説明

ナノフィブリル構造体ならびに細胞および組織培養を含めた応用例

細胞培養および組織工学のためのナノフィブリル構造体を開示する。ナノフィブリル構造体は、細胞を増殖かつ/または分化させて組織を生産する方法を含めた様々な応用例で用いることができる。また、脂質、親油性分子、または化学修飾された表面を含む改良ナノファイバーも開示する。ナノファイバーは、細胞培養および組織工学のためのナノフィブリル構造体の形成を含めた様々な応用例で用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養および組織工学のためのナノフィブリル構造体、ならびに細胞を増殖かつ/または分化させて組織を生産する方法に関する。本発明の別の態様は、ナノファイバー・マトリックスを含む細胞培養用の増殖培地に関する。本発明の別の態様は、脂質、親油性分子、または化学修飾された表面を含む改良ナノファイバーに関する。改良ナノファイバーは様々な応用例において有用である。一応用例では、改良ナノファイバーを用いて細胞培養および組織工学のためのナノフィブリル構造体を調製し得る。別の応用例では、改良ナノファイバーを用いて細胞培養用の培地を調製し得る。
【背景技術】
【0002】
in vivoにおける細胞の増殖および分化は、細胞間の独特な空間的な相互作用によって調節されている。空間的な合図と、特異的な付着分子の位相的に明確な位置、ならびに成長因子および分化因子などの特異的液性因子の放出とが協同して細胞へのシグナルとして機能し、これは増殖、分化、遊走を行わせる、静止期に留めさせる、またはアポトーシスを開始させる。細胞がこれらのシグナル伝達の引き金に応答する能力は、特異的な細胞表面および細胞内の受容体の利用可能性に依存する。これらの分子に刺激されるシグナル伝達経路は、その構造がこれらのシグナル伝達分子、周辺細胞、および細胞外基質との多点細胞表面相互作用の働きである、細胞骨格の編成および構造に依存する。
【0003】
細胞および組織培養の環境を設計するにあたって、増殖環境に組み込まなければならない細胞相互作用を考慮することが重要である。細胞種、空間的な合図、ならびに化学的な引き金およびモジュレーターが、相互作用細胞内の遺伝子発現の調節に顕著な役割を果たしている(Li他、2002、FASEB J.、17:97〜99;Botarro他、2002、Ann.N.Y,Acad.Sci.、961:143〜153;Kunz−Schughart他、2003、Am.J.Physiol.Cell Physiol.、284:C209〜C219;Cukierman他、2001、Science、294:1708〜1712)。細胞および組織培養の慣行における過去の進展は、組織内の複雑なin vivoミクロ環境に近い生化学的および物理的条件を提供することを対象としていた(Cukierman他、2001、Science、23:1708〜1712;Li他、2002、FASEB J.、17:97〜99;Chiu他、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97:2408〜2413)。このような努力は、in vivoで組織中に存在する空間的な合図ならびに化学的な引き金およびモジュレーターを欠く平板培養の表面で連続的に増殖させ、かつその増殖する能力について選択された細胞系を用いることを含めた要素によって制限されてきた。
【0004】
最近の研究により、コラーゲンおよび細胞外基質の他の原線維要素(fibrillar element)など、ナノファイバーの三次元の空間的な編成から生じる独特なミクロ環境およびナノ環境が、細胞接着、シグナル伝達、および分化した機能の組織様パターンに重要であることが実証されている。固体平板培養の表面への細胞の付着および増殖により、in vivoで組織内の細胞で観察されるものとは異なる細胞編成のパターンが誘発される(WalpitaおよびHay、2002、Nature Rev.Mol.Cell.Biol.、3:137〜141;Cukierman他、2001、Science、23:1708〜1712;Mueller−Klieser、1997、Am.J.Physiol.、C1109〜C1123)。典型的な平板細胞培養の表面上で増殖させた場合、たとえば線維芽細胞は、細胞質内に位置するアクチン・ネットワークが厚いストレスファイバーのアレイへと編成されている、高度に拡散した付着性の形態学をとる。対照的に、線維芽細胞をコラーゲン・ゲル内で増殖させる、または組織中で観察した場合は、その形状はアクチンが皮質環に編成された紡錘様である(TamarizおよびGrinnell、2002、Mol.Biol.Cell、13:3915〜3929;WalpitaおよびHay、2002、Nature Rev.Mol.Cell.Biol.、3:137〜141;Grinnell他、2003、Mol.Biol.Cell、14:384〜395)。さらに、二次元の細胞培養中で増殖させた癌細胞および三次元の細胞培養中で増殖させた癌細胞の薬物感受性は相当異なることが示されており、この結果は、化学療法を含む癌治療の設計に顕著に関係している(Mueller−Klieser、1997、Am.J.Physiol.、273:C1109〜C1123;Padron他、2000、Crit.Rev.Oncol./Hematol.、36:141〜157;JacksおよびWeinberg、2002、Cell、111:923〜925;Weaver他、2002、Cancer Cell、2:205〜216)。
【0005】
細胞培養および組織培養の顕著な発展は、足場として役割を果たすよう設計された無毒性かつ生体適合性のある材料、ならびにin vitroおよびin vivoのどちらにおいても細胞を分裂させる三次元の空間的な形成体からなるマトリックスの導入であろう(米国特許出願第20020133229号;米国特許出願第20020042128号;米国特許出願第20020094514号;米国特許出願第20020090725号)。これらの設計の目標は、細胞が機能的な組織へと増殖かつ分化する、または損傷した組織を再生するための、in vivo組織様の幾何形状ならびにミクロ環境およびナノ環境を有する増殖表面を提供することである。機能的な細胞を支援するこれらの構造体は、身体内の損傷した組織を修復または置き換えること、ならびに新しい組織および器官の成長を促進することを含めた様々な応用例に利用することができる。
【非特許文献1】Li他、2002、FASEB J.、17:97−99
【非特許文献2】Botarro他、2002、Ann.N.Y,Acad.Sci.、961:143〜153
【非特許文献3】Kunz−Schughart他、2003、Am.J.Physiol.Cell Physiol.、284:C209〜C219
【非特許文献4】Cukierman他、2001、Science、294:1708〜1712
【非特許文献5】Cukierman他、2001、Science、23:1708〜1712
【非特許文献6】Li他、2002、FASEB J.、17:97〜99
【非特許文献7】Chiu他、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97:2408〜2413
【非特許文献8】WalpitaおよびHay、2002、Nature Rev.Mol.Cell.Biol.、3:137〜141
【非特許文献9】Mueller−Klieser、1997、Am.J.Physiol.、C1109〜C1123
【非特許文献10】TamarizおよびGrinnell、2002、Mol.Biol.Cell、13:3915〜3929
【非特許文献11】Grinnell他、2003、Mol.Biol.Cell、14:384〜395
【非特許文献12】Mueller−Klieser、1997、Am.J.Physiol.、273:C1109〜C1123
【非特許文献13】Padron他、2000、Crit.Rev.Oncol./Hematol.、36:141〜157
【非特許文献14】JacksおよびWeinberg、2002、Cell、111:923〜925
【非特許文献15】Weaver他、2002、Cancer Cell、2:205〜216
【特許文献1】米国特許出願第20020133229号
【特許文献2】米国特許出願第20020042128号
【特許文献3】米国特許出願第20020094514号
【特許文献4】米国特許出願第20020090725号
【特許文献5】米国特許第5,672,399号
【非特許文献16】J.E.WalzおよびG.B.Taylor、determination of the molecular weight of nylon、Anal.Chem.第19巻、第7号、448〜450頁(1947)
【非特許文献17】286頁、Nylon Plastics Handgook、Melvin Kohan編、Hanser Publisher、New York(1995)
【非特許文献18】Meiners,S.およびMercado,M.L.、2003、Mol.Neurobiol.、27(2)、177〜196
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、三次元の細胞および組織培養技術の調製の成功は、主に個々の研究室の専門知識および洗練された機器が利用可能であったことの作用であった。標準の組織培養プレートに付随する使用の容易さ、均一性、品質管理、および柔軟性を提供する、単純材料または複合材料から製造した培地の必要性が顕著である。さらに、培地の材料および設計により、組織内での細胞層の編成をより正確に反映する、確定した組成の層状のアセンブリの構築が可能となり得る。米国特許第5,672,399号に開示されている濾材などの、粗いファイバーの支持体によって隔てられた複数層の微細ファイバーを含む培地は、生細胞が増殖する環境を提供しない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ナノフィブリル構造体(nanofibrillar structure)は、再現可能なファイバーおよびマトリックスの寸法、使用の容易さ、均一性、細胞応答、品質管理、および柔軟性を提供するナノファイバー材料から製造することができる。ナノトポグラフィー、すなわちナノフィブリル構造体のナノファイバー・ネットワークのトポグラフィー、およびナノファイバー・ネットワークにナノファイバーの配置は、単層または複数層状の細胞培養において同型もしくは異型の細胞増殖および/または細胞分化の促進に対してより組織適合性があるin vitro生体模倣基層が提供されるように操作されている。
【0008】
本発明の一態様は、脂質を含む改良ナノファイバー(improved nanofibrillar)を提供する。ナノファイバーの直径は約1000nm未満である。改良ナノファイバーは、細胞培養および組織工学を含めた様々な応用例において有用である。
【0009】
本発明の好ましい様式は、添加組成物を含まないポリマー溶液から電界紡糸した多分散複数ナノファイバーと比較して、ポリマーの電界紡糸により細いファイバー(thin fiber)の数が多いまたは割合が高い多分散複数ナノファイバー(polydisperse plurality of nanofiber)が生成されるように、ポリマーの充填性に影響を与える添加組成物と組み合わせた高分子材料を含む。一実施形態では、ポリマー溶液は約0.25%〜約15%w/wの添加組成物を含む。別の実施形態では、ポリマー溶液は約1%〜約10%w/wの添加組成物を含む。好ましい実施形態では、添加組成物は脂質である。別の好ましい実施形態では、脂質はリゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、コレステロール、またはそれらの混合物である。添加組成物はまた、細胞のファイバーへの招集および付着を誘発するシグナル伝達分子としても機能し得る。
【0010】
細いファイバー(thin fiber)の直径は、好ましくは約5nm〜約600nmである。一実施形態では、細いファイバーの直径は約50nm〜約400nmである。別の実施形態では、細いファイバーの直径は約300nmである。別の実施形態では、細いファイバーの直径は約5nm〜約200nmである。別の実施形態では、細いファイバーの直径は約5nm〜約100nmである。別の実施形態では、細いファイバーの直径は約5nm〜約50nmである。
【0011】
直径のより小さいナノファイバーは、ナノファイバーと細胞との間の多点付着を促進する表面を提供し、これはin vivoにおける細胞外基質への細胞付着の特徴である。好ましくは、多分散複数ナノファイバーの少なくとも約25%が細いファイバーである。一実施形態では、ナノファイバーを含む多分散複数脂質の少なくとも約30%が細いファイバーである。別の実施形態では、ナノファイバーを含む多分散複数脂質の少なくとも約40%が細いファイバーである。別の実施形態では、ナノファイバーを含む多分散複数脂質の少なくとも約50%が細いファイバーである。別の実施形態では、ナノファイバーを含む多分散複数脂質の少なくとも約60%が細いファイバーである。別の実施形態では、ナノファイバーを含む多分散複数脂質の少なくとも約70%が細いファイバーである。
【0012】
一実施形態では、改良ナノファイバーは、in vivoの動物もしくはヒトでの応用例に適したポリアミド、ポリエステルまたは他のポリマーから作製する。別の実施形態では、ポリエステルはポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ乳酸、またはポリグリコール酸であり得る。別の実施形態では、ナノファイバーは、クロロホルム中に少なくとも約10%w/wのポリ(ε−カプロラクトン)を含むポリマー溶液から作製する。別の実施形態では、ナノファイバーは、クロロホルム中に少なくとも約15%w/wのポリ(ε−カプロラクトン)を含むポリマー溶液から作製する。
【0013】
本発明の別の好ましい様式では、それだけには限定されないが、ペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物、多糖類、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、またはそれらのハイブリッド混合物を含めた1つもしくは複数の生物活性分子を含むナノファイバーを使用する。ポリペプチドには、線維性タンパク質、接着性タンパク質、成長因子、および分化因子が含まれる。一部の好ましい成長因子には、VEGF、NGF、PDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、FGFb、FGFa、およびBGFが含まれる。一部の好ましい分化因子には、ニューロトロフィン、コロニー刺激因子、およびトランスフォーミング成長因子が含まれる。
【0014】
一実施形態では、ナノファイバーを作製するためのポリマー溶液中に生物活性分子を取り込ませる。別の実施形態では、官能基をナノファイバーの外部表面に付着させ、1つまたは複数の生物活性分子に結合するようにナノファイバーの官能化された表面を反応させ得る。一実施形態では、プラズマ堆積を用いて官能基をナノファイバーの外部表面に付着させる。別の実施形態では、ナノファイバーを作製するためのポリマー溶液に官能基を取り込ませる。
【0015】
本発明の別の好ましい様式では、蛍光マーカーを含むナノファイバーを使用する。蛍光マーカーにより、たとえば、ナノファイバーの可視化、ナノファイバー混合物中の特定のナノファイバーの同定、ナノファイバーの化学的もしくは物理的特性またはナノファイバーを取り囲むナノ環境の同定、ならびに、組織の工学操作に有用な三次元構造を含めた、ナノファイバーを含む埋め込み型ナノファイバーおよび/または構造体の分解および/または再分布の評価が可能となる。
【0016】
蛍光マーカーは有機色素フルオロフォアを含み得る。一実施形態では、ナノファイバーの電界紡糸の前にフルオロフォアをポリマーに加える。別の実施形態では、ナノファイバーの表面に取り込ませた官能基によってフルオロフォアをナノファイバーとコンジュゲートさせる。別の実施形態では、フルオロフォアは、ナノファイバーに付着した生物活性分子とコンジュゲートさせる。蛍光マーカーはコロイド状無機半導体ナノ結晶を含み得る。一実施形態では、ナノ結晶はCdSe核およびZnSキャップを含む。別の実施形態では、ナノ結晶は量子ドット(quantum dot)を含む。
【0017】
蛍光マーカーはイオン感受性要素として作用し得る。一実施形態では、ナノファイバーは、その蛍光または蛍光強度がイオン濃度に依存する蛍光マーカーを含み得る。このようなイオン感受性要素は、pHおよびカルシウム、ナトリウム、またはリン酸の流動を含めたイオン濃度の変化の検出に有用である。別の実施形態では、蛍光マーカーは、ナノファイバー表面と、それだけには限定されないが、DNA/RNAヌクレオチド配列、炭水化物、またはペプチド/アミノ酸配列を含めたリガンドとの間の複合体形成を実証するためのレポーター要素として機能し得る。この複合体形成は、蛍光発光波長の変化および/または吸収体と発光体との間のエネルギー移行の変化によって表されることができる。
【0018】
本発明はまた、ナノファイバーの化学的および/または物理的特性の同定方法も対象とする。一実施形態では、1つのナノファイバーの化学的または物理的特性に1つの蛍光マーカーが定め、定められたナノファイバーに蛍光マーカーで標識を付ける。このような化学的および物理的特性には、それだけには限定されないが、ファイバー直径、生物活性分子、官能基、ファイバーの溶解もしくは分解速度、ナノファイバーを含むポリマーの組成、ファイバーの疎水性もしくは親水性、ナノファイバーを含むポリマーの溶解度、ポリマーの毒性、生物活性分子の毒性、またはそれらの組合せが含まれる。たとえばナノファイバーを特定の蛍光マーカーで標識することにより、ナノファイバー混合物または細胞アレイ中のファイバーの各種の同定が可能となる。ナノファイバーの複数の化学的および/または物理的特性を同定するために、1つのナノファイバーを複数の蛍光マーカーで標識し得る。
【0019】
本発明の別の態様は、1つまたは複数のナノファイバーを含むナノフィブリル構造体であり、ナノフィブリル構造体とは1つまたは複数のナノファイバーのネットワークによって定義される。一実施形態では、ナノファイバー・ネットワークを基材表面上に堆積させる。ナノファイバーは、様々なポリマーまたはポリマー系から作製し得る。好ましくは、ポリマーまたはポリマー系は細胞毒性がない。一実施形態では、ナノファイバーは本発明の改良ナノファイバーを含む。別の実施形態では、ナノファイバーはポリアミドまたはポリエステルから作製する。さらなる実施形態では、ポリアミドまたはポリエステルはin vivoのヒトでの応用例に適している。さらなる実施形態では、ポリエステルはポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ乳酸またはポリグリコール酸であり得る。さらなる実施形態では、ポリアミドはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610または他の生体適合性ポリアミドであり得る。一実施形態では、フィルムは光学的に透明なポリエステルフィルムである。
