説明

ニューロキニン受容体拮抗薬及びシクロデキストリンからなる医薬組成物、ならびに注射部位の耐容性を改善するための方法

本発明は、麻酔回復を改善し、そして悪心及び嘔吐を予防するための医薬組成物、ならびに注射部位の耐容性を改善するための方法に関する。具体的には、本発明は、治療有効量のニューロキニン受容体拮抗薬を医薬的に許容可能なシクロデキストリンとともに含んでなる、注射部位の耐容性が改善された医薬組成物を、対象とする。本発明はまた、化学式(I)(式中、Rは、メチル、エチル、イソプロピル、sec−ブチル及びtert−ブチルからなる群より選択される)の化合物からなる医薬組成物も対象とする。本発明はまた、化学式1aの化合物及びシクロデキストリンからなる医薬組成物、ならびにその注射部位の耐容性を改善するための方法も、対象とする。


【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、注射部位の耐容性を改善するためのシクロデキストリン及びニューロキニン受容体(NK−1)拮抗薬を含有する医薬組成物を対象とする。また、本発明は、化学式I(式中、Rは、メチル、エチル、イソプロピル、sec−ブチル及びtert−ブチルからなる群より選択される)の化合物からなる医薬組成物を対象とする。
【0002】
【化1】

【0003】
具体的には、本発明は、化学式Iaの化合物である(2S,3S)−2−ベンズヒドリル−N−(5−tert−ブチル−2−メトキシベンジル)キヌクリジン−3−アミン、及び注射部位の耐容性を改善するためのシクロデキストリンからなる医薬組成物を、対象とする。
【0004】
【化2】

