説明

ナノ粒子を用いる対象物の認証及び識別

ナノ粒子を用いて対象物を認証し識別する装置、システム及び方法が開示されている。一実施形態では、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、(1)マーキングの認証画像に基づいてインデックスを導出し、(2)インデックスに基づいてマーキングの基準画像を選択し、(3)認証画像が基準画像と一致するかどうかを判定するために認証画像を基準画像と比較し、(4)認証画像が基準画像と一致するかどうかに基づいて真正性の表示を生成する、実行可能コードを含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2005年9月12日に出願され、開示内容全体が参照によって本明細書に援用されている、米国仮出願第60/716,656号の利益を主張する。
【発明の分野】
【0002】
[0002]本発明は一般にナノ粒子に関する。より詳細には、本発明はナノ粒子を用いる対象物の認証及び識別に関する。
【発明の背景】
【0003】
[0003]認証又は識別されるべき対象物は、対象物自体の一部であることがあり、又は、対象物に結合されることがある特定のマーキングが設けられることがある。たとえば、一般に使用されているマーキングは、対象物上に直接的に、又は、対象物に結合されているラベルに印刷されている要素の1次元配列を含むバーコードである。これらの要素は、典型的に、バーとスペースとを含み、可変幅のバーは2進数1の文字列を表現し、可変幅のスペースは2進数零の文字列を表現する。バーコードは対象物の位置又は同一性を追跡するため役立つが、これらのマーキングは容易に再現可能であるので、偽造を防止するという観点から有効性が制限されている。
【0004】
[0004]この背景に対して、本明細書に記載されている装置、システム及び方法を開発する要請が生じた。
【発明の概要】
【0005】
[0005]一実施形態では、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、(1)マーキングの認証画像に基づいてインデックスを導出し、(2)インデックスに基づいてマーキングの基準画像を選択し、(3)認証画像が基準画像と一致するかどうかを判定するために認証画像を基準画像と比較し、(4)認証画像が基準画像と一致するかどうかに基づいて真正性の表示を生成する、実行可能コードを含む。
【0006】
[0006]本発明のその他の態様及び実施形態もまた検討されている。前述の要約及び後述の詳細な説明は、本発明を特有の実施形態に限定することを目的としていないが、本発明の一部の実施形態を記述することを目的としている。
【0007】
[0007]本発明の一部の実施形態の性質及び目的のより良い理解のため、添付図面と併せて解釈される後述の詳細な説明が参照されるべきである。
【詳細な説明】
【0008】
定義
[0010]以下の定義は本発明の一部の実施形態に関連して説明されている要素の一部に適用される。これらの定義は本明細書においてさらに詳述されている。
【0009】
[0011]本明細書で使用されているように、「集合」という用語は1個以上の要素の集まりを指している。集合の要素は集合のメンバーと呼ばれることもある。集合の要素は、同一であることも、異なることもある。一部の事例では、集合の要素は1つ以上の共通特性を共有する可能性がある。
【0010】
[0012]本明細書で使用されているように、「場合による」及び「場合により」という用語は、続いて記載されている事象又は状況が発生する場合と発生しない場合とがあること、並びに、説明には、事象又は状況が発生する事例と、事象又は状況が発生しない事例とが含まれることを意味している。
【0011】
[0013]本明細書で使用されているように、「紫外線範囲」という用語は、約5ナノメートル(「nm」)から約400nmまでの波長の範囲を指している。
【0012】
[0014]本明細書で使用されているように、「可視範囲」という用語は、約400nmから約700nmまでの波長の範囲を指している。
【0013】
[0015]本明細書で使用されているように、「赤外線範囲」という用語は、約700nmから約2ミリメートル(「mm」)までの波長の範囲を指している。
【0014】
[0016]本明細書で使用されているように、「ナノメートル範囲」という用語は、約0.1nmから約500nmまで、約0.1nmから約200nmまで、約0.1nmから約100nmまで、約50nmから約100nmまで、約0.1nmから約50nmまで、約0.1nmから約20nmまで、又は、約0.1nmから約10nmまでのように、約0.1nmから約10マイクロメータ(「μm」)までの寸法の範囲を指している。
【0015】
[0017]本明細書で使用されているように、「反射」、「反射する」、及び、「反射性」という用語は、光の屈曲又は偏向を指している。光の屈曲又は偏向は、正反射の事例のように、実質的に単一の方向であることがあり、又は、拡散反射又は散乱の事例のように、複数の方向であるかもしれない。一般に、材料へ入射する光、及び、材料から反射される光は、同じ波長又は異なる波長を有する可能性がある。
【0016】
[0018]本明細書で使用されているように、「ルミネセンス」及び「ルミネセント」という用語は、エネルギー励起に応じた光の放出を指している。発光は、原子又は分子の励起状態からの緩和に基づいて起こる可能性があり、かつ、たとえば、化学ルミネセンス、エレクトロルミネセンス、フォトルミネセンス、及び、化学ルミネセンスとエレクトロルミネセンスとフォトルミネセンスの組み合わせを含む可能性がある。たとえば、エレクトロルミネセンスでは、励起電子状態が電気励起に基づいて生成され得る。蛍光及び燐光を含む可能性があるフォトルミネセンスでは、励起電子状態は、光の吸収のような光励起に基づいて生成され得る。一般に、材料に入射する光、及び、材料によって反射される光は、同じ波長又は異なる波長を有する可能性がある。ルミネセント材料の例には、真性半導体(たとえば、間接バンドギャップ半導体)と、真性絶縁体(たとえば、ワイドバンドギャップ半導体)と、真性蛍光材料(たとえば、遷移金属、及び、ランタニドのような希土類元素)と、適切なルミネセント材料でドープされた材料とが含まれる。
【0017】
[0019]本明細書で使用されているように、「フォトルミネセンス量子効果」という用語は、材料によって放出された光子の個数の、材料によって吸収された光子の個数に対する比を指している。
【0018】
[0020]本明細書で使用されているように、「欠陥」という用語は、結晶積層誤差、トラップ、空孔、挿入、又は、不純物を指している。
【0019】
[0021]本明細書で使用されているように、「単分子層」という用語は、完全なコーティングを越えて付加的な材料が付加されていない材料の単一の完全なコーティングを指している。
【0020】
[0022]本明細書で使用されているように、「ナノ粒子」という用語は、少なくとも1つの寸法がナノメートル範囲にある粒子を指している。ナノ粒子は、多数の形状のうちの何れかを有し、多数の材料のうちの何れかから形成される可能性がある。一部の事例では、ナノ粒子は、第1の材料で形成され、第2の材料で形成された「シェル」又は「配位子層」によって場合により取り囲まれている可能性がある「コア」を含む。第1の材料と第2の材料は同じ材料でも異なる材料でもよい。ナノ粒子の構造に依存して、ナノ粒子は量子閉じ込めと関連付けられているサイズ依存性特性を示す可能性がある。しかし、ナノ粒子は、量子閉じ込めと関連付けられているサイズ依存性特性が実質的に欠けている可能性があるか、又は、このようなサイズ依存性特性を少ししか示さない可能性があると考えられる。一部の事例では、ナノ粒子の集合は、「単分散」であると言われることもある。ナノ粒子の集合が単分散であると言われるとき、たとえば、少なくとも約75%〜約90%のようなナノ粒子の集合の少なくとも約60%は、特定の寸法の範囲に含まれると考えられる。たとえば、単分散状ナノ粒子の集合は、寸法のずれの二乗平均平方根(「rms」)が約20%未満であり、たとえば、寸法が約10%rms未満、又は、寸法が約5%未満である。一部の事例では、ナノ粒子の集合は、「実質的に無欠陥」であると言われることもある。ナノ粒子の集合が実質的に無欠陥であると言われるとき、たとえば、ナノ粒子1000個当たりに1個未満の欠陥、ナノ粒子10個当たりに1個未満の欠陥、又は、ナノ粒子10個当たりに1個未満の欠陥のように、ナノ粒子1個当たりに1個未満の欠陥が存在すると考えられる。典型的に、ナノ粒子内のより少ない個数の欠陥は、増加したフォトルミネセンス量子効果に変わる。一部の事例では、実質的に無欠陥であるナノ粒子は、少なくとも10パーセント、少なくとも20パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも50パーセントのように、6パーセントより大きいフォトルミネセンス量子効果を有する可能性がある。ナノ粒子の構造に依存して、ナノ粒子は、最大で90パーセント(又は90パーセント以上)までのフォトルミネセンス量子効果を有することがあり得る。ナノ粒子の例には、量子ドット、量子井戸、及び、量子ワイヤが含まれる。
【0021】