【0020】
一実施形態では、基材はガラスまたはプラスチックを含む。さらなる実施形態では、基材は培養容器の表面である。別の実施形態では、基材はフィルムを含む。フィルムは水溶性または非水溶性であり得る。フィルムは生分解性および/または生体溶解性であり得る。好ましくは、フィルムは細胞毒性がない。好ましい実施形態では、フィルムはポリビニルアルコール・フィルムである。
【0021】
ナノフィブリル構造体は、単独でまたは層状で利用して細胞または組織培養のためのナノフィブリル構造体の複数層状のアセンブリを形成し得る。一実施形態では、ナノフィブリル構造体はスペーサーを含む。スペーサーは支持構造体として機能し得る。スペーサーは、細胞がナノファイバー・ネットワークに浸透して付着することを可能にするのに十分な隙間をもたらす。スペーサーは水溶性または非水溶性であり得る。スペーサーは多孔性または非多孔性であり得る。スペーサーは生分解性および/または生体溶解性であり得る。好ましくは、スペーサーは生体適合性である。
【0022】
一実施形態では、スペーサーは第一および第二の表面を含み、スペーサーの第一の表面は基材上に堆積させたナノファイバー・ネットワークの表面と接触しており、スペーサーの第二の表面は、ナノファイバー・ネットワークと基材とがスペーサーの直径、すなわち厚さによって隔てられているように基材表面と接触している。別の実施形態では、スペーサーは第一および第二の表面を含み、スペーサーの第一の表面は第一のナノフィブリル構造体の表面と接触しており、スペーサーの第二の表面は、2つのナノフィブリル構造体がスペーサーの直径、すなわち厚さによって隔てられているように第二のナノフィブリル構造体の表面と接触している。
【0023】
本発明のナノフィブリル構造体には、創傷修復、人工皮膚の増殖、静脈、動脈、腱、靱帯、軟骨、心臓弁、器官培養、火傷の処置、および骨移植を含めた数多くのin vivoおよびex vivoでの使用が存在する。一実施形態では、細胞または組織の増殖環境の多様なアレイは、特定の化学的および物理的特性を個々のナノフィブリル構造体の要素を含むナノファイバー・ネットワーク、基材、および/もしくはスペーサー内に設計し、かつ/または次いで個々のナノフィブリル構造体を層状に重ねることによって構築し得る。特定の実施形態では、この環境の特有の性質は、ファイバーの直径および組成の異質性の性質から得ることができる。それだけには限定されないが、質感、しわの多さ、接着性、空隙率、固体性(solidity)、弾性、幾何形状、相互連結性、比表面積、ファイバー直径、ファイバーの溶解性/不溶性、親水性/疎水性、およびファイバー密度を含めた個々のナノファイバー、ナノフィブリル構造体、ならびにナノファイバー・ネットワークの物理的特性および/または特徴は、増殖および/もしくは分化を含めた望ましい細胞活性を促進するナノ環境および/もしくはミクロ環境を構築するために変化かつ/または改変し得る。特定のナノ環境および/またはミクロ環境を、個々のナノフィブリル構造体内または2つ以上のナノフィブリル構造体を含む細胞アレイ内に設計し得る。
【0024】
それだけには限定されないが、成長因子、分化因子、線維性タンパク質、接着性タンパク質、糖タンパク質、官能基、接着性化合物、非接着性化合物、および標的化分子を含めた、ポリペプチド、脂質、炭水化物、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、または多糖類などの特異的な化学的特性および認識モチーフを、増殖および/または分化を含めた1つもしくは複数の選択された細胞活性を促進するために、等方的にまたは勾配として、個々のナノフィブリル構造体のナノファイバー・ネットワーク、基材、および/またはスペーサー内に設計し得る。一部の好ましい成長因子には、VEGF、NGF、PDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、FGFb、FGFa、およびBGFが含まれる。一部の好ましい分化因子には、ニューロトロフィン、コロニー刺激因子、およびトランスフォーミング成長因子が含まれる。アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質は、それだけには限定されないが、構造タンパク質、酵素、およびペプチドホルモンを含めた任意の大きさおよび複雑さのこのような分子のうち任意の種類のもの、ならびにこのような分子の組合せを含み得る。
【0025】
本発明はまた、組織の生産方法も対象とする。一実施形態では、2つ以上のナノフィブリル構造体を層状に重ねて複数層状のナノファイバー・アセンブリを形成する。生細胞をファイバー上に堆積させ、堆積させた細胞の増殖、遊走および/または分化を促進する条件下で構造体を培養する。さらなる実施形態では、細胞活性を促進するナノ環境および/またはミクロ環境は、増殖マトリックスの選択された物理的および/または化学的特性を変化かつ/もしくは改変させることによって、個々のマトリックス内に設計し得る。
【0026】
別の実施形態では、複数の細胞種を個々のナノフィブリル構造体上で、異なる培養条件下で培養する。その後、個々のナノフィブリル構造体のうち2つ以上を層状に重ねて複数層状のナノファイバー・アセンブリを形成し、細胞の増殖および/または分化を含めた望ましい細胞活性を促進する条件下でアセンブリを培養する。さらなる実施形態では、細胞活性を促進するナノ環境および/またはミクロ環境は、ナノフィブリル構造体の選択された物理的および/もしくは化学的特性を変化かつ/もしくは改変させることによって個々のナノフィブリル構造体内に、または望ましいナノ環境もしくはミクロ環境を得るために個々のナノフィブリル構造体を選択的に層状に重ねることによってナノファイバー・アセンブリ内に設計し得る。増殖および/または分化を最適化するために、同種もしくは異種性のファイバーの直径および組成を選択し得る。
【0027】
本発明の別の態様は、細胞増殖培地である。一実施形態では、細胞増殖培地はナノファイバー・マトリックスを含み、ネットワークのファイバーの直径は約50nm〜約1000nmであり、平均ファイバー間隔は少なくとも約2ミクロンであり、マトリックスの固体性は約30%であり、外壁を備えた上部および底部があり、外壁の高さは約10ミクロン〜約100mmであり、上部および底部の面積は独立して約5mm〜約4×10mmである。別の実施形態では、外壁の高さならびに上部および底部の面積は利用可能な培養器または培養容器の寸法に適合させる。
【0028】
細胞増殖培地はマトリックス、ネットワーク、マット、シート、またはロールを含み得る。一実施形態では、細胞増殖培地はナノファイバーのネットワークを含む。別の実施形態では、ナノファイバーのネットワークは培養容器内への挿入に適合させる。別の実施形態では、細胞増殖培地を培養容器の内部表面上に堆積させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
I.定義
本明細書中で使用する用語「ナノフィブリル構造体」(nanofibrillar stracture)とは、1つまたは複数のナノファイバー(nanofiber)を含む生細胞の増殖のための環境を含む構造体を意味し、構造体は1つまたは複数のナノファイバーのネットワークによって定義される。一部の実施形態では、ナノフィブリル構造体は基材を含み、ナノフィブリル構造体は基材表面上に堆積させた1つまたは複数のナノファイバーのネットワークによって定義されている。ナノフィブリル構造体におけるナノトポグラフィー、ナノファイバー・ネットワークのトポグラフィー、および空間内のナノファイバー・ネットワークのナノファイバーの配置は、単層または複数層状の細胞培養における同型もしくは異型の細胞増殖および/または細胞分化の促進により組織適合性があるin vitroの生体模倣基層を提供するよう設計されている。ナノフィブリル構造体は、層状に重ねて複数層状のナノファイバー・アセンブリを形成させるか、細胞アレイであるか、または組織構造体であり得る。
【0030】
本明細書中で使用する用語「ナノファイバー」とは、直径が約1000ナノメートル以下のポリマーの微細なファイバー(polymer fine fiber)を意味する。ポリマーは、好ましくは細胞毒性がないポリマーである。ポリマーは水溶性または非水溶性であり得る。ポリマーは生分解性および/または生体溶解性であり得る。ポリマーはポリエステルまたはポリアミドであり得る。ポリエステルは、それだけには限定されないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、およびそれらのコポリマーを含めた脂肪族ポリエステルであり得る。ポリアミドはポリカプロラクタム、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン612または他のナイロン材料であり得る。
【0031】
ナノファイバーは、それだけには限定されないが、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、コレステロール、およびそれらの混合物を含めた脂質または親油性分子を含み得る。ナノファイバーは1つまたは複数の生物活性分子を含み得る。好ましくは、生物活性分子のうちの1つはペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物、多糖、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、またはそれらのハイブリッド分子である。ナノファイバーは1つもしくは複数のアルコール、アルデヒド、アミノ、カルボキシ、スルフヒドリルまたは光活性可能な官能基を含み得る。好ましくは、光活性可能な基はカルベンまたはナイトレンである。
【0032】
ナノファイバーは1つもしくは複数の成長因子および/または分化因子を含み得る。ナノファイバーは1つもしくは複数の成長因子および/または分化因子を放出し得る。放出速度は、ナノファイバーの分解および/または溶解速度によって決定される。
【0033】
本明細書中で使用する用語「ネットワーク」とは、増殖および培養安定性を促進するように選択されたファイバー間の間隔をもつ相互連結ネットを形成するように制御された空間内における、ナノファイバーの不規則または定方向の分布を意味する。ネットワークは、ファイバー間に、ネットワーク内に孔またはチャネルを形成させるネットワークを含んだ狭い空間をもつ。孔またはチャネルの直径は、厚さを通じて約0.01ミクロン〜約25ミクロン、好ましくは約2ミクロン〜約10ミクロンである。ネットワークは、ナノファイバーの単層、連続したナノファイバーによって形成される単層、複数層のナノファイバー、連続したナノファイバーによって形成される複数層、またはマットを含み得る。ネットワークは不織またはネットであり得る。ネットワークは、単一のナノファイバーの直径程度〜約2000nmの厚さであり得る。それだけには限定されないが、質感、しわの多さ、接着性、空隙率、固体性、弾性、幾何形状、相互連結性、比表面積、ファイバー直径、ファイバーの溶解性/不溶性、親水性/疎水性、ファイバーの密度、およびファイバーの配向を含めたネットワークの物理的特性は、所望のパラメータに設計し得る。
【0034】
本明細書中で使用する用語「基材」とは、ナノファイバーまたはナノファイバーのネットワークを堆積させる任意の表面を意味する。基材は、堆積させたナノファイバーのネットワークに構造上の支持を提供する任意の表面であり得る。基材はガラスまたはプラスチックを含み得る。好ましくは、プラスチックは細胞毒性がない。基材はフィルムまたは培養容器であり得る。
【0035】
基材は水溶性または非水溶性であり得る。水溶性の基材は、好ましくはポリビニルアルコール・フィルムである。基材は多孔性または非多孔性であり得る。基材の空隙率は細胞の通過性によって決定される。細胞は、多孔性基材に浸透することができるが、非多孔性基材に浸透することができない。好ましくは、多孔性基材中の孔の直径は約2μm〜約10μmである。基材は生分解性および/または生体溶解性であり得る。好ましくは、基材は生体適合性である。
【0036】
基材は1つまたは複数の生物活性分子を含み得る。好ましくは、生物活性分子のうちの1つはペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物、多糖、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、またはそれらのハイブリッド分子である。基材は1つもしくは複数のアルコール、アルデヒド、アミノ、カルボキシ、スルフヒドリルまたは光活性可能な官能基を含み得る。好ましくは、光活性可能な基はカルベンまたはナイトレンである。基材は1つもしくは複数の成長因子および/または分化因子を含み得る。基材は1つもしくは複数の成長因子および/または分化因子を放出し得る。放出速度は、基材の溶解または分解速度によって決定される。
【0037】
本明細書中で使用する用語「スペーサー」とは、ナノファイバーもしくはナノファイバー・ネットワークを基材表面から、または第一のナノフィブリル構造体の表面を第二のナノフィブリル構造体の表面から隔てる層を意味し、構造体がスペーサーの直径、すなわち厚さによって隔てられているようになっている。スペーサーはポリマー微細なファイバーまたはフィルムを含み得る。好ましくは、フィルムの厚さは約10ミクロン〜約50ミクロンである。スペーサーはセルロース、デンプン、ポリアミド、ポリエステル、またはポリテトラフルオロエチレンを含めたポリマーを含み得る。微細なファイバーはミクロファイバーを含み得る。ミクロファイバーとは、直径が約1.0μm〜約10μmのポリマーの微細なファイバーである。ミクロファイバーは不織またはネットであり得る。
【0038】
スペーサーは水溶性または非水溶性であり得る。スペーサーは多孔性または非多孔性であり得る。スペーサーの空隙率は細胞の通過性によって決定される。細胞は、多孔性スペーサーに浸透することができるが、非多孔性スペーサーに浸透することができない。スペーサーは生分解性および/または生体溶解性であり得る。好ましくは、スペーサーは生体適合性である。
【0039】
スペーサーは1つまたは複数の生物活性分子を含み得る。好ましくは、生物活性分子のうちの1つはペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、多糖、アミノ酸、またはそれらのハイブリッド分子である。スペーサーは1つもしくは複数のアルコール、アルデヒド、アミノ、カルボキシ、スルフヒドリルまたは光活性可能な官能基を含み得る。好ましくは、光活性可能な基はカルベンまたはナイトレンである。スペーサーは1つもしくは複数の成長因子および/または分化因子を含み得る。スペーサーは1つもしくは複数の成長因子および/または分化因子を放出し得る。放出速度は、スペーサーの溶解または分解速度によって決定される。
【0040】
本明細書中で使用する用語「生物活性分子」とは、細胞または組織に影響を与える分子を意味する。この用語には、ヒトまたは獣医学用の治療剤、栄養補助剤、ビタミン、塩、電解質、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、多糖類、核酸、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、成長因子、分化因子、ホルモン、神経伝達物質、フェロモン、ケイロン、プロスタグランジン、免疫グロブリン、モノカインおよび他のサイトカイン、湿潤剤、鉱物、電気反応性および磁気反応性の物質、光感受性物質、抗酸化剤、細胞エネルギー源として代謝され得る分子、抗原、ならびに細胞応答ままたは生理的応答を引き起こすことができる任意の分子が含まれる。分子の任意の組合せ、ならびにこれら分子の作用剤または拮抗剤を使用することができる。グリコサミノグリカンには、糖タンパク質、プロテオグリカン、およびヒアルロナンが含まれる。多糖類には、セルロース、デンプン、アルギン酸、キトサン、またはヒアルロナンが含まれる。サイトカインには、それだけには限定されないが、カルジオトロフィン、間質細胞由来因子、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、黒色腫増殖刺激活性(MGSA)、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP−1α)、2、3α、3β、4および5、インターロイキン(IL)1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、TNF−α、ならびにTNF−βが含まれる。本発明に有用な免疫グロブリンには、それだけには限定されないが、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、およびそれらの混合物が含まれる。アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質には、任意の大きさおよび複雑さのそのような分子のうち任意の種類のもの、ならびにそのような分子の組合せが含まれ得る。例には、それだけには限定されないが、構造タンパク質、酵素、およびペプチドホルモンが含まれる。
【0041】
また、生物活性分子という用語には、線維性タンパク質、接着性タンパク質、接着性化合物、非接着性化合物、および標的化化合物も含まれる。線維性タンパク質にはコラーゲンおよびエラスチンが含まれる。接着性/非接着性化合物にはフィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンジンおよびテネイシンCが含まれる。接着性タンパク質には、アクチン、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、セレクチン、細胞内接着性分子1、2、および3、ならびに、それだけには限定されないがαβ、αβ、αβ、αβ、αβ、およびαβなどのインテグリンを含めた細胞−マトリックス接着性受容体が含まれる。
【0042】
