説明

ニッケル−金めっき可能な厚膜銀ペースト、および、低温同時焼成セラミックデバイスのためのめっき方法、および、それから形成されたLTCCデバイス

ニッケル含有金属および金含有金属で順次にめっきされる外部銀含有電気端子を備えるLTCCデバイスが記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年10月2日に出願の以下の米国仮特許出願第61/102083号明細書に対する米国特許法35条に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、多層LTCC回路の製造への適用に好適な、銀導体の表面をめっきするための銀ペーストおよびニッケル−金めっきの条件に関する。銀組成物は、高密度LTCCデバイスの構築に用いられる場合に、ニッケル−金めっき条件および高度に耐腐食性の金ワイヤボンディング可能な電子回路に対して、方法および材料適合性を示す。LTCC相互接続回路は経済的であって、信頼性が高く、および、90GHz以下またはそれ以上の広い周波数範囲にわたる低い誘電損失によって特徴付けられる金属金ベースのLTCCシステムに対する代替であり;これはまた、化学耐久性、気密性、機械的強度、表面の金ワイヤボンディング性に対するプロセス寛容度に秀いでている。
【背景技術】
【0003】
相互接続回路基板は、電気的におよび機械的に相互に接続された多数の極度の小さい回路素子から形成された電子回路またはサブシステムを物理的に具現化したものである。これらの多様なタイプの容量型電子部品は、単一のコンパクトなパッケージ内で物理的に分離し、かつ、互いに隣接して取り付けることができるように、ならびに、相互におよび/またはパッケージから延びる共通の結線に電気的に接続できるように、1つの配置構成に組み合わせられることがしばしば望ましい。
【0004】
複合電子回路は、一般に、回路が、絶縁誘電体層により分離された、いくつかの導体層から構成されている必要がある。これらの導電層は、バイアスと呼ばれる導電経路によって誘電体層を介してレベル間で相互に接続されている。このような多層構造はよりコンパクトな回路を可能とする。
【0005】
典型的には、LTCCテープは、無機固形分、有機固形分および揮発性溶剤のスラリーを剥離性高分子フィルム上にキャスティングすることにより形成される。ガラス粉末およびセラミック酸化物充填材材料および有機樹脂−溶剤系(媒体)から構成されるスラリーは、分散され懸濁された固形分を含有する流体に配合および処理される。このテープは、均一な厚さおよび幅を有する被膜が形成されるよう、剥離性高分子フィルムの表面にスラリーを塗布することにより形成される。
【0006】
電子機能を相互接続するために、テープ上に印刷された貴金属ベースの厚膜ペーストである導体ラインが、ビアを埋める導体と接続され、積層され、および、適切な温度で焼成されて電子デバイスが得られる。銀ベースの導体を有する回路は金ベースの回路と比して経済的であるが、これらは、特に大気中の湿度に露出された場合に信頼性に劣るものである。
【0007】
大気条件への露出の最中に、表面の銀導体は変色(銀の酸化は大気条件への露出の最中の一般的な現象である)して、回路機能が損なわれることとなる。このような酸化現象を最低限とするために、表面銀導体をニッケル−金で被覆することが一般的に実施されている。しかしながら、金のめっきの前に必要であるベースのニッケルめっきは、一般に、アルミナ、プリント配線板および銅等などの他の基板とは異なり、LTCCから銀導体を「リフト」させてしまう。このような銀導体パッドリフトは、その程度がいかに小さくとも、完成したLTCC回路のワイヤボンディング強度、長期の信頼性等などの最終的な機能特性を低減させることとなる。ボンディングリフトを最低限とするために、めっき条件、めっきされるデバイスの物理特性が、良好なワイヤボンディング条件および信頼性がもたらされるよう選択されるべきである。調節されるべき主なめっき条件は以下のとおりである:LTCCおよび銀導体組成物に適切なめっき槽のpHおよび温度;ニッケルおよび金のめっき厚;ならびに、ニッケル対金厚の比;必要であれば銀上へのPd−ベースめっき等。無電解めっきに関する数々の公開された文献が入手可能であるが、適切なめっき条件および金に対するニッケルの厚さの判定にもっとも重要なパラメータの1つであるLTCCの特定の化学に対して特定されたものはない。(「Electroless Plating−Fundamentals & Applications」1990年,G.O.Mallory & J.B.Hajdu編,Williams Andrew Publishing/Noyes.)D.Gudeczaukas,Uyemura International corporation,Southington CTは、無電解金めっき技術、特に、Ceramic Industry,2007年12月,第13ページ中のLTCCに関するものに関する数々の刊行物を発行している。数々の特許が、ニッケル−金めっき条件および適用を説明している:例えば、銅基板に対する米国特許第6156218号明細書および米国特許第6362089号明細書;アルミニウムに対する米国特許第6548327号明細書等。文献に記載されている一般的な技術および産業に広く受け入れられている方法は、酸性溶液pH下での、77〜90℃でのニッケル−金またはニッケル−パラジウム−金の無電解めっきである。米国特許出願公開第2007/011187号明細書に記載されているDuPont Greenテープシステムに基づくLTCC回路は、銀導体組成の変化に関わらないめっきされた部分の導体−基板ボンディング破壊により、産業において広く受け入れられているめっき条件下では、ワイヤボンディング可能な金はめっきされない。しかも、現在市場においては、ニッケル−金でめっきされていると共に、長期の接着/信頼性をもってワイヤボンディング可能である他のLTCC回路は他に入手可能ではない。
【0008】
本発明は、LTCCベースのニッケル−金めっき電子素子および適用における使用のための、従来技術の厚膜めっき可能な銀導体組成物に関連する問題を解決する。特に、本発明は、優れた長期の信頼性をもたらすワイヤボンディング可能なLTCC構造を得るために必要とされる厚膜組成物およびめっき条件を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書においては:
a.4〜12のpH範囲で、LTCCデバイスの銀含有金属製外部電気端子にニッケル含有金属を無電解めっきするステップ;および
b.金含有金属をニッケル含有金属にめっきするステップであって、前記めっきステップが無電解めっきおよび浸漬めっきから選択されるステップ
