Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
ナノ炭素含有繊維及びナノ炭素構造体繊維の製造方法並びにそれらの方法で得られたナノ炭素含有繊維及びナノ炭素構造体繊維
説明

ナノ炭素含有繊維及びナノ炭素構造体繊維の製造方法並びにそれらの方法で得られたナノ炭素含有繊維及びナノ炭素構造体繊維

【課題】カーボンナノチューブ等のナノ炭素材料自体の特性を損なうことなく、繊維中でナノ炭素材料が繊維の長手方向に配向して存在し、優れた導電性を備えたナノ炭素含有繊維及びその製造方法、それから得られるナノ炭素構造体繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、溶媒(C)及び、前記導電性ポリマー(A)とは異なる高分子化合物(D)を含有するナノ炭素含有組成物を電界紡糸する、ナノ炭素含有繊維を製造する方法。該ナノ炭素含有繊維を加熱することにより、前記導電性ポリマー(A)及び高分子化合物(D)を焼失させる、ナノ炭素構造体繊維を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ炭素含有繊維及びナノ炭素構造体繊維の製造方法並びにそれらの方法で得られたナノ炭素含有繊維及びナノ炭素構造体繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ炭素材料であるカーボンナノチューブ、水溶性導電性ポリマー、溶媒からなる組成物、及び該組成物から製造される複合体(導電体)が知られている(特許文献1)。この組成物及び複合体は、水溶性導電性ポリマーを共存させることにより、カーボンナノチューブ自体の特性を損なうことなく、カーボンナノチューブを水、有機溶剤、含水有機溶媒等の溶媒に分散化又は可溶化することができ、長期保存安定性に優れる。
【0003】
これらの水溶性導電性ポリマーが共存しているカーボンナノチューブ含有組成物を凝固浴中に押し出す湿式紡糸をし、延伸してカーボンナノチューブ含有繊維が得られることが報告されている(特許文献2)。この繊維は、従来からの湿式紡糸法のため、単繊維径は数十ミクロン以上となり、電池材料の電極材料等に用いる場合、比表面積が小さくて十分な特性が発現できないという問題がある。また、カーボンナノチューブ以外に分散剤である水溶性導電性ポリマーやバインダーポリマーである高分子化合物が共存しておりカーボンナノチューブ自体の導電性等の特性が十分に発揮することができないという課題もある。
【0004】
また、カーボンナノファイバー、分散剤、アクリロニトリル系重合体及び溶剤とからなる紡糸原糸を紡糸口金から吐出し固化させアクリル繊維を製造した後、更に該アクリル繊維を焼成して得られる炭素繊維が報告されている(特許文献3)。この炭素繊維も従来の紡糸法のため、単繊維径は数ミクロン以上となり、カーボンナノチューブ以外に分散剤である水溶性導電性ポリマーやバインダーポリマーであるアクリロニトリル系重合体が共存しておりカーボンナノチューブ自体の特性が十分に発揮することができないという課題がある。
【0005】
一方、単層カーボンナノチューブをジメチルホルムアミド中に分散した後、ポリアクリロニトリルを添加して紡糸溶液を調製し、これを電界紡糸することによりカーボンナノチューブを含有したナノファイバーを製造する方法が報告されている。更にこのナノファイバーを熱処理してナノサイズの炭素繊維の製造についても報告されている(非特許文献1)。しかし、単層カーボンナノチューブは単にジメチルホルムアミド中で撹拌したため十分に分散しているとは言い難い。また、熱処理についてもポリアクリロニトリルを黒鉛化処理しているため黒鉛化結晶が残存し、単層カーボンナノチューブ自体の特性が発現しないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/039893号パンフレット
【特許文献2】特開2005−105510号公報
【特許文献3】特開2006−200114号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hoa Lam,Polymer Preprints 2003,44(2),156
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カーボンナノチューブを含有する繊維を製造する場合は、紡糸用の溶液中にバインダーポリマーを含有する必要がある。しかし、その場合、カーボンナノチューブは絶縁体であるバインダーポリマーで被覆されてしまいカーボンナノチューブ本来の導電性等の特性が発揮できない。また、湿式紡糸法のため繊維径が数ミクロン以上となってしまい比表面積が小さく、電池の電極材料等に適用できないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、カーボンナノチューブ等のナノ炭素材料自体の特性を損なうことなく、繊維中でナノ炭素材料が繊維の長手方向に配向して存在し、優れた導電性を備えたナノ炭素含有繊維及びそれから得られるナノ炭素構造体繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者はこれらの課題を解決するために鋭意研究をした結果、導電性ポリマーとナノ炭素と溶媒と高分子化合物を共存したナノ炭素含有組成物を用いて電界紡糸を行うことによって、繊維径がナノレベルのナノ炭素含有繊維が得られ、更にこのナノ炭素含有繊維を焼成することによって、実質的にナノ炭素材料自体から構成されるナノ炭素構造体繊維が得られることを見出した。
【0011】
すなわち本発明の第一は、導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、溶媒(C)及び、前記導電性ポリマー(A)とは異なる高分子化合物(D)を含有するナノ炭素含有組成物を電界紡糸する、ナノ炭素含有繊維を製造する方法である。
また、上記ナノ炭素含有組成物に、塩基性化合物を含有させることによって、紡糸性を向上することが可能である。
【0012】
本発明の第二は、ナノ炭素含有繊維を加熱することにより、前記導電性ポリマー(A)及び高分子化合物(D)を焼失させる、ナノ炭素構造体繊維を製造する方法である。
【0013】
本発明の第三は、本発明の第一の方法により製造されたナノ炭素含有繊維からなるシート状又は撚糸状構造体である。
【0014】
本発明の第四は、本発明の第二の方法により製造されたナノ炭素構造体繊維からなるシート状又は撚糸状構造体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法により製造されたナノ炭素含有繊維及びそれから得られるナノ炭素構造体繊維は、繊維径がナノレベルからミクロンレベルまで紡糸条件を制御することにより任意に調整可能である。特に繊維径がナノレベルの場合は比表面積が大きく、ナノ炭素材料自体の特性を損なうことなく優れた導電性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1で得られたナノ炭素含有繊維からなるシート状構造体のSEM写真である。
【図2】実施例1で得られたナノ炭素含有繊維からなる配列繊維のSEM写真である。
【図3】実施例1で得られたナノ炭素含有繊維からなる撚糸状構造体のSEM写真である。
【図4】実施例1で得られたナノ炭素含有繊維のTEM写真である。
【図5】比較例1で得られた繊維からなるシート状構造体のSEM写真である。
【図6】実施例3で得られたナノ炭素含有繊維からなるシート状構造体のSEM写真である。
【図7】実施例4で得られたナノ炭素含有繊維からなる撚糸状構造体のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の詳細を説明する。
【0018】
<ナノ炭素含有組成物>
[導電性ポリマー(A)]
導電性ポリマー(A)は、スルホン酸基及び/又はカルボキシ基等の酸性基を有する導電性ポリマーである。上記導電性ポリマー(A)は、ナノ炭素材料(B)の溶解性・分散性を向上させ、安定なナノ物質含有組成物とすることで、結果として得られる繊維や不織布の透明性や導電性等を更に向上させる役割を果たす。
【0019】
上記導電性ポリマー(A)としては、フェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、カルバゾリレン等を繰り返し単位として含むπ共役系高分子を用いることができる。この中でも、特にチエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、イソチアナフテンを含む骨格を有する導電性ポリマーであることが好ましい。
【0020】
上記導電性ポリマー(A)は、溶解性、導電性、成膜性等の観点から、酸性基を有するπ共役系の導電性ポリマー又はその塩として用いることができ、前者として用いることが好ましい。ここで、酸性基を有する導電性ポリマー(A)としては、π共役系高分子の骨格又は該高分子中の窒素原子上に、酸性基、酸性基で置換されたアルキル基、又は酸性基で置換された、エーテル結合を含むアルキル基を有している導電性ポリマーが挙げられる。
【0021】
また、導電性ポリマー(A)の塩としては、導電性ポリマー(A)とアンモニウム塩類及び/又はアミン類と反応させることにより、酸性基をスルホン酸基のアンモニウム塩(−SO)及び/又はカルボキシ基のアンモニウム塩(−COO)としたものを用いることができる。ここで、前記アンモニウム塩のアンモニウムイオン(M)は、下記一般式(1)で示されるものである。
【0022】
【化1】

