説明

ナノ銀−酸化亜鉛組成物

新規複合材料は、(a)10.1〜99.9質量%の単体銀(Ag)および(b)0.1〜89.9質量%の酸化亜鉛(ZnO)を含み、(a)および(b)の合計は前記複合材料の90質量%以上を構成し、単体銀は10〜200nmの一次粒径を有し、および/または酸化亜鉛は0.1〜50μm未満の一次粒径を有し、および/または該複合材料は0.1〜50μmの粒径分布および/または10〜100m/gのBET表面積を有する。新規複合材料は:(i)少なくとも1種の銀塩の第1混合物と少なくとも1種の亜鉛塩の第2混合物とを混合し、それにより銀塩と亜鉛塩の第3混合物を形成する工程と、(ii)前記第3混合物を炭酸源の混合物に加える工程と、(iii)工程(ii)において形成された前記炭酸銀および前記炭酸亜鉛を共沈させる工程と、(iv)前記炭酸銀および前記炭酸亜鉛を洗浄する工程と、(v)前記炭酸銀および前記炭酸亜鉛の熱分解によって入手することができる。前記新規複合材料は、表面、製品またはバルク組成物に、特別にはガスまたは水分離のための膜システムに抗菌特性を与えるために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀/酸化亜鉛をベースとする複合材料、それらの製造方法、これらの複合材料を含む抗菌膜および微生物汚染に曝露する可能性のある浄水システムにおけるそのような膜の使用に関する。
【0002】
銀をベースとする抗菌剤が多重作用によって微生物の増殖を制限することは公知である。抗生物質とは異なり、銀は、細菌細胞代謝の多数の成分に対して毒性がある。これらには、肉眼的細胞構造変化をもたらす細菌細胞壁および膜透過性に対する損傷、輸送および酵素系、例えば呼吸鎖シトクロムの遮断、タンパク質の変性ならびに微生物デオキシリボ核酸およびリボ核酸への結合による転写および分裂の防止が包含される。典型的には、哺乳動物細胞に対する銀イオンの毒性は、例えば、細菌、藻類、酵母などの原生動物細胞に比較してはるかに低い。これは、銀を特に、銀イオンに対してppm濃度範囲内では制限が設けられていない水と接触する用途、飲料水用途のためにさえ非特異的殺生物剤として高度に魅力的にする。典型的には、銀(Ag)40〜160ppmの濃度で強力な作用が観察される。
【0003】
ポリマーおよびプラスチックは、例えば下地上のコーティング剤として使用される場合、日常的に水、湿気または水分へ曝露すると細菌または藻類による腐敗に悩まされうることは公知である。細菌および藻類が群生した生物膜は、これらの下地の表面上に定着し、腐敗の速度および/または有効性の消失を促進させる可能性がある。
【0004】
流入水中に含まれた細菌は膜によって蓄積させられ、結果、それらの表面上に蓄積する。細菌の急速な増殖は、膜を通過する水の流量を減少させる膜のファウリングを生じさせ、膜のフィルタリング特性に有害な影響を及ぼしうる。
【0005】
膜上での細菌増殖の結果として、積極的な洗浄を除けば、除去が極めて困難な膜の上流側にゼラチン状生物膜が形成される。これは、膜の寿命を脅かし、重大なコストを負わせる可能性がある。
【0006】
中国特許第101053782号明細書は、抗菌酢酸セルロース製ナノ濾過膜、プラズマ反応チャンバー内での抗菌ナノ粒子、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、銀粉末または粉末銅などの化学的表面改質によるその製造、ならびに酢酸セルロースおよび化学的に修飾された抗菌ナノ粒子を含むキャスティング膜溶液の製造について記載している。さらに、Water Research, (2008), 42(18), 4591−4602では、水殺菌および微生物管理のための銀および酸化亜鉛のナノスケールの形態にある抗菌材料について記載されている。
【0007】
そこで、長期抗菌活性を備える膜が必要とされる。
【0008】
現在では、驚くべきことに、高表面積を備えるマイクロスケール酸化亜鉛中のナノスケール単体銀の複合材料により抗菌特性が改良されることが見いだされている。
【0009】
このため本発明の目的は、(a)10.1〜99.9質量%の単体銀(Ag)および(b)0.1〜89.9質量%の酸化亜鉛(ZnO)を含む、好ましくはそれらからなる複合材料であって、このとき(a)および(b)の合計は該複合材料の90質量%以上を構成し、このとき単体銀は10〜200nmの一次粒径を有し、および/または酸化亜鉛は0.1〜50μm未満の一次粒径を有し、および/または該複合材料は0.1〜50μmの粒径分布および/または10〜100m2/gのBET表面積を有する複合材料を提供することである。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、本複合材料の単体銀は、10〜100nm、好ましくは30〜80nmの一次粒径を有する。
【0011】
好ましくは、本複合材料の酸化亜鉛は、0.1〜30μm未満、好ましくは0.1〜22μm未満、より好ましくは1〜22μm未満の一次粒径を有する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、本複合材料は、1〜30μm、好ましくは1〜22μmの粒径分布を有する。
【0013】
本発明の複合材料のBET表面積は、好ましくは20〜80m2/g、より好ましくは35〜45m2/gである。
【0014】
好ましくは、本発明による複合材料は:(a)20.1〜99.9質量%の単体銀および(b)79.9〜0.1質量%の酸化亜鉛、より好ましくは(a)20.1〜40.0質量%の単体銀および(b)79.9〜60.0質量%の酸化亜鉛を含み、このとき(a)および(b)の合計は、本複合材料の90質量%以上を構成する。
【0015】
好ましくは、(a)および(b)の合計は、本複合材料の95質量%以上、より好ましくは100質量%を構成する。
【0016】
本発明によると、一次粒径を測定する方法として、SEM(走査型電子顕微鏡検査)を使用すべきである。EDX(エネルギー分散X線分光分析法)の結合法を使用することによって、最小サンプル領域(nmスケール)の元素構成についての追加の情報が得られる。さらに、本発明による粒径分布は、レーザー粒度分布測定法(レーザー回折測定法、それによれば粒径を計算するために使用する主情報源が散乱強度対角度の関数である)によって測定する。比表面積は、ISO9277に準拠した窒素およびBET法を用いて測定する。
【0017】
本発明による複合材料は、好ましくは適切な銀/亜鉛前駆体化合物の熱分解によって得られる。より好ましくは、本発明による複合材料は、以下に記載する適切な銀/亜鉛前駆体化合物の熱分解によって得られる。
【0018】
