説明

ナノカーボン製造装置

【課題】純度および安定性の高い高機能のナノカーボンを低コストで効率よく量産することができることを課題とする。
【解決手段】内部を還元雰囲気に保持しうる反応容器1と、この反応容器内に設けられ,ローラにより駆動するとともに表面にナノカーボンが生成される無端状で帯状のステンレス板3と、ステンレス板を加熱するヒータ4と、ステンレス板表面に触媒粉を供給する触媒供給手段7と、反応容器内に炭化水素を供給する炭化水素供給手段5と、反応容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段6と、ステンレス板に生成されたナノカーボンを回収する掻き取り回収手段8と、反応容器内のガスを排気するガス排気手段10とを具備することを特徴とするナノカーボン製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用性の高い繊維状のナノカーボン例えばカーボンナノチューブを効率的に製造するナノカーボン製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブの生成法には、アーク放電法、レーザー蒸着法、化学気相成長法(CVD法)などが挙げられる。
アーク放電法は、正負のグラファイト電極間にアーク放電を起こすことでグラファイトが蒸発し、陰極先端に凝縮したカーボンの堆積物の中にカーボンナノチューブが生成される方法である(例えば、特許文献1参照)。レーザー蒸着法は、高温に過熱した不活性ガス中に金属触媒を混合したグラファイト試料を入れ、レーザー照射することによりカーボンナノチューブを生成する方法である(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
一般に、上記アーク放電法やレーザー蒸発法では結晶性の良いカーボンナノチューブが生成できるが、生成するカーボンナノチューブの量が少なく大量生成に難しいと言われている。
CVD法には、反応炉の中に配置した基板にカーボンナノチューブを生成させる気相成長基板法(例えば、特許文献3参照)と、触媒金属と炭素源を一緒に高温の炉に流動させカーボンナノチューブを生成する流動気相法(例えば、特許文献4参照)の二つの方法がある。
【0004】
しかし、上記気相成長基板法は、バッジ処理であるので大量生産が難しい。また、流動気相法は、温度の均一性が低く結晶性の良いカーボンナノチューブを生成するのが難しいとされている。さらに、流動気相法の発展型として、高温の炉の中に、触媒兼用流動材で流動層を形成し、炭素原料を供給して繊維状のナノカーボンを生成する方法も提案されている。しかし、炉内の温度の均一性が低く結晶性の良いカーボンナノチューブを生成するのが難しいと考えられる。
【0005】
しかして、純度及び安定性の高いカーボンナノチューブを低コストで効率よく量産することができるようになれば、カーボンナノチューブの特性を生かしたナノテクノロジー製品を低コストで大量に供給することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−95509号公報
【特許文献2】特開平10−273308号公報
【特許文献3】特開2000−86217号公報
【特許文献4】特開2003−342840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、純度および安定性の高い高機能のナノカーボンを低コストで効率よく量産することができるナノカーボン製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願第1の発明に係るナノカーボン製造装置は、内部を還元雰囲気に保持しうる反応容器と、この反応容器内に設けられ,ローラにより駆動するとともに表面にナノカーボンが生成される無端状で帯状のステンレス板と、ステンレス板を加熱する加熱手段と、ステンレス板表面に触媒粉を供給する触媒供給手段と、反応容器内に炭化水素を供給する炭化水素供給手段と、反応容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、ステンレス板に生成されたナノカーボンを回収する掻き取り回収手段と、反応容器内のガスを排気するガス排気手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
