説明

ナノワイヤの形成方法及び関連した光学部品の製造方法

本発明は、基板の表面に触媒元素(P)を形成する段階と、基板(S)の表面に形成された触媒元素からナノワイヤ(nf)を成長させる段階とを含み、触媒元素が金属ナノ粒子(P)であることと、基板の表面に触媒元素を形成する段階が、基板の表面にある固体油浸レンズによって収束された光線を用いた金属ナノ粒子の堆積から成ることとを特徴とする、固体油浸レンズに取り付けられた基板(S)の表面にナノワイヤ(nf)を形成する方法に関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板の表面にナノワイヤを形成する方法、より具体的には、固体油浸レンズの平面に取り付けられた基板の表面にナノワイヤを形成する方法に関係する。
【0002】
本発明はまた、本発明のナノワイヤ形成方法に従ったナノワイヤの形成段階を含む光学部品の製造方法にも関係する。
【0003】
本発明は、例えばボトムアップ技術のようなナノワイヤ製造技術に適用する。本発明に関係する分野は、マイクロエレクトロニクス、照明学、光起電力技術などの分野である。
【背景技術】
【0004】
ナノワイヤを成長させるには、様々な方法がある。最もよく知られた方法の中には、金属触媒を使用するVLS法(VLSは“気相−液相−固相”)がある。触媒として最も一般に使用される金属は金であるが、その理由は金-シリコン混合物の共融温度が低く、たったの363℃であるからである。従って金は、比較的低温での成長を許容する。例えば、ニッケル、銅、プラチナ、銀又はパラジウムなども使用できる。しかしこれらの金属は、より高温での使用を必要とする。ニッケル、チタニウム又はアルミニウムも使用できる。
【0005】
VLS法はナノワイヤを成長させる触媒として、金属島、通常金を使用する。その島は、基板上への金属コロイドの堆積又は金属薄層のディウェッティングによって得られる。
【0006】
金コロイド(直径100nm未満の粒子)は半導体ウエハーの表面上に堆積される。その基板が装置内に設置され、そこでコロイドがそれらの融点まで加熱される。前駆ガスが装置内に導入され、金属滴内での半導体飽和を引き起こす。結晶成長は沈殿による液体−固体界面において起こる。ナノワイヤの直径は金属−半導体合金の滴のサイズによって決まるが、それ自体は金コロイドの元のサイズによって決まる。金コロイドの使用は、金属薄層の使用よりも、より優れたワイヤ直径の制御を許容する。
【0007】
金属薄層のディウェッティングは、数ナノメートルの厚さを有する金属薄層の蒸発と、それに続くナノメータサイズの金属島を形成するための焼きなましとから成る。島が形成された場合、その成長機構はコロイドの場合と同様である。この技術では滴のサイズに相当なばらつきがあり、成長後のワイヤの直径に影響を及ぼす。加えて、滴の位置はランダムである。
【0008】
ZnO又はGaなどで作られるナノワイヤのような特定のナノワイヤは、金属触媒なしで成長できる。そしてその成長法は、VS法(“気相−固相”)である。例えばZnOの場合、ナノワイヤの成長はZnO金属パウダーの熱蒸発によって得られる。
【0009】
特定のナノワイヤ成長法はまた、それらの正確な位置決めも伴う。これらの第1の方法によると、半導体基板上に堆積された樹脂層がフォトリソグラフィー又は電子ビームリソグラフィー(一般にはe-ビームリソグラフィーと呼ばれる)によって現像される。そして金の薄層がサンプル上に堆積され、その後樹脂が除去される。これは金スタッドのネットワークから成るパターンを残す。そしてワイヤ成長は、前述のVLS法によって伝統的に遂行される。このように製造されたワイヤは完全に基板に対して垂直であり、サイズ、直径、位置に関する優れた規則性及び均一性を有する。現像された領域は、数平方センチメートルの規模であり得る。位置決めの精度は、電子ビームリソグラフィーの場合はおよそ8から10nmであり、光学リソグラフィーの場合は使用する波長によって決まる。このような方法の長所は、ナノワイヤの位置決めの精度が得られること、及び如何なるタイプのパターンを製造できることである。しかし短所も数多くあり、すなわち費用及びこの方法を実行するのに必要な装置の複雑さがある(例えば、光学リソグラフィーのためのマスクの費用など)。
【0010】
