説明

ナノスケール製造技術における流体の分配およびドロップ・オン・デマンド分配技術

【課題】インプリントリソグラフィ・テンプレートのフィーチャを埋めるのに必要な時間を短縮する。
【解決手段】液体を基板上に分配する方法であって、とりわけ相隣る液滴間にガスポケットが生じる複数の互いに相隔たる液滴のパターンを基板上に配置する配置ステップで、パターンを複数のガスポケットの容積が最小となるように形成するステップ、を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、インプリントリソグラフィの技術分野に関するものである。より詳しくは、本発明は、インプリントリソグラフィプロセスにおいてテンプレートのフィーチャを埋めるのに必要な時間を短縮するよう基板上に一定の容積の液体を分配する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超微細加工技術は、例えば、マイクロメートル台以下のフィーチャを設けるなど、非常に小さな構造の作製技術を伴う。超微細加工技術が大きな影響を及ぼしてきたひとつの分野に、集積回路の加工技術がある。半導体加工工業が、基板上に形成する単位面積当たりの回路数を増やしながらより高い製造歩留まりを達成しようと懸命な努力を続ける中にあって、超微細加工技術はますます重要になって来つつある。超微細加工技術は、より優れたプロセス制御をもたらす一方で、基板に形成される構造の最小フィーチャサイズのより大幅な縮小を可能にする。超微細加工技術が採り入れられている他の開発分野としては、バイオテクノロジー、光技術、機械システム等がある。
【0003】
典型的な超微細加工技術として、Willsonらに与えられた米国特許第6,334,960号記載の技術がある。この特許で、Willsonらは構造中にレリーフ像を形成する方法を開示している。この方法は、転写層を有する基板を設けるステップを含む。そして、転写層を重合可能な流体組成物で被覆する。重合可能な流体にモールドを機械的に接触させる。モールドはレリーフ構造を持ち、そのレリーフ構造に重合可能な流体組成物を埋める。次に、重合可能な流体組成物を固化条件と重合条件に曝すことによって、モールドのレリーフ構造と相補形のレリーフ構造を持つ固化ポリマー材層を転写層上に形成する。そして、固化ポリマー材からモールドを分離させて、モールドのレリーフ構造の複製構造を固化ポリマー材に形成したものを得る。次に、転写層と固化ポリマー材層を固化ポリマー材層に対して転写層を選択的にエッチングするための環境に曝すことによって、転写層にレリーフ像を形成する。このような従来の技術による必要時間と最小フィーチャサイズは、とりわけ、重合可能な流体材料の組成によって決まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、現在、インプリントリソグラフィ・テンプレートのフィーチャを埋めるのに必要な時間を短縮する技術を提供することが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、液体の全容積を基板上に分配する方法であって、とりわけ、各々対応した単位容積を有する複数の互いに相隔たる液滴を基板のある領域上に配置するステップを含み、その領域内の液滴の合計容積がその領域に形成しようとするパターンの容積の関数である方法を提供するものである。これらおよびその他の実施態様について、以下より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明のリソグラフィシステムの斜視図である。
【図2】図1に示すリソグラフィシステムの概略立面図である。
【図3】図2に示すインプリント層をなす材料の重合および架橋前の状態を示す概略図である。
【図4】図3に示す材料を放射被曝により転化した架橋ポリマー材の概略図である。
【図5】図1に示すインプリント層からそのパターニング後にモールドを引き離した状態を示す概略立面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態において、上の図2に示す基板の一定領域上に被着したインプリント材の液滴アレイを示す上面図である。