本発明のまた別の目的は、炭酸銀および炭酸亜鉛が1つの工程で銀塩/亜鉛塩溶液の対応する混合物から共沈し、その後に形成された炭酸塩を熱分解する方法(プロセス)を提供することである。
【0019】
新規な複合材料は:
(i)少なくとも1種の銀塩(Ag塩)の第1混合物および少なくとも1種の亜鉛塩(Zn塩)の第2混合物を混合し、それにより銀塩と亜鉛塩の第3混合物を形成する工程と、
(ii)該第3混合物を炭酸塩源の混合物に加える工程と、
(iii)工程(ii)において形成された炭酸銀および炭酸亜鉛を共沈させる工程と、
(iv)該炭酸銀および該炭酸亜鉛を洗浄する工程と、
(v)該炭酸銀および該炭酸亜鉛を熱分解する工程とを含む方法によって入手することができる。
【0020】
本発明の方法では、亜鉛塩と混合されるために適合することが当業者には公知の任意の銀塩を使用することができる。同一のことが、亜鉛塩に適合する。
【0021】
好ましい銀塩は、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、クエン酸銀、メタンスルホン酸銀、フッ化銀、乳酸銀、ベヘン酸銀、臭素酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、シアン化銀、シクロヘキサン酪酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロヒ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、フッ化水素酸銀、メタンスルホン酸銀、亜硝酸銀、過塩素酸銀、リン酸銀、シアン化銀カリウム、ヨウ化銀カリウム、サリチル酸銀、ステアリン酸銀、亜硫酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、チオシアン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロ酢酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、スルファミン酸銀、ギ酸銀、シュウ酸銀、亜硝酸銀およびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、銀塩は、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、クエン酸銀、メタンスルホン酸銀、フッ化銀およびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい実施形態では、硝酸銀が使用される。
【0022】
好ましい亜鉛塩は、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、クエン酸亜鉛、メタンスルホン酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、フッ化亜鉛、乳酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ウンデシル酸亜鉛、臭素酸亜鉛、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、シアン化亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ヘキサフルオロアンチモン酸亜鉛、ヘキサフルオロヒ酸亜鉛、ヘキサフルオリン酸亜鉛、ヘキサフルオロケイ酸亜鉛、メタンスルホン酸亜鉛、亜硝酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、リン酸亜鉛、シアン化カリウム亜鉛、サリチル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜硫酸亜鉛、テトラフルオロホウ酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、p−トルエンスルホン酸亜鉛、ベンゾールスルフィン酸亜鉛、トリフルオロ酢酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、スルファミン酸亜鉛、ギ酸亜鉛、亜硝酸亜鉛、シュウ酸亜鉛およびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、亜鉛塩は、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、クエン酸亜鉛、メタンスルホン酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛およびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい実施形態では、硝酸亜鉛が使用される。
【0023】
工程(i)の銀塩および亜鉛塩の混合物のための溶媒として、対応する銀塩および亜鉛塩の溶解に適合する任意の溶媒を使用することができる。好ましい溶媒は、水性溶媒、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、有機カーボネート類、有機アミン類、イオン性液体およびそれらの混合物からなる群から、好ましくは界面活性物質と組み合わせて選択される。好ましい実施形態では、水が溶媒として使用される。
【0024】
銀塩および亜鉛塩の混合は、各銀塩および亜鉛塩を個別に溶解し、続いて形成された混合液を混合する工程によって実施することができる。または、各銀塩および亜鉛塩を混合および溶解する工程を同時に実施することができる。各銀塩および亜鉛塩を溶解する温度は、好ましくは5〜100℃、より好ましくは25〜80℃である。銀塩および亜鉛塩のモル比は、一般には本複合材料の所望の組成、即ち10.1〜99質量%の単体銀および0.1〜89.9質量%のZnOと適合するように選択されるため、しばしば出発塩混合物中約110〜0.1モル部の亜鉛上の約1〜92モル部の銀;特に出発塩混合物中約98〜74モル部の亜鉛上の約19〜37モル部の銀に対応する。銀塩および亜鉛塩の濃度は互いに独立して、最終銀/酸化亜鉛比に依存して好ましくは0.1〜5Mの範囲内にある。
【0025】
工程(ii)における適切な炭酸塩源は、好ましくは炭酸、炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、対応する炭酸水素塩およびそれらの混合物からなる群から選択される;好ましくは、炭酸カリウムが使用される。
【0026】