第2の方法よると、樹脂層はシリコン基板上に堆積される。穴のネットワークから成るパターンは、電子ビームリソグラフィーによって樹脂に現像される。シリコンはその樹脂の穴内で、反応性イオンエッチングによってエッチングされる。そして金属層が蒸発によってそのサンプルに堆積される。従って金属層は、樹脂の最上部及び穴の底部に堆積される。そして樹脂上の金属層は除去される。最終的にナノワイヤの成長は、穴の底部に設置された、触媒として働く金属島を伴って、前述の伝統的なVLS法によって遂行される。この方法を使用して製造されたワイヤは、均一の直径及び長さだけではなく、幾つかの結晶欠陥も有する。このもう1つの方法の長所もまた、ナノワイヤの位置決めで得られる十分な精度にある。しかし穴に設置されたナノワイヤによって占められた状況においても、費用及び装置の複雑さは本質的な短所である。
【0011】
第3の方法よると、ポリスチレンビーズの単層がシリコン基板上に堆積され、自己組織化によって規則的なパターンを形成する。RIEエッチング(“反応性イオンエッチング”、すなわちプラズマエッチング)によって、そのビーズのサイズはコロイドサイズに低減され得る。ビーズ及び基板によって形成された集合体の上に、銀の層が堆積される。塩酸及びHでのエッチングによって、銀の層の下のシリコンがエッチングされる。そして銀は王水でのエッチングによって除去され、ビーズは塩酸でのエッチングによって除去される。その後、組織化されたパターンに従って分散されたワイヤのセットが得られる。この第3の方法の長所はパターンの十分な規則性が得られることであり、短所はランダムなパターンを製造できないことにある。
【0012】
第4の方法は、ナノワイヤの製造にAFM(原子間力顕微鏡)の針又は原子間力を伴った顕微鏡の針を使用することから成る。金コロイドは初めに、エアロゾルを使用してシリコン基板上に堆積される。そして接触モードのAFM針は、コロイドを押してそれらを所望の位置に動かすために使用される。その後ナノワイヤの成長は、伝統的な方法によって遂行される。この方法の長所は、位置決めの精度が非常に良いこと(1ナノメートル程度)と、如何なるパターンでも製造できるという事実とである。短所は、AFM針の動きが遅いことと、単独のコロイドが一気に操作されるという事実と、シリコン基板の表面がかなりの形状の変化を有する場合にこの方法が使用できないという事実とである。
【0013】
第5の方法はナノ細孔を使用する。ナノ細孔はアルミニウム膜の陽極酸化によって形成される。得られたナノ細孔は、自己組織化によって均一の直径及び深さを有するネットワークを形成する。その膜は半導体基板の上に堆積される。金属層は基板上に蒸発によって堆積される。表面の金属が除去される。従って金属スタッドのネットワークが、ナノ細孔の底部に残る。そしてナノワイヤの成長がVLS法によって起こる。1つの長所は、パターンの規則性である。短所は、ランダムなパターンが製造できないこと及びナノワイヤが穴の中にあることである。
【0014】
第6の方法はナノインプリンティングによるリソグラフィーに関係する。ポリエルリジンで作られた“インク”によって覆われたポリジメチルシロキサン(PDMS)で作られた金型が、シリコン基板の表面に適用される。接触領域では、ポリエルリジンがシリコンに運ばれる。そして基板は金コロイドを含む溶液に浸される。コロイドはポリエルリジンに覆われた領域にのみに付着され、裸基板には付着されない。そしてナノワイヤの成長がVLS法によって遂行される。このような方法の主な短所は、金型の費用である。
【0015】
ナノワイヤに結合された固体油浸レンズを含む光学部品の製造もまた、従来技術から知られている。
【0016】
固体油浸レンズが初めに製造される。そのレンズの平面上に、半導体材料(例えばSi又はZnOなど)と前駆体(例えばAuなど)との2層が堆積される。その2層はレンズ中央部にのみ残るようにエッチングされる。エッチング幅は、約10から100ナノメートルである。そして前述の技術の何れか1つを使用して、触媒元素がエッチングされた2層の表面に形成され、ナノワイヤがその触媒元素から成長する。光学部品を製造するこの方法には、大きな難題、すなわちレンズのエッチングされた2層のセンタリングがある。光学部品が完成したときにナノワイヤの直径のセンタリングが1桁ずれていること(例えば数10から数100ナノメートル)は、そのナノワイヤとレンズに入射された光線との結合がもはや可能ではなくなるのに十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明による方法は、従来技術による方法が有する前述の短所を有しない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