【図7】液滴を基板の一定領域上にテンプレート設計の関数として分配する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本発明の一実施形態のリソグラフィシステム10を斜視図で示し、図示システムは、互いに相隔たる一対のブリッジ状のサポート12とこれらのサポート間に渡したブリッジ14と支持台16を備えている。ブリッジ14と支持台16とは互いに相隔たる。ブリッジ14にはインプリントヘッド18を取り付け、このインプリントヘッドはブリッジ14から支持台15に向けて突き出ており、2軸方向に移動可能である。支持台16上にインプリントヘッド18に対向させて、移動台20が配設してある。移動台20は、支持台16に対してX軸、Y軸方向に移動可能に構成する。当然理解されるように、インプリントヘッド18は、X軸、Y軸沿いに、またZ軸沿いにも移動することが可能であり、移動台20もX軸、Y軸沿いに移動可能である上、Z軸沿いにも移動可能である。典型的な移動台としては、2002年7月11日出願の「ステップ・アンド・リピートインプリント・リソグラフィシステム(Step and Repeat Imprint Lithography Systems)」という名称の米国特許出願第10/194,414号に開示された移動台がある(なお、同特許出願は本願譲受人に譲渡されており、その全体を参照により本願に援用する)。システム10には、化学線を移動台20に入射させるための放射線源22が結合されている。図示のように、放射線源22は、ブリッジ14に取り付けられ、放射線源22に接続された発電機23を含む。システム10の動作は、通常、これとデータ通信するプロセッサ25によって制御する。
【0008】
図1、2において、インプリントヘッド18には、モールド28を有するテンプレート26が取り付けられている。モールド28は、互いに相隔たる複数の凹部28aと凸部28bによって画成される複数のフィーチャを備える。これらの複数のフィーチャは、移動台20に載置された基板30に転写する原パターンである。そのために、インプリントヘッド18または移動台20あるいはこれらの両方によってモールド28と基板30との間の「距離d」を変える。このようにして、モールド28上のフィーチャは基板30の流動性領域にインプリントされる。これについて以下にさらに詳しく説明する。放射線源22は、モールド28が放射線源22と基板30との間となる位置に配置される。それ故、モールド28は、放射線源22より発生する放射線に対して実質的に透過性を持つ材料で作製される。そのため、モールド28は、水晶、溶融石英、シリコン、サファイヤ、有機ポリマー、シロキサンポリマー、ホウケイ酸ガラス、フッ素樹脂あるいはこれらの組合せを含む材料で形成される。さらに、テンプレート26も、金属のみならず上記のような材料で形成することができる。
【0009】
図2、3において、インプリント層34のような流動性領域は、基板30の輪郭が実質的に平面である面32の部分に配置する。一つの典型的な流動性領域は、基板30上に材料36aの互いに相隔たる複数の離散状液滴36として被着したインプリント層34で構成され、これについて以下にさらに詳しく説明する。液滴36を被着するための典型的なシステムとしては、2002年7月9日出願の「液体を分配するためのシステムおよび方法(System and Method for Dispensing Liquids)」という名称の米国特許出願第10/191,749号に開示されたシステムがある(なお、同特許出願は本願譲受人に譲渡されており、その全体を参照により本願に援用する)。インプリント層34は、原パターンをインプリント層に記録し、記録パターンを形成することが可能な材料36aで形成するために、選択的に重合され、架橋される。材料36aの典型的な組成物としては、2004年2月27日出願の「ケイ素含有材料からなるエッチングマスク用組成物(Composition for an Etching Mask Comprising a Silicon-Containing Material)」という名称の米国特許出願第10/789,319号に開示された組成物がある(同特許出願はその全体を参照により本願に援用する)。図4に示すように、材料36aは多くの箇所36bで架橋されて、架橋ポリマー材36cを形成する。
【0010】
図2、3、5に示すように、インプリント層34に記録されたパターンは、部分的には、モールド28との機械的接触によって作り出される。そのためには、距離「d」を縮めてインプリント液滴36をモールド28と機械的に接触させ、液滴36を押し広げることによって、基板の面32の全体を材料36aが覆う連続した構造を持つインプリント層34を形成する。一実施形態においては、距離「d」を縮めることによってインプリント層34の小部分34aを凹部28aに入り込ませ、そこを埋めさせる。
【0011】
凹部28aを埋めやすくするために、材料36aは、面32を材料36aの連続構造で覆いかつ完全に凹部28aを埋めるのに必要な特性を有する。この実施形態においては、所望の距離(通常は最小距離)「d」に達すると、凸部28bと重なるインプリント層34の小部分34bが残り、結局小部分34aは厚さt1として、小部分34bは厚さt2として残る。厚さt1とt2は、用途に応じて任意の所望の厚さとすることができる。通常、t1は、図5により詳しく示すように、t1−t2≦3μとなるよう選択する。小部分34bは、通常、残留層と称する。
【0012】
