説明

ナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法並びにこれを用いたナノ粒子の製造方法およびナノ粒子複合体の製造方法

【課題】 単分散性に優れたナノ粒子またはナノ粒子複合体を大量にかつ安価に製造することができるナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法並びにこれを用いたナノ粒子の製造方法およびナノ粒子複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法は、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理もしくは化学反応、または、熱処理および化学反応することにより、熱可塑性ポリマー粒子Bに囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、次いで、前記熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、前記熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法並びにこれを用いたナノ粒子の製造方法およびナノ粒子複合体の製造方法に関し、特に、単分散性に優れたナノ粒子またはナノ粒子複合体を大量に製造することが可能な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、単分散のナノ粒子を合成する技術としては、さまざまな合成法が提唱されており、大きく分けて、気相合成法と液相合成法に分けられる。
気相合成法としては、例えば、気相中の原料の凝縮により粒子を生成させる方法(PVD法)、気相中の原料ガスの化学反応により粒子を生成させる方法(CVD法)などが挙げられる。特に、CVD法では、用いる熱源によってプラズマ法(例えば、非特許文献1参照)、火炎法(例えば、特許文献1参照)などがあり、プラズマ法は不純物を少なくできるという特徴があり、火炎法は生産量を大きくすることができるという特徴がある。
【0003】
液相合成法としては、例えば、ゾルゲル法、均一沈殿法、水熱合成法などが挙げられる。また、液相合成法の一種として、粒子原料を含んだ液滴を高温の雰囲気下に噴霧して、噴霧液滴中で粒子原料を熱分解させることにより球状粒子を生成させる噴霧熱分解法(例えば、非特許文献2参照)が挙げられる。
【非特許文献1】K.Ishizaki et al.,Journal ofMaterial Science,vol.24,p3553(1989)
【非特許文献2】Y.C.Kang,S.B.Park,Journal of Material Science,vol.31,p409(1996)
【特許文献1】特開昭47−46274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的に気相合成法は、製造コストが高いだけでなく、粒子の凝集により、単分散性の高いナノ粒子が得られ難いなどの問題点があった。
気相合成法の中でも、PVD法は、金属を高温で蒸発させるので、融点の近い組成の原料同士でしか合金微粒子を合成できず、合成できる粒子の種類が限られているという問題点があった。また、PVD法は、蒸発−凝縮のプロセスを経るために生産性も低かった。
【0005】
また、プラズマ法は、合成量が少ないだけでなく、原料ガスの種類によっては装置の管理が大変である。
また、火炎法は、火炎の中で粒子を合成するため、熱により粒子が互いに融着して凝集するため、得られるナノ粒子の単分散性が低いという問題点があった。
【0006】
ゾルゲル法や均一沈殿法は、得られるナノ粒子の結晶性が低いという問題点があった。
水熱合成法は、粒子の凝集が激しいだけでなく、合成速度が遅いという問題点があった。
また、噴霧熱分解法は、噴霧する液滴の大きさにより粒子径が決まるため、生成可能な粒子径がサブミクロン程度であるだけでなく、粒子径の小さいナノ粒子を合成した場合、液滴の大きさのばらつきに起因して粒子径にばらつきが生じるという問題点があった。さらに、噴霧熱分解法は、原料の粘度などの性質によっては液滴がうまく生成しないことがあり、生成したとしても粒子の合成速度は、通常、液滴の生成速度が律速となるため、合成量が少ない上に、合成速度が遅いという問題点があった。
【0007】
さらに、これらの微粒子を高分子化合物と複合させた材料は、ナノコンポジット材料として注目されている。しかしながら、このようなナノコンポジット材料の製造方法である、微粒子を高分子化合物に直接分散させる方法は、微粒子を表面処理するプロセス、微粒子を高分子化合物中に分散させるプロセスなど複雑なプロセスを要する点や、使用する微粒子が保管状態や取り扱い状態によって、凝集、あるいは、表面への水分または有機物の吸着による汚染などによって安定していないことがある点など、多くの課題が残されていた。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、単分散性に優れたナノ粒子またはナノ粒子複合体を大量にかつ安価に製造することができるナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法並びにこれを用いたナノ粒子の製造方法およびナノ粒子複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、結晶性が高く、純度も高く、単分散性に優れたナノ粒子またはナノ粒子複合体の製造方法について鋭意検討した結果、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理もしくは化学反応、または、熱処理および化学反応することにより、熱可塑性ポリマー粒子Bに囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