説明

ニット地を製造するための装置

【課題】 ニット地を製造するための装置内のドラフト装置を改善すること及びそこでの送出ローラー対と共に回転する空気流による繊維ストランドの乱れを避けることである。
【解決手段】 送出ローラー対と共に回転する空気流を送出ニップラインの領域から離れるように保つための装置が送出ローラー対にきわめて接近して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は編針と少なくとも一つの編成位置を含む編成装置によりニット地を製造するための装置に関し、この装置は繊維ストランドをドラフトするための編成位置の上流に配置された少なくとも一つのドラフト装置を含み、前記ドラフト装置は送出ニップラインを形成する送出ローラー対を含む。
【背景技術】
【0002】
この形式の装置は国際特許出願WO 2004/079068 A2で従来技術である。一般的に慣例であるように、ニット地は編機に供給された糸から製造されず、むしろドラフト装置でドラフトされた繊維ストランドから直接編まれる。その利点は、殆ど平行な繊維を持つ本質的に撚りなしの繊維ストランドの編成のため、非常に高度の着心地を持つ非常に柔らかいニット地が製造されることである。このニット地の製造は、標準的な糸製造工程の中間段階、すなわち紡績、巻取り、及びもし必要なら巻き返しが省略されるので、非常に効果的である。
【0003】
繊維ストランドはここでは撚りなしで、編成位置の編針に直接供給されるか、またはドラフト装置が編成位置に対してある距離に配置されているとき、繊維ストランドは撚り装置によりある引張強度を与えられているかのいずれかである。この引張強度は編成位置への輸送を可能とする。編成位置への輸送のための繊維ストランドは特に高い引張強度を持つ必要がないので、繊維ストランドの低水準の撚りで十分である。これはエアジェットにより繊維ストランドに非常に効果的に付与されることができる。繊維ストランドが編成装置でニット地に編まれるとき、ニット地の強度はそのとき個々の編目の繊維ストランドの編組により確保される。繊維ストランドの撚りはもはや必要なく、それどころか標準ニット地に存在する糸撚りはより“硬い触感”を完成地にもたらす。特に有利なのは仮撚り装置の利用である。というのも繊維ストランドの輸送安定性のための編成工程時に付与される撚りは編成位置で再度消失するからである。また、ドラフト装置内の繊維ストランドに補助糸、例えばエラステーン糸が供給されることが規定されることができ、この補助糸は繊維ストランドのドラフト装置から編成位置への輸送を助け、さらに製造されたニット地の機能を特に改善することができる。記載された工程はまた“直接編成”または“紡績編成”と呼ばれる。
【0004】
この形式の装置内のドラフト装置は比較的高い送出速度で機能し、そこでは周辺空気は高い周速で回転する送出ローラーにより同伴され、従って送出ローラーの周囲方向の空気流を起こし、それは送出ニップラインにより破られる。二つの送出ローラー間のくさび形隙間内に空気は連続的に供給され、それは一方では軸方向に両側方に逃げ、他方では来入する繊維ストランドの輸送方向に対し反対方向に流れることができる。ここで発生する空気渦は繊維流中に乱れを導き、ドラフトされた繊維ストランドの高水準の不均一を導く。ニット地の品質は繊維ストランドの不均一のため低下する。通常利用される送出ローラー対の溝付き下部ローラーは望んでいない空気流の発生に大きく寄与する。
【0005】
有効なドイツ公開特許出願DE 4132919 A1から、紡績機のためのドラフト装置が既知であり、そこでは送出ローラーに対し部分ケーシングが設けられ、前記部分ケーシングの機能は送出ニップラインの上流のくさび形隙間内に配置されたコンデンサーに関して、ローラーに同伴された空気が繊維ストランドに作用するのを完全にまたは少なくとも最小限度に防ぐことであり、一方で繊維ストランドが同時に最適に案内されるのを確実とする。吸引流のための溝はここでは空気流の影響力を増やすためにケーシングに設けられることができる。
【0006】
同様に有効なドイツ公開特許出願DE 10315933 A1から、紡績縮充機のための二重エプロンドラフト装置が既知であり、そこでは送出ローラー対と共に回転する空気流を送出ニップラインの領域から離れるように保つための装置が設けられている。記載されたドラフト装置は送出ローラー対の上流に配置されたエプロン対を含み、それが繊維ストランドを送出ニップラインの領域内に案内し、それと一緒にくさび形隙間を形成する。送出ローラー対と共に回転する空気流を離れるように保つための装置が、送出ニップラインとエプロン対により形成されるくさび形隙間の外側であるが送出ローラー対とエプロン対にきわめて接近して配置されることが規定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はニット地を製造するための装置内のドラフト装置を改善すること及びそこでの送出ローラー対と共に回転する空気流による繊維ストランドの乱れを避けることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は本発明によれば送出ローラー対と共に回転する空気流を送出ニップラインの領域から離れるように保つための装置が送出ローラー対にきわめて接近して配置されることにより達成された。