本願第2の発明に係るナノカーボン製造装置は、内部を還元雰囲気に保持しうる反応容器と、この反応容器内に設けられ,ローラにより駆動するとともに表面にナノカーボンが生成される帯状のステンレス板と、ステンレス板を加熱する加熱手段と、ステンレス板表面に触媒粉を供給する触媒供給手段と、反応容器内に炭化水素を供給する炭化水素供給手段と、反応容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、ステンレス板に生成されたナノカーボンを回収する掻き取り回収手段と、反応容器内のガスを排気するガス排気手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
本願第3の発明に係るナノカーボン製造装置は、内部を還元雰囲気に保持しうる反応容器と、この反応容器内に設けられ,表面にナノカーボンが生成される円板形状のステンレス板と、このステンレス板を駆動する駆動手段と、前記ステンレス板を加熱する加熱手段と、ステンレス板表面に触媒粉を供給する触媒供給手段と、反応容器内に炭化水素を供給する炭化水素供給手段と、反応容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、前記ステンレス板に生成されたナノカーボンを回収する掻き取り回収手段と、ナノカーボンを掻き取った後のステンレス板を磨き洗浄する磨き洗浄手段と、反応容器内のガスを排気するガス排気手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
本願第4の発明に係るナノカーボン製造装置は、内部を還元雰囲気に保持しうるとともに,外気と遮断可能な円筒状縦型反応容器と、この縦型反応容器内に配置されたステンレス円筒と、このステンレス円筒の内壁に生成されるナノカーボンを掻き取る螺旋状の掻き取り羽根と、この掻き取り羽根を駆動する駆動源と、前記ステンレス円筒を加熱する加熱手段と、ステンレス円筒内に触媒粉を供給する触媒供給手段と、縦型反応容器内に炭化水素を供給する炭化水素供給手段と、縦型反応容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、ステンレス円筒に生成されたナノカーボンを回収する回収手段と、縦型反応容器内のガスを排気するガス排気手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、純度および安定性の高い高機能のナノカーボンを低コストで効率よく量産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るCNT製造装置の概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るCNT製造装置において、CNTを生成する方法について検証した試験の概略的な工程図である。
【図3】図2の生成方法でCNTを生成した写真の外形を描いた図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るCNT製造装置の概略図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るCNT製造装置の概略図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るCNT製造装置の概略図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係るCNT製造装置の概略図である。
【図8】本発明の第6の実施形態に係るCNT製造装置の概略図である。
【図9】図8のCNT製造装置の構成部材である回転軸と掻き取り羽根を拡大して示す概念図。
【図10】本発明の第7の実施形態に係るCNT製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のナノカーボン製造装置について更に詳しく説明する。
本発明において、不活性ガスとしては、例えば窒素ガス,アルゴンガスが挙げられる。また、炭化水素としては、例えばエタノール(バイオエタノールを含む)が挙げられる。粉触媒としては、例えば鉄触媒が挙げられる。
【0015】
