説明

ナノファイバーの合糸方法及び装置

【課題】電荷誘導紡糸法により製造したナノファイバーから成る高強度でかつ均質な糸条を安定して生産性よく低コストにて製造する。
【解決手段】所定経路に沿って芯糸6を供給し、紡糸ヘッド3の芯糸6の周囲に配置された小穴10から高分子物質を溶媒に溶解した原料液20を流出させ、第1の高電圧発生手段21にて小穴10の周囲に配置された電界生成電極4と小穴10との間に電界を生成して小穴10から流出する原料液20に電荷を帯電させ、小穴10から流出した原料液20を静電爆発させてナノファイバー2を生成し、生成したナノファイバー2を芯糸6の移動方向若しくはそれとは逆方向の所定位置に配置した収集電極5に向けて旋回流動させ、ナノファイバー2を芯糸6に絡ませた糸条8を回収するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子物質から成るナノファイバーを製造してこれを糸条にするナノファイバーの合糸方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子物質から成るサブミクロンスケールの直径を有するナノファイバーを製造する方法として、電荷誘導紡糸法(エレクトロスピニング法とも称される)が知られている。従来の電荷誘導紡糸法は、高電圧を印加した針状のノズルに高分子溶液を供給し、この針状のノズルから線状に流出する高分子溶液に電荷を帯電させることで、この電荷を帯電された線状の高分子溶液中の溶媒が蒸発するのに伴って帯電電荷間の距離が小さくなり、帯電電荷間に作用するクーロン力が大きくなり、そのクーロン力が線状の高分子溶液の表面張力より勝った時点で線状の高分子溶液が爆発的に延伸される現象が生じ、この静電爆発と称する現象が、一次、二次、場合によっては三次等と幾何級数的に繰り返されることで、サブミクロンの直径の高分子から成るナノファイバーが製造されるものである。
【0003】
従来の電荷誘導紡糸法では、1本ノズルの先から1〜数本のナノファイバーしか製造されないので、生産性が上がらないという問題があった。そこで、ナノファイバーを多量に製造する方法として、複数のノズルを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、バレルに貯蔵された高分子溶液をポンプにて帯電された多数のニードル状のノズルに供給して吐出させることで多量のナノファイバーを作り出し、これをノズルと異なる極性に帯電されたコレクタにて回収し積層しながら搬送することで、ナノファイバーが3次元のネットワーク構造に積層した空隙率が非常に高い高多孔性の高分子ウエブを製造する技術が開示され、従来の実験的レベルから実用性レベルに高められている。
【0004】
また、従来、電荷誘導紡糸法によるナノファイバーがウエブとして製造され、人造皮革、フィルター、おむつ、生理用ナプキン、癒着紡糸剤、ワイピングクロス、人造血管、骨固定器具など多様に活用されているが、10MPa以上の力学物性を得るのが困難で広範囲な用途への利用に限界があること、このように製造されたナノファイバーのウエブを連続した糸条にして力学物性を高めようとすると、ウエブを一定長さに切断して短繊維を製造し、この短繊維から紡績糸を製造する別途の紡績工程を経なければならない問題があることを指摘した上で、電子紡糸法にて製造されたナノファイバーのウエブを用いて連続的に糸条を製造する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2では、列をなして帯電されたノズルからノズルと逆極性に帯電されたコレクタ内の水または有機溶媒の静的な表面上にナノファイバーを紡糸してウエブをなすように堆積させ、この堆積するウエブを、ノズルの列方向で見た一方の末端側より1cm以上離れた地点から一定の線速度で回転する回転ローラによって引き上げて連続した糸条とし、圧搾、延伸、乾燥および巻取りを行って連続した糸条を得ている。また、連続した糸条は撚糸することもできるとしている。
【特許文献1】特開2002−201559号公報
【特許文献2】特表2006−507428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、各ノズルから真下にナノファイバーを生成してコレクタ上のノズルに対応した位置へ静的に堆積させながら、その堆積域の広がりにより各ノズルから生成されたナノファイバー同士を絡み合わせて細帯状のウエブを形成し、このウエブの一端からナノファイバー群を引出すことでウエブの他端側に連続しているナノファイバー群を順次引き出し、連続した糸条に集束させるものであり、そのため各ノズルから紡糸されたナノファイバーの堆積が静的でほぼ同等であるのに対し、引き出し作用が引き出し側に近い堆積域に集中しやすくなる関係から、引き出し側に近い堆積域と遠い堆積域とでナノファイバーの引出し量とに差が生じる恐れがあり、その場合引出し量の差が堆積量の差を来たし、堆積量に差を生じた状態で引き出されることで連続した糸条の太さや力学物性を適正に制御するのは困難で安定しないという問題がある。さらに、引出し作用が引き出し側から遠い側の堆積域にも均等に及ぶようにするのに引出し速度を抑える必要があり大量に製造するのも困難であるという問題がある。
【0006】