の逐次的なステップを含むLTCCデバイスに金属をめっきするめっき方法が記載されている。
【0010】
本明細書においては、(1)重量パーセント基準で、75〜90%の異なるサイズおよび形状の銀粉末ならびに残りの有機媒体、(2)(1)中の銀と0.5〜4%の強耐火ガラスおよび残りの有機媒体から基本的に構成される銀ペースト組成物がさらに開示されている。
【0011】
上記の組成物中のガラスは、「網目形成成分」としてのアルミノホウケイ酸ガラスであり、Zn、Ba、Mg、Sr、Sn、Ti、Naイオンを「網目修飾カチオン」として有する。
【0012】
上述の組成物における特定のガラス組成物は、20.2% SiO2;2.8% Al23;20.4 B23;10.1 ZnO;19.0% BaO;3.1% MgO;3.3% Na2O;13.7% SrO;5.5% TiO2;1.9% SnO2を含む。
【0013】
銀導体の表面上へのニッケル−金のめっき条件は、4〜12のpHでめっきされた100〜300、好ましくは100〜150マイクロインチのニッケル上への20〜100、好ましくは20〜60マイクロインチの金と特定される。
【0014】
浸漬/フラッシュ金めっき条件の場合、めっきのpHは3以下のpHとより酸性である可能性があり、および、金の厚さは、およそ4マイクロインチもの薄さである可能性がある。
【0015】
しかも、ビアフィル導体上への金の良好なめっきはまた、長期の信頼性も実証されている。
【0016】
本発明は、混合金属(銀−パラジウム−白金−金)組成物または完全な金組成物をめっき可能な銀組成物によって置き換えることにより費用が低減された高信頼性の電子レンジ用途における使用のための、従来技術の厚膜組成物のための向上した代替品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.テープキャスティング化学、テープキャスティング&LTCC加工
典型的には、LTCCテープは、無機固形分、有機固形分および揮発性溶剤のスラリーを剥離性高分子フィルム上にキャスティングすることにより形成される。ガラス粉末およびセラミック酸化物充填材材料および有機樹脂−溶剤系(媒体)から構成されるスラリーは、分散され懸濁された固形分を含有する流体に配合および処理される。このテープは、均一な厚さおよび幅を有する被膜が形成されるよう、剥離性高分子フィルムの表面にスラリーを塗布することにより形成される。
【0018】
このようなテープは、DuPont 951および943 Greenテープとして市販されている。ガラスの化学組成もまた米国特許第6,147,019号明細書および米国特許第2007/011187号明細書において検討されている。一般にセラミック充填材は、ガラス組成物と反応して新たな結晶相を形成することとなる。ニッケル−金めっき槽におけるこれらの相の安定性に本発明は関連する。セラミック充填材は、酸性/塩基pHでの浸出性の相の形成において重要な役割を果たすこととなる。
【0019】
Al23、ZrO2、SiO2、TiO2またはこれらの混合物などの耐火性セラミック充填材は、固形分を基準として0〜50重量%の量でキャスティング可能な誘電性組成物に添加され得る。充填材のタイプに応じて、焼成後には異なる結晶性相が形成されることが予期される。充填材は、焼成テープ構成成分のめっき槽への浸出を制御することが可能である。例えば、Mg、Znを含有する相が槽中に浸出する可能性があり、一方で、アルミナベースの結晶相は比較的安定である。
【0020】
ガラスと反応してAl含有結晶相を形成するため、Al23が好ましいセラミック充填材である。Al23は、高い機械強度および害をなす化学反応に対する不活性性をもたらすためにきわめて有効である。セラミック充填材の他の機能は、焼成の最中の系全体のレオロジー制御である。セラミック粒子は、物理的バリアとして作用することにより、ガラスの流動性を制限してしまう。これらはまたガラスの焼結を抑制し、それ故、有機物のより良好な焼却を促進させる。水晶、CaZrO3、ムライト、菫青石、苦土カンラン石、ジルコン、ジルコニア、BaTiO3、CaTiO3、MgTiO3、アモルファスシリカ等またはこれらの混合物などの他の充填材を用いて、テープ性能および特徴を変性させ得る。充填材の量、充填材のタイプおよび充填材の物理的特徴が、焼成されたグリーンテープの収縮性に影響を及ぼすであろう。テープ収縮性は、充填材の充填密度を高めることにより収縮性が低減されるよう最適化された多峰形の粒径分布を用いることにより、制御されたレベルに調節され得る。
【0021】
焼成時に組成物のより高い焼きしまりを達成する目的のためには、無機固形分が小さい粒径を有することが重要である。特に、粒子の実質的にすべて、例えば90%または95%が、15ミクロン、または、さらには10ミクロン以下であるべきである。これらの最大径制限を条件として、いくつかの実施形態においては、ガラスおよびセラミック充填材の両方の粒子の少なくとも50%が、1ミクロン超であると共に、6ミクロン未満である。
【0022】
ガラスおよびセラミック無機固形分が分散されている有機媒体は、揮発性有機溶剤中に溶解された高分子バインダー、ならびに、任意選択により、可塑剤、離型剤、分散剤、剥離剤、消泡剤、安定化剤および湿潤剤などの他の溶解された材料から構成されている。
【0023】
より良好な結合効率を達成するために、総組成物を基準として、ガラスおよびセラミック充填材を含む90重量%固形分について少なくとも5重量%ポリマーバインダーを用いることが好ましい。しかしながら、30重量%以下のポリマーバインダーおよび可塑剤などの他の低揮発性変性剤、ならびに、最低で70%無機固形分を用いることがより好ましい。これらの制限の範囲内において、熱分解により除去されなければならない有機物の量を低減させると共に、焼成時の完全な焼きしまりを促進するより良好な粒子充填性を達成するために、可能な限り少量のバインダーおよび他の低揮発性有機変性剤を用いることが望ましい。
【0024】