炭酸塩源の混合物のための溶媒は、好ましくは水性溶媒、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、有機カーボネート類、有機アミン類、イオン性液体およびそれらの混合物からなる群から、好ましくは界面活性物質と組み合わせて選択される。好ましい実施形態では、水が溶媒として使用される。
【0027】
銀塩および亜鉛塩の混合物の炭酸塩源の混合物への添加は、炭酸塩源の混合物をフラスコ内に配置し、銀塩および亜鉛塩をそれに加える工程によって、または銀塩および亜鉛塩の混合物をフラスコ内に入れ、炭酸塩源の混合物をそれに加える工程によって実施することができる。好ましくは、銀塩および亜鉛塩の混合物は、炭酸塩源の混合物に滴加される。
【0028】
好ましい実施形態では、銀塩および亜鉛塩の混合物の炭酸塩源の混合物への添加(工程ii)は、10〜90℃の温度、より好ましくは20〜70℃、特に好ましくは50℃の温度で実施される。
【0029】
工程(iii)における共沈した炭酸塩の単離は、通常、濾過、遠心分離、デカンテーションによって実施される。これに関連した用語「共沈」は、好ましくは工程(ii)において形成された炭酸銀および炭酸亜鉛の同時沈降を意味する。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、工程(iv)における炭酸銀および炭酸亜鉛の洗浄は、所望の炭酸銀および炭酸亜鉛を溶解させない溶媒を用いて実施される。これに関連した用語「溶解しない」は、室温による濾過ケーキの総質量に基づいて10質量%未満の炭酸銀および炭酸亜鉛の溶解を意味する。本発明の好ましい実施形態では、炭酸銀および炭酸亜鉛は、水性溶媒、好ましくは水を用いて洗浄される。これに関連して用語「洗浄」は、好ましくは、炭酸銀および炭酸亜鉛とは異なる濾液に基づく10ppm未満の水溶性塩が水を用いた洗浄工程後の濾過ケーキ内に存在することを意味する。
【0031】
より好ましい実施形態では、本炭酸銀および炭酸亜鉛は、続いて非水性溶媒で洗浄される。好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。エタノールが特に好ましい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、工程(v)は、不活性雰囲気下、好ましくは100〜600℃の温度で実施される。より好ましい実施形態では、工程(v)は、350〜600℃の温度で実施される。これに関連した用語「熱分解」は、好ましくは炭酸銀および炭酸亜鉛が加熱によって単体銀および酸化亜鉛に分解する化学反応を意味する。
【0033】
以下、本発明の複合材料を製造するための方法の好ましい実施形態では、それに本発明を限定せずにより詳細に説明する。
【0034】
第1工程では、少なくとも1種の銀塩の溶液が少なくとも1種の亜鉛塩の溶液と混合される。結果として生じた銀塩および亜鉛塩の溶液が50℃の水中にある炭酸カリウムの溶液に加えられた後に、結果として生じた炭酸銀および炭酸亜鉛が濾過によって共沈させられ、炭酸塩混合物の水を用いた洗浄(試験ストリップが濾過ケーキ内で10ppm未満の硝酸塩を示すまで)、その後にエタノールを用いた洗浄および濾過が行われる。
【0035】
また別の工程では、形成された、好ましくは溶媒のエタノール、好ましくは純エタノールを含有する炭酸銀炭酸亜鉛混合物は、質量損失が一定になるまで、350〜600℃の温度まで不活性雰囲気下で加熱される。
【0036】
このプロセスは、TGA(20℃/分)およびDSC(20℃/分)によって制御される。
【0037】
好ましい実施形態では、上記で詳細に規定した本発明の複合材料は、本発明によって開示した方法によって製造することができる、より好ましくは製造される。
【0038】
本発明の複合材料の抗菌特性のおかげで、本発明による複合材料の抗菌剤としての使用は、本発明のまた別の目的である。
【0039】
膜内に包埋された本発明の複合材料は、微生物のコロニー形成および接着に対して抵抗性を有する膜表面を提供し、かつより容易に除去できる汚染層を提供する。例えば飲料水、プロセス水または冷却水を製造するための、あるいはその品質向上のためのガス分離または水処理において使用される膜材料上での生物膜形成の防止は、本発明の実施形態の1つである。
【0040】
このため、本発明のもう1つの目的は、本発明の複合材料および1種の膜材料、好ましくは有機ポリマーを含む抗菌性膜システムまたは膜を提供することである。
【0041】
本発明による複合材料の他に、抗菌性膜システムまたは膜は、本複合材料と組み合わせて有用なまた別の材料を含むことができる。そのような材料は当業者には公知であり、また別の抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および光安定剤、金属不活性化剤、ホスファイト類およびホスフォナイト類、ヒドロキシルアミン類、ニトロン類、チオ共力剤(thiosynergists)、過酸化物スカベンジャー類、塩基性共安定剤、成核剤、充填剤および強化剤、ベンゾフラノン類およびイソインドリノン類を含むことができる。
【0042】
また別の抗菌剤には、例えば、ジ−もしくはトリハロゲノ−ヒドロキシジフェニルエーテル類、例えばジクロサンまたはトリクロサン、3,5−ジメチル−テトラヒドロ−1,3,5−2H−チオジアジン−2−チオン、ビス−トリブチルスズオキシド、4.5−ジクロール−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N−ブチル−ベンズイソチアゾリン、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン、ジンク−2−ピリジンチオール−1−オキシド、2−メチルチオ−4−シクロプロピルアミノ−6−(α,β−ジメチルプロピルアミノ)−s−トリアジン、2−メチルチオ−4−シクロプロピルアミノ−6−tert−ブチルアミノ−s−トリアジン、2−メチルチオ−4−エチルアミノ−6−(α,β−ジメチルプロピルアミノ)−s−トリアジン、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、IPBC、カルベンダジムまたはチアベンダゾールを含むことができる。
【0043】
また別の有用な添加物は、下記に列挙する材料、またはそれらの混合物から選択することができる:
1. 酸化防止剤:
1.1. アルキル化モノフェノール類、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、
1.2. アルキルチオメチルフェノール類、例えば2,4−ジオクチルチオメチル−6−tert−ブチルフェノール、
