説明

ニードルシートの製造方法

【課題】針状凸部に括れ部を有するニードルシートを、簡単かつ高精度に量産することができる。
【解決手段】少なくともポリマー材料を溶媒に溶解又は分散させたポリマー溶液32を調製する溶液調製工程と、括れ部12が形成された針金状金属10の反転形状である針状凹部30を有するモールド28にポリマー溶液32を付与して針状凹部30内に充填する溶液付与工程と、付与されたポリマー溶液32をゲル化させた状態で乾燥収縮することにより、前記ポリマー溶液を前記針状凹部の縮尺形状に乾燥固化させたポリマー成形体36を成形する乾燥収縮工程と、成形されたポリマー成形体36をモールド28から剥離する剥離工程と、を備え、モールド28の最大径をMmaxとし、最小径をMminとすると共に、ポリマー溶液32の固形分体積濃度をDとしたときに、次式 D≦(Mmin/Mmax) を満足するようにモールド28の針状凹部30形状及びポリマー溶液32の固形分体積濃度Dを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニードルシートの製造方法に係り、特にシート部の表面に針状凸部が形成されると共に、該針状凸部に括れ部が形成されたニードルシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高アスペクト比構造の針状凸部がシート部の表面に形成されたニードルシートは、機能性膜として様々な分野で応用されている。例えば、医療技術分野では、高アスペクト比構造を有するニードルシートを用いることで、患者の皮膚表面又は皮膚角質層を介して、薬剤を患者に効率的に投与する経皮吸収シートが注目を集めている。
【0003】
ニードルシートの針状凸部の外径としては、ニードル形状、先端ナイフ形状、やじり形状などの様々な外形のものが提案されている。ニードルシートは、径が50〜200μm、高さが100〜2000μmの針状凸部がシート部の表面にアレイ状に配列したものであり、皮膚に痛みなく穿刺するには、細くてアスペクト比が高く、また先端ができるだけ、尖った針状凸部であることが好ましい。
【0004】
また、ニードルシートを機能性膜として利用する一態様である経皮吸収シートは、材料として生体適合性及び性分解性のあるポリマー材料を用い、更にポリマー材料中に薬剤を予め添加しておく。これにより、針状凸部を皮膚内に穿刺させた状態で経皮吸収シートを皮膚に貼り付けることにより、薬剤を皮膚内に放出することができる。このような経皮吸収シートとしては、例えば特許文献1、2、3等がある。
【0005】
しかし、従来の経皮吸収シートは、以下の欠点があった。
【0006】
(1)体内(皮膚内)に穿刺した針状凸部が溶解するまでの間、シート部を皮膚に貼り付けたままにする必要があり、被投与者にとって煩わしい。
【0007】
(2)シート部が皮膚から剥がれると、皮膚内に挿入されている針状凸部が抜けてしまう。
【0008】
(3)針状凸部が皮膚内で溶解したかどうか、即ち薬剤が放出されたかどうかを目視で判断できない。
【0009】
これらを解決する方法として例えば特許文献4、5、6には、針状凸部を皮膚内に穿刺後、針状凸部の根元部分が折れて皮膚内に残るように、針状凸部の根元部を折れ易くする構造が提案されている。特許文献4は、針中間部に括れ部を設け折れ易くなるようにしている。特許文献5では、針の中間部で径の異なる段差構造に形成することにより折れ易くなるようにしている。また、特許文献6では、直径が20μmのワイヤーを、シート部と針部との境界近くに押し当てて研削することにより、括れ部を形成することが提案されている。
【0010】
このように、針状凸部のみを皮膚内に残せるようにすることで、薬剤のドーズ量(投与量)を一定にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−37885号公報
【特許文献2】特開2007−89792号公報
【特許文献3】特開2008−228958号公報
【特許文献4】特開2003−238347号公報
【特許文献5】特開2005−154321号公報
【特許文献6】特開2009−138010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献4及び5には、針状凸部の中央部に括れを形成するとあるが、括れ部のあるニードルを実際にどのようにして製造するかが記載されていない。
【0013】
