説明

ニキビ用皮膚化粧料

【課題】 安全性が高く、ニキビの予防、治療に有効なニキビ用皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】(1)下記の(A)、(B)、及び(C)を必須成分とするニキビ用皮膚化粧料。
(A)リパーゼ阻害剤
(B)アンドロゲン受容体結合阻害剤
(C)ニキビ菌抗菌剤
(2)前記(A)のリパーゼ阻害剤が、パシャンベ抽出物、ローズアップル葉抽出物、シラカバ抽出物、ホコツシ抽出物、ユキノシタ抽出物、ヨクイニン抽出物、ハマメリス抽出物の1種又は2種以上、前記(B)のアンドロゲン受容体結合阻害剤が、サボテン抽出物、ダイズ抽出物、パシャンベ抽出物、サイシン抽出物、シラカバ抽出物、ワレモコウ抽出物の1種又は2種以上、及び前記(C)のニキビ菌抗菌剤が、セイヨウシロヤナギ抽出物、オリーブ葉抽出物の1種又は2種からなるニキビ用皮膚化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なリパーゼ阻害剤、新規なアンドロゲン受容体結合阻害剤及びこれらに植物系抗菌剤を配合することを必須とするニキビ用皮膚化粧料に関する。さらに詳しくは、皮膚安全性の高いリパーゼ阻害剤、アンドロゲン受容体結合阻害剤、及びニキビ(アクネ)菌抗菌剤を配合したニキビの予防、治療に有効なニキビ用皮膚化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人皮膚に細菌性リパーゼには、皮膚表層に常在する微生物(プロピオニバクテリウム アクネス:Propionibacterium acnes、ピティロスポラム オバールPityrosporum ovale、マイクロコッカス属Micrococcus sp.など)が産生するリパーゼがあり、これらのリパーゼが皮脂中に含まれるトリグリセライドを分解し遊離脂肪酸を産生する。この遊離脂肪酸は、皮膚に対して刺激性の炎症を引き起こし、ニキビ、皮膚炎、フケなどの要因になると考えられている。特にニキビの原因とされるプロピオニバクテリウム アクネスの菌数と産生する遊離脂肪酸には、相関関係があり、遊離脂肪酸が毛包壁に対して、刺激性の炎症反応とそれに伴う過角化、コメドの形成を引き起こすと考えられている(非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、細菌性のリパーゼを阻害して疾患を抑制又は予防する薬剤の開発は未だあまり進められておらず、金属塩(特許文献1)や植物抽出物としてビワ葉抽出物(特許文献2)、コラ・デ・カバロ抽出物(特許文献3)、コケモモ抽出物(特許文献4)などが報告されているが、安全性に問題があるものやリパーゼ阻害効果が必ずしも満足し得るものではなかった。
【0004】
皮脂の分泌がホルモンによって調節を受けることは広く知られている。特にアンドロゲンは、脂腺の成長と皮脂の合成を促進する。エストロゲンは大量に投与された場合のみこれとほぼ反対の作用を示す。テストステロンは性腺由来であり、脂腺において活性の高いジヒドロテストステロンに代謝されて皮脂の分泌を促進する最も重要なアンドロゲンと考えられてきた。しかし最近の実験成績では、副腎アンドロゲン(17−ケトステロイド)も重要と考えられる。皮脂分泌に対する副腎アンドロゲンの重要性は、分泌量が男女いずれも大きく増加する思春期において明らかで、皮脂分泌量と血中のデハイドロエピアンドロステロンサルフェイト値の相関を検討すると、男女とも正の相関を示し、このことから副腎アンドロゲンが皮脂の分泌亢進に重要な役割を果たしていることが明確に示された(非特許文献2)。アンドロゲン受容体結合阻害剤を用いることにより、特に思春期の皮脂分泌亢進を抑制することは、ニキビの予防にとって重要な要素と考えられる。
【0005】
しかしながら、これまでテストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害についての検討は盛んであったが、アンドロゲン受容体結合阻害については、ピリミジン誘導体(特許文献5)、ヒノキチオールなど(特許文献6)、5−ヒドロキシフラボン(特許文献7)などの報告が散見されるのみで、安全性、効果の面から満足しえるものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−186919
【特許文献2】特開平10−265364
