説明

ナノ炭素の製造方法およびナノ炭素製造用触媒反応装置

【課題】低級炭化水素を原料として触媒反応によりナノ炭素を安定して、かつ連続的に製造することを可能にする。
【解決手段】圧力反応容器となるスクリュフィーダ本体1aと、フィーダ本体1a内に触媒20を導入する触媒供給部5、6、7と、フィーダ本体1a内に低級炭化水素を導入する低級炭化水素供給部3、4と、フィーダ本体1a内において触媒と低級炭化水素の熱分解によって生成したナノ炭素をその回転のみによって移相するスクリュ1bと、スクリュ1bによって移送される触媒とナノ炭素をフィーダ本体1a外に送出する固体送出部10と、未反応低級炭化水素と熱分解によって生成した水素をフィーダ本体1a外に送出する気体送出部11を備える。径時的に成長するナノ炭素を使用済触媒と共に連続的に反応容器外に排出し、それと同量の未使用触媒を供給することで転化率を一定にして効率よく連続反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、メタンなどの低級炭化水素を原料として触媒反応によって前記原料を直接分解してナノ炭素と水素とを製造するナノ炭素の製造方法およびナノ炭素製造用触媒反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、低級炭化水素を原料としてナノ炭素を製造する装置として例えば特許文献1に開示された二酸化炭素固定装置が知られている。この固定装置では、原料としてメタンと二酸化炭素を使用し、主に二酸化炭素を固定化する事を目的としたものであり、既存のBosch反応と呼ばれる反応方式の応用で炭素と水を製造するプロセスを採用している。また、この装置では、反応を連続的に行うために流動層方式を採用し、触媒上で成長する炭素と触媒を連続的にいわゆる遠心分離方式で分離し抜き出す方法を採っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−182121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、触媒を使用する化学反応器は、大別すると固定床、移動床、流動床の3タイプのいずれかを使用するが、どのタイプにおいても触媒は反応によってそれ自体変化しない。しかし、低級炭化水素を触媒の存在下で反応させてナノ炭素を製造するプロセス(以下本プロセスという)は、反応が進むと使用する微細な金属触媒を頭にして機能性ナノ炭素が成長することで、触媒自体の体積が増大する触媒反応プロセスである。そのため、固定床方式を本プロセスに用いると、反応空間内が次第に成長する炭素で一杯になって閉塞し、原料ガスが流れなくなり連続反応が行えないという問題がある。また、通常の移動床は基本的にストーカー炉などに代表されるように大型の燃焼装置としての利用が主で、過剰の空気を送り可燃物質を燃焼させる過程で反応が発熱反応であることから継続的に反応が進行する。しかし、本プロセスは吸熱反応であり、通常の移動床方式を適用することは反応効率およびエネルギ効率が悪く高コストとなる。また、流動床タイプは流動状態を常に最適にするために床の触媒粒度分布を最適化する必要があるが、本プロセスは経時的に触媒体積と重量が変化する事から、これを制御することは困難である。
【0005】
そこで、特許文献1で示される方式の様に遠心分離を備えた流動層で連続的に成長する触媒を抜き出す必要がある。そして、触媒層を浮遊させたり旋回させる場合に流動ガスとして原料ガスを兼用で利用する時に、ガスの流速は流動最適化条件と反応最適化条件の両方満たす必要がある。しかし、本プロセス反応は反応速度がそれほど速くなく、原料ガスのSV値は低い条件の方が望ましい。一方、サイクロンの使用や旋回流動状態を作り出すためにはガス流速は、最適反応に求められるSV値にするための流速より速い値が求められる。このため、上記遠心分離式の流動層では本プロセスを効率的に実行することは困難である。さらに、流動層装置は装置が大型になるため建設コストが高く、触媒反応は他の方式でどうしても実施できない反応を流動床方式にすることが一般的である。
【0006】
