説明

ナトリウムチャネルのレギュレータとモジュレータ

本発明は、電位依存性ナトリウムチャネル(VGSC)のモジュレータの同定法を提供し、その同定法は以下:(a)試験化合物、VGSC、並びにPAPIN、ペリアキシン及びHSPC025から選択される1つ又は複数の結合パートナーを、そのVGSC及び結合パートナーがその試験化合物の非存在下で複合体を形成できる条件で接触させること;及び(b)そのVGSCの活性を測定することを含み、その試験化合物の非存在下の活性に関してそのVGSCの活性が変化していることは、その試験化合物が前記VGSCのモジュレータであることを示す。そのようなスクリーニング法で同定された化合物は、VGSCが関係する状態の治療への、例えば疼痛の治療又は予防への使用が提案される。細胞における本発明の結合パートナーのレベルを増加させるステップを含む、その細胞における電位依存性ナトリウムチャネル(VGSC)の機能的発現を増強する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電位依存性Naチャネル(VGSC)の調節又はモジュレートに使用するための方法及び材料に関する。
【背景技術】
【0002】
VGSCは、ほぼ全ての興奮性膜に電気的興奮を授けることを担う膜貫通タンパク質である。孔は細胞膜の脱分極によって開閉し、Na+イオンを細胞内に一過性に進入可能にし、活動電位の上昇を発生する。活性化後は、VGSCは不活性化され、活動電位の持続時間を制限し、迅速な膜の再分極を可能にし、その後休止状態に戻る。既知のVGSCは全て顕著な機能的類似性を示し、このことはアミノ酸配列の高度の相同性に反映される。しかし、天然トキシンはNaチャネルのサブタイプをうまく識別することが知られている。例えば、フグのテトロドトキシン(TTX)はニューロンVGSCのサブタイプを1ナノモル濃度で選択的に遮断できる一方で、他のニューロンVGSCはマイクロモル濃度のそのトキシンでも遮断されずにいる。これらのTTX非感受性又は抵抗性(TTX−R)であるニューロンVGSCは末梢神経系でみられ、疼痛の伝達に関与する神経と専ら関連している(例えばAkopianら(1999)Nature Neuroscience2、541〜548参照)。
【0003】
WO97/01577(ロンドンユニバーシティカレッジ)は、哺乳動物知覚ニューロン由来のアミノ酸1957個の新規なTTX非感受性VGSC(Nav1.8と名付けられた)に関する。US6184349(Syntex)はVGSCについて考察している。ナトリウムチャネルNav1.8(SNS又はPN3としても知られている)は、疼痛シグナルを伝達する細胞であるAδ侵害受容器又はC繊維侵害受容器に対応する小径知覚ニューロンで専ら発現する。Nav1.8の薬理の主要な特徴の1つは、他の大抵のナトリウムチャネルを遮断する高濃度のテトロドトキシン(TTX)にそれが抵抗性であることである。疼痛のシグナル伝達に果たすNav1.8の役割の証拠は、ノックアウトマウスに、及びそのチャネルがアンチセンスオリゴヌクレオチドでダウンレギュレーションされる研究に主として起因する。これらの実験はNav1.8が炎症、神経障害及び内臓の疼痛モデルに重要であることを示唆している。
【0004】
疼痛をシグナル伝達し、TTXにも抵抗性のNav1.9(SNS2)も知覚ニューロンに専らみられる。このチャネルの特徴は、このチャネルが活動電位の発生又は伝播に関与しないが、細胞の興奮性レベルのセッティングに関与することを示唆している。Gタンパク質はNav1.9を活性化でき、Nav1.9は逆にニューロンの興奮性を増加させ、細胞がインパルスを発生の見込みを高くするという証拠がある。疼痛モデルにNav1.9が関与するという直接の証拠はないが、細胞でのその機能及び制限された分布を考えると、Nav1.9は多くの慢性疼痛状態に関連する過剰反応性の生成に主な役割を演じている可能性があろう。
【0005】
Nav1.3は成動物の脳にみられ、TTXに感受性である。知覚ニューロンには通常、Nav1.3は存在しないが、神経の損傷後にはNav1.3のレベルが強くアップレギュレーションされる。さらに、疼痛にNav1.3が関与するという直接の証拠はないが、神経の損傷後に選択的にアップレギュレーションされることは、Nav1.3が神経障害の疼痛シグナルの伝達に役割を果たしている可能性があると示唆している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、PAPIN、ペリアキシン(periaxin)及びHSPCが電位依存性ナトリウムチャネル(VGSC)の機能的発現に関与する補助タンパク質として作用できるという本発明者らの発見に由来する。
本発明は、VGSCをモジュレートできる化合物を同定するためのスクリーニング法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面では、電位依存性ナトリウムチャネル(VGSC)のモジュレータを同定する方法が提供され、その方法は、
(a)試験化合物、VGSC、並びにPAPIN、ペリアキシン及びHSPC025から選択される1つ又は複数の結合パートナーを、そのVGSCとその結合パートナーがその試験化合物の非存在下で複合体を形成できる条件で接触させるステップ、及び
(b)そのVGSCの活性を測定するステップを含み、その試験化合物の非存在下での活性に関してそのVGSCの活性が変化していることはその試験化合物が前記VGSCのモジュレータであることを示す。
【0008】
本発明の方法によって同定された化合物も、本発明の範囲内である。本発明は、電位依存性ナトリウムチャネルの機能的発現をモジュレートするための薬剤の製造への、本発明の方法によって同定された化合物の使用、並びに電位依存性ナトリウムチャネルの機能的発現をモジュレートするための薬剤の製造への、PAPIN、ペリアキシン及び/若しくはHSPC025の活性又は発現の阻害剤の使用も提供する。
【0009】
本発明は、電位依存性ナトリウムチャネルの活性に関連する疾患又は状態の治療法も提供し、その方法は、本発明の方法によって同定された化合物を、或いはPAPIN、ペリアキシン及び/若しくはHSPC025の活性又は発現の阻害剤を、その治療を必要とする個体に投与することを含む。
【0010】
本発明の方法は、細胞におけるSNSナトリウムチャネルのようなVGSCの機能的発現の増加に使用してもよい。そのVGSCの「機能的発現」のレベルは、ここでは細胞膜上で機能的なVGSCの量又は比率を記述するために使用される。このような情況において、活性は膜を通過するナトリウム電流を適当な刺激に応答して媒介する能力を意味している。
【0011】
よって、本発明の更なる側面は細胞における電位依存性ナトリウムチャネル(VGSC)の機能的発現を増強する方法を提供し、その方法は本発明の1つ又は複数の結合パートナーのレベルを増加させるステップを含む。
【0012】
本発明は、VGSCを、並びに1つ又は複数のPAPIN、ペリアキシン及びHSPC025から選択される結合パートナーを発現できる宿主細胞も提供し、前記VGSC及び/又は前記結合パートナーは前記細胞内で1つ又は複数の異種発現ベクターから発現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、一般にナトリウムチャネルの機能的発現を調節又はモジュレートできる化合物を同定するためのスクリーニング法に関する。ナトリウムチャネルの機能に関連する状態の治療に、例えば疼痛の予防又は治療に、そのような化合物を使用する方法も提供する。
【0014】
本発明は、TTX非感受性電位依存性ナトリウムチャネル(VGSC)Nav1.8(下では「SNSナトリウムチャネル」と呼ぶ)の機能的発現が、1つ又は複数の補助タンパク質との相互作用によって促進されるという発見に由来する。本発明者らは種々のタンパク質が「補助タンパク質」の役割を果たし、さらに具体的には、その「補助タンパク質」がPAPIN、ペリアキシン及び/若しくはHSPC025の1つ、2つ又は全てのタンパク質であり得ることを確定した。
【0015】
ナトリウムチャネルの機能の向上は直接のタンパク質間相互作用を介してもたらされるようである。
【0016】
以下にさらに詳しく記述するように、この相互作用をとりわけ、
(i)例えば従来のモジュレータスクリーニング目的のために使用してもよい細胞系におけるVGSCの機能的発現を増強すること、
(ii)VGSCの機能的発現を低下させることができるモジュレータを案出するための新規なターゲット(すなわちタンパク質の相互作用部位自体の破壊)を規定することに活用してもよい。
【0017】
ナトリウムチャネル
本出願は、ナトリウムチャネル、具体的には電位依存性ナトリウムチャネル(VGSC)の機能的発現の調節又はモジュレーションに関する。表1は、比較の基準としてラットNAv1.8チャネルを用いたときの種々のVGSC分子の間の配列同一性を示す。
【表1】

【0018】
具体的には、本発明は疼痛に対する応答に関連するか、又は疼痛のシグナル伝達に関与するVGSCに関する。適当なナトリウムチャネルは、好ましくは知覚ニューロンで発現されるVGSCである。例えば、適当なVGSCは知覚ニューロン特異的(SNS)VGSC、例えばNav1.8又はNav1.9であってもよいし、疼痛に応答して知覚ニューロンでアップレギュレーションされる、例えばNav1.3であってもよい。適当なVGSCはテトロドトキシン(TTX)非感受性又は抵抗性であってもよい、すなわちマイクロモル濃度のTTXで遮断されずにいてもよい。一般に、ここではNav1.8又はSNSチャネルが本発明を例示するために使用されよう。Nav1.8又はSNSナトリウムチャネルをここで参照することが他のVGSC及びVGSC変異体にも等しく適用できることは当業者に明らかであろう。
【0019】
一側面では、本発明の方法に使用するためのVGSCは、Nav1.8、Nav1.9又はNav1.3チャネルである。Nav1.8、ラットNav1.9及びラットNav1.3チャネルのヌクレオチド配列並びにアミノ酸配列は公的に入手でき、例えばラットの配列は表1に示す寄託番号でGenBankから入手できる。ラットNav1.8のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を配列番号1及び2にそれぞれ示し、ヒトNav1.8のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を配列番号3及び4にそれぞれ示す。
【0020】
本発明の方法への使用に適したVGSCは、これらのVGSCのいずれか、又はこれらのいずれかの種変異体若しくは対立遺伝子変異体であってもよい。本発明に採用される結合パートナータンパク質(又は核酸)が、自然界でそのタンパク質が存在するような完全長「基準」配列を包含しなければならないという必要条件はない。したがって、適当なVGSCは、ナトリウムチャネルとしての活性を保有するこれらのいかなるVGSCの変異体であってもよい。例えば、適当なVGSCは、Nav1.8、Nav1.9又はNav1.3配列のいかなるものとも65%、70%、75%、85%、95%又は98%を超えるアミノ酸同一性を有してもよい。
【0021】
本発明のVGSCは、下記のように結合パートナーと特異的に結合できる能力を有するいかなるVGSCであってもよい。特異的に結合することは、そのVGSCが非結合パートナーペプチドに比べて選好的に結合パートナーと結合すること、例えばVGSCがランダムに作製したペプチド配列よりもPAPIN、ペリアキシン又はHSPC025ペプチドと強く結合することを意味する。例えば、ラットNav1.8チャネルの好ましい変異体は、それぞれPAPIN、ペリアキシン及びHSPC025の結合に関与することがここに示される、配列番号2の893〜1148番、1420〜1472番及び/若しくは1724〜1844番のアミノ酸で規定される1つ若しくは複数の配列の全て若しくは一部を、又はこれらの領域の種変異体若しくは対立遺伝子変異体を保有してもよい。
【0022】
適当な変異体チャネルはナトリウムチャネルの機能を保有するものである。例えば、Nav1.8ナトリウムチャネルの適当な変異体はVGSCの正常な機能を有してもよい。VGSCの機能は下記のように測定してもよい。その変異体はNav1.8チャネルのテトロドトキシン非感受性も保有してもよい。
【0023】
適当な変異体は、p11と結合する能力も保有してもよい。例えば、適当な変異体チャネルは野生型VGSCの細胞内ドメインを保有してもよい。例えば、ラットNav1.8チャネルの好ましい変異体は、配列番号2の位置1〜127にみられるN末端細胞内ドメインを保有してもよい。適当な変異体チャネルは、p11タンパク質の結合に関与することが知られている配列番号2の53〜127番のアミノ酸若しくは75〜102番のアミノ酸を含む配列、又はこの領域の種変異体若しくは対立遺伝子変異体を有してもよい。
【0024】
適当なVGSCの変異体は、下記のように野生型VGSCの、又はその変異体の断片であってもよい。適当な断片は、例えば本来のVGSC配列の1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、50%又はそれ以上を除いた、短縮VGSCであってもよい。適当な断片は、例えば完全長配列の1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、50%若しくはそれ以上である完全長VGSCの断片から成るか、又はその断片を含んでもよい。適当な断片は、本発明の結合パートナーと結合する能力を保有するいかなる断片であってもよい。適当な断片は、ナトリウムチャネルとして機能する能力も保有してもよい。好ましくは、断片はそのチャネルに独特であるか、又はVGSC同士で少なくとも十分保存性が高いと考えられる配列を示す。そのようなVGSC断片は、例えば25〜50、25〜100、25〜200、25〜500、25〜1000、又はそれ以上のアミノ酸長であってもよい。一般に断片は少なくとも40、好ましくは少なくとも50、60、70、80又は100のアミノ酸サイズであろう。
【0025】
本発明のタンパク質の断片は、当業界で既知のいかなる適当なやり方で製造してもよい。適当な方法には、その結合パートナーをコードするDNAの断片を組換え発現させることがあるが、それに限定するものではない。結合パートナーをコードするDNAを採取し、発現させる部分のどちらかの側の適当な制限酵素認識部位を同定し、そのDNAから前記部分を切り出すことによって、そのような断片を作製してもよい。次に、商業的に入手できる標準的な発現系の適当なプロモータにその部分を作動連結してもよい。別の組換えアプローチは、適当なPCRプライマーでそのDNAの関連性のある部分を増幅することである。SNSナトリウムチャネル結合パートナーの低分子量断片(アミノ酸約20又は30個まで)も、当業界で十分既知であるペプチド合成法を用いて作製してもよい。
【0026】
本発明のタンパク質の変異体を、当業者に既知であるいかなる適当な方法で作製してもよい。「得られる」という用語は、基準となる天然配列の変更によって、例えば完全長配列又は部分長配列に変化を、例えば置換、挿入及び/又は欠失を導入することによって生成する変異体を包含する。これは、エンドヌクレアーゼで配列を切断し、続いて選択された塩基配列を(必要ならばリンカーを用いて)挿入し、連結することを含めた、いかなる適当な技術によって達成してもよい。突然変異プライマーを用いたPCR介在性突然変異形成も可能である。例えば、さらなるクローニングを促進するために制限部位を加えるか、又は除くことが好ましい場合がある。本発明の変更された配列は、マーカーの配列と少なくとも70%同一の配列を有してもよい。概して変更された配列と基準配列の間に80%以上、90%以上、95%以上又は98%以上の同一性があろう。機能性が完全に消失していないならば、完全長又は部分長配列に及ぼされたヌクレオチドの欠失、挿入及び/又は置換は、5か所まで、例えば10か所若しくは20か所まで、又はそれ以上であってもよい。
【0027】
したがって適当な変異体は、異なるアミノ酸配列を有する、天然VGSCの変更版であってもよい。その変更版は、例えばアミノ酸の置換、欠失又は付加を有してもよい。例えば少なくとも1か所、少なくとも2か所、少なくとも3か所、少なくとも5か所、少なくとも10か所、少なくとも50か所、少なくとも100か所若しくは少なくとも200か所の、最大1000か所又は500か所又は300か所までのアミノ酸の置換又は欠失を加えてもよい。例えば、1〜1000か所、5〜500か所、10〜300か所若しくは50〜200か所のアミノ酸の置換又は欠失を加えてもよい。もしも置換を加えるなら、概してその置換は、例えば以下の表にしたがう保存性置換であろう。第二列で同ブロックにあり、好ましくは第三列で同行にあるアミノ酸は、互いに置換してもよい。
【表2】

【0028】
VGSC又はその機能的変異体を付加的な異種ポリペプチド配列と融合させて融合ポリペプチドを生成させてもよい。したがって、付加的アミノ酸残基を、例えばVGSC若しくはその機能的変異体の一方又は両側の末端に供してもよい。その付加的な配列はいかなる既知の機能を果たしてもよい。概して、担体ポリペプチドを供する目的でその付加的な配列を付加してもよく、その担体ポリペプチドによってVGSC又はその機能的変異体を、例えば標識、固体マトリックス又は担体に添付できる。本発明のアッセイに融合ポリペプチドを使用することはしばしば好都合である。これは、融合ポリペプチドが組換え細胞系、例えば組換え細菌細胞系又は昆虫細胞系で容易に安価に製造され得るからである。融合ポリペプチドは野生型VGSC又はその機能的変異体よりも高レベルで発現され得る。これは概して、コードするRNAの翻訳の増加又は分解の減少が原因である。さらに、融合ポリペプチドは同定と単離が容易であり得る。概して、融合ポリペプチドは上記のようなポリペプチド配列、及び担体配列又はリンカー配列を含むであろう。その担体配列又はリンカー配列は概して非ヒト起源、好ましくは非哺乳動物起源、例えば細菌起源から得られるであろう。
【0029】
VGSC又はその機能的変異体を、その単離を助けるために例えばヒスチジン残基、T7タグ又はグルタチオンS−トランスフェラーゼを付加することによって修飾してもよい。代わりに、その異種配列は、例えば細胞からのVGSC又はその機能的変異体の分泌を促進してもよいし、又は細胞膜のような細胞内での特定の位置にその発現をターゲティングしてもよい。アミノ酸担体はアミノ酸長1〜400であり得、さらに典型的には残基長5〜200であり得る。VGSC又はその機能的変異体は、直接又は間に入るリンカー配列を介して担体ポリペプチドと連結してもよい。連結に用いられる典型的なアミノ酸残基はチロシン、システイン、リシン、グルタミン酸又はアスパラギン酸である。
【0030】
VGSC又はその機能的変異体を化学修飾、例えば翻訳後修飾してもよい。例えば、それらをグリコシル化してもよいし、又はそれらは修飾アミノ酸残基を含んでもよい。それらはアミド及びポリペプチドとの結合体を含めた多様な形のポリペプチド誘導体であり得る。
【0031】
化学修飾されたVGSC又はその機能的変異体には、1つ又は複数の残基が側鎖官能基の反応によって化学的に誘導されたものも含まれる。そのような誘導された側鎖の基には、誘導されて塩酸アミン、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基及びホルミル基を形成したものも含まれる。遊離カルボキシル基は誘導されて塩、メチル及びエチルエステル、若しくは他の種類のエステル、又はヒドラジドを形成してもよい。遊離水酸基は誘導されてO−アシル又はO−アルキル誘導体を形成してもよい。ヒスチジンのイミダゾール窒素は誘導されてN−im−ベンジルヒスチジンを形成してもよい。
【0032】
化学修飾されたVGSC又はその機能的変異体として、標準的な20種のアミノ酸の1つ又は複数のアミノ酸天然誘導体を含有するものも含まれる。例えば、プロリンの代わりに4−ヒドロキシプロリンプロリンを、又はセリンの代わりにホモセリンを用いてもよい。
【0033】
一側面では、配列番号2若しくは配列番号4の配列の、又は配列番号2若しくは配列番号4と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%若しくは少なくとも98%のアミノ酸配列の同一性を有する配列の、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個若しくは少なくとも25個の連続するアミノ酸を含むペプチドが提供され、前記ペプチドは本発明の結合パートナーと特異的に結合でき、アミノ酸長1000未満である。前記ペプチドは、例えばアミノ酸長500未満、アミノ酸長300未満、アミノ酸長200未満、アミノ酸長100未満又はアミノ酸長50未満であってもよい。