【特許文献3】特開平11−228338
【特許文献4】特開2002−97147
【特許文献5】特開平5−112571
【特許文献6】特開2000−1432
【特許文献7】特開2002−326931
【非特許文献1】McGinley,K,J.et.al.,J.Clin.Microbiol.12:672-675,1980
【非特許文献2】山本綾子,Fragrance Journal,22(10),11〜17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明においては、特に皮膚に対する安全性を重視し、皮膚常在菌が産生するリパーゼを阻害するリパーゼ阻害剤、皮脂分泌を抑制するアンドロゲン受容体結合阻害剤、及びニキビ菌に対する抗菌剤の三者を含有し、ニキビの予防、治療に有効なニキビ用皮膚化粧料得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく種々検討した結果、リパーゼ阻害剤(例:パシャンベ抽出物、ローズアップル葉抽出物、シラカバ抽出物、ホコツシ抽出物、ユキノシタ抽出物、ヨクイニン抽出物、ハマメリス抽出物等の1種又は2種以上)、アンドロゲン受容体結合阻害剤(例:サボテン抽出物、ダイズ抽出物、パシャンベ抽出物、サイシン抽出物、シラカバ抽出物、ワレモコウ抽出物等の1種又は2種以上)、及びニキビ菌抗菌剤(例:セイヨウシロヤナギ抽出物、オリーブ葉抽出物の1種又は2種)の三者を必須成分として配合した皮膚化粧料は、ニキビの予防、治療に有効で、且つ安全性の高いものであることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本願発明は下記の請求項1〜請求項4により構成されている。
請求項1: 下記の(A)、(B)、及び(C)を必須成分とすることを特徴とするニキビ用皮膚化粧料。
(A)リパーゼ阻害剤
(B)アンドロゲン受容体結合阻害剤
(C)ニキビ菌抗菌剤
請求項2: リパーゼ阻害剤が、パシャンベ抽出物、ローズアップル葉抽出物、シラカバ抽出物、ホコツシ抽出物、ユキノシタ抽出物、ヨクイニン抽出物、ハマメリス抽出物の1種又は2種以上からなる請求項1に記載するニキビ用皮膚化粧料。
請求項3: アンドロゲン受容体結合阻害剤が、サボテン抽出物、ダイズ抽出物、パシャンベ抽出物、サイシン抽出物、シラカバ抽出物、ワレモコウ抽出物の1種又は2種以上からなる請求項1に記載するニキビ用皮膚化粧料。
請求項4: ニキビ菌抗菌剤が、セイヨウシロヤナギ抽出物、オリーブ葉抽出物の1種又は2種からなる請求項1に記載するニキビ用皮膚化粧料。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るニキビ用皮膚化粧料によれば、本発明の必須成分であるリパーゼ阻害剤(例:パシャンベ抽出物、ローズアップル葉抽出物、シラカバ抽出物、ホコツシ抽出物、ユキノシタ抽出物、ヨクイニン抽出物、ハマメリス抽出物等の1種又は2種以上)、アンドロゲン受容体結合阻害剤(例:サボテン抽出物、ダイズ抽出物、パシャンベ抽出物、サイシン抽出物、シラカバ抽出物、ワレモコウ抽出物等の1種又は2種以上)、及びニキビ菌抗菌剤(例:セイヨウシロヤナギ抽出物、オリーブ葉抽出物等の1種又は2種)の三者を配合したので、これらの成分による相乗作用によりニキビの予防、治療に有効なニキビ用皮膚化粧料を提供することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において用いるパシャンベとは、ユキノシタ科(Saxifragaceae)ヒマラヤユキノシタ属の植物で、学名Bergenia ligulata (Wall.) Engl.、Bergenia stracheyi (Hook.f.& Thoms.) Engl.、Bergenia ciliata (Haw.) Sternb.を指し、ヒマラヤからインド北部に分布する。パシャンベ抽出物は、根茎を使用する。パシャンベ抽出物がリパーゼ阻害作用及びアンドロゲン受容体結合阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【0012】
本発明において用いるローズアップル葉とは、フトモモ科(Myrtaceae)フトモモ属の植物で、学名Syzygium jambos (L.) Alstonの枝葉で、熱帯各地に広く栽培されている。ローズアップル葉抽出物がリパーゼ阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【0013】