1.3. ヒドロキノン類およびアルキル化ヒドロキノン類、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシ−フェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、
1.4. トコフェロール類、例えばα−トコフェロール、
1.5. ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル類、例えば2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、
1.6. アルキリデンビスフェノール類、例えば2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、
1.7. O−、N−およびS−ベンジル化合物、例えば3,5,3’,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジベンジルエーテル、
1.8. ヒドロキシベンジル化マロネート類、例えばジオクタデシル−2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンジル)マロネート、
1.9. 芳香族ヒドロキシベンジル化合物、例えば1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、
1.10. トリアジン化合物、例えば2,4−ビス(オクチルメルカプト)−6−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−アニリノ)−1,3,5−トリアジン、
1.11. ベンジルホスホネート類、例えばジメチル−2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、
1.12. アシルアミノフェノール類、例えば4−ヒドロキシラウラニリド、
1.13. β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールとのエステル類
1.14. β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールとのエステル類
1.15. β−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールとのエステル類
1.16. 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル酢酸と一価または多価アルコールとのエステル類
1.17. β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、例えばN,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミドのアミド類、
1.18. アスコルビン酸(ビタミンC)、
1.19. アミン系酸化防止剤、例えばN,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン。
2. 紫外線吸収剤および光安定剤:
2.1. 2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、
2.2. 2−ヒドロキシベンゾフェノン類、例えばその4−ヒドロキシ誘導体、
2.3. 置換および非置換安息香酸のエステル類、例えば4−tert−ブチル−フェニルサリチレート、
2.4. アクリレート類、例えばα−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、
2.5. ニッケル化合物、例えば2,2’−チオ−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]のニッケル錯体、
2.6. 立体障害アミン類、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、
2.7. オキサミド類、例えば4,4’−ジオクチルオキシアニリド、
2.8. 2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン類、例えば2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル[または−4−ドデシル/トリデシルオキシフェニル])−1,3,5−トリアジン。
3. 金属不活性化剤、例えばN,N’−ジフェニルオキサミド。
4. ホスファイト類およびホスフォナイト類、例えばトリフェニルホスファイト。
5. ヒドロキシルアミン類、例えばN,N−ジベンジルヒドロキシルアミン。
6. ニトロン類、例えばN−ベンジル−α−フェノールニトロン。
7. チオ共力剤、例えばジラウリルチオジプロピオネート。
8. 過酸化物スカベンジャー類、例えばβ−チオジプロピオン酸。
9. 塩基性共安定剤、例えばメラミン、ポリアミド類、ポリウレタン類、高級脂肪酸のアルカリ金属塩類およびアルカリ土類金属塩類、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛。
10. 成核剤、例えば無機物質、例えばタルカム、金属酸化物類。
11. 充填剤および強化剤、例えば炭酸カルシウム、シリケート類、ガラス繊維、ガラスビーズ、アスベスト、タルク、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、金属酸化物および水酸化物、カーボンブラック、グラファイト、木粉およびその他の天然物の粉もしくは繊維、合成繊維。
12. その他の添加物、例えば可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、レオロジー添加物、触媒、流れ調節剤、蛍光増白剤、防炎加工剤、帯電防止剤、および発泡剤。
13. ベンゾフラノン類およびイソインドリノン類、例えば、米国特許第4,325,863号明細書;米国特許第4,338,244号明細書;米国特許第5,175,312号明細書;米国特許第5,216,052号明細書;米国特許第5,252,643号明細書;独国特許出願第4316611号明細書;独国特許出願第4316622号明細書;独国特許出願第4316876号明細書;欧州特許出願公開第0589839号明細書、欧州特許出願公開第0591102号明細書;欧州特許出願公開第1291384号明細書に開示されているもの。
【0044】
有用な安定剤および添加物についてのさらなる詳細に関しては、参考として本明細書で援用される国際公開第04/106311号パンフレットの第55〜65頁記載のリストを参照されたい。
【0045】
本膜システムは、例えば国際公開第02/042530号パンフレットに記載されているような親水性強化添加物をさらに含むことができる。