また、特許文献6のように1本1本の針状凸部をワイヤーで研削して括れ部を形成する方法は量産適正がなく生産性が悪くなる。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、針状凸部に括れ部を有するニードルシートを、簡単かつ高精度に量産することができるニードルシートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1のニードルシートの製造方法の発明は、前記目的を達成するために、シート部の表面に針状凸部が形成されると共に、該針状凸部に括れ部が形成されたニードルシートの製造方法において、少なくともポリマー材料を溶媒に溶解又は分散させたポリマー溶液を調製する溶液調製工程と、前記括れ部が形成された針状凸部の反転形状である針状凹部を有するモールドに前記調製したポリマー溶液を付与して前記針状凹部内に充填する溶液付与工程と、前記付与されたポリマー溶液をゲル化させた状態で乾燥収縮することにより、前記ポリマー溶液を前記針状凹部の縮尺形状に乾燥固化させたポリマー成形体を成形する乾燥収縮工程と、前記成形されたポリマー成形体を前記モールドから剥離する剥離工程と、を備え、前記モールドの最大径をMmaxとし、最小径をMminとすると共に、前記ポリマー溶液の固形分体積濃度をDとしたときに、次式 D≦(Mmin/Mmax)を満足するように前記モールドの針状凹部形状及び前記ポリマー溶液の固形分体積濃度Dを調整することを特徴とする。
【0016】
なお、ここで言う縮尺形状とは、完全な縮尺形状を意味するものではなく、乾燥収縮されて形成されたポリマー成形体が針状凹部形状の縮尺形状に略同一であればよい。また、ポリマー溶液の固形分体積濃度の固形分には少なくともポリマー材料が含まれる。
【0017】
本発明によれば、括れ部が形成された針状凸部の反転形状である針状凹部を有するモールドを用い、モールドにポリマー溶液を付与して乾燥固化することにより、モールドの針状凹部の形状を転写したポリマー成形体を得るようにした。このようにモールドを用いた転写法により、針状凸部に括れ部が形成されたニードルシートを製造するようにしたので、量産化を達成できる。
【0018】
しかし、この転写法の場合、ポリマー溶液を針状凹部の縮尺形状と略同一になるように乾燥固化させることが重要であり、このためには針状凹部に充填したポリマー溶液をゲル化させた状態で乾燥収縮させる必要がある。
【0019】
更には、乾燥収縮して得られたポリマー成形体をモールドの括れ部分に引っ掛からないように針状凹部から剥離しなくてはならない。
【0020】
そこで、本発明では、乾燥収縮工程において、モールドの最大径をMmaxとし、最小径をMminとすると共に、前記ポリマー溶液の固形分体積濃度をDとしたときに、次式 D≦(Mmin/Mmax)を満足するようにモールドの形状及びポリマー溶液の固形分体積濃度Dを調整するようにしたので、ポリマー成形体をモールドから剥離するときにも容易且つ精度良く剥離することができる。
【0021】
これにより、針状凸部に括れを有するニードルシートを、簡単かつ高精度に量産することができる。なお、針状凸部に形成される括れ部の位置は、針状凸部の中間部に形成することもできるが、根元部近傍であることがより好ましい。
【0022】
本発明においては、前記乾燥収縮工程では、前記ポリマー溶液を、該ポリマー溶液がゲル化するゲル化温度まで冷却してポリマー溶液の流動性を停止した後、流動性が復元しない低温乾燥風で乾燥固化することが好ましい。
【0023】
乾燥収縮工程での乾燥収縮によって形成されるポリマー成形体が針状凹部形状の収縮形状になるためには、ポリマー溶液がゲル化した状態、即ちポリマー溶液の流動が停止した状態で乾燥する必要がある。
【0024】
かかる観点から、本発明では、ポリマー溶液を、該ポリマー溶液がゲル化するゲル化温度まで冷却してポリマー溶液の流動性を停止した後、流動性が復元しない低温乾燥風で乾燥固化するようにしたので、ポリマー成形体を針状凹部形状の収縮形状に形成することができる。ここで、低温乾燥風は、前記ゲル化温度+20℃以下であることが好ましい。
【0025】
また、ポリマー溶液の流動性が停止したか否かはモールドを傾けて針状凹部内のポリマー溶液が動かなければよい。この場合、低温乾燥風なので乾燥が遅くならないように、除湿された湿度20%以下の低湿度乾燥風を使用することが好ましい。
【0026】
本発明においては、前記モールドとして、気体透過性を有する弾性材料、例えばシリコーン樹脂で形成されたモールドを用いることが好ましい。これは、乾燥収縮工程でポリマー溶液の体積が乾燥収縮したときに、ポリマー溶液中の固形分がモールドの針状凹部壁面に付着しないように、モールド外部の空気がモールドを透過して針状凹部に侵入する必要があるためである。ポリマー溶液の体積が乾燥収縮するにつれて空気が針状凹部に侵入することにより、ポリマー溶液と針状凹部壁面との間に空気層が形成されるので、ポリマー溶液中の固形分が針状凹部壁面に付着することなく収縮する。これにより、乾燥収縮工程においてd≧Dを満足するポリマー成形体を成形することができる。
【0027】
また、ポリマー成形体の針状凸部は縮小して針状凹部から抜け易くなっているが、シート部はモールド表面に密着しており、剥がれ難い。したがって、モールドを弾性材料で形成することにより、剥離工程においてモールドを弾性変形させながら剥離すれば、ポリマー成形体のシート部をモールド表面から容易に剥離することができる。シート部が剥離されれば、乾燥収縮により縮小した針状凸部はモールドの針状凹部から容易に抜き出すことができる。
【0028】
