説明

ナノシリンダー−修飾された表面

本発明は、生体分子相互作用を介して表面に付着されたカーボンナノチューブのようなナノシリンダーを有する表面、ナノシリンダー-修飾された表面の集積体から作製された装置、及びナノシリンダーで修飾された表面の作製法を提供する。相補的オリゴヌクレオチド配列のハイブリダイゼーション及び受容体-リガンド相互作用を含む、様々な生体分子相互作用を用い、ナノシリンダーを表面へ付着することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の技術分野]
本発明は、生体分子相互作用を介してナノシリンダーで修飾された表面、ナノシリンダー-修飾された表面から製造された集積体、及びナノシリンダー-修飾された表面の製造法に関する。
【0002】
[発明の背景]
近年、電子装置、電界放出給源、及び化学的センサーにおけるカーボンナノチューブ及び関連したナノ-サイズの物体の使用に、多大な関心が集まっている。最近の関心の理由は、カーボンナノチューブは、それらの強度(それらは鋼鉄よりもより強力である)、高い熱及び電気伝導度、並びに様々な生体分子との生体適合性を特徴とするという事実に由来している。これらの特徴は、カーボンナノチューブを、ナノ電子回路を含む、ありとあらゆる商業的用途に良く適したものにしている。
【0003】
現在ナノチューブは、バッチプロセッシング又は触媒蒸着により調製することができる。両方法とも、個々の直径及びカイラリティによって左右されるチューブ毎に異なる特異的特性を伴う金属チューブ及び半導体チューブの混合物を生じる。多くの用途におけるナノチューブの使用は、再現可能な電気特性を有することに大きく左右される。例えば、ナノチューブ-ベースのトランジスタの組立てにおいて、チューブは、金属性又は半導体性であるかを制御することは重要である。現時点で、ナノチューブは、現場で成長しその後望ましい電気特性について個別に試験されるか、又は他方でこれらは蒸着され、チューブの全域に電圧を印加することにより、望ましくない特性を有するものが選択的に除去されるかのいずれかである。これらはかなりの時間を要し、その結果大規模生産に余り適していないという欠点により、これらの方法は悩まされている。同時に、バイオテクノロジー産業は、広範囲の生体分子を伴う表面を特異的にパターン化する能力を開発している。これらの"バイオチップ"は典型的には遺伝子スクリーニングに使用される。
【0004】
加えて、バイオセンシング用途における、並びにナノメーター-サイズの物体の集積を制御するために生体分子相互作用の選択性を使用する、ナノスケール集積を実行する可能性のある手段として、生体分子とのナノチューブの付加物の使用に関する興味が最近明らかになっている。これまでの研究は、主に非-共有的相互作用の使用に焦点を当ててきた。残念ながら、典型的にはナノチューブの様々な巨大分子又はポリマーによるコーティングが関与している非-共有的機能化は、ナノチューブのかなりの長さにわたりナノチューブの構造を破壊することがあり、このことはナノチューブの電気的及び化学的特性に重大な影響を及ぼす。
【0005】
[発明の概要]
本発明は、生体分子相互作用を介してナノシリンダーで修飾された表面、生体分子相互作用を介してつながれたナノシリンダー集積体及び装置、並びにそれらの製造法を提供する。
本願明細書において使用される用語ナノシリンダーは、ナノチューブ及びナノロッドの両方を意味するものとして定義される。用語ナノシリンダーは更に、一般によく定義されたシリンダー状(すなわち、ロッド-様又はチューブ-様)の形状寸法を有するが、ナノロッド及びナノチューブとはそれらの縦横比が異なる別のナノメーター-サイズの物体(典型的にはこれらの別のナノシリンダーはナノロッドよりもより長く、時にはより狭いことがある。)を含むと定義される。例えば用語ナノシリンダーは、ナノワイヤ、ナノフィラメント、及びナノウィスカも意味する。用語ナノシリンダーの使用は、そのロッド-様ナノメーター-サイズの物体は、円形の断面を有さなければならないという意味を含むことを意図するものではなく、他の断面形が適することがある。
【0006】
その名前が示すように、ナノシリンダーは、ナノメーター-サイズの断面寸法、時には更にナノメーター-サイズの長さ寸法を有することを特徴としている。例えば一部のナノシリンダーは、1マイクロメーター又はそれよりも短い直径を有する。ナノシリンダーは、カーボン、金及び銀を含むがこれらに限定されるものではない様々な材料で製造することができる。当業者が認めるように、適当なナノシリンダーの選択は、意図された用途に大きく左右されるであろう。
【0007】
本発明のひとつの局面は、表面に結合した1つ又は複数の生体分子と、ナノシリンダーに結合した1つ又は複数の相補的生体分子の間の生体分子相互作用を介して表面に付着した1個又は複数のナノシリンダーを有する表面を提供する。得られる集積体は、センサー及びナノ電子回路を含む電子装置などの、広範な用途において有用である。本発明の集積体において、これらの生体分子は、少なくとも二つの役割を果たす;第一に、これらは、ナノシリンダーの表面への制御された付着を提供するために役立ち、かつ第二に、場合によってはこれらの生体分子は、ナノシリンダーの有機溶媒などの溶媒中の溶解度を増加する。ナノシリンダーの小さい縦横比は、ほとんどの溶媒中で低い溶解度を提供し、このことはナノスケール集積体におけるナノチューブ及びナノロッドなどのナノシリンダーを使用する先の試みを妨害し、並びにナノシリンダーを、ほとんどの溶媒に容易に溶解するナノ球体、ナノ結晶などの他のナノ-サイズの物体とは区別するので、第二の役割は重要である。
【0008】
ある態様において、生体分子は、ナノシリンダーに共有的に連結されている。共有的連結は、ナノシリンダー-生体分子付加物を化学的及び熱的に安定とし、並びにわずかな特異的位置での選択的修飾は、ナノシリンダーの構造的及び電子的特性の破壊を最小化することができるので、これは利点である。
ナノシリンダー-修飾された表面のひとつの態様は、(a)表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する表面を持つ基板;及び、(b)ナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子を有するナノシリンダーを含み、ここでこのナノシリンダーは、基板表面上の少なくとも1つの生体分子と、ナノシリンダー上の少なくとも1つの相補的生体分子の間の生体分子相互作用を介して、基板表面に付着される。
【0009】
表面上にナノシリンダーを集積するこの方法のひとつの重要な利点は、表面上のナノシリンダーの位置及び整列(alignment)の両方を、各々、表面及びナノシリンダー上の、生体分子及びそれらの相補的生体分子パートナーの選択的配置により制御することができることである。制御の程度は、ナノシリンダー上のある位置に連結された所定の生体分子が、表面上の予め決定された位置でその相補的生体分子とのみ結合することを確実にするために、特異的結合を受ける相補的生体分子対を使用することにより増強することができる。基板上のナノシリンダーの配置を制御する能力は、ナノシリンダーが、予め定められたデザインで互いに相対的に並べられているパターン化された表面の製造を可能にする。このパターン化された表面は、ナノ電子回路を含む多くの用途にとって有用である。加えて表面上のナノシリンダーの制御された集積体は、相補的生体分子対間の生体分子相互作用により結合した1個又は複数のナノシリンダー及び1個又は複数の表面の集積体から構築された装置を含む、様々な電子装置及びセンサーの製造を可能にする。
【0010】
バイオスイッチ及びナノシリンダーブリッジは、本発明に従い製造されるナノシリンダー集積体のふたつの例である。
検体の存在を検出するための生体分子センサーとして作用するバイオスイッチのひとつの態様は、2個の電極及びナノシリンダー、例えばナノチューブから構築することができる。より詳細に述べると、バイオスイッチは、(a)電極に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第一の電極;(b)電極に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第二の電極、ここで第一及び第二の電極は、ギャップにより分離されている;(c)ナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子を有するナノシリンダー;並びに、(d)第一及び第二の電極の間のインピーダンスを測定するための第一及び第二の電極に連結された検出器を含む。この構造において、第一の電極に結合した少なくとも1つの生体分子及びナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子の一方は、それらと第二の電極に結合した少なくとも1つの生体分子の間の検体と結合することが可能であり、並びにナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子の他方は、それらの間の検体と結合することが可能であり、その結果ナノシリンダーは、第一及び第二の電極の間のギャップを架橋し、かつ第一及び第二の電極の間の電気インピーダンス(すなわち、抵抗、キャパシタンス、もしくはインダクタンス、又はそれらの組合せ)を修飾する。
【0011】