本発明において、炭化水素供給手段は、一般にエタノール等の炭化水素を供給するための炭化水素供給ノズルと、炭化水素を収容する炭化水素収容タンクと、このタンク内の炭化水素をステンレス板上に送るためのポンプとから構成されている。粉触媒供給手段は、例えば鉄触媒等の触媒を供給するための触媒供給ノズルと、ステンレス板の表面に触媒を塗布するための塗布ローラと、触媒を収容する触媒収容タンクと、触媒を触媒供給ノズルに送るためのポンプとから構成されている。不活性ガス供給手段は、例えば窒素等の不活性ガスを供給するための不活性ガス供給ノズルと、不活性ガスを収容する不活性ガス収容タンクと、このタンク内の不活性ガスを不活性ガス供給ノズルに送るためのポンプとから構成されている。磨き洗浄手段は、ステンレス板の表面を研磨する研磨ブラシと、研磨後のステンレス板を洗浄する洗浄液塗布ブラシから構成されている。ガス排気手段は、反応容器に設けられた排気ノズルと、水等の液体を収容する液封タンクと、排気ノズルと液封タンクを接続する配管と、反応容器内のガスを排気するためのポンプにより構成されている。液封タンクに液体を収容するのは、ナノカーボン製造装置で発生するガスの逆流を防ぐためである。
【0016】
次に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、本実施形態は下記に述べることに限定されない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るカーボンナノチューブ(CNT)製造装置の概略図である。
同製造装置は、内部を還元雰囲気に保持しうる反応容器1と、表面にナノカーボン(例えばカーボンナノチューブ)2が生成される無端状で帯状のステンレス板3と、加熱手段としてのヒータ4と、炭化水素供給手段5と、不活性ガス供給手段6と、触媒供給手段7と、カーボンナノチューブ掻き取り回収手段(以下、CNT掻き取り回収手段と呼ぶ)8と、磨き洗浄手段9と、ガス排気手段10を備えている。
【0017】
前記ステンレス板3は、駆動ローラ11と従動ローラ12により矢印Aのように回転移動するようになっている。ステンレス板3は、ヒータ4、該ヒータ4を固定して保温する耐熱材13、及び熱を遮断する断熱材14で囲まれている。ヒータ4には、ヒータ制御手段15が電気的に接続されている。ヒータ4とステンレス板3との空間には、炭化水素供給手段5から炭化水素原料例えばエタノールBが供給されるようになっている。
【0018】
炭化水素供給手段5は、例えばエタノールBをヒータ4とステンレス板3との空間に供給する炭化水素供給ノズル16と、このノズル16に接続する炭化水素収容タンク17と、図示しない液送用ポンプとを備えている。前記ステンレス板3,駆動ローラ11,従動ローラ12,ヒータ4,耐熱材13,断熱材14,後述する掻き取り板,研磨ブラシ,洗浄液塗布ブラシは、筐体18により囲まれている。この筐体18の外周部には、例えばロックウールからなる保温材19が貼られている。なお、図中の符号Fは原料ガスの移動方向を示す。
【0019】
前記不活性ガス供給手段6は、反応容器1内に不活性ガス例えば窒素ガスCを供給する不活性ガス供給ノズル20と、このノズル20に接続する不活性ガス収容タンク21と、図示しないポンプとから構成されている。前記触媒供給手段7は、ステンレス板3に隣接した塗布ローラ22と、この塗布ローラ22に粉触媒Dを噴霧して供給する触媒供給ノズル23と、粉触媒Dを収容する触媒収容タンク24と、図示しないポンプとから構成されている。ここで、粉触媒Dの粒径は、例えばミクロン前後の粒径の鉄粉である。
【0020】
前記CNT掻き取り回収手段8は、従動ローラ12の真下でステンレス板3に近接して配置されたカーボンナノチューブ掻き取り板(以下、CNT掻き取り板と呼ぶ)25と、掻き取り板25により掻き取ったカーボンナノチューブ(以下、CNTと呼ぶ)2を収容するカーボンナノチューブ回収缶(以下、CNT回収缶と呼ぶ)26により構成されている。前記ガス排気手段10は、反応容器1の下流側(図中の右側)に設けられた排気ノズル27と、水28を収容する水封タンク29と、排気ノズル27と水封タンク29を接続する配管30と、図示しないガス吸引用ポンプにより構成されている。
【0021】
前記反応容器1の下部側で且つ掻き取り板22の更に下流側には、ステンレス板2の表面を研磨する研磨ブラシ31、及び研磨を終えたステンレス板2の表面に洗浄液を塗布する洗浄液塗布ブラシ32が夫々設けられている。磨き洗浄手段9は、研磨ブラシ31と洗浄液塗布ブラシ32により構成されている。前記研磨ブラシ29の真下には、ステンレス鉄板3を磨いた研磨粉33を回収する研磨粉回収缶34が配置されている。洗浄液塗布ブラシ32の真下には、ステンレス板3の表面を洗浄処理した洗浄液35を回収する洗浄液回収缶36が配置されている。洗浄塗布ブラシ32には、洗浄液供給ノズル37と洗浄液例えばエタノールEを収容する洗浄液収容タンク38を有する洗浄液供給手段39によりエタノールEが供給されるようになっている。前記従動ローラ12の近くの反応容器1には、ステンレス板3に生成されるCNT2を直接観察するための覗き窓40が設けられている。
