説明

ヌクレオシド合成のための耐熱性生物触媒組合せ

本発明は、a)プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ、E.C.2.4.2.1)をコードする配列、b)ウリジンホスホリラーゼ(UPアーゼE.C.2.4.2.3)をコードする配列、c)またはその双方を含んでなる組換え発現ベクターであって、該配列はそれぞれ好適な発現宿主において前記ホスホリラーゼの生産を指令する1以上の制御配列に機能的に連結され、これら配列は古細菌テルモプロテウス綱に由来するものであり、PNPアーゼがスルホロブス・ソルファタリカス由来であり(配列番号7)、UPアーゼがアエロピルム・ペルニクス由来である(配列番号8)ことを特徴とする、組換え発現ベクターに関する。
本発明はさらに、リン酸イオンの存在下での糖供与ヌクレオシドと受容塩基との間のトランスグリコシル化方法であって、アエロピルム・ペルニクスのウリジンホスホリラーゼ(UPアーゼ)(NC_000854.2)、スルホロブス・ソルファタリカスのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ)(NC_002754.1)またはその組合せの使用を含んでなる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジーの分野に属す。
【背景技術】
【0002】
(デオキシ)ヌクレオシドは、リボース糖またはデオキシリボース糖(これらは環状ペントースである)と結合したプリンまたはピリミジンのような塩基からなるグリコシルアミンである。これらの例としては、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン、チミジンおよびイノシンが挙げられる。ヌクレオシド類似体は、逆転写酵素阻害剤またはRNAもしくはDNA合成の連鎖停止剤として働くその能力のために、抗ウイルス薬および抗癌薬として広く用いられている[1]。
【0003】
ヌクレオシド類似体の化学合成は、立体選択的に達成されてはいるが、高価なまたは汚染性の試薬を使用し[2]、ともすれば時間のかかる多段階プロセスを含んでいる。生物触媒反応は位置選択的および立体選択的であり、副生成物含量の低減を可能とするので、生物触媒法はヌクレオシドの化学合成に代わる有望な選択肢である。生物触媒法で特に注目されるのは、図1および2に示されているような一般的可逆反応[3]を触媒する酵素による、糖供与ヌクレオシドと受容塩基との間の酵素的トランスグリコシル化である。
【0004】
ヌクレオシドホスホリラーゼは、哺乳類細胞および細菌に広く分布しているトランスフェラーゼであり、ヌクレオシド代謝サルベージ経路において中枢的役割を果たす。それらは二重の機能性を有する。一方で、それらは無機リン酸塩の存在下でリボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドのグリコシド結合の可逆的切断を触媒して、塩基とリボース−1−リン酸またはデオキシリボース−1−リン酸を生成する。プリンヌクレオシドホスホリラーゼおよびピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼを用いるこれらの酵素反応を図1に示す。他方、これらの酵素はプリン塩基またはピリミジン塩基とヌクレオシドとの間のリン酸依存性ペントース転移(すなわち、トランスグリコシル化反応)を触媒して、種々の塩基を有するヌクレオシドを生成する。図2はヌクレオシドホスホリラーゼを用いたワンポット合成の例を示す。
【0005】
ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼとプリンヌクレオシドホスホリラーゼとを組み合わせて用いる場合、用いる出発材料によって、供与ピリミジンヌクレオシドからプリンまたはピリミジン受容塩基への、ならびに供与プリンヌクレオシドからピリミジンまたはプリン受容塩基への糖の転移を可能とする[4]。結果として、種々の供給源、主として細菌に由来するヌクレオシドホスホリラーゼが、ヌクレオシド類似体の酵素的合成の手段として用いられてきた。
【0006】
本質的に、これらの酵素は、酵素的トランスグリコシル化により改変されたヌクレオシドを得るための多くの研究においてヌクレオシドホスホリラーゼの供給源として用いられてきた種々の微生物株、特に、好熱細菌(すなわち、45℃〜80℃の間の温度で生育する細菌)において記載されている。しかしながら、これらの研究で目的生成物の収率は十分に高かったが、トランスグリコシル化に必要な酵素活性の量または比率は至適化されていなかった[5]。それらは反応時間の相当な延長(最大数日)かまたは必要な転換深度に到達させるために用いる細菌バイオマスの増大のいずれかを要した。
【0007】
その他、トランスグリコシル化プロセスを開発する際には、大量の基質および生成物の可溶化が困難であり、それらの多くが室温の水性媒体中での可溶性が低いという別の問題も生じる。この問題は高温を用いれば解決することができるが、これらのより過酷な反応条件で十分に安定な酵素が必要となる。
【0008】
古細菌(Archaea)は生命の3つのドメインのうちの1つである単細胞微生物の群であり、その他は真正細菌(Bacteria)と真核生物(Eukarya)である。それらはかつてタクソン細菌下で古細菌(Archaebacteria)と呼ばれていたが、現在では、分けられて別のものであると考えられている。古細菌ドメインは現在、ユリ古細菌門(Euryarchaeota)とクレン古細菌門(Crenarchaeota)という2つの主要な門に分けられている。ユリ古細菌門として、メタン生成微生物、高度好塩菌、好熱好酸性および数種の超好熱菌の混合物が挙げらる。これに対し、クレン古細菌は超好熱菌のみが挙げられる。超好熱菌は、60℃を超え、最適には80℃を超える、極めて高熱の環境で生育する生物である。
【0009】
Cacciapuoti et al.[6〜8]は、超好熱古細菌由来の2つのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ)を記載し、特に、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来の酵素5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンホスホリラーゼII(SsMTAPII、EC2.4.2.28)およびパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来のプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PfPNP)を開示している。パイロコッカス・フリオサス酵素は最初にMTAPIIとの注釈が付けられたが、メチルチオアデノシンを切断できなかったことからPNPと改称された。スルホロブス・ソルファタリカスはクレン古細菌に属し、パイロコッカス・フリオサスはユリ古細菌に属す。上記のECコードは、酵素をそれらが触媒する反応によって分類する、International Union of Biochemistry and Molecular Biologyにより提供されている慣例の酵素名である。
【0010】
超好熱菌由来の特徴的なほとんどの酵素は、宿主生物の至適増殖温度付近の温度に至適活性がある。クローニングし、大腸菌(Escherichia coli)のような中温性宿主で発現させた場合、超好熱酵素は通常それらの熱特性を保持する。この酵素は、宿主生物の至適増殖温度よりはるかに高い温度に至適活性がある場合もある[9]。また、生物の至適増殖温度より10℃〜20℃低い温度に至適活性があると記載されている酵素もある[10〜11]。しかしながら、スルホロブス・ソルファタリカス5’−メチルチオアデノシンホスホリラーゼ(6つのサブユニット内ジスルフィド架橋を含む6量体酵素)は、中温性宿主で発現させると、不適切なジスルフィド架橋を形成し、天然酵素よりも安定性および好熱性が低い[12]。
【0011】