図2、3、4を参照して、所望の距離「d」になったならば、放射線源22から材料36aを重合させ、架橋させる化学線を照射して、架橋ポリマー材36cを形成する。結果として、インプリント層34の組成物は、材料36aから固体の架橋ポリマー材36cに転化する。具体的に言うと、図5に比較的明確に示すように、架橋ポリマー材36cは固化して、インプリント層34の面34cをモールド28の面28cの形状と合致する形状にする。インプリント層34が、図4に示す架橋ポリマー材36cに転化したならば、図2に示すインプリントヘッド18を距離「d」が大きくなる向きに移動させて、モールド28とインプリント層34とを引き離す。
【0013】
図5において、基板30のパターニングを完成させるために、さらに他の処理を行うことが可能である。例えば、基板30とインプリント層34をエッチングしてインプリント層34のパターンを基板30に転写し、パターン化面を得ることができる。エッチングを容易にするため、インプリント層34を形成する材料をいろいろ変えることにより、基板30に対する相対エッチング速度を所望の通りに設定することも可能である。
【0014】
図2、3、6を参照して、ナノメートル台のフィーチャ、例えば凹部28aや凸部28b等を非常に高密度で有するモールドの場合、モールド28と重なる基板30の領域40の全面を覆うように液滴36を押し広げて凹部28aを埋める作業は、長い時間が必要な場合があり、これによってインプリントプロセスのスループットが低下することがある。インプリントプロセスのスループットを高めやすくするために、液滴36は、基板30の全面にわたって押し広げかつ凹部28aを埋めるのに必要な時間を最小にするよう分配する。液滴36をS1とS2として示す相隣る液滴36間の間隔が最小となるように二次元行列アレイ42として分配することによって行われる。図示のように、この例の場合、行列アレイ42の液滴36は、6行m1〜m6と6列n1〜n6として配列させる。しかしながら、液滴36は、基板30上で実際上どのような二次元配列にすることも可能である。ここで求められるのは、インプリント層34を形成するのに必要な材料36aの全容積をVtとして、行列アレイ42中の液滴36の数を最大にすることである。これは、相隣る液滴36間の間隔S1とS2を最小にすることでもある。さらに、液滴の部分集合中の各液滴36の材料36aの量はそれぞれに対応した実質的に同一の量、すなわち規定の単位容積Vuであることが望ましい。これらの基準条件に基づいて、行列アレイ42中の液滴36の総数nは次式で求められる。
n=Vt/Vu (1)
式中、VtとVuの意味は上に定義した通りである。ここで、液滴36の総数nが次式で定義される液滴36の正方行列アレイを仮定する。
n=n1×n2 (2)
式中、n1は第1の方向に数えた液滴数であり、n2は第2の方向に数えた液滴数である。第1の方向、すなわち一次元で相隣る液滴36間の間隔S1は次式で求められる。
1=L1/n1 (3)
式中、L1は領域40の第1の方向の長さである。同様にして、上記第1の方向を横切る第2の方向で相隣る液滴36間の間隔S2は次式で求められる。
2=L2/n2 (4)
式中、L2は領域40の第2の方向の長さである。
【0015】
材料36aの各液滴36に対応した単位容積が分配装置によって決まることを考慮すると、上記間隔S1とS2は液滴36を形成するために使用する液滴分配装置(図示省略)の分解能、すなわち動作制御によって左右されるということが分かる。詳しく言うと、分配装置(図示省略)は、液滴36を精密に制御できるように、各液滴36に最小量の材料36aを備えることが望ましい。このようにして、各液滴36中の材料36aを移動させなければならない領域40上の面積が最小になる。これによって、凹部28を埋め、かつ材料36aの連続層で基板を覆うのに必要な時間が短縮される。
【0016】
液滴36の分配は、基板30の全面に材料を一回で供給するか、または米国特許出願第10/194,414号開示のフィールド・ツー・フィールド分配法(これは米国特許出願公開公報第2004/0008334号記載の発明である)、あるいはこれら2つの方法の組合せによって達成することができる。そのためには、ピエゾインクジェットベースの技術またはマイクロソレノイドベースの技術による分配システムを使用することが可能である。その結果、分配システムは、材料36aを分配するのにシングルノズルでも、リニアノズルアレイでも、あるいは方形ノズルアレイでも使用することができ、リニアノズルアレイや方形ノズルアレイではノズル数が100を超える。これらのノズルアレイのノズルは、最高4kHzで分配動作を行うことができる。ノズルアレイのノズルは、オン・オフ容積制御機能付きあるいはグレースケール容積制御機能付きのものが入手可能であり、グレースケール容積制御機能付きのものでは、容積1〜42ピコリットル(pL)の液滴を分配することができる。フィールド・ツー・フィールド分配法を用いる場合は、ノズルアレイの各ノズルは、実質的に同じ組成物の材料36aを分配することができるが、他の実施形態においては、ノズルアレイの各ノズルが異なる組成物の材料36aを分配するようにすることも可能である。