そこで、このような問題を解決するため、図5に示すようなナノファイバー合糸装置41が考えられた。図6において、ナノファイバー合糸装置41は、ナノファイバー生成手段42と、収集電極43と、芯糸供給手段44と、回収手段45を備えている。ナノファイバー生成手段42は、垂直な軸心周りに回転自在に支持され、周面に小穴47が多数形成されている円筒容器46と、円筒容器46内に高分子溶液を供給する高分子溶液供給手段(図示せず)と、円筒容器46に高電圧を印加する第1の高電圧発生手段48と、円筒容器46を矢印a方向に回転駆動する回転駆動手段(図示せず)と、円筒容器46の上部に配設された反射電極49と、反射電極49に円筒容器46と同極の高電圧を印加する第2の高電圧発生手段50とを備え、円筒容器46の小穴47から流出した高分子溶液を遠心力と静電爆発にて延伸させてナノファイバー51を生成し、生成されたナノファイバー51を反射電極49にて円筒容器46の下方に向けて旋回しつつ流動させるように構成されている。
【0007】
収集電極43は円板状で、円筒容器46の下方に間隔をあけて同軸状にかつ回転自在に配設され、その中心部に収束されたナノファイバー51が貫通する貫通孔52を有しており、第3の高電圧発生手段53にて円筒容器46や反射電極49とは逆極性の高電圧を印加するように構成され、かつ回転駆動手段(図示せず)にて収集電極43を矢印a方向とは逆の矢印b方向に回転駆動するように構成されている。芯糸供給手段44は、ナノファイバー生成手段42の上方に配設され、芯糸54を繰り出して円筒容器46の軸心位置直上から下方に供給するように構成され、回収手段45は、収集電極43の下方に配設され、撚られて収束した糸条55を収集電極43の貫通孔52を貫通させて回収するように構成されている。
【0008】
以上の構成において、ナノファイバー生成手段42の円筒容器46内に高分子溶液を供給しつつ円筒容器46を高速で回転駆動すると、円筒容器46内の電荷を帯電された高分子溶液に遠心力が作用し、各小穴47から流出するとともに遠心力の作用で延伸されて細い高分子線状体が生成され、さらに一次〜三次等に至る静電爆発にて爆発的に延伸されてナノファイバー51が効率的に製造され、生成されたナノファイバー51は反射電極49にて円筒容器46の下方に向けて円筒容器46の軸心回りに旋回しながら流動する。さらに、旋回しながら下方に向けて流動されたナノファイバー51は、下方に配設された収集電極43に向けて強く吸引され、かつその収集電極43がナノファイバー51の旋回流動方向とは逆方向に回転していることで、旋回流動しているナノファイバー51がより強く撚りをかけられて収束・合糸され、効率的に高強度の糸条55が形成される。形成された糸条55は、収集電極43の中心部の貫通孔52を通り、回収手段45にて回収される(特願2007−141907号参照。)。
【0009】
しかし、図5に示したような構成では、ナノファイバー生成手段42に対向させて大きな面積の平板状の収集電極43を配置しているので、図6に示すように、ナノファイバー生成手段42と収集電極43間に発生する電気力線56が収集電極43の全面に広がって形成され、この電気力線56に沿ってナノファイバー51が流動しようとすることで、ナノファイバー51が芯糸54に巻き付く位置が一定せず、そのため生成される糸条55の太さが一定せず、糸条55の太さにばらつきが発生するという問題があった。
【0010】
そこで、生成されたナノファイバーを、帯電したナノファイバーに対して電位差を有するとともに、軸心部に貫通孔を有しかつ最大外径が紡糸ヘッドとの間の距離の1/10以下の収集電極にて吸引しつつ旋回させて集束することで撚りをかけ、撚られたナノファイバーを、収集電極の貫通孔を通して回収するようにし、紡糸ヘッドから収集電極の軸心部の周囲に収束する電気力線を安定して形成し、それによって旋回して流動するすべてのナノファイバーをこの電気力線に沿って流動させて収集電極の軸心部に安定して集束させ、太さにばらつきのない均質な糸条を安定して生産性よく低コストにて合糸する方法が提案されている(特願2007−234762号参照)。
【0011】
ところが、このような合糸方法においても、紡糸ヘッドの原料液が流出する複数の小穴と収集電極とが正対せずかつそれらの間には静電爆発によってナノファイバーが生成するのに必要な比較的大きな距離を取る必要があるため、小穴に電荷が十分に誘導されず、そのため原料液に十分に電荷を帯電させることができず、ナノファイバーの生成を安定して確保することができないという問題があった。また、この問題を解消するため、紡糸ヘッドと収集電極のそれぞれに互いに逆極性の高電圧を印加するように構成した場合には、紡糸ヘッドを構成する回転容器の絶縁構成が複雑になるとともにその回転機構への高電圧の漏洩を防止するのが困難であるという問題があった。また、原料液を回転容器の小穴から遠心力で流出させた場合、原料液が遠心力にて制限を受けずに不安定に広がるため、収集電極に向けて移動させる力が安定的に作用せず、収集電極での均一な合糸作用が安定しないという問題があった。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、電荷誘導紡糸法により製造したナノファイバーから成る高強度でかつ均質な糸条を安定して生産性よく低コストにて製造することができるナノファイバーの合糸方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のナノファイバーの合糸方法は、芯糸を供給する工程と、芯糸の周囲に配置された小穴より高分子物質を溶媒に溶解した原料液を流出させ、小穴の周囲に配置された電極と小穴との間に電界を生成し、小穴から流出する原料液に電荷を帯電させる原料液流出帯電工程と、小穴から流出した原料液の静電爆発により生成したナノファイバーを芯糸の移動方向若しくはそれとは逆方向の所定位置に配置した収集電極に向けて旋回流動させるナノファイバー旋回流動工程と、芯糸にナノファイバーが絡まった糸条を回収する回収工程とを有するものである。