【0005】
発明の背景
化学式IまたはIaの化合物は、U.S.5,807,867、U.S.6,222,038及びU.S.6,255,320の主題である。化学式I及びIaの化合物の調製がそれらに記載されている。また、Iaの化合物は、共有に係る、ファイザー・Incに譲り受けされた同時係属中の米国仮出願第60/541,323に記載されるように調製されてもよい。米国5,393,762にも、NK−1受容体拮抗薬を用いた医薬組成物及び嘔吐の治療が記載されている。共有に係る、ファイザー・Incに譲り受けられた同時係属中の米国仮出願第60/540,697には、化学式IaまたはIaの化合物を投与することによって患者における麻酔回復を改善する方法が記載されている。前記の出願の記載、特許、及び本明細書に引用されたすべての他の参考文献は、そのすべてを参照によって本明細書に記載されているものとする。
【0006】
嘔吐の予防及び/または治療は、ニューロキニン受容体(NK−1)活性を遮断するかまたは妨げる物質に焦点を当てている。これらの物質は、ニューロキニン受容体拮抗薬として公知である。当該技術分野において公知の、多数のニューロキニン受容体拮抗薬がある。ニューロキニン拮抗薬としては、これに限定されないが、ピペリジノ誘導体(米国5,798,359)、トリプトファン尿素(米国5,869,489)、スピロ置換アザサイクル(米国5,869,496)、種々のアミノ酸誘導体(米国5,849,918), アリールグリシンアミド誘導体(米国6,124,296)、治療用複素環(米国6,124,279)、芳香族アミン化合物(米国5,686,609)、第四級イモジウム塩(米国5,674,881)、及び当業者に公知の他のニューロキニン受容体拮抗薬が挙げられる。
【0007】
しかしながら、NK−1拮抗薬を投与すると、注射部位の耐容性(例えば、個体の被刺激性、該部位の刺激、炎症、腫脹及び/または発赤)に関する種々の問題が現れる。しかしながら、種々の物質の使用を介して注射部位の耐容性の改善に関する多数の研究が行われているにもかかわらず、これらのどの研究も、ニューロキニン受容体拮抗薬の投与に焦点が当てられていない。
【0008】
注射部位の耐容性の改善が、ニューロキニン受容体拮抗薬を含有する医薬組成物にシクロデキストリンを添加することによって実現すると判断された。シクロデキストリンは、環状オリゴ糖である。3つの主要なシクロデキストリンがあり:α−シクロデキストリンは、6個のグルコース残基の環からなり;β−シクロデキストリンは、7個のグルコース残基の環からなり;そして、γ−シクロデキストリンは、8個のグルコース残基の環からなる。典型的には、シクロデキストリンは、でんぷん上のアミラーゼの作用によって形成される。シクロデキストリンは、典型的には形状及び大きさが様々であるが、しかし一般的には、疎水性空孔の存在により定義され、そして、他の有機分子、塩及びハロゲンとともに、固体状態または水溶液中で包接化合物を形成することが可能である。シクロデキストリンを調製するための方法は、当業者に周知であり、そして多くのシクロデキストリンが市販されている。
【0009】
シクロデキストリンは、注射部位の耐容性を改善する試みにおいて利用されている。例えば、VasudevanらによるWO/0062793では、シュードマイシンもしくは関連する抗真菌剤とシクロデキストリンとからなる処方物を含む、真菌感染症を治療するための方法及び組成物が開示されている。Rubinfeldによる米国6,048,845では、置換シクロデキストリン及び細胞毒性化合物を含む物質からなる組成物が開示されている。Bodorによる米国5,024,998では、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンと組み合わされた、水に不溶性であるかもしくはやや溶けにくく、かつ/または水中では不安定な薬物の水溶性非経口溶液が開示されている。
【0010】
したがって、嘔吐の治療における医薬処方物の注射部位の耐容性を改善するための組成物及び方法、または対象患者における麻酔回復を改善するための組成物及び方法が、必要とされる。さらに、ニューロキニン受容体拮抗薬の投与に対する注射部位の耐容性を改善する組成物及び/または薬剤が、必要とされる。加えて、NK−1拮抗薬の使用を介して、注射部位の耐容性を改善し、そして悪心及び嘔吐を予防し、そして麻酔回復を改善する方法が、必要とされる。
【0011】
発明の概要
一側面において、本発明は、本明細書に引用された参考文献に記載されたものなどの有効量のニューロキニン受容体(NK−1)拮抗薬を、医薬的に許容可能なシクロデキストリンとともに含んでなる、注射部位の耐容性が改善された医薬組成物を対象とする。ニューロキニン受容体は、さらに、米国5,807,867、米国6,222,038、米国6,255,320、米国5,939,433及び米国5,519,033に開示されている。該出願は、すべての目的に対して、参照によって本明細書に記載されているものとする。
【0012】
好ましい実施態様において、拮抗薬は、ピペラジン化合物、スピロ置換アザサイクル、ジアルキリンピペラジノ化合物、トリプトファン尿素、多環式アミノ化合物、置換アリール脂肪族化合物、芳香族アミン化合物、第四級アンモニウム塩または芳香族アミン化合物、アリール置換複素環、多環式アミン化合物、置換アリールピペラジン、カルボキシアミド誘導体、ビス−ピペラジニル非ペプチド化合物、その塩、及び(2S,3S)−2−ベンズヒドリル−N−(5−tert−ブチル−2−メトキシベンジル)キヌクリジン−3−アミンからなる群より選択される。
【0013】
より好ましい実施態様において、拮抗薬は、化学式Iaである(2S,3S)−2−ベンズヒドリル−N−(5−tert−ブチル−2−メトキシベンジル)キヌクリジン−3−アミン、または医薬的に許容可能なその塩であり、好ましくは、クエン酸一水塩などのクエン酸塩である。
【0014】
一実施態様において、シクロデキストリンは、医薬的に許容可能なβ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(“SBE−CD”)または置換シクロデキストリンから選択される。別の実施態様において、シクロデキストリンは、ビヒクルの約2重量%〜約40重量%である。好ましくは、シクロデキストリンは、組成物の約4重量%〜約20重量%である。より好ましくは、シクロデキストリンは、組成物の約5重量%〜約10重量%であり、そしてヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンまたはSBE−CDである。
【0015】
好ましい実施態様において、治療有効量のNK−1拮抗薬は、約0.01mg/kg患者体重〜約100mg/kg患者体重である。より好ましくは、治療有効量は、約0.10mg/kg〜約10mg/kgである。
【0016】
別の側面において、本発明は、NK−1受容体拮抗薬を用いた、哺乳動物における嘔吐の治療または麻酔回復の改善のための方法であって、嘔吐の治療に十分な治療有効量の上記医薬組成物、注射部位における注射耐容性を改善するのに十分な量で存在するシクロデキストリンを含んでなる医薬水溶液を哺乳動物に非経口的に注射することを含んでなる上記方法を、対象とする。
【0017】
別の側面において、本発明は、哺乳動物において嘔吐治療中の注射部位の耐容性を改善するための方法、または麻酔回復を改善するための方法であって、哺乳動物に上述の医薬組成物を含んでなる医薬水溶液を非経口的に注射することを含んでなる上記方法を、対象とする。
【0018】
さらなる側面において、本発明は、特にNK−1受容体拮抗薬が適応される疾患の治療において薬剤として使用するための、本明細書に定義した医薬組成物を、対象とする。
さらなる側面において、本発明は、NK−1受容体拮抗薬が適応される疾患の治療のための薬剤の製造における、本明細書に定義した医薬組成物の使用を、対象とする。
【0019】
さらなる側面において、本発明は、NK−1受容体拮抗薬が適応される哺乳動物における疾患の治療のための方法であって、治療有効量の本明細書に定義した医薬組成物を前記哺乳動物に投与することを含んでなる上記方法を、対象とする。
【0020】
定義
「化学式Iの化合物」、「化学式Iaの化合物」及び「本発明の化合物」の語は、本明細書では、化学式IまたはIaの化合物、そのプロドラッグ、及び該化合物または該プロドラッグの医薬的に許容可能な塩を意味する。化学式Iaの化合物に言及する場合、「化合物」の語は、化合物のプロドラッグ、及び該化合物または該プロドラッグの医薬的に許容可能な塩も含む。
【0021】
