説明

ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体およびその製造方法、金属酸化物蛍光体素子並びにEL素子

【課題】波長400〜550nmの範囲にピークを有し、より高い発光効率を実現できるナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体を得ることの出来る、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を構成する新規な金属元素の組み合わせを見出し、当該新規な金属元素の組み合わせを有するペロブスカイト構造を有する金属酸化物から製造されたナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体、およびその製造方法、金属酸化物蛍光体素子並びにEL素子を提供する。
【解決手段】3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含み、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体およびその製造方法、当該金属酸化物蛍光体を用いた金属酸化物蛍光体素子並びにEL素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体およびその製造方法、金属酸化物蛍光体素子並びにEL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイデバイス等の技術の進歩に伴って、より優れた特性を有する光機能材料への要求が高まっている。このような光機能材料として、金属酸化物のナノシートを含む蛍光体がある。
本発明者らは、特許文献1として、ペロブスカイト構造を有するストロンチウム、タンタルおよびビスマスを含む2次元結晶子からビスマス層を層間剥離して得られた金属酸化物ナノシートを用いた、青色発光するナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体およびその製造方法を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−231313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示したペロブスカイト構造を有する金属酸化物ナノシートのコロイド溶液に、290nmの紫外光を照射すると、波長400〜550nmの範囲にピークを有する青色の発光スペクトルが得られた。
本発明は、このような状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、波長400〜550nmの範囲にピークを有し、より高い発光効率を実現し、発光強度の調整が可能な、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体を得ることの出来る、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を構成する新規な金属元素の組み合わせを見出すことである。そして、当該新規な金属元素の組み合わせを有するペロブスカイト構造を有する金属酸化物から製造されたナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体、およびその製造方法、金属酸化物蛍光体素子並びにEL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく研究を行った結果、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含むペロブスカイト構造を有する金属酸化物、および、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含みさらに、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされたペロブスカイト構造を有する金属酸化物、に想到した。そして当該ペロブスカイト構造を有する金属酸化物から製造した、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含む金属酸化物ナノシート(以下、本発明において「ナノシート」と略記する場合がある。)、および、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含み、さらに、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされたナノシートが、波長400〜550nmの範囲にピークを有し、高い発光効率を有し、発光強度の調整が可能な蛍光体であることを知見し、本発明を完成した。
【0006】
尚、本発明に係るナノシート構造とは、層状のペロブスカイト構造におけるホスト層1
層分のナノシートのことを言う。当該ホスト層1層分のナノシートの厚さは、測定方法によって多少の差異があるものの、代表的には0.8〜2.5nmである。また当該ホスト層1層分のナノシートの縦横の幅は、ホスト層の単結晶が二次元的に展開していることから、特に限定はないが、代表的な値は50nm〜5000nmである。
