説明

ナビゲーション装置

【課題】特定の道路を走行するために必要なエネルギーを車両が有していない場合に、車両の運転者を混乱させることなく、その道路への車両の進入を規制する。
【解決手段】ナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、一般道路と有料道路とを接続する接続道路と一般道路とが分岐する接続分岐点の中から対象分岐点を特定し(ステップS20)、その対象分岐点について、車両が有料道路を走行するために必要な所要電力量を算出し(ステップS40)、バッテリ残量を検出する(ステップS50)。この所要電力量とバッテリ残量とに基づいて、車両が対象分岐点から有料道路へ進入するのを許可するか否かを判定し(ステップS60)、許可しないと判定した場合に、車両の運転者に対して有料道路への進入を禁止するための警告を行う(ステップS70)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のタイヤ空気圧や燃料などの状態に関する車両状態量を車両から高速道路の入口付近に設置された管理側通信装置へと送信し、その車両状態量に基づいて当該車両の乗り入れの適否を管理側通信装置において判断することで、高速道路の走行に適さない車両の乗り入れを規制する車両運行管理システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−209031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたシステムでは、車両が高速道路へ乗り入れようとする直前に乗り入れ適否の判断が行われることから、乗り入れを規制された車両の運転者は、そこから一般道路へと引き返すことができない。そのため、運転者は次に何処へ向かって車両を走行させればよいのか分からずに混乱してしまい、その結果、高速道路の入口付近で立ち往生してしまう可能性がある。しかし、高速道路の入口付近で車両が立ち往生することは、後続の車両が追突する危険性があると共に渋滞の発生原因にもなり得る。このような事情に鑑みて、高速道路や自動車専用道路等の特定の道路を走行するために必要なエネルギーを車両が有していない場合に、車両の運転者を混乱させることなく、その道路への車両の進入を規制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるナビゲーション装置は、車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、一般道路と特定道路とを接続する接続道路と一般道路とが分岐する接続分岐点の中から対象分岐点を特定する対象分岐点特定手段と、車両が特定道路を走行するために必要なエネルギーの所要量を算出する所要量算出手段と、車両におけるエネルギーの残量を検出する残量検出手段と、所要量と残量とに基づいて、車両が対象分岐点から特定道路へ進入するのを許可するか否かを判定する判定手段と、車両が特定道路へ進入するのを許可しないと判定手段が判定した場合に、車両が対象分岐点を通過する前に、車両の運転者に対して特定道路への進入を禁止するための警告を行う警告手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特定の道路を走行するために必要なエネルギーを車両が有していない場合に、車両の運転者を混乱させることなく、その道路への車両の進入を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態によるナビゲーション装置を含む車載システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ナビゲーション装置において実行される処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態によるナビゲーション装置1を含む車載システムの構成を図1のブロック図に示す。図1において、EV(Electric Vehicle)である車両100には、ナビゲーション装置1、車両制御装置2、バッテリ3、電力変換装置4、電気モータ5およびETC(Electronic Toll Collection System)通信装置6が搭載されている。
【0009】
バッテリ3は、電気モータ5を駆動するための電力を供給する。バッテリ3から供給される電力を用いて電気モータ5が駆動することにより、車両100は走行する。また、車両100の減速時には電気モータ5が発電機として作用し、回生発電による電力が発生する。この回生発電によって得られた電力は、バッテリ3において蓄積される。電力変換装置4は、バッテリ3と電気モータ5との間で授受されるこれらの電力を相互に利用可能な形式に変換する。たとえば、バッテリ3から供給される直流電力を所望の交流電力に変換して電気モータ5へ出力すると共に、電気モータ5において回生発電により得られた交流電力を所望の直流電力に変換してバッテリ3へ出力する。
【0010】