この態様において、基板表面上の生体分子、ナノシリンダー上の生体分子、及び検体は、接続後に表面と接触している又は表面の非常に近傍にあるナノ構造の存在が、このシステムのAC導電率(すなわち、ACインピーダンス)を変化するよう電極間に形成されるように選択されなければならない。この構造はスイッチとして作用する。検体の非存在下で、このシステムは、第一のインピーダンスを有するが、一旦検体がこのシステムに曝されると、これは電極及びナノシリンダー上の生体分子の間を結合し、システムのインピーダンスを変化する。スイッチの閉じは、検体の存在下で発生するインピーダンスの変化を測定することにより検出することができる。この態様において、電極とナノシリンダーの間の各接合点は、本質的にコンデンサを形成する。その結果、全体のスイッチは導電ワイヤにより連結された、本質的に連続する2個のコンデンサである。
【0012】
本発明の別の態様は、ふたつの表面を接続するナノブリッジを提供する。現在典型的にはカーボンナノチューブにより製造されるこのようなブリッジは、表面上での直接的ナノチューブの成長により構築される。しかしこのプロセスは不充分であり、ブリッジが形成されることが常に保証されるものでもない。本発明のナノブリッジは以下を含む:(a)表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第一の表面;(b)表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第二の表面;及び、(c)ナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子有するナノシリンダー、ここでナノシリンダー上の少なくとも2つの生体分子の一方は、第一の表面上の少なくとも1つの生体分子に結合され、及びナノシリンダー上の少なくとも2つの生体分子の他方は、第二の表面上の少なくとも1つの生体分子に結合され、第一の表面と第二の表面の間にブリッジを形成している。
【0013】
ナノブリッジの組立てにおいて、ナノシリンダー上の少なくとも2つの生体分子の一方は、第一の表面に結合した生体分子に特異的に結合するが、第二の表面に結合した生体分子には結合せず、並びにナノシリンダー上の少なくとも2つの生体分子の他方は、第二の表面に結合した生体分子には特異的に結合するが、第一の表面に結合した生体分子には結合しないことは利点である(しかし必ずしもではない)。この構成は、ナノシリンダーは、一方の表面又は他方のみに結合するのではなく、そのふたつの表面を架橋することを確実にする。
【0014】
ナノチューブ及びナノロッドは、本発明における用途に良く適したナノシリンダーの例である。カーボンナノチューブは、それらの強度並びに熱及び電気伝導率のために、有利に使用することができるナノチューブの具体例である。カーボンナノチューブは周知であり、市販されており、これらのナノチューブ(時にバッキーチューブと称される)は、先端で付着した六角形グラファイト分子からなる長く、円筒形のカーボン構造である。銀及び金ナノロッドを含むがこれらに限定されるものではない金属ナノロッドも、それらの熱及び電気伝導率のために、有用である。加えて異なる生体分子により選択された位置でそれらを選択的に機能化することができるような内部構造を伴う金属ナノロッドを製造することができる。
【0015】
DNA分子、又はRNA分子のような他のオリゴヌクレオチドは、本発明において表面及びナノシリンダーに結合することができる生体分子の例である。このデザインにおいて、ナノシリンダー上のオリゴヌクレオチドは、表面上のオリゴヌクレオチドと相補的でありかつハイブリダイズすることが可能であるヌクレオチド配列を有する。結合のパートナーとしての相補的オリゴヌクレオチド対の使用は、ハイブリダイゼーションの選択性及び可逆性を利用することにより、表面上のナノシリンダーの位置及び整列をユーザーが制御することを可能にし、並びに多種多様な表面及びナノスケールの物体に対する異なるオリゴヌクレオチドをデザインし、組立て、及び連結する能力を提供する。
【0016】
受容体及びそれらの対応するリガンドは、本発明において表面及びナノシリンダーに結合することができる生体分子の別の例である。このシステムにおいて、ナノシリンダーを表面に付着する生体分子相互作用は、リガンド-受容体相互作用である。本発明において使用することができる受容体-リガンド対のひとつの具体例は、ビオチン-アビジン(又はビオチン-ストレプトアビジン)対である。このデザインにおいて、ビオチン分子は、ナノシリンダーに共有的に連結され、及びアビジン(又はストレプトアビジン)分子は、典型的には別のビオチン分子を介して、表面に結合され得る。ビオチンがアビジン(又はストレプトアビジン)に曝された時に生じるタンパク質-リガンド結合は、強力であり、かつナノシリンダーの表面への不可逆的結合につながる。
【0017】
本発明の別の局面は、表面上にナノシリンダーを選択的に集積し、先に説明されたもののようなナノシリンダー-修飾された表面を作製する方法を提供する。この方法は、前述の種類の、生体分子により機能化された表面を、基板表面上の生体分子に結合することが可能である1つ又は複数の生体分子にそれら自身結合した1個又は複数のナノシリンダーへ、露出し、その結果この表面上の生体分子及びナノシリンダー上の相補的生体分子は、生体分子相互作用を介して、基板表面にナノシリンダーを付着することにより実行することができる。
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、添付図面と共に考慮し、下記の詳細な説明から明らかであろう。
【0018】
[好ましい態様の詳細な説明]
本発明は、ナノシリンダーで修飾された表面、ナノシリンダー-修飾された表面から製造された電子装置及びセンサー、並びにナノシリンダー-修飾された表面の製造法を提供する。
ナノシリンダー-修飾された表面は、表面に結合した生体分子と、ナノシリンダーに結合した相補的生体分子の間の生体分子相互作用を介して、1つ又は複数の表面に結合した1つ又は複数のナノシリンダーから製造される。表面上のナノシリンダーの配列は、ナノシリンダー及び表面上の生体分子の選択的配置により、並びに表面上の生体分子とナノシリンダー上の生体分子の間の生体分子相互作用の特異性により、制御することができる。このデザインは、表面上のナノシリンダーの配列の制御及び柔軟性を提供し、広範な用途に有用なナノシリンダー-修飾された表面を製造する。
【0019】
ある態様において、ナノシリンダーに結合された生体分子は、共有的連結により結合される。生体分子をナノシリンダーに係留するための共有結合の使用は、化学的及び熱的に安定しており、アクセス可能であるナノシリンダー-生体分子付加物を作製する。加えて、生体分子とナノシリンダーの間の共有的連結の使用は、ナノシリンダーの電子特性に対する機能化の作用を低下する付着部位への構造的破壊を局在化する。これは、"欠陥のない(defect-free)"HipCOナノチューブ(Carbon Nanotechnologies, Inc.)の酸化は、van Hove特徴を維持することを示す最近の報告により裏付けられており、これにより電子特性は、酸化された表面部位の形成により比較的攪乱されないことを示している。J. Am. Chem. Soc., 124,12418-12419 (2002)参照。
【0020】
本発明のナノシリンダー-修飾された基板を適用することができるひとつの重要な領域は、ナノシリンダーは、基板上に適宜整列されていなければならないナノ電気回路である。導電性及び半導体であるナノチューブ及びナノロッドは、これらのナノ電気回路におけるナノシリンダーとしての使用に良く適している。バッキーチューブとしても知られているカーボンナノチューブは、表面を修飾するために有利に使用されるナノチューブの例である。カーボンナノチューブは、高い強度並びに高い熱伝導性及び導電性を特徴とする。これらの構造は、当該技術分野において周知であり、典型的には高圧一酸化炭素(HipCO)プロセス、パルスレーザー蒸発法、又はアーク放電法により製造される。カーボンナノチューブは、単層ナノチューブ(SWNT)又は多層ナノチューブ(MWNT)であってよい。両方の型とも、本発明における使用に適している。カーボンナノチューブは、ナノチューブの直径及びカイラル性に応じ、金属又は半導体のいずれかであってよい。
【0021】
ナノロッドは、本発明での使用に良く適している別の群のナノシリンダーである。ナノチューブ同様、ナノロッドは、半導体性又は導電性ナノロッドであってよい。ナノロッドは、シリコン及びインジウムリンなどの半導体材料から製造されたナノロッドを含む。ナノロッドは更に、金属ナノロッドを含み、これは金及び/又は銀で製造されたナノロッドを含むがこれらに限定されるものではない。他の適当な金属ナノロッドは、鉄、コバルト、白金、パラジウム、モリブデン及び銅から製造することができる。金属ナノロッドは、銀及び金など、ふたつの異なる材料(すなわち、第一の金属及び第二の金属)から構築することができるという利点を、金属ナノロッドは有する。得られるナノロッドは、第一の金属の少なくともひとつの領域及び第二の金属の少なくともひとつの領域を含み、並びにこれらの少なくともふたつの領域は選択的に機能化することができる。例えばこれらの金属は、一方の金属は、反応条件の所定のセット下で機能化され、他方の金属はそうではないように選択することができる。あるいは第一及び第二の金属は、これらは、異なる機能化反応を受け、これにより第一及び第二の領域に対する異なる生体分子の機能性を提供するように選択することができる。