本発明において用いるシラカバとは、カバノキ科(Betulaceae)カバノキ属の植物で、学名Betula pendula Roth.の樹皮でヨーロッパからモンゴルにかけて広く分布する。シラカバ抽出物がリパーゼ阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【0014】
本発明において用いるホコツシとは、マメ科(Leguminosae)オランダビユ属の植物で、学名Psoralea corylifolia L.の種子で、インドから東南アジアに分布する。ホコツシ抽出物がリパーゼ阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【0015】
本発明において用いるユキノシタとは、ユキノシタ科(Saxifragaceae)ユキノシタ属の植物で、学名Saxifraga stolonifera Meerb.の葉で、日本、中国に分布する。ユキノシタ抽出物がリパーゼ阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【0016】
本発明において用いるヨクイニンとは、イネ科ジュズダマ属の植物で学名Coix lachryma-jobi var.ma-yuen(Roman.)Stapf.の脱殻種子で、広く栽培されている。ヨクイニン抽出物が、リパーゼ阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【0017】
本発明において用いるハマメリスとは、マンサク科(Hamamelidaceae)マンサク属の植物で、学名Hamamelis virginiana L.の葉で、北米に分布する。ハマメリス抽出物がリパーゼ阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【0018】
本発明において用いるサボテンとは、サボテン科(Cactaceae)ウチワサボテン属の植物で、学名Opuntia streptacanthaの茎節で、メキシコに分布する。サボテン抽出物がアンドロゲン受容体結合阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【0019】
本発明において用いるダイズとは、マメ科(Leguminosae)ダイズ属の植物で、学名Glycine max(L.)Merrillの種子で、日本産のものを用いる。ダイズ抽出物がアンドロゲン受容体結合阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【0020】
本発明において用いるサイシンとは、ウマノスズクサ科(Aristrochiaceae)のAaiasarum属の植物で、日局サイシンに該当するものを用いる。サイシン抽出物がアンドロゲン受容体結合阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【0021】
本発明において用いるワレモコウとは、バラ科(Rosaceae)ワレモコウ属の植物で、Sanguisorba officinalis L.の根茎で、中国からヨーロッパまで広く分布する。ワレモコウ抽出物がアンドロゲン受容体結合阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【0022】
本発明において用いるセイヨウシロヤナギとは、ヤナギ科ヤナギ属の植物で、学名Salix alba L.の樹皮で、ヨーロッパからアジアに広く分布する。セイヨウシロヤナギ抽出物がPropionibacterium acnesに対する抗菌作用を有することは、これまで知られていない。
【0023】
本発明において用いるオリーブとは、モクセイ科(Oleaceae)オリーブ属の植物で、学名Olea europaea L.の葉で、各地で広く栽培されている。オリーブ葉抽出物がPropionibacterium acnesに対する抗菌作用を有することは、これまで知られていない。
【0024】
本発明において用いる抽出物の調製方法について、以下に詳細する。
【0025】
(製造例1)パシャンベ抽出物の製法
