説明

ナノ電子的呼吸気分析器と喘息モニター

被検体、例えば、ヒトの呼気中に含まれるCO、NO、及び麻酔ガス等を検出するためのセンサーを含むナノ電子センサーの複数の実施態様が開示される。呼気中の2種以上の被検体の測定、例えば、喘息のような肺の状態の監視等を可能にする統合多価性モニターシステムが開示される。このモニターシステムは、コンパクトで、計量で、低コストのシステムとして設計してもよく、また、測定値を分析して患者の状態を決定すると共に測定記録を保存することを可能にするマイクロプロセッサーを具備していてもよい。無線方式の実施態様は、このようなエンハンスメントを遠隔監視システムとして提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、被検体に応答するナノ構造素子のキャパシタンス、インピーダンス又はその他の電気的特性の変化を評価することによって該被検体を測定するためのナノ構造化センサーシステム、特に呼吸気中に含まれる医療関連種を測定するためのナノ構造化センサーシステムに関する。
【0002】
優先権と組み込まれるべき特許出願
このPCT国際特許出願は、下記の特許出願に適用される法令と条約に従う優先権を主張する出願であり、これらの優先権の基礎となる特許出願に係る明細書の記載内容も本願明細書の一部を成すものである:
(1)米国特許出願第11/437275号(出願日:2006年5月18日、公開番号:US2007−0048180、発明の名称:ナノ電子的呼吸気分析器と喘息モニター)、
(2)米国特許出願第11/488456号(出願日:2006年7月18日、公開番号:US2007−0048181、発明の名称:改良型二酸化炭素用ナノセンサーと呼吸性COモニター)及び
(3)米国特許出願第11/588845号(出願日:2006年10月26日、公開番号:未公開、発明の名称:麻酔モニター、キャパシタンスナノセンサー及びセンサーによる動的サンプリング法)。
【0003】
また、このPCT国際特許出願は、下記の特許出願の開示内容と関連し、これらの特許出願に係る明細書の記載内容も本願明細書の一部を成すものである:
(1)米国特許出願第11/090550号(出願日:2005年3月25日、特許番号:第6894359号、発明の名称:ナノチューブセンサーの感度調節)、
(2)米国特許出願第10/846072号(出願日:2004年5月14日、公開番号:US2005−0184641、発明の名称:可撓性のナノチューブトランジスター)、
(3)米国特許出願第10/177929号(出願日:2002年6月21日、対応公報:WO2004−040671、発明の名称:基体上でのナノチューブの分散成長)、
(4)米国特許出願第10/388701号(出願日:2003年3月14日、特許番号:第6905655号、発明の名称:ナノ構造装置アレイを感知するための選択性の改良)、
【0004】
(5)米国特許出願第10/656898号(出願日:2003年9月5日、公開番号:US2005−0279987、発明の名称:ナノ構造センサー装置用ポリマー認識層)、
(6)米国特許出願第10/940324号(出願日:2004年9月13日、公開番号:US2005−0129573、発明の名称:二酸化炭素用ナノ電子的センサー)、
(7)米国特許出願第11/019792号(出願日:2004年12月18日、公開番号:US2005−0245836、発明の名称:ナノ電子的カプノメーターアダプター)、及び
(8)アレキサンダー・スター及びオレクサンダー・クズマイク、米国仮出願(出願番号:未定、出願日:2007年1月12日、公開番号:未公開、代理人のファイル番号:06−038P、速達便番号:EV928143967US、発明の名称:酸化窒素の検出):この仮出願の明細書には、ナノミックス社とピッツバーグ大学との間で締結された共同研究協定「法人研究協定」(2005年9月1日発効)の範囲内において行われた研究内容が開示されている。この共同研究協定によれば、本件出願の発明者と共通する発明者を少なくとも一人含むピッツバーグ大学の従業者の参加と施設の利用によって、一定の研究活動が行われる。
【背景技術】
【0005】
呼吸気中の二酸化炭素の濃度測定は集中治療と麻酔における標準的な手法であり、呼吸機能の診断と処置における基本的な手段である。この医療上のモニタリングにおいて必要な事項は、呼吸気中の二酸化炭素の濃度を測定して追跡することであり、これはカプノグラフィー(capnography)と呼ばれることがある。カプノグラフィー装置の要求を満たすために一般的に普及している技法は、嵩高で高価な非分散性赤外吸収(NDIR)センサーに依存してCOの濃度を測定している。コストが高く、複雑で、重量が重い等の制限要因に起因して、カプノグラフィーを制御された環境(例えば、手術室等)において有効に利用することが制約されており、また、カプノグラフィーの医療上の利用も制限されている。
【0006】
COの測定の外に、呼吸気の医学的な分析とモニタリングにおいては、患者の介護と診断を改善するために多くのその他の科学種の測定法が利用される。一般に、吐き出される呼吸気は、吸い込まれる空気とは異なる組成を有する。種々の化合物は吸い込まれる空気から除去されるか(例えば、Oとしての酸素は吸収されて代謝される)、又は吐き出される呼吸気中へ添加される(例えば、CO及びHO等)。さらに、処置用化合物(例えば、麻酔剤等)は吸入投与用吸入空気へ添加され、吐き出される呼吸気中で検出されてもよい。
【0007】
吐き出される呼吸気の実質的な部分にはN、O、CO、水蒸気及びその他の大気の構成成分(例えば、アルゴン等)が含まれているが、体内での代謝過程によって生産される多くの揮発性の有機化学種と無機化学種は吐き出される呼吸気中へ放出される(多くの場合、この種の化合物の量は痕跡量である)。多くの場合、このような代謝種は医学的に重要である。例えば、酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、その他の窒素含有化合物、硫黄含有化合物、過酸化水素、一酸化炭素、水素、アンモニア、ケトン、アルデヒド、エステル、アルカン、及びその他の揮発性有機化合物は吐き出される呼吸気中に存在することがある。吐き出される呼吸気中に含まれる代謝に起因する成分に関連する医学的症状には、組織の炎症(例えば、喘息等)、免疫応答(例えば、癌細胞又はバクテリア等)、代謝障害(例えば、糖尿病等)、消化過程、肝臓障害、腎臓障害、心臓障害、歯肉疾患、口臭、血液成分濃度及びその他の生理学的症状等が含まれる。
【0008】
呼吸気中のNO検出は気道炎症並びにその他の組織炎症、免疫応答及びその他の症状に関連する検証されたマーカーである。従って、吐き出される呼吸気パラメーター、例えば、吐き出された部分酸化窒素(FeNO;fractional exhaled nitric oxide)としてNOを測定することは、喘息やその他の疾患の診断、モニタリング及び管理処置に対する有用な手段である。この点に関しては、例えば、米国特許第6010459号明細書(発明の名称:ヒトの吐き出される呼吸気中の成分を測定するための方法と装置)を参照されたい(該明細書も本願明細書の一部を成すものである)。しかしながら、NOを測定するための医療システムにおいては、一般的にはカプノグラフ装置の場合と同じ制約(例えば、高いコスト、装置の重さ、及び複雑性等)が伴う。
【0009】
呼吸気中のCO測定は、灌流、心臓機能及びベンチレーターの効率の指標として利用されている。さらに、CO測定は、気道状態と肺機能の診断とモニタリングにおいて、それ自体で有用なだけでなく、その他の測定と併用する手段として有用である。この点に関しては、例えば、米国特許第6648833号明細書(発明の名称:カプノグラフィーを用いる呼吸気分析)を参照されたい(該明細書も本願明細書の一部を成すものである)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、当該分野の上記の事情に鑑み、例えば、被検体に応答するナノ構造素子のキャパシタンス、インピーダンス又はその他の電気的特性の変化を評価することによって該被検体を測定するための新規なナノ構造化センサーシステム、特に呼吸気中に含まれる医療関連種を測定するためのナノ構造化センサーシステムを提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の観点を有する実施態様によれば、医学的な用途に供される新規なナノ構造化電子的センサーの次の利点をもたらすカプノグラフィー装置が提供される:i)赤外線テクノロジーの性能に匹敵するか、又はこれを凌駕する性能、ii)使い捨てパッケージ内においてプラグ・アンド・プレイ的な扱いやすさ、iii)携帯性及び/又は無線集積化に必要な小サイズと低消費電力、iv)単一チップ上へのセンサーアレイの組み込み性、及びv)センサー成分のコストにおける桁違いの低減化。これらの点に関しては、例えば、米国特許出願第11/019792号(出願日:2004年12月18日、発明の名称:ナノ電子的なカプノメーター用アダプター、公開公報:US 2005−0245836)の明細書を参照されたい(該明細書も本願明細書の一部を成すものである)。
【0012】
1種よりも多くの代謝種を検出して、例えば、吐き出された呼吸気中のNOとCOの両方を考慮することによって、医学的症状(例えば、喘息等)を監視することが提案されている。この点に関しては、例えば、米国公開公報第2003−0134427号(発明の名称:ガス濃度を決定するための方法と装置)及び下記の文献を参照されたい(該明細書と文献も本願明細書の一部を成すものである):C.ローラーら、「単一の IV - VI 中間赤外レーザーを用いることによるヒトの呼吸気中のNOとCOの同時測定」、オプチックス・レターズ(2002年)、第27巻、第107頁〜第109頁。
【0013】
医学的な呼吸分析用にNOガスを検出するためにはいくつかの別の常套法が知られている。レーザー検出法においては、レーザーの波長は、NOによって選択的に吸収される波長に変換させてもよい。次いで、光検出器を用いて試料カラムを通過するレーザー光の透過率を測定し、ガスによる吸収度をNOの濃度と関連付ける。これに関しては、例えば、ノーマンOKのエキプス・テクノロジーズ社によって開発された呼吸気分析器である「イクスペリメンタル・ブリースメーター」(登録商標)を参照されたい。NOは、化学発光法、電気化学的反応法及びその他の光学的検出法のような方法によって検出してもよい。この点に関しては、例えば、米国公開公報第2003−0134427号(発明の名称:ガス濃度を決定するための方法と装置)及び同第2004−0017570号(発明の名称:呼吸ガスの定量化のための装置とシステム)を参照されたい(これらの公報も本願明細書の一部を成すものである)。
【0014】
しかしながら、常套のいずれのNO検出法においても、装置のサイズ、重量、コスト及び/又は操作の複雑性(即ち、低コストで患者が携帯して使用する用法を制限する操作の複雑性)の点で制約がある。カプノグラフィーを用いる場合のように、本発明の観点を有すると共に、新規なナノ構造化電子的センサーを具備する態様の装置は、小サイズ、軽量、低コスト、及び患者の代替的な介護態様に対して該装置を特に適したものにする簡単な操作という観点からの利点をもたらす。
【0015】
本発明の観点を有する別の実施態様には、吐き出される呼吸気中の1種よりも多くの成分を測定するように設計されたシステムが含まれ、該システムによれば、NO、CO、H及びその他の成分のうちの2種又はそれよりも多くの成分に関連づけられる患者の固有の特質に基づく診断と監視が可能となる。同様に、新規なナノ電子的センサーの特性は、センサーのアレイ、マイクロプロセッサー及び/又は無線トランシーバーを具備する態様の装置をもたらし、これによって、患者に固有の多重測定履歴の簡便な記録と分析及び/又は医療スタッフによる患者の遠隔監視が可能となる。この点に関しては、例えば、米国特許出願第11/111121号(出願日:2005年4月20日、発明の名称:遠隔通信型の電池式ナノ構造センサー装置)の明細書を参照されたい(該明細書も本願明細書の一部を成すものである)。
【0016】
ナノチューブは1993年にS.イイジマによって最初に報告され、それ以来注目すべき研究テーマとなっている。単壁ナノチューブ(single walled nanotube; SWNT)は、強い共有結合、特有の一次元的構造、格別に高い引張強度、高いレジリエンス、金属性〜半導性の電子的特性、高い電流容量、及びナノチューブの表面に近接する荷電種によって引き起こされる摂動に対する極めて高い感度によって特徴付けられる。
【0017】
本発明の観点を有するセンサー装置の例示的な実施態様においては、気体相及び液状媒体(例えば、生物学的流体及び電解液等)において使用する素子としてナノ構造体を使用することによって、化学的種、生理学的種又は生体分子種の検出がもたらされる。リアルタイムでの電子的検出と監視は高感度を伴い、しかも迅速で可逆的であり、また、大きなダイナミックレンジ(dynamic range)を有する。アウトプットはディジタル方式でおこなわれるので、必要な場合には、外部からのノイズを除去するために、電子的なフィルタリングと後処理を行ってもよい。特定の実施態様には、単一のセンサーのプラットホーム又はチップ上における多重アッセイが含まれる。
【0018】
本発明の観点を有する別の実施態様は、1又は複数の別のタイプの電子的装置(例えば、容量性センサー、抵抗性センサー、インピーダンスセンサー、及び電界効果トランジスターセンサー等、又はこれらの任意の併用型センサー等)として設計されたナノ構造化センサー素子を用いることによって被検体を検出するように設計される。2以上のこの種の測定装置をセンサー装置中へ組み入れることによって、精度及び/感度を増大させる直交測定が行われるようにしてもよい。一部の実施態様においては、機能化基又はナノ構造化素子と結合した材料を組み入れることによって、被検体に対して高感度で選択性のある応答がもたらされるようにしてもよい。
【0019】
本明細書に記載した多数のセンサーの実施態様は1又は複数のカーボンナノチューブに基づくものであるが、当該分野において知られているその他のナノ構造体(例えば、半導体ナノワイヤ、種々の形態を有するフラーレン、及び多重壁ナノチューブ等、又はこれらの任意の組み合わせ等)を用いてもよい。カーボンナノチューブ(CNT)のようなナノ構造体に基づく素子は特有の電気的特性を有するものとして知られている。さらに、環境の変化(荷電分子)に対するこれらの素子の感度は、CNTの表面エネルギーを適度に調整するので、検出器として使用することができる。CNTの特性の適度な調整は、装置の素子としてCNT(又はCNTネットワーク)が組み込まれた装置を作成することによって電気的に検討することができる。これは、ゲートトランジスター素子又は容量性効果として行うことができる。
【0020】
