説明

ナノ粒子を含む安定なポリイソシアネート

本発明は、NCO含量の改良された安定性に特徴があるナノ粒子修飾非ブロックトポリイソシアネートに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NCO含量の改良された安定性に特徴があるナノ粒子修飾非ブロックトポリイソシアネートに関する。
【背景技術】
【0002】
一連の特許に、フィルム形成樹脂に対して潜在的に反応性である基を有する表面官能化粒子、及びコーティングにおけるそのような粒子の使用が記載されている(EP-A 0 872 500、WO 2006/018144、DE-A 10 2005 034348、DE-A 199 33 098、DE 102 47359)。この種の粒子は、ブロックトイソシアネート基を有するナノ粒子を包含し、その分散体は、バインダーとのブレンドとして使用される。このような系は、そのNCO含量の点で長期の貯蔵においてさえ安定であり、劣化を受けない。
【0003】
EP-A 0 872 500 及びWO 2006/018144 は、例えば、ナノ粒子の表面がアルコキシシランの共有結合により修飾(改質)されたコロイド金属酸化物を開示している。修飾に使用したアルコキシシランは、アミノアルコキシシランとブロックトイソシアネートモノマーとの付加生成物である。このように修飾された金属酸化物は、次いで、バインダー及び硬化剤と混合され、被覆材料の製造の為のイソシアネート成分として使用される。このような発明にとって、アルコキシ基を加水分解し、次いで粒子表面で縮合させて共有結合させるために、調製工程に水及びアルコールが存在することが不可である。また、水及びアルコール系溶媒との反応を防止するために、遊離NCO基をブロックすることも不可欠である。従って、このような系は、修飾されたナノ粒子であって、ナノ粒子含有ポリイソシアネートではない。それ故、反応時に、ナノ粒子は、フィルム形成マトリックスに共有的に組み込まれ、フィルム形成マトリックスに影響を与えるが、そうすると、経験的に柔軟性が劣化することになり得る。更に、水及びアルコール系溶媒の使用が不可欠であるこのような方法の故に、未ブロックトイソシアネートを使用することができない。
【0004】
Farbe und Lack 7 (2007), 40頁以下に、ナノスケールシリカ粒子は、2成分塗料組成物にポリイソシアネートを添加した結果、凝集することが報告されている。シリカ粒子は、ポリオール相中に存在し、ポリイソシアネートは第2成分として添加される。ポリオールとシリカ粒子の混合物にカルボン酸を添加すると、ポリイソシアネートとのブレンドの後の凝集が抑制される。この論文には、時間経過と共にイソシアネート含量が低下しないポリイソシアネートの貯蔵安定生成物の形の、相当する組成物は記載されていない。カルボン酸は、反応時にポリイソシアネートと反応することが可能であり、望ましくない副反応を引き起こすので、フィルム形成特性に悪影響を与える。
【0005】
特許出願DE 10 2006 054289 及びEP 07021690.2 には、それぞれ透明及び半透明の、コロイド状の安定なナノ粒子含有ポリイソシアネートが開示され、ナノ粒子含有ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートを、それぞれアミノアルコキシシラン、並びにアミノアルコキシシラン及びポリジメチルシロキサンにより修飾し、ナノ粒子を添加することにより、製造される。しかし、貯蔵時、この種のナノ粒子含有ポリイソシアネートは、使用される溶媒の作用によって、NCO含量の点で不安定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP-A 0 872 500
【特許文献2】WO 2006/018144
【特許文献3】DE-A 10 2005 034348
【特許文献4】DE-A 199 33 098
【特許文献5】DE 102 47359
【特許文献6】EP-A 0 872 500
【特許文献7】WO 2006/018144
【特許文献7】DE 10 2006 054289
【特許文献7】EP 07021690.2
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Farbe und Lack 7 (2007), 40頁以下
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来技術に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、特に2K(2成分)ポリウレタン用途の為の、ナノ粒子含有非ブロックトポリイソシアネートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、そのようなポリイソシアネートは、修飾(変性)されるポリイソシアネートとナノ粒子とを接触させる前に、粒子に特別な表面修飾を行うことにより得ることができることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
すなわち、本発明は、遊離NCO基を有するナノ粒子修飾ポリイソシアネートの製造方法であって、
A)動的光散乱により測定して、200nm未満の平均粒径を有するナノ粒子を、
B)式(I):
【化1】