[0023]本明細書で使用されているように、「サイズ」という用語は特徴的な物理寸法を指している。量子閉じ込めと関連付けられているサイズ依存性特性を示すナノ粒子の場合、ナノ粒子のサイズはナノ粒子の量子閉じ込め物理寸法を指すことがある。たとえば、実質的に球状であるナノ粒子の場合、ナノ粒子のサイズはナノ粒子の直径と一致する可能性がある。実質的に円形断面を伴う実質的に棒状であるナノ粒子の場合、ナノ粒子のサイズはナノ粒子の断面の直径と一致する可能性がある。ナノ粒子の集合が特有のサイズであると言われるとき、ナノ粒子の集合は指定されたサイズの周りにサイズの分布を有する可能性があると考えられる。よって、本明細書で使用されているように、ナノ粒子の集合のサイズは、サイズの分布のピークサイズのようなサイズの分布の形態を指している可能性がある。
【0022】
[0024]本明細書で使用されているように、「量子ドット」という用語は、実質的に3つの直交次元に沿って、化学特性、磁気特性、光学特性、及び、電気特性のようなサイズ依存性特性を示すナノ粒子を指している。量子ドットは、球形、四面体、三脚形、ディスク形、ピラミッド形、ボックス形、立方形、及び、多数のその他の幾何学的形状及び非幾何学的形状のような、多数の形状のうちの何れかを有する可能性がある。シェルによって取り囲まれているコアを含む量子ドットは、「コア−シェル量子ドット」と言われることがある。量子ドットの例には、ナノ球形、ナノ楕円形、ナノ四本足形、ナノ三本足形、ナノマルチポッド形、及び、ナノボックス形が含まれる。
【0023】
[0025]本明細書で使用されているように、「量子井戸」という用語は、実質的に高々単一の次元に沿って、化学特性、磁気特性、光学特性、及び、電気特性のようなサイズ依存性特性を示すナノ粒子を指している。量子井戸の例はナノプレートである。
【0024】
[0026]本明細書で使用されているように、「量子ワイヤ」という用語は、実質的に高々2つの直交次元に沿って、化学特性、磁気特性、光学特性、及び、電気特性のようなサイズ依存性特性を示すナノ粒子を指している。量子ワイヤの例には、ナノロッド、ナノチューブ、及び、ナノコラムが含まれる。
【0025】
[0027]本明細書で使用されているように、「コア」という用語は、ナノ粒子の内側部分を指している。コアは単一の一様な単原子又は多原子材料を実質的に含む可能性がある。コアは、結晶質、多結晶質、又は、非晶質でもよく、場合によりドーパントを含む可能性がある。コアは実質的に無欠陥であるか、又は、様々な欠陥密度を含む可能性がある。コアは時々「結晶質」又は「実質的に結晶質」と言われることもあるが、コアの表面は多結晶質でも非晶質でもよく、この多結晶質表面又は非晶質表面は「コア表面領域」を形成するためにコア内である程度の深さまで延びる可能性があると考えられている。コア表面領域の場合により結晶質ではない性質は、本明細書で実質的に結晶質コアとして称されているものを変化させない。コア表面領域は欠陥を含むことがあり得る。一部の事例では、コア表面領域は、約1層〜約5層の原子層の深さに広がる可能性があり、かつ、実質的に一様、実質的に非一様、又は、コア表面領域内の位置に応じて連続的に変化する可能性がある。
【0026】
[0028]本明細書で使用されているように、「シェル」という用語は、ナノ粒子の外側部分を指している。シェルは、コアの表面の少なくとも一部分を覆う材料の層を含む可能性がある。界面領域が場合によりコアとシェルとの間に配置されている可能性がある。シェルは単一の一様な単原子又は多原子材料を実質的に含む可能性がある。シェルは、結晶質、多結晶質、又は、非晶質でもよく、場合によりドーパントを含む可能性がある。シェルは実質的に無欠陥であるか、又は、様々な欠陥密度を含む可能性がある。一部の事例では、シェルを形成する材料は、コアを形成する材料のバンドギャップエネルギーより大きいバンドギャップエネルギーを有する。他の事例では、シェルを形成する材料はコアを形成する材料のバンドギャップエネルギーより小さいバンドギャップエネルギーを有することがある。シェルを形成する材料はコアを形成する材料に対してバンドオフセットを有する可能性があり、その結果、シェルの伝導帯がコアの伝導帯より高く、又は、低くなり、シェルの価電子帯がコアの価電子帯より高く、又は、低くなり得る。シェルを形成する材料は、コアを形成する材料の原子間間隔に近い原子間間隔を有するように場合により選択される可能性がある。シェルは、シェルが、たとえば、コアの全表面原子を実質的に覆うためコアの表面を実質的に完全に覆うように、「完全」である可能性がある。代替的に、シェルは、シェルが、たとえば、コアの表面原子を部分的に覆うためコアの表面を部分的に覆うように、「不完全」であるかもしれない。シェルは、約0.1nmから約100nmまでのように、様々な厚さを有する可能性がある。シェルの厚さは、シェルを形成する単分子層の層数に関して画成される可能性がある。一部の事例では、シェルは、約0〜約10層の単分子層の厚さを有する可能性がある。整数ではない単分子層の層数は不完全な単分子層が存在する状態に対応する可能性がある。不完全な単分子層は、一様又は非一様であり、コアの表面にアイランドすなわち塊を形成する可能性がある。シェルの厚さは一様でも非一様でもよい。シェルが非一様な厚さを有する場合、不完全なシェルは2層以上の材料の単分子層を含む可能性があると考えられる。シェルは、各層が次に内側にある層のシェルとしての役目を果たすように、玉ねぎ状構造をした1つ以上の材料の複数の層を場合により含む可能性がある。各層間には場合により界面領域が存在する。
【0027】
[0029]本明細書で使用されているように、「界面領域」という用語は、ナノ粒子の2つ以上の部分の間の境界を指している。たとえば、界面領域は、コアとシェルとの間に、又は、シェルの2層の間に配置され得る。一部の事例では、界面領域は、ナノ粒子の一方の部分を形成する材料と、ナノ粒子の別の部分を形成する材料との間で原子的に別々の遷移を示す可能性がある。他の事例では、界面領域は、ナノ粒子の2つの部分を形成する材料の合金であることがある。界面領域は格子整合でも格子非整合でもよく、結晶質、多結晶質、又は、非晶質でもよく、場合によりドーパントを含む可能性がある。界面領域は、実質的に無欠陥でもよく、又は、様々な欠陥密度を含む可能性がある。界面領域は一様でも非一様でもよく、たとえば、段階的又は連続的な遷移が得られるように、ナノ粒子の2つの部分の間で段階的な特性を有する可能性がある。代替的に、遷移は不連続でもよい。界面領域は、およそ1の原子層からおよそ5の原子層までのように、ある範囲の厚さを有する可能性がある。
【0028】
[0030]本明細書で使用されているように、「配位子層」という用語は、ナノ粒子のコアを取り囲む表面配位子の集合を指している。配位子層を含むナノ粒子は同時にシェルを含む可能性がある。したがって、配位子層の表面配位子の集合は、コア、シェル、又は、コアとシェルの両方(たとえば、不完全シェルの場合)に共有結合又は非共有結合される可能性がある。配位子層は、単一タイプの表面配位子、又は、2つ以上のタイプの表面配位子の組み合わせを含む可能性がある。表面配位子は、表面配位子の少なくとも一部分で、コア、シェル、又は、両方に対する親和性を有するか、又は、コア、シェル、又は、両方に選択的に結合される可能性がある。表面配位子は表面配位子に沿って複数の部分で場合により結合されることもある。表面配位子は、場合によりコア又はシェルの何れとも厳密には相互作用しない1つ以上の付加的な活性基を含む可能性がある。表面配位子は、実質的に親水性、実質的に疎水性、又は、実質的に両親媒性である可能性がある。表面配位子の例には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、イミニル基、ヒドリド基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルケンオキシ基、アルキンオキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アルキニルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、チオ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アルキニルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、N−置換アミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、N−置換アルキルカルボニルアミノ基、アルケニルカルボニルアミノ基、N−置換アルケニルカルボニルアミノ基、アルキニルカルボニルアミノ基、N−置換アルキニルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、N−置換アリールカルボニルアミノ基、シリル基、及び、シロキシ基が含まれる。表面配位子のさらなる例には、ポリマー(又は、重合反応のためのモノマー)、無機錯体、分子テザー、ナノ粒子、及び、拡張型結晶構造体が含まれる。配位子層は様々な厚さを有する可能性がある。配位子層の厚さは、配位子層を形成する表面配位子の集合の単分子層の層数に関して画成されることがある。一部の事例では、配位子層は、実質的に単一の単分子層未満であるような、単一の単分子層以下の厚さを有する。
【0029】
概要
[0031]本発明の実施形態は、対象物のマーキングを形成するためのナノ粒子の使用に関係する。マーキングは、再現することが難しいセキュリティマーキングとして役立ち、よって、偽造防止アプリケーションにおいて有利に使用される可能性がある。たとえば、マーキングは、これらのマーキングを有している対象物が真正又は原物であるかどうかを検証するために使用され得る。代替的に、又は、同時に、マーキングは、識別マーキングとして役立ち、よって、在庫アプリケーションにおいて有利に使用される可能性がある。たとえば、マーキングは、これらのマーキングを在庫管理の一部として有している対象物の同一性又は位置を追跡するために使用され得る。