、次いで、前記熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、前記熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とするか、あるいは、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、該熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、次いで、前記ポリマー集合体を熱処理することにより、前記ポリマー集合体に囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とすることにより、結晶性が高く、純度も高く、単分散性に優れたナノ粒子またはナノ粒子複合体を大量にかつ安価に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法は、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理もしくは化学反応、または、熱処理および化学反応することにより、熱可塑性ポリマー粒子Bに囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、次いで、前記熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、前記熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法は、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、該熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、次いで、前記ポリマー集合体に囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のナノ粒子の製造方法は、本発明のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法によって得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去することにより、ナノ粒子を得ることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のナノ粒子複合体の製造方法は、本発明のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法によって得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去することにより、ナノ粒子複合体を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法によれば、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理もしくは化学反応、または、熱処理および化学反応することにより、熱可塑性ポリマー粒子Bに囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、次いで、前記熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、前記熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とするので、簡便な方法で大量にナノ粒子を含有したポリマー微粒子を得ることができる。また、得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去することにより、単分散性に優れたナノ粒子またはナノ粒子複合体を容易に得ることができる。
【0015】
本発明のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法によれば、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、該熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、次いで、前記ポリマー集合体に囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とするので、簡便な方法で大量にナノ粒子を含有したポリマー微粒子を得ることができる。また、得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去することにより、単分散性に優れたナノ粒子またはナノ粒子複合体を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法並びにこれを用いたナノ粒子の製造方法およびナノ粒子複合体の製造方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0017】
「ナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法の第一の実施形態」
本実施形態のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法は、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理もしくは化学反応、または、熱処理および化学反応することにより、熱可塑性ポリマー粒子Bに囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、次いで、熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、この熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とするものである。
