説明

ネオペンチルグリコールの製造方法

本発明は、触媒としての第三アルキルアミンの存在下で、イソブチルアルデヒドおよびホルムアルデヒドの付加によるヒドロキシピバリンアルデヒドとし、そして次に、脂肪族アルコールの存在下および水の存在下で、80〜180℃の温度および6〜18MPaの圧力で、ニッケル触媒で液相水素添加することによる、ネオペンチルグリコールの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装入される出発混合物に基づいて15重量%超の水の存在下で、ニッケル含有触媒によって、液相中でヒドロキシピバリンアルデヒドを水素添加することによる、ネオペンチルグリコールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多価アルコール又はポリオールは、ポリエステル又はポリウレタン、合成樹脂塗料、滑剤及び可塑剤を構成するための縮合成分として、かなりの経済上の重要性を有する。これに関して、ホルムアルデヒドと、イソ−又はn−ブチルアルデヒドとの混合アルドール付加により得られるような多価アルコールには特に関心がある。ホルムアルデヒドと、対応するブチルアルデヒドとの間のアルドール付加の際には、まずアルデヒドの中間体が生成されるが、続いてそれを多価アルコールに還元しなければならない。この方法により使用可能な、そのような多価アルコールの技術的に重要な例の一つが、ホルムアルデヒドとイソブチルアルデヒドとの混合アルドール化により得られるネオペンチルグリコール[NPG、2,2−ジメチルプロパンジオール−(1,3)]である。このアルドール付加反応は、塩基性触媒、例えば水酸化アルカリ類又は脂肪族アミン類の存在下で等モル量でもって遂行され、そして単離可能な中間生成物であるヒドロキシピバリンアルデヒド(HPA)が最初に生じるものであった。続いて、カニッツァーロ反応に従って過剰のホルムアルデヒドでもって、1当量のギ酸エステルの塩(Formiatsalz)の形成の下、この中間生成物をネオペンチルグリコールに転化することができる。それ故、この還元工程の形態の場合には、ギ酸エステルの塩がカップル生成物(Koppelprodukt)として付随的に発生する。しかしながら、技術的には、ヒドロキシピバリンアルデヒドの触媒的水素添加もまた金属接触による気相及び液相中で反応させる。欧州特許出願公開第0278106A1号(特許文献1)によれば、場合によっては、クロムまたは銅のようなさらに別の活性金属に加え、活性化剤類を含有できるニッケル触媒が、適した水素添加触媒であることが実証されている。アルドール化粗混合物は、続いて、これをその成分ごとに予め分離したり、個々の成分を分離したりすることなく、接触水素添加される。通常、ホルムアルデヒドは、水溶液として、例えば37重量%濃度溶液として使用されるため、水素添加するためのアルドール化混合物中には水が存在することになる。次に、得られた水素添加粗生成物は、この欧州特許出願公開第0278106号(特許文献1)の教示に従って、蒸留精製することができる。
【0003】
ニッケル触媒の存在下での、液相中のヒドロキシピバリンアルデヒドのネオペンチルグリコールへの更なる水素添加方法は、国際特許出願公開第99/035112号(特許文献2)から公知である。特に、水素添加プロセス間におけるニッケル触媒の安定性に対する、高い水量の有害な影響について指摘している。水の存在によるネオペンチルグリコールを犠牲にする触媒の劣化に関しても、選択率減少に関しても報告されている。従って、国際公開第99/035112A1号(特許文献2)は、ヒドロキシピバリンアルデヒドからネオペンチルグリコールへの水素添加において、15重量%より少ない水量に制限することを提案している。また、この公知の方法によると、水素添加温度も100℃を超えてはならないが、なぜならば、ニッケル触媒の存在下でそれよりも高い水素添加温度を使用する場合、ネオペンチルグリコール−モノイソブチレートまたはネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバリン酸エステルの形成のように、副生成物の生成が増大するからである。
【0004】
国際公開第98/17614A1号(特許文献3)もまた、ニッケル触媒の存在下での液相法によるヒドロキシピバリンアルデヒドのネオペンチルグリコールへの水素添加を取り上げている。この公知のプロセスによると、まず、第三アルキルアミンの存在下でホルムアルデヒド水溶液を用い、イソブチルアルデヒドをヒドロキシピバリンアルデヒド含有の粗混合物に転化し、引き続きその混合物を、脂肪族アルコールでの抽出に供する。その有機相から低沸点成分を留去し、そしてヒドロキシピバリンアルデヒドを含む、より高沸点の成分を水素添加する。精製のために、水素添加生成物を水で抽出し、その際、ネオペンチルグリコールを水性相に移行する。それから、この水性相からネオペンチルグリコールを蒸留して単離する。水素添加段階の前に置かれる抽出工程および蒸留工程により、水素添加段階に存在する水の量は減少される。この公知の方法では、120℃〜180℃の温度範囲内で水素添加段階は実施されるべきである。