【0022】
次に、CNTを生成する方法について検証した試験について、図2の概略的な工程図を参照して説明する。
1)まず、図2の(A)のようにステンレス板41の表面に触媒粉としての鉄粉42を混合したエタノール液を塗布した後、ステンレス板41を反応容器47の中に入れ、図2の(B)のように乾燥し、鉄粉42を塗布した表面を乾燥する。つづいて、鉄粉42を塗布したステンレス板41を、炭化水素供給手段43,不活性ガス供給手段44,排気ガス回収手段45及び加熱手段46を備えた反応容器47の中に入れ、500〜1000℃程度まで加熱する(図2の(C)参照)。
【0023】
2)次に、ステンレス板41を冷却してから取り出したところ、ステンレス板41の表面にCNT48が生成された(図2の(D)参照)。つづいて、図2の(E)に示すようなステンレス板41上のCNT48を、カッター49により掻き落とす(図2の(F)参照)。その結果、図2の(G)のようにCNT48が回収された。
図3は、前記生成方法でCNT48を生成した写真の外形を描いたものである。即ち、図3は、鉄板41上に生成されたCNTを電子顕微鏡で観察したところ、細い線状のCNT48であることが確認された。
【0024】
次に、図1のCNT製造装置での製造方法を説明する。
まず、装置内部を不活性雰囲気にするために、不活性供給手段6を使って例えば窒素ガスを供給し、内部を窒素雰囲気に置換する。その後、ステンレス板3を回転移動させ、ヒータ制御手段15の電源を入れ、カーボンナノチューブ生成雰囲気が500〜1000℃の生成温度に達するまで昇温する。生成温度に達したら、窒素の供給を止めると同時に、炭素原料供給手段5を起動し、例えばエタノールBを炭素原料供給ルズル16から供給し、雰囲気の温度で瞬間に蒸発して炭化水素を含んだ気体となる。並行して、粉触媒供給手段7を起動し、触媒をステンレス板3の表面に塗布する。その際、十分に暖められたステンレス板表面の鉄触媒と炭化水素ガスが反応してCNT2を還元雰囲気で生成して生長する。ステンレス板3の表面に生長したCNT2は、従動ローラ12の下部に設けられたCNT掻き取り板25で掻き落とされ、下部のCNT回収缶26に回収される。ステンレス板3は、従動ローラ12で冷却された後、右へ移動し、研磨ブラシ31で磨き、洗浄液塗布ブラシ32で表面を線状する。その状態でステンレス板3とヒータ4間のカーボンナノチューブ生成部に戻され、再度CNTを生成する。
【0025】
第1の実施形態に係るナノカーボン製造装置は、図1に示すように、内部を還元雰囲気に保持しうる反応容器1と、表面にCNT2が生成される無端状で帯状のステンレス板3と、ヒータ4と、炭化水素供給手段5と、不活性ガス供給手段6と、触媒供給手段7と、CNT掻き取り回収手段8と、ガス排気手段9と、洗浄液供給手段39とを備えた構成となっているので、触媒が少なく純度が極めて高いCNTが得られる。また、本発明によれば、反応容器1内の不活性雰囲気化、CNT生成雰囲気での昇温、ステンレス板3への粉触媒の供給、ステンレス板3表面へのCNT生成、CNT2の掻き落とし、ステンレス板3の磨き及び洗浄を順次自動的に行うことができるので、純度および安定性の高い高機能のCNT2を低コストで効率よく量産することができる。更に、ステンレス板3を磨いた後の研磨粉33は研磨粉回収缶34で回収でき、洗浄液35の残り液は洗浄液回収缶36で回収して再利用できる。更には、覗き窓40によりCNT2のでき方を直接監視できる。
【0026】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係るCNT製造装置の概略図である。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみを説明する。
第2の実施形態に係るナノカーボン製造装置は、図1の場合と比べて、研磨ブラシ及び洗浄液塗布ブラシからなる磨き洗浄手段,研磨粉回収缶,洗浄液回収缶及び洗浄液供給手段を省いた点、及びCNTを掻き取り板で掻き取る際,CNTをほとんど残す点が異なることを特徴とする。
【0027】
次に、図4のCNT製造装置でのCNTの製造方法について説明する。