本発明の観点を有する特定の例示的な実施態様は、半導性素子又は導電性素子として単壁カーボンナノチューブ(SWNT)を具備する。この種の素子は単数又は複数の離散性の平行なNTを、装置の電極と接触した状態又は電気的に接続した状態で具有する。しかしながら、多くの用途に対しては、一般的には、基板に隣接して実質上ランダムに分布されたナノチューブ(又はその他のナノ構造体)の平面状ネットワーク領域を含む半導性素子又は導電性素子を使用する態様が有利である。この場合、導電率はナノチューブ間の相互連結によって保持される。
【0021】
SWNTのランダムなネットワークから製造される装置は、ナノチューブの配列(alignment)と組み立て(assembly)の問題及び導電率の変化の問題を解決すると共に、個々のナノチューブの感度を維持する。例えば、この種の装置は、現在普及している4−インチのシリコンウェファー(各々のウェファーは20000個よりも多くの能動素子を含む)上での大量生産に適している。これらの装置に特異的な認識層を付与することにより、該装置は、標的となる被検体の存在に対する変換器として機能する。この種のネットワークは、化学蒸着法(CVD)、伝統的なリソグラフィー、溶剤懸濁沈着法及び真空蒸着法等によって形成させてもよい。これらに関しては、例えば、次の文献を参照されたい(これらの文献の記載内容も本願明細書の一部を成すものである):1)米国特許出願第10/177929号明細書(発明の名称:基板上でのナノチューブの分散成長)、2)米国特許第6894359号明細書(発明の名称:ナノチューブセンサーの感度制御)、3)米国特許出願第10/846072号明細書(発明の名称:軟質ナノチューブトランジスター)、及び4)L.フーら、「透明な導電性のカーボンナノチューブネットワークにおけるパーコレーション」、ナノ・レターズ、2004年、第4巻、第12号、第2513頁〜第2517頁。
【0022】
ナノスケールの素子を用いて、多重/マルチパラメーター的用途のための単一チップ上に装置のアレイを形成させることができる。この点に関しては、例えば、次の文献を参照されたい(これらの文献の記載内容も本願明細書の一部を成すものである):1)米国特許出願第10/388701号明細書(発明の名称:ナノ構造装置のアレイを検出するための選択性の修正)、2)米国特許出願第10/656898号明細書(発明の名称:ナノ構造センサー装置用ポリマー認識層)、3)米国特許出願第10/940324号明細書(発明の名称:二酸化炭素用ナノ電子的センサー)及び4)米国仮特許出願第60/564248号明細書(発明の名称:遠隔通信型の電池式ナノ構造センサー装置)。
【0023】
本願発明の観点を有する特定の実施態様は、下記の構成要素(i)〜(iii)を具備する呼吸気分析器又は医学的モニターを含む:
(i)少なくとも1つの第1ナノ電子センサーであって、a)基体、b)該基体上に配置された1又は複数のナノ構造体、c)該ナノ構造体と電気的に接続された1又は複数の導電性素子、及びd)第1ナノ構造体と操作上関連する少なくとも1つの認識材料(但し、該認識材料の少なくとも1つは、ヒトの呼吸気中に存在する第1被検体に対して感度を示すように設計される)を具有する該第1ナノ電子センサー
(ii)少なくとも患者から吐き出される呼吸気を採取するように設計された呼吸気採取器であって、該第1ナノセンサーに接続された該呼吸気採取器、及び
(iii)該第1ナノ電子センサーから信号を受信すると共に、該第1被検体の濃度を測定するために該信号を使用することによって、患者の医学的状態に関連する情報を提供するように設計された演算処理装置。
【0024】
特定の呼吸気分析器の実施態様は、さらに一般的には第1センサーと類似する第2ナノ電子センサーであって、ヒトの呼吸気中に存在する第2被検体に対して感度を示すように設計された認識材料を含む第2ナノ電子センサーを少なくとも1つ具備していてもよい。この場合、演算処理装置は、該第2ナノ電子センサーから信号を受信して該第2被検体の濃度を測定するために該信号を使用することによって、患者の医学的状態に関連する情報を提供するように設計される。特定の呼吸気分析器の実施態様は、患者の医学的状態に関連する情報をユーザーへ提供する出力機構をさらに具備していてもよい。
【0025】
呼吸気分析器の演算処理装置は、第1被検体の測定値と第2被検体の測定値を比較することによって、患者の医学的状態を示すこれらの測定値間の関連性を決定するように設計されていてもよい。 これらの被検体は二酸化炭素(CO)を含有していてもよく、第2被検体は酸化窒素(NO)を含有していてもよく、また、演算処理装置は、採取された呼吸気中のCOとNOの測定濃度との関連性を決定することによって、患者の気道炎症に関する評価情報を提供するように設計されていてもよい。
【0026】
特定の実施例においては、演算処理装置は、喘息状態を決定するように設計されていてもよく、また、出力機構は、喘息状態に関連する情報をユーザーへ提供するように設計されていてもよい。呼吸気分析器は患者又はその他のユーザーによって実質的に携帯可能であってもよく、また、喘息状態に関連する情報を実質的にリアルタイムに基づいて患者又は看護者へ提供するように設計されていてもよい。
【0027】
特定の実施態様においては、1又は複数のナノ構造体はカーボンナノチューブのネットワークを含んでいてもよい。この場合、例えば、ネットワークの少なくとも一部は1又は複数の導電性素子と接触させる。導電性素子は、ソース/ドレインギャップによって相互に分離されたソース電極とドレイン電極を具有していてもよい。特定の実施例においては、カーボンナノチューブのネットワークは特徴的な長さを有し、該長さがソース/ドレインギャップよりも実質的に小さいために、該ネットワークを構成するナノチューブは、多くともソース電極とドレイン電極の一方のみと実質上接触する。別の実施例においては、該特徴的な長さがソース/ドレインギャップよりも実質的に大きいために、該ネットワークを構成するナノチューブの実質的な部分はソース電極とドレイン電極の両方と接触する。
【0028】
呼吸気分析器のセンサーはゲート電極をさらに具備していてもよく、センサーの信号は、ゲート電圧の影響下でのナノ構造体の特性を示してもよい。あるいは、センサーの信号は、ナノ構造体のキャパシタンス特性を示してもよい。特定の実施態様においては、本発明の観点を有する呼吸気分析器又はモノターは、CO、NO、NO及びHから実質上成る群から選択される1種又は複数種の被検体を測定するように設計されていてもよい。呼吸気採取器は、少なくとも患者からの呼吸気の実質的な吐き出し時間にわたって、第1センサーと第2センサーの一方又は両方へ呼吸気の試料を連続的に供給するように設計されていてもよく、また、演算処理装置は該吐き出し時間中の第1被検体と第2被検体の一方又は両方の濃度の経時変化を決定するように設計されていてもよい。また、呼吸気採取器は、患者の呼吸気の吐き出し時間中における呼吸気試料の圧力を調節するように設計されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付図面について簡単に説明する。
【図1】図1Aは被検体を検出するための例示的な電子検出装置を示す模式的断面図である。この実施例においては、該電子検出装置はNTFETとして設計されている。 図1Bは一般的には図1Aに示すセンサーと類似するセンサーの写真である。該センサーはチップ上で調製され、回路基板上に装着される。
【図2】本発明による観点を有する例示的な二酸化炭素用ナノ電子的センサーを用いて広範囲の二酸化炭素濃度に対して得られた該センサーの応答のプロットを示す。
【図3】本発明による観点を有する例示的な二酸化炭素用ナノ電子的センサーを用いて低濃度の二酸化炭素に対して得られた該センサーの応答のプロットを示す。
【0030】
【図4】本発明の観点を有する例示的なカプノメーターを用いてヒトの模擬呼吸に対して得られ該カプノメーターの応答を示すカプノグラムのプロットである。
【図5】本発明の観点を有する例示的なナノ構造センサーを空気中のNOに短時間曝したときに得られた該センサーの応答のプロットを示す。
【図6】図5に示すNOセンサー装置を呼吸気中の代表的なCO濃度に曝したときに、該装置が交差感度をほとんど又は全く示さないことを表すプロットを示す。
【図7】本発明による観点を有する例示的な容量性センサーの模式的断面図である。
【図8】図7に示すような例示的なナノ構造センサーをイソフルラン及びハロタンに短時間曝したときに得られたが該センサーの応答のプロットを示す。
【図9】本発明の観点を有する携帯型の多価性呼吸気分析器の模式的斜視図である。
【0031】
【図10A】健康人の代表的なカプノグラムとこれに対応する肺胞の模式図を示す。( 図10A〜図10Cは、カプノグラムの特徴をさらに例示するためのグラフである。これらのグラフは米国特許第6648833号明細書に添付された図面の複製である。)
【図10B】閉塞性肺疾患で患う患者の代表的なカプノグラムとこれに対応する肺胞の模式図を示す。
【図10C】拘束性(restrictive)肺疾患で患う患者の代表的なカプノグラムとこれに対応する肺胞の模式図を示す。
【図11】吐き出された呼吸気中のNO濃度と吐き出し速度との関係を示すグラフである。(このグラフは米国特許第6733463号明細書に添付された図面の複製である。)
【図12】患者から吐き出された呼吸気中のNOの分数組成の分布の代表的なプロットを示す。
【図13A】有線カプノメーターセンサーとアダプター系の側面方向からの模式図及びチューブの断面方向からの模式図である。(図13A〜図13Gは、図9に含まれる呼吸気採取器において使用してもよいいくつかの代替的なセンサー取付装置を示す模式図である。)
【図13B】無線カプノメーターセンサーとアダプター系のチューブ取り付け部に対する模式的端面図である。
【図13C】有線カプノメーターセンサーとアダプター系のチューブ取り付け部に対する模式的端面図である。
【図13D】カプノメーターセンサーとアダプターの模式図である。
【図13E】図13Dに示すタイプのアダプターとセンサーとは異なる別のアダプターとセンサーを示す模式図である。
【図13F】一般的には図13Aに示す態様と類似するカプノメーターのセンサーとアダプターの模式的側面図である。
【図13G】一般的には図13Fに示す態様と類似するカプノメーターのセンサーとアダプターの模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の観点を有する例示的な電子的検出装置100を示す。該検出装置は被検体101(例えば、CO、H及びNO等)を検出するための装置であって、ナノ構造センサー102を具備する。センサー102は基板104及び導電性の溝又は層106を具備しており、該導電性の溝又は層は、基板上に配置されたナノ構造材、例えば、ナノチューブ又はナノチューブのネットワーク等を含む。ナノ構造材106は、図示するように、基板と接触していてもよく、あるいは、介在材層を介在させるか又は介在させないで基板から間隔をあけて配置されていてもよい。
【0033】
本発明の1つの実施態様においては、導電性の溝106は1又は複数のナノチューブを含んでいてもよい。例えば、導電性の溝106は、メッシュ、フィルム又はネットワークを形成する複数のナノチューブを含んでいてもよい。本発明の観点を有する特定の例示的な実施態様にはナノ構造素子が含まれる。該ナノ構造素子は化学蒸着(CVD)や伝統的なリソグラフィーによって調製してもよく、あるいは、その他の方法(例えば、溶剤懸濁沈着法及びAFM操作法等)によって沈着させてもよい。特定の実施態様には、1又は複数の金属電極と電気的に接触する1又は複数の離散性ナノチューブが含まれる。活性ナノ構造体の配置には、本発明の技術的思想を逸脱することのない多数の異なる配置態様が含まれる。
【0034】
少なくとも2つの導電性の素子又は接点(110、112)を基板上に配置させ、これらを、ナノ構造材を含む導電性の溝106と電気的に接続させてもよい。これらの素子(110、112)は、導電性の溝106と接触する金属電極を含んでいてもよい。別の実施態様においては、導電性又は半導性の物質(図示せず)を接点(110、112)と導電性の溝106徒の間に介在させてもよい。これらの接点110及び112は、ソース/ドレイン電圧Vsdが印加されるソース電極及びドレイン電極をそれぞれ具有する。ドレイン電極112に対するソース電極110の電圧又は極性は可変性であってもよい。例えば、印加される電圧はDC、AC、パルス電圧又は可変電圧であってもよい。本発明の1つの実施態様においては、印加される電圧はDC電圧である。
【0035】
図1に示す実施例においては、装置100は、ゲート電極114をさらに具備するセンサー102を用いることによって、ゲート制御電界効果トランジスターとして操作してもよい。本明細書においては、この種の装置はナノチューブ電界効果トランジスター又はNTFETと呼ぶ。ゲート114は、基板104の基底部、例えば、誘電体層116によって接点(110、112)と導電性溝106から隔離されたドープ処理シリコンウェファー材等を含んでいてもよく、これにより、印加されるゲート電圧Vによるキャパシタンスの発生が可能となる。例えば、基板104は、SiOを含有する誘電体層116によって隔離されたシリコン製バックゲート114を含んでいてもよい。
【0036】
センサー102は、導電性素子(110、112)と導電性溝106との間の連接部に隣接する領域を被覆する抑制材層又は不動態化材層118をさらに含んでいてもよい。抑制材は、少なくとも1種の化学種(例えば、被検体101又は環境物質、例えば、水又はその他の溶剤、酸素及び窒素等)に対して不透過性であってもよい。抑制材118は、当該分野において知られている不動態化材、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素及びその他の適当な材料等を含んでいてもよい。NTFETにおける抑制材の使用に関する詳細な事項は先行特許文献である米国特許第6894359号明細書(発明の名称:ナノチューブセンサーの感度制御)に記載されている(該明細書の記載内容も本願明細書の一部を成すものである)。
【0037】
導電性の溝106(例えば、カーボンナノチューブ層)は1又は複数種の標的被検体101に対して感度を示すように機能化させてもよい。ナノ構造体、例えば、カーボンナノチューブは、電荷移動又は装置と被検体との間の他の相互作用を介して、標的被検体に対して応答してもよいが、より一般的には、標的被検体と相互作用したときに装置の特性に測定可能な変化を誘発する認識材料(機能化材料とも呼ばれる)120を用いることによって特異的な感度を達成することができる。
【0038】
装置100は、電気的測定を実行するためのセンサー素子と連絡する適当な回路をさらに具備していてもよい。例えば、常套の電源によって、接点110と112との間にソースドレイン電圧Vsdを供給してもよい。センサー装置100を用いる測定は、設定110と112との間に接続されたメーター122によって模式的に表される回路によって実行してもよい。ゲート電極114を具備する実施態様においては、常套の電源124を接続させることによって、選択された又は制御可能なゲート電圧Vを供給してもよい。装置100は、センサー102と連絡する1又は複数の当該分野において既知の給電体及び/又は信号の制御/処理ユニット(図示せず)を具備していてもよい。