また、生物活性分子という用語には、レプチン、白血病阻害因子(LIF)、RGDペプチド、腫瘍壊死因子αおよびβ、エンドスタチン、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、骨原性タンパク質−1、骨形態形成(bone morphogenic)タンパク質2および7、オステオネクチン、ソマトメジン様ペプチド、オステオカルシン、インターフェロンα、インターフェロンαA、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロン1α、ならびにインターロイキン2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17および18も含まれる。
【0043】
本明細書中で使用する用語「成長因子」とは、細胞または組織の増殖を促進する生物活性分子を意味する。本発明に有用な成長因子には、それだけには限定されないが、トランスフォーミング成長因子−α.(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−β.(TGF−β);AA、ABおよびBBアイソフォームを含めた血小板由来(platelet-derived)成長因子(PDGF);FGF酸性アイソフォーム1および2、FGF塩基性形態2、ならびにFGF4、8、9および10を含めた線維芽細胞(fibroblast)成長因子(FGF);NGF2.5、NGF7.0およびβNGFならびにニューロトロフィンを含めた神経成長因子(NGF);脳由来神経栄養性因子、軟骨由来因子、骨成長因子(BGF)、塩基性線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子(IGF)、血管内皮(vascular endothelial)成長因子(VEGF)、EG−VEGF、VEGF関連タンパク質、Bv8、VEGF−E、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インスリン様成長因子(IGF)IおよびII、肝細胞成長因子、グリア神経栄養性成長因子(GDNF)、幹細胞因子(SCF)、ケラチノサイト成長因子(KGF);TGFα、β、β1、β2、およびβ3を含めたトランスフォーミング成長因子(TGF);骨格成長因子、骨基質由来成長因子、骨由来成長因子、ならびにそれらの混合物が含まれる。一部の成長因子は、細胞または組織の分化も促進し得る。たとえば、TGFは細胞または組織の増殖および/または分化を促進し得る。一部の好ましい成長因子には、VEGF、NGF、PDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、FGFb、FGFa、およびBGFが含まれる。
【0044】
本明細書中で使用する用語「分化因子」とは、細胞の分化を促進する生物活性分子を意味する。この用語には、それだけには限定されないが、ニューロトロフィン、コロニー刺激因子(CSF)、またはトランスフォーミング成長因子が含まれる。CSFには、顆粒球−CSF、マクロファージ−CSF、顆粒球−マクロファージ−CSF、エリスロポエチン、およびIL−3が含まれる。一部の分化因子は、細胞または組織の増殖も促進し得る。たとえば、TGFおよびIL−3は細胞の分化および/または増殖を促進し得る。
【0045】
本明細書中で使用する用語「接着性化合物」とは、細胞の、接着性化合物を含むファイバー表面への付着を促進する生物活性分子を意味する。接着性化合物の例には、それだけには限定されないが、フィブロネクチン、ビトロネクチン、およびラミニンが含まれる。
【0046】
本明細書中で使用する用語「非接着性化合物」とは、細胞の、非接着性化合物を含むファイバーからの剥離を促進する生物活性分子を意味する。非接着性化合物の例には、それだけには限定されないが、トロンボスポンジンおよびテネイシンCが含まれる。
【0047】
本明細書中で使用する用語「標的化化合物」とは、細胞の標的化化合物を含むファイバーへの招集および/または付着を誘発させるシグナル伝達分子として機能する生物活性分子を意味する。標的化化合物およびそれら同族受容体の例には、フィブロネクチンおよびインテグリン由来のRGDペプチドを含めた付着ペプチド;EGFおよびEGF受容体を含めた成長因子;ならびにインスリンおよびインスリン受容体を含めたホルモンが含まれる。
【0048】
本明細書中で使用する用語「脂質」とは、水に不溶性であるが、無極性有機溶媒に溶ける傾向にある有機分子を意味する。この用語には、それだけには限定されないが、植物および動物性トリグリセリド、ステロール、ならびにリゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、およびコレステロールを含めたホスファチジルコリン物質を含めた親油性分子が含まれる。
【0049】
本明細書中で使用する語句「挿入に適合させた」とは、培養容器の寸法で使用するために、またはそれに合わせて製造もしくは作製した、あるいは培養容器の寸法で使用するために、またはそれに合わせてサイズ変更したことを意味し、たとえば、シート、ロール、もしくはマットを切って培養容器への挿入に適した大きさにすること、またはそのような小片を切り出すことが含まれる。
【0050】
本明細書中で使用する用語「培養容器」とは、細胞または組織を培養するための培地を保持する容器を意味する。培養容器はガラスまたはプラスチックであり得る。好ましくは、プラスチックは細胞毒性がない。培養容器という用語には、それだけには限定されないが、単一および複数ウェル培養プレート、チャンバまたは複数チャンバを備えた培養スライド、カバーガラス、カップ、フラスコ、チューブ、ボトル、ローラーボトル、スピナーボトル、灌流チャンバ、バイオリアクター、ならびに発酵槽が含まれる。
【0051】
本明細書中で使用する用語「マット」とは、密に織り合わされた、もつれたまたは接着したナノファイバーの塊である。マット内のナノファイバーの分布は不規則または定方向であり得る。マットは不織またはネットであり得る。マットは基材上に堆積させても、させなくてもよい。マットの厚さは約100〜約1000nmである。
【0052】
II.本発明を実施するための形態
A.改良ナノファイバー
本発明の一態様は、脂質を含む改良ナノファイバーを提供する。ナノファイバーの直径は、好ましくは約1000nm未満である。一実施形態では、ナノファイバーの直径は約50〜約1000ナノメートルである。改良ナノファイバーは、細胞培養および組織工学を含めた様々な応用例において有用である。
【0053】
i.ポリマーおよびポリマー系
改良ナノファイバーは、好ましくは細胞毒性がないポリマーを含む。ポリマーは水溶性または非水溶性であり得る。ポリマーは生分解性および/または生体溶解性であり得る。ポリマーは、第一のポリマーおよび高温で調整または処理する第二の異なるポリマー(ポリマー種、分子量まはた物理的特性が異なる)を含み得る。
【0054】
ポリマー混合物を反応させて単一の化学種を形成するか、または焼なまし工程によって物理的に混合して混合組成物とすることができる。焼なましには、結晶化度、応力緩和または配向などの物理的変化を伴う。好ましい材料は、示差走査熱量計分析により単一の高分子材料が示されるように、化学反応により単一の高分子種にする。このような材料は、好ましい添加材料と混合した場合、高温度、高湿度および困難な操作条件に面した際に疎油性、疎水性または他の関連する安定性の向上をもたらす添加剤表面コーティングをナノファイバー上に形成することができる。この材料クラスの微細なファイバーの直径は約1000nm〜約5ナノメートル未満であることができる。このようなファイバーは、添加材料の個別の層、あるいはポリマー表面中に部分的に溶かしたもしくは合金した、または両方を行った添加材料の外側コーティングを含む、滑らかな表面を有することができる。混合高分子系で用いる好ましい材料には、ナイロン6;ナイロン66;ナイロン6−10;ナイロン(6−66−610)コポリマーおよび他の直鎖状の一般に脂肪族であるナイロン組成物が含まれる。好ましいナイロンコポリマー樹脂(SVP−651)を、末端基滴定によって分子量について分析した。(J.E.WalzおよびG.B.Taylor、determination of the molecular weight of nylon、Anal.Chem.第19巻、第7号、448〜450頁(1947))。数平均分子量(W)は21,500〜24,800であった。組成は、三成分のナイロン、すなわちナイロン6が約45%、ナイロン66が約20%およびナイロン610が約25%の融解温度の相図によって推定した。(286頁、Nylon Plastics Handgook、Melvin Kohan編、Hanser Publisher、New York(1995))。
【0055】
報告されたSVP651樹脂の物理的特性は以下のとおりである。
【表1】

【0056】
87〜99.9%以上の加水分解度を有するポリビニルアルコールをこのようなポリマー系で使用することができる。好ましくは、これらは架橋結合されており、最も好ましくは、これらは架橋結合されており、かつ相当量の疎油性および疎水性の添加材料と混合されている。
【0057】
ポリマーは、ファイバーの寿命または操作特性を向上させるために添加組成物と混合してもよい、単一の高分子材料であり得る。本発明のこの態様に有用な好ましいポリマーには、ナイロンポリマー、塩化ポリビニリデンポリマー、フッ化ポリビニリデンポリマー、ポリビニルアルコールポリマー、ならびに、特に、疎油性および疎水性の強い添加剤と混合した場合に、微細なファイバー表面上のコーティング中に添加材料が配合されたミクロファイバーまたはナノファイバーをもたらすことができる、記載した材料が含まれる。ここでも、類似したナイロンの混合物、類似したポリ塩化ビニルポリマー、塩化ポリビニリデンポリマーの混合物などの、類似したポリマーの混合物が本発明に有用である。さらに、高分子混合物または異なるポリマーの合金も本発明に企図される。この観点から、適合性のあるポリマー混合物が、本発明のナノファイバーまたはミクロファイバー材料の形成に有用である。
【0058】
添加組成物は有機または無機、金属または非金属であり得る。一実施形態では、ポリマー溶液は約0.25%〜約70%w/wの添加組成物を含む。さらなる実施形態では、添加組成物は生物活性分子である。別のさらなる実施形態では、添加組成物はセラミックである。添加組成物は、顕微鏡観察用にファイバー固有の蛍光を増大または低減させる光学的添加剤であり得る。一実施形態では、光学的添加剤は量子ドットである。別の実施形態では、光学的添加剤は、シグナル対雑音比を高めることによってファイバーの蛍光バックグラウンドを最小限にする。光学的添加剤の例には、それだけには限定されないが、量子ドットまたはFluoroblok(商標)(Bectin Dickinson、Franklin Lakes,NJ)が含まれる。
【0059】
本発明の高分子組成物で使用することができるポリマー材料には、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンスルフィド、酸化ポリアリーレン、ポリスルホン、改質ポリスルホンポリマー、ならびにそれらの混合物などの、付加ポリマーおよび縮合ポリマー材料がどちらも含まれる。これらの一般的なクラスの範囲にある好ましい材料には、ポリエチレン、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリメチルメタクリル酸(および他のアクリル樹脂)、ポリスチレン、およびそれらのコポリマー(ABA型ブロック・コポリマーを含む)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、様々な加水分解度(87%〜99.5%)の、架橋結合されている型および架橋結合されていない型のポリビニルアルコールが含まれる。好ましい付加ポリマーはガラス質の傾向がある(室温より高いTg)。これはポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリル酸、ポリスチレンポリマー組成物もしくは合金の場合にそうであり、またはフッ化ポリビニリデンおよびポリビニルアルコール材料については結晶化度が低い。
【0060】
ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、およびそれらのコポリマーは生分解性かつ生体適合性であり、外科縫合糸および一部の埋め込み型装置などの特定のヒト臨床応用において食品薬品局(FDA)に許可された数少ない合成ポリマーの一部である。一実施形態では、ナノファイバーはin vivoのヒトでの応用例に適した脂肪族ポリエステルから作製する。好ましくは、ポリエステルはポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ乳酸またはポリグリコール酸である。一実施形態では、ナノファイバーは、クロロホルム中に少なくとも約10%のポリ(ε−カプロラクトン)w/wを含むポリマー溶液から作製する。別の実施形態では、ナノファイバーは、クロロホルム中に少なくとも約15%のポリ(ε−カプロラクトン)w/wを含むポリマー溶液から作製する。
【0061】
ポリアミド縮合ポリマーの一クラスはナイロン材料である。用語「ナイロン」とは、すべての長鎖合成ポリアミドの一般的な名称である。典型的には、ナイロンの学名はナイロン−6,6のように一連の数字を含み、これは、出発物質がCのジアミンおよびCの二価酸であることを示す(1桁目がCジアミンを示し、2桁目がCジカルボン酸化合物を示す)。別のナイロンは、少量の水の存在下でε−カプロラクタムを重縮合させることによって作製することができる。この反応では、直鎖状ポリアミドであるナイロン−6が形成される(ε−アミノカプロン酸とも呼ばれる環状ラクタムから作製する)。さらに、ナイロンコポリマーも企図される。コポリマーは、様々なジアミン化合物、様々な二価酸化合物および様々な環状ラクタム構造体を反応混合物中で混合し、その後、ポリアミド構造体中で不規則に配置した単量体材料と共にナイロンを形成することによって作製することができる。たとえば、ナイロン6,6−6,10材料は、ヘキサメチレンジアミンならびにCおよびC10の二価酸の混合物から製造したナイロンである。ナイロン6−6,6−6,10は、ε−アミノカプロン酸、ヘキサメチレンジアミンならびにCおよびC10の二価酸の混合物の材料の共重合によって製造したナイロンである。
【0062】
ブロック・コポリマーも本発明の工程に有用である。このようなコポリマーでは、溶媒膨張剤の選択が重要である。選択された溶媒は、どちらのブロックもその溶媒に可溶性のあるものである。一例は、塩化メチレン溶媒中のABA(スチレン−EP−スチレン)またはAB(スチレン−EP)ポリマーである。一方の成分がその溶媒に不溶性である場合、ゲルが形成される。このようなブロック・コポリマーの例は、スチレン/ブタジエンおよびスチレン/水素化ブタジエン(エチレンプロピレン)を含めたKraton(登録商標)型のABおよびABAブロック・ポリマー、Pebax(登録商標)型のε−カプロラクタム/酸化エチレン、Sympatex(登録商標)ポリエステル/酸化エチレン、ならびに酸化エチレンおよびイソシアネートのポリウレタンである。
【0063】
フッ化ポリビニリデン、シンジオタクチック・ポリスチレン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(アクリロニトリル)およびアクリル酸とメタクリレートとのそのコポリマーなどの非結晶質付加ポリマー、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)およびその様々なコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)およびその様々なコポリマーなどの付加ポリマーは、低い圧力および温度で可溶性であるので比較的容易に溶液紡糸することができる。しかし、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの結晶性の高いポリマーは、溶液紡糸する場合は高温度、高圧力の溶媒を必要とする。したがって、ポリエチレンおよびポリプロピレンの溶液紡糸は非常に困難である。静電溶液紡糸はナノファイバーおよびミクロファイバーを作製する一方法である。
【0064】
本発明者らはまた、ポリマーの混合物、合金様式(alloy format)または架橋結合された化学結合した構造体中に2つ以上の高分子材料を含む高分子組成物を形成することに相当な利点があることを発見した。本発明者らは、このようなポリマー組成により、ポリマー鎖の柔軟性または鎖の可動性の向上、全体的な分子量の増加、および高分子材料のネットワークの形成による補強の提供などのポリマー属性の変化によって物理的特性が向上すると考える。
【0065】
この概念の一実施形態では、有益な特性のために2つの関連するポリマー材料を混合することができる。たとえば、高分子量のポリ塩化ビニルを低分子量のポリ塩化ビニルと混合することができる。同様に、高分子量のナイロン材料を低分子量のナイロン材料と混合することができる。さらに、一般に高分子の部類の異なる種を混合することができる。たとえば、高分子量のスチレン材料を低分子量の耐衝撃性ポリスチレンと混合することができる。ナイロン−6材料をナイロン−6;6,6;6,10コポリマーなどのナイロンコポリマーと混合することができる。さらに、87%加水分解されたポリビニルアルコールなどの加水分解度が低いポリビニルアルコールを、98〜99.9%以上の加水分解度を有する完全にまたは過剰に加水分解されたポリビニルアルコールと混合することができる。これらの材料すべての混合物を、適切な架橋結合機構を用いて架橋結合させることができる。ナイロンは、アミド結合中の窒素原子と反応性がある架橋結合剤を用いて架橋結合させることができる。ポリビニルアルコール材料は、ホルムアルデヒドなどのモノアルデヒド、尿素、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂およびその類似体、ホウ酸ならびに他の無機化合物、ジアルデヒド、二価酸、ウレタン、エポキシおよび他の既知の架橋結合剤などのヒドロキシル反応性の材料を用いて架橋結合させることができる。架橋結合技術は良く知られているかつ理解されている現象であり、架橋剤が反応してポリマー鎖間に共有結合を形成して分子量、耐化学性、全体的な強度および機械的崩壊を実質的に向上させる。
【0066】
電界紡糸により直径が異なり得る、典型的には約5nm〜約1000nm異なり得るナノファイバーの集団が生じる。本発明の好ましい様式は、ポリマーの電界紡糸により、添加組成物を含まないポリマー溶液から電界紡糸したナノファイバーの集団と比較して、細いファイバーの数が多いまたは割合が高いナノファイバーの集団が生成されるように、ポリマーの充填性に影響を与える添加組成物と組み合わせた高分子材料を含む。一実施形態では、ポリマー溶液は約0.25%〜約15%w/wの添加組成物を含む。別の実施形態では、ポリマー溶液は約1%〜約10%w/wの添加組成物を含む。