【0017】
インクジェットノズルの例としては、英国ケンブリッジに本拠を置くザール・コーポレーション(Xaar Corporation)より入手可能なOmnidotや、米国ニューハンプシャー州レバノンに本部を置くディマトリクス・コーポレーション(Dimatix Corporation)の一部門であるスペクトラ(Spectra)社から入手可能なインクジェットノズルを用いることができる。典型的なノズルアレイとしては、126ノズルを備えたマルチジェットノズルシステムがあり、これは上記ザール・コーポレーションが部品番号XJ126で販売している。さらに、超音波スプレーヘッド用いて液滴36を分配する噴霧スプレープロセスを使用することも可能である。さらに、材料36aが例えば20センチポアズ以上というような高い粘度を持つ場合は、ザール・コーポレーションから入手可能なLeopardを用いることができ、このスプレーノズルでは、材料36aを加熱して粘度を噴射可能範囲まで下げることも可能である。
【0018】
薄くて一様な残留層を得、これによってフィールドをインプリントするのに要する時間を最小にするために、本発明ではいくつかの技術的方法を用いることができる。
【0019】
図1〜3と図7のフローチャートを参照して説明する。例えば、液滴36は、テンプレート26の設計の関数として、またインプリント層34に閉じ込められたガスを除去するための適切な環境ガス(Heのような)を用いて分配することが可能である。ここでは、材料36aをテンプレート26の設計の関数として分配する一実施形態について説明する。液滴36は、例えば1〜1,000pL台の小さい容積Vsを持つ。まず、フィーチャがないテンプレート26の場合を考える。基板30上に所与の厚さの残留層を得るには、テンプレート26が材料36aの全量をテンプレート26のアクティブエリアに閉じ込めるものと仮定して、ステップ100で、必要となる材料36aの全容積V1を計算する。「m」行×「n」列の格子配列を仮定して、ステップ102でm×n×Vs=V1となるような「m」と「n」を計算する。「m」と「n」が決まったならば、ステップ104で、各格子点の回りでテンプレート26のアクティブフィールドのほぼ総面積を(m×n)で割った面積を持つ制御領域Acに相当する多角形エリアを見つける。ステップ106で、テンプレート26が制御領域Ac全体にわたって凹所をなしていない(フィーチャなし)各格子位置に、容積=Vsの材料を分配する。ステップ108で、制御領域Acがテンプレート26上で全面的に凹所をなしている格子点には、容積=(Vs+Ac×d)の材料を分配する(ただし、dはテンプレート26のエッチング深さである)。ステップ110で、制御領域Acの一部(例えばJ%)がテンプレート26で凹所をなしている格子点には、容積=(Vs+Ac×d×J/100)の材料を分配する(ただし、dはテンプレート26のエッチング深さである)。
【0020】
図2、7において、インプリントヘッド18の動作と液滴36の分配はこれとデータ通信を行うプロセッサ21により制御することが可能である。メモリ23はプロセッサ21とデータ通信を行う。メモリ23は、コンピュータ可読プログラムを実装したコンピュータ可読媒体よりなる。コンピュータ可読プログラムには、図7に示す上記計算のアルゴリズム、あるいはこれと同様に各格子点で分配する材料の容積を計算するための何らかのものを実行する命令が含まれる。このようなソフトウェアプログラムは、テンプレート26を作製するために用いられるテンプレート設計ファイル(GDS IIファイルのような)を処理できるものを用いることも可能である。
【0021】
図2、3、7を参照して説明すると、各制御領域Acで分配するべき材料の容積は、複数の液滴36中の1液滴当たりの容積が与えられている場合は、各制御領域Ac内の液滴36のパターンを変えることにより、または液滴36のパターンが与えられている場合は、各制御領域Ac内の複数の液滴36中の1液滴当たりの容積を変えることにより、あるいはこれら2つの方法を組み合わせることによって得ることができる。さらに、液滴パターンおよび/または液滴当たり容積の経験的定量法を用いて、相隣る制御領域Ac間に形成される移行領域についての所望の特性を得ることも可能である。
【0022】
上記の方法では、基板30の一定領域における材料36aの必要量が得られ、しかも複数の液滴36中の1つの液滴の材料36aがそれらの液滴36中の隣の1つの液滴の材料36aと合わさるまでに移動する距離を最小限に抑えられ、その結果液滴36が凹部28aを埋めるのに必要な時間が短くなる。2つ以上の液滴36が合わさるとき、インプリント層34の材料36aが合わさる境界の近傍にガスポケットが生じる可能性がある。
【0023】