【0046】
本発明による膜システム内の本発明の複合材料の量は、ポリマーの総質量に基づいて、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.05〜10質量%である。本発明の膜システム内の複合材料に対するまた別の添加物の質量比は、好ましくは5:95〜95:5の範囲内にある。
【0047】
本発明の複合材料は、膜システムまたは膜を形成するポリマー組成物に加えることができる。本発明の複合材料が、主として表面で分散している膜が形成される。複合材料の組み込みは、有益にもポリマーキャスティング溶液への複合材料の添加によって実施することができる。膜システムまたは膜は、前記溶液の凝固浴(主として水)内へ浸漬させた後に形成することができる。
【0048】
本発明の膜システムまたは膜を製造するための好ましい実施形態は、ポリエーテルスルホン、孔形成剤としてのポリビニルピロリドン、本発明の複合材料および膜製造において一般に使用される任意の他の添加物を包含する膜溶液による限外濾過膜の微細構造特性を有する連続膜の形成を構成する。
【0049】
本発明の膜システムまたは膜は、本発明の実質的に非水溶性銀/酸化亜鉛をベースとする複合材料を含有しない同一膜システムまたは膜と比較して生物膜増殖を有意に減少させることができる。例えばプラスチック部品、例えばパイプ、フィルター、バルブまたはタンクを使用する閉鎖水システム(水精製、淡水化)は、濾過効率、例えば膜透過性(流量)の重度の損傷をもたらす細菌もしくは藻類コロニー形成および生物膜形成、およびその後に材料の劣化および循環液の汚染に曝される可能性がある。
【0050】
前記表面に関するその他の問題は、藻類または細菌生物膜形成に由来することがあり、それらの流体力学的特性の望ましくない変化を生じさせ、例えばパイプ内の流量、またはさらにボート、海洋もしくは他の湖沼用途における故障の生じない使用にも影響を及ぼす可能性がある。
【0051】
本発明の特定の複合材料は、膜システムまたは膜の抗菌特性の永続的強化のための特定機構を備える膜システムまたは膜を提供する。抗菌膜システムまたは膜には、ポリマー材料、および該ポリマー材料全体に組み込まれて均質に分散させられるか、または該ポリマー材料内にその表面近くで分散させられるかのいずれかである本発明の複合材料が包含される。
【0052】
本発明の抗菌膜システムまたは膜は、例えば国際公開第04/106311号パンフレット第48頁の一番下の段落から第54頁(29項目)に概して列挙されている有機ポリマーから製造することができる。好ましいポリマーは、酢酸セルロース類、ポリアクリロニトリル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリカーボネート類、ポリエーテルケトン類、スルホン化ポリエーテルケトン類、ポリアミドスルホン類、ポリフッ化ビニリデン類、ポリ塩化ビニル類、ポリスチレン類およびポリテトラフルオロエチレン類またはそれらの混合物からなる群から選択される。いっそうより好ましいポリマーは、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリフッ化ビニリデン類、ポリアミド類、酢酸セルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
本発明の膜内の本発明の複合材料の量は、有機ポリマーの総質量に基づいて、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.05〜10質量%である。
【0054】
抗菌膜製造のプロセスは、以下に略述する工程に従うことが多い:
第1工程では、有機ポリマーを、有機溶媒、例えばN−メチルピロリドン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなど、または適切な溶媒混合物、例えばこれらの混合物中に溶解する。その他の共通溶媒は、文献内に見いだされる。第2工程では、本発明の複合材料を、溶媒の一部分に加え、例えば超音波ミキサーまたは任意の他の適切な混合装置を使用して良好に分散する。第3工程では、スラリーをポリマー溶液全体に、例えば機械的攪拌器を使用して最高速度で分散する。第4工程では、膜組成物中で一般に使用されるその他の添加物(主として有機および/または高分子の、例えば上記に列挙したような、例えば孔形成剤および/または親水性添加物)を本発明の複合材料とポリマーの混合物に加えることができる。第5工程では、結果として生じる溶液を薄フィルム膜内に公知の方法によってキャスティングすると、膜の少なくとも片側では本発明の分散した複合材料を備える半透膜もしくは緻密膜が生じる。または、第5工程では、結果として生じる溶液をポリマーの非溶媒中に計量供給すると、そこでポリマーは制御された方法で沈降し本発明の分散した複合材料を備える半透膜または緻密膜を形成する。膜製造のまた別の代替法は、トラックエッチング、延伸法、浸出法、界面重合法、焼結法、ゾルゲル法、活性膜層を添加する方法、グラフト法およびスパッタ堆積法である。
【0055】
膜は、独立した膜として使用できる、または複合膜を作製するために支持体上でキャスティングすることができる。半透膜がしばしば使用される。
【0056】
好ましい実施形態では、水処理は、膜システム内で実施される。
【0057】
大半が有機ポリマー材料から製造された膜は、逆浸透、限外濾過、ナノ濾過、ガス分離、パーベーパレーションおよび/またはナノ濾過のために公知の膜であってよい。
【0058】
膜は、独立した膜フィルムとしてキャスティングすることができる、または複合膜の製造における支持体フィルムもしくは膜上にキャスティングすることができる、および平板状、微細中空糸状、毛細管形、渦巻き形、管状、またはプレートおよびフレーム形状を有していてよい。
【0059】
さらに、それらは非対称性または対称性のいずれかであってよい。非対称性膜は、膜の片面上では他方の面上の孔径とは異なる孔径を有する。対称性膜は、両面上で等しい孔径を有する。
【0060】
膜材料(膜が形成される前)または膜(完成構造)の本複合材料を用いた処理は、例えば膜材料もしくは膜構造内または膜の表面(コーティング)内への組み込みを含む。前記組み込みは、例えば沈降または成型(押出し)プロセスを包含する。本発明の複合材料は、一般にはポリマー材料内にしっかりと固定される、つまり一般に非浸出性である。本発明の複合材料は、好ましくはそのままで加えられる。
【0061】
本膜システムは、ポリマー構造および該ポリマー材料中に組み込まれて前記材料全体に、または場合によりコーティング層内に分散している本発明の制御された放出/緩徐浸出性複合材料を有する少なくとも1種のキャスティングされた半透膜または緻密膜を含んでいる。