本発明の任意の組成物または方法に関しての実施態様において、医薬的に許容可能な酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、D−及びL−乳酸、メタンスルホン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、D−及びL−酒石酸、p−トルエンスルホン酸、アジピン酸、アスパラギン酸、ショウノウスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、ラウリル硫酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、リンゴ酸、粘液酸、硝酸、ナフタレンスルホン酸、パルミチン酸、D−グルカル酸、ステアリン酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、安息香酸、コール酸、エタンスルホン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、ラクトビオン酸、リシン酸、マンデル酸、ナパジシル酸、ニコチン酸、ポリガラクツロン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、トリプトファン酸、及びこれらの混合物からなる群より選択されてもよい。その好ましい実施態様において、酸は、クエン酸である。
【0022】
「クエン酸塩」の語は、本明細書では、分子量660.82、及び709mg/gの活性成分に基いた理論上の力価を有する、化学式Iaの化合物のクエン酸一水塩を指す。
「ニューロキニン受容体拮抗薬」の語は、本明細書では、化学式IまたはIaの化合物、あるいはNK−1ニューロキニン受容体に特異的に結合することが可能な種々のリガンド、化合物及び/または物質を非限定的に含み、そして、これに限定されないが、ピペラジン化合物、スピロ置換アザサイクル、ジアルキリンピペラジノ化合物、トリプトファン尿素、多環式アミノ化合物、置換アリール脂肪族化合物、芳香族アミン化合物、第四級アンモニウム塩または芳香族アミン化合物、アリール置換複素環、多環式アミン化合物、置換アリールピペラジン、カルボキシアミド誘導体、ビス−ピペラジニル非ペプチド化合物、その塩、及び当業者に公知の任意の他の同様なニューロキニン受容体拮抗薬を含む。さらなるニューロキニン受容体が、米国5,807,867、米国6,222,038、米国6,255,320、米国5,939,433及び米国5,519,033に開示され、そして上記定義に含まれる。
【0023】
「シクロデキストリン」の語は、本明細書では、疎水性の内部空孔と親水性の外部とを有する環状オリゴ糖を意味する。3つの主要な種類のシクロデキストリン:α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンがある。「シクロデキストリン」の語はまた、側鎖として任意の有機部分またはヘテロ有機部分を含む、種々の置換シクロデキストリンを含む。置換シクロデキストリンには、さらに、アルキル化されているか、ヒドロキシアルキル化されているか、または反応してスルホアルキルエーテルを形成しているシクロデキストリンも含まれる。
【0024】
本明細書では、シクロデキストリン及び/または置換シクロデキストリンとしては、これに限定されないが、スルホブチルエーテルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシエチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ジヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、ジグルコシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−γ−シクロデキストリン、マルトトリアルシル−β−シクロデキストリン、マルトトリアルシル−γ−シクロデキストリン、ジマルトシル−β−シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、これらのシクロデキストリン誘導体の種々の混合物、マルトシル−β−シクロデキストリン/ジマルトシル−β−シクロデキストリンなどの混合物、及び当業者に公知の任意の他の同様なシクロデキストリンが挙げられる。
【0025】
「医薬的に許容可能な希釈剤」の語は、ヒトと動物分野の双方において非経口適用が許容可能な希釈剤またはビヒクル、あるいはその混合物を指すことを意図され、そして、本発明の組成物の製造における使用のための水または他の医薬的に許容可能な添加剤(非限定的に、例えば、注射用水、水、水混和性有機溶媒、プロピレングリコール、2−ピロリドン、エタノール、n−メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、グリセロールホルマール、油性ビヒクル、胡麻油、ベニバナ油等を含む)を含む。
【0026】
「注射部位の耐容性の改善」の語は、本明細書では、本明細書の表1に定義したそれぞれの反応の徴候において、2またはそれより少ない、好ましくは1またはそれより少ないスコアを意味する。
【0027】
「活性成分」または「mgA/mL」の語は、本明細書では、分子量468.69を有する化学式Iaの化合物の遊離塩基を指す。
「治療有効量」の言い回しは、(i)特定の疾患、状態または障害を治療または予防する、(ii)特定の疾患、状態もしくは障害の1またはそれより多くの症状を減弱、改善または消失させる、あるいは、(iii)本明細書に記載の特定の疾患、状態もしくは障害の1またはそれより多くの症状の発症を予防または遅延する、本発明の化合物の量を、意味する。
【0028】
「医薬的に許容可能な」の言い回しは、物質または組成物が、処方物を構成する他成分、及び/またはそれを用いて治療されている哺乳動物と、化学的及び/または毒性学的に適合していなければならないことを示す。
【0029】
「治療している」、「治療する」または「治療」の語は、対症的な治療と予防的な(preventative)(すなわち、予防的な(prophylactic))治療の双方を包含する。
発明の説明
化学式IまたはIaの化合物を、米国6,222,038または米国6,255,038に記載されるように調製することが可能である。化学式Iaの化合物の塩(具体的には、クエン酸塩)を、上記特許に記載されるように、または以下に簡潔に記載したように調製することが可能である。
【0030】
例えば、化学式Iaの化合物の結晶性クエン酸一水塩を、雰囲気条件下で47gの遊離塩基をイソプロピルエーテル470mL中に懸濁することによって、調製した。室温にて、スラリーに無水クエン酸21.42gを加えた。混合物を、150mLの水に18時間懸濁することによって一水和物に変換し、そしてろ過すると、白色結晶固体が得られた。
【0031】
本発明に関して、処方物は、治療有効量の化学式IまたはIaの化合物を医薬的に許容可能な希釈剤に溶解することによって、調製される。化学式Iaの化合物の医薬的に許容可能な塩(クエン酸塩またはリンゴ酸塩)などもまた用いてもよい。シクロデキストリンを、約2%〜約40%の範囲の濃度で、溶液に加える。好ましくは、シクロデキストリンは、医薬組成物の約4%〜約20%を、そしてより好ましくは約5%〜約10%を含んでなる。好ましくは、シクロデキストリンは、β−シクロデキストリン:ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたは他の医薬的に許容可能な置換β−シクロデキストリンである。
【0032】
本明細書では、単位投与量の「治療有効量」は、典型的には、約0.5mg〜約500mgの活性成分である。しかしながら、用量は、治療される動物の種、多様性等、動物の重症度及び体重に応じて異なってもよい。したがって、体重に基づき、活性成分の典型的な用量範囲は、約0.01〜約100mg/kg動物体重であってもよい。好ましくは、該範囲は、約0.10mg/kg〜約10mg/kg体重である。
【0033】
獣医師または当業者は、特定の個々の患者に適した投与量を決定可能であろう。該投与量は、特定の患者の種、年齢、重量及び応答性によって異なってもよい。上記投与量は、典型的な平均的事例である。したがって、より高いかまたはより低い投与量の範囲が、上記要因に応じて保証されてもよく、かつ本発明の範囲内にある。
【0034】
化学式IまたはIaの化合物の医薬組成物を、治療有効量の化学式IまたはIaの化合物が、許容可能な注射部位の耐容性を伴って患者に投与可能なように、開発した。注射部位の耐容性を、紅斑(大きさ)、皮膚の肥厚(大きさ)、触診による疼痛、及び浮腫を含む反応の徴候について患者を検査することにより、判定した。表1に、スコアリングシステム(:スコア0(反応なし)〜4(重度の反応)を、各特徴及び各注射部位に対して毎日付けた)の詳細な説明を提供する。
【0035】
【表1】