テルモプロテウス綱(Thermoprotei)は超好熱クラスのクレン古細菌である。古細菌テルモプロテウス綱で配列決定され利用可能なゲノムから、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.1)に関する配列は3つのみ、ウリジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.3)に関する配列は3つのみ見つかった。これらの6つのタンパク質はそれぞれUniProtKB/TrEMBLに、テルモフィルム・ペンデンス(Thermofilum pendens)(Hrk5株)由来の仮説タンパク質は受託番号:A1RW90(A1RW90_THEPD);スルホロブス・ソルファタリカスの仮説タンパク質はQ97Y30(Q97Y30_SULSO);スタフィロテルムス・マリナス(Staphylothermus marinus)(ATCC43588/DSM3639/F1株)由来の仮説タンパク質はA3DME1(A3DME1_STAMF);アエロピルム・ペルニクス(アエロピルム・ペルニクス)由来の仮説タンパク質はQ9YA34(Q9YA34_AERPE);ハイパーサーマス・ブチリカス(DSM5456/JCM9403株)由来の仮説タンパク質はA2BJ06(A2BJ06_HYPBU);およびアシディロブス・サッカロボランス(Acidilobus saccharovorans)(DSM16705/VKMB−2471/345−15株)由来の仮説タンパク質はD9PZN7(D9PZN7_ACIS3)のアクセッション番号で登録されている。これらの配列は総て、未検証との注釈がついており、古細菌におけるそれらの存在はコンピューターで確認されたに過ぎないことを意味する。
【0012】
たとえ多くの遺伝子が大腸菌(Escherichia coli)で首尾よく高収率で発現できたとしても、超好熱菌由来のいくつかのタンパク質は、1つには稀なコドン利用のために、発現が低いか全く発現しない。実際に、本発明者らの知る限り、上記遺伝子のいずれかの発現に成功したというグループはまだない。
【0013】
上記の欠点を鑑みて、また、技術的な難しさを鑑みて、本発明者らは予期しないことに、実施可能な組換えベクターを作製し、重要なことには、60℃より高い温度に至適活性がある組換えホスホリラーゼを得ることができた。本発明の耐熱性かつ化学的に安定な触媒は、古細菌テルモプロテウス綱に由来するプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ、E.C.2.4.2.1)、およびウリジンホスホリラーゼ(UPアーゼ、E.C.2.4.2.3)であり、ここで、PNPアーゼはスルホロブス・ソルファタリカスに由来し(配列番号7)、UPアーゼはアエロピルム・ペルニクスに由来する(配列番号8)。
【0014】
特に、驚くべきことに、超好熱テルモプロテウス綱に由来する組換えヌクレオシドホスホリラーゼは高い耐熱性、高い触媒効率および100℃付近またはそれを超える温度での至適酵素活性のような独特な構造機能特性を有することが判明した。これらの組換え酵素は、天然および修飾ヌクレオシド類似体の工業生産を目的とするトランスグリコシル化反応のために、細胞溶解液の形態で、かつ、粗抽出液または精製抽出液の形態で使用できるのが有利である。それらは特に、水性媒体中、有機溶媒中、60℃〜120℃の温度で、またはこれらのパラメーターの組合せで、トランスグリコシル化を触媒して、多くの多様な種類のヌクレオシドを許容される生産収率、反応時間で、経済的な量の酵素を用いて生産するため用途が広い。重要なことには、本発明に記載の生物触媒は、基質または反応生成物を可溶化するために、有機溶媒、60℃より高い温度またはその双方の存在を必要とする生物変換反応に使用可能である。これらのホスホリラーゼは、水に不溶な基質と反応させるのが理想的である。これらのホスホリラーゼのもう1つの利点はそれらの有機溶媒耐性にあり、すなわち、それらは数反応サイクルの間、再利用することができる。
【0015】
より有利には、本発明は、ヌクレオシドのワンポット合成に有用なテルモプロテウス綱ヌクレオシドホスホリラーゼの組合せを提供する。酵素は、天然ヌクレオシドまたは類似体ヌクレオシドを生産するために、1段階(ワンポット)合成法または2段階合成法において使用することができる。1段階合成では、ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼおよびプリンヌクレオシドホスホリラーゼは、糖に結合された塩基を別の選択肢に変更するために同じバッチを用いる。2段階では、ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼは、ピリミジンヌクレオシドの糖の遊離に用いられ、次に、1−リン酸−糖が単離され、その後、別の溶液で、プリンヌクレオシドホスホリラーゼを用いてプリン塩基をその糖と結合させる。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、a)プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ、E.C.2.4.2.1)をコードする配列、b)ウリジンホスホリラーゼ(UPアーゼE.C.2.4.2.3)をコードする配列、c)またはその双方を含んでなる組換えベクターであって、該配列はそれぞれ好適な発現宿主において前記ホスホリラーゼの生産を指令する1以上の制御配列に機能的に連結され、これら配列は古細菌テルモプロテウス綱に由来するものであり、PNPアーゼがスルホロブス・ソルファタリカス由来であり(配列番号7)、UPアーゼがアエロピルム・ペルニクス由来である(配列番号8)ことを特徴とする、組換え発現ベクターに関する。
【0017】
さらに、本発明は、リン酸イオンの存在下で糖供与ヌクレオシドと受容塩基との間のトランスグリコシル化法に関し、前記方法は、アエロピルム・ペルニクスのウリジンホスホリラーゼ(UPアーゼ)(National Center for Biotechnology Information Reference Sequence:NC_000854.2)、スルホロブス・ソルファタリカスプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ)(NCBI RefSeq:NC_002754.1)、またはその組合せの使用を含んでなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ヌクレオシドホスホリラーゼにより触媒される2つの酵素反応の例を示す。上段の1つ目の反応は、オキソニウム様中間体を介したS1様機構によって起こる加リン酸分解であり、α−リボース−1−リン酸が得られる。2つ目の反応は、リン酸が塩基により置換されるS2機構によって起こり、β−ヌクレオシドが得られる[13]。このスキームでは、ウリジンヌクレオシドホスホリラーゼは、ウリジンのC−Nグリコシド結合の加リン酸分解切断を触媒し、リボース−1−リン酸とウラシルとが得られる。プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(アデノシンヌクレオシドホスホリラーゼ)は第二の基質としての無機オルトリン酸(P)の存在下でグリコシド結合の切断を触媒し、プリン塩基とリボース(デオキシリボース)−1−リン酸とを生じる。天然基質では、これらの反応は可逆的である。
【図2】ヌクレオシドホスホリラーゼ酵素を用いたワンポット合成のスキーム。
【図3】図3は、クローニング前の最初の発現ベクターpET102/D−TOPO(商標)の遺伝子地図を示す。ベクター長6315ヌクレオチド。T7プロモーター:塩基209〜225;T7プロモータープライミング部位:塩基209〜228;lacオペレーター(lacO):塩基228〜252;リボソーム結合部位(RBS):塩基282〜288;Hisパッチ(HP)チオレドキシンORF:塩基298〜627;TrxFusフォワードプライミング部位:塩基607〜624;EK認識部位:塩基643〜657;TOPO(商標)認識部位1:塩基670〜674;オーバーハング:塩基675〜678;TOPO(商標)認識部位2:塩基679〜683;V5エピトープ:塩基700〜741;ポリヒスチジン(6xHis)領域:塩基751〜768;T7リバースプライミング部位:塩基822〜841;T7転写終結領域:塩基783〜911;blaプロモーター:塩基1407〜1505;アンピシリン(bla)耐性遺伝子(ORF):塩基1506〜2366;pBR322オリジン:塩基2511〜3184;ROP ORF:塩基3552〜3743(相補鎖);lacI ORF:塩基5055〜6146(相補鎖)。