【0023】
(式(1)中、R〜Rは各々独立に水素、炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基、フェニル基、ベンジル基、ROH、CONH又はNHであり、R〜Rのうち少なくとも一つが炭素数5以上の基である。なお、Rは炭素数1〜24のアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基である。)
【0024】
上記導電性ポリマー(A)としては、特開昭61−197633号公報、特開昭63−39916号公報、特開平01−301714号公報、特開平05−504153号公報、特開平05−503953号公報、特開平04−32848号公報、特開平04−328181号公報、特開平06−145386号公報、特開平06−56987号公報、特開平05−226238号公報、特開平05−178989号公報、特開平06−293828号公報、特開平07−118524号公報、特開平06−32845号公報、特開平06−87949号公報、特開平06−256516号公報、特開平07−41756号公報、特開平07−48436号公報、特開平04−268331号公報、特開平09−59376号公報、特開2000−172384号公報、特開平06−49183号公報、特開平10−60108号公報に示された水溶性導電性ポリマーが好ましく用いられる。
【0025】
また、好ましい導電性ポリマー(A)としては、下記一般式(2)〜(10)から選ばれた少なくとも一種以上の繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含有する導電性ポリマーが挙げられる。
【0026】
【化2】

【0027】
(式(2)中、R、Rは各々独立に、H、−SO、−SO3、−SOH、−RSO、−RSO、−RSOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R、−NHCOR、−OH、−O、−SR、−OR、−OCOR、−NO、−COO、−COOH、−RCOOH、−RCOO、−COOR、−COR、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mは前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、Rは炭素数1〜24のアルキル、アリールもしくはアラルキル基又はアルキレン、アリーレンもしくはアラルキレン基であり、かつR、Rのうち少なくとも一つが−SO、−SOH、−RSO、−RSOH、−COOH、−RCOOH、及び−SO、−RSO、−COO、−RCOOからなる群より選ばれた基である。)
【0028】
【化3】

【0029】
(式(3)中、R、R10は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SO、−R11SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R11、−NHCOR11、−OH、−O、−SR11、−OR11、−OCOR11、−NO、−COO、−COOH、−R11COOH、−R11COO、−COOR11、−COR11、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mは前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R11は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR、R10のうち少なくとも一つが−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOH、−R11COOH、及び−SO、−R11SO、−COO、−R11COOからなる群より選ばれた基である。)
【0030】
【化4】

【0031】
(式(4)中、R12〜R15は各々独立にH、−SO、−SO、−SOH、−R16SO、−R16SO、−R16SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R16、−NHCOR16、−OH、−O、−SR16、−OR16、−OCOR16、−NO、−COO、−COOH、−R16COOH、−R16COO 、−COOR16、−COR16、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mは前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R16は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR12〜R15のうち少なくとも一つが−SO、−SOH、−R16SO、−R16SOH、−COOH、−R16COOH、及び−SO、−R16SO、−COO、−R16COOからなる群より選ばれた基である。)
【0032】
【化5】

【0033】
(式(5)中、R17〜R21は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R22SO、−R22SO、−R22SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R22、−NHCOR22、−OH、−O、−SR22、−OR22、−OCOR22、−NO、−COO、−COOH、−R22COOH、−R22COO、−COOR22、−COR22、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mは前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R22は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR17〜R21のうち少なくとも一つが−SO、−SOH、−R22SO、−R22SOH、−COOH、−R22COOH、及び−SO、−R22SO、−COO、−R22COOからなる群より選ばれた基である。)
【0034】
【化6】

【0035】
(式(6)中、R23は、−SO、−SOH、−R24SO、−R24SOH、−COOH、−R24COOH、及び−SO、−R25SO、−COO及び−R25COOからなる群より選ばれ、ここで、Mは前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R24は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、R25は炭素数1〜24のアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基である。)
【0036】
【化7】

【0037】
(式(7)中、R26〜R31は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R32SO、−R32SO、−R32SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R32、−NHCOR32、−OH、−O、−SR32、−OR32、−OCOR32、−NO、−COO、−COOH、−R32COOH、−R32COO、−COOR32、−COR32、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mは前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R32は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR26〜R31のうち少なくとも一つが−SO、−SOH、−RSO、−R32SOH、−COOH、−R32COOH、及び−SO、−R32SO、−COO、−R32COOからなる群より選ばれた基であり、Htは、NR33、S、O、Se及びTeよりなる群から選ばれたヘテロ原子基であり、R33は水素及び炭素数1〜24の直鎖又は分岐のアルキル基、もしくは置換、非置換のアリール基を表し、R26〜R31の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に少なくとも1つ以上の3〜7員環の飽和又は不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価鎖を形成してもよく、このように形成される環状結合鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノの結合を任意の位置に含んでもよく、nはヘテロ環と置換基R27〜R30を有するベンゼン環に挟まれた縮合環の数を表し、0又は1〜3の整数である。)
【0038】
【化8】

【0039】
(式(8)中、R34〜R42は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R43SO、−R43SO、−R43SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R43、−NHCOR43、−OH、−O、−SR43、−OR43、−OCOR43、−NO、−COO、−COOH、−R43COOH、−R43COO、−COOR43、−COR43、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mは前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R43は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR34〜R42のうち少なくとも一つが−SO、−SOH、−R43SO、−R43SOH、−COOH、−R43COOH、及び−SO、−R43SO、−COO、−R43COOからなる群より選ばれた基であり、nは置換基R34及びR35を有するベンゼン環と置換基R37〜R40を有するベンゼン環に挟まれた縮合環の数を表し、0又は1〜3の整数である。)
【0040】
【化9】