過去においては、種々の高分子材料がグリーンテープ用のバインダーとして利用されてきており、例えば、ポリ(ビニルブチラール);ポリ酢酸ビニル;ポリ(ビニルアルコール);メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系ポリマー;アタクチックポリプロピレン;ポリエチレン;ポリ(メチルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)などのケイ素ポリマー;ポリスチレン;ブタジエン/スチレンコポリマー;ポリスチレン;ポリ(ビニルピロリドン);ポリアミド;高分子量ポリエーテル;エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー;ポリアクリルアミド;ならびに、ナトリウムポリアクリレート、ポリ(低級アルキルアクリレート)、ポリ(低級アルキルメタクリレート)などの種々のアクリルポリマー;ならびに、低級アルキルアクリレートおよびメタクリレートの種々のコポリマーおよびマルチポリマーである。エチルメタクリレートおよびメチルアクリレートのコポリマー、ならびに、エチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびメタクリル酸のターポリマーが、スリップキャスティング材料用のバインダーとして既に用いられている。
【0025】
1985年8月20日に発行のUsalaへの米国特許第4,536,535号明細書が、0〜100重量% C1~8アルキルメタクリレート、100〜0重量% C1~8アルキルアクリレートおよび0〜5重量%エチレン性不飽和カルボン酸またはアミンの適合性のマルチポリマーの混合物である有機バインダーを開示している。上記ポリマーは、最大量の誘電性固形分と一緒に最低量で用いられることが可能であるため、これらは、本発明の誘電性組成物を生成するために選択されることが好ましい。この理由のために、上記に参照したUsala出願の開示は、本明細書において参照により援用される。
【0026】
頻繁に、高分子バインダーはまた、バインダーポリマーと比して、バインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)を下げる作用を有する可塑剤を少量で含有しているであろう。当然のように、可塑剤の選択は、変性される必要があるポリマーによって主に決定される。種々のバインダー系において用いられている可塑剤は、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、アルキルリン酸塩、ポリアルキレングリコール、グリセロール、ポリ(エチレンオキシド)、ヒドロキシエチル化アルキルフェノール、ジアルキルジチオホスホネートおよびポリ(イソブチレン)である。これらのうち、ブチルベンジルフタレートが、比較的低濃度で効果的に用いられることが可能であるために、アクリルポリマー系においてもっとも頻繁に用いられる。
【0027】
キャスティング溶液の溶剤構成成分は、ポリマーの完全な溶解、ならびに、大気圧で比較的低レベルの熱を加えることにより分散体からの溶剤の揮発が可能であるよう十分に高い揮発度が達成されるよう選択される。加えて、この溶剤は、有機媒体中に含有されている他の添加剤のいずれかの沸点または分解温度よりもかなり低い温度で沸騰しなければならない。それ故、150℃未満の大気圧での沸点を有する溶剤がもっとも頻繁に用いられる。このような溶剤としては、アセトン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、アミルアセテート、2,2,4−トリエチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレート、トルエン、塩化メチレンおよびフルオロカーボンが挙げられる。上記に記載の個別の溶剤は、バインダーポリマーを完全には溶解させない場合がある。それでもなお、他の溶剤とブレンドされた場合、これらは、十分に機能する。これは、明確に当業者における技能の範囲内である。特に好ましい溶剤は、環境的に危険なクロロカーボンの使用が回避されるため、酢酸エチルである。
【0028】
溶剤およびポリマーに追加して、テープの裂けを回避すると共に、板抜き、印刷および積層などの被覆されたテープの取扱能についてより広い寛容度を提供するために可塑剤が用いられる。好ましい可塑剤は、ポリプロピレングリコールジベンゾエートであるVelsicol Chemical Corp.製の商品名BENZOFLEX(登録商標)400である。
【0029】
グリーンテープは、ガラス、セラミック充填材、高分子バインダーおよび溶剤のスラリー分散体の薄層を上述のとおり可撓性基板上にキャストし、キャスト層を加熱して揮発性溶剤を除去することにより形成される。1次テープは厚さが20mil以下であることが好ましく、好ましくは1〜10milである。束縛テープは1〜10milの厚さであることが好ましく、好ましくは1〜3milである。次いで、このテープは、シートに板抜きされるか、または、ロール状に集められる。グリーンテープは、典型的には、多層電子回路用の誘電材料または絶縁材料として用いられる。グリーンテープのシートは、回路の実際の寸法よりもいくらか大きいサイズで、角部の各々で位置決めホールが板抜きされる。多層回路の種々の層を接続するために、ビアホールがグリーンテープに形成される。これは、典型的には、機械的なパンチングによりなされる。しかしながら、細く集束されたレーザを用いて揮発させてグリーンテープにビアホールを形成することが可能である。典型的なビアホールサイズは、0.004インチ〜0.25インチの範囲である。層間の相互接続は、ビアホールを厚膜導電性インクで満たすことにより形成される。このインクは、通常は、標準的なスクリーン印刷技術により塗布される。回路素子の層の各々は、導体トラックをスクリーン印刷することにより完成する。また、抵抗性インクまたは高誘電率インクを選択された層に印刷して抵抗性または容量性の回路素子を形成することが可能である。しかも、多層キャパシタ産業において用いられるものと同様の特別に配合された高誘電率グリーンテープを多層回路素子の一部として組み込むことが可能である。
【0030】
回路の層の各々が完成した後、個別の層が、丁合いがとられると共に積層される。精密単軸式または等方プレスダイが用いられて、層間の高精度での位置合わせが保証される。積層体の組み立ては、ホットステージカッターでトリムされる。焼成工程は、典型的には、標準的な厚膜コンベヤベルト炉中で、または、箱型炉中で、プログラムされた加熱サイクルで実施される。この方法はまた、上部および下部層としての従来の剥離テープの使用、ならびに、焼成工程後の剥離テープの除去およびクリーニングを必要とせずに、拘束された焼結構造の一部として上部および/または下部導体の同時焼成を可能とするであろう。
【0031】