【図4】図4は、5つの温度と3つのpH値とを組み合わせて、温度とpHの7つの組合せとした「Doehlertマトリックス」を示す。
【図5】UPアーゼ活性に対するpHと温度との相互作用効果を示すコンタープロット。データは、「Minitab」ソフトウエアを用い、Response Surface Methodology (RSM)で統計学的解析した。この酵素は高い好熱性を表し、その活性は最高アッセイ温度(100℃)まで急速に増加し、この活性は中性(6.5〜7.5)前後、好ましくは7.0前後に明確なpH至適を示した。
【図6】PNPアーゼ活性に対するpHと温度の相互作用効果を示すコンタープロット。データは、「Minitab」ソフトウエアを用い、Response Surface Methodology (RSM)で統計学的解析した。この酵素は高い好熱性を表し、その活性は最高アッセイ温度(100℃)まで急速に増加し、この活性は中性(6.5〜7.0)前後に明確なpH至適を示した。
【図7】図7は、スルホロブス・ソルファタリカスのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ)a.k.a. deoD遺伝子のコード領域のDNA配列(配列番号7)を示す。GenBank受託番号AE006766。
【図8】図8は、アエロピルム・ペルニクスのピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ(UPアーゼ)a.k.a. udp遺伝子のコード領域のDNA配列(配列番号8)を示す。GenBank受託番号NC000854。
【発明の具体的説明】
【0019】
本発明は、a)プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ、E.C.2.4.2.1)をコードする配列、b)ウリジンホスホリラーゼ(UPアーゼE.C.2.4.2.3)をコードする配列、c)またはその双方を含んでなる組換え発現ベクターであって、該配列はそれぞれ好適な発現宿主において前記ホスホリラーゼの生産を指令する1以上の制御配列に機能的に連結され、これら配列は古細菌テルモプロテウス綱に由来するものであり、PNPアーゼがスルホロブス・ソルファタリカス由来であり(配列番号7)、UPアーゼがアエロピルム・ペルニクス由来である(配列番号8)ことを特徴とする、組換え発現ベクターに関する。
【0020】
アエロピルム・ペルニクスおよびスルホロブス・ソルファタリカスは90℃を超える高温で増殖することができる超好熱古細菌である。古細菌は、真核生物および原核生物とは異なる第3の生物群に属す。古細菌は原始生物の系統を引くと考えられ、進化もせず、通常の温度環境にも適応しなかった特殊な生物である。
【0021】
UPアーゼおよびPNPアーゼは、それらの細胞内の天然環境では、工業レベルで所望されるような高収率で、ヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体の合成ができない。この重大な制限を克服するために、本発明者らは、udp遺伝子およびdeoD遺伝子と、細菌のような選択された宿主においてヌクレオシドホスホリラーゼを過剰発現させるのに適当なエレメントとを含んでなる発現ベクターを設計すべく組換えDNA技術を用いてきた。設計された発現ベクターはまた、種々のホスホリラーゼの可溶化および精製を助ける。
【0022】
本発明のベクターは、種々のヌクレオシドホスホリラーゼをコードするヌクレオチド配列と、前記ベクターの宿主細胞内での選択および自己複製を可能とするヌクレオチド配列とを含んでなる。
【0023】
組換え発現ベクターの構築は従来の組換えDNA技術、すなわち、無細胞系においてDNAセグメントを連結する手法を用いて行う。
【0024】
「ベクター」とは、適当な大きさの別のDNA断片が、そのベクターの自己複製能を消失することなく組み込まれ(クローニングされ)得るウイルス、プラスミドまたは高等生物の細胞に起源するDNA分子を意味する。例としては、プラスミド、コスミド、および酵母人工染色体がある。ベクターは多くの場合、いくつかの供給源由来のDNA配列を含有する組換え分子である。「発現ベクター」とは、クローニングされた遺伝子または遺伝子群の転写および翻訳を可能とするのに必要な制御または調節配列をさらに含んでなるベクターを意味する。本発明には環状または線状化DNAベクターが有用である。
【0025】
本発明のベクターの宿主細胞内での選択および自己複製を可能とするためには、選択されるベクターは選択された宿主細胞に適合しなければならない。好ましい実施形態では、前記ベクターを選択可能とし、大腸菌で自己複製可能とするヌクレオチド配列は、選択された大腸菌株のT7RNAポリメラーゼをプロモーターと結合可能とする遺伝子をコードするT7プロモーターである。「選択可能」とは、そのベクターが後代細菌で安定を維持することを意味する。選択は、ベクター中の適当な選択マーカー遺伝子(そのマーカー遺伝子の発現によって、そのベクターで形質転換された細胞の同定が可能になる)の導入に応じたストリンジェントな培地条件によって達成される。選択マーカー遺伝子は多くの場合、抗生物質耐性遺伝子である。本発明に関して好ましい選択マーカー遺伝子は、カナマイシン、テトラサイクリン、カルベニシリン、より好ましくはアンピシリンである。
【0026】
本発明はさらに、上述の組換え発現ベクターのいずれか一方または双方の組換え発現ベクターを同じ宿主細胞内に含んでなる宿主細胞に関する。
【0027】
「宿主細胞」とは、PNPアーゼまたはUPアーゼヌクレオチド配列を含んでなる組換え発現ベクターで形質転換された細胞を意味する。組換えDNAベクターの別の態様では、宿主細胞にヌクレオシドホスホリラーゼを生産させ、培地条件が好適である場合に、前記ヌクレオシドホスホリラーゼはヌクレオシドの取得を触媒する。本発明の特定の実施形態では、それぞれスルホロブス・ソルファタリカスおよびアエロピルム・ペルニクス由来のPNPアーゼ遺伝子およびUPアーゼ遺伝子をDNA発現ベクターに導入した。図7および図8は、本発明に関連する核酸およびアミノ酸配列、すなわち、それぞれスルホロブス・ソルファタリカスdeoDの核酸配列(配列番号7)およびアエロピルム・ペルニクスudp(配列番号8)の核酸配列の一覧である。
【0028】
当業者ならば、ヌクレオシド生産を最大にするために、最初のベクターおよび宿主細胞株から構成される発現系を適宜選択することができる。
【0029】
一実施形態において、宿主細胞は大腸菌である。
【0030】
特定の実施形態では、大腸菌はBL21細菌株に属す。大腸菌BL21に好適な発現ベクターは、例えばpETベクター、trcHisベクターおよびpUBベクター(これらは総てInvitrogen製)、ならびにpGEXベクターおよびGSTベクター(Amersham製)である。大腸菌DH5α細菌株とpUCベクターとの組合せ、および大腸菌F’とPSLベクター、PEZZベクターまたはM13ベクター(これらは総てAmersham製)との組合せも本発明において有用である。
【0031】
一実施形態において、宿主細胞は処理されたものであっても溶解液の形態であってもよい。
【0032】
本発明はさらに、リン酸イオンの存在下での糖供与ヌクレオシドと受容塩基との間のトランスグリコシル化法に関し、該方法は、アエロピルム・ペルニクスのウリジンホスホリラーゼ(UPアーゼ)(NC_000854.2)、スルホロブス・ソルファタリカスのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ)(NC_002754.1)またはそれらの組合せの使用を含んでなることを特徴とする。
【0033】