【0036】
同時出願され、共有に係るファイザー・Incに譲り受けられた米国仮出願においてより十分に記載されているように、医薬組成物は、微生物の混入を防ぐための保存剤をさらに含むことが可能である。上記出願は、すべての目的に対して、参照により本明細書に記載されているものとする。本明細書では、「保存剤」の語は、感染のリスクまたは医薬品の分解を呈し得る微生物の増殖を防止もしくは阻止するために加えられる、化合物、または化合物の組み合わせを意味する。
【0037】
上述の組成物及び/または医薬組成物のいずれかを、ニューロキニン受容体拮抗薬及びシクロデキストリンのみとともに投与することが可能である。しかしながら、追加の成分を組成物または医薬組成物内に含めることは可能である。さらに、種々の慣用のキャリアー及び添加剤を、通常の実行にしたがって利用することが可能である。典型的には、組成物及び/または医薬組成物は、無菌の形態にて調製される水溶性処方物であり、かつ送達時に等張である。添加剤としては、さらに、これに限定されないが、抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)などのキレート剤、炭水化物、及び当業者に公知の任意の他の同様な成分が挙げられる。さらに、処方物の見かけのpHは、約3〜約7の範囲であるが、しかし通常は約4〜約6である。種々のキャリアーに関しては、NK−1拮抗薬を適切に可溶化する任意の公知の医薬的に許容可能なキャリアーを、本発明で利用することが可能である。
【0038】
本発明の組成物及び医薬組成物を、多数の方法で;最も好ましくは非経口的に、投与することが可能である。
一般的な実験手順
特に明記しない限り、市販の試薬を、さらに精製せず利用し、そして、例えばシグマ社またはアルドリッチ社から入手してもよい。HPB−CD(Cavitron 82003)を、Cargill社から入手した。オレイン酸エチル(Crodamol)を、Croda Incから入手した。Miglyol 812(Nutralol)を、Condia社から入手した。
【0039】
塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び酢酸ナトリウムの1%溶液それぞれを、各塩1gを十分な注射用水に溶解して最終容量100mLにすることにより、調製した。当業者は、溶液の別の容量を、溶液構成成分の容量を加えた塩量と比較して適切なように調整することによって調製してもよいことを、理解するであろう。
【0040】
40%グリセロールホルマール溶液を、グリセロールホルマール40gを十分な注射用水に分散させて最終容量100mLにすることによって、調製した。
以下の実施例は、本発明の具体的な実施態様を例証することを目的とし、かつ、いかなる方法によっても特許請求の範囲を含む本明細書を限定することを目的としない。
【実施例】
【0041】
化学式Iaの化合物の注射部位の耐容性試験
種々の医薬的に許容可能な希釈剤に溶解した化学式Iaの化合物の注射部位の耐容性を、評価した。化学式Iaの化合物を、ビーグル犬または雑種犬に、1mg/kg/日にて1〜4日間連続して皮下注射により投与した。イヌを、注射による疼痛の証拠について、各投与後直ちに観察した。すべての注射部位を、最終注射後少なくとも24時間まで、反応の証拠について毎日評価した。
【0042】
注射部位の耐容性試験において用いられた以下の処方物を、以下に記載されるように調製した。該処方物は、特に指定されない限り、実際の力価692mg/gを有する化学式Iaの化合物のクエン酸塩から調製された、活性成分である化学式Iaの化合物の最終濃度を提供する。
【0043】
該処方物溶液を、0.22ミクロンのミリポアGVフィルター膜を介して、ゴム栓で閉じられた無菌30mLバイアル中にろ過した。ただし、実施例Y、Z、AA、BB、CC、DD、EE及びIIでは、0.45ミクロンのミリポアHVフィルター膜を介して、ゴム栓で閉じられた無菌20mLバイアル中にろ過した。
【0044】
医薬組成物の一部としてスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(「SBE−CD」)を有するこれらの実施例については、SBE−CDのナトリウム塩を用いた。
実施例A(1%塩化ナトリウム;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gを1%塩化ナトリウム溶液34.49gに溶解することによって調製し、pH3.89の溶液およそ35mLを得た。
【0045】
実施例B(1%塩化カルシウム;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gを1%塩化カルシウム溶液34.51gに溶解することによって調製し、pH3.45の溶液およそ35mLを得た。
【0046】
実施例C(1%酢酸ナトリウム;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gを1%酢酸ナトリウム溶液34.51gに溶解することによって調製し、pH5.24の溶液およそ35mLを得た。
【0047】
実施例D(40%グリセロールホルマール;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gを40%グリセロールホルマール溶液37.78gに溶解することによって調製し、見かけのpH4.55の溶液およそ35mLを得た。
【0048】
実施例E(25% 2−ピロリドン;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gを25% 2−ピロリドン溶液(十分な注射用水(78.27g)に2−ピロリドン25gを溶解して、100mLの溶液を作る)36.30gに加えることによって調製した。化学式Iaの化合物の溶解を高めるために、10%塩酸(「HCl」)(濃縮HCl 6.75gを十分な注射用水(18.24g)に溶解して、25.00gの溶液を得る)を5、5、10、10、10、50及び50μLに分けて合計140μL加え、見かけのpH4.05の溶液およそ35mLを得た。
【0049】
実施例F(1%塩化カルシウム;5mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の5mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gを1%塩化カルシウム溶液69.49gに溶解することによって調製し、pH3.54の溶液およそ70mLを得た。
【0050】
実施例G(1%塩化カルシウム;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gを1%塩化カルシウム溶液34.50gに溶解することによって調製し、pH3.45の溶液およそ35mLを得た。
【0051】
実施例H(40%グリセロールホルマール;5mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の5mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gを40%グリセロールホルマール溶液75.09gに溶解することによって調製し、見かけのpH4.64の溶液およそ70mLを得た。
【0052】
実施例I(40%グリセロールホルマール;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gを40%グリセロールホルマール溶液37.29gに溶解することによって調製し、見かけのpH4.56の溶液およそ35mLを得た。
【0053】
実施例J(20%SBE−CD;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩1.45gを十分な20%SBE−CD溶液(十分な注射用水にSBE−CD 20gを溶解して、100mLの容量にする)に溶解することによって調製した。
【0054】
実施例K(1%塩化カルシウム;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gを1%塩化カルシウム/水酸化ナトリウム溶液(10%水酸化ナトリウム溶液(水酸化ナトリウム2.50gを十分な注射用水に溶解して、25.00gの溶液を作る)0.52gを、1%塩化カルシウム溶液に加えた)33.89gに溶解することによって調製し、pH5.00の溶液およそ35mLを得た。