【0034】
類似性又は同一性は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403〜10のTBLASTNプログラム、又はウィスコンシンパッケージ、第8版、1994年9月(遺伝学コンピュータグループ、575 Science Drive、マディソン、ウィスコンシン州、米国、ウィスコンシン53711)の一部であるBestFitによって規定され確定される通りでもよい。好ましくは配列の比較はFASTA及びFASTP(Pearson & Lipman、1988.Methods in Enzymology183:63〜98参照)を用いて行われる。デフォルトマトリックスを用いて、パラメータを好ましくは以下のように設定する:Gapopen(ギャップの第一残基に対するペナルティ)はDNAについては−16;Gapext(ギャップに残基が加わることに対するペナルティ)はDNAについては−4;KTUPワード長はDNAでは6。代わりに、これに関連して適当なストリンジェンシー(stringency)条件で探査することによって相同性を判定できる。特定の配列相同性を有する(相補的)核酸分子間のハイブリダイゼーションを達成するために必要なストリンジェンシー条件を計算するための一般式の1つは以下である(Sambrookら、1989):Tm=81.5℃+16.6Log[Na+]+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−600/#二本鎖のbp。好ましい条件では上記のように少なくとも70%の相同性を有する分子がハイブリダイゼーションするであろう。
【0035】
UWGCGパッケージは(例えばデフォルトでの設定に使用される)同一性を計算するために使用できるBESTFITプログラムを提供している(Devereuxら(1984)Nucleic Acids_Research 12、387〜395)。代わりに、例えばAltschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290〜300;Altschul,S.F.ら(1990)J Mol Biol 215:403〜10に記載されているように、PILEUPアルゴリズム及びBLASTアルゴリズムを同一性の計算又は(概してデフォルトでの設定で)配列を並べるために使用できる。したがって、同一性は、UWGCGパッケージを用いて、デフォルトの設定でBESTFITプログラムを用いて計算してもよい。代わりに、配列同一性をPILEUPアルゴリズム又はBLASTアルゴリズムを用いて計算することができる。BLASTをデフォルトの設定で使用してもよい。
【0036】
BLAST解析を実施するソフトウェアは国立バイオテクノロジー情報センター(National Centre for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公開され入手できる。このアルゴリズムは、データベース配列中の同長のワードとアライメントを作成したとき、マッチするか、又はある正の値であるしきい値スコアTを満たすような短いワード長Wをクエリ配列から同定することによって、最初に高スコアの配列対(HSP)を同定することを必要とする。Tは隣接ワードスコアしきい値と呼ばれる(Altschulら、上記)。これらの初発の隣接するワードヒットは、検索を開始してこれらのワードを含むHSPを見つけ出すための種として作用する。累積アライメントスコアが増加できる限り、そのワードヒットを各配列に沿って両側に延ばす。以下の場合に各方向でのワードヒットの伸長を停止する:累積アライメントスコアが最大達成値から量Xだけ減少する;1つ又は複数の残基アライメントが負のスコアの累積となることが原因で累積スコアが0以下になる;又はどちらかの配列の末端に達する。BLASTアルゴリズムのパラメータであるW、T及びXはアライメントの感度と速度を確定する。BLASTプログラムは、デフォルトとしてワード長(W)に11、BLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffとHenikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915〜10919参照)アライメント(B)に50、期待値(E)に10、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用している。
【0037】
BLASTアルゴリズムは2配列の間の類似性についての統計解析を実施する(例えばKarlinとAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:5873〜5787を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって供される類似性の1つの尺度は、合計が最小となるときの確率(P(N))であり、これは2つのポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の間のマッチが偶然に発生する確率を示している。例えば、ある配列と別の配列を比較したときの合計が最小となるときの確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、さらに好ましくは約0.01未満、及び最も好ましくは0.001未満であるならば、その第一配列がその第二配列と類似しているとみなされる。
【0038】
一側面では本発明のVGSCは、以下:
(a)配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列;
(b)(a)の種変異体又は対立遺伝子変異体;
(c)(a)と少なくとも70%のアミノ酸同一性を有する(a)の変異体;又は
(d)(a)ないし(c)のいずれかの断片を含むアミノ酸配列を有する。
【0039】
そのようなVGSCは本発明の結合パートナーと結合する能力を保有するであろう。そのようなVGSCは、細胞の形質膜のような膜を介したNa電流を媒介する能力も保有してもよい。
【0040】
ナトリウムチャネル結合パートナー
本発明は、VGSC Nav1.8が結合パートナーであるPAPIN、ペリアキシン及びHSPC025タンパク質と相互作用するという発見に関する。
【0041】
PAPINはp0071結合タンパク質である。p0071は神経プラコフィリン(plakophilin)関連armadilloリピートタンパク質(NPRAP/δ−カテニン)のアイソフォームであることから、このタンパク質はプラコフィリン関連armadilloリピートタンパク質相互作用性PSD−95/Dlg−A/ZO−1(PDZ)タンパク質(PAPIN)(Deguchiら2000J.Biol Chem 275:29875〜29880)と命名された。これは、アドヘレンスジャンクションに豊富に存在する、チロシンキナーゼリン酸化の主な基質であるp120ctnとして知られているタンパク質ファミリーの一員であり、armadilloリピート配列を10か所含有する(Reynoldsら、1992 Oncogene 7:2439〜2445)。p120ctnはE−カドヘリンと直接相互作用する。armidilloリピート配列はショウジョウバエ(Drosophila)セグメントポラリティ遺伝子でもともと同定されたアミノ酸約40個の繰り返しモチーフである(Hatzfeld、1999 Int Rev Cytol 186:179〜224)。NPRAP/δ−カテニン及びp0071の機能は未知であるが、両タンパク質が細胞間ジャンクションに局在することから、それらはp120ctnのように細胞間ジャンクションの成分としての役割を果たしていると示唆される(Reynoldsら、1992、Yapら、1998 J Cell Biol 141:779〜789)。
【0042】
ペリアキシンはミエリン形成後期に可能性のある役割を有するタンパク質として最初に記載された(Gillespieら、1994 Neuron 12:497〜508)。ミエリン鞘が成熟するにしたがってペリアキシンは濃縮され、ペリアキシンがミエリン鞘の安定化に役割を果たしている可能性を示唆している。Schererら(1995 Development 121:4265〜4273)は、ペリアキシンの免疫反応性がシュワン細胞でのみ検出され、稀突起膠細胞では検出されないことを発見し、ペリアキシンは中枢神経系ではなく末梢神経系でのみ発現すると結論した。彼らは、ペリアキシンがSDS−PAGE上で末梢神経ミエリンから分離された2つのタンパク質であるp170及びSAGと類似した移動度を有することも発見した(Shumanら、1986 J Neurochem47:811〜818;Dieperinkら、1992 J Neurosci 12:2177〜2185)。これらの論文の著者らは、ミエリン形成しているシュワン細胞が、ペリアキシンの抗血清で染色したときにみられたのと同様に、P170の抗血清に対して染色されることも示し、よって、それらが同一タンパク質であると結論した。Schererらはペリアキシンがミエリン形成しているシュワン細胞によって発現され、被鞘及びミエリン形成時にその局在は変化し、よって、ミエリン形成しているシュワン細胞においてペリアキシンが特異的機能を有することを発見した。Dytrychら(1998 J Biol Chem 273:5794〜5800)はペリアキシンにはL−ペリアキシン及びS−ペリアキシンの2つのアイソフォームがあることを示した。両タンパク質はN末端にPDZタンパク質結合ドメインを有する。L−ペリアキシンは三連(3個の塩基性配列)の核局在配列(NLS)も保有している(Shermannら、2000J Biol Chem 275:4537〜4540)。NLSは異種タンパク質を核に輸送する能力を有する短鎖配列である(Nigg、1997 Nature386:779〜787)。ShermannらはL−ペリアキシンが胚性PNSで最初に発現されると、NLSはシュワン細胞の核にL−ペリアキシンも局在化させて、次にL−ペリアキシンは形質膜に局在することを示した。
【0043】
相同性検索では、HSPC025は眼にみられるロドプシンタンパク質のGタンパク質共役レセプターに関係するある配列を有するようである。ホルモン、増殖因子、神経伝達因子及び知覚刺激によってGタンパク質共役レセプター(GPCR)を刺激すると、細胞内カルシウム、サイクリックAMP、又は種々の他の細胞内セカンドメッセージが増加する場合がある。
【0044】
PAPIN、ペリアキシン又はHSPC025のいかなる1つも本発明の方法又は組成物に互換性に使用してもよいため、参照を容易にするために「結合パートナー」という用語を以後これらの3つのタンパク質の1つ若しくは複数、又はそれらのいずれかの変異体を記述するために包括的に使用する。
【0045】
PAPIN、ペリアキシン及びHSPC025を含めた本発明の結合パートナーは公的に利用できる供給源、又は既知の方法を使うことのどちらかから得てもよい。具体的には、それらはGENBANK又はEMBLデータベースを参照することによって得てもよい。例えば、ラットPAPINのDNAのGENBANK寄託番号はNM022940(配列番号5)、ラットPAPINタンパク質のGENBANK寄託番号はNP075229(配列番号6)であり、ラットペリアキシンDNAのGENBANK寄託番号はNM023976(配列番号7)、ラットペリアキシンタンパク質のGENBANK寄託番号はNP076466(配列番号8)であり、ヒトHSPC025(真核細胞翻訳開始因子2サブユニット6相互作用タンパク質EIP3S6IPとしても知られている)のDNAのGENBANK寄託番号はNM016091(配列番号9)、ヒトHSPC025タンパク質のGENBANK寄託番号はNP057175(配列番号10)である。マウスRAF67クローン(67kDaのポリメラーゼ関連因子)及びマウスHSP−66Yクローン(富チロシン熱ショックタンパク質)は本明細書で記述するHSPC025クローンと92%の相同性を有する。マウスRAF67クローンをGENBANK寄託番号AJ310346(DNA)及びCAC84554(タンパク質)として得てもよく、HSP−66YクローンをGENBANK寄託番号AB066095(DNA)及びBAB85122(タンパク質)として得てもよい。
【0046】
本発明にしたがって、本発明への使用に適した結合パートナーは天然結合パートナーペプチドであってもよいし、人工的に構築した結合パートナーであってもよい。適当な結合パートナーは完全長結合パートナータンパク質又はその種変異体若しくは対立遺伝子変異体であってもよい。例えば、適当な結合パートナーは配列番号6に示すラットPAPINのアミノ酸配列、配列番号8に示すラットペリアキシンのアミノ酸配列、又は配列番号10に示すヒトHSPC025のアミノ酸配列を有してもよい。代わりに、適当な結合パートナーは配列番号6、8又は10のポリペプチドの種変異体若しくは対立遺伝子変異体であってもよい。
【0047】
本発明に採用される結合パートナータンパク質(又は核酸)が、自然界で存在するような、完全長「基準」配列の結合パートナータンパク質を包含しなければならないという必要性はない。VGSCの機能的発現を変更する能力、例えばVGSCが膜を介したナトリウム電流を媒介する能力を保有する、(例えば配列番号6、8又は10の配列から得られる)変異体を使用してもよい。
【0048】
本発明の変更された結合パートナーの配列は、配列番号6のラットPAPIN、配列番号8のラットペリアキシン又は配列番号10のヒトHSPC025のような内因性結合パートナーの配列と少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有してよい。概してその変更された配列と基準配列、例えば天然配列の間に75%以上、85%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の同一性があろう。配列同一性は上記の方法を用いて計算できる。UWGCGパッケージのBESTFITプログラムをデフォルトの設定に使用してもよい。代わりに、PILEUPアルゴリズム又はBLASTアルゴリズムをデフォルトの設定に使用してもよい。
【0049】
機能的変異体は結合パートナーの変更版、例えば天然PAPIN、ペリアキシン又はHSPC025ポリペプチドの変更版であってもよい。そのような変更版は、例えばアミノ酸の置換、欠失又は付加を有してもよい。そのような置換、欠失又は付加を、例えば配列番号6、8及び10にそれぞれ示すラットPAPIN、ラットペリアキシン又はヒトHSPC025の配列に加えてもよい。いかなる欠失、付加又は置換も、依然として結合パートナーがVGSCに結合するのを可能にしなければならず、好ましくはその結合パートナーが本明細書で記述するようにVGSCの機能的発現を増強するのを可能にするであろう。例えば、少なくとも1か所、少なくとも2か所、少なくとも3か所、少なくとも5か所、少なくとも10か所、少なくとも20か所若しくは少なくとも50か所の、最大70か所又は50か所又は30か所までのアミノ酸の置換又は欠失が加えられてもよい。例えば1〜70か所、2〜50か所、3〜30か所、5〜20か所のアミノ酸の置換又は欠失が加えられてもよい。もしも置換を加えるなら、概してその置換は上記のように保存性置換であろう。欠失は好ましくはVGSCとの相互作用に関与しない領域のアミノ酸の欠失である。
【0050】
結合パートナー又はその機能的変異体は、その結合パートナーがVGSCと依然として結合できる限り、付加的な異種ポリペプチド配列と融合されて融合ポリペプチドを生成してもよい。そのような融合ポリペプチドは担体ポリペプチドであるか、又はリンカー配列を含有し得る。そのようなポリペプチドは上記されている。
【0051】
本発明の結合パートナー及びその機能的変異体を上記のように化学修飾してもよい。
【0052】
適当な変異体結合パートナーは上記のような野生型結合パートナーの、又はその変異体の断片であってもよい。適当な断片は、例えば本来の結合パートナーの配列の1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、又は50%以上を除去した短縮結合パートナーであってもよい。適当な断片は、例えば完全長配列の1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、若しくは50%以上である完全長結合パートナーの断片から成るか、又はその断片を含む。適当な断片はVGSCと結合する能力を保有するいかなる断片であってもよい。断片は、例えば5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80又は90以上のアミノ酸長であってもよい。
【0053】
適当な結合パートナーは、そのアミノ酸配列の一部として野生型又は変異体の結合パートナーの配列の断片を含んでもよい。そのような変異体はVGSCと結合する能力を保有するであろう。
【0054】
VGSCと結合する能力を保有するPAPIN断片は配列番号6のC末端の201個のアミノ酸(2566〜2766番のアミノ酸)若しくは配列番号6のC末端の210個のアミノ酸(2557〜2766番のアミノ酸)から成るか、又はそれを含んでもよい。そのようなPAPIN断片は、例えば201〜500、201〜1000、201〜1500、又はそれを超えるアミノ酸長であってもよい。代わりにそのような断片は、VGSCと結合する能力を保有する、配列番号6の2566番のアミノ酸から2766番のアミノ酸までの配列の断片であるか、又はその断片を含んでもよい。そのような断片は、例えば20、50、100、150、200又はそれを超えるアミノ酸長であるか、それよりも大きくてもよい。適当なPAPINは天然又は変異体のPAPINタンパク質のC末端断片であってもよい。VGSCと結合する能力を保有するPAPINの断片は、完全長タンパク質のC末端に最も近接して位置するPAPINの2つのPDZドメインから成るか、又はそれらを含んでもよい。そのような断片は、完全長天然タンパク質におけるこれらのPDZドメインに近接して位置するPAPINタンパク質の領域又はドメインをさらに含んでもよい。適当なPAPIN断片は、例えば対立遺伝子変異体若しくは種変異体である変異体PAPIN配列から、又はVGSCと結合する能力を保有する本明細書で記述する変異体の配列から得られる本明細書で記述する断片と同等の断片を含んでもよい。
【0055】
VGSCと結合する能力を保有するペリアキシンの断片は、配列番号8のC末端の482個のアミノ酸(902〜1383番のアミノ酸)から成るか、又はそれを含んでもよい。代わりに、そのようなペリアキシンの断片は、VGSCと結合する能力を保有する配列番号8の902番のアミノ酸から1383番のアミノ酸までの配列の断片であるか、又はそれを含んでもよい。そのような断片は、例えば20、50、100、150、200、300、400、又はそれを超えるアミノ酸長であるか、それよりも大きくてもよい。そのような断片は、例えば482〜500、482〜1000、482〜1500のアミノ酸長であるか、それよりも大きくてもよい。適当なペリアキシンの断片は天然ペリアキシンタンパク質のC末端断片であってもよい。適当なペリアキシン断片は、例えば対立遺伝子変異体若しくは種変異体である変異体ペリアキシン配列、又はVGSCと結合する能力を保有する本明細書で記述する変異体から得られる本明細書で記述する断片と同等の断片を含んでもよい。
【0056】
VGSCと結合する能力を保有するHSPC025の断片は、例えば20〜100、50〜200、50〜300、50〜400又は50〜500のアミノ酸長であるかそれよりも大きくてもよい。そのような断片は天然又は変異体HSPC025タンパク質のN末端断片であってもよい。
【0057】
したがって、本発明の方法に使用するためのPAPINポリペプチドは、
(a)配列番号6のアミノ酸配列;
(b)(a)の種変異体若しくは対立遺伝子変異体;
(c)(a)と少なくとも70%のアミノ酸配列の同一性を有する(a)の変異体;又は
(d)(a)ないし(c)のいずれかの断片を含むアミノ酸配列を有してもよい。
【0058】
そのようなPAPINペプチドはVGSCと結合する能力を保有するであろう。