(式中、Rは、直鎖又は環式C〜C14脂肪族基又はC〜C14芳香脂肪族又は芳香族基であり、
は、Qが窒素である場合に存在し、水素、C〜C12アルキル基若しくはC〜C20アリール又はアラルキル基若しくはアスパラギン酸エステル基であり、
Qは、酸素、硫黄又は窒素であり、
Xは、加水分解性基であり、
Yは、同一又は異なって、アルキル基であり、
Zは、C〜C12アルキレン基であり、
aは、1〜3の整数である。)
で示されるアルコキシシリル-及びNCO-含有付加物
と反応させ、次いで、生成物を
C)遊離NCO基を有するポリイソシアネート
とブレンドする、製造方法を提供する。
【0011】
A)で使用する粒子は、本発明の方法では、好ましくは分散体として使用される。分散体は、好ましくは、分散媒として有機溶媒を含む。
【0012】
適している溶媒の例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、2-ブタン、メチルイソブチルケトン、及びポリウレタン化学において通常使用される溶媒、例えば酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、1,4-ジオキサン、ジアセトンアルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、又はこれら溶媒の所望の混合物である。
【0013】
好ましい有機溶媒は、NCO基に対して反応性である基を含まない、上記種類の溶媒である。そのような溶媒の例は、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、トルエン、2-ブタノン、キシレン、ソルベントナフサ、1,4-ジオキサン、ジアセトンアルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、又はこれら溶媒の所望の混合物である。
【0014】
特に好ましい有機溶媒は、酢酸ブチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、メチルエチルケトン、及びこれらの混合物である。
【0015】
A)で使用する粒子は、典型的には、周期表第II〜IV族主族元素及び/又は第I〜VIII族遷移元素(ランタニドを含む)の無機酸化物、混合酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、炭化物、ホウ化物及び窒化物である。酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ及び酸化チタンが好ましい。酸化ケイ素ナノ粒子が特に好ましい。
【0016】
A)で使用する粒子は、分散体中で動的光散乱により測定したZ-平均で表して、好ましくは5〜100nm、より好ましくは5〜50nmの平均粒径を有する。
【0017】
好ましくは、A)で使用する粒子全体の、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、非常に好ましくは少なくとも95%が、上記の粒径を有する。
【0018】
A)で使用する粒子は、好ましくは、1つ又はそれ以上の別の方法、例えば、DE-A 19846660 又はWO 03/44099 に記載されたシラン化などにより、予め表面修飾される。
【0019】
それに加えて又は代えて、例えば、WO 2006/008120 及び Foerster. S. & Antonietti, M., Advanced Materials, 10, No. 3 (1998) 195 に記載されているように、A)で使用する粒子の表面を、粒子表面に対して相互作用する頭部基を有する界面活性剤、又はブロックコポリマーにより、吸着的/結合的に修飾しておいてよい。
【0020】
好ましい表面修飾は、アルコキシシラン及び/又はクロロシランによるシラン化である。特に好ましくは、シランは、アルコキシル基の他に不活性アルキル又はアラルキル基を有するが、その他の官能基は有さないシランである。
【0021】
A)に適するこの種の粒子分散体の市販品の例は、OrganosilicasolTM (Nissan Chemical America Corporation, 米国)、NanobykTM 3650 (BYK Chemie,ドイツ, ヴェゼル)、Hanse XP21/1264 又は Hanse XP21/1184 (Hanse Chemie, ドイツ, ハンブルク)、HIGHLINKTM NanO G (Clariant GmbH, Sulzbach, Germany) である。適当なオルガノゾルは、10〜80質量%、好ましくは15〜50質量%の固形分を有する。
【0022】
式(I)の付加物B)は、例えば、式:
【化2】