まず、装置内部を不活性雰囲気にするために、不活性供給手段6を使って例えば窒素を供給し、内部を窒素雰囲気に置換する。その後、ステンレス板3を回転移動させ、ヒータ制御手段15の電源を入れ、CNT生成雰囲気が500〜1000℃の生成温度に達するまで昇温する。生成温度に達したら、窒素の供給を止めると同時に、炭素原料供給手段5を起動し、例えばエタノールBを炭素原料供給ルズル16から供給し、雰囲気の温度で瞬間に蒸発して炭化水素を含んだ気体となる。並行して、粉触媒供給手段7を起動し、触媒をステンレス板3の表面に塗布する。その際、十分に暖められたステンレス板表面の鉄触媒と炭化水素ガスが反応してCNT2を還元雰囲気で生成して生長する。ステンレス板3の表面に生長したCNT2は、従動ローラ12の下部に設けられたCNT掻き取り板25で掻き落とされ、下部のCNT回収缶26に回収される。
【0028】
第2の実施形態に係るCNT製造装置は、図4に示すように、内部を還元雰囲気に保持しうる反応容器1と、表面にCNT2が生成される無端状で帯状のステンレス板3と、ヒータ4と、炭化水素供給手段5と、不活性ガス供給手段6と、触媒供給手段7と、CNT掻き取り回収手段8と、ガス排気手段10を備えた構成となっているので、触媒が少なく純度が極めて高いCNT2が得られる。また、本発明によれば、反応容器1内の不活性雰囲気化、昇温、ステンレス板3への鉄触媒の塗布、ステンレス板3表面へのCNT生成、CNT2の掻き落としを順次自動的に行うことができるので、純度および安定性の高い高機能のCNT2を低コストで効率よく量産することができる。
【0029】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係るCNT製造装置の概略図である。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみを説明する。
図5中の符番51は、CNTを生成し、CNT掻き取り後のステンレス板3aを巻き取る駆動巻取りローラである。また、符番52は、例えば塩酸等により表面処理したステンレス板3aが巻回された従動ローラである。表面処理したステンレス板3aは、従動ローラ52から第1の支持ローラ53aを経てCNT生成部でCNTを生成し、CNT掻き取り後、第2の支持ローラ53bを経て駆動巻取りローラ51で巻き取るようになっている。
【0030】
次に、図5のナノカーボン製造装置でのCNTの製造方法について説明する。
まず、装置内部を不活性雰囲気にするために、不活性ガス供給手段6を使って例えば窒素を供給し、内部を窒素雰囲気に置換する。次に、ヒータ制御手段15の電源を入れ、カーボンナノチューブ生成雰囲気が500〜1000℃の生成温度に達するまで昇温する。生成温度に達したら、窒素の供給を止めると同時に、表面処理したステンレス板3aを回転移動させ、炭素原料供給手段5を起動し、例えばエタノールBを炭素原料供給ルズル16から供給し、雰囲気の温度で瞬間に蒸発して炭化水素を含んだ気体となる。並行して、触媒供給手段7を起動し、鉄触媒をステンレス板3aの表面に塗布する。その際、十分に暖められたステンレス板表面の鉄触媒と炭化水素ガスが反応してCNT2を還元雰囲気で生成して生長する。ステンレス板3aの表面に生長したCNT2は、駆動巻き取りローラ51の下部に設けられたCNT掻き取り板25で掻き落とされ、下部のCNT回収缶26に回収される。
【0031】
第3の実施形態に係るCNT製造装置は、図5に示すように、内部を還元雰囲気に保持しうる反応容器1と、表面にCNT2が生成される表面処理されたステンレス板3aと、ヒータ4と、炭化水素供給手段5と、不活性ガス供給手段6と、触媒供給手段7と、CNT掻き取り回収手段8と、ガス排気手段9と、表面処理されたステンレス板3aを巻回する従動ローラ52と、CNT2を生成し掻き取った後のステンレス板3を巻き取る駆動巻取りローラ51を備えた構成となっているので、触媒が少なく純度が極めて高いCNTが得られる。また、本発明によれば、反応容器1内の不活性雰囲気化、昇温、ステンレス板3aへの鉄触媒の塗布、ステンレス板3a表面へのCNT生成、CNT2の掻き落としを順次自動的に行うことができるので、純度および安定性の高い高機能のCNT2を低コストで効率よく量産することができる。
【0032】
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態に係るCNT製造装置の要部のみを示す概略図である。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみを説明する。