【0018】
以下に、本実施形態のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法をさらに詳細に説明する。
本実施形態のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法では、まず、粒子源Aを熱可塑性ポリマー粒子Bの内部に導入する(第一の工程)。
粒子源Aを熱可塑性ポリマー粒子Bの内部に導入する方法は、特に限定されるものではないが、粒子源Aを溶媒に溶解して溶液とした後、この溶液中に熱可塑性ポリマー粒子Bを分散、膨潤させることにより、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを形成する方法が好ましい。この状態では、粒子源Aと熱可塑性ポリマー粒子Bは水素結合、配位結合、イオン結合などにより結合していることが好ましい。
粒子源Aの熱可塑性ポリマー粒子Bの内部への導入を促進するために、必要に応じて、超音波照射、加熱、攪拌などの処理を併用してもよい。
【0019】
ここで、熱可塑性ポリマー粒子Bに対する粒子源Aの重量比(A/B)は、0.053〜19.0が好ましく、0.11〜1.5がより好ましい。
重量比(A/B)が0.053未満では、粒子の生成量が少なくなり、製造コストの点で好ましくない。一方、重量比(A/B)が19.0を超えると、熱可塑性ポリマー粒子Bの内部以外に粒子源Aが多く存在するおそれがあり好ましくない。
【0020】
また、溶媒に対する粒子源Aと熱可塑性ポリマー粒子Bの混合物の重量比((A+B)/溶媒)は、0.031〜4.0が好ましく、0.053〜1.5がより好ましい。
重量比((A+B)/溶媒)が0.031未満では、粒子の生成量が少なく、かつ粒子を製造する上で多くの不必要な溶媒を除去する必要が生じるため好ましくない。一方、重量比((A+B)/溶媒)が4.0を超えると、熱可塑性ポリマー粒子Bの内部に粒子源Aを均一に導入させる効果が小さくなり好ましくない。
【0021】
上記の第一の工程よって熱可塑性ポリマー粒子Bの内部に導入された粒子源Aは、このままでは不安定である。
そこで、次に、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bに、熱処理を施す。これにより、熱可塑性ポリマー粒子Bの内部に粒子源Aに起因した、目的とするナノ粒子の核を生成する(第二の工程)。
【0022】
粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bに熱処理を施す方法としては、例えば、電熱を利用する方法、マイクロ波を利用する方法、高周波を利用する方法などが挙げられる。これらの方法には、真空吸引を併用してもよい。
【0023】
この第二の工程の熱処理にて、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する温度は、特に限定されないが、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する温度が100℃未満では、熱可塑性ポリマー粒子B内における粒子源Aの核生成が不十分である。
【0024】
この熱処理にて、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する時間は、特に限定されないが、0.5秒〜3時間が好ましく、1.0秒〜1時間がより好ましい。粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する時間が0.5秒未満では、粒子源Aの粒成長が不十分である。一方、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する時間が3時間を超えると、この時点で粒子源Aの粒成長、結晶成長が完了しているため、これ以上の加熱は不必要である。
【0025】
次いで、熱可塑性ポリマー粒子Bに囲まれた領域にて、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bに、熱処理および化学反応を利用した処理(以下、「化学反応処理」と略す。)の両方、あるいは、熱処理または化学反応処理のいずれか一方を施す。これにより、熱可塑性ポリマー粒子Bの内部にて、第二の工程で生成した核を粒成長させ、粒子源Aに起因するナノ粒子を生成する(第三の工程)。また、この第三の工程は、上述の第二の工程と同時に行うこともできる。
【0026】
粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bに熱処理を施す方法としては、例えば、電熱を利用する方法、マイクロ波を利用する方法、高周波を利用する方法などが挙げられる。これらの方法には、真空吸引を併用してもよい。
【0027】
この第三の工程の熱処理にて、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する温度は、特に限定されないが、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する温度が150℃未満では、粒子源Aの粒成長が不十分であり好ましくない。
【0028】
