ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの結晶形
本発明は、式(I)の化合物もしくはその結晶形またはそれらの溶媒和物、薬学的に有効な量の式(I)の化合物もしくはその結晶形またはそれらの溶媒和物と少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤とを含む固体の薬学的組成物、ならびにAuroraキナーゼが介在する疾患、障害または状態に罹患しているかまたはなりやすい患者を処置するための式(I)の化合物もしくはその結晶形またはそれらの溶媒和物の使用、およびそれに関する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2010年2月19日に出願された米国仮特許出願第61/306,047号(係属中)の利益を主張する。この米国仮特許出願第61/306,047号は、その全体が参考として本明細書により援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、式(I)のナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート:
【0003】
【化1】
もしくはその結晶形またはそれらの溶媒和物に関する。
【0004】
本発明はまた、式(I)の結晶形を合成するためのプロセスにも関する。本発明はまた、Auroraキナーゼインヒビターとしての式(I)の結晶形の薬学的使用、本発明の結晶形を含む固体の薬学的組成物、およびそのような薬学的組成物を生成する方法にも関する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
American Cancer Societyによると、2006年にはおよそ560,000人のアメリカ人が癌で死亡しており、2007年には、世界中で推定1200万の新規癌症例がもたらされた。医学の進歩によって、癌の生存率は改善されてきたが、新規のより有効な処置法が必要とされ続けている。
【0006】
癌は、制御されなくなった細胞の増殖を特徴とする。有糸分裂は、細胞周期の1つの段階であり、その段階において、一連の複雑な事象によって、染色体が2つの娘細胞に分離する忠実度が保証される。現行のいくつかの癌治療(タキサンおよびビンカアルカロイドを含む)は、有糸分裂機構を阻害するように作用する。有糸分裂の進行は、主として、タンパク質分解、および有糸分裂キナーゼによって媒介されるリン酸化事象によって制御される。Auroraキナーゼファミリーのメンバー(例えば、Aurora A、Aurora B、Aurora C)は、中心体の分離、紡錘体の動態、紡錘体集合のチェックポイント、染色体の整列および細胞質分裂の調節によって有糸分裂の進行を制御する(非特許文献1;非特許文献2)。Auroraキナーゼの過剰発現および/または増幅は、いくつかの腫瘍タイプ(結腸および乳房の腫瘍を含む)において腫瘍形成に関連している(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。さらに、腫瘍細胞においてAuroraキナーゼを阻害すると、有糸分裂の停止およびアポトーシスがもたらされることから、これらのキナーゼは、癌治療に対する重要な標的であると示唆される(非特許文献6;非特許文献7)。実質的にすべての悪性疾患の進行における有糸分裂の中心的役割を考慮すると、Auroraキナーゼのインヒビターは、幅広いヒト腫瘍に適用されると予想される。
【0007】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7(これらの全体が本明細書により参考として援用される)には、Auroraキナーゼ酵素を阻害する化合物が開示されている。例えば、式(II)の化合物4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸:
【0008】
【化2】
は、Auroraキナーゼの小分子インヒビターである。
【0009】
これらの出願は、さらに、これらの化合物、これらの化合物を含む薬学的組成物を調製するための方法、ならびにAuroraキナーゼの過剰発現および/または増幅に関連する疾患、障害または状態(癌などの細胞増殖性障害が挙げられるがこれに限定されない)の予防および治療のための方法を開示している。
【0010】
ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)は、特許文献5および特許文献6(これらの全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。これらの参考文献には、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの結晶形である1型および2型の混合物をもたらす式(I)の化合物の合成法が記載されている。これらの出願は、4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸(II)の他の特定の塩または結晶形を開示していない。
【0011】
薬学的組成物の大規模製造は、化学者および化学工学技術者に対して多くの難題をもたらす。これらの難題の多くは、大量の試薬の取扱いおよび大規模反応の管理に関するものであるが、最終生成物の取扱いは、最終的な活性な生成物自体の性質に関連する特別な難題をもたらす。生成物は、高収率で調製されなければならず、安定でなければならず、かつ容易に単離できなければならないだけでなく、生成物は、最終的に使用される可能性のある医薬品のタイプに適した特性を有さなければならない。医薬品の活性成分の安定性は、製造プロセス(合成、単離、バルク貯蔵、医薬製剤化および長期間にわたる製剤化を含む)の各工程において考慮されなければならない。これらの各工程は、温度および湿度に関する様々な環境条件に影響され得る。
【0012】
薬学的組成物を調製するために使用される薬学的に活性な物質は、可能な限り純粋であるべきであり、長期間貯蔵に対する安定性は、様々な環境条件下で保証されなければならない。これらの特性は、薬学的組成物において意図されない分解産物が出現するのを防止するために絶対に必要不可欠なものであり、その分解産物は、潜在的に有毒であり得るか、または単純にその組成物の効力を低下させ得る。
【0013】
医薬化合物の大規模製造にとって一番の関心事は、一貫したプロセシングパラメータおよび薬学的品質を保証するために、活性物質が安定な結晶形態を有するべきであるという点である。不安定な結晶形が使用される場合、結晶形態は、製造中および/または貯蔵中に変化することがあり、その結果、品質管理の問題および製剤のふぞろいがもたらされる。そのような変化は、製造プロセスの再現性に影響を及ぼすことがあり、ゆえに、薬学的組成物の製剤化に課せられる高品質および厳しい要件を満たさない最終的な製剤がもたらされる。この点については、薬学的組成物の物理的安定性および化学的安定性を改善し得る、その固体状態に対する任意の変化が、同じ薬物のより安定性の低い形態のものに比べて著しい利点をもたらすことを広く念頭に置いておくべきである。
【0014】
化合物が、溶液またはスラリーから結晶化するとき、その化合物は、「多形性」と呼ばれる特性である、異なる空間格子配列(spatial lattice arrangement)で結晶化することがある。その結晶形の各々は、「多形」である。所与の物質の多形は、同じ化学組成を有するが、それらは、1つ以上の物理的特性(例えば、溶解性および解離、真密度、融点、結晶の形状、圧縮挙動、流動特性、ならびに/または固体状態での安定性)に関して互いに異なることがある。
【0015】
上に広く記載したように、薬物の多形挙動は、薬学および薬理学において非常に重要であり得る。多形が示す物理的特性の相違は、実際のパラメータ(例えば、貯蔵安定性、圧縮性および密度(製剤化および製品製造において重要である)および溶解速度(バイオアベイラビリティの判定における重要な因子である))に影響する。安定性の相違は、化学反応性の変化(例えば、1つの多形であるときのある剤形が、別の多形であるときよりも迅速に変色するような、異なった酸化)もしくは力学的変化(例えば、錠剤は、貯蔵の際、動力学的に好ましい多形が熱力学的により安定した多形に変わると砕ける)またはその両方(例えば、高湿度では1つの多形の錠剤がより崩壊しやすい)に起因し得る。さらに、結晶の物理的特性が、加工において重要であり得る:例えば、1つの多形が、固体の形態を凝集させて、固体の取扱いをより困難にさせる溶媒和物を形成する可能性がより高いかもしれないし、不純物を含まないように濾過することおよび洗浄することが困難であるかもしれない(すなわち、粒子の形状およびサイズ分布が、他の多形と比べて1つの多形で異なる可能性がある)。
【0016】
化学的特性および物理的特性が改善された薬物製剤が望まれているが、そのような製剤のために既存分子の新規の薬物の形態(例えば、多形)を調製するための予測可能な手段は存在しない。これらの新規の形態は、製造と組成物使用に共通したある範囲の環境にわたる物理的特性の一貫性を提供し得る。より詳細には、Auroraキナーゼ(特にAurora AまたはBを含む)のインヒビターが必要とされている。そのようなインヒビターは、慢性の炎症性増殖性障害、例えば、乾癬および関節リウマチ;増殖性の眼球障害、例えば、糖尿病性網膜症;良性の増殖性障害、例えば、血管腫;ならびに癌を含む、細胞の生存、増殖および移動が関わる、Auroraキナーゼが介在する病理学的状態(疾患)に罹患しているかまたはなりやすい患者の処置における有用性を有するはずであり、ならびに大規模製造および製剤化に適した特性を有するはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第05/111039号
【特許文献2】米国特許第7,572,784号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0185087号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0045501号明細書
【特許文献5】国際公開第08/063525号
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0167292号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2010/0310651号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Dutertreら、Oncogene,21:6175(2002)
【非特許文献2】Berdnikら、Curr.Biol.,12:640(2002)
【非特許文献3】Warnerら、Mol.Cancer Ther.,2:589(2003)
【非特許文献4】Bischoffら、EMBO,17:3062(1998)
【非特許文献5】Senら、Cancer Res.,94:1320(2002)
【非特許文献6】Ditchfield,J.Cell Biol.,161:267(2003)
【非特許文献7】Harringtonら、Nature Med.,1(2004)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の要旨
本発明は、式(I)のナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートもしくはその結晶形またはそれらの溶媒和物に関する。これらの形態は、大規模製造、医薬製剤化および貯蔵に有用な特性を有する。本発明はまた、前記結晶形を含む固体の薬学的組成物、および本明細書中に記載されるような種々の疾患、障害または状態を処置するために前記結晶形を使用するための方法を提供する。
【0020】
本発明の1つの実施形態は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)に関しており、ここで、このナトリウム塩は、単結晶形であり、存在し得る単結晶形が、本明細書中に記載される。
【0021】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤、およびナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)を含む固体の薬学的組成物に関しており、ここで、このナトリウム塩は、単結晶形であり、存在し得る単結晶形が、本明細書中に記載される。
【0022】
本発明の別の実施形態は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)の使用に関しており、ここで、このナトリウム塩は、単結晶形であり、薬学的組成物を調製するために、存在し得る単結晶形が本明細書中に記載される。
【0023】
本発明の他の実施形態は、有効量のナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)の結晶形を投与することによって、Auroraキナーゼインヒビターを必要とする被験体または癌を有する被験体を処置する方法に関しており、ここで、このナトリウム塩は、単結晶形であり、存在し得る単結晶形が、本明細書中に記載される。
【0024】
本発明の他の実施形態はまた、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)の結晶形を調製する方法に関しており、ここで、このナトリウム塩は、単結晶形であり、存在し得る単結晶形が、本明細書中に記載される。
【0025】
本発明は、以下の図面および下記の詳細な説明の助けを借りて、より完全に論じられるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート1型の粉末X線回折図(powder X−ray diffractogram)(XRPD)である。
【図2】図2は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート1型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図3】図3は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート1型に対する熱重量分析(TGA)プロファイルである。
【図4】図4は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図5】図5は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図6】図6は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型に対する熱重量分析(TGA)プロファイルである。
【図7】図7は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート4型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図8】図8は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート6型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図9】図9は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート6型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図10】図10は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート6型に対する熱重量分析(TGA)プロファイルである。
【図11】図11は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート6型の重量測定による蒸気収着(gravimetric vapor sorption)(GVS)プロファイルである。
【図12】図12は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート11型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図13】図13は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート11型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図14】図14は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート12型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図15】図15は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート12型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図16】図16は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート12型に対する熱重量分析(TGA)プロファイルである。
【図17】図17は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート24型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図18】図18は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート24型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図19】図19は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート24型に対する熱重量分析(TGA)プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
定義および省略形
上記においておよび本発明の説明全体にわたって使用されるとき、以下の用語は、別段示されない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0028】
「ナトリウム塩」は、4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸のナトリウム塩を記載していることが意図され、式(I)の構造を有する。
【0029】
「1型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート1型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例3の方法Bにおいて合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図1、2および3に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの1型を表す。
【0030】
「2型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例3の方法Aにおいて合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図4、5および6に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの2型を表す。
【0031】
「4型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート4型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例4において合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図7に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの4型を表す。
【0032】
「6型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート6型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例5において合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図8、9、10および11に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの6型を表す。
【0033】
「11型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート11型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例6において合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図12および13に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの11型を表す。
【0034】
「12型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート12型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例7において合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図14、15および16に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの12型を表す。
【0035】
「24型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート24型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例8において合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図17、18および19に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの24型を表す。
【0036】
本明細書中で使用されるとき、「結晶(性)」とは、高度に規則正しい化学構造を有する固体のことを指す。特に、結晶性ナトリウム塩は、本ナトリウム塩の1つ以上の単結晶形として生成され得る。本願において、用語「結晶形」、「単結晶形」および「多形」は、同義であり、これらの用語は、異なる特性(例えば、異なるXRPDパターン、異なるDSCスキャン結果)を有する結晶を区別する。用語「多形」には、偽多形が含まれ、この偽多形は、代表的には、ある材料の異なる溶媒和物であり、ゆえにそれらの特性が互いに異なる。したがって、本ナトリウム塩の異なる多形および偽多形の各々は、本明細書中では、異なる単結晶形であると考えられる。
【0037】
「実質的に結晶(性)」とは、少なくとも特定の重量パーセントが結晶性であり得る塩を指す。特定の重量パーセントは、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%〜100%の任意のパーセントである。いくつかの実施形態において、実質的に結晶(性)とは、少なくとも70%結晶性である塩を指す。他の実施形態において、実質的に結晶(性)とは、少なくとも90%結晶性である塩を指す。
【0038】
用語「溶媒和物または溶媒和されている」とは、本発明の化合物と1つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合には、水素結合が含まれる。ある特定の場合において、溶媒和物は、例えば、1つ以上の溶媒分子が、その結晶性固体の結晶格子内に組み込まれているとき、単離することができる。「溶媒和物または溶媒和されている」には、液相と単離可能な溶媒和物との両方が含まれる。代表的な溶媒和物としては、例えば、水和物、エタノール和物(ethanolate)またはメタノール和物(methanolate)が挙げられる。
【0039】
用語「水和物」は、規定の化学量論量で存在する溶媒分子がH2Oである溶媒和物であり、例えば、半水和物、一水和物、二水和物または三水和物が含まれる場合がある。
【0040】
用語「混合物」は、組み合わせたものの相状態(例えば、液体または液体/結晶)に関係なく混合物の要素が組み合されていることを指すために使用される。
【0041】
用語「シーディング」は、再結晶または結晶化を惹起するための結晶性材料の添加を指すために使用される。
【0042】
用語「貧溶媒(antisolvent)」は、本発明の化合物が難溶性である溶媒を指すために使用される。
【0043】
「被験体」は、好ましくは、鳥類または哺乳動物(例えば、ヒト)であるが、獣医学的処置を必要とする動物、例えば、家庭内の動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、家禽、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)でもあり得る。
【0044】
「処置する」または「処置」とは、ある疾患、障害または状態の予防、部分的な軽減または治癒のことを意味する。本発明の化合物および組成物は、有糸分裂キナーゼが介在する疾患、障害または状態、特に、Auroraキナーゼが介在する疾患、障害または状態を処置する際に有用である。有糸分裂キナーゼ活性の阻害は、癌を含む、細胞の生存、増殖および移動が関わるいくつかの疾患、ならびに他の細胞増殖性疾患の処置に役立ち得る。
【0045】
本明細書中で使用されるとき、用語「Auroraキナーゼが介在する障害」には、Auroraキナーゼの発現もしくは活性の増加によって引き起こされるかまたはその増加を特徴とするか、あるいはAuroraキナーゼ活性を必要とする、任意の障害、疾患または状態が含まれる。用語「Auroraキナーゼが介在する障害」にはまた、Auroraキナーゼ活性の阻害が有益な任意の障害、疾患または状態が含まれる。Auroraキナーゼが介在する障害には、増殖性障害が含まれる。増殖性障害の非限定的な例としては、慢性の炎症性増殖性障害、例えば、乾癬および関節リウマチ;増殖性の眼球障害、例えば、糖尿病性網膜症;良性の増殖性障害、例えば、血管腫;ならびに癌が挙げられる。
【0046】
本明細書中で使用されるとき、用語「Auroraキナーゼ」とは、有糸分裂の進行に関わる関連セリン/トレオニンキナーゼのファミリーのうちのいずれか1つを指す。細胞分裂において役割を果たす種々の細胞タンパク質は、Auroraキナーゼ酵素によるリン酸化のための基質であり、それらとしては、ヒストンH3、p53、CENP−A、ミオシンII調節性軽鎖、タンパク質ホスファターゼ−1、TPX−2、INCENP、サバイビン、トポイソメラーゼIIアルファ、ビメンチン、MBD−3、MgcRacGAP、デスミン、Ajuba、XIEg5(Xenopusにおける)、Ndc10p(出芽酵母における)およびD−TACC(Drosophilaにおける)が挙げられるがこれらに限定されない。Auroraキナーゼ酵素はまた、それら自体が、例えばThr288における、自己リン酸化のための基質でもある。文脈によって別段示されない限り、用語「Auroraキナーゼ」は、任意の種由来の任意のAuroraキナーゼタンパク質を指すことが意図され、それらとしては、Aurora A、Aurora BおよびAurora C、好ましくは、Aurora AまたはBが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、Auroraキナーゼは、ヒトAuroraキナーゼである。
【0047】
「薬学的に有効な量」は、所望の治療効果をもたらす際に有効な化合物、組成物、医薬または他の活性成分を表すことが意図される。
【0048】
1つの態様において、本発明は、式(I)のナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの結晶形に関する。したがって、本発明は、式(I)のナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの溶媒和物を提供する。
【0049】
ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)の結晶形を説明する特徴情報の組み合わせが本明細書中で提供される。しかしながら、そのような情報のすべてが、そのような特定の形態が所与の組成物中に存在することを判断するために当業者にとって必要であるとは限らず、特定の形態の存在を確証するのに十分であると当業者が認識し得る特徴情報の任意の部分を用いて、特定の形態の決定を行うことができ、例えば、当業者がそのような特定の形態が存在すると認識するのに、極めて特徴的なただ1つのピークで十分であり得ることが理解されるべきである。
【0050】
本ナトリウム塩は、それを大規模な医薬製剤の製造に適するようにする特性を有する。本明細書中に記載される本ナトリウム塩の結晶形は、式(II)の遊離酸化合物よりも高い水溶解性を示し、そのおかげで、その活性な薬学的成分の吸収が改善される。例えば、水中で、その遊離酸は、約10μg/mLの溶解性を有する。水中で、2型は約8mg/mLの溶解性を有し、6型は約10mg/mL超の溶解性を有し、24型は約8mg/mLの溶解性を有する。
【0051】
本発明の実施形態は、本ナトリウム塩に関しており、ここで、本ナトリウム塩の少なくとも特定の重量パーセントが、結晶性である。いくつかの実施形態において、本ナトリウム塩は、実質的に結晶性である。結晶性ナトリウム塩の非限定的な例としては、単結晶形の本ナトリウム塩、または異なる単結晶形の混合物が挙げられる。本発明の実施形態はまた、ナトリウム塩に関しており、ここで、本ナトリウム塩の少なくとも特定の重量パーセントは、結晶性であり、それは、1つ以上の指定の単結晶形を特定の重量パーセントのナトリウム塩から除外したものである。特定の重量パーセントは、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%〜100%の任意のパーセントであり得る。本ナトリウム塩の特定の重量パーセントが、結晶性であるとき、残りの本ナトリウム塩は、非晶形の本ナトリウム塩である。
【0052】
あるいは、本発明の実施形態は、結晶性ナトリウム塩に関しており、ここで、結晶性ナトリウム塩の少なくとも特定の重量パーセントは、特定の単結晶形であるか、特定の結晶形の組み合わせであるか、または1つ以上の特定の結晶形を除外する。特定の重量パーセントは、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%〜100%の任意のパーセントであり得る。
【0053】
本発明の他の実施形態は、単結晶形であるかまたは実質的に指定の単結晶形である本ナトリウム塩に関する。その単結晶形は、本ナトリウム塩の特定の重量パーセントであり得る。特定の重量パーセントは、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%〜100%の任意のパーセントである。ナトリウム塩の特定の重量パーセントが、単結晶形であるとき、残りの本ナトリウム塩は、非晶形の本ナトリウム塩と、単結晶形を除く1つ以上の結晶形の本ナトリウム塩とのある組み合わせである。いくつかの実施形態において、本ナトリウム塩は、少なくとも90重量%が単結晶形である。他のいくつかの実施形態において、本ナトリウム塩は、少なくとも95重量%が単結晶形である。
【0054】
本ナトリウム塩に関する以下の説明において、本発明の実施形態は、本明細書中で論じられるような1つ以上の特性を特徴とする特定の結晶形の本ナトリウム塩に関して記載され得る。結晶形を特徴付ける説明は、結晶性ナトリウム塩中に存在し得る異なる結晶形の混合物のことを説明するためにも使用され得る。しかしながら、本ナトリウム塩の特定の結晶形はまた、特定の結晶形に対する言及を考慮してまたは考慮せずに、本明細書中に記載されるような結晶形の特徴のうちの1つ以上によっても特徴づけられ得る。
【0055】
