ(何れも採番しない)を備える。
【0048】
本実施形態に係る支持具の構成は以上の通りであり、次に、本実施形態にかかる支持具において、ナット3が筒状体2に固定される状況について説明する。
【0049】
まず、図9に示すように、両端部が円筒状に形成される筒状体2の開口端部20に向けて、ナット3を軸方向(図9(a)におけるI矢印方向)に移動させる。ここで、ナット3は、図9(b)に示すように、一端側の凸状部31,31を含む外径が筒状体2の開口端部20の内径より大きく形成され、溝部35,35を含む外径が筒状体2の開口端部20の内径より小さく形成されている。即ち、一端側の凸状部31,31が筒状体2の開口端部20の部位と挿入方向にて重なっている(図9(b)における網掛け部)。
【0050】
そして、ナット3がテーパー状の一端側から筒状体2の開口端部20に内挿され、図10(a)に示すように、ナット3を軸方向(図10(a)におけるI矢印方向)に押圧させると、ナット3の一端側の凸状部31が、筒状体2の開口端部20に内挿され、筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げるように変形(拡径)させる。また、筒状体2の周方向においては、図10(b)に示すように、ナット3の一端側の凸状部31が筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げるが、ナット3の溝部35は、筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げることはない。
【0051】
さらに、ナット3を軸方向に押圧させると、図11に示すように、筒状体2の開口端部20の部位がナット3の鍔部34に当接するため、ナット3の筒状体2への挿入が規制される。そして、例えば、筒状体2の変形の大きさが弾性限界(弾性限度)を超えない程度であれば、ナット3の一端側の凸状部31で径方向に拡げられた筒状体2の開口端部20の部位は、ナット3が挿入されるのに伴い、凸状部31より端部側が径方向に自然と縮むことになる。
【0052】
よって、筒状体2の開口端部20が径方向に縮むことにより、ナット3の胴部33(特に、凸状部31)が筒状体2から径方向内方に向けて押圧されるため、ナット3が筒状体2の開口端部20に固定される。そして、ナット3が筒状体2の開口端部20に挿入されるのに伴い、筒状体2の端部側の部位が縮むことにより、ナット3の凸状部31は、軸方向(脱離する方向)にて筒状体2の縮んだ部位に係止されている。
【0053】
さらに、ナット3の凸状部31が筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げ、溝部35が筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げないため、筒状体2の開口端部20には、ナット3の凸状部31に対応した凹状の部位が形成される。これにより、ナット3の凸状部31が、周方向にて筒状体2の凹状の部位に係止されている。
【0054】
なお、ナット3の一端側の凸状部31について、図9〜図11に図示したが、ナット3の他端側の凸状部32においても、同様に、筒状体2から径方向の内方に向けて押圧され、軸方向(脱離する方向)にて筒状体2の開口端部20の部位に係止され、さらに、周方向にて筒状体2の開口端部20の部位に係止されている。
【0055】
以上より、本実施形態に係る支持具は、挿入される部位(胴部)33のうち一部が筒状体2の開口端部20の部位と挿入方向にて重なる部位(凸状部)31,32を備えるため、かかる重なる部位(凸状部)31,32が、挿入される際に、筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げるようにして、筒状体2の開口端部20の部位と係合する。
【0056】
そして、筒状体2の開口端部20が径方向に縮むことにより、筒状体2の開口端部20の部位に径方向の内方に向けて押圧されるため、筒状体2の開口端部20に一部が内挿されて固定される。したがって、筒状体2の端部に螺子孔30を形成することができ、かかる作業を簡素化できるため、その結果、生産性を向上することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る支持具は、挿入方向にて重なる部位(凸状部)31,32が径方向に突出し且つ軸方向に対して凸状に形成されるため、筒状体2の開口端部20の部位がかかる重なる部位(凸状部)31,32よりも端部側で縮むことにより、かかる重なる部位(凸状部)31,32が筒状体2の縮んだ部位に脱離する方向にて係止され、その結果、固定された筒状体2からナット3が脱離するのを規制できる。
【0058】
また、本実施形態に係る支持具は、挿入方向にて重なる部位(凸状部)31,32が径方向に突出し且つ周方向に対して凸状に形成されるため、かかる重なる部位(凸状部)31,32が円形状の内縁である筒状体2の開口端部20の部位と係合することにより、かかる重なる部位(凸状部)31,32が筒状体2の係合された部位に周方向にて係止され、その結果、筒状体2に対してナット3が周方向に回転するのを規制できる。
【0059】
なお、本発明に係るナット、接続構造、及び支持具は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0060】
例えば、上記実施形態においては、筒状体2が全長に亘って筒状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、筒状体は、筒状に形成された一対の部材をそれぞれ離間して配置し、一対の部材を棒状の部材の各端部に連結させて形成される場合でもよい。要するに、筒状体は、少なくとも一端側が筒状に形成されていればよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、筒状体2が円筒状、即ち、開口端部20の内縁が円形状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、筒状体は、角筒状、即ち、開口端部の内縁が矩形状に形成される場合でもよい。