実際に、本発明は、基板表面に少なくとも1つの触媒元素を形成する段階と、前記基板の表面に形成された各前記触媒元素からナノワイヤを成長させる段階と、を含む固体油浸レンズの平面に取り付けられた基板の表面に前記ナノワイヤを形成する方法に関係する。触媒元素が金属ナノ粒子であり、且つ基板が動作波長において透過性であるため、基板の表面に触媒元素を形成する段階は、以下の一連の段階、
−前記基板を、金属ナノ粒子を含むタンクに配置された流体と接触させる段階と、
−固体油浸レンズの半球状面上の入射光線を用いて、基板の領域にその動作波長を有する光線を収束させる段階と、
−金属ナノ粒子がその収束光線に捕捉されるまでタンクを動かす段階と、
−捕捉されたナノ粒子を基板上に付着させる段階と、
を含む。
【0019】
本発明の追加の特徴によると、流体はタンクを満たす液体であるため、金属ナノ粒子が基板に付着すると、タンクは分解され、基板は乾燥段階の間に乾燥される。
【0020】
本発明のもう1つの追加特徴によると、流体はタンクを満たす空気であるため、ナノ粒子が噴霧器を用いてタンク内に導入され、ナノ粒子が基板に付着すると、タンクは分解される。
【0021】
本発明の更にもう1つの追加特徴によると、金属ナノ粒子は基板の表面に溶融によって付着する。
【0022】
本発明の更にもう1つの追加特徴によると、基板へのナノ粒子の付着を促進できる表面処理によって、基板は初めに覆われる。
【0023】
本発明の更にもう1つの追加特徴によると、その表面処理はポリエルリジンでの処理又はアミノシランによる処理である。
【0024】
本発明の更にもう1つの追加特徴によると、その表面処理はナノワイヤの成長段階の前に除去される。
【0025】
本発明の更にもう1つの追加特徴によると、その表面処理はナノワイヤの成長段階の後に除去される。
【0026】
本発明はまた、固体油浸レンズとその固体油浸レンズに結合した少なくとも1つのナノワイヤとを含む光学部品の製造方法に関係する。固体油浸レンズ上でのナノワイヤ形成は、本発明のナノワイヤ形成方法を用いて遂行される。
【0027】
本発明の製造方法によって得られた光学部品は、例えば物体に放射線を照射してその物体によって反射された放射線を集めることを目的としたクローズフィールド検知デバイスに組み入れられ得る。本発明の方法によって得られた光学部品は、例えば光学データ媒体、又は繰り返しになるがクローズフィールド光学顕微鏡プローブの上に光学データを書き込み、又は読み込むためのヘッドになり得る。
【0028】
本発明のナノワイヤ形成方法は、固体油浸レンズに取り付けられた半導体基板の表面上に金属粒子(通常ナノシェル)を運び、又は堆積する光学トラップを使用する。そして金属粒子は、例えばVLS法など知られた方法によってナノワイヤを成長させるための触媒として使用される。金属粒子、それ故にナノワイヤは、数10ナノメートル程度の精度で有利に設置される。ナノワイヤに結合された固体油浸レンズに取り付けられた光学部品の製造に対しては、光学部品の一部を形成する固体油浸レンズがナノワイヤ形成に有利に関与する。ナノワイヤのセンタリングの問題は、この方法によってかなり改善される。
【0029】
光学トラップは、光線から高く集中された光線を生成する、屈折性の光学デバイスを用いて製造される。その光線は、例えばレーザー光線などであり得る。高く集中された光線の領域にある粒子は、光線の最大強度に粒子を引き付ける“傾度力”と呼ばれる力を受けやすく、その最大強度はその光線が最も閉じ込められた領域にある。捕捉される粒子の直径は、数10ミクロンから数10ナノメートルに及ぶ。オプティカルクリップを用いて動かせる粒子は通常、非常に様々な性質を有し、すなわち誘電性、金属、半導体、生物学的、ポリマーなどの粒子である。本発明との関連で、その粒子は金属粒子である。
【0030】
粒子は通常脱イオン水によって溶解されるが、例えばエタノールなどの他の溶媒もまた使用することができる。その溶媒は、必ずその粒子よりも小さい屈折率及び水に近い粘度を有しなければならず、またその粒子の表面状態を決して変更してはならない。