【0022】
本発明のひとつの態様に従い、ナノシリンダーは、表面に結合した生体分子とナノシリンダーに共有的に連結された相補的生体分子の間の生体分子相互作用を介して、表面に付着される。表面に結合した生体分子は、1つ又は複数の共有的及び非共有的連結、又はそれらの組合せを介して結合することができる。例えば生体分子は、それ自身表面へ共有的に連結された連結基又は分子との非共有的相互作用により表面に結合することができる。
【0023】
ひとつ又は複数の生体分子は、その構造の外周に沿って及び/又はその構造の末端で、ナノシリンダーへ結合することができる。しかしナノシリンダーに結合した生体分子の数及びナノシリンダー上に共有的連結を作成するために使用される化学は、ナノシリンダーの構造的特性及び電気的特性に対する作用が最小化されるように選択されなければならない。カーボンナノチューブは、それらの開放末端の及びそれらの外周に沿った構造欠陥(structural defect)上のカルボン酸基の存在により特徴付けられることが多い。従ってカーボンナノチューブがナノシリンダーとして使用される場合、生体分子は、先端を誘導体化し及び誘導体化された先端を生体分子にカップリングすることにより、先端及び/又は構造欠陥へと付着することができる。カルボン酸基は様々な周知の反応により誘導体化され得るので、先端を様々な生体分子で機能化することは可能である。生体分子によりカーボンナノチューブを機能化するひとつの方法は、Nature, 394,52-55 (1998)に記載されており、この論文は本願明細書に参照として組入れられている。カーボンナノチューブを生体分子で共有的に機能化する他の方法の例は、下記の「実施例」の項に示されている。
【0024】
ナノシリンダーは、1つ又は複数の同じ生体分子で修飾されるか、又は各々それに特異的に結合する異なる相補的生体分子を有する2つ又はそれよりも多い異なる生体分子により選択的に修飾されてよい。後者のデザインにおいて、表面上又は表面間のナノシリンダーの配置及び配向は、ナノシリンダー及び表面上の特異的結合対の各メンバーの配置により制御することができる。
表面上の1個又は複数のナノシリンダーの配置、整列及び/又は配向を制御する能力のために、ユーザーは、ナノシリンダーが表面及びナノシリンダーの上の相補的生体分子対の配置及び特異性により予め決定されているデザイン中に配列されるようにパターン化された表面を作成することが可能である。このようなパターン化された表面は特に、ナノ電子回路の領域において価値がある。
パターン化された表面の作成に加え、ナノシリンダーの制御された集積体を用い、1個又は複数のナノシリンダーを、1個又は複数の表面に、生体分子相互作用を介して付着することにより、集積体及び装置を作製することができる。例えば、以下により詳細に考察されるように、ナノチューブの選択的修飾は、ふたつの表面間にブリッジを形成するために使用することができる。
【0025】
ナノシリンダーの機能化に使用される生体分子は、表面上のその相補的生体分子に結合するその能力を失うことなくナノシリンダーに結合することができるいずれかの生体分子を含むことができる。同様に、表面を機能化するために使用される生体分子は、ナノシリンダー上のその相補的生体分子に結合するその能力を失うことなく、その表面に結合することができるいずれかの生体分子を含むことができる。本願明細書において使用される用語"相補的生体分子"は、互いに結合することが可能である任意の生体分子対を対象としている。相補的生体分子対の間の結合は、特異的、半-特異的、又は非-特異的であってよい。しかし、多くの適用において、特異的又は半-特異的結合をする相補的生体分子対が好ましく、その理由はこれらは、表面上もしくは表面間のナノシリンダーの配置、配向、及び整列が、より柔軟でありかつ制御することができるからである。これらの生体分子は、それを介して相補的生体分子と相互作用する、単独の結合部位を有するか、又は、それらを介して1つ又は複数の相補的生体分子と相互作用する複数の結合部位を有することができる。
【0026】
本発明において使用するための生体分子及び相補的生体分子は、当該技術分野において周知である。適当な生体分子及び相補的生体分子は、DNA及びRNAの両配列を含むオリゴヌクレオチド配列、アミノ酸配列、タンパク質、タンパク質断片、リガンド、受容体、受容体断片、抗体、抗体断片、抗原、抗原断片、酵素及び酵素断片からなる群より独立して選択される生体分子を含むが、これらに限定されるものではない。従って相補的生体分子対間の生体分子相互作用は、受容体-リガンド相互作用(タンパク質-リガンド相互作用を含む)、相補的オリゴヌクレオチド配列間のハイブリダイゼーション(例えば、DNA-DNA相互作用又はDNA-RNA相互作用)、並びに抗体-抗原相互作用を含むが、これらに限定されるものではない。
本発明のひとつの例証的態様において、基板表面に結合した生体分子は、タンパク質であり、及びナノシリンダーに共有的に連結された相補的生体分子は、このタンパク質との特異的に結合することが可能なリガンドである。例えばこのタンパク質はアビジン又はストレプトアビジンであり、及びリガンドはビオチンであってよい。ビオチンのアビジンとの相互作用は、最大であることが知られた結合定数のひとつを有する(1015M-1)。この大きい結合定数は、強固なナノスケール構造の組立てに有用な、ビオチン-アビジン相互作用を生じる。
【0027】
ナノシリンダーが付着された表面は、そのシステムの意図された用途に応じて、絶縁表面、半導体表面、又は導電性表面であってよい。絶縁表面の適当な例は、ガラス表面を含むが、これらに限定されるものではない。半導体表面の適当な例は、シリコン表面を含むが、これらに限定されるものではない。導電性表面の適当な例は、金属表面(金又は銀表面など)、ガラス質カーボン表面、及びダイヤモンド薄膜表面を含むが、これらに限定されるものではない。
これらのナノシリンダー-修飾された表面は、集積体に組込み、様々な電子装置及びセンサーを提供することができる。ふたつのそのような装置はバイオスイッチとナノブリッジであり、これらは以下に詳細に説明される。
【0028】
生体分子センサー又は"バイオスイッチ"は、下記の構成部品から作成することができる:(a)電極に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第一の電極;(b)電極に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第二の電極であって、ここで第一及び第二の電極はギャップにより隔てられているもの;(c)ナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子を有するナノシリンダー;並びに、(d)第一及び第二の電極の間のインダクタンスを測定するための、第一及び第二の電極に接続された検出器。この構成において、第一の電極に結合した生体分子及びナノシリンダーに結合したひとつの生体分子は、それらの間の検体に結合し、第一の接続を形成する。同様に、第二の電極に結合した生体分子及びナノシリンダーに結合したひとつの生体分子は、それらの間の検体に結合し、第二の接続を形成し、ここでこのナノシリンダーは、第一及び第二の電極間のギャップを架橋し、並びに第一及び第二の電極の間の電気的接続を完成し、更にここで近接して付着したナノシリンダーの存在は、そのシステムのインダクタンスに測定可能な変化を生じる。
一部の態様においては、第一及び第二の電極は、同じ生体分子により機能化され、他方で、第一及び第二の電極は、異なる生体分子により各々機能化される。
【0029】
導電性又は半導体ナノチューブ及びナノロッド、並びに特にカーボンナノチューブは、本発明のバイオセンサーにおいて使用することができるナノシリンダーの例である。ナノシリンダーが有用であり、その理由は、これらは非常に長く(場合によっては、長さが100μm、200μm、又はそれよりも長いことさえもある)、電極それら自身をこのナノシリンダーよりもはるかに小さい寸法にすることができる(例えば、長さ約10μm未満)からである。そのような小さい寸法の電極の作製に関して、標準リソグラフィー技術が良く知られている。これは、ふたつの電極が、同じ生体分子により機能化される場合に、ナノシリンダーが、単に一方又は他方に付着するのではなく、ふたつの電極を橋渡しするように架橋することを確実にすることを助ける。このデザインにおいて、ナノシリンダーは、2倍多くの生体分子と相互作用することができるという理由で、2倍の結合エネルギーを有する。
ひとつの態様において、バイオセンサーは、受容体-リガンド相互作用を用い、タンパク質検体の存在を検出するために使用することができる。このデザインにおいて、関心のあるタンパク質検体に結合することが可能であるリガンドは、ナノシリンダー及び電極に結合する。選択された検体は、ナノシリンダー上のリガンドと電極上のリガンドに同時に結合し、ナノシリンダーと電極の間に接続を形成することが可能であるタンパク質である。電極及びナノシリンダー上のリガンドは、タンパク質検体上の利用可能な結合部位の数及び種類に応じて同じ又は異なってよい。
【0030】