この熱処理にて、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する時間は、特に限定されないが、0.5秒〜3時間が好ましく、1.0秒〜1時間がより好ましい。粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する時間が0.5秒未満では、粒子源Aの粒成長が不十分である。一方、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する時間が3時間を超えると、この時点で粒子源Aの粒成長、結晶成長が完了しているため、これ以上の加熱は不必要である。
【0029】
粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bに化学反応処理を施す方法としては、例えば、酸化反応を利用する方法、還元反応を利用する方法、反応性ガスと接触させる方法などが挙げられる。
酸化反応を利用する方法としては、例えば、過酸化水素などの酸化剤を、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bが分散している溶媒に添加する方法が挙げられる。この方法によれば、第二の工程で生成した核を粒成長させ、酸化物微粒子からなるナノ粒子を生成することができる。
【0030】
還元反応を利用する方法としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bが分散している溶媒に添加する方法が挙げられる。この方法によれば、例えば、粒子源Aに起因する金属イオンを還元し、第二の工程で生成した核を粒成長させ、金属粒子からなるナノ粒子を生成することができる。
【0031】
これらの酸化反応または還元反応を促進するために、超音波照射などの物理化学的処理を併用してもよい。
【0032】
反応性ガスと接触させる方法としては、例えば、硫化水素などの反応性ガスを、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bと接触させることにより、反応性ガスと粒子源Aを反応させる方法が挙げられる。反応性ガスとして硫化水素を用いれば、例えば、ナノレベルの金属硫化物からなるナノ粒子を生成することができる。
【0033】
本実施形態では、熱可塑性ポリマー粒子Bの溶融温度以下にて、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bに熱処理を施し、熱可塑性ポリマー粒子Bに囲まれた領域にて粒子源Aに起因する核を生成し、次いで、粒成長させ、粒成長を完了させてナノ粒子を生成することが必要である。
熱処理時の温度に注意すれば、特に、上記のような酸化剤や還元剤を添加しなくても、熱処理時のみによって、ナノ粒子を生成することができる。例えば、酸化物微粒子からなるナノ粒子を生成する場合、酸素の存在下にて、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱することにより、金属成分を酸化させ、酸化物微粒子からなるナノ粒子を生成することができる。また、水素ガスなどの還元雰囲気下にて、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱することにより金属イオンを還元させるか、あるいは、錯体を分解させることによって金属ナノ粒子を生成することができる。
【0034】
次いで、第三の工程にて生成したナノ粒子を含有する熱可塑性ポリマー粒子Bに熱処理を施すことにより、熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させて、多数の熱可塑性ポリマー粒子Bを融着させてポリマー集合体を形成し、このポリマー集合体をナノ粒子含有ポリマー微粒子とする(第四の工程)。
得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子は、ナノ粒子を含有する熱可塑性ポリマー粒子Bが多数集合してなるものである。
なお、上述の第三の工程が熱処理の場合、第四の工程は通常、同時に行われるため不要となる。
【0035】
この第四の工程の熱処理にて、熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する温度は、特に限定されないが、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する温度が150℃未満では、熱可塑性ポリマー粒子Bの融着速度が遅いだけでなく、粒子源Aの粒成長が不十分であり好ましくない。
【0036】
この熱処理にて、熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する時間は、特に限定されないが、0.5秒〜3時間が好ましく、1.0秒〜1時間がより好ましい。熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する時間が0.5秒未満では、熱可塑性ポリマー粒子Bの融着および粒子源Aの粒成長が不十分である。
【0037】
上記の粒子源Aとしては、特に限定されるものではないが、例えば、金属の無機塩、金属の有機酸塩、金属アルコキシド、金属錯体、金属錯体オリゴマー、金属の高分子錯体などが挙げられ、目的とするナノ粒子の組成に応じて1種または2種以上を用いることができる。
【0038】
金属の無機塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩などが挙げられる。金属の有機酸塩としては、例えば、乳酸塩などが挙げられる。金属アルコキシドとしては、例えば、金属イソプロポキシドなどが挙げられる。金属錯体としては、例えば、アセチルアセトナート錯体などが挙げられる。金属錯体オリゴマーとしては、例えば、アセチルアセトナート錯体を数個から数百個架橋した錯体などが挙げられる。金属の高分子錯体としては、例えば、クエン酸錯体がエステル架橋した高分子などが挙げられる。
【0039】