【0007】
すなわち、上述の課題を解決するための第1の構成は、
3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含み、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体である。
【0008】
第2の構成は、
3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含み、さらに、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされた、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体である。
【0009】
第3の構成は、
前記3A族の元素がランタノイドである、第1または第2の構成のいずれかに記載のナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体である。
【0010】
第4の構成は、
前記5A族の元素がNb、Taである、第1〜第3の構成のいずれかに記載のナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体である。
【0011】
第5の構成は、
一般式Laa−xEuNb(但し、0.95≦a≦1、0≦x≦0.05)で表記されるナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体である。
【0012】
第6の構成は、
第1〜第5の構成のいずれかに記載のナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体であって、当該ナノシート構造の縦横幅が50nm以上、5000nm以下、厚みが0.8nm以上、2.5nm以下であるナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体である。
【0013】
第7の構成は、
第1〜第6の構成のいずれかに記載の金属酸化物蛍光体であって、さらに70℃以上、150℃以下の加熱処理を施されたナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体である。
【0014】
第8の構成は、
第1〜第7の構成のいずれかに記載の金属酸化物蛍光体の製造方法であって、
1A族の元素および/または2A族の元素を含む酸化物と、3A族の元素および/または5A族の元素を含む酸化物とを混合し、焼成して、層状構造を有する金属酸化物を得る工程と、
前記層状構造を有する金属酸化物において、当該層状構造間に存在する1A族の元素および/または2A族の元素をプロトンに置換する工程と、
前記層状構造を有する金属酸化物において、当該層状構造間に存在するプロトンをエチルアミンおよび/または四級アンモニウムに置換して、当該層状構造を有する金属酸化物を、ナノシート構造を有する金属酸化物に剥離する工程とを有する、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体の製造方法である。
【0015】
第9の構成は、
第8の構成に記載の金属酸化物蛍光体の製造方法であって、
1A族の元素および/または2A族の元素を含む酸化物と、3A族の元素および/また
は5A族の元素を含む酸化物とを混合し、焼成して、層状構造を有する金属酸化物を得る工程と、
前記層状構造を有する金属酸化物において、当該層状構造間に存在する1A族の元素および/または2A族の元素をプロトンに置換する工程と、
前記層状構造を有する金属酸化物において、当該層状構造間に存在するプロトンをエチルアミンおよび/または四級アンモニウムに置換して、当該層状構造を有する金属酸化物を、ナノシート構造を有する金属酸化物に剥離する工程と、
前記ナノシート構造を有する金属酸化物に70℃以上、150℃以下の加熱処理を施す工程とを有する、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体の製造方法である。
【0016】
第10の構成は、
第1〜第7の構成のいずれかに記載のナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体が、基板上に堆積している金属酸化物蛍光体素子である。
【0017】
第11の構成は、
基板上の堆積厚みが100nm以下である第10の構成に記載の金属酸化物蛍光体素子である。
【0018】
第12の構成は、
基板上の堆積厚みが10nm以下である第10の構成に記載の金属酸化物蛍光体素子である。
【0019】
第13の構成は、