本発明は上記のような従来のものの課題を解決するためになされたものであり、本プロセスにおいて最適な条件で連続的に触媒反応を継続することを基本的な目的とする。さらに、本発明は、バージン触媒を連続的に反応器に補充することで反応容器入口と出口のマテリアルバランスから算出される低級炭化水素の転化率を一定にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明のナノ炭素の製造方法のうち請求項1記載の発明は、スクリューフィーダーにより低級炭化水素と触媒とを両者が向流または対向流の状態で接触するように連続的に供給し、前記スクリューフィーダ内で前記触媒上で前記低級炭化水素を熱分解するとともに、前記熱分解により前記触媒上に生成されたナノ炭素と触媒の複合物質をスクリューの回転のみによってスクリューフィーダの下流側に連続的に移送して前記スクリューフィーダの下流端側でスクリューフィーダ外に送出することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載のナノ炭素の製造方法の発明は、請求項1記載の発明において、前記触媒が、ニッケル、鉄の一方または両方からなる第一金属若しくは前記第一金属にパラジウム、コバルトの一方または両方からなる第二金属を添加したものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載のナノ炭素の製造方法の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記触媒の形状が、球状、箔状、ウィスカー状、アモルファス形状であり、それを単独または組み合わせて使用することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載のナノ炭素製造用反応装置の発明は、圧力反応容器となる筒状のスクリューフィーダ本体と、該スクリューフィーダ本体内に触媒を導入する触媒供給部と、前記スクリューフィーダ本体内に原料となる低級炭化水素を導入する低級炭化水素供給部と、前記フィーダ本体内において前記触媒と前記低級炭化水素の熱分解によって生成されたナノ炭素とをその回転のみによって移送するために前記スクリューフィーダ本体内に回転可能に配置された1本または複数本のスクリューと、前記スクリューによって移送される前記触媒と前記ナノ炭素とを前記スクリューフィーダ本体外に送出するために前記スクリューフィーダ本体に設けられた固体送出部と、未反応低級炭化水素と前記熱分解によって生成された水素とを前記スクリューフィーダ本体外に送出するために前記スクリューフィーダ本体に設けられた気体送出部とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載のナノ炭素製造用反応装置の発明は、請求項4記載の発明において、前記触媒供給部は、単位時間当たり一定量の触媒を前記スクリューフィーダ本体に供給可能な触媒定量供給装置を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載のナノ炭素製造用反応装置の発明は、請求項4または5に記載の発明において、前記固体送出部から送出された前記ナノ炭素を分離回収する分離回収装置と、前記気体送出部から送出された未反応低級炭化水素と水素とを後工程に供給する気体供給路とを備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載のナノ炭素製造用反応装置の発明は、請求項4〜6のいずれかに記載の発明において、前記スクリューフィーダ本体内の温度を調整する加熱手段と、該スクリューフィーダ本体内の圧力を調整する圧力調整手段と、前記スクリューフィーダ本体内に供給される低級炭化水素の流量を調整する流量調整手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載のナノ炭素製造用反応装置の発明は、請求項4〜7のいずれかに記載の発明において、前記スクリューと反応容器は、長手方向に縦置きまたは横置きであることを特徴とする。
【0015】
すなわち、本発明によれば、スクリューフィーダ内に連続的に導入される低級炭化水素が触媒反応によって熱分解し、ナノ炭素と水素とが生成される。該熱分解によって、通常の触媒反応ではそれ自体変化しない微細な触媒を頭頂部にして、該触媒と同程度の直径のナノ炭素が細径のまま長さ方向に成長する。触媒の微細程度にもよるが、直径で100nm以下のナノ炭素を製造することが可能である。上記した触媒とナノ炭素とは、スクリューによって連続的に下流側に移送され、下流端側でフィーダ外に効率的に送出される。また、その一方で、上記熱分解によって生成された水素と未反応の低級炭化水素がスクリューフィーダ外に移送される。上記のように触媒とナノ炭素とは連続的にスクリューフィーダ外に送出されるので、生成した炭素によりスクリューフィーダ内への原料低級炭化水素の流入が妨げられるほどの圧力損失が生じるのを防ぐ。スクリューフィーダでは、上記した触媒およびナノ炭素の送出と低級炭化水素および水素の送出がなされるとともに、原料となる低級炭化水素と未使用の触媒とが連続的に導入される。これにより転化率が一定となる触媒反応が連続して、かつ安定して遂行される。