特に、粒子源Aとして、金属錯体オリゴマーまたは金属の高分子錯体を用いれば、金属成分を熱処理により粒子化する場合に、特定の成分のみ粒子化したり、抜け出したりして、成分が偏るのを防ぐことができるため、結果として、ナノ粒子の組成を均一にすることができるため好ましい。また、多成分系の複合金属ナノ粒子、複合酸化物ナノ粒子を生成する場合に、この金属錯体オリゴマーまたは金属の高分子錯体を用いれば、組成が均一で、不純物が少なく、結晶性の高いナノ粒子を生成することができる。このように、この金属錯体オリゴマーまたは金属の高分子錯体を用いれば、目的とするナノ粒子の成分を精密に制御することができる。
【0040】
例えば、チタン酸バリウムストロンチウムナノ粒子を生成する場合に、粒子源Aとして、チタン、バリウム、ストロンチウムなどのアセチルアセトナートを架橋したアセチルアセトナート高分子錯体や、チタン、バリウム、ストロンチウムなどのポリエステル錯体(高分子錯体)を用いれば、金属塩(無機塩、有機酸塩)や金属錯体を用いた場合に比べて、得られるナノ粒子の組成がより均一で、原料の組成比に限りなく近くなる。
【0041】
熱可塑性ポリマー粒子Bとしては、粒子源Aを含有できるもので、かつ、融点が250℃以下のものであれば特に限定されるものではないが、例えば、水酸基、アミノ基、アルデヒド基、アシル基、イミノ基、カルボキシル基、ケトン基、スルホ基、チオール基、ニトロ基、ニトロソ基、フェニル基、アセチル基、シアノ基、ピリジル基の群から選択される1種または2種以上の官能基を有する高分子化合物を用いることができる。
【0042】
このような高分子化合物としては、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0043】
また、熱可塑性ポリマー粒子Bの平均粒子径は、10nm〜10μmであることが望ましく、20nm〜500nmであることがより望ましい。熱可塑性ポリマー粒子Bの平均粒子径が上記の範囲内であれば、目的とするナノ粒子を大量にかつ安価に製造することができる。
熱可塑性ポリマー粒子Bの平均粒子径が10μmを超えると、熱可塑性ポリマー粒子Bに含有される粒子源Aの濃度の均一性が低下するため、得られるナノ粒子の量(生成量)が少なくなるので好ましくない。一方、平均粒子径が10nm未満では、粒子径がほぼ均一な熱可塑性ポリマー粒子Bを合成することが困難である。
【0044】
本実施形態で用いられる溶媒としては、粒子源Aを溶解し、かつ、熱可塑性ポリマー粒子Bの内部に浸透することができるか、または、熱可塑性ポリマー粒子Bを膨潤させることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、ブタノールなどの一価アルコール類、エチレングリコールなどの二価アルコール類、β−オキシエチルメチルエーテル(メチルセロソルブ)、β−オキシエチルエーテル(エチルセロソルブ)、β−オキシエチルプロピルエーテル(プロピルセロソルブ)、ブチル−β−オキシエチルエーテル(ブチルセロソルブ)などのエチレングリコールエーテル(セロソルブ)類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジルなどのエステル類、メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのエーテルアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。
【0045】
また、粒子源Aの熱可塑性ポリマー粒子Bの内部への導入を促進するために、この溶媒には必要に応じて界面活性剤などを添加してもよい。
【0046】
本実施形態のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法によれば、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理もしくは化学反応、または、熱処理および化学反応することにより、熱可塑性ポリマー粒子Bに囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、次いで、熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とするので、簡便な方法で大量にナノ粒子を含有したポリマー微粒子を得ることができる。また、得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去することにより、単分散性に優れたナノ粒子またはナノ粒子複合体を容易に得ることができる。
【0047】
「ナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法の第二の実施形態」
本実施形態のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法は、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、該熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、次いで、前記ポリマー集合体を熱処理することにより、前記ポリマー集合体に囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とするものである。
【0048】
以下に、本実施形態のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法をさらに詳細に説明する。
本実施形態において、上記の第一の実施形態と同様の工程については説明を省略または簡略にする。
【0049】
本実施形態のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法では、まず、粒子源Aを熱可塑性ポリマー粒子Bの内部に導入する(第一の工程)。
【0050】