同製造装置は、内部を還元雰囲気に保持しうる反応容器(図示せず)と、表面にCNT2が生成される円板形状のステンレス板60と、加熱手段としてのヒータ4と、触媒供給手段の一構成である触媒塗布ノズル23と、炭化水素供給手段の一構成である炭素原料供給ノズル16と、不活性ガス供給手段(図示せず)と、CNT掻き取り回収手段を構成するCNT掻き取り板22と、ガス排気手段(図示せず)と、ステンレス板60をゆっくり回転させる回転手段61を備えている。同製造装置は、縦型掻き取り方式を採用している。
【0033】
回転手段61は、一端が複数のスポーク62を介してステンレス板60の内側端部に連結する主軸63と、この主軸63を矢印Fのように回転させる駆動モータ64とから構成されている。図中の符番65a,65bは断熱材(図示せず)を貼った仕切り板であり、ステンレス板60の上部を領域A,Aに区切っている。一方の領域Aには炭素原料供給ノズル16が配置され、例えばエタノールBがステンレス板60上に供給される。他方の領域Aのステンレス板60の上部にはロール状の研磨ブラシ66が設けられている。また、領域Aでは、研磨後のステンレス板60の表面に粉触媒例えば鉄触媒Dを供給するように触媒塗布ノズル35が配置されている。なお、図中の符番67はCNT生成部を示し、符号Sは洗浄面を示す。また、周辺部品である研磨ブラシ66,触媒塗布ノズル23,炭素原料供給ノズル16及びCNT掻き取り板22等は全て筐体18に囲まれ、外気と遮断して還元雰囲気を維持できるように構成されている。
【0034】
次に、図6のCNT製造装置での製造方法を説明する。
まず、装置内部を不活性雰囲気にするために、筐体18内に窒素供給手段を用いて例えば窒素を供給し、内部を窒素雰囲気に置換する。次に、駆動モータ64を矢印Fの方向に回転させる。次に、ヒータ4の電源を入れ、ステンレス板60をカーボンナノチューブ生成雰囲気が500〜1000℃の生成温度に達するまで昇温する。生成温度に達したら、窒素の供給を止めると同時に、炭素原料供給手段を起動し、例えばエタノールBを炭素原料供給ルズル16から供給する。エタノールは、雰囲気の温度で瞬間に蒸発して炭化水素を含んだ気体となる。
【0035】
並行して、粉触媒供給手段を起動し、粉触媒Dを触媒塗布ノズル23よりステンレス板60の表面に塗布する。その際、十分に暖められたステンレス板60表面の鉄触媒と炭化水素ガスが反応してCNT2を還元雰囲気で生成して生長する。ステンレス板60の表面に生長したCNT2は、CNT掻き取り板25で掻き落とされ、下部のCNT回収缶26に回収される。ステンレス板60は仕切り板65aを通り過ぎ、冷却された後に研磨ブラシ66で磨き、不純物を除去する。その後、ステンレス板60は、仕切り板65bを通過し再度CNT2の生成を繰り返す。
【0036】
第4の実施形態に係るナノカーボン製造装置は、内部を還元雰囲気に保持しうる反応容器(図示せず)と、表面にCNT2が生成される円形状のステンレス板60と、ヒータ4と、触媒供給手段と、炭化水素供給手段と、不活性ガス供給手段と、CNT掻き取り回収手段と、ガス排気手段と、ステンレス板60を回転駆動する回転手段61とを備えた構成となっているので、触媒が少なく純度が極めて高いCNTが得られる。また、本発明によれば、反応容器内の不活性雰囲気化、昇温、ステンレス板60への鉄触媒の塗布、ステンレス板60表面へのCNT生成、CNT2の掻き落としを順次自動的に行うことができるので、純度および安定性の高い高機能のCNT2を低コストで効率よく量産することができる。
【0037】
なお、第4の実施形態では、1枚の円形のステンレス板を用いてCNTの生成を行う場合について述べたが、これに限らない。例えば、複数枚の円形のステンレス板を一定の間隔をおいて主軸の軸方向(Y軸方向)に平行に配置して主軸により回転可能にするとともに、各ステンレス板毎に研磨ブラシ,触媒供給手段,炭素原料供給手段,加熱手段等を配置することにより、1枚のステンレス板を用いる場合に比べてよりCNTの量産化が可能となる。
【0038】
(第5の実施形態)
図7は、本発明の第5の実施形態に係るCNT製造装置の要部のみを示す概略図である。但し、図1,図6と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみを説明する。
第5の実施形態に係るナノカーボン製造装置は横型掻き取り方式を採用し、図6の場合と比べ、円形のステンレス板60を縦型にし、触媒塗布ノズル23からステンレス板60に横方向から鉄触媒を噴霧するようにした点が異なり、他は図6の場合と同様である。また、CNT2の製造の仕方も第4の実施形態で述べたとおりである。
【0039】