【0055】
実施例L(1%塩化カルシウム;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のリンゴ酸塩(理論上の力価780mg/g)0.45gを1%塩化カルシウム溶液34.58gに溶解することによって調製し、pH3.76の溶液およそ35mLを得た。
【0056】
実施例M(40%グリセロールホルマール/リン酸緩衝液;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
リン酸二水素ナトリウム二水和物(「NaHPO・2HO」)の100mM溶液を、NaHPO・2HO 1.38gを十分な注射用水に溶解して100mLの溶液を作ることによって調製した。リン酸(「HPO」)の100mM溶液を、86.7%HPO 1.13gを十分な注射用水に分散させて100mLの溶液を作ることによって調製した。100mMのpH2.02リン酸緩衝液を、その調製を上記に記載したNaHPO・2HO溶液60mLと、その調製を上記に記載したHPO溶液45mLとを合わせることによって、調製した。50mMリン酸緩衝液に溶解したグリセロールホルマールの40%(重量/容量)溶液を、グリセロールホルマール40.15gをpH2の100mMリン酸緩衝液49.0g及び十分な注射用水(19.47g)に分散させて100mLの溶液を作ることによって調製した。得られた溶液の見かけのpHは、2.61であった。
【0057】
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.504gを、その調製を上記に記載した40%グリセロールホルマール溶液38.06gに溶解することによって、調製した。pHを、10%HCl(濃縮HCl 13.5gを十分な注射用水に溶解して、50gの溶液を得る)を20、50、50、40及び20μLに分けて合計180μL加えることによって調整し、見かけのpH3.01の溶液およそ36mLを得た。
【0058】
実施例N(25%N−メチルピロリドン;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.510gを25%N−メチルピロリドン(「NMP」)溶液(N−メチルピロリドン12.51gを、十分な注射用水(38.08g)に溶解して、50mLの溶液を作る)35.44gに加えることによって調製し、見かけのpH4.60の溶液およそ36mLを得た。
【0059】
実施例O(1%塩化カルシウム;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物の遊離塩基(理論上の力価1000mg/g)0.35gを10%HCl(濃縮物13.5gを十分な注射用水に分散させて、50gの溶液を得る)0.30gを加えた1%塩化カルシウム溶液34.30gに溶解することによって調製し、pH4.10の溶液およそ35mLを得た。
【0060】
実施例P(5%SBE−CD;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.504gを5%SBE−CD溶液(SBE−CDのナトリウム塩5.00gを十分な注射用水(96.73g)に溶解して、100mLを作る)35.60gに加えることによって調製し、pH4.46の溶液およそ35mLを得た。
【0061】
実施例Q(5%SBE−CD/1%塩化カルシウム;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
5%SBE−CD及び1%塩化カルシウムを含有する溶液を、塩化カルシウム0.3gを5%SBE−CD(調製を上記に記載)30.7gに溶解しておよそ30mLの溶液を得ることによって、調製した。化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.44gを5%SBE−CD/1%塩化カルシウム溶液30.7gに加えることによって調製し、pH4.55の溶液およそ31mLを得た。
【0062】
実施例R(30%PEG−400;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩2.67gを30%ポリエチレングリコール400(「PEG−400」)溶液(PEG−400 90.06gを十分な注射用水(223.17g)に分散させて、300mLの溶液を作る)191.99gに分散させることによって調製した。pHを、10%HCl(濃縮(37%重量/重量)HCl 13.5gを十分な注射用水に分散させて、50gの溶液にする)を1.98gと0.407gとに分けて合計2.39g加えることによって調整し、見かけのpH2.97の最終溶液およそ189mLを得た。
【0063】
実施例S(30%PG;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩2.76gを30%プロピレングリコール(「PG」)溶液(PG 90.01gを十分な注射用水(218.53g)に分散させて、300mLの溶液を作る)193.33gに分散させることによって調製した。pHを、10%HClを1.88gと0.39gとに分けて合計2.27g加えることによって調整し、見かけのpH3.01の最終溶液およそ193mLを得た。
【0064】
実施例T(1%塩化カルシウム;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物の遊離塩基(理論上の力価1000mg/g)0.35gを、10%メタンスルホン酸溶液(メタンスルホン酸1gと注射用水9gを合わせて、10gの溶液にする)0.76gを加えた1%塩化カルシウム溶液33.90gに溶解することによって調製し、pH4.17の溶液およそ35mLを得た。(メタンスルホン酸のモル濃度は、化学式Iaの化合物のモル濃度よりもわずかに大きかった。)
実施例U(注射用水;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物の遊離塩基(理論上の力価1000mg/g)0.35gを、10%メタンスルホン酸溶液0.87gを加えた注射用水33.91gに溶解することによって調製し、pH4.07の溶液およそ35mLを得た。
【0065】
実施例V(1.3%塩化カルシウム;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gを1.3%塩化カルシウム溶液(塩化カルシウム1.3gを十分な注射用水に溶解して、100mLの溶液を作る)34.50gに加えることによって調製し、pH3.52の溶液およそ35mLを得た。
【0066】
実施例W(10%HPB−CD;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩2.88gを10%ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(「HPB−CD」)溶液(HPB−CD 30.97gを十分な注射用水(213.62g)に溶解して、300mLの溶液を作る)203.99gに溶解することによって調製した。pHを、10%NaOH(NaOH 10gを十分な注射用水に溶解して、100mLにする)0.44g及び10%HCl溶液0.066gを加えることによって調整し、pH4.40の溶液およそ202mLを得た。
【0067】
実施例X(10%SBE−CD;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩1.45gを十分な量の10%SBE−CD溶液(SBE−CD 10gを十分な量の注射用水に溶解して、100mLの溶液を作る)に溶解して100mLの溶液にすることによって調製した。
【0068】
実施例Y(75%胡麻油/25%オレイン酸エチル;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
3:1(容量/容量)の胡麻油:オレイン酸エチルに溶解した化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物の遊離塩基(理論上の力価1000mg/g)0.166gを、胡麻油11.87g(12.75mL)及びオレイン酸エチル3.59g(4.25mL)に溶解することによって調製し、およそ17mLの溶液を得た。