次いで、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bに、熱処理を施す。これにより、熱可塑性ポリマー粒子Bの内部に粒子源Aに起因した、目的とするナノ粒子の核を生成する(第二の工程)。
【0051】
次いで、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bに熱処理を施すことにより、この熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させて、多数の熱可塑性ポリマー粒子Bを融着させてポリマー集合体を形成する(第三の工程)。
得られたポリマー集合体は、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bが多数集合してなるものである。
【0052】
この第三の工程の熱処理にて、熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する温度は、特に限定されないが、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する温度が150℃未満では、熱可塑性ポリマー粒子Bの融着が不十分である。
【0053】
この熱処理にて、熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する時間は、特に限定されないが、0.5秒〜3時間が好ましく、1.0秒〜1時間がより好ましい。熱可塑性ポリマー粒子Bを加熱する時間が0.5秒未満では、熱可塑性ポリマー粒子Bの融着が不十分である。
【0054】
次いで、ポリマー集合体に熱処理を施すことにより、ポリマー集合体に囲まれた領域にて、すなわち、可塑性ポリマー粒子Bの内部にて、第二の工程で生成した核を粒成長させ、粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とする(第四の工程)。
得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子は、ナノ粒子を含有する熱可塑性ポリマー粒子Bが多数集合してなるものである。
【0055】
ポリマー集合体に熱処理を施す方法としては、例えば、電熱を利用する方法、マイクロ波を利用する方法、高周波を利用する方法などが挙げられる。これらの方法には、真空吸引を併用してもよい。
【0056】
この第四の工程の熱処理にて、ポリマー集合体を加熱する温度は、特に限定されないが、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。ポリマー集合体を加熱する温度が150℃未満では、粒子源Aの核形成が不十分となる。
【0057】
この熱処理にて、ポリマー集合体を加熱する時間は、特に限定されないが、0.5秒〜3時間が好ましく、1.0秒〜1時間がより好ましい。ポリマー集合体を加熱する時間が0.5秒未満では、粒子源Aの核形成が不十分となる。
【0058】
本実施形態のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法によれば、粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、この熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、次いで、ポリマー集合体に囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とするので、簡便な方法で大量にナノ粒子を含有したポリマー微粒子を得ることができる。また、得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去することにより、単分散性に優れたナノ粒子またはナノ粒子複合体を容易に得ることができる。
【0059】
なお、上述の第一の実施形態および第二の実施形態にて、粒子源Aの核の生成または粒成長は、熱処理の際にポリマー粒子Bが溶融する前に生じても、後に生じても、得られるナノ粒子の特性に影響がない。
【0060】
「ナノ粒子の製造方法」
本実施形態のナノ粒子の製造方法は、上述のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法の第一の実施形態または第二の実施形態によって得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子に熱処理または化学反応処理を施すことにより、ナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去して、単分散性のナノ粒子を得るものである。
【0061】
本実施形態にて、ナノ粒子含有ポリマー微粒子に熱処理を施す方法としては、例えば、火炎により熱可塑性ポリマー粒子Bを燃焼させる方法、電熱を利用する方法、マイクロ波を利用する方法、高周波を利用する方法などが挙げられる。特に、火炎により熱可塑性ポリマー粒子Bを燃焼させれば、熱可塑性ポリマー粒子Bの分解除去と同時に、一瞬にして、上述のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法の第一の実施形態または第二の実施形態におけるナノ粒子の生成も行うことができる。
【0062】
このナノ粒子含有ポリマー微粒子の熱処理にて、ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する温度は、特に限定されないが、400〜1200℃が好ましく、600〜1000℃がより好ましい。ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する温度が400℃未満では、得られるナノ粒子の結晶性が低いだけでなく、熱可塑性ポリマー粒子Bが分解せずに残留する。一方、ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する温度が1200℃を超えると、得られたナノ粒子が溶融したり、焼結したりして、単分散性が劣化するおそれがある。