本発明の焼成テープ(またはフィルム)のめっき特性は、存在する結晶およびガラス全体の量および/または質、ならびに、テープ中に存在する構成成分の浸出特徴に依存する。低温同時焼成セラミック(LTCC)デバイス機能特性もまた用いられる導体に依存する。導体と誘電性テープとの相互作用は、いくつかの実施形態においては、デバイスの誘電性部分の化学を変化させる可能性があり、それ故、導体と基板との間のボンディングを変化させ得る。加熱プロファイルを調節することにより、および/または、テープ中の充填材の質および/または量を変更することにより、および/または、導体の化学を変更することにより、当業者は、様々な導体−セラミックボンディング強度、浸出特徴、表面導体のめっき品質を達成することが可能である。
【0032】
本明細書において用いられるところ、「焼成」という用語は、アセンブリの層中の有機材料をすべて揮発(焼却)して、層中のガラス、金属または誘電性材料のいずれをも焼結させ、これにより、アセンブリ全体を高密度化させるのに十分である、一定の温度におよび一定の時間の間、空気などの酸化性の雰囲気中でアセンブリを加熱することを意味する。
【0033】
積層ステップの各々において、これらの層は、バイアスが隣接する機能層の適切な導電経路に適当に接続されるよう、位置決めが正確でなければならないことは、当業者によって認識されているであろう。
【0034】
「機能層」という用語は、導電性、抵抗性または容量性機能を有する印刷されたグリーンテープを指す。それ故、上記のとおり、典型的なグリーンテープ層は、1つまたは複数の抵抗器回路および/またはキャパシタ、ならびに、導電性回路上に印刷されていてもよい。
【0035】
10層を超える層を有する多層積層体は、典型的には、有機物の熱分解のための十分な時間のために20時間を超え得る焼成サイクルを必要とすることもまた認識されているべきである。
【0036】
本発明の組成物の使用は、普通多層回路を含む電子物品の形成に用いられて、電子レンジ、ならびに、特にこれらに限定されないが:特に、高周波数センサー、多モードレーダモジュール、電気通信素子およびモジュール、ならびに、アンテナを含む他の高周波回路素子が形成されてもよい。
【0037】
これらの多層回路は、回路が、絶縁誘電体層によって分離された数々の層導体から構成されていることを必要とする。この絶縁誘電体層は、本発明のテープの1つまたは複数の層から形成されていてもよい。この導電層は、導電経路により誘電体層を通してレベル間で相互接続されている。誘電体層および導電層から形成されている多層構造の焼成により、回路として機能可能である複合体が形成される(すなわち、電気的に機能性の複合体構造が形成される)。本明細書において定義されている複合体は、多層構造の焼成からもたらされる個別の部品から構成される構造材料であり、これは、電気的に機能性の回路をもたらす。
【0038】
LTCC化学的耐久性テスト;
10層のテープサンプルを積層し、標準的なLTCC加熱プロファイルで焼成し、それぞれを、40℃の一定の温度で維持された10%酸強度の2種の異なる鉱酸中に30分間の一定の時間の間浸漬した。テープ構成成分の酸への浸出による重量損失(重量%の差)を化学的耐久性の目安とした。4種の市販されているLTCCテープ、951−ATおよび943−A5、(3種がDuPont Company,Wilmington DE製)および実験用テープを用いて、酸性pHにおける構成成分の浸出を評価した。結果を以下に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
上記の表は、酸性媒体中におけるテープからの相/イオンの浸出の変化を実証する。ニッケル−金めっきの最中でのLTCCデバイスからのこのような相の浸出は、銀導体を「リフト」することとなり、換言すると、導体と基板LTCCとの間のボンディングを弱め、それ故、回路の長期の信頼性を低下させる。銀端子上のほとんどのニッケル−金めっきが、酸性または中性に近いpHのめっき槽中で予形成される。本発明のめっきは、塩基性のpHで行われて浸出が最低限とされているが、これはpHに関連しているのみならず、ガラス化学、充填材化学、充填材とガラスとの反応、ならびに、得られる結晶種の性質に関連している。
【0041】
厚膜銀組成物
金属粉末:
本発明において用いられる微細化された金属は、厚膜導体用に市販されている金属銀粉末、または、より良好な分散のために有機物で被覆されている貴金属粉末であることが可能である。上記の金属材料の粒径は、本発明における技術的な有効性の観点から厳密には重要ではない。しかしながら、これらは、当然のように、通常はスクリーン印刷および/またはステンシル塗布といった適用される様式に適切なサイズ、ならびに、焼成条件に適切なサイズであるべきである。しかも、上述の金属粉末の粒径および形態学は、2mil〜10mil以上の厚さの非焼成セラミックテープ上へのスクリーン印刷および/またはステンシル塗布、複合体の積層条件、ならびに、焼成条件に適切であるべきであり、ここで、milは1/1000インチである。それ故、金属材料は、10ミクロン以下であるべきであり、好ましくは約5ミクロン未満であるべきである。実際問題として、金属の入手可能な粒径は、0.1〜10ミクロンもの小ささである。
【0042】
金属銀粉末は、フレーク状または非フレーク状のいずれかの形態学を有していることが可能である。非フレーク状の粉末は、不規則な形状であるか、または、球状であることが可能である。フレーク状の形態学とは、金属粉末が、走査電子顕微鏡検査によって測定される主たる形状がフレーク状であることを意味する。このようなフレーク状の銀は、およそ1m2/gの平均表面積およびおよそ99〜100重量%の固体含有量を有する。非フレーク状の銀粉末は、典型的には、0.1〜2.0m2/gの平均表面積およびおよそ99〜100重量%の固体含有量を有する。
【0043】
無機ガラスバインダー
本発明の導体組成物のガラス構成成分は、0〜10重量部レベルで、好ましくは、0〜5部レベルで高粘度のガラスである。上記の典型的なガラス組成物は「網目形成成分」としてのアルミノホウケイ酸ガラスであり、Ba、Mg、Zn、Sr、Na、Ti&Snイオンが「網目修飾カチオン」である。上記の特定のガラス組成物は、20.2% SiO2;2.8% Al23;20.4 B23;10.1 ZnO;19.0% BaO;3.1% MgO;3.3% Na2O;13.7% SrO;5.5% TiO2;1.9% SnO2から構成される。ガラス化学における偏差も、焼成された銀導体上へのガラスの堆積がガラスの粘度によって許容されない限り、本発明の範囲の内である。組成物へのガラスの添加は、要求される特定の焼成導体特性に応じて任意である。
【0044】
ガラスフリットの主な機能は以下のとおりである:ガラスフリットは、無機結晶性粒状物質の焼結を補助し、導体材料のLTCCセラミック中に存在する残留ガラスとの混合を最低限とし、ならびに、表面のめっきを妨げ得る導体の表面上へのガラスフィルムの堆積を最低限とする。ガラスバインダーの組成物への添加は、基板テープの化学および導体へのその相互作用に依存する。