【0016】
なお、本発明で用いられる低級炭化水素としては代表的にメタンが挙げられ、その他にエタン、プロパン、ブタンなどが例示される。なお、低級炭化水素を単一種の他、複合種であっても良い。また、上記低級炭化水素の分解に用いられる触媒種も特定のものに限定されるものではない。代表的には、ニッケル、鉄の一方または両方からなる第一金属で構成することができ、さらに、第一金属にパラジウム、コバルトの一方または両方からなる第二金属を添加したものを例示することができる。該触媒には微細形状としたものが望ましく、例えば、粒径が数nm〜数100nmの微小金属触媒を単独で、または、粒子径数μm〜数100μmの粉状にしたアルミナやシリカ担体に前記微小金属触媒を担持したものを用いることができる。また、使用する触媒の形状は上記で規定されるものではないが、できれば均一な径で球形状のものを使用するとガスとの接触面積が大きくなるので望ましい。
【0017】
上記低級炭化水素と触媒とを収容して触媒反応を行う反応容器としてはスクリューを内蔵したスクリューフィーダが用いられる。該スクリューフィーダは、スクリューの回転によってスクリューフィーダ本体内の収容物を移送するものであり、その構造は特定のものに限定されない。スクリューは一軸または2軸以上のものであってもよい。スクリューは、回転数の調整や前後動作によって収容物の滞留時間を調整できるものであってもよい。滞留時間を長くすることによって炭素の成長度を表すカーボン・金属比(生成炭素のモル数を触媒金属のモル比で除した値)を大きくすることができる。
また、スクリューフィーダーのスクリューの軸中心部に貫通孔を形成し、スクリューの歯のピッチ間にその孔から続く小孔を設けることで、原料ガスをスクリューの一方の中心孔から歯のピッチ間に開けられた孔に噴出させて触媒との接触を促進することができる。 前記スクリューと反応容器の形状をルーローの定幅図形で定義される組合せとすることができる。前記スクリューフィーダーは長手方向に進むにつれて、スクリュー歯のピッチが広くまたは狭くなったり、スクリューの歯の高さが小さくまたは大きくなったりする構成を採用することで長手方向での移送速さや移送力を変えることができる。
スクリューフィーダには、単位時間当たりで一定量の触媒を供給するのが望ましく、該供給は、触媒定量供給装置によって実行することができる。該触媒定量供給装置の構成は本発明としては特に限定されるものではなく、ロータリ式供給装置など、既知のものを例示することができる。また、上記スクリューフィーダには、一定の流量で低級炭化水素を供給するのが望ましく、該供給は適宜の定量供給装置によって実行することができる、該定量供給装置の構成が本発明として限定されるものでもない。なお、好適な触媒の定量供給量は、改質するガス量に依存し、SV値が1000〜500000ml/g−cat/hを満足する量である。
【0018】
また、上記スクリューフィーダには、所定流量の低級炭化水素を流通させるのが望ましい。この流量としては、触媒に対する指標であるSV値で1000〜500000ml/g‐触媒/hの条件が示される。この値が1000未満であると、装置が大きくなり高コストとなり、500000を超えると触媒性能が低下するため、上記範囲が好適である。
なお、同様の理由で下限として3000ml/g−cat/h、上限として50000ml/g−cat/h程度が望ましい。
【0019】
また、反応容器として機能するスクリューフィーダは、スクリューフィーダ本体内の温度と圧力を適切に管理することで効率的な触媒反応を得ることができる。
スクリューフィーダ本体内の温度は、加熱手段の動作によって制御することができる。加熱手段としてはヒータ、加熱炉などを用いることができ、本発明としては特定のものに限定されない。例えばスクリューフィーダ本体から排出される未使用の低級炭化水素の燃焼熱を利用するものであってもよい。スクリューフィーダ本体における好適な加熱温度は400〜900℃である。これは、400℃未満であると、触媒反応が円滑になされず、
一方、900℃を越えると触媒の熱的破壊が起こるか装置が高温用の材料で設計を行う必要から高コストになるためである。なお、同様の理由で下限を600℃、上限を800℃とするのが望ましい。