のアルコキシシランと、式:
【化3】

の非ブロックトジイソシアネートモノマー
との反応により、得ることができる。
【0023】
式(III)において、従って式(I)においても、Xは、好ましくはアルコキシル基又はヒドロキシル基であり、より好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はブトキシである。
【0024】
式(III)において、従って式(I)においても、Yは、好ましくは直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキル基、より好ましくはメチル又はエチルである。
【0025】
式(III)において、従って式(I)においても、Zは、好ましくは直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキレン基である。
【0026】
式(III)において、従って式(I)においても、aは、好ましくは1又は2である。
【0027】
式(III)において、基QHは、好ましくは、イソシアネートに対して反応性で、ウレタン、ウレア又はチオウレアを形成する基であり、そのような基は、好ましくはOH、SH又はNH基であり、より好ましくはHN基である。
【0028】
Qが酸素又は硫黄である場合、Rは存在しない。Qが窒素である場合、式(III)に対応するアミノ基が式:-NHRを形成する。
【0029】
は、水素、C〜C12アルキル基、C〜C20アリール又はアラルキル基若しくはアスパラギン酸エステル基である。好ましくは、Rは、C〜C12アルキル基、特にC〜Cアルキル基、又はアスパラギン酸エステルである。特に好ましくは、Rは、式:
【化4】

のアスパラギン酸エステル基である。
【0030】
及びRは、好ましくは、同じ又は異なる、場合により分岐していてよい、1〜22個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。特に好ましくは、R及びRは、メチル基又はエチル基である。
【0031】
この種のアルコキシシラン官能性アスパラギン酸エステルは、US5364955 に記載されているように、常套の方法で、マレイン酸エステル又はフマル酸エステルへのアミノ官能性アルコキシシランの付加により、得ることができる。
【0032】
式(III)の化合物として、又はアルコキシシリル官能性アスパラギン酸エステルの製造に使用できるこの種のアミノ官能性アルコキシシランの例は、2-アミノエチルジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシランである。
【0033】
更に、B)での式(III)の、第2級アミノ基含有アミノアルコキシシランとして可能な化合物は、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(γ-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-エチル-3-アミノイソブチルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノイソブチルトリエトキシシラン、又はN-エチル-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-エチル-3-アミノイソブチルメチルジエトキシシラン、及び類縁のC〜Cアルコキシシランである。
【0034】
アスパラギン酸エステルを製造するのに適したマレイン酸エステル又はフマル酸エステルは、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ-n-ブチル及び対応するフマル酸エステルである。マレイン酸ジメチル及びマレイン酸ジエチルが特に好ましい。
【0035】
アスパラギン酸エステルを製造するのに好ましいアミノシランは、3-アミノプロピルトリメトキシシラン又は3-アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0036】
マレイン酸エステル及び/又はフマル酸エステルとアミノアルキルアルコキシシランとの反応は、0〜100℃の温度範囲で行われ、割合は、通例、出発化合物が1:1のモル比で使用されるように選択される。反応は、バルクでも、溶媒(例えばジオキサン)の存在下でも、行い得る。しかし、溶媒を付随的に使用することは、あまり好ましくない。もちろん、異なる3-アミノアルキルアルコキシシランの混合物を、マレイン酸エステル及び/又はフマル酸エステルの混合物と反応させることもできる。
【0037】
ジイシソアネートを修飾するのに好ましいアルコキシシラン(III)は、R=C〜C12である上記種類の第2級アミノシラン、より好ましくはR=ROOC-CH-CH(COOR)-である上記種類のアスパラギン酸エステル、更にジアルコキシ-及び/又はモノアルコキシシランである。上記のアルコキシシランは、個々に又は混合物として、修飾に使用することができる。
【0038】
適当な式(II)のジイソシアネートは、ホスゲン化により、又はウレタンの熱分解のようなホスゲンフリー法により製造され、脂肪族的、脂環式的、芳香脂肪族的及び/又は芳香族的に結合したイソシアネート基を持ち、140〜400g/モルの範囲の分子量を有する、所望のジイソシアネートである。その例は、1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-及び1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-及び1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、1,3-及び1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,4-及び2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4'-及び4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレン又はこれらジイソシアネートの所望の混合物である。
【0039】
B)において、IPDI、MDI、TDI、HDI又はこれらの混合物に基づく上記種類の付加物を使用するのが好ましい。特に好ましいのは、IPDI及びHDIに基づく付加物であり、非常に好ましいのは、HDIに基づく付加物である。
【0040】
従って、式(II)及び式(I)中のRは、直鎖、分岐鎖又は環式C〜C14脂肪族基若しくはC〜C14芳香脂肪族又は芳香族基である。好ましくは、Rは、C〜C14の、より好ましくは直鎖又は環式脂肪族基若しくはC〜C13芳香脂肪族又は芳香族基である。
【0041】
好ましくは、Rは、下記の構造式の1つに相当する:
【化5】