【0005】
米国特許第6,268,539B1号(特許文献4)によると、まず、トリエチルアミン触媒下で、イソブチルアルデヒドおよびホルムアルデヒド水溶液の転化から得られるアルドール化生成物が蒸留される。続いて、付随的に発生する水含有の蒸留残渣を、助触媒としてモリブデンを含有するラネーニッケルの存在下で、70℃〜120℃で水素添加する。この公知の液相法は、液相と気相間の強力な混合を保証する特殊な吸引撹拌器の使用を特徴とする。この特殊な反応器設計により、0.55〜12.4MPaの範囲内の低い水素添加圧力だけが必要となる。
【0006】
また、欧州特許第0395681B1号(特許文献5)から公知の反応の導入によると、ヒドロキシピバリンアルデヒドの液相水素添加は、ラネーニッケルの存在下で、特殊な反応器設計の使用下で実施され、その際、水素ガスが液状の反応物を介して強力に導入される。このストリッピング効果により、アルドール化触媒として使用される、水素添加段階でヒドロキシピバリンアルデヒドの分解を促進する、微量の第三アミンおよびその化合物が除去される。この欧州特許第0395681B1号(特許文献5)の教示によると、高圧を使用しなくて済む。水素添加段階に装入される粗混合物は、10〜35重量%の水を含有する。
【0007】
ニッケル触媒の存在下でのヒドロキシピバリンアルデヒドのネオペンチルグリコールへの液相水素添加に関して、高い選択性でもって高い転化率でヒドロキシピバリンアルデヒドをネオペンチルグリコールへ転化するためには、好ましい反応器設計が必要とされるか、または、水素添加に装入される粗ヒドロキシピバリンアルデヒド中の僅かな含水量を単に許容するかのいずれかである。場合によっては、水素添加すべき生成物中の含水量を低下させるために、まず粗ヒドロキシピバリンアルデヒドを追加の抽出および蒸留に供さなくてはならない。
【0008】
しかしながら、アルキルアミンの触媒作用による、イソブチルアルデヒドとホルムアルデヒド水溶液とのアルドール付加からの転化生成物を、液相中、慣用的な、技術的に入手可能なニッケル触媒の存在下で、直接かつ浄化工程なしで水素添加するのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0278106A1号
【特許文献2】国際公開第99/035112A1号
【特許文献3】国際公開第98/17614A1号
【特許文献4】米国特許第6,268,539B1号
【特許文献5】欧州特許第0395681B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、技術的に実行が簡単で、そして経済的に是認できる手段を用いたアルキルアミンの触媒作用によるアルドール付加によってネオペンチルグリコールを生産可能にする方法を開発するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
それ故、本発明は、触媒としての第三アルキルアミンの存在下で、イソブチルアルデヒドおよびホルムアルデヒドのヒドロキシピバリンアルデヒドへの付加、それに続く水素添加によるネオペンチルグリコールの製造方法において、該水素添加が、均質な液相中で、ニッケル触媒の存在下で、80〜180℃の温度及び6〜18MPaの圧力で行われ、上記の液相が、出発混合物中の有機部分に基づいて15〜27重量%の量の脂肪族アルコール、及び全仕込み量に基づいて15重量%超〜25重量%の量の水を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
驚くべきことに、含水量が原料の全仕込み量に基づいて15重量%超〜25重量%、好ましくは18〜22重量%の範囲にあり、かつ水素添加温度が80〜180℃、好ましくは110〜140℃に調節される場合、ヒドロキシピバリンアルデヒドのネオペンチルグリコールへの選択的水素添加が成功し、そしてホルムアルデヒドでのイソブチルアルデヒドの転化の間に形成される高沸点物類の、ネオペンチルグリコールへの極めて選択的な分離(Spaltung)が可能であることが見出された。これらの高沸点物類は、当量のネオペンチルグリコール中で化学的に結合された、エステルまたは環状アセタールのような酸素含有化合物である。これらの高沸点物類中、ネオペンチルグリコールのモノ−およびジ−イソ酪酸エステルの割合、ならびにティシチェンコ反応によりヒドロキシピバリンアルデヒドから生成された不均化反応生成物であるネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバリン酸エステルの割合は、非常に高い。本発明による水素添加工程の出発材料中の含水量に関する調節により、そして水素添加温度の正確な選択により、15重量%未満の含水量を有する出発材料を使用する場合や、80℃未満の水素添加温度で作用させる場合の操作方法に比べて、出発材料中にすでに存在している高沸点物を、ネオペンチルグリコールに効率的に分解し、そしてその形成を水素添加の間抑制することができる。