【0045】
有機媒体
無機粒子は、機械的混合(例えばロールミル)によって不活性液体媒体(ベヒクル)と混合されて、スクリーン印刷および/またはステンシル塗布のために好適なコンシステンシーおよびレオロジーを有するペースト様組成物を形成する。後者は、LTCCグリーンテープ上に「厚膜」として従来の様式で印刷される。任意の不活性液体がベヒクルとして用いられ得る。増粘剤および/または安定化剤および/または他の一般的な添加剤を伴うまたは伴わない種々の有機液体がベヒクルとして用いられ得る。ベヒクルの唯一の特定の判断基準は、LTCCグリーンテープ中に存在する有機物と化学的に適合性でなければいけないことである。用いられることが可能である例示的な有機液体は、脂肪族アルコール、このようなアルコールのエステル、例えば酢酸塩およびプロピオネート、パイン油などのテルペン、テルピノール等、テキサノール等、エチルセルロースなどの樹脂のパイン油などの溶剤中の溶液、ならびに、エチレングリコールモノアセテートのモノブチルエーテルである。ベヒクルは、テープへの塗布の後の急速な硬化を促進させるために揮発性液体を含有していてもよい。
【0046】
本発明の一実施形態において、用いられる樹脂は、Hercules Incorporated,Wilmington Delaware発行の「Aqualon ethyl cellulose」小冊子に記載されているとおり、エトキシル含有量が45.0〜51.5%、好ましくはエトキシル含有量が48.0〜49.5%(N−タイプ)であり、無水グルコースユニット当たりのエトキシル基の置換度が2.22〜2.73、好ましくは2.46〜2.58(N−タイプ)であるエチルセルロース構造を有する。この小冊子はまた、セルロース分子の構造式に沿った完全な(54.88%)エトキシル置換1を伴うエチルセルロースを記載している。本発明の一実施形態において、溶剤ベヒクルは、化学組成2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを有するテキサノール;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールを伴うプロピオン酸,2−メチル−,モノエステル;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールを伴うイソ酪酸エステルである(「International Labor Organization」,ICSC:0629,2003年11月に列挙されている組成物)。RVT No5@10RPMを用いて計測した本発明の媒体の粘度(有機ベヒクル溶剤中に溶解した樹脂)は、5.0〜15.0PaS、または7.5〜10.5PaSである。用いられることが可能である他の溶剤は、JT Baker Inc,Phillipsburg,NJに記載の3−シクロヘキサン−1−メタノール、α,α,4−トリメチル−テルペンアルコールである。
【0047】
分散体中でのベヒクル対固形分の比は著しく変化する可能性があり、分散体が適用される様式に応じる。通常は、良好な被覆を達成するために、分散体は、補足的に、60〜98%固形分および40〜2%ベヒクルを含有するであろう。本発明の組成物は、当然のように、その有益な特徴に作用しない他の材料の添加によって変性され得る。このような変更は、明確に従来技術における技能の範囲内である。
【0048】
厚膜技術が、減圧下での、または、減圧を伴わない蒸発またはスパッタリングによる粒子の堆積を含む薄膜技術と対比される。厚膜技術は、Handbook of Materials and Processes for Electronics,C.A.Harper,Editor,McGraw−Hill,NY.,1970年,チャプター12において検討されている。
【0049】
厚膜配合物および適用
厚膜組成物は:
(a)金属銀粉末、被覆された貴金属粉末またはこれらの組み合わせの微細粒子70〜90重量%、
(b)任意選択により、最大焼成温度で高粘度を有する耐火性ガラスの微細粒子0〜5重量%、
(c)任意選択により、導体複合体の焼きしまり、焼結および粒子性超を制御可能な、無機金属酸化物および/または無機化合物/または有機金属0.1〜5重量%
(d)例えば、エトキシル含有量が45.0〜51.5%または48.0〜49.5%であると共に、無水グルコースユニット当たりのエトキシル基の置換度が、例えば、2.22〜2.73または2.46〜2.58であるエチルセルロース、ならびに、任意選択により、他の有機ベヒクル材料からなる有機媒体2〜20%
から構成されている。
【0050】
本発明の組成物の調製においては、粒状の無機固形分が有機キャリアと混合されると共に、3ロールミルなどの好適な器具で分散されて懸濁液が形成され、結果的に、粘度が、4秒−1のせん断速度で150〜250パスカル秒の範囲となるであろう組成物がもたらされる。
【0051】
以下の実施例においては、配合は以下の様式で実施した:ペーストの処方成分は、容器中で一緒に計量される。次いで、構成成分は激しく混合されて均質なブレンドが形成され;次いで、このブレンドが3ロールミルなどの分散器具に通されて、粒子の良好な分散が達成される。Hegmanゲージを用いて、ペースト中の粒子の分散状態が測定される。この機器は、一端側の鋼材のブロック中の深さが25ミクロン(1mil)のチャネルと、他端側のゼロ深さまでの傾斜部とから構成される。ブレードを用いてチャネルの全長に沿ってペーストが延ばされる。凝集物の直径がチャネルの深さよりも大きい場合、チャネルにスクラッチが現れることとなる。良好な分散体の一例は、典型的には、10〜18ミクロンの4番目のスクラッチ点をもたらす。>20ミクロンの4番目のスクラッチ計測および>10ミクロンの半チャネル計測は、分散が不十分な懸濁液/ペーストを示す。次いで、この組成物を、例えば500メッシュスクリーンを用いて選別して、大きな粒子が存在する場合にはこれを除去してもよい。
【0052】
次いで、組成物が基板に塗布される。例えば、「グリーンテープ」の適用の詳細が以下に記載されている。「グリーンテープ」は、ガラスおよびセラミック充填材微粒子、高分子バインダーならびに溶剤のスラリー分散体の薄層を、「テープキャスティング」の技術分野に記載されているとおり、1〜20mil、好ましくは2〜10milで可撓性基板にキャストし、このキャスト層を加熱して揮発性溶剤を除去することにより形成される。このテープは、シートに板抜きされるか、または、ロール形態とされる。このグリーンテープは、アルミナおよび他の耐火性セラミック基板などの従来の基板の代わりに、多層電子回路/デバイス用の絶縁性基板として用いられる。グリーンテープシートは、四隅にて位置決めホールで板抜きされ;および、機械的パンチを用いて導体の異なる層を接続するビアホールが形成される。ビアホールのサイズは、回路設計および要求される特性に応じて様々である。テープの導体トラック層間での回路の相互接続は、導電性インクをビアホール中にスクリーン印刷することにより実施される。