【0042】
特に好ましくは、Rは、下記の式の1つに相当する:
【化6】

【0043】
基本的に、(II)及び(III)の反応には、式(II)のジイソシアネートに代えて、C)について記載したオリゴマーイソシアネートを使用することもできるが、好ましくない。
【0044】
式(II)のイソシアネートと式(III)のアルコキシシランとの反応において、(II)からの遊離NCO基対(III)からのNCO反応性基の比は、好ましくは1:0.01〜1:0.75、より好ましくは1:0.05〜1:0.5、非常に好ましくは1:0.1〜1:0.4である。
【0045】
基本的に、もちろん、上記アルコキシシランを用いてより高い割合のNCO基を修飾することもできるが、ゲル化が起こらないように、及び/又は希釈時にはイソシアネート不活性溶媒中で行うように、注意しなければならない。
【0046】
アミノシラン(III)及びジイソシアネート(II)の反応は、0〜100℃、好ましくは0〜50℃、より好ましくは15〜40℃の温度で行う。適切な場合、発熱反応を冷却により制御する。
【0047】
A)で使用するナノ粒子の修飾剤B)による修飾は、修飾剤B)とA)からの固体ナノ粒子物質の合計に対する修飾剤B)の質量割合を典型的には1〜50%、好ましくは10〜50%、より好ましくは20〜40%として、行う。
【0048】
A)での粒子を分散体として使用する場合、A)とB)との反応の後に得られる修飾されたオルガノゾルは、1〜70質量%、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%の固形分を有する。
【0049】
A)とB)の反応は、典型的には0〜100℃、好ましくは20〜90℃、より好ましくは40〜80℃の温度で行う。反応時間は、典型的には1〜24時間、好ましくは2〜12時間、より好ましくは4〜10時間である。
【0050】
C)において、基本的に、当業者に知られており、1分子あたり1個を越えるNCO基を有するNCO官能性化合物はいずれも使用することができる。このような化合物は、2.3〜4.5のNCO官能価、11.0〜24.0質量%のNCO基含量、及び好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満のモノマージイソシアネート含量を有する。
【0051】
この種のポリイソシアネートは、単純な脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族ジイシソアネートを変性することにより、得ることができ、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン及び/又はオキサジアジントリオン構造を含み得る。加えて、このようなポリイソシアネートを、NCO基含有プレポリマーとして使用することもできる。この種のポリイソシアネートは、例えば、Laas et al. (1994), J. prakt. Chem. 336, 185-200 又は Bock (1999), Polyurethane fuer Lacke und Beschichtungen, Vincentz Verlag, ハノーバー, 21〜27頁に記載されている。
【0052】
そのようなポリイソシアネートの製造に適するジイソシアネートは、ホスゲン化により、又はウレタンの熱分解のようなホスゲンフリー法により製造され、脂肪族的、脂環式的、芳香脂肪族的及び/又は芳香族的に結合したイソシアネート基を持ち、140〜400g/モルの範囲の分子量を有する、所望のジイソシアネートである。その例は、1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-及び1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-及び1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、1,3-及び1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)、2,4-及び2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4'-及び4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレン又はこれらジイソシアネートの所望の混合物である。
【0053】
同様に、NCO反応性アルコキシシラン又はシロキサンにより無機変性されたポリイソシアネートを使用することも可能である。これは、例えば、特許出願DE 10 2006 054289 及び EP 07021690.2 に記載されている。
【0054】
本発明において、C)において記載したポリイソシアネートは、式(II)のモノマーイソシアネートについて既に説明したように、付加的に式(III)のアルコキシシランと反応させる。相応に好ましいが、未変性ポリイソシアネートを使用するのが好ましい。
【0055】
C)において、IPDI、MDI、TDI、HDI又はこれらの混合物に基づく上記種類のポリイソシアネートを使用するのが、好ましい。IPDI及びHDIに基づくポリイソシアネートを使用するのが、特に好ましい。
【0056】
修飾粒子とポリイソシアネートC)の割合は、粒子含量が、固形分に基づいて、典型的には1〜70質量%、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%となるように選択する。