【0041】
(式(9)中、R44〜R53は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R54SO、−R54SO、−R54SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R54、−NHCOR54、−OH、−O、−SR54、−OR54、−OCOR54、−NO、−COO、−COOH、−R54COOH、−R54COO、−COOR54、−COR54、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mは前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R54は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR44〜R53のうち少なくとも一つが−SO、−SOH、−R54SO、−R54SOH、−COOH、−R54COOH、及び−SO、−R54SO、−COO、−R54COOからなる群より選ばれた基であり、nは置換基R44〜R46を有するベンゼン環とベンゾキノン環に挟まれた縮合環の数を表し、0又は1〜3の整数である。)
【0042】
【化10】

【0043】
(式(10)中、R55〜R59は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R60SO、−R60SO、−R60SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R60、−NHCOR60、−OH、−O、−SR60、−OR60、−OCOR60、−NO、−COO、−COOH、−R60COOH、−R60COO、−COOR60、−COR60、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mは前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R60は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR55〜R59のうち少なくとも一つが−SO、−SOH、−R60SO、−R60SOH、−COOH、−R60COOH、及び−SO、−R60SO、−COO、−R60COOからなる群より選ばれた基であり、Xa−は、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、リン酸イオン、ほうフッ化イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンよりなる1〜3価の陰イオン群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンであり、aはXのイオン価数を表し、1〜3の整数であり、pはドープ率であり、その値は0.001〜1である。)
【0044】
また、その他の好ましい導電性ポリマー(A)として、ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフェートが挙げられる。この導電性ポリマーは、導電性ポリマーの骨格にはスルホン酸基は導入されていないが、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸が付加されている構造を有している。また、酸性基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマー(A)としては、ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホン酸アンモニウム又は置換アンモニウム塩を用いることもできる。この導電性ポリマーは、導電性ポリマーの骨格にはスルホン酸アンモニウム塩基は導入されていないが、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩が付加されている構造を有している。
これらの導電性ポリマー(A)の具体例としては、3,4−エチレンジオキシチオフェン(バイエル社製 Baytron M)をトルエンスルホン酸鉄(バイエル社製 Baytron C)等の酸化剤で重合することにより製造されるポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の付加体、又はこの付加体にアミン類又はアンモニアと反応させたものが挙げられる。また、Baytron P(バイエル社製)、又はBaytron Pとアミン類及び/又はアンモニウム類とを反応させて得られたものが挙げられる。
【0045】
また、これらの他の好ましい導電性ポリマー(A)のなかでも、下記一般式(11)で表される繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含むものがより好ましい。
【0046】
【化11】

【0047】
(式(11)中、yは0<y<1の任意の数を示し、R61〜R78は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R79SO、−R79SO、−R79SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R79、−NHCOR79、−OH、−O、−SR79、−OR79、−OCOR79、−NO、−COO、−COOH、−R79COOH、−R79COO、−COOR79、−COR79、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mは前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R79は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、R61〜R78のうち少なくとも一つが−SO、−SOH、−R79SO、−R79SOH、−COOH、−R79COOH、及び−SO、−R79SO、−COO、−R79COOからなる群より選ばれた基である。)
【0048】
上記導電性ポリマー(A)のなかでも、有機溶媒、含水有機溶媒等の溶媒への溶解性が非常に良好である点から、ポリマーの繰り返し単位の総数に対する酸性基を有する繰り返し単位の含有量が50%以上のものが好ましい。酸性基を有する繰り返し単位の含有量は、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0049】
また、芳香環に付加している置換基は、導電性及び溶解性の点から、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基が好ましく、特に、電子供与性を有するアルコキシ基が好ましい。これらの組み合わせの中で最も好ましい導電性ポリマー(A)を下記一般式(12)に示す。
【0050】
【化12】

【0051】
(式(12)中、R80〜R83は、スルホン酸基、カルボキシ基、及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩からなる群より選ばれた1つの基であり、R80〜R83のうち少なくとも一つがスルホン酸基、カルボキシ基、及びこれらのアンモニウム塩からなる群より選ばれた基であり、R84は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ドデシル基、テトラコシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘプトキシ基、ヘクソオキシ基、オクトキシ基、ドデコキシ基、テトラコソキシ基、フルオロ基、クロロ基及びブロモ基からなる群より選ばれた1つの基を示し、xは0<x<1の任意の数を示し、mは重合度を示し3以上である。)
80〜R83としては、中でも、導電性が高い点で、スルホン酸基並びにスルホン酸基のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩が好ましい。
【0052】
本発明における導電性ポリマー(A)は、化学重合又は電解重合等の各種合成法により得ることができる。例えば、本発明者らが提案した特開平7−196791号公報、特開平7−324132号公報に記載の合成方法が適用できる。すなわち、下記一般式(13)で表される酸性基置換アニリン、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩からなる群から選ばれる1つの化合物を、塩基性化合物を含む溶液中で酸化剤により重合させることにより導電性ポリマー(A)を得ることができる。
【0053】
【化13】

【0054】
(式(13)中、R85〜R90は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R91SO、−R91SO、−R91SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R91、−NHCOR91、−OH、−O、−SR91、−OR91、−OCOR91、−COO、−COOH、−R91COOH、−R91COO、−COOR91、−COR91、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mは前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R91は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、R85〜R90のうち少なくとも一つが−SO、−SOH、−R91SO、−R91SOH、−COOH、−R91COOH、及び−SO、−R91SO、−COO、−R91COOからなる群より選ばれた基である。)
【0055】
特に好ましい導電性ポリマー(A)は、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩を、塩基性化合物を含む溶液中で酸化剤により重合させることにより得られる導電性ポリマーである。
【0056】
また、導電性ポリマー(A)から、スルホン酸基のアンモニウム塩及び/又はカルボキシ基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーを合成する簡便な方法としては、下記一般式(14)で示されるアンモニウム塩類及び/又は下記一般式(15)で示されるアミン類と導電性ポリマー(A)とを、溶液中で反応させる方法が挙げられる。
【0057】
【化14】

【0058】
(式(14)中、R101〜R104は各々独立に水素、R105OH、炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはフェニル基、ベンジル基、CONH又はNHであり、かつR101〜R104のうち少なくとも一つが炭素数5以上の基であり、R105は炭素数1〜24のアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、Yb−は水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、アミド硫酸イオン、亜硫酸イオン、ホスフィン酸イオン、リン酸イオン、ピロリン酸イオン、トリポリリン酸イオン、ほうフッ化イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、吉草酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、カンファースルホン酸イオン、酪酸イオン、蟻酸イオン、トリメチル酢酸イオン、ブロモ酢酸イオン、乳酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、シュウ酸イオン、酒石酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、マロン酸イオン、アスコルビン酸イオン、アニス酸イオン、アントラニル酸イオン、安息香酸イオン、ケイ皮酸イオン、フェニル酢酸イオン、フタル酸イオン、アニリンスルホン酸イオン、チオカルボン酸イオン、メチルスルフィン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンよりなる1〜3価の陰イオン群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンを示す。また、bはYのイオン価数であり、1〜3の整数を示し、jは1〜3の整数を示す。)
【0059】
【化15】

