説明

ナノ銀をコーティングさせた上水道用鉄管

【課題】上水道用の鉄管(鋳鉄管または鋼管)に関するものであり、鋳鉄管の内側面にナノ銀粒子が含まれた合成樹脂の膜を形成させ、さらにその上に再びナノ銀粒子をコーティングすることにより、鋳鉄管の内部を流れる水の各種有害細菌(ウイルス)の発生および増殖を抑制する。
【解決手段】この鋳鉄管1は、ナノ銀粉末を含んだ合成樹脂膜2が鋳鉄管の内側面を形成、その合成樹脂膜の上に再度ナノ銀粒子で2次コーティング3するものであり、鋳鉄管の内側面にナノ銀を二重形成させることにより既存の鋳鉄管に比べて強度が高く、腐食防止作用も優れており耐食性も高い。抗菌性、殺菌性および除菌性が優れ、衛生的に水を流通させることができる。またこの発明は、鉄板を丸く巻いて作る鋼管にも同様に適用させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上水道用に使用される鉄管、すなわち鋼管や鋳鉄管に関するものである。鋳鉄管や鋼管内部にはサビ防止のための合成樹脂がライニング処理されるのだが、その際、銀ナノ粒子を含む合成樹脂でライニング処理し、さらにその上に再び銀ナノ粒子でコーティングさせることにより、鋳鉄管または鋼管の様な金属材の水道管の内部を流れる水に各種有害細菌の発生および増殖を抑制させるようにするものである。
【0002】
本来上水道管または下水道管に使用される鋳鉄管は、溶融状態の鋳物を遠心鑄造の型に注ぎ込み遠心回転力によって製造される。高熱の鋳鉄管は冷めつつ収縮し、この際に鋳鉄管の表面にはクラックやピンホールなどの微細な隙間が発生して荒い表面を持つようになる。
【0003】
したがって、鋳鉄管の内表面に形成した微細な隙間やピンホールなどに微生物が付着繁殖し、薄片が発生して管の内面を覆う様になる。
【背景技術】
【0004】
このため従来の鋳鉄管においては、微生物の付着を防止し酸化による腐食を防止するために、鋳鉄管の内側面にコールタール(coaltar)やシルコートをコーティングをしたり、セメントモルタルをライニング処理して来た。
【0005】
しかし、この様なコールタール(coaltar)やシルコート、セメントモルタルで鋳鉄管の内側面をライニング処理すると、鋳鉄管の酸化防止効果と表面に形成された微細な穴(pin hole)を埋めて鋳鉄管の内側面を保護すると言う役割には有効であるが、水道水にコールタールが溶解し、セメントは徐々に分解されて、人体に有害な毒性物質として作用すると言う問題が発生する様になる。
【0006】
また、合成樹脂液でコーティングした鋳鉄管の場合も、鋳鉄管の内側面が酸化して腐食されるのを防止し、微生物付着の防止にもある程度の効果があるが、最上の効果を期待するには無理がある。
【0007】
本発明は、このような鋳鉄管の内側面に合成樹脂膜をコーティングする際、ナノ銀粒子を含ませ、ナノ粒子が持つ殺菌力、除菌力、坑菌力を備えた上水道用鋳鉄管を得る目的で開発されたのである。
【0008】
この発明は、鋳物を注いで製造する鋳鉄管だけでなく、鉄板を丸く巻いて形成する鋼管にも適用可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明はナノ銀(Ag)粒子を上水道用の鋳鉄管または鋼管の内部にコーティングすることにより、鋳鉄管金属製水道管の内部を流れる水に各種の有害細菌の発生および増殖を抑制するようにするものである。
【0010】
銀(Ag)は、原子量107.87amu、比重10〜12、溶融点960.5℃の灰白色金属であり、殺菌力を備えていると言う事実はかなり以前から知られて来た。
【0011】
また、ナノ銀(ナノシルバー;Nano silver)とはナノ技術(Nano-technology)と銀(silver)の合成語で、銀をナノメートル(10億分の1m)水準、すなわち0.000000001m程度にまで小さく粒子化したものを示す。
【0012】
通常、銀を粉末や溶液状態にしたものを全て通称してナノ銀と呼び、銀が持つ強力な坑菌および殺菌機能を備えている。また一般伝統的な抗生物質とは異なり、細菌が耐性を持ち得ないと言う特徴があり、微粒子から持続的に坑菌力を放出させて有害菌を制御するため坑菌除菌力が非常に優れ、地上のほとんどすべての単細胞病原菌を短い時間に殺菌する事が出来ると確認されている。
【0013】
ナノ銀による坑菌および殺菌作用の理論としては
1. 細菌の-SH基、-COOH基、-OH基などと強く結合して細菌の細胞膜を破壊したり細胞の機能をかく乱させて細菌を殺すという理論、
2. 活性酸素による殺菌作用すなわちコロイド銀が触媒作用をして、酸素が活性酸素(O2 +;O2-、O)に転換されて殺菌作用をするという理論、
3. 活性酸素による殺菌作用すなわちコロイド銀が触媒作用をして、酸素が活性酸素(O2 +;O2-、O)に転換されて殺菌作用をするという理論、