【0014】
なお、原料液としては、各種の合成樹脂材料や核酸や蛋白質などの生体高分子などの高分子物質(本発明では、分子量が10000以上の一般的な高分子物質に限らず、分子量が1000〜10000の準高分子物質も含める)を溶媒に溶解したものが好適に適用される。また、上記高分子物質は単体物に限らず、各種高分子物質の混合物であっても良い。
【0015】
上記構成によれば、小穴と電極とが略対向しておりかつそれらの間にナノファイバーを生成するのに必要とする大きな距離を取る必要がないので、小穴と電極の何れか又は両方に極端に高い電圧を印加しなくてもそれらの間に十分高い電界を生成させて小穴に確実にかつ十分に電荷を誘導させることができ、流出する原料液に電荷を十分に帯電させることができ、流出した原料液に確実に静電爆発が生じてナノファイバーが生成され、生成したナノファイバーが収集電極に向けて旋回流動することで芯糸に確実に絡まり、芯糸にナノファイバーが絡まった糸条を回収することで、高強度でかつ均質な糸条を安定して合糸することができ、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができる。
【0016】
また、原料液流出帯電工程において、小穴を芯糸の回りに回転させることにより原料液を遠心力で流出させるとともに生成されるナノファイバーを芯糸の回りに旋回させると、電荷を帯電された原料液が電界の作用で電極に向けて流出するだけでなく、遠心力の作用でも流出することで、小穴から線状に流出した原料液を遠心力でも延伸させることができてより効率的にナノファイバーを生成でき、かつ小穴の回転によりナノファイバーが強く旋回流動することで芯糸に強く撚りを掛けられて絡まり、一層高強度の糸条を製造することができる。
【0017】
また、ナノファイバー旋回流動工程において、小穴側から収集電極側に向けて旋回する気体流を送風するとともに収集電極の近傍で気体流を吸引し、形成された収集電極の近傍で集束する旋回気体流にて生成したナノファイバーを芯糸に絡ませると、生成されたナノファイバーが旋回する気体流に乗って旋回流動し、さらにその旋回気体流は収集電極の近傍で吸引されることで、旋回半径が小さくなってより強い旋回流となるため、ナノファイバーがより強く撚りを掛けられて芯糸に絡まり、一層高強度の糸条を製造することができる。また、この場合には小穴を芯糸の回り回転させず、収集電極もその軸心回りに回転させなくてもナノファイバーが旋回流動して芯糸に絡まって糸条を製造することもできるが、小穴の芯糸の回りの回転や収集電極の芯糸の回りの回転を併用することでより高強度の糸条を製造することができる。
【0018】
また、ナノファイバー旋回流動工程において、芯糸の周囲を取り囲む風洞内で生成したナノファイバーを芯糸に絡ませると、生成されて旋回流動するナノファイバーの旋回範囲が風洞によって確実に規制されることで、ナノファイバーを安定して芯糸に絡ませることができ、安定して糸条を製造することができる。また、この風洞を配設した構成では、上記のように旋回する気体流を送風して収集電極の近傍で吸引することで収集電極の近傍で集束する旋回気体流を形成する場合に特に効果的である。
【0019】
また、ナノファイバー旋回流動工程において、収集電極の軸心部に形成した貫通孔を通して芯糸を移動させ、生成されたナノファイバーを収集電極の貫通孔近傍に集束させると、ナノファイバーが収集電極の軸心近傍で確実に芯糸に絡むとともに、そうして生成された糸条を貫通孔を通してそのまま回収することができる。
【0020】
また、本発明のナノファイバーの合糸装置は、所定経路に沿って芯糸を移動させる芯糸供給手段と、所定経路の周囲に配置された複数の小穴から高分子物質を溶媒に溶解した原料液を流出させる紡糸ヘッドと、紡糸ヘッドの周囲に配置された電極と、紡糸ヘッドと電極の間に電界を発生させ小穴から流出する原料液に電荷を帯電させる電界発生手段と、芯糸が通過する貫通孔を有しかつ原料液の帯電電荷とは逆極性の電圧が印加され若しくは接地された収集電極と、小穴から流出した原料液の静電爆発により生成したナノファイバーを収集電極に向けて旋回させながら流動させ、ナノファイバーを芯糸に絡ませるナノファイバー旋回流動手段と、芯糸にナノファイバーが絡んだ糸条を回収する回収手段とを備えたものである。
【0021】
この構成によると、上記ナノファイバー合糸方法を実施して高強度でかつ均質な糸条を安定して合糸することができ、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができる。
【0022】