第5の実施形態に係るCNT製造装置によれば、第4の実施形態と同様な効果が得られる。また、第5の実施形態の場合も、第4の実施形態と同様に、複数枚の円形のステンレス板を一定の間隔をおいて主軸の軸方向(X軸方向)に平行に配置して主軸により回転可能にするとともに、各ステンレス板毎に研磨ブラシ,触媒供給手段,炭素原料供給手段,加熱手段等を配置することにより、1枚のステンレス板を用いる場合に比べてよりCNTの量産化が可能となる。
【0040】
(第6の実施形態)
図8及び図9は、本発明の第6の実施形態に係るCNT製造装置の概略図である。ここで、図8は同製造装置の全体図、図9は同製造装置の一構成である回転軸及び掻き取り羽根の形状を拡大して示す概念図である。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみを説明する。
【0041】
図中の符番71は、回転しないステンレス製の円筒状縦型反応容器である。この反応容器71の内側には、ステンレス製の円筒72が反応容器71と同軸状に固定して配置されている。円筒72の内側には、回転軸73により回転する掻き取り羽根74が設けられている。この掻き取り羽根74は、回転軸73に連結した駆動源としての駆動モータ75により矢印Fの方向に回転し、円筒72の内壁に生成されるCNT2を掻き取るように配置されている。掻き取り羽根74は、図9に示すように「ハの字」形状になっており、鉄触媒が円筒72の内面に効率よく接触し、CNT2の生成を促進する。反応容器71の上部には回転軸73を通すための開口穴が設けられ、この開口穴部分の回転軸73と反応容器71間には反応容器内を外気と遮断して還元雰囲気を保持するためのリング状のシール材76が設けられている。
【0042】
次に、図8のCNT製造装置での製造方法を説明する。
まず、装置内部を不活性雰囲気にするために、不活性供給手段を用いて例えば窒素を供給し、内部を窒素雰囲気に置換する。次に、ヒータ4の電源を入れ、円筒72が500〜1000℃のカーボンナノチューブ生成温度に達するまで昇温する。生成温度に達したら、窒素の供給を止めると同時に、炭素原料供給手段を起動し、例えばエタノールを炭素原料供給ルズルから供給する。エタノールは、雰囲気の温度で瞬間に蒸発して炭化水素を含んだ気体となる。
【0043】
並行して、触媒供給手段を起動し、鉄触媒を触媒塗布ノズルより容器71の内側の円筒72内に供給する。その際、十分に暖められたステンレス製の円筒72の内表面の鉄触媒と炭化水素ガスが反応してCNT2を還元雰囲気で生成して生長する。
CNT2が十分成長したら駆動モータ75を矢印Fの方向に回転させ、円筒72の内面に生長したCNT2を掻き取り羽根74で掻き落とし、下部のCNT回収缶26に回収される。なお、カーボン製造装置内で発生するガスは、ガス排気手段8で水封を介してガスが逆流しないように排気される。
【0044】
第6の実施形態に係るCNT製造装置は、図8に示すように、内部を還元雰囲気に保持しうる円筒状縦型反応容器71と、この反応容器71内に配置されたステンレス製の円筒72と、この円筒72内に配置されて円筒内壁に生成されるCNT2を掻き取る掻き取り羽根74と、この掻き取り羽根74を駆動する駆動モータ75と、ヒータ4と、触媒供給手段と、炭化水素供給手段と、不活性ガス供給手段と、ガス排気手段8とを備えた構成となっているので、純度および安定性の高い高機能のCNT2を低コストで効率よく量産することができる。また、本発明によれば、反応容器71内の不活性雰囲気化、昇温、円筒内への鉄触媒の供給、円筒72内壁へのCNT生成、CNT2の掻き落としを順次自動的に行うことができるので、純度および安定性の高い高機能のCNT2を低コストで効率よく量産することができる。更に、CNT2の生成量が減少して生成能力が落ちた場合には、反応容器71内の円筒72のみを取り替えれば新たにCNT2を生成することができ、装置のメンテナンスを低コストに抑えることができる。
【0045】
ところで、第6の実施形態において、前記円筒は筒状である場合について述べたが、これに限らず、例えば縦方向に2分割された断面形状が半円の半円筒部材を一体化して筒状とした円筒を用いてもよい。
【0046】
(第7の実施形態)
図10は、本発明の第7の実施形態に係るCNT製造装置の概略図である。但し、図1,8と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみを説明する。
図10のCNT製造装置は、図9と比べ、内部を還元雰囲気に保持しうるステンレス製の円筒81のみを用いる点が異なり、この円筒81の内壁にCNTを生成することを特徴とする。その他の構成部材及び製造方法は、図8の場合と同様である。
【0047】