本発明においては、前記モールドは、針金状金属を研削加工して前記括れ部を有する針状凸部形状を形成し、該形成した複数本の針金状金属を台座に固定して原版を作製する原版作製工程と、気体透過性を有する弾性材料を用いて前記原版の反転型を作製する反転型作製工程と、前記反転型を前記原版から剥離してモールドとする剥離工程と、により作製されることが好ましい。これは、針状凹部に括れ部を有するモールドの作製方法を具体的に示したものである。
【0029】
本発明においては、前記モールドは、気体透過性を有する弾性材料にドリルを用いた研削加工により括れ部を有する針状凹部を穿孔することにより作製することが好ましい。これは、針状凹部に括れ部を有するモールド作製方法の更に別の態様を具体的に示したものである。
【0030】
本発明においては、前記剥離工程では、前記モールドを弾性変形させながら剥離することが好ましい。上記したように、ポリマー成形体のシート部がモールド表面に密着しており剥離しにくいので、モールドを弾性変形させながら剥離することでシート部を容易に剥離できる。これにより、ポリマー成形体とモールドとを強引に剥離することがなくなるので、剥離工程において針状凸部を破損することがない。
【0031】
本発明においては、前記ポリマー材料は乾燥により収縮し易い材料、例えばゼラチンであることが好ましい。これにより、ポリマー溶液の濃度を高めることができるので、ニードルシートの針状凸部に必要な強度を確保し易くなる。
【0032】
本発明においては、前記ニードルシートは、ポリマー材料に薬剤と色素とを含有させた経皮吸収シートであることが好ましい。
【0033】
ニードルシートは各種の機能性膜として利用できるが、本発明はニードルシートを経皮吸収シートとして用いる場合に特に有効だからである。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、針状凸部に括れ部を有するニードルシートを、簡単かつ高精度に量産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のニードルシートの製造方法の一実施形態において、モールドの作製工程を説明する説明図。
【図2】本発明のニードルシートの製造方法の一実施形態において、ニードルシートの成形工程を説明する説明図。
【図3】加圧充填装置の一例を示す構成図
【図4】ポリマー溶液をゲル化して乾燥固化した場合と、ゲル化しないで乾燥固化した場合の相違を説明する説明図
【図5】ポリマー成形体の針状凸部がモールドにおける針状凹部の括れ部分に引っ掛かることなく抜け出るための説明図
【図6】モールドの横断面形状を説明する説明図
【図7】本発明により製造されたニードルシートの一態様を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に従って本発明のニードルシートの製造方法の好ましい実施形態について説明する。
【0037】
図1(A)〜(C)は、ニードルシートの製造方法において、原版の作製及びその原版から反転型のモールドを形成するまでの工程を示す図である。また、図2の(A)〜(D)は、図1で作製したモールドを用いてニードルシートを製造するまでの工程を説明する図である。
【0038】
[モールドの作製工程]
本発明の実施形態におけるモールドの作製方法としては、(a)気体透過性を有する弾性材料に、ドリルを用いた研削加工により括れ部を有する針状凹部を穿孔する方法や、(b)研削加工により原版を作製し、その原版を気体透過性を有する弾性材料で型取りして反転型を作製する方法が挙げられるが、以下に上記(b)の方法でモールドを作製する方法を説明する。
【0039】
図1(A)に示すように、針金状金属10を研削加工して、括れ部12を有する所望の針状凸部形状を形成する。例えば直径が150μmの針金状金属10の先端から100μmの先端部14を先端曲率半径が5μmの円錐形状に研削加工すると共に、針金状金属10の先端から500μmの位置を直径が100μmになるように研削加工して括れ部12を形成する。なお、針金状金属10の括れ部12より下側を基端部16と言うことにする。
【0040】
針金状金属10の長さや太さ、及び針金状金属10の先端部14の形状、更には括れ部12の位置や括れ量は、最終製品であるニードルシート40(図4参照)の針状凸部34に応じて適宜調整するとよい。このように研削加工した針金状金属10を複数本、例えば100本作成する(なお、図1(A)では5本のみ示している。)。
【0041】
次に、図1(B)に示すように、平滑な矩形状の金属板18の中央部に穴20を開け、この穴20に研削加工した針金状金属10の基端部16を挿入して固着する。針金状金属10の挿入する長さは、金属板18の表面から針金状金属10の括れ部12が露出するようにする。例えば、針金状金属10の先端から約600μmの長さ部分が金属板18表面から突出するようにする。金属板18は、穴20が開け易いように比較的硬度の小さな銅板等が好適である。
【0042】
そして、金属板18の中央部に配置した1本の研削加工済みの針金状金属10をアライメントの基準として、縦方向と横方向とに等ピッチ間隔で碁盤目状に複数の穴20を開けて、その穴20に研削加工済みの針金状金属10を挿入して配置する。配置する針金状金属10の本数としては、縦方向・横方向にそれぞれ10本、合計で100本程度が好ましい。これにより、原版22を作製する。