【0053】
本発明の導電ライン組成物が、グリーンテープのシートに、導体ライン用に、未乾燥の状態で約10〜30ミクロン、好ましくは15〜20ミクロンの厚さで、通常はスクリーン印刷方法によって塗布されると共に、ビアホールが同一のインクで同時に充填される。
【0054】
テープの各層に導体ラインおよびビアホールが回路設計に対して適切に印刷された後、個別の層が丁合いがとられ、積層され、単軸式または等方プレスダイ、および、テーププレス/積層技術の分野の他に記載されている技術を用いてプレスされる。積層ステップの各々において、印刷されるテープ層は、隣接する機能層の適切な導電ラインにバイアスが適当に接続されるよう、ならびに、サーマルバイアスの場合には、ビアの各々が次のものに適切に接続されることとなるよう、正確に位置決めされなければならないことは当業者に認識されるであろう。
【0055】
グリーンテープ組成物、および、無機バインダー、ならびに、金属の微細粒子の焼結を実現するための焼成は、典型的には、ポリマーを脱重合させ;および/または、約300〜600℃(約800〜950℃の最高温度期間)での、約5〜20分間の有機物を焼却させる温度プロファイルで、十分に通気されたベルトコンベヤ炉またはプログラムされた箱型炉において行われ、そして、過度の焼結および結晶成長、中間温度での不要な化学反応、または、過度に急速な冷却による基板/焼成セラミックテープの欠損を防止する制御された冷却サイクルが続く。焼成手法全体は、好ましくは、3.5〜5時間の時間にわたって延長されることとなり、一定の場合においては、一緒に積層されたグリーンテープの層の数および/またはグリーンテープ層の厚さに応じて、24時間以下またはそれ以上かかる可能性がある。
【0056】
導体の焼成厚は、固形分の割合、組成物が印刷されるスクリーンのタイプ、プリンタの設定、および、無機固形分の焼結の程度に応じて、約5〜約15ミクロンの範囲であることが可能である。ビア導体の厚さは、用いられるグリーンテープの厚さおよびビア組成物の焼結の程度に応じて様々である。バイアスのディンプリングおよびポスティングといった2つの主な欠陥を回避するために、組成物の粘度および固体含有量の選択が重要である。普通、高い固体含有量はポスティングをもたらす可能性があり、低い固体含有量はディンプリングをもたらすこととなる。
【0057】
本発明の導体組成物は、グリーンテープもしくはセラミック基板上に、または、他の厚膜上に、自動プリンタまたは手動プリンタを用いて従来の様式でフィルムとして印刷されることが可能である。
【0058】
2.LTCCへの無電解めっき
無電解めっきは、すべてのめっき表面に対する電気接続を必要とせずに回路設計が可能であるために、LTCC材料に対して電解めっきを超える利点を有する。これは、回路設計者に対して、回路サイズ、性能および製造効率の十分な考慮に対する柔軟性をもたらす。
【0059】
LTCC銀回路の無電解ニッケルおよび金めっきは、吸着、浸漬および自己触媒性めっきを含む多様なメカニズムによる金属の堆積を含む手順によって達成される。無電解ニッケルは周知であり、広く用いられている自己触媒性めっき方法である。堆積された金属ニッケルは、溶液からのニッケルイオンの表面上の金属ニッケルへの還元をもたらす反応を継続させるための触媒として作用する。このように、ニッケルは、予測可能な速度で厚さを増し続ける。
【0060】
無電解ニッケルめっき反応の最中、還元剤次亜リン酸ナトリウムに由来するリンもまたニッケルと一緒に堆積され、堆積物の6〜8重量%を構成する。これは中リン型の範囲内であり、LTCCニッケル−金無電解めっき用途について推奨されている。LTCCに対する無電解ニッケル厚は100〜200マイクロインチであるべきである。過剰なニッケル厚は、ブレージングおよび他のその後の加工に影響する可能性がある。厚さが過度に薄い場合、めっき間隙率に作用し、これにより、めっきされた金堆積物に影響を及ぼし得る。
【0061】
金属銀自体は、無電解ニッケルめっきの反応に対する触媒としては作用しない。無電解ニッケルを銀パターン上にめっきするために、これらは先ず活性化されなければならない。活性化は、触媒性金属を銀表面上に堆積させることにより達成される。典型的には、これは、希釈HCl中の塩化パラジウムなどの活性化剤溶液を用いて行われる。この活性化剤は、吸着メカニズムを用いてパラジウムを銀の上に堆積させる。
【0062】
パラジウムは、無電解ニッケルめっきに対して優れた触媒である。パラジウムは連続したフィルムとして均等には堆積されず、表面上に散在する部位として堆積される。一旦無電解めっき反応が開始されると、反応は、小さい電圧を銀表面全体にもたらし、無電解ニッケルが急速に連続層として堆積される。パラジウムの作用は、単にめっき反応を「開始」させるだけである。パラジウムは、無電解ニッケルの銀に対する接着に関してはほとんど関与しない。ニッケルは銀表面に直接的にめっきされる。
【0063】
無電解金はまた、1つの例外を除き、無電解ニッケルについて上述したものと同じ様式で作用する自己触媒性めっき方法である。ここでは、還元剤に由来するいかなる材料の共堆積物も存在しない。金は高純度(99.9+%)で堆積され、従って、ワイヤボンディングおよびハンダが必要とされる半導体パッケージング用途においてきわめて良好に作用する。典型的な要求される厚さは、20〜150マイクロインチ(μインチ)の範囲である。
【0064】
残念なことに、無電解金めっき反応はニッケルによっては触媒されず、従って、金の中間体層を、金属置換反応のための浸漬金めっき槽を用いることにより無電解ニッケル上にめっきする必要がある。これは活性化剤浴とは異なるが、しかしながら、浸漬金堆積は無電解ニッケル表面を完全に被覆するために、浸漬金堆積は、ニッケルおよび無電解金堆積物に対する接着をもたらす。このステップのいけるすべてのニッケル表面の被膜に対する主な理由は、無電解金めっき槽を保護するためである。無電解金めっき槽は、ニッケル汚染に対して不耐性である。浸漬金めっき堆積物は、典型的には、4〜8マイクロインチの厚さであり、ニッケル表面を完全にシールしている。浸漬金はまた、すべてのニッケル表面を保護およびシールしていると共に、酸化速度を低下させ、および、めっきされた部品の保管寿命を延長させる。