【0030】
[0032]本発明の一部の実施形態の場合、マーキングは、(1)空間パターン、並びに、(2)ナノ粒子の吸収特性と、散乱特性と、ルミネセンス特性と、その他の光学的及び非光学的特性のうちの1つ以上に基づくシグネチャの集合を符号化するためのナノ粒子の配列とを含む複数の要素を含む可能性がある。たとえば、インク組成物が、内部に分散されているフォトルミネセントナノ粒子の集合を含むように形成され、インク組成物が着目中の対象物に印刷され、着目中の対象物にマーキングを形成することがある。マーキングは、バーコードのような空間パターンに形成されることがある。空間パターンは再現できるが、マーキング内のフォトルミネセントナノ粒子のランダム分布は再現することが困難であり、又は、実質的に不可能である。登録プロセスの一部として、マーキングの基準画像がマーキングを照射することにより取得され、基準画像が後の比較のため保存されることがある。認証目的のため、マーキングの認証画像が取得され、認証画像が基準画像と比較されることがある。画像間に十分な一致が存在するならば、着目中の対象物は真正又は原物であるとみなされ得る。有利的には、空間パターンは、基準画像が保存されるときに参照されるインデックスを導出するために使用され、このインデックスは、引き続く画像比較のための基準画像の選択又はターゲット化のために使用され得る。このようにして、このインデックスは、複数の基準画像の時間のかかる探索を必要とすることなく、画像の高速マッチングを可能にする。
【0031】
セキュリティシステム
[0033]図1は本発明の実施形態に従って実施され得るシステム100を説明する図である。さらに後述されているように、システム100は、消費者製品、クレジットカード、身分証明書、パスポート、貨幣などのような様々な対象物の偽造を防止又は削減するためにセキュリティシステムとして機能させられ得る。
【0032】
[0034]図1に示されているように、システム100は、サイトA 102、サイトB 104及びサイトC 106といった幾つかのサイトを含む。サイトA 102、サイトB 104及びサイトC 106は、有線又は無線通信チャネルを介してコンピュータネットワーク108に接続されている。図示されている実施形態では、サイトA 102は、対象物110の製造サイト、流通サイト、又は、小売サイトであり、サイトB 104は、対象物110の認証及び登録サイトであり、サイトC 106は顧客が所在しているサイトである。
【0033】
[0035]図示されている実施形態は、システム100を使用して実行可能な動作の系列を参照してさらに理解され得る。第一に、サイトA 102で、マーキング112が対象物110(又は、対象物110に連結されているか、又は、対象物110を囲む別の対象物)に貼付される。マーキング112は、バーコードのような空間パターンで形成され、フォトルミネセンスを示すナノ粒子のランダム配列を含む。登録プロセスの一部として、マーキング112の基準画像124が光学検出器114を使用して取得され、基準画像124は登録の要求と共にサイトB 104へ伝送される。基準画像124は、空間パターンの表現と共に、ナノ粒子のランダム配列によって生成されたフォトルミネセンスパターンを含む。一部の事例では、マーキング112の複数の基準画像が光学検出器114の様々な設定条件を使用して取得され得る。
【0034】
[0036]第二に、サイトB 104は、基準画像124を受信し、後の比較のため基準画像124を保存する。画像の高速マッチングを可能にするため、空間パターンは、インデックス126を割り当てるか、又は、導出するために使用され、基準画像124がこのインデックス126に関して保存される。図1に図示されているように、サイトB 104は、ウェブサーバのようなサーバコンピュータである可能性があるコンピュータ116を含む。コンピュータ116は、メモリ120に接続されている中央プロセッシングユニット(「CPU」)118を含めて標準的なコンピュータコンポーネントを含む。メモリ120は、基準画像124が内部に保存されているデータベースを含むことがある。メモリ120は、様々な画像処理演算を実行するコンピュータコードを含むこともある。
【0035】
[0037]第三に、サイトC 106で、顧客は、対象物110が真正であるか、又は、原物であるかどうかを検証することを希望することができる。認証プロセスの一部として、マーキング112の認証画像128が光学検出器122を用いて取得され、認証画像128は認証の要求と共にサイトB 104へ伝送される。基準画像124と同様に、認証画像128は、空間パターンの表現、並びに、ナノ粒子のランダム配列によって生成されたフォトルミネセンスパターンを含む。光学検出器122は、基準画像124を取得するときに光学検出器114のため使用された設定条件と同様の設定条件を使用して動作させられ得る。必要に応じて、認証画像128は、基準画像124より解像度が低く、圧縮レベルが高くてもよい。一部の事例では、顧客又は対象物110の位置が決定され得るように、全地球測位座標が認証の要求に包含されることがある。
【0036】
[0038]次に、サイトB 104は、認証画像128を受信し、空間パターンに基づいてインデックス126を再び導出する。インデックス126は、認証画像128との比較に用いる基準画像124を選択するためにメモリ120へのルックアップとして使用される。認証画像128が(たとえば、特定の確率範囲内で)基準画像124と十分に一致するならば、サイトB 104は、対象物110が真正であることを確認するメッセージをサイトC 106の顧客へ送信する。このような確認に加えて、サイトB 104は、製造日、製造場所、有効期限などのような対象物に関係した他の情報を送信可能である。これに反して、認証画像128が基準画像124(又は他の基準画像)と十分に一致しないならば、サイトB 104は、対象物110が真正であることを確認することが不可能である旨(又は、対象物110が複製物である可能性が高い旨)を示すメッセージを送信する。サイトB 104は、偽造のレベルが監視され得るように、認証情報をサイトA 102へ送信することも可能である。
【0037】
[0039]特定のコンポーネント及び動作が具体的な場所に関連して説明されているが、これらのコンポーネント及び動作は様々な他の場所で同様に実施され得ることが考えられる。よって、たとえば、サイトA 102、サイトB 104及びサイトC 106に関連して説明された特定のコンポーネント及び動作は、同じ場所、又は、図1に示されていない別の場所でも実施され得る。さらに、システム100はセキュリティシステムに関連して説明されているが、システム100は、在庫管理の一部として様々な対象物の同一性又は場所を追跡するために在庫システムとしても機能させられ得ることが考えられる。
【0038】
ナノ粒子
[0040]様々なナノ粒子が本明細書に記載されているマーキングを形成するために使用可能である。ナノ粒子は、認証及び同定目的のための特定のシグネチャを提供することが可能である吸収特性と、散乱特性と、ルミネセンス特性と、その他の光学的及び非光学的特性とを示すことがある。一部の事例では、ナノ粒子の光学的特性及び非光学的特性は、電界及び磁界の一方又は両方への応答に変化を示す可能性がある。ナノ粒子の構造に依存して、ナノ粒子の光学的特性及び非光学的特性は量子閉じ込めと関連したサイズ依存性を示す可能性がある。しかし、ナノ粒子の光学的特性及び非光学的特性はサイズ依存性もまた実質的に欠ける可能性があると考えられる。感光性である(たとえば、紫外線範囲内の光によって照射されたときに酸化する)ナノ粒子は、1回限りの読み取りアプリケーション又は読み取り感応型アプリケーションに使用され得る。
【0039】
[0041]散乱の場合、ナノ粒子は、紫外線範囲、可視範囲、赤外線範囲、又は、紫外線範囲と可視範囲と赤外線範囲の組み合わせで光を散乱させ得る。散乱光の強度はある程度の個数の要因に依存する可能性がある。たとえば、比較的高い散乱強度は比較的短い入射光の場合に出現する可能性がある。同様に、散乱光の強度は、ナノ粒子の散乱断面に依存する可能性があり、ナノ粒子の散乱断面が今度はサイズ、形状、及び、ナノ粒子と周囲材料との間の屈折率差に依存する可能性がある。一部の事例では、散乱断面は、コアとシェルが異なる屈折率を有するナノ粒子を形成することにより補強される可能性がある。
【0040】
[0042]ルミネセンスの場合、ナノ粒子は、紫外線範囲、可視範囲、赤外線範囲、又は、紫外線範囲と可視範囲と赤外線範囲の組み合わせで光を放出可能である。放射光の強度はある程度の個数の要因に依存する可能性がある。たとえば、放射光の強度並びに偏光はナノ粒子の形状に依存する可能性がある。同様に、放射光の強度は、入射光の強度、及び、ナノ粒子の単位面積当たりの質量密度に依存する可能性がある。次に、単位面積当たりの質量密度は、ナノ粒子のサイズ及び単位面積当たりのナノ粒子の個数に依存する可能性がある。
【0041】