【0043】
次に、図1(C)に示すように、原版22の周囲に矩形状に型枠24を設けて、この型枠24内に気体透過性を有すると共に弾性変形し易い樹脂材料26を流し込む。次に、樹脂材料26を固化して針金状金属10の形状を転写した後、型枠24を外す。そして、固化した樹脂材料26を原版22から剥離する。剥離する場合に針金状金属10に括れ部12があっても、樹脂材料26を弾性変形させることで原版22から綺麗に剥離することができる。
【0044】
樹脂材料26としては、気体透過性を有すると共に弾性変形し易い樹脂であればどのような樹脂でもよいが、例えばシリコーン樹脂を好適に用いることができる。
【0045】
これにより、図2(A)に示すモールド28を作製することができる。このモールド28には、気体透過性を有し弾性変形し易いと共に、針金状金属10に形成した先端部14、基端部16、及び括れ部12が転写された針状凹部30が複数形成されている。そして、モールド28の括れ部分28Aの径をdmmとする。
【0046】
上述の方法で作製されるモールド28は単独で使用してもよいし、複数のモールド28を並べて使用してもよい。
【0047】
[ニードルシートの成形工程]
次に、ニードルシート40を成形する成形工程を説明する。
【0048】
先ず、図2(A)に示すように、上記作製したモールド28を準備する。
【0049】
一方、ポリマー材料を溶媒に溶解又は分散させたポリマー溶液32を調製する(溶液調製工程)。
【0050】
ポリマー溶液32は、水、アルコール、メチルエチルケトン(MEK)などの溶媒に少なくともポリマー材料が溶解又は分散した溶液である。ポリマー溶液は、ポリマー材料及び溶媒以外にも、ニードルシート40の使用目的に応じて種々の添加剤を含んでいてもよい。例えば、ニードルシート40(図7参照)の一態様である経皮吸収シートを製造する場合には、ポリマー溶液に薬剤や色素を含有させることができる。色素を添加しておけば、経皮吸収シートの針状凸部のみを皮膚内に残したときに、色素の消え具合で針状凸部34(図7参照)の体内への溶解度を判断できる。
【0051】
ポリマー溶液32のポリマー材料は、後で説明する乾燥工程で乾燥収縮し易いものであることが好ましい。
【0052】
また、生体内で分解されやすいポリマー材料(生分解性材料)であると共に、生体適合性を有するポリマー材料(生体適合材料)であることが好ましい。
【0053】
これらの性質を有するポリマー材料としては、例えば、グルコース、マルトース、プルランなどの糖類や、ゼラチン、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体などの生分解性ポリマーを使用することができる。
【0054】
中でも、ゼラチンは、乾燥収縮性が大きいと共に、低温でのキャスト成形が可能な材料であるから、ポリマー溶液に薬剤を添加する場合に、ポリマー成形体を成形する乾燥工程時に体積収縮率が大きくなると共に、薬剤の熱劣化を防止できる点で好ましい。
【0055】
また、ポリマー溶液32の粘度は、後記する溶液付与工程において、ポリマー溶液32がモールド28の針状凹部30へ充填され易いことを考慮して、5Pa・s以下であることが好ましく、2Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0056】
次に、図2(B)に示すように、調製したポリマー溶液32をモールド28の表面28Bに付与して針状凹部30内に充填する(溶液付与工程)。モールド28の針状凹部30は、モールド28の表面28Bに比べてくぼんだ領域であり、凹部壁面30Aにより画成される。
【0057】
ポリマー溶液32のモールド28への付与方法として、バー塗布、スピン塗布、スプレー塗布、ディスペンサを用いた滴下などの方法が挙げられる。中でも、ディスペンサを用いてポリマー溶液32を滴下する態様は、ポリマー溶液32の粘度を問わず、高精度に滴下量を制御できるため好ましい。
【0058】
また、ポリマー溶液32をモールド28の表面28Bに付与しただけでは、針状凹部30に迅速に充填されにくい。したがって、ポリマー溶液32の針状凹部30への充填を促進する方法として、ポリマー溶液32をモールド表面28Bに付与した後にポリマー溶液32を加圧する方法や、ポリマー溶液32を減圧下でモールド28に付与した後に大気圧に戻す方法などが挙げられる。
【0059】
図3は、加圧方法を行う加圧充填装置50の一例である。この加圧充填装置50は、流入口58及び排出口60を備える耐圧容器52と、耐圧容器52の内部に設けられた台座54と、耐圧容器52に加圧流体を送り込むコンプレッサー56とを含む。この加圧充填装置50を以下の手順で動作させることで、モールド表面28Bに付与したポリマー溶液32を針状凹部30に充填することができる。ポリマー溶液32を付与したモールド28が台座54に載置された状態で、コンプレッサー56により、流入口58を介して耐圧容器52に加圧流体を送り込む。加圧流体は、気体又は液体を用いることができる。加圧流体として使用可能な気体には、空気を挙げることができるが、ポリマー溶液32への加圧流体の溶解を防止する観点から、ポリマー溶液32に対する溶解率が低い気体を選択することが好ましい。ポリマー溶液32の揮発による粘度上昇を防止する観点から、ポリマー溶液32の溶媒と同種の液体を耐圧容器52の内部に予め溜めておき、耐圧容器52の内部が当該液体の蒸気で飽和した状態にすることが好ましい。上記の手順に従って、加圧充填装置50を動作させることにより、ポリマー溶液32が針状凹部30に迅速に充填される。