【0031】
その光線は、好ましくはレーザー光線である。オプティカルクリップを形成するのに使用されるレーザー波長の選択は、捕捉される粒子の性質によって決まる。実際には、レーザー流束に設置された粒子は、2タイプの光学力を受けやすい:誘引性があり、粒子をレーザー光線の最も集中された領域に運ぶ傾度力と、反発性があり、クリップが不安定化する傾向があるレーザー光線の伝播方向にその粒子を押す吸収及び拡散力とである。捕捉を可能にするためには、傾度力が吸収及び拡散力よりも非常に大きくなければならない。このようにレーザーの波長は、その粒子による吸収及び拡散の最小値に対応しなくてはならない。金粒子の場合、532nmのレーザーの使用は、金による拡散の最大値に対応するため、避けられる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によると、使用される金属粒子は、直径が通常数10ナノメートルからおよそ250nmに及ぶ金粒子、又は直径が通常およそ20nmから275nmに及ぶ銀粒子である。
【0033】
粒子捕捉技術の現況では、より大きな直径の粒子は単一のガウスビームを有する光学トラップによって捕捉され得ない。そして代わりに、2つの後方励起レーザー光線が使用される、すなわち反対側にある励起方向が同じ点に収束する。単一ビームで稼働することも可能であるが、その中心部は暗くなる。後者の場合は、光の円錐曲線回転面を用いた反発によって粒子は捕捉される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
【図1B】基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
【図1C】基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
【図1D】基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
【図1E】基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
【図1F】基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
【図2】図1Aから図1Fにおいて記載された、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法を実行する装置の一例を示す図である。
【図3A】図1Aから図1Fにおいて表された、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法の変形例の2段階を示す図である。
【図3B】図1Aから図1Fにおいて表された、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法の変形例の2段階を示す図である。
【図4】図1Aから図1Fにおいて記載された、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法を実行する装置の第1の例を示す図である。
【図5】図1Aから図1Fにおいて記載された、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法を実行する装置の第2の例を示す図である。
【図6A】本発明に従った固体油浸レンズ上でのナノワイヤの位置決めされた成長の一例を示す図である。
【図6B】本発明に従った固体油浸レンズ上でのナノワイヤの位置決めされた成長の一例を示す図である。
【図6C】本発明に従った固体油浸レンズ上でのナノワイヤの位置決めされた成長の一例を示す図である。
【図7】本発明に従った固体油浸レンズ上でのナノワイヤの位置決めされた成長の方法の特定の段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の他の特徴及び利点は、添付された図を参照して記載された好ましい実施形態を読むことによって明らかになるだろう。
図1Aは、基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