[0043]一部の事例では、マーキングの画像を検出するときにルミネセンス特性と散乱特性を区別することが望ましい。したがって、たとえば、散乱光からの寄与分を実質的に削減、除去、又は、フィルタで除去する間にマーキングのフォトルミネセンス画像を取得することが望ましい。特に、マーキングは、ポリマーバインダー内で分散させられた、又は、紙のような基材内に組み込まれたナノ粒子の集合を含む可能性があり、結果画像は、さもなければ、汚れに対応する散乱中心からの寄与分又は他の背景散乱(たとえば、ポリマーバインダー又は基材)からの寄与分を含むことになる。フォトルミネセンス特性と散乱特性は、ある程度の個数の要因に依存して区別され得る。たとえば、放射光及び散乱光は、入射光の強度及び波長に異なる依存性を示す可能性がある。特に、フォトルミネセント材料とは異なり、非フォトルミネセント材料は、入射光の強度に直線的に依存し、かつ、入射光の波長の逆4乗として拡大縮小する強度で典型的に光を散乱する。したがって、入射光の強度及び波長を適切に調整することにより、入射光と散乱光の相対強度は希望のレベルに合わされる。別の実施例として、散乱光は第1の波長の集合を含む可能性があり、放射光は第1の波長の集合とは異なる第2の波長の集合を含む可能性がある。特に、第2の波長の集合は、ダウンコンバージョンの場合には、より長い波長(又は、アップコンバージョンの場合には、より短い波長)を含む可能性がある。よって、このような波長の差を適切に利用することにより、画像が主として放射光又は散乱光の何れかから取得され得る。
【0042】
[0044]本発明の特定の実施形態では、ナノ粒子は、ルミネセンスを示す材料で形成されたコアを含むことがある。コアは約1nm〜約100nmの範囲の寸法を有し、コアは約1単分子層から約100nmの範囲の寸法を有するシェルによって取り囲まれている可能性がある。
【0043】
[0045]コアを形成するため使用され得る材料は、たとえば、酸化物(たとえば、遷移金属酸化物及びポスト遷移金属酸化物と、ワイドバンドギャップ半導体酸化物と、間接バンドギャップ半導体酸化物と、その他の適切な酸化物)、硫化物、及び、リン酸塩を含む。酸化物、硫化物、及び、リン酸塩は、ルミネセンスを示す遷移金属又は希土類元素でドープされることがある。かくして、たとえば、コアは、Mnドープ型ZnO、Mnドープ型TiO、Ce又はその他の希土類元素ドープ型LaPO、遷移金属又は希土類元素ドープ型シリコン酸化物、又は、遷移金属又は希土類元素ドープ型ワイドバンドギャップ半導体酸化物で形成されることがある。コアを形成するため使用され得るその他の材料の例には、Si及びGeのような第IV族元素を含む間接バンドギャップ半導体と、貴金属、金、銀、銅、及び、紫外線範囲、可視範囲又は赤外線範囲でプラスモン共鳴(たとえば、吸収限界)を有するその他の金属のような金属とが含まれる。
【0044】
[0046]コアを形成するため使用され得るさらなる材料の例には、望ましい吸収波長(又はエネルギー)、望ましい放射波長(又はエネルギー)、及び、望ましいフォトルミネセンス量子効果とを有するフォトルミネセント材料が含まれる。表1は、これらの望ましい特性を有する特定の材料の例を掲載している。
【表1】

【0045】
[0047]シェルを形成するため使用され得る材料には、たとえば、真性半導体、真性絶縁体、酸化物(たとえば、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物)、及び、金属が含まれる。シェルは、コアに周囲保護及び隔離を提供することが可能である。シェルは、ナノ粒子が内部に分散されているコーティング又はインク組成物との化学的適合性を提供することも可能である。一部の事例では、配位子層がシェルの代わりに、又は、シェルと組み合わせて使用されることがある。
【0046】
[0048]ナノ粒子を形成する方法は、熱水沈殿、化学沈殿、焼結、及び、ボールミル粉砕又はその他のミル加工による粉砕を含む。得られるナノ粒子は単分散性でも多分散性でもよい。
【0047】
ナノ粒子を使用して形成されたマーキング
[0049]本発明の一部の実施形態の場合、マーキングは、認証目的、識別目的、又は、両方の目的のため使用され得る複数の要素を含む可能性がある。一部の事例では、マーキングは、以下の要素、すなわち、(1)空間パターン、及び、(2)ナノ粒子の配列を含む可能性がある。特定のアプリケーションに依存して、マーキングは、明示的でも、非明示的でも、又はその両方でもよい。明示的マーキングは可視的なマーキングであり、非明示的マーキングはある種の装置を使用して検出されるマーキングである。
【0048】
A.空間パターン
[0050]マーキングは、バーコード、数字、ロゴ、又は、テキストのような空間パターンで形成されることがある。空間パターンは、比較的進歩した画像解析を必要とすることなく、初期的な認証又は識別のレベルを提供することが可能である。よって、たとえば、マーキングはバーコードとして形成され、バーコード読み取り装置によって簡単に読み取ることが可能である。同様に、空間パターンは、マーキングの画像を取得するときに、光検出器に対するマーキングの適切なアライメントを円滑にするために方向付けキューとしても役に立ち得る。マーキングのアライメントは、手動で、又は、様々な光学的及び磁気的イメージング方法を使用して実行され得る。空間パターンは画像の保存及びマッチング中に画像アライメントのため使用され得るということも考えられる。有利的には、空間パターンは、マーキングの画像の高速マッチングをさらに可能にさせる。特に、登録プロセスの一部として、空間パターンは、マーキングの基準画像の保存に関連するインデックスを導出するために使用され得る。次に、認証プロセスの一部として、空間パターンは、マーキングの認証画像が基準画像と直接的に比較されるように、したがって、時間をかけて複数の基準画像を探索する必要無しに、インデックスを導出するために再び使用される。
【0049】
B.ナノ粒子の配列
[0051]マーキングは、ナノ粒子の吸収特性と、散乱特性と、ルミネセンス特性と、その他の光学的及び非光学的特性との1つ以上に基づいてシグネチャの集合を提供するナノ粒子の集合を含む可能性がある。一部の事例では、ナノ粒子は、2次元又は3次元配列として分布させられ、バーコードのような空間パターン内に組み込まれることがある。ナノ粒子は空間パターンから離れて配置されることがあると考えられる。さらに後述されるように、ナノ粒子は、実質的に一意のシグネチャを提供するようにランダムに分布させられることがある。
【0050】
[0052]マーキングを形成するために使用されるナノ粒子は、単一のサイズ又は複数のサイズを有する可能性がある。ナノ粒子の光学的特性はサイズ依存性であるので、複数のサイズの使用は(たとえば、減法的な意味で、又は、放射の意味で)複数の色を生じさせる可能性がある。
【0051】
[0053]ある種のアプリケーションでは、ナノ粒子は、コーティング内、膜内、スラブ内、又は、その他の対象物内のようなマトリックス材料内にランダムに分布させられる可能性がある。マトリックス材料は、望ましくは実質的に透明であるので、ナノ粒子によって生成された放射光又は散乱光は結果として得られる画像内で識別され得る。たとえば、マトリックス材料は、ポリカーボネート、ポリスチレン、若しくは、ポリビニルクロライドのようなポリマー、又は、珪酸塩、ホウ珪酸塩、若しくは、リン酸塩のような無機ガラスを含む。マトリックス材料は実質的に透明でなくてもよく、たとえば、紙を含む可能性があると考えられる。厚さが約10μm未満であるといった薄膜の場合、ナノ粒子は単一光学平面内で2次元配列として事実上見える可能性がある。より厚い膜、又は、自律的なスラブの場合、ナノ粒子は3次元配列として見える可能性がある。この場合、結果として得られるナノ粒子の画像は、光検出器の視角に依存する可能性がある。必要に応じて、ナノ粒子は、複数の方向及び角度から見え、様々な画像を生じる。
【0052】
[0054]一部の事例では、ナノ粒子は、様々な寸法及び形状を有するより大きい粒子に組み込まれている可能性がある。たとえば、ナノ粒子は、複数個のナノ粒子が単一のビーズ内に存在するように、約20nmから約1μmまでの寸法を有する透明ビーズに組み込まれている可能性がある。1ビーズ当たりのナノ粒子の個数は放射光又は散乱光の強度に影響を与える可能性がある。様々なサイズ又はタイプのナノ粒子を単一のビーズに組み込むことにより、複数のカラーがそのビーズに組み込まれる可能性がある。ナノ粒子を含むビーズは、上述されている形式と同様の形式でコーティング、膜、スラブ、又は、他の対象物に組み込まれている可能性がある。ビーズの使用は、典型的に個別のナノ粒子では実現され得ないミキシングの変化を可能にできる。
【0053】
[0055]マーキングを形成するために使用されるナノ粒子は、(空間パターンによって提供される初期レベルに加えて)複数のセキュリティ又は識別のレベルを提供する複数のシグネチャを提供することが可能である。各シグネチャは他のシグネチャとは独立に使用可能であり、一部の事例では、ある種のシグネチャがセキュリティのレベルを低下させるために削除又は省略されることがある(しかし、コスト及び処理時間も削減される)。比較的低レベルのセキュリティを提供するシグネチャは、比較的高いレベルのセキュリティを提供する別のシグネチャの探索空間を縮小するために使用され得ると考えられる。
【0054】
[0056]一部の事例では、複数のシグネチャは、以下のような1つずつの符号化スキームと関連付けられている可能性がある。
【0055】
(1)カラー符号化
[0057]マーキングの色は、偽造防止アプリケーション及び在庫アプリケーションのため使用され得る特定の光学的シグネチャを提供することができる。色は、光検出器又は光検出器の組み合わせを使用して視覚的に検出可能である。
【0056】