そして、かかる場合、ナットも、筒状体の開口端部の内縁に対応して、外縁が矩形状に形成されてもよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、開口端部20の内縁が円形状に形成されるのに対応して、ナット3の外縁が円形状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、ナット3の外縁、即ち、軸方向に直交する面における断面が、例えば、楕円形状である場合や、多角形状である場合でもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、ナット3が溝部35,…を備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、図12に示すように、ナット8は、溝部を備えることなく、径方向に突出して且つ軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成される凸状部80,…を複数備える(図12においては、周方向に沿って四つ並設されている)場合でもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、ナット3が周方向に沿って凸状部31(32),…を四つ備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、図13に示すように、ナット9は、径方向に突出して且つ軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成される凸状部90,…を周方向に沿って六つ備える場合でもよい。要するに、ナットは、径方向に突出して且つ軸方向及び周方向の少なくとも何れか一方に対して凸状に形成される凸状部を一つ以上備えればよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、ナット3が、径方向に突出して且つ軸方向及び周方向に対して凸状に形成される、即ち、周方向に沿って断続的な凸状部31,32,…を複数備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、図14に示すように、ナット10は、周方向に沿って連続的な凸状部100を備え、凸状部100は、径方向に突出して軸方向に対してのみ凸状に形成される場合でもよい。あるいは、ナットは、径方向に突出して周方向に対してのみ凸状に形成される場合でもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、ナット3が他端側に鍔部34を備える場合を説明したが、鍔部34は必須の構成ではなく、ナットが鍔部34を備えない場合でもよい。そして、ナット全体が筒状体2の開口端部20に内挿されて固定される場合でもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、筒状体2の変形の大きさが弾性限界(弾性限度)を超えない程度であるため、筒状体2の開口端部20の部位が、自然に径方向に縮む場合を説明したが、かかる場合に限られない。
【0068】
例えば、図15(a)に示すように、軸方向(図15(a)におけるL矢印方向)に、ナット3が移動されて、図15(b)に示すように、ナット3が筒状体2の開口端部20に内挿すると、筒状体2の変形の大きさが弾性限界(弾性限度)を超える場合でもよい。かかる場合は、筒状体2の開口端部20の部位を径方向の内側(図15(b)におけるM矢印方向)に向けて押圧し、図15(c)に示すように、筒状体2の開口端部20の部位を径方向に縮められてもよい。
【0069】
また、例えば、ナット3が筒状体2の開口端部20に挿入されるに伴い、凸状部31(32),…が筒状体2の開口端部20の部位(内周部)を切削することにより、筒状体2の開口端部20の部位(外径)が径方向に拡がることがない場合でもよい。かかる場合は、その上で、筒状体2の開口端部20の部位が径方向の内方に向けて縮む又は縮められてもよい。
【0070】
したがって、ナットと筒状体(開口端部)との硬度差や、筒状体の開口端部の変形の大きさ等を考慮して、ナットや筒状体をそれぞれ設計することにより、以上のような、筒状体の開口端部の部位を径方向に拡げた後に、自然と径方向に縮んだり、加工により径方向に縮められたり、筒状体の開口端部の部位を切削させたりすることで、ナットを筒状体の開口端部に固定することができる。
【0071】
また、図16に示すように、ナット11が筒状体2の開口端部20の部位を径方向に縮めるように案内する案内部110を備える場合でもよい。具体的には、ナット11は、他端側に設けられる鍔部111から一端側に延設される案内部110を備え、案内部110は、一端側から他端側に向けて縮径するように形成される場合でもよい。
【0072】
かかる構成によれば、まず、図16(a)に示すように、軸方向(図16(a)におけるN矢印方向)に、ナット11が移動されて、図16(b)に示すように、ナット11の凸状部112が筒状体2の開口端部20の部位を径方向に拡げる。そして、ナット11が筒状体2の開口端部20にさらに挿入されると、図16(c)に示すように、ナット11が筒状体2の先端部を径方向に縮めるように案内する。これにより、ナット11を筒状体2の開口端部20に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に係る支持具の全体図であって、分解斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る支持具の全体図であって、軸方向の断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る支持具を構成する筒状体の全体図であって、(a)は正面図、(b)はA−A線における断面図、(c)はB−B線における断面図を示す。
【図4】同実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は上方からの斜視図、(b)は下方からの斜視図を示す。
【図5】同実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は底面図、(b)は平面図を示す。
【図6】同実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は図5(a)におけるC方向からの側面図、(b)は図5(a)におけるD方向からの側面図を示す。
【図7】同実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は図5(a)のE−E線における断面図、(b)は図5(a)のF−F線における断面図を示す。
【図8】同実施形態に係る支持具の基部材(支持部材)の全体図であって、(a)は平面図、(b)はG−G線における断面図、(c)は側面図を示す。
【図9】同実施形態に係るナットが筒状体に固定される状況を説明する要部拡大図であって、ナットが筒状体に挿入する前の状態における、(a)は軸方向の断面図、(b)はH−H線における断面図を示す。
【図10】同実施形態に係るナットが筒状体に固定される状況を説明する要部拡大図であって、ナットが筒状体に挿入されている状態における、(a)は軸方向の断面図、(b)はJ−J線における断面図を示す。