図1Bは、基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
図1Cは、基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
図1Dは、基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
図1Eは、基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
図1Fは、基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す図である。
図2は、図1Aから図1Fにおいて記載された、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法を実行する装置の一例を示す図である。
図3Aは、図1Aから図1Fにおいて表された、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法の変形例の2段階を示す図である。
図3Bは、図1Aから図1Fにおいて表された、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法の変形例の2段階を示す図である。
図4は、図1Aから図1Fにおいて記載された、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法を実行する装置の第1の例を示す図である。
図5は、図1Aから図1Fにおいて記載された、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法を実行する装置の第2の例を示す図である。
図6Aは、本発明に従った固体油浸レンズ上でのナノワイヤの位置決めされた成長の一例を示す図である。
図6Bは、本発明に従った固体油浸レンズ上でのナノワイヤの位置決めされた成長の一例を示す図である。
図6Cは、本発明に従った固体油浸レンズ上でのナノワイヤの位置決めされた成長の一例を示す図である。
図7は、一例として、本発明に従った固体油浸レンズ上でのナノワイヤの位置決めされた成長の方法の特定の段階を示す図である。
【0036】
全ての図において、同一の符号は同一の素子を示す。
【0037】
図1Aから図1Fは、基板上でのナノワイヤの位置決めされた成長のための方法の一連の段階を示す。
【0038】
オプティカルクリップは、その開口数が1よりも大きい顕微鏡対物を用いて形成された光ビームウエストである。ウエストが形成される光線は、好ましくはレーザー光線である。
【0039】
金属粒子Pは、流体、例えば液体Lなど、を含むタンクC内に配置される。タンクCの底部は、半導体基板Sから成る。カバーガラスLaは、例えばそのタンクを閉じる蓋などを構成する。液体Lとの接触を目的とする半導体基板の面は、周知の方法、例えば酸素プラズマ処理タイプの方法など、によって好ましくは予め洗浄される。また好ましくは、表面処理T、例えばポリエルリジンでの処理又はアミノシランによる処理などが、粒子の付着を促進するために液体と接触している半導体基板の面を覆う。オプティカルクリップは、高く集中された光線FのウエストWによって遂行される。基板の表面の範囲までは、オプティカルクリップはナノ粒子が1つずつ動けるようにする(図1B参照)。ナノ粒子が基板上に設置されるとき、それは基板の表面に存在する静電気力(ファンデルワールス力)によって基板に付着する。もし存在するなら、表面処理Tはこの付着を促進する。そして光線がないときでさえ、ナノ粒子は基板に付着した状態のまま残る。ナノ粒子の移動段階は、所望の空間配置、所望の粒子数まで付着させるために、要求に応じて何度でも繰り返される(図1C参照)。そしてタンクCが除去され、温度及び圧力条件を制御しながら、液体Lの残留物が乾燥によって蒸発される(図1D参照)。非制限的な例として、乾燥温度はこのように35℃であり得、圧力は1気圧であり得る。そして半導体基板Sは成長装置(図示せず)に設置され、それ自体周知であるナノワイヤの成長のためのプロセスを開始するために、前駆ガスGが装置内に導入される。前駆ガスは例えば、酸化亜鉛(ZnO)ナノワイヤの場合は亜酸化窒素NO又はジエチル亜鉛であり、シリコンナノワイヤ(Si)の場合はシランSiHである。ナノワイヤnfの成長が完了した時(図1E参照)、金属ナノ粒子P及び表面処理Tは、もし存在するならば、例えば化学的エッチングなどによって除去される(図1F参照)。