第1〜第7の構成のいずれかに記載の金属酸化物蛍光体を用いたEL素子である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含むペロブスカイト構造を有する金属酸化物、および、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含みさらに、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされたペロブスカイト構造を有する金属酸化物、から製造されたナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体によれば、励起光として335nmの波長の光を当てたときのPL(フォトルミネセンス)において、波長400〜550nmの範囲にピークを有し、従来の技術に係るナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体よりも高い効率で発光を示し、発光強度の調整が可能な蛍光体であった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】理想的なペロブスカイト結晶の模式図である。
【図2】(a)Dion-Jacobson相の模式図である。(b)Ruddlesden-Popper相の模式図である。(c)Aurivillius相の模式図である。
【図3】Laa−xEuNbの発光特性である。
【図4】La0.99Eu0.01NbナノシートのAFM像である。
【図5】La0.94Eu0.01NbナノシートのAFM像である。
【図6】La0.99Eu0.01Nbナノシート溶液試料のPL測定結果である。
【図7】加熱処理したLa0.99Eu0.01Nbナノシート溶液試料のPL測定結果である。
【図8】加熱処理した各種ナノシート溶液試料のPL測定結果である。
【図9】加熱処理したLa0.94Eu0.01Nbナノシート溶液試料のPL測定結果である。
【図10】加熱処理した各種ナノシート溶液試料のPL測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
金属酸化物のナノシートは厚さが0.8〜2.5nm程度で、縦横幅が50nm〜5000nm程度の単結晶シート構造を有する化合物である。当該構造を有するため、ナノシートには、様々な量子サイズ効果が観察される。そして、当該ナノシートは、ペロブスカイト構造を基礎とした結晶から製造することが出来る。
そこで、まずペロブスカイト構造を基礎とした結晶について簡単に説明し、次に、ペロブスカイト結晶からのナノシート生成について説明し、さらに本発明に係るナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体について説明する。
【0023】
(ペロブスカイト結晶)
元来ペロブスカイトとは、CaTiO(灰チタン石)のことを指す。そして、当該ペロブスカイトと同様の結晶構造をペロブスカイト構造と呼ぶ。例えばBaTiO(チタン酸バリウム)のように、RMOという3元系から成る遷移金属酸化物などがこの結晶構造をとる。
【0024】
図1は理想的なペロブスカイト結晶の模式図である。
図1に示すように、理想的なペロブスカイト結晶は、立方晶系の単位格子をもち、立方晶の各頂点に金属Aが、体心に金属Bが、そして金属Bを中心として酸素Oは立方晶の各面心に配置している。当該理想的なペロブスカイト結晶において、酸素と金属Bから成るBO八面体の向きは、当該BO八面体と金属Aとの相互作用により容易に歪む。この歪みにより、当該理想的なペロブスカイト結晶は、より対称性の低い斜方晶や正方晶に相転移する。
【0025】
ペロブスカイト構造を基礎とした結晶構造において、当該結晶構造が2次元のシート状に広がり、当該2次元シートの上下に別の物質が入り込み、交互に積層している構造をとる物質を層状ペロブスカイト構造と呼ぶ。
ここで、当該層状ペロブスカイト構造の3種について、図2(a)にDion-Jac
obson相の模式図、図2(b)にRuddlesden-Popper相の模式図、
図2(c)にAurivillius相の模式図を示す。
当該層状ペロブスカイト構造の理想的な組成式は、M[An−13n+1]と表わされ、Dion-Jacobson相(DJ相)と呼ばれている(図2(a)参照)。
当該DJ相の他にも、[An−13n+1]における陽イオンの密度がDJ相の2倍である組成式としてM[An−13n+1]と表わされるRuddlesden-Popper相(RP相)がある(図2(b)参照)。
さらに、Mイオンが酸素とビスマスとが岩塩型構造を形成し、酸化ビスマスシート(Bi)と特定されているAurivillius相がある(図2(c)参照)。
結局、層状ペロブスカイト構造は、大きく3種類に分けられる
【0026】
(ナノシートの生成)
上述したように、層状ペロブスカイト構造は、[An−13n+1]の組成式からなるホスト層と呼ばれる酸化物シートと、Mで表わされ、ホスト層間に存在するゲスト種から成っている。層状ペロブスカイトを作製する際、Mをアルカリ金属イオンとして合成するのが一般的である。そして、層状ペロブスカイトが作製されて後は、このゲスト種を様々な陽イオン取り替えることが可能である(インターカレーション性)。インターカレーション性とは、二次元層状構造を壊すことなく、層間のゲスト種を他の物質と入れ替える反応のことを指す。
【0027】
ゲスト種が、ホストのシート層間に取り込まれると、そのゲスト種のサイズに対応したシート層間距離の拡大、すなわち膨潤反応が起こる。ここで、エチルアミンや四級アンモニウムイオンといったゲスト種は、シート層間の剥離に有効である。これは、四級アンモニウムイオンが嵩高く(TBA(テトラブチルアンモニウム)を球形分子と近似すると、直径が0.8nmとなる。)、シート層間に挿入されると、その間隔を機械的に押し上げて、シート層間の静電的相互作用を低減する効果が期待できることが第一である。さらに、四級アンモニウムイオンの正電荷が分子の中心に位置すること、窒素原子からsp混成に基づいて空間的に四方に広がっていることも重要な要因である。