【0039】
所望により、装置100は、例えば、先の米国特許出願第10/388701号明細書(出願日:2003年3月14日、発明の名称:ナノ構造装置アレイを検知するための選択性の改変、対応公報:US 2003−0175161)に記載されているように、パターン状又はアレイ状に配設されたセンサー102のようなセンサーを複数個具備していてもよい(該明細書の記載内容も本願明細書の一部を成すものである)。アレイ状に配設された各装置は、同一又は異なる機能化法によって機能化されていてもよい。アレイ状に配設された同一の装置は、測定データを多重送信することにより、シグナル/ノイズ比を改善するか、又は重複化によって装置の強靱性を増大させることができる点で有用である。異なる機能化は、単一の装置を用いて非常に多種多様な被検体に対して感度を付与するために有用である。
【0040】
2.特定のセンサー素子
基板
基板104は絶縁性であってもよく、あるいは、基底部114と別の誘電層116を有する層状構造体を具有していてもよく、該誘電層は、接点(110、112)と溝106を基板の基底部114から隔離するように配設される。基板104は、導電性、半導性又は誘電性であってもよい硬質材又は軟質剤を含んでいてもよい。基板104は一体構造を有していてもよく、あるいは、異なる特性と組成を有する多層構造又はその他の複合構造を有していてもよい。適当な基板材料は石英、アルミナ、多結晶性シリコン、III 〜 V 半導体化合物及びその他の適当な材料を含んでいてもよい。基板材料は、特に有用な特性を有するように選択してもよく、有用な特性としては、透明性、微孔性、磁性、単結晶性、多結晶性、非晶性、又はこれらの特性の任意の組み合わせ、及びその他の望ましい特性が例示される。例えば、本発明の1つの実施態様においては、基板104は、バックゲート電極114として機能するようにドープされたシリコンウェファーを含んでいてもよい。該ウェファーは、中間の拡散隔壁(Si)と上部の誘電層(SiO)によって被覆される。所望により、種々の目的のため、例えば、サーミスター、発熱体、集積回路素子又はその他の素子等のために、付加的な電子的素子を基板中へ組み入れてもよい。
【0041】
別の特定の実施態様においては、基板は、次の米国特許出願の明細書に記載のように、軟質の絶縁性ポリマーを含有していてもよく、該ポリマーは所望により下方のゲート導電体(例えば、軟質の導電性ポリマー組成物)を含んでいてもよい(該明細書の記載内容も本願明細書の一部を成すものである):第10/846072号(出願日:2004年5月14日、発明の名称:軟質ナノチューブトランジスター)。さらに別の実施態様においては、基板は、次の米国特許出願の明細書に記載のように、該基板を通過する吸引を可能にする微孔性物質、例えば、懸濁液又は溶液からナノチューブネットワークの溝106を真空沈着させるための多孔性アルミナ等を含有していてもよい(該明細書の記載内容も本願明細書の一部を成すものである):第60/639954号(出願日:2004年12月28日、発明の名称:ナノチューブネットワークを上部に有するバイオセンサー用構造体)。
【0042】
接点又は電極
ソース電極とドレイン電極用に使用される導体又は接点110及び112は、半導体工業において使用されている常套の金属のいずれであってもよく、あるいは、Au、Pd、Pt、Cr、Ni、ITO、W又はその他の金属性物質若しくは合金又はこれらの混合物から選択されてもよい。別の態様においては、金属性物質の多層又は複合材、例えば、Ti+Au、Cr+Au、Ti+Pd及びCr+Pd等を含んでいてもよい。多層構造によって、基体への金属の接着性の改善を促進してもよい。例えば、電気的リード線は、金層(厚さ:120nm)で被覆したチタンフィルム(厚さ:30nm)からナノチューブネットワーク溝の上部へパターン化させてもよい。別の態様においては、その他の導電性物質、例えば、導電性ポリマー等を用いてもよい。ソース電極110とドレイン電極112との間の距離は、特定の用途に対する所望の特性が得られるように選択すればよい。ソース電極とドレイン電極の各々の1個又は複数個は、交互に組み合わせた状態又は間隔を置いた状態の電極アレイとして配設させてもよく、これによって、緻密に配置されるべき比較的小さなソース/ドレインギャップを有するナノ構造溝106の面積を比較的大きくすることができる。
【0043】
ゲート電極114は、接点(110、112)と一般的には類似する物質を含有していてもよい。別の態様においては、ゲート電極114は、基板104の内部に副層を具有していてもよい。ゲート電極114はドープ化シリコン、パターン化金属、ITO、その他の導電性金属又は非金属を含有していてもよく、あるいはこれらの組み合わせを併有していてもよい。別の形態のゲート電極、例えば、トップゲート(top gate)又は導電性の被検体保有媒体(例えば、水性溶液)を介して機能するゲート等を使用してもよい。所望により、装置102は、本発明に係る技術的思想を逸脱することなく、その他の電極、例えば、対電極、参照電極、偽性参照電極等を具備していてもよい。
【0044】
導電性溝又はナノ構造層
本発明による観点を含む例示的な実施態様においては、1又は複数のナノ構造体を含有する少なくとも1つの導電性溝106を有する検出装置が含まれる。例えば、導電性溝(導電性層)106は、1又は複数の単壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ、ナノワイヤ、ナノファイバー、ナノロッド、ナノ球体又はその他の適当なナノ構造体を含んでいてもよい。付加的に、又は、代替的に、導電性溝(導電性層)106は、次に例示する材料から成る1又は複数のナノ構造体を含んでいてもよい:ホウ素、窒化ホウ素、窒化炭素ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、窒化ガリウム、酸化亜鉛、リン化インジウム、二硫化モリブデン、銀又はその他の適当な材料。ナノチューブ又はその他のナノ構造体を製造するためには、当該分野においては種々の適当な方法が知られており、いずれの適当な方法を採用してもよい。
【0045】
ナノ構造体ネットワークを含む導電性溝
本発明の1つの実施態様においては、導電性溝又はナノ構造体層106は、ソース電極110とドレイン電極112の間に少なくとも1つの導電性経路を提供するパーコレーション層、メッシュ又はフィルムを形成するように配置されたより小さなナノ構造体の相互に連結したネットワークを含んでいてもよい。この種のナノ粒子のネットワークにおいては、いずれかの単一のナノ粒子がソース/ドレイン接点の間にわたって延びている必要はない。操作中においては、ソース電極110とドレイン電極112との間の導電率は、隣接するナノ構造体間の相互連結、接触又は連絡によって維持してもよい。ナノチューブ等のナノ粒子のこの種のネットワークは、欠陥に対して耐性を示すような形態に設計してもよく、これによって、いずれかの特定の導電性経路の破損は、ネットワーク内の残存する導電性経路によって補償される。
【0046】
本発明の1つの実施態様においては、ナノ構造体を含む導電性溝106は、1又は複数の単壁状又は多重壁状のカーボンナノチューブを含有する。ナノチューブは集塊、束又は明確に分離したファイバーとして配設してもよい。ナノチューブの有用なネットワークは、例えば、ナノチューブの分散液を基板上に塗布することによって形成させてもよく、これによって、ナノチューブはほぼ平面状にランダムな状態で配向される。例えば、導電性溝106は、分散された複数の単壁カーボンナノチューブ(SWCNT)を含むネットワークを含有していてもよい。該ネットワークにおいては、ナノチューブは、基板に対して一般的には平行に配置された相互に連結したメッシュとして、実質的にランダムで、非平行な状態であって相互に分離して状態(即ち、非集塊状態)で配置される。
【0047】
溝106の電気的特性は、特定の機能化化学、又は導電率に影響をもたらすセンサーのその他の構成要素に適合するように最適化してもよく、あるいは被検体の所望の濃度範囲に適合するように最適化させてもよい。好ましい実施態様においては、ナノチューブネットワークの密度又は厚さは、ソース電極とドレイン電極との間に所望の導電率がもたらされるように変化させてもよい。代替的に、又は、付加的に、ネットワーク中の金属性又は半導性のナノチューブの割合は、ネットワーク中において所望の導電率が得られるように選択してもよい。導電性溝106のためにナノ構造体のネットワーク構造体を使用する1つの利点は次の点にある。即ち、これらの要因は、選択されるパーコレーション(percolation)限界の上限又は下限を有する導電性ネットワークをもたらすように変化させることができ、これによって、装置の特性の最適化が簡便におこなわれることである。例えば、NTネットワーク溝は、非被覆状ネットワークに対するパーコレーション限界よりも幾分下方に形成させてもよく、また、該溝は、Pdのような導電性認識材料の沈着によって改変させることによって、所望の導電率を有する機能化溝を形成させてもよい。別の実施例においては、当初は乾燥状態のネットワークの導電率は、液状の被検体媒体(例えば、生理学的な緩衝液又は溶剤)の予想される付加的な導電率に関連して操作がおこなわれるように選択されてもよい。
【0048】
さらに、一般的にはランダムに分散された個々のナノ粒子を含有する導電性溝106は、ナノ構造装置を製造するための局在化された方法ではなくて、統計的な方法を可能にする点で有利であり、これによって、大量生産という課題の解決をより容易にする。統計的な方法においては、電気的接点は、装置を形成する個々のナノ構造体の分散系上の任意の位置に配設させることができる。この場合、電極の位置といずれかの特定のナノ粒子の位置との間の特別な連絡は不要である。ナノ粒子のランダムな分散系によって次の点が保証される。即ち、該分散系上に配設された2個又はそれよりも多くの電極は、連結をもたらす機能性ナノチューブを具有する完全な電気回路を形成することができる。電極アレイの上方又は下方の分散系に、ランダムに配向された多数のナノチューブを分布させることによって、個々の装置における均一な電気的特性が保証される。この場合、個々のナノチューブ又はその他のナノ構造体の制御された配置又は成長をおこなう従来法の場合よりも、より高い収率とより速い処理速度が達成される。
【0049】
ナノ粒子ネットワークの形成
ナノ構造体ネットワークは、種々の適当な方法で形成させてもよい。1つの適当な方法には、単壁カーボンナノチューブの相互連絡するネットワークを、例えば、基体上に載せた触媒又は生長促進剤の存在下での蒸気の反応によって、基体上に直接的に形成させることを含めてもよい。例えば、単壁ナノチューブのネットワークを、約900℃におけるメタン/水素ガス混合物を用いる鉄含有触媒のナノ粒子からの化学的蒸着法によってシリコン又はその他の基体上で生長させることができる。
【0050】
高分散されたナノ構造体用触媒又は生長促進剤を使用することによって、制御された直径と壁構造を有するナノチューブのネットワークを、相互に実質上ランダムに非凝集状態で配向させると共に基体の選択された領域にわたって選択された平均密度で実質上均一に分布させることが有利である。粒径分布は、特定のナノチューブの特性、例えば、チューブの直径、単壁又は多壁の数、導電率又はその他の特性の増大を促進するように選択してもよい。
【0051】
その他の触媒材料及びガス混合物を使用することによって、ナノチューブを基体上で生長させることができ、また、その他の電極材料とナノ構造体の形態は次の特許文献に開示されており、これらの文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである:米国特許出願第10/099664号(出願日:2002年3月15日、発明の名称:ナノ構造検出装置アレイを検出するための選択率の改良);国際出願PCT/US03/19808(WO2004/040671)(出願日:2003年6月20日、発明の名称:基体上でのナノチューブの分散生長)。
【0052】
別の態様においては、ナノ構造体を相互に連絡するネットワークを含む導電性層106は、ナノ構造体の溶液又は懸濁液、例えば、カーボンナノチューブの分散溶液等からの沈着によって形成させてもよい。この点に関しては、例えば、次の特許文献に開示されている方法を参照されたい(該特許文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許出願第10/846072号(出願日:2004年5月14日、発明の名称:軟質ナノチューブトランジスター)。ナノ構造体の溶液又は懸濁液を沈着させるためには、スピン塗布法、噴霧沈着法、浸漬塗布法及びインクジェット印刷法等の方法を使用してもよい。
【0053】
さらに別の適当な方法には、下記の特許文献に記載されているようにして、吸引沈着法によって多孔性の基体上又は膜上へナノチューブネットワークを形成させることが含まれていてもよい(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国仮出願第60/639954号(出願日:2004年12月28日、発明の名称:ナノチューブネットワークを上部に有するバイオセンサー用構造体)。このようにして形成されるネットワークは、沈着膜に付着した状態又は膜溶解法若しくは転写結合法等の方法を用いて沈着膜から分離させた状態で、導電性溝として使用してもよい。
【0054】
カーボンナノチューブが、特定の黒鉛の格子配向に応じて、金属特性又は半導体特性を示すことが知られている。ナノセンサー装置102のナノ構造体層106のためのナノチューブの所望の組成を選択するためには種々の方法を採用してもよい。例えば、一般的に類似する複数のナノチューブ装置は、例えば、シリコンウェファー上に配設されたデバイスダイ(device die)のアレイとして同時大量生産法によって製造してもよい。多数の装置の各装置は、各装置の導電性層106の異なる金属的組成又は半導体的組成に起因して、統計的に予測可能な範囲の特性を伴う電気的特性を示す。製造されるダイは、例えば、自動化又は半自動化されたピンプローブ試験リグ(pin probe test rig)等を用いて個別的に試験に供してもよい。選択された電気的な挙動又は挙動範囲を示すダイに注目し、該ダイを後続の処理のために選択して使用に供してもよく、また、いずれかの非適合性のダイを選び取るか、あるいは、別の用途のために加工してもよい。
【0055】