液滴36が凹部28aを埋めるのに要する時間(テンプレート26の「フィルタイム」と定義する)を最小にする一方で、インプリント層34を実質的に無ボイドにすることが求められる。テンプレート26のフィルタイムを最小にするには、例えば、互いに合わさる材料36a間の上記ガスポケットを材料36aが追い出すのに必要な時間を最小にすればよい。そのためには、各液滴36が実質的に同じ容積を持つと仮定して、例えばガスポケットの容積の平均値と分散を最小にすればよい。その結果として、互いに合わさる材料36aによってガスポケットをより迅速に追い出すことができるガスポケット容積の平均値と分散を最小にするための液滴36のパターン例としては、六角形と三角形があるが、特にこれらに限定されるものではない。さらに、残留層の厚さが30〜40nm以下の一定の事例で、テンプレート26のフィルタイムが許容可能であることが確認されている。
【0024】
その上、複数の液滴36中の1つの液滴の材料36aがそれらの液滴36中の隣の1つの液滴の材料36aと合わさるまでに移動する上記の距離を最小にすることは、材料36aの粘性抵抗を小さくし、その結果材料36aの速度がより大きくなると共により大きな力でガスポケットを追い出すことになり、したがってテンプレート26のフィルタイムがさらに短くなる。さらに、ガスポケットは、幅がミクロン台、厚さがサブミクロン台の小さな容積の領域ならば、迅速に消散し、高速インプリントプロセスが可能になる。
【0025】
フィルタイムをさらに短くするため、互いに合わさる材料36aがガスポケットをより高速で追い出すことができるように、ガスポケットの移動速度を高めることも可能である。そのためには、ガスポケットの移動速度はこれにかかる流体圧力に比例するということを利用する。この流体圧力は、毛管作用力と液滴36に作用するすべての外力の関数であり得る。流体圧力を大きくするには、毛管作用力を大きくすればよく、毛管作用力は図5に示す厚さt2を最小にすることにより最大化することができる。
【0026】
ここで留意しなければならないのは、液滴36で分配される容積は温度の関数として変化するということである。例えば、材料36aの粘度、そして材料36aをノズルから駆出するポンプを作動させるPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)材料の寸法は温度によって変化し、これらはどちらも液滴36中の所与の液滴の容積を変化させる。ピエゾマイクロジェットノズルには、ザール社の126モールドリニアアレイの場合のように、ポンプ温度を連続的に制御する組み込みモールド温度センサを備えることが可能である。温度と電圧を関連づける較正曲線を作成することにより、特定容積のノズル出力を維持することができる。この較正曲線は、実測される温度変動に対応して電圧レベルを調整するべくリアルタイムで使用することができる。
【0027】
さらに、散発的・偶発的な材料の供給失敗によって液滴36が欠落してしまうことがないようにするため、材料36aを同じ位置で複数回ノズルから供給することによって複数の液滴36の部分集合または各液滴を形成し、その合計量として各液滴36が所望の容積を備えるようにした分配技術を用いることも可能である。とりわけ、複数の液滴36中の所与の液滴の容積は、同じ位置でノズルから分配される複数の材料容積の平均とすることができる。
【0028】
さらに、基板30上の所与の領域について、複数の液滴36を液滴の局所膜厚が液滴36のN以上の平均となるように合着させ、これによって、複数の液滴36中の1つの液滴が全く分配されなくても、その液滴の局所膜厚が理想値と(所望膜厚/N)nmしか異ならないようにする。したがって、Nが十分に大きければ(例えば100)、複数の液滴36中で欠落した液滴は無視可能になる。一例として、フィールドサイズがXmm×Xmmの場合、膜厚100nmの残留層を得るためには、テンプレート26にフィーチャが全くない場合、材料の必要最小容積は(0.1×X2)nL(ナノリットル)になる。テンプレート26にフィーチャがある場合は、より多くの材料36aが必要となり、それだけNをさらに大きくすることになろう。したがって、フィーチャなしのテンプレート26は最悪の場合を想定した事例である。ピエゾジェットでは、1pL(ピコリットル)というような非常に小容積の材料を供給することができる。ここで、基本滴量単位が80pLであるとすると、RLT誤差(単位nm)はフィールドサイズの代表長さ(lf、単位mm)(多角形フィールド領域を含むmm2単位のフィールド面積の平方根と定義する)の2乗に反比例する。これはをグラフで示すと次のようになる。
【表1】

複数の液滴36中の1つの液滴欠落による膜厚の許容変動が5nmであるとすると、lfは約4mmとなり、これはインプリント層34の結果の厚さには無関係である。
【0029】
ここで留意しなければならないのは、液滴36の容積が小さくなると蒸発の影響が増大するということである。これについては、液滴36における蒸発量を精密に測定することにより、蒸発分を補償するよう材料の分配容積を増やすことができる。例えば、最初に液滴36を分配した基板30の領域では、最後に液滴36を供給した領域と比較してより多量の材料36aが必要になることがある。最初に分配した液滴36は、テンプレート26と基板30がこれらの間に液体を捕捉するまでにより長い時間が経過するので、より多く蒸発する。