したがってこの発明は、このような効果を備えたナノ銀を、金属材水道管の内側面にコーティング適用させることにより既存の合成樹脂膜でライニング処理させた鋼管や鋳鉄管の効果をより一層高めようとするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明は、上水道用鋳鉄管または上水道用鋼管の内側面に腐食を防止するために合成樹脂膜をライニング処理するにあたり、上水道用鋼管または鋳鉄管(1)内側面をライニング処理させる合成樹脂にナノ銀粉末を含ませて、第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)を形成する。さらに上記第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)の上に再度、ナノ銀粒子を含んだ微細な合成樹脂粉末を噴射させて第2ナノ銀コーティング膜(3)を形成させるのが特徴の、ナノ銀をさせたコーティング上水道用鉄管である。
【0015】
この際、ナノ銀粒子の大きさが1〜100nm、濃度100〜10,000ppmのを合成樹脂重量の0.5−5.0の重量%で混合したものが第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)を構成し、第2ナノ銀コーティング膜(3)は、粒子の大きさが1〜100nm、濃度100〜10,000ppm、200um以下のきめ細かい合成樹脂粉末の10−30重量%で混合したものが第2ナノ銀コーティング膜(3)を構成する。
【0016】
以下の図面を通じてこの発明の上水道用鉄管をより詳細に説明すると、次のようである。
【0017】
この発明を鋳鉄管(1)を例にあげて説明しよう。
【0018】
まず、製造された鋳鉄管(1)は空気と接触すると容易に酸化して錆びを発生するため、すべての工程に先立ち鋳鉄管(1)内側面の異質物を除去する作業を遂行しなければならない。この際、圧縮空気と練磨材(cut wire)を利用したショットブラスティングマシンで鋳鉄管の内側面を清掃する。
【0019】
次に、清掃を終えた鋳鉄管(1)は加熱路に入り、これを280±20℃で加熱するようになる。上記の加熱温度280±20℃はコーティングする合成樹脂(ポルリエチレン樹脂ないし合成ポルリエチレン樹脂またはエポクシ樹脂)が瞬間的に溶解する温度であり、コーティングしようとする合成樹脂膜の厚さにより加熱温度は高低することになる。
【0020】
その後、鋳鉄管(1)の内径にナノ銀粒子が含まれた合成樹脂粉末を噴射させる噴射管を挿入し、この噴射管を鋳鉄管の内径に従って前後に移動させながら付着させようとする厚さ程度のナノ銀粒子が含まれた合成樹脂粉末を、空気圧を利用して噴射させる。ナノ銀粒子が含まれた合成樹脂粉末は加熱した鋳鉄管(1)の内側面に付着し溶けて、第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)を形成する。
【0021】
上記のナノ銀粒子は、熱によって溶けず、熱によって溶ける合成樹脂粉末は加熱した鋳鉄管の内側面に付着することになるので、第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)を形成するのに全く問題にならない。
【0022】
一方、噴射管を通じて噴射する合成樹脂粉末の種類としては、酸やアルカリに簡単に腐食されない耐酸性、耐アルカリ性であり、鋳鉄管との接着力が優れ、付着した後にも接着性が良く簡単に落ちない事、容易に腐食したりすりへらない材質である事、衝撃によって容易にこわれたり変形しないと言う材質の合成樹脂材が望ましい。
【0023】
第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)は、鋳鉄管(1)の大きさによっても異なるが、0.2〜10mmの厚さが最も望ましい。
【0024】
加熱した鋳鉄管により溶解した合成樹脂材粉末は、鋳鉄管内側面に溶けてくっつき銀ナノ粒子が含まれた状態で合成樹脂膜を形成することになる。回転移送機により鋳鉄管(1)を回転させながら合成樹脂膜は一定の厚さで平坦な状態で内側面を形成することになる。
【0025】
次に、第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)の上に、ナノ銀粒子を多量に含む微細な粉末状の合成樹脂で第2ナノ銀コーティング膜(3)を形成させる。
【0026】
上記の第2ナノ銀コーティング膜(3)のナノ銀粒子の大きさは1〜100nm、濃度は100〜10,000ppmに濃縮、PHは6〜8.5に維持し、ナノ銀の量は粉末状の合成樹脂の重量を基準として0.5−5.0重量%が望ましい。
【0027】