このようなセンサーのひとつの具体例は、ふたつの電極及びナノシリンダーへのビオチンリガンドの結合により作製される。アビジン(又はストレプトアビジン)は、ビオチンとの4個の結合部位を有し、その結果両方の上のビオチン分子への同時結合により、ナノシリンダー及び電極間に接続を形成することが可能であるので、この構成は、所定の試料中のアビジン(又はストレプトアビジン)の存在の検出が可能である。図4に示されたように、この態様において、検体又は標的分子"A"(例えばアビジン)の存在が、検出される。ふたつの電極を伴う表面は、相補的分子"B"(例えばビオチン)により修飾される。カーボンナノチューブは、相補的分子"B"によっても修飾される。標的分子の存在は、表面上及びナノチューブ上の"B"分子に結合し、サンドイッチ型構造を形成するであろう。標的分子"A"は、ナノチューブ及び表面に連結するために、少なくとも2個の結合部位を有さなければならない。この分子アビジンは、4個の結合部位を有することが知られており、従ってこの基準に合致する。
【0031】
図5は、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションを使用し、バイオスイッチを作製する別の具体例を示している。この態様において、標的DNAオリゴヌクレオチドが検出される。この標的分子は、ふたつの部分配列S1及びS2であると考えることができる塩基の特異的配列を有する。S1及びS2は連続することができるが、必ずしもそうではない。S1'はS1に相補的な配列であるような配列S1'を有するDNAオリゴヌクレオチドは、カーボンナノチューブに結合することができる。S2'はS2に相補的な配列であるような配列S2'を有するDNAオリゴヌクレオチドは、ふたつの電極の表面に結合することができる。標的分子が存在する場合、S1'及びS2'は両方とも結合し、これによりナノチューブを電極に連結するであろう。
【0032】
別の態様において、ナノシリンダーは、ふたつの表面、特にふたつの金属表面の間のブリッジとして使用してもよい。このようなブリッジの例は以下を含む:(a)表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第一の表面;(b)表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第二の表面;並びに、(c)ナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子を有するナノシリンダーであり、ここでナノシリンダー上の1つの生体分子は、第一の表面上の生体分子に結合し、及び別のナノシリンダー上の生体分子は、第二の表面上の生体分子に結合し、第一及び第二の表面を連結するブリッジを形成する。
【0033】
生体分子は、ナノシリンダーの各末端に又はその近傍に都合良く共有的に連結されているので、ナノシリンダーの使用は利点である。一部の態様において、このブリッジは、ナノシリンダー上の少なくとも2つの生体分子の一方は、第一の表面上の生体分子に特異的に結合するが、第二の表面上の生体分子には結合せず、並びにナノシリンダー上の他方の生体分子は、第二の表面上の生体分子には特異的に結合するが、第一の表面上の生体分子には結合しないように、任意にデザインすることができる。この構造において、ナノチューブ又は他のナノシリンダーは、そのふたつの各末端の上又は近傍を異なる生体分子により修飾することができる。第一の表面は、ナノチューブの一端の生体分子と相補的である生体分子で修飾され、並びに第二の表面は、ナノチューブの他端の生体分子と相補的である生体分子で修飾される。この選択的に修飾されたナノチューブ及びふたつの表面が相互作用することができる場合、このナノチューブは、特異的な相補的生体分子相互作用によりいずれかの末端に付着したふたつの表面の間にブリッジを形成する。
【0034】
本発明の別の局面は、表面上にナノシリンダーを選択的に集積し、前述のもののような、ナノシリンダー-修飾された表面及び集積体を作製する方法を提供する。この方法は、前述の種類の生体分子により機能化された表面を、1つ又は複数の相補的生体分子によりそれら自身機能化された1個又は複数のナノシリンダーに曝し、その結果その表面上の生体分子及びナノシリンダー上の相補的生体分子は、このナノシリンダーを、生体分子相互作用を介して表面に付着することにより実行することができる。この方法は、室温で実行することができる簡単なプロセスを提供する。生体分子相互作用が弱いか又は生体分子が変性されるリスクのある用途において、ナノシリンダーと表面の間の接続は、ナノシリンダーの表面への付着を強固にするのに十分な温度で、表面上に配列されたナノシリンダーを有する表面をアニーリングすることにより更に強固になる。
【0035】
[実施例]
実施例1:DNA-修飾された単層カーボンナノチューブ
ふたつの異なる供給元の単層カーボンナノチューブを用いて実験を行った。単層カーボンナノチューブ(SWNT)(Carbolex, レキシントン, KY)は、入手したままの(as-received)ナノチューブを3M硝酸中で24時間還流することにより、最初に精製し(図1、工程a及びb)、次にこのSWNTを0.6μmのポリカーボネートメンブレンフィルター(Millipore)を用い水で洗浄した。HipCOチューブ(Carbon Nanotechnologies, Inc., ヒューストン, TX)も、H2SO4:30%H2O2の9:1溶液中での酸化により調製した[9]。これらのナノチューブをアミン基で機能化するために、精製し酸化した材料(SWNTの当初質量の〜60%)を、真空下で乾燥し、次に超音波浴中の無水ジメチルホルムアミド(DMF)1ml中に懸濁した。この分散液を、直ぐに、20mlのチオールクロリド(Aldrich)に添加し、還流下で24時間加熱し、カルボン酸をアシルクロリドに転換した。これらのナノチューブを、0.2μmのPTFEメンンブレン(Millipore)上で、無水THFを用いてすすぎ、過剰なSOCl2を除去し、その後エチレンジアミン(原液、Aldrich)を添加し、3〜5日間攪拌し、図1cに示したようなアミン-末端化した生成物を形成した。
【0036】
このアミン-末端化したナノチューブ(図1c)は、更なる修飾のための有用な出発点を提供する。DNA-修飾されたSWNTを調製するために、これらのチューブを、ヘテロ二官能性架橋剤スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)と反応させ、マレイミド基で末端化された表面を得(図1d)、これを次にチオール-末端化したDNAと反応させ、DNA-修飾されたSWNT(図1e)を得た。あるいは、アミン-末端化したSWNTを、N-ヒドロキシスクシンイミジルビオチン(Vector Labs)と反応させ、図1fに示したようなビオチンに共有的に連結されたSWNTを生成した。
これらの実験において、いくつか異なるDNAオリゴヌクレオチドを用いた。DNA-SWNT連結化学を最適化するために、32-塩基オリゴヌクレオチド(5'-HS-C6H12-T15GC TTA ACG AGC AAT CGT FAM-3')("S1")を用いた。このオリゴヌクレオチドを、試薬5'-チオール修飾剤C6(Glen Research, スターリング, VA)を用い、5'末端で修飾し、チオール基をナノチューブ上のマレイミド基に結合させ(図1d)、かつこれを6-FAMアミダイト(Applied Biosystems, フォスターシティ, CA)を用い3'末端で修飾し、フルオレセイン基を結合した。
【0037】
ナノチューブとDNA間の共有連結の形成及び安定性を証明する試験を、DNA分子を蛍光タグと直接連結することにより行った。これらの試験は、DNA-SWNT付加物は、通常物理的に吸着された分子を変性する温かい界面活性剤含有溶液の存在下であっても、極めて安定していることを示した。これは、本願明細書に参照として組入れられている、別所(Nano. Lett., 2,1413-1417 (2002))に詳細に示された化学情報と共に、DNA分子はSWNTに実際共有的に連結されたことを確立した。
【0038】
前記実験は、DNA-SWNT付加物は安定していることを証明したので、SWNTにつながれたDNA分子は、ハイブリダイゼーションへの生化学的アクセスのし易さを保持しているかどうか、及びナノチューブへの付着は、相補的配列、対、非-相補的配列とのハイブリダイゼーションの選択性に重大な影響を及ぼすかどうかを試験するために更なる実験を行った。これらの実験のために、蛍光タグを伴わないDNAを、前述のナノチューブに連結し、溶液中でのこれらのDNA-SWNT付加物のDNAの蛍光-タグ付き相補的配列及び非-相補的配列とのハイブリダイゼーションを調べた。これらの実験は、ナノチューブに連結され、配列(5'-HS-C6H12-T15GC TTA ACG AGC AAT CG-3')を有するオリゴヌクレオチド"S2"を用いて実行した。前述の手法に従いSWNTに固定した後得られたDNA-ナノチューブ付加物を、次にふたつのアリコートに分割し、各々を、5'末端をフルオレセインで標識したDNAオリゴヌクレオチドの5μM溶液に含浸した。第一の配列"S3"(5'-FAM-CG ATT GCT CGT TAA GC-3')は、S2に相補的な16個の塩基を有する。第二の配列"S4"は、S2と4個の塩基ミスマッチを伴う16-塩基配列(5'-FAM-CG TTT GCA CGT TTA CC-3')を含む。各試料を、振盪しながら37℃で2時間ハイブリダイゼーションし、0.2μmポリカーボネートメンブレンをSDS/2xSSPE緩衝液と共に用いて洗浄し、その後緩衝液中の96ウェルマイクロタイタープレートに配置した。図2は、この実験で得られた蛍光画像を示している。最上段は、S2-SWNTのその相補体S3(左側)及び4-塩基ミスマッチS4(中央)とのハイブリダイゼーションの蛍光画像(黒色=高い強度;白色=低い強度又は強度なし)を示す。右側画像は、空のタイタープレートウェルからのバックグラウンドを示す。各ウェル内の蛍光強度の測定は、完全なマッチ(左側)については1287I.U.、ミスマッチ(中央)については680I.U.、及びバックグラウンドについては427I.U.の中央値を得た。完全に-マッチした対(S2-SWNT+S3)から、ミスマッチ対(S2-SWNT+S4)よりもはるかに高い強度が得られたので、本発明者らは、液-相オリゴヌクレオチドとのDNA-SWNT付加物のハイブリダイゼーションは、高度に特異性があると結論付けた。