【0009】
紡績編成のための装置において、本発明の特徴はまた、回転送出ローラー対の高い周速のために起こる空気流に起因する繊維ストランドの構成の欠陥を防ぐことができる。回転空気流を離れるように保つ装置はここでは有利には空気流が送出ニップラインの領域から離れるように保たれるような方式で、しかし繊維ストランドのための送出ローラー対の上流に配置された案内装置、例えばコンデンサーまたは案内エプロンの機能と効果をそこなうことがないように、配置される。
【0010】
ここではその装置は送出ローラー対と共に回転する空気流を送出ニップラインの領域から離れるように純粋に空気圧的に保つための吸引装置を含むことが規定されることができる。純粋に空気圧的に機能しかつ送出ローラー対と共に回転する空気流を“吸引し尽す”装置はそれらが送出ローラー対を取巻く空気がかなりのダスト及び屑繊維を含む雰囲気条件であっても確実に機能するという利点を持つ。この形式の空気圧式装置は事実上それらが送出ニップラインの上流の重大な領域に吸引流を発生するという原理に従って作動し、この吸引流は送出ローラー対と共に回転する空気流に対して反対方向に流れ、有利には同じオーダーの大きさである。吸引装置のマウスピースはここでは有利には送出ローラー対の周囲に対して吸引装置のダストまたは屑繊維による詰まりが効果的に防がれるような距離に配置される。かかる実施態様の場合、吸引装置を支配する減圧が送出ローラー対の回転または周速に適合されるとき更に有利である。これは吸引される空気の速度が繊維ストランドの欠陥が異なる送出速度であっても常に最適に防がれるような方式で調整されることを可能とする。
【0011】
しかし、送出ローラー対と共に回転する空気流を離れるように保つための純粋に空気圧的に機能する装置はそれらが高い電力消費を持つという不利を持つ。というのも比較的高い水準の低圧が手近にあらねばならず、かつまた比較的多量の空気が輸送されねばならないからである。それゆえ、回転空気流を離れるように保つための装置は機能が少なくとも部分的に機械的であり、従って減少した電力消費に寄与する異なる実施態様は有利である。機械的遮蔽部品を持つこの形式の装置は以下により詳細に述べられる。
【0012】
エプロン対が送出ローラー対の上流に配置されており、前記エプロン対が送出ニップラインの領域内の繊維ストランドを案内しかつそれとくさび形隙間を形成する、一実施態様では、送出ローラー対と共に回転する空気流を離れるように保つ装置が、このくさび形隙間の外側ではあるが送出ローラー対とエプロン対に直接接近して配置されることは有利である。エプロン対を離れる繊維ストランドは特に欠陥を発生する影響を受け易く、従って繊維ストランドが案内なしに進む距離が非常に短いように繊維ストランドをエプロンを通してできるだけ送出ニップラインに密接して案内することが有利である。上記の方策を用いることにより、装置が送出ニップラインから遠くになり過ぎないように離されること、従って抑制された空気流が再び形成されることを防ぐことが確保される。空気流を離れるように保つ装置が送出ローラー対のローラーの略30°から60°の周辺領域内に位置するとき有利であることが確立された。この角度はそれぞれ送出ニップラインから回転方向に対して反対方向に測定される。
【0013】
有利な方策を用いて、送出ローラー対の少なくとも一つのローラーでの空気流の境界層を中断するための手段を装置に与える試みが今やなされる。このような方策は上述のように、特に送出ローラー対の下部ローラーで重要である。空気流の境界層はその手段がそれぞれのローラーに対し0.2mm未満の近くに、有利には0.05mm未満の近くに置かれるとき中断されることができる。本発明の特徴は非常に異なる方式で実現されることができる。
【0014】
各実施態様において、一方では編成位置に割り当てられる各ドラフト装置に空気流の境界層を中断するための別個の手段が設けられることが規定されることができる。これは各ドラフト装置の手段が最適に調整されること及びもし必要なら起動されることができるという利点を持つ。他方で、必要な要素の数並びに組立ての複雑性が減少されるように、手段を多数の隣接ドラフト装置に沿って延ばすことも有利であることができる。
【0015】
一実施態様において、手段は割り当てられたローラーの周囲に対してある距離にあること、有利には調整可能であることが規定される。これらの手段は例えば密封隙間を持つケーシングを含むことができる。この密封隙間はミリメートルの数10分の1に、有利にはもし必要ならミリメートルの数百分の1にさえ減らすことができる。半径方向密封隙間の増大した減少により、望ましくない空気流は少なくなる。