【0060】
(式(15)中、R106〜R108は各々独立に水素、炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいは、フェニル基、ベンジル基、R109OH、CONH又はNHであり、かつR106〜R108のうち少なくとも一つが炭素数5以上の基である。なお、R109は炭素数1〜24のアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基である。)
【0061】
アンモニウム塩類としては、塩化ベンザルコニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム等のハロゲン化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジエチルベンジルアンモニウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム等のハロゲン化アルキルジエチルベンジルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム等のハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムが好ましい。
【0062】
また、アミン類としては、ベンジルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジ−n−プロピルアニリン、ジ−iso−プロピルアニリン等のアニリン類が好ましい。
【0063】
導電性ポリマー(A)の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のポリエチレングリコール換算で、2,000〜3,000,000であることが好ましく、3,000〜1,000,000であることがより好ましく、5,000〜500,000であることが特に好ましい。導電性ポリマー(A)の質量平均分子量が2,000以上であれば、十分な膜強度、成膜性、導電性が得られやすい。また、導電性ポリマー(A)の質量平均分子量が3,000,000以下であれば、優れた溶解性が得られやすい。
【0064】
導電性ポリマー(A)は、そのままでも使用できるが、公知の方法の酸によるドーピング処理方法を実施して、外部ドーパントを付与したものを用いてもよい。例えば、酸性溶液中に、導電性ポリマー(A)を含む導電体を浸漬させる等の処理によりドーピング処理を行うことができる。
ドーピング処理に用いる酸性溶液は、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、安息香酸及びこれらの骨格を有する誘導体等の有機酸;ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパン)スルホン酸、ポリビニル硫酸及びこれらの骨格を有する誘導体等の高分子酸を含む水溶液、あるいは、水−有機溶媒の混合溶液が挙げられる。これらの無機酸、有機酸、高分子酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0065】
[ナノ炭素材料(B)]
本発明のナノ炭素材料(B)は、ナノサイズの大きさを有する炭素材料であれば特に限定されない。ナノ炭素材料(B)としては、例えば、フラーレン、金属内包フラーレン、玉葱状フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、ピーポッド、気相成長カーボン(VGCF)、グラファイト、グラフェン、カーボンナノ粒子、ケッチェンブラック等が挙げられる。これらの中でも実用上は、導電性、透明性、繊維中での配向性の点から、カーボンナノチューブが好ましい。
【0066】
カーボンナノチューブは、特に限定されず、通常のカーボンナノチューブを用いることができ、例えば、単層カーボンナノチューブ、何層かが同心円状に重なった多層カーボンナノチューブ、これらがコイル状になったもの等を用いることができる。
【0067】
また、カーボンナノチューブとしては、厚さ数原子の層のグラファイト状炭素原子面を丸めた円筒が、単層又は複数個入れ子構造になったもので、nmオーダーの外径の極めて微小な物質が挙げられる。その他、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーンやその頭部に穴があいたコップ型のナノカーボン物質等も用いることができる。
【0068】
本発明におけるカーボンナノチューブの製造方法は、特に限定されるものではない。具体的には、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、気相成長法、気相流動法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等が挙げられる。
【0069】
カーボンナノチューブとしては、これらの製造方法によって得られる単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブであることが好ましく、各種機能をより発現しやすい点から、更に洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化されたカーボンナノチューブであることがより好ましい。
【0070】
また、ナノ炭素材料(B)としては、前述の材料を、ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等のボール型混練装置等を用いて粉砕しているものや、化学的、物理的処理によって短く切断されているものを用いることもできる。
【0071】
ナノ炭素材料(B)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
[溶媒(C)]
本発明における溶媒(C)は、導電性ポリマー(A)及びナノ炭素材料(B)の溶解性及び分散性をより向上させ、紡糸性、操作性等を向上させる役割を果たす。溶媒(C)は、ナノ炭素材料(B)を溶解又は分散するものであれば特に限定されないが、導電性ポリマー(A)を溶解又は分散するものが好ましい。
【0073】
溶媒(C)としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;ジメチルスルオキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類等;アニリン、N−メチルアニリン等のアニリン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、m−クレゾール、アセトニトリル、テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノールが好ましい。
なかでも、導電性ポリマー(A)の溶解性、ナノ炭素材料(B)の分散性の点から、水又は含水有機溶剤がより好ましく、含水有機溶剤中の有機溶剤としてはアルコール類、ケトン類が好ましく用いられる。
【0074】
[高分子化合物(D)]
また、本発明におけるナノ炭素含有組成物は、導電性ポリマー(A)とは異なる高分子化合物(D)を含有させることにより、紡糸性が向上すると共に、加熱処理によって焼成して得られるナノ炭素構造体繊維を形成する前のナノ炭素含有繊維の強度を向上させることができる。
高分子化合物(D)としては、本発明におけるナノ炭素含有組成物に溶解又は分散できるものであれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール類;ポリアクリルアマイド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアマイド)、ポリアクリルアマイドメチルプロパンスルホン酸等のポリアクリルアマイド類;ポリビニルピロリドン類、ポリスチレンスルホン酸及びそのソーダ塩類、ポリオキシエチレン樹脂、セルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂、フッ素樹脂及びこれらの共重合体等が用いられる。
これらの高分子化合物(D)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
これら高分子化合物(D)の中でも、導電性ポリマー(A)としてスルホン酸基のアンモニウム塩及び/又はカルボキシ基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーを用いる場合は、溶媒への溶解性、組成物の安定性、導電性の点から、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂が好ましく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂のうちの1種又は2種以上を混合して使用することが特に好ましい。また、高分子化合物(D)の分子量としては1万以上のものが好ましい。
【0076】
また、アンモニウム塩を形成させていない酸性基を有する導電性ポリマー(A)を用いる場合は、水溶性高分子化合物又は水系でエマルジョンを形成する高分子化合物の溶媒への溶解性、組成物の安定性、導電性の点から、アニオン基を有する高分子化合物が好ましく、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオキシエチレン樹脂、水系アクリル樹脂、水系ポリエステル樹脂、水系ウレタン樹脂、水系塩素化ポリオレフィン樹脂及び四フッ化エチレン樹脂等の水系フッ素樹脂のうちの1種又は2種以上を混合して使用することがより好ましい。
【0077】
更に、高分子化合物(D)は、塗膜形成工程の後の導電性ポリマー(A)を加熱して焼失させる焼成工程において、導電性ポリマー(A)と同程度の加熱処理条件で焼失する高分子化合物が好ましい。
【0078】
[塩基性化合物(E)]
本発明におけるナノ炭素含有組成物は、前述の導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、溶媒(C)、高分子化合物(D)以外に、塩基性化合物(E)を更に含有させることが好ましい。塩基性化合物(E)は、ナノ炭素含有組成物に添加することで、構成成分である導電性ポリマー(A)を脱ドープし、組成物中への溶解性をより向上させる役割を果たす。また、遊離の酸性基と塩を形成することにより導電性ポリマー(A)の組成物への溶解が特段に向上させるとともに、ナノ炭素材料(B)の組成物への可溶化又は分散化を促進させる。更に導電性ポリマー(A)等の電解質を含有する紡糸溶液の電界紡糸性が向上する。
【0079】
塩基性化合物(E)は、特に限定されないが、アンモニア、脂肪族アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類、アンモニウム塩類、無機塩基が好ましい。
アンモニア及び脂肪族アミン類の構造式を下記一般式(16)に示す。また、アンモニウム塩類の構造式を下記一般式(17)に示す。
【0080】
【化16】