【0039】
ハイブリダイゼーションの可逆性は、8.3M尿素溶液による変性、その後の異なる配列との再ハイブリダイゼーションにより試験した。変性後、蛍光画像(図2、中段)は、前記2種の試料から低レベルの蛍光のみ示し(完全なマッチから強度=304I.U.、4-塩基ミスマッチから267I.U.)、これはバックグラウンドレベル(強度=238I.U.)と同等であった。これらの変性された試料は次に、2回目のハイブリダイゼーションを行った。この2回目のハイブリダイゼーションにおいて、先に完全なマッチとハイブリダイズされた試料は、今回ミスマッチの配列とハイブリダイズし、その逆もハイブリダイズした。図2の下段の画像は、再度、4-塩基ミスマッチ対S2-SWNT+S4の蛍光強度(下側左、強度=441I.U.)は、バックグラウンド(下側右、257I.U.)に近いが、完全なマッチS2-SWNT+S3の相対強度(下側中、強度=1073I.U.)は、いずれよりもはるかに高いことを示している。再度このハイブリダイゼーションは、極めて特異的であるように見える。
【0040】
前述の結果は、共有的に連結されたDNA-SWNT付加物の合成が成功することを強力に指摘している。これらの実験は、DNA-SWNT付加物は生化学的にアクセス可能であり、及びハイブリダイゼーション実験において高度の選択性を示すことを明らかにしている。この高度の選択性は、ナノスケール化学センサーの組立て、並びにナノチューブ及び他のナノスケールの物体の集積を指示するための生物学的分子の使用などの、多くの用途において有用である可能性がある。
【0041】
実施例2:ビオチン-修飾された単層カーボンナノチューブ及びこれにより修飾された基板
DNAハイブリダイゼーションは弱い相互作用に関連しているが、ビオチン(小型ビタミン)及びアビジン(小型タンパク質)の相互作用は、わかっている最も強力な生体分子相互作用のひとつであり、生成定数1015M-1である。この非常に高い安定性は、ビオチン-アビジン相互作用を使用し、アビジンは4個のビオチン分子に結合することができる部位を有するという事実を採用することにより、ナノスケールの超分子構造の集積を補助することができることを暗示している。この実験において、ビオチン-アビジン相互作用を用い、ビオチン-修飾されたSWNTを、互いに集積体を結合するためのある種の接着剤としてアビジンを使用し、ビオチン-修飾された表面に選択的に連結した。図3に概略的に示したように、この実験には、多工程が関与している。
ビオチン-修飾されたSWNTは、DNA-修飾されたナノチューブの調製に使用したものと非常に類似した化学を用いて作製した。この手法は、アミン-末端化したSWNTの組立てに関与し、その後これらはビオチン基及びN-ヒドロキシスクシンイミド基を含む小型分子と反応し、これはアミン基との共有的連結を形成し、図1fに示されたもののような共有的に連結されたSWNT-ビオチン付加物を生成した。
【0042】
ビオチン-修飾されたカーボンナノチューブを調製する第二の方法も使用することができる。この方法において、カーボンナノチューブは、最初に酸溶液(3:1 H2SO4:HNO3)中で1時間かけて、音波処理しながら酸化された。この酸化工程は、更なる機能化が生じるための最初の部位を作成するために必要である。その後ナノチューブを濾過し、水ですすぎ、過剰の酸を除去した。このナノチューブ、EDC(1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]-カルボジイミド塩酸塩、DMF中50mM)及びNHS(N-ヒドロキシスクシンイミド、DMF中100mM)を含む懸濁液を調製し、1.5時間反応させた。その後これらのナノチューブを、過剰なDMFですすぎ、未反応のEDC及びNHSを除去した。この工程は、わずかに塩基性の条件下でアミンと容易に反応する活性化されたカルボキシルナノチューブを生じた。その後等モル数のアミン-末端化したビオチン(5-(ビオチンアミド)ペンチルアミン)及びアミン末端化したフルオレセイン(アミノアセトアミドフルオレセイン)を、ナノチューブ(pH8.0溶液中に懸濁)に2時間添加した。最終の濾過及び洗浄工程により、全ての過剰な試薬を除去し、ビオチン機能化されたカーボンナノチューブを得た。
【0043】
アビジンのようなタンパク質は、しばしば感度が良くかつ容易に変性もしくは他の分解プロセスを受けやすいので、シリコン、ガラス質カーボン、又はガラスの表面が、最初に修飾され、アクセス可能な第一級アミン基を提供するような2-工程手法を用い、アビジンをこれらの表面に連結した。その後これらのアミン-末端化した表面を、ビオチンの修飾されたN-ヒドロキシ-スクシンイミド(NHS)エステルと反応させ、図1fに示した共有ビオチン-SWNT付加物を得た。シリコン、ガラス質カーボン、及びガラスは、本願明細書に参照として組入れられている論文(J. Am. Chem. Soc. , 122,1205- 1209 (2000))に説明されたように、全て同様の化学によりアミン基に修飾することができるが、有意に異なる光学特性及び電気特性を有するので、これらを基板表面として選択した。ここに示されたデータは、市販されている(GAPS-II, Corning, コーニング, NY)アミン-末端化されたガラス表面について得た。ビオチンをアミン-末端化した表面に連結する第二の工程も、いくつかの異なる試薬を用いて行うことができる。本実験では、Pierce Endogenから得たスルホ-スクシンイミジル-6-(ビオチンアミド)ヘキサノエートを用いた。しかし多くの化合物が、ビオチンに連結したNHSエステルと共に市販されており;これらの化合物はわずかに異なるが、同様の機能性を提供すると予想される。この連結の詳細は、より明確にするために、図1fから省かれている。
【0044】
図3は、この手法を蛍光データと共に示している。Corning GAPS-IIアミン-末端化したガラス表面を、ビオチンで修飾した。次にローダミン色素で蛍光標識したアビジンを、この表面に結合させ、これによりスペクトルの赤色領域に蛍光を有するアビジン-末端化された表面を作製した。図3においてローダミン色素は、"赤色"として標識した。カーボンナノチューブは、図1fのようにビオチンに共有的に連結し、同時にMolecular Probes(ユージーン, OR)から得たフルオレセインNHS-エステルを用い緑色蛍光色素に連結した。この蛍光色素は、図3において"緑色"として標識した。ナノチューブのビオチン及びフルオレセインへの同時の共有的連結は、スペクトルの緑色領域の蛍光によるナノチューブの直接造影の方法を提供する。アビジン-修飾されたガラス表面は次に、ナノチューブ(前述のようにビオチン及びフルオレセインで修飾された)の希釈溶液に短期間浸漬し、その後標準緩衝液ですすいだ。
【0045】
図3(下側パネル)は、ふたつの異なる波長で測定した、得られた蛍光強度の画像を、ナノチューブに曝されなかったアビジン-修飾された試料からの対照実験と共に示している。図3において、"赤色"標識された画像は、蛍光強度を示し、これは画像中で白色に見え、605nmのロングパスフィルターを用いて得、これはガラス表面に共有的に連結されたローダミン-標識したアビジン分子からの蛍光を表している。"緑色"標識した画像は、蛍光強度を示し、これは画像中で灰色に見え、512nmのバンドパスフィルターを用い測定し、これはナノチューブに共有的に連結されたフルオレセイン基からの蛍光を表している。対照実験(中央)は、アビジン-修飾された表面の蛍光は赤色であるが、ナノチューブへの曝露前に、アビジン-修飾された表面上の緑色の蛍光は認められないことを示している。ビオチンへの曝露後に、右側の蛍光画像は、赤色(アビジンから)及び緑色(ナノチューブから)の両方の蛍光を示している。ローダミン-標識したアビジン及びフルオレセイン-標識したナノチューブからの蛍光は、ビオチンで修飾された表面領域(ふたつのスポット)においてのみ認められたことに注意することは重要である。表面の他の領域は、有意な蛍光強度は示さなかった。
【0046】
従ってこれらの画像は、ビオチン-修飾されたSWNTは、アビジンで修飾されている表面領域に特異的に連結することを示している。この実験は、ナノチューブの表面への集積を制御する手段としてのビオチン-アビジン相互作用の使用が可能であることを確立している。表面-結合した生体分子と生物学的に-修飾されたナノチューブの間の生体分子相互作用(タンパク質-基板相互作用、抗体-抗原相互作用、又はDNAハイブリダイゼーションを含むが、これらに限定されるものではない。)の使用は、ナノチューブの生体分子により-補助された集積の実現に使用することができる一般的方法であると予想される。
【0047】