第7の実施形態に係るCNT製造装置は、内部を還元雰囲気に保持しうるステンレス製の円筒81と、この円筒81内に配置されて円筒内壁に生成されるCNT2を掻き取る掻き取り羽根74と、この掻き取り羽根74を駆動する駆動モータ75と、ヒータ4と、触媒供給手段と、炭化水素供給手段と、不活性ガス供給手段と、ガス排気手段8とを備えた構成となっているので、純度および安定性の高い高機能のCNT2を低コストで効率よく量産することができる。また、本発明によれば、円筒81内の不活性雰囲気化、昇温、円筒81内への鉄触媒の供給、円筒81内壁へのCNT生成、CNT2の掻き落としを順次自動的に行うことができるので、純度および安定性の高い高機能のCNT2を低コストで効率よく量産することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…反応容器、2,47…カーボンナノチューブ(CNT)、3,41…ステンレス板、4…ヒータ(加熱手段)、5…炭素原料供給手段、6…不活性ガス供給手段、7…触媒供給手段、8…CNT掻き取り回収手段、9…磨き洗浄手段、10…ガス排気手段、11…駆動ローラ、12,52…従動ローラ、13…耐熱材、14…断熱材、15…ヒータ制御手段、16…炭化水素供給ノズル、17…炭素原料収容タンク、18…筐体、19…保温材、20…不活性ガス供給ノズル、21…不活性ガス収容タンク、22…塗布ローラ、23…触媒供給ノズル、24…触媒収容タンク、25…CNT掻き取り板、26…CNT回収缶、27…排気ノズル、31…研磨ブラシ、32…洗浄液供給ノズル、37…洗浄液供給ノズル、39…洗浄液供給手段、40…覗き窓、51…駆動巻き取りローラ、53a,53b…支持ローラ、61…駆動手段、62…スポーク、63…主軸、64,75…駆動モータ、65a,65b…仕切り板、66…研磨ブラシ、67…CNT生成部、71…円筒状縦型反応容器、72,81…円筒、73…回転軸、74…掻き取り羽根、76…シール材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を還元雰囲気に保持しうるとともに,外気と遮断可能な円筒状縦型反応容器と、この縦型反応容器内に配置されたステンレス円筒と、このステンレス円筒の内壁に生成されるカーボンナノチューブを掻き取る螺旋状の掻き取り羽根と、この掻き取り羽根を駆動する駆動源と、前記ステンレス円筒を加熱する加熱手段と、ステンレス円筒内に触媒粉を供給する触媒供給手段と、縦型反応容器内に炭化水素を供給する炭化水素供給手段と、縦型反応容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、ステンレス円筒に生成されたカーボンナノチューブを回収する回収手段と、縦型反応容器内のガスを排気するガス排気手段とを具備することを特徴とするカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項2】
前記掻き取り羽根は、主軸を中心に下部方向に末広がりのハの字形状に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項3】
内部を還元雰囲気に保持しうる反応容器と、この反応容器内に設けられ,表面にカーボンナノチューブが生成される円板形状のステンレス板と、このステンレス板を駆動する駆動手段と、前記ステンレス板を加熱する加熱手段と、ステンレス板表面に触媒粉を供給する触媒供給手段と、反応容器内に炭化水素を供給する炭化水素供給手段と、反応容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、前記ステンレス板に生成されたカーボンナノチューブを回収する掻き取り回収手段と、カーボンナノチューブを掻き取った後のステンレス板を磨き洗浄する磨き洗浄手段と、反応容器内のガスを排気するガス排気手段とを具備することを特徴とするカーボンナノチューブ製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−46426(P2012−46426A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265736(P2011−265736)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2008−174929(P2008−174929)の分割
【原出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】