【0069】
実施例Z(Miglyol;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
Miglyol 812に溶解した化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物の遊離塩基(理論上の力価1000mg/g)0.17gをMiglyol 812 15.90g(17mL)に溶解することによって調製し、およそ17mLの溶液を得た。
【0070】
実施例AA(75%ベニバナ油/25%オレイン酸エチル;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
3:1(容量/容量)のベニバナ油:オレイン酸エチルに溶解した化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物の遊離塩基(理論上の力価1000mg/g)0.177gをベニバナ油11.81g(12.75mL)及びエチル3.60g(4.25mL)に溶解することによって調製し、およそ17mLの溶液を得た。
【0071】
実施例BB(ミセル;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、注射用水13.01gをガラス容器に入れ、そして10mM水酸化ナトリウム溶液(NaOH 200.04gを注射用水に溶解して、最終容量500mLにする)0.55g及びグリココール酸2.21gを酸が溶解するまで攪拌しながら加えることによって調製した。溶液を、50℃に加熱した。レシチン4.23g及びアルギニン溶液(アルギニン0.752gを注射用水3.02gに溶解する)3.75gを加え、そして溶液を50℃に保った。これに化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.36gを加え、そしてpHを、10%HCl 1.24g及び1M水酸化ナトリウム(NaOH 20.07gを注射用水に溶解して、最終容量500mLにする)0.55gを加えることによって調整し、pH6.5の溶液およそ25mLを得た。
【0072】
実施例CC(12.5%クレモホール/12.5%エタノール/75%生理食塩液;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gをエタノール溶液に溶解した50%クレモホール(クレモホールEL(BASF)50gをエタノール(無水、200 proof)に溶解して、最終容量100mLにする)8.75g及び市販の0.9%生理食塩液25.50gに溶解することによって調製し、見かけのpH4.27の溶液およそ35mLを得た。
【0073】
実施例DD(25%クレモホール/25%エタノール/50%生理食塩液;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.51gをエタノール溶液に溶解した50%クレモホール17.54g及び市販の0.9%生理食塩液16.25gに溶解することによって調製し、見かけのpH4.90の溶液およそ35mLを得た。
【0074】
実施例EE(胡麻油に溶解した40%オレイン酸エチル;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物の遊離塩基(理論上の力価1000mg/g)0.26gを胡麻油ビヒクルに溶解した40%オレイン酸エチル(オレイン酸エチル20.01gを胡麻油24.72gに溶解して、50mLを作る)23.26gに溶解することによって調製し、およそ25mLの溶液を得た。
【0075】
実施例FF(5%SBE−CD/1%酢酸ナトリウム;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.43gを1%酢酸ナトリウム/5%SBE−CD溶液(酢酸ナトリウム1g及びSBE CDのナトリウム塩5gを注射用水に溶解して、最終容量100mLにする)29.90gに溶解することによって調製し、pH5.18の溶液およそ30mLを得た。
【0076】
実施例GG(5%SBE−CD/25%PG;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.43gを5%SBE−CD/25%PG溶液(SBE−CDのナトリウム塩5g及びPG 25gを注射用水に溶解して、最終容量100mLにする)30.70gに溶解することによって調製し、見かけのpH4.53の溶液およそ30mLを得た。
【0077】
実施例HH(5%SBE−CD/25%NMP;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.362gを25%N−メチルピロリドン/5%SBE−CD溶液(SBE−CDのナトリウム塩2.52g及びN−メチルピロリドン(「NMP」)(Acros社)12.50gを注射用水(36.57g)に溶解して、最終容量50mLにする)25.82gに溶解することによって調製し、pH4.73の溶液およそ25mLを得た。
【0078】
実施例II(胡麻油に溶解した50%オレイン酸エチル;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物の遊離塩基(理論上の力価1000mg/g)0.259gを胡麻油ビヒクルに溶解した50%オレイン酸エチル(オレイン酸エチル25.02gを胡麻油19.47gに分散させて、最終容量50mLにする)23.04gに溶解することによって調製し、およそ25mLの溶液を得た。
【0079】
実施例JJ(10%SBE−CD/25%PG;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.43gを10%SBE−CD/25%PG溶液(SBE−CDのナトリウム塩10g及びPG 25gを注射用水に溶解して、最終容量100mLにする)31.16gに溶解することによって調製し、見かけのpH4.47の溶液およそ30mLを得た。
【0080】
実施例KK(10%SBE−CD;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のリンゴ酸塩(理論上の力価780mg/g)0.38gを10%SBE−CD溶液30.70gに溶解することによって調製し、pH4.55の溶液およそ30mLを得た。
【0081】
実施例LL(10%SBE−CD;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
化学式Iaの化合物の10mg/mL溶液を、化学式Iaの化合物のクエン酸塩0.434gを10%SBE−CD溶液31.25gに溶解することによって調製した。pHを、10%HCl 0.38g及び10%NaOH 0.04gを加えることによって調整し、pH3.02の溶液およそ30mLを得た。
【0082】
実施例MM(7.5%SBE−CD;10mg/mLの化学式Iaの化合物)
7.5%SBE−CDを含有する化学式Iaの化合物のクエン酸塩の10mg/mL溶液を、以下のように調製した。注射用水(13175g)を、ガラス内張りカーボイに入れた。水を30〜40℃に加熱し、そして化合中この温度範囲で維持した。SBE−CD(1313g)をカーボイに加え、そして溶解するまで攪拌した。化学式Iaの化合物のクエン酸塩(252g)をカーボイに加え、そして溶解するまで攪拌した。注射用水の一部(3295g)をさらにカーボイに加え、そして分散するまで攪拌した。溶液を20〜30℃に冷まし、10mg/mLの化学式Iaの化合物及び7.5%(重量/容量)SBE−CDを含有する、pH4.4の溶液およそ17500mLを得た。
【0083】
得られた溶液を、重ねたミリポア0.2ミクロン KVGL04TC3無菌フィルターを介して、無菌ガラス内張りの受入槽へろ過した。溶液の一部を、無菌処理区域で、20mL琥珀ガラスバイアルに満たした。バイアルの上部空間にフィルターに通した窒素を流し、そしてバイアルを閉じそしてゴム栓及びアルミニウムのひだで密閉した。バイアルをオートクレーブ内に置き、そして121℃に加熱し、その温度でおよそ15分間保ち、そして室温に冷ました。
【0084】
上述の処方物を、上述のように皮下注射した。表2に、処方物の説明及び平均注射部位の耐容性スコアをまとめた。
【0085】
【表2−1】