【0081】
(式(16)中、R201〜R203は各々互いに独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、CHOH、CHCHOH、CONH又はNHを表す。)
【0082】
【化17】

【0083】
(式(17)中、R204〜R207は各々互いに独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、CHOH、CHCHOH、CONH又はNHを表し、ZはOH、1/2・SO2−、NO、1/2CO2−、HCO、1/2・(COO)2−、又はR208COOを表し、R208は炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0084】
環式飽和アミン類としては、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、ピペラジン及びこれらの骨格を有する誘導体及びこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物が好ましい。
環式不飽和アミン類としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピロリン及びこれらの骨格を有する誘導体及びこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物が好ましい。
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物塩が好ましい。
【0085】
塩基性化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、アミン類とアンモニウム塩類を混合して用いることにより、得られる繊維や不織布の導電性を更に向上させることができる。具体的には、NH/(NHCO、NH/(NH)HCO、NH/CHCOONH、NH/(NHSO、N(CH/CHCOONH、N(CH/(NHSO等の併用が挙げられる。また、これらの混合比(質量比)は任意の割合とすることができるが、アミン類/アンモニウム塩類=1/10〜10/1であることが好ましい。
【0086】
[界面活性剤(F)]
また、本発明におけるナノ炭素含有組成物には、界面活性剤(F)を更に含有させてもよい。界面活性剤(F)を含有させることにより、ナノ炭素材料(B)の可溶化又は分散化を更に促進させるとともに、紡糸性及び導電性等が向上する。
【0087】
界面活性剤(F)としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩等のアニオン系界面活性剤;第一〜第三脂肪アミン、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム、N,N−ジアルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウム及びこれらの塩等のカチオン系界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩等のアミノカルボン酸類等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイド等の非イオン系界面活性剤;及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。ここで、アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。
これらの界面活性剤(F)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
また、本発明におけるナノ炭素含有組成物には、必要に応じて、更に可塑剤、分散剤、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、保存安定剤、接着助剤、増粘剤、前記導電性ポリマー(A)以外の熱可塑性ポリマー、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、帯電防止剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等の公知の各種物質を含有させてもよい。
また、ナノ炭素含有繊維やナノ炭素構造体繊維の導電性を更に向上させるために、ナノ炭素含有組成物に導電性物質を含有させることもできる。該導電性物質としては、炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛等の炭素系物質等や金属微粒子や金属酸化物微粒子等が挙げられる。
【0089】
本発明におけるナノ炭素含有組成物は、以上説明したような導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、溶媒(C)及び高分子化合物(D)を含有する組成物であり、必要に応じて、塩基性化合物(E)、界面活性剤(F)を更に含有させることができる。
以下、これらの組成比について説明する。
【0090】
上記導電性ポリマー(A)と上記溶媒(C)との使用割合は、溶媒(C)100質量部に対して、上記導電性ポリマー(A)が0.001質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。導電性ポリマー(A)が0.001質量部以上であれば、十分な導電性が得られやすく、ナノ炭素材料(B)の可溶化又は分散化の効率がより向上する。また、導電性ポリマー(A)が50質量部以下であれば、高粘度化によるナノ炭素材料(B)の可溶化又は分散化の効率の低下を抑制しやすい。また、導電性ポリマー(A)が50質量部を超えても導電性はそれ以上大きく増加することはない。
【0091】
ナノ炭素材料(B)と溶媒(C)の使用割合は、溶媒(C)100質量部に対してナノ炭素材料(B)が0.0001質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.001質量部以上10質量部以下である。ナノ炭素材料(B)を0.0001質量部以上とすることにより、導電性をより良好とすることができ、構造体の形成時の強度も向上する。一方、20質量部以下とすることにより、ナノ炭素材料(B)の可溶化又は分散化の効率をより良好にすることができ、紡糸性も向上する。
【0092】
高分子化合物(D)と溶媒(C)の使用割合は、溶媒(C)100質量部に対して、高分子化合物(D)が0.1質量部以上400質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上300質量部であることがより好ましい。高分子化合物(D)が0.1質量部以上であれば、ナノ物質含有組成物から得られるナノ炭素含有繊維の成形性、強度がより向上し、その結果、ナノ炭素構造体繊維自体の特性も向上する。また、高分子化合物(D)が400質量部以下であれば、導電性ポリマー(A)やナノ炭素材料(B)の溶解性の低下が少なく、優れた紡糸性、導電性を維持しやすい。
【0093】