【0067】
細いファイバーの直径は好ましくは約5nm〜約600nmである。一実施形態では、細いファイバーの直径は約50nm〜約400nmである。別の実施形態では、細いファイバーの直径は約300nmである。別の実施形態では、細いファイバーの直径は約5nm〜約200nmである。別の実施形態では、細いファイバーの直径は約5nm〜約100nmである。別の実施形態では、細いファイバーの直径は約5nm〜約50nmである。
【0068】
直径のより小さいナノファイバーは、ナノファイバーと細胞との間の多点付着を促進する表面を提供し、これはin vivoにおける細胞外基質への細胞付着の特徴である。好ましくは、ナノファイバーを含む脂質の集団の少なくとも約25%が細いファイバーである。一実施形態では、ナノファイバーを含む脂質の集団の少なくとも約30%が細いファイバーである。別の実施形態では、ナノファイバーを含む多分散複数脂質の少なくとも約40%が細いファイバーである。別の実施形態では、ナノファイバーを含む多分散複数脂質の少なくとも約50%が細いファイバーである。別の実施形態では、ナノファイバーを含む多分散複数脂質の少なくとも約60%が細いファイバーである。別の実施形態では、ナノファイバーを含む多分散複数脂質のが少なくとも約70%が細いファイバーである。
【0069】
好ましくは、添加組成物は細胞毒性がない。一実施形態では、ポリマーの充填性に影響を与える添加組成物は生物活性分子である。生物活性分子は脂質であり得る。好ましくは、脂質はリゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、コレステロール、およびそれらの混合物である。
【0070】
添加組成物は、遊走またはナノファイバーへの細胞付着を含めた細胞の活性に影響を与えても与えなくてもよい。一実施形態では、添加組成物を含むナノファイバーは細胞の活性に影響を与えない。好ましくは、添加組成物は1つまたは複数の生物活性分子を含む。1つまたは複数の生物活性分子は脂質であり得る。好ましくは、脂質はコレステロールである。別の実施形態では、添加組成物を含むナノファイバーは細胞の活性に影響を与えうる。そのようなナノファイバーは、細胞遊走を誘発するか、または細胞のナノファイバーへの付着を高め得る。好ましくは、添加組成物は1つまたは複数の生物活性分子を含む。1つまたは複数の生物活性分子は脂質であり得る。一実施形態では、脂質はリゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、またはそれらの混合物である。別の実施形態では、添加組成物はコレステロールならびに成長因子、分化因子、および/または接着性タンパク質を含めた細胞の活性に影響を与える1つもしくは複数の生物活性分子を含む。
【0071】
ポリマーまたはポリマー系は、それだけには限定されないが、脂質または親油性分子、線維性タンパク質、接着性タンパク質、成長因子、および分化因子を含めた1つもしくは複数の生物活性分子を含み得る。好ましくは、少なくとも生物活性分子のうちの1つは脂質を含む。一実施形態では、脂質分子は、細胞のファイバーへの招集および付着を誘発させるシグナル伝達分子として機能し得る。脂質分子はまた、細胞の増殖または分化も引き起こし得る。細胞の誘導された遊走および密着を促進する、脂質などの生物活性分子を含むナノファイバーは、創傷修復、人工皮膚の増殖、静脈、動脈、腱、靱帯、軟骨、心臓弁、器官培養、火傷の処置、および骨移植を含めた応用例にin vivoまたはex vivoで使用し得る。好ましくは、脂質はリゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、またはそれらの混合物である。
【0072】
好ましくは、生物活性分子の1つもしくは複数は成長因子、分化因子、線維性タンパク質、および/または接着性タンパク質である。好ましくは、成長因子はVEGF、骨形態形成因子β、EGF、PDGF、NGF、FGF、IGF、またはTGFである。好ましくは、分化因子はニューロトロフィン、CSF、またはTGFである。好ましくは、分化因子はニューロトロフィン、CSF、またはTGFである。
【0073】
本発明のポリマー系は、セルロース系、ポリビニル、ポリエステル、ポリスチレン、またはポリアミド基材と接触させた際に、基材にしっかりと結合し、かつ機械的応力に関連する離層作用に耐えることができるように、十分な強度で基材に接着するという接着の特徴を有する。本発明のナノファイバーは、筋肉および腱を含めた三次元の機能的な組織を構築するために使用し得る。このような様式では、ポリマー材料は、たとえば筋肉または腱の収縮に関連する機械的応力を受けている間、基材に付着したままでなければならない。ナノファイバーの基材への接着性は、ファイバーを基材と接触させる際、または熱もしくは圧力を用いて基材上のファイバーを処理したあとの、ファイバー形成の溶媒効果から生じることができる。しかし、水素結合などの特定の化学的相互作用、Tgより高いまたは低い温度で起こるポリマーと基材との接触、および添加剤を含めたポリマーの配合などのポリマー特徴が、接着性の決定に重要な役割を果たしていると考えられる。接着時に溶媒または蒸気で可塑化したポリマーは、接着性が増大していることができる。
【0074】
ii.官能化された表面
官能基をナノファイバーの外部表面に取り込ませ得る。これらの官能化された表面は、ペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物、多糖、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、または他の生物活性分子をナノファイバーの表面に結合させるために反応させ得る。一実施形態では、1つまたは複数の生物活性分子を結合するためにナノファイバーの官能化された表面を反応させる。好ましくは、生物活性分子の1つもしくは複数は成長因子、分化因子、接着性タンパク質、または接着性タンパク質由来の生物活性ペプチドである。好ましくは、成長因子はVEGF、骨形態形成因子β、EGF、PDGF、NGF、FGF、IGF、またはTGFである。好ましくは、分化因子はニューロトロフィン、CSF、またはTGFである。好ましくは、分化因子はニューロトロフィン、CSF、またはTGFである。好ましくは、生物活性ペプチドはRGDペプチドである。
【0075】
一実施形態では、プラズマ堆積によって官能基をナノファイバーの外部表面に堆積させる。プラズマ堆積は、ナノファイバーの表面において局所的プラズマを生じさせる。その後、処理した表面をアリルアミンおよび/またはアリルアルコールなどの気体分子と反応チャンバ内で反応させる。別の実施形態では、電界紡糸工程の間に官能基をナノファイバーの表面上に導入する。ドデシルアミン、ドデシルアルデヒド、ドデシルチオール、またはドデシルアルコールをポリマー溶液に加え得る。その後、ポリマー溶液をナノファイバーへと電界紡糸し、ここで、それぞれ加えたアミン、アルデヒド、スルフヒドリル、またはアルコール部分の一部がナノファイバーの外部表面に曝される。
【0076】
iii.蛍光マーカー
ナノファイバーは蛍光マーカーを含み得る。蛍光マーカーにより、たとえば、ナノファイバーの可視化、ナノファイバー混合物中の特定のナノファイバーの同定、ナノファイバーの化学的または物理的特性の同定、分解されて最初の埋め込み部位から遠位の他の領域に移送されることができる組織の工学操作に有用な複数層状のアセンブリを含めた、ナノファイバーを含む埋め込み型ナノファイバーおよび/もしくは構造体の分解ならびに/または再分布の評価が可能となる。蛍光マーカーは光退色可能(photobleachable)であっても光退色可能でなくてもよい。蛍光マーカーはpH感受性またはpH非感受性であってもよい。好ましくは、蛍光マーカーは細胞毒性がない。
【0077】
蛍光マーカーは、それだけには限定されないが、Texas Red(登録商標)、BIODIPY(登録商標)、Oregon Green(登録商標)、Alexa Fluor(登録商標)、フルオレセイン、Cascade Blue(登録商標)、Dapoxyl(登録商標)、クマリン、ローダミン、N−メチル−4−ヒドラジン−7−ニトロベンゾフラザン、ダンシルエチレンジアミン、ダンシルカダベリン、ダンシルヒドラジン、またはそれらの混合物を含めた、有機色素フルオロフォアを含み得る。これらおよび他の適切な有機色素フルオロフォアに関するさらなる情報はwww−probes−com(Molecular Probes、Eugene,OR)に見つかり得る。一実施形態では、ナノファイバー電界紡糸の前にフルオロフォアをポリマーに加える。別の実施形態では、ナノファイバーの表面に取り込ませた官能基によってフルオロフォアをナノファイバーにコンジュゲートさせる。別の実施形態では、フルオロフォアをナノファイバーに付着した生物活性分子にコンジュゲートさせる。
【0078】
蛍光マーカーはコロイド状無機半導体ナノ結晶を含み得る。一実施形態では、ナノ結晶はCdSe核およびZnSキャップを含む。別の実施形態では、ナノ結晶は量子ドットを含む。ナノ結晶および量子ドットに関するさらなる情報は、www−evidenttech−comおよびwww−quantumdots−comに見つかり得る。ナノ結晶の吸収スペクトルは、紫外から可視スペクトル中のカットオフまで伸びる幅広スペクトルであり得る。発光スペクトルは、選択されたナノ結晶の粒子径に特徴的な波長を中心とする狭小スペクトル、好ましくは最大半減で全幅20〜40nmである。好ましくは、ナノ結晶は光化学的に安定であり、かつおよび/または細胞毒性がない。
【0079】
蛍光マーカーを用いてナノファイバーの化学的および/または物理的特性を同定し得る。一実施形態では、1つのナノファイバーの化学的または物理的特性に1つの蛍光マーカーが定められ、定められたナノファイバーに蛍光マーカーで標識を付ける。このような化学的および物理的特性には、それだけには限定されないが、ファイバー直径、生物活性分子、官能基、ファイバーの溶解もしくは分解速度、ナノファイバーを含むポリマーの組成、ファイバーの疎水性もしくは親水性;ナノファイバーを含むポリマーの溶解度、ポリマーの毒性、生物活性分子の毒性、またはそれらの組合せが含まれる。一実施形態では、生物活性分子は成長因子、分化因子、接着性分子、またはそれらの混合物である。たとえばナノファイバーを特定の蛍光マーカーで標識することにより、ナノファイバー混合物または細胞アレイ中のファイバーの各種の同定が可能となる。ナノファイバーの複数の化学的および/または物理的特性を同定するために、1つのナノファイバーを複数の蛍光マーカーで標識し得る。
【0080】
蛍光マーカーは、生化学的環境の変化を決定するために生物活性蛍光プローブを含み得る。一実施形態では、ナノファイバーは、マーカーの蛍光または蛍光強度がイオン濃度に依存する蛍光マーカーを含み得る。このようなイオン感受性要素は、pHおよびカルシウム、ナトリウム、またはリン酸の流動を含めたイオン濃度の変化の検出に有用である。一実施形態では、蛍光マーカーはSNARF、SNAFL、カルシウムグリーン、またはそれらの混合物を含む。別の実施形態では、ナノファイバーは、他の分子との複合体形成によってその蛍光特性を変化させる能力を有する色素を含む。
【0081】
iv.応用例
改良ナノファイバーは、それだけには限定されないが、フィルターの応用例、コンピュータ・ハード・ドライブの応用例、および製薬上の応用例を含めた、ナノファイバーを用いる多数の知られている応用例で使用し得る。改良ナノファイバーは、細胞培養、組織培養、および組織工学の応用例を含めた様々な生物学的応用例において有用である。一応用例では、改良ナノファイバーを用いて細胞培養および組織工学のためのナノフィブリル構造体を作製し得る。一実施形態では、ナノフィブリル構造体は1つまたは複数の改良ナノファイバーを含み、ナノフィブリル構造体は1つまたは複数の改良ナノファイバーのネットワークによって定義される。別の実施形態では、ナノフィブリル構造体は1つまたは複数の改良ナノファイバーおよび基材を含み、ナノフィブリル構造体は基材表面上に堆積させた1つまたは複数の改良ナノファイバーのネットワークによって定義される。
【0082】
別の応用例では、改良ナノファイバーを用いて細胞培養用の増殖培地を調製し得る。一実施形態では、増殖培地は、培養容器内への挿入に適合させてもよいマット、ロール、またはシートの形態のナノファイバー・マトリックスを含む。別の実施形態では、増殖培地は、培養容器の表面上に堆積させた、またはファイバー上のメッシュとして培養容器に加えるナノファイバー・マトリックスを含む。
【0083】
別の応用例では、改良ナノファイバーは、細胞または組織培養に適した三次元構造体上にスプレーまたは紡糸し得る。増殖を続けるために生じた三次元構造体を細胞培養装置に戻り、ここで、電界紡糸したファイバー構造体は細胞増殖のプラットホームとして役割を果たす。さらなる応用性では、改良ナノファイバーは、組織再生の鋳型として役割を果たさせるための三次元マトリックスの層状構築体用に、不織メッシュおよび/または三つ編みへと電界紡糸し得る。さらなる応用性では、改良ナノファイバーは、1ウェルあたりの細胞数を増加させて細胞応答を検出するためにより高いシグナルをもたらすために、高スループット薬物分析および薬物感受性分析における細胞培地として用い得る。別のさらなる応用例では、改良ナノファイバーは、高スループット薬物分析、薬物感受性分析、および他の治療スキームにおける細胞培地として用い得る。ナノファイバーは、細胞がex vivo環境において、細胞のin vivo性質をより厳密に模倣するための環境を提供する。
【0084】
B.ナノフィブリル構造体
本発明の別の態様は、ナノフィブリル構造体である。ナノフィブリル構造体は1つまたは複数のナノファイバーを含む生細胞の増殖のための環境を含み、ナノフィブリル構造体は1つまたは複数のナノファイバーのネットワークによって定義される。一部の実施形態では、ナノフィブリル構造体は基材を含み、ナノフィブリル構造体は基材表面上に堆積させた1つまたは複数のナノファイバーのネットワークによって定義されている。ナノフィブリル構造体のナノトポグラフィーは、単層または複数層状の細胞培養における同型もしくは異型の細胞増殖および/または細胞分化の促進のために、より組織に似た基層が提供されるように操作し得る。
【0085】
i.ナノファイバー・ネットワーク
ナノフィブリル構造体を含むナノファイバーは、改良ナノファイバーについて上述したポリマーまたはポリマー系を含み得る。一実施形態では、ナノファイバーはin vivoのヒトでの応用例に適したポリマーから作製する。ナノファイバーは、好ましい電界紡糸技術を含めた数多くの技術によって作製し得る。ポリマーの選択ならびに/またはナノファイバーを作製する工程および/もしくは基材上で配向かつ定方向にする工程により、ナノファイバー・ネットワークの物理的特性の特異的選択および操作が可能となる。ファイバーの大きさ、ファイバー直径、ファイバー間隔、マトリックス密度、ファイバーの質感および弾性を含めた増殖表面の物理的特性は、細胞内の細胞骨格ネットワークの官能化および細胞外基質タンパク質内の細胞シグナル伝達モチーフの暴露に関して重要な検討事項であることが実証されている(Meiners,S.およびMercado,M.L.、2003、Mol.Neurobiol.、27(2)、177〜196)。所望のパラメータに設計し得るナノファイバー・ネットワークの物理的特性には、それだけには限定されないが、質感、しわの多さ、接着性、空隙率、固体性、弾性、幾何形状、相互連結性、比表面積、ファイバーの大きさ、ファイバー直径、ファイバーの溶解性/不溶性、親水性/疎水性、およびファイバーの密度が含まれる。
【0086】
ナノフィブリル構造体の物理的特性の1つまたは複数を変化かつ/または改変して、細胞を増殖および/または分化させるための具体的に定義された環境を作製し得る。たとえば、イオン、代謝物、および/もしくは生物活性分子の拡散を高めるため、かつ/または細胞がナノフィブリル構造体に浸透および透過して細胞とナノファイバー・ネットワークとの間の多点付着を促進する環境で増殖することを可能にするために、ナノフィブリル構造体の空隙率を設計し得る。ナノフィブリル構造体のナノファイバー・ネットワークの相互連結性は、細胞−細胞接触を容易にするように設計し得る。ナノフィブリル構造体のナノファイバー・ネットワークの弾性は、ナノファイバーを作製するためのポリマー溶液に生物活性分子を加えることによって増加または低下させ得る。一実施形態では、生物活性分子は脂質である。さらなる実施形態では、脂質はコレステロールである。
【0087】
ナノフィブリル構造体の質感およびしわの多さは、細胞の付着を促進するよう設計し得る。細胞の増殖または分化活性を最適化するために、同種または異種のナノファイバー組成物を選択し得る。たとえば、ナノフィブリル構造体は、異なる直径の複数のナノファイバーおよび/または異なるポリマーから作成した複数のナノファイバーからなり得る。ナノフィブリル構造体からの生物活性分子の放出を制御するために、ナノファイバー・ネットワークのナノファイバーの可溶性または不溶性を設計し得る。一実施形態では、生物活性分子の放出速度は、ナノファイバー・ネットワークのナノファイバーの生体分解または生体溶解速度によって決定される。具体的な細胞間隔を促進するために、ナノフィブリル構造体のナノファイバー・ネットワークの疎水性および親水性を設計し得る。細胞の増殖および/または分化を促進するためにナノフィブリル構造体の固体性を設計し得る。一実施形態では、ナノフィブリル構造体の固体性は約3%〜約70%であり。別の実施形態では、ナノフィブリル構造体の固体性は約3%〜約50%である。別の実施形態では、ナノフィブリル構造体の固体性は約3%〜約30%である。別の実施形態では、ナノフィブリル構造体の固体性は約3%〜約10%である。別の実施形態では、ナノフィブリル構造体の固体性は約3%〜約5%である。別の実施形態では、ナノフィブリル構造体の固体性は約10%〜約30%である。
【0088】
電界紡糸工程では、ポリマーの形成および堆積に電界を用いる。電位差を用いてポリマー溶液を注入する。電位差によって電荷の不均衡が生じ、これにより針などの排出口の先端からポリマー溶液流の排出がもたらされる。電界内のポリマーの噴流を接地した基材に向け、この間に溶媒が揮発してファイバーが形成される。この結果生じる単一の連続的なフィラメントが基材上の不織布として収集される。
【0089】