【0062】
本発明の複合材料を含む半透膜または緻密膜の製造は、一般には当該技術分野において公知である。
【0063】
酢酸セルロース膜は、例えば二酢酸および三酢酸セルロースの混合物および本発明の複合材料を支持体(織物)上の上記に示した量で含有する複合材料溶液(ドープ溶液)からキャスティングされる。使用される溶媒は、例えばジオキサン/アセトン混合液であり、このとき本発明の複合材料もまた易溶性である。それらは、支持体(ポリエステル織物)上でキャスティングすることができ、より低い温度で沈降させられる。
【0064】
例えばポリアクリロニトリル類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリエーテルケトン類、ポリフッ化ビニリデン類もしくはスルホン化ポリフッ化ビニリデン類からの中空糸膜の製造において、使用される溶媒は、例えば非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびそれらの混合物である。
【0065】
本発明の複合材料は、前記溶媒または溶媒混合液中に易分散性であり、非溶媒がドープ溶液と、例えば中空糸を形成するために紡糸口金を通して該ドープ溶液を通過させることで接触すると、該ポリマーとともに沈降する。
【0066】
複合膜、例えば複合ポリアミド膜は、ポリスルホンのドープ溶液および本発明の複合材料を強化繊維(ポリエステル)上にキャスティングする工程によって製造することができる。水と接触すると、ポリスルホンおよび本発明の複合材料は、強化繊維上に沈降してフィルムを形成する。乾燥工程後、このポリスルホンフィルム(膜)を次に有機カルボン酸塩化物溶液、その後にアミン水溶液に浸漬し、その結果としてポリアミド層がポリスルホン膜上に形成される。乾燥後、逆浸透用の複合膜が得られる。
【0067】
本発明のまた別の実施形態では、液体の質量に基づいて、0.01〜2.0質量%の本発明の複合材料を含有する洗浄液でシステム全体(膜、パイプ、タンクなど)を洗浄する工程により、膜システムに抗菌特性を与えることができる。本発明の複合材料は、通常は本膜(濾過)システムのポリマー材料にとって実質的であり、そして該ポリマー材料の上層(例えばコーティング)内に拡散させることによって、生物膜増殖ならびに細菌および藻類による腐敗に対する長期間持続する保護を達成することができる。
【0068】
洗浄方法は、抗菌的に消耗した膜濾過システムの抗菌活性を再活性化させるためにも適している。
【0069】
好ましくは、洗浄液は、本発明の複合材料の他に、非イオン性、アニオン性もしくは両性イオン性化合物、金属イオン封鎖剤、ヒドロトロープ、アルカリ金属水酸化物(アルカリ源)、保存料、充填剤、色素、香料等であってよい界面活性剤のような従来型成分を含有する水性配合物である。洗浄液中の成分およびそれらの使用は、当業者には周知である。
【0070】
本発明の複合材料は、水中に存在するほぼ全ての種類の細菌の増殖防止に極めて有効であり、緩徐で制御された浸出を有し、ヒトおよび動物の皮膚にとって安全かつ非毒性であり、優れた生体内分解性および、例えば抗菌剤としても使用されるトリクロロヒドロキシフェニルエーテル類と比較して水域環境内でより好都合な生態学的プロファイルを示す。
【0071】
本発明の膜システムは、淡水化、膜バイオリアクターおよびその他の水精製プロセスにおいて特に有用である。膜は、従来型濾過プロセスにおいて一般に使用されるような半透膜、または例えば逆浸透プロセスにおいて使用されるような緻密膜であってよい。
【0072】
そこで本発明のまた別の目的は、例えば流動食、飲料、医薬品およびそれらの半製品から選択される水性液もしくは水性分散液を濾過するための、本発明の膜システムの使用である。それらはさらにまた:
ガス分離、
生体分子もしくは生物粒子、例えば血小板または高分子量のバイオポリマー、例えばタンパク質のバイオテクノロジーまたは医学における水性液体もしくは分散液からの分離、
発電において使用される水の濾過、
工業プロセス、化学プロセス、金属処理、半導体処理、パルプおよび紙加工、および特別には飲料水および/または廃水のための水の精製および/または汚染除去のためにも使用することができる。特に重要な課題は、例えば海水から飲料水を製造するための、有益には淡水化プロセスにおいて使用されるような本発明の複合粒子を含む逆浸透膜システムである。
【0073】
また別の適用は、水再利用用途における膜システム(RO、NF、MFなど)の使用であり、このとき比較的「清潔な」水を用いた場合でさえ、膜上で細菌増殖が発生し、ファウリングを引き起こす。
【0074】
以下の試験方法および実施例は、具体的に示すことだけを目的としており、何であろうと何らかの方法で本発明を限定するものと理解すべきではない。「室温(r.t.)」は、20〜25℃の範囲内の温度を示す;「一晩」は、12〜16時間の範囲内の時間を意味する。パーセンテージは、他に特に指示しない限り質量%である。粒径分布は、レーザー粒度分析法:装置:Mastersizer 2000(Malvern社)によって測定した。粒径分布の分析は、フラウンホーファー(Fraunhofer)回折法に従って実施した。
【0075】
本発明によると、一次粒径を決定するために使用される方法は、エネルギー分散型X線分光法である(SEM/EDX;機器:SEM:電界放出型(FEG)Quantum 200 FEI;最大30kV;10kV(e加速電圧)でETD(SE検出器)およびSSD(BSE検出器)を用いたSEM画像描出)。銀は、酸化亜鉛に比較してそのより高い原子番号のために明るく観察される;この観察所見は、EDX測定によっても妥当性が確認された。実施例では、以下の略語を使用した:
使用する材料:
硝酸銀:Aldrich社(独国)製の市販製品。
硝酸亜鉛:Aldrich社(独国)製の市販製品。
炭酸カリウム:Aldrich社(独国)製の市販製品。
硝酸塩試験ストリップ:Merck社(独国)製の市販製品。
N−メチルピロリドン(NMP):Aldrich社(独国)製の市販製品。
ポリビニルピロリドン(PVP):Luvitec(登録商標)PVP30K、BASF社(独国)製の市販製品。
ポリエーテルスルホン(PES):Ultrason(登録商標)2020PSR、BASF社(独国)製の市販製品。
E. coli:大腸菌(エシェリヒア・コリー)
S. aureus:黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス)。
【0076】
実施例1:Ag/ZnO複合材料の調製
炭酸塩の共沈