【0028】
層状ペロブスカイトからのナノシートの剥離生成反応は、この膨潤現象が無限にまで進行した究極の姿とも考えることができる。このようにシート層間距離が大きく拡がると、シート層状結晶を構成していたホスト層はばらばらとなり、ナノシートとなって溶液中に分散してコロイド化する。シート層状物質の単層剥離により得られる、ホスト層1枚に相当するナノシートには、以下の特徴がある。
(1) 非常に高い2次元異方性を有する。
(2) 単結晶である。
(3) 表面/内部比が無限大に近い。
(4) 液媒体中に分散したコロイド溶液として得られる。
(5) ナノサイズ効果に由来する特異な物性を示す。
【0029】
(本発明に係るナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体)
金属酸化物のナノシートはマイナス電荷を帯びているため、プラス電荷を持つイオンや分子をシート層間に取り入れることができる。例えば、希土類イオンはプラスの電荷を持っているので、ナノシートと容易に相互作用し、シート層間に取り入れられる。
【0030】
本発明者等は、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含むナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体が、青色発光を示すことも知見した。
また、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含み、さらに、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされたナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体が、青色発光を示すことを知見した。
より具体的には、ナノシートの層間に、希土類イオンの中でもEuイオンを取り込んだ層状酸化物が、強い発光を示すことを知見した。当該強い発光は、励起されたナノシートから、Euへのエネルギー移動が生じたためであると考えられる。
さらに本発明者等は、Nb17組成を有するナノシートの層間に、Tbを入れたものは、強い緑の発光を示すことを知見した。さらに、5A族の金属としてTaを含有するナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体は、青色発光を示すことも知見したものである。
【0031】
さらに本発明者等らは、本発明に係るナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体に、70℃以上、150℃以下の加熱処理を1時間から14日間行うことで、高い発光効率を持ち青色発光するナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体を作製出来ることを知見した。
【0032】
以上の知見から、本発明者等は、上述した各種の発光をおこなうナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体を組み合わせれば、様々な可視光を自由に発光出来ることに想到した。
具体的には、これらのナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体を基板上に重ねることにより、厚さ数10nm程度の発光デバイスを作製できる。さらに当該発光デバイスに電極を設ければ、駆動電圧が10V以下でフルカラー対応の無機EL素子となる。
【0033】
本実施の形態では、無機EL素子に適用出来る発光効率の高い、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体を作製した。具体的には、一般式でLaa−xEuNb(但し、0.95≦a≦1、0≦x≦0.05)の組成を持つナノシートである。当該組成を持つナノシートは、熱処理によって青色に発光する。図3にLaa−xEuNbの発光特性を示す。
【0034】
当該Laa−xEuNb(但し、0.95≦a≦1、0≦x≦0.05)の組成を持つナノシートの相対量子効率は約20%(励起波長:355nm)であった。これに対し、従来の技術に係るSr−Bi−Ta−O組成を有するナノシートの相対量子効率は約1%(励起波長:280nm)であった。
この結果、本実施の形態に係るLaa−xEuNbの組成を持つナノシートは、より長波長の光で励起されながら、従来のナノシートに比べて約10倍、量子効率を向上させることができた。
【0035】
尚、当該相対量子効率の測定方法について説明する。
標準物質として、キニーネ硫酸塩(quinine sulphate:QS)の0.5M HSO溶液を準備した。当該QSの25℃における365nm励起での蛍光量子収率は54.6%である。
測定対象物質と、標準物質とのUV−vis吸収スペクトルを測定し、下式より測定対象物質の量子効率を算定した。