また、紡糸ヘッドが、所定経路が貫通する貫通孔を軸心部に有し、周面に複数の小穴を有する回転容器と、回転容器を軸心回りに回転させる回転駆動手段と、回転容器内に原料液を供給する原料液供給手段とを備えていると、回転駆動手段にて回転容器を回転することで周面の小穴から遠心力で原料液を流出させることができ、小穴から線状に流出した原料液を遠心力でも延伸させることができてより効率的にナノファイバーを生成でき、かつ小穴の回転によりナノファイバーが強く旋回流動することで芯糸に強く撚りを掛けられて絡まり、一層高強度の糸条を製造することができる。
【0023】
また、ナノファイバー旋回流動手段が、紡糸ヘッドと収集電極の一方又は両方に所定経路回りに回転させる回転手段を有していると、紡糸ヘッドと収集電極間の電界が旋回することで、帯電したナノファイバーを旋回流動させて、所定経路を移動する芯糸に確実に絡ませることができる。
【0024】
また、ナノファイバー旋回流動手段が、紡糸ヘッドと収集電極の両方が夫々の回転手段を有し、両回転手段は所定経路回りに同方向又は逆方向に回転すると、紡糸ヘッドと収集電極を共に回転させることで、生成されたナノファイバーの芯糸に対する絡ませ方を調整して所望の性質の糸条を製造することができる。
【0025】
また、ナノファイバー旋回流動手段が、紡糸ヘッド側から収集電極側に向けて流動する気体流を発生する送風手段を有していると、生成されたナノファイバーを気体流に乗せて収集電極側に向けて円滑にかつ確実に偏向流動させることができる。
【0026】
また、ナノファイバー旋回流動手段が、紡糸ヘッド側から収集電極側に向けて旋回して流動する旋回気体流を発生する旋回気流送風手段を有していると、生成されたナノファイバーを旋回気体流に乗せて収集電極側に向けて旋回流動させることができ、ナノファイバーをより強く芯糸に絡ませて強度の高い糸条を製造することができる。
【0027】
また、ナノファイバー旋回流動手段が、電極と収集電極との間の空間の周囲を取り囲む風洞を備えていると、ナノファイバーの旋回範囲が風洞によって確実に規制されることで、ナノファイバーを安定して芯糸に絡ませることができ、安定して糸条を製造することができる。
【0028】
また、風洞が、収集電極の周囲の近傍位置に開口を有し、開口から気体流を吸引する吸引手段を設けていると、生成されたナノファイバーが旋回する気体流に乗って旋回流動し、さらにその旋回気体流は収集電極の近傍で吸引されることで、旋回半径が小さくなることでより強い旋回流となるため、ナノファイバーがより強く撚りを掛けられて芯糸に絡まり、一層高強度の糸条を製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のナノファイバーの合糸方法及び装置によれば、小穴と電極が大きな間隔を設けずに略対向するのでそれらの間に十分に高い電界を容易に生成でき、小穴に十分に電荷が誘導されて流出する原料液に電荷を十分に帯電させることができ、流出した原料液に確実に静電爆発が生じてナノファイバーが生成されるとともに収集電極に向けて旋回流動して芯糸に絡むので、芯糸にナノファイバーが絡まった糸条を回収することで、高強度でかつ均質な糸条を安定して生産性よく低コストにて製造することができる。また、風洞を備えた構成において、前記収集電極の貫通孔から気体流を吸引する吸引手段を設けても、同様の作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明のナノファイバーの合糸方法及び装置の各実施形態について、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
まず、本発明のナノファイバー合糸装置の第1の実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0032】
図1において、1はナノファイバー合糸装置であって、ナノファイバー2の原料液を線状に流出する紡糸ヘッド3と、紡糸ヘッド3の周囲に配設されて紡糸ヘッド3との間に電界を生成する電界生成電極4と、生成されたナノファイバー2を収集する収集電極5と、紡糸ヘッド3及び収集電極5の軸心部を通る所定経路上を通して芯糸6を供給する芯糸供給手段7と、芯糸6にナノファイバー2を絡ませて生成された糸条8を回収する回収手段9とを備えている。
【0033】
紡糸ヘッド3は、図1及び図2に示すように、垂直な軸心周りに回転自在に支持され、周面に直径が0.01〜2mm程度の小穴10が数mmピッチ間隔で多数形成されている円筒容器からなる回転容器11を備え、この回転容器11を回転駆動手段12にて矢印a方向に回転駆動するように構成されている。回転駆動手段12としては、中空軸からなる出力軸を貫通して配設したDCモータが好適に適用される。回転容器11は、一端が閉鎖壁11aにて閉鎖され、その閉鎖壁11aの内面の軸心部に、大径のテーパ嵌合孔13aと小径の貫通孔13bを有する支持ボス13が設けられている。回転駆動手段12の出力軸又はそれに同一軸心状に連結された中空回転軸14の先端部に、支持ボス13のテーパ嵌合孔13aにテーパ嵌合する大径の取付部15が設けられている。かくして、中空回転軸14の先端部を覆うように回転容器11を配置し、取付部15にテーパ嵌合孔13aを嵌合させた状態で、取付ボルト16にて閉鎖壁11aと取付部15を締結固定することで中空回転軸14に回転容器11が取付けられている。