【0065】
以下の図は、本発明において用いられるLTCC上の銀に対するめっきのための典型的なプロセスフローを示す。洗浄ステップは汚染物(指紋、油、ワックス、汚れ等)をベース金属から除去し[3]、一方で、エッチングがベース金属の表面上から酸化物を除去するために行われて、活性化およびめっきされた堆積物の良好な接着のためにより良好な表面がもたらされる。
【0066】
【表2】

【0067】
めっき実験:
多くの異なるめっき溶液が商業的に用いられている。本発明は、LTCC基板を2種の一般的な金属系:(1)ニッケル−金および(2)ニッケル−パラジウム−金でめっきする。銀導体の場合、中性pHパラジウム触媒溶液が、基板からの銀導体の「リフト」を最低限とするために用いられる。めっきの基本および適用の詳細は「Electroless Plating−Fundamentals & Applications」,1990年,G.O.Mallory&J.B.Hajdu編,Williams Andrew Publishing/Noyesに記載されている。Uyemura International Corporation,240 Town Line Road,Southington,CT(めっき溶液の主要な世界規模のサプライヤー)が、化学、めっき技術&めっき条件に関する数々の技術データシートおよび記事を発行しており、「Electroless plating for LTCC Metallization」に最も注目すべきである。彼らは、めっき部品のボンディングにおける最良の性能のためには、LTCC基板上の銀導体を、中性pHでまたは中性pH近くで、77〜90℃の槽溶液温度でめっきすることを推奨している。300マイクロインチ以下の厚さがめっきされるニッケルに要求され、必要に応じて、金、または、パラジウムと金とが続く。
【0068】
ニッケル上への厚い無電解金および浸漬金めっきの少しの原子の両方が、めっき溶液製造業者によって推奨される方法である。
【0069】
2つの異なる市販されているめっき筐体:フラッシュ金または浸漬金(およそ4〜8マイクロインチの範囲の厚さを有するきわめて薄い金)をめっきするためのものと、無電解金(20〜150マイクロインチの様々な金厚)のためのものとが、pH、厚さおよび温度の推奨されるめっき条件を用いて、DUPONT 951 Green−テープベースのLTCCデバイスをめっきするために用いられる。浸漬めっきされた部品が、浸漬金の場合には62/36/2(Pb/Sn/Ag)ハンダを用いて、ならびに、無電解金の場合には1&2mil金ワイヤボンディングおよび金−錫ブレージングを用いて、接着性について評価される。ハンダされた部品は、Instron器具を用いてワイヤボンディング強度についてテストされる。無電解めっきされた金部品は、(1)金ワイヤボンディングおよび信頼性について、(2)金−錫(80/20)ブレージングおよび信頼性について、ならびに、(3)ワイヤ−剥離62/36/2(Pb/Sn/Ag)ハンダ接着性および信頼性について評価される。
【0070】
めっき比較例
銀配合物1、2および3の各々の外部金属接点を有するDUPONT 951 Green−テープを用いてLTCCアセンブリを準備し、次いで、焼成した。焼成したアセンブリを、Uyemuraの条件に準拠して、中性におよそ近いpHおよび77〜90℃の温度でニッケルで無電解めっきして、およそ300マイクロインチのニッケルを金属接点上に堆積させた。いくつかの焼成したアセンブリをUyemuraの条件に準拠しておよそ20〜150マイクロインチの金でさらに無電解めっきし、および、いくつかは、金で浸漬めっきした。本発明のpHなどのめっき条件は、Uyemuraのものとは異なっている。
【実施例】
【0071】
銀組成物:
3種の典型的な銀配合物が列挙されている(重量%)。
【0072】
【表3】

【0073】
めっき実施例1:浸漬金めっき
銀配合物1、2および3の各々の外部金属接点を有するDUPONT 951 Green−テープを用いてLTCCアセンブリを準備し、次いで、焼成した。焼成したアセンブリを、約4〜12のpHおよび77〜90℃の温度でニッケルで無電解めっきした。アセンブリを10、20または30分間でめっきして、堆積されるニッケルの厚さを異ならせた。次いで、アセンブリを浸漬めっきして金を堆積させた。1mil径の金ワイヤを、めっきされた金属接点に、62重量%鉛、36%錫、2%銀から構成されるハンダでハンダ付けした。以下の表3は、すべてのサンプルが十分な接着性を有していることを示している。
【0074】
【表4】

【0075】
めっき実施例2:無電解金めっき
銀配合物1および3の各々の外部金属接点を有するDUPONT 951 Green−テープを用いてLTCCアセンブリを準備し、次いで、焼成した。焼成したアセンブリを、4〜12のpHおよび77〜90℃の温度でニッケルで無電解めっきして、およそ160マイクロインチのニッケルを堆積させた。アセンブリを4〜12のpHおよび77〜90℃の温度で金で無電解めっきして、20〜150マイクロインチの金を堆積させ、30〜150マイクロインチでめっきされた金厚が好ましく評価される。
【0076】
1または2mil径の金ワイヤを、めっきされた金属接点にワイヤボンディングした。結果は、すべてのサンプルが十分な接着性を有することを示す。すべての部品が金ワイヤボンディングおよび80Au/20Snブレージングについてテストされる。部品のブレージングは、電子パッケージアセンブリに必要である。
【0077】
めっきされた金への金ワイヤボンディングおよび無電解めっきされた金の長期の信頼性
標準的なPalomar 2460−V Bonderおよび厚さ0.001インチの99.99%金ワイヤを用いてボンディングを評価した。これらのワイヤボンディングアセスメントについて、1600本のワイヤをボンディングし、30本を1群として引っ張った。この開発プログラムの初期においては、2mil Auワイヤをテストして、銀導体の基板へのボンディング、および、金めっきの導体へのボンディングの理解を補助した。これらの結果もまた良好であった;38.6グラムは、ボンディングリフトまたは金属リフトを伴わない引張り強度を意味する。
【0078】
ワイヤボンディング性能に対する信頼性を、150℃〜1000時間でのサーマルエージング、85%RHおよび85℃の環境条件への1000時間以内の露出、ならびに、1000サイクルの2時間−40℃/+125℃スケジュールを用いた熱サイクルを含む加速寿命試験により測定した。ペーストロットおよびテープロットの数々の組み合わせを用いた複数セットのテスト部品を分析に用いて、再現性の確保を補助した。