パシャンベ300gに30vol%エタノール溶液3000gを加え、50℃にて8時間抽出した後、ろ過し、ろ液を減圧下約500gまで濃縮する。濃縮液を合成吸着体ダイヤイオンHP−20を充填したカラムに通液する。10vol%エタノール溶液にて洗浄後、50vol%エタノール溶液にて溶出し、溶出液を減圧乾固した後、50%1,3−ブチレングリコール1000gを加え溶解した後、ろ過して、パシャンベ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.25%であった。
【0026】
(製造例2)ローズアップル葉抽出物の製法
ローズアップル葉200gに30vol%エタノール溶液3000gを加え、室温にて3日間抽出する。これをろ過し、ろ液を200gまで濃縮した後、濃縮液を合成吸着体ダイヤイオンHP−20を充填したカラムに通液する。10vol%エタノール溶液にて洗浄後、50vol%エタノール溶液にて溶出し、溶出液を濃縮乾固する。乾固物に50%1,3−ブチレングリコール500gを加え溶解した後、ろ過して、ローズアップル葉抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.54%であった。
【0027】
(製造例3)シラカバ抽出物の製法
シラカバ200gに50vol%エタノール溶液2000gを加え、室温にて3日間抽出する。これをろ過し、ろ液を200gまで濃縮した後、濃縮液を合成吸着体ダイヤイオンHP−20を充填したカラムに通液する。10vol%エタノール溶液にて洗浄後、50vol%エタノール溶液にて溶出し、溶出液を濃縮乾固する。乾固物に50%1,3−ブチレングリコール500gを加え溶解した後、ろ過して、シラカバ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.74%であった。
【0028】
(製造例4)ホコツシ抽出物の製法
ホコツシ200gに50vol%エタノール溶液2000gを加え、50℃にて8時間抽出し、冷後、ろ過する。ろ液を濃縮乾固した後、50%1,3−ブチレングリコール500gを加え、ろ過し、ホコツシ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、2.8%であった。
【0029】
(製造例5)ユキノシタ抽出物の製法
ユキノシタ200gに30vol%エタノール溶液3000gを加え、室温にて3日間抽出する。これをろ過し、ろ液を200gまで濃縮した後、濃縮液を合成吸着体ダイヤイオンHP−20を充填したカラムに通液する。10vol%エタノール溶液にて洗浄後、50vol%エタノール溶液にて溶出し、溶出液を濃縮乾固する。乾固物に50%1,3−ブチレングリコール500gを加え溶解した後、ろ過して、ユキノシタ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.62%であった。
【0030】
(製造例6)ヨクイニン抽出物の製法
ヨクイニン200gに50%エタノール溶液2000gを加え、室温にて3日間抽出する。これをろ過し、ろ液を減圧下、濃縮乾固する。乾固物を30%1,3−ブチレングリコール200gに溶解した後、ろ過してヨクイニン抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.13%であった。
【0031】
(製造例7)ハマメリス抽出物の製法
ハマメリス200gに50vol%エタノール溶液2000gを加え、50℃にて8時間抽出する。これをろ過し、ろ液を200gまで濃縮した後、濃縮液を合成吸着体ダイヤイオンHP−20を充填したカラムに通液する。10vol%エタノール溶液にて洗浄後、50vol%エタノール溶液にて溶出し、溶出液を濃縮乾固する。乾固物に50%1,3−ブチレングリコール500gを加え溶解した後、ろ過して、ハマメリス抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.55%であった。
【0032】
(製造例8)サボテン抽出物の製法
サボテン200gに30vol%エタノール2000mLを加え、室温で5日間抽出する。これをろ過し、ろ液を減圧下濃縮乾固し、30%1,3−ブチレングリコール溶液500gを加え溶解した後、ろ過してサボテン抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、2.06%であった。