【0034】
回転容器11の他端内周には環状の堰17が設けられて、回転容器11を回転している状態で遠心力にて回転容器11内の外周部に所定厚さの原料液20の層が形成されるように構成されている。この回転容器11内に、供給ポンプ18aと供給管18bから成る原料液供給手段18にて、貯留容器19内に収容されている原料液20が所定流量で供給され、かつ過剰に供給された原料液20は堰17を越して流出し、原料液回収手段(図示せず)にて回収されて貯留容器19に戻される。
【0035】
原料液20は、高分子物質を溶媒に溶解したものであり、その高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が好適なものとして例示でき、さらには核酸や蛋白質などの生体高分子なども例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0036】
また、使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、溶媒と高分子物質との混合比率は、溶媒と高分子物質により異なるが、溶媒量が約60%から98%の間が望ましい。
【0037】
また、原料液20には、高分子物質と溶媒のほかに無機質固体材料を混入することも可能である。この無機質固体材料としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、耐熱性、加工性などの観点からは酸化物を用いるのが好ましい。酸化物としては、Al2O3、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B2O3、P2O5、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb2O3、As2O3、CeO2、V2O5、Cr2O3、MnO、Fe2O3、CoO、NiO、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、HfO2、Nb2O5等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0038】
電界生成電極4は、紡糸ヘッド3を構成する回転容器11の周面から所定間隔をあけてリング状に配設され、回転容器11と電界生成電極4との間に高い電位差が印加されている。本実施形態では、回転容器11の少なくとも周面あるいは小穴10の近傍が導電性を有して接地電位とされるとともに、電界生成電極4に対して第1の高電圧発生手段21にて発生された負極の高電圧が印加されている。かくして、回転容器11の少なくとも小穴10の近傍と電界生成電極4との間に電界が生成して小穴10に正極の電荷が誘導され、その電荷が小穴10から流出する原料液20に帯電され、原料液20中の溶媒の蒸発に伴って1次〜3次、場合によってはそれ以上の次数の静電爆発が発生してナノファイバー2が生成される。なお、第1の高電圧発生手段21にて回転容器11に正極又は負極の高電圧を印加し、電界生成電極4を接地電位としても良いが、回転駆動手段12に連結されている回転容器11を接地電位にした方が回転容器11に接続される回転駆動手段12等の周辺機器に高電圧が印加されないので、それらの絶縁構成が簡単となるので好ましい。
【0039】
回転駆動手段12の回転容器11とは反対側の上部には、生成されたナノファイバー2を収集電極5側に向けて偏向流動させる偏向流動手段としての送風手段22が配設され、回転容器11の周面と電界生成電極4の間の空間に向けて気体流23を送風するように構成されている。偏向流動手段としては、この送風手段23に代えて、若しくは送風手段23と併用してナノファイバー2の帯電極性と同極性の高電圧を印加した反射電極を配設しても良い。なお、偏向流動手段は、これに限定するものではなく、送風手段22に代えて、回転容器11の下部で収集電極5よりも下部に、送風手段もしくは吸引手段を設けて、生成されたナノファイバー2を前記収集電極5側に偏向させてもよい。
【0040】
芯糸供給手段7は、送風手段22のさらに上部に配設されている。芯糸供給手段7は、芯糸6を繰り出し可能に巻回した芯糸供給ロール7aと、繰り出した芯糸6を回転容器11の軸心位置に供給するようにガイドするガイドローラ7bとを備えている。この芯糸供給手段7から繰り出された芯糸6が、送風手段22の軸心位置に形成された貫通孔22a、回転駆動手段12の中空出力軸及び中空回転軸14の中空部、及び回転容器11の支持ボス13の貫通孔13bを通り、収集電極5の軸心位置に向けて供給される。
【0041】
収集電極5は、紡糸ヘッド3の回転容器11に対してその軸心方向に適当距離だけ離れた位置に回転容器11の回転軸心と同一軸心状に配設されている。回転容器11と収集電極5の間の距離は、回転容器11の小穴10から線状に流出した原料液20に一次〜三次ないしそれ以上の次数の静電爆発が生じてナノファイバー2を生成されるのに必要な所要の距離である。収集電極5は、図1及び図3に示すように、紡糸ヘッド3側の一端部に略半球状の拡大頭部24aを有し、軸心部に貫通孔24bを有する軸体24にて構成されている。なお、収集電極5は、その拡大頭部24aの外表面が導電性を有するものであれば良く、他の部分は必ずしも導電性を有する必要はない。
