説明

ナノ複合材及びこれを含む発光素子パッケージ

【課題】分散性に優れたナノ複合材及びこれを含む発光素子パッケージを提供する。
【解決手段】シリカ、カーボンブラック、金属粉末、金属酸化物および量子点からなる群から選択される一つ以上のナノ粒子11と、当該ナノ粒子の表面に結合され特定の化学式で表示されるシリコン化合物12とを含むナノ複合材10であり、該ナノ複合材は、ナノ粒子同士の凝集現象なしに、多様なマトリックスに均一に分散されることができ、電圧が変化しても発光特性が一定である発光素子パッケージ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ複合材及びこれを含む発光素子パッケージに関し、より詳細には、分散性に優れたナノ複合材及びこれを含む発光素子パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子は、量子点(quantum dot)等の半導体ナノ粒子の場合のように、サイズ、模様、構成、結晶化度及び構造に応じて、その特性が調節されることができると知られている。このような特性により、触媒、電子、光学、情報貯蔵、化学及び生物学的センサーなどに応用されることができるため、多くの研究が行われている。
【0003】
一般的に、金属ナノ粒子を製造する方法には、真空状態で高い電圧を利用して合成する気相合成法(Gas Phase Synthesis)と、有機溶媒中で高分子界面活性剤又は低分子界面活性剤を利用して製造する液相合成法(Liquid Phase Synthesis)などがある。気相合成法は、合成装置が複雑であり且つ生産性及び作業性が劣るという短所があるが、液相合成法は、比較的容易であり且つ生産性及び作業性に優れることから低コスト及び大量生産が可能であるという長所がある。
【0004】
金属ナノ粒子を製造する代表的な液相合成法としては、ポリオール合成法(Polyol Synthesis)がある。これは、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)等の貴金属を含む遷移金属及びこれらの合金形態のコロイド粒子を製造できる方法であって、高温下でポリオールによる金属前駆体(precursor)の還元を通じて得られ、コロイド粒子の凝集を防止するためにポリ(ビニルピロリジノン)を添加してポリ(ビニルピロリジノン)で表面がコーティングされた形態の金属ナノ粒子を提供する。
【0005】
さらに、液相合成法を利用することで、金、銀、白金等の場合には、サイズの調節のみでなく、球形以外の他の多様な形状が得られると知られており、その形状による特性の変化に関する研究も多く行われている。
【0006】
一方、このような金属ナノ粒子の特性を効果的に利用してその応用性を拡張するためには、表面に他の有機分子及び生体分子と結合できる機能基を導入して、多様なマトリックスに金属ナノ粒子を効果的に分散させることが非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、分散性に優れたナノ複合材及びこれを含む発光素子パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態に係るナノ複合材は、ナノ粒子と、当該ナノ粒子の表面に結合され、下記式1で表示されるシリコン化合物とを含む。
【0009】
【化1】

【0010】
上記式1において、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれメチル基又は水素、R及びRはそれぞれ芳香族炭化水素、Rは水素、メチル基又はフェニル基、FはNH、SH、COOH、CO(S)H、PPR又はP(O)PR、x及びyは1〜100の整数、nは1〜100の整数である。
【0011】
上記R、R、R、R、R及びRはそれぞれメチル基、R及びRはそれぞれベンジル基、Rはメチル基であっても良い。
【0012】
上記シリコン化合物は、分子量が200〜50,000であっても良い。
【0013】
上記ナノ粒子は、シリカ、カーボンブラック、金属粉末、金属酸化物及び量子点からなる群から選択される一つ以上であっても良い。
【0014】
本発明の他の実施形態に係る発光素子パッケージは、基板に実装された発光素子と、当該発光素子を覆い、ナノ粒子と当該ナノ粒子の表面に結合され下記式1で表示されるシリコン化合物とを含むナノ複合材が分散されたモールディング部材とを含む。
【0015】
【化2】