【0086】
【表2−2】

【0087】
【表2−3】

【0088】
【表2−4】

【0089】
好ましい実施態様
1. 治療有効量のニューロキニン受容体(NK−1)拮抗薬を医薬的に許容可能なシクロデキストリンとともに含んでなる、注射部位の耐容性が改善された医薬組成物。
【0090】
2. 拮抗薬が、ピペラジン化合物、スピロ置換アザサイクル、ジアルキリンピペラジノ化合物、トリプトファン尿素、多環式アミノ化合物、置換アリール脂肪族化合物、芳香族アミン化合物、第四級アンモニウム塩または芳香族アミン化合物、アリール置換複素環、多環式アミン化合物、置換アリールピペラジン、カルボキシアミド誘導体、及びビス−ピペラジニル非ペプチド化合物、またはその塩からなる群より選択される、好ましい実施態様1に記載の医薬組成物。
【0091】
3. NK−1拮抗薬が、医薬的に許容可能なシクロデキストリンを伴った、化学式I:
【0092】
【化3】

【0093】
(式中、Rは、メチル、エチル、イソプロピル、sec−ブチル及びtert−ブチルからなる群より選択される)の化合物、または医薬的に許容可能なその塩もしくはプロドラッグである、好ましい実施態様1に記載の医薬組成物。
【0094】
4. 化学式Iの化合物が、化学式Ia:
【0095】
【化4】