塩基性化合物(E)と溶媒(C)の使用割合は、溶媒(C)100質量部に対して、塩基性化合物(E)が0.00001質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.00005質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。塩基性化合物(E)が0.00001質量部以上であれば、水溶性導電性ポリマー(A)の溶解性が高くなり、ナノ炭素材料(B)の溶媒(C)への可溶化又は分散化が促進され、ナノ炭素含有繊維やナノ炭素構造体繊維の導電性がより向上する。また、塩基性化合物(E)が10質量部を超えると、導電性ポリマーの導電性が低下するおそれがある。
【0094】
界面活性剤(F)と溶媒(C)の使用割合は、溶媒(C)100質量部に対して、界面活性剤(F)が0.0001質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。界面活性剤(F)が0.0001質量部以上であれば、紡糸性、導電性、ナノ炭素材料(B)の可溶化又は分散化がより向上する。また、界面活性剤(F)が10質量部を超えると導電性が劣る等の現象が生じるとともに、ナノ炭素材料(B)の可溶化又は分散化の効率が低下するおそれがある。
【0095】
[ナノ炭素含有組成物の製造方法]
本発明においては、溶媒(C)を用いることにより、分散性と紡糸性に優れたナノ炭素含有組成物が得られるため、高性能な繊維を製造することができる。
本発明におけるナノ炭素含有組成物の必須成分である導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、溶媒(C)、高分子化合物(D)、及び、必要に応じて塩基性化合物(E)、界面活性剤(F)等を混合する際には、超音波、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリットミキサー等の撹拌又は混練装置が用いられる。なかでも、導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、溶媒(C)、又は更に他の成分を混合し、これに超音波を照射することが好ましく、この際、超音波照射とホモジナイザーを併用(超音波ホモジナイザー)して処理をすることが特に好ましい。
【0096】
超音波照射処理の条件は、特に限定されるものではなく、ナノ炭素材料(B)を溶媒(C)中に均一に分散又は溶解させるのに十分な超音波の強度と処理時間であればよい。例えば、超音波発振機における定格出力は、超音波発振機の単位底面積当たり0.1〜500ワット/cmが好ましい。発振周波数は、10〜200kHzが好ましく、20〜100kHzがより好ましい。また、超音波照射処理の時間は、1分〜48時間が好ましく、5分〜48時間がより好ましい。また、超音波照射処理を行う際のナノ炭素含有組成物の温度は、分散性向上の点から、60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
また、この超音波照射処理の後、更にボールミル、ビーズミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等のボール型混練装置を用いて分散又は溶解を徹底化することが好ましい。
【0097】
所定の構成成分を混合する際には、すべての成分を一括添加してもよいし、溶媒(C)のうち、その少量を用いて、濃厚なナノ炭素含有組成物を調製した後、残りの溶媒(C)等の他の構成成分(高分子化合物(D)、塩基性化合物(E)、界面活性剤(F)、その他添加剤)で所定の濃度に希釈してもよい。また、溶媒(C)を2種類以上混合して用いる場合には、使用する溶媒(C)のうち1成分以上を用いて、濃厚なナノ炭素含有組成物を調製し、その後、その他の溶媒(C)成分で希釈してもよい。
【0098】
<ナノ炭素含有繊維、およびそれからなるシート状又は撚糸状構造体の製造方法>
本発明のナノ炭素含有繊維は、ドープ(紡糸原液)であるナノ炭素含有組成物を電界紡糸することで製造される。例えば、ナノ炭素含有組成物を入れた紡糸用シリンジのノズル先端とコレクター部分である対電極基板間に数kV〜200kVの高電圧を印加し、静電反発力でナノ炭素含有組成物をノズルから引出すことによってコレクター基板上にナノファイバー(微細繊維)であるナノ炭素含有繊維を作製し、不織布(シート状構造体)として積層化が可能である。
また、ナノ炭素含有繊維またはナノ炭素含有繊維からなるシート状構造体を撚ることによって撚糸状構造体を製造することが可能である。
【0099】
電界紡糸での印加電圧は、1kV〜160kVが好ましく、より好ましくは5kV〜50kVである。1kVより低いとナノ炭素含有組成物がナノファイバー化せず、160kVより高いとノズルとコレクターの間で放電してしまいナノ炭素含有組成物がナノファイバー化しなくなる。
【0100】
また、紡糸湿度は、0〜70相対%の範囲内にあることが好ましい。紡糸湿度が70相対%より大きいと、ノズル先端において電界紡糸に必要な電荷の誘起が起こらない可能性があるため好ましくない。
【0101】
また、紡糸温度は、5〜50℃の範囲内にあることが好ましい。紡糸温度が50℃より高いと、紡糸溶液の溶媒が蒸発する可能性があるため好ましくない。紡糸温度が5℃より低いと、紡糸溶液の溶媒が凝固する可能性があるため好ましくない。
【0102】
ノズルとコレクターとの距離は、1cm〜50cmが好ましく、より好ましくは5cm〜15cmである。1cmより間隔が短いと放電が起こりナノ炭素含有組成物がナノファイバー化しなくなる。50cmより間隔が長いとナノファイバー化したナノ炭素含有組成物がコレクターに付着しないため好ましくない。
【0103】
ナノ炭素含有組成物のノズルへの供給流速は、1〜500μL/minが好ましく、より好ましくは1〜300μL/minである。1μL/minより流速が遅いとノズル先端部分において溶液の供給不足が起こる可能性があり、500μL/minより流速が速いとノズル先端において液垂れが起こる可能性がある。
【0104】
ノズルの直径は、10μm〜2mmが好ましく、より好ましくは0.1〜1mmである。ノズル径が10μmより小さいと、高粘度の紡糸溶液が目詰まりを起こすため好ましくない。ノズル径が2mmより大きいと、低粘度の紡糸溶液を保持できないため好ましくない。
【0105】
本発明で使用されるコレクターは、導体または半導体と同程度の電気伝導性を有する板状材が好ましく用いられる。例えば、銅板、鉄板、ステンレススチール板、金板、銀板、真鍮板、アルミニウム板、これら導電性を有する板とアルミニウム箔の積層板、酸化インジウムスズをコートしたガラス基板やポリマーフィルム、シリコン基板等がある。また、連続的に繊維を得るためには、上記導電性を有する板をベルト化し、ロールで回転するようにしてもよい。
【0106】
また、一般的に高分子電解質を含む溶液を、電界紡糸すると繊維が基板上に堆積せず、ノズルとコレクター間で垂直に成長する現象が起こることがある。本発明に用いられる導電性ポリマーの場合も同様の現象が起こる可能性があるため、ノズルの下部に設置したコレクター部分上にリング状など開口部を持つ導電体又は半導体を設置して電界紡糸することが好ましい。またこのようなコレクターを使用した場合、ワンステップでナノ炭素含有繊維からなるシート状構造体を作製することが可能である。
【0107】
得られたナノ炭素含有繊維は、平均繊維径が5nm〜50μmである極細ファイバーであり、表面が導電性ポリマー(A)及び高分子化合物(D)で被覆され、内部にナノ炭素材料(B)が存在し紡糸方向(長手方向)に配向している構造を有している。しかも、ナノ炭素材料(B)が高密度で凝集・配向構造を有しているため、導電性などの特性が大幅に向上する。
【0108】