別の態様においては、導電性溝106のためのナノ構造体のネットワークは、金属的又は半導体的特性を有する選択された組成物を含む予備加工された元のナノチューブ材料(例えば、専ら半導体的特性を有するナノチューブ等)から構築させてもよい。あるいは、ナノチューブ組成物の任意の混合物からナノチューブ層を形成させてもよい。該ナノチューブ層は、例えば、オーム加熱等による処理に付すことによって、金属性ナノチューブの全部又は一部を選択的に除去するか、酸化するか、断絶させるか又は失活させることによって、選択された特性を有する導電性溝(例えば、専ら半導体的なナノチューブ等)を残存させてもよい。ナノチューブ層2を、例えば、触媒的に開始されるCVDによって基体1の上部へ直接的に形成させる場合には、後者の方法を採用することが有利である。
【0056】
機能化層又は認識層
センサーの機能化材料120は、特定の用途、例えば、標的となる被検体101と相互作用することによってナノセンサー装置102の電気的性質における測定可能な変化をもたらすようにするために選択されてもよい。例えば、機能化材料120は、被検体101の存在下で発生する電子移動をもたらしてもよく、あるいは、局部的な環境特性(例えば、pH等)に影響を及ぼすことにより間接的に装置の特性を変化させてもよい。代替的又は付加的に、認識材料は、電気的に測定可能な機械的応力又は標的被検体との相互作用に際してナノ構造体溝106における鋭敏な変化を誘発してもよい。被検体又は多重被検体に対する感度は、ナノチューブ導電性溝106と隣接する機能化材料120との連絡によって提供されてもよく、あるいは、該連絡によって制御されてもよい。特定の適当な機能化材料については、本願明細書の後において例示する。機能化材料120は、溝106の表面上に存在するか又は該溝に隣接する連続層又は不連続層として配設してもよい。
【0057】
機能化材料120は、広範囲のその他の化学的被検体又は生体分子被検体に対して選択してもよい。このような材料の例には、二酸化炭素のような工業的又は医学的に重要なガス被検体に対して特異的な機能化材料であって、次の特許文献に開示されている材料が含まれる(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許出願第10/940324号(出願日:2004年9月13日、発明の名称:二酸化炭素用ナノ電子センサー)。この点に関しては、前記の米国特許出願第10/656898号明細書も参照されたい。生体分子、有機体、細胞表面上の基及び生化学種等に対して特異的な機能化材料の例は次の特許文献に開示されている(これらの文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許出願第10/345783号(出願日:2003年1月16日、発明の名称:機能化ナノ構造体を用いる生物学的/化学的薬剤の電子的検出)(公開公報US 2003−0134433)及び前記の米国特許出願第10/704066号。
【0058】
機能化材料120は、ナノ構造体溝106に結合するか又は該溝に隣接して結合する少量の単一化合物、元素、又は分子を含有していてもよい。付加的に、又は代替的に、機能化材料は混合物若しくは多層アセンブリー又は複合体種(例えば、合成成分及び天然に存在する生体材料等)を含有していてもよい。
【0059】
機能化材料に関するその他の例及び該材料のより詳細な説明は次の特許文献に開示されている(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許出願第10/388701号(出願日:2003年3月14日、発明の名称:ナノ構造体装置アレイを検出するための感度の改良(公開公報US 2003−0175161);米国特許出願第60/604293号(出願日:2004年11月19日、発明の名称:DNA検出用ナノチューブセンサー装置)。機能化材料120及びその他のセンサー素子は、試料媒体の種々の物理的形態、例えば、ガス状又は液状の被検体媒体等に適合するように選択されてもよい。この点に関しては、次の特許文献を参照されたい(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許出願第10/773631号(出願日:2004年2月6日、発明の名称:カーボンナノチューブ電界効果伝達装置を用いる液体中での被検体の検出;米国特許出願第60/604293号(出願日:2004年11月13日、発明の名称:ナノチューブに基づくグルコース検出)。
【0060】
その他の基体の素子
所望により、基体は、組み込まれた温度制御素子、例えば、マイクロ型ヒーター構造体、ペルチエ型マイクロクーラー、熱的絶縁ブリッジ及びサーミスター/マイクロプロセッサーフィードバック制御器等を具備していてもよい。多種多様なセンサーの性能目標を達成するためには、温度制御を利用してもよいことに留意すべきである。例えば、温度制御を利用することにより、被検体の反応を促進させることによって応答速度を増大させることができ、また、先の被検体又は反応生成物の蒸発、反応(例えば、DNAのハイブリッド形成及び緊縮制御等)の最適化及び凝縮した媒体の蒸気の蒸発等によってセンサーの回復時間を改善することができる。同様に、その他の有利な処理装置、電源又は支持回路をセンサーのチップ上に組み入れてもよい。
【0061】
これらの点に関しては、次の特許文献を参照されたい(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許出願第10/655529号(出願日:2003年9月4日、発明の名称:加熱ナノチューブを具有する改良されたセンサー装置)。また、適当なマイクロ機械加工技術及び/又はエッチング技術が開示されている次の非特許文献も参照されたい(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):A.ツェレピら、「Si基板の前面のマイクロ機械加工法を用いる懸垂型熱的絶縁膜の作製;エッチングプロセスの特性決定」、J. of Micromech. and Microeng. 、第13巻、第323頁〜第329頁(2003年);C.ツァミスら、「熱的センサーへの応用のための懸垂型多孔性シリコン製マイクロホットプレートの作製」、Physica Status Solid (a) 、第197巻(2)、第539頁〜第543頁(2003年);A.ツェレピら、「高密度プラズマ中における多孔性シリコンの乾式えcチング」、Physica Status Solidi (a) 、第197巻(1)、第163頁〜第167頁(2003年)。
【0062】
所望により、基体は保護層及び表面状態調整層を具有していてもよい。例えば、拡散障壁を配設することによって、製造工程中に導入される金属触媒又はその他の物質によるドープ処理シリコンのような基体の汚染を防止することができる。この点に関しては、次の特許文献を参照されたい(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許出願第11/111121号(出願日:2005年4月20日、発明の名称:遠隔通信型の電池式ナノ構造センサー装置)。
【0063】
3.センサーアレイ
複数のセンサー装置102は、本願明細書の一部を成すものとして先に言及した特許文献に記載されているように、多数の有利な測定態様をもたらすように設計させたアレイとして配設する態様が簡便である。多数の異なる測定法と利点は、本発明によるセンサーアレイによって得られる。このような利点としては以下のものが例示される:
a)特異的に機能化された多数のセンサーによって多数の被検体が検出される。
b)各々のセンサーが異なる範囲に対して最適化された複数のセンサーによって精度とダイナミックレンジが増大する。
c)異なるように機能化された複数のセンサーに対する標的被検体の応答の特徴的な「分布」を検出することによって被検体の特異性と融通性(flexibility)が増大する。
d)自己校正系と分離された参照センサーが得られる。
e)多数の一回使用センサーのサブニットが配置される多数回使用アレイが得られる。
f)超低コストの直接的ディジタル式出力型センサーアレイであって、複数の該センサーの各々が2進信号を発生すると共に、被検体の選択された濃度範囲にわたる応答閾値を集約的に有する該センサーアレイが得られる。
【0064】
本発明の観点を有するナノ電子センサーは、アレイ状の配置態様に対して本来的に適しており、例えば、該センサーは、本願明細書に記載の多数の被検体が組み込まれた呼吸気分析系において使用してもよい。このようなセンサー及びセンサーアレイは既知の製造技術の範囲内において製造することができる。この点に関しては、次の特許文献を参照されたい(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許出願第10/846072号(発明の名称:軟質ナノチューブトランジスター)。
【0065】
1つの好ましい方法は、半導体エレクトロニクス工業において開発されたウェファー加工技術を利用する方法である。この方法によれば、多数のセンサーを単一チップ上で調製することができるだけでなく、適当な写真印刷法、マスキング法、制御エッチング法、マイクロ機械加工法、蒸着法、化学的なインクジェット型塗布法、及び回路印刷法等共通の基体上において異なる機能型センサーと異なる構造型センサーを同時に調製することにより、種々のセンサー装置の素子や関連する回路素子を製造することができる。
【0066】
4.測定系
この実施例において記載する電子回路は例示的なものであり、本発明に係る技術的思想を逸脱することなく、広範囲に及ぶ別の測定回路を使用してもよい。本発明の観点を有する電子センサー装置の実施態様においては、ナノセンサー120の1又は複数の特性を、例えば、導電性素子(110、112)を介して電気的特性を測定することによって、測定するように設計される電子回路が含まれていてもよい。例えば、トランジスターセンサーは、ゲート電圧の選択された範囲にわたって制御可能な条件下で走査してもよく、該ゲート電圧は対応するセンサーの測定電流と比較される(この比較は、一般的にはI−Vg曲線又は走査として示される)。このようなI−Vg走査は、1又は複数の選択されたソース/ドレイン電圧において、いずれかの選択されたゲート電圧の範囲にわたっておこなわれてもよい。Vgの範囲は、一般的には、少なくとも装置の「オン」電圧から少なくとも装置の「オフ」電圧にわたって選択される。この走査は、Vgの増大化、Vgの低減化又はこれらの併用によっておこなうことができ、また、いずれかの選択された周波数において正方向又は負方向へ反復させてもよい。
【0067】
図1に示す相互コンダクタンス/NTFETのほかに、本発明の観点を有する被検体検出用電子検出装置の別の実施態様においては、別の構造を有すると共に別の特性を測定するように設計されたセンサーが含まれていてもよい。いずれかの適当な電気的特性又は磁気的特性に基づいてセンサー感度がもたらされてもよく、このような特性としては、電気抵抗、電導度、電流、電圧、キャパシタンス、インピーダンス、インダクタンス、トランジスターのオン電流、トランジスターのオフ電流、及び/又はトランジスターの閾値電圧が例示される。代替的に、又は付加的に、感度は、特性の組合せの測定、異なる特性間の関係の測定又は1又は複数の特性の経時的変化の測定等に基づいてもよい。例えば、センサーの実施態様においては、ナノ構造化センサー素子に対するキャパシタンスの測定(例えば、問題となる被検体との相互作用に対する機能化ナノチューブネットワークのキャパシタンスの応答の測定)のために設計されて最適化された回路と素子が含まれていてもよく、
【0068】
センサー系は、単一の電子センサー装置の1よりも多くの特性の測定を実行する適当な回路を具備していてもよく、このことに留意すべきである。例えば、FETとして設計されたセンサー装置は、a)導電性溝を横断して測定される抵抗又は電導度、b)一定の又は可変性のゲート電圧の影響下で測定されてもよい溝の抵抗又は電導度、c)ゲート電極と導電性溝に対して測定される装置のキャパシタンス又はインピーダンス、及びd)時間積算特性(例えば、ヒステリシス、相シフト、回復挙動、これらと類似の特性又はこれらの組合せ)を有していてもよい。単一のセンサーを用いて複数の測定をリアルタイムに基づいて実行する方法によって、精度、感度及び選択度を増大させることができる。
【0069】
このような測定値及び誘導される特性(例えば、ヒステリシス、時常数、相シフト、走査速度/周波数依存性等)に基づいて、相関性は標的の検出又は濃度によって決定してもよい。電子センサー装置は、当該分野において知られているように、適当なマイクロプロセッサー又はその他のコンピューター装置(これらの装置は、上記の測定法を実行して得られる信号を分析するように適当にプログラム化されていてもよい)を具備していてもよく、あるいはこれらに接続されていてもよい。当業者であれば、感度の基準としてその他の電気的特性又は磁気的特性を測定してもよいことを認識できるであろう。従って、本願明細書に開示された実施態様は、測定できる装置の特性の種類を限定することを意味するものではない。
【0070】
所望により、測定用回路は、温度、圧力及び湿度のような要因を補償するように設計されていてもよい。この点に関しては、次の特許文献を参照されたい(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許出願第11/111121号(出願日:2005年4月20日、発明の名称:遠隔通信型の電池式ナノ構造センサー装置)。
【0071】
5.COセンサーの実施例
二酸化炭素(CO)センサーの1つの実施態様においては(模式的な図1参照)、COに対する感度は、連続的又は不連続的であってもよい適当な機能化材料又は機能化層120を用いることによって達成してもよい。機能化層は次の2つの主要な機能を発揮してもよい:1)二酸化炭素分子を選択的に認識する。2)COと結合したときに、カーボンナノチューブ変換器へ伝達される増幅化信号を発生する。水の存在下においては、二酸化炭素は炭酸を生成する。炭酸は解離し、機能化層のpHを変化させ、電子供与基へプロトンを付与し、NTFETの特性をよりp−型にする。CO検出用NTFETを機能化させるためには、塩基性無機化合物(例えば、炭酸ナトリウム等)、pH−感受性ポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(3−メチルチオフェン)及びポリピロール、並びに芳香族化合物(例えば、ベンジルアミン、ナフタレンメチルアミン、アントラセンアミン及びピレンアミン等)を使用してもよい。機能化層は、ポリマー材料、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(ビニルアルコール)及び多糖(種々の澱粉及びこれらの成分であるアミロース及びアミロペクチンを含む)等を用いて調製してもよい。
【0072】