「糖供与ヌクレオシド」とは、β−グリコシド結合を介してリボースまたはデオキシリボース糖と結合した核酸塩基(単に塩基と呼ぶことが多い)からなるグリコシルアミンを意味する。「糖供与ヌクレオシド」としては、限定されるものではないが、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン、チミジンおよびイノシン、ならびにD−リボースまたは2’−デオキシリボースを含む天然または修飾ヌクレオシド;2’位、3’位および/または5’位が修飾されたリボース基を含むヌクレオシド;および糖がβ−D−アラビノース、α−L−キシロース、3’−デオキシリボース、3’,5’−ジデオキシリボース、2’,3’−ジデオキシリボース、5’−デオキシリボース、2’,5’−ジデオキシリボース、2’−アミノ−2’−デオキシリボース、3’−アミノ−3’−デオキシリボース、または2’−フルオロ−2’−デオキシリボースであるヌクレオシドが挙げられる。
【0034】
「受容塩基」とは、核酸塩基、ヌクレオチド塩基、窒素塩基、または単に塩基を意味する。本来、塩基はDNAまたはRNAの一部である。主要な核酸塩基はシトシン、グアニン、アデニン(DNAおよびRNA)、チミン(DNA)およびウラシル(RNA)であり、それぞれC、G、A、TおよびUと省略される。本発明において「受容塩基」とは、修飾された核酸塩基および類似体核酸塩基を含んでなるものを意味する。DNAの場合、最も一般的な修飾塩基は5−メチルシチジン(m5C)である。RNAの場合には、多くの修飾塩基が存在し、シュードウリジン(Ψ)、ジヒドロウリジン(D)、イノシン(I)、リボチミジン(rT)および7−メチルグアノシン(m7G)が挙げられる。ヒポキサンチンおよびキサンチンは、突然変異誘発物質の存在によって作出される多くの塩基のうちの2つである。受容塩基の他の例としては、天然または置換ピリミジンおよびプリン塩基;1位、2位、6位の1箇所以上で置換されたプリン塩基;3位、5位の1箇所以上で置換されたピリミジン塩基;およびプリン、2−アザプリン、8−アザプリン、1−デアザプリン(イミダゾピリジン)、3−デアザプリン、7−デアザプリン、2,6−ジアミノプリン、5−フルオロウラシル、5−トリフルオロメチルウラシル、トランス−ゼアチン、2−クロロ−6−メチルアミノプリン、6−ジメチルアミノプリン、6−メルカプトプリンが挙げられる。
【0035】
このトランスグリコシル化法は、ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体、および特に、ヌクレオシド部分またはその類似体を含んでなる、含む、または、からなる活性医薬成分(active pharmaceutical ingredients)(API)の調製に有用である。APIを薬品(医薬品)の製造に用いることを意図する任意の物質または物質の混合物として理解すれば、それは薬剤の製造に用いる場合には、薬品の有効成分となる。このような物質は薬理活性または疾病の診断、治癒、緩和、治療もしくは予防における他の効果を与えること、または身体の構造および機能に影響を与えることを意図する(Eudralex, Part II of volume 4 EU Guidelines to Good Manufacturing Practice)。
【0036】
ウリジンホスホリラーゼ(UPアーゼE.C.2.4.2.3)とプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP;E.C.2.4.2.1)との組合せは、供与ヌクレオシドから受容塩基へ糖部分を効率的に転移させる。
【0037】
出発材料として他のピリミジンヌクレオシドおよびピリミジン塩基を用いてピリミジンヌクレオシドを製造する場合には、UPアーゼ単独の使用で十分であるが、PNPアーゼもこの加リン酸分解工程に寄与し得るので、PNPアーゼおよびUPアーゼの両酵素を使用することが好ましい。これに対し、出発材料として他のプリンヌクレオシドおよびプリン塩基を用いてプリンヌクレオシドを製造する場合には、PNPアーゼおよびUPアーゼ双方の使用も好ましい。他方、ピリミジンヌクレオシドからプリンヌクレオシドへ、例えば、ウリジンから2,6ジアミノプリンリボシドへの反応である場合には、PNPアーゼおよびUPアーゼの両酵素を用いる方が、別々に各酵素を用いるよりもはるかに上手く行く。
【0038】
好ましくは、トランスグリコシル化法はUPアーゼとPNPアーゼとの組合せを用いる。特にトランスグリコシル化反応に最適な生物触媒を得るためには、粗細胞溶解液または明澄化した粗酵素溶液を種々の割合で混合すればよい。
【0039】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、アエロピルム・ペルニクスのUPアーゼおよびスルホロブス・ソルファタリカスのPNPアーゼは、上記および以下に示される実施形態のいずれか一つに従って宿主細胞により提供される。
【0040】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法において、UPアーゼ、PNPアーゼまたはそれらの組合せは溶解液の形態で用いられる。
【0041】
一実施形態において、トランスグリコシル化法は、(i)宿主細胞を好適な培養培地で培養する工程;(ii)UPアーゼ、PNPアーゼまたはその双方を過剰発現させる工程;(iii)所望により細胞溶解液を作製する工程;(iv)糖供与ヌクレオシド、受容塩基およびリン酸イオンを加える工程;および(v)反応混合物からヌクレオシドを回収する工程を含んでなる。
【0042】
特定の実施形態では、ベクターを含んでなる大腸菌形質転換体は、トリプトン、酵母抽出液、塩化ナトリウム、ならびにカナマイシン、テトラサイクリン、カルベニシリンおよびアンピシリンからなる群から選択される抗生物質を含んでなる培養培地中、好ましくは37℃にて、およそ600nmの波長で光学密度が0.5〜0.8となるまで増殖させてもよい。次に、培養物にイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度100mg/lとなるように加え、6〜12時間の間37℃で誘導を行えばよい。細胞は4℃で遠心分離することにより回収することができ、細胞ペレットは3回の凍結−解凍サイクルによって溶解させればよい。これらの組換え宿主細胞は当業者に公知の標準的な技術によって破砕すればよい。得られた細胞溶解液はそのまま生物触媒として用いてもよいし、あるいは遠心分離を行って細胞残渣を除去し、明澄化した粗酵素溶液を得てもよい。本明細書において「生物触媒」とは、基質の生成物への変換、この場合にはヌクレオシドの生体変換を触媒し得る任意の生物学的存在を意味する。
【0043】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、糖供与ヌクレオシドは、D−リボースおよび2’−デオキシリボースを含む天然または修飾ヌクレオシ;2’位、3’位および/または5’位で修飾されたリボース基を含むヌクレオシド;および糖がβ−D−アラビノース、α−L−キシロース、3’−デオキシリボース、3’,5’−ジデオキシリボース、2’,3’−ジデオキシリボース、5’−デオキシリボース、2’,5’−ジデオキシリボース、2’−アミノ−2’−デオキシリボース、3’−アミノ−3’−デオキシリボース、2’−フルオロ−2’−デオキシリボースであるヌクレオシドから選択される。
【0044】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、受容塩基は、天然または置換ピリミジン塩基およびプリン塩基;プリン環の1位、2位、6位またはその組合せの位置で置換されたプリン塩基;ピリミジン環の3位、5位またはその組合せの位置で置換されたピリミジン塩基;例えば、プリン、2−アザプリン、8−アザプリン、1−デアザプリン(イミダゾピリジン)、3−デアザプリン、7−デアザプリン、2,6−ジアミノプリン、5−フルオロウラシル、5−トリフルオロメチルウラシル、トランス−ゼアチン、2−クロロ−6−メチルアミノプリン、6−ジメチルアミノプリン、6−メルカプトプリンから選択される。
【0045】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、得られるヌクレオシド類似体は当技術分野で知られているような活性医薬成分(API)である。
【0046】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、該方法は60〜100℃の間で行われる。
【0047】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、水性媒体中、または非プロトン性極性共溶媒系で行われる。