電界紡糸したナノファイバー・ネットワークは、不規則または定方向の配向を有するように生成し得る。図1AおよびBに示すように、不規則なファイバーを層状の表面にし得る。一実施形態では、本発明のナノファイバーは、結合して相互連結したネットワークを形成することができる微細なファイバーの不規則な分布を含む。ナノファイバーの相互連結したネットワークはファイバー間に比較的狭い空間をもつ。このような空間の範囲は、典型的には、ファイバー間で約0.01〜約25ミクロン、好ましくは約2〜約10ミクロンである。このような空間はナノファイバー・ネットワーク内に孔またはチャネルを形成し、イオン、代謝物、タンパク質、および/もしくは生物活性分子の拡散を可能にする、かつ/または細胞がネットワークに浸透および透過して細胞とナノファイバーとの間の多点付着を促進する環境で増殖ことを可能にする。
【0090】
図1Cに示すように、ナノファイバー・ネットワークは定方向の様式で電界紡糸し得る。このような定方向の電界紡糸により、ナノファイバーの単層または連続したナノファイバーによって形成される単層を含むナノファイバー・ネットワークの作製が可能となり、ネットワークの高さは単一のナノファイバーの直径である。空隙率、固体性、ファイバーの密度、質感、しわの多さ、および単層ネットワークのファイバーの配向を含めたは、電界紡糸工程の間に基材上へのナノファイバーの方向および/または配向を制御することによって選択し得る。好ましくは、孔径により細胞が単層ナノファイバー・ネットワークに浸透し、かつ/または遊走することが可能となる。一実施形態では、ファイバー間の空間は約0.01〜約25ミクロンである。別の実施形態では、ファイバー間の空間は約2〜約10ミクロンである。
【0091】
個々の単層ネットワークを層状に重ねることによりナノフィブリル構造体内にチャネルが形成され、イオン、代謝物、タンパク質、および/または生物活性分子の拡散が可能となり、かつ細胞がナノフィブリル構造体に浸透して細胞とナノファイバー・ネットワークとの間の多点付着を促進する環境で増殖することが可能となる。
【0092】
相分離技術も、ナノフィブリル構造体を作製するために使用し得る。相分離工程には、典型的にはポリマー溶解、相分離およびゼラチン、水を用いたゲルからの溶媒抽出、凍結、その後、真空下での凍結乾燥が含まれる。典型的手順を以下のように用い得る:ポリマーをTHFなどの溶媒に加えて溶液を約1%(wt/v)〜15%(wt/v)にした。溶液を均一になるまで攪拌した。ポリマー溶液(50℃に予熱)をテフロン(登録商標)製バイアルに入れた。その後、ポリマー溶液を含むバイアルを急速に冷却してゲルにした。ゲル化時間は温度、溶媒、およびポリマー濃度に依存する。ゲルをその温度で少なくとも120分間維持した。その後、溶媒交換のためにゲルを蒸留水に2日間浸した。溶媒交換後、ゲルを水から取り出し、濾紙で乾燥させて、−18℃で凍結した。その後、凍結ゲルを約−10℃、0.5mmHg未満の真空下で1週間の間凍結乾燥容器に移した。その後、乾燥した足場をデシケーター内で維持した。
【0093】
ナノフィブリル構造体を含むナノファイバーは、改良ナノファイバーについて上述した1つまたは複数の生物活性分子を含み得る。生物活性分子は、ネットワークの作製中にナノファイバー・ネットワークに取り込ませてもよく、または官能基によってネットワークの表面に付着させてもよい。一実施形態では、ナノファイバーを作製するためのポリマーまたはポリマー系は、それだけには限定されないが、脂質、成長因子、分化因子、線維性タンパク質、および接着性タンパク質を含めた生物活性分子の1つまたは複数を含み得る。脂質はリゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、またはそれらの混合物であり得る。好ましくは、成長因子はVEGF、骨形態形成因子β、EGF、PDGF、NGF、FGF、IGF、またはTGFである。好ましくは、分化因子はニューロトロフィン、CSF、またはTGFである。好ましくは、分化因子はニューロトロフィン、CSF、またはTGFである。
【0094】
官能基は、改良ナノファイバーについて記載したようにネットワークの表面上に取り込ませ得る。ネットワークの官能化された表面は、ペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物、多糖、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、または他の生物活性分子をネットワークの表面に結合させるために反応させ得る。一実施形態では、1つまたは複数の生物活性分子を結合するためにネットワークの官能化された表面を反応させる。好ましくは、生物活性分子の1つもしくは複数は成長因子、分化因子、線維性タンパク質、および/または接着性タンパク質である。好ましくは、成長因子はVEGF、骨形態形成因子β、EGF、PDGF、NGF、FGF、IGF、またはTGFである。好ましくは、分化因子はニューロトロフィン、CSF、またはTGFである。
【0095】
ii.基材
強度および柔軟性などのナノフィブリル構造体の構造的特性は、大部分がナノファイバー・ネットワークを堆積させる基材によって提供される。基材はセルロース、ガラスまたはプラスチックを含み得る。好ましくは、プラスチックは細胞毒性がない。基材はフィルムまたは培養容器であり得る。好ましくは、フィルムの厚さは約10未満〜約1000ミクロンである。
【0096】
基材は水溶性または非水溶性であり得る。水溶性の基材は、好ましくはポリビニルアルコール・フィルムであり、ポリビニルアルコールファイバーマトリックスと共に使用することができる。基材は多孔性または非多孔性であり得る。基材の空隙率は細胞の通過性によって決定される。細胞は、多孔性基材に浸透することができるが、非多孔性基材に浸透することができない。好ましくは、多孔性基材中の孔の直径は約2μm〜約10μmである。基材は生分解性および/または生体溶解性であり得る。好ましくは、基材は生体適合性である。
【0097】
基材は1つまたは複数の生物活性分子を含み得る。生物活性分子は、基材の作製中に基材中に取り込ませてもよく、または官能基によって基材表面に付着させてもよい。官能基は、改良ナノファイバーについて記載したように基材表面上に取り込ませ得る。基材の官能化された表面は、ペプチド、炭水化物、多糖、脂質、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、または他の生物活性分子を基材表面に結合させるために反応させ得る。
【0098】
一実施形態では、1つまたは複数の生物活性分子と結合させるために基材の官能化された表面を反応させる。好ましくは、生物活性分子の1つもしくは複数は成長因子、分化因子、線維性タンパク質、および/または接着性タンパク質である。好ましくは、成長因子はVEGF、骨形態形成因子β、EGF、PDGF、NGF、FGF、IGF、またはTGFである。好ましくは、分化因子はニューロトロフィン、CSF、またはTGFである。好ましくは、分化因子はニューロトロフィン、CSF、またはTGFである。基材は1つまたは複数の生物活性分子を放出し得る。放出速度は、基材の溶解および/または分解速度によって決定される。
【0099】
iii.スペーサー
強度および柔軟性などのナノフィブリル構造体の構造的特性は、スペーサーによってさらに提供し得る。スペーサーはまた、ナノファイバー・ネットワークと基材との間に十分な隙間をもたらすか、または2つ以上のナノフィブリル構造体間に十分な隙間をもたらして、細胞がナノファイバーに浸透してそれに付着することを可能にし得る。
【0100】
一実施形態では、スペーサーは第一および第二の表面を含み、スペーサーの第一の表面は基材上に堆積させたナノファイバー・ネットワークの表面と接触しており、スペーサーの第二の表面は、ナノファイバー・ネットワークと基材とがスペーサーの直径、すなわち厚さによって隔てられているように基材表面と接触している。別の実施形態では、スペーサーは第一および第二の表面を含み、スペーサーの第一の表面は第一のナノフィブリル構造体の表面と接触しており、スペーサーの第二の表面は、2つのナノフィブリル構造体がスペーサーの直径、すなわち厚さによって隔てられているように第二のナノフィブリル構造体の表面と接触している。
【0101】
スペーサーは微細なファイバーまたはフィルムを含み得る。好ましくは、フィルムの厚さは約10未満〜約50ミクロンである。微細なファイバーはミクロファイバーを含み得る。好ましくは、ミクロファイバーの直径は約1ミクロン〜約10ミクロンである。ミクロファイバーは不織またはネットであり得る。ミクロファイバーは、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、およびポリテトラフルオロエチレンを含めた数多くのポリマーから作製し得る。
【0102】
スペーサーは水溶性または非水溶性であり得る。スペーサーは多孔性または非多孔性であり得る。基材の空隙率は細胞の通過性によって決定される。細胞は、多孔性スペーサーに浸透することができるが、非多孔性スペーサーに浸透することができない。好ましくは、多孔性スペーサー中の孔の直径は約2μm〜約10μmである。スペーサーは生分解性および/または生体溶解性であり得る。好ましくは、スペーサーは生体適合性である。
【0103】
スペーサーは1つまたは複数の生物活性分子を含み得る。生物活性分子は、スペーサーの作製中にスペーサー中に取り込ませてもよく、または官能基によってスペーサーの表面に付着させてもよい。官能基は、改質ナノファイバーについて記載したようにスペーサーの表面上に取り込ませ得る。スペーサーの官能化された表面は、ペプチド、炭水化物、多糖、脂質、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、または他の生物活性分子をスペーサーの表面に結合させるために反応させ得る。
【0104】
一実施形態では、1つまたは複数の生物活性分子と結合させるためにスペーサーの官能化された表面を反応させる。好ましくは、生物活性分子の1つもしくは複数は成長因子、分化因子、線維性タンパク質、および/または接着性タンパク質である。好ましくは、成長因子はVEGF、骨形態形成因子β、EGF、PDGF、NGF、FGF、IGF、またはTGFである。好ましくは、分化因子はニューロトロフィン、CSF、またはTGFである。好ましくは、分化因子はニューロトロフィン、CSF、またはTGFである。スペーサーは1つまたは複数の生物活性分子を放出し得る。放出速度は、スペーサーの溶解および/または分解速度によって決定される。
【0105】
iv.ナノフィブリル構造体の複数層状のアセンブリ
本発明のナノフィブリル構造体は、細胞培養および組織培養の応用例、創薬のための高スループット応用例、および濾過の応用例を含めた様々な応用例で使用し得る。一応用例では、ナノフィブリル構造体を単独でまたは層状で利用して、細胞または組織培養のための複数層状のナノファイバー・アセンブリを形成し得る。ナノフィブリル構造体には、創傷修復、人工皮膚の増殖、静脈、動脈、腱、靱帯、軟骨、心臓弁、器官培養、火傷の処置、および骨移植を含めた数多くのin vivoおよびex vivoでの使用が存在する。
【0106】
細胞または組織の増殖環境の多様なアレイは、特定の化学的および物理的特性を個々のナノフィブリル構造体を含むナノファイバー・ネットワーク、基材、および/もしくはスペーサー内に設計し、かつ/または次いで個々のナノフィブリル構造体を層状に重ねることによって構築し得る。それだけには限定されないが、質感、しわの多さ、接着性、空隙率、固体性、弾性、幾何形状、相互連結性、比表面積、ファイバー直径、ファイバーの溶解性/不溶性、親水性/疎水性、ファイバーの密度、およびファイバーの配向を含めた個々のナノフィブリル構造体の物理的特性および/または特徴は、増殖および/もしくは分化を含めた1つもしくは複数の選択された細胞活性を促進するナノ環境および/またはミクロ環境を構築するために変化かつ/または改変し得る。特定のナノ環境および/またはミクロ環境を、個々のナノフィブリル構造体内または2つ以上の層状のナノフィブリル構造体を含む細胞アレイ内に設計し得る。
【0107】
それだけには限定されないが、成長因子、分化因子、線維性タンパク質、接着性タンパク質、糖タンパク質、官能基、接着性化合物、非接着性化合物、および標的化分子を含めた、ペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、または多糖類などの特異的な認識モチーフを、細胞の増殖および/または分化を含めた適切な細胞活性を促進するために、等方的にまたは勾配として、個々のナノフィブリル構造体のナノファイバー・ネットワーク、基材、および/またはスペーサーまたは複数層状のナノファイバー・アセンブリ内に設計し得る。アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質を含む実施形態には、任意の大きさおよび複雑さのこのような分子のうち任意の種類のもの、ならびにこのような分子の組合せが含まれ得る。例には、それだけには限定されないが、構造タンパク質、酵素、およびペプチドホルモンが含まれる。
【0108】
それだけには限定されないが、幹細胞、拘束された幹細胞、分化した細胞、および腫瘍細胞を含めた数多くの種類の細胞をナノフィブリル構造体上で増殖させ得る。幹細胞の例には、それだけには限定されないが、胚性幹細胞、骨髄幹細胞および臍帯幹細胞が含まれる。様々な実施形態で用いる細胞の他の例には、それだけには限定されないが、骨芽細胞、筋芽細胞、神経芽細胞、線維芽細胞、グリア芽細胞、生殖細胞、肝細胞、軟骨細胞、ケラチノサイト、平滑筋細胞、心筋細胞、結合組織細胞、グリア細胞、上皮細胞、内皮細胞、ホルモン分泌細胞、免疫系細胞、およびニューロンが含まれる。一部の実施形態では、用いる幹細胞の種類を事前に選択しておく必要がない。これは、個々のナノフィブリル構造体または複数層状のアセンブリを所定の器官に送達することによって個々のナノフィブリル構造体または複数層状のナノファイバー・アセンブリの物理的および/もしくは化学的特性を設計することで、数多くの種類の幹細胞を、器官特異的なパターンで分化するように誘発させることができるからである。たとえば、適切な分化因子および/もしくは成長因子をナノフィブリル構造体内に設計することによって、または幹細胞を含むナノフィブリル構造体を肝臓内に埋め込むことによって、幹細胞を肝細胞になるように誘発させ得る。ナノフィブリル構造体中の細胞は、細胞の種を提供すること、特定の化合物を提供すること、または両方の目的に役立つことができる。
【0109】
発明で有用な細胞は、in vitroで培養する、天然源由来である、遺伝子操作した、または任意の他の手段によって生成し得る。原核または真核細胞の任意の天然源を使用し得る。ナノフィブリル構造体を生物内に埋め込む実施形態では、レシピエント由来の細胞、非特定のドナーもしくは異なる種のドナー由来の細胞、または細菌もしくは微生物細胞を使用することができる。ある源から収集し、使用前に培養した細胞も含まれる。
【0110】
一部の実施形態では、腫瘍細胞などの非定型または異常な細胞を使用する。このような細胞を増殖させる、成長因子および分化因子を含めたナノフィブリル構造体の物理的および/または化学的特性は、腫瘍のネイティブin vivoナノ環境またはミクロ環境を模倣するように設計し得る。ナノフィブリル構造体上で培養した腫瘍細胞は、薬物処置の評価のために、体内のネイティブ腫瘍環境のより正確な表現を提供することができる。本発明のナノフィブリル構造体上における腫瘍細胞の増殖により、in vivo様の環境における遺伝子発現、受容体発現、およびポリペプチドの産生を含めた腫瘍の生化学的経路および活性を特徴づけることが容易になり、腫瘍を特異的に標的とする薬物の開発が可能となる。
【0111】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細胞を使用する。設計は、1つもしくは複数の遺伝子を発現するように細胞をプログラムすること、1つもしくは複数の遺伝子の発現を抑制すること、またはその両方を含む。本発明に有用な遺伝子操作した細胞の一例は、1つまたは複数の所望の生物活性分子を産生かつ分泌する、遺伝子操作した細胞である。遺伝子操作した細胞を含むナノフィブリル構造体を生物内に埋め込んだ場合、産生された分子は局所的な効果または全身性の効果を生じることができ、潜在的な物質として上記で同定した分子を含むことができる。ナノフィブリル構造体の目的の1つが免疫応答を生じさせることである実施形態では、細胞は抗原性物質を産生することもできる。細胞は、以下の非包括的な目的リストを補助する物質を産生し得る:炎症の阻害または刺激;治癒の促進;免疫拒絶への耐性;ホルモン置換の提供;神経伝達物質の置換;癌細胞の阻害または破壊;細胞増殖の促進;血管形成の阻害または刺激;組織の増強;ならびに皮膚、滑液、腱、軟骨、靱帯、骨、筋肉、器官、硬膜、血管、骨髄、および細胞外基質の補充または置換。
【0112】
遺伝子操作は、たとえば、細胞に遺伝物質を加えるもしくは細胞から遺伝物質を除去すること、既存の遺伝物質を改変すること、または両方を含むことができる。遺伝子を発現するように細胞に形質移入するまたは他の方法で遺伝子操作する実施形態では、過渡的にもしくは安定に形質移入された遺伝子、または両方を用いることができる。遺伝子配列は、完全長または部分長のクローニングしたまたは天然に存在するものであり得る。
【0113】
一実施形態では、生細胞をナノフィブリル構造体上に堆積させる。ナノファイバー・ネットワークの選択された物理的および/もしくは化学的特性を変化かつ/または改変させることによって、特定の細胞または組織の細胞活性を促進するナノ環境および/またはミクロ環境をナノフィブリル構造体に設計し得る。物理的および/または化学的特性は、上述のように個々のナノフィブリル構造体に設計し得る。細胞を含むナノフィブリル構造体を、増殖および/または分化を含めた細胞活性を促進する条件下で培養する。
【0114】
別の実施形態では、2つ以上のナノフィブリル構造体を層状に重ねて複数層状のナノファイバー・アセンブリを形成する。特定の細胞または組織の細胞活性を促進するナノ環境および/またはミクロ環境は、選択された物理的および/または化学的特性を有するナノフィブリル構造体を層状に重ねることによって構築し得る。物理的および/または化学的特性は、上述のように個々のナノフィブリル構造体に設計し得る。生細胞を複数層状のナノファイバー・アセンブリ上に堆積させ、堆積させた細胞の増殖および/または分化を促進する条件下でアセンブリを培養する。
【0115】
別の実施形態では、複数の細胞種を個々のナノフィブリル構造体上で、異なる培養条件下で培養し、その後、手動でまたは機械的に、一層ずつ無菌的な条件下で特異的な複数層状のナノファイバー・アセンブリへと構築する。特定の細胞種の細胞活性を促進するナノ環境および/またはミクロ環境は、ナノフィブリル構造体の選択された物理的および/もしくは化学的特性を変化かつ/もしくは改変させることによって個々のナノフィブリル構造体内に、または望ましいナノ環境もしくはミクロ環境を得るために個々のナノフィブリル構造体を選択的に層状に重ねることによってアセンブリ内に設計し得る。物理的および/または化学的特徴は上述のように設計し得る。その後、複数層状のナノファイバー・アセンブリを、細胞の増殖および/または分化を含めた細胞活性を促進する条件下で培養する。