[0058]上述されているように、マーキングは、個別のナノ粒子の集合、又は、ビーズのようなより大きな粒子に組み込まれているナノ粒子の集合を含むインク組成物から形成されることがある。ナノ粒子は、量子閉じ込めと関連付けられたサイズ依存性特性を示すように、量子閉じ込めサイズより小さいサイズを有する可能性がある。したがって、たとえば、ナノ粒子の吸収スペクトルはナノ粒子のサイズに依存していることがある。量子閉じ込めサイズはナノ粒子を形成する材料に依存する可能性があり、約1nm未満から約40nmまで広がることがある。ナノ粒子が量子閉じ込めサイズより大きいならば、吸収スペクトルはナノ粒子を形成する材料に固有である(たとえば、主として材料の組成に依存する)。
【0057】
[0059]一部の事例では、マーキングの色は視覚的に検出されるので、マーキングは、明示的なセキュリティ又は識別マーキングとしての機能を果たし得る。特に、マーキングは、(たとえば、可視範囲の光を吸収する)着色されたナノ粒子の集合から形成され得る。このような事例では、マーキングの色は、典型的に減色又は反射色である。他の事例では、マーキングは、紫外線範囲、赤外線範囲、又は、両方の範囲の光を主として吸収するナノ粒子の集合から形成されることがある。その結果として、マーキングは無色又は白色に見えることがあり、非明示的なセキュリティ又は識別マーキングとしての機能を果たし得る。このような事例では、マーキングの色は、紫外線範囲又は赤外線範囲の光に感応し、紫外線範囲又は赤外線範囲の光を選択するパスフィルタ又はスペクトロメータを含む光検出器を用いて決定される。
【0058】
[0060]マーキングは、ルミネセンスを示すナノ粒子の集合から形成されている可能性もある。この場合、入射光と放射光は異なる波長を有することがある。よって、たとえば、ナノ粒子は、入射光より長い波長、すなわち、低いエネルギーで光を放射することが可能である。入射光は紫外線範囲又は可視範囲に入ることがあり、一方、放射光は紫外線範囲、可視範囲、又は、赤外線範囲に入ることがある。紫外線で励起されたナノ粒子の場合、ナノ粒子は、可視範囲内の光を殆ど又は全く吸収できず、マーキングは減法的な意味で無色に見える可能性がある。しかし、放射光は可視範囲内に入り、マーキングは放射されたときに着色されて見える可能性がある。他の事例では、放射光は紫外線範囲内又は赤外線範囲内に入り、マーキングは放射されたときに無色のまま維持される可能性がある。
【0059】
[0061]ルミネセンス分光法が放射光と入射光の強度及び波長を決定するために使用され得る。一部の事例では、ルミネセンス分光法の動作は、ナノ粒子の集合の半値全幅(「FWHM」)及びストークスシフトに依存する可能性がある。FWHMは、典型的に、ナノ粒子の放射バンドの幅を指し、ストークスシフトは、典型的に、ナノ粒子の放射バンドと吸収バンドとの間の分離を指す。比較的小さいFWHMは、典型的に、特定の光学的シグネチャを解明するために必要とされる比較的小さいストークスシフトに変化する。所与のFWHMに対し、放射バンドと吸収バンドとの間の不完全な分離は、入射光からの背景雑音に起因して望ましくないレベルの信号対雑音比を生じることがある。よって、ナノ粒子は、大きいストークスシフトと、高強度の入射光を有することが望ましい。一部の事例では、ルミネセンスは、ナノ粒子が入射光より短い波長、すなわち、高いエネルギーで光を放出できるように、反ストークス(たとえば、アップコンバージョン)である可能性もある。このようなアップコンバージョンは、ある種の希土類元素によって示され、赤外線範囲内の光の照射中に可視範囲内の光の放射を生じる可能性がある。
【0060】
(2)パターニング符号化
[0062]マーキングの種々の色は、偽造防止アプリケーション及び在庫アプリケーションのため使用可能な特定の光学的シグネチャを提供することもある。色は、光検出器、又は、光検出器の組み合わせを用いて視覚的に検出可能である。
【0061】
[0063]上述されているように、マーキングは、バーコードのような空間パターンで形成され得る。マーキングの種々の部分は、特定の色を有するそれぞれのインク組成物から形成され得る。したがって、たとえば、各バーは特定の色を有するように形成され得る。このような方法で、マーキングは特定の色のパターンを有するように形成され得る。マーキングの各部分は、特定の散乱特性のような別の特定の特性を有するように形成され得ると考えられる。マーキングは、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、又は、凹版印刷のような標準的な印刷方法を使用して印刷され得る。使用されるインク組成物は、特定の印刷方法及び特定の基材(たとえば、基材が、紙のような吸収性基材であるか、又は、プラスチックのような非吸収性基材であるか)に依存する可能性がある。
【0062】
(3)ランダム符号化
[0064]ナノ粒子の集合のランダム位置は、ランダム符号に類似している、実質的に一意である光学的シグネチャを含む結果画像を与える可能性がある。異なる光学的シグネチャの個数は、離散的な散乱又はルミネセント中心の個数及び光検出器の分解能と、通信チャネルと、メモリとのような要因に依存する可能性がある。離散的な散乱又はルミネセント中心の個数は比較的大きい(たとえば、約1000より大きい)ので、異なる光学的シグネチャの個数は、再現を難しくするか、又は、実質的に不可能にさせるために十分な大きさである(たとえば、約1030を上回る)。一部の事例では、画像はある特定の個数のグリッド位置を備えるグリッドに分割され得る。各グリッド位置は、そのグリッド位置又はグリッド位置付近に配置されているナノ粒子を保有するか、又は、保有しない可能性がある。グリッド位置の個数(たとえば、グリッドのサイズ)は、光検出器の空間分解能に対応する可能性がある。たとえば、各グリッド位置は、10画素のようなある特定の画素数に対応することがある。したがって、10画素を有する1メガピクセルカメラは、10個のグリッド位置を有するグリッドを生成するであろう。本実施例では、最大で2100,000すなわち約1030,000個の異なる光学的シグネチャが生成され得る。別の実施例では、異なる光学的シグネチャの個数は、10μmのグリッドに対し、10100個を上回ることがある。ナノ粒子の位置はグリッドに沿ってX方向とY方向の両方へ実質的に連続的に変化する可能性があるので、光検出器の空間解像度は、異なる光学的シグネチャの個数を制限するか、又は、上限を設定する。しかし、サブピクセル分解能法が異なる光学的シグネチャの個数を増加させるために使用可能であると考えられる。さらに、異なる光学的シグネチャの個数は、複数の光学的特性(たとえば、吸収、散乱、及び、ルミネセンス)を検出することによって増加させられ、この場合、異なる光学的シグネチャの個数は光検出器の空間分解能が乗じられた光学的特性の個数に一致することがある、と考えられる。
【0063】
[0065]フォトルミネセンスの場合、放射光は入射光の強度及び波長に依存する可能性があり、光学的シグネチャは入射光の強度及び波長の一方又は両方に関して符号化される可能性がある。マーキングは、汚れ、表面傷、及び、その他の損傷によって劣化することがある。しかし、それにもかかわらず、汚れ及び表面傷は典型的に、フォトルミネセントナノ粒子の集合とは異なる強度及び波長応答を有するので、光学的シグネチャは検出され得る。入射光の複数の強度及び波長は、光学的シグネチャの検出を円滑にする。一部の事例では、結果として生じる画像はナノ粒子の集合とは異なる強度レベルを含むことがある。このような事例では、画像は、各グリッド位置においてナノ粒子の有無に関して単に2進であるのではなく、強度がマルチレベルである。上述されているように、ナノ粒子は、インク組成物内で色素としての役目をするか、又は、コーティング組成物内でキャリアとしての役目をするより大きい粒子に組み込まれることがある。このようにして、異なる強度レベルは、より大きい粒子内でのナノ粒子の濃度又は個数を変化させることによって達成され得る。
【0064】
[0066]エレクトロルミネセンスの場合、放射光は印加された電界の強さに依存する可能性があり、光学的シグネチャはその強さに関して符号化されることがある。その上、放射光の強度及び波長はマーキングを形成するため使用されるインク組成物の組成に依存する可能性がある。インク組成物は、導電性バインダ内に分散させられたエレクトロルミネセントナノ粒子の集合を含むことがある。マーキングを形成するとき、第1の導電性層を形成するために、導電性材料が基材上に最初に堆積させられる。次に、インク組成物がマーキングを形成するために第1の導電性層上に堆積させられ、同一又は異なる導電性材料が第2の導電性層を形成するためにマーキング上に堆積させられることがある。このようにして、マーキングは2つの導電性層の間の平面ギャップを埋めることができる。2つの導電性層は、その後に、電源に接続され、電流がマーキングを流れるときに、マーキング内のナノ粒子が光を放射する可能性がある。
【0065】
[0067]図2は、3種類のナノ粒子のランダム配列に対して獲得され得る3つの異なる画像200、202及び204を示す図である。図2に示されているように、各配列内のナノ粒子のランダム位置は実質的に一意であるフォトルミネセンスパターンを提供可能である。
【0066】
(4)スペクトル符号化
[0068]マーキングは、異なる吸収スペクトル及び放射スペクトルを有するナノ粒子の混合物で形成されることがある。異なる吸収スペクトル及び放射スペクトルは、偽造防止アプリケーション及び在庫アプリケーションのための特定の光学的シグネチャを提供することが可能である。特定の光学的シグネチャはルミネセンス分光法を用いて検出され得る。