本発明のプロセスおよび化合物は、詳細な説明および以下で与えられる例示的な例によってさらに例示される。
【0056】
1型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の1型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図1に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表1に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、表1に示されるような、図1から得られるピークの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0057】
【表1】
本発明の別の実施形態において、ピークは、8.77°、10.23°、14.94°、21.35°、22.64°、23.97°および25.67°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、10.23°、14.94°、22.64°、23.97°および25.67°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、10.23°、14.94°および22.64°の2θ角度において確認される。
【0058】
本発明の別の実施形態において、1型は、図2に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、発熱転移および吸熱転移によって特徴づけられる。第1のものは、開始温度が約61℃である強い吸熱転移であって、約85℃での融解を伴うものであり、その後、開始温度が約165℃である弱い発熱転移が続く。第3および第4の吸熱転移は、両方とも弱く、それぞれ開始温度は約202℃および約243℃である。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0059】
本発明の別の実施形態において、1型は、図3に示される熱重量分析(TGA)によって特徴づけられ得る。このTGAプロファイルでは、温度の関数としてサンプルの重量減少百分率が図示されており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。その重量減少は、温度が25℃から250℃まで変化するときのサンプルの重量が約7.4%減少していることを表している。
【0060】
本発明の別の実施形態において、1型は、以下の特徴(I−i)〜(I−iv):
(I−i)表1に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(I−ii)図1と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(I−iii)図2と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(I−iv)図3と実質的に類似の熱重量分析(TGA)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0061】
本発明のさらなる実施形態において、1型の単結晶形は、特徴(I−i)〜(I−iv)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、1型の単結晶形は、特徴(I−i)〜(I−iv)のうちの3つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、1型の単結晶形は、特徴(I−i)〜(I−iv)のすべてを特徴とする。
【0062】
2型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の2型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図4に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表2に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、表2に示されるような図4から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0063】
【表2】
本発明の別の実施形態において、ピークは、3.44°、13.11°、13.73°、14.36°、17.31°および22.84°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、3.44°、13.11°、13.73°および22.84°の2θ角度において確認される。
【0064】
本発明の別の実施形態において、2型は、図5に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、発熱転移および吸熱転移によって特徴づけられる。第1および第2の吸熱転移は、それぞれ開始温度が約171℃および約226℃である。第3の転移は、開始温度が約258℃である強い吸熱転移であって、約264℃での融解を伴うものである。この転移の後に、約289℃および約309℃における2つの発熱転移が続く。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0065】
本発明の別の実施形態において、2型は、図6に示される熱重量分析(TGA)によって特徴づけられ得る。このTGAプロファイルでは、温度の関数としてサンプルの重量減少百分率が図示されており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。その重量減少は、温度が25℃から350℃まで変化するときのサンプルの重量が約22.8%減少していることを表している。
【0066】
本発明の別の実施形態において、2型は、以下の特徴(II−i)〜(II−iv):
(II−i)表2に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(II−ii)図4と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(II−iii)図5と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(II−iv)図6と実質的に類似の熱重量分析(TGA)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0067】
本発明のさらなる実施形態において、2型の単結晶形は、特徴(II−i)〜(II−iv)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、2型の単結晶形は、特徴(II−i)〜(II−iv)のうちの3つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、2型の単結晶形は、特徴(II−i)〜(II−iv)のすべてを特徴とする。
【0068】
4型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の4型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図7に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表3に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、図7から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0069】
【表3】
本発明の別の実施形態において、ピークは、13.27°、22.96°および25.89°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、22.96°および25.89°の2θ角度において確認される。
【0070】
本発明の別の実施形態において、4型は、以下の特徴(III−i)〜(III−ii):
(III−i)表3に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;および
(III−ii)図7と実質的に類似の粉末X線回折パターン
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0071】
本発明のさらなる実施形態において、4型の単結晶形は、特徴(III−i)〜(III−ii)の両方を特徴とする。
【0072】
6型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の6型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図8に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表4に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、図8から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0073】
【表4】
本発明の別の実施形態において、ピークは、11.62°、16.01°、17.47°、21.23°、23.43°および29.38°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、16.01°、17.47°、21.23°および23.43°の2θ角度において確認される。
【0074】
本発明の別の実施形態において、6型は、図9に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、吸熱転移によって特徴付けられる。第1の吸熱転移は、約52℃の開始温度を有する。この後に、開始温度が約100℃である吸熱転移が続く。次の吸熱転移は、約163℃の開始温度を有し、約181℃での融解を伴う。最後の吸熱転移は、約196℃の開始温度を有する。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0075】
本発明の別の実施形態において、6型は、図10に示される熱重量分析(TGA)によって特徴づけられ得、この図では、温度の関数としてサンプルの重量減少百分率が図示されており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。その重量減少は、温度が25℃から約200℃まで変化するときのサンプルの重量が約6.6%減少していることを表している。
【0076】
本発明の別の実施形態において、6型は、図11に示されるような蒸気収着プロファイル(GVS)によって特徴付けられ得る。このプロファイルでは、環境の相対湿度(RH)が、25℃の温度において0〜90%のRHの範囲にわたって、RHを10%間隔で変化させたときのサンプルの重量の変化が示されている。6型は、0〜90%のRHの間に6%の取り込みを示した。
【0077】
本発明の別の実施形態において、6型は、以下の特徴(IV−i)〜(IV−v):
(IV−i)表4に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(IV−ii)図8と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(IV−iii)図9と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;
(IV−iv)図10と実質的に類似の熱重量分析(TGA);および
(IV−v)図11と実質的に類似の重量測定による蒸気収着(GVS)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0078】
本発明のさらなる実施形態において、6型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−v)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、6型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−v)のうちの3つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、6型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−v)のうちの4つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、6型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−v)のすべてを特徴とする。
【0079】
11型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の11型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図12に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表5に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、図12から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0080】
【表5】
本発明の別の実施形態において、ピークは、13.03°、15.72°、25.66°、26.21°および27.08°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、13.03°、26.21°および27.08°の2θ角度において確認される。
【0081】
本発明の別の実施形態において、11型は、図13に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、吸熱転移によって特徴づけられる。第1のものは、開始温度が約26℃である吸熱転移である。第2の吸熱転移は、約58℃の開始温度を有する。第3の吸熱転移は、約255℃の開始温度を有し、約272℃での融解を伴う。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0082】
本発明の別の実施形態において、11型は、以下の特徴(V−i)〜(V−iii):
(V−i)表5に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(V−ii)図12と実質的に類似の粉末X線回折パターン;および
(V−iii)図13と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0083】
本発明のさらなる実施形態において、11型の単結晶形は、特徴(V−i)〜(V−iii)のうちの2つを特徴とする。本発明の別のさらなる実施形態において、11型の単結晶形は、特徴(V−i)〜(V−iii)のすべてを特徴とする。
【0084】
12型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の12型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図14に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表6に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、図14から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0085】
【表6】
本発明の別の実施形態において、ピークは、12.72°、13.46°、21.26°、21.89°、25.57°および29.50°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、12.72°、21.26°、21.89°および25.57°の2θ角度において確認される。
【0086】
本発明の別の実施形態において、12型は、図15に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、2つの吸熱転移によって特徴付けられる。第1のものは、約38.8℃の開始温度を有し、約71.3℃(ピーク最大値)での融解を伴う。第2の吸熱転移は、開始温度が約201.3℃である弱い転移である。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0087】
本発明の別の実施形態において、12型は、図16に示される熱重量分析(TGA)によって特徴づけられ得、この図では、温度の関数としてサンプルの重量減少百分率が図示されており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。その重量減少は、温度が25℃から250℃まで変化するときのサンプルの重量が約18.3%減少していることを表している。
【0088】
本発明の別の実施形態において、12型は、以下の特徴(VI−i)〜(VI−iv):
(VI−i)表6に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(VI−ii)図14と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(VI−iii)図15と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(VI−iv)図16と実質的に類似の熱重量分析(TGA)
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0089】
本発明のさらなる実施形態において、12型の単結晶形は、特徴(VI−i)〜(VI−iv)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、12型の単結晶形は、特徴(VI−i)〜(VI−iv)のうちの3つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、12型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−iii)のすべてを特徴とする。
【0090】
24型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の24型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図17に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表7に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、図17から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0091】
【表7】
本発明の別の実施形態において、ピークは、10.93°、15.67°、19.76°、22.05°、22.90°、23.38°、23.84°および26.91°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、10.93°、15.67°、22.90°、23.84°および26.91°の2θ角度において確認される。
【0092】
本発明の別の実施形態において、24型は、図18に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、いくつかの発熱転移および吸熱転移によって特徴付けられる。第1のものは、開始温度が約62.4℃である吸熱転移であり、約87.5℃(ピーク最大値)での融解を伴い、その後、開始温度が約105.3℃である弱い吸熱転移が続く。次は、約175.8℃における発熱転移であり、その後、開始温度が約221.0℃である吸熱転移が続き、約231.9℃(ピーク最大値)での融解が伴う。最後の転移は、吸熱であり、約254.2℃の開始温度を有し、約259.3℃(ピーク最大値)での融解を伴う。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0093】
本発明の別の実施形態において、24型は、図19に示される熱重量分析(TGA)によって特徴付けられ得る。このTGAプロファイルでは、温度の関数としてサンプルの重量減少百分率が図示されており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。その重量減少は、温度が25℃から約250℃まで変化するときのサンプルの重量が約7.1%減少していることを表している。
【0094】
本発明の別の実施形態において、24型は、以下の特徴(VII−i)〜(VII−iv):
(VII−i)表7に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(VII−ii)図17と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(VII−iii)図18と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(VII−iv)図19と実質的に類似の熱重量分析(TGA)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0095】
本発明のさらなる実施形態において、24型の単結晶形は、特徴(VII−i)〜(VII−iv)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、24型の単結晶形は、特徴(VII−i)〜(VII−iv)のうちの3つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、24型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−iv)のすべてを特徴とする。
【0096】
本発明の他の実施形態は、本明細書中で論じられる単結晶形のうちのいずれかの上述の特色の組み合わせによって特徴付けられる、本ナトリウム塩の単結晶形に関する。その特徴づけは、特定の多形に対して記載される、XRPD、TGA、DSCおよび水分収着/脱着の測定値のうちの1つ以上の任意の組み合わせによるものであり得る。例えば、本ナトリウム塩の単結晶形は、XRPDスキャンにおける主要ピークの位置に関するXRPDの結果の任意の組み合わせ;および/またはXRPDスキャンから得られたデータに由来する格子パラメータのうちの1つ以上の任意の組み合わせによって特徴付けられ得る。本ナトリウム塩の単結晶形はまた、指定の温度範囲にわたるサンプルに関連する重量減少のTGA測定;および/または特定の重量減少転移(weight loss transition)が始まる温度によっても特徴づけられ得る。熱流量転移(heat flow transition)中の最大熱流量に関連する温度および/またはサンプルが熱流量転移を受け始める温度のDSC測定もまた、結晶形を特徴づけ得る。サンプルの重量変化、および/またはある範囲の相対湿度(例えば、0%〜90%)にわたる水分吸着/脱着の測定によって決定される無水ナトリウム塩1分子あたりの水分吸着/脱着の変化もまた、本ナトリウム塩の単結晶形を特徴付け得る。
【0097】
複数の分析技術を用いた単結晶形の特徴づけの組み合わせの例としては、XRPDスキャンの主要ピークのうちの少なくとも1つの位置と、対応するDSC測定によって観察される1つ以上の熱流量転移中の最大熱流量に関連する温度;XRPDスキャンの主要ピークのうちの少なくとも1つの位置と、対応するTGA測定における指定の温度範囲にわたるサンプルに関連する1つ以上の重量減少;XRPDスキャンの主要ピークのうちの少なくとも1つの位置と、対応するDSC測定によって観察される1つ以上の熱流量転移中の最大熱流量に関連する温度と、対応するTGA測定における指定の温度範囲にわたるサンプルに関連する1つ以上の重量減少;およびXRPDスキャンの主要ピークのうちの少なくとも1つの位置と、対応するDSC測定によって観察される1つ以上の熱流量転移中の最大熱流量に関連する温度と、対応するTGA測定における指定の温度範囲にわたるサンプルに関連する1つ以上の重量減少と、ある範囲の相対湿度にわたる水分吸着/脱着の測定によって測定される無水塩1分子あたりの水分吸着/脱着の変化が挙げられる。同様に、上述の例の各々は、XRPDスキャンの主要ピークのうちの少なくとも1つの位置の使用を、単結晶形の1つ以上の格子パラメータで置き換えてもよい。
【0098】
上で論じられた特徴づけの組み合わせは、本明細書中で論じられる本ナトリウム塩の多形のいずれか(例えば、1型、2型、4型、6型、11型、12型または24型)を記載するために使用され得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、6型を変換して2型を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、約25℃〜約50℃の温度で加熱することによって6型を変換して、2型を得ることができる。なおも他のいくつかの実施形態では、6型を変換して、6型と2型の混合物を得ることができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、11型を変換して、1型、2型またはその混合物を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、約25℃〜約50℃の温度で加熱することによって11型を変換して、1型、2型またはその混合物を得ることができる。なおも他のいくつかの実施形態では、11型を変換して、1型、2型、11型および24型の任意の組み合わせの混合物を得ることができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、1型を変換して、24型を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、周囲条件で静置することによって1型を変換して、24型を得ることができる。なおも他のいくつかの実施形態では、1型を変換して、1型、2型および24型の任意の組み合わせの混合物を得ることができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、4型を変換して、24型を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、周囲条件下で乾燥することによって4型を脱溶媒和して(desolvated)、24型を得ることができる。なおも他のいくつかの実施形態では、4型を変換して、1型、2型、4型および24型の任意の組み合わせの混合物を得ることができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、24型を変換して、1型、2型またはその混合物を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、約50℃〜約75℃の温度で加熱することによって24型を変換して、1型を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、約25℃〜約50℃の温度で加熱することによって24型を変換して、2型を得ることができる。なおも他のいくつかの実施形態では、24型を変換して、1型、2型および24型の任意の組み合わせの混合物を得ることができる。
【0104】
薬学的組成物および方法
本ナトリウム塩またはその結晶形の薬理学的特性は、Auroraキナーゼが介在する疾患、障害または状態(増殖性障害、例えば、慢性の炎症性増殖性障害、例えば、乾癬および関節リウマチ;増殖性の眼球障害、例えば、糖尿病性網膜症;良性の増殖性障害、例えば、血管腫;ならびに癌が挙げられるがこれらに限定されない)に罹患しているかまたはなりやすい患者を処置する際の使用に適するようなものである。
【0105】
本発明のある特定の実施形態において、癌を処置するための方法が提供され、その方法は、薬学的に有効な量の本ナトリウム塩もしくはその結晶形またはその薬学的組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含する。
【0106】
いくつかの実施形態において、癌は、固形腫瘍である。本発明の方法によって処置され得る固形腫瘍の非限定的な例としては、膵癌;膀胱癌;直腸結腸癌;乳癌(転移性乳癌を含む);前立腺癌(アンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性の前立腺癌を含む);腎癌(例えば、転移性腎細胞癌腫を含む);肝細胞癌;肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、細気管支肺胞癌腫(BAC)および肺腺癌を含む);卵巣癌(例えば、進行性上皮癌または原発性腹膜癌を含む);子宮頸癌;胃癌;食道癌;頭頸部癌(例えば、頭頸部の扁平上皮癌腫を含む);メラノーマ;神経内分泌癌(転移性神経内分泌腫瘍、例えば、神経芽細胞腫を含む);脳腫瘍(例えば、神経膠腫、退形成乏突起膠腫、成人多形神経膠芽腫および成人未分化星状細胞腫を含む);骨癌;および軟部組織肉腫が挙げられる。
【0107】
他のいくつかの実施形態において、癌は、血液悪性腫瘍である。血液悪性腫瘍の非限定的な例としては、急性骨髄性白血病(AML);慢性骨髄性白血病(CML)(加速期CMLおよび急性転化期CML(CML−BP)を含む);急性リンパ芽球性白血病(ALL);慢性リンパ性白血病(CLL);ホジキン病(HD);非ホジキンリンパ腫(NHL)(濾胞性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫を含む);B細胞リンパ腫;T細胞リンパ腫;多発性骨髄腫(MM);ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;骨髄異形成症候群(MDS)(不応性貧血(RA)、環状鉄芽球(ringed siderblasts)を伴う不応性貧血(RARS)、芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)および移行期のRAEB(RAEB−T)を含む);および骨髄増殖性症候群が挙げられる。
【0108】
なおも他の実施形態において、癌は、NHL、AML、MDS、直腸結腸癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、前立腺癌および膵癌からなる群から選択される。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤;および本ナトリウム塩またはその結晶形を含む固体の薬学的組成物に関する。他の実施形態において、固体の薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤および実質的に結晶性のナトリウム塩を含む。他の実施形態において、固体の薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤および本ナトリウム塩を含み、ここで、本ナトリウム塩は、少なくとも95重量%の単結晶形であり、その単結晶形は、本明細書中に記載される。他の実施形態において、固体の薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤および本ナトリウム塩を含み、ここで、本ナトリウム塩は、実質的に単結晶形であり、その単結晶形は、本明細書中に記載される。他の実施形態において、これらの固体組成物は、必要に応じてさらに1つ以上の追加の治療薬を含む。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤;および式(II)の化合物4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸を含む液体の薬学的組成物に関する。いくつかの実施形態において、液体の薬学的組成物は、実質的に結晶性のナトリウム塩を用いて調製される。他の実施形態において、液体の薬学的組成物は、本ナトリウム塩を用いて調製され、ここで、本ナトリウム塩は、少なくとも95重量%の単結晶形であり、その単結晶形は、本明細書中に記載される。他の実施形態において、液体の薬学的組成物は、本ナトリウム塩を用いて調製され、ここで、本ナトリウム塩は、実質的に単結晶形であり、その単結晶形は、本明細書中に記載される。他の実施形態において、これらの液体の組成物は、必要に応じてさらに1つ以上の追加の治療薬を含む。