機能化材料120は、「機能化材料」、「機能化層」又は「機能化」と呼ばれる1種よりも多くの材料及び/又は1層よりも多くの材料層を含んでいてもよい。機能化層は次の2つの主要な機能を有する:1)二酸化炭素分子を選択的に認識する。2)COと結合したときに、ナノ構造体(例えば、カーボンナノチューブ等)変換器へ伝達される増幅化信号を発生する。CO検出用NTFETを機能化させるためには、塩基性無機化合物(例えば、炭酸ナトリウム等)、pH−感受性ポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(3−メチルチオフェン)及びポリピロール、並びに芳香族化合物(例えば、ベンジルアミン、ナフタレンメチルアミン、アントラセンアミン及びピレンアミン等)を使用することができる。機能化層は、ポリマー材料、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(ビニルアルコール)及び多糖(種々の澱粉及びこれらの成分であるアミロース及びアミロペクチンを含む)等を用いて調製することができる。例えば、適当な反応層は、PEI又はこれと類似のポリマーと澱粉ポリマーを組み合わせて形成させてもよい。機能化層用の他の適当な材料には、例えば、金属、金属酸化物及び金属水酸化物等を含めてもよい。さらに、金属製機能化層はポリマー製機能化層と組み合わせてもよい。
【0073】
機能化層の材料は、被沈着材料に応じて、種々の異なる方法によってNTFET上に沈着させてもよい。例えば、炭酸ナトリウムのような無機材料は、1mMの低級アルコール溶液を用いる落下注型法によって沈着させてもよい。次いで、機能化センサーは、窒素ガス又はその他の適当な乾燥剤を用いる吹込によって乾燥させてもよい。ポリマー材料は、浸漬被覆法によって沈着させてもよい。この方法の一般的な手順には、カーボンナノチューブ装置を具有するチップを10%のポリマー水溶液中に24時間浸漬させた後、水を用いるすすぎ処理に該チップを数回付し、次いで窒素ガスの吹込によってチップを乾燥させる過程が含まれる。水性溶液に不溶性のポリマーは、有機溶剤を溶媒とするポリマー溶液を用いる回転被覆法によって沈着させてもよい。ポリマーの濃度と回転コーターの回転速度は、使用するポリマーに応じて最適化させてもよい。
【0074】
本発明の観点を有する1つの実施態様においては、機能化層815はPAMAM又はポリ(アミドアミン)デンドリマー(この化合物は、ヒドロゲルの形成に対して適した分枝状構造を有する)を含有する。多数の種類と形態のPAMAMが、例えば、デンドリチック・ナノテクノロジーズ社、デンドリテク社及びシグマ−アルドリッチ社等から市販されている。例えば、エチレンジアミンのコアー(core)は末端アミン基を有するポリ(アミドアミン)の分枝(branch)を有していてもよい。この点に関しては、次の非特許文献を参照されたい(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):フ−イェ・ウ−、シ−ウェン・フアン、ジアン−タオ・ツァン、及びレン−ヒ・ツオ、「ポリ(ビニルアルコール)とアミン−末端化ポリアミドアミンデンドリマーから成る新規な物理的架橋ヒドロゲルの調製と特性決定」、Macromol. Biosci. 、2004年、第4巻、第71頁〜第75頁。
【0075】
機能化材料120は、疎水性、親水性及び塩基性(例えば、アミノポリマー等)のバランスが維持されると共に、相対湿度のような試料環境下における別の種に対する交差感度と応答時間が最適化されるような組成を有する。応答時間を改良するためには、薄膜コーティング又は集成単層(SAM)を採用することができる。
【0076】
機能化層120のための別の材料には、例えば、以下の表1に示すものが含まれる。この種の材料は、本発明に係る技術的思想を逸脱することなく、本願明細書に記載のようにして、センサー中へ含めてもよい。
【0077】
表1
その他の認識材料の例
ポリアクリル酸、ポリウレタン樹脂、ポリ(アクリル酸−コ−イソオクチルアクリレート)、ポリカルバゾール、ポリ(エチレンイミン)(「PEI」)、ポリ(スルホン)、ポリ(4−ビニルフェノール)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリルアミド、ポリ(カーボネートビスフェノールA)、ポリアクリロニトリル、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリアニリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリブタジエン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリカーボネート、ポリ(エチレンイミン)、ポリエチレン、ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)、ポリオキシエチレン、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリピロール、ポリ(プロピレン)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(スチレン)、ポリチオフェン、ポリビニル−メチル−アミン、ポリビニルピリジン、ポリアミノスチレン、キトサン、キトサンHCl、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンHCl、ポリ(ジアリルアミン)、ポリ(ジアリルアミン)HCl、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)(エチレン:約82%)、ポリ−(m−アミノベンゼンスルホン酸)(「PABS」)、ポリ(スチレン−コ−アリルアルコール)(ヒドロキシル:約5.7%)、ポリ(ビニルクロリド−コ−ビニルアセテート)(ビニルアセテート:約10%)、ポリ(スチレン−コ−無水マレイン酸)(スチレン:約50%)、ポリ(ビニリデンクロリド−コ−アクリロニトリル)(ビニリデンクロリド:約80%)、金属ポルフィリン(「M−porph」)、ポリ−L−リシン、α−フェトプロテイン プロフィル フォー(「AFP4」)、グリセロール、ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)、ポリグリセロール、「ナフィオンNR50」、金属コーティング及びナノ粒子(Fe、V、Au、Pt、Pd、Ag、Ni、Ti、Cr、Cu、Mg、Al、Co、Zn、Mo、Rh、Sn、W、Pb、Ir、Ru、Os、及び合金又は混合物)、無機コーティング及びナノ粒子(V、WO、Cu(SO)、ホウ酸、ZnO、三塩化ホウ素、Fe、CaCl)。
【0078】
機能化層の材料は、被沈着材料に応じて、種々の異なる方法によってNTFET上に沈着させてもよい。例えば、炭酸ナトリウムのような無機材料は、1mMの低級アルコール溶液を用いる落下注型法によって沈着させてもよい。次いで、機能化センサーは、窒素ガス又はその他の適当な乾燥剤を用いる吹込によって乾燥させてもよい。ポリマー材料は、浸漬被覆法によって沈着させてもよい。この方法の一般的な手順には、カーボンナノチューブ装置を具有するチップを10%のポリマー水溶液中に24時間浸漬させた後、水を用いるすすぎ処理に該チップを数回付し、次いで窒素ガスの吹込によってチップを乾燥させる過程が含まれる。水性溶液に不溶性のポリマーは、有機溶剤を溶媒とするポリマー溶液を用いる回転被覆法によって沈着させてもよい。ポリマーの濃度と回転コーターの回転速度は、使用するポリマーに応じて最適化させてもよい。
【0079】
図2は、本発明の観点を有する例示的なナノ電子的二酸化炭素センサーの応答信号を、空気中に含有させた低濃度から高濃度にわたる広範囲の二酸化炭素の濃度、即ち、500ppm〜100000ppm(0.5%〜10%)に対してプロットしたグラフである。センサーは広範囲のダイナミックレンジを示し、また、COガスに対する応答は、種々の濃度において迅速であって、再現性がある。
【0080】
図3は、本発明の観点を有する例示的なナノ電子的二酸化炭素センサーの応答信号を、空気中に含有させた低濃度の二酸化炭素に対してプロットしたグラフである。センサーは、500ppm〜10000ppmの濃度範囲において広いダイナミックレンジを示す。適当な化学的認識と特異性によって、異なる相対湿度におけるセンサーの操作が可能となり、また、麻酔性ガス(酸素と亜酸化窒素)に対しては低い交差感度がもたらされた。
【0081】
図4は、シミュレートしたヒトの呼吸に対する本発明の観点を有する例示的なカプノメーターの応答を示すカプノグラムプロットを示す。この臨床的に関連する条件下でのセンサーの性能は、この種のセンサーがカプノグラフィーと麻酔の関連する医療的用途において非常に有用となる可能性を示す。
【0082】
二酸化炭素検出用ナノセンサーのその他の観点に関しては、次の特許文献に開示されている(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許出願第10/940324号(出願日:2004年9月13日、発明の名称:二酸化炭素用ナノ電子センサー)。
【0083】
6.NO用センサーの実施例
図5は、NOを50ppmの濃度で含有する空気(温度:室温、相対湿度:8%)に短時間曝すことに対する、本発明の観点を有する例示的なナノ構造センサーの応答のプロットを示す。図示する結果は、パッケージ型装置としての機能化NTFETの酸化窒素に対する応答に関するデータを示す(図1Bに示すパッケージ型装置100’参照)。これらの測定においては、パッケージ型装置の試験は、調整された湿度及び空気で調整されたNOガスの選択された濃度の条件下において、フローセル(flow cell)内でおこなった。機能化NTFET装置は、周囲条件下での空気中に含まれる50ppmのような低い濃度のNOガスに対して信頼性のある応答を示した。応答の度合いは、非常に低い閾値(例えば、ppb領域の低い値)が可能であることを示した。
【0084】
図6に示すように、NO用センサー装置は、呼吸気中の干渉物であるCOに対して、ほとんど又は全く交差感度を示さない。この場合、該センサー装置は、吐き出されるヒトの呼吸気中に含まれる典型的な濃度である5%のCOに曝した(温度:室温、相対湿度:8%)。
【0085】
この実施例において使用したセンサーのプラットホームは、半導体特性を示す単壁カーボンナノチューブ(NTFET)から製造された電界効果トランジスター(FET)を具備する(模式的な図1A参照)。非機能化NTFET装置は、電子供与性及び電子受容性の強いガス(NO、NO、NH)に対して感度を示すが、特異的ではない。これに対して、機能化NTFET装置は、酸化窒素に対して特異的であることが判明した。機能化層は次の2つの主要な機能を有する:1)酸化窒素分子を選択的に認識する;2)NOとの結合に際して、カーボンナノチューブ変換器へ伝達される増幅化信号を発生する。従って、この表面改質によって、低濃度範囲におけるNOの定量に関する感度と選択度がNTFETへ付与される。
【0086】
上記の機能化法は、塩基性無機化合物、有機ポリマー、芳香族化合物及び生物関連分子受容体の機能、即ち、電子をナノチューブへ供給することによってNTFETの好ましいドープ化をもたらす可能性のある電子供与性機能に基づくものである。この目的のためには、適当な電気的活性種の電気的重合法及び/又は沈着法を使用することによって、薄くて安定で再現性のあるフィルムをカーボンナノチューブのネットワーク上に形成させる。さらに、重合速度と重合度、即ち、得られる電着フィルムの厚さと物理化学的特性は、電気化学的パラメーターを慎重に監視することによって、正確に調整することができる。
【0087】
NOを検出する場合、カーボンナノチューブの表面改質に使用してもよい材料には、ポルフィリンやフタロシアニンの多数の金属錯体、及びポリアニリンやポリピロール等の導電性ポリマーが含まれる。NOxの認識は、アミノ含有ポリマー、即ち、ポリ(エチレンイミン)、ビス−アミノ末端化ポリ(エチレングリコール)、並びに芳香族化合物(例えば、ベンジルアミン、ナフタレンメチルアミン及びカリックス [4] アレン等)を用いることによって達成することができる。また、次の点にも留意すべきである。即ち、NOを検出するための別のセンサーの実施態様においては、本発明に係る技術的思想を逸脱することなく、試料中のNOを酸化する方法を採用してもよい。例えば、NOを、例えば触媒を用いて酸化することによってNOを形成させた後、NOに対して感度を示すように設計されたセンサーを使用することによって、得られたNOを検出してもよい。
【0088】
7.容量性センサーの実施例
図7は、本発明の観点を有する例示的なセンサー装置70の模式図であり、該センサー装置は、図1に示すセンサーに関連して一般的に記載した方法によって製造されるナノ構造体センサー71を具備する。センサー71はナノ構造体の導電性素子(この実施例の場合はカーボンナノチューブネットワークである)72を具備する。該導電性素子は、基板(この実施例の場合はドープ化シリコンウェファーのバックゲートである)73上に配設された誘電性単離層74を含む基体上に配設される。カーボンナノチューブネットワーク72は少なくとも1つの導電性電極75と接触する(この実施例の場合には、一対の電極が図示されており、また、これらの電極は、電極とナノチューブの接触領域上に所望によるパシベーションを具有する)。センサー装置70は、接点75とバックゲート73と電気的に連絡するキャパシタンス測定回路36を少なくとも1つさらに具有する。これによって、間隔を置いて配設されたナノチューブネットワーク/バックゲートアセンブリーのキャパシタンス及び/又はインピーダンス(即ち、いずれかの導体上に存在させることによって、導体間に所定の電圧ポテンシャルを発生させるために必要な総電荷;C=Q/V)を容易に測定することができる。
【0089】
本発明に係る技術的思想を逸脱することなく、別のキャパシター導体をバックゲート対電極73のかわりに使用してもよいことを理解すべきである。このような導体としては、上部対電極、液体対電極、及び間隔を置いて配置される第2のナノチューブネットワーク導体等が例示される。対電極の効果には、対電極とナノ構造体電極(例えば、ナノチューブネットワーク等)との間に電界ポテンシャルが発生することが含まれるので、キャパシタンスを測定することができ、この結果、問題となる1種又は複数種の被検体の相互作用に応答するキャパシタンスの変化を測定することができる。一般的には、被検体は、電極間の分離間隔内の有効誘電率の変化を誘発する。さらに、各々の導体に関しては、多くの別の機能的構造形態が可能である。このような構造形態には、電極に関連して問題となる被検体を結合させる又は不動化させる認識材料が含まれる。
【0090】
センサー71のキャパシタンスCは検量した後、問題となる被検体(例えば、イソフルラン及びハロタン等)に曝されている間のキャパシタンスと分析的に比較してもよい。特に、大きな双極子モーメントを有する種は、ナノチューブネットワーク72と相互作用する際に、キャパシタンスを変化させる作用をする可能性がある。
【0091】