車両制御装置2は、車両100の走行状態や、バッテリ3の状態、電気モータ5の状態などを監視し、その監視結果に基づいて電力変換装置4の動作を制御する。この車両制御装置2の制御により電力変換装置4が動作することで、車両100の走行状態に応じてバッテリ3と電気モータ5との間で適切に電力の授受が行われる。これにより、バッテリ3に蓄積された電気エネルギーを消費して、車両100が走行するための運動エネルギーを電気モータ5による発生することができる。また、車両100の運動エネルギーの少なくとも一部を電気モータ5により回収して、再利用可能な回生エネルギーとしての電気エネルギーをバッテリ3に蓄積することができる。
【0011】
ナビゲーション装置1は、地図データに基づいて地図を表示すると共に、設定された目的地までの推奨経路を探索し、車両100をその目的地まで案内することができる。さらに、車両制御装置2からバッテリ3の残量を示すバッテリ残量情報を取得し、そのバッテリ残量情報に基づいて、バッテリ3の残量、すなわち車両100における電気エネルギーの残量を求めることができる。バッテリ3の残量は、たとえば、完全放電状態である0%から満充電状態である100%までのいずれかの値をとるSOC(State Of Charge)によって表すことができる。
【0012】
ETC通信装置6は、高速道路等の有料道路において出入口に設置されている路側通信装置(不図示)との間で、車両100の通行料金の収受に関する情報を無線通信により送受信する。ETC通信装置6から路側通信装置へ送信された情報は、所定の場所に設置されたサーバ装置等に送信され、通行料金の決済が行われる。
【0013】
なお、ナビゲーション装置1は、後述のような処理を実行することにより、車両100が有料道路へ進入するのを許可するか否かの判定を行う。その結果、車両100が有料道路へ進入するのを許可しないと判定した場合は、ETC通信装置6に対してその動作を禁止するためのETC禁止信号を出力する。ナビゲーション装置1からETC禁止信号が出力されると、ETC通信装置6は路側通信装置との無線通信を停止する。これにより、車両100が有料道路の入口に近づいても、入口に設置されているゲートが開かないようにして、車両100が有料道路へ進入できないようにする。なお、この処理の具体的な内容については、後で詳細に説明する。
【0014】
図2は、ナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は、制御部10、振動ジャイロ11、車速センサ12、ハードディスク(HDD)13、GPS(Global Positioning System)受信部14、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)情報受信部15、表示モニタ16、スピーカ17および入力装置18を備えている。
【0015】
制御部10は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD13に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の処理を実行する。たとえば、目的地を設定する際の目的地の検索処理、設定された目的地までの推奨経路の探索処理、車両100の現在位置の検出処理、各種の画像表示処理、音声出力処理などが制御部10によって実行される。なお、車両制御装置2から出力されたバッテリ残量情報は制御部10に入力され、制御部10が行う後述のような処理において使用される。
【0016】
振動ジャイロ11は、車両100の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ12は、車両100の走行速度を検出するためのセンサである。これらのセンサにより車両100の運動状態を所定の時間間隔ごとに検出することにより、制御部10において車両100の移動方向および移動量が求められる。
【0017】
HDD13は不揮発性の記録媒体であり、制御部10において上記のような処理を実行するための制御プログラムや地図データなどが記録されている。HDD13に記録されているデータは、必要に応じて制御部10の制御により読み出され、制御部10が実行する様々な処理や制御に利用される。
【0018】
HDD13に記録された地図データは、経路計算データと、道路データと、背景データとを含む。経路計算データは、目的地までの推奨経路を探索する際などに用いられるデータである。道路データは、道路の形状や種別などを表すデータである。道路データにおいて、各道路は後述するようにノードや形状補間点と呼ばれる点を複数繋げることによって構成されている。背景データは、地図の背景を表すデータである。なお、地図の背景とは、地図上に存在する道路以外の様々な構成物である。たとえば、河川、鉄道、緑地帯、各種構造物などが背景データによって表される。
【0019】