【0079】
より大きい厚さでめっきされた無電解金で得られたワイヤボンディングデータは、最小のサーマルエージング露出後に周期的なボンディングリフトを示したことに注目することも重要である。従って、めっきされた金の厚さの透明なプロセス窓を設けた。めっきされた金の厚さが40〜80μインチである場合は、ボンディングリフトまたは金属リフトは観察されなかった。典型的な破壊形態は、第1または第2のボンディングでのワイヤの破断またはヒールの破壊であった。異なる銀組成物上のより厚くめっきされた金については表4中に、および、数々のより薄くめっきされた金については表5中に結果が示されている。
【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
めっきされた金への金−錫合金ブレージングおよび無電解めっき金の長期信頼性
性能は、80Au/20Snの母材を有するKovarピンを用いた標準的なピンプル接着法により測定した。(PGA)ピングリッドアレイパターンは、0.100インチピッチの0.070インチの印刷されたパッドから構成される。ピンまたはネイルヘッド径は0.025インチであり、およそ0.018インチのシャンク径および0.150インチのリード長を有する。グラファイトブレージング取付け具は、金属めっきされたパッドがブレージングプロファイルの最中にネイルヘッドに接触しているよう位置される。図中のブレージング温度プロファイルは、5分間の300℃のピーク温度で最適化した。これは、DuPont(商標)Green Tape(商標)951低温同時焼成セラミック(LTCC)上の共焼成フリットレス銀組成物に最適なプル強度値をもたらす。ブレージングおよび長期の信頼性のプル強度が図に示されている。これは、めっきおよびブレージングされた部品は、1000サーマルショックサイクル(−40℃/+125℃、60分サイクル)後に10ポンドを超えるプル強度値を達成することが可能であることを示す。ワイヤボンディング作業とは異なり、ブレージングを、より過酷な1時間のサーマルショックサイクルを用いてテストした。およそ40〜60μインチの薄いめっきAu厚では、1000サーマルショックサイクル後の平均プル強度は16.1ポンドであった。150℃でのサーマルエージングデータは、評価されるめっきされたAu厚に関わらず大きい値を示す。15ポンドを超える値が達成される場合、欠損、および、実際のピン破壊が生じ得る。ニッケルと金との間、または、銀とニッケルとの間の欠損は、かなり稀ではあるが生じ、3〜8ポンドの範囲であることが可能である。
【0083】
表6&7中、データは、より薄くめっきされた金は、エージングの後にわずかに高いプル強度値をもたらすことを示す。典型的な初期破壊形態は、パッドによるセラミックの引張りを示す。エージングの進行に伴い、より進行した破壊形態は、セラミックからのパッドのリフトを示す。表7中のデータはまた、より厚くめっきされた金サンプルの場合では、500サーマルサイクル後に値が劇的に低下したことを示す。また、銀サンプルが、めっき前に30分間ベルトプロファイルで6回以下再焼成され場合、めっきされたサンプルについて同様の結果が注目される。
【0084】
【表7】

【0085】
【表8】

【0086】
浸漬ハンダ接着のワイヤ−剥離テストおよび無電解めっき金の長期の信頼性
浸漬ハンダによるワイヤ剥離接着もまたニッケル−金めっき銀サンプルで評価した。このテストは、ASTM規格法に基づいており;80milパッドおよび20番AWGスズめっきされた銅ワイヤが用いられる。Sn62/Pb36/Ag2ハンダ、220℃、10秒間の浸漬での浸漬ハンダの後、ワイヤがパッドに近接して90度の角度で曲げられ、次いで、Instronデバイスを用いて引っ張られる。40&60μインチ厚のめっきされた金を、すべての3種の配合物について数々の金厚さに対して評価した。表8に、150℃でのエージング、85℃での85%RH下でのエージングおよびサーマルサイクル後のすべての3種の銀組成物について結果が示されている。
【0087】
【表9】

【0088】
結果は、40および60マイクロインチ厚の金でめっきされたすべての組成物が、(1)150℃での1000時間のエージング(2)85%相対湿度、85℃での1000時間、ならびに、(3)−40℃〜+120℃での1000時間のサーマルサイクルでの部品のエージングに基づいて、許容可能な長期の信頼性を有していることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.4〜12、好ましくは4〜9のpHで、LTCCデバイスの銀含有金属製外部電気端子にニッケル含有金属を無電解めっきするステップ
b.金含有金属を前記ニッケル含有金属にめっきするステップであって、前記めっきステップが無電解めっきおよび浸漬めっきから選択されるステップ
の逐次的なステップを含むLTCCデバイスに金属をめっきする方法。
【請求項2】
重量パーセント基準で、75〜90%の異なるサイズおよび形状の銀粉末、任意選択により0.5〜4%の強耐火ガラス、ならびに、残りの有機媒体から本質的に構成される銀ペースト組成物。
【請求項3】
前記ガラスが、Zn、Ba、Mg、Sr、Sn、Ti、Naイオンを「網目修飾カチオン」として有する「網目形成成分」としてのアルミノホウケイ酸ガラスである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ガラスが、20.2% SiO2;2.8% Al23;20.4 B23;10.1 ZnO;19.0% BaO;3.1% MgO;3.3% Na2O;13.7% SrO;5.5% TiO2;および1.9% SnO2を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
100〜300マイクロインチ、好ましくは100〜150マイクロインチのニッケルのめっき厚さ、ならびに、この厚さのニッケル上の20〜100マイクロインチ、好ましくは20〜60マイクロインチの無電解金のめっき厚さ。
【請求項6】
4〜12のpH範囲のめっき槽条件。

【公表番号】特表2012−504706(P2012−504706A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530258(P2011−530258)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059311
【国際公開番号】WO2010/040016
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】