図8は、図7に示すような例示的なナノ構造体センサーのキャパシタンスの応答であって、気道内の被検体(この実施例の場合は麻酔剤である)に対する該応答のプロットを示す。図8は、センサーを周囲空気の存在下でイソフルランに短時間曝し、回復期間経過後、さらにハロタンに曝している間の該センサーの応答を示す。この実施例においては、センサー71のナノチューブネットワーク72は、被検体の媒体に対して直接的に曝される。この場合、次の点に注意すべきである。即ち、図8に示すキャパシタンスの振幅の急激な変化は、ノイズに起因するものではなく、センサーに隣接する試料媒体と被検体との乱流的な混合に起因する。一定の被検体濃度に対する応答は。このような効果はもたらさない。実際は、図8に示されるように、センサーの応答は、被検体に対して非常に急激に変化する。
【0092】
好ましくは、センサー71は付加的な機能化層78を具備する。このような機能化層としては、選択度、感度及び/又は信号強度を高めるための選択的な反応性種若しくは結合性種、選択的に透過性のあるポリマー層及び吸収性フィルター等が例示される。この点に関しては、次の特許文献を参照されたい(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国仮出願第60/669126号(出願日:2005年4月6日、発明の名称:一体化セル膜とナノ電子装置を具備するシステム及びナノ容量性生体分子センサー)。
【0093】
8.一体化された多種被検体含有呼吸気用分析システム
図9は、本発明の観点を有する一体化された多種被検体含有呼吸気分析システム90の一例を示す模式的斜視図である。この実施態様の一般的な設計として、該システム90は、呼吸気の採取器91及び信号ケーブル103を介して該採取器91と連絡する分析器−プロセッサー−I/Oユニット100を具備する。採取器91は、マウスピース93と連絡する中央腔98を有する採取器本体92を具有する。操作に際しては、吸い込まれた空気は、装着された流入弁/フィルター94を経由して中央腔98の内部へ供給され、次いで患者の吸気時にマウスピース93を経由して患者の口腔内へ導入される。息の吐き出し時においては、患者の息は、マウスピース93と中央腔98を経由し、流出調節器95を介して放出される。この息の吐き出しの間及び所望による吸気の間において、少なくとも1種(好ましくは多種)の呼吸気成分がセンサーによって測定される(この点に関してはさらに後述する)。この実施態様においては、該センサーは取り外し式マルチセンサーユニット96に装着されており、該ユニットは、捕集管97を介して中央腔98と連絡する。1又は複数の測定信号は、信号ケーブル103を介するマルチセンサーユニット96によって分析器−プロセッサー−I/Oユニット100へ伝達される。
【0094】
図9に示す呼吸気の流動態様は、本発明の観点を有する1つの例示的なものであって、本発明の技術的思想を逸脱することなく、別の流動態様を採用することも可能である。例えば、吸入は、別の装置、経路指定弁と経路指定管(図示せず)又は鼻腔吸入を介しておこなってもよく、或いは又は患者の口からマウスピースを取り外しておこなってもよい。しかしながら、吸入と吐出が採取器91によって系統的に調節されるようにすることによって、鼻腔を経由する流入と流出を回避する態様が好ましい。流入弁/フィルター94に所望によるフィルター又は吸収性物質を含めることによって、測定に悪影響を及ぼす潜在的な汚染物(例えば、空気中のNO等)を吸入気から除去してもよいことに留意すべきである。マウスピース93の代わりに、当該分野において知られている種々の形態のマスクや気管チューブ等を、吐出呼気用の捕集部材として使用してもよい。
【0095】
中央腔98の体積は、装置のデッドスペースを低減させるように最小にすることが好ましく、また、流入弁/フィルター94と流出調節器95は、逆流を防止する逆止め弁又はこれと同等の機能を果たす部材を具備していることが好ましい。即ち、これによって、吸入は実質的に流入弁/フィルター94のみを介しておこなわれ、一方、吐出は実質的に流出調節器95のみによっておこなわれ、再呼吸量は最小限となる。
【0096】
同様に、本発明の技術的思想を逸脱することなく、さらに別のセンサーの配置態様が可能である。例えば、センサーは採取器91から離れた位置、例えば、延長された空気試料管(図示せず)を介して採取器91と連絡する分析器を含むユニット100に装着してもよい。さらにまた、別の態様においては、センサーはマウスピース93の内部又は患者の口腔内若しくは咽喉内への延長管の内部に配設してもよい。
【0097】
例示する採取器91は次の利点を有する。即ち、取り外し式マルチセンサーユニット96が患者の口部へ非常に近接して配置させるので、測定時間の遅れとデッドスペースが最小となると共に、センサー又はセンサーユニット全体を、必要に応じて簡便に取り換えることができる。このような配置態様により、しばしば競合的となる低コスト、装置の簡素化、汚染の回避及びセンサー精度の維持等に関する要求に応えるための操作上の高度の融通性がもたらされる。例えば、採取器本体92及び/又は取込弁94は患者が使い捨てできるようにすると共に、マルチセンサーユニット96及び/又は流出調節器95を洗浄溶液から保護するために取り外せるようにしてもよい。
【0098】
好ましくは、流量調節器95は、測定中において一般に一定の吐出速度が維持されることによって被検種の測定の精度と再現性が最大になるように設計される。また、好ましくは、流量調節器95を、選定される吐出速度及び/又は選定される流動抵抗若しくはその他の流動パラメーターが維持されるように調整するか又は予め設定することによって、痕跡量の被検種の採取における感度と選択度を最大にする(この点に関してはさらに後述する)。好ましくは、吐出速度は、患者の身体の大きさや年齢等に適合するように調整してもよい。
【0099】
特定の別の実施態様においては、流出調節器の操作は自動的制御又は遠隔的制御によっておこなってもよい。例えば、流量調節器95は可変性の吐出速度をもたらしてもよい。即ち、吐出の開始時に第1流速がもたらされ、また、吐出段階の進行に伴って異なる吐出流速又は分布する可変性吐出流速がもたらされる。さらに、別の特定の実施態様においては、1又は複数の遠隔操作可能な駆動器を、例えは、流量調節器95の内部に配設させることによって、吐出速度は、分析器−プロセッサー−I/Oユニット100のプロセッサーからの信号により有利に調整される。従って、例えば、測定の通常の操作手順は、プロセッサーによって調整してもよく、これによって、特定の吐出速度又は吐出速度分布は、1)特定の被検体に対する感度が最大になるように選択され、また、2)被検体源の間の感度限界(例えば、吐き出されるNOに対する気管支の寄与と肺胞の寄与との間の識別)が最大になるように選択され、さらに3)連続的な吐き出し段階において異なる吐き出し速度が選択されるように選択される。
【0100】
好ましくは、分析器−プロセッサー−I/Oユニット100は、患者又はオペレーターと連絡するための少なくとも1つのディスプレイ101又はその他の出力機構を具備する(図示する態様においては、LCDディスプレイが図示される)。また、好ましくは、該ユニットは少なくとも1つのユーザー用入力機構102を具備し(図示する態様においては、いくつかのボタンが図示される)、これによって、患者による簡便な入力が可能となる。さらに、分析器−プロセッサー−I/Oユニット100は常套の部品、例えば、電源、電池、ケーブルコネクター、及び消費者によって一般的に操作される電子装置を具備していてもよい。好ましくは、分析器−プロセッサー−I/Oユニット100は、マルチセンサーユニット96の測定値の医療上の有用性と適合性並びに測定履歴(該履歴は複数の患者に対して特異的であってもよい)を保持するためのメモリーを最大限に活用するための信号分析器を具備する。
【0101】
特定の実施態様においては、分析器−プロセッサー−I/Oユニット100は、例えば、無線接続及び/又はインターネット接続を可能にする回路を具備していてもよく、これによって、1)患者に特異的な測定値の開業医による遠隔的な監視、2)患者の測定を考慮した測定に関する通常の操作法とパラメーターを改変するためのプロセッサー/メモリーの遠隔的なプログラム化、及び3)応答する薬剤投与に関するアドバイスの伝達等が可能となる。
【0102】
9.呼吸気中のCOの分析
前述のように、COの測定値は肺/循環機能の重要な指標である。特に、呼吸気に含まれる成分種の経時的な測定値と濃度分布は、特定の医学的症状と関連づけられている医療上有用な指標となる。例えば、測定される患者のカプノグラムの特徴(吐出時間に対する呼気中のCOの濃度)は、気管支痙攣、喘息、閉塞性肺疾患及び限定的肺疾患等のような症状と関連づけられている。また、カプノグラムの特徴をリアルタイムの呼気流速とその他の肺活量測定パラメーターと関連づけることができるということが例証されている。
【0103】
この点に関しては次の文献を参照されたい(これらの文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許第6648833号(発明の名称:カプノグラフィーを用いる呼吸気分析);B.ユーら、「喘息における呼吸カプノグラフィー:種々の形状指標の評価」、Eur. Respir. J. 、1994年、第7巻(2)、第318頁〜第323頁;M.ヤロンら、「気管支痙攣の評価における呼吸カプノグラムの有用性」、Ann. Emerg. Med. 、1996年、第28巻(4)、第403頁〜第407頁;B.ユーら、「喘息における呼吸カプノグラフィー;子供における使用と監視に関する見通し」、Rev. Mal. Respir. 、1992年、第9巻(5)、第547頁〜第552頁。
【0104】
図10A〜図10C(これらの図は、先に言及した米国特許第6648833号に係る図1A〜1Cに相当するもので、元の参照番号を併記する。)は一連の3つのカプノグラムのプロットを示すもので、各々の図は、健康人と病人の肺胞の状態の示す代表的なグラフと模式図である。
【0105】
図10Aは、健康人、即ち、実質的な肺疾患を患っていない人のカプノグラムを示す。肺胞の末梢に位置する気管と気管支の通路から吐き出される空気量(一般的には、約150ml)を示す「デッドスペース」と呼ばれる量の吐き出しを最初に開始するときに初期の遅れ時間が存在することに留意すべきである。この場合、代謝による無視しうる量のCOは交換させる。肺胞からの息が吐き出されてデッドスペースからの空気と混合すると、二酸化炭素の濃度は、一般的には特有の直線的勾配で増大する。デッドスペースの息の大部分が吐き出されると、二酸化炭素の濃度の分布は平らになって平坦域を示し(該平坦域は一般的には平らでなく、特有の小さな勾配を示す)、該平坦域は吐き出し過程が完結するまで維持される。
【0106】
図10Bは、気道内に閉塞部24が存在する閉塞性肺疾患で患う患者のカプノグラムを示す。肺胞嚢18は膨張してガス交換機能を発揮するかもしれないが、息の吐き出しは閉塞部24によって阻害される。プロット20は、健康人の場合のプロット12に比べて、徐々に上昇する傾斜を示すが、これは、急激な吐き出しができないことによってもたらされるものである。患者の通気は、量的には十分であるが、困難をともなう。
【0107】
図10Cは、図示する線維組織等の閉塞部34を有する閉塞性肺疾患で患う患者のカプノグラフ30を示す。該閉塞部は肺胞嚢18の膨張を阻害し、及び/又はガス交換を制限するかもしれない。気道16は、障害のない息の吐き出しを可能にするほど開放されているが、閉塞部34は息に含まれるガス量を制限する。プロット30は、プロット12に比べた場合、一般的に同等の上昇勾配を示すが、プロット12に比べてより低い濃度において平坦部を示すが、このことは、健康人に比べて該患者は十分な通気ができないことを示す。
【0108】
10.呼吸気中のNOの分析
前述のように、呼吸気中のNOの測定は、炎症性疾患、免疫応答及びその他の多数の症状の重要な指標である。特に、吐き出される酸化窒素(NO)は、気道疾患及び特に気管支喘息に対する重要な診断/処置の指標となる可能性を有する。一般的には、喘息患者は、喘息を患っていない人に比べて、NO濃度の高い息を吐き出すので、有効な抗炎症治療における投薬は、該NO濃度の著しい低減化と関連付けられている。
【0109】
吐き出されるNOの存在を、高価な大型で複雑な装置を用いて試験することによって、臨床的な外来患者の環境下でのその時々の喘息の症状の診断と処置を促進するかもしれない。しかしながら、一般的な喘息患者又は該患者の両親若しくは看護人に対して、自己投薬の必要性又はこのような治療に対する応答に関するリアルタイムの指標を提供するNO測定ユニットであって、低コストで実際上携帯可能であり、しかも患者によって操作可能な該ユニットが要請されている。患者の気管支炎症の日毎の(又はより短い時間間隔における)症状に適合させた処置プログラムによる迅速な対応によって、緊急治療を要するような症状の出現を防止することができる。さらに、薬剤の過剰投与を伴わない慢性の炎症性気道疾患の正確な予防的措置によって、累積的な組織損傷を低減させると共に、長期間の患者の成り行きを改善することができる。
【0110】
これらの点に関しては、下記の文献を参照されたい(これらの文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):S.A.カリトノフら、「喘息患者の呼気中において増加した酸化窒素」、The Lancet、1994年、第343巻、第133頁〜第135頁;B.キンバリーら、「ヒトの安静時と呼吸停止時において吐き出される酸化窒素に対する鼻の関与」、Am. J. Resp. Critical Care Med. 、1996年、第153巻、第829頁〜第836頁;A.F.マッサロら、「急性喘息の処置中において吐き出される酸化窒素濃度」、Am. J. Resp. Critical Care Med. 、1995年、第152巻(2)、第800頁〜第803頁;P.E.シルコフら、「喘息における酸化窒素の気道拡散;肺機能と気管支応答における役割」、Am. J. Resp. Critical Care Med. 、2000年、第161巻、第1218頁〜第1228頁。
【0111】
吐き出される息に含まれる主要な成分であるCO(一般的には1〜5%)とは異なり、NOは一般的には僅かに痕跡量で存在する(一般的には数ppbのオーダーである)。例えば、非喘息患者の呼気中に含まれるNOの濃度の測定値は5〜25ppbの範囲であり、一方、喘息患者の場合は30〜100ppbの範囲である。もちろん、これらの濃度の測定には、COの場合よりも、より高い検出感度が必要である。しかしながら、重要なことには、NOは多くの異なる組織と細胞での反応における代謝過程によって生成され、この生成量は、痕跡量が医療上問題となる場合には無視できない量である。呼吸過程においては、NOは、気管支気道内において生成されると共に、肺胞の血液からのガス交換によって生成されるだけでなく、鼻腔、口腔、気管及び咽喉の組織内においても生成される。さらに、大気中のNO及び局部的な空気汚染もNOの測定に影響を及ぼす。このため、実質的な研究は、採取された息の中に含まれるNOが気管気道を生成源とするものであることが保証されると共に、その他の生成源の寄与が最小になるようにするためにおこなわれてきている。