【0016】
上記式1において、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれメチル基又は水素、R及びRはそれぞれ芳香族炭化水素、Rは水素、メチル基又はフェニル基、FはNH、SH、COOH、CO(S)H、PPR又はP(O)PR、x及びyは1〜100の整数、nは1〜100の整数である。
【0017】
上記R、R、R、R、R及びRはそれぞれメチル基、R及びRはそれぞれベンジル基、Rはメチル基であっても良い。
【0018】
上記シリコン化合物は、分子量が200〜50,000であっても良い。
【0019】
上記ナノ粒子は、CdSe/ZnS、ZnCdSe/ZnS、Si/SiO、Siナノ結晶、銅がドーピングされた(Cu−dopped)ZnSナノ結晶及びZnOナノ粒子(nanoparticle)からなる群から選択される一つ以上の量子点であっても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るナノ複合材は、ナノ粒子と、特定の化学式で表示されるシリコン化合物とが結合されている。シリコン化合物のFは、ナノ粒子の表面に結合できる電子供与性基(electron donating group、F)であって、ナノ粒子とシリコン化合物との混合時にナノ粒子を速やかに安定化でき、上記シリコン化合物のバックボーンをなすシロキサン結合(−Si−O−Si−)及び各置換基によって多様なマトリックスとの親和力に優れる。
【0021】
本発明に係るナノ複合材は、ナノ粒子同士の凝集現象なしに、多様なマトリックスに均一に分散されることができる。
【0022】
本発明に係るナノ複合材を含む発光素子パッケージは、電圧が変化しても発光特性が一定であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るナノ複合材を示す模式図である。
【図2】上記ナノ複合材がマトリックスに分散された状態を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るナノ複合材を含む発光素子パッケージを示す概略断面図である。
【図4】図3に示される発光素子パッケージの発光特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を詳述する。しかしながら、本発明の実施形態は、多様な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当業界において通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズなどは、より明確な説明のために誇張されることがある。なお、図面上において同一の符号で表示される要素は、同一の要素である。
【0025】
本発明の一実施形態に係るナノ複合材は、ナノ粒子と、当該ナノ粒子の表面に結合され、特定の化学式で表示されるシリコン化合物とを含む。
【0026】
本発明に係るナノ複合材は、ナノ粒子の表面にシリコン化合物が結合されているため、ナノ粒子同士の凝集現象なしに、多様なマトリックスに均一に分散されることができる。
【0027】
上記ナノ粒子は、ナノ水準の平均粒径を有するものであれば、特に制限されるものではない。例えば、これらに制限されず、シリカ、カーボンブラック、金属粉末、金属酸化物又は量子点であっても良く、これらを一つ以上混合して用いることもできる。
【0028】
上記量子点としては、例えば、CdSe/ZnS、ZnCdSe/ZnS、Si/SiO、Siナノ結晶、銅がドーピングされた(Cu−dopped)ZnSナノ結晶及びZnOナノ粒子(nanoparticle)などがあり、これらに制限されるものではない。
【0029】
上記ナノ粒子のサイズは、1〜100nmであっても良く、これに制限されるものではない。
【0030】
一般的に、ナノ粒子は、粒子のサイズによって互いに凝集し易い。ナノ粒子の特性を効果的に用いるためには、多様なマトリックスに分散させて用いる必要がある。このため、従来は、シランカップリング剤を利用してナノ粒子の表面を改質する方法が用いられた。
【0031】
しかしながら、シランカップリング剤によるナノ粒子の表面の改質方法は、速やかに行われず且つ再現性が低いという短所があった。
【0032】
ナノ粒子は、その製造方法によって、ナノ粒子の表面が(−)極性又は(+)極性を表したり、アルキル鎖が結合された中性に製造されることができる。ナノ粒子は、製造方法によって分散されることができるマトリックスが制限されているため、ナノ粒子の表面を改質することで、多様なマトリックスに分散させることができる。
【0033】
本発明では、上記ナノ粒子の表面に、下記式1で表示されるシリコン化合物が結合されている。
【0034】
【化3】

