説明

ナノ流体生成装置

【課題】簡易な構成によってマイクロバブルを安定的に生成することができ、取扱いも容易で、製造コストを低減できるナノ流体生成装置を提供する。
【手段】直径が1μm未満の気泡(ナノバブル)を含むナノ流体を生成する装置1は、気体と液体とを混合する気液混合室7と、この気液混合室7に加圧した液体及び気体を供給する加圧ポンプ4と、を備え、前記気液混合室7は、この室内に設けられ、供給された液体及び気体に乱流を発生させて強制的に混合するための乱流発生手段(円錐部材11、複数の突条9及び凹溝10、12)と、強制的に混合された混合流体を吐出する超微小吐出口20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直径が1μm未満の気泡(ナノバブル)を含むナノ流体を生成する装置に関する。ここで、本明細書においては、直径が1μm未満の気泡をナノバブルと称し、直径が1μm(1000nm)以上のマイクロバブルとは区別して使用する。
【背景技術】
【0002】
近年、直径が数十μm以下の微細気泡(マイクロバブル)の気液溶解、浄化機能、生理活性の促進などの機能を利用して、ダム貯水池などの閉鎖性水域の水質浄化、養殖魚介類や水耕栽培野菜類の成長促進、生物に対する殺菌・浄化などが提案され(特許文献1)、そのうちのいくつかは実用化が進められている。このマイクロバブルのうち、気泡径が1μm未満の超微細気泡(ナノバブル)については、さらに、上記の機能に加えて、工学的機能に優れ、生物の細胞レベルに作用させることができるため、半導体ウェハの洗浄、皮膚疾患の治療などより広い分野への適用と一層の高機能化が期待されている(特許文献2〜5)。
【特許文献1】特開2002−143885号公報
【特許文献2】特開2003−334548号公報
【特許文献3】特開2004−121962号公報
【特許文献4】特開2005−245817号公報
【特許文献5】特開2005−246294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したナノバブルは、マイクロバブルが水中で縮小する過程で瞬間的に生成されることが確認されていたが、物理的に極めて不安定であるため、安定的な製造や長期間の保持が困難であり、実用化のネックになっていた。
【0004】
そこで、例えば、上記の特許文献3においては、分解ガス化された溶液中で超音波を印加することでナノバブルを生成することが提案されている。しかし、超音波発生装置は高価であり、取り扱いも容易ではないため、普及の妨げになるおそれがある。
【0005】
また、特許文献1には、円筒状スペース内に円周方向に圧送液を供給して負圧領域を形成し、この負圧領域に外部気体を吸引させることでマイクロバブルを生成する方法及び装置が開示されているが、この装置ではマイクロバブルは生成できても、より小径のナノバブルを安定的に生成することはできない。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたもので、簡易な構成によってマイクロバブルを安定的に生成することができ、取扱いも容易で、製造コストを低減できるナノ流体生成装置を得ることを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0008】
図1は本発明の一実施形態に係るナノ流体生成装置の模式図である。この装置1は、両端の気液の供給口5及び吐出口6と筒状の気液混合室7とを備えたジェネレータ2、ジェネレータ2に加圧された気液を供給する貯留タンク3、及び貯留タンク3に加圧流体(例えば、純水とエア)を供給する加圧ポンプ4とを備えている。
【0009】
ジェネレータ2は、ステンレスなどの耐圧性、耐水性に優れた材料で形成される。また、このジェネレータ2は、3枚の隔壁a1〜a3によって、供給口5から供給された気液を複数の連通孔8に分配して気液混合室7に供給するための分配空間Aと、前記気液混合室7と、気液混合室7で混合され後述する超微小吐出口20を通じてナノ化された気液混合流体が流入する弁室Bと、前記吐出口6が設けられ弁室Bから流入したナノ流体が一時的に滞留する吐出空間Cとから構成される。
【0010】
加圧ポンプは、図示しない純水生成装置を介して給水源に接続されており、この純水を13〜15気圧に加圧して貯留タンク3に供給する。加圧ポンプ4を作動させると、加圧された純水と、加圧ポンプ4の上流と下流との圧力差によって吸気弁21から吸い込まれたエアとが貯留タンク3に供給される。吸気弁21からの吸気量は13〜15気圧の場合は毎分1〜3リットル程度である。この吸気弁21は、吸気時のみ解放される逆止弁で構成される。
【0011】
貯留タンク3は、気液混合室7に供給する液体及び気体の割合と圧力などを安定させる機能を有する。貯留タンク3内では、所定割合の純水とエアとが加圧状態で保持される。この貯留タンク3の容量は、生成するナノ流体の種類やジェネレータ2の生成能力などに応じて適宜変更する。一例として、純水と空気、圧力が13〜15気圧、生成能力を毎分40〜60リットル程度とする場合、貯留タンク3の容量は12〜15リットル程度で十分である。また、浴槽やプールなどに貯留された水をナノ流体に改質する場合は、吐出口6から吐出されたナノ流体を含む水を貯留タンク3に貯めて循環させることで、毎分1〜2tの処理が可能である。