さらに、スクリューフィーダでは、圧力調整手段の動作によってフィーダ本体内の圧力を調整することができる。該圧力調整手段としては、背圧調整器などを用いることができるが、本発明としては特定のものに限定されるものではない。好適な圧力は10気圧以下である。これは圧力が10気圧を超えると高圧ガス取り締まり法上、装置として高圧ガス仕様の設計が必要で装置が高コストになることと化学平衡上圧力が上がると転化率が下がり反応としては不利になるためである。
【0020】
なお、スクリューフィーダの移送に際しては、その移送速度は特に限定されないが、連続的な反応を行うため、スクリューフィーダから送出される使用済触媒量と、スクリューフィーダに供給される未使用(バージン)触媒量とは同じになるように設定される。
【0021】
スクリューフィーダから送出される物質はナノ炭素上に触媒金属を持つ複合物質であり、アルミナ等の担体を持つ触媒の場合はさらに前記物質と担体の複合物質となっている。
ナノ炭素のみを必要とする場合は担体が無い無担持触媒(特願2003−57240)の場合であれば、生成した複合物質を酸で洗浄する事でナノ炭素のみを取出す事が出来る。
【0022】
また、スクリューフィーダから送出される未反応の低級炭化水素と、熱分解によって生成された水素とは、後工程に供給することができ、ここで水素を分離回収したり、低級炭化水素を再利用したりすることができる。水素の供給は気体供給路によって行うことができる。本発明としては後工程の内容が特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明のナノ炭素の製造方法によれば、スクリューフィーダの上流側に低級炭化水素と触媒とを連続的に供給し、前記スクリューフィーダ内で前記触媒上で前記低級炭化水素を熱分解するとともに、前記触媒上に前記熱分解により生成されたナノ炭素とをスクリューの回転のみによってスクリューフィーダの下流側に連続的に移送して前記スクリューフィーダの下流端側でスクリューフィーダ外に送出するので、経時的に触媒を頭頂部として成長するナノ炭素を連続的に反応管外に排出し、それと同量の未使用触媒を供給することで効率良く連続反応を行わせることができる。
また、本反応では経時的または反応条件に依存して触媒表面または成長した炭素の中に取り込まれて反応に関わる部分が減少することから触媒反応が進行しにくくなるが、本発明では触媒としては反応が進みにくくなった物質ではあるが、製品としては完成したナノ炭素という二面性を有する触媒兼製品を反応容器外へ抜き出し、未使用触媒を補充することで反応容器入口と出口での低級炭化水素の転化率を一定にすることができる。
【0024】
また、本発明のナノ炭素製造用反応装置によれば、圧力反応容器となる筒状のフィーダ本体と、該フィーダ本体内に触媒を導入する触媒供給部と、前記フィーダ本体内に原料となる低級炭化水素を導入する低級炭化水素供給部と、前記フィーダ本体内において前記触媒と前記低級炭化水素の熱分解によって生成されたナノ炭素とをその回転のみによって移送するために前記フィーダ本体内に回転可能に配置されたスクリューと、前記スクリューによって移送される前記触媒と前記ナノ炭素とを前記フィーダ本体外に送出するために前記フィーダ本体に設けられた固体送出部と、未反応低級炭化水素と前記熱分解によって生成された水素とを前記フィーダ本体外に送出するために前記フィーダ本体に設けられた気体送出部とを備えるので、上記効果が確実に得られるとともに、装置のコンパクトな設計が可能となり装置を安価に構成できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態におけるスクリューフィーダ式触媒反応器を示す概念図である。
【図2】同じく実施例においてメタンを改質した際のメタン転化率の経時変化を示す図である。
【図3】同じく実施例によって得られたナノ炭素を示す図面代用写真である。
【図4】同じく、実施例においてメタンを分解する前後での触媒XRD分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の一実施形態を添付図に基づいて説明する。
図1にスクリューフィーダ式触媒反応装置の概念図を示す。
該反応装置は、スクリューフィーダ本体1a内にスクリュー1bを内蔵したスクリューフィーダ1を備えており、前記スクリュー1bは、外部のモータ2によって回転駆動となっている。