【0013】
出発材料の含水量が低すぎる場合、高沸点成分の減少に有利な効果が全く観察されず、そして水素添加温度が低すぎる場合、ヒドロキシピバリンアルデヒドが不完全にしか水素添加されない。含水量が高すぎる場合、貴重な反応器容積が不要に占められて、有効に利用されない。水素添加温度が高すぎる場合、アルドール化触媒として使用された第三アルキルアミンの同様に増強された分解が開始され、これは、非常に分離困難な二次生成物をもたらすため、望ましくない。
【0014】
イソブチルアルデヒドおよびホルムアルデヒド水溶液のアルドール付加は、アルドール付加触媒としての第三アルキルアミンの存在下で、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソ−プロピルアミン、メチル−ジエチルアミン、メチル−ジイソプロピルアミンまたはトリブチルアミンの存在下で遂行される。特に適した触媒としては、トリエチルアミンおよびトリ−n−プロピルアミンが実証されている。
【0015】
これらのアルデヒドはモル比で転化できるが、二つの反応相手のうちの一方を過剰に使うことも可能である。ホルムアルデヒドを水溶液として使用する場合、アルデヒド含量は通常20〜50重量%である。反応は20〜100℃の温度で行われるが、合目的的に80〜95℃で操作される。一般に、反応は常圧で実施されるが、高められた圧力を使用することもできる。アルドール付加触媒として用いられる第三アルキルアミンは、イソブチルアルデヒドに対して1〜20、好ましくは2〜12モル%の量で反応混合物に含まれる。
【0016】
ホルムアルデヒド水溶液からの水、および同様にホルムアルデヒド水溶液中に含まれる僅かな割合のメタノール以外に、場合によっては、希釈剤としてイソブタノールが反応混合物に更に添加される。イソブタノールの添加は必ずしも必要ではないが、イソブタノールを添加する場合には、反応混合物中のその含量は、全反応混合物に対して10〜20重量%の範囲にある。さらなる溶剤および希釈剤は必要ではない。
【0017】
付加反応の実際上の遂行は、かき混ぜがま(Ruehrkessel)中で、または反応管中で行われるが、反応物をより良好に混合するために、反応管には充填カラムが備えられる。転化は発熱的に進行し、加熱により加速させることができる。
【0018】
アルドール付加反応により発生する粗混合物は、これをその成分別に予め分離したり、個々の成分を分離したりすることなく、接触水素化される。本発明のヒドロキシピバリンアルデヒドを含む反応混合物の水素添加のためには、定義された含水量、定義された水素添加温度、および所定の反応圧力を維持することが重要である。ホルムアルデヒド水溶液の使用によりもたらされる水量が、要求される水の割合を保証するのに不足している場合、水素添加反応器中での使用前に、粗生成物に水を添加する。
【0019】
水素添加も同様に、アルドール化粗生成物と混合可能な脂肪族アルコールの存在下で行われる。1〜5個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノールまたはそれの混合物が、適した脂肪族アルコールであることが実証されている。イソブチルアルデヒドの残量がイソブタノールに水素添加されることから、イソブタノールの使用が非常に好適である。すでにアルドール付加段階においてイソブタノールを希釈剤として使用する場合は、水素添加段階で溶媒がすでに存在することになる。ホルムアルデヒド水溶液を介して投入される量のメタノールも、同様に存在している。有機溶媒または希釈剤としての脂肪族アルコールの量は、出発混合物中の有機成分に対して、15〜27重量%、好ましくは15〜18重量%である。希釈剤または溶媒の添加により、水素添加段階の間のヒドロキシピバリンアルデヒドの液相中への十分な可溶性が確保され、さらには、ヒドロキシピバリンアルデヒドの沈殿が阻止され、そして液相の均質性が保証される。
【0020】
水素添加に使用される、出発混合物全体は均質であり、そして15重量%超〜25重量%の水および100重量%までのその残余としての有機部分を含み、この有機部分には、15〜27重量%の脂肪族アルコールが含まれる。
【0021】
得られた、ヒドロキシピバリンアルデヒドを含有する粗混合物は、更なる浄化工程および精製工程を行うことなく水素添加される。
【0022】