地図データにおいて各道路の最小単位はリンクと呼ばれている。すなわち、各道路は所定の道路区間にそれぞれ対応する複数のリンクによって構成されており、リンク単位で経路計算データおよび道路データが表現されている。なお、道路データにおいて各リンクの両端には、座標情報がそれぞれ設定されたノードと呼ばれる点が設けられている。また、各リンクの途中には形状補間点と呼ばれる点が必要に応じて設けられている。各形状補間点には、ノードと同様に座標情報がそれぞれ設定されている。これらの点を順に繋げることにより、道路データにおいて道路の形状が表される。
【0020】
一方、経路計算データには、各道路区間に対応するリンクごとに、車両100が当該道路区間を走行する際の通過所要時間等に応じたリンクコストが設定されている。このリンクコストに基づいて、予め設定された経路探索条件に応じたリンクの組合せを求めることにより、ナビゲーション装置1において推奨経路の探索が行われる。たとえば、移動時間の短さを最優先として経路探索を行うような経路探索条件が設定されている場合は、出発地から目的地までの通過所要時間が最小となるリンクの組合せが推奨経路として求められる。
【0021】
なお、上記ではナビゲーション装置1において地図データがHDD13に記録されている例を説明したが、これらをHDD以外の記録媒体に記録することとしてもよい。たとえば、CD−ROMやDVD−ROM、メモリカードなどに記録された地図データを用いることができる。すなわち、本実施の形態によるナビゲーション装置では、どのような記録媒体を用いてこれらのデータを記憶してもよい。
【0022】
GPS受信部14は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部10へ出力する。GPS信号には、車両100の現在位置を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻に関する情報が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて、車両100の現在位置を制御部10において算出することができる。このGPS信号に基づく車両100の現在位置の算出結果と、前述の振動ジャイロ11および車速センサ12の各検出結果に基づく移動方向および移動量の算出結果とにより、制御部10において所定時間ごとに車両100の現在位置を検出するための位置検出処理が実行され、車両100の現在位置が検出される。
【0023】
VICS情報受信部15は、図示しないVICSセンターからナビゲーション装置1に対して送信されるVICS情報を受信する。このVICS情報をVICS情報受信部15が受信することにより、渋滞情報を始めとする様々な道路交通情報がナビゲーション装置1において取得される。VICS情報受信部15により受信されたVICS情報は、制御部10に出力され、渋滞情報の表示や推奨経路の探索などに利用される。
【0024】
なお、VICSセンターからナビゲーション装置1へのVICS情報の送信は、主に高速道路上に設置されている電波ビーコンや、主に一般道路上に設置されている光ビーコン、またはFM多重放送によって行われる。電波ビーコンや光ビーコンは、その設置地点付近を通過する車両に対して、電波あるいは光(赤外線)により局所的にVICS情報を送信するものである。これに対して、FM多重放送では比較的広い地域に対してVICS情報を送信することができる。
【0025】
表示モニタ16は、ナビゲーション装置1において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ16により、地図画面の表示や推奨経路の案内表示などが行われる。表示モニタ16に表示される画面の内容は、制御部10が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ16は、たとえば車両100のダッシュボード上やインストルメントパネル内など、ユーザが見やすいような位置に設置されている。
【0026】
スピーカ17は、制御部10の制御により様々な音声情報を出力する。たとえば、推奨経路に従って車両100を目的地まで案内するための経路案内用の音声や、各種の警告音などがスピーカ17から出力される。
【0027】
入力装置18は、ナビゲーション装置1を動作させるための様々な入力操作をユーザが行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。ユーザは、入力装置18を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、推奨経路の探索条件を設定したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。この入力装置18は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、入力装置18を表示モニタ16と一体化されたタッチパネルとしてもよい。
【0028】