ΦEu3+={(SEu3+×AQS)×ΦQS}/(SQS×AEu3+)・・・
(式)
但し、SEu3+は測定対象物質の蛍光スペクトルの面積、SQSは標準物質の蛍光スペクトルの面積、AEu3+は測定対象物質の吸光度、AQSは標準物質の吸光度、ΦEu3+は測定対象物質の量子効率、ΦQSは標準物質の量子効率54.6%である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明に係る金属酸化物蛍光体と製造方法および発光特性について、実施例を参照しながら説明する。
本実施例は、一般式でLaa−xEuNb(但し、0.95≦a≦1、0≦x≦0.05の組成を有するナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体である。
尚、aの値を0.95〜1の範囲内で変化させ、xの値を0〜0.05の範囲内で変化させることで、Euの含有率の違いによる発光特性の変化などを評価した。
【0037】
(ナノシートの作製方法)
以下、一般式でLa1−xEuNb(但し、a=1、0≦x≦0.05)の組成を有するナノシートの作製方法について、説明するが、当該作製方法により一般式でLa0.95−xEuNb(但し、a=0.95、0≦x≦0.05)の組成を有するナノシートも同様に作製することが出来る。
【0038】
出発物質であるKCO、Nb、Eu、Laを狙いの組成比(KLa1−xEuNb)(但し、a=1、x=0.01またはx=0.05)に係る化学量論比で秤量した。尚、秤量を精密にするために、当該秤量先立ち、各原料を200℃乾燥機中で約2時間乾燥させて出発物質中の水分を取り除く作業を行うことが好ましい。
前記秤量した原料を、メノウ鉢で粉砕しながら混合した。
得られた混合物をペレット状にし、1150℃で40時間焼成して先駆体であるKLa1−xEuNbを作製した。
尚、同様の方法で作製されたKLa0.95−xEuNb(但し、a=0.9
5、x=0.01またはx=0.05)は、層状ペロブスカイト構造の理想値組成よりも若干欠陥がある構造となる。
【0039】
次に、剥離反応を行いKLa1−xEuNb(但し、a=1)からナノシートを取り出すため、まず、ゲスト種のカリウムイオンをプロトンに交換する。
具体的には、得られたKLa1−xEuNbを、1M HCl中に加え、室温下で1週間攪拌した後、遠心分離して固形分を採取し、当該固形分を乾燥させることで、カリウムイオンがプロトンに交換されたHLa1−xEuNb(但し、a=1、x=0.01またはx=0.05)を得た。
【0040】
最後に、当該得られたHLa1−xEuNbからナノシートを剥離させる。
具体的には、得られたHLa1−xEuNbを、0.1M エチルアミン中に加え、室温下で1週間攪拌した後、この溶液を3000rpmで15分間遠心分離させることで、沈殿物を除去し、上澄み液を採取してLa1−xEuNb(但し、a=1、x=0.01またはx=0.05)のナノシート溶液を得た。
そして、同様に、KLa0.95−xEuNb(但し、a=0.95、x=0.01またはx=0.05)から、La0.95−xEuNb(但し、a=0.95、x=0.01またはx=0.05)のナノシート溶液を得た。
【0041】
(作製されたLa1−xEuNbナノシート、および、La0.95−xEuNbナノシートのAFMによる観察)
作製されたLa1−xEuNbナノシート溶液、および、La0.95−xEuNbナノシート溶液を、マイカ基板上に数滴垂らして乾燥させたものをAFMで観察した。
1例として、図4にLa0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)ナノシート、および、図5にLa0.94Eu0.01Nb(但し、a=0.95、x=0.01)ナノシートのAFM像を示す。尚、図4図5はともに、AFM像である。
これら2つのナノシート試料の膜厚を、当該AFM像から求めたところ約1.90nmであった。
【0042】
当該約1.90nmという膜厚値は、イオン半径などから求めたホスト層の膜厚の理想値である1.09nmからは開きがある。当該開きは、ナノシート上にプロトンやエチルアミンイオンが吸着することで、AFMによる実測値が理論値よりも大きくなったものと考えられる。従って、当該AFMによる実測値から、ナノシートの単層剥離ができたものと考えることができる。
【0043】
さらに、La0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)組成のみならず、La0.94Eu0.01Nb(但し、a=0.95、x=0.01)組成でもナノシートが作製出来たことから、層状ペロブスカイト構造の理想値組成を有するナノシートにユウロピウムイオンをドープしても、ナノシートを作製することに支障が無いことが分った。つまり、当該ユウロピウムイオンのドープにより、層状ペロブスカイト構造の理想値組成よりもランタンの組成が減少しても、ナノシートが作製出来ることが、当該AFMの観察結果から確認することが出来た。
【0044】
(ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体の発光特性)
〈室温条件下での発光特性変化〉