【0033】
(製造例5)ダイズ抽出物の製法
ダイズ200gに50vol%エタノール溶液2000gを加え、50℃にて8時間抽出する。これをろ過し、ろ液を200gまで濃縮した後、濃縮液を合成吸着体ダイヤイオンHP−20を充填したカラムに通液する。30vol%エタノール溶液にて洗浄後、70vol%エタノール溶液にて溶出し、溶出液を濃縮乾固する。乾固物に50%1,3−ブチレングリコール500gを加え溶解した後、ろ過して、ダイズ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、0.56%であった。
【0034】
(製造例6)サイシン抽出物の製法
サイシン100gに50%エタノール溶液2000gを加え、室温にて3日間抽出する。これをろ過し、ろ液を減圧下、濃縮乾固する。乾固物を50%1,3−ブチレングリコール500gに溶解した後、ろ過してサイシン抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.43%であった。
【0035】
(製造例5)ワレモコウ抽出物の製法
ワレモコウ100gに50vol%エタノール溶液2000gを加え、50℃にて8時間抽出する。これをろ過し、ろ液を減圧下、濃縮乾固する。乾固物を50%1,3−ブチレングリコール500gに溶解した後、ろ過してワレモコウ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.74%であった。
【0036】
(製造例)セイヨウシロヤナギ抽出物の製法
セイヨウシロヤナギ200gに50vol%エタノール溶液2000gを加え、50℃にて8時間抽出する。これをろ過し、ろ液を減圧下、濃縮する。濃縮液を噴霧乾燥しセイヨウシロヤナギエキス末22gを製する。
【0037】
(製造例8)オリーブ葉抽出物の製法
オリーブ葉200gに50vol%エタノール溶液2000gを加え、50℃にて8時間抽出する。これをろ過し、ろ液を減圧下、濃縮する。濃縮液を噴霧乾燥しオリーブ葉エキス末26gを製する。
【0038】
つぎに、上記製法にて製造した抽出物の効果について参考例として例示する。
【0039】
(参考例1)リパーゼ活性阻害作用の評価
プロピオニバクテリウム・アクネ(Propionibacterium acnes)由来リパーゼに対する阻害活性試験は、脱エステル化することにより蛍光を発する4−メチルウンベリフェリルオレートにリパーゼを作用させ、生成した蛍光を有する4−メチルウンベリフェロンを蛍光強度計にて測定する方法により行った。プロピオニバクテリウム・アクネはJCM6425を用いて、GAM培地にて37℃、24時間培養した培養液から50%飽和硫酸アンモニウムを添加して4℃で一晩塩析した。遠心分離により沈殿を回収し、0.1MのMcllvaine緩衝液(pH6.8)に溶解して酵素液とした。0.1mMの4−メチルウンベリフェリルオレート溶液100μLに各種濃度の試験試料を10μL、0.1MのMcllvaine緩衝液(pH6.8)を40μL、酵素液50μLを加え、37℃にて20分間反応させた。反応後、0.1N塩酸1mLを反応液に加え、酵素反応を止め、0.2Mクエン酸ナトリウム溶液2mLを加えた後、生成した4−メチルウンベリフェロンの蛍光を励起波長320nm、蛍光波長450nmで定量した。対照には、試験溶液の代わりメタノール10μLを用いた。各濃度における阻害率(%)を、〔(対照の蛍光強度−各検体の蛍光強度)/対照の蛍光強度〕×100より算出した。試験結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
(参考例2)アンドロゲン受容体阻害作用の評価
アンドロゲン依存性ヒト前立腺癌由来LNCaP細胞(東北大学加齢医学研究所より譲渡)を2%FBS含有RPMI1640培地を用いて1.0×104cells/wellで96穴マイクロプレートに播種、37℃、24時間培養した。次に、試料及び10-8MのDHTを添加した0.5%BSA含有RPMI1640培地に培地を交換して48時間培養した。次に、培地を0.97mMのMTTを含む培地に交換し、2時間培養後、培地をイソプロパノールに交換して細胞内に生成したブルーホルマザンを抽出した。以下、MTT色素還元法に従って吸光度を測定した。別に、試料添加でDHT無添加、試料・DHT共に無添加、DHT添加で試料無添加のものについて平行して試験を行った。結合阻害率(%)は、〔1−(C−D)/(A−B)〕×100にて算出した。ただし、AはDHT添加・試料無添加、BはDHT無添加・試料無添加、CはDHT添加・試料添加、DはDHT無添加・試料添加の吸光度である。試験結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