[ナノ炭素構造体繊維、およびそれからなるシート状又は撚糸状構造体の製造方法]
[焼成工程]
本発明のナノ炭素構造体繊維は、本発明のナノ炭素含有繊維を加熱することにより導電性ポリマー(A)や高分子化合物(D)を焼失させることによって得られる。
また、ナノ炭素含有繊維からなるシート状又は撚糸状構造体を加熱することにより導電性ポリマー(A)や高分子化合物(D)を焼失させることによって、ナノ炭素構造体繊維からなるシート状又は撚糸状構造体を得ることが出来る。
また、加熱処理は空気中でも不活性ガス雰囲気化においても実施することができるが、ナノ炭素材料(B)が焼失しにくくするために、不活性ガス雰囲気化で実施することが好ましい。不活性ガスについては特に限定されないが、窒素ガス又はアルゴンガスが多く用いられる。
【0109】
なお、本明細書において、「焼成」とは、加熱により、ナノ炭素含有繊維中の導電性ポリマー(A)や高分子化合物(D)を焼失させることを意味する。従って、加熱処理条件(温度、時間、方法等)は、特に限定されず、導電性ポリマー(A)及び高分子化合物(D)が焼失されればよい。但し、ナノ炭素含有繊維中のナノ炭素材料(B)が焼失すると、焼成後ナノ炭素構造体繊維の導電性能が低下するため好ましくない。
【0110】
例えば、ナノ炭素含有繊維の加熱処理条件は、以下の加熱処理条件(1)〜(4)のいずれかを採用することができる。
加熱処理条件1:350℃以上400℃未満の温度範囲にて30分以上加熱する。
加熱処理条件2:400℃以上450℃未満の温度範囲にて15分以上加熱する。
加熱処理条件3:450℃以上500℃未満の温度範囲にて3分以上加熱する。
加熱処理条件4:500℃以上600℃未満の温度範囲にて1分以上加熱する。
【0111】
加熱温度が350℃未満であると、水溶性導電ポリマー(A)が焼失し難く、構造体に十分な透明性を付与することができない。また、加熱温度が600℃を超えると、ナノ炭素材料(B)自体が焼失し、繊維自体が消失したりすることで強度を維持した構造体が形成されない傾向がある。
【0112】
また、加熱時間は、加熱温度によって異なるが、350℃以上400℃未満の温度範囲では30分以上であり、35分以上180分以下であることが好ましい。400℃以上450℃未満の温度範囲では15分以上であり、20分以上180分以下であることが好ましい。450℃以上500℃未満の温度範囲では3分以上であり、5分以上180分以下であることが好ましい。500℃以上550℃未満の温度範囲では1分以上であり、3分以上180分以下であることが好ましい。それぞれの条件で加熱時間が所定時間未満であると、導電ポリマー(A)の焼失が十分でなく、構造体に十分な導電性を付与することができない。
【0113】
加熱処理方法は、特に限定されないが、ナノ炭素含有繊維を熱風乾燥、ホットプレート、加熱炉、オーブン、真空乾燥、赤外線乾燥等により加熱処理する方法が好ましい。
なお、上記焼成工程における好ましい加熱時間や加熱温度は、加熱機器によっても異なる。例えば、ホットプレートのように直に加熱部分が接触する場合は、加熱時間が短くなる傾向があり、オーブン(加熱炉)のように直接接触しない場合には、加熱時間が長くなる傾向がある。
【0114】
得られたナノ炭素構造体繊維は、平均繊維径が10nm〜10μm、好ましくは10nm〜1μm未満である極細ファイバーであり、表面を被覆していた導電性ポリマー(A)及び高分子化合物(D)が加熱処理によって焼失し、実質的に、内部に高密度で配向して存在していたナノ炭素材料(B)からなる構造を維持している。表面のナノ炭素材料より導電性が低い導電性ポリマー(A)及び絶縁性の高分子化合物(D)が加熱処理によって焼失したため、ナノ炭素材料(B)自体の導電性を発現させることが出来る。「実質的にナノ炭素材料(B)からなる」とは、ナノ炭素構造体繊維がナノ炭素材料(B)自体の所期の特性を発現する限りにおいて、導電性ポリマー(A)及び/又は高分子化合物(D)の焼成残留物が含まれていてもよいことを意味する。
【実施例】
【0115】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
(製造例1)導電性ポリマー(A)
ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)の合成:
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolを25℃で4mol/Lのトリエチルアミン水溶液40mLに攪拌溶解し、これにペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolを水100mlに攪拌溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間更に攪拌した後に、反応生成物を濾別洗浄後、乾燥し、ポリマー粉末(導電性ポリマー(A))15gを得た。この導電性ポリマー(A)の体積抵抗値は9.0Ω・cmであった。
【0116】
ナノ炭素材料(B)は、以下に示すものを使用した。
カーボンナノチューブ(B):ナノシル社によりCVD法(化学的気相成長法)にて製造された多層カーボンナノチューブ「商品名:NC7000」。
以下、カーボンナノチューブを「CNT」と略記することもある。
【0117】
溶媒(C)は、以下に示すものを使用した。
日本ミリポア社より市販されている超純水製造システム(Milli−Q)を用いて製造した超純水。
【0118】
高分子化合物(D)は、以下に示すものを使用した。
ポリサインエンス社より市販されている分子量400万のポリエチレンオキサイド(Cat.#04030−500)。以下「PEO」と略記することもある。
【0119】
<ナノ炭素含有組成物>
(製造例2:実施例1に対応)
前記製造例1の導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、を、溶媒(C)を質量比:(A)/(B)/(C)=1/1/99の組成で室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理(SONIC社製 vibra cell 20kHz)を1時間実施し、導電性ポリマー(A)とナノ炭素材料(B)の均一分散溶液を調製した。
この均一分散溶液に表1に示す組成になるように溶媒(C)、及び高分子化合物(D)を室温にて混合し、20時間以上攪拌後、ナノ炭素含有組成物1を調製した。
【0120】
(製造例3:実施例2に対応)
前記製造例1の導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、を、溶媒(C)を質量比:(A)/(B)/(C)=1/1/99の組成で室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理(SONIC社製 vibra cell 20kHz)を1時間実施し、導電性ポリマー(A)とナノ炭素材料(B)の均一分散溶液を調製した。
この均一分散溶液に表1に示す組成になるように溶媒(C)、高分子化合物(D)及び塩基性化合物(E)を室温にて混合し、20時間以上攪拌後、ナノ炭素含有組成物2を調製した。
(製造例4:比較例1に対応)
表1に示す組成で前記製造例1の導電性ポリマー(A)、高分子化合物(D)を、溶媒(C)に室温にて混合し、20時間以上攪拌後、組成物1を調製した(ナノ炭素材料(B)を含まない組成物)。
【0121】
【表1】