【0111】
上に記載されたように、本発明の薬学的に許容され得る組成物は、さらに、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアを含み、本明細書中で使用されるとき、そのキャリアには、所望の特定の剤形にふさわしいあらゆる溶媒、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散補助剤または懸濁補助剤、ゼラチンまたはポリマーのカプセルシェル、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などが含まれる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)には、薬学的に許容され得る組成物を製剤化する際に使用される様々なキャリア、およびその調製のための公知の手法が開示されている。任意の従来のキャリア媒質が、例えば、任意の望ましくない生物学的作用をもたらすことによって、またはそうでなければ薬学的に許容され得る組成物の他の任意の構成要素と有害な様式で別途相互作用することによって、本発明の化合物と配合禁忌である場合を除いて、それらの使用は、本発明の範囲内であると企図される。薬学的に許容され得るキャリアとして役立ち得る材料のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、炭酸水素ナトリウムまたはソルビン酸カリウム)、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、カカオバターおよび坐剤用ろう);油(例えば、落花生油、綿実油;ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油およびダイズ油);グリコール;例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質非含有水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに他の無毒性で適合性の滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、ならびに着色剤、離型剤(releasing agent)、コーティング剤、甘味剤、調味剤および芳香剤が挙げられるが、これらに限定されず、保存剤および酸化防止剤もまた、処方者の判断に従って本組成物中に存在し得る。
【0112】
本発明の方法に係る本ナトリウム塩もしくはその単結晶形またはその薬学的組成物は、上記疾患の処置に有効な任意の量および任意の投与経路を用いて投与され得る。必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢および全般的な状態、感染の重症度、特定の薬剤、その投与様式などに応じて被験体ごとに異なり得る。本ナトリウム塩もしくはその単結晶形またはその薬学的組成物は、好ましくは、投与を容易にするため、および投薬量を均一にするために、投薬単位形態(dosage unit form)で製剤化される。本明細書中で使用される表現「投薬単位形態」は、処置される患者に適切な、物理的に分離した単位の薬剤を指す。しかしながら、本発明の化合物および組成物の1日の総使用量(total daily usage)は、まっとうな医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが理解されるだろう。任意の特定の患者または生物に対する特定の有効量のレベルは、種々の因子(処置される疾患およびその疾患の重症度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食餌;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路および排出速度;処置の継続時間;使用される特定の化合物と併用してまたは同時に使用される薬物、ならびに医学分野において周知の同様の因子を含む)に依存し得る。
【0113】
本ナトリウム塩もしくはその単結晶形またはその薬学的組成物は、処置される感染の重症度に応じて、ヒトおよび他の動物に、経口的に、直腸に、非経口的に、槽内に、膣内に、腹腔内に、局所的に(粉末、軟膏または液滴によるものなど)、頬側に(bucally)、口腔噴霧(oral spray)もしくは鼻噴霧として、などで投与され得る。ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、1日あたり約0.01mg/kg被験体体重〜約50mg/kg被験体体重、好ましくは、約1mg/kg被験体体重〜約25mg/kg被験体体重の投薬量レベルで1日1回以上、経口的または非経口的に投与されることにより、所望の治療効果が得られ得る。
【0114】
経口投与用の液体の剤形としては、薬学的に許容され得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。液体の剤形は、活性な化合物に加えて、当該分野において通常使用される不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含み得る。不活性な希釈剤に加えて、経口組成物はまた、補助剤(例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤)、甘味剤、調味剤および芳香剤を含み得る。
【0115】
注射可能な調製物、例えば、滅菌された注射可能な水性または油性の懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌された注射可能な調製物は、無毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒での滅菌された注射可能な溶液、懸濁液またはエマルジョン、例えば、1,3−ブタンジオール溶液でもあり得る。使用されてもよい許容され得るビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー液,U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌された固定油は、慣用的に、溶媒または懸濁媒として使用される。この目的で、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含めて、任意の無刺激固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能物の調製において使用される。
【0116】
注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターで濾過すること、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌された注射可能な媒質に溶解し得るかもしくは分散し得る、滅菌された固体組成物の形態に滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。
【0117】
本発明の化合物の作用を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの本化合物の吸収を遅延させることが望ましいことが多い。これは、水溶性に乏しい結晶性または非晶質の材料の液体懸濁液を使用することによって、達成され得る。また、本化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、そしてその溶解速度は、同様に結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。あるいは、非経口的に投与される化合物の形態の吸収の遅延は、その化合物を油性ビヒクルに溶解させるかまたは懸濁させることによって達成される。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で本化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって、作製される。化合物とポリマーとの比および使用される特定のポリマーの性質に応じて、化合物放出の速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。注射可能なデポー製剤はまた、体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョンに本化合物を捕捉することによっても調製される。
【0118】
直腸投与用または膣投与用の組成物は、好ましくは、周囲温度では固体であるが体温では液体であるがゆえに直腸腔または膣腔内で融解し、活性な化合物を放出する適当な非刺激性の賦形剤またはキャリア(例えば、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤用ろう)と本発明の化合物を混合することによって調製され得る坐剤である。あるいは、直腸投与用または膣投与用の組成物は、適当な非刺激性の賦形剤(例えば、油または水)と化合物を混合して、その化合物を可溶化することによって調製され得るゲルまたはクリームであり、その製剤を濃密にするためにポリマーおよび脂肪アルコールが加えられることにより、直腸腔または膣腔内での残留時間を長くして、活性な化合物を放出することができる。
【0119】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が挙げられる。そのような固体剤形において、活性な化合物は、必要に応じて、少なくとも1つの不活性な薬学的に許容され得る賦形剤またはキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸第二カルシウム)、ならびに/またはa)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、微結晶性セルロースおよびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアカシア)、c)吸湿剤(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケート、クロスポビドンおよび炭酸ナトリウム)、e)溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、g)湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)、h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイト粘土)およびi)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウムおよびそれらの混合物)と混合され得る。カプセル、錠剤および丸剤の場合、その剤形は、緩衝剤またはコロイド状二酸化ケイ素などの流動助剤も含み得る。他の実施形態において、活性な化合物は、任意の追加の薬剤を含まないゼラチンまたはポリマーのカプセルシェル(そのままの(neat)カプセルシェル)に被包され得る。
【0120】
類似のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用いて、軟および硬ゼラチンカプセルにおける充填剤としても使用され得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティングなどのコーティングおよびシェル、ならびに医薬製剤分野において周知の他のコーティングとともに調製され得る。固体剤形は、必要に応じて乳白剤を含み得、腸管のある特定の部分だけでまたは腸管のある特定の部分において優先的に、必要に応じて遅延様式で、活性成分を放出する組成の剤形でもあり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびろうが挙げられる。類似のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用いて、軟および硬ゼラチンカプセルにおける充填剤としても使用され得る。
【0121】
活性な化合物は、上で述べられたような1つ以上の賦形剤を伴うマイクロカプセルの形態でもあり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティングなどのコーティングおよびシェル、放出制御コーティングならびに医薬製剤分野において周知の他のコーティングとともに調製され得る。そのような固体剤形において、活性な化合物は、少なくとも1つの不活性な希釈剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプン)と混和され得る。そのような剤形はまた、通常の慣行におけるように、不活性な希釈剤以外の追加の物質、例えば、錠剤化滑沢剤および他の錠剤化助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース)も含み得る。カプセル、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤も含み得る。それらは、必要に応じて乳白剤を含み得、腸管のある特定の部分だけでまたは腸管のある特定の部分において優先的に、必要に応じて遅延様式で、活性成分を放出する組成の剤形でもあり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびろうが挙げられる。
【0122】
いくつかの実施形態において、固体剤形は、本ナトリウム塩またはその結晶形、ならびにステアリルフマル酸ナトリウム、クロスポビドン、マンニトールおよびコロイド状二酸化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、固体剤形は、フィルムコーティングを有する錠剤を含む。他のいくつかの実施形態において、固体剤形は、約10%の滑沢剤を含む。他のいくつかの実施形態において、固体剤形は、約9%の崩壊剤を含む。いくつかの実施形態において、固体剤形は、高い薬物負荷を有する。いくつかの実施形態において、固体剤形は、約30重量%〜約60重量%の本ナトリウム塩またはその結晶形を含む。いくつかの実施形態において、固体剤形は、約40重量%〜約50重量%の本ナトリウム塩またはその結晶形を含む。
【0124】
本発明の化合物の局所的投与用または経皮的投与用の剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性な構成要素は、薬学的に許容され得るキャリア、および要求され得るときは、必要とされる任意の保存剤または緩衝剤と、滅菌条件下で混和される。眼用の製剤、点耳剤および点眼剤もまた、本発明の範囲内であると企図される。さらに、本発明は、身体に対して化合物の制御された送達を提供するという追加の利点を有する、経皮パッチの使用を企図する。そのような剤形は、本化合物を適切な媒質に溶解させるかまたは分散させることによって作製され得る。皮膚を横断する本化合物のフラックスを高めるために、吸収促進剤も使用され得る。その速度は、速度制御膜を提供することによって、または本化合物をポリマーマトリックスもしくはゲル中に分散させることによって、制御され得る。
【0125】
本ナトリウム塩もしくはその単結晶形、またはその薬学的組成物は、ある障害、疾患または症状を処置する単独療法の適用において使用されてもよいし、本発明の化合物または組成物(治療薬)の使用が、同じおよび/または異なるタイプの障害、症状および疾患を処置するための1つ以上の他の治療薬の使用と組み合わされる併用療法において使用されてもよい。併用療法は、治療薬を同時にまたは連続的に投与することを含む。あるいは、治療薬は、1つの組成物へと混合されて、その組成物を患者に投与することもできる。
【0126】
本発明の別の態様は、本明細書中で概説されるような式(II)の化合物を合成するためのプロセスを記載する。
【実施例】
【0127】
省略形
ca およそ
DMSO ジメチルスルホキシド
DSC 示差走査熱量測定
EtOH エタノール
GC ガスクロマトグラフィー
GVS 重量測定による蒸気収着
h 時間
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
KF Karl Fischer
min 分
m/z 質量対電荷
MS 質量スペクトル
MTBE tert−ブチルメチルエーテル
NMR 核磁気共鳴
RT 室温
TGA 熱重量分析
XRPD 粉末X線回折
一般的な方法
1H NMR:プロトン核磁気共鳴スペクトルを、以下のいずれかにおいて得る:
i)オートサンプラーを備えたBrucker 400MHz分光計(別段述べられない限り、サンプルはd6−DMSOで調製される);または
ii)Varian Mercury 300MHz分光計。
【0128】
質量分析:質量分析研究を、Thermo−Finnigan LCQ Deca−XPイオントラップ質量分析計において行う。そのエレクトロスプレーイオン源を、5kvの高電圧、35arbのシースガス流速、275℃のキャピラリー温度、9Vのキャピラリー電圧および35Vのチューブレンズオフセットで、ポジティブモードとネガティブモードの両方で使用した。0.5mg/ml溶液を得るように、被検体をアセトニトリルに溶解させた。LC−質量分析のフロー分析のために、Agilent 1100 HPLCシステムを使用した。ポンプ流速は、1.0ml/分であった。10μlの各サンプル溶液を、オートサンプラーからTジョイントに注入した。そのTジョイントからの溶液の約2%を質量分析計に吹き込んだ。
【0129】
粉末X線回折(XRPD):粉末X線回折パターンを、以下のいずれかにおいて取得する:
i)CuKα照射(40kV,40mA)、θ−θゴニオメーター、自動の発散スリットおよび受光スリット、グラファイト第2モノクロメーター(graphite secondary monochromator)およびシンチレーションカウンターを用いるBruker AXS/Siemens D5000回折計。この装置は、認定コランダム標準(NIST1976)を用いて確認された性能である。周囲条件下で操作されるサンプルを、粉砕することなく受け取ったままの粉末を用いて、平板試料として調製する。およそ35mgのサンプルを、研磨されたゼロバックグラウンドの(510)ケイ素薄片に切り込まれたくぼみに静かに充填する。解析中、そのサンプルをそれ自体の面において回転させる。非周囲条件下で操作されるサンプルを、Pt100熱電対を備えたステンレス鋼のくぼみのサンプルホルダーに充填する。Bruker AXS/Siemens D5000回折計に取り付けられたAnton Paar TTK450温度可変カメラを用いて、低温データを収集する。低温スキャンに対する装置の条件は、上記の平板サンプルについて記載された条件と類似である。すべてのXRPD解析を、Diffrac Plus XRD Commanderソフトウェアv2.3.1を用いて行う。回折データは、CuKα1(λ=1.5406Å)を用いて報告され、Kα2成分がEVAを用いて取り除かれた後、粉末パターンは、WININDEXを用いたITO法によって指し示され、生データの格子定数(raw lattice constant)は、WIN−METRICを用いて精密化される;または
ii)CuKα照射(40kV,40mA)、自動XYZステージ、オートサンプルポジショニング用のレーザービデオ顕微鏡およびHiStar2次元領域検出器を用いる、Bruker AXS C2 GADDS回折計。X線光学機器は、0.3mmのピンホールコリメーターと一体となった単一のGoebel多層鏡からなる。ビームの広がり、すなわち、サンプル上のX線ビームの有効なサイズは、およそ5mmである。3.2°〜29.7°という有効な2θ範囲をもたらす20cmというサンプルと検出器との距離において、θ−θ連続スキャンモードを使用する。代表的には、サンプルに120秒間X線ビームを曝露し得る。周囲条件下で操作されるサンプルは、粉砕することなく粉末を用いて、平板試料として調製される。平らな表面が得られるように、およそ1〜2mgのサンプルをスライドガラス上に軽く押しつける。非周囲条件下で操作されるサンプルは、熱伝導化合物とともにケイ素薄片上に載せられる。次いで、そのサンプルを1分あたりおよそ20℃で適切な温度まで加熱し、続いておよそ1分間、等温に保持された後、データ収集を開始する;または
iii)Brucker AZS D8−AdvanceX線回折計。約50mgのサンプルを、粉末測定のために直径50mmの石英サンプリングパン内で静かに平らにする。そのサンプルは、2θ/θ固定連動角度(locked coupled angles)を用いて2.9°2θから29.6°2θまでの連続的なスキャンとして操作される。各角度間隔は、0.05°2θであり、データは、2秒間にわたって収集される。そのサンプルの操作は、周囲条件下で行われ、データ解析は、EVAバージョン9.0ソフトウェアを用いて行われる。
【0130】
示差走査熱量測定(DSC):示差走査熱量測定(DSC)データを、以下のいずれかにおいて収集する:
i)50ポジションのオートサンプラーを備えたTA Instruments Q1000示差走査熱量計。エネルギーおよび温度の較正標準は、インジウムである。サンプルを、25℃〜300℃において1分あたり10℃の速度で加熱する。スキャンの間、サンプルの上に1分あたり30mLで窒素パージ流を流し続ける。0.5mg〜3mgのサンプルを解析する。溶媒蒸気由来の蓄積される圧力を緩和するピンホールを有する密封されたアルミニウムパンにすべてのサンプルを圧着する。
;または
ii)TA Instruments DSC Q2000示差走査熱量計。1mg〜2mgのサンプルを、ふた付きのアルミニウムパン内に密封する。窒素サンプルパージ(nitrogen sample puge)を50mL/分で一定に維持しつつ、そのサンプルを1分あたり10℃の勾配速度で25℃〜350℃に加熱する。Thermal Advantage for Q Seriesソフトウェアを用いてサーモグラムを解析する。
【0131】
熱重量分析(TGA):熱重量分析(TGA)データを、16ポジションのオートサンプラーを備えたTA Instruments Q500熱重量分析装置において収集する。この装置を、認定Alumelを用いて較正する。代表的には、3mg〜10mgのサンプルを、予め風袋計量した(pre−tared)白金るつぼおよびアルミニウムDSCパンに充填し、周囲温度から350℃まで1分あたり10℃で加熱する。測定の間、サンプルの上に1分あたり60mLで窒素パージ流を流し続ける。Thermal Advantage for Q Seriesソフトウェアを用いてサーモグラムを解析する。
【0132】
実施例1:(5−クロロ−2−ヨードフェニル)(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)メタノン(3)の合成
【0133】
【化3】
工程1:(5−クロロ−2−ヨードフェニル)(2,6−ジフルオロフェニル)メタノン(2)
室温で、反応器に、(2−アミノ−5−クロロフェニル)(2,6−ジフルオロフェニル)メタノン(1、60.0kg,224mol)および酢酸(427L)を加えた。混合物を、すべての固体が完全に溶解するまで撹拌し、濾過し、酢酸(9.47L)で洗浄した。濃HCl(156L)を、20〜25℃において最低でも30分間にわたって加え、得られた混合物を0〜5℃に冷却した。反応温度を0〜5℃に維持しつつ、水(88.0L)中の亜硝酸ナトリウム(18.6kg,269mol)の溶液を加えた。混合物を0〜5℃において1時間撹拌した。次いで、水(270L)および酢酸イソプロピル(717L)を0〜5℃において加えた。水(133L)中のヨウ化カリウム(50.2kg,303mol)の溶液を0〜5℃において1時間にわたって加えた。反応混合物を30分間撹拌し、1.5時間にわたって20〜25℃に温めた。層を分離し、有機相を希ブライン溶液(200Lの水中に22kgのNaCl)および炭酸ナトリウム溶液(523Lの水中に175kgのNa2CO3)で洗浄した。得られた有機層をアスコルビン酸ナトリウム溶液で2回(各洗浄について188Lの水中に15.8kg)、続いて水(200L)で洗浄した。有機相を、430Lの溶媒が除去されるまで、最高50℃のジャケット温度を用いて濃縮した。ヘプタン(400L)を加え、混合物を、395Lの溶媒が除去されるまで、50℃のジャケット温度を用いて濃縮した。2−ブタノール(398L)を加え、混合物を、322Lの溶媒が除去されるまで、最高60℃のジャケット温度を用いて濃縮した。さらなる2−ブタノール(398L)を加え、混合物を、390Lの溶媒が除去されるまで、70℃のジャケット温度を用いて濃縮した。反応混合物を−5〜−8℃に冷却し、2時間撹拌し、濾過し、−5〜0℃の2−ブタノール(2×84.2L)で洗浄した。得られた湿ケーキを減圧下、40〜50℃で乾燥することにより、67.6kg(80%収率)の2を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.89 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.51 (m, 1H), 7.44 (d, J=2.3 Hz, 1H), 7.18 (dd, J=2.3, 8.2 Hz, 1H), 7.00 (m, 2H);C13H6ClF2IOについて計算される元素分析値:C,41.25;H,1.60;Cl,9.37;F,10.04;I,33.52;O,4.23.実測値:C,41.36;H,1.65;Cl,9.51;F,10.03;I,33.41;O,4.04.
工程2:(5−クロロ−2−ヨードフェニル)(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)メタノン(3)
室温の反応器に、2(67.6kg,179mol)およびMTBE(344L)を加えた。混合物を40℃に温め、固体が完全に溶解するまで30分間撹拌した。次いで、混合物を25〜30℃に冷却した。ナトリウムメトキシドを、メタノール中の25%w/w溶液(45.2kg,209mol)として25〜30℃において最低でも90分間にわたって加えた。HPLC解析によって>99.0%の変換率が得られるまで、反応混合物を少なくとも2時間撹拌した。温度を20〜25℃に維持しつつ、水(483L)を30分間にわたってゆっくり加えた。層を分離し、水相をMTBE(77L)で抽出した。合わせた有機抽出物を希ブライン溶液(342Lの水中に38kgのNaCl)で洗浄した。有機層を濾過し、水(242L)で洗浄し、有機相を濾過した。内部温度を70℃未満に維持しつつ、360Lの溶媒が除去されるまで、得られた有機相を濃縮した。イソブタノール(302L)を加え、内部温度を70℃未満に維持しつつ、307Lの溶媒が除去されるまで、混合物を濃縮した。別のイソブタノール(330L)を加え、内部温度を70℃未満に維持しつつ、210Lの溶媒が除去されるまで、混合物を濃縮した。透明な溶液が得られるまで混合物を60〜85℃に加熱し、50℃に冷却した。種結晶のスラリー(150mLのイソブタノール中に50g)を加え、混合物を40℃に冷却した。別の種結晶のスラリー(60mLのイソブタノール中に30g)を加え、混合物を最低でも3時間にわたって20〜25℃に冷却した。得られた混合物をさらに2時間撹拌した。混合物を濾過し、イソブタノール(2×65L)で洗浄した。得られた湿ケーキを減圧下、20〜35℃で乾燥することにより、50.9kgの粗製3を得た。別個の反応器に、粗製3およびイソブタノール(69L)を入れた。混合物を、透明な溶液が得られるまで75〜80℃に加熱した。反応混合物を55℃に冷却し、種結晶のスラリー(500mLのイソブタノール中に50g)を加えた。混合物を55℃において30分間撹拌し、最低でも3時間にわたって20〜25℃に冷却し、さらに2時間撹拌した。混合物を濾過し、イソブタノール(2×31L)で洗浄した。湿ケーキを減圧下、40℃で乾燥することにより、46.0kg(66%収率)の精製された3を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.88 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.42 (m, 2H), 7.13 (dd, J=2.3, 8.2 Hz), 6.76 (m, 2H), 3.73 (s, 3H); MS(ESI)m/z 391.2(M+H+,30%).
実施例2:4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸塩酸塩(6)の合成
【0134】
【化4】
工程1:メチル4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートニトレート(5)
室温で、反応器に、メチル4−アミノ−2−メトキシベンゾエート(4,38kg,210mol)およびメタノール(224L)を加えた。混合物を25〜30℃において30分間撹拌した。シアナミド水溶液(50%w/w,43kg,512mol)を、20〜25℃において最低でも30分間にわたって加えた。反応混合物を、75℃という最高ジャケット温度を用いて加熱還流した。濃硝酸(45kg,499mol)を、最低でも60分間にわたって加えた。得られた混合物を2時間加熱還流した。種結晶の懸濁液(600mLのメタノール中に16g)を加え、混合物を、75℃のジャケット温度を用いて60〜90分間撹拌した。混合物を、少なくとも2時間にわたって20〜25℃に冷却し、さらに2時間撹拌した。混合物を濾過し、1時間にわたって撹拌しつつ、メタノール(180L)で洗浄した。湿ケーキを、1時間にわたって撹拌しつつ、2回目のメタノール(180L)で洗浄した。得られた湿ケーキを減圧下、25℃で乾燥することにより、30.0kg(50%収率)の5を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 9.82 (s, 1H), 7.70 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.57 (s, 4H), 6.97 (d, J=2.3 Hz, 1H), 6.84 (dd, J=2.3, 8.2 Hz, 1H), 3.81 (s, 3H), 3.76 (s, 3H); MS(ESI)m/z 224.4(M+,100%).
工程2:4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸塩酸塩(6)
反応器に、5(29.8kg,104mol)および水(475L)を加えた。混合物を75〜80℃に加熱し、温度を75〜80℃に維持しつつ、最低でも30分間にわたって濃HCl(107kg,1051mol)を加えた。反応混合物を75〜80℃において3時間撹拌した。反応混合物をサンプリングし、HPLC解析によって変換率(%)を測定した。その変換率(%)が>97.3%に達するまで、または総反応時間が7時間になるまで、混合物を75〜80℃で加熱した。反応物を最低でも3時間にわたって20〜25℃に冷却し、20〜25℃においてさらに2時間撹拌した。反応物を濾過し、16%w/wHCl(2×35kg)、水(82L)およびヘプタン(2×120L)で洗浄した。得られた湿ケーキを減圧下、35〜50℃で乾燥することにより、23.9kg(93%収率)の6を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 10.25 (s, 1H), 7.72 (s, 4H), 7.69 (d, J=8.8 Hz, 1H), 6.93 (d, J=2.3 Hz, 1H), 6.81 (dd, J=2.3, 8.8 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H); MS(ESI)m/z 210.4(M+,100%).