ユーザが入力装置18を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置1は、前述のようにして検出された車両100の現在位置を出発地として、制御部10により、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算による経路探索処理を行う。この処理により、出発地から目的地まで至る推奨経路を探索する。さらにナビゲーション装置1は、たとえば色を変える等の方法により、表示モニタ16に表示された地図上において他の道路と識別可能な形態で探索された推奨経路を表示する。そして、推奨経路に従って所定の画像情報や音声情報を表示モニタ16やスピーカ17から出力することにより、車両100を目的地まで案内する。
【0029】
次に、ナビゲーション装置1において制御部10により実行される処理について説明する。高速道路等の有料道路では、併設されたサービスエリアやパーキングエリアにおいて充電スタンド(充電ステーション)が設置されているため、一般道路に比べて充電スタンドの設置間隔が互いに離れていることが多い。そのため、バッテリ3の残量が少ないときに車両100が有料道路の走行を開始すると、最寄りの充電スタンドに到達する前に電力が尽きてしまい、有料道路の途中で停止してしまうおそれがある。こうした事態を避けるために、ナビゲーション装置1は、車両100が一般道路から有料道路へと進入する前に、その有料道路を途中で停止せずに走行するために必要な所要電力量を算出する。そして、バッテリ3の残量が算出された所要電力量に満たない場合は、車両100が有料道路へ進入するのを制限する。
【0030】
図3は、上記のような動作を実現するためにナビゲーション装置1において実行される処理のフローチャートである。このフローチャートは、車両100が一般道路を走行しているときに、制御部10によって実行される。なお、車両100が有料道路を走行しているときには、この処理を実行する必要はない。
【0031】
ステップS10において、制御部10は、車両100の現在位置を取得する。前述のように、車両100の現在位置は、GPS受信部14により受信されたGPS信号や、振動ジャイロ11および車速センサ12の各検出結果などに基づいて、所定時間ごとに検出される。この検出結果のうち最新のものがステップS10において取得される。
【0032】
ステップS20において、制御部10は、ステップS10で取得した車両100の現在位置と、HDD13に記録されている地図データとに基づいて、以降の処理対象とする対象分岐点を特定する。ここでは、一般道路と有料道路とを接続するランプ等の道路(以降では接続道路と称する)と一般道路とが分岐する分岐点(以降では接続分岐点と称する)の中から、次のようにして対象分岐点を特定する。
【0033】
前述したように、ユーザから目的地の設定が行われると、制御部10は経路探索処理を行うことで出発地から目的地までの推奨経路を探索し、その推奨経路に従って車両100を目的地まで案内する。このようなときには、推奨経路上の次の接続分岐点を対象分岐点として特定する。一方、目的地の設定が行われておらず、車両100の案内中ではないときには、車両100が走行している道路上の次の接続分岐点、すなわち、車両100の現在位置に対応する道路を道なりに進んだときに次に通過する接続分岐点を、対象分岐点として特定する。
【0034】
ステップS30において、制御部10は、ステップS10で取得した現在位置からステップS20で特定した対象分岐点までの距離が所定値未満であるか否かを判定する。現在位置から対象分岐点までの距離が所定値未満、たとえば100m未満である場合は、次のステップS40へ進む。一方、現在位置から対象分岐点までの距離が所定値以上である場合はステップS10へ戻り、上記のような処理を繰り返す。
【0035】
ステップS40において、制御部10は、車両100が有料道路を走行するために必要な所要電力量を算出する。ここでは、車両100の現在位置を基準として、対象分岐点から進入可能な有料道路に併設されている充電スタンドのうち対象分岐点に最も近い充電スタンドまでの距離と、対象分岐点から進入可能な有料道路の次の出口までの距離とを比較する。そして、距離が短い方を選択し、その距離を車両100が走行するために必要な電力量を所要電力量として算出する。たとえば、単位距離当たりの車両100の平均電力消費量を車両制御装置2において算出しておき、その情報を車両制御装置2から取得することにより、当該距離に応じた所要電力量を算出する。このとき、VICS情報受信部15により受信したVICS情報に含まれる渋滞情報や、地図データにおいて記録されている高低差情報などに基づいて、途中の道路状況を判断し、その判断結果を反映して所要電力量の算出を行ってもよい。
【0036】
なお、車両100が対象分岐点から進入した場合に有料道路の一方向にのみ走行可能な場合は、その方向のみについて所要電力量を算出すればよい。他方、車両100が対象分岐点から進入した場合に有料道路の両方向に走行可能な場合は、目的地までの推奨経路が設定されていれば、その推奨経路に基づいて車両100がどちらに走行するかを判断し、その方向について所要電力量を算出することができる。しかし、推奨経路が設定されていなければ、車両100がどちらに走行するかを判断できない。このような場合は、有料道路の両方向について所要電力量をそれぞれ算出し、その値がより大きな方を採用することが好ましい。