【0059】
したがって、本発明の方法に使用するためのペリアキシンポリペプチドは、
(e)配列番号8のアミノ酸配列;
(f)(a)の種変異体若しくは対立遺伝子変異体;
(g)(a)と少なくとも70%のアミノ酸配列の同一性を有する(a)の変異体;又は
(h)(a)ないし(c)のいずれかの断片を含むアミノ酸配列を有してもよい。
【0060】
そのようなペリアキシンペプチドはVGSCと結合する能力を保有するであろう。
【0061】
したがって、本発明の方法に使用するためのHSPC025ポリペプチドは、
(i)配列番号10のアミノ酸配列;
(j)(a)の種変異体若しくは対立遺伝子変異体;
(k)(a)と少なくとも70%のアミノ酸配列の同一性を有する(a)の変異体;又は
(l)(a)ないし(c)のいずれかの断片を含むアミノ酸配列を有してもよい。
【0062】
そのようなHSPC025ペプチドはVGSCと結合する能力を保有するであろう。
【0063】
「得られる」という用語は、天然基準配列の変更によって、例えば完全長若しくは部分長配列に変化を、例えば置換、挿入及び/又は欠失を導入することによって生成する変異体を包含する。これを、例えば上記のようないかなる適当な技術によって達成してもよい。
【0064】
以下にさらに詳細に記述するように、細胞におけるSNSナトリウムチャネルの結合パートナーの発現レベルは、その結合パートナーをその細胞に導入してそれをコードする異種核酸からの発現を引き起こすか又は発現を可能にすることによって、一般に増加するであろう。
【0065】
核酸
本発明は、本発明のVGSC又は結合パートナーを製造するための、そのようなタンパク質をコードする核酸の使用も含む。例えば、ラットNav1.8チャネル(配列番号1)、ヒトNav1.8チャネル(配列番号3)、ラットPAPIN(配列番号5)、ラットペリアキシン(配列番号7)及びヒトHSPC025(配列番号9)をコードする核酸配列を配列リストに供する。本発明のアッセイ法に使用するための試験化合物もまた核酸であってもよいし、試験ポリペプチドをコードする核酸として提供されてもよい。
【0066】
一般に、本発明の、又は本発明に使用するための(例えば本発明の結合パートナー又はVGSCをコードする)核酸、例えば異種核酸を、それらの核酸の天然環境から単離及び/又は精製して、実質的に純粋若しくは均質な形態で、又は起源となる種の他の核酸を含まないか実質的に含まないように提供してもよい。ここでの使用では、「単離された」という用語はこれらの可能性の全てを含む。本発明にしたがう核酸はcDNA、RNA、ゲノムDNA及び修飾された核酸又は核酸アナログの形態であってもよいし、又はそれらから得てもよい。
【0067】
したがって、さらなる一側面では本発明は本発明の種々の方法での異種核酸分子の使用にも関し、その核酸分子は上記のSNSナトリウムチャネル結合パートナーをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0068】
ここに広く使用される「異種」という用語は、問題の(例えば本発明の結合パートナー又はVGSCをコードする)遺伝子/ヌクレオチド配列が遺伝子工学すなわち人的介入を用いて前記細胞に導入されたことを示す。異種遺伝子で内因性の同等遺伝子、すなわち通常同一の、若しくは類似した機能を果たす遺伝子を置き換えてもよいし、又は挿入された配列を内因性遺伝子又は他の配列に追加してもよい。細胞に異種の核酸は、その種類、系統又は種の細胞に自然に存在しなくてもよい。
【0069】
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、ここに含まれる情報及び参照、並びに当業界で既知の技術(例えば、Sambrook、Fritsch及びManiatis、「分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning、A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989及びAusubelら、「分子生物学の簡潔プロトコル(Short Protocols in Molecular Biology」)、John Wiley and Sons、1992参照)を用いて熟練者によって容易に調製され得る。これらの技術には、(i)例えばゲノム起源の、関連性のある核酸試料を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用、(ii)化学合成、又は(iii)cDNA配列の調製がある。
【0070】
構築物とベクター
本発明の細胞性アッセイの実施形態において、細胞に発現コンストラクト若しくはベクターの発現を引き起こすか、又は可能にすることによって、その細胞に目的のポリペプチドを導入することができる。
【0071】
その構築物はそのような系に通例包含されるであろう、下記のような他のいかなる調節配列又は構造エレメントを包含してもよい。ベクターの成分は通常は、限定はしないが1つ又は複数の複製起点、1つ又は複数のマーカー遺伝子、1つのエンハンサーエレメント、1つのプロモータ及び1つの転写終結配列を包含するであろう。これらの1つ又は複数の成分を含有する適当なベクターの構築には、当業者に既知である標準的な連結反応技術を採用する。ベクターを1つ又は複数の選択された宿主細胞で複製できるようにする核酸配列は、多様な細菌、酵母及びウイルスでよく知られている。例えば、哺乳動物細胞にベクターをクローニングするには種々のウイルス起源(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)が有用である。
【0072】
細胞に取込まれコード配列の発現に使用できる、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス粒子、ファージ、又は他のいかなる適当なベクター若しくは構築物の形態の発現ベクターがここでの使用に特に好ましい。発現ベクターは、mRNAの合成を指示するようにタンパク質をコードする目的核酸配列と作動連結するプロモータを通常含有する。多様な潜在的宿主細胞に認識されるプロモータは十分に既知である。「作動連結する」は、転写がプロモータから開始するように同一の核酸分子の一部として繋げ、適当に配置し、向きを定めることを意味する。プロモータと作動連結したDNAはプロモータの「転写制御下」にある。哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えばポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、(アデノウイルス2のような)アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びSV40(simian virus40)のようなウイルスのゲノムから得られるプロモータ、例えばアクチンプロモータ又は免疫グロブリンプロモータのような哺乳動物の異種プロモータから得られるプロモータ、並びに熱ショックプロモータから得られるプロモータによって、そのようなプロモータが宿主細胞系と適合性であるならば、制御されている。
【0073】
本発明の発現ベクターは1つ又は複数の選択遺伝子も含有してもよい。典型的な選択遺伝子は、(a)例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート若しくはテトラサイクリンである抗生物質又は他のトキシンに対する抵抗性を付与するか、(b)栄養要求性の欠失を補足するか、或いは(c)例えばバチルス(Bacillus)属のD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子のように、複合培地から入手できない重大な栄養素を供給するタンパク質をコードする。タンパク質をコードする配列は、当業界で使用されるいかなる適当なレポータ遺伝子であってもよいレポータ遺伝子を包含してもよい。そのようなレポータ遺伝子には、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ又はGFPがある。
【0074】
本発明の1つを超えるポリペプチド、例えばVGSCと結合パートナーの両方が、又は1つを超える結合パートナーが異種である細胞系を使用するとき、これらのタンパク質は単一のベクター又は2つの別々のベクターから発現してもよい。タンパク質をコードする配列の1つを超えるコピーがベクターに存在してもよい。
【0075】
細胞
したがって、以上に参照した方法は、宿主細胞に核酸を導入することをさらに包含してもよい。「形質転換」として無制限に一般に参照してもよいその導入は、いかなる利用できる技術も採用してもよい。真核細胞では、適当な技術にはリン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム介在性トランスフェクション、及びレトロウイルス又は他のウイルス、例えばワクシニアウイルス、若しくは昆虫細胞についてはバキュロウイルスを用いたトランスダクションを含めてもよい。例えば、Grahamとvan der Eb、Virology52:456〜457(1978)のリン酸カルシウム沈殿法を採用し得る。哺乳動物細胞宿主系の形質転換の一般的な側面は、米国特許第4399216号に記載されている。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術についてはKeownら、Methods in Enzymology、185:527 537(1990)及びMansourら、Nature336:348〜352(1988)を参照のこと。
【0076】
本発明の方法に使用される細胞は生物に存在するか、又は生物から抽出されてもよい。本発明の方法は、適当なタンパク質若しくはそれらのタンパク質をコードする核酸を一過性又は永続性にトランスフェクション又は形質転換した細胞若しくは細胞系で実施してもよい。ここで使用される「インビボ」という用語はこれら全ての可能性を包含する。よって、インビボ法を(天然チャネルとして、又は細胞に導入されたベクターからのどちらかの)VGSCを発現する適当に応答する細胞系で実施してもよい。その細胞系を組織培養してもよいし、又は非ヒト被験動物における細胞系異種移植片であってもよい。
【0077】
宿主細胞は、
− 本発明の1つのVGSC及び1つの結合パートナー、
− 本発明の1つのVGSC及び複数の結合パートナー、又は
− 本発明の1つのVGSC、1つ若しくは複数の結合パートナー及びp11を発現してもよい。
【0078】
細胞が本発明の1つを超える結合パートナーを発現するとき、その結合パートナーは、例えば天然PAPIN及び上述のような1つ若しくは複数のPAPIN変異体、天然ペリアキシン及び上述のような1つ若しくは複数のペリアキシン変異体、又は天然HSPC025及び上述のような1つ若しくは複数のHSPC025変異体の関連物であってもよい。代わりに、天然結合パートナーの非存在下で、1つ若しくは複数の関連変異体、例えば上記のような1つ若しくは複数のPAPIN変異体、上記のような1つ若しくは複数のペリアキシン変異体、又は上記のような1つ若しくは複数のHSPC025変異体が発現してもよい。
【0079】
代わりに、その細胞は1つ又は複数の関連性のない結合パートナーを発現してもよい。例えば細胞は、PAPIN若しくはその変異体をペリアキシン又はその変異体と共に;PAPIN若しくはその変異体をHSPC025若しくはその変異体と共に;ペリアキシン若しくはその変異体をHSPC025若しくはその変異体と共に;又はPAPIN若しくはその変異体、ペリアキシン若しくはその変異体、及びHSPC025若しくはその変異体を発現してもよい。ここで記述される結合パートナー及び/又は結合パートナー変異体のいかなる組合せも本発明の細胞に発現してもよいし、本発明のアッセイに使用してもよい。
【0080】
本明細書で記述する実施形態では、本発明の細胞はp11、又はVGSCと結合できるその変異体も発現してもよく、本発明のアッセイをそのようなp11ペプチドの存在下で実施してもよい。適当なp11ペプチドは、例えば寄託番号J03627でGenBankから入手できる配列を有するラットp11遺伝子、又は寄託番号NM_002966でGenBankから入手できる配列を有するヒトp11遺伝子であってもよい。適当なp11ペプチドはVGSCと結合する能力を保有するこれらの配列の一方の変異体又は断片であってもよい。
【0081】
細胞における結合パートナー及び/又はVGSCの発現レベルを、細胞にその結合パートナー及び/又はVGSCを直接導入することによって、又はそれをコードする異種又は内因性の核酸から発現を引き起こすか、若しくは発現を可能にすることによって増加させてもよい。したがって、本発明は本発明のVGSC及び1つ又は複数の結合パートナーを発現する細胞を含み、それらの1つ又は複数を異種発現させてもよい。
【0082】
異種遺伝子を導入せずに結合パートナー及び/又はVGSCを内因性発現する細胞を使用してもよい。すなわち、VGSC及び/又は1つ又は複数の結合パートナーを、細胞内でその細胞自体のゲノムから内因性に発現させてもよい。そのような細胞は本発明の方法に使用するために十分なレベルの結合パートナー及び/若しくはVGSCを内因性発現してもよいし、又はここに記述するような補充を必要とする低レベルの結合パートナー及び/若しくはVGSCしか発現しなくてもよい。
【0083】
本発明のアッセイを、VGSC及び本発明の1つ又は複数の結合パートナーを内因性発現する細胞で実施してもよい。本発明は、1つ又は複数の成分が異種である細胞も含む。例えば、細胞はVGSCを内因性発現してもよいし、かつ(例えば適当なベクターをトランスフェクションすることにより)刺激されて本発明の1つ又は複数の結合パートナーを発現してもよい。細胞は本発明の1つ又は複数の結合パートナーを内因性発現してもよいし、かつ刺激されてVGSC及び、所望により本発明の1つ又は複数の結合パートナーをさらに発現してもよい。代わりに、結合パートナーもVGSCも内因性発現しないが、本明細書で記述するような方法を用いて結合パートナー及びVGSCを発現するようにさせ得る細胞を使用してもよい。
【0084】
異種発現は、(例えば1つのVGSC及び/又は1つ又は複数の結合パートナーのような)本発明の1つ又は複数のポリペプチドの発現を可能にする上記のようなベクターをトランスフェクションすることによって達成してもよいし、又は細胞において1つ又は複数の内因性遺伝子を活性化することによって達成してもよい。
【0085】
例えば内因性遺伝子の発現を人工的にアップレギュレーションしてもよい。これは当業界で既知の方法によって、例えば細胞のゲノムにおいて1つ又は複数の転写因子をターゲティングして望みの遺伝子、例えばVGGS又は結合パートナー遺伝子と結合させることによって達成してもよい。適当な転写因子は目的の遺伝子と特異的に結合できるドメイン、例えばジンクフィンガードメイン、及びその遺伝子の発現を調節できる機能的ドメインを含んでもよい。そのような転写因子をタンパク質として細胞に導入してもよいし、又は細胞に導入されたコードDNAから発現させてもよい。適当な転写因子をSangamo BioSciences、Inc.(www.sangamo.com)のZFP法を用いて作製してもよい。
【0086】
さらに、例えば細胞を培養して増殖できるようにすることによって、本明細書で記述するように発現が刺激された細胞から細胞を得てもよい。また、適当な細胞は、異なる種類の細胞と融合した本発明の細胞を含む融合細胞であってもよい。
【0087】
本発明の細胞においては、前記結合パートナーが相互作用して前記VGSCの機能的発現をアップレギュレーションするように、そのVGSC及びその結合パートナーを発現するべきである。そのような宿主細胞は本発明のスクリーニング法への使用に適している。
【0088】
本発明のアッセイに使用される細胞系を、本発明の結合パートナー又はVGSCの一過性発現を達成するために使用してもよいが、本発明のさらなる側面では本発明の結合パートナー及び、必要ならばVGSCを発現する構築物を安定トランスフェクションした細胞を作製してもよい。安定形質転換された細胞系を作製する手段は当業界で十分既知であり、そのような手段をここで使用してもよい。好ましい細胞は非ニューロン細胞、例えばCHO細胞である。
【0089】
本明細書で記述する発現ベクター若しくはクローニングベクターをトランスフェクションしたか、又はそれらのベクターで形質転換された宿主細胞を従来の栄養培地で培養してもよい。培地、温度、pHなどのような培養条件を過度の実験を行わずに当業者は選択できる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコル及び実技は「哺乳動物細胞のバイオテクノロジー:実際的アプローチ(Mammalian Cell Biotechnology:a Practical Approach)」、M.Butler編JRL Press、(1991)及びSambrookら、上記に見つけることができる。
【0090】
トランスジェニック生物
上述のとおり、本発明の(例えばVGSCの発現を増加させるための異種結合パートナーを包含する)宿主細胞はトランスジェニック動物に含まれてもよく、本発明はここの方法へのトランスジェニック動物の使用をさらに提供する。本発明のトランスジェニック生物は全て、それらの複数の細胞内に、例えば本発明の異種結合パートナーをコードするクローニングされた組換えDNA又は合成DNA配列を包含する。
【0091】
トランスジェニック生物、具体的にはトランスジェニックマウスの製造に関するさらなる詳細については、(トランスジェニックマウスを製造する方法を開示するための参照としてここに組入れる)1989年10月10日公開の米国特許第4873191号及びそこに参照及び引用される多数の科学刊行物を参照のこと。
【0092】
機能的VGSCの発現の増加
前の議論は、一般に機能的ポリペプチドを製造することによって細胞における結合パートナーの濃度を増加させて、ナトリウムチャネルの機能的発現を増加させるための本発明の核酸の使用に関する。
【0093】
本発明は、本発明の結合パートナーにVGSCを曝露することを含む、前記チャネルの機能的発現を増強する方法を提供する。よって、本発明は細胞の形質膜への電位依存性ナトリウムチャネルの移行を変更する方法を提供する。その方法は、細胞における本発明の1つ又は複数の結合パートナーの濃度を変えるステップを含む。
【0094】
そのような方法を細胞におけるVGSCの機能的発現を増加するために使用してもよい。チャネルの「機能的発現」レベルを、ここでは細胞内で活性なチャネルの量又は比率を記述するために使用する。これに関連して「活性な」は適当な刺激に応答して膜を介したナトリウム電流を媒介できることを意味する。
【0095】
よって、本発明のさらなる側面は細胞におけるVGSCの機能的発現を増強する方法を提供し、その方法は細胞における本発明の1つ又は複数の結合パートナーのレベルを増加するステップを含む。
【0096】
そのVGSCは上記のように本発明のいかなるVGSCであってもよい。その結合パートナーは上記のように本発明のいかなる結合パートナーであってもよい。その細胞は上記のようにいかなる適当な細胞系であってもよい。好ましくは、そのVGSCはその細胞内で発現する。その結合パートナーも細胞内で発現してもよいし、細胞に適用されてもよい。VGSC及び/又は結合パートナーは、細胞内の内因性遺伝子から、又は例えば上記のように1つ又は複数のベクターを細胞にトランスフェクションすることによって、細胞に導入された異種遺伝子から発現してもよい。
【0097】
好ましくは、本発明の結合パートナーは細胞に適用されるか、又は細胞内で異種発現されるかのどちらかである。結合パートナーは、細胞内で発現する結合パートナーのレベルを調節するように誘導可能プロモータの制御下で発現してもよい。細胞に結合パートナーを異種的に供給することによって、VGSCの機能的発現、すなわち膜へのVGSCの動員及びその後のVGSCの活性を増強してもよい。
【0098】
VGSCの機能的発現がそのような方法で増強された細胞を、続いて本発明のスクリーニング法に使用してもよい。そのような細胞は増強されたVGSCの機能的発現を有するであろう。したがって、試験化合物が引き起こし得るVGSC活性のいかなる変化にも特に感受性であろう。
【0099】
ここに開示される情報は、結合パートナーの活性を低下させることが望まれている細胞での結合パートナーの活性を低下させ、それに応じてナトリウムチャネルの機能的発現を低下させるためにも使用してもよい。