【0096】
の化合物、または医薬的に許容可能なその塩もしくはプロドラッグである、好ましい実施態様3に記載の医薬組成物。
5. シクロデキストリンが、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたは置換シクロデキストリンから選択される、好ましい実施態様1、2、3または4に記載の医薬組成物。
【0097】
6. シクロデキストリンが、組成物の約2%〜約40%である、好ましい実施態様5に記載の医薬組成物。
7. シクロデキストリンが、組成物の約4%〜約20%である、好ましい実施態様6に記載の医薬組成物。
【0098】
8. シクロデキストリンが、組成物の約5%〜約10%である、好ましい実施態様7に記載の医薬組成物。
9. シクロデキストリンが、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンである、好ましい実施態様8に記載の医薬組成物。
【0099】
10. NK−1拮抗薬の治療有効量が、0.01mg/kg〜100mg/kg患者体重である、好ましい実施態様9に記載の医薬組成物。
11. 治療有効量が、0.10mg/kg〜10mg/kg患者体重である、好ましい実施態様10に記載の医薬組成物。
【0100】
12. 医薬的に許容可能な塩がクエン酸塩である、好ましい実施態様11に記載の医薬組成物。
13. 哺乳動物における嘔吐の治療または麻酔回復の改善のための方法であって、嘔吐の治療または麻酔回復の改善に十分な治療有効量の好ましい実施態様5に記載の医薬組成物、注射部位における注射耐容性を改善するのに十分な量にて存在するシクロデキストリンを含んでなる溶液を哺乳動物に非経口的に注射することを含んでなる、上記方法。
【0101】
14. シクロデキストリンが、組成物の約2%〜約40%である、好ましい実施態様13に記載の方法。
15. シクロデキストリンが、組成物の約4%〜約20%である、好ましい実施態様14に記載の方法。
【0102】
16. シクロデキストリンが、組成物の約5%〜約10%である、好ましい実施態様15に記載の方法。
17. シクロデキストリンが、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンである、好ましい実施態様16に記載の方法。
【0103】
18. NK−1拮抗薬の治療有効量が、0.01mg/kg〜100mg/kg患者体重である、好ましい実施態様17に記載の方法。
19. 治療有効量が、0.10mg/kg〜10mg/kg患者体重である、好ましい実施態様18に記載の方法。
【0104】
20. 医薬的に許容可能な塩がクエン酸塩である、好ましい実施態様19に記載の方法。
21. 哺乳動物において嘔吐治療中の注射部位の耐容性を改善するかまたは麻酔回復を改善するための方法であって、好ましい実施態様5に記載の医薬組成物の医薬水溶液を哺乳動物に非経口的に注射することを含んでなる、上記方法。
【0105】
22. シクロデキストリンが、組成物の約2%〜約40%である、好ましい実施態様21に記載の方法。
23. シクロデキストリンが、組成物の約4%〜約20%である、好ましい実施態様22に記載の方法。
【0106】
24. シクロデキストリンが、組成物の約5%〜約10%である、好ましい実施態様23に記載の方法。
25. シクロデキストリンが、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンである、好ましい実施態様24に記載の方法。
【0107】
26. NK−1拮抗薬の治療有効量が、0.01mg/kg〜100mg/kg患者体重である、好ましい実施態様25に記載の方法。
27. 治療有効量が、0.10mg/kg〜10mg/kg患者体重である、好ましい実施態様26に記載の方法。
【0108】
28. 医薬的に許容可能な塩がクエン酸塩である、好ましい実施態様27に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のニューロキニン受容体(NK−1)拮抗薬を医薬的に許容可能なシクロデキストリンとともに含んでなる、注射部位の耐容性が改善された医薬組成物。
【請求項2】
拮抗薬が、ピペラジン化合物、スピロ置換アザサイクル、ジアルキリンピペラジノ化合物、トリプトファン尿素、多環式アミノ化合物、置換アリール脂肪族化合物、芳香族アミン化合物、第四級アンモニウム塩または芳香族アミン化合物、アリール置換複素環、多環式アミン化合物、置換アリールピペラジン、カルボキシアミド誘導体、及びビス−ピペラジニル非ペプチド化合物、またはその塩からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
NK−1拮抗薬が、化学式I:
【化1】

(式中、Rは、メチル、エチル、イソプロピル、sec−ブチル及びtert−ブチルからなる群より選択される)の化合物、または医薬的に許容可能なその塩もしくはプロドラッグである、請求項1または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
化学式Iの化合物が、化学式Ia:
【化2】

の化合物、または医薬的に許容可能なその塩もしくはそのプロドラッグである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
シクロデキストリンが、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたは置換シクロデキストリンから選択される、請求項1、2、3または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
シクロデキストリンが、組成物の約2%〜約40%である、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
NK−1拮抗薬の治療有効量が、0.01mg/kg〜100mg/kg患者体重である、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
薬剤としての使用のための、請求項1〜7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
NK−1拮抗薬が適応される疾患の治療のための薬剤の製造における、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項10】
哺乳動物におけるNK−1拮抗薬が適応される疾患の治療のための方法であって、前記哺乳動物に請求項1〜7のいずれか1項の治療有効量の医薬組成物を投与することを含んでなる、上記方法。

【公表番号】特表2007−519702(P2007−519702A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550324(P2006−550324)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000020
【国際公開番号】WO2005/082419
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】