ナノチューブの生物学的分子との一体化は、ナノスケールの物体の挙動を制御するために、生化学的相互作用の高度に選択された性質を使用することにより、ナノスケール集積における豊富な機会を提供する。前記結果は、単層ナノチューブのDNA及びビオチンとの共有的に連結された付加物を調製することは可能であることを示している。DNAハイブリダイゼーションの使用は、高度の選択性及び可逆性の利点、並びに容易にデザイン、合成及び異なるDNA配列を様々な表面及びナノスケール物体に連結する能力を考慮し、複合物体を制御するための可能性のある経路を提供する。アビジン-ビオチンの非常に高い結合定数は、ほとんど不可逆性の結合につながるので、ビオチン及びアビジンの使用は、相補的品質を提供する。
【0048】
実施例3:DNA-修飾された金属ナノロッド
ナノロッドの作製法は、当該技術分野において周知である。これらの方法に関する説明は、Science, 294,137-140 (2001);JACS, 124,4020-4026 (2002);及び、Journal of Materials Chemistry, 7,1075-1087 (1997)に認めることができ、これらは各々本願明細書に参照として組入れられている。簡単に述べると、長さ及び組成が変動するナノロッドは、ナノ多孔質アルミナのような鋳型中での電気化学的還元を用いて調製することができる。このプロセスにおいて、多孔質アルミナメンブレン(他の材料を使用することもできる)は、最初に片側が金属でコートされる。反対側に、めっき液が塗布され、このメンブレンの孔の中で金属イオンが、遊離金属へ還元される電気化学的電池(cell)を形成するために使用される。異なる金属の逐次沈着反応の使用は、金属"バーコード"を作製することが、論文(Science Vol. 294, pp. 137-140 (2001))において明らかにされている。ふたつの異なる金属("A"及び"B")からなる金属ナノロッドは、異なる領域において異なる分子により選択的に機能化される。例えば、両端は金及び中央は銀からなるナノロッドが、その末端にアミン基又はカルボン酸基を伴うアルカンチオールからなる溶液に曝された場合、これは、アルカンチオールの金への高い親和性のために、金の位置で選択的に機能化され、銀の位置で機能化されないようなナノロッドをもたらすであろう。
【0049】
金表面又はナノチューブの表面領域の機能化は、通常の金基板上で使用されるものに類似した方法を用いて実現される。例えばアミン-機能化された金ナノロッドを、本願明細書に参照として組入れられている論文(Langmuir, 16,2192-2197 (2000))に説明された手法に従い作製することができる。簡単に述べると、ナノロッドの金領域の機能化は、アミン-修飾されたナノロッドを作製するための、ロッドの、エタノール中の1ミリモル11-メルカプトウンデシルアミンの溶液中への含浸により実現される。この工程は、平坦な金表面上の公開された作業と同じである(Langmuir, vol. 16, pp. 2192-2197 (2000))。その後アミン-末端化したナノロッドを、多くの異なるアミン-末端化した平面上(例えば、Nature Materials, 1,253-257 (2002)、及びLangmuir, 18, 788-796 (2002)参照、これらの両論文は本願明細書に参照として組入れられている)、並びにアミン-修飾されたカーボンナノチューブ上(Nano Letters, 2, 1413-1417 (2002)参照、この論文は本願明細書に参照として組入れられている)で広範に使用される2工程の追加により、DNAへ連結することができる。次にこのナノロッドは、トリエタノールアミン緩衝液(pH7)中のヘテロ二官能性架橋剤スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SSMCC)の 1.5mM溶液に、約20分間曝される。この分子内のNHS-エステル基は、表面の-NH2基と特異的に反応し、アミド結合を形成する。次に加湿チャンバー内で表面上に直接DNAを配置し、6時間以上室温で反応させることにより、マレイミド部分は、チオール-修飾されたDNA(250pMチオールDNA、0.1M pH7 TEA緩衝液中)と反応することができる。
【0050】
本発明は、本願明細書に説明した特定の態様に限定されず、前記「特許請求の範囲」内に収まるそのような形の全てを包含することが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図面において以下が説明される:
【図1】図1は、DNA(1e)及びビオチン(1f)による単層カーボンナノチューブ(SWNT)の共有的に修飾された付加物を製造する化学スキームの概略図である。
【図2】図2は、下記実施例において説明されるような、相補的配列及び4-塩基ミスマッチ配列とハイブリダイズしたDNA-SWNT付加物の蛍光画像(黒色=高強度)を示す。最上段は、最初のハイブリダイゼーションを示す。第二段は、下記実施例で説明されたような、尿素内で変性後の同じ試料を示し、最下段は、異なる配列との二回目のハイブリダイゼーション後の同じ試料を示す。
【図3】図3は、表面上のSWNT上の生物学的に-方向付けられた集積体を示す。白灰画像は、各々605-mnのロングパスフィルター及び512-nmのバンドパスフィルターを用いる、赤色及び緑色の蛍光強度を各々表している。ふたつの試料を用いた:ひとつのガラス表面(中央像)は、ビオチン及びローダミン-標識したアビジンによってのみ修飾したのに対し、第二の(右側像)は、ビオチンで、次にローダミン-標識したアビジンで修飾された、その後同じくグリーン蛍光色素で標識されたビオチン-修飾されたナノチューブ溶液中に含浸された。各試料は、ふたつの円形領域において、ビオチンで修飾された。"赤色"(白色で示される)像及び"緑色"(灰色で示される)像を、各試料について同時に得た。
【図4】図4は、電極対を橋渡しするナノチューブを集積するために、受容体-リガンド相互作用を使用するバイオスイッチの図解を示す。
【図5】図5は、電極対を橋渡しするナノチューブを集積するために、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションを使用するバイオスイッチの図解を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する表面を持つ基板;及び
(b)ナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子を有する少なくとも1つのナノシリンダー;
を含む、修飾された基板であって;
ここで少なくとも1つのナノシリンダーは、表面上の少なくとも1つの生体分子と、少なくとも1つのナノシリンダー上の少なくとも1つの相補的生体分子との間の生体分子相互作用を介して、その表面に付着される、修飾された基板。
【請求項2】
少なくとも1つのナノシリンダーは、ナノチューブ又はナノロッドである、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項3】
少なくとも1つのナノシリンダーは、カーボンナノチューブである、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項4】
少なくとも1つのナノシリンダーは、金又は銀のナノロッドである、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項5】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子及び少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、オリゴヌクレオチド配列、アミノ酸配列、タンパク質、タンパク質断片、リガンド、受容体、受容体断片、抗体、抗体断片、抗原、抗原断片、酵素、及び酵素断片からなる群より独立して選択される、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項6】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子は、オリゴヌクレオチド配列を含み、及び少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、相補的オリゴヌクレオチド配列を含む、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項7】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子及び少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、タンパク質-リガンド対を形成する、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項8】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子は、アビジン又はストレプトアビジンを含み、及び少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、ビオチンを含む、請求項7記載の修飾された基板。
【請求項9】