【0112】
例えば、吸い込まれる周囲空気からNOを除去するためには、吸気フィルターを使用してもよい。試料から鼻咽腔を経由した後、鼻腔から放出される空気を排除するための技術を採用してもよい。さらに、吐き出されるNOの濃度は、実質的に呼気速度によって左右される。これらの点に関しては、以下の文献を参照されたい(これらの文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):P.シルコッフら、「鼻腔からの酸化窒素を排除するための新規な技術を用いることによって増大される吐出酸化窒素の流量依存性」、Am. J. Respir. Crit. Care Med. 、1997年、第155巻、第260頁〜第267頁;米国特許第5795787号(発明の名称:ヒトにおける吐出酸化窒素を測定するための方法と装置);米国特許第6010459号(発明の名称:ヒトにおける吐出酸化窒素を測定するための方法と装置);米国特許第6067983号(発明の名称:気道からの試料を制流下で採取するための方法と装置);米国特許第6733463号(発明の名称:呼気中の酸化窒素濃度を測定するための方法と装置);米国特許出願第2004−0017570号(発明の名称:呼吸気を定量するための装置とシステム)。
【0113】
図11は、呼気中のNO濃度の呼気速度に対する依存性を示すグラフであって、健康人のデータと気道疾患で患う患者のデータとを比較して示す(このグラフは、先に言及した米国特許第6733463号明細書から引用したものである)。いずれの被検者の場合も、呼気速度の増大に伴って、NO濃度の著しい非直線的な低減化がもたらされる。この強い依存性を考慮するならば、測定過程中において呼気速度を系統的に制御することによって、指示に対する被検者の努力又は対応の程度を反映するよりも、気道の症状を反映する再現性のある結果が得られるようにすることが望ましい。また、図11は次のことを示す。即ち、NOの濃度に対する呼気速度の比例的効果は、各々の被検者群に対して一般的には同等であるが、被検者群における絶対的なNO濃度(ppb)の相違は、最も低い呼気速度において現れる。
【0114】
図12は、吐き出される呼気中のNO濃度を呼気時間又は呼気の持続時間の関数としてプロットしたグラフを示す。この場合、次の点に留意すべきである。即ち、NOの分数濃度は、図10Aに示すCOカプノグタムの場合と形状の点で一般的に類似する平坦域に達する(但し、濃度の値はCOの場合に比べて非常に低い値である)。また、次の点を想起すべきである。即ち、COの場合と異なり(吐出息中に含まれるCOのほとんどは肺胞から放出される)、吐出息中に含まれるNOは、多数の組織から重要な成分として供給されるので、図12に示すような濃度分布は試料採取因子と呼気速度によって変化する。
【0115】
11.呼吸気中に含まれるガスの多重分析
吐出息中に含まれる種々の成分の測定値は種々の方法において関連付けてもよい。例えば、COの測定値は、NOのような別のガス又は被検種を分析する前に、吐出息の採取状態を確認するために利用してもよい(例えば、試料が気管支に由来するかどうかを確認するため、吸気装置の配置を確認するため、及び鼻腔を由来源から削除できるかどうかを確認するため等に利用する)。この点に関しては、先に言及した米国特許第6010459号明細書を参照されたい。
【0116】
さらに、呼吸気中のCOの濃度分布は吐出流速と関連付けることができるので、吐出速度に対して著しい依存性を示すNOのような痕跡量の被検種を採取するための試料採取手順の管理において利用してもよい。この点に関しては、先に言及した米国特許第6648833号明細書を参照されたい。同時にCOを測定することによって、多数の関連する肺活量測定パラメーターの有用な推定値を得ることができる。
【0117】
代謝的には、呼吸気中の1つの成分は、別の成分に対して調節的効果を及ぼすかもしれない。例えば、哺乳動物においては、COは、吐き出されるNOに対して調節的効果又はフィードバック効果をもたらすかもしれない(例えば、吐き出されるNOは、吐出COによって低減させることができる)。このような効果は中枢神経系や細胞外pHの変化には無関係である。この点に関しては、次の文献を参照されたい(該文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):L.C.アッジングら、「肺からの酸化窒素の二酸化炭素による調節は肺に固有のものである」、Acta Physiol. Scand. 、1999年、第167巻(2)、第167頁〜第174頁。また、次のことが知られている。即ち、肺胞中の高濃度のCOは吐出NOを抑制するが、COの血液中での濃度増加はこのような効果をもたらさない。次のことが提案されている。即ち、肺胞のCOは上皮組織のNO合成活性を非競合的に抑制し、また、炭酸過剰症により抑制されるNO生産は、肺の低酸素性血管収縮を促進する。この点に関しては、次の文献を参照されたい:Y.ヤマモトら、「二酸化炭素による肺循環の調節に対する気道の酸化窒素の役割」、J. Appl. Physiol. 、2001年、第91巻(3)、第1121頁〜第1130頁。
【0118】
呼気中に含まれる付加的な被検種を測定することによって、患者の症状の監視を改善してもよい。例えば、次のことが知られている。即ち、吐き出される過酸化水素(H)と酸化窒素(NO)の濃度は、喘息患者の場合は増大する。喘息によって誘発される痰に含まれるH、NO及び好酸球を測定することによって次のことが判明している:
a)正常の被検者に比べて、ステロイド欠乏性の喘息患者においては、吐き出されるHとNOの濃度は増大する。
b)ステロイドで処置されて病態が安定した患者においては、吐き出されるHとNOの濃度は低減する。
c)ステロイドで処置されて病態が不安定な喘息患者においては、吐き出されるHの濃度は増大するが、NOの濃度は低くなる。
d)吐き出されるHは痰中の好酸球と気道の過敏応答性と関連づけられる。
e)これに対して、吐き出されるNOは痰中の好酸球と関連付けられるが、気道の過敏応答性とは関連づけられない。
従って、吐き出されるHとNOを測定することによって、疾患活性を監視するための補足的データが得られる。この点に関しては、次の文献を参照されたい:I.ホルバスら、「喘息の監視における吐出過酸化水素と酸化窒素の併用」、Am. J. Respir. Crit. Care Med. 、1998年、第158巻(4)、第1042頁〜第1046頁。
【0119】
NO又はその他の痕跡量の被検種とCOを同時に測定することが提案されている。この場合、吐き出される息に含まれるCOの濃度(既知濃度又は適当な精度で測定可能な濃度)は、NO又はその他の痕跡量のガスの測定誤差を低減させるための内部基準として使用される。このような技術には、多くの常套の測定システム(例えば、感温性、レーザー出力変動、高価な消耗校正ガス等)の固有の改変が一般的に必要とされる。この点に関しては、例えば、次の文献を参照されたい(これらの文献の開示内容も本願明細書の一部を成すものである):米国特許出願公開第2003−0134427号(発明の名称:ガス濃度を測定するための方法と装置);C.ローラーら、「単一の IV - VI 中間赤外レーザーを用いるヒトの呼吸気中のNOとCOの同時測定」、OPTICS LETTERS 、2002年、第27巻(2)、第107頁〜第109頁。本発明の観点を有する安定なナノ電子センサーによれば、このような補償的技術への依存性は低減させることができる。
【0120】
上述の議論から明らかなように、図9に示す多面的な価値を有する呼吸気分析器の特定の特徴に起因して、該分析器は、実質的に異なる生理学的/化学的特徴を有する呼気中に含まれるガス(例えば、CO及びNO等)の採取、測定及び分析に適合する。
【0121】
12.センサー/試料採取器の別の構成態様
試料採取器本体92の中央腔98の内部方向へ向けて下方に延びる捕集器管97を具有するマルチセンサーユニット96を図9に示す。この場合、呼吸気は上方へ移送されてセンサーユニット86のセンサーと相互作用する。中央腔に対するセンサーの配置に関しては多数の実用的な別の態様があり、特定のセンサーの装着態様の選択は、センサーの性能及び有用寿命等を最適化するように決定してもよい。
【0122】
図13A〜図13Gは、呼吸気の採取器91において使用してもよいいくつかの別のセンサーの装着態様を示す。図13A〜図13Gは、前述の共同出願として譲渡された米国特許出願第11/019792号(出願日:2004年12月18日、発明の名称:ナノ電子カプノメーターアダプター)から転載したものである(該特許出願の開示内容も本願明細書の一部を成すものである)。これらの図面は、一般的には試料採取器91に類似する特定の特徴と操作原理を有する気道カプノメーターアダプターを例示する。これらのアダプターは、本発明の技術的思想を逸脱することなく、過度の実験を伴わないで、上記のセンサーユニットにおいて別の態様として使用してもよい。
【0123】
図13A〜図13Gの参照番号は、一般的には、他の図面に示す要素と同じ要素を示さない。図13A〜図13Gに示す異なる実施態様においては、同一若しくは一般に類似の要素は同じ数字で示す。複数桁の数字の最後の数字は等価な若しくは対応する素子にできるだけ対応させた。各図において、最後の数字に先行する数字は、各々の実施態様の図の番号に対応する。図13A〜図13Gに示す各々の実施態様においては、吐出流が通過する中央腔98(図9参照)は、最後の桁が「9」で終わる参照番号によって表示する。
【0124】
米国特許出願第11/019792号に詳述されている例示的な実施態様においては、ナノ電子センサーはCOに対して選択性と感度を示すが、その構成と操作の原理は、問題となる他の被検体(例えば、本願明細書に記載のような被検体)に適合するセンサーに対しても一般的に適用され、また、多種被検体用センサー及び本願明細書に記載のような本発明の観点を有するセンサーアレイに対しても同等に適用される。
【0125】
正面図と側面図を含む図13Aに示す本発明の観点を有する実施態様においては、ユニットは、ハウジング(14)の内部を延びる空気溝(19)への連結管用の入力と出力を有するような形態に設計されていてもよい。アダプター(10)は電源と信号用ケーブル(15)へ接続させてもよい。ケーブル(15)は、ガス監視データの表示ユニットへの中継に使用してもよく、又、センサーへの送電に使用してもよい。該ケーブルは電子モジュール(11)へ直接的に接続してもよい。このモジュールは、信号の処理、解析、及びユーザーへのデータの値と波形の供給ができるような構成に設計してもよい。モジュール(11)は、埋設されたソフトウェアとバックアップ動力用電池を具有するマイクロプロセッサーを具備していてもよい。このような電子モジュールは、固体センサー(12)(例えば、米国特許出願10/940324号明細書に開示されているようなナノ電子カプノメーターセンサー)へのコネクター(17)に連結されてその上部に設置されてもよい。モジュール(11)は、容易に離脱と再装着できるような形態に設計することによって、センサーを具有するアダプターの取り替え操作を促進させてもよい。所望により、電子モジュール(11)とセンサー(12)は、シリコンチップのような単一の一体化半導体装置に取り付けられていてもよい。
【0126】
固体センサー(ナノ電子センサー)(12)は、溝(19)を通過する呼吸気と流体を介して連絡するように配設してもよい。所定量の試料をカプノメーターへ供給するためには、固体センサー(12)と溝(19)との間に小さな窓又は開口部(13)を設置してもよい。患者の分泌物の凝縮とこれによる閉塞を低減させてセンサーの安定性を全体的に維持するために、試料用窓には膜及び/又はフィルター(18)を設置してもよい。例えば、ガス透過性疎水性膜、例えば、PFC膜を使用してもよい。
【0127】
従来の二酸化炭素検知用NDIRセンサーの場合とは異なり、ナノチューブ電子センサーを使用する場合には、光学的経路を透明に維持する必要はない。さらに、ナノチューブ電子センサーの活性検知領域は極めて小さいので、センサーは、患者からの気流中での汚染から容易に保護される。例えば、凝縮を防止する安定な温度までセンサーを加熱するためには非常に小さな電力が必要なだけである。また、センサーは簡単な機械的フィルター及び/又はガス透過性膜によって不揮発性汚染物から保護してもよい。この場合、フィルターや膜は、センサーの予測される寿命中でのフィルター等の過度の閉塞の可能性を最小にするのに充分な大きさにするだけでよい。再使用可能なセンサーの場合、次の使用の前に、フィルターユニットを除去して廃棄した後、新しいフィルターユニットに置き換えればよい。しかしながら、大抵の用途に対しては、関連するフィルターを含む全ユニット(10)を廃棄して取り替えるようにする態様が望ましい。ユニット(10)は機械的に安定なハウジング(14)を本来的に具備していてもよい。ハウジング(14)は、当該分野において知られているような医療用チューブ取り付け部材に使用される材料と類似の化学的特性と物理的特性を有するいずれかの適当なプラスチック又はその他の材料から構成されていてもよい。
【0128】
カプノメーターセンサー(12)は、二酸化炭素を選択的に検知するために、本願の親特許出願である米国特許出願10/940323号明細書に記載されているようなナノスケールの構成部品に基づいていてもよい。その他のガス類の検知は、適当な形態に設計されたナノチューブセンサーを使用することによっておこなってもよい。このようなセンサーとしては、次の米国特許出願の明細書に記載されているようなセンサーが例示される:仮出願60/457697号(2003年3月出願)、同60/468621号(2003年5月出願)、非仮出願10/177929号(2002年6月出願)、同10/656898号(2003年9月5日出願)、同10/655529号(2003年9月4日出願)、同10/388701号(2003年3月14日出願)、及び同10/345783号(2003年1月16日出願)。なお、これらの特許出願の明細書の記載内容も本願明細書の一部を成すものである。
【0129】
2種若しくはそれ以上のガス類(例えば、二酸化炭素と酸素)の検知は、1又は複数のセンサー(12)のようなセンサーを使用することによっておこなってもよい。単一のセンサーは複数のナノチューブセンサーを具有していてもよく、各センサーは異なるガスを検知するような形態に設計させる。付加的に、又は代替的に、複数のナノチューブセンサーの各々のセンサーは、代理機能性のために、同一のガスを検知するような形態に設計されていてもよい。ナノチューブセンサーのサイズは非常に小さいために、単一のガス検知ユニット(12)内へ多数のナノメーターサイズのセンサーを高い原価効率で組み込むことが可能となる。この場合、該ユニットは非常にコンパクトなシリコンチップ又はその他の装置から実質的に構成されていてもよい。あるいは、1又は複数のナノチューブ検知装置を、多重センサーを具有する検知ユニット内へ一緒に組み込んでもよい。各々の装置は極めて小さいので、スペース及び/又はコストが制限要因になることはない。