【0048】
一実施形態において、非プロトン性極性共溶媒系はジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、またはその任意の組合せから選択される。
【0049】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、糖供与ヌクレオシドはウリジンおよび2’−デオキシウリジンから選択され、受容塩基は2,6−ジアミノプリンである。
【0050】
一実施形態において、本発明は、糖部分の供与体としてウリジンまたは2’−デオキシウリジンを用いる、ヌクレオシドのワンポット合成を提供するが、これは本発明の組換えUPアーゼ酵素がこれらの基質に最も特異的であるからである。しかしながら、この酵素は、B.ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)などの多くの下等生物であいにく見られるように[14]、ウリジン、2’−デオキシウリジンと他のピリミジンヌクレオシドを識別しないので、いずれかの糖部分供与体とともに使用することができる。
【0051】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、糖供与ヌクレオシドはウリジンおよび2’−デオキシウリジンから選択され、受容塩基は5−フルオロウラシルである。
【0052】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、糖供与ヌクレオシドはウリジンおよび2’−デオキシウリジンから選択され、受容塩基は5−トリフルオロメチルウラシルである。
【0053】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、糖供与ヌクレオシドはウリジンおよび2’−デオキシウリジンから選択され、受容塩基はトランス−ゼアチンである。
【0054】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、糖供与ヌクレオシドはウリジンおよび2’−デオキシウリジンから選択され、受容塩基は2−クロロ−6−メチルアミノプリンである。
【0055】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、糖供与ヌクレオシドはウリジンおよび2’−デオキシウリジンから選択され、受容塩基は6−ジメチルアミノプリンである。
【0056】
一実施形態において、本発明のトランスグリコシル化法では、糖供与ヌクレオシドはウリジンおよび2’−デオキシウリジンから選択され、受容塩基は6−メルカプトプリンである。
【0057】
「耐熱性ヌクレオシドホスホリラーゼ」とは、熱に安定で、耐熱性があり、別の反応を果たすのに十分なヌクレオシドホスホリラーゼ活性を保持し、かつ、トランスグリコシル化反応を果たすのに必要な時間、温度上昇に曝されても不可逆的に変性しない(不活性にならない)酵素を意味する。
【0058】
以下に示す実施例の目的は、その適用分野の限定を構成するものではなく、本発明を説明することである。
【実施例】
【0059】
上述のように、本発明によるトランスグリコシル化反応は、UPアーゼまたはPNPアーゼ生産細胞から得られたUPアーゼ酵素およびPNPアーゼ酵素を用いて行った。このような細胞は、好ましくは、多量のUPアーゼまたはPNPアーゼを発現することができる遺伝的に改変された大腸菌細胞である。このような細胞を得る方法、酵素およびそれらの特徴、ならびにいくつかのヌクレオシド類似体の生産を、以下に示す添付の実施例で示す。
【0060】
実施例1
大腸菌deoDの構築
スルホロブス・ソルファタリカスのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ)配列はGenBankで受託番号AE006766として見出された。この遺伝子を、2単位のPlationum Pfx酵素(Invitrogen)、1mM MgSOおよび1×酵素増幅バッファー、200μM dNTPおよび0.3μMの各プライマーを、スルホロブス・ソルファタリカスP2由来のオリゴヌクレオチド5’-caccgtgccatttttagaaaatggttcc-3’(スルホロブス・ソルファタリカスdeoDフォワード;配列番号1)および5’-aatcagttttaagaatcttaaggtaat-3’(スルホロブス・ソルファタリカスdeoDリバース;配列番号2)[15]とともに用いてPCRにより増幅した。PCR反応は、初期変性工程94℃で30分、その後、変性工程94℃で1分、アニーリング/伸長工程60℃で1.5分および68℃で1分の温度サイクル36回で行った。36サイクルの後、サンプルを68℃に10分、最後に4℃に曝した。PCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析し、そのゲルからDNAバンドを精製した(S.N.A.P.(商標)UV−Freeゲル精製キット、Invitrogen)。増幅断片を、アンピシリン耐性遺伝子を保持するpUC18ベクター[17]のポリリンカー領域にクローニングした。クローニング領域を完全に配列決定したところ、データバンク配列と完全に同一であることが判明した。
【0061】
実施例2
大腸菌udpの構築
アエロピルム・ペルニクスのピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ(UPアーゼ)配列はGenBankで受託番号NC_000854.2として見出された。この遺伝子を、2単位のPlationum Pfx酵素(Invitrogen)、1mM MgSOおよび1×酵素増幅バッファー、200μM dNTPおよび0.3μMの各プライマーを、アエロピルム・ペルニクスK1由来のオリゴヌクレオチド5’-caccgtggcccgctacgttctcctc-3’(アエロピルム・ペルニクスudpフォワード;配列番号3)および5’-gaattcctatgtgcgtctgcacgccagg-3’(アエロピルム・ペルニクス リバース;配列番号4)[16]とともに用いてPCRにより増幅した。PCR反応は初期変性工程94℃で30分、その後、変性工程94℃で1分、アニーリング/伸長工程60℃で1.5分および68℃で1分の温度サイクル36回で行った。36サイクルの後、サンプルを68℃に10分、最後に4℃に曝した。PCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析し、そのゲルからDNAバンドを精製した(S.N.A.P.(商標)UV−Freeゲル精製キット、Invitrogen)。増幅断片を、アンピシリン耐性遺伝子を保持するpUC18ベクター[17]のポリリンカー領域にクローニングした。クローニング領域を完全に配列決定したところ、データバンク配列と完全に同一であることが判明した。
【0062】
実施例3
pET102/D−TOPO(商標)ベクターへのクローニングおよび細胞の形質転換
アエロピルム・ペルニクスudp遺伝子配列およびスルホロブス・ソルファタリカスdeoD遺伝子配列を含むDNA断片を、プラスミド複製のためのpBR322ori、アンピシリン耐性遺伝子、T7 RNAポリメラーゼの結合が可能なT7プロモーター、イソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)が存在しない場合に発現の阻害を可能等するlacオペレーター、RNAの翻訳のためのリボソーム結合部位、融合タンパク質の溶解度を高めるためのHisパッチ−チオレドキシン、ならびに融合タンパク質の検出および精製のためのポリヒスチジンタグ(6xHis)を含んでなるpET102/D−TOPO(商標)ベクター(pET102 Directional TOPO(商標)発現キット、Invitrogen)にクローニングした(図3)。このベクターを熱ショックにより、異種遺伝子の調節発現に用いられる市販株である大腸菌BL21(pET102 Directional TOPO(商標)発現キット、Invitrogen)に導入した。これはT7 RNAポリメラーゼをコードする遺伝子を含んでなり、これにより、この株はIPTGによる組換えタンパク質の過剰発現のためのT7プロモーターを含んでなるpETベクターの使用に適合するようになる。