【0037】
また、目的地までの推奨経路として有料道路を通過する経路が設定されている場合は、車両100の現在位置から有料道路の次の出口までの距離に替えて、車両100の現在位置から推奨経路における有料道路の出口までの距離を用いて、所要電力量の算出を行ってもよい。
【0038】
ステップS50において、制御部10は、バッテリ残量、すなわちバッテリ3に蓄積されている電力の残量を検出する。ここでは、車両制御装置2からバッテリ残量情報を取得し、そのバッテリ残量情報に基づいてバッテリ残量の検出を行う。このバッテリ残量情報は、前述のようにバッテリ3の残量を示すものであり、制御部10からの要求に応じて車両制御装置2より出力される。このステップS50を実行することにより、車両100における走行用の電力の残量が検出される。
【0039】
ステップS60において、制御部10は、ステップS40で算出した所要電力量とステップS50で検出したバッテリ残量とを比較し、所要電力量がバッテリ残量よりも多いか否かを判定する。所要電力量がバッテリ残量よりも多い場合、すなわちバッテリ残量が所要電力量未満である場合はステップS70へ進み、そうでない場合、すなわちバッテリ残量が所要電力量以上である場合はステップS10へ戻る。
【0040】
こうしてステップS60の判定を行うことにより、制御部10は、所要電力量とバッテリ残量とに基づいて、車両100が対象分岐点から有料道路へ進入するのを許可するか否かを判定する。すなわち、バッテリ残量が所要電力量未満であれば、車両100が対象分岐点から有料道路へ進入するのを許可しないものと判定して、その進入を防止するためにステップS70以降の処理を行う。他方、バッテリ残量が所要電力量以上であれば、車両100が対象分岐点から有料道路へ進入するのを許可するものと判定して、ステップS10へ戻る。
【0041】
ステップS70において、制御部10は、車両100の運転者に対して有料道路への進入を禁止するための警告を出力する。この警告の出力は、たとえば、表示モニタ16において所定の警告表示を行ったり、スピーカ17から所定の警告音声を出力したりすることによって行うことができる。なお、このときに車両100の現在位置から対象分岐点までの距離や、対象分岐点において車両100の進入を禁止する方向、すなわち有料道路へ向かう接続道路の方向などを報知することが好ましい。さらにこのとき、警告原因がバッテリ残量不足であることを画像や音声によって運転者に知らせるようにしてもよい。
【0042】
ステップS80において、制御部10は、経路案内中であるか否かを判定する。経路案内中である場合、すなわち目的地までの推奨経路が予め設定されており、その推奨経路に従ってナビゲーション装置1が車両100を目的地まで案内しているときには、ステップS90へ進む。一方、経路案内中でない場合は、ステップS110へ進む。
【0043】
ステップS90において、制御部10は、推奨経路が有料道路を通っているか否かを判定する。推奨経路が有料道路を通っている場合、すなわち、推奨経路のうち対象分岐点から先の部分が接続道路を通って有料道路へと続いている場合は、ステップS100へ進む。一方、推奨経路が有料道路を通っていない場合は、ステップS110へ進む。
【0044】
ステップS100において、制御部10は、推奨経路を再探索するためのリルート演算を行う。ここでは、有料道路を通らないで目的地へ至る経路を新たな推奨経路として再探索する。さらにこのとき、現在位置から最寄りの充電スタンドを経由地として設定し、その充電スタンドにおいてバッテリ3の充電を行うように車両100の運転者を促してもよい。こうして新たな推奨経路が再探索されると、その推奨経路に従って車両100が目的地まで案内される。
【0045】
ステップS110において、制御部10は、ステップS10と同様にして車両100の現在位置を取得する。
【0046】
ステップS120において、制御部10は、ステップS110で取得した現在位置に基づいて、車両100が対象分岐点を通過したか否かを判定する。車両100が対象分岐点を通過するまではステップS110へ戻って現在位置の取得を続け、対象分岐点を通過したらステップS130へ進む。
【0047】
ステップS130において、制御部10は、対象分岐点を通過したときの車両100の進行方向が有料道路への進入方向であるか否かを判定する。車両100の進行方向が有料道路への進入方向である場合、すなわち車両100が対象分岐点を通過して接続道路を走行した場合は、ステップS140へ進む。一方、車両100の進行方向が有料道路への進入方向ではない場合、すなわち車両100が対象分岐点を通過した後にも一般道路の走行を続けている場合は、ステップS10へ戻る。
【0048】
ステップS140において、制御部10は、ETC通信装置6へETC禁止信号を出力する。制御部10からのETC禁止信号を受けたETC通信装置6は、前述のように路側通信装置との無線通信を停止する。これにより、車両100が有料道路へ進入しようとしても入口のゲートが開かないため、その進入が阻止される。
【0049】