【0016】
更なる実施態様において、手段は割り当てられたローラーの周囲と接触されることが規定されることができる。これは空気流の境界層が確実に破壊されるので、必然的に最大の効果をもたらす。有利には、割り当てられたローラーと接触する唇状物またはたわみ可能に調整される案内レールがここに含まれることができる。この手段はまた、これに代えてそれぞれのローラーに置かれたブラシを含むことができる。ローラーと接触する細い剛毛ブラシは特に送出ローラー対の上部ローラーのために有利である。
【0017】
送出ローラー対と接触する手段により、望ましくない空気流の境界層が最も効果的に中断されることが示された。しかし、この特別な方法は送出ローラー対のローラーに粘着し、従ってそれらと共に回転する繊維が望ましくない方式で固着するという不利を持つ。この理由のため、本発明の更なる実施態様において上述の手段が吸引装置を含むとき有利である。しかし、回転空気流の境界層を排除する目的のためにそれ自身の上に付与されるのに十分な程力強くない吸引装置が上述手段の遮蔽効果を助けかつそこにごみ粒子が沈降するのを防ぐために全ての変形例で付与されることができる。上述の機械的に作用する手段との組合せのため、吸引装置のために必要な電力消費の水準は容認できる。
【0018】
本発明の更なる実施態様において、ドラフト工程の中断の場合にこれらの手段が割り当てられたローラーから離れるように移動可能であるとき有利である。それにより、つかまれるどのような繊維も解放されることができ、従って繊維の絶えず増大する蓄積を防ぐ。これは吸引装置との組合せで特に効果的である。上述の手段の割り当てられたローラーから離れる方向の移動可能性は種々の方式で、例えば線状上昇移動によりまたは旋回点周りの旋回運動により、実現されることができる。境界層を中断する手段はここでは有利にはばね手段に対して作用するベルトによりそれぞれのローラーから離れるように移動可能にすることができる。
【0019】
本発明のこれらの及び更なる目的、特徴及び利点は殆ど概略的な添付図面に関してなされるその以下の詳細な説明からより容易に明らかとなるであろう。図面において:
図1はドラフト装置及び針シリンダーを含む紡績編成のための装置の非常に概略的な平面図を示し、
図2は紡績編成のための装置の部分断面側面図を示し、そこではドラフト装置及び編成装置を通しての加工時の繊維ストランドの過程が容易に識別され、
図3は図2に示されたドラフト装置の拡大図を示し、そこでは空気流を離れるように保つための手段が設けられており、前記手段とそれぞれのローラーの周囲と間にある距離があり、
図4はそれぞれのローラーと接触する手段を含むドラフト装置の実施態様の図3と同様の図を示し、
図5は図2に示された送出ローラー対の拡大図を示し、そこでは空気流を離れるように保つための純粋に空気圧的に作用する装置が設けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、ニット地が製造され、一方で標準的な糸製造の長い工程を省く、紡績編成または直接編成のための装置を非常に概略的な詳細で示す。この装置は本質的な要素部品として標準的な平坦または円形編機を含み、更に図1には円形編機の針シリンダー1が示されている。一般的に既知の編成工程と対照的に、ニット地は針シリンダー1に供給される糸から作られず、むしろ針シリンダー1に直ぐ接近したドラフト装置3で製造される、大きな範囲で撚りなしの繊維ストランド2から作られる。示された実施態様では、一点鎖線により示された12個の繊維ストランド2のためのドラフト装置3がドラフト装置組立体4に組合されている。簡略化の理由のため、ドラフト組立体4から針シリンダー1まで走る二つの繊維ストランド2が、すなわち二つの外部繊維ストランド2だけが示されている。
【0021】
各ドラフト装置3はケンス6から取られる粗紡またはスライバー5の形の繊維材料を供給される。簡略化の理由のため、再度、二つの外部スライバー5の経路のみが示されている。示されていない方式で、多数のドラフト装置組立体4、例えば四つが針シリンダー1の周囲に配置されるとき、針シリンダー1が四方一面に繊維ストランド2を供給されることができるので、有利である。
【0022】
図2はケンス6からドラフト装置3を通して針シリンダー1までのスライバー5の経路を示す。スライバー5はここでは一つまたは多数の偏向ローラー7の上を引き上げられ、繊維輸送方向Aでドラフト装置3に供給され、そこで希望の繊度にドラフトされる。
【0023】