【0122】
<ナノ炭素含有繊維>
(実施例1、2および比較例1)
表1に示す組成物をシリンジに入れ、表2に示す電界紡糸条件で紡糸した。コレクターとしてアルミニウム板コレクター上にアルミニウム製のリング状の構造体を設置して電界紡糸を行い、リング部分にシート状の構造体を作製した。また、回転速度2000rpmで回転するアルミニウム製コレクター上に配列させたナノ炭素含有繊維を撚ることによって撚糸状の構造体を作製した。
【0123】
【表2】

【0124】
<評価方法>
実施例及び比較例において電界紡糸法により製造したナノ炭素含有繊維の構造観察及びナノ炭素含有繊維集合体の電気伝導度測定を行った。
【0125】
(抵抗値)
マルチチャンネル交流四端子電気伝導度計(扶桑製作所製HECS 994C型)を用いて撚糸状およびシート状構造体の抵抗値の測定を行った。得られた抵抗値(R)、試料の測定長(L)、試料の断面積(A)から電気伝導度(σ)をσ=1/ρ=L/RAの関係式を用いて算出した。
(構造観察)
走査型電子顕微鏡(SEM、TOPCON製SM−200)を用いて繊維形態の観察を行った。観察は加速電圧10kVの条件で行った。なお観察試料として、繊維表面にファインコーター(日本電子製JFC−1200)を用いて厚さ約5nmの金コートしたものを用いた。得られた2次電子像から繊維上の任意の50点の繊維径を測定し、平均繊維径を求めた。また、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子製JEM−2000CX)を用いて繊維内部構造の観察を行った。
【0126】
(観察・測定結果)
実施例1の紡糸条件で作製したシート状ナノ炭素含有繊維構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示す。平均繊維径は100nmである。実施例1と同じ紡糸条件で回転コレクター上に作製した配列繊維とこの配列繊維を撚ることによって得られた撚糸状ナノ炭素含有繊維構造体のSEM写真をそれぞれ図2および図3に示す。実施例1において作製されたナノ炭素含有繊維の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図4に示す。ナノ炭素含有繊維中ではCNTが高密度かつ均一に分散している。電気伝導性についてはシート状ナノ炭素含有繊維で5×10−2S/cm、撚糸状ナノ炭素含有繊維では2.6S/cmであった。
また、比較例1の紡糸条件で作成した撚糸状の繊維の電気伝導性は0.005S/cmであり、CNTを含有した実施例1は比較例1と比較すると520倍高い電気伝導性を発現した。
なお、図2に示す配列繊維とは、紡糸速度より大きな速度で回転する円盤型コレクターの側面に糸を巻きつけることによって配列させた繊維である。
【0127】
実施例2では図1と同様の構造を持つ平均繊維径280nmの繊維からなるシート状構造体が得られた。
【0128】
比較例1では図5に示す平均繊維径200nmの繊維からなるシート状構造体が得られた。
【0129】
<ナノ炭素構造体繊維>
電界紡糸法により作製したナノ炭素含有繊維集合体及び比較例1の繊維を、窒素置換した電気炉(アドバンテック東洋社製FUA112DB)内で表3に示す加熱条件下で加熱処理してナノ炭素構造体繊維を作成した。
【0130】
【表3】

【0131】
<評価方法>
実施例及び比較例において、加熱処理後のナノ炭素構造体繊維の外観観察、構造観察、電気伝導度測定を行った。
【0132】
(構造体の形成・外観)
目視により形状維持の可否を評価した。
○:加熱処理後も構造体を形成・維持していた。
×:加熱処理によって焼失して構造体形成・維持ができていなかった。
【0133】
(抵抗値)
実施例1と同じ方法でマルチチャンネル交流四端子電気伝導度計(扶桑製作所製HECS 994C型)を用いて撚糸状およびシート状構造体の抵抗値の測定を行った。得られた抵抗値(R)、試料の測定長(L)、試料の断面積(A)から電気伝導度(σ)をσ=1/ρ=L/RAの関係式を用いて算出した。
(構造観察)
実施例1と同じ方法で走査型電子顕微鏡(SEM、TOPCON製SM−200)を用いて繊維形態の観察を行った。観察は加速電圧10kVの条件で行った。なお観察試料として、繊維表面にファインコーター(日本電子製JFC−1200)を用いて厚さ約5nmの金コートしたものを用いた。得られた2次電子像から繊維上の任意の50点の繊維径を測定し、平均繊維径を求めた。
【0134】
表3に示すように、本発明の実施例1、2のナノ炭素含有繊維は、平均繊維径がナノオーダーのナノファイバーである。シート状又は撚糸状のナノ炭素含有繊維構造体を加熱処理することによって実施例3、4のシート状又は撚糸状の形状を維持した構造体が作製できた。
【0135】
図6に実施例3の加熱条件で処理したシート状ナノ炭素構造体繊維のSEM写真を示す。平均繊維径は100nmである。また、実施例4の加熱条件で処理した撚糸ナノ炭素構造体繊維のSEM写真を図7に示す。電気伝導性についてはシート状ナノ炭素含有繊維で4.5S/cm、撚糸状ナノ炭素含有繊維では11.6S/cmであった。
【0136】
一方、比較例2では加熱処理条件は同じであるが、内部にナノ炭素材料が存在しないため、繊維を形成している導電性ポリマー(A)及び高分子化合物(D)が焼失してしまい、構造体を形成、維持することは出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明のナノ炭素含有繊維及びナノ炭素構造体繊維は、コンデンサ及び機能性コンデンサ、電池、二次電池、キャパシター、燃料電池、太陽電池(有機太陽電池、色素増感太陽電池等)及びその高分子電解質膜、電極層、触媒層、ガス拡散層、ガス拡散電極層、セパレーター、各層間のバッファ材料、低ESR(等価直列抵抗)化材等の部材、EMIシールド(電波障害シールド)、化学センサー、表示素子、非線形材料、防食剤、接着剤、繊維、紡糸用材料、導電性材料、導電性塗料、帯電防止塗料、防食塗料、電着塗料、メッキプライマー、静電塗装用導電性プライマー、電気防食、電池の蓄電能力向上、半導体、電器電子部品等の工業用包装材料、オーバーヘッドプロジェクタ用フィルム、スライドフィルム等の電子写真記録材料等の帯電防止フィルム、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータ用テープ、フロッピィディスク等の磁気記録用テープの帯電防止、電子デバイスのLSI配線、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)の電子銃(源)及び電極、水素貯蔵剤、更に透明タッチパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等の入力及び表示デバイス表面の帯電防止や透明電極、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する発光材料、バッファ材料、電子輸送材料、正孔輸送材料及び蛍光材料、熱転写シート、転写シート、熱転写受像シート、受像シート、金属代替材料、電線として利用することができるため有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、溶媒(C)及び、前記導電性ポリマー(A)とは異なる高分子化合物(D)を含有するナノ炭素含有組成物を電界紡糸する、ナノ炭素含有繊維を製造する方法。
【請求項2】
前記ナノ炭素含有組成物が、塩基性化合物(E)を更に含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により製造されたナノ炭素含有繊維を加熱することにより、前記導電性ポリマー(A)及び高分子化合物(D)を焼失させる、ナノ炭素構造体繊維を製造する方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法により製造されたナノ炭素含有繊維からなるシート状又は撚糸状構造体。
【請求項5】
請求項3に記載の方法により製造されたナノ炭素構造体繊維からなるシート状又は撚糸状構造体。
【請求項6】
導電性ポリマー(A)と、ナノ炭素材料(B)と、前記導電性ポリマー(A)とは異なる高分子化合物(D)とを含んでなるナノ炭素含有繊維であって、表面が前記導電性ポリマー(A)および前記高分子化合物(D)で被覆されており、前記ナノ炭素材料(B)は繊維長手方向に配向しており、かつ、平均繊維径が5nm〜50μmの範囲内にある、ナノ炭素含有繊維。
【請求項7】
実質的にナノ炭素材料(B)からなり、かつ、平均繊維径が10nm〜1μm未満の範囲内にある、ナノ炭素構造体繊維。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−246858(P2011−246858A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122892(P2010−122892)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】