【0040】
ナノワイヤの位置決めのための周知の技術と比較して、この方法は以下の長所を有する:
−この方法は、例えばリソグラフィーのような費用のかかる技術段階を含まない。
−金属ナノ粒子は、基板の表面の如何なる場所でも如何なるパターンでも設置され得る。
−ナノ粒子が設置される精度は、ほぼ数10ナノメートル程度である。
−本発明の技術は高速であり、例えば前述のAFM技術よりもより迅速である。
【0041】
本発明との関連で、前述の表面処理Tは数ナノメートルの厚さを有する有機分子の単層を指定する。有機分子の選択は、生成されるナノ物体の性質及び基板Sの性質に対して適切である。非制限的な例として、以前に言及したように、表面処理はポリエルリジンを用いた処理である。
【0042】
図2は、図1Aから図1Fに示されたナノワイヤ成長方法を実行する装置の一例を示す。
【0043】
この例によると、タンクCを満たす流体は、液体ではなく空気Aである。そのときは有利に、後段階において基板Sを乾燥する必要がない。金属ナノ粒子Pはエアロゾルを用いて、タンクCを満たす空気中に浮遊される。そのエアロゾルを生成するために噴霧器Nが使用されるが、例えば穴を有するネットワークRが取り付けられ、超音波によって撹拌される。ナノ粒子Pはその噴霧器のタンクを満たす溶媒、例えばエタノールなどの中に浮遊される。ナノ粒子Pはそのネットワークを横断できるように、その穴のサイズよりも小さい直径を有する。外側の開口部Ovが、タンクCに作製される。Ov開口部は、タンク内に入ったナノ粒子PがビームFのウエストWに到着する前に、その溶媒の迅速な蒸発を許容する。従ってナノ粒子は、空中で捕捉される。ナノ粒子Pが基板S上に堆積された時、ナノワイヤ成長方法は、今回は有利に不必要である基板の乾燥段階を除いた前記記載方法に従って、前述の通りである。
【0044】
図3Aから図3Bは、図1Aから図1Fに示された方法の変形例の2段階を示す。
【0045】
この変形例によると、例えば酸素プラズマPX下での処理などによって、表面処理Tの層はナノワイヤの成長前に除去される。表面処理Tは実際、基板Sと金属ナノ粒子Pとの間の滞在的に汚染した層である。この表面処理Tの除去はこのように全ての汚染を防ぎ、ナノワイヤのより均一な成長を許容する。ナノワイヤの成長の間、その層Tが保持される状況と比較して、基板に対する垂直状態が非常に感知できるほどに改善されたナノワイヤを得ることが、このように可能になる(図3B参照)。
【0046】
図4は、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法を実行する装置の第1の例を示す。
【0047】
この変形例によると、マルチビームオプティカルクリップを生成するために、数個の光線が同時に使用される。マルチビームオプティカルクリップは、光源1からもたらされる単一光線とタンクCとの間に光学部品2を挿入することによって、それ自体周知の方法で生成される。光学部品2は、例えば回折部品、ホログラフィック部品、若しくは1又はそれ以上の空間光変調器から成る部品などである。この方法によって、数個の光線、例えば200もの数の光線が発生され、タンクCの同一のレンズ3によって収束される。そして多数の光のビームウエストがタンクC内に形成される。光学部品2は、例えばコンピューター4などによって制御され得る。
【0048】
図5は、ナノワイヤの位置決めされた成長の方法を実行する装置の第2の例を示す。
【0049】
直径50nmの金コロイドPがエタノールに溶解される。そのコロイド溶液は、その金属粒子がエアロゾル形態で拡散されるようにする噴霧器Nのタンクに配置される。ポリエルリジンの薄層Tは、その表面へのコロイドの十分な付着を促進するために、微晶質シリコンウエハーSの表面上に堆積される。PDMS(ポリジメチルシロキサン)で作られたタンクCの壁が、薄層Tによって覆われたウエハーの表面に取り付けられる。タンクは、オプティカルクリップの製造に使用されるレーザーの波長において透過性である。タンクは、流体チャネルKの端部が挿入される片側に第1開口部01を有する。流体チャネルKは、タンクを噴霧器に接続する。タンクはまた、タンク内にある空気と外気との間に第2開口部Ovを有する。