ドラフト装置3は既知の方式で複数のローラー対からなり、そこでは各対は駆動下部ローラー8,10,12並びにそれらにたわみ可能に押圧された上部ローラー9,11,13を含む。一つまたはそれ以上のローラー対はエプロンローラー対10,11として設計されることができ、それらに対してエプロン14及び15が既知の方式で下部エプロン14及び上部エプロン15として割り当てられることができる。三シリンダードラフト装置として示されたドラフト装置3の実施態様に代えて、四または五シリンダードラフト装置もうまく利用されることができる。下部ローラー8,10及び12はここでは単一モーターにより駆動されることができまたはジョイント駆動モーター16に適当な歯付きベルトまたはギヤー伝動装置を介して連結されることができる。さらに、一つのドラフト組立体4の下部ローラー8,10,12を図1に示されるような連続的なかつ連帯的に駆動される下部シリンダーとして設計することが有利でありうる。繊維輸送方向Aに回転速度を増加するその駆動下部ローラー8,10,12により、ドラフト装置3は希望の繊度の繊維ストランド2をその出口で製造し、それは編成装置18の針シリンダー1上の編成位置17に供給される。
【0024】
ここでは編成装置18は駆動モーター19を含み、駆動モーター19は回転方向Bに編針20を含む針シリンダー1を駆動することができる。駆動モーター16及び19は制御装置25に連結され、それにより起動されることができる。
【0025】
一つまたはそれ以上の撚り装置21はドラフト装置3の前方ローラー対12,13と編成位置17の間にそれらの間の距離に依存して配置されることができ、これらの撚り装置21は本質的に平行な繊維を含む繊維ストランド2に編成位置17に輸送するための十分な引張強度を与える。ここでは繊維ストランド2に仮撚りを与えるのが有利である。というのもこれは編成位置17で再度ほどかれ、従って互いに本質的に平行な位置に戻された繊維が編針20により製造されたニット地とからみ合わされるからである。この工程は、手ざわりが非常に柔らかで、高度の着心地を持つニット地をもたらす。機械的に作動する撚りチューブまたは空気圧式に作動する撚りノズル22が撚り装置21として設けられることができる。図示の実施態様では、二つの紡績チューブ23が設けられ、それぞれがそれらの開口部に一つの撚りノズル22を持つ。
【0026】
加えて、補助糸24がドラフト装置3の送出ローラー対12,13の上流または下流に供給されることが規定されることができ、それが繊維ストランド2のドラフト装置3から編成位置17への輸送を助ける。この補助糸24は例えばエラステーンフィラメントであることができ、それは製造されたニット地の性質を改善することができる。
【0027】
吸引チューブ26は送出ローラー対12,13と撚り装置21の間に配置され、この吸引チューブ26は図示されていない方式で減圧源に連結されている。吸引チューブ26は繊維ストランド2がもはや編成位置17に順当に輸送されないとき送出ローラー対12,13から出る繊維材料を吸い出す。
【0028】
より詳細に以下に述べられるように、本発明によれば送出ローラー対12,13と共に回転する空気流を送出ローラー対12,13により形成される送出ニップライン29の領域から離れるように保つ装置が図2に示されるように送出ローラー対12,13に直ぐ接近して付与されることが規定される。これらの装置はここでは有利には下部ローラー12への下部エプロン14の及び上部ローラー13への上部エプロン15の挿入くさび形隙間内の27と28により示された場所で付与される。
【0029】
次の図3及び4は本発明による手段がこれらの挿入くさび形隙間27及び28にどのように有利に付与されることができるかを示す実施態様を概略的に示したドラフト装置3を拡大寸法で示す。駆動下部ローラー8,10及び12に対してたわみ可能に押圧された上部ローラー9,11及び13を持つこれらの下部ローラーは再度、エプロン14及び15のように容易に同一視可能である。送出ローラー対と共に回転する空気流は矢印Cにより示される。
【0030】
偏向装置30,31を持つエプロン対14,15がそれぞれのローラー12,13の円周32及び33にできるだけ接近して置かれるとき、編成位置17に送出される繊維ストランド2の品質及び均一性に関して有利であることが証明された。これは必ずしも送出ローラー対12,13と共に回転する空気流Cの中断をもたらさないが、ドラフト装置3でドラフトされる繊維ストランド34のエプロン対14,15からのその出口からローラー12,13の周囲32または33への経路を繊維ストランド34が案内なしにほんの非常に短い距離で送出ニップライン29の上流にあるというような範囲に減らすことが可能である。これは特に高いドラフトに対し非常に重要なことである。
【0031】