【0116】
別の実施形態では、複数の細胞種を個々のナノフィブリル構造体上で、異なる培養条件下で培養する。個々のナノフィブリル構造体の物理的および化学的特性は、特定の細胞種についてカスタマイズし得る。ナノフィブリル構造体の基材および/またはスペーサーは生分解性および/または生体溶解性であり、これにより、培養中に生物活性分子の徐放性が可能となる。生物活性分子は、増殖および/または分化を含めた望ましい細胞活性を促進するように選択される。その後、個々のナノフィブリル構造体を手動でまたは機械的に、一層ずつ無菌的な条件下で複数層状のナノファイバー・アセンブリへと構築する。複数層状のアセンブリを層状に重ねて、増殖および/または分化を含めた望ましい細胞活性を促進するナノ環境および/またはミクロ環境を作製し得る。選択された生物活性分子を含む生分解性および/または生体溶解性スペーサーを、アセンブリを含む層状のナノフィブリル構造体間に挿入して、アセンブリ内のナノ環境および/またはミクロ環境を微調整し得る。スペーサーからの生物活性分子の放出速度は、スペーサーを含むポリマーの生体分解速度および/または生体溶解速度によって決定し得る。その後、構築した細胞アレイを、細胞の増殖および/または分化を含めた細胞活性を促進する条件下で培養する。
【0117】
別の実施形態では、ナノフィブリル構造体を個別に包装および滅菌する。梱包から取り出したあと、ナノフィブリル構造体を手動でまたは機械的に、一層ずつ培養容器内で構築して、複数層状のナノファイバー・アセンブリを形成し得る。
【0118】
本発明のナノフィブリル構造体および複数層状のナノファイバー・アセンブリなどのin vivo応用例における新規材料の体内での分解および潜在的な再分布を評価する必要がある。体内の特異的部位に埋め込む材料は分解され、その後、取り込ませた最初の部位から遠位の他の領域に移送されることができる。体内におけるナノファイバーの分解特性を調査するためには、複数層状のアセンブリの個々のナノフィブリル構造体を含むナノファイバー・ネットワーク、基材、および/またはスペーサーを、改良ナノファイバーについて上述した蛍光マーカーで標識し得る。一実施形態では、蛍光マーカーは量子ドットである。量子ドットは磁気共鳴画像法において蛍光かつ不透明であるので、多光子蛍光顕微鏡観察(単離した組織の調査用)およびMRI(in vivo分析用)をどちらも用いて、組織内の複数層状のナノファイバー・アセンブリの断片または分解産物を含む量子ドットの分布を検出および追跡し、かつ体内の様々な組織または部位に取り込ませた際にアセンブリの分解産物が有意な異物応答を誘発させるかどうかを決定し得る。
【0119】
v.さらなる使用
別の応用例では、本発明のナノフィブリル構造体を、薬物/細胞の相互作用を分析するための高スループット応用例で用い得る。高スループット応用例は、新規医薬品の発見に貴重な手法である。高スループット応用例では、複数ウェル組織培養チャンバを利用し、プレート1つあたり最大約1536個のウェルの密度を用いる。ウェル1つあたりの細胞の集団を増加することで、測定されるシグナルの増大に役立つであろう。一実施形態では、ナノフィブリル構造体をウェル内に挿入し得る。別の実施形態では、ウェルの表面が基材として機能し、ナノファイバー・ネットワークがウェルの表面上に直接堆積することが可能となり得る。このようにナノフィブリル構造体をウェル内に導入することにより、光学測定を行う能力に影響を与えずに、細胞、リガンド、および/または酵素が付着するさらなる表面が提供される。
【0120】
別の応用例では、ナノフィブリル構造体を精製および/または分離の応用例で用い得る。個々のナノフィブリル構造体を層状に重ねてクロマトグラフィー・カラムを形成し得る。大きさ、電荷、疎水性、および他の分子に対する親和性を含めた物理的ならびに/または化学的特性を利用して、たとえばタンパク質を溶液から分離し得る。一実施形態では、個々のナノフィブリル構造体を層状に重ねて親和性カラムを形成し得る。たとえば、特異的官能基、特異的な受容体を含むポリペプチド、もしくは免疫グロブリンを含めた物理的および/または化学的特性を、溶液中の特異的なポリペプチドに選択的に結合するように、ナノフィブリル構造体内に設計する、またはそれに付着させ得る。溶液を複数層状のナノファイバー・アセンブリに通し、ポリペプチドをマトリックスに結合させる。結合したポリペプチドは、溶媒を用いてアセンブリから放出させ得る。別の実施形態では、個々のナノフィブリル構造体を層状に重ねて濾過カラムを形成し得る。たとえば空隙率およびファイバーの密度を含めた物理的特性を、ポリペプチドがその大きさに応じて溶液から分離されるように、複数層状のナノファイバー・アセンブリ内に設計し得る。別の実施形態では、個々のナノフィブリル構造体を層状に重ねてイオン交換カラムを形成し得る。たとえば負および/または正に帯電した官能基を含めた化学的特性を、ナノフィブリル構造体内に設計する、またはそれに付着させ得る。
【0121】
別の応用例では、本発明の構造体を用いてバイオリアクターを作製し得る。
【0122】
C.細胞増殖培地
本発明の別の態様は、細胞増殖培地である。細胞増殖培地は、マトリックス、マット、ネットワーク、シート、またはロールを含み得る。一実施形態では、培地はナノファイバー・マトリックスを含む。ナノファイバーは、改良ナノファイバーについて上述したポリマーまたはポリマー系から作製し得る。細胞増殖培地は、培養容器の表面上または培養容器内に堆積させ得る。
【0123】
増殖培地は、培養容器内で用いるために所望の寸法で作製し得る。一実施形態では、細胞増殖培地はナノファイバー・マトリックスを含み、ネットワークのファイバーの直径は約50nm〜約1000nmであり、平均ファイバー間隔は少なくとも約2ミクロンであり、マトリックス固体性は約30%以下であり、外壁を備えた上部および底部があり、外壁の高さは約10ミクロン〜約100mmであり、上部および底部の面積は独立して約5mm〜約4×10mmである。増殖培地は、培養容器中で使用するために、大きさを合わせるために増殖培地を含むシート、ロール、マトリックス、ネットワーク、もしくはマットを切ることによって、または増殖培地を含むマトリックス、シート、ロール、ネットワーク、もしくはマットから所望の寸法の小片を切り出すことによって、選択された寸法にサイズを合わせるまたはサイズ変更し得る。別の実施形態では、細胞増殖培地はナノファイバーのネットワークを含み、ネットワークの寸法は培養容器内への挿入に適合させる。
【0124】
細胞増殖培地は、細胞培養および組織培養の応用例を含めた様々な応用例で用い得る。上述の任意の細胞を細胞増殖培地で増殖させ得る。一実施形態では、細胞増殖培地は個別に包装および滅菌する。梱包から取り出したあと、培地を培養容器内に置いて細胞増殖用の表面を形成し得る。別の実施形態では、細胞増殖培地を培養容器の内部表面上に堆積させる。細胞増殖マトリックスを含む培養容器は個別に包装および滅菌し得る。梱包から取り出したあと、細胞を培養容器内の細胞増殖培地上に堆積させ得る。細胞増殖培地で増殖させた細胞には、創傷修復、人工皮膚の増殖、静脈、動脈、腱、靱帯、軟骨、心臓弁、器官培養、火傷の処置、および骨移植を含めた数多くのin vivoならびにex vivoの使用が存在する。
【0125】
それだけには限定されないが、質感、しわの多さ、接着性、空隙率、弾性、固体性、幾何形状、およびファイバーの密度を含めた細胞増殖培地の物理的特性および/または特徴は、増殖および/または分化を含めた望ましい細胞活性を促進するように変化かつ/または改変し得る。特定のナノ環境および/またはミクロ環境を細胞増殖培地内に設計し得る。たとえば、細胞増殖培地の空隙率およびファイバーの密度を変化かつ/または改変して、細胞が細胞増殖培地に浸透して三次元環境で増殖することを可能にし得る。細胞増殖培地の物理的特性は、改良ナノファイバーおよび/またはナノフィブリル構造体について上述したように設計し得る。
【0126】
それだけには限定されないが、成長因子、分化因子、線維性タンパク質、接着性タンパク質、糖タンパク質、官能基、接着性化合物、非接着性化合物、および標的化分子を含めたペプチド、脂質、炭水化物、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、または多糖類などの特異的な認識モチーフを、細胞の増殖および/または分化を含めた望ましい細胞活性を促進するために、等方的にまたは勾配として細胞増殖培地内に設計し得る。細胞増殖培地の化学的特性は、改良ナノファイバーおよび/またはナノフィブリル構造体について上述したように設計し得る。
【0127】
別の応用例では、本発明の細胞増殖培地を、薬物/細胞の相互作用を分析するための高スループット応用例で用い得る。高スループット応用例では、複数ウェル組織培養チャンバを利用し、プレート1つあたり最大約1536個のウェルの密度を用いる。ウェル1つあたりの細胞の集団を増加することで、測定されるシグナルの増大に役立つであろう。一実施形態では、細胞増殖培地を、分析に用いる組織培養チャンバのウェル内に挿入し得る。別の実施形態では、ウェルの表面が細胞増殖培地の基材として機能し、ナノファイバー・ネットワークまたはマトリックスがウェルの表面上に直接堆積することが可能となり得る。このように細胞増殖をウェル内に導入することにより、光学測定を行う能力に影響を与えずに、細胞、リガンド、および/または酵素が付着するさらなる表面が提供される。
【実施例】
【0128】
本発明は、実施形態を例証する役割を果たす以下の実施例によって例示される。しかし、開示した発明に対して数多くの実施形態の変更を行うことができる。実施例はいかなる様式でも本発明を限定することを意図しない。
【0129】
[実施例1]
脂質を含むポリマー溶液の電界紡糸により増強された細いファイバーの集団が生成される
脂質をポリマー溶液に加えることに関連するファイバー直径の変化を、光学顕微鏡を用いて可視化するために、ファイバーを電界紡糸してミクロファイバーを得た。ミクロファイバーは、クロロホルム中に15%のポリ(ε−カプロラクトン)(w/w)を含み(Dow Tone Polymers、Midland,MI)、それぞれ0、0.25、0.5、1.0および1%のコレステロール(w/w)(Sigma、St.Louis,MO)を添加した溶液から電界紡糸した。毛細針システムを用いてファイバーを電界紡糸した。エッペンドルフ・マイクロピペットの先端(黄色)を5ccのシリンジにはめ込んだ。ポリマー溶液をシリンジに流し込み、ナノセコンド光学パルス・ラジエーター・モデルNR−1(Optitron,Inc.、Torrance,CA)に接続した陽電極を溶液中に挿入した。電界紡糸の電位は18,000ボルトであった。ファイバーは、シリンジに垂直な平面で回転している、接地した金属プレート標的上に電界紡糸した。標的は、マイクロピペッターの先端から2インチ離して配置した。ファイバーは、標的上に置いたOHP用紙(overhead transparency)で回収した。ファイバーは20倍の対物レンズを備えた光学顕微鏡(Insight Bilateral走査共焦点蛍光顕微鏡(Meridian Instruments、Okemos,MI))で見て、画像はCCDカメラでデジタル撮影した。
【0130】
図2A〜Eに示すように、ポリマー溶液にコレステロールを加えることにより、直径が漸進的により小さいファイバーが生成される。ポリマー溶液に加えたコレステロールの量を増加することにより、直径が漸進的により小さいファイバーが生成された。クロロホルム中にコレステロールを含まないポリマー溶液から生成したファイバーの直径範囲は10〜50ミクロンであった。(図2A)。クロロホルム中に0.25%のコレステロール(w/w)を含むポリマー溶液から生成したファイバーの直径範囲は5〜30ミクロンであった。(図2B)。0.5%のコレステロール(w/w)を含むポリマー溶液から生成したファイバーの直径範囲は2〜20ミクロンであった。(図2C)。1.0%のコレステロール(w/w)を含むポリマー溶液から生成したファイバーの直径範囲は1〜15ミクロンであった。(図1D)。10%のコレステロール(w/w)を含むポリマー溶液から生成したファイバーの直径は0.8〜8ミクロンであった。(図2E)。
【0131】
[実施例2]
脂質を含むナノファイバーは、細胞とナノファイバーとの密な付着を誘発させる
脂質を含むナノファイバーは、細胞の招集および細胞とナノファイバーとの間に密な会合を促進する表面を提供する。正常ラット腎臓(NRK)線維芽細胞を、クロロホルム中に10%のポリ(ε−カプロラクトン)(w/w)を含み、0.25%のスフィンゴミエリンを添加した溶液から電界紡糸したナノファイバー上で、ダルベッコ変法イーグル培地(DME)中、37℃、5%のCO中で培養し、20×の対物レンズを備えた光学顕微鏡(Insight Bilateral走査共焦点蛍光顕微鏡(Meridian Instruments、Okemos,MI))で可視化した。画像はCCDカメラで撮影した。
【0132】
図3AおよびBに示すように、0.25%のスフィンゴミエリンを含むナノファイバーは、迅速な細胞招集およびナノファイバーへのその付着を誘発させる。図3Aは、0.25%のスフィンゴミエリンを含むナノファイバーでコーティングした組織培養プレート上で2日間培養したあとのNRK線維芽細胞を示す。線維芽細胞はナノファイバーに密に付着しており、拡大および分裂し、ファイバー間の空間を満たして単層を形成している。図3Bは、スフィンゴミエリンを含まないナノファイバーでコーティングした組織培養プレート上で2日間培養したあとのNRK線維芽細胞を示す。わずかな細胞しかナノファイバーに付着しなかった。脂肪含有ナノファイバーの誘導された遊走および密な付着の特性は、このファイバーが、創傷修復、人工皮膚の増殖、静脈、動脈、腱、靱帯、軟骨、心臓弁、器官培養、火傷の処置、および骨移植を含めた応用例においてin vivoまたはex vivoで有用であり得ることを示唆している。
【0133】
[実施例3]
ナノファイバー・ネットワーク上で増殖させた細胞は組織内の細胞に類似したアクチン・ネットワークを有する
細胞のアクチン・ネットワークは、どの細胞培養方法が組織内の環境に最も近似しているかを決定する指標として利用されてきた(Cukierman他、2001、Science、23:1708〜1712;WalpitaおよびHay、2002、Nature Rev.Mol.Cell.Biol.、3:137〜141)。二次元の組織培養で増殖させた場合、線維芽細胞は、細胞質内に位置するアクチン・ネットワークが厚いストレスファイバーのアレイ内に編成されている、高度な拡大性および接着性の形態をとる。対照的に、組織中で観察される線維芽細胞の形状は紡錐体様であり、アクチンが皮質環内に編成されている(WalpitaおよびHay、2002、Nature Rev.Mol.Cell.Biol.、3:137〜141)。
【0134】
本発明者らは、二次元および三次元の表面上で増殖させた正常ラット腎臓(NRK)線維芽細胞のアクチン・ネットワークを比較した。線維芽細胞は、ポリアミド・ナノファイバー・ネットワーク、ガラス、およびポリリシンでコーティングしたガラス上で増殖させた。ポリアミド・ナノファイバーは、回転排出口システムまたは毛細針システムのどちらかを用いて紡糸した。どちらのシステムでも実質上同じファイバー材料が生成された。流速は排出口1つあたり1.5mil/分であり、標的の距離は8インチであり、排出口の電位は88kVであり、相対湿度は45%であり、回転排出口ではrpmは35であった。
【0135】
アクチン・ネットワークの形成は、NRK線維芽細胞によって発現された緑色蛍光タンパク質(GFP)−アクチンのキメラの分布のイメージングによって監視した。手短に述べると、GFP−アクチンを形質移入したNRK線維芽細胞(Sanford Simon博士、細胞生物物理学研究室(Laboratory of Cellular Biophysics)、ロックフェラー大学、New York,NYから贈与)を、ポリアミド・ナノファイバー、ガラス、またはポリ1−リシンでコーティングしたガラス上で、ダルベッコ変法イーグル培地(DME)中、37℃、5%のCO中で培養し、その後、Insight Bilateral走査共焦点蛍光顕微鏡(Meridian Instruments、Okemos,MI)を用いて調査した。
【0136】
図4A〜Cに示すように、ナノファイバー・ネットワークの三次元の増殖環境上で増殖させた細胞は、in vivoで観察されるものと類似した細胞骨格ネットワークを編成する。ナノファイバー・ネットワーク上で増殖させた線維芽細胞は、糸状仮足をもったより紡錐体様の形態を示し、わずかなストレスファイバーを示した。(図4A)。対照的に、ガラス表面上で増殖させた線維芽細胞は多数のストレスファイバーを伴って拡大した。(図4B)。ポリ1−リシンでコーティングしたガラス表面上で増殖させた線維芽細胞は、より拡大し、より厚いかつより明白なストレスファイバーを示した(図4C)。
【0137】
また、これらの顕微鏡写真は、共焦点顕微鏡観察が、それだけには限定されないが、質感、しわの多さ、接着性、空隙率、弾性、幾何形状、およびファイバーの密度を含めたファイバーネットワークの物理的特性、ならびに、それだけには限定されないが、成長因子、分化因子、線維性タンパク質、接着性タンパク質、糖タンパク質、官能基、接着性化合物、非接着性化合物、および標的化分子を含めたファイバーネットワークの化学的特性を含めた、様々なファイバーの操作の作用としての、生細胞または組織における細胞骨格ネットワークの編成の差異を監視する迅速な手段を提供することも実証している。ナノファイバー・ネットワーク上で培養した細胞または組織の細胞骨格ネットワークとin vivoでの観察との比較により、細胞または組織のin vivo環境をより厳密に模倣するためにナノファイバー・ネットワークの物理的および/または化学的特性を微調整することが可能となる。
【0138】
[実施例4]
ナノファイバーへの官能基の取り込み