【0067】
(5)偏光符号化
[0069]マーキングを形成するナノ粒子の集合の特定の特性に依存して、マーキングは複屈折を示す可能性があり、したがって、入射光、放射光、又は、両方の偏光に感応できる。この偏光感度は、偽造防止アプリケーション及び在庫アプリケーションのための特定の光学的シグネチャを提供することも可能である。偏光符号化に使用されるナノ粒子は、ナノロッド又はナノ楕円のような1より大きいアスペクト比を有し、たとえば、流動誘起アライメントを使用して、優先方向へ整列させられ得る。偏光は、典型的に、光の電界成分の方向を意味することが理解されよう。電界成分の方向は、直線偏光の場合には光の伝播方向と直交し、円形偏光の場合には回転することもある。偏光の程度は光検出器及び回転可能な直線偏光子を使用して決定され得る。光が無偏光であるならば、光検出器における強度は典型的に直線偏光子の回転による影響を受けない。しかし、光が偏光されているならば、直線偏光子の回転は、直線偏光子が光の偏光と直交する方向から光の偏光と平行である方向まで回転するときに、光検出器における強度を0%から100%まで変化させる可能性がある。
【0068】
[0070]一部の事例では、偏光と強度との間の関係は、以下の式:P=(Iparallel−Iperpendicular)/(Iparallel+Iperpendicular)によって表現可能である。ここで、Iparallelは、入射光の偏光と平行(又は、ナノ粒子の集合のアライメントと平行)である偏光を有する放射光の強度であり、Iperpendicularは、入射光の偏光と直交する(又は、ナノ粒子のアライメントと直交する)偏光を有する放射光の強度である。Pは偏光の程度であり、ランダムに整列させられたナノ粒子の場合に0から1/2まで変化し、優先方向へ整列させられたナノ粒子の場合に0から1まで変化する可能性がある。
【0069】
[0071]ランダムに整列させられたナノ粒子(又は、およそ1のアスペクト比を有するナノ粒子)の場合、入射光及び放射光に対する偏光感度は典型的に殆ど無いか、又は、全く無い。優先方向へ整列させられたナノ粒子の場合、吸収の強度は入射光の偏光に依存する可能性がある。ナノ粒子のアライメント方向と平行である偏光を伴う入射光は、アライメント方向と直交する偏光を伴う入射光より強く吸収され得る。吸収の強度がより大きいという結果として、放射光の強度は、アライメント方向と平行である偏光を伴う入射光の場合より同様に大きくなる。ナノ粒子のアスペクト比が増加するのに連れて(たとえば、ナノ粒子の形状が球から円板又はロッドへ変化するのに連れて)、偏光感度の程度は増加する。
【0070】
(6)磁気符号化
[0072]マーキングを形成するナノ粒子の集合の特定の特性に依存して、マーキングは強磁性を示すこともある。磁気符号化で使用されるナノ粒子は、1より大きいアスペクト比を有し、優先方向へ整列させられることがある。その上、ナノ粒子は強磁性であるかもしれない。強磁性ナノ粒子の例には、Mnドープ型ZnOで形成された強磁性ナノ粒子、及び、その他の強磁性材料で形成された強磁性ナノ粒子が含まれる。これらの強磁性ナノ粒子は、ビーズのようなより大きい粒子に組み込まれることがある。非強磁性ナノ粒子が、複合ビーズのような複合粒子を形成するために、強磁性材料と組み合わされることも考えられる。
【0071】
(7)他のタイプの符号化
[0073]ナノ粒子の集合の吸収スペクトル及び放射スペクトルは磁界及び電界によって修正され得る。磁界及び電界は、偽造防止アプリケーション及び在庫アプリケーションのための他のタイプの符号化スキームを提供するために使用され得る。
(i)ゼーマン効果符号化:原子又は分子のエネルギーレベルは磁界を印加することにより分離され得る。たとえば、Euドープ型酸化物で形成されたナノ粒子、又は、ドープリン酸塩で形成されたナノ粒子は、約1テスラの磁界が印加されているときに、約20nmの波長でルミネセンスを示す可能性がある。
(ii)シュタルク効果符号化:原子又は分子のエネルギーレベルは電界を印加することにより分離され得る。たとえば、Euドープ型酸化物で形成されたナノ粒子、又は、ドープリン酸塩で形成されたナノ粒子は、約10V/μmの電界が印加されているときに、約10nmの波長でルミネセンスを示す可能性がある。
【0072】
[0074]具体的な例として、マーキングは、3レベルのセキュリティ又は識別を提供することが可能である。初期レベルは、視覚的に読み取られるか、又は、光検出器を使用して読み取られるバーコード又は数字によって与えられることがある。第2のレベルはマーキングの色によって与えられることがある。次に、第3の最高レベルは、(たとえば、2次元又は3次元での)ナノ粒子の集合のランダム分布、及び、ナノ粒子の光学的特性と非光学的特性の組に基づいている実質的に一意の光学的シグネチャによって与えられる。
【0073】
マーキングの形成
[0075]種々の方法が本明細書に記載されているマーキングを形成するために使用され得る。一部の事例では、コーティング、インク、又は、ワニス組成物は、内部に分散させられているナノ粒子の集合を含むように形成され得る。組成物は、溶媒、湿潤剤(たとえば、界面活性剤)、ポリマーバインダー(又はその他の媒体)、消泡剤、防腐剤、及び、pH調整剤のうちの1つ以上と共に、色素成分として、ナノ粒子を含むことがある。次に、コーティング方法又は印刷方法が、基材としての役目を果たす着目中の対象物(又は、着目中の対象物に結合されているか、又は、着目中の対象物を取り囲む別の対象物)に組成物を堆積させるために使用され得る。よって、たとえば、マーキングは、ローラーコーティング又はスプレイコーティングのような標準的なコーティング方法を使用して、又は、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、凹版印刷、又は、スクリーン印刷のような標準的な印刷方法を使用して、形成され得る。標準的なコーティング又は印刷方法を使用すると、ナノ粒子は空間パターン内にランダム配列として堆積させられ、画像のアライメント及びマッチングを可能にさせる。
【0074】
[0076]より高いレベルのセキュリティを達成するために、コーティング、インク、又は、ワニス組成物は、化学分析方法を使用するときに、混合型の複合シグネチャを提供する不活性マスキング剤の集合を含む可能性がある。同様に、組成物は比較的低濃度(たとえば、マーキング毎に数マイクログラム)のナノ粒子を含むので、化学分析を難しくさせる。さらに、ナノ粒子のサイズ依存性特性は、バルク形式の同じ組成の物質によって容易に再現できないシグネチャの集合を提供する可能性がある。
【0075】
[0077]他の事例では、マーキングは、着目中の対象物(又は、着目中の対象物に結合されている、若しくは、着目中の対象物を取り囲む別の対象物)内部にナノ粒子の集合を組み入れることによって形成され得る。したがって、たとえば、ナノ粒子は、後で堆積させられるのではなく、着目中の対象物の形成中に組み入れられ得る。特に、ナノ粒子を含むマトリックス材料が膜、スラブ、又は、その他の形状に鋳造され得る。
【0076】
光検出器
[0078]種々の光検出器が本明細書に記載されているマーキングを検出するため使用され得る。上述されているように、マーキングは複数のレベルのセキュリティ又は識別を提供可能であり、光検出器は、全レベル、又は、簡略化とコスト削減のため限られたレベルの集合を検出可能である。
【0077】
[0079]一部の事例では、光検出器は、光源と、光源に結合されている読み取り装置とを含む。対象物の登録、並びに、その後の対象物の認証及び識別を容易化するために、携帯型演算装置が光検出器として使用されることができる。携帯型演算装置の例には、ラップトップコンピュータ、パームサイズコンピュータ、タブレットコンピュータ、個人情報端末、カメラ、及び、携帯電話機が含まれる。
【0078】
A.光源
[0080]マーキングの特定の特性に依存して、光源は、紫外線範囲、可視範囲、赤外線範囲、又は、紫外線範囲と可視範囲と赤外線範囲の組み合わせに波長の集合を有する入射光を生成可能である。フォトルミネセンス画像の検出のため、入射光の波長はナノ粒子の集合の吸収バンドと一致させられることがある。ナノ粒子の混合物の場合、入射光は異なる吸収バンドと一致させられた複数の波長を有することがある。複数の波長の使用は、異なるフォトルミネセンス画像の集合がこれらの複数の波長に基づいて生成されることを可能にさせる。散乱画像の検出のため、散乱光の強度は、入射光の波長、ナノ粒子の集合の散乱断面、及び、ナノ粒子の組成(たとえば、ナノ粒子を形成するコア及びシェルの組成)のようなある程度の個数の要因に依存する可能性がある。入射光の一様性は、マーキングの異なる領域についての放射光と散乱光の相対的な強度に影響を与える可能性がある。入射光の偏光は、異方性又は不揃いの形状のナノ粒子に基づいて生成された画像の検出のための重要な要因である可能性がある。その上、入射光は、たとえば、レーザーによって生成され、又は、レンズによって集光されることによりコリメート化(又は準コリメート化)され、コリメーションの程度はナノ粒子、特に、異方性ナノ粒子の集合のルミネセンス特性及び散乱特性に影響を与える可能性がある。一部の事例では、入射光の強度は変調(たとえば、連続周波数又は可変周波数で周波数変調)され、このような強度変調は、符号化スキームの一部として、画像検出の一部として、又は、両方として有利に使用されることがある。
【0079】