【0057】
このようにオルガノゾルにより修飾されたポリイソシアネートは、90日後のNCO含量が、DIN EN ISO 11909 に従って測定して、初期のNCO値の80%を越え、好ましくは90%を越え、特に好ましくは95%を越えるという特性を有する。
【0058】
本発明は更に、本発明の方法により得られるポリイソシアネート、及び塗料、接着剤及びシーラントにおけるその使用を提供する。
【0059】
加えて、本発明は、本発明のポリイソシアネートを用いて被覆した又は接着結合した基材も提供する。
【実施例】
【0060】
実施例において、別途記載がなければ、全てのパーセントは質量パーセントであると理解すべきである。
【0061】
DesmodurTM N 3300:ヘキサメチレンジイソシアネート三量体:NCO含量21.8±0.3質量%、粘度(23℃)約3000mPas、Bayer MaterialScience AG(ドイツ、Leverkusen)。
OrganosilicasolTM MEK-ST:メチルエチルケトンに分散されたコロイド状シリカ、粒径10〜15nm(製造業者の値)、SiO30質量%、HO<0.5質量%、粘度<5mPas、Nissan Chemical America Corporation(米国)。
【0062】
粒子径の測定:
粒径は、HPPS 粒径アナライザー(Malvern、英国、Worcestershire)を用いて、動的光散乱により測定した。評価は、Dispersion Technologyソフトウエア4.10を用いて行った。多重散乱を防止するために、ナノ粒子の高度に希釈した分散体を調製した。1滴のナノ粒子分散体を、分散体の溶媒と同じ溶媒約2mlを含むセルに加え、振盪し、HPPSアナライザーにおいて、20〜25℃で測定した。評価に際して、分散媒の関係するパラメータ(温度、粘度及び屈折率)を考慮に入れた。有機溶媒の場合、ガラスセルを使用した。得られた結果は、強度/又は容積/粒径プロット、及び粒径についてのZ平均であった。多分散指数が0.5未満であるように注意した。
【0063】
NCO含量は、DIN EN ISO 11909 に従って測定した。
【0064】
実施例1a)
ジエチルN-(3-トリメトキシシリルプロピル)アスパルテートを、US-A 5 364 955 のExample 5 に従い、等モル量の3-アミノプロピルトリメトキシシランをマレイン酸ジエチルと反応させて、調製した。
【0065】
実施例1b):修飾剤の調製
標準的な攪拌装置に、室温で、546.1g(1当量)のヘキサメチレンジイソシアネートを加え、初期装填物上に、2L/時の速度で窒素を流した。次いで、453.9g(0.2当量)の実施例1aからのアルコキシシランを、室温で2時間かけて滴加した。温度は、理論NCO含量に達するまで、40℃に保持した。これにより、21.6%のNCO含量を有する透明淡黄色付加物を得た。
【0066】
実施例1c):修飾オルガノゾルの調製
標準的な攪拌装置に、室温で、144.4gの実施例1bからの付加物を加え、初期装填物上に、2L/時の速度で窒素を流し、初期充填物を、還流下に72℃に加熱した。1155.6gの OrganosilicasolTM MEK-ST を30分かけて滴加し、温度は、72℃に8時間保持し、その後下げた。これにより、0.85%のNCO含量及び37.8%の固形分を有する半透明分散体を得た。
【0067】
実施例1d):DE 10 2006 054289 に従った修飾ポリイソシアネートの調製
標準的な攪拌装置に、室温で、100gのメチルエチルケトン中の567.7g(1当量)の DesmodurTM N3300 を加え、初期装填物上に、2L/時の速度で窒素を流した。次いで、100gの酢酸ブチル中の232.3g(0.2当量)の実施例1からのアルコキシシランを、室温で3時間かけて滴加した。これにより、以下の特性を有する無色液体ポリイソシアネートを得た:
固形分:79質量%
NCO含量:9.6%
【0068】
実施例2:DE 10 2006 054289 に従った比較例
35.6gの実施例1dからのシラン官能性ポリイソシアネートを、93.75gの OrganosilicasolTM MEK-ST 及び20.65gの酢酸ブチルとブレンドした。これにより、2.25%のNCO含量、37.5%の固形分及び約50%固体/固体のSiO含量を有するナノ粒子修飾ポリイソシアネートを得た。
【0069】
実施例2a):本発明実施例
234.4gのDesmodurTM N3300 を1265.8gの実施例1cからのオルガノゾルと混合し、回転蒸発器により、60℃、120mbarで、混合物の固形分を47.8%に調節した。これにより、約20mPas(23℃)の粘度、固体中約59%のSiO及び4.05%のNCO含量を有する透明生成物を得た。
【0070】
実施例3b):DE 10 2006 054289 に従ったアミノシラン修飾ポリイソシアネートを用いた本発明実施例
93.2gの実施例1dからのポリイソシアネートを、281.8gの実施例1cからのオルガノゾルと混合し、回転蒸発器により、60℃、120mbarで、混合物の固形分を54.8%に調節した。これにより、約50mPas(23℃)の粘度、固体中約50%のSiO及び3.49%のNCO含量を有する透明生成物を得た。
【0071】
【表1】