ステップS140を実行したら、制御部10はステップS10へ戻る。その後は上記のような処理を繰り返し行う。
【0050】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、次の(1)〜(5)のような作用効果を奏することができる。
【0051】
(1)ナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、一般道路と有料道路とを接続する接続道路と一般道路とが分岐する接続分岐点の中から対象分岐点を特定し(ステップS20)、その対象分岐点について、車両100が有料道路を走行するために必要な所要電力量を算出し(ステップS40)、車両100におけるバッテリ残量を検出する(ステップS50)。この所要電力量とバッテリ残量とに基づいて、車両100が対象分岐点から有料道路へ進入するのを許可するか否かを判定し(ステップS60)、車両100が有料道路へ進入するのを許可しないと判定した場合には、車両100が対象分岐点を通過したとステップS120で判定する前に、車両100の運転者に対して有料道路への進入を禁止するための警告を行う(ステップS70)。このようにしたので、有料道路を走行するために必要な電力を車両100が有していない場合に、車両100の運転者を混乱させることなく、有料道路への車両100の進入を規制することができる。
【0052】
(2)制御部10は、車両100が有料道路へ進入するのを許可しないとステップS60において判定し、さらに車両100が対象分岐点を通過して接続道路を走行したとステップS130において判定した場合に、有料道路の入口に設置されているゲートが開くのを禁止するためのETC禁止信号をETC通信装置6へ出力する(ステップS140)。このようにしたので、有料道路を走行するために必要な電力を車両100が有していないにも関わらず、車両100が誤って有料道路に進入しようとした場合には、その進入を阻止することができる。
【0053】
(3)制御部10は、ステップS40において、車両100の現在位置から有料道路に併設された補給施設のうち対象分岐点に最も近い補給施設までに必要な電力量、または車両100の現在位置から有料道路の次の出口までに必要な電力量を、所要電力量として算出するようにした。これにより、有料道路の状況に応じて所要電力量を正確に算出することができる。
【0054】
(4)制御部10は、ステップS20において、予め設定された推奨経路に従って車両100を目的地まで案内しているときには、その推奨経路上の次の接続分岐点を対象分岐点として特定する。一方、車両100を目的地まで案内していないときには、車両100が走行している道路上の次の接続分岐点を対象分岐点として特定する。このようにしたので、車両100の走行状況に応じて、接続分岐点の中から最適なものを対象分岐点として特定することができる。
【0055】
(5)制御部10は、車両100が有料道路へ進入するのを許可しないとステップS60において判定し、かつ、推奨経路のうち対象分岐点から先の部分が接続道路を通って有料道路へと続いているとステップS90において判定した場合に、推奨経路を再探索するためのリルート演算を行う(ステップS100)ようにした。これにより、有料道路を走行するために必要な電力を車両100が有していないにも関わらず、有料道路を通過するような推奨経路が設定されている場合に、そのときのバッテリ残量に応じた適切な推奨経路を再探索することができる。
【0056】
なお、以上説明した実施の形態において、図3のステップS130の処理を省略してもよい。すなわち、車両100が対象分岐点を通過したら、そのときの車両100の進行方向が有料道路への進入方向であるか否かに関わらず、ステップS140においてETC通信装置6へETC禁止信号を出力する。このようにしても、前述したのと同様の作用効果を奏することができる。すなわち、有料道路を走行するために必要な電力を車両100が有していないにも関わらず、車両100が誤って有料道路に進入しようとした場合に、その進入を阻止することができる。さらに、処理の簡略化を図ることもできる。なお、このようにした場合は、車両100が有料道路を走行可能な状態となった後においてもそのままETC禁止信号が出力され続けるのを防ぐため、所定時間経過後や次の対象分岐点が近づいたときなどにETC禁止信号の出力を一旦解除することが好ましい。
【0057】
また、以上説明した実施の形態では、一般道路から車両が進入可能な有料道路を対象として処理を行う例を説明したが、他の道路、たとえば有料道路ではない自動車専用道路などを対象としてもよい。所定の分岐点において一般道路から分岐している接続道路を介して一般道路と接続されており、その入口においてETCシステムまたはこれと同様の動作を行うシステムが設置されているような特定の道路である限り、どのような道路であっても本発明を適用可能である。
【0058】