【0100】
例えば標的遺伝子の発現のダウンレギュレーションはアンチセンス法を用いて達成してもよい。
【0101】
遺伝子発現のダウンレギュレーションにアンチセンス遺伝子又は遺伝子の部分配列を使用するにあたり、ヌクレオチド配列を「逆方向」のプロモータの制御下に置き、標的遺伝子の「センス」鎖から転写される正常mRNAと相補的なRNAを転写で回収できるようにする。例えば、Smithら、(1988)Nature 334、724〜726を参照のこと。そのような方法はコード配列と相補的なヌクレオチド配列を使用することであろう。遺伝子発現のダウンレギュレーションのさらなる選択肢にはリボザイム、例えばハンマーヘッドリボザイムの使用がある。リボザイムはmRNAのようなRNAの部位特異的切断を触媒できる(例えばJaeger(1997)「リボザイムの新しい世界(The new world of ribozymes)」、Curr Opin Struct Biol 7:324〜335、又はGibson & Shillitoe(1997)「リボザイム:その機能と使用戦略(Ribozymes:their functions and strategies from their use)」、Mol Biotechnol 7:242〜251参照)。
【0102】
のちに実施例で実証するように、本発明の結合パートナーはVGSC、具体的にはSNSナトリウムチャネルの発現のダウンレギュレーションに特別な効力を実証する。培養脊髄神経節においてSNSナトリウムチャネルの活性はチャネルを介した電流の測定によって確定される。実施例に記述するアンチセンス実験では、PAPINはその電流の75%(n=8)の阻害、ペリアキシンは61%(n=11)の阻害、かつHSPC025は電流の62%(n=9)の阻害を生じた。これらの結果は、SNSナトリウムチャネルのモジュレーションにおいて本発明の結合パートナーが特に興味深いことを示している。したがって、本発明はSNSナトリウムチャネルのようなVGSCの発現のダウンレギュレーションへの結合パートナーの使用にも関する。
【0103】
増強したVGSCの機能的発現を用いたアッセイ
新薬の同定をもたらす薬学研究が、先導化合物の発見前とさらに発見後にも極めて多数の候補物質のスクリーニングを必要とするであろうことは十分既知である。これは、薬学研究を非常に高価で時間がかかるものにしている1つの要因である。スクリーニング過程を援助する手段は商業的にかなりの重要性と有用性を有し得る。
【0104】
本発明の一側面は、上に規定するような結合パートナーを用いて達成できる増強したナトリウムチャネル機能を利用して、増強した感度を有するアッセイを提供する。そのような系(例えば細胞系)はSNSナトリウムチャネルのようなVGSCをモジュレートできる化合物を同定するために特に有用である。
【0105】
「モジュレートすること」は適当な刺激因子の存在下で、若しくはその因子に応答してチャネルの活性を遮断すること又は阻害することを包含する。代わりに、モジュレータはチャネルの活性を増強してもよい。好ましいモジュレータはチャネルブロッカー又は阻害剤である。
【0106】
本明細書で記述するスクリーニング法は、試験化合物又は推定モジュレータがVGSCの活性に変化を引き起こすことができるかを一般に評価する。VGSCによって通常示されるいかなる活性を測定してもよい。例えば、適当な活性は、VGSCの、本発明の結合パートナーと特異的に結合するか、又は複合体を形成する能力であってもよい。そのような結合活性を、本明細書で記述するような当業界に既知である方法を用いて測定してもよい。この結合活性をモジュレートする試験化合物はVGSCの潜在的モジュレータである。測定され得る別のVGSC活性は、ナトリウムチャネルとして機能する能力である。これを、本明細書で記述するような当業界で既知の方法を用いて測定してもよい。例えば、試験化合物はVGSCの存在する膜を介したナトリウム電流をそのVGSCが生成する能力に影響してもよい。そのようなアッセイは特異的刺激、例えばナトリウム電流を通常生じるであろう刺激を適用することを包含してもよい。
【0107】
本発明のこの側面は、PAPIN、ペリアキシン又はHSPC025のような本発明の結合パートナーを用いて達成し得る増強したナトリウムチャネル機能を利用したいかなるアッセイの形態、好ましくはインビボアッセイの形態を取ってもよい。「インビボ」という用語は上記のような細胞系などを包含する。よって、インビボアッセイを(天然チャネルとしての、又は細胞に導入されたベクターからの)SNSナトリウムチャネルのようなVGSC及び異種又は内因性の結合パートナーを発現する、応答性の適当な細胞系で実施してもよい。その細胞系は上記のようにp11も発現してもよい。本発明のインビボアッセイでは、結合パートナーの十分な発現を達成し、SNSナトリウムチャネルのようなVGSCを膜に動員してその機能的発現を増強することが望ましいであろう。しかし、本発明のアッセイの詳しい形式は、慣例的な技術と知識を用いる当業者により様々であってよい。
【0108】
よって、本発明は機能的発現が増強したVGSCをモジュレーションする方法を提供し、その方法は前記チャネルをそれの推定モジュレータと接触させるステップを含む。
【0109】
以下にさらに詳しく記述するように、その接触させるステップはインビボ又はインビトロであってもよい。VGSCのモジュレーション(例えば阻害又は遮断)の試験に適した1つの系は、以下の実施例に採用したCHO−SNSである。例えばWO97/01577に他の系が開示されている。実施例に詳述する手順にしたがってパッチクランプ法のホールセル配置で膜電流を慣例的に測定する。好ましい電圧固定は、約−90mVの保持電位から約−110mVから+60〜80mVの範囲の試験電位に細胞電位を段階変化させるものである。TTX−Rナトリウム電流を単離するために、TTX、4−アミノピリジン(AP)及びCdCl2をテトラエチルアンモニウムイオン(TEA)及びCsと共に使用した。しかし、当業者は類似して使用できるであろう他のそのような化合物及び化合物の組合せに気付くであろう。
【0110】
一実施形態では以下のステップを含む、VGSCのモジュレータの同定法を提供する、
(i)前記チャネルの機能的活性が(例えば細胞において本発明の結合パートナーをコードする核酸からの発現を引き起こすか、又は可能にすることによって、例えば細胞でのナトリウムチャネル結合パートナーの濃度を増加させることによって)上記のように増強した細胞を用意すること;
(ii)その細胞におけるチャネルを試験化合物と(直接又は間接に)接触させること;
(iii)そのチャネルの活性(例えば、所望により活性化因子の存在下でチャネルにより媒介される電流)を測定すること。
【0111】
好ましくは試験化合物との接触前後の活性を比較し、所望によりその相対活性を試験化合物のモジュレーション活性と相関させる。したがって、VGSCの活性をモジュレートできる化合物を同定してもよい。そのような化合物は以下にさらに詳しく記述するようなVGSC活性に関連した状態の治療又は予防に治療用途を有し得る。
【0112】
本発明の方法は、当業界に十分既知であるものと類似した高処理能力の選別に採用してもよい。例えばWO200016231(Navicyte);WO200014540(Tibotec);DE19840545(Jerini Biotools);WO200012755(Higher Council for Scientific Research);WO200012705(Pausch MH;Wess J);WO200011216(Bristol−Myers Squibb);US6027873(Genencor Intl.);DE19835071(Carl Zeiss;F Hoffman−La Roche);WO200003805(CombiChem);WO200002899(Biocept);WO200002045(Euroscreen);US6007690(Aclara Biosciences)を参照のこと。
【0113】
使用され得る化合物(推定ナトリウムチャネルモジュレータ)は、薬物スクリーニングプログラムに使用される天然又は合成化学化合物であってもよい。いくつかのキャラクタリゼーションされたか、又はキャラクタリゼーションされていない成分を含有する植物抽出物も使用してもよい。好ましい実施形態では、それらの物質は例えばその当業界で今や十分既知であるようなコンビナトリアルライブラリーの生成物として提供してもよい(例えばNewton(1997)Expert Opinion Therapeutic Patents、7(10):1183〜1194参照)。本発明のアッセイに添加してもよい推定モジュレータ化合物の量は使用される化合物の種類に応じてトライアンドエラーで通常確定される。概して、約0.01〜100nM濃度、例えば0.1〜10nMの推定モジュレータ化合物を使用してもよい。モジュレータ化合物はその相互作用を作動又は拮抗する化合物であってもよい。本発明の拮抗薬(阻害剤)が特に望ましい。
【0114】
結合パートナーとナトリウムチャネルの間の相互作用
上に規定するような結合パートナー及びSNSナトリウムチャネルのようなVGSCの相互作用は、所望により一方又は両方のタンパク質の断片を用いて研究してもよい。これを容易にするためにタンパク質又は断片を標識してもよい。
【0115】
例えば、そのタンパク質又は断片を共役パートナー、例えば標識と連結できる。ペプチド性共役パートナーに標識を共役させる技術は当業界で十分既知である。標識は融合体として発現する蛍光マーカー化合物、例えばGFPであってもよい。別の実施形態では、そのタンパク質又は断片を放射性標識してもよい。ペプチドの放射性標識は当業界で既知である種々の方法を用いて達成できる。例えば、キレート剤の使用により、又は(ヨウ素のような)ペプチドと直接反応できる材料を使った共有結合標識によって、並びに(ペプチドに存在する原子を14C又はトリチウムのような放射性同位体と置換する)直接標識によって、若しくは組換え製造したタンパク質に組込んでもよい35S−メチオニンによって、放射性同位体でペプチドを標識できる。一般に、チロシンを含有する放射性標識ペプチドは125Iを用いて、又はトリチウム交換によって調製されるであろう。放射性標識過程に利用できる一般的な技術については米国特許第5384113号並びに多数の他の特許及び他の刊行物を参照のこと。ここに使用するように、「放射性標識された」という用語は、共有結合標識若しくは共有結合による、直接置換法による、又はキレート法によるような、種々の既知のいずれかの方法によって放射性同位体と接触するようになった生成物のことをいう。
【0116】
他の適当な検出できる標識にはHAタグ、GST又はヒスチジンのようなタグがある。組換え製造されたタンパク質は、抗体で標識できるエピトープを含有する融合タンパク質としても発現してもよい。代わりに、そのタンパク質に対する抗体を慣例的な方法を用いて得ることもできる。
【0117】
本発明のさらなる側面では、上記の標識法をVGSC上にある結合パートナーの結合部位(及びその逆)の同定に使用する。そのような方法は、一方又は両方のタンパク質の断片を製造するステップ、及びその断片をそれの結合パートナー(その全体又は一部)と接触させるステップ、並びに結合が発生したかを確定するステップを一般に含むであろう。一方又は両方のパートナーを標識及び/又はタグ付けして結合の検出を容易にすることが好ましいであろう。
【0118】
例えば、SNSイオンチャネルのようなVGSCのドメインにおける、上に規定されるような結合パートナーの結合部位を同定するために、前記結合部位を含有すると考えられるドメインの小セグメントを試験してもよい。
【0119】
好ましい断片をNav1.8イオンチャネルのドメインから選択してもよい。好ましい断片はVGSCに独特であるか、又は電位依存性ナトリウムチャネルで十分保存されているかのどちらかであると考えられる配列を表す。
【0120】
好ましい断片には、アミノ酸位置893〜1148、1420〜1472及び/又は1723〜1844(配列番号2のラットNav1.8ナトリウムチャネル配列にしたがった番号)がある。
【0121】
GST「プルダウンアッセイ」を用いて結合フラグメントを同定できる。簡潔には、リポフェクションによってCOS−7細胞で生成したタンパク質、例えばPAPIN、ペリアキシン又はHSPC025タンパク質を、細菌で作成したGSTに融合させたVGSCの断片、例えば上記のような断片と混合する。これらのタンパク質複合体をグルタチオンビーズで集めると、そのVGSC断片がそのタンパク質に対して1つ又は複数の結合部位を有する場合にのみそのタンパク質が回収される。他の実施形態では、「プルダウン」アッセイの代わりに、又はそれに加えて免疫共沈若しくはオーバーレイアッセイを行うことができる。
【0122】
組換えPCR又はウラシル含有ベクター系によって例えば点突然変異を用いて、その結合部位をさらに研究できる(Fitzgeraldら1999 J Physiology 516.2、433〜446)。(例えば上記の断片に対応して)VGSCドメインの標的cDNAがかなり短いことがあるので、組換えPCRが好ましいことがある。VGSCとその結合パートナーの間の相互作用部位を精密に同定するために、例えばGST「プルダウン」アッセイで突然変異断片を再び試験してもよい。
【0123】
一旦同定されると、その結合部位を3次元モデル化して模型を作製してもよい。代わりに、例えば結合パートナーとして(所望によりファージディスプレイで)化合物をスクリーニングするためにその結合部位を直接使用してもよい。
【0124】
相互作用のモジュレータのアッセイ
本発明のさらなる側面では、細胞におけるVGSCの機能的発現のモジュレータのアッセイを提供し、そのアッセイは、
(a)VGSC、1つ又は複数の結合パートナー、及び推定モジュレータ化合物を、そのVGSC及び結合パートナーがモジュレータの非存在下で複合体を形成できる条件で接触させるステップ;並びに
(b)前記モジュレータ化合物によって引き起こされる複合体形成の阻害度を測定するステップ
を含む。
【0125】
本発明は細胞におけるVGSCの機能的発現のモジュレータのアッセイをさらに提供し、そのアッセイは、
(a)VGSC、1つ又は複数の結合パートナー、及び推定モジュレータ化合物を、そのVGSC及び結合パートナーがモジュレータの非存在下で複合体を形成できる条件で接触させるステップ;並びに
(b)そのVGSCの存在する膜を通過するナトリウム電流を生成するような刺激にそのVGSCを曝露するステップ;
(c)前記モジュレータ化合物によって引き起こされる電流の阻害度を測定するステップ
を含む。
【0126】
2つのタンパク質の相互作用を研究するために当業界で広く使用される1つのアッセイ形式は、ツーハイブリッドアッセイである。このアッセイを本発明に使用するために改変してもよい。ツーハイブリッドアッセイは、一方が酵母GAL4結合ドメインのようなDNA結合ドメイン(DBD)を含む融合タンパク質で、もう一方がGAL4又はVP16に由来するような活性化ドメインを含む融合タンパク質である2つのタンパク質を宿主細胞に発現させることを含む。そのような場合に(細菌、酵母、昆虫又は哺乳動物の、具体的には酵母又は哺乳動物の細胞であってもよい)宿主細胞はDBDと適合性のDNA結合エレメントを含むプロモータを有するレポータ遺伝子構築物を保有するであろう。そのレポータ遺伝子はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、グリーン蛍光タンパク質(GFP)及びβ−ガラクトシダーゼのようなレポータ遺伝子でもよく、フェラーゼが特に好ましい。
【0127】
ツーハイブリッドアッセイは、Fields及びSong、(1989、Nature 340;245〜246)により開示されたものししたがってもよい。そのようなアッセイで、酵母GAL4転写因子のDNA結合ドメイン(DBD)及び転写活性ドメイン(TAD)を、相互作用を研究する第一及び第二分子とそれぞれ融合する。GAL4転写因子の機能は、目的の2分子が相互作用する場合にのみ回復する。よって、レポータ遺伝子の転写を活性化できるGAL4のDNA結合部位と作動連結した前記レポータ遺伝子の使用によって、分子の相互作用を測定してもよい。
【0128】
よって、ツーハイブリッドアッセイは潜在的モジュレータ化合物の存在下で実施してもよく、そのモジュレータの効果は、モジュレータの非存在下での転写レベルに比べたレポータ遺伝子構築物の転写レベルの変化に反映されるであろう。
【0129】
ツーハイブリッドアッセイが行われ得る宿主細胞には哺乳動物、昆虫及び酵母の細胞があり、(S.セリビジエ(S.cerivisiae)及びS.ポンベ(S.pombe)のような)酵母細胞が特に好ましい。
【0130】
さらに、結合パートナーとVGSCの間の相互作用を哺乳動物細胞で評価してもよい。結合パートナーがゼロのバックグラウンドで、又は内因性発現した結合パートナーのバックグラウンドで、又は(過剰)発現した結合パートナーのバックグラウンドで、VGSCを(過剰)発現する細胞又は細胞系が得られる。これは、結合パートナーと共に、又は結合パートナーなしにVGSCを細胞に(同時)トランスフェクションすることによってなし得る。いかなる細胞を選択してもよく、VGSCの発現及び/又は結合パートナーの発現は一過性でも安定でもよい。結合パートナーを(過剰)発現している細胞においてそのチャネルを通過するイオンフラックスを、結合パートナーを(過剰)発現しないか、又は低レベルの結合パートナーの発現しか示さない細胞と比較することによってVGSCに及ぼす結合パートナーの作用を確定できる。VGSCに及ぼす結合パートナーの作用を測定する他の方法は、細胞全体における、又は単離した膜におけるVGSCの膜局在の程度をアッセイすることによる。細胞免疫蛍光アッセイでの抗体染色によって、又は膜画分のウエスタンブロット分析によって、又は細胞全体若しくは膜画分へのトキシンの結合によってVGSCの局在を評価できる。結合パートナーとVGSCの免疫共沈アッセイでもその相互作用を得ることができる。本発明の阻害剤は、VGSCの機能若しくは膜局在、又は結合パートナーを(過剰)発現する細胞における結合パートナーとVGSCの間の免疫共沈の程度を阻害するであろう。
【0131】
別のアッセイ形式は、結合パートナーとVGSCの間の相互作用を、これらのタンパク質の一方を検出可能な標識(上を参照)で標識して、所望により固形支持体に固定化したもう一方のタンパク質と接触させることによってインビボ又はインビトロで直接測定するものであり、このとき固定化はタンパク質を互いに接触させる前又は後のどちらかに行う。
【0132】
固形支持体に所望により固定化されたタンパク質は、固形支持体に結合したタンパク質に対する抗体を用いるか、又はそれ自体が既知である他の技術を介して固定化してもよい。以下の実施例には、SNSナトリウムチャネルをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)と融合させた融合タンパク質を利用する、好ましいインビトロ相互作用が例証されている。このタンパク質をグルタチオンセファロースビーズ又はグルタチオンアガロースビーズに固定化してもよい。
【0133】
上記のタイプのインビトロアッセイ形式では、推定阻害剤化合物が固定化GST−SNSナトリウムチャネルと結合する標識結合パートナー(例えば下記のGFP融合体)の量を減少させる能力を確定することによって、その阻害剤化合物をアッセイできる。これはSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によってグルタチオンビーズを分画することで確定してもよい。代わりに、ビーズを洗浄し未結合のタンパク質を除いてもよく、すると例えば適当なシンチレーションカウンターで存在する標識の量を計数することによって、結合したタンパク質の量を確定できる。
【0134】