実施例3:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形1型および2型の合成
【0135】
【化5】
工程1:tert−ブチルプロパ−2−イン−1−イルカルバメート(7)
反応器に、プロパギルアミン(10.0kg,182mol)およびMTBE(154L)を加えた。Boc2O(41.3kg,190mol)をMTBE(61L)に溶解させることによってBoc2O溶液を調製し、これを、温度を23〜28℃に維持しつつ最低でも60分間にわたって上記プロパルギルアミン溶液に移した。GC解析によって≧98.0%の変換率が得られるまで、反応混合物を少なくとも1時間撹拌した。重硫酸ナトリウムの溶液(44Lの水中に5.6kgのNaHSO4)を、温度を20〜25℃に維持しつつ、最低でも15分間にわたって加え、20分間撹拌した。相を分離し、前述と同様に重硫酸ナトリウム溶液(44Lの水中に5.6kgのNaHSO4)で洗浄した。得られた有機相を炭酸水素ナトリウム溶液(44Lの水中に4.0kg)および水(2×47L)で洗浄した。40℃の最高ジャケット温度を用いて、反応器に62kgが残るまで、有機相を濃縮した。温度を35〜40℃に維持しつつ、最低でも20分間にわたってヘプタン(186L)を加える。40℃の最高ジャケット温度を用いて、反応器に70kgが残るまで、混合物を濃縮した。混合物を、最低でも3時間にわたって0〜5℃に冷却し、0〜5℃において1時間撹拌した。混合物を濾過し、0〜5℃のヘプタンで洗浄した(2×15L)。湿ケーキを減圧下、25〜30℃で乾燥することにより、20.9kg(74%収率)の7を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.70 (s, 1H), 3.92 (d, J= Hz, 2H), 2.22 (m, 1H), 1.45 (s, 9H);C8H13NO2について計算される元素分析値:C,61.91;H,8.44;N,9.03;O,20.62.実測値:C,61.99;H,8.36;N,9.11;O,20.54.
工程2:tert−ブチル{3−[4−クロロ−2−(2−フルオロ−6−メトキシベンゾイル)フェニル]プロパ−2−イン−1−イル}カルバメート(8)
反応器に、3(15.0kg,38.4mol)、7(7.2kg,46.4mol)およびシクロヘキサン(230L)を加えた。懸濁液を、減圧−窒素サイクルを用いて各回少なくとも3分間にわたって3回脱気した。ジエチルアミン(8.6kg,119mol)を加え、反応混合物を28〜33℃に加熱した。ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.134kg,0.192mol)およびヨウ化銅(II)(0.037kg,0.192mol)を加え、HPLC解析によって≧99.0%の変換率が得られるまで、混合物を28〜33℃において少なくとも15時間撹拌した。水(68L)に続いてMTBE(92L)を加えた。反応混合物を45〜50℃に加熱し、最低でも30分間、すべての固体が完全に溶解するまで撹拌した。45〜50℃において相を分離し、有機相を45〜50℃の水(2×68L)で洗浄した。得られた有機相を濾過し、反応器を、45〜50℃のMTBE(32L)ですすいだ。次いで、そのすすぎ液を、濾液が入った第2の反応器にフィルター膜を介して移した。合わせた濾液を、45〜50℃のジャケット温度を用いて、反応器に225kgが残るまで、減圧下で濃縮した。混合物を35〜40℃に冷却し、種結晶のスラリー(500mLのシクロヘキサン中に10gの8)を加えた。反応混合物を35〜40℃において60分間撹拌し、45〜50℃のジャケット温度を用いて、反応器に144kgが残るまで、減圧下で濃縮した。混合物を、最低でも2時間にわたって18〜23℃に冷却し、18〜23℃においてさらに2時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、シクロヘキサン(2×53L)で洗浄した。湿ケーキを減圧下、40〜45℃で乾燥することにより、16.0kg(80%収率)の8を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.72 (s, 1H), 7.41 (m, 3H), 6.77 (m, 2H), 4.43 (s, 1H), 3.88 (d, J=5.3 Hz, 2H), 3.74 (s, 3H), 1.46 (s, 9H); MS(ESI)m/z 318.4(M+H+−Boc,23%)、362.4(M+H+−t−ブチルカチオン,20%).
工程3:8−クロロ−4−[(ジメチルアミノ)メチレン]−1−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−3,4−ジヒドロ−5H−2−ベンゾアゼピン−5−オン(9)
トリフルオロ酢酸(158L)および水(8.3L)を反応器に加えた。ジクロロメタン(63L)中の8(37.8kg,90.5mol)の溶液を、第2の反応器を介して、温度を20〜30℃に維持しつつ、最低でも60分間にわたって、上記トリフルオロ酢酸溶液に加えた。8の溶液が入っていた反応器をジクロロメタン(19L)ですすぎ、温度を20〜30℃に維持しつつ、反応混合物に移した。混合物を30〜35℃に加熱し、HPLC解析によって≧98.0%の変換率が得られるまで、少なくとも19時間撹拌した。反応器に76〜79kgが残るまで、混合物を減圧下、35〜45℃で濃縮した。内部温度を20〜30℃に維持しつつ、ジクロロメタン(424L)を加えた。温度を20〜30℃に維持しつつ、最低でも30分間にわたって、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(64kg,495mol)を加えた。pHが<8.0である場合、pHが≧8.0になるまで、5LのN,N−ジイソプロピルエチルアミンを加えた。HPLC解析によって≧99.0%の変換率が得られるまで、混合物を最低でも2時間にわたって20〜30℃において撹拌した。温度を20〜25℃に維持しつつ、水(378L)を加え、30分間撹拌した。相を分離し、有機相を10%w/wブライン溶液(340kgの水中に38kgのNaCl)で洗浄した。相を分離し、有機相を、最低でも30分間にわたって20〜25℃にて硫酸ナトリウム(5.4kg)で乾燥した。混合物を濾過し、その硫酸ナトリウム混合物が入っていた反応器をさらなるジクロロメタン(27L)ですすぎ、濾過した。合わせた濾液にジメチルホルムアミドジメチルアセタール(152kg,1276mol)を最低でも30分間にわたって、温度を20〜30℃に維持しつつ加えた。混合物を37〜42℃に温め、HPLC解析によって≧99.0%の変換率が得られるまで、最低でも20時間にわたって撹拌した。反応混合物を、反応器に234〜252kgが残るまで、40〜45℃のジャケット温度を用いて減圧下で濃縮した。MTBE(355L)を35〜40℃において加え、得られた混合物を、反応器に414〜432kgが残るまで、40〜45℃のジャケット温度を用いて減圧下で濃縮した。その懸濁液を、最低でも3時間にわたって20〜25℃に冷却し、さらに2時間撹拌した。その懸濁液を濾過し、20〜25℃において、撹拌しつつ、MTBE(2×50L)に続いてアセトン(2×101L)で洗浄した。湿ケーキを減圧下、35〜45℃で乾燥することにより、28.0kg(83%収率)の9を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.87 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.63 (s, 1H), 7.58 (d, J=9.4 Hz, 1H), 7.42 (dd, J=6.96, 8.2 Hz, 1H), 6.94 (m, 2H), 4.83 (d, J=12.9 Hz, 1H), 3.44 (d, J=12.9 Hz, 2H), 3.31 (s, 3H), 3.22 (s, 6H); MS(ESI)m/z 373.2(M+H+,100%).
工程4:4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸(式II)
反応器に、6(3.81kg,15.5mol)、炭酸カリウム(4.3kg,31.1mol)、9(5.27kg,14.1mol)およびメタノール(63L)を加えた。懸濁液を50〜55℃に温め、HPLC解析によって≧96.0%の変換率が得られるまで、最低でも24時間撹拌した。温度を50〜55℃に維持しつつ、メタノール(10L)および水(37L)を加えた。温度を50〜55℃に維持しつつ、7%w/wHCl(7.0kgの濃HClおよび24Lの水から調製されたもの)を用いて、混合物のpHを3.0〜4.0に調整した。懸濁液を、最低でも1時間にわたって20〜25℃に冷却し、少なくとも60分間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、50〜55℃の水(2×26.3L)および20〜25℃のメタノール(2×10L)で洗浄した。湿ケーキを減圧下、45〜50℃で乾燥することにより、5.85kg(80%収率)の式(II)を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 12.07 (s, 1H), 10.22 (s, 1H), 8.72 (s, 1H), 8.29 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.95 (s, 1H), 7.80 (dd, J=2.4, 8.9 Hz, 1H), 7.70 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.39 (m, 3H), 7.21 (s, 1H), 6.89 (s, 2H), 3.82 (s, 6H); MS(ESI)m/z MS(ESI)m/z 517.2(M−H+,45%).
工程5:
方法A:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形2型
式(II)の化合物(130g,0.244mol)、無水エタノール(975mL,7.5体積)および水(715mL,5.5体積)を反応器に加え、69〜74℃に温めた。温度を69〜74℃に維持しつつ、1.0M水酸化ナトリウム水溶液(260ML,2.0体積,0.260mol)を滴下した。反応混合物のpHを連続的にモニターし、pHが9.5〜10.5(好ましくは、9.8〜10)に達したら、滴下を停止した。混合物を、69〜74℃において少なくとも1時間撹拌し、pHが規定の範囲から低下した場合、9.5〜10.5のpHが得られるまで、追加の上記1.0M NaOH溶液を加えた。反応混合物を72〜77℃の内部温度に温めた。この溶液を濾過し、69〜77℃の内部温度を維持しつつ、別個の反応器に移した。予め69〜74℃に加熱しておいた無水エタノール(1690mL,13体積)を濾過し、反応混合物を69〜74℃の温度に維持しつつ、反応混合物に加えた。式(I)の化合物(1.30g)を加え、62〜67℃において少なくとも15分間撹拌し、次いで、反応混合物を69〜74℃に加熱した。種結晶が存在した。910mL(7体積)の溶媒が除去されるまで、得られた懸濁液を減圧下、60〜74℃において濃縮した。予め69〜74℃に加熱しておいた無水エタノール(910mL,7体積)を濾過し、反応混合物を69〜74℃の温度に維持しつつ、反応混合物に加えた。910mL(7体積)の溶媒が除去されるまで、得られた懸濁液を減圧下、60〜74℃において濃縮した。7体積の無水エタノールを加えた後に上記のように濃縮することを、少なくとも4回繰り返した。KF分析によって水の%w/wについて工程内コントロール(In Process Control)を得た。7体積の無水エタノールを加えた後、濃縮することを、≦15.0%w/wのKFに達するまで繰り返した。反応混合物を、最低でも2.5〜3時間にわたって20〜25℃に冷却し、20〜25℃において少なくとも1時間撹拌し、懸濁液を濾過した。無水エタノール(2×486.5mL,3.74体積)を用いて、撹拌しながら、固体を2回洗浄した。GC解析によって測定される残留エタノール含有量が、≦0.4%w/wとなるまで、湿ケーキを減圧下、40〜45℃で乾燥した。合計96.8g(71%収率)の式(I)の化合物を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 9.72 (s, 1H), 8.61 (s, 1H), 8.25 (d, J=7.6, 1H), 7.79 (dd, J=2.3, 8.8 Hz, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.40 (dd, J=8.2, 15.2 Hz, 1H), 7.25 (d, J=8.2, 1H), 7.17 (m, 2H), 6.88 (s, 2H), 3.69 (s, 3H), 3.31 (s, 3H); MS(ESI)m/z 517.2(M−H+,45%).
方法B:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形1型
エタノール(2.0L)中の式(II)の化合物(98.0g,190mmol)の撹拌懸濁液に、1.044M水酸化ナトリウム水溶液(199mL)を加えた。得られた均一な溶液を1時間撹拌し、その撹拌中に、濃密な沈殿物が形成された。生成物を濾集し、エタノール(0.5L)およびジエチルエーテル(1.0L)で洗浄した。得られた固体を減圧下、60〜70℃で4日間乾燥することにより、88.6g(86.8%)の式(I)の化合物を淡褐色固体(融点225℃(decomp))として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 9.86 (s, 1H), 8.60 (s, 1H), 8.29 (d, 1H), 7.79 (dd, 1H), 7.60 (br s, 1H), 7.40 (dd, 1H), 7.29 (d, 1H), 7.25−7.15 (m, 2H), 6.9 (br s, 2H), 4.9 (br s, 1H), 3.8 (br s, 1H), 3.70 (s, 3H), 3.35 (br s, 3H); MS m/z 519(M+−Na+H,100%);C27H19ClFN4NaO40.33EtOH1.3H2Oについて計算されるCHN分析値:C,57.33;H,4.10;N,9.67.実測値:C,57.14;H,3.99;N,9.65.
方法C:非晶質ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート
1.0gのナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型を、65℃の350mLの水に溶解させた。この溶液を固体CO2/アセトンスラリー中で凍結させ、次いで、凍結乾燥した。非晶質で吸湿性のふわふわした固体を得た。
【0136】
実施例4:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形4型の合成
2.5mLのエタノールを、ねじぶた式のバイアル内の50mgの凍結乾燥された非晶質ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(減圧下、50℃で1時間、事前に乾燥しておいたもの)に加えた。このバイアルを、50℃で振盪および周囲温度で振盪を4時間ごとに交互に代えながら1週間振盪した。濾過により、4型を単離した。4型のXRPDデータは、図7および表3に示される。
【0137】
実施例5:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形6型の合成
3.0mLのメタノールを、ねじぶた式のバイアル内の100mgのナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型に加えた。このバイアルを、50℃で振盪および周囲温度で振盪を4時間ごとに交互に代えながら72時間振盪した。濾過により、6型を単離した。6型のXRPDデータは図8および表4に示され、DSCデータは図9に示され、TGAデータは図10に示され、GVSデータは図11に示される。
【0138】
実施例6:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形11型の合成
3.0mLのメタノールを、ねじぶた式のバイアル内の100mgのナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型に加えた。このバイアルを、50℃で振盪および周囲温度で振盪を4時間ごとに交互に代えながら72時間振盪した。得られたスラリーを濾過し、濾液を確保した。10mLの貧溶媒シクロヘキサンを加えたが、沈殿物は生じなかった。その溶液を蒸発させることにより、11型と24型との混合物を得た。11型のXRPDデータは図12および表5に示され、DSCデータは図13に示される。
【0139】
実施例7:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形12型の合成
10mLの90%エタノール/10%水の溶液を、ねじぶた式のバイアル内の100mgのナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型に加えた。このバイアルを50℃に加熱し、2時間振盪した。得られたスラリーを50℃において濾過し、濾液を確保した。その濾液を4℃において17時間貯蔵したが、沈殿物は生じなかった。そのバイアルのふたを取って蒸発させることにより、12型を得た。12型のXRPDデータは図14および表6に示され、DSCデータは図15に示され、TGAデータは図16に示される。
【0140】
実施例8:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形24型の合成
200mgの4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸を、ねじぶた式のバイアル内の4mLのエタノール中で撹拌した。1.1mol当量の水酸化ナトリウム溶液(406μL,1.044M水溶液)を加えた。この固体が溶解した後、黄色の沈殿物が形成された。このサンプルは、4型と24型との混合物だった。この固体を10mLのエタノールおよび20mLのジエチルエーテルで洗浄し、減圧下、70℃で2日間、そして60℃でさらに3日間乾燥することにより、24型を得た。24型のXRPDデータは図17および表7に示され、DSCデータは図18に示され、TGAデータは図19に示される。
【0141】
前述の本発明は、明確にする目的および理解を促す目的でいくらか詳細に記載してきたが、これらの特定の実施形態は、例示であって限定でないとみなされるべきである。当業者は、本開示を通読することによって、特定の実施形態ではなく添付の請求項によって定義される本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更が行われ得ることを認識するだろう。
【0142】
本明細書中で参照された特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。本明細書中で引用された発行された特許、出願および参考文献は、各々が明確かつ個別に参考として援用されると示されたのと同程度に、本明細書によって参考として援用される。矛盾している場合は、定義を含む本開示が支配するものとする。
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2010年2月19日に出願された米国仮特許出願第61/306,047号(係属中)の利益を主張する。この米国仮特許出願第61/306,047号は、その全体が参考として本明細書により援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、式(I)のナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート:
【0003】
【化1】
もしくはその結晶形またはそれらの溶媒和物に関する。
【0004】
本発明はまた、式(I)の結晶形を合成するためのプロセスにも関する。本発明はまた、Auroraキナーゼインヒビターとしての式(I)の結晶形の薬学的使用、本発明の結晶形を含む固体の薬学的組成物、およびそのような薬学的組成物を生成する方法にも関する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
American Cancer Societyによると、2006年にはおよそ560,000人のアメリカ人が癌で死亡しており、2007年には、世界中で推定1200万の新規癌症例がもたらされた。医学の進歩によって、癌の生存率は改善されてきたが、新規のより有効な処置法が必要とされ続けている。
【0006】
癌は、制御されなくなった細胞の増殖を特徴とする。有糸分裂は、細胞周期の1つの段階であり、その段階において、一連の複雑な事象によって、染色体が2つの娘細胞に分離する忠実度が保証される。現行のいくつかの癌治療(タキサンおよびビンカアルカロイドを含む)は、有糸分裂機構を阻害するように作用する。有糸分裂の進行は、主として、タンパク質分解、および有糸分裂キナーゼによって媒介されるリン酸化事象によって制御される。Auroraキナーゼファミリーのメンバー(例えば、Aurora A、Aurora B、Aurora C)は、中心体の分離、紡錘体の動態、紡錘体集合のチェックポイント、染色体の整列および細胞質分裂の調節によって有糸分裂の進行を制御する(非特許文献1;非特許文献2)。Auroraキナーゼの過剰発現および/または増幅は、いくつかの腫瘍タイプ(結腸および乳房の腫瘍を含む)において腫瘍形成に関連している(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。さらに、腫瘍細胞においてAuroraキナーゼを阻害すると、有糸分裂の停止およびアポトーシスがもたらされることから、これらのキナーゼは、癌治療に対する重要な標的であると示唆される(非特許文献6;非特許文献7)。実質的にすべての悪性疾患の進行における有糸分裂の中心的役割を考慮すると、Auroraキナーゼのインヒビターは、幅広いヒト腫瘍に適用されると予想される。
【0007】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7(これらの全体が本明細書により参考として援用される)には、Auroraキナーゼ酵素を阻害する化合物が開示されている。例えば、式(II)の化合物4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸:
【0008】
【化2】
は、Auroraキナーゼの小分子インヒビターである。
【0009】
これらの出願は、さらに、これらの化合物、これらの化合物を含む薬学的組成物を調製するための方法、ならびにAuroraキナーゼの過剰発現および/または増幅に関連する疾患、障害または状態(癌などの細胞増殖性障害が挙げられるがこれに限定されない)の予防および治療のための方法を開示している。
【0010】
ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)は、特許文献5および特許文献6(これらの全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。これらの参考文献には、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの結晶形である1型および2型の混合物をもたらす式(I)の化合物の合成法が記載されている。これらの出願は、4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸(II)の他の特定の塩または結晶形を開示していない。
【0011】
薬学的組成物の大規模製造は、化学者および化学工学技術者に対して多くの難題をもたらす。これらの難題の多くは、大量の試薬の取扱いおよび大規模反応の管理に関するものであるが、最終生成物の取扱いは、最終的な活性な生成物自体の性質に関連する特別な難題をもたらす。生成物は、高収率で調製されなければならず、安定でなければならず、かつ容易に単離できなければならないだけでなく、生成物は、最終的に使用される可能性のある医薬品のタイプに適した特性を有さなければならない。医薬品の活性成分の安定性は、製造プロセス(合成、単離、バルク貯蔵、医薬製剤化および長期間にわたる製剤化を含む)の各工程において考慮されなければならない。これらの各工程は、温度および湿度に関する様々な環境条件に影響され得る。
【0012】
薬学的組成物を調製するために使用される薬学的に活性な物質は、可能な限り純粋であるべきであり、長期間貯蔵に対する安定性は、様々な環境条件下で保証されなければならない。これらの特性は、薬学的組成物において意図されない分解産物が出現するのを防止するために絶対に必要不可欠なものであり、その分解産物は、潜在的に有毒であり得るか、または単純にその組成物の効力を低下させ得る。
【0013】
医薬化合物の大規模製造にとって一番の関心事は、一貫したプロセシングパラメータおよび薬学的品質を保証するために、活性物質が安定な結晶形態を有するべきであるという点である。不安定な結晶形が使用される場合、結晶形態は、製造中および/または貯蔵中に変化することがあり、その結果、品質管理の問題および製剤のふぞろいがもたらされる。そのような変化は、製造プロセスの再現性に影響を及ぼすことがあり、ゆえに、薬学的組成物の製剤化に課せられる高品質および厳しい要件を満たさない最終的な製剤がもたらされる。この点については、薬学的組成物の物理的安定性および化学的安定性を改善し得る、その固体状態に対する任意の変化が、同じ薬物のより安定性の低い形態のものに比べて著しい利点をもたらすことを広く念頭に置いておくべきである。
【0014】
化合物が、溶液またはスラリーから結晶化するとき、その化合物は、「多形性」と呼ばれる特性である、異なる空間格子配列(spatial lattice arrangement)で結晶化することがある。その結晶形の各々は、「多形」である。所与の物質の多形は、同じ化学組成を有するが、それらは、1つ以上の物理的特性(例えば、溶解性および解離、真密度、融点、結晶の形状、圧縮挙動、流動特性、ならびに/または固体状態での安定性)に関して互いに異なることがある。
【0015】
上に広く記載したように、薬物の多形挙動は、薬学および薬理学において非常に重要であり得る。多形が示す物理的特性の相違は、実際のパラメータ(例えば、貯蔵安定性、圧縮性および密度(製剤化および製品製造において重要である)および溶解速度(バイオアベイラビリティの判定における重要な因子である))に影響する。安定性の相違は、化学反応性の変化(例えば、1つの多形であるときのある剤形が、別の多形であるときよりも迅速に変色するような、異なった酸化)もしくは力学的変化(例えば、錠剤は、貯蔵の際、動力学的に好ましい多形が熱力学的により安定した多形に変わると砕ける)またはその両方(例えば、高湿度では1つの多形の錠剤がより崩壊しやすい)に起因し得る。さらに、結晶の物理的特性が、加工において重要であり得る:例えば、1つの多形が、固体の形態を凝集させて、固体の取扱いをより困難にさせる溶媒和物を形成する可能性がより高いかもしれないし、不純物を含まないように濾過することおよび洗浄することが困難であるかもしれない(すなわち、粒子の形状およびサイズ分布が、他の多形と比べて1つの多形で異なる可能性がある)。
【0016】
化学的特性および物理的特性が改善された薬物製剤が望まれているが、そのような製剤のために既存分子の新規の薬物の形態(例えば、多形)を調製するための予測可能な手段は存在しない。これらの新規の形態は、製造と組成物使用に共通したある範囲の環境にわたる物理的特性の一貫性を提供し得る。より詳細には、Auroraキナーゼ(特にAurora AまたはBを含む)のインヒビターが必要とされている。そのようなインヒビターは、慢性の炎症性増殖性障害、例えば、乾癬および関節リウマチ;増殖性の眼球障害、例えば、糖尿病性網膜症;良性の増殖性障害、例えば、血管腫;ならびに癌を含む、細胞の生存、増殖および移動が関わる、Auroraキナーゼが介在する病理学的状態(疾患)に罹患しているかまたはなりやすい患者の処置における有用性を有するはずであり、ならびに大規模製造および製剤化に適した特性を有するはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第05/111039号
【特許文献2】米国特許第7,572,784号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0185087号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0045501号明細書
【特許文献5】国際公開第08/063525号
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0167292号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2010/0310651号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Dutertreら、Oncogene,21:6175(2002)
【非特許文献2】Berdnikら、Curr.Biol.,12:640(2002)
【非特許文献3】Warnerら、Mol.Cancer Ther.,2:589(2003)
【非特許文献4】Bischoffら、EMBO,17:3062(1998)
【非特許文献5】Senら、Cancer Res.,94:1320(2002)
【非特許文献6】Ditchfield,J.Cell Biol.,161:267(2003)