アルコール、アルデヒド、アミノ、カルボキシ、およびスルフヒドリル官能基などの官能基ならびにカルベンまたはナイトレンなどの光活性可能な官能基をナノファイバーの表面上に取り込ませ得る。これらの基を用いて、それだけには限定されないが、成長因子もしくは分化因子などのポリペプチド、炭水化物、脂質、多糖類、または治療薬を含めた生物活性分子を供給結合させ得る。官能基は、官能基をポリマー溶液中に加えることによってナノファイバー中に取り込ませ得る。ナノファイバーは、実施例1に記載のように、クロロホルム中に10%のポリ(ε−カプロラクトン)(w/w)を含み(Dow Tone Polymers、Midland,MI)、2%のドデシルアミン(w/w)(Sigma、St.Louis,MO)を添加した溶液から電界紡糸した。ナノファイバーの表面における修飾可能なアミンの利用可能度を実証するために、ナノファイバーを、2.0%のリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.5中のフルオレセインイソチオシアネート(1mg/mlのストック水溶液)(Sigma、St.Louis,MO)と反応させた。ファイバーへの蛍光の取り込みは、Insight Bilateral走査共焦点蛍光顕微鏡(Meridian Instruments、Okemos,MI)を利用して示した。図5Aに示すように、未反応のフルオレセインイソチオシアネートがファイバー表面上に吸着させたことの結果である未修飾のファイバーの表面で、低レベルの蛍光が観察された。対照的に、取り込まれたアミノ基を含むナノファイバーでは、フルオレセインイソチオシアネートとの反応後に、ファイバー全体に沿って顕著な蛍光が観察された(図5B)。
【0139】
このデータは、ナノファイバーの修飾された表面は生物活性分子とのカップリングに利用可能な官能基を含み、成長因子、分化因子、線維性タンパク質、接着性タンパク質、糖タンパク質、官能基、接着性化合物、非接着性化合物、および標的化分子などの分子のカスタマイズされた取り込みを可能にして、増殖および/または分化を含めた細胞または組織における1つもしくは複数の選択された活性を促進するナノファイバー・ネットワーク内にナノ環境ならびに/あるいはミクロ環境が作製されること実証している。このデータはまた、適切な反応基を有するペプチドを導入することによって、特定の空間的および幾何学的配置にある様々な官能基を含むナノファイバーを、幾何学的に定義されたペプチド誘導体化されたファイバーのアレイへと自己集合するように誘発させ得ることを示唆している。
【0140】
[実施例5]
量子ドットを用いた微細なファイバーの標識
様々な化学的および/または物理的特性を有するファイバーを調製し、混合物または細胞アレイ内でそれぞれのファイバー種を同定する能力を維持したままでそれらをナノファイバー混合物または特異的細胞アレイに取り込ませるために、本発明者らは、ナノファイバー中に蛍光標識を取り込ませることを研究した。量子ドットの1%溶液(Sanford Simon博士、細胞生物物理学研究室、ロックフェラー大学、New York,NYから贈与)を、クロロホルム中に12%のポリ(ε−カプロラクトン)(w/w)を含むポリマー溶液に加えた。その後、量子ドットを含むミクロファイバーの集団を生成する実施例1に記載のように溶液を電界紡糸した。ファイバーを488nmで励起し、Insight Bilateral走査共焦点蛍光顕微鏡(Meridian Instruments、Okemos,MI)を用いてミクロファイバー内の量子ドット分布の画像を得た(図6)。
【0141】
量子ドットの蛍光を水性の環境で消光した。ミクロファイバーに水を加えることによっては量子ドットの蛍光が消光されず、これは、量子ドットがファイバーの表面に吸収されているのではなく、ファイバーマトリックス内に包埋されていることを実証している。これは、これらを水性系で用いるために重要な考慮事項である。
【0142】
上述の明細書、実施例およびデータは本発明の説明を提供する。しかし、数多くの変更および実施形態を開示した発明に行うことができる。本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲に具体化されている。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】ナノフィブリル構造体の走査電子顕微鏡画像であり、1Aと1Bは、不規則に堆積させたポリアミド・ナノファイバーからなるナノファイバー・マットを層状の表面に構築し得ることを示し、1Cは、ナノファイバーを特定の配向で電界紡糸し得ることを示している図である。
【図2】2Aから2Eは、徐々に増加する量の脂質を含むポリマー溶液から電界紡糸したミクロファイバーを比較した光学顕微鏡写真の図である。
【図3】3Aおよび3Bは、脂質を含むナノファイバーまたは脂質を含まないナノファイバーでコーティングした組織培養プレート上で増殖させた正常ラット腎臓線維芽細胞を比較した光学顕微鏡写真の図である。
【図4】4Aから4Cは、ポリアミド・ナノファイバー・ネットワーク、ガラス、およびポリリシンでコーティングしたガラス上で増殖させた正常ラット腎臓線維芽細胞を比較した光学顕微鏡写真の図である。
【図5】5Aおよび5Bは、ナノファイバーの表面へのアミノ官能基のその取り込みを示す光学顕微鏡写真の図である。
【図6】量子ドットを用いたナノファイバーの蛍光標識を示す光学顕微鏡写真の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のナノファイバーと基板とを有する細胞培養中の細胞の増殖および/または分化のための環境を有し、1つ以上のナノファイバーのネットワークによって定義されることを特徴とするナノフィブリル構造体。
【請求項2】
前記ナノフィブリル構造体は、約50nmから1000nmまでのファイバー直径と、少なくとも約2μmの平均ファイバー間隔と、約70%またはそれ未満の固体性とを有することを特徴とする請求項1に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項3】
前記ナノフィブリル構造体は、約50%またはそれ未満の固体性とを有することを特徴とする請求項2に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項4】
前記ナノフィブリル構造体は、約30%またはそれ未満の固体性とを有することを特徴とする請求項2に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項5】
前記ナノフィブリル構造体は、約10%またはそれ未満の固体性とを有することを特徴とする請求項2に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項6】
前記ナノフィブリル構造体は、約5%またはそれ未満の固体性とを有することを特徴とする請求項2に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項7】
前記1つ以上のナノファイバーのネットワークが表面上に堆積した基板を更に有することを特徴とする請求項1に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項8】
前記基板は、多孔性のプラスチックの基板であることを特徴とする請求項7に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項9】
前記基板は、細胞に有害ではないことを特徴とする請求項7に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項10】
前記基板は、膜であることを特徴とする請求項7に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項11】
前記ナノフィブリル構造体は、約50nmから1000nmまでのファイバー直径と、少なくとも約2μmの平均ファイバー間隔と、約70%またはそれ未満の固体性とを有することを特徴とする請求項10に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項12】
前記ナノフィブリル構造体は、約50%またはそれ未満の固体性とを有することを特徴とする請求項11に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項13】
前記ナノフィブリル構造体は、約30%またはそれ未満の固体性とを有することを特徴とする請求項11に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項14】
前記ナノフィブリル構造体は、約10%またはそれ未満の固体性とを有することを特徴とする請求項11に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項15】
前記ナノフィブリル構造体は、約5%またはそれ未満の固体性とを有することを特徴とする請求項11に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項16】
前記膜は、水溶性であることを特徴とする請求項11に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項17】
前記膜は、水溶性でないことを特徴とする請求項11に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項18】
前記膜は、ポリビニールアルコールで作られた膜であることを特徴とする請求項16に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項19】
前記膜は、生物分解性の膜であることを特徴とする請求項11に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項20】
前記膜は、生物適合性の膜であることを特徴とする請求項11に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項21】
前記基板は、多孔性でないガラス基板であることを特徴とする請求項7に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項22】
前記膜は、多孔性であることを特徴とする請求項11に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項23】
前記ナノフィブリル構造体は、1つ以上の成長因子を有することを特徴とする請求項11に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項24】
前記成長因子の少なくとも1つは、血管内皮成長因子、骨形態形成因子、表皮成長因子、血小板由来成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、インスリン成長因子、または、トランスフォーミング成長因子であることを特徴とする請求項23に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項25】
前記ナノフィブリル構造体は、前記成長因子を放出することを特徴とする請求項23に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項26】
前記放出の速度は、前記膜またはファイバーの溶解または分解の速度によって定義されることを特徴とする請求項25に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項27】
前記ナノフィブリル構造体は、1つ以上の分化因子を有することを特徴とする請求項11に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項28】
前記分化因子のすくなくとも1つは、ニュートロフィン、コロニー刺激因子またはトランスフォーミング成長因子であることを特徴とする請求項27に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項29】
前記膜またはファイバーは、前記分化因子を放出することを特徴とする請求項27に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項30】
前記放出の速度は、前記膜またはファイバーの溶解または分解の速度によって定義されることを特徴とする請求項29に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項31】
前記ナノフィブリル構造体は、細胞に有害でないポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項32】
前記ポリマーは、生物分解性であることを特徴とする請求項31に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項33】
前記ポリマーは、水溶性であることを特徴とする請求項31に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項34】
前記ポリマーは、水溶性でないことを特徴とする請求項31に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項35】
前記ポリマーは、ポリエステルであることを特徴とする請求項31に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項36】
前記ポリエステルは、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリグリコレート、またはポリ乳酸塩であることを特徴とする請求項35に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項37】
前記ポリマーは、ポリアミドであることを特徴とする請求項31に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項38】
前記ポリアミドは、ナイロンであることを特徴とする請求項37に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項39】
前記ナノファイバーは、更に、1つ以上の生物活性な分子を含むことを特徴とする請求項31に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項40】
前記生物活性な分子の少なくとも1つは、脂質、炭水化物、多糖、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、または、それらのハイブリッド分子であることを特徴とする請求項39に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項41】
前記脂質は、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、コレステロール、又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項40に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項42】
前記多糖は、セルロース、デンプン、アルギン酸、キトーサン、または、ヒアルロナン(hyaluronan)であることを特徴とする請求項40に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項43】
前記ナノファイバーは、更に、前記ナノファイバーへの細胞の付着を促進する生物学的化合物を含むことを特徴とする請求項31に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項44】
前記ナノファイバーは、1つ以上のアルコール基、アミン基、アルデヒド基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、または光活性可能な官能基を更に含むことを特徴とする請求項31に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項45】
前記光活性可能な官能基は、カルベンオルニトレンであることを特徴とする請求項44に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項46】
前記ナノファイバーは、1つ以上の成長因子を有することを特徴とする請求項1に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項47】
前記成長因子の少なくとも1つは、血管内皮成長因子、骨形態形成因子、表皮成長因子、血小板由来成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、インスリン成長因子、または、トランスフォーミング成長因子であることを特徴とする請求項46に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項48】
前記ナノファイバーは、1つ以上の成長因子を放出することを特徴とする請求項46に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項49】
前記成長因子の放出の速度は、前記ナノフィブリル構造体の分解または溶解の速度によって定義されることを特徴とする請求項48に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項50】
前記ナノファイバーは、1つ以上の分化因子を有することを特徴とする請求項1に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項51】
前記分化因子のすくなくとも1つは、ニュートロフィン、コロニー刺激因子 またはトランスフォーミング成長因子であることを特徴とする請求項50に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項52】
前記ナノファイバーは、1つ以上の分化因子を放出することを特徴とする請求項50に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項53】
前記分化因子の放出の速度は、前記ナノフィブリル構造体の分解または溶解の速度によって定義されることを特徴とする請求項50に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項54】
培養容器中に挿入するのに適した幅と高さを有することを特徴とする請求項1に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項55】
前記ナノフィブリル構造体の前記幅と高さは、培養プレート中のウェルに挿入するのに適合されていることを特徴とする請求項54に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項56】
前記培養容器は、単一ウェルの培養プレート、マルチウェルの培養プレート、空洞のある培養スライド、複数の空洞のある培養スライド、カバーガラス、カップ、フラスコ、管、瓶、潅流チャンバー、バイオリアクター、発酵槽からなるグループから選択されることを特徴とする請求項54に記載のナノフィブリル構造体。