【0012】
気液混合室7は、内壁に複数の突条9及び凹溝10が設けられている。また、分配空間Aと気液混合室7とを仕切る隔壁a1の下面略中央に円錐部材11が垂設されている。この円錐部材11の傾斜面にも全周に亙って凹溝12が設けられている。突条9及び凹溝10、12や円錐部材11の数、位置、大きさ、形状などは、生成するナノ流体の種類や時間辺りの生成量、圧力、気液混合室5の容積、連通孔8の数や位置、径などに応じて自由に設定できる。例えば、突条9の高さ及び凹溝10、12の深さは何れも5mm(高低差最大10mm)としている。
【0013】
超微小吐出口20は、逆円錐台状の止め弁15の外周面15a及び、気液混合室7と弁室Bとを仕切る傾斜隔壁a2の表面によって構成される。止め弁15の外周面15a及び傾斜隔壁a2の表面は、何れも、研磨されて平滑性が向上されたプラチナチップが装着されている。止め弁15は、気液混合室7に供給される気液の圧力(13〜15気圧)によって常時下方に押圧され、超微小間隔が保持される。ステンレスや他の金属では、一般的に研磨による表面の平滑化に物理的な限界があるため、流路の幅lを1μm程度までしか狭めることができない。これに対して、本実施形態のように、超微小吐出口20の流路表面を極めて平滑なプラチナで構成した場合には、超微小吐出口20の流路lを0.2μm(200nm)程度の超微小な間隔まで狭めることができる。そして、加圧され混合された気液混合流体を超微小吐出口20に強制的に通過させることで、ナノバブルを多く含んだナノ流体を生成できる。また、これにより、液体(純水)自体もナノレベルの微小なクラスタに分解させることができ、液体吸収性などを格段に向上させることができる。なお、特殊な研磨技術やコーティング技術などによって、吐出口の間隔をナノレベルまで狭めることができれば、プラチナ以外の金属を採用することも可能である。
【0014】
上記した構成において、加圧ポンプ4を作動させると、加圧された液体(順水)と吸気弁21から吸い込まれたエアとが貯留タンク3に供給される。
【0015】
次いで、貯留タンク4の供給弁22を開くと、加圧された所定割合の純水及びエアがインジェクタ2の供給口5から連通孔8及び分配空間Aを介して気液混合室7に供給される。なお、供給弁22は、ナノ流体の生成時は、常時開放しておいてもよい。
【0016】
供給された純水及びエアは、図1に矢印で示すように、気液混合室7内の複数の突条9及び凹溝10、12や円錐部材11などによってランダムな方向に飛散しながら加圧状態で強制的に混合される。混合された気液は、超微小吐出口20を強制的に通過させられる過程で、ナノバブルを大量に含むナノ流体となり、弁室B及び吐出空間Cを介して吐出口6から外部に吐出される。
【0017】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0018】
例えば、貯留タンク3を省略し、液体及び気体の加圧装置から加圧された液体及び気体を夫々インジェクタ2に直接供給するようにしてもよい。この場合は、気液を供給してからインジェクタ2内の圧力や気液の割合等が安定するまで多少時間がかかるが(数十秒〜数分程度)、一旦安定した後は、上記貯留タンク3を介した場合と同様にナノ流体を連続的に生成できるようになる。
【0019】
また、ナノ化させる流体は、純水や空気に限らず、用途に応じて種々の液体、気体(オゾン、酸素等)を採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るナノ流体生成装置の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が1μm未満の気泡(ナノバブル)を含むナノ流体を生成する装置であって、
気体と液体とを混合する気液混合室と、
この気液混合室に加圧した液体及び気体を供給する加圧手段と、を備え、
前記気液混合室は、この室内に設けられ、供給された液体及び気体に乱流を発生させて強制的に混合するための乱流発生手段と、強制的に混合された混合流体を吐出する超微小吐出口とを有する
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1のナノ流体生成装置において、
前記超微小吐出口は、流路表面が平滑に研磨されたプラチナ金属で形成されることを特徴とする装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−90156(P2007−90156A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279914(P2005−279914)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(505361646)
【Fターム(参考)】