【0060】
次に、図2(C)に示すように、付与されたポリマー溶液32を乾燥収縮してニードルシート40の形に固化させたポリマー成形体36を成形する(乾燥収縮工程)。ポリマー溶液32を乾燥収縮させる方法として、加熱、送風、減圧などにより、ポリマー溶液32の溶媒を揮発させる方法が挙げられる。ポリマー溶液32の乾燥収縮の過程において、ポリマー溶液32は、ポリマー溶液中の固形分体積濃度に応じた一定の体積収縮率で収縮する。したがって、モールド28には、針状凹部30の形状を縮小した針状凸部34を有するポリマー成形体36が形成される。なお、ポリマー成形体36とニードルシート40とは実質的には同じものであるが、モールド28から剥離する前のものをポリマー成形体36と言い、剥離した後のものをニードルシート40と言うことにする。
【0061】
この乾燥収縮工程において重要な点は、モールド28に付与されて針状凹部30に充填されたポリマー溶液32をゲル化させた状態で乾燥収縮することである。このようにゲル化した状態で乾燥収縮することにより、図4(A)に示すように、針状凹部30の縮尺形状と略同一の針状凸部34を有するポリマー成形体36を得ることができる。ポリマー溶液32をゲル化させる方法としては、ポリマー溶液32をゲル化温度まで冷却する方法、あるいはゲル化剤を用いる方法等がある。
【0062】
ちなみに、図4(B)はポリマー溶液32をゲル化させないで乾燥固化させた場合であり、針状凸部34は針状凹部30の縮尺形状になるように乾燥固化しない。
【0063】
また、乾燥収縮工程において更に重要な点は、次の剥離工程において、ポリマー成形体36の針状凸部34がモールド28の針状凹部30の括れ部分28Aに引っ掛かることなく抜け出ることができることである。
【0064】
そして、このためには、モールドの最大径をMmaxとし、最小径をMminとすると共に、ポリマー溶液32の固形分体積濃度をDとしたときに、次式(1)を満足するようにモールド28の針状凹部30の形状及びポリマー溶液32の固形分体積濃度Dを調整することが重要になる。
【0065】
D≦(Mmin/Mmax)…(1)
この式(1)を導くための手順を詳しく説明すると、図5に示すように、ポリマー成形体36の針状凸部34における最大径部分をPmaxとし、最小径部分(括れ部分)をPminとし、モールド28の最大径部分をMmaxとし、最小径部分(括れ部分に対応する部分)をMminとしたとき、針状凸部34が針状凹部30の括れ部分28Aに引っ掛かることなく抜け出るための必要な条件は、次式(2)を満足することである。
【0066】
Mmin≧Pmax…(2)
なお、図6はモールド28の針状凹部30を上から見た図であるが、針状凹部30に充填されたポリマー溶液32は、ゲル化状態で乾燥収縮すると、実線状態から点線状態に収縮する。したがって、針状凹部30の径方向断面が円形状であればMmin≧Pmaxはそのまま適用できるが、正方形の形状の場合には対角線方向においてMmin≧Pmaxを満足する必要がある。
【0067】
ここで、乾燥収縮工程において、ポリマー溶液32をゲル化させた状態で乾燥収縮することにより、針状凹部30に充填されたポリマー溶液32をポリマー成形体36の針状凸部34に乾燥収縮させたときの体積収縮率をSとすれば、次式(3)で表すことができる。
【0068】
S=(Pmax/Mmax)…(3)
ここで、体積収縮率Sをポリマー溶液32の体積とポリマー成形体36の体積とで表す場合、針状凹部30に充填されたポリマー溶液32がゲル化して流動が停止したときの体積をV1とし、乾燥収縮して得られたポリマー成形体36の体積をV2としたときに、体積収縮率SはV2/V1として定義することができる。
【0069】
更には、モールド28の針状凹部30に充填されたポリマー溶液32の固形分体積濃度をD(%)とすると、針状凹部30に充填されたポリマー溶液32は直ちにゲル化させればポリマー溶液32中の溶媒の蒸発なしでゲル化し、この状態で針状凹部30の縮尺形状に乾燥収縮し、全ての溶媒が除去されて乾燥固化する。そして、乾燥固化により形成されたポリマー成形体36の針状凸部34の体積は、モールド28の針状凹部30に充填されたポリマー溶液32の固形分体積に相当する。したがって、理想状態で乾燥収縮が進行したと仮定すると、体積収縮率S=ポリマー溶液32の固形分体積濃度Dと見做すことができる。
【0070】
これにより、上記式(3)式の S=(Pmax/Mmax)を、次式(4)で書き換えることができる。
【0071】
D=(Pmax/Mmax)…(4)