【図11】同実施形態に係るナットが筒状体に固定される状況を説明する要部拡大図であって、ナットが筒状体に挿入された状態における、(a)は軸方向の断面図、(b)はK−K線における断面図を示す。
【図12】本発明の他の実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は正面図、(b)は底面図を示す。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は正面図、(b)は底面図を示す。
【図14】本発明のさらに他の実施形態に係るナットの全体図であって、(a)は正面図、(b)は底面図を示す。
【図15】本発明のさらに他の実施形態に係るナットが筒状体に固定される状況を説明する要部拡大図であって、軸方向の断面図を示す。
【図16】本発明のさらに他の実施形態に係るナットが筒状体に固定される状況を説明する要部拡大図であって、軸方向の断面図を示す。
【図17】従来における支持具の全体図であって、軸方向の断面図を示す。
【符号の説明】
【0074】
1…本体部、2…筒状体、3…ナット、4…ボルト部材(下部ボルト部材)、5…ボルト部材(上部ボルト部材)、6…基部材、7…支持部材、20…開口端部、30…螺子孔、31,32…凸状部(挿入方向に重なる部位)、33…胴部(挿入される部位)、40…端部(下端部)、50…端部(上端部)、X…基礎部、Y…支持対象物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定されるナットであって、挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とするナット。
【請求項2】
前記挿入方向にて重なる部位は、径方向に突出し、軸方向に対して凸状に形成される請求項1に記載のナット。
【請求項3】
前記挿入方向にて重なる部位は、開口端部の内縁が円形状に形成される筒状体に対し、径方向に突出し、周方向に対して凸状に形成される請求項1又は2に記載のナット。
【請求項4】
開口端部の内縁が円形状に形成される筒状体に対し、外径が筒状体の内径と略同径の円筒状に形成され且つ開口端部に挿入される胴部を備え、胴部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる凸状部を備え、凸状部は、径方向に突出し、軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成される請求項1に記載のナット。
【請求項5】
中央部に螺子孔を有するナットが筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定される接続構造であって、ナットの挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とする接続構造。
【請求項6】
基礎部の上方に配設される支持対象物を支持すべく、基礎部に載置される基部材と、支持対象物を下方から支持する支持部材と、下端部に基部材が固定され且つ上端部に支持部材が固定される本体部とを備え、本体部は、基部材及び支持部材間の離間距離を調整可能に構成される支持具において、本体部は、上下方向に配設され且つ少なくとも一端側に開口端部を有する筒状体と、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定され且つ中央部に螺子孔を有するナットと、ナットの螺子孔と螺合し且つ筒状体の外部に配置される端部が基部材又は支持部材に固定されるボルト部材とを備え、ナットの挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とする支持具。
【請求項1】
筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定されるナットであって、挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とするナット。
【請求項2】
前記挿入方向にて重なる部位は、径方向に突出し、軸方向に対して凸状に形成される請求項1に記載のナット。
【請求項3】
前記挿入方向にて重なる部位は、開口端部の内縁が円形状に形成される筒状体に対し、径方向に突出し、周方向に対して凸状に形成される請求項1又は2に記載のナット。
【請求項4】
開口端部の内縁が円形状に形成される筒状体に対し、外径が筒状体の内径と略同径の円筒状に形成され且つ開口端部に挿入される胴部を備え、胴部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる凸状部を備え、凸状部は、径方向に突出し、軸方向及び周方向に対してそれぞれ凸状に形成される請求項1に記載のナット。
【請求項5】
中央部に螺子孔を有するナットが筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定される接続構造であって、ナットの挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とする接続構造。
【請求項6】
基礎部の上方に配設される支持対象物を支持すべく、基礎部に載置される基部材と、支持対象物を下方から支持する支持部材と、下端部に基部材が固定され且つ上端部に支持部材が固定される本体部とを備え、本体部は、基部材及び支持部材間の離間距離を調整可能に構成される支持具において、本体部は、上下方向に配設され且つ少なくとも一端側に開口端部を有する筒状体と、筒状体の開口端部に少なくとも一部が内挿されて固定され且つ中央部に螺子孔を有するナットと、ナットの螺子孔と螺合し且つ筒状体の外部に配置される端部が基部材又は支持部材に固定されるボルト部材とを備え、ナットの挿入される部位のうち少なくとも一部は、挿入される際に筒状体の開口端部の部位と係合すべく、筒状体の開口端部の部位と挿入方向にて重なる部位を備えることを特徴とする支持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−236154(P2009−236154A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80275(P2008−80275)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000108638)タカヤマ金属工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000108638)タカヤマ金属工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
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