【0042】
収集電極5は、その軸体24の他端部が軸受25にてその軸心回りに回転自在に支持され、かつ他端が絶縁材料から成る中空軸継手26を介して回転駆動手段27に連結され、回転容器11の回転方向aとは逆の矢印b方向に回転駆動される。この回転駆動手段27も、中空軸からなる出力軸を貫通して配設したDCモータが好適に適用される。ナノファイバー2が収集電極5にて収束されて合糸された糸条8は、収集電極5の貫通孔24b、中空軸継手26、及び回転駆動手段27の中空出力軸部を通して回収手段9に向けて移動して回収される。
【0043】
収集電極5の少なくとも拡大頭部24aは1kV〜100kV、好適には10kV〜100kVの正又は負(図示例では負)の高電圧を発生する第2の高電圧発生手段28に接続され、回転容器11の少なくとも小穴10の近傍と収集電極5の間に電界を発生させている。この回転容器11の少なくとも小穴10の近傍と収集電極5の間の電界によって形成されるファイバの偏向経路29は、図3に示すように、回転容器11の小穴10の近傍から電界発生電極4に向かった後、収集電極5の拡大頭部24aに向けて偏向され、拡大頭部24aの貫通孔24bの周囲に収束するように形成される。かくして、回転容器11の小穴10の近傍に帯電した正の電荷が小穴10から流出する原料液20に帯電され、帯電した原料液20は上記ファイバの偏向経路29に沿って電界生成電極4に向けて流動した後偏向されて収集電極5に向けて流動し、その間に静電爆発が発生してナノファイバー2が生成される。
【0044】
以上の構成において、紡糸ヘッド3の回転容器11内に原料液20を供給しつつ回転容器11を回転駆動する。すると、回転容器11内の原料液20が各小穴10で電荷を帯電され、電界生成電極4との間の電界の作用と遠心力の作用によって原料液20が電界生成電極4に向けて確実に線状に流出するとともに遠心力の作用で延伸される。その後、線状に流出した原料液20中の溶媒が蒸発することでその線状体の径が細くなり、その結果帯電されていた電荷が集中し、そのクーロン力が原料液20の表面張力を超えた時点で一次静電爆発が生じて爆発的に延伸され、その後さらに溶媒が蒸発して同様に二次静電爆発が生じて爆発的に延伸され、場合によってはさらに三次静電爆発等が生じて延伸されることで、サブミクロンの直径を有する高分子物質から成るナノファイバー2が効率的に製造される。
【0045】
生成途中ないし生成されたナノファイバー2は、送風手段22にて送風される気体流23にて回転容器11の外周から収集電極5に向けて、かつ回転容器11の回転により回転容器11の軸心回りに旋回しながら流動することになる。なお、気体流23を温風にすると、溶媒の蒸発を促進するので、ナノファイバー2の生成を促進できて好ましい。気体流23に乗って旋回しながら流動するナノファイバー2は、収集電極5にて強く吸引され、かつその収集電極5がナノファイバー2の旋回流動方向とは逆方向に回転していることで、旋回流動しているナノファイバー2がより強く撚りをかけられて収束・合糸される。ここで、回転容器11から収集電極5に向かう電気力線が収集電極5の軸心部の周囲に収束するように安定して形成されているので、旋回して流動して来たナノファイバー2がこの電気力線に沿って流動して収集電極5の軸心部に安定して集束され、芯糸6に確実に絡み付いて一挙に集束され、かくしてナノファイバー2が均一に撚りをかけられて芯糸6に絡み付いて太さにばらつきのない均質な糸条8が生成され、高強度の糸条8が安定して生産性よく形成される。形成された糸条8は、収集電極5の貫通孔24bを通り、回収手段9にて回収される。
【0046】
なお、図1、図2の図示例では、周面に小穴10を形成した回転容器11を適用した例を示したが、回転容器11の周面に適当なピッチ間隔で多数の短寸のノズル部材を配設し、そのノズル部材に形成されているノズル穴を小穴10として機能させるようにした構成としても良い。
【0047】
また、本実施形態においては、紡糸ヘッド2の回転容器11を矢印a方向に回転させ、収集電極5をa方向とは逆の矢印b方向に回転させるようにした例を示したが、紡糸ヘッド2は回転せずに、収集電極5側のみを回転させても、逆に収集電極5は回転させずに紡糸ヘッド2側のみを回転させても良い。また、本実施形態においては、回転容器11の回転方向と収集電極5の回転方向は逆方向にしたが、同方向にして夫々の回転速度を異なるように構成しても同じような効果が得られる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第2の実施形態について、図4を参照して説明する。なお、この実施形態の説明においては、上記第1の実施形態の構成要素と同一の構成要素について同じ参照符号を付して説明を省略し、主として相違点についてのみ説明する。
【0049】
本実施形態では、電界生成電極4と収集電極5との間の空間の周囲を取り囲む絶縁材料から成る風洞30を配設している。風洞30は、電界生成電極4の下縁から収集電極5の拡大頭部24aの下縁の高さ位置まで延びる円筒部30aとその下端開口を閉鎖する端板30bとを備え、その端板30bの軸心部を収集電極5の軸体24が回転自在に貫通し、さらに収集電極5の拡大頭部24aの周囲に複数の排気口31が環状に配設されている。端板30bの下面には、複数の排気口31が臨むように環状の吸引ヘッダ32が配設され、この吸引ヘッダ32は吸引管34を介して吸引ファン33に接続されている。