“タンク+基板”の集合体は、倒立顕微鏡のサンプルホルダーに設置される。その顕微鏡は、開口数1.25を有する油浸レンズ3を含む。このレンズは、オプティカルクリップの製造及びサンプルの観察の両方に使用される。CCDカメラ11はサンプルを観察するために、その顕微鏡のレンズの後ろに設置される。波長1064nm、電力定格100mWのYAGレーザー1の放射から生じた光をレンズ3に投入することによって、オプティカルクリップが製造される。オプティカルクリップは、チャネル由来の粒子の到着を待ち受けるために、タンク内の流体チャネルの出力領域に初めに設置される。粒子が捕捉されると、ウエハー表面の目的とする位置に粒子を設置するように、演算子(又はコンピューターのアプリケーション)がオプティカルクリップ及び/又はタンクを動かす。レーザー1が停止したとき、粒子はポリエルリジンによって表面に付着した状態のまま残る。このプロセスは要求に応じて何度でも繰り返される。そしてPDMSタンクはサンプルから分離される。基板は酸素プラズマ下での処理によって洗浄され、LPCVD(低圧化学蒸着)装置のチャンバーに設置される。ナノワイヤの成長は、VLS(気相−液相−固相)法によって、10から30sccmの間の速度及び400から650℃の間の成長温度でシラン(SiH)をその装置内に導入することによって行われる。
【0050】
図6Aから図6Cは、本発明によるナノワイヤの位置決めされた成長の方法の一例の段階を示す。本発明によると、固体油浸レンズによって高く収束された光線を用いて、オプティカルクリップは製造される。
【0051】
固体油浸レンズは、高い屈折率n(2≦n)を有する材料を用いて製造された、好ましくは半球形のレンズである。このようなレンズの使用は、光学システムの開口数の増加を可能にし、またこのようにして、空気中での解像限界と比較して焦点のサイズを1/n倍に低減することを可能にする。
【0052】
本発明の方法を実行する装置は、平面上に半導体材料層9が堆積された固体油浸レンズ7をこのように含む。半導体材料層9は動作波長において透過性であり、この波長と比較して小さい厚さを有する。半導体材料のレンズ/層の集合体は、金属粒子Pを含む液体Lによって満たされたタンク8内に、部分的に設置される。半導体材料層9によって覆われたレンズ7の面は、タンク外部に設置されたレンズの残り部分とともに、液体に接触する。液体Lと接触する半導体材料の面は、前記に記載したように、同じ表面処理T(ポリエルリジン)によって覆われる。低開口数の顕微鏡レンズ5から放射される収束光線Iを用いて、半球形側のレンズは照らされる。支持体6は、レンズ7と液体Lとの接触の保持を可能にする。粒子Pがレンズ7の中心近くに設置されるまで、タンク8は動かされる。半導体材料のレンズ/層の集合体の周囲に収束された光は、前述のオプティカルクリップのレーザービームウエストと同じように、今回は粒子を捕捉するオプティカルクリップとして使用される。粒子Pが層9に接触すると、静電気力によって粒子Pは層9に付着する。静電気力によるこの付着は、粒子の表面状態及び基板の表面状態によって決まる。図6A及び図6Bにおいて、符号10は象徴的にレンズ7の焦点での光強度を示す。
【0053】
そしてナノワイヤnfの成長段階が、基板への粒子Pの付着に続いて起きる(図6C参照)。
【0054】
図7は、一例として、本発明のナノワイヤの位置決めされた成長方法の変形例の特定の段階を示す。
【0055】
この特定の段階によると、半導体材料層9の表面に金属ナノ粒子が溶融によって付着する。オプティカルクリップを生成する光線F1に加えて、レーザー光線F2、例えば紫外線(UV)パルスタイプのレーザー光線などもまた、半導体材料層9に収束される。そして光線F1及びF2が、半反射性ブレード11を用いて、高い開口数を有する同じ顕微鏡対物Obに投入される。オプティカルクリップを用いて半導体材料層9に運ばれ堆積された金属ナノ粒子Pは、収束されたUVパルスレーザー光線を用いて、その後この同一の層に溶接される。
【0056】
図6Aから図6B及び図7に関連して記載された本発明の好ましい実施形態によると、単一のナノ粒子Pが層9に付着する。しかし本発明は、数個のナノ粒子が層9に付着した他の実施形態に関係する。数個のナノ粒子はそして、同じ収束ビームによって捕捉される。