基板は、シリコン、ガラス、ガラス質カーボン、金、及びダイヤモンド薄膜基板からなる群より選択される、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項10】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する表面を持つ基板を、ナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子を有する少なくとも1つのナノシリンダーに曝すことを含み、ここで表面に結合した少なくとも1つの生体分子と、少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子との間の生体分子相互作用は、少なくとも1つのナノシリンダーを表面に付着させる、基板上にナノスケールの物体を選択的に配列する方法。
【請求項11】
更に、表面と少なくとも1つのナノシリンダーとの間の付着を強化するのに十分な温度で、表面に付着した少なくとも1つのナノシリンダーを有する表面をアニーリングすることを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
方法は、室温で実行される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのナノシリンダーは、ナノチューブ又はナノロッドである、請求項10記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのナノシリンダーは、カーボンナノチューブである、請求項10記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのナノシリンダーは、金又は銀のナノロッドである、請求項10記載の方法。
【請求項16】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子及び少なくとも1つのナノシリンダーへ共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、オリゴヌクレオチド配列、アミノ酸配列、タンパク質、タンパク質断片、リガンド、受容体、受容体断片、抗体、抗体断片、抗原、抗原断片、酵素、及び酵素断片からなる群より独立して選択される、請求項10記載の方法。
【請求項17】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子は、オリゴヌクレオチド配列を含み、及び少なくとも1つのナノシリンダーへ共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、相補的オリゴヌクレオチド配列を含む、請求項10記載の方法。
【請求項18】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子及び少なくとも1つのナノシリンダーへ共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、タンパク質-リガンド対を形成する、請求項10記載の方法。
【請求項19】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子は、アビジン又はストレプトアビジンを含み、及び少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、ビオチンを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
基板は、シリコン、ガラス、ガラス質カーボン、金、及びダイヤモンド薄膜基板からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項21】
(a)電極に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第一の電極;
(b)電極に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第二の電極であって、ここで第一及び第二の電極は、ギャップにより隔てられているもの;
(c)ナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子を有する少なくとも1つのナノシリンダー;並びに
(d)第一及び第二の電極間のインピーダンスを測定するために、第一及び第二の電極に連結された検出器;
を含む、検体の存在を検出する生体分子センサーであり:
ここで第一の電極に結合した少なくとも1つの生体分子、及び少なくとも1つのナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子のひとつは、それらの間の検体に結合することが可能であり、並びに更に第二の電極に結合した少なくとも1つの生体分子、及び少なくとも1つのナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子のひとつは、それらの間の検体に結合することが可能であり、ここで少なくとも1つのナノシリンダーは、第一及び第二の電極の間にギャップを架橋し、並びに更にナノシリンダーの電極への密な接近は、測定可能なインピーダンス変化を生じる、生体分子センサー。
【請求項22】
少なくとも1つのナノシリンダーは、ナノチューブ又はナノロッドである、請求項21記載の生体分子センサー。
【請求項23】
少なくとも1つのナノシリンダーは、カーボンナノチューブである、請求項21記載の生体分子センサー。
【請求項24】
少なくとも1つのナノシリンダーは、金又は銀のナノロッドである、請求項21記載の生体分子センサー。
【請求項25】
各電極に結合した少なくとも1つの生体分子、少なくとも1つのナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子、及び検体は、オリゴヌクレオチド配列、アミノ酸配列、タンパク質、タンパク質断片、リガンド、受容体、受容体断片、抗体、抗体断片、抗原、抗原断片、酵素、及び酵素断片からなる群より独立して選択される、請求項21記載の生体分子センサー。
【請求項26】
検体は、タンパク質を含み、並びに第一の電極に結合した少なくとも1つの生体分子、第二の電極に結合した少なくとも1つの生体分子、及び少なくとも1つのナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子は、検体に結合することが可能であるリガンドを含む、請求項21記載の生体分子センサー。
【請求項27】
検体は、アビジン又はストレプトアビジンを含み、並びに第一の電極に結合した少なくとも1つの生体分子、第二の電極に結合した少なくとも1つの生体分子、及び少なくとも1つのナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子は、ビオチンを含む、請求項21記載の生体分子センサー。
【請求項28】
(a)表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第一の表面;
(b)表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第二の表面;及び
(c)ナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子を有するナノシリンダー;
を含む、ナノシリンダーブリッジであって、ここでナノシリンダー上の少なくとも2つの生体分子の一方は、第一の表面上の少なくとも1つの生体分子に結合され、並びにナノシリンダー上の少なくとも2つの生体分子の他方は、第二の表面上の少なくとも1つの生体分子に結合され、第一及び第二の表面間にブリッジを形成する、ナノシリンダーブリッジ。
【請求項29】
ナノシリンダーは、カーボンナノチューブである、請求項28記載のナノシリンダーブリッジ。
【請求項30】
カーボンナノチューブに共有的に連結された少なくとも2つの生体分子は、それぞれカーボンナノチューブの異なる末端に又はその近傍に連結される、請求項29記載のナノシリンダーブリッジ。
【請求項31】
ナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも2つの生体分子の一方は、第一の表面へ結合した生体分子へ特異的に結合するが、第二の表面に結合した生体分子には結合せず、並びにナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも2つの生体分子の他方は、第二の表面へ結合した生体分子に特異的に結合するが、第一の表面に結合した生体分子には結合しない、請求項28記載のナノシリンダーブリッジ。
【請求項32】
第一及び第二の表面は、金属表面である、請求項28記載のナノシリンダーブリッジ。
【請求項33】
予め決定されたパターンで表面上に配列された複数のナノシリンダーを有する表面を含む、パターン化された表面であり、ここでナノシリンダーは、その表面に結合された生体分子と、ナノシリンダーに結合されたそれらの相補的生体分子との間の生体分子相互作用によりその表面に付着され、並びに更にこのパターンは、表面上の生体分子及びナノシリンダー上のそれらの相補的生体分子の位置により予め決定される、パターン化された表面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する表面を持つ基板;及び
(b)ナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子を有する少なくとも1つのナノシリンダー;