【非特許文献7】Harringtonら、Nature Med.,1(2004)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の要旨
本発明は、式(I)のナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートもしくはその結晶形またはそれらの溶媒和物に関する。これらの形態は、大規模製造、医薬製剤化および貯蔵に有用な特性を有する。本発明はまた、前記結晶形を含む固体の薬学的組成物、および本明細書中に記載されるような種々の疾患、障害または状態を処置するために前記結晶形を使用するための方法を提供する。
【0020】
本発明の1つの実施形態は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)に関しており、ここで、このナトリウム塩は、単結晶形であり、存在し得る単結晶形が、本明細書中に記載される。
【0021】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤、およびナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)を含む固体の薬学的組成物に関しており、ここで、このナトリウム塩は、単結晶形であり、存在し得る単結晶形が、本明細書中に記載される。
【0022】
本発明の別の実施形態は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)の使用に関しており、ここで、このナトリウム塩は、単結晶形であり、薬学的組成物を調製するために、存在し得る単結晶形が本明細書中に記載される。
【0023】
本発明の他の実施形態は、有効量のナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)の結晶形を投与することによって、Auroraキナーゼインヒビターを必要とする被験体または癌を有する被験体を処置する方法に関しており、ここで、このナトリウム塩は、単結晶形であり、存在し得る単結晶形が、本明細書中に記載される。
【0024】
本発明の他の実施形態はまた、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)の結晶形を調製する方法に関しており、ここで、このナトリウム塩は、単結晶形であり、存在し得る単結晶形が、本明細書中に記載される。
【0025】
本発明は、以下の図面および下記の詳細な説明の助けを借りて、より完全に論じられるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート1型の粉末X線回折図(powder X−ray diffractogram)(XRPD)である。
【図2】図2は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート1型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図3】図3は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート1型に対する熱重量分析(TGA)プロファイルである。
【図4】図4は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図5】図5は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図6】図6は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型に対する熱重量分析(TGA)プロファイルである。
【図7】図7は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート4型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図8】図8は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート6型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図9】図9は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート6型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図10】図10は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート6型に対する熱重量分析(TGA)プロファイルである。
【図11】図11は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート6型の重量測定による蒸気収着(gravimetric vapor sorption)(GVS)プロファイルである。
【図12】図12は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート11型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図13】図13は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート11型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図14】図14は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート12型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図15】図15は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート12型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図16】図16は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート12型に対する熱重量分析(TGA)プロファイルである。
【図17】図17は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート24型の粉末X線回折図(XRPD)である。
【図18】図18は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート24型に対する示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。
【図19】図19は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート24型に対する熱重量分析(TGA)プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
定義および省略形
上記においておよび本発明の説明全体にわたって使用されるとき、以下の用語は、別段示されない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0028】
「ナトリウム塩」は、4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸のナトリウム塩を記載していることが意図され、式(I)の構造を有する。
【0029】
「1型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート1型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例3の方法Bにおいて合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図1、2および3に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの1型を表す。
【0030】
「2型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例3の方法Aにおいて合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図4、5および6に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの2型を表す。
【0031】
「4型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート4型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例4において合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図7に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの4型を表す。
【0032】
「6型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート6型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例5において合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図8、9、10および11に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの6型を表す。
【0033】
「11型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート11型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例6において合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図12および13に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの11型を表す。
【0034】
「12型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート12型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例7において合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図14、15および16に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの12型を表す。
【0035】
「24型」または「ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート24型」は、交換可能に使用され、下記の実施例の項における実施例8において合成されるような、そして下に記載されるような、ならびに図17、18および19に示されるデータによって表される、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの24型を表す。
【0036】
本明細書中で使用されるとき、「結晶(性)」とは、高度に規則正しい化学構造を有する固体のことを指す。特に、結晶性ナトリウム塩は、本ナトリウム塩の1つ以上の単結晶形として生成され得る。本願において、用語「結晶形」、「単結晶形」および「多形」は、同義であり、これらの用語は、異なる特性(例えば、異なるXRPDパターン、異なるDSCスキャン結果)を有する結晶を区別する。用語「多形」には、偽多形が含まれ、この偽多形は、代表的には、ある材料の異なる溶媒和物であり、ゆえにそれらの特性が互いに異なる。したがって、本ナトリウム塩の異なる多形および偽多形の各々は、本明細書中では、異なる単結晶形であると考えられる。
【0037】
「実質的に結晶(性)」とは、少なくとも特定の重量パーセントが結晶性であり得る塩を指す。特定の重量パーセントは、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%〜100%の任意のパーセントである。いくつかの実施形態において、実質的に結晶(性)とは、少なくとも70%結晶性である塩を指す。他の実施形態において、実質的に結晶(性)とは、少なくとも90%結晶性である塩を指す。
【0038】
用語「溶媒和物または溶媒和されている」とは、本発明の化合物と1つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合には、水素結合が含まれる。ある特定の場合において、溶媒和物は、例えば、1つ以上の溶媒分子が、その結晶性固体の結晶格子内に組み込まれているとき、単離することができる。「溶媒和物または溶媒和されている」には、液相と単離可能な溶媒和物との両方が含まれる。代表的な溶媒和物としては、例えば、水和物、エタノール和物(ethanolate)またはメタノール和物(methanolate)が挙げられる。
【0039】
用語「水和物」は、規定の化学量論量で存在する溶媒分子がH2Oである溶媒和物であり、例えば、半水和物、一水和物、二水和物または三水和物が含まれる場合がある。
【0040】
用語「混合物」は、組み合わせたものの相状態(例えば、液体または液体/結晶)に関係なく混合物の要素が組み合されていることを指すために使用される。
【0041】
用語「シーディング」は、再結晶または結晶化を惹起するための結晶性材料の添加を指すために使用される。
【0042】
用語「貧溶媒(antisolvent)」は、本発明の化合物が難溶性である溶媒を指すために使用される。
【0043】
「被験体」は、好ましくは、鳥類または哺乳動物(例えば、ヒト)であるが、獣医学的処置を必要とする動物、例えば、家庭内の動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、家禽、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)でもあり得る。
【0044】
「処置する」または「処置」とは、ある疾患、障害または状態の予防、部分的な軽減または治癒のことを意味する。本発明の化合物および組成物は、有糸分裂キナーゼが介在する疾患、障害または状態、特に、Auroraキナーゼが介在する疾患、障害または状態を処置する際に有用である。有糸分裂キナーゼ活性の阻害は、癌を含む、細胞の生存、増殖および移動が関わるいくつかの疾患、ならびに他の細胞増殖性疾患の処置に役立ち得る。
【0045】
本明細書中で使用されるとき、用語「Auroraキナーゼが介在する障害」には、Auroraキナーゼの発現もしくは活性の増加によって引き起こされるかまたはその増加を特徴とするか、あるいはAuroraキナーゼ活性を必要とする、任意の障害、疾患または状態が含まれる。用語「Auroraキナーゼが介在する障害」にはまた、Auroraキナーゼ活性の阻害が有益な任意の障害、疾患または状態が含まれる。Auroraキナーゼが介在する障害には、増殖性障害が含まれる。増殖性障害の非限定的な例としては、慢性の炎症性増殖性障害、例えば、乾癬および関節リウマチ;増殖性の眼球障害、例えば、糖尿病性網膜症;良性の増殖性障害、例えば、血管腫;ならびに癌が挙げられる。
【0046】
本明細書中で使用されるとき、用語「Auroraキナーゼ」とは、有糸分裂の進行に関わる関連セリン/トレオニンキナーゼのファミリーのうちのいずれか1つを指す。細胞分裂において役割を果たす種々の細胞タンパク質は、Auroraキナーゼ酵素によるリン酸化のための基質であり、それらとしては、ヒストンH3、p53、CENP−A、ミオシンII調節性軽鎖、タンパク質ホスファターゼ−1、TPX−2、INCENP、サバイビン、トポイソメラーゼIIアルファ、ビメンチン、MBD−3、MgcRacGAP、デスミン、Ajuba、XIEg5(Xenopusにおける)、Ndc10p(出芽酵母における)およびD−TACC(Drosophilaにおける)が挙げられるがこれらに限定されない。Auroraキナーゼ酵素はまた、それら自体が、例えばThr288における、自己リン酸化のための基質でもある。文脈によって別段示されない限り、用語「Auroraキナーゼ」は、任意の種由来の任意のAuroraキナーゼタンパク質を指すことが意図され、それらとしては、Aurora A、Aurora BおよびAurora C、好ましくは、Aurora AまたはBが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、Auroraキナーゼは、ヒトAuroraキナーゼである。
【0047】
「薬学的に有効な量」は、所望の治療効果をもたらす際に有効な化合物、組成物、医薬または他の活性成分を表すことが意図される。
【0048】
1つの態様において、本発明は、式(I)のナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの結晶形に関する。したがって、本発明は、式(I)のナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートの溶媒和物を提供する。
【0049】
ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(I)の結晶形を説明する特徴情報の組み合わせが本明細書中で提供される。しかしながら、そのような情報のすべてが、そのような特定の形態が所与の組成物中に存在することを判断するために当業者にとって必要であるとは限らず、特定の形態の存在を確証するのに十分であると当業者が認識し得る特徴情報の任意の部分を用いて、特定の形態の決定を行うことができ、例えば、当業者がそのような特定の形態が存在すると認識するのに、極めて特徴的なただ1つのピークで十分であり得ることが理解されるべきである。
【0050】
本ナトリウム塩は、それを大規模な医薬製剤の製造に適するようにする特性を有する。本明細書中に記載される本ナトリウム塩の結晶形は、式(II)の遊離酸化合物よりも高い水溶解性を示し、そのおかげで、その活性な薬学的成分の吸収が改善される。例えば、水中で、その遊離酸は、約10μg/mLの溶解性を有する。水中で、2型は約8mg/mLの溶解性を有し、6型は約10mg/mL超の溶解性を有し、24型は約8mg/mLの溶解性を有する。
【0051】
本発明の実施形態は、本ナトリウム塩に関しており、ここで、本ナトリウム塩の少なくとも特定の重量パーセントが、結晶性である。いくつかの実施形態において、本ナトリウム塩は、実質的に結晶性である。結晶性ナトリウム塩の非限定的な例としては、単結晶形の本ナトリウム塩、または異なる単結晶形の混合物が挙げられる。本発明の実施形態はまた、ナトリウム塩に関しており、ここで、本ナトリウム塩の少なくとも特定の重量パーセントは、結晶性であり、それは、1つ以上の指定の単結晶形を特定の重量パーセントのナトリウム塩から除外したものである。特定の重量パーセントは、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%〜100%の任意のパーセントであり得る。本ナトリウム塩の特定の重量パーセントが、結晶性であるとき、残りの本ナトリウム塩は、非晶形の本ナトリウム塩である。
【0052】
あるいは、本発明の実施形態は、結晶性ナトリウム塩に関しており、ここで、結晶性ナトリウム塩の少なくとも特定の重量パーセントは、特定の単結晶形であるか、特定の結晶形の組み合わせであるか、または1つ以上の特定の結晶形を除外する。特定の重量パーセントは、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%〜100%の任意のパーセントであり得る。
【0053】
本発明の他の実施形態は、単結晶形であるかまたは実質的に指定の単結晶形である本ナトリウム塩に関する。その単結晶形は、本ナトリウム塩の特定の重量パーセントであり得る。特定の重量パーセントは、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%〜100%の任意のパーセントである。ナトリウム塩の特定の重量パーセントが、単結晶形であるとき、残りの本ナトリウム塩は、非晶形の本ナトリウム塩と、単結晶形を除く1つ以上の結晶形の本ナトリウム塩とのある組み合わせである。いくつかの実施形態において、本ナトリウム塩は、少なくとも90重量%が単結晶形である。他のいくつかの実施形態において、本ナトリウム塩は、少なくとも95重量%が単結晶形である。
【0054】
本ナトリウム塩に関する以下の説明において、本発明の実施形態は、本明細書中で論じられるような1つ以上の特性を特徴とする特定の結晶形の本ナトリウム塩に関して記載され得る。結晶形を特徴付ける説明は、結晶性ナトリウム塩中に存在し得る異なる結晶形の混合物のことを説明するためにも使用され得る。しかしながら、本ナトリウム塩の特定の結晶形はまた、特定の結晶形に対する言及を考慮してまたは考慮せずに、本明細書中に記載されるような結晶形の特徴のうちの1つ以上によっても特徴づけられ得る。
【0055】
本発明のプロセスおよび化合物は、詳細な説明および以下で与えられる例示的な例によってさらに例示される。
【0056】
1型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の1型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図1に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表1に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、表1に示されるような、図1から得られるピークの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0057】
【表1】
本発明の別の実施形態において、ピークは、8.77°、10.23°、14.94°、21.35°、22.64°、23.97°および25.67°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、10.23°、14.94°、22.64°、23.97°および25.67°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、10.23°、14.94°および22.64°の2θ角度において確認される。
【0058】
本発明の別の実施形態において、1型は、図2に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、発熱転移および吸熱転移によって特徴づけられる。第1のものは、開始温度が約61℃である強い吸熱転移であって、約85℃での融解を伴うものであり、その後、開始温度が約165℃である弱い発熱転移が続く。第3および第4の吸熱転移は、両方とも弱く、それぞれ開始温度は約202℃および約243℃である。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0059】
本発明の別の実施形態において、1型は、図3に示される熱重量分析(TGA)によって特徴づけられ得る。このTGAプロファイルでは、温度の関数としてサンプルの重量減少百分率が図示されており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。その重量減少は、温度が25℃から250℃まで変化するときのサンプルの重量が約7.4%減少していることを表している。
【0060】
本発明の別の実施形態において、1型は、以下の特徴(I−i)〜(I−iv):
(I−i)表1に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(I−ii)図1と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(I−iii)図2と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(I−iv)図3と実質的に類似の熱重量分析(TGA)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0061】
本発明のさらなる実施形態において、1型の単結晶形は、特徴(I−i)〜(I−iv)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、1型の単結晶形は、特徴(I−i)〜(I−iv)のうちの3つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、1型の単結晶形は、特徴(I−i)〜(I−iv)のすべてを特徴とする。
【0062】
2型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の2型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図4に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表2に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、表2に示されるような図4から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0063】
【表2】
本発明の別の実施形態において、ピークは、3.44°、13.11°、13.73°、14.36°、17.31°および22.84°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、3.44°、13.11°、13.73°および22.84°の2θ角度において確認される。
【0064】
本発明の別の実施形態において、2型は、図5に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、発熱転移および吸熱転移によって特徴づけられる。第1および第2の吸熱転移は、それぞれ開始温度が約171℃および約226℃である。第3の転移は、開始温度が約258℃である強い吸熱転移であって、約264℃での融解を伴うものである。この転移の後に、約289℃および約309℃における2つの発熱転移が続く。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0065】
本発明の別の実施形態において、2型は、図6に示される熱重量分析(TGA)によって特徴づけられ得る。このTGAプロファイルでは、温度の関数としてサンプルの重量減少百分率が図示されており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。その重量減少は、温度が25℃から350℃まで変化するときのサンプルの重量が約22.8%減少していることを表している。
【0066】
本発明の別の実施形態において、2型は、以下の特徴(II−i)〜(II−iv):
(II−i)表2に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(II−ii)図4と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(II−iii)図5と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(II−iv)図6と実質的に類似の熱重量分析(TGA)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0067】
本発明のさらなる実施形態において、2型の単結晶形は、特徴(II−i)〜(II−iv)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、2型の単結晶形は、特徴(II−i)〜(II−iv)のうちの3つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、2型の単結晶形は、特徴(II−i)〜(II−iv)のすべてを特徴とする。
【0068】
4型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の4型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図7に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表3に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、図7から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0069】
【表3】
本発明の別の実施形態において、ピークは、13.27°、22.96°および25.89°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、22.96°および25.89°の2θ角度において確認される。
【0070】
本発明の別の実施形態において、4型は、以下の特徴(III−i)〜(III−ii):
(III−i)表3に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;および
(III−ii)図7と実質的に類似の粉末X線回折パターン
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0071】
本発明のさらなる実施形態において、4型の単結晶形は、特徴(III−i)〜(III−ii)の両方を特徴とする。
【0072】
6型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の6型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図8に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表4に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、図8から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0073】