粗ヒドロキシピバリンアルデヒドの水素添加は、ニッケル触媒の存在下で、液相中、80〜180℃、好ましくは110〜140℃の温度で実施される。反応圧力は、6〜18MPa、好ましくは8〜15MPaである。反応圧力がこれよりも低い場合は、ヒドロキシピバリンアルデヒドの満足できる水素添加は、もはや観察されない。
【0023】
触媒的活性の金属としてのニッケルは、いずれの場合も触媒の全重量に対して、一般に、約5〜70重量%、好ましくは約10〜約65重量%、特に約20〜60重量%の量で担体上に設けることができる。触媒担体としては、慣習的な担体材料の全て、例えば酸化アルミニウム、様々な形態の酸化アルミニウムの水和物、二酸化ケイ素、珪藻土を包含するポリシリカ(Polykieselsaeuren)(シリカゲル)、シリカキセロゲル、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび活性炭が適している。主成分であるニッケルおよび担体材料以外にも、例えばその水素添加活性および/またはその寿命および/またはその選択率の向上に役立つ、下位量の添加剤類を、触媒がさらに含むこともできる。そのような添加剤類は周知であり、それらには、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウムおよびクロムの酸化物類が含まれる。それらは、一般に、100重量部のニッケルに対して合計で0.1〜50重量部の割合で触媒に添加される。
【0024】
しかしながら、担体のない触媒としてラネーニッケルもまた使用することができる。
【0025】
水素添加は、液相中で連続的または非連続的に、例えば、ダウンフロー方式(Rieselfahrweise)またはアップフロー方式(Sumpffahrweise)に従い、堅固に配置した触媒によって、および懸濁水素添加に従い撹拌下で遂行される。
【0026】
連続式の運転特性の場合、触媒体積および時間あたりの処理体積で表される、触媒担持量(Katalysatorbelastung)V/Vhが、0.3〜2.0h−1、好ましくは0.8〜1.2h−1であることが合目的的であることが実証された。
【0027】
非連続的な方式の場合、溶媒を含有する出発原料に対して1〜20、好ましくは2〜8重量%のニッケル触媒を使用する。
【0028】
ニッケル触媒のそれよりも高い担持量は避けるべきである。というのも、その場合、出発化合物であるヒドロキシピバリンアルデヒドがもはや完全には水素添加されず、増加した副生成物の形成が観察されるからである。
【0029】
好ましくは、水素添加は、液相中で、管型反応器中において堅固に配置された触媒に接触でもって連続的に実施される。平行して密に接続された複数の管の束も管型反応器であると解釈される。使用される管型反応器は、同様に、充填カラムまたはバッフル類、例えばラシヒリング、ブラケット(Saettel)、バッフルリング、フィルタープレートまたはカラムベッド、ならびに場合によっては撹拌装置を含むことができる。しかしながら、特に好ましい形態においては、管型反応器中でのヒドロキシピバリンアルデヒドの水素添加は、バッフル類なしに、そして撹拌装置なしに行われる。
【0030】
水素添加は、純粋な水素を用いて好ましく行われる。しかしながら、遊離水素と、それに加えて、水素添加条件下で不活性な成分とを含む混合物も使用することができる。
【0031】
水素添加された反応混合物からの純粋なネオペンチルグリコールの生産は、従来の蒸留法に従って行われる。その際に、分離される溶媒または希釈剤は、アルドール付加段階および/または水素添加段階に再び戻すことができる。
【0032】
本発明に水素添加法によると、ヒドロキシピバリンアルデヒドは、高い選択率での高い転化率でネオペンチルグリコールに転化される。注目すべきは、水素添加後の高沸点物の割合がわずかなことである。
【0033】
本発明の水素添加法によって、出発化合物であるヒドロキシピバリンアルデヒドは、高い転化率で非常に選択的にネオペンチルグリコールに水素添加され、そして、全段階のアルドール付加で生成した高沸点物が効率的に分解され、そして水素添加段階中のその生成が、持続的に妨げられる。また、第三アルキルアミンが、望ましくない不純物をもたらし、そして引き続く蒸留精製工程において分離させるのが非常に困難で、かつ、ネオペンチルグリコールの再処理時の妨げになる、揮発性窒素含有の化合物への分解も抑止される。
【0034】
以下に、いくつかの例に基づいて本発明の方法をさらに詳しく説明するが、本発明は記載される実施形態に限定されない。
【0035】
実験の構成