以上説明した実施の形態では、EVである車両100に搭載されているナビゲーション装置1を例として説明したが、ナビゲーション装置1が搭載される車両はEVに限定されるものではない。たとえば、ガソリンを燃焼して内燃機関を動かすことによって走行用のエネルギーを発生させる通常の自動車においても適用可能である。この場合、図3のステップS30では、所要電力量に替えて所要燃料量を算出する。すなわち、当該車両の現在位置を基準として、対象分岐点から進入可能な有料道路に併設されているガソリンスタンドのうち対象分岐点に最も近いガソリンスタンドまでの距離と、対象分岐点から進入可能な有料道路の次の出口までの距離とを比較する。そして、距離が短い方を選択し、その距離を車両100が走行するために必要なガソリンの量を所要燃料量として算出する。またステップS40では、バッテリ残量に替えてガソリン残量を検出する。そして、ステップS60において、所要燃料量とガソリン残量とを比較することにより、車両100が対象分岐点から有料道路へ進入するのを許可するか否かを判定する。このようにして処理を行ってもよい。
【0059】
さらに、ガソリン以外の燃料を使用して走行する車両や、ガソリン等の燃料によるエネルギーと電気エネルギーとを併用して走行するHEV(Hybrid Electric Vehicle)など、他のエネルギーを利用して走行する様々な車両においても本発明を適用可能である。すなわち、本発明によるナビゲーション装置は、当該車両が有料道路を走行するために必要なエネルギーの所要量を算出可能であり、かつ当該車両におけるエネルギーの残量を検出可能なものである限り、どのようなエネルギーを利用して走行する車両において搭載されていてもよい。
【0060】
以上説明した実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
1:ナビゲーション装置、2:車両制御装置、3:バッテリ、4:電力変換装置、
5:電気モータ、6:ETC通信装置、10:制御部、11:振動ジャイロ、
12:車速センサ、13:HDD、14:GPS受信部、15:VICS情報受信部、
16:表示モニタ、17:スピーカ、18:入力装置、100:車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
一般道路と特定道路とを接続する接続道路と前記一般道路とが分岐する接続分岐点の中から対象分岐点を特定する対象分岐点特定手段と、
前記車両が前記特定道路を走行するために必要なエネルギーの所要量を算出する所要量算出手段と、
前記車両におけるエネルギーの残量を検出する残量検出手段と、
前記所要量と前記残量とに基づいて、前記車両が前記対象分岐点から前記特定道路へ進入するのを許可するか否かを判定する判定手段と、
前記車両が前記特定道路へ進入するのを許可しないと前記判定手段が判定した場合に、前記車両が前記対象分岐点を通過する前に、前記車両の運転者に対して前記特定道路への進入を禁止するための警告を行う警告手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記車両が前記特定道路へ進入するのを許可しないと前記判定手段が判定した場合に、前記特定道路の入口に設置されているゲートが開くのを禁止するための信号を出力する禁止信号出力手段をさらに備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記禁止信号出力手段は、前記車両が前記対象分岐点を通過して前記接続道路を走行したときに、前記信号を出力することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、
前記所要量算出手段は、前記現在位置から前記特定道路に併設された補給施設のうち前記対象分岐点に最も近い補給施設までのエネルギー所要量、または前記現在位置から前記特定道路の次の出口までのエネルギー所要量を、前記所要量として算出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、
予め設定された推奨経路に従って前記車両を目的地まで案内する経路案内手段をさらに備え、
前記対象分岐点特定手段は、
前記経路案内手段が前記車両を前記目的地まで案内しているときには、前記推奨経路上の次の接続分岐点を前記対象分岐点として特定し、
前記経路案内手段が前記車両を前記目的地まで案内していないときには、前記車両が走行している道路上の次の接続分岐点を前記対象分岐点として特定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項5に記載のナビゲーション装置において、
前記現在位置から前記目的地までの推奨経路を再探索するためのリルート手段をさらに備え、
前記リルート手段は、前記車両が前記特定道路へ進入するのを許可しないと前記判定手段が判定し、かつ、前記推奨経路のうち前記対象分岐点から先の部分が前記接続道路を通って前記特定道路へと続いている場合に、前記推奨経路を再探索することを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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