を含む、修飾された基板であって;
ここで少なくとも1つのナノシリンダーは、表面上の少なくとも1つの生体分子と、少なくとも1つのナノシリンダー上の少なくとも1つの相補的生体分子との間の生体分子相互作用を介して、その表面に付着される、修飾された基板。
【請求項2】
少なくとも1つのナノシリンダーは、ナノチューブ又はナノロッドである、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項3】
少なくとも1つのナノシリンダーは、カーボンナノチューブである、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項4】
少なくとも1つのナノシリンダーは、金又は銀のナノロッドである、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項5】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子及び少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、オリゴヌクレオチド配列、アミノ酸配列、タンパク質、タンパク質断片、リガンド、受容体、受容体断片、抗体、抗体断片、抗原、抗原断片、酵素、及び酵素断片からなる群より独立して選択される、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項6】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子は、オリゴヌクレオチド配列を含み、及び少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、相補的オリゴヌクレオチド配列を含む、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項7】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子及び少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、タンパク質-リガンド対を形成する、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項8】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子は、アビジン又はストレプトアビジンを含み、及び少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、ビオチンを含む、請求項7記載の修飾された基板。
【請求項9】
基板は、シリコン、ガラス、ガラス質カーボン、金、及びダイヤモンド薄膜基板からなる群より選択される、請求項1記載の修飾された基板。
【請求項10】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する表面を持つ基板を、ナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子を有する少なくとも1つのナノシリンダーに曝すことを含み、ここで表面に結合した少なくとも1つの生体分子と、少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子との間の生体分子相互作用は、少なくとも1つのナノシリンダーを表面に付着させる、基板上にナノスケールの物体を選択的に配列する方法。
【請求項11】
更に、表面と少なくとも1つのナノシリンダーとの間の付着を強化するのに十分な温度で、表面に付着した少なくとも1つのナノシリンダーを有する表面をアニーリングすることを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
方法は、室温で実行される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのナノシリンダーは、ナノチューブ又はナノロッドである、請求項10記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのナノシリンダーは、カーボンナノチューブである、請求項10記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのナノシリンダーは、金又は銀のナノロッドである、請求項10記載の方法。
【請求項16】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子及び少なくとも1つのナノシリンダーへ共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、オリゴヌクレオチド配列、アミノ酸配列、タンパク質、タンパク質断片、リガンド、受容体、受容体断片、抗体、抗体断片、抗原、抗原断片、酵素、及び酵素断片からなる群より独立して選択される、請求項10記載の方法。
【請求項17】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子は、オリゴヌクレオチド配列を含み、及び少なくとも1つのナノシリンダーへ共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、相補的オリゴヌクレオチド配列を含む、請求項10記載の方法。
【請求項18】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子及び少なくとも1つのナノシリンダーへ共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、タンパク質-リガンド対を形成する、請求項10記載の方法。
【請求項19】
表面に結合した少なくとも1つの生体分子は、アビジン又はストレプトアビジンを含み、及び少なくとも1つのナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも1つの相補的生体分子は、ビオチンを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
基板は、シリコン、ガラス、ガラス質カーボン、金、及びダイヤモンド薄膜基板からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項21】
(a)表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第一の表面;
(b)表面に結合した少なくとも1つの生体分子を有する第二の表面;及び
(c)ナノシリンダーに結合した少なくとも2つの生体分子を有するナノシリンダー;
を含む、ナノシリンダーブリッジであって、ここでナノシリンダー上の少なくとも2つの生体分子の一方は、第一の表面上の少なくとも1つの生体分子に結合され、並びにナノシリンダー上の少なくとも2つの生体分子の他方は、第二の表面上の少なくとも1つの生体分子に結合され、第一及び第二の表面間にブリッジを形成する、ナノシリンダーブリッジ。
【請求項22】
ナノシリンダーは、カーボンナノチューブである、請求項21記載のナノシリンダーブリッジ。
【請求項23】
カーボンナノチューブに共有的に連結された少なくとも2つの生体分子は、それぞれカーボンナノチューブの異なる末端に又はその近傍に連結される、請求項22記載のナノシリンダーブリッジ。
【請求項24】
ナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも2つの生体分子の一方は、第一の表面へ結合した生体分子へ特異的に結合するが、第二の表面に結合した生体分子には結合せず、並びにナノシリンダーに共有的に連結された少なくとも2つの生体分子の他方は、第二の表面へ結合した生体分子に特異的に結合するが、第一の表面に結合した生体分子には結合しない、請求項21記載のナノシリンダーブリッジ。
【請求項25】
第一及び第二の表面は、金属表面である、請求項21記載のナノシリンダーブリッジ。
【請求項26】
予め決定されたパターンで表面上に配列された複数のナノシリンダーを有する表面を含む、パターン化された表面であり、ここでナノシリンダーは、その表面に結合された生体分子と、ナノシリンダーに結合されたそれらの相補的生体分子との間の生体分子相互作用によりその表面に付着され、並びに更にこのパターンは、表面上の生体分子及びナノシリンダー上のそれらの相補的生体分子の位置により予め決定される、パターン化された表面。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−515231(P2006−515231A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571706(P2004−571706)
【出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/031286
【国際公開番号】WO2004/099307
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(500517248)ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション (18)
【Fターム(参考)】