商業用の、担持されたニッケル触媒でもって、アップフロー方式により管型反応器中で液相水素添加を行った。触媒体積は1.8リットルであった。ヒドロキシピバリンアルデヒドを含有するアルドール付加粗生成物および水素を、管型反応器の塔底に連続して供給した。管型反応器の頭部から水素添加物を取り出し、それを高圧分離装置の内部に導入し、そしてそこから液位調節(Standregelung)を介して、加圧されていない受容器中に導入した。水素添加温度、水素圧、ならびに触媒充填量は、以下の表の条件にしたがって調節した。水素添加の実験に使用した、ヒドロキシピバリンアルデヒド含有のアルドール付加粗生成物は、以下の典型的な組成を有していた。
【0036】
【表1】

HPA=ヒドロキシピバリンアルデヒド
NPG=ネオペンチルグリコール
TE=ティシチェンコエステル/ジ−イソ酪酸−NPG−エステル
【0037】
以下に提示する原料流についての分析データでは、希釈剤として利用される脂肪族アルコール類に関する臨界含有量、ならびに含水量が明らかにされた。水素添加生成物を分析した際の、HPAならびにエステル化合物の残留含有量およびNPG含有量を示した。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
実験データの比較が示すように、上昇する原料混合物中の含水量に伴って、水素添加生成物中の所望のNPGの割合もまた増加する。例えば、実験3からは、含水量が臨界限度である15重量%を下回るまで調節される(比較試験5)ことにより、水素添加生成物のNPG含有量は低下する。この経過は、実験6、7および8(比較)においても示されており、出発材料の含水量の低下に伴い、水素添加生成物のNPG含有量も低下している。比較例9で選択された圧力は、満足なHPA転化にはもはや不十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒としての第三アルキルアミンの存在下におけるイソブチルアルデヒド及びホルムアルデヒドの付加によってヒドロキシピバリンアルデヒドにし、その後に水素添加することでネオペンチルグリコールを製造する方法であって、前記水素添加が、均質な液相中で、ニッケル触媒の存在下で、80〜180℃の温度及び6〜18MPaの圧力で行われ、前記液相が、仕込み混合物中の有機成分に基づいて15〜27重量%量の一種の脂肪族アルコール、及び全仕込み量に基づいて15重量%超〜25重量%量の水を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記水素添加が、110〜140℃の温度及び8〜15MPaの圧力で遂行されること特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記均質な液相が、前記全仕込み量に基づいて18〜22重量%の量の水を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第三アルキルアミンとして、トリエチルアミン又はトリ−n−プロピルアミンが使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
脂肪族アルコールとして、1〜5個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルコールが使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール又はそれの混合物が使用されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ニッケル触媒が担体材料を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記ニッケル触媒が、添加剤として、ナトリウムの酸化物、カリウムの酸化物、マグネシウムの酸化物、カルシウムの酸化物、バリウムの酸化物、亜鉛の酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、クロムの酸化物、又はそれの混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記水素添加が、バッフル類を有さず、そして撹拌装置を有さない管型反応器中で遂行されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。

【公表番号】特表2011−526261(P2011−526261A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515158(P2011−515158)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004268
【国際公開番号】WO2010/000382
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(507254975)オクセア・ゲゼルシャフト・ミト・べシュレンクテル・ハフツング (10)
【Fターム(参考)】