[0081]光源の例には、白熱光源、発光ダイオード、レーザー、太陽光、及び、周囲光源が含まれる。ナノ粒子の集合のフォトルミネセント特性及び散乱特性は、光源のスペクトルに依存する可能性がある。特に、周囲光源及び白熱光源は、多くの場合に、拡大された波長の範囲に亘って連続スペクトル出力を有し、一方、発光ダイオード及びレーザーは短い波長の範囲に亘るスペクトル出力を有する。一部の事例では、レーザーは、たとえば、スペックルパターンを使用する位相感応型検出のため使用できるコヒーレント光を提供するので、レーザーが望ましい。他の事例では、カラービデオモニタ、コンピュータモニタスクリーン、又は、携帯電話機のスクリーンのようなその他のカラーディスプレイスクリーンが、比較的狭い波長の範囲に亘る、典型的に、約100nmの半値全幅に亘る光源として使用され得る。さらに別の事例では、たとえば、カメラ、又は、カメラ付き携帯電話機のフラッシュユニットが光源として使用され得る。
【0080】
B.読み取り装置
[0082]読み取り装置は、多次元イメージャのようなイメージャと、イメージャとマーキングとの間に配置されている光学ユニットとを含むことがある。マーキングと光源とに関する読み取り装置の相対的な姿勢(たとえば、角度及び距離)は、一定でもよく、又は、マーキングを照射し、マーキングから獲得された画像の特性を検出することにより、読み取り中に決定されてもよい。一部の事例では、光源に対する読み取り装置の相対的な姿勢は、放射光及び散乱光の相対的な強度に影響を与え、画像のマッチングのため符号化される可能性がある。さらに、読み取り装置の空間分解能、スペクトル分解能、及び、フィールドサイズは、結果として得られる画像内で分解可能な光学的シグネチャの個数に影響を与える可能性がある。その上、読み取り装置のスペクトル応答は、たとえば、一定線幅のナノ粒子の分解される可能性がある色の範囲及び個数に影響を与える可能性がある。
【0081】
[0083]一部の事例では、イメージャは、デジタルカメラに含まれているような電荷結合デバイスを含むことがある。デジタルカメラはデジタル保存用の画像を記録するために使用され得る。デジタルカメラはコンピュータネットワークに接続され、又は、後でコンピュータネットワークへダウンロードするため画像をフラッシュスティックのようなローカル記憶装置に保存するために使用される可能性がある。たとえば、デジタルカメラは、画像をコンピュータネットワークへ無線伝送することができる携帯電話機の一部でもよい。
【0082】
[0084]光学ユニットは、レンズ、絞り、フィルタ、偏光子、及び、レンズと絞りとフィルタと偏光子とレンズとの組み合わせのような光学要素の集合を含む可能性がある。たとえば、厚い膜又はスラブの内部に組み込まれているマーキングのための奥行き分解可能な符号化スキームの場合、光学ユニットはマーキングの3次元分解能を決定するために使用され得る。コヒーレント光を与えるレーザーの場合、位相感応型検出はセキュリティのレベルの向上のため使用され得る。この場合、光学ユニットは分割光路を含む可能性がある。その他のタイプの光学要素が、特定の波長の集合、特定の偏光、又は、特定の強度の範囲のような着目中の光学特性を選択するために使用され得る。一部の事例では、フィルタは光源からの寄与分を除去するために使用され得る。フィルタは短波長遮断フィルタでもよく、長波長遮断フィルタでもよく、又は、ノッチフィルタでもよい。たとえば、短波長遮断フィルタは550nm未満の波長を除去するために使用され得る。
【0083】
画像処理
[0085]種々の方法がマーキングの未加工画像を伝送及び保存に適したフォーマット(たとえば、デジタルフォーマット)に変換するため使用され得る。特に、フーリエに基づく方法及びウェーブレットに基づく方法のような種々の画像変換方法と、ムービング・ピクチャー・エキスパート・グループ(「MPEG」)、又は、ジョイント・フォトグラフィック・エキスパート・グループ(「JPEG」)と関連付けられている方法のような種々の画像圧縮方法が画像の伝送及び保存のため使用され得る。一部の事例では、画像はある程度の個数のグリッド位置を有するグリッドに分割され得る。各グリッド位置は放射光又は散乱光の強度値と関連付けられることがある。この位置及び強度情報は、たとえば、偏光情報、スペクトル情報、奥行き、照射又は検出の角度、位相情報、及び、マーキングによって符号化されるその他の情報とさらに関連付けられることがある。後に続く画像のマッチングを容易化するため、未加工画像から導出された情報の集合は、リレーショナルデータベースのようなデータベースに保存されることができる。特に、情報の集合は、マーキングと関連付けられているバーコード又はその他の空間パターンから導出されたインデックスに関連させて保存され得る。
【0084】
[0086]種々の方法が、十分な一致があるかどうかを判定するためにマーキングの画像を比較するため使用され得る。上述されているように、マーキングは、複数のセキュリティ又は識別のレベルで情報を符号化でき、画像の比較は、全レベルで、又は、簡略化とコスト削減のため限られたレベルの集合で実行され得る。
【0085】
[0087]上述されている本発明の実施形態は一例として与えられ、種々の他の実施形態及び利点が本発明によって提供されることが理解されるべきである。
【0086】
[0088]たとえば、図1を参照すると、サイトB 104は、たとえば、(1)販売又は特別販売促進、(2)同一又は異なる製造業者からの補完的な製品、(3)顧客の関心がある可能性のある他の製品、及び、(4)顧客の関心がある可能性のあるウェブサイトのような市場情報及び広告情報を含む他の情報を顧客へ送信可能であると考えられる。上記の方法で動作することにより、サイトB 104は、(1)顧客は自分が真正製品を購入中であることを検証可能である、(2)顧客は他の関連製品を購入可能である、(3)製品の真正を検証できる能力は製品区別を行うことができる、(4)製造業者は小売店における在庫が真正であるかどうかを判定可能である、(5)製造業者は認証のための要求の回数によって(実際の購入が無い場合であっても)製品に対する関心を追跡可能である、及び、(6)製造業者は全地球測位座標又はその他の情報(たとえば、携帯電話番号)に基づいて購入済み製品を追跡可能である、といった利益を提供可能である。一部の実施形態では、サイトB 104は、(1)マーキング112(又は、マーキング112を形成するために使用されるインク組成物)、(2)画像の保管、(3)製造業者へのアクセスの容易化、(4)製品が真正であるかどうかの確認、(6)製品に関連した広告、及び、(6)他のウェブサイトへのアクセスの容易化のうちの1つ以上に基づいて収益を得ることが可能である。
【0087】
[0089]別の実施例として、マーキングは、複数のセキュリティのレベルを提供するために、明示的要素及び非明示的要素の両方を含むことができる。初期基準画像はマーキングの明示的要素及び非明示的要素の両方を表現可能である。比較的低いセキュリティのレベルでは、後続の認証画像は比較的低解像度でもよく、比較的小さい画像エリアを含むことがある。さらに、認証画像はマーキングの明示的要素を表現するだけでもよい。比較的高いセキュリティのレベルでは、認証画像は比較的高解像度でもよく、マーキングの非明示的要素をさらに表現可能である。たとえば、マーキングは可視(たとえば、着色)ナノ粒子と無色ナノ粒子の両方で形成されることがある。特に、一方のナノ粒子の集合は着色されているように見え、別のナノ粒子の集合は、照射の無い場合には無色に見えるが、照射中には着色されているように見える。ナノ粒子の集合の考えられる吸収特性/放射特性の組み合わせは、紫外線範囲/紫外線範囲、紫外線範囲/可視範囲、紫外線範囲/赤外線範囲、可視範囲/可視範囲、可視範囲/赤外線範囲、及び、赤外線範囲/可視範囲を含む(たとえば、アップコンバージョンによる)。
【0088】
[0090]別の実施例として、マルチスペクトルイメージングが複数の波長でマーキングのカラー画像の系列を取得するために使用され得る。カラー画像は、光の吸収、光の放射、又は、光の吸収と放射の両方に基づく可能性があり、結果として得られる色は、減法的な意味、放射の意味、又は、減法と放射の両方の意味である。たとえば、マーキングは、250nm/611nm、365nm/730nm、410nm/600nm、及び、430nm/645nmという吸収特性/放射特性を有する4組のナノ粒子の集合で形成されている可能性がある。特に、4組のナノ粒子の集合は、SrY:Eu3+、GdGa12:Cr3+,CaO:Eu3+、及び、ZnO:Bi3+という材料で作られている可能性がある。別個の光源が異なる波長のため使用される。光源の例には、245nm及び365nmで発光する放電ランプ(たとえば、水銀灯)と、360nm〜980nmの範囲で発光する発光ダイオード及びレーザーダイオードとが含まれる。同じ読み取り装置が全波長のため使用され得る。カラー画像は2つの方法のうちの一方で獲得される。一方の方法では、波長分離はマーキングと読み取り装置との間で行われ、マーキングは同時に複数の波長で照射される。この方法は、カラー画像を獲得するために同時に1つずつ使用されるフィルタの集合の使用を伴うことがある。別の方法では、マーキングは異なる波長で順次に照射され、読み取り装置は順々にカラー画像を獲得する。この方法は読み取り装置が簡略化されることを可能にさせ、可動部分を必要としない。
【0089】