【表4】
本発明の別の実施形態において、ピークは、11.62°、16.01°、17.47°、21.23°、23.43°および29.38°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、16.01°、17.47°、21.23°および23.43°の2θ角度において確認される。
【0074】
本発明の別の実施形態において、6型は、図9に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、吸熱転移によって特徴付けられる。第1の吸熱転移は、約52℃の開始温度を有する。この後に、開始温度が約100℃である吸熱転移が続く。次の吸熱転移は、約163℃の開始温度を有し、約181℃での融解を伴う。最後の吸熱転移は、約196℃の開始温度を有する。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0075】
本発明の別の実施形態において、6型は、図10に示される熱重量分析(TGA)によって特徴づけられ得、この図では、温度の関数としてサンプルの重量減少百分率が図示されており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。その重量減少は、温度が25℃から約200℃まで変化するときのサンプルの重量が約6.6%減少していることを表している。
【0076】
本発明の別の実施形態において、6型は、図11に示されるような蒸気収着プロファイル(GVS)によって特徴付けられ得る。このプロファイルでは、環境の相対湿度(RH)が、25℃の温度において0〜90%のRHの範囲にわたって、RHを10%間隔で変化させたときのサンプルの重量の変化が示されている。6型は、0〜90%のRHの間に6%の取り込みを示した。
【0077】
本発明の別の実施形態において、6型は、以下の特徴(IV−i)〜(IV−v):
(IV−i)表4に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(IV−ii)図8と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(IV−iii)図9と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;
(IV−iv)図10と実質的に類似の熱重量分析(TGA);および
(IV−v)図11と実質的に類似の重量測定による蒸気収着(GVS)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0078】
本発明のさらなる実施形態において、6型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−v)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、6型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−v)のうちの3つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、6型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−v)のうちの4つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、6型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−v)のすべてを特徴とする。
【0079】
11型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の11型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図12に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表5に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、図12から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0080】
【表5】
本発明の別の実施形態において、ピークは、13.03°、15.72°、25.66°、26.21°および27.08°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、13.03°、26.21°および27.08°の2θ角度において確認される。
【0081】
本発明の別の実施形態において、11型は、図13に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、吸熱転移によって特徴づけられる。第1のものは、開始温度が約26℃である吸熱転移である。第2の吸熱転移は、約58℃の開始温度を有する。第3の吸熱転移は、約255℃の開始温度を有し、約272℃での融解を伴う。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0082】
本発明の別の実施形態において、11型は、以下の特徴(V−i)〜(V−iii):
(V−i)表5に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(V−ii)図12と実質的に類似の粉末X線回折パターン;および
(V−iii)図13と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0083】
本発明のさらなる実施形態において、11型の単結晶形は、特徴(V−i)〜(V−iii)のうちの2つを特徴とする。本発明の別のさらなる実施形態において、11型の単結晶形は、特徴(V−i)〜(V−iii)のすべてを特徴とする。
【0084】
12型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の12型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図14に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表6に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、図14から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0085】
【表6】
本発明の別の実施形態において、ピークは、12.72°、13.46°、21.26°、21.89°、25.57°および29.50°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、12.72°、21.26°、21.89°および25.57°の2θ角度において確認される。
【0086】
本発明の別の実施形態において、12型は、図15に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、2つの吸熱転移によって特徴付けられる。第1のものは、約38.8℃の開始温度を有し、約71.3℃(ピーク最大値)での融解を伴う。第2の吸熱転移は、開始温度が約201.3℃である弱い転移である。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0087】
本発明の別の実施形態において、12型は、図16に示される熱重量分析(TGA)によって特徴づけられ得、この図では、温度の関数としてサンプルの重量減少百分率が図示されており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。その重量減少は、温度が25℃から250℃まで変化するときのサンプルの重量が約18.3%減少していることを表している。
【0088】
本発明の別の実施形態において、12型は、以下の特徴(VI−i)〜(VI−iv):
(VI−i)表6に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(VI−ii)図14と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(VI−iii)図15と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(VI−iv)図16と実質的に類似の熱重量分析(TGA)
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0089】
本発明のさらなる実施形態において、12型の単結晶形は、特徴(VI−i)〜(VI−iv)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、12型の単結晶形は、特徴(VI−i)〜(VI−iv)のうちの3つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、12型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−iii)のすべてを特徴とする。
【0090】
24型
本発明の1つの実施形態において、本ナトリウム塩の24型である単結晶形は、CuKα照射を用いて得られた、図17に示される粉末X線回折(XRPD)パターンおよび表7に示されるデータによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、図17から得られるピークのうちの1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0091】
【表7】
本発明の別の実施形態において、ピークは、10.93°、15.67°、19.76°、22.05°、22.90°、23.38°、23.84°および26.91°の2θ角度において確認される。さらなる特定の実施形態において、ピークは、10.93°、15.67°、22.90°、23.84°および26.91°の2θ角度において確認される。
【0092】
本発明の別の実施形態において、24型は、図18に示される示差走査熱量測定プロファイル(DSC)によって特徴づけられ得る。このDSCグラフでは、サンプルの、温度の関数としての熱流量がプロットされており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。このプロファイルは、いくつかの発熱転移および吸熱転移によって特徴付けられる。第1のものは、開始温度が約62.4℃である吸熱転移であり、約87.5℃(ピーク最大値)での融解を伴い、その後、開始温度が約105.3℃である弱い吸熱転移が続く。次は、約175.8℃における発熱転移であり、その後、開始温度が約221.0℃である吸熱転移が続き、約231.9℃(ピーク最大値)での融解が伴う。最後の転移は、吸熱であり、約254.2℃の開始温度を有し、約259.3℃(ピーク最大値)での融解を伴う。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0093】
本発明の別の実施形態において、24型は、図19に示される熱重量分析(TGA)によって特徴付けられ得る。このTGAプロファイルでは、温度の関数としてサンプルの重量減少百分率が図示されており、その温度の変化速度は、約10℃/分である。その重量減少は、温度が25℃から約250℃まで変化するときのサンプルの重量が約7.1%減少していることを表している。
【0094】
本発明の別の実施形態において、24型は、以下の特徴(VII−i)〜(VII−iv):
(VII−i)表7に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(VII−ii)図17と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(VII−iii)図18と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(VII−iv)図19と実質的に類似の熱重量分析(TGA)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0095】
本発明のさらなる実施形態において、24型の単結晶形は、特徴(VII−i)〜(VII−iv)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、24型の単結晶形は、特徴(VII−i)〜(VII−iv)のうちの3つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態において、24型の単結晶形は、特徴(IV−i)〜(IV−iv)のすべてを特徴とする。
【0096】
本発明の他の実施形態は、本明細書中で論じられる単結晶形のうちのいずれかの上述の特色の組み合わせによって特徴付けられる、本ナトリウム塩の単結晶形に関する。その特徴づけは、特定の多形に対して記載される、XRPD、TGA、DSCおよび水分収着/脱着の測定値のうちの1つ以上の任意の組み合わせによるものであり得る。例えば、本ナトリウム塩の単結晶形は、XRPDスキャンにおける主要ピークの位置に関するXRPDの結果の任意の組み合わせ;および/またはXRPDスキャンから得られたデータに由来する格子パラメータのうちの1つ以上の任意の組み合わせによって特徴付けられ得る。本ナトリウム塩の単結晶形はまた、指定の温度範囲にわたるサンプルに関連する重量減少のTGA測定;および/または特定の重量減少転移(weight loss transition)が始まる温度によっても特徴づけられ得る。熱流量転移(heat flow transition)中の最大熱流量に関連する温度および/またはサンプルが熱流量転移を受け始める温度のDSC測定もまた、結晶形を特徴づけ得る。サンプルの重量変化、および/またはある範囲の相対湿度(例えば、0%〜90%)にわたる水分吸着/脱着の測定によって決定される無水ナトリウム塩1分子あたりの水分吸着/脱着の変化もまた、本ナトリウム塩の単結晶形を特徴付け得る。
【0097】
複数の分析技術を用いた単結晶形の特徴づけの組み合わせの例としては、XRPDスキャンの主要ピークのうちの少なくとも1つの位置と、対応するDSC測定によって観察される1つ以上の熱流量転移中の最大熱流量に関連する温度;XRPDスキャンの主要ピークのうちの少なくとも1つの位置と、対応するTGA測定における指定の温度範囲にわたるサンプルに関連する1つ以上の重量減少;XRPDスキャンの主要ピークのうちの少なくとも1つの位置と、対応するDSC測定によって観察される1つ以上の熱流量転移中の最大熱流量に関連する温度と、対応するTGA測定における指定の温度範囲にわたるサンプルに関連する1つ以上の重量減少;およびXRPDスキャンの主要ピークのうちの少なくとも1つの位置と、対応するDSC測定によって観察される1つ以上の熱流量転移中の最大熱流量に関連する温度と、対応するTGA測定における指定の温度範囲にわたるサンプルに関連する1つ以上の重量減少と、ある範囲の相対湿度にわたる水分吸着/脱着の測定によって測定される無水塩1分子あたりの水分吸着/脱着の変化が挙げられる。同様に、上述の例の各々は、XRPDスキャンの主要ピークのうちの少なくとも1つの位置の使用を、単結晶形の1つ以上の格子パラメータで置き換えてもよい。
【0098】
上で論じられた特徴づけの組み合わせは、本明細書中で論じられる本ナトリウム塩の多形のいずれか(例えば、1型、2型、4型、6型、11型、12型または24型)を記載するために使用され得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、6型を変換して2型を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、約25℃〜約50℃の温度で加熱することによって6型を変換して、2型を得ることができる。なおも他のいくつかの実施形態では、6型を変換して、6型と2型の混合物を得ることができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、11型を変換して、1型、2型またはその混合物を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、約25℃〜約50℃の温度で加熱することによって11型を変換して、1型、2型またはその混合物を得ることができる。なおも他のいくつかの実施形態では、11型を変換して、1型、2型、11型および24型の任意の組み合わせの混合物を得ることができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、1型を変換して、24型を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、周囲条件で静置することによって1型を変換して、24型を得ることができる。なおも他のいくつかの実施形態では、1型を変換して、1型、2型および24型の任意の組み合わせの混合物を得ることができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、4型を変換して、24型を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、周囲条件下で乾燥することによって4型を脱溶媒和して(desolvated)、24型を得ることができる。なおも他のいくつかの実施形態では、4型を変換して、1型、2型、4型および24型の任意の組み合わせの混合物を得ることができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、24型を変換して、1型、2型またはその混合物を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、約50℃〜約75℃の温度で加熱することによって24型を変換して、1型を得ることができる。他のいくつかの実施形態において、約25℃〜約50℃の温度で加熱することによって24型を変換して、2型を得ることができる。なおも他のいくつかの実施形態では、24型を変換して、1型、2型および24型の任意の組み合わせの混合物を得ることができる。
【0104】
薬学的組成物および方法
本ナトリウム塩またはその結晶形の薬理学的特性は、Auroraキナーゼが介在する疾患、障害または状態(増殖性障害、例えば、慢性の炎症性増殖性障害、例えば、乾癬および関節リウマチ;増殖性の眼球障害、例えば、糖尿病性網膜症;良性の増殖性障害、例えば、血管腫;ならびに癌が挙げられるがこれらに限定されない)に罹患しているかまたはなりやすい患者を処置する際の使用に適するようなものである。
【0105】
本発明のある特定の実施形態において、癌を処置するための方法が提供され、その方法は、薬学的に有効な量の本ナトリウム塩もしくはその結晶形またはその薬学的組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含する。
【0106】
いくつかの実施形態において、癌は、固形腫瘍である。本発明の方法によって処置され得る固形腫瘍の非限定的な例としては、膵癌;膀胱癌;直腸結腸癌;乳癌(転移性乳癌を含む);前立腺癌(アンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性の前立腺癌を含む);腎癌(例えば、転移性腎細胞癌腫を含む);肝細胞癌;肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、細気管支肺胞癌腫(BAC)および肺腺癌を含む);卵巣癌(例えば、進行性上皮癌または原発性腹膜癌を含む);子宮頸癌;胃癌;食道癌;頭頸部癌(例えば、頭頸部の扁平上皮癌腫を含む);メラノーマ;神経内分泌癌(転移性神経内分泌腫瘍、例えば、神経芽細胞腫を含む);脳腫瘍(例えば、神経膠腫、退形成乏突起膠腫、成人多形神経膠芽腫および成人未分化星状細胞腫を含む);骨癌;および軟部組織肉腫が挙げられる。
【0107】
他のいくつかの実施形態において、癌は、血液悪性腫瘍である。血液悪性腫瘍の非限定的な例としては、急性骨髄性白血病(AML);慢性骨髄性白血病(CML)(加速期CMLおよび急性転化期CML(CML−BP)を含む);急性リンパ芽球性白血病(ALL);慢性リンパ性白血病(CLL);ホジキン病(HD);非ホジキンリンパ腫(NHL)(濾胞性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫を含む);B細胞リンパ腫;T細胞リンパ腫;多発性骨髄腫(MM);ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;骨髄異形成症候群(MDS)(不応性貧血(RA)、環状鉄芽球(ringed siderblasts)を伴う不応性貧血(RARS)、芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)および移行期のRAEB(RAEB−T)を含む);および骨髄増殖性症候群が挙げられる。
【0108】
なおも他の実施形態において、癌は、NHL、AML、MDS、直腸結腸癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、前立腺癌および膵癌からなる群から選択される。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤;および本ナトリウム塩またはその結晶形を含む固体の薬学的組成物に関する。他の実施形態において、固体の薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤および実質的に結晶性のナトリウム塩を含む。他の実施形態において、固体の薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤および本ナトリウム塩を含み、ここで、本ナトリウム塩は、少なくとも95重量%の単結晶形であり、その単結晶形は、本明細書中に記載される。他の実施形態において、固体の薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤および本ナトリウム塩を含み、ここで、本ナトリウム塩は、実質的に単結晶形であり、その単結晶形は、本明細書中に記載される。他の実施形態において、これらの固体組成物は、必要に応じてさらに1つ以上の追加の治療薬を含む。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤;および式(II)の化合物4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸を含む液体の薬学的組成物に関する。いくつかの実施形態において、液体の薬学的組成物は、実質的に結晶性のナトリウム塩を用いて調製される。他の実施形態において、液体の薬学的組成物は、本ナトリウム塩を用いて調製され、ここで、本ナトリウム塩は、少なくとも95重量%の単結晶形であり、その単結晶形は、本明細書中に記載される。他の実施形態において、液体の薬学的組成物は、本ナトリウム塩を用いて調製され、ここで、本ナトリウム塩は、実質的に単結晶形であり、その単結晶形は、本明細書中に記載される。他の実施形態において、これらの液体の組成物は、必要に応じてさらに1つ以上の追加の治療薬を含む。
【0111】
上に記載されたように、本発明の薬学的に許容され得る組成物は、さらに、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアを含み、本明細書中で使用されるとき、そのキャリアには、所望の特定の剤形にふさわしいあらゆる溶媒、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散補助剤または懸濁補助剤、ゼラチンまたはポリマーのカプセルシェル、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などが含まれる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)には、薬学的に許容され得る組成物を製剤化する際に使用される様々なキャリア、およびその調製のための公知の手法が開示されている。任意の従来のキャリア媒質が、例えば、任意の望ましくない生物学的作用をもたらすことによって、またはそうでなければ薬学的に許容され得る組成物の他の任意の構成要素と有害な様式で別途相互作用することによって、本発明の化合物と配合禁忌である場合を除いて、それらの使用は、本発明の範囲内であると企図される。薬学的に許容され得るキャリアとして役立ち得る材料のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、炭酸水素ナトリウムまたはソルビン酸カリウム)、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、カカオバターおよび坐剤用ろう);油(例えば、落花生油、綿実油;ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油およびダイズ油);グリコール;例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質非含有水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに他の無毒性で適合性の滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、ならびに着色剤、離型剤(releasing agent)、コーティング剤、甘味剤、調味剤および芳香剤が挙げられるが、これらに限定されず、保存剤および酸化防止剤もまた、処方者の判断に従って本組成物中に存在し得る。
【0112】
本発明の方法に係る本ナトリウム塩もしくはその単結晶形またはその薬学的組成物は、上記疾患の処置に有効な任意の量および任意の投与経路を用いて投与され得る。必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢および全般的な状態、感染の重症度、特定の薬剤、その投与様式などに応じて被験体ごとに異なり得る。本ナトリウム塩もしくはその単結晶形またはその薬学的組成物は、好ましくは、投与を容易にするため、および投薬量を均一にするために、投薬単位形態(dosage unit form)で製剤化される。本明細書中で使用される表現「投薬単位形態」は、処置される患者に適切な、物理的に分離した単位の薬剤を指す。しかしながら、本発明の化合物および組成物の1日の総使用量(total daily usage)は、まっとうな医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが理解されるだろう。任意の特定の患者または生物に対する特定の有効量のレベルは、種々の因子(処置される疾患およびその疾患の重症度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食餌;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路および排出速度;処置の継続時間;使用される特定の化合物と併用してまたは同時に使用される薬物、ならびに医学分野において周知の同様の因子を含む)に依存し得る。
【0113】
本ナトリウム塩もしくはその単結晶形またはその薬学的組成物は、処置される感染の重症度に応じて、ヒトおよび他の動物に、経口的に、直腸に、非経口的に、槽内に、膣内に、腹腔内に、局所的に(粉末、軟膏または液滴によるものなど)、頬側に(bucally)、口腔噴霧(oral spray)もしくは鼻噴霧として、などで投与され得る。ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、1日あたり約0.01mg/kg被験体体重〜約50mg/kg被験体体重、好ましくは、約1mg/kg被験体体重〜約25mg/kg被験体体重の投薬量レベルで1日1回以上、経口的または非経口的に投与されることにより、所望の治療効果が得られ得る。
【0114】
経口投与用の液体の剤形としては、薬学的に許容され得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。液体の剤形は、活性な化合物に加えて、当該分野において通常使用される不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含み得る。不活性な希釈剤に加えて、経口組成物はまた、補助剤(例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤)、甘味剤、調味剤および芳香剤を含み得る。
【0115】
注射可能な調製物、例えば、滅菌された注射可能な水性または油性の懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌された注射可能な調製物は、無毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒での滅菌された注射可能な溶液、懸濁液またはエマルジョン、例えば、1,3−ブタンジオール溶液でもあり得る。使用されてもよい許容され得るビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー液,U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌された固定油は、慣用的に、溶媒または懸濁媒として使用される。この目的で、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含めて、任意の無刺激固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能物の調製において使用される。