硝酸亜鉛(59.5g;0.2モル)および硝酸銀(6.4g;0.04モル)を50℃で100mLの脱イオン水中に溶解した。この溶液を30分間以内に50℃の水300mL中の炭酸カリウム(34.8g;0.22モル)の攪拌溶液(8,000rpm)中に滴下した(1,000mLビーカー、アルミホイルで暗くした)。攪拌には、Ultraturax T25(IKA社製)を使用した。30分の攪拌後、淡黄色懸濁液が形成された。
【化1】

【0077】
懸濁液をブフナー漏斗(フィルター型:Whatman(登録商標)グレード1:中程度の保持能および流速。粒子保持能11μm、濾過速度(Herzberg)150秒、坪量88g/m2、厚さ0.18mm、灰分0.06%)で濾過し、濾液内で見いだされる硝酸塩が10ppm未満になるまで脱イオン水を用いて2回洗浄した(硝酸塩試験ストリップ:Merck社)。典型的には、20L/kgの沈降物を必要とする。濾過ケーキ(30g)は、エタノール(100mL)中に分散させ、再び濾過した。濾過ケーキは、濾過後の金属炭酸塩に対して100質量%のエタノールを含有した。
【0078】
乾燥および焼成
濾過ケーキは、40分間1,013mbarで200℃にて乾燥させ、そして350℃へ温度を上昇させた。焼成は、90分間350℃で実施した。焼成の完了は、理論的物質収支が達成されるまで質量測定法で実施した(質量損失:実測値:24.3質量%、計算値:30.3質量%)。
【化2】

【0079】
TGA(20℃/分)によるプロセス制御:質量損失の3つのピークが見られた:155℃;237℃;350℃。DSC(20℃/分)によるプロセス制御:熱活性の2つのピーク:170℃(−26J/g);248℃(191J/g)
外観:褐色粉末
銀含量:19.2質量%
EDXによるAg粒径:60nm±15nm
EDXによるZnO粒径:<20μm
レーザー粒度分析法による粒径分布:5.7μm(確率50%;流体:0.08%クエン酸ナトリウム)
BET表面積[m2/g]:38。
【0080】
比較例1:硝酸銀(10.0g、0.059モル)を300mLエルレンマイヤーフラスコ内の50℃の水150mLに溶解する。次に酸化亜鉛を1回で加える。この懸濁液は、10分間Ultraturax(登録商標)T25攪拌装置によって均質化した。塩化ナトリウム(3.4g、0.059モル)を水50mLに溶解した。この食塩液を5分間で攪拌懸濁液に加えると、塩化銀が形成された。続いて、この反応混合液を50℃で30分間攪拌した。
【化3】

【0081】
次にヒドラジン水和物(3.0g、0.06モル)を懸濁液に滴下した。それにより、色が白色からベージュがかった茶色に変化した。この懸濁液を濾過し、濾過ケーキを水100mLで洗浄した。次の工程では、エタノール(100mL)を加え、再び洗浄した。最後に、全揮発性化合物を130℃の真空オーブン中で除去した。
収量:31.0g、理論量の99%
外観:褐色粉末。
銀含量:19.7質量%
EDXによるAg粒径:200nm
EDXによるZnO粒径:<2μm
レーザー粒度分析法による粒径分布:1.1μm(確率50%;流体:0.08%クエン酸ナトリウム)
BET表面積[m2/g]:7.6。
【0082】
比較例2:比較化合物としてHygentic(登録商標)400(Ciba社(スイス国)製の市販製品)を使用し、これは100%の単体銀からなる。
【0083】
実施例2:Ag/ZnO複合材料の抗菌活性についての試験:
試験方法:CG161/欧州規格方法EN1040
試験微生物(接種材料) 一晩培養[cfu/mL]
大腸菌(ATCC 10536) 2.9×108
黄色ブドウ球菌(ATCC 3865) 2.3×108
本試験における接種材料濃度:107cfu/mL
22℃での接触時間:5分間;30分間
インキュベーション:
黄色ブドウ球菌:24時間
大腸菌:24時間
不活性化:特殊TSB
接種材料のコロニー計数は、インキュベーション後に読み出した。試験物質の不活性化は、TSBを用いると満足できるものであった。
【0084】
懸濁液試験における試験濃度:0.1%および1%の全銀
試験サンプル:
1%試験サンプル:0.535gの試験物質:実施例1(18.7%の銀)
Oを加えて9gにする
1mLの接種材料
0.1%試験サンプル:0.054gの試験物質:実施例1(18.7%の銀)
Oを加えて9gにする
1mLの接種材料
1%試験サンプル:0.508gの試験物質:比較例1(19.7%の銀)
Oを加えて9gにする
1mLの接種材料
0.1%試験サンプル:0.051gの試験物質:比較例1(19.7%の銀)
Oを加えて9gにする
1mLの接種材料
1%試験サンプル:0.1gの試験物質:比較例2(100%の銀)
Oを加えて9gにする
1mLの接種材料
0.1%の試験サンプル:0.01gの試験物質:比較例1(100%の銀)
Oを加えて9gにする
1mLの接種材料。
【0085】
結果:cfu/サンプル(JIS Z2801)
第1表
【表1】

【0086】
実施例3:膜の調製
N−メチルピロリドン(NMP)(70mL)を攪拌器付きの三ツ首フラスコに入れた。ポリビニルピロリドンのLuvitec(登録商標)PVP 40K(6g)をNMPに加え、温度を60℃に上げ、均質透明溶液が得られるまで攪拌した。必要とされるレベルの本発明の複合材料(PESに比した銀の濃度(ppm);第2表を参照)を6gのNMPと混合し、20分間超音波処理し、懸濁液をPVP溶液に加え、この溶液が均質になるまで攪拌した。ポリエーテルスルホンのUltrason(登録商標)2020 PSR(18g)をこの溶液に加え、粘性溶液が得られるまで攪拌した。この溶液を室温(30〜40℃)で一晩排気させた。膜溶液を70℃に再加熱した。膜を室温でキャスティングナイフを用いてガラス上でキャスティングし、浸漬前に30秒間乾燥させた。膜を25℃の水浴中へ入れた。10分間の浸漬後、膜を温水(65〜75℃、30分間)ですすいだ。
【0087】
実施例4:膜の抗菌活性についての試験
試験方法:JIS Z2801(日本規格方法)
試験菌株:大腸菌(ATCC 10536)
黄色ブドウ球菌(ATCC 3865)
接触時間/温度:37℃で24時間(JIS Z2801)
サンプルサイズ:2.5×2.5cm
カバーフィルムのサイズ:2×2cm
接種材料:100μLの細胞懸濁液
サンプルの取り扱い:接種されたサンプルの24時間にわたるインキュベーション後、全液体を材料から抽出し、細胞を溶出させるために10mL不活性化バッファーが充填された「Stomacher(登録商標)バッグ」にサンプルを移し、1分間「揉んだ」。
【0088】
第2表に列挙した様々な銀含量を有する様々な複合材料含量を含有する下記の膜サンプルは、実施例3に記載の手順に従って調製した。試験は、上述した試験方法に従い大腸菌および黄色ブドウ球菌に対して実施した。