既に上述したように、回転空気流Cが送出ニップライン29で中断されるとき、このようにしてこの重大な領域内に繊維ストランド34の流れを乱す空気渦を起こす。エプロン対14,15と送出ニップライン29との間のくさび形隙間35はここでは特に重大である。というのもここでは繊維ストランド34は既に非常に細い繊維ストランドにドラフトされており、従って対応して低水準の強さを持つからである。ローラー12,13と共に回転する空気流Cがくさび形隙間35の領域内で送出ローラー12,13の軸方向に離れるように流れるのをかつこれにより繊維ストランド34が側方に吹き飛ぶのをまたはそれを繊維輸送方向Aに対して反対方向に渦巻くのさえ防がれることが必須である。
【0032】
エプロン対14,15のそれぞれの送出ローラー対12,13の周囲32,33への接近配置を妨げないために、他方でそれにもかかわらず望ましくない空気渦を避けるために、装置27,28は、くさび形隙間35の外側ではあるが送出ローラー対12,13及びエプロン対14,15に直ぐ接近して配置される。ここで付与される手段は、実行可能であれば、少なくとも一つのローラー12または13で空気流Cの境界層を破壊すべきである。
【0033】
図3によれば、案内遮蔽36,37が送出ローラー対12,13の下部ローラー12と上部ローラー13に付与され、これらの案内遮蔽36,37とそれぞれのローラー12,13の周囲32,33の間に非常に狭い密封隙間38,39があり、これらの隙間は0.2mm未満の大きさであり、好ましくは0.05mm未満でさえありうる。加えて、これらの案内遮蔽36及び37は下部案内遮蔽36の場合に示されているように、吸引装置40に連結されることができる。かかる吸引は一方では望ましくない空気流Cの境界層の排除を助けることができ、かつ他方ではローラー12または13と共に回転するどのような屑繊維も同時に吸い出されることができ、送出ニップライン29に再度供給されることがないことを確実とする。
【0034】
隣接ドラフト装置3がどのように配置されているかにより、かつ下部ローラー8,10,12の駆動概念により、編成位置17に割り当てられた各ドラフト装置3に別個の案内遮蔽36,37が設けられること、または案内遮蔽36,37が多数の隣接ドラフト装置3に沿って延びることのいずれかが規定されることができる。もし案内遮蔽が多数のドラフト装置に沿って延びるなら、吸引装置40はまた、多数の隣接ドラフト装置に沿って延びる溝として設計されることができる。
【0035】
密封隙間38,39内の繊維蓄積を避けるために、案内遮蔽36,37が編成工程に中断があるとき割り当てられたローラー12,13から離れるようにわずかな距離だけ移動可能であることが規定されることができる。移動可能機能を組込んだ実施態様は案内遮蔽36に対して例示されている。ばね手段41に対して作用するベルト42により、案内遮蔽36は送出ローラー12から移動方向Dに送出ローラー12から離れるように数ミリメートルの距離に離れるように移動されることができる。調整可能なストッパー43は有利には案内遮蔽36に配置され、これが案内遮蔽36をその最初の位置に復元し、ベルト42が負荷を除かれるとき密封隙間38の設定幅を回復する。
【0036】
図4によれば、ローラー12及び13と共に回転する空気流Cの境界層を中断するための手段がその周囲32及び33上に配置されることが規定されている。下部ローラー12の場合、弾力のある調整可能なレール44が設けられており、それはまた、吸引装置45に連結されている。レール44はここでは支点として作用する軸46上に支持されることができ、旋回方向Eにローラー12から離れるように移動可能であることができる。つかまれた繊維のいずれも解放され、吸い出されることができる。対照的に、上部ローラー13の場合、非常に細い剛毛を含むブラシ47が設けられている。それはそれに代えて両ローラー12及び13に対し上述の手段44または47のそれぞれが利用されることができることを規定されることができる。
【0037】
送出ローラー対12,13と共に回転する空気流Cを送出ニップライン29の領域から離れるように純粋に空気圧式に保つための送出ローラー対12,13に配置された装置49が図5に例示されている。この装置49は吸引装置50を含むことができ、それは例えば吸引溝または吸引チューブ51のマウスピースにより形成される。吸引装置50は減圧源に連結され、送出ニップライン29の上流の領域内の下部ローラー12と共に回転する空気流Cに対して反対方向に向いた矢印Fにより示された吸引流を発生する。吸引流Fの速度を、流れFとCが送出ニップライン29の上流の領域内で互いに相殺し、かくして繊維ストランド34の乱れを防ぐような方式で、送出ローラー対12,13の周速に適合させることが特に有利である。吸引装置50の減圧が調整可能であるとき、そのとき吸引流Fが送出ローラー対12,13の変動速度に起因する変動空気流Cに合うように適合されることができるので、有利であり、このようにして繊維ストランド34は常に最適に保護されることが確保される。吸引チューブ51のマウスピースと送出ローラー12の周囲32との間の距離52は有利にはそれがダストまたは屑繊維により詰まらないような寸法のものである。