【0063】
得られた組換えベクターを、DNAを制限酵素HindIII 10単位で処理することによって分析した。陽性クローンを、シーケンシングプライマーTrxFusフォワード5’TTCCTCGACGCTAACCTG3’(配列番号5)およびT7リバース5’TAGTTATTGCTCAGGGGTGG3’(配列番号6)を用いて配列決定した。
【0064】
実施例4
組換え株の発酵
本発明が関連する組換え株をそれぞれ、アンピシリンを添加したトリプチケースソイ(toripticase soy)固体培地、pH=7にてバッチ様式で培養した。この培養物の1コロニーを、Lab−lemcoパウダー10g/l、ペプトン10g/lおよびNaCl 5g/lを含有する栄養ブロスn°2(Oxoid)に、200mg/lアンピシリンを添加したものに通した。これを37℃で激しく振盪しながら(200rpm)インキュベートした。発現プラスミドを保持する大腸菌株を600nmでの光学密度が0.6となるまで増殖させた後、IPTG(最大100mg/l)を加え、さらに8時間培養を続けた。発酵が完了したところで培養培地を遠心分離し、細胞ペレットを30mMのpH7リン酸バッファーで洗浄した。得られたバイオマスを使用するまで−20℃で保存した。
【0065】
実施例5
UPアーゼおよびPNPアーゼの部分精製(細胞溶解液の調製)
タンパク質の部分精製については、酵素UPアーゼまたはPNPアーゼを発現する組換え株の培養物から遠心分離または精密濾過により分離した細胞ペーストを、リゾチーム160mgを添加して0℃で1時間インキュベートした後に、超急速凍結−解凍サイクル(−80℃/37℃)を行い、最後にデオキシリボヌクレアーゼI 1,000単位を加えて粘度を下げることによって破砕した。
【0066】
実施例6
UPアーゼ酵素の酵素活性の測定
UPアーゼ発現細胞の懸濁液を含んでなり、pH7.0のリン酸カリウムバッファーで1:100(容量/容量)に希釈した遠心分離済み細胞溶解液100マイクロリットルを、30℃でプレインキュベートしたpH7.0の100mMリン酸バッファー中75mMのウリジン溶液800マイクロリットルに加えた。5分後に1mlの2N HClを加えることでこの加リン酸分解反応を停止させた。この反応混合物のアリコートを、250×4.6mmのサイズのKromasil 100−5C18(Akzo Nobel)カラムを備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した。溶出は4%メタノール水溶液を用いて行った。この細胞溶解液の酵素活性を、ml当たりの単位(ウラシルのμモル/分/ml)で表し、同じ条件で溶出した標準ウラシル溶液に対して比例計算した。およそ590単位/mlの遠心分離済み細胞溶解液が回収された。
【0067】
実施例7
PNPアーゼ酵素の酵素活性の測定
PNPアーゼ発現細胞の懸濁液を含んでなり、pH7.0のリン酸カリウムバッファーで1:100(容量/容量)に希釈した遠心分離済み細胞溶解液100マイクロリットルを、30℃でプレインキュベートしたpH7.0の100mMリン酸バッファー中60mMのイノシン溶液800マイクロリットルに加えた。正確に10分後に1mlの2N HClを加えることでこの加リン酸分解反応を停止させた。この反応混合物のアリコートを、250×4.6mmのサイズのKromasil 100−5C18(Akzo Nobel)カラムを備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した。溶出は4%メタノール水溶液を用いて行った。この細胞溶解液の酵素活性をml当たりの単位(ヒポキサンチンのμモル/分/ml)で表し、同じ条件で溶出した標準ヒポキサンチン溶液に対して比例計算した。およそ310単位/mlの遠心分離済み細胞溶解液が回収された。
【0068】
実施例8
トランスグリコシル化触媒活性の測定
トランスグリコシル化触媒活性の測定については、実施例6および7の場合と同様に測定したUPアーゼ:PNPアーゼ酵素活性比が約1:1となるように溶解液を混合することにより、UPアーゼおよびPNPアーゼの双方を含有する細胞溶解液の混合物を作製した。トランスグリコシル化反応は以下の条件において分析的規模で行った:250μlの細胞溶解液(UPアーゼおよびPNPアーゼ各酵素活性14単位に相当)を、以下の組成:4mM 1−β−D−リボフラノシルウラシル(ウリジンヌクレオシド)、4mMアデニン塩基、30mMリン酸カリウムバッファーpH7を有する10mlの溶液に加え、サーモスタットで60℃に制御した。60℃で1.5時間後、混合物を1:5希釈し、氷冷することにより反応を停止させた。アデニン塩基の9−β−D−リボフラノシルアデニン(アデノシンヌクレオシド)の生物変換のパーセンテージは、反応混合物のアリコートを、250×4.6mmのサイズのKromasil 100−5C18(Akzo Nobel)カラムを用い、4%メタノール−水溶液で溶出する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析することにより測定した。トランスグリコシル化触媒活性を、単位/ml(1.5時間で形成されたAra−Aのμモル/細胞溶解液混合物ml)または単位/湿潤樹脂g(1.5時間で形成されたD−リボフラノシルアデニンのμモル/細胞溶解液ml)で表し、同じ条件でHPLCにより溶出された標準的なD−リボフラノシルアデニン溶液に対して比例計算した。これらの条件下で、約55パーセントのアデノシンヌクレオシドが形成された(およそ9単位/細胞溶解液ml)。
【0069】
実施例9
ヌクレオシドホスホリラーゼ活性に対する温度およびpHの効果
ヌクレオシドホスホリラーゼの性能に対するpHおよび温度の影響を、「実験計画法」を用いて検討した。最大酵素活性が得られる条件を確認するために種々の温度と種々のpH値を組み合わせた。実験範囲を80℃〜100℃およびpH5.5〜8.5の間と定義した。図4に示されるように、「Doehlertマトリックス」に従って5つの温度を3つのpHと組み合わせて、温度とpHの7つの組合せとした。基質を選択された反応溶液および温度で酵素を伴わずにインキュベートした後、酵素を加え、選択された条件でインキュベートした。これらのサンプルをPNPアーゼまたはUPアーゼ酵素の酵素活性を測定するために上記のように処理した。活性値は対応する観測最大値(100%)に対するパーセンテージとして表した。結果はそれぞれ図5および6に示す。
【0070】
実施例10
耐熱性
酵素の耐熱性は80℃でアッセイした。pH7.0〜7.2のリン酸カリウムバッファーで1:100または1:1000容量/容量希釈した、UPアーゼまたは/およびPNPアーゼ発現細胞の懸濁液(細胞溶解液)100〜200マイクロリットルの間の酵素アリコートを調製した。これらの生物触媒を80℃で種々の時間インキュベートした。加熱後、これらの溶液をすぐに氷上で保持し、ヌクレオシドホスホリラーゼ活性の測定は実施例6および7に記載のようにして行った。80℃で10時間後にヌクレオシドホスホリラーゼ活性の失活は見られなかった。
【0071】
ヌクレオシドホスホリラーゼ活性に対する溶媒の効果
有機共溶媒は反応に慣用され、単離される酵素は比較的高濃度の共溶媒の条件下で生存できなければならない。実験はメタノール(プロトン性極性溶媒)およびジメチルスルホキシド(非プロトン性の極性溶媒)などの有機溶媒の存在下で実施した。本発明のヌクレオシドホスホリラーゼ酵素は有機溶媒に耐性があり、5および10容量%の有機溶媒を含有するバッファー溶液中で活性を示した。
【0072】
表1 数種の有機溶媒に対するPNPアーゼ酵素の安定性
【表1】

PNPアーゼ酵素を含んでなる細胞溶解液の相対的活性を、2種類の濃度の有機溶媒で、実施例7に記載の標準アッセイを用いて測定し、その相対的活性を、PNPアーゼ酵素を含むが有機溶媒を含まない細胞溶解液の活性と比較した。DMSO:ジメチルスルホキシド;MeOH:メタノール。
【0073】
表2 数種の有機溶媒に対するUPアーゼ酵素の安定性
【表2】

UPアーゼ酵素を含んでなる細胞溶解液の相対的活性を、2種類の濃度の有機溶媒で、実施例6に記載の標準アッセイを用いて測定し、その相対的活性を、UPアーゼ酵素を含むが有機溶媒を含まない細胞溶解液の活性と比較した。DMSO:ジメチルスルホキシド;MeOH:メタノール。