【0072】
表1から明らかなように、OrganosilicasolTM MEK-ST を含むポリイソシアネートのNCO含量は、初期の2.25%から、91日後には0.68%へ低下した。NCO含量は、約30%に低下した。本発明の実施例3a及び3bの場合、91日後のNCO含量はそれぞれ、初期値の約96%及び約87%であった。
【0073】
本発明のナノ粒子修飾ポリイソシアネートの応用:
ナノ粒子修飾ポリイソシアネートは、DE 10 2006 054289 に記載されているナノ粒子修飾ポリイソシアネートに相応して、非修飾ポリイソシアネートに比べ、硬さ及び/又は非引掻耐性の改良に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離NCO基を有するナノ粒子修飾ポリイソシアネートの製造方法であって、
A)動的光散乱により測定して、200nm未満の平均粒径を有するナノ粒子を、
B)式(I):
【化1】

(式中、Rは、直鎖C〜C14脂肪族基又は環式C〜C14脂肪族基、若しくはC〜C14芳香脂肪族又は芳香族基であり、
は、Qが窒素である場合に存在し、水素、C〜C12アルキル基若しくはC〜C20アリール又はアラルキル基若しくはアスパラギン酸エステル基であり、
Qは、酸素、硫黄又は窒素であり、
Xは、加水分解性基であり、
Yは、同一又は異なって、アルキル基であり、
Zは、C〜C12アルキレン基であり、
aは、1〜3の整数である。)
で示されるアルコキシシリル-及びNCO-含有付加物
と反応させ、次いで、生成物を
C)遊離NCO基を有するポリイソシアネート
とブレンドする、製造方法。
【請求項2】
A)で使用する粒子は、有機溶媒中の分散体として使用される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
溶媒は、酢酸ブチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、メチルエチルケトン又はこれらの混合物である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
A)で使用する粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ又は酸化チタンである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
A)で使用する粒子は、分散体中で動的光散乱により測定したZ-平均で表して、5〜100nmの平均粒径を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
A)で使用する粒子は、表面修飾されている、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
式(I)中、
は、直鎖又は環式脂肪族基、若しくはC〜C13芳香脂肪族又は芳香族基であり、
は、Qが窒素であれば、C〜Cアルキル基又は式:
【化2】

のアスパラギン酸エステル基であり、
Qは、酸素、硫黄又は窒素であり、
Xは、アルコキシル基又はヒドロキシル基であり、
Yは、直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキル基であり、
Zは、直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキレン基であり、
aは、1又は2である、
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
C)において、IPDI、MDI、TDI、HDI又はこれらの混合物に基づく上記種類のポリイソシアネートを使用する、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られる、遊離NCO基を有するナノ粒子修飾ポリイソシアネート。
【請求項10】
塗料、接着剤又はシーラントにおける、請求項9に記載の遊離NCO基を有するナノ粒子修飾ポリイソシアネートの使用。
【請求項11】
請求項9に記載の遊離NCO基を有するナノ粒子修飾ポリイソシアネートを用いて得られる、被覆した又は接着結合した基材

【公表番号】特表2011−521026(P2011−521026A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508821(P2011−508821)
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003192
【国際公開番号】WO2009/138181
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】