【0063】
この熱処理にて、ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する時間は、特に限定されないが、1.0秒〜3時間が好ましく、2.0秒〜1時間がより好ましい。ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する時間が1.0秒未満では、得られるナノ粒子の結晶性が十分でない上に、熱可塑性ポリマー粒子Bおよび粒子源Aの分解が充分ではなく、カーボンなどのポリマー残留物が残る。一方、ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する時間が3時間を超えると、得られたナノ粒子同士がさらに溶融したり、焼結するなどといった問題が生じるおそれがある。
【0064】
本実施形態にて、ナノ粒子含有ポリマー微粒子に化学反応処理を施す方法としては、例えば、得られるナノ粒子を溶かさずに、熱可塑性ポリマー粒子Bのみを溶かす溶媒を用い、この溶媒に熱可塑性ポリマー粒子Bを溶解して、単分散性のナノ粒子を分離する方法などが挙げられる。
【0065】
また、本実施形態のナノ粒子の製造方法によって得られたナノ粒子は、平均粒子径が0.1nm以上かつ100nm以下の粒子である。
【0066】
本実施形態のナノ粒子の製造方法によれば、ナノ粒子含有ポリマー微粒子に熱処理または化学反応処理を施すことにより、ナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去して、ナノ粒子を、粒子単独で取り出すことができる。また、ナノ粒子は周囲が熱可塑性ポリマー粒子Bで覆われるため、比較的高温で熱処理を施しても凝集や融着を起こしにくく、結晶性が高く、かつ分散性に優れたものが生成される。
【0067】
なお、上述のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法の第一の実施形態または第二の実施形態と、本実施形態のナノ粒子の製造方法とは、別々に行なう必要はなく、組み合わせて行っても、一工程で行なってもよい。
【0068】
「ナノ粒子複合体の製造方法」
本実施形態のナノ粒子複合体の製造方法は、上述のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法の第一の実施形態または第二の実施形態によって得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子に熱処理または化学反応処理を施すことにより、ナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去して、熱可塑性ポリマー粒子Bに含有されていたナノ粒子が複合してなる、球状のナノ粒子複合体を得るものである。
【0069】
本実施形態にて、ナノ粒子含有ポリマー微粒子に熱処理を施す方法としては、例えば、火炎により熱可塑性ポリマー粒子Bを燃焼させる方法、電熱を利用する方法、マイクロ波を利用する方法、高周波を利用する方法などが挙げられる。特に、火炎により熱可塑性ポリマー粒子Bを燃焼させれば、熱可塑性ポリマー粒子Bの分解除去と同時に、一瞬にして、上述のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法の第一の実施形態または第二の実施形態におけるナノ粒子の生成も行うことができる。
【0070】
このナノ粒子含有ポリマー微粒子の熱処理にて、ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する温度は、特に限定されないが、400〜1200℃が好ましく、600〜1000℃がより好ましい。ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する温度が400℃未満では、得られるナノ粒子の結晶性が低いだけでなく、熱可塑性ポリマー粒子Bが分解せずに残留する。一方、ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する温度が1200℃を超えると、得られたナノ粒子複合体が溶融したり、焼結したりして、球状ナノ粒子が凝集した不定型粗大粒子となる。
【0071】
この熱処理にて、ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する時間は、特に限定されないが、1.0秒〜3時間が好ましく、2.0秒〜1時間がより好ましい。ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する時間が1.0秒未満では、球状ナノ粒子の結晶性が不十分であったり、カーボンなどの残留物が残ったりするという問題がある。一方、ナノ粒子含有ポリマー微粒子を加熱する時間が3時間を超えると、球状ナノ粒子が溶融などによりさらに凝集する問題がある。
【0072】
本実施形態にて、ナノ粒子含有ポリマー微粒子に化学反応処理を施す方法としては、例えば、得られるナノ粒子複合体を溶かさずに、熱可塑性ポリマー粒子Bのみを溶かす溶媒を用い、この溶媒に熱可塑性ポリマー粒子Bを溶解して、ナノ粒子複合体を分離する方法などが挙げられる。
【0073】
また、本実施形態のナノ粒子複合体の製造方法によって得られた球状のナノ粒子複合体は、平均粒子径が10nm以上かつ1000nm以下の粒子である。
【0074】