La1−xEuNbナノシート(但し、a=1、x=0.01またはx=0.05)溶液の試料を、室温下に置き、作製直後、3週間目、1ヶ月目、2ヶ月目、4ヵ月目における発光特性を評価した。
具体的には、La1−xEuNb(但し、a=1、x=0.01またはx=0.05)ナノシート溶液試料へ、励起光として335nmの波長の光を当て、可視光として415nmの波長の光を当てたときの、PL(フォトルミネッセンス)による蛍光強度の測定を行い、青色可視光のピークの変化を測定した。当該PLによる蛍光強度の測定結果について図6を参照しながら説明する。
【0045】
図6は、縦軸に発光強度、横軸に光の波長をとり、当該光の波長が、335nm付近を細かな網掛けで、415nm付近を粗い網掛けで示し、La0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)ナノシート溶液試料のPL測定の結果をプロットしたグラフである。このとき、La0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)ナノシート溶液試料の作製直後(初日)における測定の結果を実線でプロットし、3週間目における測定の結果を短破線でプロットし、1ヶ月目における測定の結果を1点鎖線でプロットし、2ヶ月目における測定の結果を2点鎖線でプロットし、4ヵ月目における測定の結果を長破線でプロットした。
【0046】
図6に示した結果より、La0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)ナノシート溶液試料の発光特性は、作製直後から、青色の蛍光のピークが僅かではあるが見られた。さらに、波長614nm付近にEuの4f軌道の電子遷移に起因する赤色発光のピークも観察できた。
試料調製からの時間が、3週間、1ヶ月、2ヶ月、4ヵ月と経過するに従い、青色の蛍光波長のピークと、励起波長のピークとは、双方とも上昇することが確認された。
【0047】
〈70℃加熱条件下での発光特性変化〉
La1−xEuNbナノシート(但し、a=1、x=0.01またはx=0.05)の試料を70℃の乾燥機中に設置し、作製直後、10日目、20日目、30日目における発光特性を評価した。
具体的には、上記室温の場合と同様に、La1−xEuNbナノシート溶液試料へ、励起光として335nmの波長の光を当てたときの、PL(フォトルミネッセンス)による蛍光強度の測定を行い、青色可視光のピークの変化を測定した。当該PLによる蛍光強度の測定結果について図7を参照しながら説明する。なお、PL測定は室温下にて行った。
【0048】
図7は、上述した図6と同様であるが、La0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)ナノシート溶液試料の作製直後(初日)における測定の結果を実線でプロットし、10日目における測定の結果を短破線でプロットし、20日目における測定の結果を1点鎖線でプロットし、30日目における測定の結果を2点鎖線でプロットした。
【0049】
図7に示した結果より、La0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)ナノシート溶液試料の発光特性は、作製直後から、青色の蛍光のピークが見られた。 試料調製からの時間が、10日、20日、30日と経過するに従い、青色の蛍光波長のピークと、励起波長のピークとは、上述した室温下よりも短期間で、且つ、著しく強度が向上していることが観察された。
【0050】
次に、Xの値を変えた組成のナノシート溶液試料にも、同様のPL測定をおこなった。
具体的には、La0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)、La0.95Eu0.05Nb(但し、a=1、x=0.05)、La0.94Eu0.01Nb(但し、a=0.95またはx=0.01)およびLa0.90Eu0.05Nb(但し、a=0.95、x=0.05)のナノシート溶液試料を作製し、上記La0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)ナノシ
ート溶液試料の発光特性測定と同様の測定を実施した。当該測定結果を図8に示す。
【0051】
図8は、縦軸に発光強度、横軸に試料調製から当該試料を70℃に加熱した時間をとったグラフである。ここへ、La0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)試料の波長335nmにおける発光を▲と実線で、415nmにおける発光を▲と破線で、La0.95Eu0.05Nb(但し、a=1、x=0.05)試料の波長335nmにおける発光を*と実線で、415nmにおける発光を*と破線で、La0.94Eu0.01Nb(但し、a=0.95、x=0.01)試料の波長335nmにおける発光を◆と実線で、415nmにおける発光を◆と破線で、およびLa0.90Eu0.05Nb(但し、a=0.95、x=0.05)試料の波長335nmにおける発光を■と実線で、415nmにおける発光を■と破線でプロットしたものである。
【0052】
図8より、La0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)ナノシート溶液試料をはじめ、xの値を変えた組成のナノシート溶液試料においても、加熱時間の長短により、発光強度の調整が可能なことが確認された。