別のアッセイ形式は解離促進ランタニド蛍光免疫試験(DELFIA)(Ogataら、1992)である。これは2つの高分子の相互作用を測定するための固相性システムである。概して、1つの分子(VGSC又は結合パートナー)をマルチウェルプレートの表面に固定化し、もう一方の分子を溶液状態でこれに加える。結合したパートナーの検出は希土類金属のキレートから成る標識を用いてなされる。この標識を相互作用する分子に直接接触させることもできるし、その分子に対するか、又はその分子のエピトープタグに対する抗体を介してこの標識をその複合体に導入してもよい。代わりに、標識として使用されるビオチン及びストレプトアビジン−希土類キレートとその分子を接触させてもよい。標識に使用される希土類はユウロピウム、サマリウム、テルビウム又はジスプロシウムであってもよい。洗浄して未結合の標識を除いた後、低pH緩衝液を含む界面活性剤を加えて希土類金属をキレートから解離させる。次に、高度に蛍光を発する金属イオンを時間分解蛍光測定法で定量する。この技術のために、ストレプトアビジン、並びにグルタチオンS−トランスフェラーゼ及びヘキサヒスチジンに対する抗体を含めた多数の標識試薬が商業的に入手できる。
【0135】
代わりの様式では、2つのタンパク質の一方を蛍光ドナー部分で標識し、もう一方をドナーからの発光を減衰できるアクセプターで標識してもよい。これによって、本発明のアッセイを蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって行うことが可能となる。この様式では、2つのタンパク質が相互作用するときドナーの蛍光シグナルは変化するであろう。相互作用をモジュレートするモジュレータ候補化合物の存在は、ドナーの未変化の蛍光シグナルの量を増加又は減少させるであろう。
【0136】
FRETは本質的に当業界で既知の技術であり、よって精密なドナー及びアクセプター分子、並びにそれらが結合パートナー及びVGSCタンパク質と連結する手段は文献の参照によって成し遂げてもよい。
【0137】
VGSCと結合パートナーの間の相互作用を蛍光偏光によって測定してもよい。概して、結合パートナーは化学合成を介して単離されたペプチドとして、又は組換えペプチドとして、又は組織若しくは細胞起源から精製されたペプチドとして得られる。完全長結合パートナー又はその断片を、その結合相互作用に関与すると考えられるその結合パートナー及びVGSC分子の領域を表すVGSCペプチドと組合わせて採用してもよい。
【0138】
そのアッセイでは2つのペプチドの一方を、概して蛍光標識である適当な標識で標識する。その蛍光ペプチドを試験管に入れ、偏光フィルターを通過した単色光を試験管まで到達させる。蛍光団は偏光束により励起し、生じた発光を測定する。溶液状態の低分子ペプチドの回転挙動が原因で、その発光は全方向に散乱するであろう。ペプチドがそれよりも大きな結合パートナーと相互作用すると、この回転挙動は変化し偏光の維持と発光の散乱の減少を生じる。阻害剤はその発光の偏光度から複合体の回転エネルギーの変化を読み出すことによってスクリーニングされるであろう。
【0139】
適当な蛍光ドナー部分は、蛍光発生エネルギーを別の蛍光発生分子又は化合物の部分に移動できるものであり、クマリン、並びにフルオレセイン、ロドール(rhodol)及びロダミンのような関連色素、レゾルフィン、シアニン色素、ビマン、アクリジン、イソインドール、ダンシル色素、ルミノール及びイソルミノール誘導体のようなアミノフタルヒドラジン、アミノフタルイミド、アミノナフタルイミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノヒドロキノン、並びにユウロピウム及びテルビウム複合体及び関連化合物があるが、それらに限定されない。
【0140】
適当なアクセプターにはクマリン及び関連蛍光団、フルオレセインのようなキサンテン、ロドール及びロダミン、レゾルフィン、シアニン、ジフルオロボラジアザインダセン、並びにフタロシアニンがあるが、それらに限定されない。
【0141】
好ましいドナーはフルオレセインで、好ましいアクセプターにはロダミンとカルボシアニンがある。Aldrich Chemical Company Ltd、ジリンガム、ドーセット州、イギリスから入手できるこれらのフルオレセイン及びロダミンのイソチオシアネート誘導体を、結合パートナー及びERを標識するために使用してもよい。カルボシアニンの付着については、例えばGuoら、J.Biol.Chem.、270;27562〜8、1995を参照のこと。
【0142】
アッセイ形式には、蛍光検出を用いるよりもむしろ、表面増強ラマン分光(SERS)又は表面増強共鳴ラマン分光(SERRS)を用いて標識と相互作用を検出する方が好ましいことがある(例えばWO97/05280参照)。
【0143】
代わりとなるアッセイ形式はシンチレーション近接アッセイ(SPA、Amersham Biosciences、イギリス)である。SPAは刺激されて発光できるシンチレータを含有する微細ビーズを使用する。この刺激によるイベントは、目的の放射性標識分子がビーズの表面に結合している場合にのみ起こる。レセプター−リガンド結合、エンザイムアッセイ、ラジオイムノアッセイ、タンパク質間及びタンパク質−DNA相互作用を含めた特定の応用のために、種々のコーティングを用いて特定の種類のビーズを製造してもよい。
【0144】
相互作用のモジュレータ
さらなる側面において、本発明はペプチド化合物及びそのような化合物を考案し製造するための工程を提供し、その工程は、互いに相互作用するVGSC部分及び結合パートナー軽鎖、例えば以下の実施例に記述するようなアミノ末端に基づいている。
【0145】
推定阻害剤化合物であるモジュレータは結合パートナー及びVGSCタンパク質の配列から得ることができる。結合パートナー及びVGSCの間の相互作用を担っているこれらのタンパク質の領域からのアミノ酸5〜40個の、例えばアミノ酸6〜10個のペプチド断片についてこの相互作用を破壊する能力を試験してもよい。どちらかのタンパク質における相互作用部位に対する抗体は推定阻害剤化合物のさらなるクラスを形成する。候補阻害剤抗体をキャラクタリゼーションし、それらの結合領域を確定して、結合パートナーとVGSCの間の相互作用の破壊を担う一本鎖抗体及びその断片を提供してもよい。
【0146】
本発明のスクリーニング法については、VGSCの機能的発現に作用を有し得るいかなる化合物も使用してもよい。そのような作用を、例えばそのチャネルに及ぼす直接作用によって、又は結合パートナーとVGSCの間の相互作用を間接的に遮断若しくは妨害することによって媒介してもよい。
【0147】
一側面では、VGSCの機能的発現のダウンレギュレーションに使用するための化合物は、VGSC及び/又は結合パートナーに特異的に結合する化合物であってもよい。例えば、そのような化合物はPAPINのC末端領域と結合してもよい。化合物は、配列番号2の893〜1148番、1420〜1472番及び/若しくは1724〜1844番のアミノ酸、又は変異体配列の同等の位置でNav1.8遺伝子の領域と結合してもよく、それによってそれぞれPAPIN、ペリアキシン及び/又はHSPC025の結合を妨害してもよい。したがって化合物は、VGSCと結合パートナーの間の結合を妨害し、それによってその結合パートナーによって通常引き起こされるVGSCの機能的発現の増強を妨害してもよい。
【0148】
使用され得る化合物(推定VGSCモジュレータ)は薬物スクリーニングプログラムで使用される天然又は合成化学化合物であってもよい。いくつかのキャラクタリゼーションされたか、又はキャラクタリゼーションされていない成分を含有する植物抽出物も使用してもよい。好ましい実施形態では、その物質を例えば当業界で今や十分既知であるようなコンビナトリアルライブラリーの生成物として提供してもよい(例えばNewton(1997)Expert Opinion Therapeutic Patents、7(10):1183〜1194参照)。本発明のアッセイに添加され得る推定モジュレータ化合物の量は、使用される化合物の種類に応じてトライアンドエラーで通常確定されるであろう。概して、約0.01〜100nM濃度、例えば0.1〜10nMの推定モジュレータ化合物を使用してもよい。モジュレータ化合物はその相互作用の作動又は拮抗のどちらかを行う化合物であってもよい。本発明の拮抗薬(阻害剤)が特に望ましい。
【0149】
さらなる側面において、本発明はペプチド化合物及びそのような化合物を考案し製造するための工程を提供し、その工程は、互いに相互作用するVGSC部分及び結合パートナー部分、例えば以下の実施例に記述するような領域に基づいている。
【0150】
推定阻害剤化合物であるモジュレータを結合パートナー及びVGSCタンパク質の配列から得ることができる。結合パートナー及びVGSCの間の相互作用を担うこれらのタンパク質の領域からのアミノ酸5〜40個の、例えばアミノ酸6〜10個のペプチド断片についてこの相互作用を破壊する能力を試験してもよい。例えば、そのようなペプチドを配列番号2に示すようなラットNav1.8ナトリウムチャネルの893〜1148番、1420〜1472番若しくは1724〜1844番のアミノ酸の領域からか、又は配列番号6に示すようなラットPAPINタンパク質のC末端の120個のアミノ酸から得てもよい。
【0151】
どちらかのタンパク質における相互作用部位に対する抗体は推定阻害剤化合物のさらなるクラスを形成する。候補阻害剤抗体をキャラクタリゼーションし結合領域を確定して、結合パートナーとVGSCの間の相互作用の破壊を担う一本鎖抗体及びその断片を提供してもよい。適当な抗体はVGSC又は結合パートナーのどちらかと結合することによって、これらの分子の間の相互作用を妨害又は遮断してもよい。
【0152】
本発明のVGSC又は結合パートナーの特異的エピトープに対する抗体を作製してもよい。例えば、VGSCと結合パートナーの間の相互作用に関与する上記のようなそれらの領域に特異的な抗体を作製してもよい。
【0153】
本発明の目的のためには、「抗体」という用語は、そうでないと詳記しない限り、本発明のVGSC又は結合パートナーと結合する断片を包含する。そのような断片にはFv、F(ab’)及びF(ab’)断片並びに一本鎖抗体がある。さらに、その抗体及び断片はキメラ抗体、CDRグラフト抗体又はヒト化抗体であってもよい。
【0154】
本発明の抗体はいかなる適当な方法によっても製造することができる。抗体を調製及びキャラクタリゼーションするための手段は当業界で十分既知である。例えば、Harlow と Lane(1988)「抗体:実験室マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク州を参照のこと。例えば宿主動物においてポリペプチド全体又はその断片、例えば以下で「免疫原」とする抗原性エピトープに対する抗体を作製することによって抗体を製造してもよい。
【0155】
ポリクローナル抗体の製造法は、適当な宿主動物、例えば実験動物に免疫原を免疫し、その動物の血清から免疫グロブリンを単離することを含む。したがって、その動物に免疫原を接種し、次にその動物から血液を取り出し、IgG画分を精製してもよい。
【0156】
モノクローナル抗体の製造法は、希望の抗体を生成する細胞を不死化させることを含む。接種された実験動物の脾臓細胞を腫瘍細胞と融合させることによってハイブリドーマ細胞を製造してもよい(KohlerとMilstein(1975)Nature 256、495〜497)。
【0157】
希望の抗体を生成する不死化細胞を、慣例的な手順で選択してもよい。ハイブリドーマを培養して増殖させるか、腹水を形成させるために腹腔内に注射するか、又は同種宿主若しくは免疫無防備状態の宿主の血流中に注射してもよい。ヒトリンパ球のインビトロ免疫後にEBウイルス(Epstein−Barrウイルス)でそのリンパ球を形質転換することでヒト抗体を調製してもよい。
【0158】
モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の両方の製造のためには、実験動物にはヤギ、ウサギ、ラット又はマウスが適している。要求があれば免疫原を結合体として投与してもよく、その結合体では免疫原は例えば1つのアミノ酸残基の側鎖を介して適当な担体と結合する。その担体分子は概して生理学的に許容されうる担体である。得られる抗体を単離し、要求があれば精製してもよい。
【0159】
抗体又は他の化合物が、それが特異性を示すタンパク質と選好的又は高親和性で結合するが他のタンパク質とは実質的に結合しないか、又は低親和性でしか結合しないとき、その抗体又は他の化合物はそのタンパク質と「特異的に結合」する。抗体の特異的結合能を確定するための競合結合又は免疫放射測定分析の多様なプロトコルは当業界で十分既知である(例えばMaddoxら、J.Exp.Med.158、1211〜1226、1993参照)。そのようなイムノアッセイは、概して特異的タンパク質とその抗体の間の複合体の形成、及び複合体の形成の測定を必要とする。
【0160】
さらなる側面では、VGSCの機能的発現の減少をVGSC遺伝子からの発現の阻害によって達成してもよい。例えば、標的遺伝子の発現のダウンレギュレーションをアンチセンス技術又はRNA干渉を用いて達成してもよい。
【0161】
遺伝子発現をダウンレギュレーションするためにアンチセンス遺伝子又は部分遺伝子配列を使用するにあたり、ヌクレオチド配列を「逆方向」のプロモータの制御下に置き、転写で標的遺伝子の「センス」鎖から転写した正常なmRNAと相補的なRNAを回収できるようにする。例えばSmithら、(1988)Nature 334、724〜726を参照のこと。そのような方法はコード配列と相補的なヌクレオチド配列を使用することであろう。遺伝子発現のダウンレギュレーションのためのさらなる選択肢には、リボザイム、例えばハンマーヘッドリボザイムの使用がある。リボザイムはmRNAのようなRNAの部位特異的切断を触媒できる(例えばJaeger(1997)「リボザイムの新しい世界(The new world of ribozymes)」、Curr Opin Struct Biol 7:324〜335、又はGibson & Shillitoe(1997)「リボザイム:その機能と使用戦略(Ribozymes:their functions and strategies from their use)」 Mol Biotechnol 7:242〜251参照)。
【0162】
RNA干渉は低分子干渉性RNA又はサイレンシングRNA(siRNA)として知られている低分子二本鎖RNA(dsRNA)二本鎖の使用に基づいている。そのような分子は、それらの分子が配列同一性又は相同性を共有する標的遺伝子の発現を阻害できる。概してdsRNAをマイクロインジェクション又はトランスフェクションのような技術によって細胞に導入してもよい。RNA干渉法は、例えばHannon(2002)Nature418:244〜251及びElbashirら(2001)Nature 411:494〜498に記載されている。
【0163】
モジュレーションの特異性
SNSナトリウムチャネルのモジュレータのいかなる同定法も細胞に基づく系を利用するが、そのような方法は、例えば乳酸デヒドロゲナーゼアッセイキット(Sigma)の使用によって、アッセイにおける細胞の生存を試験するステップをさらに包含してもよい。このステップは、試験薬剤による生細胞の機能のいかなる干渉の指示を供してもよい。
【0164】
治療用組成物とその使用
下に使用されるように、「VGSCモジュレータ」という用語は、本発明のいかなるアッセイ法又は設計法を用いて同定してもよい、上のいかなる及び全てのモジュレータ化合物を含むことを意図している。
【0165】
上記のようなVGSCモジュレータを天然環境から単離及び/又は精製して、実質的に純粋若しくは均質な形態で、又はそれらの出所若しくは起源からの他の材料を含まないか実質的に含まないで提供してもよい。ここでの使用では、「単離された」という用語はこれらの可能性の全てを含む。それらのモジュレータを所望により標識するか、又は他の化合物と結合させてもよい。
【0166】
VGSCモジュレータは広範囲の疾病の治療又は予防に有用であってもよい。
【0167】
VGSCモジュレータを医薬組成物に製剤できる。これらの組成物は上の物質の1つに加えて、薬学的に許容されうる添加剤、担体、緩衝剤、安定化剤又は当業者に十分既知である他の材料を含んでもよい。そのような材料は無毒であるべきで、活性成分の有効性を妨害してはならない。担体又は他の材料の精密な性質は投与経路、例えば経口、静脈内、経皮若しくは皮下、経鼻、筋肉内、腹腔内経路に依存し得る。
【0168】
経口投与用の医薬組成物は錠剤、カプセル剤、粉剤又は液剤の剤形であってもよい。錠剤はゼラチン又はアジュバントのような固形担体を包含してもよい。液体医薬組成物は一般に水、石油、動物油若しくは植物油、鉱物油又は合成油のような液体担体を包含する。生理食塩水、ブドウ糖若しくは他の糖水溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールのようなグリコールを包含してもよい。
【0169】
静脈内、経皮若しくは皮下注射又は患部への注射のためには、活性成分は、発熱物質を含まず適当なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容されうる水溶液の形態であろう。関連する当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸化リンゲル注射液のような等張賦形剤を用いて適当な溶液を十分調製できる。必要に応じて保存剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤及び/又は他の添加剤を包含させてもよい。
【0170】
遅延放出のためには、当業界で既知の方法にしたがって、生体適合性ポリマーから形成されるマイクロカプセルの、又はリポソーム担体の剤形のような徐放用製剤のための医薬組成物にモジュレータを包含させてもよい。
【0171】
ペプチドの連続放出のためには、そのペプチドを、ポリラクチド又は米国特許第5320840号に記載されているような両親媒性ブロック共重合体から得られる生分解性ヒドロゲルのような水溶性ポリマーと結合させてもよい。米国特許第5024841号に記載されているようなコラーゲン性マトリックス移植片もペプチド治療薬の持続性送達に有用である。自硬性で、液体形で送達後にインシトゥ(in situ)で移植片を形成する生分解性ポリマーを包含する組成物も、具体的には神経周囲領域への徐放性の皮下送達に有用である。このような組成物は、例えば米国特許第5278202号に記載されている。
【0172】
よってさらなる側面では、本発明はVGSCモジュレータペプチドをコードする核酸分子を含む医薬組成物及び治療法又は診断法へのその使用を提供する。
【0173】
さらなる側面では、本発明は上に規定されるような1つ又は複数のVGSCモジュレータを含む医薬組成物及び治療法又は診断法へのその使用を提供する。
【0174】
さらなる側面では、本発明は治療用の薬剤の調製に使用するための上のVGSCモジュレータ及び核酸分子を提供する。
【0175】
一側面では、本発明は哺乳類被験動物において痛覚脱失を生成させる方法を含み、その方法はその被験動物に本発明のVGSCモジュレータを投与することを含む。そのチャネルのモジュレータは知覚ニューロンに沿ったインパルスの伝達を妨害してもよく、よって急性、慢性又は神経障害性の疼痛の治療に有用であってもよい。
【0176】
急性の疼痛は一時的で、一般に2、3秒又はそれ以上持続する。急性疼痛は通常突然始まり、一般に身体に対する急激な損傷の襲来の、又は強度の平滑筋活性のシグナルである。急性疼痛は慢性疼痛へと速やかに進化し得る。慢性疼痛は一般に数週間、数か月又は数年のような長期間発生する。
【0177】
本発明のVGSCモジュレータは急性若しくは慢性疼痛の治療若しくは予防に、又は急性疼痛が慢性疼痛に進化するのを妨害するために使用してもよい。疼痛の治療は、疼痛レベルの減少から疼痛の完全な消失まで、疼痛症状のいかなるレベルの軽減も包含することを意図する。予防には疼痛の開始の予防、及び疼痛の悪化、例えば疼痛症状の悪化又は急性疼痛から慢性疼痛への進行の予防がある。
【0178】
本発明のVGSCモジュレータで治療又は予防し得る慢性疼痛の種類の例には骨関節症、慢性関節リウマチ、神経障害性疼痛、癌性疼痛、三叉神経痛、原発性及び続発性痛覚過敏、炎症痛、侵害受容痛、背側ろう、幻肢痛、脊髄損傷痛、中枢痛、疱疹後痛及びHIV性疼痛、非心臓胸部痛、過敏性腸症候群並びに腸疾患に伴う疼痛がある。
【0179】
さらなる側面では、疼痛を発生するリスクがある被験者におけるそのような疼痛の進行を妨害する方法を提供し、その方法はその被験者に本発明のVGSCモジュレータを投与することを含む。
【0180】
治療される状態に応じて単独で、又は他の治療薬(例えばNSAIDSのような鎮痛作用を有する治療薬)と組合わせて、同時に又は連続的に組成物を投与してもよい。