【0116】
注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターで濾過すること、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌された注射可能な媒質に溶解し得るかもしくは分散し得る、滅菌された固体組成物の形態に滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。
【0117】
本発明の化合物の作用を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの本化合物の吸収を遅延させることが望ましいことが多い。これは、水溶性に乏しい結晶性または非晶質の材料の液体懸濁液を使用することによって、達成され得る。また、本化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、そしてその溶解速度は、同様に結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。あるいは、非経口的に投与される化合物の形態の吸収の遅延は、その化合物を油性ビヒクルに溶解させるかまたは懸濁させることによって達成される。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で本化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって、作製される。化合物とポリマーとの比および使用される特定のポリマーの性質に応じて、化合物放出の速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。注射可能なデポー製剤はまた、体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョンに本化合物を捕捉することによっても調製される。
【0118】
直腸投与用または膣投与用の組成物は、好ましくは、周囲温度では固体であるが体温では液体であるがゆえに直腸腔または膣腔内で融解し、活性な化合物を放出する適当な非刺激性の賦形剤またはキャリア(例えば、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤用ろう)と本発明の化合物を混合することによって調製され得る坐剤である。あるいは、直腸投与用または膣投与用の組成物は、適当な非刺激性の賦形剤(例えば、油または水)と化合物を混合して、その化合物を可溶化することによって調製され得るゲルまたはクリームであり、その製剤を濃密にするためにポリマーおよび脂肪アルコールが加えられることにより、直腸腔または膣腔内での残留時間を長くして、活性な化合物を放出することができる。
【0119】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が挙げられる。そのような固体剤形において、活性な化合物は、必要に応じて、少なくとも1つの不活性な薬学的に許容され得る賦形剤またはキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸第二カルシウム)、ならびに/またはa)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、微結晶性セルロースおよびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアカシア)、c)吸湿剤(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケート、クロスポビドンおよび炭酸ナトリウム)、e)溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、g)湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)、h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイト粘土)およびi)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウムおよびそれらの混合物)と混合され得る。カプセル、錠剤および丸剤の場合、その剤形は、緩衝剤またはコロイド状二酸化ケイ素などの流動助剤も含み得る。他の実施形態において、活性な化合物は、任意の追加の薬剤を含まないゼラチンまたはポリマーのカプセルシェル(そのままの(neat)カプセルシェル)に被包され得る。
【0120】
類似のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用いて、軟および硬ゼラチンカプセルにおける充填剤としても使用され得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティングなどのコーティングおよびシェル、ならびに医薬製剤分野において周知の他のコーティングとともに調製され得る。固体剤形は、必要に応じて乳白剤を含み得、腸管のある特定の部分だけでまたは腸管のある特定の部分において優先的に、必要に応じて遅延様式で、活性成分を放出する組成の剤形でもあり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびろうが挙げられる。類似のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用いて、軟および硬ゼラチンカプセルにおける充填剤としても使用され得る。
【0121】
活性な化合物は、上で述べられたような1つ以上の賦形剤を伴うマイクロカプセルの形態でもあり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティングなどのコーティングおよびシェル、放出制御コーティングならびに医薬製剤分野において周知の他のコーティングとともに調製され得る。そのような固体剤形において、活性な化合物は、少なくとも1つの不活性な希釈剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプン)と混和され得る。そのような剤形はまた、通常の慣行におけるように、不活性な希釈剤以外の追加の物質、例えば、錠剤化滑沢剤および他の錠剤化助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース)も含み得る。カプセル、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤も含み得る。それらは、必要に応じて乳白剤を含み得、腸管のある特定の部分だけでまたは腸管のある特定の部分において優先的に、必要に応じて遅延様式で、活性成分を放出する組成の剤形でもあり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびろうが挙げられる。
【0122】
いくつかの実施形態において、固体剤形は、本ナトリウム塩またはその結晶形、ならびにステアリルフマル酸ナトリウム、クロスポビドン、マンニトールおよびコロイド状二酸化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、固体剤形は、フィルムコーティングを有する錠剤を含む。他のいくつかの実施形態において、固体剤形は、約10%の滑沢剤を含む。他のいくつかの実施形態において、固体剤形は、約9%の崩壊剤を含む。いくつかの実施形態において、固体剤形は、高い薬物負荷を有する。いくつかの実施形態において、固体剤形は、約30重量%〜約60重量%の本ナトリウム塩またはその結晶形を含む。いくつかの実施形態において、固体剤形は、約40重量%〜約50重量%の本ナトリウム塩またはその結晶形を含む。
【0124】
本発明の化合物の局所的投与用または経皮的投与用の剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性な構成要素は、薬学的に許容され得るキャリア、および要求され得るときは、必要とされる任意の保存剤または緩衝剤と、滅菌条件下で混和される。眼用の製剤、点耳剤および点眼剤もまた、本発明の範囲内であると企図される。さらに、本発明は、身体に対して化合物の制御された送達を提供するという追加の利点を有する、経皮パッチの使用を企図する。そのような剤形は、本化合物を適切な媒質に溶解させるかまたは分散させることによって作製され得る。皮膚を横断する本化合物のフラックスを高めるために、吸収促進剤も使用され得る。その速度は、速度制御膜を提供することによって、または本化合物をポリマーマトリックスもしくはゲル中に分散させることによって、制御され得る。
【0125】
本ナトリウム塩もしくはその単結晶形、またはその薬学的組成物は、ある障害、疾患または症状を処置する単独療法の適用において使用されてもよいし、本発明の化合物または組成物(治療薬)の使用が、同じおよび/または異なるタイプの障害、症状および疾患を処置するための1つ以上の他の治療薬の使用と組み合わされる併用療法において使用されてもよい。併用療法は、治療薬を同時にまたは連続的に投与することを含む。あるいは、治療薬は、1つの組成物へと混合されて、その組成物を患者に投与することもできる。
【0126】
本発明の別の態様は、本明細書中で概説されるような式(II)の化合物を合成するためのプロセスを記載する。
【実施例】
【0127】
省略形
ca およそ
DMSO ジメチルスルホキシド
DSC 示差走査熱量測定
EtOH エタノール
GC ガスクロマトグラフィー
GVS 重量測定による蒸気収着
h 時間
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
KF Karl Fischer
min 分
m/z 質量対電荷
MS 質量スペクトル
MTBE tert−ブチルメチルエーテル
NMR 核磁気共鳴
RT 室温
TGA 熱重量分析
XRPD 粉末X線回折
一般的な方法
1H NMR:プロトン核磁気共鳴スペクトルを、以下のいずれかにおいて得る:
i)オートサンプラーを備えたBrucker 400MHz分光計(別段述べられない限り、サンプルはd6−DMSOで調製される);または
ii)Varian Mercury 300MHz分光計。
【0128】
質量分析:質量分析研究を、Thermo−Finnigan LCQ Deca−XPイオントラップ質量分析計において行う。そのエレクトロスプレーイオン源を、5kvの高電圧、35arbのシースガス流速、275℃のキャピラリー温度、9Vのキャピラリー電圧および35Vのチューブレンズオフセットで、ポジティブモードとネガティブモードの両方で使用した。0.5mg/ml溶液を得るように、被検体をアセトニトリルに溶解させた。LC−質量分析のフロー分析のために、Agilent 1100 HPLCシステムを使用した。ポンプ流速は、1.0ml/分であった。10μlの各サンプル溶液を、オートサンプラーからTジョイントに注入した。そのTジョイントからの溶液の約2%を質量分析計に吹き込んだ。
【0129】
粉末X線回折(XRPD):粉末X線回折パターンを、以下のいずれかにおいて取得する:
i)CuKα照射(40kV,40mA)、θ−θゴニオメーター、自動の発散スリットおよび受光スリット、グラファイト第2モノクロメーター(graphite secondary monochromator)およびシンチレーションカウンターを用いるBruker AXS/Siemens D5000回折計。この装置は、認定コランダム標準(NIST1976)を用いて確認された性能である。周囲条件下で操作されるサンプルを、粉砕することなく受け取ったままの粉末を用いて、平板試料として調製する。およそ35mgのサンプルを、研磨されたゼロバックグラウンドの(510)ケイ素薄片に切り込まれたくぼみに静かに充填する。解析中、そのサンプルをそれ自体の面において回転させる。非周囲条件下で操作されるサンプルを、Pt100熱電対を備えたステンレス鋼のくぼみのサンプルホルダーに充填する。Bruker AXS/Siemens D5000回折計に取り付けられたAnton Paar TTK450温度可変カメラを用いて、低温データを収集する。低温スキャンに対する装置の条件は、上記の平板サンプルについて記載された条件と類似である。すべてのXRPD解析を、Diffrac Plus XRD Commanderソフトウェアv2.3.1を用いて行う。回折データは、CuKα1(λ=1.5406Å)を用いて報告され、Kα2成分がEVAを用いて取り除かれた後、粉末パターンは、WININDEXを用いたITO法によって指し示され、生データの格子定数(raw lattice constant)は、WIN−METRICを用いて精密化される;または
ii)CuKα照射(40kV,40mA)、自動XYZステージ、オートサンプルポジショニング用のレーザービデオ顕微鏡およびHiStar2次元領域検出器を用いる、Bruker AXS C2 GADDS回折計。X線光学機器は、0.3mmのピンホールコリメーターと一体となった単一のGoebel多層鏡からなる。ビームの広がり、すなわち、サンプル上のX線ビームの有効なサイズは、およそ5mmである。3.2°〜29.7°という有効な2θ範囲をもたらす20cmというサンプルと検出器との距離において、θ−θ連続スキャンモードを使用する。代表的には、サンプルに120秒間X線ビームを曝露し得る。周囲条件下で操作されるサンプルは、粉砕することなく粉末を用いて、平板試料として調製される。平らな表面が得られるように、およそ1〜2mgのサンプルをスライドガラス上に軽く押しつける。非周囲条件下で操作されるサンプルは、熱伝導化合物とともにケイ素薄片上に載せられる。次いで、そのサンプルを1分あたりおよそ20℃で適切な温度まで加熱し、続いておよそ1分間、等温に保持された後、データ収集を開始する;または
iii)Brucker AZS D8−AdvanceX線回折計。約50mgのサンプルを、粉末測定のために直径50mmの石英サンプリングパン内で静かに平らにする。そのサンプルは、2θ/θ固定連動角度(locked coupled angles)を用いて2.9°2θから29.6°2θまでの連続的なスキャンとして操作される。各角度間隔は、0.05°2θであり、データは、2秒間にわたって収集される。そのサンプルの操作は、周囲条件下で行われ、データ解析は、EVAバージョン9.0ソフトウェアを用いて行われる。
【0130】
示差走査熱量測定(DSC):示差走査熱量測定(DSC)データを、以下のいずれかにおいて収集する:
i)50ポジションのオートサンプラーを備えたTA Instruments Q1000示差走査熱量計。エネルギーおよび温度の較正標準は、インジウムである。サンプルを、25℃〜300℃において1分あたり10℃の速度で加熱する。スキャンの間、サンプルの上に1分あたり30mLで窒素パージ流を流し続ける。0.5mg〜3mgのサンプルを解析する。溶媒蒸気由来の蓄積される圧力を緩和するピンホールを有する密封されたアルミニウムパンにすべてのサンプルを圧着する。
;または
ii)TA Instruments DSC Q2000示差走査熱量計。1mg〜2mgのサンプルを、ふた付きのアルミニウムパン内に密封する。窒素サンプルパージ(nitrogen sample puge)を50mL/分で一定に維持しつつ、そのサンプルを1分あたり10℃の勾配速度で25℃〜350℃に加熱する。Thermal Advantage for Q Seriesソフトウェアを用いてサーモグラムを解析する。
【0131】
熱重量分析(TGA):熱重量分析(TGA)データを、16ポジションのオートサンプラーを備えたTA Instruments Q500熱重量分析装置において収集する。この装置を、認定Alumelを用いて較正する。代表的には、3mg〜10mgのサンプルを、予め風袋計量した(pre−tared)白金るつぼおよびアルミニウムDSCパンに充填し、周囲温度から350℃まで1分あたり10℃で加熱する。測定の間、サンプルの上に1分あたり60mLで窒素パージ流を流し続ける。Thermal Advantage for Q Seriesソフトウェアを用いてサーモグラムを解析する。
【0132】
実施例1:(5−クロロ−2−ヨードフェニル)(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)メタノン(3)の合成
【0133】
【化3】
工程1:(5−クロロ−2−ヨードフェニル)(2,6−ジフルオロフェニル)メタノン(2)
室温で、反応器に、(2−アミノ−5−クロロフェニル)(2,6−ジフルオロフェニル)メタノン(1、60.0kg,224mol)および酢酸(427L)を加えた。混合物を、すべての固体が完全に溶解するまで撹拌し、濾過し、酢酸(9.47L)で洗浄した。濃HCl(156L)を、20〜25℃において最低でも30分間にわたって加え、得られた混合物を0〜5℃に冷却した。反応温度を0〜5℃に維持しつつ、水(88.0L)中の亜硝酸ナトリウム(18.6kg,269mol)の溶液を加えた。混合物を0〜5℃において1時間撹拌した。次いで、水(270L)および酢酸イソプロピル(717L)を0〜5℃において加えた。水(133L)中のヨウ化カリウム(50.2kg,303mol)の溶液を0〜5℃において1時間にわたって加えた。反応混合物を30分間撹拌し、1.5時間にわたって20〜25℃に温めた。層を分離し、有機相を希ブライン溶液(200Lの水中に22kgのNaCl)および炭酸ナトリウム溶液(523Lの水中に175kgのNa2CO3)で洗浄した。得られた有機層をアスコルビン酸ナトリウム溶液で2回(各洗浄について188Lの水中に15.8kg)、続いて水(200L)で洗浄した。有機相を、430Lの溶媒が除去されるまで、最高50℃のジャケット温度を用いて濃縮した。ヘプタン(400L)を加え、混合物を、395Lの溶媒が除去されるまで、50℃のジャケット温度を用いて濃縮した。2−ブタノール(398L)を加え、混合物を、322Lの溶媒が除去されるまで、最高60℃のジャケット温度を用いて濃縮した。さらなる2−ブタノール(398L)を加え、混合物を、390Lの溶媒が除去されるまで、70℃のジャケット温度を用いて濃縮した。反応混合物を−5〜−8℃に冷却し、2時間撹拌し、濾過し、−5〜0℃の2−ブタノール(2×84.2L)で洗浄した。得られた湿ケーキを減圧下、40〜50℃で乾燥することにより、67.6kg(80%収率)の2を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.89 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.51 (m, 1H), 7.44 (d, J=2.3 Hz, 1H), 7.18 (dd, J=2.3, 8.2 Hz, 1H), 7.00 (m, 2H);C13H6ClF2IOについて計算される元素分析値:C,41.25;H,1.60;Cl,9.37;F,10.04;I,33.52;O,4.23.実測値:C,41.36;H,1.65;Cl,9.51;F,10.03;I,33.41;O,4.04.
工程2:(5−クロロ−2−ヨードフェニル)(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)メタノン(3)
室温の反応器に、2(67.6kg,179mol)およびMTBE(344L)を加えた。混合物を40℃に温め、固体が完全に溶解するまで30分間撹拌した。次いで、混合物を25〜30℃に冷却した。ナトリウムメトキシドを、メタノール中の25%w/w溶液(45.2kg,209mol)として25〜30℃において最低でも90分間にわたって加えた。HPLC解析によって>99.0%の変換率が得られるまで、反応混合物を少なくとも2時間撹拌した。温度を20〜25℃に維持しつつ、水(483L)を30分間にわたってゆっくり加えた。層を分離し、水相をMTBE(77L)で抽出した。合わせた有機抽出物を希ブライン溶液(342Lの水中に38kgのNaCl)で洗浄した。有機層を濾過し、水(242L)で洗浄し、有機相を濾過した。内部温度を70℃未満に維持しつつ、360Lの溶媒が除去されるまで、得られた有機相を濃縮した。イソブタノール(302L)を加え、内部温度を70℃未満に維持しつつ、307Lの溶媒が除去されるまで、混合物を濃縮した。別のイソブタノール(330L)を加え、内部温度を70℃未満に維持しつつ、210Lの溶媒が除去されるまで、混合物を濃縮した。透明な溶液が得られるまで混合物を60〜85℃に加熱し、50℃に冷却した。種結晶のスラリー(150mLのイソブタノール中に50g)を加え、混合物を40℃に冷却した。別の種結晶のスラリー(60mLのイソブタノール中に30g)を加え、混合物を最低でも3時間にわたって20〜25℃に冷却した。得られた混合物をさらに2時間撹拌した。混合物を濾過し、イソブタノール(2×65L)で洗浄した。得られた湿ケーキを減圧下、20〜35℃で乾燥することにより、50.9kgの粗製3を得た。別個の反応器に、粗製3およびイソブタノール(69L)を入れた。混合物を、透明な溶液が得られるまで75〜80℃に加熱した。反応混合物を55℃に冷却し、種結晶のスラリー(500mLのイソブタノール中に50g)を加えた。混合物を55℃において30分間撹拌し、最低でも3時間にわたって20〜25℃に冷却し、さらに2時間撹拌した。混合物を濾過し、イソブタノール(2×31L)で洗浄した。湿ケーキを減圧下、40℃で乾燥することにより、46.0kg(66%収率)の精製された3を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.88 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.42 (m, 2H), 7.13 (dd, J=2.3, 8.2 Hz), 6.76 (m, 2H), 3.73 (s, 3H); MS(ESI)m/z 391.2(M+H+,30%).
実施例2:4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸塩酸塩(6)の合成
【0134】
【化4】
工程1:メチル4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートニトレート(5)
室温で、反応器に、メチル4−アミノ−2−メトキシベンゾエート(4,38kg,210mol)およびメタノール(224L)を加えた。混合物を25〜30℃において30分間撹拌した。シアナミド水溶液(50%w/w,43kg,512mol)を、20〜25℃において最低でも30分間にわたって加えた。反応混合物を、75℃という最高ジャケット温度を用いて加熱還流した。濃硝酸(45kg,499mol)を、最低でも60分間にわたって加えた。得られた混合物を2時間加熱還流した。種結晶の懸濁液(600mLのメタノール中に16g)を加え、混合物を、75℃のジャケット温度を用いて60〜90分間撹拌した。混合物を、少なくとも2時間にわたって20〜25℃に冷却し、さらに2時間撹拌した。混合物を濾過し、1時間にわたって撹拌しつつ、メタノール(180L)で洗浄した。湿ケーキを、1時間にわたって撹拌しつつ、2回目のメタノール(180L)で洗浄した。得られた湿ケーキを減圧下、25℃で乾燥することにより、30.0kg(50%収率)の5を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 9.82 (s, 1H), 7.70 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.57 (s, 4H), 6.97 (d, J=2.3 Hz, 1H), 6.84 (dd, J=2.3, 8.2 Hz, 1H), 3.81 (s, 3H), 3.76 (s, 3H); MS(ESI)m/z 224.4(M+,100%).
工程2:4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸塩酸塩(6)
反応器に、5(29.8kg,104mol)および水(475L)を加えた。混合物を75〜80℃に加熱し、温度を75〜80℃に維持しつつ、最低でも30分間にわたって濃HCl(107kg,1051mol)を加えた。反応混合物を75〜80℃において3時間撹拌した。反応混合物をサンプリングし、HPLC解析によって変換率(%)を測定した。その変換率(%)が>97.3%に達するまで、または総反応時間が7時間になるまで、混合物を75〜80℃で加熱した。反応物を最低でも3時間にわたって20〜25℃に冷却し、20〜25℃においてさらに2時間撹拌した。反応物を濾過し、16%w/wHCl(2×35kg)、水(82L)およびヘプタン(2×120L)で洗浄した。得られた湿ケーキを減圧下、35〜50℃で乾燥することにより、23.9kg(93%収率)の6を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 10.25 (s, 1H), 7.72 (s, 4H), 7.69 (d, J=8.8 Hz, 1H), 6.93 (d, J=2.3 Hz, 1H), 6.81 (dd, J=2.3, 8.8 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H); MS(ESI)m/z 210.4(M+,100%).
実施例3:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形1型および2型の合成
【0135】
【化5】
工程1:tert−ブチルプロパ−2−イン−1−イルカルバメート(7)
反応器に、プロパギルアミン(10.0kg,182mol)およびMTBE(154L)を加えた。Boc2O(41.3kg,190mol)をMTBE(61L)に溶解させることによってBoc2O溶液を調製し、これを、温度を23〜28℃に維持しつつ最低でも60分間にわたって上記プロパルギルアミン溶液に移した。GC解析によって≧98.0%の変換率が得られるまで、反応混合物を少なくとも1時間撹拌した。重硫酸ナトリウムの溶液(44Lの水中に5.6kgのNaHSO4)を、温度を20〜25℃に維持しつつ、最低でも15分間にわたって加え、20分間撹拌した。相を分離し、前述と同様に重硫酸ナトリウム溶液(44Lの水中に5.6kgのNaHSO4)で洗浄した。得られた有機相を炭酸水素ナトリウム溶液(44Lの水中に4.0kg)および水(2×47L)で洗浄した。40℃の最高ジャケット温度を用いて、反応器に62kgが残るまで、有機相を濃縮した。温度を35〜40℃に維持しつつ、最低でも20分間にわたってヘプタン(186L)を加える。40℃の最高ジャケット温度を用いて、反応器に70kgが残るまで、混合物を濃縮した。混合物を、最低でも3時間にわたって0〜5℃に冷却し、0〜5℃において1時間撹拌した。混合物を濾過し、0〜5℃のヘプタンで洗浄した(2×15L)。湿ケーキを減圧下、25〜30℃で乾燥することにより、20.9kg(74%収率)の7を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.70 (s, 1H), 3.92 (d, J= Hz, 2H), 2.22 (m, 1H), 1.45 (s, 9H);C8H13NO2について計算される元素分析値:C,61.91;H,8.44;N,9.03;O,20.62.実測値:C,61.99;H,8.36;N,9.11;O,20.54.
工程2:tert−ブチル{3−[4−クロロ−2−(2−フルオロ−6−メトキシベンゾイル)フェニル]プロパ−2−イン−1−イル}カルバメート(8)
反応器に、3(15.0kg,38.4mol)、7(7.2kg,46.4mol)およびシクロヘキサン(230L)を加えた。懸濁液を、減圧−窒素サイクルを用いて各回少なくとも3分間にわたって3回脱気した。ジエチルアミン(8.6kg,119mol)を加え、反応混合物を28〜33℃に加熱した。ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.134kg,0.192mol)およびヨウ化銅(II)(0.037kg,0.192mol)を加え、HPLC解析によって≧99.0%の変換率が得られるまで、混合物を28〜33℃において少なくとも15時間撹拌した。水(68L)に続いてMTBE(92L)を加えた。反応混合物を45〜50℃に加熱し、最低でも30分間、すべての固体が完全に溶解するまで撹拌した。45〜50℃において相を分離し、有機相を45〜50℃の水(2×68L)で洗浄した。得られた有機相を濾過し、反応器を、45〜50℃のMTBE(32L)ですすいだ。次いで、そのすすぎ液を、濾液が入った第2の反応器にフィルター膜を介して移した。合わせた濾液を、45〜50℃のジャケット温度を用いて、反応器に225kgが残るまで、減圧下で濃縮した。混合物を35〜40℃に冷却し、種結晶のスラリー(500mLのシクロヘキサン中に10gの8)を加えた。反応混合物を35〜40℃において60分間撹拌し、45〜50℃のジャケット温度を用いて、反応器に144kgが残るまで、減圧下で濃縮した。混合物を、最低でも2時間にわたって18〜23℃に冷却し、18〜23℃においてさらに2時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、シクロヘキサン(2×53L)で洗浄した。湿ケーキを減圧下、40〜45℃で乾燥することにより、16.0kg(80%収率)の8を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.72 (s, 1H), 7.41 (m, 3H), 6.77 (m, 2H), 4.43 (s, 1H), 3.88 (d, J=5.3 Hz, 2H), 3.74 (s, 3H), 1.46 (s, 9H); MS(ESI)m/z 318.4(M+H+−Boc,23%)、362.4(M+H+−t−ブチルカチオン,20%).