【0089】
結果:cfu/サンプル(JIS Z2801)
第2表
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)10.1〜99.9質量%の単体銀(Ag)および
(b)0.1〜89.9質量%の酸化亜鉛(ZnO)を含む複合材料であって、
(a)および(b)の合計は、前記複合材料の90質量%以上を構成し、かつ
単体銀は10〜200nmの一次粒径を有し、および/または酸化亜鉛は0.1〜50μm未満の一次粒径を有し、および/または前記複合材料は0.1〜50μmの粒径分布および/または10〜100m2/gのBET表面積を有する複合材料。
【請求項2】
前記単体銀は10〜100nmの一次粒径を有し、および/または前記酸化亜鉛は0.1〜30μm未満の一次粒径を有し、および/または前記複合材料は1〜30μmの粒径分布および/または20〜80m2/gのBET表面積を有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記単体銀は30〜80nmの一次粒径を有し、および/または前記酸化亜鉛は0.1〜22μm未満の一次粒径を有し、および/または前記複合材料は1〜22μmの粒径分布および/または35〜45m2/gのBET表面積を有する、請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
(a)20.1〜99.9質量%の単体銀および
(b)79.9〜0.1質量%の酸化亜鉛;
好ましくは
(a)20.1〜40.0質量%の単体銀および
(b)79.9〜60.0質量%の酸化亜鉛の複合材料を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
(i)少なくとも1種の銀塩の第1混合物と少なくとも1種の亜鉛塩の第2混合物を混合し、それにより銀塩と亜鉛塩の第3混合物を形成する工程と、
(ii)前記第3混合物を炭酸塩源の混合物に加える工程と、
(iii)工程(ii)において形成された前記炭酸銀および前記炭酸銀を共沈させる工程と、
(iv)前記炭酸銀および前記炭酸亜鉛を洗浄する工程と、
(v)前記炭酸銀および前記炭酸亜鉛を熱分解する工程とによって製造される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
工程(i)において
前記銀塩は、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、クエン酸銀、メタンスルホン酸銀、フッ化銀およびそれらの混合物からなる群から選択され、および/または
前記亜鉛塩は、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、クエン酸亜鉛、メタンスルホン酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の複合材料。
【請求項7】
工程(ii)において使用される炭酸塩源は、炭酸、炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、対応する炭酸水素塩およびそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは、炭酸カリウムである、請求項5または6に記載の複合材料。
【請求項8】
(a)工程(ii)は、10〜90℃の温度で実施され、
および/または
(b)工程(v)は、不活性雰囲気下、好ましくは100〜600℃の温度で実施される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合材料および有機ポリマーを含む膜を含む抗菌膜システム。
【請求項10】
前記有機ポリマーは、酢酸セルロース類、ポリアクリロニトリル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリカーボネート類、ポリエーテルケトン類、スルホン化ポリエーテルケトン類、ポリアミドスルホン類、ポリフッ化ビニリデン類、ポリ塩化ビニル類、ポリスチレン類およびポリテトラフルオロエチレン類またはそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリフッ化ビニリデン類、ポリアミド類、酢酸セルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の抗菌膜システム。
【請求項11】
前記複合材料の量は、前記有機ポリマーの質量に基づいて0.05〜20質量%である、請求項9または10に記載の抗菌膜システム。
【請求項12】
水分離またはガス分離プロセスのため、特に食品、飲料、医薬品およびそれらの中間体から選択される水性液体もしくは分散液の濾過、バイオテクノロジーもしくは医学における水性液体もしくは分散液からの生体分子もしくは生体粒子の分離、発電において使用される水の濾過、および/または工業プロセス、化学的プロセス、金属処理、半導体加工処理、パルプおよび紙加工のための水の、および特に飲料水および/または廃水の精製および/または汚染除去を含む水分離プロセスのための、請求項9〜11のいずれか一項に記載の抗菌膜システムの使用。
【請求項13】
逆浸透、特に海水淡水化のための、請求項12に記載の抗菌膜システムの使用。
【請求項14】
表面または製品またはバルク組成物に抗菌特性を付与するための、特に前記表面または製品またはバルク組成物が前記複合材料の前記表面または製品またはバルク組成物内への組み込みによる1種以上のポリマーおよび/または有機化合物を含む、請求項1〜8のいずれか一項により得られた複合材料の使用。

【公表番号】特表2013−503124(P2013−503124A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525997(P2012−525997)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061900
【国際公開番号】WO2011/023584
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(508095474)ポリマーズ シーアールシー リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Polymers CRC Ltd.
【住所又は居所原語表記】8 Redwood Drive, Notting Hill, Victoria 3168, Australia
【Fターム(参考)】