[0091]さらなる実施例として、マーキングは、結果として得られるマーキングの画像が、インクジェット印刷のような標準的な印刷方法によって再現することが困難であるように、ナノ粒子から形成されることがある。特に、結果として得られる画像は、インクジェット印刷のため使用される標準的なインク組成物を使用して再現することが困難である特性(たとえば、非明示的特性)を有する。その上、ナノ粒子は、標準的なバインダ内で容易に分散させられないように選択されるので、インクジェット印刷による再現をより一層難しくさせる。たとえば、マーキングは、異なる吸収特性/放射特性を有する複数のナノ粒子の集合で形成されることがある。ナノ粒子は、同一のより大きな粒子に異なるナノ粒子が組み込まれるように、ビーズのようなより大きな粒子に組み込まれることがある。ナノ粒子の適切な選択によって、結果として得られる画像を複製するためのインク組成物の適切な処方が難しくなる可能性がある。特に、インク組成物の処方は、典型的に、色素の凝集ではなく、バインダ内での色素の分散を必要とする。したがって、異なるナノ粒子をより大きな粒子に組み込むことにより、ナノ粒子は再現することが難しい方法で効率的に凝集させられる。
【0090】
[0092]本発明のある種の実施形態は、コンピュータにより実施される演算の組を実行するデータ構造及びコンピュータコードを含むコンピュータ読み取り可能な媒体を備えるコンピュータ記憶プロダクトに関係する。媒体及びコンピュータコードは、本発明の目的のため特別に設計され構築された媒体及びコンピュータコードでもよく、又は、コンピュータソフトウェア技術の当業者に周知であり、利用可能な種類の媒体及びコンピュータコードでもよい。コンピュータ読み取り可能な媒体の例には、ハードディスク、フロッピーディスク、及び、磁気テープのような磁気媒体と、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(「CD−ROM」)及びホログラフィックデバイスのような光媒体と、フロプティカルディスクのような光磁気媒体と、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、プログラマブルロジックデバイス(「PLD」)、リードオンリーメモリ(「ROM」)、及び、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)デバイスのようなコンピュータコードを記憶し実行するために特に構成されたハードウェア装置とが含まれる。コンピュータコードの例には、コンパイラによって生成されるようなマシンコードと、インタープリタを使用するコンピュータによって実行される上位レベルコードを含むファイルとが含まれる。たとえば、本発明の実施形態は、Java、C++、又は、その他のオブジェクト指向プログラミング言語及び開発ツールを使用して実施可能である。コンピュータコードのさらなる例には、暗号コード及び圧縮コードが含まれる。さらに、本発明の実施形態は、伝送チャネルを介して、搬送波に埋め込まれたデータ信号又はその他の伝播媒体を用いて、リモートコンピュータから要求元コンピュータへ転送され得るコンピュータプログラムプロダクトとしてダウンロードされ得る。したがって、本明細書で使用されているように、搬送波は、コンピュータ読み取り可能な媒体であると考えられる。本発明の別の実施形態は、コンピュータコードの代わりに、又は、コンピュータコードと組み合わせて、ハードワイヤード回路で実施され得る。
【0091】
[0093]当業者は本明細書に記載されている実施形態を構築する際に補足的な説明を必要としないが、開示内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている、名称が“Optical Devices with Engineered Nonlinear Nanocomposite Materials”であり、2004年11月16日に発行された、Leeらの特許である米国特許第6,819,845号、名称が“Methods of Forming Quantum Dots of Group IV Semiconductor Materials”であり、2004年9月21日に発行された、Leeらの特許である米国特許第6,794,265号、名称が“Nanocomposite Materials with Engineered Properies”であり、2004年3月23日に発行された、Leeらの特許である米国特許第6,710,366号、及び、名称が“Quantum Dots,Nanocomposite Materials with Quantum Dots,Devices with Quantum Dots,and Related Fabrication Methods”であり、2006年2月28日に発行された、Leeの特許である米国特許第7,005,669号を検討することにより、ある有用な指針を見出すであろう。当業者は、開示内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている、名称が“Quantum Dots of Group IV Semiconductor Materials”であり、2002年8月2日に出願された、Leeの特許出願である米国特許出願第10/212,001号(米国特許出願公開第2003/0066998号)を検討することにより、ある有用な指針をさらに見出すであろう。
【0092】
[0094]本発明は本発明の特定の実施形態を参照して説明されているが、特許請求の範囲によって規定されているような本発明の真の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の変更がなされ、等価物が代用されることが当業者によって理解されるべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、方法、又は、プロセスを本発明の目的、精神及び範囲に適合させるために多くの変形がなされる。このような変形は全てが請求項の範囲内に含まれることが意図されている。特に、本明細書に開示されている方法は特定の順序で実行される特定の動作に関して説明されているが、これらの動作は、本発明の教示から逸脱することなく、等価的な方法を形成するために組み合わされ、分割され、又は、再順序付けされることが理解されるであろう。したがって、本明細書で特に断らない限り、動作の順序及びグループ分けは本発明の制限ではない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施形態に従って実施され得るシステムを説明する図である。
【図2】ナノ粒子の3種類のランダム配列に対して取得され得る3種類の画像を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーキングの認証画像に基づいてインデックスを導出する実行可能コード、
前記インデックスに基づいて前記マーキングの基準画像を選択する実行可能コード、
前記認証画像が前記基準画像と一致するかどうかを判定するために前記認証画像を前記基準画像と比較する実行可能コード、及び、
前記認証画像が前記基準画像と一致するかどうかに基づいて真正性の表示を生成する実行可能コード
を備えるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項2】
前記認証画像が前記マーキングに含まれている空間パターンの表現を含み、
前記インデックスを導出する前記実行可能コードが、前記空間パターンの前記表現に基づいて前記インデックスを導出する実行可能コードを含む、請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項3】
前記空間パターンがバーコード、数字、ロゴ、及び、テキストのうちの少なくとも1つに対応する、請求項2に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項4】
前記基準画像に基づいて前記インデックスを導出する実行可能コード、及び、
前記インデックスに関して前記基準画像を保存する実行可能コードを
さらに備える、請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項5】
前記認証画像が前記マーキングに含まれているナノ粒子の配列の第1の表現を含み、
前記基準画像が前記ナノ粒子の配列の第2の表現を含み、
前記認証画像を前記基準画像と比較する前記実行可能コードが、前記第1の表現を前記第2の表現と比較する実行可能コードを含む、請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項6】
前記第1の表現が前記ナノ粒子の配列によって生成される第1のフォトルミネセンスパターンに対応し、
前記第2の表現が前記ナノ粒子の配列によって生成される第2のフォトルミネセンスパターンに対応する、請求項5に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−508226(P2009−508226A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530179(P2008−530179)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/034791
【国際公開番号】WO2008/010822
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.JAVA
【出願人】(505041911)ウルトラドッツ・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】UltraDots, Inc.
【Fターム(参考)】