【0074】
実施例11
一般的な生物変換手順
ワンポットトランスグリコシル化反応は、反応試験内で穏やかに攪拌しながら、選択した反応温度およびpHで行った。用いた細胞溶解液混合物の触媒的トランスグリコシル化活性は約12単位/mlであった(実施例8で測定した通り)。PNPアーゼ:UPアーゼ活性比が1:1となるように調製した細胞溶解液混合物を用いてヌクレオシドを作製した。
【0075】
基質は、下記のものであった:
1)2’−デオキシリボース−1−リン酸またはリボース−1−リン酸供与体として働く天然2’−デオキシリボヌクレオシドまたはリボヌクレオシド
2)糖の1位に結合している第二の天然または合成プリン塩基またはピリミジン塩基、
【0076】
反応が終了したところで、反応混合物を遠心分離し、その後、Amicon限外濾過装置(YM−3膜)を用いて濾過し、製造者が示しているプロトコールに従って生成物を分離した。連続反応(一般に3〜5回の間)のため、新たに調製した反応混合物を添加することにより生物触媒を再循環させることができる。濾過溶液は上記と同じ条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりモニタリングした。生物変換収率を塩基類似体の初期濃度に基づいて計算した。
【0077】
実施例12
2,6−ジアミノプリンヌクレオシドの製造
プリンヌクレオシドの製造は、これらの塩基の水性媒体中での溶解度が低いためにより困難である。本発明では、本発明者らは、この問題を解決するために酵素競合特性を用いた。本発明者らが用いた戦略は、これらの基質の溶解度を高めるための有機共溶媒および/または高温の使用を包含した。
【0078】
12.1 共溶媒を用いた2,6−ジアミノプリンヌクレオシドの製造
アッセイは60℃にて、5および10%の非プロトン性二極性共溶媒中で行い、12単位/mlの細胞溶解液を、下記組成:
1. 15mMウリジン/2’−デオキシウリジン、
2. 5mM2,6−ジアミノプリン、および
3. 30mMリン酸カリウムバッファー、pH7
の基質溶液を含み、サーモスタットで60℃に保持した150mlの溶液に加えた。
【0079】
5時間後、反応混合物を4℃、2000×gで30分、カットオフ3000Daを備えたAmicon ultra-4 Centrifugal Filter Devices (Millipore, Bedford, MA)での遠心分離により濾過し、濾液を回収した。表3に、共溶媒の存在下で製造された2,6−ジアミノプリンヌクレオシドの生産収率を示す。得られた2,6−ジアミノプリンヌクレオシド(2,6−ジアミノプリンリボシドまたは2,6−ジアミノプリンデオキシリボシド)をHPLCにより分析した。これらの反応では、生成物が高収率で得られた(80%超)。
【0080】
表3 60℃で種々の%の共溶媒を用いた場合の2,6−ジアミノプリンヌクレオシドの生産収率。THF:テトラヒドロフラン;DMSO:ジメチルスルホキシド
【表3】

【0081】
12.2. 共溶媒を使用しない2,6−ジアミノプリンヌクレオシドの製造
共溶媒を用いない2,6−ジアミノプリンヌクレオシドの製造は、このプリン塩基の水溶解度が限定されているために80℃を超える温度でのみ行うことができた。アッセイは種々の温度(80、90および100℃)で行った。12単位/mlの細胞溶解液を、下記組成:
1. 15mMウリジン/2’−デオキシウリジン、
2. 5mM2,6−ジアミノプリン、および
3. 30mMリン酸カリウムバッファー、pH7
の基質溶液を含み、サーモスタットで選択された温度に保持した150mlの溶液に加えた。
【0082】
5時間後、反応混合物を4℃、2000×gで30分、カットオフ3000Daを備えたAmicon ultra-4 Centrifugal Filter Devices (Millipore, Bedford, MA)での遠心分離により濾過し、濾液を回収した。表3に、共溶媒の存在下で製造された2,6−ジアミノプリンヌクレオシドの生産収率を示す。得られた2,6−ジアミノプリンヌクレオシド(2,6−ジアミノプリンリボシドまたは2,6−ジアミノプリンデオキシリボシド)をHPLCにより分析した。表4に、有機溶媒を用いずに製造した2,6−ジアミノプリンヌクレオシドの生産収率を示す。この反応の生物変換収率はアッセイした総ての温度で80%前後であった。
【0083】
表4 有機共溶媒を用いない場合の種々の温度での2,6−ジアミノプリンヌクレオシドの生産収率
【表4】

【0084】
実施例13
他のヌクレオシドの製造
トランスグリコシル化反応を種々の受容塩基を用いて行った。これらの反応は、80℃で種々の時間、プリン塩基の場合には共溶媒として10%DMSOを用い、また、ピリミジン受容塩基の場合には共溶媒を用いずに行った。生物変換のパーセンテージを受容塩基の初期濃度に対して比例計算し、反応混合物のHPLC分析により測定した。
【0085】
13.1 トリフルオロメチルウラシルヌクレオシドの製造
約12単位/細胞溶解液mlのトランスグリコシル化活性を有する1mlの触媒(細胞溶解液)を、下記組成:
7.5mMウリジン/2’−デオキシウリジン、
2.5mMトリフルオロメチルウラシル、および
20mMリン酸カリウムバッファー、pH7
を含み、サーモスタットで80℃の間に保持した150mlの溶液に加えた。
【0086】
80℃で3時間後、反応混合物を4℃、2000×gで30分、カットオフ3000Daを備えたAmicon ultra-4 Centrifugal Filter Devices (Millipore, Bedford, MA)での遠心分離により濾過し、濾液を回収した。反応の生物変換収率は60%より高かった。得られたトリフルオロメチルウラシルヌクレオシド(トリフルオロメチルウリジンまたは2’−デオキシトリフルオロメチルウリジン)をHPLCにより分析した。
【0087】
13.2 5−フルオロウラシルヌクレオシドの製造
5−フルオロウラシルヌクレオシドは上記のように製造した。約12単位/細胞溶解液mlのトランスグリコシル化活性を有する1ml触媒(細胞溶解液)を、下記組成:
7.5mMウリジン/2’−デオキシウリジン、
2.5mM5−フルオロウラシル、および
30mMリン酸カリウムバッファー、pH7
を含み、サーモスタットで80℃に保持した150mlの溶液に加えた。
【0088】
80℃で3時間後、反応混合物を4℃、2000×gで30分、カットオフ3000Daを備えたAmicon ultra-4 Centrifugal Filter Devices (Millipore, Bedford, MA)での遠心分離により濾過し、濾液を回収した。反応の生物変換収率は50%より高かった。得られた5−フルオロウラシルヌクレオシド(5−フルオロウリジンおよび5−フルオロ−2’−デオキシウリジン)をHPLCにより分析した。
【0089】
13.3 トランス−ゼアチンヌクレオシドの製造
トランス−ゼアチンヌクレオシドは上記のように製造した。約12単位/細胞溶解液mlのトランスグリコシル化活性を有する1ml触媒(細胞溶解液)を、下記組成:
7.5mMウリジン/2’−デオキシウリジン、
2.5mMトランス−ゼアチン、および
30mMリン酸カリウムバッファー、pH7
を含み、サーモスタットで80℃に保持した150mlの溶液に加えた。
【0090】
これらのアッセイは、上記の条件を用い、共溶媒としての10%(v/v)DMSO中で行った。80℃で5時間後、反応混合物を4℃、2000×gで30分、カットオフ3000Daを備えたAmicon ultra-4 Centrifugal Filter Devices (Millipore, Bedford, MA)での遠心分離により濾過し、濾液を回収した。この反応の生物変換収率は80%より高かった。得られたトランス−ゼアチンヌクレオシド(トランス−ゼアチンリボシドおよびトランス−ゼアチンデオキシリボシド)をHPLCにより分析した。
【0091】
13.4 2−クロロ−6−メチルアミノプリンヌクレオシドの製造プロセス
2−クロロ−6−メチルアミノプリンヌクレオシドは上記のように製造した。約12単位/細胞溶解液mlのトランスグリコシル化活性を有する1ml触媒(細胞溶解液)を、下記組成:
15mMウリジン/2’−デオキシウリジン、
5mM2−クロロ−6−メチルアミノプリン、および