また上記の第2ナノ銀コーティング膜(3)は、ナノ銀粒子の大きさが1〜100nm、濃度は100〜10,000ppmに濃縮されたナノ銀を200um以下の粉末状の合成樹脂粉末の10−30重量%で混合したものを使用する。
【0028】
上記のようなナノ銀粒子が含まれた微細な合成樹脂粉末により第2ナノ銀コーティング膜(3)を形成する。その工程を簡略に述べてみよう。
【0029】
ナノ銀粒子が含まれた微細な合成樹脂粉末を噴射させる噴射管を鋳鉄管(1)内径に挿入し、これを鋳鉄管の内径に従って前後に移動させながら、付着させようとする厚さ程度に空気圧を利用して噴射し、第2ナノ銀コーティング膜を形成する。
【0030】
上記のナノ銀粒子が含まれた合成樹脂粉末を鋳鉄管(1)の内部に噴射するのは、第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)を形成した直後、鋳鉄管(1)がまだ冷める前に噴射させなければならない。鋳鉄管(1)の内側面にナノ銀粒子が含まれた合成樹脂粉末が一定の厚さで広がりながら合成樹脂膜の表面に溶けてくっつき、第2ナノ銀コーティング膜(3)を形成する。
【0031】
以上のように、この発明鋳鉄管は、内側面にナノ銀粒子が含まれた合成樹脂膜を形成し、さらにナノ銀を高濃度に含んだ第2ナノ銀コーティング膜(3)を形成することにより、既存の鋳鉄管に比べ一層効果的に副食を防止しつつ衛生的に水を流通させることができるようにするのである。
【0032】
この発明により製造された上水道用鉄管の鋳鉄管または鋼管は、その内側面に一定の厚さで合成樹脂膜が形成されるので、鉄管が酸化しサビが発生するのを防止すると同時に合成樹脂膜の厚さが一定で非常になめらかで平滑な面を維持するため、流速を増進させることにもなる。
【0033】
また、鋳鉄管または鋼管の内部に一程の厚さで付着した合成樹脂膜は、また一つの内管を形成することになるので鉄管の強度を高め、また衝撃によって破損しても内部の合成樹脂膜は簡単に破損しないため漏水の恐れを縮小させると言う効果を得ることが出来る。
【0034】
特に合成樹脂膜に含まれたナノ銀と、合成樹脂膜の表面に高濃度で付着したナノ銀により、ナノ銀が持つ抗菌性および殺菌性がさらに強められて衛生的な水の供給を可能とする。
【0035】
また、水道管内側面に合成樹脂膜を形成することにより耐食性を増加させ、既存の鋳鉄管や鋼管に比べて全ての面において優秀な効果を得ることが出来る非常に有益な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】発明鋳鉄管の横断面図である。
【図2】発明鋳鉄管の縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 鋳鉄管
2 ナノ銀を含んだ合成樹脂膜
3 ナノ銀コーティング膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食を防止するために上水道用鋳鉄管または上水道用鋼管の内側面に合成樹脂膜でライニング処理する際、上水道用鋼管または鋳鉄管(1)内側面をライニング処理する合成樹脂にナノ銀粉末を含ませて第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)を形成し、この第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)の上に再度ナノ銀粒子を含む微細な合成樹脂粉末を噴射して、第2ナノ銀コーティング膜(3)を形成させることを特徴とするナノ銀コーティングの上水道用鉄管。
【請求項2】
第1項において、第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)は、ナノ銀の粒子大きさが1〜100nm、濃度100〜10,000ppm、これを合成樹脂重量の0.5−5.0重量%で混合させて第1ナノ銀含有合成樹脂膜(2)を構成され、上記第2ナノ銀 コーティング膜(3)は、ナノ銀の粒子大きさが1〜100nm、濃度100〜10,000ppm、これを200um以下の細かい合成樹脂粉末の10−30重量%で混合させて第2ナノ銀 コーティング膜(3)を構成されたナノ銀コーティングの上水道用鉄管。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−215618(P2008−215618A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14663(P2008−14663)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(508026397)ケーダブリュピーティー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】