【0181】
(例えば上記のような結合パートナー及びVGSCの相互作用を阻害するように設計されたか、又は阻害することが発見されたもののような)ペプチドを経皮イオン導入によって好ましくは投与してもよい。神経周囲部位に化合物を送達する特に有用な手段の1つは経皮送達である。この送達形式は当業界で既知の方法にしたがって作用させることができる。一般に、経皮送達は選択された皮膚領域に化合物をゆっくりと送達することを可能にする経皮「パッチ」の使用を必要とする。そのようなパッチは、一般に化合物の全身送達を供するために使用されるが、本発明に関連してそのような部位特異的送達は神経突起が増殖する選択された領域における化合物の濃度を増加させることが期待できる。経皮パッチ送達系の例は米国特許第4655766号(吸水性で浸透圧に駆動される系)及び米国特許第5004610号(速度制御された経皮送達系)に提供される。
【0182】
ペプチドの経皮送達のための経皮送達は、米国特許第5032109号(電解経皮送達系)及び米国特許第5314502号(電動イオン導入送達装置)に記載されているようなイオン導入法を用いて好ましくは実施してもよい。
【0183】
経皮送達のためには、脂溶性物質(例えば脂肪族カルボン酸、脂肪族アルコール)又は水溶性物質(例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセロール、プロピレングリコールなどのようなアルカンポリオール)のような浸透増強物質を包含することが好ましいことがある。さらに、米国特許第5362497号に記載されているように「超吸水性樹脂」を経皮製剤に加えてさらに経皮送達を増強してもよい。そのような樹脂の例にはポリアクリレート、けん化酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、架橋ポリビニルアルコール−無水マレイン酸共重合体、けん化ポリアクリロニトリルグラフト共重合体、でんぷんアクリル酸グラフト共重合体などがあるが、それに限定されない。そのような製剤を目的領域の閉鎖包帯として供してもよいし、又は上記の1つ又は複数の経皮パッチ形態に供してもよい。
【0184】
さらに別の実施形態では、その化合物を硬膜外注射によって投与する。膜の浸透を増強する手段には、例えばリポソームへのペプチドの封入、組成物への界面活性剤の添加、又はイオン会合性薬剤の添加があり得る。髄膜バリアの破壊に有効な投薬用高張溶液を被験者に投与することを包含する、膜透過性の増強手段も本発明に含まれる。
【0185】
モジュレータは低速輸液によっても投与され得る。この方法は、投与が上に指摘した髄腔内又は硬膜外経路を介する場合に特に有用である。速度を調節して化合物を送達するのに有用な多数の埋込み可能な、又は体内取付け可能なポンプが当業界で既知である。米国特許第4619652号に記載されているそのようなポンプの1つは持続性の流速で、又は間欠的なパルスで化合物の送達に使用できる体内取付け可能なポンプである。必要な範囲、例えば神経周囲領域に化合物を送達するためにポンプの真下に注入部位が備わっている。
【0186】
他の治療法では、当業界で既知の方法にしたがって経口又は経鼻吸入によってモジュレータを与えてもよい。ペプチドを投与するためには、当業界で既知の方法にしたがって、経口又は経鼻送達に適したマイクロカプセルにそのようなペプチドを組入れることが望ましいことがある。
【0187】
個体に与えられるのが本発明にしたがうペプチド、抗体、核酸分子、低分子、又は他の薬学的に有用な化合物であろうと、投与は個体への利益を示すのに十分な「予防有効量」又は(場合により予防は治療とみなし得る)「治療有効量」であることが好ましい。投与される実際の量、並びに投与速度及び時間的経過は治療されるものの性質と重篤度に依存するであろう。治療の処方、例えば投与量などの決定は、一般医及び他の医師の責任の範囲内であり、概して治療する疾病、個々の患者の状態、送達部位、投与法及び一般医に既知である他の要因を考慮する。上に指摘した技術及びプロトコルの例はRemingtonの「薬学(Pharmaceutical Sciences)」、第16版、Osol、A.編、1980に見いだすことができる。
【0188】
これらの薬剤を直接投与する代わりに、例えばウイルスベクター(下記参照のVDEPT法の変型)に入れて、標的細胞に導入されたコード遺伝子からの発現によってその細胞においてこれらの薬剤を製造することもできよう。治療される特異的細胞にそのベクターをターゲティングすることもできようし、又は標的細胞によって多かれ少なかれ選択的にスイッチを入れられる調節エレメントをそのベクターに含有させることもできよう。
【0189】
代わりに、その薬剤を前駆型として投与し、治療される細胞で生成されたか、又はその細胞にターゲティングした活性化剤によって活性型に転換させることもできよう。この種のアプローチはADEPT又はVDEPTとして時に知られ、前者は細胞特異的抗体と結合することによって細胞に活性化剤をターゲティングすることを必要とし、一方、後者はウイルスベクターにおけるコードDNAからの発現によりベクターから活性化剤、例えば酵素を製造することを必要とする(例えばEP−A−415731及びWO90/07936参照)。
【0190】
生物における下に規定するような結合パートナーの発現をその生物におけるVGSCの機能的発現と相関させてもよく、この相関は不適当なVGSCの発現と関係する疾病の診断の基礎を形成し得る。
【0191】
さて、制限するものではない次の図と実施例を参照して本発明をさらに記述する。これらに照らして、当業者は本発明の他の実施形態を思い浮かべるであろう。本発明を実施するにあたり当業者に共通な一般知識を補足する必要があり得るので、ここで指摘したいかなる参照もその全体が参照によってここに具体的に組込まれる。
【実施例】
【0192】
材料と方法
酵母ツーハイブリッド系を用いてNav1.8/SNSチャネルと相互作用するタンパク質を同定した。図1に示すLexAのDNA結合ドメインと融合したベイトを用いて相互作用トラップを行った。そのベイトのために、下に詳述するようにNav1.8をテンプレートとして用いてそれぞれ異なる正方向の5’プライマー及び逆方向の3’プライマーを用いたPCRでプラスミドを作製した。LexA−DNA結合ドメインとのインフレーム融合として、増幅した断片をpEG202プラスミドのEcoRI−NotI部位に連結した。このプラスミドは選択マーカー遺伝子HIS3を含有し、この遺伝子を含有するプラスミドは酵母株で維持でき、ヒスチジンを欠く培地で選択できる。酵母株EGY48をベイト断片/LexAを含有するpEG202で形質転換した。ベイト/LexAの結合部位は2つのレポータ遺伝子の上流に位置した。まず、EGY48においてロイシンの生合成経路に必要な染色体LEU2遺伝子の上流の活性化配列をLexAオペレータと置換し、ロイシンを欠乏した培地で細胞を平板培養したときの生存で選択できるようにする。この酵母株は色に基づいて識別できるLacZ融合遺伝子を含有するプラスミドpSH18−34も保有し、ウラシルを欠乏した培地で選択できる選択マーカー遺伝子URA3も含有する。ラット後根神経節(DRG)cDNAライブラリーをEcoRI−XhoI部位でプラスミドpJG4−5にクローニングし、転写活性化ドメインと融合させた。プラスミドを含有するこのライブラリーは選択マーカー遺伝子TRP1も含有し、トリプトファンを欠乏した培地でライブラリーのプラスミドの選択を可能にしている。ベイトプラスミドpEG202を含有するEGY48/pSH18−34を、pJG4−5に条件付き発現させたラットDRGcDNAライブラリーで形質転換させて相互作用トラップを実施した。ウラシル(Ura−)、ヒスチジン(His−)、トリプトファン(Trp−)及びロイシン(Leu−)を欠乏したガラクトース/ラフィノース(Gal/Raf)平板に形質転換体を培養することによってライブラリーがコードするタンパク質の発現を誘導した。EGY48はLEU2遺伝子の突然変異に加えて、相互作用トラップに使用されるプラスミドの選択に必要な他の3つのマーカー遺伝子(his3、trp1、ura3)に突然変異を保有する。ベイトプラスミドpEG202が保有するHIS3遺伝子はhis3突然変異を相補した。trp1突然変異はTRP1遺伝子を保有するライブラリープラスミドpGJ4−5によって相補され、ura3突然変異はURA3遺伝子を含有するlacZプラスミドpSH18−34によって相補された。それで、ベイトタンパク質と特異的に相互作用しないライブラリータンパク質を含有する酵母細胞は、ロイシンの非存在下では増殖しないであろう。ベイトと相互作用するライブラリータンパク質を含有する酵母はロイシン、ヒスチジン、ウラシル及びトリプトファンを欠乏した培地で2〜5日以内にコロニーを形成し、コロニーは青変するであろう。これは、レポータ遺伝子が転写されるとこれらのコロニーはβ−ガラクトシダーゼを生成し、したがってX−gal含有平板上で青変するからである。プラスミドを単離し、一連の試験によってキャラクタリゼーションして初発のベイトタンパク質との相互作用の特異性を確認した。次に、特異性がみられたものを配列決定した。
【0193】
プラスミドと酵母株:
pEG202:
ベイトタンパク質の合成を指示するプラスミドを作製するために、個々のベイトをpEG202プラスミドのEcoRI及びNotI部位に挿入した。図2にpEG202プラスミドのマップを示す。このプラスミドは酵母−大腸菌(E.coli)シャトルベクターであり、酵母2μm複製起点を含有する多コピープラスミドである。このプラスミドは酵母プロモータADH1遺伝子の他に選択マーカー遺伝子HIS3も含有し、完全長LexAコード領域が続く。これにADH1ターミネータ配列が続く。このプラスミドから発現したベイトタンパク質は、DNA結合ドメインを包含する細菌リプレッサータンパク質LexAの1〜220番のアミノ酸を含有する。このプラスミドは大腸菌(E.coli)の複製起点とアンピシリン耐性遺伝子も含有する。LexAコード領域の下流には独特の制限酵素クローニング部位EcoRI、BamHI、SalI、NcoI、NotI及びXhoIがある。
【0194】
LEU2レポータ株:
相互作用トラップには、上流の調節領域をLexAオペレータと置換したLEU2遺伝子が組込まれた酵母株EGY48を使用する。LexAop−LEU2遺伝子が転写されない限りこの株はロイシンの非存在下で増殖できない。LEU2レポータは3つの高親和性lexAオペレータがLeu2転写開始部位近くに位置して存在するために非常に高感度である。それらのオペレータはcolE1遺伝子に由来し、それぞれが2つのLexA二量体と潜在的に結合できる(Ebinaら、1983 J Biol Chem 258:13258〜13261)。EGY48の感度は弱い相互作用物質を単離するときに有利であり得るが、さらにそれ自体が弱い転写活性化因子であるベイトと共に使用するには感度が高すぎることがあり得る。内因性LEU2遺伝子における突然変異に加えて、EGY48は選択を可能にするために必要とされる3つの他のマーカー遺伝子his3、trp1、ura3に突然変異を保有する。
【0195】
lacZレポータプラスミド:
活性化を測定するためのレポータは、活性化配列上流のGal1(UASG)を欠失したpLR1Δ1プラスミドから得られた。LexAオペレータとUASGを置換した。LacZレポータプラスミドはURA3遺伝子及びGal1TATA転写開始部位を含有する酵母2μ複製起点プラスミドに属する。そのレポータプラスミドは大腸菌(E.coli)の複製起点とアンピシリン耐性遺伝子も保有する。図3に種々のLacZレポータプラスミドを詳しく示す。相互作用する活性化タグを付けたタンパク質が存在しないと、これらのレポータを保持する酵母株はβ−ガラクトシダーゼを生産せず、したがってX−Gal平板で白色の外見である。LacZレポータの使用は、2つの利点を供する。これは、LEU2レポータ遺伝子を活性化するがLacZレポータを活性化できないことから生じ得るいかなる偽陽性も同定できるからである。二番目に、LacZレポータは、肉眼アッセイでみられるように活性化タグを付けたcDNAタンパク質とベイトとの相互作用によって引き起こされる転写の量の相対尺度を提供する。LacZレポータの感度はLacZの上流に位置するLexAオペレータの数に依存する。
【0196】
pSH18−34:
このプラスミドは、pLR1Δ1プラスミドから得られ、UASGをLexAオペレータと置換したもので、活性化を測定するためのレポータ遺伝子として使用した。このプラスミドは、4つのLexA二量体と結合できる4つの高親和性重複型のcolE1 LexAオペレータを含有し、1つのオペレータしか含有しないプラスミドよりも高感度であった。このプラスミドはURA3選択マーカー遺伝子も含有した。
【0197】
pJK101:
このプラスミドをLexA融合体による抑制を測定するために使用し、LacZレポータ挿入部を有することから抑制アッセイの陽性対照として使用した。このプラスミドはUASGの大部分を含有し、かつUASGとGal1TATA転写開始部位の間に2つのLexA二量体と結合できる1つのcolE1オペレータを含有した。このプラスミドは選択マーカーURA3遺伝子も含有した。
【0198】
pSH17−4:
これは酵母アクチベータタンパク質Gal4の活性化ドメインと融合させたLexAをコードするHIS3の2μmプラスミドであった。この融合タンパク質は転写を強く活性化し、活性化アッセイの陽性対照として使用された。
【0199】
pRFHM−1:
このプラスミドはショウジョウバエタンパク質ビコイド(bicoid)のN末端と融合したLexAをコードする2μmプラスミドであった。この融合タンパク質は転写活性化する能力を有さず、活性化アッセイの陰性対照として、及び抑制アッセイの陽性対照として使用できる。このプラスミドは選択マーカー遺伝子HIS3を含有する。
【0200】
pEG22:
これは、プラスミドpEG202から、LexA領域全体を包含する制限酵素SphI部位からSphI部位までの領域を欠失させて得られた。中断しないポリリンカー配列によってコードされるペプチドはそれ自体で転写を弱く活性化できるため、pEG202自体はよい陰性対照ではない。LexA領域が一旦欠失すると、結果として生じたプラスミドを抑制アッセイの陰性対照として使用できる。
【0201】
ベイトタンパク質のキャラクタリゼーション:
ベイトタンパク質の主な必要条件は、酵母の核から能動的に除外されず、酵母の核に進入できLexAオペレータ部位と結合できることであった。次にベイトタンパク質自体はライブラリーの形質転換前にはlexAオペレータ性レポータ遺伝子の転写を活性化すべきではない、すなわちロイシンを欠乏した培地で増殖してはならず、コロニーはX−galを含む培地で白色を呈するべきである。Ausubelら(1999「分子生物学の簡潔プロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)」、第4版、John Wiley & Sons New York)がプロトコルを記載している。
【0202】
活性化アッセイ:
活性化アッセイはベイトタンパク質自体が転写を活性化しないことを確認するものである。その方法はAusubelら、1999に詳しく記載されている。酵母株をレポータプラスミド(pSH18−34)で形質転換しグルコース加ウラシル欠乏(GluUra−)平板で増殖させた。コロニーを釣り上げGluUra−培地で増殖させベイトプラスミド(pEG202)、陽性対照(pSH17−4)及び陰性対照(pRFHM1)を形質転換し、形質転換体をGluUra−His−平板で培養した。コロニーを釣り上げ、GluUra−His−−Xgal平板で培養しLacZの発現を探す。コロニーをGluUra−His−培地、並びにGal/RafUra−His−及びGal/RafUra−His−Leu−平板でも培養し、ベイト自体がレポータプラスミドを活性化しているかを調べた。
【0203】
Gal/RafUra−His−平板では、陽性及び陰性対照並びにベイトプラスミドは予想と同じ速度で増殖するコロニーを与えた。前に記述したようにベイトはプラスミドpEG202のLexAオペレータと融合されていた。ベイトをSNSナトリウムチャネルレセプターの配列に基づいて選択する。ラットNav1.8cDNAをテンプレートとして用いて位置893〜1148に対応するベイトIII及び位置1420〜1472に対応するベイトIVを使ってベイトをPCRで作製した。C末端領域であるベイトVは位置1724から位置1947であった。ライブラリーの形質転換は存在しなかったため、トリプトファン及びロイシンを培地に含む平板でコロニーが増殖した。これはベイトタンパク質が無毒で酵母に進入して生存できることを示した。Gal/RafUra−His−Leu−では、活性化を開始し、ロイシンの非存在下でコロニーを増殖可能にするライブラリープラスミドが存在しないため、陽性対照のみが増殖し、よって陰性対照及びベイトプラスミドは増殖できなかった。このアッセイで陽性対照のみがGluUra−His−−Xgal平板で青色コロニーを生成した。これは予想通りであった。ベイトプラスミドは青色コロニーを生成しなかった。それは、ベイト自体はレポータ遺伝子を活性化せず、したがってβ−ガラクトシダーゼ活性がないことによって、コロニーはX−gal平板で白色を維持するからである。活性化アッセイの結果を表3に示す。
【表3】

【0204】
ベイトIII及びIVはライブラリーの形質転換前に転写を活性化せず、したがって相互作用トラップに使用できると結論した。しかし、ベイトVはロイシンの非存在下でコロニーを生成することが分かり、このことはベイトV自体がライブラリーの形質転換前にレポータ遺伝子の活性化を引き起こすことを示した。この段階の次のステップは、標準的なクローニング手順によってベイトVを2つの別々の断片に分割して(Ausubelら、1999)、pEG202で新しい融合タンパク質を製造し活性化アッセイを繰り返すことであった。結果として生じたベイトVaはそれ自体で転写を活性化せず、したがって相互作用トラップに使用できた。
【0205】
抑制アッセイ:
転写を活性化しないベイト−LexAタンパク質については、その融合タンパク質が実際に酵母で合成され抑制アッセイを行うことによってLexAオペレータと結合するのを確認することが重要であった。抑制アッセイはLexAと非活性化LexA融合体が、UASGとTATAボックスの間に1つのLexAオペレータを有する酵母レポータ遺伝子の転写を抑制できるという観察に基づいた。以前に指摘したようにLacZの発現はガラクトースによって誘導され、グルコースの存在下でLacZの発現を検出できた。これは、グルコース中で通常Gal1の抑制を維持する負の調節エレメントが存在しないことが原因であった。その方法はAusubelら、1999に記載されている。酵母株をレポータプラスミドpJK101で形質転換しGluUra−平板で選択し、コロニーを釣り上げGluUra−培地で増殖させ、ベイト(pEG202)を含有するプラスミド、陽性(pRFHM1)対照及び陰性(pEG22)対照を形質転換して培地に入れた。形質転換体をGluUra−His−平板で培養し2、3日増殖させた。コロニーを釣り上げGluUra−His−Xgal及びGal/RafUra−His−Xgalに画線し30℃で増殖させた。LexAを欠く酵母は1日経つとGal/RafUra−His−Xgal上で青色に変わり始め、2〜3日後にはGluUra−His−Xgal上で淡青色を呈するであろう。抑制アッセイをまとめ、表4に示す。
【表4】

【0206】
陽性対照は高いβ−ガラクトシダーゼ活性を有し、X−galの存在下でGal/Raf含有培地上でコロニーは青変する。通常グルコース中でGAL1を完全に抑制したままにする負の調節エレメントが存在しないため、このLacZの発現はグルコースの存在下で検出できる。LexA融合タンパク質を生成し、核に進入しlexAオペレータと結合する不活性なベイトは、ガラクトースの存在下でUASGからの活性化を遮断してLacZの発現を2〜20分の1に抑制するであろう。核に進入しオペレータと結合するベイトを含有する酵母はLexAを欠失した酵母、すなわち陰性対照よりもゆっくりと青色に変わる。活性化アッセイで活性化せず、抑制アッセイで実際に抑制するベイトタンパク質は相互作用トラップに使用するためのよい候補であった。我々のベイトの全てを使用し得たのは、それらがX−gal培地でβ−ガラクトシダーゼ活性を抑制し、コロニーが陰性対照よりもゆっくりした速度で出現したからである。