30mMリン酸カリウムバッファー、pH7
を含み、サーモスタットで80℃に保持した150mlの溶液に加えた。
【0092】
これらのアッセイは、上記の条件を用い、共溶媒としての10%(v/v)DMSO中で行った。80℃で5時間後、反応混合物を4℃、2000×gで30分、カットオフ3000Daを備えたAmicon ultra-4 Centrifugal Filter Devices (Millipore, Bedford, MA)での遠心分離により濾過し、濾液を回収した。この反応の生物変換収率は80%より高かった。得られた2−クロロ−6−メチルアミノプリンヌクレオシド(2−クロロ−6−メチルアミノプリンリボシドおよび2−クロロ−6−メチルアミノプリンデオキシリボシド)をHPLCにより分析した。
【0093】
13.5 6−ジメチルアミノプリンヌクレオシドの製造
6−ジメチルアミノプリンヌクレオシドは上記のように製造した。約12単位/細胞溶解液mlのトランスグリコシル化活性を有する1ml触媒(細胞溶解液)を、下記組成:
15mMウリジン/2’−デオキシウリジン、
5mM6−ジメチルアミノプリン、および
30mMリン酸カリウムバッファー、pH7
を含み、サーモスタットで80℃に保持した150mlの溶液に加えた。
【0094】
これらのアッセイは、上記の条件を用い、共溶媒としての10%(v/v)DMSO中で行った。80℃で5時間後、反応混合物を4℃、2000×gで30分、カットオフ3000Daを備えたAmicon ultra-4 Centrifugal Filter Devices (Millipore, Bedford, MA)での遠心分離により濾過し、濾液を回収した。この反応の生物変換収率は80%より高かった。得られた6−ジメチルアミノプリンヌクレオシド(6−ジメチルアミノプリンリボシドおよび6−ジメチルアミノプリンデオキシリボシド)をHPLCにより分析した。
【0095】
13.6 6−メルカプトプリンヌクレオシドの製造
6−メルカプトプリンヌクレオシドは上記のように製造した。約12単位/細胞溶解液mlのトランスグリコシル化活性を有する1ml触媒(細胞溶解液)を、下記組成:
15mMウリジン/2’−デオキシウリジン、
5mM6−メルカプトプリン、および
30mMリン酸カリウムバッファー、pH7
を含み、サーモスタットで80℃に保持した150mlの溶液に加えた。
【0096】
これらのアッセイは、上記の条件を用い、共溶媒としての10%(v/v)DMSO中で行った。80℃で5時間後、反応混合物を4℃、2000×gで30分、カットオフ3000Daを備えたAmicon ultra-4 Centrifugal Filter Devices (Millipore, Bedford, MA)での遠心分離により濾過し、濾液を回収した。この反応の生物変換収率は50%より高かった。得られた6−メルカプトプリンヌクレオシド(6−メルカプトプリンリボシドおよび6−メルカプトプリンデオキシリボシド)をHPLCにより分析した。
【0097】
本明細書に引用されている総ての刊行物、特許および特許出願は、個々に引用することにより本明細書の一部とされるかのように、引用することによりその全内容が本発明の一部とされる。
【参照文献】
【0098】
【表5】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ、E.C.2.4.2.1)をコードする配列、b)ウリジンホスホリラーゼ(UPアーゼE.C.2.4.2.3)をコードする配列、c)またはその双方を含んでなる組換え発現ベクターであって、該配列はそれぞれ好適な発現宿主において前記ホスホリラーゼの生産を指令する1以上の制御配列に機能的に連結され、これら配列は古細菌テルモプロテウス綱に由来するものであり、PNPアーゼがスルホロブス・ソルファタリカス由来であり(配列番号7)、UPアーゼがアエロピルム・ペルニクス由来である(配列番号8)ことを特徴とする、組換え発現ベクター。
【請求項2】
請求項1に記載の組換え発現ベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項3】
宿主細胞が大腸菌である、請求項2に記載の宿主細胞。
【請求項4】
宿主細胞が溶解液の形態である、請求項2〜3のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項5】
リン酸イオンの存在下での糖供与ヌクレオシドと受容塩基との間のトランスグリコシル化方法であって、アエロピルム・ペルニクスのウリジンホスホリラーゼ(UPアーゼ)(NC_000854.2)、スルホロブス・ソルファタリカスのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNPアーゼ)(NC_002754.1)またはその組合せの使用を含んでなる、方法。
【請求項6】
アエロピルム・ペルニクスのUPアーゼおよびスルホロブス・ソルファタリカスのPNPアーゼが、請求項2〜4のいずれか一項に記載の宿主細胞により提供される、請求項5に記載のトランスグリコシル化方法。
【請求項7】
得られる製品が、活性医薬成分(API)またはその中間体である、請求項5〜6のいずれか一項に記載のトランスグリコシル化方法。
【請求項8】
糖供与ヌクレオシドが、D−リボースまたは2’−デオキシリボースを含む天然または修飾ヌクレオシド;2’位、3’位および/または5’位が修飾されたリボース基を含むヌクレオシド;および糖がβ−D−アラビノース、α−L−キシロース、3’−デオキシリボース、3’,5’−ジデオキシリボース、2’,3’−ジデオキシリボース、5’−デオキシリボース、2’,5’−ジデオキシリボース、2’−アミノ−2’−デオキシリボース、3’−アミノ−3’−デオキシリボース、または2’−フルオロ−2’−デオキシリボースであるヌクレオシドから選択される、請求項5〜7のいずれか一項に記載のトランスグリコシル化方法。
【請求項9】
受容塩基が、天然または置換されたピリミジンおよびプリン塩基;1位、2位、6位の1箇所以上で置換されたプリン塩基;3位、5位の1箇所以上で置換されたピリミジン塩基;およびプリン、2−アザプリン、8−アザプリン、1−デアザプリン(イミダゾピリジン)、3−デアザプリン、7−デアザプリン、2,6−ジアミノプリン、5−フルオロウラシル、5−トリフルオロメチルウラシル、トランス−ゼアチン、2−クロロ−6−メチルアミノプリン、6−ジメチルアミノプリン、6−メルカプトプリンから選択される、請求項5〜8のいずれか一項に記載のトランスグリコシル化方法。
【請求項10】
60〜100℃の間で行われる、請求項5〜9のいずれか一項に記載のトランスグリコシル化方法。
【請求項11】
水性媒体中、または非プロトン性極性共溶媒系で行われる、請求項5〜10のいずれか一項に記載のトランスグリコシル化方法。
【請求項12】
非プロトン性極性共溶媒系が、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメチルホルムアミドから選択される、請求項11に記載のトランスグリコシル化方法。
【請求項13】
糖供与ヌクレオシドが、ウリジンおよび2’−デオキシウリジンから選択され、受容塩基が、2,6−ジアミノプリン、5−フルオロウラシル、5−トリフルオロメチルウラシル、トランス−ゼアチン、2−クロロ−6−メチルアミノプリン、6−ジメチルアミノプリンおよび6−メルカプトプリンから選択される、請求項5〜12のいずれか一項に記載のトランスグリコシル化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−514797(P2013−514797A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545339(P2012−545339)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070581
【国際公開番号】WO2011/076894
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512163912)プラスミア、ビオテク、ソシエダッド、リミターダ (1)
【氏名又は名称原語表記】PLASMIA BIOTECH,S.L.
【Fターム(参考)】