【0130】
本発明によるカプノメーターは、無線方式で操作できるような形態に容易に設計することができる。図13Bは、電源用又は信号用ケーブルを必要としない無線方式ユニット(20)を示す。この代替を補償するために、基地(26)への無線連絡用電子モジュール(21)へ無線連絡能を付与することができる。カプノメーターは僅かの電力しか消費しないので、基盤上に実装された小型の電池(23)はその寿命中は十分な電力を供給する。ハウジング(24)と溝(29)はカプノメーター(10)の場合と類似の形態を有するように設計してもよい。
【0131】
あるいは、カプノメーター(30)は、図13Cに示すように、センサー(32)から分離される全ての電子部品(31)と共に機能するように設計してもよい。センサー(32)は、該センサーを電子モジュール(31)へ連結するケーブルを有しており、該ケーブルは遠隔に配置される。例えば、モジュール(31)は、ディスプレー/基地(36)に組み込まれていてもよい。該基地は別のカプノメーターユニット(30)において再利用してもよい。基地(36)は、カプノグラフィー用のより複雑なハードウェアとソフトウェア(例えば、表示システム又は解析システム)と合体させてもよい。センサーへの信号/電源用コード(35)はユニット(30)と離脱可能に連結させ、センサーユニット(30)のみを廃棄して交換してもよい。
【0132】
使い捨てのカプノメーターの検知アダプターであって、検知パッケージが呼吸系の主要な空気溝内に直接的に装着された検知アダプターを提供することも要請されている。図113D及び図13Eは、このタイプの代表的な実施態様を示す。図13Dは、カプノメーターの検知/気流アダプターユニット(40)を示すもので、該ユニットは、内部空気溝(49)を有する管状アダプター(44)を具備する。ナノ電子ユニット(42)は溝(49)の壁部に取り付けてもよく、又、該ユニットは、ワイヤによってアダプター(44)の外側に取り付けられたケーブルコネクター(47)へ接続されていてもよい。例えば、プラスチックの成形工程中において、検知ユニット(42)とその連結ワイヤをアダプター(44)内へ組み込むことによって、センサー(42)に隣接する溝(49)の内部又は外部への漏洩の可能性を最小限にすることが可能である。前述のように、センサー(42)はナノチューブ装置を具有していてもよい。該ナノチューブ装置は、センサーの周囲又は上部に配置された適当なフィルター及び/又はガス透過性膜(図示せず)によって汚染から保護してもよい。例えば、センサー(12)をガス透過性膜中にカプセル化してもよく、及び/又は適当なフィルター及び/又は膜を溝(49)の内部へ取り付けてもよい。
【0133】
あるいは、検知ユニットを気流中へより直接的に配置させてもよい。例えば、図13Eは、カプノメーターセンサーとアダプター(50)を示す。この場合、ナノ電子センサーは溝(59)の中央部に複数のリブ(58)を用いて設置される。リブ(58)はセンサー(52)及び/又はアダプターのハウジング(54)と一体的に成形されると共に、ケーブル(55)と一体的に成形されて連結されていてもよい。あるいは、リブ(58)とセンサー(52)は、後でハウジング内において組み立てられる副集成部品(sub-assembly)を具備していてもよい。この種の副集成部品は、ハウジング(54)の壁部内を通る一体的に成形された電気コネクター(図示せず)へ取り付けてもよい。いずれの構成態様によっても、外部への空気の漏洩に基づいてセンサーの読みが不正確になる可能性は実質上除去される。リブ(58)又はその他のいずれかの適当なセンサー(52)の取り付け構造部材を用いることによって、保護用のフィルター又は膜をセンサー(52)の周囲に保持してもよい。このような構成態様は、呼気試験装置(例えば、血中アルコール試験等のための装置)内の被験者からの呼吸気を監視するために特に適している。
【0134】
図13Fは、一般的には図13Aに示す態様と類似するカプノメーターセンサーとアダプター(30)の模式的側面図である。但し、この場合、センサー(62)は、気道通路(69)と連絡する第2の平行な内腔(66)に隣接して配置される。窓又は開口部(63)は平行な内腔(66)と直接的に連絡するが、通路(69)とは間接的に連絡する。
【0135】
図13Gは、一般的には図13Fに示す態様と類似するカプノメーターセンサーとアダプター(但し、呼気の流路内への気道の通路(79)内へ突出する第2の平行な内腔(76)の入口端部(66a)と出口端部(76b)が配設される)の模式的側面図である。
【0136】
図13F及び図13Gに示す態様には、アダプターのハウジングと第1通路に近接して配置される平行な内腔が示されていることに注意すべきである。あるいは、平行な内腔は、センサー、電子回路、表示装置及び/又はデータ記憶装置が気道から離れて配置されるように延びていてもよい。
【0137】
本発明の観点を有する方法と装置の好ましい実施態様について説明したが、当業者には明らかなように、このような実施態様に係るシステムによって一定の利点が得られる。又、上述の実施態様の種々の変形態様、改良態様及び代替態様も、本発明の技術的範囲と技術的思想の範囲内において実施することができる。例えば、上述の方法と装置は、生体ポリマー(例えば、核酸及びタンパク質等)の検出、有機体又は有機体のフラグメントの検出、及び/又は遺伝的同一性のような法医学的鑑定等のために使用してもよい。
【符合の説明】
【0138】
10 アダプター
11 電子モジュール
12 センサー
20 アダプター
21 電子モジュール
23 小型電池
30 アダプター
31 電子モジュール
36 キャパシタンス測定回路
40 アダプターユニット
42 センサー
44 アダプター
50 アダプター
52 センサー
62 センサー
66 内腔
69 気道通路
70 センサー装置
71 ナノ構造体センサー
72 導電性素子
73 基板
74 誘電性単離層
75 導電性電極
76 内腔
79 気道通路
90 多種被検体含有呼吸気分析システム
91 採取器
93 マウスピース
94 流入弁/フィルター
95 流量調節器
96 取り外し式マルチセンサーユニット
97 捕集器
98 中央腔
100 電子的検出装置
101 被検体
102 ナノ構造センサー
103 信号ケーブル
104 基板
106 導電性の溝
110 接点
112 接点
114 ゲート電極
116 誘電層
118 抑制材層
120 機能化材料
122 メーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構成要素(i)〜(iii)を具備する呼吸気分析器:
(i)少なくとも1つの第1ナノ電子センサーであって、a)基体、b)該基体上に配置された1又は複数のナノ構造体、c)該ナノ構造体と電気的に接続された1又は複数の導電性素子、及びd)第1ナノ構造体と操作上関連する少なくとも1つの認識材料(但し、該認識材料の少なくとも1つは、ヒトの呼吸気中に存在する第1被検体に対して感度を示すように設計される)を具有する該第1ナノ電子センサー
(ii)少なくとも患者から吐き出される呼吸気を採取するように設計された呼吸気採取器であって、該第1ナノセンサーに接続された該呼吸気採取器、及び
(iii)該第1ナノ電子センサーから信号を受信すると共に、該第1被検体の濃度を測定するために該信号を使用することによって、患者の医学的状態に関連する情報を提供するように設計された演算処理装置。
【請求項2】
患者の医学的状態に関連する情報をユーザーへ提供する出力機構をさらに具備する請求項1記載の呼吸気分析器。
【請求項3】
a)基体、b)該基体上に配置された1又は複数のナノ構造体、c)該ナノ構造体と電気的に接続された1又は複数の導電性素子、及びd)第1ナノ構造体と操作上関連する少なくとも1つの認識材料(但し、該認識材料の少なくとも1つは、ヒトの呼吸気中に存在する第2被検体に対して感度を示すように設計される)を具有する少なくとも1つの第2ナノ電子センサーをさらに具備し、該演算処理装置が、該第2ナノ電子センサーから信号を受信して該第2被検体の濃度を測定するために該信号を使用することによって、患者の医学的状態に関連する情報を提供するように設計された請求項1記載の呼吸気分析器。
【請求項4】

演算処理装置が、第1被検体の測定値と第2被検体の測定値を比較することによって、患者の医学的状態を示すこれらの測定値間の関連性を決定する請求項3記載の呼吸気分析器。
【請求項5】
第1被検体が二酸化炭素(CO)を含有し、第2被検体が酸化窒素(NO)を含有する請求項4記載の呼吸気分析器。
【請求項6】
演算処理装置が、採取された呼吸気中のCOとNOの測定濃度との関連性を決定することによって、患者の気道炎症に関する評価情報を提供する請求項5記載の呼吸気分析器。
【請求項7】
患者の気道炎症の評価情報が喘息状態を示し、出力機構が喘息状態に関連する情報をユーザーへ提供する請求項6記載の呼吸気分析器。
【請求項8】
実質的に携帯可能であって、喘息状態に関連する情報を実質的にリアルタイムに基づいて患者へ提供する請求項1記載の呼吸気分析器。
【請求項9】
基体上に配置された1又は複数のナノ構造体がカーボンナノチューブのネットワークを具有する請求項1記載の呼吸気分析器。
【請求項10】
ネットワークの少なくとも一部が1又は複数の導電性素子と接触する請求項9記載の呼吸気分析器。
【請求項11】
1又は複数の導電性素子が、ソース/ドレインギャップによって相互に分離されたソース電極とドレイン電極を具有する請求項10記載の呼吸気分析器。
【請求項12】
カーボンナノチューブのネットワークが特徴的な長さを有し、該長さがソース/ドレインギャップよりも実質的に小さく、該ネットワークを構成するナノチューブが、多くともソース電極とドレイン電極の一方のみと実質上接触する請求項11記載の呼吸気分析器。
【請求項13】
カーボンナノチューブのネットワークが特徴的な長さを有し、該長さがソース/ドレインギャップよりも実質的に大きく、該ネットワークを構成するナノチューブの実質的な部分がソース電極とドレイン電極の両方と接触する請求項11記載の呼吸気分析器。
【請求項14】
ゲート電極をさらに具備し、センサーの信号が、ゲート電圧の影響下でのナノ構造体の特性を示す請求項1記載の呼吸気分析器。
【請求項15】
センサーの信号が、ナノ構造体のキャパシタンス特性を示す請求項1記載の呼吸気分析器。
【請求項16】
第1被検体と第2被検体が、CO、NO、NO及びHから実質上成る群から選択される請求項4記載の呼吸気分析器。
【請求項17】
呼吸気採取器が、少なくとも患者からの呼吸気の実質的な吐き出し時間にわたって、第1センサーと第2センサーの一方又は両方へ呼吸気の試料を連続的に供給し、また、演算処理装置が該吐き出し時間中の第1被検体と第2被検体の一方又は両方の濃度の経時変化を決定する請求項5記載の呼吸気分析器。
【請求項18】
呼吸気採取器が、患者の吐き出し時間中における呼吸気の試料の圧力を調節する請求項1記載の呼吸気分析器。
【請求項19】
ガス状試料中の酸化窒素を検出するためのシステムであって、酸化窒素を二酸化窒素へ酸化させる変換器、及びカーボンナノチューブを含む二酸化窒素センサーを具備する該システム。
【請求項20】
二酸化窒素センサーが、二酸化窒素に対する感度を高めるように適合したカーボンナノチューブ上に認識層を具有する請求項19記載のシステム。
【請求項21】
認識層が少なくとも1種のポリマーを含有する請求項20記載のシステム。
【請求項22】
認識層が、アミノ官能価を有するポリマーを含有する請求項20記載のシステム。
【請求項23】
認識層が、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアミドアミン(PAMAM)、ポリジ(カルバゾール−3−イル)フェニルアミン、ナイロン及びポリ(N−イソプロピルアシルアミド)(PNIMAM)から選択される少なくとも1種のポリマーを含有する請求項20記載のシステム。
【請求項24】
認識層がポリエチレンイミンを含有する請求項20記載のシステム。
【請求項25】
変換器が触媒を含有する請求項19記載のシステム。
【請求項26】
二酸化窒素以外のガスを感知するカーボンナノチューブを含む少なくとも1つのその他のセンサーをさらに具備する請求項19記載のシステム。
【請求項27】
二酸化窒素以外のガスを感知するナノチューブを含む複数のその他のセンサーをさらに具備する請求項19記載のシステム。
【請求項28】
その他のセンサーが一酸化炭素センサーと二酸化炭素センサーを含む請求項27記載のシステム。
【請求項29】
流速と流量の少なくとも一方を測定するための流れセンサーをさらに具備する請求項19記載のシステム。
【請求項30】
少なくとも酸化窒素センサーが使い捨てセンサーである請求項19記載のシステム。
【請求項31】
ガス状試料中の酸化窒素を検出するためのシステムであって、カーボンナノチューブを含む酸化窒素センサーを具備する該システム。
【請求項32】
ガス状試料中の酸化窒素を検出するための方法であって、下記の過程(i)及び(ii)を含む該方法:
(1)ガス状試料中の酸化窒素を二酸化窒素へ酸化させ、次いで
(2)ナノチューブを含む二酸化窒素センサーを用いて二酸化窒素を検出する。
【請求項33】
吐き出される呼吸気中の酸化窒素を検出するための方法であって、吐き出される呼吸気中の酸化窒素を、ナノチューブを含む酸化窒素センサーを用いて検出することを含む該方法。
【請求項34】
吐き出される呼吸気中の酸化窒素を検出するための方法であって、下記の過程(i)及び(ii)を含む該方法:
(1)吐き出される呼吸気中の酸化窒素を二酸化窒素へ酸化させ、次いで
(2)ナノチューブを含む二酸化窒素センサーを用いて二酸化窒素を検出する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図13G】
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【公表番号】特表2009−537219(P2009−537219A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510967(P2009−510967)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/010836
【国際公開番号】WO2007/136523
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(504468470)ナノミックス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】