(参考例3)抗アクネ菌性の評価
3%1,3−ブチレングリコール、0.2%モノステアリン酸グリセリル、50mMクエン酸緩衝液(pH4.5)からなるベース緩衝液を調製した。このベース緩衝液10mLに各濃度のオリーブ葉抽出物及びセイヨウシロヤナギ抽出物を添加し、試験試料とした。各試験試料に対し、約108CFU/mLからなるPropionibacterium acnes(JCM6425)を0.1mL接種して、嫌気条件下、室温にて保持した。3時間後に、接種サンプルを1mLずつ10mLのLP希釈液に回収して攪拌後、LP希釈液を含む変法GAM寒天培地に塗布し、37℃、7日間嫌気培養し、出現するコロニー数をカウントして残存するアクネ菌数/mLを算出した。結果を表3に記す。
【0044】
【表3】

【0045】
表3から明らかなように、オリーブ葉抽出物及びセイヨウシロヤナギ抽出物は、アクネ菌に対する抗菌作用があり、特にオリーブ葉抽出物とセイヨウシロヤナギ抽出物の組み合わせて用いた場合には、著しい効果を発揮することが確認された。
【0046】
本発明に係る必須成分の総配合量は、特に限定はないが、一般に皮膚外用剤全量に対して、乾燥固形物に換算して0.0001〜10.0重量%、好ましくは0.1〜5.0重量%、特に好ましくは1.0〜5.0重量%である。配合量が0.0001重量%未満ではニキビの予防・治療効果が乏しくなる傾向にあり、逆に5.0重量%を越えて配合しても効果の増加は実質上望めないし、皮膚外用剤への配合も難しくなる傾向にある。
【0047】
本発明の皮膚外用剤は、上記必須成分以外に通常の皮膚外用剤で使用される任意の成分を含有することができる。例えば、油分、湿潤剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、保湿剤、香料、水、アルコール、増粘剤の他、皮脂分泌調整剤、消炎剤、収斂剤、抗酸化剤、抗アレルギー剤等、さらに生理活性作用を有する動植物抽出物及びこれらの抽出分画、精製物を必要に応じて適宜配合し、剤型に応じて常法により製造することができる。
【0048】
本発明の皮膚外用剤の剤型は、任意であり、化粧水などの可溶化系、乳液、クリームなどの乳化系、または、軟膏、分散液、粉末系などの従来皮膚外用剤に用いられる何れの剤型でもかまわない。また、一般皮膚化粧料に限定されるものではなく、医薬品、医薬部外品、薬用化粧料等を包含するものである。
【0049】
以下に、実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0050】
(実施例1〜実施例6)
以下に示す処方に従って、化粧水を作成した。即ち、処方成分(1)〜(6)を混合し、均一として化粧水を得た。
(成分) (重量%)
(1)1,3−ブチレングリコール 5.0%
(2)グリセリン 5.0%
(3)必須成分及び比較成分(表4) 7.0%
(4)ペンチレングリコール 2.0%
(5)フェノキシエタノール 0.4%
(6)精製水 残余
【0051】
【表4】

【0052】
実施例1〜実施例6に示した化粧水のニキビ症状改善効果を示すため、ニキビ症状を有する10〜20歳代の男女被験者18名を1群として、1日朝夕2回ニキビの発生している部位に1ケ月連続使用させ、使用開始前と使用終了後のニキビの状態撮影し観察した。比較例も同様に使用させ観察した。結果は、「改善」、「やや改善」、「変化なし」、「悪化」の4段階にて評価し、各評価を得た被験者数にて表5に示した。
【0053】
【表5】

【0054】
表5より明らかなように、本発明の実施例1〜実施例6使用群では、著しいニキビ症状の改善が確認された。すなわち、リパーゼ活性阻害剤、アンドロゲン受容体結合阻害剤及びニキビ(アクネ)菌抗菌剤の組み合わせがニキビの改善に有効であることが、確認された。
また、本試験期間中に皮膚刺激性反応や皮膚感作性反応を示した被験者は存在しなかった。
【0055】
以下にさらに、本発明の処方例を示す。
【0056】
(実施例7)化粧水