【0050】
本実施形態の構成によれば、生成されたナノファイバー2が気体流23に乗って旋回流動する際に、その旋回範囲が風洞30によって確実に規制されているので、ナノファイバー2を確実に芯糸6に絡ませることができて一層安定して糸条8を製造することができる。特に、本実施形態の風洞30においては、収集電極5の周囲の近傍位置に排気口31を有し、気体流23を排気口31を通して吸引ファン33にて吸引するようにしているので、生成されたナノファイバー2が気体流23に乗って旋回流動し、さらにその気体流23が収集電極5の近傍で吸引されることで、その旋回半径が小さくなり、ナノファイバー2がより強く撚りを掛けられて芯糸6に絡まり、一層高強度の糸条8を製造することができる。
【0051】
さらに、以上の説明では、送風手段22は紡糸ヘッド3の軸心方向と略平行に送風するものとして説明したが、送風手段22を紡糸ヘッド3側から収集電極5側に向けて旋回して流動する旋回気体流を送風するように構成しても良く、その場合生成されたナノファイバー2を旋回気体流に乗せて収集電極5側に向けて旋回流動させることができるとともに、その旋回気体流が収集電極5の周囲の近傍位置で排気口31を通して吸引されることで旋回気体流の旋回半径が小さくなってより強い旋回気体流となるため、この旋回気体流に乗って旋回流動して来たナノファイバー2をより強く芯糸6に絡ませて強度の高い糸条8を製造することができる。従って、このように風洞30を設けて送風手段22にて旋回気体流を送風し、収集電極5の周囲の近傍位置で吸引する構成した場合には、紡糸ヘッド3と収集電極5の何れか一方、若しくは両方共、回転させなくてもナノファイバー2を芯糸6に絡ませて糸条8を製造することができる。
【0052】
以上の実施形態においては、紡糸ヘッド3は接地し、電界生成電極4と収集電極5に高電圧を印加して紡糸ヘッド3と電界生成電極4との間及び紡糸ヘッド3と収集電極5との間に電界を発生させるようにした例を示したが、紡糸ヘッド3に高電圧を印加して電界生成電極4や収集電極5を接地電位にしたり、紡糸ヘッド3と電界生成電極4や収集電極5に互いに逆極性や同極性の高電圧を印加するようにしても良く、要するに紡糸ヘッド3と電界生成電極4や収集電極5との間に高い電位差を印加してそれらの間に電界を発生するように構成すれば良い。
【0053】
なお、第2の実施形態においては、排気口31を通して気体流23を吸引したが、これに限定するものではなく、収集電極5の貫通孔24bからも吸引をしてもよい。また、貫通孔24bが、気体流23を安定して吸引できる位大きい場合には、排気口31の代わりに、収集電極5の貫通孔24bのみから気体流23を吸引するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のナノファイバーの合糸方法及び装置によれば、小穴と電極が略対向するのでそれらの間に十分に高い電界を容易に生成でき、小穴に十分に電荷が誘導されて流出する原料液に電荷を十分に帯電させることができ、流出した原料液に確実に静電爆発が生じてナノファイバーが生成されるとともに収集電極に向けて旋回流動して芯糸に絡むので、そのナノファイバーの絡まった芯糸を回収することで、高強度でかつ均質な糸条を安定して生産性よく低コストにて製造することができるので、ナノファイバーから成る高強度の糸条の生産に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す部分断面正面図。
【図2】同実施形態における紡糸ヘッドと収集電極間のファイバの偏向経路の発生状態を示す説明図。
【図3】同実施形態における紡糸ヘッドの構成を示す断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す斜視図。
【図5】本発明に先行するナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す斜視図。
【図6】同ナノファイバー合糸装置における紡糸ヘッドと収集電極間の電気力線の発生状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0056】
1 ナノファイバー合糸装置
2 ナノファイバー
3 紡糸ヘッド
4 電界生成電極
5 収集電極
6 芯糸
7 芯糸供給手段
8 糸条
9 回収手段
10 小穴
11 回転容器
12 回転駆動手段
18 原料液供給手段
20 原料液
21 第1の高電圧発生手段(電界発生手段)
22 送風手段
23 気体流
24b 貫通孔
27 回転駆動手段
28 第2の高電圧発生手段
30 風洞
31 排気口
33 吸引ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸を供給する工程と、
前記芯糸の周囲に配置された小穴より高分子物質を溶媒に溶解した原料液を流出させ、前記小穴の周囲に配置された電極と前記小穴との間に電界を生成し、前記小穴から流出する原料液に電荷を帯電させる原料液流出帯電工程と、