【0038】
全ての上述の装置は送出ローラー対12,13の下部ローラー12並びに上部ローラー13に割り当てられることができること、及びこれらの手段は互いに組合せられるかまたは置き換え可能であることは特別に述べられる。手近に利用するために最も適当な装置はそのとき試験により確立されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ドラフト装置及び針シリンダーを含む紡績編成のための装置の非常に概略的な平面図を示す。
【図2】紡績編成のための装置の部分断面側面図を示す。
【図3】図2に示されたドラフト装置の拡大図を示す。
【図4】それぞれのローラーと接触する手段を含むドラフト装置の実施態様の図3と同様の図を示す。
【図5】図2に示された送出ローラー対の拡大図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編針(20)と少なくとも一つの編成位置(17)を含む編成装置(18)によりニット地を製造するための装置であって、その装置が繊維ストランド(34)をドラフトするための編成位置(17)の上流に配置された少なくとも一つのドラフト装置(3)を含み、前記ドラフト装置(3)が送出ニップライン(29)を形成する送出ローラー対(12,13)を含むものにおいて、送出ローラー対(12,13)と共に回転する空気流(C)を送出ニップライン(29)の領域から離れるように保つための装置(27,28,49)が送出ローラー対(12,13)に直ぐ接近して配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
装置(49)が送出ローラー対(12,13)と共に回転する空気流(C)を送出ニップライン(29)の領域から離れるように純粋に空気圧的に保つための吸引装置(50)を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
送出ニップライン(29)の領域内の繊維ストランド(34)を案内するエプロン対(14,15)が送出ローラー対(12,13)の上流に配置されており、更にエプロン対(14,15)が前記送出ローラー対(12,13)と共にくさび形隙間(35)を形成すること、及び装置(27,28)が、このくさび形隙間(35)の外側であるが、それにもかかわらず送出ローラー対(12,13)とエプロン対(14,15)に直ぐ接近して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
装置(27,28)が送出ローラー対(12,13)の少なくとも一つのローラー(12;13)に空気流(C)の境界層を中断するための手段(36,37,40;44,45,47)を備えていることを特徴とする請求項1または3に記載の装置。
【請求項5】
別個の手段(36,37,40;44,45,47)が編成位置(17)に配置された各ドラフト装置(3)に設けられることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
手段(36,37,40;44,45,47)が多数の隣接ドラフト装置(3)に沿って延びることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
手段(44;47)が割り当てられたローラー(12;13)の周囲(32;33)と接触することを特徴とする請求項4から6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
有利には調整可能な、距離が手段(36;37)と割り当てられたローラー(12;13)の周囲(32;33)との間にあることを特徴とする請求項4から7のいずれか一つに記載の装置。
【請求項9】
手段が吸引装置(40;45)を含むことを特徴とする請求項4から8のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
編成工程の中断の場合に、手段(36,37,40;44,45,47)が割り当てられたローラー(12;13)から離れるようにわずかな距離移動可能であることを特徴とする請求項4から9のいずれか一つに記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−70795(P2007−70795A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229131(P2006−229131)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(506290730)シュピンデルファブリク・ズッセン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (4)
【Fターム(参考)】