【0207】
相互作用因子の探索:
相互作用因子のトラップにはLexA融合ベイト、レポータ遺伝子、及び図4に示すようにGAL1プロモータの制御下でcDNA発現カセットを有するpJG4−5でのライブラリーを含有する酵母を大規模に平板培養することが必要であった。最初の平板培養では、酵母を完全最少培地GluUra−His−Trp−ドロップアウト平板で培養し、ライブラリープラスミドを選択した。相互作用するタンパク質を含有する酵母を選択する2回目の平板培養では、およそ10〜10個のコロニーをGal/RafUra−His−Trp−Leu−ドロップアウト平板で培養した。2回目の平板培養で同定したコロニーからのライブラリープラスミドを細菌形質転換で精製し、最終選別用に酵母細胞を形質転換するために使用した。表5はライブラリープラスミドを含有するコロニーの最終選択を示し、その後に細菌のミニプレップ(miniprep)を実施してプラスミドを含有するライブラリーを精製して、配列決定によりそれらをキャラクタリゼーションした。
【表5】

【0208】
ベイトIII
Gal/RafUra−His−Trp−Leu−培地で10cm皿あたり10cfuを平板培養した。8×10cfuに対応して皿8枚に平板培養を行った。800個のコロニーを釣り上げ、皿4枚による選択用に平板培養し、そのうち51個がGal/RafUra−His−Trp−−Xgal上で青色であった。
【0209】
ベイトIV
Gal/RafUra−His−Trp−Leu−培地で10cm皿あたり10cfuを平板培養した。10cfuに対応して皿10枚に平板培養を行った。1000個のコロニーを釣り上げ、皿4枚による選択用に平板培養し、そのうち10個がGal/RafUra−His−Trp−−Xgal上で青色であった。
【0210】
ベイトV
このベイトはライブラリーの形質転換前にそれ自体でLEU2レポータ遺伝子を活性化した。したがって、プライマーを設計し別々の2断片を作製するためのPCRを繰り返すことでこのベイトを短縮して別々の2断片にした。第一断片Vaを正方向及び逆方向プライマーを用いて作製した。Vaはアミノ酸位置1724〜1844に対応した。ベイトVaは10cm皿あたり10cfuを平板培養し、合計10cfuに対応して皿10枚に平板培養を行った。各断片について、コロニー1000個を画線し、皿4枚による選択でVaは27個の青色コロニーを示した。
【0211】
皿4枚による選択から釣り上げた陽性コロニーにDNA配列決定を行い、それがどのようなクローンであるかを確認し、さらに重複した配列を除いた。最終選択で39個のクローンを相互作用トラップで得た。そのうち得られた12個のクローンは非特異性で、最終選択のために27個の陽性クローンを釣り上げ、そのうち3個のクローンは未知であり、すなわちいかなる既知のタンパク質とも相同性を示さなかった。単離された残りの24個のクローンは既知のタンパク質と相同性を示した。結果をまとめ、表6に示す。
【表6】

【0212】
同定され以下の実験に使用されたクローンは以下の通りである:
PAPIN:C末端領域の201個のアミノ酸を上記のように酵母ツーハイブリッド法でクローニングした。このクローンを下記のようにGSTプルダウンアッセイ及びアンチセンス実験に使用した。
ペリアキシン:C末端ドメインの482個のアミノ酸を上記のように酵母ツーハイブリッド法でクローニングした。このクローンを下記のようにGSTプルダウンアッセイ及びアンチセンス実験に使用した。
HSPC025:21bpの5’UTR及び178bpの3’UTRを包含する完全長cDNA(1695bp、565個のアミノ酸)を上記のように酵母ツーハイブリッド法でクローニングした。21bpの5’UTRを包含するN末端側からの1.4kbを下記のようにアンチセンス実験に使用した。21bpの5’UTR及び178bpの3’UTRを包含する完全長cDNAを下記のようにGSTプルダウンアッセイ及びCHO−SNS22細胞を用いた過剰発現実験に使用した。
【0213】
機能的実験:
インシトゥハイブリダイゼーション:
これらのクローンがDRGにおけるNav1.8陽性の小径ニューロンで発現しているかどうかを確定するために、2週齢ラットのDRG切片でインシトゥハイブリダイゼーションを実施した。クローンIII−42(PAPIN)を酵母発現ベクターpJG4−5から切り出し、pBluescriptベクターのEcoRI部位及びXhoI部位にサブクローニングした。(5’末端をEcoRIで分解して)直線化したIII−42DNAを、T7RNAポリメラーゼを用いて3’から5’方向のアンチセンスを、またT3ポリメラーゼを用いて5’から3’方向のセンスプローブを作製した。インビトロ転写でRNAを標識するために、ジゴキシゲニン−11−ウリジン−5’三リン酸をUTPの代わりにT7,T3RNAポリメラーゼの基質として使用した。ジゴキシゲニンはヌクレオチドのC−5位を介してUTPと連結している。これでこのジゴキシゲニン標識ヌクレオチドを核酸プローブRNAに組込むことができる。ELISA原理に基づく高感度の非放射性標識と検出系をここで使用した。DNAをジゴキシゲニンで標識したデオキシウリジン三リン酸(dUTP)をクレノウ酵素で酵素的に取込むことでDNAをカルデノライドハプテンであるジゴキシゲニン(DIG)で修飾した。ジゴキシゲニン標識プローブ(DIG標識プローブ)で膜をハイブリダイゼーションしてから、得られたハイブリッドを、マーカー酵素であるアルカリホスファターゼと共有結合させたDIG特異的抗体を用いたELISA反応によって検出した。この抗体結合アルカリホスファターゼの結合の後に、発色基質5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)及びニトロブルーテトラゾリウム塩(NBT)を用いた酵素触媒性の共役酸化還元反応を行った。その反応は直接組織に接着する暗青色の水に不溶の沈殿を生ずる。切片をDIGで標識したプローブと66℃で一晩ハイブリダイゼーションさせた。切片を洗浄し、アルカリホスファターゼ結合抗ジゴキシゲニン抗体(Roche)で可視化し、その切片を蛍光顕微鏡を用いて観察した。原理は、DIG標識アンチセンスmRNAプローブが、相補性配列を有することからIII−42の内因性センス方向mRNAと結合するであろうというものであった。アルカリホスファターゼと結合した抗Dig抗体はプローブと結合するであろうし、これはBCIP塩及びNBT塩での呈色反応後に顕微鏡で観察できる。センスIII−42プローブは陽性染色を全く示さなかったが、アンチセンスIII−42プローブは小径及び大径ニューロンの両方で強い染色を実証し、内因性Nav1.8を有するニューロンでIII−42が発現していることを示した。我々はいくつかの他のクローンでも試験し、それらのクローン全てが小径ニューロンで発現を示した。
【0214】
免疫組織化学:
単離されたクローンのタンパク質が実際に小径ニューロンで発現しているかを調べるために免疫組織化学的検討を実施した。組織の凍結切片をパラホルムアルデヒドで固定し一次抗体、二次抗体の順に適用し、切片を観察した。小径及び大径ニューロンの両方でペリアキシン(IV−40)の染色がみられた。ペリアキシン抗体はPeter Brophy教授(エジンバラ大学、イギリス)から贈与を受けた。1/1500に希釈した抗L−ペリアキシンポリクローナル抗体並びに1/10に希釈した抗ペリフェリンモノクロナール抗体を2週齢のラットのDRG切片に適用した。ペリアキシンには1/200に希釈した第二抗体であるFITC結合抗ウサギIgG抗体を使用し、ペリフェリンには1/50に希釈したテキサスレッド結合抗マウスIgG抗体を使用した。ペリアキシンの切片の観察には青色フィルターを備えた、ペリフェリン抗体の観察には緑色フィルターを備えた蛍光顕微鏡を使用した。結果から、本研究で陽性対照として働くペリフェリンは予想通り小径ニューロンで発現していた。ミエリン形成時にペリアキシンがシュワン細胞で発現することを示した。我々はペリアキシンが軸索でなく、軸索周囲の細胞、すなわちシュワン細胞で発現することを確認した。我々は小径及び大径ニューロンでいくらかのペリアキシンの染色も観察した。これらの結果は酵母ハイブリッド系で単離されたペリアキシンタンパク質がNav1.8が発現するニューロン、すなわち小径ニューロンで実際に発現していたことを示す。
【0215】
アンチセンス:
これらのクローンがインビボでNav1.8に及ぼす機能を試験するために、発現ベクターにGFPと共に3’から5’の方向にアンチセンスを発現させ、下に記述するようにDRGの核にマイクロインジェクションした。mRNAの発現の方向を確認し、正確な発現ベクターが作製されたかどうかを調べるためにDNAの配列決定を行った。クローンをそれぞれマイクロインジェクションした。この方法の原理は、作製された3’から5’方向のmRNAが対応するクローンの内因性センス方向mRNAと結合し、適当なタンパク質の生成を阻害するであろうというものであった。表7の一覧はそれぞれプールされた/個々のアンチセンスについて記録された総細胞数とNav1.8/SNS電流を示さなかった細胞数を示す。
【表7】

【0216】
ナトリウムのピーク電流の平均も示し、最後の列はGFPの平均電流密度と比較した平均電流密度を評価している。アンチセンスオリゴヌクレオチドの存在がNav1.8の機能的発現をダウンレギュレーションするため、3種のクローン全てがチャネルの発現に重大な作用を示すことが分かる。
【0217】
電気生理学:
サイトソルにラットNav1.8タンパク質を発現する安定形質転換CHO細胞系(CHO−SNS22細胞)にリポフェクションによって(HSPC025クローンA148を含めた)cDNAベクターGFP−A148をトランスフェクションした。CHO−SNS22細胞はラットSNSナトリウムチャネルのcDNAを安定トランスフェクションされた細胞系である。これらの細胞はSNSナトリウムチャネル電流を有さないが、多量の完全長SNSナトリウムチャネルmRNAを発現する。
【0218】
CHO−SNS22細胞系を2.5%ウシ胎仔血清及び1mg/mlゲネチシン(Geneticin)G418硫酸を加えたF−12(Ham)栄養混合培地(GibcoBRL)で維持した。トランスフェクションの前日に、0.5%ウシ胎仔血清及び1mg/mlのG418を加えたF−12培地を含む35mm皿に細胞を継代して培養した。トランスフェクションの前に35mm皿中の細胞を無血清F−12培地で2回洗浄した。DNA1.1μgをリポフェクタミン(GibcoBRL)5μlと混合し室温で30分間温置した。混合液を予め洗浄した細胞に加え、37℃で2時間培養した。2時間後にDNA/リポフェクタミン混合液を0.5%ウシ胎仔血清及び1mg/mlのG418を加えたF−12培地に取り替えた。
【0219】
CHO−SNS22細胞からホールセルパッチクランプ法を用いて膜電流を記録した。細胞外記録溶液は以下を含有した(単位mM):NaCl(140)、TEACl(10)HEPES(10)、CaCl(2.1)、MgCl(2.12)、4−アミノピリジン(4−AP)(0.5)、KCl(7.5)、テトロドトキシン(TTX)(250nM)。この溶液にNaOHを加えてpH7.2〜3に調整した。細胞内溶液は以下を含有した(単位mM):CsCl(145)、EGTANa(3)、HEPES(10)、CaCl(1.21)、MgCl(1.21)、TEACl(10)。この溶液にCsOHを加えてpH7.2〜3に調整した。ニューロンからの記録については、細胞外溶液は同一としたが、ただしNaClを43.3mMに減らし、その分をTEA−Clと置き換え、20μMのCdClを加えた。細胞内記録溶液ではCsClの10%をCsFと置き換え、MgClを3mMのATP(Mg)と置き換え、500μMのGTP(Li)も含有させた。化学物質は「AnalaR」(BDH、Merk Ltd.)であるか、又はSigmaから調達した。化学物質は「AnalaR」(BDH、Merk Ltd.、ルターワース、レスターシア州、イギリス)であるか、又はSigma(プール、ドーセット州、イギリス)から調達した。TTXはAlomone研究所(TCR Biologicals、ボトルフクレイドン、バッキンガムシア州、イギリス)から入手した。CHO−SNS22細胞の少数は内因性のテトロドトキシン感受性(TTX−s)のNa電流を発生し(個人的な観察)、その電流は細胞外培地に250nMのTTXを含ませることで全ての記録から消失した。このような環境では非トランスフェクション細胞では内向き電流は記録されなかった。
【0220】
薄膜ガラス製キャピラリー(GC150TF−10;Harvard apparatus、エデンブリッジ、ケント州、イギリス)から電極を製作した。その電極は記録溶液を満たすとき2〜3MΩのアクセス抵抗を有した。Axopatch200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments、フォスターシティ、カリフォルニア州、米国)を用いて記録を行った。パルスプロトコルを作製し、パーソナルコンピュータで作動させたpClamp6ソフトウェア(Axon Instruments)を用いてデータをディスクに保存した。CHO−SNS22細胞を−90mVで保持した。電圧クランププロトコルに−110mVの負の予備パルスを組込み、その後10mVずつ段階的に増加させた脱分極電位(最終値+80mVまで)に50ms細胞を置いた。
【0221】
全ての実験を室温で行った。
【0222】
GFP−A148完全長クローンをトランスフェクションしたCHO−SNS22細胞全22個のうち4個でTTXに抵抗性の(TTX−r)内向き電流を記録した(図5)。その電流は異種系で発現されるNav1.8ナトリウム電流の性質を有し、ナトリウム電流であることが既知であるp11によって可能になる電流と識別できなかった。
【0223】
対照のGFPのみをトランスフェクションした細胞では43個中1個の細胞が電流を発生した(P=0.041、Fisherの直接試験)。これはA148はNav1.8の機能的発現に貢献できることを意味している。
【0224】
考察:
酵母ツーハイブリッド系は2つの別個の分子ドメイン、すなわちDNA結合ドメインと転写活性ドメインを有する真核細胞転写活性化因子を利用している。それらのドメインでは転写因子をあるものから別のものに交換することができ、依然として機能を維持する。DNA結合ドメインは特異的プロモータ配列と結合し、転写活性化ドメインはRNAポリメラーゼII複合体に下流の遺伝子を転写するよう指示する。酵母ツーハイブリッド系には種々の変形があり、それらは各ドメインの利用によって識別できる。FieldsとSong(1989Nature340:245〜246)は、2つのタンパク質のうち一方をDNA結合ドメインと、他方を活性ドメインと融合し、それらのタンパク質の相互作用を示すことによってタンパク質間相互作用を報告し、転写因子の使用を最初に実証した。彼らはDNA結合ドメインと転写活性化ドメインの両方に酵母転写因子Gal4を使用した。その強力な転写活性と酵母におけるGal4の内因性発現が原因で、この方法は高いバックグラウンドを有し高い感度となる。Gyurisら(1993Cell75:791〜803)は、Gal4DNA結合ドメインを細菌リプレッサーLexAに、Gal4転写活性化ドメインを細菌活性化ドメインB42に変えることでこの方法を変更した。これはMaとPtashne(1987 Cell 51:113〜119)によって開発された系に基づいた。その系で彼らはDNA結合ドメインのGal4のコード配列と融合した大腸菌(E.coli)ゲノムDNA断片をコードする新しいクラスの酵母活性化因子(B42)を作製した。彼らはLexAのDNA結合ドメインと融合させた新しいクラスの活性化配列を含有するLexA融合タンパク質も作製した。酸性ブロブ(acid blob)B42はGal4活性化ドメインに比べ比較的弱い転写活性を有する。B42は細菌起源であるため、酵母の内因性タンパク質はLexAオペレータと結合せず、よって低感度の系となる。Gal4及びB42に加えて、単純ヘルペスウイルスタンパク質VP16もGal4DNA結合ドメイン(Fearonら、1992 PNAS USA89:7958〜7962)又はLexADNA結合ドメイン(Vojtekら、1993 Cell 74:205〜214)と組合わせて転写活性化ドメインとして使用され、VP16は核局在シグナルを有さない。VP16活性化ドメインを核局在シグナルと融合させる。Gal4及びB42よりも高い転写活性のために、VP16を利用する系は様々な酵母ツーハイブリッド系の中で最高の感度を有するようである。非特異的相互作用因子をクローニングする機会を最小にするために、我々は最も感度の低い系であるLexADNA結合ドメインとB42転写活性化ドメインを使用した。
【0225】
酵母ツーハイブリッド系の感度はレポータにも依存する。大部分の系は2つのレポータ遺伝子を使用し、一方はHIS3、LEU2又はURA3遺伝子のようなアミノ酸の生合成に必要な酵素用で、もう一方はLacZ又はCAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)のような発色酵素用である。特定の培地上で増殖させるための選択マーカーを用いることは、着色したコロニーを生成させる肉眼アッセイよりも、相互作用するタンパク質をコードするcDNAの選択に顕著な利点を有する。各レポータ遺伝子の発現の強度はプロモータ領域のオペレータの数に依存する。我々が使用した酵素株EGY48は、上流の調節領域が6個のLexAオペレータに置換されているLEU2遺伝子が組込まれている。これは非常に高感度のアッセイで、LexAと融合した弱い転写活性化因子によって活性化できる。我々のケースでは、これがベイトVで発生していることを発見したため、我々はベイトVを別々の2断片に短縮した。第二のレポータについては、それぞれわずか2個及び1個のLexAオペレータを有するpJK103及びpRB1840のような他のプラスミドと比べ、LacZの上流に位置する8個のLexAオペレータを有するプラスミドpSH18−34を選択した。2つのレポータ遺伝子を使用する利点は、弱い活性化因子がLeu2プロモータに結合することによるLeu2遺伝子の活性化で生じ得る可能性のある偽陽性を除外することであった。これらの偽陽性はLacZレポータを活性化しないであろうことから同定できる。我々の系が最も感度の低いDNA結合ドメイン/転写活性化ドメイン複合体によって駆動される最も感度の高いレポータ系を利用したことをこのことは意味している。
【0226】
上記のように、PAPINは、アドヘレンスジャンクションで豊富に存在するチロシンキナーゼリン酸化の主な基質として同定されたp120ctnファミリータンパク質の一員である(Reynoldsら、1992 Oncogene7:2439〜2445)。NPRAP/δ−カテニンもE−カドヘリン及びβ−カテニンと相互作用する(Luら、2002 J Neurosci Res67(5):618〜624)。PAPINは6つのPDZドメインを有し、上皮ジャンクション成分をp0071と接続する骨格タンパク質として働いている可能性がある。NPRAP/δ−カテニン及びp0071の正確な機能は未知であるが、それらが細胞間ジャンクションに位置することから、p120ctnのような細胞間ジャンクションの成分としての役割を演じ得ることを示唆している。これまでのところPDZドメイン含有タンパク質とarmadilloリピート含有タンパク質との相互作用について3つの報告がある。大腸腺腫性ポリポーシス遺伝子産物はPSD−95/SAP90及びSAP97/ヒトdiscs−large腫瘍リプレッサー遺伝子と相互作用する(Matsumineら、1996 Science 272:1020〜1023)。NPRAP/δ−カテニンはシナプス骨格分子と相互作用し(Ideら、1999 Biochem Biophy Res Comm 256:456〜461)、NPRAP/δ−カテニン及びp0071はPAPINと結合する。PDZ含有タンパク質とarmadilloリピート含有タンパク質の両方が細胞間ジャンクションに局在することから、それらの相互作用が細胞間ジャンクションの維持に重要であり得る。我々が単離したPAPINのクローンは、PAPINのC末端の2つのPDZドメインを含有する最終の210個のアミノ酸のみを有した。Nav1.8はこの領域と結合するようである。
【0227】