前記スクリューフィーダ1外部には、メタンなどの低級炭化水素を供給する圧送装置3が設けられており、該圧送装置3からスクリューフィーダ本体1aの上流端に設けたガス入口4に上記低級炭化水素が供給されるように構成されている。上記ガス入口4および圧送装置3は、本発明の低級炭化水素供給部を構成しており、前記圧送装置3は、さらに圧力調整手段として機能する。また、スクリューフィーダ本体1aの上流端側には、触媒投入部5が設けられており、該触媒投入部5には、ロータリフィーダ6が接続され、該ロータリフィーダ6に、触媒を収容するホッパ7が接続されている。上記触媒投入部5、ロータリフィーダ6、ホッパ7は、触媒供給部を構成しており、さらにロータリフィーダ6は、触媒定量供給装置として機能している。
【0027】
さらに前記スクリューフィーダ本体1aの外周には、加熱手段を構成する電気ヒータ8がスクリューフィーダ本体1aの周囲を囲むようにして配置されており、さらに前記スクリューフィーダ本体1aの下流端には、それぞれ固体送出部10と気体送出部11とが設けられている。固体送出部10では、前記スクリュー1bで移送される、反応に用いられた触媒と反応によって生成されたナノ炭素とがスクリューフィーダ本体1a外に送出され、気体送出部11では、上記反応によって生成された水素と未反応の低級炭化水素とがスクリューフィーダ本体1a外に送出される。固体送出部10には、触媒と触媒上に生成されたナノ炭素を回収する回収部13が接続されている。気体送出部11には、後工程に水素と未反応低級炭化水素とを供給する気体供給管15が接続されている。
【0028】
以下に、上記反応装置を用いたナノ炭素の製造過程について説明する。
先ずホッパ7に未使用の触媒20として微細化したニッケルを収容し、ロータリフィーダ6によって、単位時間当たり一定量の触媒20を触媒投入部5を通してスクリューフィーダ本体1a内に供給する。一方、圧送装置3からは、低級炭化水素としてメタンを圧送して、同じくスクリューフィーダ本体1a内に供給する。この際にメタンの流量は、SV値で1000〜500000ml/g‐catal./hとする。また、上記供給に合わせて電気ヒータ8を動作させ、スクリューフィーダ本体1a内を400〜900℃に加熱する。また、これに合わせてモータ2を動作させ、スクリュー1bを回転させて、図示左方から右方に向けて収容物を移送可能にする。
【0029】
スクリューフィーダ本体1a内に収容された触媒は、スクリュー1bの回転によって回転しながら下流方向へと移送される。触媒20はスクリュー1bにより移送されながら、スクリューフィーダ本体1a内に供給された上記低級炭化水素と向流又は対向流の状態で接触し、該低級炭化水素は水素と未反応ガスおよびナノ炭素30となる。この際には、スクリューフィーダ本体1a内の圧力は10気圧以下に制御されている。スクリューフィーダ本体1a内では、低級炭化水素の分解によって触媒20を頭頂部としてナノ炭素が成長しつつ膨張し、さらに下流側へと移送される。ナノ炭素と触媒の複合物質30とは固体送出部10を通してスクリューフィーダ本体1a外へと送り出され、回収部13に回収される。一方、反応によって生成された水素と未反応のガスとは、気体送出部11を通してスクリューフィーダ本体1a外へと送り出され、ガス供給管15を通して後行程に供給される。
【0030】
上記一連の動作では、連続して未使用の触媒および低級炭化水素が供給され、その一方で、使用済触媒上に生成したナノ炭素および生成された水素と未反応ガスとが排出されるので連続した分解反応がなされる。また、反応容器であるスクリューフィーダ本体1aの出入口で同量の触媒が出入りするので、一定した転化率で安定した反応が継続する。
【実施例1】
【0031】
次に、図1に示したスクリュー式触媒反応装置を使用してメタンを改質した例を説明する。この例では、スクリューフィーダ本体内を650℃、0.2MPaGに調整し、メタンの流量をSV値で約3000ml/g−Ni/hとした。
動作の経過時間と、転化率との関係を図2に示した。通常であれば経時的に触媒性能が低下していくのであるが、この実施例では未使用触媒が連続的に供給されていることから転化率は一定である。また、スクリューフィーダにより一定量の未使用触媒が供給され、生成したナノ炭素が詰まらず押し出されていることで、反応管内が閉塞せず反応が連続的に進行することが明らかになっている。
【0032】
図3は反応により生成したナノ炭素のSEM写真であり、直径がナノオーダの機能性ナノ炭素が生成されていることが分かる。
図4は未使用触媒と生成したナノ炭素を含む使用済触媒のXRDによる分析結果例である。結果から、使用済触媒には、未使用触媒には見られない、メタン分解により生成した炭素が2θ=26°付近に観測されており、ナノ炭素が効果的に生成されていることが分かる。