したがって、式(4)を上記の式(2)に代入し、ポリマー溶液32の固形分体積濃度Dが左辺に、モールドの最大径をMmax及び最小径をMminが右辺にくるように式を整理すると、式(1)のD≦(Mmin/Mmax)を得ることができる。即ち、ポリマー成形体36の針状凸部34がモールド28の括れ部分28Aに引っ掛かることなく抜け出るための条件を、モールド28の針状凹部30形状及びポリマー溶液32の固形分体積濃度Dで表すことができる。
【0072】
そして、乾燥収縮工程で D≦(Mmin/Mmax)を満足するためには、以下の3つの要因が重要になる。即ち、
(a)ポリマー溶液32のポリマー材料として乾燥時に収縮し易い材料、例えばゼラチンを選択する。
(b)ポリマー溶液32の固形分体積濃度Dを適正に調整する。例えば固形分体積濃度Dを10〜40質量%程度が好ましい。したがって、ポリマー溶液32の固形分体積濃度Dを幅広く調整できることが必要になるので、ポリマー材料は溶媒に対して溶解度が大きいことが好ましく、上記したポリマー材料の中ではゼラチンを好適に使用できる。また、ポリマー溶液32の固形分体積濃度Dを薄くすれば、乾燥収縮工程でポリマー溶液32中の固形分が固化したときの体積収縮率Sが大きくなりMmin≧Pmaxを満足するが、成形されたポリマー成形体36の針状凸部34が細く成り過ぎてニードルシート40の針状凸部34に必要な強度を確保できない。一方、ポリマー溶液32の固形分体積濃度Dを濃くすれば体積収縮率Sが小さくなるので、Mmin≧Pmaxを満足しにくくなる。したがって、ニードルシート40の針状凸部34の強度と、体積収縮率Sとの関係を予め予備試験等により把握しておくことが好ましい。
(C)モールド28が気体透過性を有する。
【0073】
ここで、モールド28が気体透過性について説明する。
【0074】
ポリマー溶液32を乾燥収縮してニードルシート40の形に固化させてポリマー成形体36を成形する際に、針状凹部30の壁面30Aにポリマー溶液32の固形分が付着せずに、ポリマー溶液32と壁面30Aとの間に空気層が形成されることである。このためには、モールド28は気体透過性を有することが重要であり、これによりポリマー溶液32が乾燥収縮して容積が小さくなった分だけ針状凹部30に空気が透過して空気層を形成する。これにより、中実な針状凸部34になるので、針状凸部34をモールド28の針状凹部形状よりも縮小化させることができる。この結果、乾燥収縮工程においてMmin≧Pmaxを満足するポリマー成形体36を得ることができる。
【0075】
ちなみに、モールド28に気体透過性がないと、乾燥収縮工程におけるポリマー溶液32の体積収縮時に、ポリマー溶液中の固形分がモールド28の凹部壁面30Aに付着して針状凹部の形状に倣ったポリマー成形体が成形されるので、中空なポリマー成形体が形成されてしまう。これにより、乾燥収縮工程においてMmin≧Pmaxを満足するポリマー成形体36を成形することができない。
【0076】
次に、図2(D)に示すように、成形されたポリマー成形体36をモールド28から剥離する(剥離工程)。ポリマー成形体36の剥離方法として、例えば、片面に接着層を有する剥離用シート(図示せず)をポリマー成形体36のシート部裏面35Aに付着させて剥離用シートごと剥離する方法や、ポリマー成形体36のシート部裏面35Aに吸盤(図示せず)を吸着させて剥離する方法などが挙げられる。
【0077】
上記したように、乾燥収縮工程において、Mmin≧Mmax×√Dを満足するように針状凹部30の形状及びポリマー溶液32の固形分体積濃度Dを調整することにより、Mmin≧Pmaxを満足するので、剥離工程においてポリマー成形体36はモールド28の括れ部分28Aに引っ掛かることなく、モールド28から精度良く剥離することができる。
【0078】
また、ポリマー成形体36の針状凸部34は縮小して、モールド28の針状凹部30から抜け易くなっているが、シート部35はモールド表面28Bに密着しており、剥がれ難い。したがって、モールド28を例えばシリコーン樹脂のような弾性材料で形成することにより、剥離工程においてモールド28を弾性変形させながら剥離すれば、ポリマー成形体36のシート部35をモールド表面28Bから剥離し易くなる。シート部35が剥離されれば、乾燥収縮により縮小した針状凸部34はモールド28の針状凹部30から容易に抜き出すことができる。
【0079】
このモールド28の弾性変形において、針状凹部30の開口部(括れ部分28Aに相当)が拡がるようにモールド28を弾性変形させながら剥離するとよい。これにより、括れ部分28Aが拡がるので、針状凸部34をモールド28の針状凹部30から更に抜き出し易い。これにより、ポリマー成形体36の針状凸部34に損傷を与えずに、ポリマー成形体36をモールド28から剥離することができる。
【0080】
上記説明したように、本発明の実施形態におけるニードルシートの製造方法によれば、括れ部12が形成された針金状金属10の反転形状である針状凹部30を有するモールド28を用い、モールド28にポリマー溶液32を付与した後に乾燥してモールド28の針状凹部形状を転写する転写法により、針状凸部34に括れ部44が形成されたニードルシート40を製造するようにしたので、量産化を達成できる。