【0057】
利便性の理由で、前記の記述において、“ナノ粒子”という言葉は通常、触媒として基板上に設置され得る小さな寸法を有する全粒子を指定するために使用される。“ナノ粒子”という言葉はもちろん、全くほぼ数ナノメートル程度の寸法のみを有する物体として理解されてはならない。このように“ナノ粒子”の寸法は、数ナノメートルから数10ミクロメートルの間であり得る。
【符号の説明】
【0058】
1 レーザー
2 光学部品
3 油浸レンズ
4 コンピューター
5 顕微鏡レンズ
6 支持体
7 レンズ
8 タンク
9 半導体材料層
10 光強度
11 半反射性ブレード
A 空気
C タンク
F 光線
K 液体チャネル
L 液体
La カバーガラス
N 噴霧器
nf ナノワイヤ
P ナノ粒子
R ネットワーク
S 半導体基板
T 表面処理
01 開口部
Ov 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に少なくとも1つの触媒元素を形成する段階と、前記基板(S)の前記表面に形成された前記触媒元素の各々からナノワイヤ(nf)を成長させる段階と、を含む固体油浸レンズの平面に取り付けられた前記基板(S)の前記表面に前記ナノワイヤ(nf)を形成する方法であって、
前記触媒元素が金属ナノ粒子(P)であり、前記基板が動作波長において透過性であるとともに、前記基板の前記表面に前記触媒元素を形成する前記段階が、以下の一連の段階、
−前記基板を、前記金属ナノ粒子を含むタンク(8)に配置された流体(L)と接触させる段階と、
−固体油浸レンズの半球状面上の入射光線を用いて、前記基板の前記領域に前記動作波長を有する光線を収束させる段階と、
−金属ナノ粒子が前記収束光線に捕捉されるまで前記タンクを動かす段階と、
−前記捕捉されたナノ粒子を前記基板上に付着させる段階と、
を含むことを特徴とする、前記固体油浸レンズの前記平面に取り付けられた前記基板(S)の前記表面に前記ナノワイヤ(nf)を形成する方法。
【請求項2】
前記流体が前記タンクを満たす液体(L)であって、前記金属ナノ粒子が前記基板に付着すると、前記タンクが分解され、前記基板が乾燥段階の間に乾燥される、請求項1に記載のナノワイヤ形成方法。
【請求項3】
前記流体が前記タンクを満たす空気(A)であって、ナノ粒子(P)が噴霧器(N)を用いて前記タンク内に導入され、少なくとも1つの前記ナノ粒子が前記基板に付着すると前記タンクが分解される、請求項1に記載のナノワイヤ形成方法。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子が前記基板の前記表面に溶融によって付着する、請求項1から3の何れか1項に記載のナノワイヤ形成方法。
【請求項5】
前記基板への前記ナノ粒子の付着を促進できる表面処理(T)によって、予め前記基板が覆われる、請求項1から4の何れか1項に記載のナノワイヤ形成方法。
【請求項6】
前記表面処理(T)がポリエルリジンでの処理又はアミノシランによる処理である、請求項5に記載のナノワイヤ形成方法。
【請求項7】
前記表面処理が前記ナノワイヤの前記成長段階の前に除去される、請求項5又は6の何れか1項に記載のナノワイヤ形成方法。
【請求項8】
前記表面処理が前記ナノワイヤの前記成長段階の後に除去される、請求項5又は6の何れか1項に記載のナノワイヤ形成方法。
【請求項9】
固体油浸レンズと、前記固体油浸レンズに結合した少なくとも1つのナノワイヤとを含む、光学部品の製造方法であって、前記固体油浸レンズの平面に前記ナノワイヤを形成する段階を含み、前記ナノワイヤを形成する前記段階が請求項1から8の何れか1項に記載の方法を用いて遂行されることを特徴とする、光学部品の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−516242(P2012−516242A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546846(P2011−546846)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051012
【国際公開番号】WO2010/086378
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】