以上、本発明について上記実施形態および実施例に基づいて説明したが、本発明は上記説明のものに限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 スクリューフィーダ
1a スクリューフィーダ本体
1b スクリュー
2 モータ
3 圧送装置
4 ガス入口
5 触媒投入部
6 ロータリフィーダ
7 ホッパ
8 電気ヒータ
10 固体送出部
11 気体送出部
13 ナノ炭素回収容器
15 気体送出管
20 触媒
30 ナノ炭素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューフィーダーにより低級炭化水素と触媒とを両者が向流または対向流の状態で接触するように連続的に供給し、前記スクリューフィーダ内で前記触媒上で前記低級炭化水素を熱分解するとともに、前記熱分解により前記触媒上に生成されたナノ炭素と触媒の複合物質をスクリューの回転のみによってスクリューフィーダの下流側に連続的に移送して前記スクリューフィーダの下流端側でスクリューフィーダ外に送出することを特徴とするナノ炭素の製造方法。
【請求項2】
前記触媒が、ニッケル、鉄の一方または両方からなる第一金属若しくは前記第一金属にパラジウム、コバルトの一方または両方からなる第二金属を添加したものであることを特徴とする請求項1記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項3】
前記触媒の形状が、球状、箔状、ウィスカー状、アモルファス形状であり、それを単独
または組み合わせて使用することを特徴とする請求項1または2に記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項4】
圧力反応容器となる筒状のスクリューフィーダ本体と、該スクリューフィーダ本体内に触媒を導入する触媒供給部と、前記スクリューフィーダ本体内に原料となる低級炭化水素を導入する低級炭化水素供給部と、前記フィーダ本体内において前記触媒と前記低級炭化水素の熱分解によって生成されたナノ炭素とをその回転のみによって移送するために前記スクリューフィーダ本体内に回転可能に配置された1本または複数本のスクリューと、前記スクリューによって移送される前記触媒と前記ナノ炭素とを前記スクリューフィーダ本体外に送出するために前記スクリューフィーダ本体に設けられた固体送出部と、未反応低級炭化水素と前記熱分解によって生成された水素とを前記スクリューフィーダ本体外に送出するために前記スクリューフィーダ本体に設けられた気体送出部とを備えることを特徴とするナノ炭素製造用反応装置。
【請求項5】
前記触媒供給部は、単位時間当たり一定量の触媒を前記スクリューフィーダ本体に供給可能な触媒定量供給装置を備えることを特徴とする請求項4記載のナノ炭素製造用反応装置。
【請求項6】
前記固体送出部から送出された前記ナノ炭素を分離回収する分離回収装置と、前記気体送出部から送出された未反応低級炭化水素と水素とを後工程に供給する気体供給路とを備えることを特徴とする請求項4または5に記載のナノ炭素製造用反応装置。
【請求項7】
前記スクリューフィーダ本体内の温度を調整する加熱手段と、該スクリューフィーダ本体内の圧力を調整する圧力調整手段と、前記スクリューフィーダ本体内に供給される低炭化水素の流量を調整する流量調整手段とを備えることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のナノ炭素製造用反応装置。
【請求項8】
前記スクリューと反応容器は、長手方向に横置きであることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のナノ炭素製造用反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−116656(P2011−116656A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55448(P2011−55448)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2005−114302(P2005−114302)の分割
【原出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年2月22日 社団法人化学工学会発行の「化学工学会第70年会(2005) 研究発表講演要旨集」に発表
【出願人】(504238806)国立大学法人北見工業大学 (80)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】