【0081】
このニードルシート40の針状凸部34は、図7に示すように、針状凸部34の最大径部分Dが50〜200μmの範囲、高さHが100〜2000μmの範囲で、高アスペクト比であることが好ましい。ここで、針状凸部34の高さHとはシート部35の表面からの突起している長さを意味し、針状凸部34のアスペクト比は、針状凸部34の高さHと最大径部分Dを用いて、A=H/Dにより定義され、1以上であることが好ましい。具体的には、最大径部分Dと高さHの比は、1:2〜1:10の範囲内であることが好ましい。
【0082】
また、針状凸部34の先端部42(錐状部)の長さH1も、針状凸部34のニードル強度を決定する重要な因子の一つであり、モールド28の針状凹部30の形状を適宜変更することで調節可能である。
【0083】
そして、ニードルシート40を機能性膜の一態様である経皮吸収シートとして用いる場合には、先ず、製造した経皮吸収シートを皮膚に載せて針状凸部34をシート部35の表面側から押圧することにより、薬剤が含有される針状凸部34を皮膚内に穿刺する。次に、経皮吸収シートのシート部35を上から軽く抑えながら、シート部35を1cmほど横にズラした後、シート部35を皮膚から剥がす。これにより、針状凸部34は括れ部44で容易に折れるので、針状凸部34のみを皮膚内に残すことができる。
【0084】
以上、本発明の一例について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0085】
[実施例]
本発明の実施形態で説明したニードルシートの製造方法により経皮吸収シートを実際に製造した実施例を以下に説明する。
【0086】
<モールドの作製>
先ず、径が150μmの針金状金属10を用いて、その先端から100μmの先端部14を先端曲率半径が5μmの円錐形状に研削加工した。更に、その針金状金属10の先端から500μmの部分を研削加工により100μmになるように細くして、括れ部12を形成した。このように研削加工した針金状金属10を100本作製した。
【0087】
そして、40mm×40mmの平滑な矩形状の銅板18の中央部に穴20をあけた後、先端加工した針金状金属10の先端を銅板18の表面(穴の入口)から600μm突出させ、ピッチ1mmにて10×10本で三次元に配列させて固定した。これにより、原版22を作製した。そして、この原版22を用いることより、シリコーンゴム(信越シリコーン型取り用RTVゴム)にて反転した反転型であるモールド28を作製した。このモールド28は、縦横が45mmで厚みが5mmの矩形状をしており、モールド表面28Bには、ピッチ1mmにて10×10本の針状凹部30が縦横に配列されている。このとき、モールド28の材質はシリコーンゴムであり弾性体であるため、原版22の針金状金属10に括れ部12があっても、モールド28を変形させて剥離することにより、モールド28の針状凹部30を破損することなく針金状金属10から綺麗に剥離することができた。
【0088】
<ポリマー溶液の調製工程>
フィッシュゼラチンを水で溶解させて20質量%の水溶液とし、この水溶液を40℃で攪拌した後、同温度で保温した。そして、この水溶液中に、薬剤として、アスコルビン酸を1質量%添加すると共に、色素であるインドシアニングリーンを0.01質量%添加した。これにより、ポリマー溶液32を調製した。
【0089】
<溶液付与工程>
シリコーンゴム製のモールド28に、ポリマー溶液32を1.5mL滴下し、加圧充填装置50で処理した。即ち、ジャケットにより内部を40℃まで加熱した耐圧容器52の中にポリマー溶液32を付与したモールド28を入れた。そして、コンプレッサー56からの圧縮空気により、耐圧容器52内の圧力を0.5MPaとして3分間保持し、ポリマー溶液32をモールド28の針状凹部30に充填した。
【0090】
<乾燥収縮工程>
耐圧容器52の中で、モールド28に50℃(相対湿度40%)の温風を当てて、4時間の乾燥収縮処理を行った。乾燥収縮処理により、針状凹部30のポリマー溶液32は乾燥収縮して固化し、ポリマー成形体36が成形された。
【0091】
<剥離工程>
ポリマー成形体36のシート部35表面に粘着テープを貼りつけて、当該粘着テープごと、ポリマー成形体36をモールド28から剥離した。これにより、薬剤及び色素を含有した経皮吸収シートを製造した。この剥離工程において、成形されたポリマー成形体36の針状凸部34は、乾燥収縮しているため、針状凸部34の最大径部分がモールド28の括れ部分28Aに引っ掛かることなく、モールド28から容易に剥離することができた。
【0092】
剥離したポリマー成形体36の針状凸部34における最大径部分(Pmax)を測定した結果、100μmであった。即ち、成形されたポリマー成形体36の針状凸部34における最大径部分をPmaxとし、針状凸部34の括れ部44に対応するモールド部分の最小径部分をMminとしたときに、乾燥収縮工程においてMmin≧Pmaxを満足するように乾燥収縮させることができた。これにより、経皮吸収シートを製造した。
【0093】
<経皮吸収シートの使用試験>