本実施形態のナノ粒子複合体の製造方法によれば、ナノ粒子含有ポリマー微粒子に熱処理または化学反応処理を施すことにより、ナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去して、熱可塑性ポリマー粒子Bに含有されていたナノ粒子が複合してなる、球状のナノ粒子複合体を取り出すことができる。
【0075】
なお、上述のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法の第一の実施形態または第二の実施形態と、本実施形態のナノ粒子複合体の製造方法とは、別々に行なう必要はなく、組み合わせて行っても、一工程で行なってもよい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
水分散ビニルピロリドン−スチレン共重合体(平均粒子径:100nm、住友大阪セメント社製)10gに、硝酸銅(関東化学社製)0.6gを溶解して、溶液を調製した。次いで、この溶液を、環状炉(いすゞ製作所社製)を用いて、大気雰囲気下、昇温速度20℃/minで室温から800℃まで加熱し、800℃にて30分間保持して、粉末を得た。
その後、得られた粉末を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて観察したところ、平均粒子径280nmの球状粒子であった。また、X線回折の結果、この球状粒子は酸化銅微粒子の複合体であった。
【0078】
(実施例2)
水分散ビニルピロリドン−スチレン共重合体(平均粒子径:100nm、住友大阪セメント社製)10gに、硝酸銅(関東化学社製)0.25gを溶解して、溶液を調製した。次いで、この溶液を、環状炉(いすゞ製作所社製)を用いて、大気雰囲気下、昇温速度10℃/minで室温から250℃まで加熱し、250℃にて3時間保持した後、昇温速度20℃/minで800℃まで加熱し、800℃にて30分間保持して、粉末を得た。
その後、得られた粉末を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて観察したところ、平均粒子径5.6nmの微粒子であった。また、X線回折の結果、この微粒子は酸化銅であった。
【0079】
(実施例3)
水分散ビニルピロリドン−スチレン共重合体(平均粒子径:100nm、住友大阪セメント社製)10gに、酢酸パラジウム(和光純薬社製)0.32gを溶解して、溶液を調製した。次いで、この溶液を、環状炉(いすゞ製作所社製)を用いて、大気雰囲気下、昇温速度10℃/minで室温から250℃まで加熱し、250℃にて10分間保持して粉末を得た。
その後、得られた粉末を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察したところ、平均粒子径2.1nmの微粒子がポリマー中に分散した状態が確認された。また、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)による元素分析の結果、パラジウム(Pd)が検出された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法は、結晶性が高く、純度も高く、単分散性に優れたナノ粒子またはナノ粒子複合体を大量にかつ安価に製造することができるものであるから、ナノ粒子としての機能を保持しつつハンドリングし易い微粒子粉体の製造に用いるのはもちろんのこと、セラミックス、高分子などとのコンポジット化を図ることでナノ粒子の分散性が確保されたコンポジット粒子を製造する際にも極めて有用なものである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理もしくは化学反応、または、熱処理および化学反応することにより、熱可塑性ポリマー粒子Bに囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、次いで、前記熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、前記熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とすることを特徴とするナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法。
【請求項2】
粒子源Aを含有する熱可塑性ポリマー粒子Bを熱処理することにより、該熱可塑性ポリマー粒子Bを溶融させてポリマー集合体を形成し、次いで、前記ポリマー集合体を熱処理することにより、前記ポリマー集合体に囲まれた領域にて粒子源Aに起因するナノ粒子を生成し、ナノ粒子含有ポリマー微粒子とすることを特徴とするナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法によって得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去することにより、ナノ粒子を得ることを特徴とするナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載のナノ粒子含有ポリマー微粒子の製造方法によって得られたナノ粒子含有ポリマー微粒子に含まれる熱可塑性ポリマー粒子Bを除去することにより、ナノ粒子複合体を得ることを特徴とするナノ粒子複合体の製造方法。



【公開番号】特開2006−247791(P2006−247791A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69026(P2005−69026)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)ナノ粒子の合成と機能化技術プロジェクト」の委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】