【0030】
図3、5を参照して説明すると、さらに他の実施形態においては、液滴36は界面活性剤プレコンディショニング溶液を含むことも可能である。界面活性剤プレコンディショニング溶液は、例えば、液滴36がテンプレート26に接触するとき界面活性剤プレコンディショニング溶液の一部がテンプレートに付着するようにして用いることができる。界面活性剤プレコンディショニング溶液を含む液滴36は、上に説明したような方法を用いてテンプレート26のフィルタイムを短くするようなパターンで基板30上に配置することが可能である。しかしながら、さらに他の実施形態においては、液滴36は、相隣る液滴36が合わさるとき起こり得る界面活性剤の蓄積を抑制すると共に、液滴36が凹部28aを埋めやすくするようなパターンで基板30上に配置することができる。
【0031】
さらに他の実施形態においては、基板30と液滴36との間にアンダーレイヤ(図示省略)を置くことが望ましい場合がある。このアンダーレイヤ(図示省略)は、テンプレート26に対しては低い面エネルギー相互作用を示し、かつ液滴36に対しては高い面エネルギー相互作用を示す組成物で構成することができる。アンダーレイヤ(図示省略)の組成物は、そのスピンオン被着を容易にするために、最小の蒸発速度と約10〜100センチポアズ(cps)の粘度を持った組成物を用いることができる。アンダーレイヤ(図示省略)と液滴36とは互いに混和性でもよく、またアンダーレイヤ(図示省略)は、液滴36の溶剤であってもよい。
【0032】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明した。上に記載した開示技術に対しては、本発明の範囲を逸脱することなく多くの変更および修正をなすことが可能である。したがって、本発明の範囲は、上記説明によって限定するべきではなく、特許請求の範囲と共にその全般的均等物に基づいて決定するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を基板上に分配する方法であって、相隣る液滴間にガスポケットが生じる複数の互いに相隔たる液滴のパターンを前記基板上に配置する配置ステップで、前記パターンを前記複数のガスポケットの容積が最小となるように形成するステップ、を含む方法。
【請求項2】
前記パターンをさらに、前記複数の各ガスポケットの前記容積の平均が最小となるように形成する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パターンをさらに、前記複数の各ガスポケットの前記容積の平均および分散が最小となるように形成する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パターンを配置する配置ステップがさらに、前記複数の互いに相隔たる液滴を基本的に六角形パタ―ンおよび三角形パターンからなる群より選択されるパターンに配置するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の互いに相隔たる各液滴が実質的に同じ容積を有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記配置ステップがさらに、複数の容積の材料を分配することによって前記複数の互いに相隔たる液滴の中の1つの液滴を形成するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記配置ステップがさらに、パターニングプロセスにおける前記複数の互いに相隔たる液滴の蒸発損を補償するように前記複数の互いに相隔たる液滴を分配するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記配置ステップがさらに、前記複数の互いに相隔たる液滴の中の1つの液滴と前記複数の互いに相隔たる液滴の中の隣の1つの液滴との間の間隔を最小にするステップを含む請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−171747(P2011−171747A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41521(P2011−41521)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【分割の表示】特願2007−515597(P2007−515597)の分割
【原出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(503193362)モレキュラー・インプリンツ・インコーポレーテッド (94)
【Fターム(参考)】