先ず、製造した経皮吸収シートを皮膚に載せて針状凸部34をシート部35の表面側から押圧することにより、針状凸部34を皮膚内に穿刺した。次に、経皮吸収シートのシート部35を上から軽く抑えながら、シート部35を1cmほど横にズラした後、シート部35を皮膚から剥がした。その結果、針状凸部34が括れ部44の位置で折れ、針状凸部のみを皮膚内に残すことができた。
【符号の説明】
【0094】
10…針金状金属、12…括れ部、14…針金状金属における針状凸部の先端部、16…針金状金属における針状凸部の基端部、18…金属板(銅板)、20…穴、22…原版、24…型枠、26…樹脂材料、28…モールド、28A…モールドの括れ部分、28B…モールド表面、30…針状凹部、32…ポリマー溶液、34…ポリマー成形体の針状凸部、35…ポリマー成形体のシート部、36…ポリマー成形体、40…ニードルシート、42…ポリマー成形体における針状凸部の先端部、44…ポリマー成形体における針状凸部の括れ部、50…加圧充填装置、52…耐圧容器、54…台座、56…コンプレッサー、58…流入口、60…排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部の表面に針状凸部が形成されると共に、該針状凸部に括れ部が形成されたニードルシートの製造方法において、
少なくともポリマー材料を溶媒に溶解又は分散させたポリマー溶液を調製する溶液調製工程と、
前記括れ部が形成された針状凸部の反転形状である針状凹部を有するモールドに前記調製したポリマー溶液を付与して前記針状凹部内に充填する溶液付与工程と、
前記付与されたポリマー溶液をゲル化させた状態で乾燥収縮することにより、前記ポリマー溶液を前記針状凹部の縮尺形状に乾燥固化させたポリマー成形体を成形する乾燥収縮工程と、
前記成形されたポリマー成形体を前記モールドから剥離する剥離工程と、を備え、
前記モールドの最大径をMmaxとし、最小径をMminとすると共に、前記ポリマー溶液の固形分体積濃度をDとしたときに、次式
D≦(Mmin/Mmax)
を満足するように前記モールドの針状凹部形状及び前記ポリマー溶液の固形分体積濃度Dを調整することを特徴とするニードルシートの製造方法。
【請求項2】
前記乾燥収縮工程では、前記ポリマー溶液を、該ポリマー溶液がゲル化するゲル化温度まで冷却してポリマー溶液の流動性を停止した後、流動性が復元しない低温乾燥風で乾燥固化することを特徴とする請求項1に記載のニードルシートの製造方法。
【請求項3】
前記低温乾燥風は、前記ゲル化温度+20℃以下であることを特徴とする請求項2に記載のニードルシートの製造方法。
【請求項4】
前記モールドとして、気体透過性を有する弾性材料で形成されたモールドを用いることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載のニードルシートの製造方法。
【請求項5】
前記モールドはシリコーン樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載のニードルシートの製造方法。
【請求項6】
前記モールドは、
針金状金属を研削加工して前記括れ部を有する針状凸部形状を形成し、該形成した複数本の針金状金属を台座に固定して原版を作製する原版作製工程と、
気体透過性を有する弾性材料を用いて前記原版の反転型を作製する反転型作製工程と、
前記反転型を前記原版から剥離してモールドとする剥離工程と、により作製されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載のニードルシートの製造方法。
【請求項7】
前記モールドは、
気体透過性を有する弾性材料にドリルを用いた研削加工により括れ部を有する針状凹部を穿孔することにより作製することを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載のニードルシートの製造方法。
【請求項8】
前記剥離工程では、前記モールドを弾性変形させながら剥離することを特徴とする請求項4〜7の何れか1に記載のニードルシートの製造方法。
【請求項9】
前記ポリマー材料は乾燥により収縮し易い材料であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1に記載のニードルシートの製造方法。
【請求項10】
前記ポリマー材料はゼラチンを含むことを特徴とする請求項1〜9の何れか1に記載のニードルシートの製造方法。
【請求項11】
前記ニードルシートは、ポリマー材料に薬剤と色素とを含有させた経皮吸収シートであることを特徴とする請求項1〜10の何れか1に記載のニードルシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−245055(P2011−245055A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121762(P2010−121762)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】