また、図8の結果より、ユウロピウムの含有量が少ないナノシート溶液試料の方が、加熱による蛍光強度の上昇が大きい傾向が見られた。
【0053】
〈120℃加熱条件下での発光特性変化〉
La1−xEuNbナノシート試料を70℃のオートクレープ中に設置し、作製直後、6時間、12時間、18時間、24時間における発光特性を評価した。
具体的には、上記室温の場合および70℃条件下の場合と同様に、La1−xEuNbナノシート溶液試料へ、励起光として335nmの波長の光を当て、可視光として415nmの波長の光を当てたときの、PL(フォトルミネッセンス)による蛍光強度の測定を行い、青色可視光のピークの変化を測定した。当該PLによる蛍光強度の測定結果について図9を参照しながら説明する。なお、PL測定は室温下にて行った。
【0054】
図9は、上述した図6図7と同様であるが、La0.94Eu0.01Nb(但し、a=0.95、x=0.01)ナノシート溶液試料の作製直後(0時間)における測定の結果を実線でプロットし、6時間における測定の結果を短破線でプロットし、12時間における測定の結果を1点鎖線でプロットし、18時間における測定の結果を長破線でプロットし、24時間における測定の結果を2点鎖線でプロットした。
【0055】
図9に示した結果より、La0.94Eu0.01Nb(但し、a=0.95、x=0.01)ナノシート溶液試料の発光特性は、蛍光強度の上昇率において70℃のときよりも大きい。この結果、ナノシート溶液試料の作製直後から24時間で、高い青色の蛍光強度が確認された。
【0056】
また、ナノシート溶液試料へ加熱を行った結果、当該ナノシートにおいて青色発光に関わる励起光と可視光のピークとにおいて、加熱後では加熱前と比べて、レッドシフトをしていることが確認された(横軸において→で示した。)。
【0057】
図9より、青色発光を示す発光域が、加熱前と後とで別の発光域に変わったことが確認された。また、Xの値を変えた別の組成のナノシートの試料でも同様の現象が起こることが、測定により確認された。
【0058】
図10は、図8と同様に、縦軸に発光強度、横軸に試料調製から当該試料を120℃に加熱した時間をとったグラフである。ここへ、La0.94Eu0.01Nb(但し、a=0.95、x=0.01)試料の波長335nmにおける発光を◆と実線で、4
15nmにおける発光を◆と破線で、La0.99Eu0.01Nb(但し、a=1、x=0.01)試料の波長335nmにおける発光を▲と実線で、415nmにおける発光を▲と破線で、La0.97Eu0.03Nb(但し、a=1、x=0.03)試料の波長335nmにおける発光を*と実線で、415nmにおける発光を*と破線で、およびLaNb(但し、a=1、x=0)試料の波長335nmにおける発光を+と実線で、415nmにおける発光を+と破線で、La0.95Nb(但し、a=0.95、x=0)試料の波長335nmにおける発光を■と実線で、415nmにおける発光を■と破線でプロットしたものである。
【0059】
図10より、加熱温度120℃においても、図8で説明した加熱温度70℃の場合と同様の現象が起こることが確認された。即ち、加熱時間の長短により、発光強度の調整が可能なことが確認された。
この結果から考えられるのは、ナノシート溶液試料を加熱することで、これに何らかの変化が起こったことである。
まず、加熱をすることで、光学励起体が外部からよりエネルギーを受け取る効率が向上し、特定の励起スペクトルと青色可視光スペクトルとが上昇したことが考えられる。
【0060】
一方、上述したように、青色発光に関わる励起光と可視光とのピークが、加熱後では加熱前と比べて、レッドシフトをしていることが確認されている。このことから、本発明に係るナノシートにおいては、加熱前と加熱後とでは別のエネルギーバンドを経由して青色発光が行なわれていることが考察できる。当該新経由のエネルギーバンドの新たな生成により、加熱を行う前にはなかった青色発光に関わる励起光と可視光ピークが加熱に伴って生成し、加熱時間が増加するごとに、そのピークに関わる物質も増加したために発光強度が上昇したものと考察できる。
【0061】
加熱を行うことで、増加するものはナノシートの欠陥である。結晶などの規則正しく配列している物質は、絶対零度でない限り理想体とは違った位置に他の物質があったり、空孔が存在していたりと、いわゆる格子欠陥が必ず存在する。そして、当該格子欠陥は、温度が増すに連れて増加することが知られている。ナノシートは単結晶が2次元的に結合した構造であるので、加熱によりナノシートの格子欠陥が増えることが考えられる。一方、ナノシートにおいては、格子欠陥の欠陥準位によって発光を行うことが可能である。
本発明に係るナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体も、当該格子欠陥の欠陥準位の生成による青色発光ではないかと考察することができる。
【0062】
(ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体の積層体)