下記成分(1)〜(5)を均一に混合し化粧水を調製した。
(成分) (重量%)
(1)グリセリン 10.0%
(2)パシャンベ抽出物 5.0%
(3)オリーブ葉抽出物 2.0%
(4)セイヨウシロヤナギ抽出物 2.0%
(5)精製水 残余
【0057】
(実施例8)クリーム
下記成分(1)〜(11)、別に下記成分(12)〜(24)を75℃に加温溶解しそれぞれA液及びB液とする。A液にB液を加えて乳化し、攪拌しながら冷却し、クリームを調製した。
(成分) (重量%)
(1)ホホバ油 1.0%
(2)スクワラン 3・0%
(3)メチルポリシロキサン 0.5%
(4)ステアリルアルコール 0.5%
(5)セチルアルコール 0.5%
(6)トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル12.5%
(7)モノステアリン酸グリセリル 5.0%
(8)モノステアリン酸ジグリセリル 1.5%
(9)モノステアリン酸デカグリセリル 3.0%
(10)酢酸dl−α−トコフェノール 0.05%
(11)防腐剤 適量
(12)キサンタンガム 0.1%
(13)ハマメリス抽出物 0.5%
(14)シラカバ抽出物 3.0%
(15)パシャンベ抽出物 1.0%
(16)ヨクイニン抽出物 1.0%
(17)サイシン抽出物 1.0%
(18)ワレモコウ抽出物 1.0%
(19)セイヨウシロヤナギ抽出物 1.0%
(20)オリーブ葉抽出物 1.0%
(21)1,3−ブチレングリコール 3.0%
(22)グリセリン 1.0%
(23)防腐剤 適量
(24)精製水 残余
【0058】
(実施例9)乳液
下記成分(1)〜(10)、別に(11)〜(19)を75℃で加熱溶解させてそれぞれA液及びB液とし、A液にB液を加えて乳化し、攪拌しながら冷却し、乳液を調製した。
(成分) (重量%)
(1)ホホバ油 1.0%
(2)スクワラン 2.0%
(3)ベヘニルアルコール 1.0%
(4)トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 2.0%
(5)テトラグリセリン縮合シリノレイン酸 0.1%
(6)モノオレイン酸プロピレングリコール 0.5%
(7)モノステアリン酸グリセリン 1.0%
(8)モノミレスチン酸ヘキサグリセリル 1.0%
(9)モノミリスチン酸デカグリセリル 0.5%
(10)防腐剤 適量
(11)パシャンベ抽出物 2.0%
(12)シラカバ抽出物 1.0%
(13)ワレモコウ抽出物 1.0%
(14)サイシン抽出物 2.0%
(15)オリーブ葉抽出物 1.0%
(16)セイヨウシロヤナギ抽出物 2.0%
(17)1,3−ブチレングリコール 3.0%
(18)防腐剤 適量
(19)精製水 残余
【0059】
実施例7〜9に示したニキビ用皮膚化粧料においても、上記のニキビ改善効果を評価したが、全ての実施例にてニキビの著しい改善が確認された。また、皮膚安全性上も全く問題のないことも確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)、(B)、及び(C)を必須成分とすることを特徴とするニキビ用皮膚化粧料。
(A)リパーゼ阻害剤
(B)アンドロゲン受容体結合阻害剤
(C)ニキビ菌抗菌剤
【請求項2】
リパーゼ阻害剤が、パシャンベ抽出物、ローズアップル葉抽出物、シラカバ抽出物、ホコツシ抽出物、ユキノシタ抽出物、ヨクイニン抽出物、ハマメリス抽出物の1種又は2種以上からなる請求項1に記載するニキビ用皮膚化粧料。
【請求項3】
アンドロゲン受容体結合阻害剤が、サボテン抽出物、ダイズ抽出物、パシャンベ抽出物、サイシン抽出物、シラカバ抽出物、ワレモコウ抽出物の1種又は2種以上からなる請求項1に記載するニキビ用皮膚化粧料。
【請求項4】
ニキビ菌抗菌剤が、セイヨウシロヤナギ抽出物、オリーブ葉抽出物の1種又は2種からなる請求項1に記載するニキビ用皮膚化粧料。


【公開番号】特開2006−241059(P2006−241059A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58415(P2005−58415)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(599098518)株式会社ディーエイチシー (31)
【Fターム(参考)】