機械的痛覚しきい値の減少(痛覚過敏)で特徴づけられる炎症痛は炎症伝達物質の作用を介して生じる。痛覚過敏はプロテインキナーゼが関与する2つの経路を介して起こり得る。Englandら(1996 J Physiol 495(Pt2)429〜440)及びGoldら(1996 Neurosci Lett 212:83〜86)は、炎症伝達物質であるプロスタグランジンE2(PGE2)、セロトニン及びアデノシンが、TTXrチャネルのcAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)リン酸化を介して痛覚過敏を生成することを、どちらも独立して示した。Cesareら、1999(Neuron 23 617〜624)はブラジキニンによる熱の侵害受容器の感作の誘導がプロテインキナーゼC(PKC)を介することを示した。PKAとPKCはTTXrナトリウム電流活性のモジュレートによって侵害受容の感作を媒介する(Goldら、1996)。
【0228】
Okuseら(1997 Mol Cell Neurosci 10:196〜207)は、炎症痛モデル及び神経障害痛モデルでNav1.8の発現を研究した。彼らはフロイントのアジュバントのような免疫刺激で処理した後のDRGにおけるNav1.8のmRNAレベルを研究した。その免疫刺激には一連の炎症伝達物質、又は知覚ニューロンに直接作用して痛覚過敏作用を示すNGFが関与する(Lewinら、1994 Eur J Neurosci 6:1903〜1912)。彼らはフロイントアジュバントを足底に注射した72時間後に、顕著な痛覚過敏があるもののDRGのL4及びL5でのNav1.8のmRNAの発現に変化がないことを発見した。NGFの存在下ではDRGにおいて膜関連Nav1.8タンパク質はわずかに増加したが、mRNAの発現は変化しなかった。彼らは実験ではNGFはNav1.8のmRNAの発現に必要なく、Nav1.8のmRNAは末梢の炎症状態ではアップレギュレーションされなかったと結論した。彼らは脊髄神経結紮のような、及び異痛を生じるストレプトゾトシン糖尿病ラットのような神経障害状態ではNav1.8mRNAレベルのダウンレギュレーションがあることも発見した。彼らは、Nav1.8は異痛の発生に必要ないと結論した。
【0229】
シュワン細胞の主な機能は神経繊維のミエリン形成と迅速な神経インパルスの伝達を促進することであるが、シュワン細胞は脊髄運動ニューロンとDRGニューロンの栄養支援にも役割を有する。末梢神経のミエリン形成に役割を有する新規な細胞骨格関連タンパク質の選別で、ペリアキシンはミエリン形成中のシュワン細胞のタンパク質として最初に同定された(Gillespieら、1994 Neuron12、497〜508)。POのように末梢神経系ミエリンの主要な膜内在性タンパク質であるペリアキシンは末梢神経系の発生の初期段階で検出できる(Schererら、1995 Development 121:4265〜4273)。胚性シュワン細胞においてL−ペリアキシンの核細胞質での再分布が発生学的に調節されていることはPDZドメインタンパク質についてのそのような例の最初である。能動的な核への取込みを受けるいくつかのタンパク質の核細胞質での分布は細胞間接触によって影響されることをデータは示唆している(Pedrazaら、1997 Neuron 18:579〜589)。シュワン細胞の細胞表面での適当な結合パートナーの出現は、軸索を被鞘するときに核からミエリン形成中の突起へとL−ペリアキシンが移行するための刺激であり得る。Shermannら(2000、J Biol Chem 275:4537〜4540)は胚性シュワン細胞におけるL−ペリアキシンの核へのターゲティングは、成熟しているミエリン形成中のシュワン細胞の細胞表層で正しいリガンドが利用できるようになるまで細胞質における不適当な相互作用からPDZドメインを隔離し得ると示唆している。核細胞質分布に影響する刺激は細胞間接触であることが示された(Gottardiら、1996 PNAS USA 93:10779〜10784)。しかし、これも核とフォーカルコンタクトの間を往復するLIMドメインタンパク質であるジキシン(zyxin)は細胞−基質相互作用に応答してそのように行動する(Nixら、2001 J Biol Chem 276:34759〜34767)。PDZドメインはタンパク質間相互作用に関与することが知られているが、我々のケースでは、Nav1.8はペリアキシンのPDZドメインとは結合しないことを発見した。それは、我々が単離したクローンがこの領域を含有しなかったからである。Nav1.8が結合するのはペリアキシンのどの領域であるかを調べるためにさらなる実験を行わなければならない。ペリアキシン遺伝子ノックアウトマウスを用いて行われた研究(Gillespieら、2000 Neuron 26:523〜531)では、マウスはPNSミエリンを密集させるが、そのミエリンは不安定で、ミエリン破壊と、末梢神経の損傷によって引き起こされる有痛の状態を伴う反射挙動とを生じることを示した。それよりも齢の大きい動物は、広範囲の末梢ミエリン破壊と、機械的異痛と熱に対する痛覚過敏を伴う重篤な臨床表現型とを示すことが分かり、その臨床表現型はNMDAレセプターの選択的拮抗薬の髄腔内投与によって逆転可能であった。Gillespieらはペリアキシン欠失マウスの末梢神経を観察しミエリン鞘が影響を受けたかどうかチェックしたときに、ミエリンの破壊が6週齢でははっきりとしないことを発見した。しかし、6か月では知覚、運動及び自律神経は広範囲にミエリン破壊を受けていた。彼らは伏在(知覚)神経は過剰ミエリン形成したが、ミエリン形成しないC繊維束は正常であることを発見した。損傷はミエリン鞘に限定的で、野生型とペリアキシン欠失マウスの間でL5の後根神経節の数に差はみられなかった。ペリアキシンは、アンチセンス発現ベクターのマイクロインジェクションでナトリウム電流ピークの低下がみられた3つのうちの1つである。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】それぞれ6個の膜貫通セグメントから成る4つの相同ドメインを示すNav1.8αサブユニットの構造を示す図である。 図1Aはサブユニットの基本構造を示す。3つのベイトの位置を矢印で示し、数字はアミノ酸位置に対応する。 図1Bはサブユニットをさらに詳しく示す。
【図2】酵母大腸菌(E.coli)シャトルベクターで酵母2μm複製起点を含有する多コピープラスミドであるpEG202プラスミドのマップを示す図である。そのプラスミドは選択マーカー遺伝子HIS3、並びに細菌リプレッサータンパク質LexAの1〜202番のアミノ酸をコードする酵母プロモータADH1遺伝子も含有する。このプラスミドから発現されるベイトタンパク質は、DNA結合ドメインを包含するLexAの1〜202番のアミノ酸を含有する。このプラスミドは大腸菌(E.coli)の複製起点及びアンピシリン耐性遺伝子も含有する。我々のベイトをEcoR1部位及びNotI部位にクローニングした。数字は相対的なマップ位置を示す。 図2Aはプラスミドの基本構造を示す。 図2Bはさらに詳細を示す。
【図3】LacZと融合させた野生型Gal1を含有するプラスミドから得られる種々のLacZレポータを詳細に示す図である。活性化を測定するためのレポータをpLR1Δ1から得、そのレポータではGal1の上流の活性化配列をUASの代わりに挿入し種々の感度のLacZレポータを作り出している。
【図4】pJG4−5においてLexA融合ベイト、レポータ遺伝子及びライブラリーを含有し、cDNA発現カセットがGAL1プロモータ制御下にある酵母を示す図である。このプラスミドはTRP1選択マーカー及び2μm複製起点を含有する。数字は相対的なマップ位置を示す。 図4Aはプラスミドの基本構造を示す。 図4Bはさらに詳細を示す。
【図5】CHO−SNS22細胞においてA148(HSPC025)がTTX抵抗性の内向き電流を発現させることを示す図である。A:GFP−A148cDNAベクターのトランスフェクション(リポフェクタミン)後の蛍光CHO−SNS22細胞から記録された高しきい値TTX抵抗性内向き電流。B:4個のCHO−SNS22細胞における内向き電流についての平均電流(I/Imax)と膜電位(Em)の関係。
【0231】
配列の簡単な説明
配列番号1はラットNav1.8レセプター遺伝子のDNA配列であり、配列番号2はそれがコードするアミノ酸配列である。これらの配列は寄託番号X92184としてGenBankから公的に入手できる。
配列番号3はヒトNav1.8レセプター遺伝子のDNA配列であり、配列番号4はそれがコードするアミノ酸配列である。これらの配列は寄託番号AF117907としてGenBankから公的に入手できる。
配列番号5はラットPAPIN遺伝子のDNA配列で、配列番号6はそれがコードするアミノ酸配列である。これらの配列は寄託番号NM_022940としてGenBankから公的に入手できる。
配列番号7はラットペリアキシン遺伝子のDNA配列で、配列番号8はそれがコードするアミノ酸配列である。これらの配列は寄託番号NM_023976としてGenBankから公的に入手できる。
配列番号9はヒトHSPC025遺伝子のDNA配列で、配列番号10はそれがコードするアミノ酸配列である。これらの配列は寄託番号NM_016091としてGenBankから公的に入手できる。
【配列表】












































































【図2−1】

【図2−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位依存性ナトリウムチャネル(VGSC)のモジュレータの同定法であって、
(a)試験化合物、VGSC、並びにPAPIN、ペリアキシン(periaxin)及びHSPC025から選択される1つ又は複数の結合パートナーを、前記VGSC及び前記結合パートナーが前記試験化合物の非存在下で複合体を形成できる条件で接触させること、及び
(b)前記VGSCの活性を測定することを含み、前記試験化合物の非存在下での活性に対する前記VGSCの活性が変化していることは前記試験化合物が前記VGSCのモジュレータであることを示す、上記同定法。
【請求項2】
前記活性は前記VGSCが前記結合パートナーと複合体を形成する能力である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性は前記VGSCが膜を介したナトリウム電流を媒介する能力である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記VGSCの活性の減少は前記試験化合物が前記VGSCの阻害剤であることを示す、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記VGSCが疼痛に対する応答に関連するチャネルである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記チャネルが知覚ニューロンで発現される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記チャネルが知覚ニューロン特異的(SNS)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記チャネルがテトロドトキシン抵抗性である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記VGSCがNav1.8、Nav1.9及びNav1.3ナトリウムチャネルから選択される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記VGSCが、
(a)配列番号2若しくは配列番号6のNav1.8アミノ酸配列、
(b)(a)の種変異体若しくは対立遺伝子変異体、
(c)(a)と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する(a)の変異体、又は
(d)(a)ないし(c)のいずれかの断片、
を含むアミノ酸配列を有し、前記VGSCが1つ又は複数のPAPIN、ペリアキシン又はHSPC025から選択される結合パートナーと結合する能力を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記VGSCが膜を介したナトリウム電流を媒介する能力を保有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記PAPINが、
(a)配列番号6のアミノ酸配列、
(b)(a)の種変異体若しくは対立遺伝子変異体、
(c)(a)と少なくとも70%のアミノ酸同一性を有する(a)の変異体、又は
(d)(a)ないし(c)のいずれかの断片、
を含むアミノ酸配列を有し、前記PAPINがVGSCと結合する能力を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記PAPINが配列番号6の2566〜2766番のアミノ酸を含む配列を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ペリアキシンが、
(a)配列番号8のアミノ酸配列、
(b)(a)の種変異体若しくは対立遺伝子変異体、
(c)(a)と少なくとも70%のアミノ酸同一性を有する(a)の変異体、又は
(d)(a)ないし(c)のいずれかの断片、
を含むアミノ酸配列を有し、前記ペリアキシンがVGSCと結合する能力を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ペリアキシンが配列番号8の902〜1383番のアミノ酸を含む配列を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記HSPC025が、
(e)配列番号10のアミノ酸配列、
(f)(a)の種変異体若しくは対立遺伝子変異体、
(g)(a)と少なくとも70%のアミノ酸同一性を有する(a)の変異体、又は
(h)(a)ないし(c)のいずれかの断片、
を含むアミノ酸配列を有し、前記HSPC025がVGSCと結合する能力を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記結合パートナーの少なくとも1つが完全長結合パートナータンパク質、又はその種変異体若しくは対立遺伝子変異体である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記VGSC及び前記結合パートナーが細胞に供され、前記細胞が試験化合物と接触する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記VGSCが細胞に供され、前記細胞において前記チャネルの機能的発現が、前記細胞における請求項1に定義される1つ又は複数の結合パートナーのレベルを増加させることによって増強された、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記VGSCが、前記VGSCと結合できるp11ペプチドを含む細胞に供される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
(i)細胞における1つ又は複数のPAPIN、ペリアキシン及びHSPC025の濃度を増加させることによって、SNSナトリウムチャネルの機能的活性が増強された前記細胞を用意するステップ、
(ii)前記細胞における前記チャネルを前記試験化合物と接触させるステップ、及び
(iii)前記チャネルの活性を測定するステップ
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
(i)SNSナトリウムチャネル、1つ又は複数のPAPIN、ペリアキシン及びHSPC025から選択される結合パートナー、並びに推定モジュレータ化合物を、モジュレータの非存在下で前記SNSナトリウムチャネル及び前記結合パートナーが複合体を形成できる条件で接触させるステップ、及び
(ii)前記モジュレータ化合物によって引き起こされる複合体形成の阻害度を測定するステップ
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項23】
(i)SNSナトリウムチャネル、1つ又は複数のPAPIN、ペリアキシン及びHSPC025から選択される結合パートナー、並びに推定モジュレータ化合物を、モジュレータの非存在下で前記SNSナトリウムチャネル及び前記結合パートナーが複合体を形成できる条件で接触させるステップ、
(ii)前記SNSナトリウムチャネルが存在する膜を介してナトリウム電流を生成するような刺激に前記SNSナトリウムチャネルを曝露するステップ、及び
(iii)前記モジュレータ化合物によって引き起こされる電流の阻害度を測定するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記試験化合物を医薬組成物として製剤するステップをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
疼痛の治療のために個体に前記製剤を投与することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1から25までのいずれか一項の方法によって同定される化合物。
【請求項27】
請求項1に定義される1つ又は複数の結合パートナーのレベルを増加させるステップを含む、細胞における電位依存性ナトリウムチャネル(VGSC)の機能的発現を増強する方法。
【請求項28】
前記VGSCが請求項5から11までのいずれか一項で定義される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記結合パートナーが請求項12から16までのいずれか一項で定義される、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記VGSCが知覚ニューロン特異的(SNS)ナトリウムチャネルであり、前記結合パートナーが1つ又は複数のPAPIN、ペリアキシン及びHSPC025である、請求項27から29までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
VGSC、並びに1つ又は複数のPAPIN、ペリアキシン及びHSPC025から選択される結合パートナーを発現できる宿主細胞であって、前記VGSC及び/又は前記結合パートナーが前記細胞内で1つ又は複数の異種発現ベクターから発現される宿主細胞。
【請求項32】
電位依存性ナトリウムチャネルの機能的発現をモジュレートするための薬剤の製造への、請求項1から25までのいずれか一項に記載の方法により同定される化合物の使用。
【請求項33】
電位依存性ナトリウムチャネルの機能的発現をモジュレートするための薬剤の製造への、PAPIN、ペリアキシン及び/又はHSPC025の活性又は発現の阻害剤の使用。
【請求項34】
前記薬剤が痛覚脱失を生成するためのものである、請求項32又は33に記載の使用。
【請求項35】
前記薬剤が慢性疼痛を軽減するためのものである、請求項32、33又は34に記載の使用。
【請求項36】
前記阻害剤が、前記PAPIN、ペリアキシン及び/若しくはHSPC025に特異的な抗体又はその断片、並びに前記PAPIN、ペリアキシン及び/又はHSPC025をコードする配列に対するアンチセンスcDNAから選択される、請求項32から35までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
電位依存性ナトリウムチャネルの活性に関連する疾患又は状態の治療法であって、前記治療法が請求項1から25までのいずれか一項に記載の方法によって同定される化合物を、或いはPAPIN、ペリアキシン及び/又はHSPC025の活性又は発現の阻害剤を、その治療を必要とする個体に投与することを含む治療法。

【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−512892(P2006−512892A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−506363(P2004−506363)
【出願日】平成15年5月22日(2003.5.22)
【国際出願番号】PCT/GB2003/002225
【国際公開番号】WO2003/097691
【国際公開日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【出願人】(502206751)ユニバーシティ カレッジ ロンドン (1)
【Fターム(参考)】