【請求項57】
請求項1に記載のナノフィブリル構造体を有することを特徴とする組織培養容器。
【請求項58】
前記組織培養容器は、単一ウェルの培養プレート、マルチウェルの培養プレート、空洞のある培養スライド、複数の空洞のある培養スライド、カバーガラス、カップ、フラスコ、管、瓶、潅流チャンバー、バイオリアクター、および発酵槽からなるグループから選択されることを特徴とする請求項57に記載の組織培養用容器。
【請求項59】
ポリマーと生物活性な分子とを含み、
細胞培養中の生きている細胞が成長するための環境を有し、
実質的にコラーゲン、フィブリン、フィブリノゲン、トロンビン、水に溶けにくい薬剤化合物、又は、それらの混合物を含まない、
ことを特徴とするナノフィブリル構造体。
【請求項60】
請求項1に記載のナノフィブリル構造体を製造する方法であって、
1つ以上のナノファイバーのネットワークを電界紡糸する工程を有することを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項7に記載のナノフィブリル構造体を製造する方法であって、
前記基板表面上に1つ以上のナノファイバーのネットワークを電界紡糸する工程を有することを特徴とする方法。
【請求項62】
生体組織を製造する方法であって、
a)細胞培養中の生きている細胞を成長させるための環境を有する多層のナノフィブリルアセンブリを形成するために請求項1のナノフィブリル構造体を2つ以上積層する工程と、
b)前記アセンブリ上に生存可能な細胞を堆積する工程と、
c)前記堆積された細胞の成長および/または分化を促進する条件下で前記アセンブリを培養する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項63】
前記積層されたナノフィブリル構造体がスペーサによって分割されていることを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記スペーサがミクロファイバー、不織布または網を含むことを特徴とする請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記スペーサが多孔性の膜を含むことを特徴とする請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記ミクロファイバーが、セルロース、デンプン、ポリアミド、ポリエステル、または、ポリ4フッ化エチレンを含むことを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記ナノフィブリル構造体の各々が、1つ以上の成長因子、接着性化合物、および/または、目標化合物を含むことを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項68】
生体組織を製造する方法であって、
a)請求項1のナノフィブリル構造体のそれぞれの上に複数の細胞を培養する工程であって、前記それぞれのナノフィブリル構造体が特殊な細胞の型を含む工程と、
b)細胞の多層アレイを形成するために前記それぞれのナノフィブリル構造体を2つ以上積層する工程と、
c)前記細胞の増殖および/または分化を促進する条件下で前記アレイを培養する工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項69】
前記積層されたナノフィブリル構造体はスペーサによって分割されていることを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記スペーサがミクロファイバー、不織布または網を含むことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記スペーサが多孔性の膜を含むことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記ミクロファイバーが、セルロース、デンプン、ポリアミド、ポリエステル、または、ポリ4フッ化エチレンを含むことを特徴とする請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記ナノフィブリル構造体の各々が、1つ以上の成長因子、接着化合物、および/または、目標化合物を含むことを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記ナノフィブリル構造体の各々の前記成長因子、接着化合物、および/または、目標化合物が、前記特殊な細胞の型の成長および/または分化を促進するために選択されることを特徴とする請求項73に記載の方法。
【請求項75】
脂質を含むことを特徴とする電界紡糸されたファイバー。
【請求項76】
前記脂質は脂肪親和性の化合物、リン脂質化合物、スフィンゴ脂質またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項75に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項77】
前記脂質は、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、コレステロール、又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項76に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項78】
細胞に有害でないポリマーを更に含むことを特徴とする請求項76に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項79】
前記ポリマーは、生物分解性であることを特徴とする請求項78に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項80】
前記ポリマーは、水溶性であることを特徴とする請求項78に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項81】
前記ポリマーは、水溶性でないことを特徴とする請求項78に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項82】
前記ポリマーは、ポリエステルであることを特徴とする請求項78に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項83】
前記ポリエステルは、ポリ(イプシロンカプロラクトン)、ポリ(グリコレート)、またはポリ(乳酸塩)であることを特徴とする請求項82に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項84】
前記ポリマーは、ポリアミドであることを特徴とする請求項78に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項85】
前記ポリアミドはナイロンであることを特徴とする請求項84に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項86】
ナノサイズの無機充填剤を更に含むことを特徴とする請求項75に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項87】
前記電界紡糸されたファイバーが約50nmから約1000nmまでの直径を有することを特徴とする請求項75に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項88】
前記電界紡糸されたファイバーが約300nmの直径を有することを特徴とする請求項87に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項89】
前記電界紡糸されたファイバーが更に1つ以上の生物活性な分子を有することを特徴とする請求項75に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項90】
前記生物活性な分子の少なくとも1つは、脂質、炭水化物、多糖、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、または、それらのハイブリッド分子であることを特徴とする請求項89に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項91】
前記脂質は、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンス、コレステロール、又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項90に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項92】
前記多糖は、セルロース、デンプン、グリコゲン、アルギン酸、キトーサン、または、ヒアルロナンであることを特徴とする請求項90に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項93】
前記電界紡糸されたファイバーは、前記ファイバーへの細胞の付着を促進する生物化合物を更に含むことを特徴とする請求項75に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項94】
前記電界紡糸されたファイバーは、1つ以上のアルデヒド基、アルコール基、アミン基、スルフヒドリル基、または光活性可能な官能基を更に含むことを特徴とする請求項75に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項95】
前記光活性可能な官能基は、カルベンオルニトレンであることことを特徴とする請求項94に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項96】
前記電界紡糸されたファイバーは、1つ以上の成長因子を有することを特徴とする請求項75に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項97】
前記成長因子の少なくとも1つは、血管内皮成長因子、骨形態形成因子、表皮成長因子、内皮成長因子、血小板由来成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、インスリン成長因子、または、トランスフォーミング成長因子であることを特徴とする請求項96に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項98】
前記電界紡糸されたファイバーは、1つ以上の分化因子を含むことを特徴とする請求項75に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項99】
前記分化因子のすくなくとも1つは、ニュートロフィン、コロニー刺激因子 またはトランスフォーミング成長因子であることを特徴とする請求項98に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項100】
前記電界紡糸されたファイバーは、1つ以上の接着性分子を含むことを特徴とする請求項75に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項101】
前記接着性分子が、フィブロネクチンまたはラミニン、またはこれらのマクロ分子から誘導された接着ペプチドであることを特徴とする請求項100に記載の電界紡糸されたファイバー。
【請求項102】
請求項75に記載の電界紡糸されたファイバーを製造する方法であって、
脂肪親和性の分子とポリマーとを電界紡糸する工程を含む方法。
【請求項103】
複数のナノファイバーを製造する方法であって、
ポリマーと前記ポリマーの充填性に影響を与える添加剤組成物とを含む溶液を電界紡糸する工程を含み、
前記方法によって製造された前記複数のナノファイバーは、前記添加剤組成物を含まないポリマー溶液を用いて製造された複数のナノファイバーと比較すると、細いファイバーの割合が高いことを特徴とする方法。
【請求項104】
前記細いファイバーは、約5nmから約1000nmまでの直径を有することを特徴とする請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記細いファイバーは、約50nmから約400nmまでの直径を有することを特徴とする請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記細いファイバーは、約5nmから約50nmまでの直径を有することを特徴とする請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記添加剤組成物は、脂質を含むことを特徴とする請求項103に記載の方法。
【請求項108】
前記脂質はコレステロールであることを特徴とする請求項107に記載の方法。
【請求項109】
ポリマーと添加剤組成物とを含む溶液を電界紡糸する工程を含むことを特徴とする改造された弾性を有するナノファイバーを製造する方法。
【請求項110】
前記添加剤組成物が架橋剤を含むことを特徴とする請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記添加剤組成物が脂質を含むことを特徴とする請求項109に記載の方法。
【請求項112】
前記脂質がコレステロールであることを特徴とする請求項111に記載の方法。
【請求項113】
約50μmから1000μmのファイバー直径と、
少なくとも約2μmの平均ファイバー間隔と、
約30%のマトリックスの固体性と、
約10μmから約100mmの高さを有する外壁を持つ、約5mm2の面積の頂部および約4×10mm5の面積の底部と、
を有するナノファイバーのマトリックスを含むことを特徴とする細胞成長媒体。
【請求項114】
培養容器および請求項113に記載の細胞成長媒体。
【請求項115】
培養ウェルと、前記外壁の高さと前記頂部および底部の面積とが前記培養ウェルの寸法に適合されていることを特徴とする請求項113に記載の細胞成長媒体。
【請求項116】
ナノファイバーのネットワークを有することを特徴とする細胞成長媒体。
【請求項117】
培養容器中に挿入するために適合されていることを特徴とする請求項116に記載の細胞成長媒体。
【請求項118】
蛍光マーカーを有することを特徴とする電界処理されたファイバー。
【請求項119】
脂質を更に有することを特徴とする請求項118に記載の電界処理されたファイバー。
【請求項120】
前記脂質は、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、コレステロール、又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項119に記載の電界処理されたファイバー。
【請求項121】
前記蛍光マーカーが光退色可能でないものであることを特徴とする請求項118に記載の電界処理されたファイバー。
【請求項122】
前記蛍光マーカーがナノ結晶であることを特徴とする請求項121に記載の電界処理されたファイバー。
【請求項123】
前記ナノ結晶が量子ドットであることを特徴とする請求項122に記載の電界処理されたファイバー。
【請求項124】
前記蛍光マーカーが蛍光体であることを特徴とする請求項118に記載の電界処理されたファイバー。
【請求項125】
前記蛍光マーカーがpHに不感受性であることを特徴とする請求項118に記載の電界処理されたファイバー。
【請求項126】
前記蛍光マーカーがイオンに感受性であることを特徴とする請求項118に記載の電界処理されたファイバー。
【請求項127】
前記蛍光マーカーが他の分子との錯イオンに感受性であることを特徴とする請求項118に記載の電界処理されたファイバー。
【請求項128】
前記ナノファイバーの自己蛍光を低減する光学的な添加剤を更に含むことを特徴とする請求項118に記載の電界処理されたファイバー。
【請求項129】
ナノファイバーを識別するための方法であって、
前記ナノファイバーを蛍光マーカーで標識する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項130】
ナノファイバーの化学的特性または物理的特性を識別するための方法であって、
前記方法は、
a)前記ナノファイバーの化学的特性または物理的特性に蛍光マーカーを定める工程と、
b)前記ナノファイバーに前記蛍光マーカーで標識を付ける工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項131】
前記物理的特性は直径であることを特徴とする請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記化学的特性は生物活性な分子であることを特徴とする請求項130に記載の方法。
【請求項133】
前記生物活性な分子は、成長因子、分化因子、線維性蛋白、接着蛋白またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項132に記載の方法。
【請求項134】
多層に積層されたアセンブリを形成するために、積層された請求項1に記載のナノフィブリル構造体を2つ以上有することを特徴とする多層に積層されたナノフィブリルアセンブリ。
【請求項135】
厚みと、第1および第2の表面とを有するスペーサを更に含み、第1のナノフィブリル構造体と第2のナノフィブリル構造体とが前記スペーサの厚さによって分離されるように、前記スペーサの第1表面は前記第1のナノフィブリル構造体の表面に接触し、前記スペーサの第2表面は前記第2のナノフィブリル構造体の表面に接触していることを特徴とする請求項134に記載の多層に積層されたナノフィブリルアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−510820(P2007−510820A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537980(P2006−537980)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/027535
【国際公開番号】WO2005/047493
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506148877)ミシガン ステイト ユニバーシティー (1)
【氏名又は名称原語表記】Michigan State University
【住所又は居所原語表記】East Lansing, MI 48824, United States of America
【Fターム(参考)】