前記小穴から流出した原料液の静電爆発により生成したナノファイバーを前記芯糸の移動方向若しくはそれとは逆方向の所定位置に配置した収集電極に向けて旋回流動させるナノファイバー旋回流動工程と、
前記芯糸にナノファイバーが絡まった糸条を回収する回収工程とを
有することを特徴とするナノファイバーの合糸方法。
【請求項2】
前記原料液流出帯電工程において、前記小穴を前記芯糸の回りに回転させることにより原料液を遠心力で流出させるとともに生成されるナノファイバーを前記芯糸の回りに旋回させることを特徴とする請求項1記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項3】
前記ナノファイバー旋回流動工程において、前記小穴側から前記収集電極側に向けて旋回する気体流を送風するとともに前記収集電極の近傍で気体流を吸引し、形成された前記収集電極の近傍で集束する旋回気体流にて生成したナノファイバーを芯糸に絡ませることを特徴とする請求項1又は2記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項4】
前記ナノファイバー旋回流動工程において、前記芯糸の周囲を取り囲む風洞内で生成したナノファイバーを前記芯糸に絡ませることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項5】
前記ナノファイバー旋回流動工程において、前記収集電極の軸心部に形成した貫通孔を通して芯糸を移動させ、生成されたナノファイバーを前記収集電極の貫通孔近傍に集束させることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項6】
所定経路に沿って芯糸を移動させる芯糸供給手段と、
前記所定経路の周囲に配置された複数の小穴から高分子物質を溶媒に溶解した原料液を流出させる紡糸ヘッドと、
前記紡糸ヘッドの周囲に配置された電極と、
前記紡糸ヘッドと前記電極の間に電界を発生させ前記小穴から流出する原料液に電荷を帯電させる電界発生手段と、
前記芯糸が通過する貫通孔を有しかつ前記原料液の帯電電荷とは逆極性の電圧が印加され若しくは接地された収集電極と、
前記小穴から流出した原料液の静電爆発により生成したナノファイバーを前記収集電極に向けて旋回させながら流動させ、ナノファイバーを前記芯糸に絡ませるナノファイバー旋回流動手段と、
前記芯糸にナノファイバーが絡んだ糸条を回収する回収手段とを
備えたことを特徴とするナノファイバーの合糸装置。
【請求項7】
前記紡糸ヘッドは、所定経路が貫通する貫通孔を軸心部に有し、周面に複数の小穴を有する回転容器と、前記回転容器を軸心回りに回転させる回転駆動手段と、前記回転容器内に原料液を供給する原料液供給手段とを備えていることを特徴とする請求項6記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項8】
前記ナノファイバー旋回流動手段は、前記紡糸ヘッドと前記収集電極の一方又は両方に所定経路回りに回転させる回転手段を有していることを特徴とする請求項6又は7記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項9】
前記ナノファイバー旋回流動手段は、前記紡糸ヘッドと前記収集電極の両方が夫々の回転手段を有し、両回転手段は所定経路回りに同方向又は逆方向に回転することを特徴とする請求項6又は7記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項10】
前記ナノファイバー旋回流動手段は、前記紡糸ヘッド側から前記収集電極側に向けて流動する気体流を発生する送風手段を有していることを特徴とする請求項6〜9の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項11】
前記ナノファイバー旋回流動手段は、前記紡糸ヘッド側から前記収集電極側に向けて旋回して流動する旋回気体流を発生する旋回気流送風手段を有していることを特徴とする請求項6〜9の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項12】
前記ナノファイバー旋回流動手段は、前記電極と前記収集電極との間の空間の周囲を取り囲む風洞を備えていることを特徴とする請求項10又は11記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項13】
前記風洞は、前記収集電極の周囲の近傍位置に開口を有し、開口から気体流を吸引する吸引手段を設けたことを特徴とする請求項12記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項14】
前記風洞は、前記収集電極の貫通孔から気体流を吸引する吸引手段を設けたことを特徴とする請求項12記載のナノファイバーの合糸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−280923(P2009−280923A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131549(P2008−131549)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】