【0035】
上記式1において、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれメチル基又は水素、R及びRはそれぞれ芳香族炭化水素、Rは水素、メチル基又はフェニル基、FはNH、SH、COOH、CO(S)H、PPR又はP(O)PR、x及びyは1〜100の整数、nは1〜100の整数である。
【0036】
上記シリコン化合物は、シロキサン結合(−Si−O−Si−)をバックボーンとし、ナノ粒子の表面に結合できる電子供与性基を含む。
【0037】
上記R、R、R、R、R及びRはそれぞれメチル基、R及びRはそれぞれベンジル基、Rはメチル基であっても良い。
【0038】
上記Fは、ナノ粒子の表面と結合できる電子供与性基であって、ナノ粒子とシリコン化合物との混合時にナノ粒子を速やかに安定化することができる。
【0039】
上記nは、1〜100であっても良い。ナノ粒子のサイズに応じてn値を調節して、ナノ粒子と結合するシリコン化合物の個数を決定することができる。
【0040】
上記x及びyは、1〜100であっても良い。
【0041】
上記シリコン化合物は、オリゴマー又は高分子化合物であっても良く、当該シリコン化合物の分子量は200〜50,000であっても良い。
【0042】
上記シリコン化合物のバックボーンをなすシロキサン結合(−Si−O−Si−)及び各置換基によって、多様なマトリックスとの親和力に優れる。
【0043】
図1は、本発明の一実施形態に係るナノ複合材を示す模式図であり、図2は、上記ナノ複合材がマトリックスに分散された状態を示す模式図である。
【0044】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るナノ複合材10は、シリコン化合物12の電子供与性基Fがナノ粒子11の表面に結合され、シロキサン結合を含むバックボーンはマトリックスに向かって配列される。
【0045】
これにより、図2に示されるように、ナノ粒子は、シリコン化合物によって表面が改質され、ナノ複合材10は、ナノ粒子間の凝集現象なしに、マトリックス20上に均一に分散されることができる。
【0046】
上記マトリックスは、特に制限されず、有機高分子、極性有機溶媒などであっても良い。より詳細には、エポキシ樹脂、シリコン樹脂又はTEOS(Tetra Ethyl Ortho Siliate)であっても良い。
【0047】
本発明に係るナノ複合材は、特定の化学式で表示されるシリコン化合物によってナノ粒子を速やかに安定化することができ、マトリックスと容易に結合してナノ粒子間の凝集現象なしに多様なマトリックスに容易に分散されることができる。
【0048】
本発明の他の実施形態に係る発光素子パッケージは、基板に実装された発光素子と、当該発光素子を覆い、ナノ粒子と当該ナノ粒子の表面に結合され特定の化学式で表示されるシリコン化合物とを含むナノ複合材が分散されたモールディング部材とを含む。
【0049】
上記発光素子は、例えば、発光ダイオード(LED)であっても良く、これに制限されるものではない。
【0050】
上記ナノ複合材の具体的な成分及び作用は、上述した通りである。上記ナノ複合材をなすナノ粒子は、量子点(quantum dot)であっても良い。当該量子点としては、これらに制限されず、例えば、CdSe/ZnS、ZnCdSe/ZnS、Si/SiO、Siナノ結晶、銅がドーピングされた(Cu−dopped)ZnSナノ結晶及びZnOナノ粒子(nanoparticle)などがあり、これらを一つ以上混合して用いることもできる。
【0051】
上記モールディング部材は、例えば、シリコン樹脂又はエポキシ樹脂であっても良く、これらに制限されるものではない。
【0052】
本発明に係るナノ複合材は、モールディング部材内でナノ粒子を速やかに安定化させることができ、モールディング部材と容易に結合されてナノ粒子間の凝集現象なしにナノ粒子を安定的に分散させることができる
【0053】
図3は、本発明の一実施形態に係るナノ複合材を含む発光素子パッケージを示す概略断面図である。
【0054】
図3を参照すると、基板上に発光ダイオード(LED)が実装されており、当該発光素子はモールディング部材30によって覆われている。
【0055】
上記モールディング部材30には、本発明の一実施形態に係るナノ複合材10が分散されている。
【0056】
上記ナノ複合材は、CdSe/ZnS量子点と、下記式2で表示されるシリコン化合物とを含む。
【0057】
【化4】

【0058】
図4は、図3に示される発光素子パッケージの発光特性を示すグラフである。図4を参照すると、本発明の一実施形態に係るナノ複合材は、モールディング部材への分散性に優れるため、電圧が変化しても発光特性が一定であることが分かる。
【0059】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されることなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。従って、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲内に属すると言えるはずである。
【符号の説明】
【0060】
10 ナノ複合材
11 ナノ粒子
12 シリコン化合物
20 マトリックス
30 モールディング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子と、
当該ナノ粒子の表面に結合され、下記式1で表示されるシリコン化合物と、
を含む、ナノ複合材。
【化1】

上記式1において、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれメチル基又は水素、R及びRはそれぞれ芳香族炭化水素、Rは水素、メチル基又はフェニル基、FはNH、SH、COOH、CO(S)H、PPR又はP(O)PR、x及びyは1〜100の整数、nは1〜100の整数である。
【請求項2】
前記R、R、R、R、R及びRはそれぞれメチル基、R及びRはそれぞれベンジル基、Rはメチル基である、請求項1に記載のナノ複合材。
【請求項3】
前記シリコン化合物は、分子量が200〜50,000である、請求項1に記載のナノ複合材。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、シリカ、カーボンブラック、金属粉末、金属酸化物及び量子点からなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載のナノ複合材。
【請求項5】
基板に実装された発光素子と、
当該発光素子を覆い、ナノ粒子と当該ナノ粒子の表面に結合され下記式1で表示されるシリコン化合物とを含むナノ複合材が分散されたモールディング部材と、
を含む、発光素子パッケージ。
【化2】

上記式1において、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれメチル基又は水素、R及びRはそれぞれ芳香族炭化水素、Rは水素、メチル基又はフェニル基、FはNH、SH、COOH、CO(S)H、PPR又はP(O)PR、x及びyは1〜100の整数、nは1〜100の整数である。
【請求項6】
前記R、R、R、R、R及びRはそれぞれメチル基、R及びRはそれぞれベンジル基、Rはメチル基である、請求項5に記載の発光素子パッケージ。
【請求項7】
前記シリコン化合物は、分子量が200〜50,000である、請求項5に記載の発光素子パッケージ。
【請求項8】
前記ナノ粒子は、CdSe/ZnS、ZnCdSe/ZnS、Si/SiO、Siナノ結晶、銅がドーピングされた(Cu−dopped)ZnSナノ結晶及びZnOナノ粒子(nanoparticle)からなる群から選択される一つ以上の量子点である、請求項5に記載の発光素子パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−31375(P2012−31375A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16226(P2011−16226)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】