工程3:8−クロロ−4−[(ジメチルアミノ)メチレン]−1−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−3,4−ジヒドロ−5H−2−ベンゾアゼピン−5−オン(9)
トリフルオロ酢酸(158L)および水(8.3L)を反応器に加えた。ジクロロメタン(63L)中の8(37.8kg,90.5mol)の溶液を、第2の反応器を介して、温度を20〜30℃に維持しつつ、最低でも60分間にわたって、上記トリフルオロ酢酸溶液に加えた。8の溶液が入っていた反応器をジクロロメタン(19L)ですすぎ、温度を20〜30℃に維持しつつ、反応混合物に移した。混合物を30〜35℃に加熱し、HPLC解析によって≧98.0%の変換率が得られるまで、少なくとも19時間撹拌した。反応器に76〜79kgが残るまで、混合物を減圧下、35〜45℃で濃縮した。内部温度を20〜30℃に維持しつつ、ジクロロメタン(424L)を加えた。温度を20〜30℃に維持しつつ、最低でも30分間にわたって、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(64kg,495mol)を加えた。pHが<8.0である場合、pHが≧8.0になるまで、5LのN,N−ジイソプロピルエチルアミンを加えた。HPLC解析によって≧99.0%の変換率が得られるまで、混合物を最低でも2時間にわたって20〜30℃において撹拌した。温度を20〜25℃に維持しつつ、水(378L)を加え、30分間撹拌した。相を分離し、有機相を10%w/wブライン溶液(340kgの水中に38kgのNaCl)で洗浄した。相を分離し、有機相を、最低でも30分間にわたって20〜25℃にて硫酸ナトリウム(5.4kg)で乾燥した。混合物を濾過し、その硫酸ナトリウム混合物が入っていた反応器をさらなるジクロロメタン(27L)ですすぎ、濾過した。合わせた濾液にジメチルホルムアミドジメチルアセタール(152kg,1276mol)を最低でも30分間にわたって、温度を20〜30℃に維持しつつ加えた。混合物を37〜42℃に温め、HPLC解析によって≧99.0%の変換率が得られるまで、最低でも20時間にわたって撹拌した。反応混合物を、反応器に234〜252kgが残るまで、40〜45℃のジャケット温度を用いて減圧下で濃縮した。MTBE(355L)を35〜40℃において加え、得られた混合物を、反応器に414〜432kgが残るまで、40〜45℃のジャケット温度を用いて減圧下で濃縮した。その懸濁液を、最低でも3時間にわたって20〜25℃に冷却し、さらに2時間撹拌した。その懸濁液を濾過し、20〜25℃において、撹拌しつつ、MTBE(2×50L)に続いてアセトン(2×101L)で洗浄した。湿ケーキを減圧下、35〜45℃で乾燥することにより、28.0kg(83%収率)の9を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 7.87 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.63 (s, 1H), 7.58 (d, J=9.4 Hz, 1H), 7.42 (dd, J=6.96, 8.2 Hz, 1H), 6.94 (m, 2H), 4.83 (d, J=12.9 Hz, 1H), 3.44 (d, J=12.9 Hz, 2H), 3.31 (s, 3H), 3.22 (s, 6H); MS(ESI)m/z 373.2(M+H+,100%).
工程4:4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸(式II)
反応器に、6(3.81kg,15.5mol)、炭酸カリウム(4.3kg,31.1mol)、9(5.27kg,14.1mol)およびメタノール(63L)を加えた。懸濁液を50〜55℃に温め、HPLC解析によって≧96.0%の変換率が得られるまで、最低でも24時間撹拌した。温度を50〜55℃に維持しつつ、メタノール(10L)および水(37L)を加えた。温度を50〜55℃に維持しつつ、7%w/wHCl(7.0kgの濃HClおよび24Lの水から調製されたもの)を用いて、混合物のpHを3.0〜4.0に調整した。懸濁液を、最低でも1時間にわたって20〜25℃に冷却し、少なくとも60分間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、50〜55℃の水(2×26.3L)および20〜25℃のメタノール(2×10L)で洗浄した。湿ケーキを減圧下、45〜50℃で乾燥することにより、5.85kg(80%収率)の式(II)を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 12.07 (s, 1H), 10.22 (s, 1H), 8.72 (s, 1H), 8.29 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.95 (s, 1H), 7.80 (dd, J=2.4, 8.9 Hz, 1H), 7.70 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.39 (m, 3H), 7.21 (s, 1H), 6.89 (s, 2H), 3.82 (s, 6H); MS(ESI)m/z MS(ESI)m/z 517.2(M−H+,45%).
工程5:
方法A:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形2型
式(II)の化合物(130g,0.244mol)、無水エタノール(975mL,7.5体積)および水(715mL,5.5体積)を反応器に加え、69〜74℃に温めた。温度を69〜74℃に維持しつつ、1.0M水酸化ナトリウム水溶液(260ML,2.0体積,0.260mol)を滴下した。反応混合物のpHを連続的にモニターし、pHが9.5〜10.5(好ましくは、9.8〜10)に達したら、滴下を停止した。混合物を、69〜74℃において少なくとも1時間撹拌し、pHが規定の範囲から低下した場合、9.5〜10.5のpHが得られるまで、追加の上記1.0M NaOH溶液を加えた。反応混合物を72〜77℃の内部温度に温めた。この溶液を濾過し、69〜77℃の内部温度を維持しつつ、別個の反応器に移した。予め69〜74℃に加熱しておいた無水エタノール(1690mL,13体積)を濾過し、反応混合物を69〜74℃の温度に維持しつつ、反応混合物に加えた。式(I)の化合物(1.30g)を加え、62〜67℃において少なくとも15分間撹拌し、次いで、反応混合物を69〜74℃に加熱した。種結晶が存在した。910mL(7体積)の溶媒が除去されるまで、得られた懸濁液を減圧下、60〜74℃において濃縮した。予め69〜74℃に加熱しておいた無水エタノール(910mL,7体積)を濾過し、反応混合物を69〜74℃の温度に維持しつつ、反応混合物に加えた。910mL(7体積)の溶媒が除去されるまで、得られた懸濁液を減圧下、60〜74℃において濃縮した。7体積の無水エタノールを加えた後に上記のように濃縮することを、少なくとも4回繰り返した。KF分析によって水の%w/wについて工程内コントロール(In Process Control)を得た。7体積の無水エタノールを加えた後、濃縮することを、≦15.0%w/wのKFに達するまで繰り返した。反応混合物を、最低でも2.5〜3時間にわたって20〜25℃に冷却し、20〜25℃において少なくとも1時間撹拌し、懸濁液を濾過した。無水エタノール(2×486.5mL,3.74体積)を用いて、撹拌しながら、固体を2回洗浄した。GC解析によって測定される残留エタノール含有量が、≦0.4%w/wとなるまで、湿ケーキを減圧下、40〜45℃で乾燥した。合計96.8g(71%収率)の式(I)の化合物を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 9.72 (s, 1H), 8.61 (s, 1H), 8.25 (d, J=7.6, 1H), 7.79 (dd, J=2.3, 8.8 Hz, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.40 (dd, J=8.2, 15.2 Hz, 1H), 7.25 (d, J=8.2, 1H), 7.17 (m, 2H), 6.88 (s, 2H), 3.69 (s, 3H), 3.31 (s, 3H); MS(ESI)m/z 517.2(M−H+,45%).
方法B:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形1型
エタノール(2.0L)中の式(II)の化合物(98.0g,190mmol)の撹拌懸濁液に、1.044M水酸化ナトリウム水溶液(199mL)を加えた。得られた均一な溶液を1時間撹拌し、その撹拌中に、濃密な沈殿物が形成された。生成物を濾集し、エタノール(0.5L)およびジエチルエーテル(1.0L)で洗浄した。得られた固体を減圧下、60〜70℃で4日間乾燥することにより、88.6g(86.8%)の式(I)の化合物を淡褐色固体(融点225℃(decomp))として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 9.86 (s, 1H), 8.60 (s, 1H), 8.29 (d, 1H), 7.79 (dd, 1H), 7.60 (br s, 1H), 7.40 (dd, 1H), 7.29 (d, 1H), 7.25−7.15 (m, 2H), 6.9 (br s, 2H), 4.9 (br s, 1H), 3.8 (br s, 1H), 3.70 (s, 3H), 3.35 (br s, 3H); MS m/z 519(M+−Na+H,100%);C27H19ClFN4NaO40.33EtOH1.3H2Oについて計算されるCHN分析値:C,57.33;H,4.10;N,9.67.実測値:C,57.14;H,3.99;N,9.65.
方法C:非晶質ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート
1.0gのナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型を、65℃の350mLの水に溶解させた。この溶液を固体CO2/アセトンスラリー中で凍結させ、次いで、凍結乾燥した。非晶質で吸湿性のふわふわした固体を得た。
【0136】
実施例4:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形4型の合成
2.5mLのエタノールを、ねじぶた式のバイアル内の50mgの凍結乾燥された非晶質ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート(減圧下、50℃で1時間、事前に乾燥しておいたもの)に加えた。このバイアルを、50℃で振盪および周囲温度で振盪を4時間ごとに交互に代えながら1週間振盪した。濾過により、4型を単離した。4型のXRPDデータは、図7および表3に示される。
【0137】
実施例5:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形6型の合成
3.0mLのメタノールを、ねじぶた式のバイアル内の100mgのナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型に加えた。このバイアルを、50℃で振盪および周囲温度で振盪を4時間ごとに交互に代えながら72時間振盪した。濾過により、6型を単離した。6型のXRPDデータは図8および表4に示され、DSCデータは図9に示され、TGAデータは図10に示され、GVSデータは図11に示される。
【0138】
実施例6:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形11型の合成
3.0mLのメタノールを、ねじぶた式のバイアル内の100mgのナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型に加えた。このバイアルを、50℃で振盪および周囲温度で振盪を4時間ごとに交互に代えながら72時間振盪した。得られたスラリーを濾過し、濾液を確保した。10mLの貧溶媒シクロヘキサンを加えたが、沈殿物は生じなかった。その溶液を蒸発させることにより、11型と24型との混合物を得た。11型のXRPDデータは図12および表5に示され、DSCデータは図13に示される。
【0139】
実施例7:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形12型の合成
10mLの90%エタノール/10%水の溶液を、ねじぶた式のバイアル内の100mgのナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート2型に加えた。このバイアルを50℃に加熱し、2時間振盪した。得られたスラリーを50℃において濾過し、濾液を確保した。その濾液を4℃において17時間貯蔵したが、沈殿物は生じなかった。そのバイアルのふたを取って蒸発させることにより、12型を得た。12型のXRPDデータは図14および表6に示され、DSCデータは図15に示され、TGAデータは図16に示される。
【0140】
実施例8:ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート多形24型の合成
200mgの4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンゾアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸を、ねじぶた式のバイアル内の4mLのエタノール中で撹拌した。1.1mol当量の水酸化ナトリウム溶液(406μL,1.044M水溶液)を加えた。この固体が溶解した後、黄色の沈殿物が形成された。このサンプルは、4型と24型との混合物だった。この固体を10mLのエタノールおよび20mLのジエチルエーテルで洗浄し、減圧下、70℃で2日間、そして60℃でさらに3日間乾燥することにより、24型を得た。24型のXRPDデータは図17および表7に示され、DSCデータは図18に示され、TGAデータは図19に示される。
【0141】
前述の本発明は、明確にする目的および理解を促す目的でいくらか詳細に記載してきたが、これらの特定の実施形態は、例示であって限定でないとみなされるべきである。当業者は、本開示を通読することによって、特定の実施形態ではなく添付の請求項によって定義される本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更が行われ得ることを認識するだろう。
【0142】
本明細書中で参照された特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。本明細書中で引用された発行された特許、出願および参考文献は、各々が明確かつ個別に参考として援用されると示されたのと同程度に、本明細書によって参考として援用される。矛盾している場合は、定義を含む本開示が支配するものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化6】
の結晶形であって、該結晶形が4型である、結晶形。
【請求項2】
13.27°、22.96°および25.89°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項1に記載の結晶形。
【請求項3】
以下の特徴(III−i)〜(III−ii):
(III−i)表3に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;および
(III−ii)図7と実質的に類似の粉末X線回折パターン
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1に記載の結晶形。
【請求項4】
式(I)の化合物:
【化7】
の結晶形であって、該結晶形が6型である、結晶形。
【請求項5】
11.62°、16.01°、17.47°、21.23°、23.43°および29.38°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項4に記載の結晶形。
【請求項6】
16.01°、17.47°、21.23°および23.43°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項4に記載の結晶形。
【請求項7】
以下の特徴(IV−i)〜(IV−v):
(IV−i)表4に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(IV−ii)図8と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(IV−iii)図9と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;
(IV−vi)図10と実質的に類似の熱重量分析(TGA);および
(IV−iv)図11と実質的に類似の重量測定による蒸気収着(GVS)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項4に記載の結晶形。
【請求項8】
式(I)の化合物:
【化8】
の結晶形であって、該結晶形が11型である、結晶形。
【請求項9】
13.03°、15.72°、25.66°、26.21°および27.08°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項8に記載の結晶形。
【請求項10】
13.03°、26.21°および27.08°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項8に記載の結晶形。
【請求項11】
以下の特徴(V−i)〜(V−iii):
(V−i)表5に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(V−ii)図12と実質的に類似の粉末X線回折パターン;および
(V−iii)図13と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項8に記載の結晶形。
【請求項12】
式(I)の化合物:
【化9】
の結晶形であって、該結晶形が12型である、結晶形。
【請求項13】
12.72°、13.46°、21.26°、21.89°、25.57°および29.50°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項12に記載の結晶形。
【請求項14】
12.72°、21.26°、21.89°および25.57°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項12に記載の結晶形。
【請求項15】
以下の特徴(VI−i)〜(VI−iv):
(VI−i)表6に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(VI−ii)図14と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(VI−iii)図15と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(VI−iv)図16と実質的に類似の熱重量分析(TGA)
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項12に記載の結晶形。
【請求項16】
式(I)の化合物:
【化10】
の結晶形であって、該結晶形が24型である、結晶形。
【請求項17】
10.93°、15.67°、19.76°、22.05°、22.90°、23.38°、23.84°および26.91°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項16に記載の結晶形。
【請求項18】
10.93°、15.67°、22.90°、23.84°および26.91°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項16に記載の結晶形。
【請求項19】
以下の特徴(VII−i)〜(VII−iv):
(VII−i)表7に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(VII−ii)図17と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(VII−iii)図18と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(VII−iv)図19と実質的に類似の熱重量分析(TGA)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項16に記載の結晶形。
【請求項20】
請求項1〜19に記載の結晶形のうちの少なくとも1つと、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤とを含む、固体の薬学的組成物。
【請求項21】
癌の処置を必要とする患者において該癌を処置する際に使用するための、請求項1〜19のいずれかに記載の結晶形。
【請求項22】
前記癌が、NHL、AML、MDS、直腸結腸癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、前立腺癌および膵癌からなる群から選択される、請求項21に記載の結晶形。
【請求項23】
活性成分として請求項1〜19のいずれかに記載の結晶形と、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤とを含む、癌の処置を必要とする患者において該癌を処置するための固体の薬学的組成物。
【請求項24】
前記癌が、NHL、AML、MDS、直腸結腸癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、前立腺癌および膵癌からなる群から選択される、請求項23に記載の固体の薬学的組成物。
【請求項25】
癌を処置するための薬学的組成物を調製するための、請求項1〜19に記載の結晶形のうちの少なくとも1つの使用。
【請求項26】
前記薬学的組成物が、液体の剤形である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記癌が、NHL、AML、MDS、直腸結腸癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、前立腺癌および膵癌からなる群から選択される、請求項25に記載の使用。
【請求項28】
癌の処置を必要とする患者において該癌を処置するための、有効量の請求項1〜19のいずれかに記載の結晶形の使用。
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化6】
の結晶形であって、該結晶形が4型である、結晶形。
【請求項2】
13.27°、22.96°および25.89°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項1に記載の結晶形。
【請求項3】
以下の特徴(III−i)〜(III−ii):
(III−i)表3に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;および
(III−ii)図7と実質的に類似の粉末X線回折パターン
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1に記載の結晶形。
【請求項4】
式(I)の化合物:
【化7】
の結晶形であって、該結晶形が6型である、結晶形。
【請求項5】
11.62°、16.01°、17.47°、21.23°、23.43°および29.38°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項4に記載の結晶形。
【請求項6】
16.01°、17.47°、21.23°および23.43°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項4に記載の結晶形。
【請求項7】
以下の特徴(IV−i)〜(IV−v):
(IV−i)表4に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(IV−ii)図8と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(IV−iii)図9と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;
(IV−vi)図10と実質的に類似の熱重量分析(TGA);および
(IV−iv)図11と実質的に類似の重量測定による蒸気収着(GVS)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項4に記載の結晶形。
【請求項8】
式(I)の化合物:
【化8】
の結晶形であって、該結晶形が11型である、結晶形。
【請求項9】
13.03°、15.72°、25.66°、26.21°および27.08°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項8に記載の結晶形。
【請求項10】
13.03°、26.21°および27.08°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項8に記載の結晶形。
【請求項11】
以下の特徴(V−i)〜(V−iii):
(V−i)表5に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(V−ii)図12と実質的に類似の粉末X線回折パターン;および
(V−iii)図13と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項8に記載の結晶形。
【請求項12】
式(I)の化合物:
【化9】
の結晶形であって、該結晶形が12型である、結晶形。
【請求項13】
12.72°、13.46°、21.26°、21.89°、25.57°および29.50°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項12に記載の結晶形。
【請求項14】
12.72°、21.26°、21.89°および25.57°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項12に記載の結晶形。
【請求項15】
以下の特徴(VI−i)〜(VI−iv):
(VI−i)表6に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(VI−ii)図14と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(VI−iii)図15と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(VI−iv)図16と実質的に類似の熱重量分析(TGA)
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項12に記載の結晶形。
【請求項16】
式(I)の化合物:
【化10】
の結晶形であって、該結晶形が24型である、結晶形。
【請求項17】
10.93°、15.67°、19.76°、22.05°、22.90°、23.38°、23.84°および26.91°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項16に記載の結晶形。
【請求項18】
10.93°、15.67°、22.90°、23.84°および26.91°という2θ角度の少なくとも1つの粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項16に記載の結晶形。
【請求項19】
以下の特徴(VII−i)〜(VII−iv):
(VII−i)表7に示される粉末X線回折ピークのうちの少なくとも1つ;
(VII−ii)図17と実質的に類似の粉末X線回折パターン;
(VII−iii)図18と実質的に類似の示差走査熱量測定(DSC)プロファイル;および
(VII−iv)図19と実質的に類似の熱重量分析(TGA)プロファイル
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項16に記載の結晶形。
【請求項20】
請求項1〜19に記載の結晶形のうちの少なくとも1つと、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤とを含む、固体の薬学的組成物。
【請求項21】
癌の処置を必要とする患者において該癌を処置する際に使用するための、請求項1〜19のいずれかに記載の結晶形。
【請求項22】
前記癌が、NHL、AML、MDS、直腸結腸癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、前立腺癌および膵癌からなる群から選択される、請求項21に記載の結晶形。
【請求項23】
活性成分として請求項1〜19のいずれかに記載の結晶形と、少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤とを含む、癌の処置を必要とする患者において該癌を処置するための固体の薬学的組成物。
【請求項24】
前記癌が、NHL、AML、MDS、直腸結腸癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、前立腺癌および膵癌からなる群から選択される、請求項23に記載の固体の薬学的組成物。
【請求項25】
癌を処置するための薬学的組成物を調製するための、請求項1〜19に記載の結晶形のうちの少なくとも1つの使用。
【請求項26】
前記薬学的組成物が、液体の剤形である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記癌が、NHL、AML、MDS、直腸結腸癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、前立腺癌および膵癌からなる群から選択される、請求項25に記載の使用。
【請求項28】
癌の処置を必要とする患者において該癌を処置するための、有効量の請求項1〜19のいずれかに記載の結晶形の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2013−520424(P2013−520424A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553967(P2012−553967)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2011/024883
【国際公開番号】WO2011/103089
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(500287639)ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2011/024883
【国際公開番号】WO2011/103089
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(500287639)ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】
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