上記得られたナノシート溶液試料を、シリコン基板、スズをドープした酸化インジウム(In:Sn)基板、等の基板上へ、1〜10ml/cmで塗布する。当該塗布方法は、滴下、浸漬、スピンコータを用いる、等の方法が適用出来る。
基板上に塗布されたナノシート溶液を乾燥することで、ナノシート積層薄膜を得ることが出来る。当該乾燥の際、70〜120℃で加熱乾燥することも出来るが、上述したように加熱により発光特性が変化するので、当該変化分を見込んだ乾燥条件を設定することとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含み、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体。
【請求項2】
3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素と、5A族からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素とを含み、さらに、3A族より選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされた、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体。
【請求項3】
前記3A族の元素がランタノイドである、請求項1または2のいずれかに記載のナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体。
【請求項4】
前記5A族の元素がNb、Taである、請求項1〜3のいずれかに記載のナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体。
【請求項5】
一般式Laa−xEuNb(但し、0.95≦a≦1、0≦x≦0.05)で表記されるナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体であって、当該ナノシート構造の縦横幅が50nm以上、5000nm以下、厚みが0.8nm以上、2.5nm以下であるナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の金属酸化物蛍光体であって、さらに70℃以上、150℃以下の加熱処理を施されたナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の金属酸化物蛍光体の製造方法であって、
1A族の元素および/または2A族の元素を含む酸化物と、3A族の元素および/または5A族の元素を含む酸化物とを混合し、焼成して、層状構造を有する金属酸化物を得る工程と、
前記層状構造を有する金属酸化物において、当該層状構造間に存在する1A族の元素および/または2A族の元素をプロトンに置換する工程と、
前記層状構造を有する金属酸化物において、当該層状構造間に存在するプロトンをエチルアミンおよび/または四級アンモニウムに置換して、当該層状構造を有する金属酸化物を、ナノシート構造を有する金属酸化物に剥離する工程とを有する、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の金属酸化物蛍光体の製造方法であって、
1A族の元素および/または2A族の元素を含む酸化物と、3A族の元素および/または5A族の元素を含む酸化物とを混合し、焼成して、層状構造を有する金属酸化物を得る工程と、
前記層状構造を有する金属酸化物において、当該層状構造間に存在する1A族の元素および/または2A族の元素をプロトンに置換する工程と、
前記層状構造を有する金属酸化物において、当該層状構造間に存在するプロトンをエチルアミンおよび/または四級アンモニウムに置換して、当該層状構造を有する金属酸化物を、ナノシート構造を有する金属酸化物に剥離する工程と、
前記ナノシート構造を有する金属酸化物に70℃以上、150℃以下の加熱処理を施す工程とを有する、ナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のナノシート構造を有する金属酸化物蛍光体が、基板上に堆積している金属酸化物蛍光体素子。
【請求項11】
基板上の堆積厚みが100nm以下である請求項10に記載の金属酸化物蛍光体素子。
【請求項12】
基板上の堆積厚みが10nm以下である請求項10に記載の金属酸化物蛍光体素子。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の金属酸化物蛍光体を用いたEL素子。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−46789(P2011−46789A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194719(P2009−194719)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 熊本大学 工学部 物質生命化学科 松本研究室 松永 拓也 卒業論文 論文名:KLa▲1−x▼Eu▲x▼Nb▲2▼O▲7▼の剥離と発光特性
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【Fターム(参考)】