説明

ネジ穴検査装置およびネジ穴検査方法

【課題】ネジ穴を精度良く検査することが可能なネジ穴検査方法を提供する。
【解決手段】ネジ穴10の内周面の展開画像51を撮像し、展開画像51に高速フーリエ変換を施すことにより変換画像52を生成し、展開画像51および変換画像52に基づいて展開画像51におけるネジ山の長手方向と変換画像52における点群を結んだ線の長手方向との成す角度である点群角度を算出するとともに変換画像52に基づいて変換画像52における点群の間隔のうちネジ穴10のネジピッチに対応する間隔である点群間隔を算出し、予め取得された有効点群角度範囲と算出された点群角度とを比較するとともに予め取得された有効点群間隔範囲と算出された点群間隔とを比較することによりネジ穴10のネジ形状に係る良否判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ穴を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネジ穴の内周面の形状等の検査は作業者が目視で確認することにより行われている。このような目視検査は、裸眼で行う場合の他、魚眼レンズやマイクロスコープを用いて行う方法が知られている。
【0003】
しかし、裸眼で行う目視検査はネジ穴の開口部からネジ穴の内周面を目視することとなるため、ネジ山により隠れる部分については形状を確認することが出来ないという問題を有する。特に、ネジ穴の奥の部分はネジ山により隠れる部分が多くなり、目視による確認が困難である。
また、魚眼レンズやマイクロスコープを用いて行う目視検査は、裸眼で行う目視検査に比べるとネジ山により隠れる部分を減らすことが可能であるという利点を有するものの、魚眼レンズの場合には視野内の位置によってその曲率が異なるために欠陥の大きさを正確に把握することが困難であること、マイクロスコープの場合にはマイクロスコープのネジ穴内部における位置の変化に応じて視野内の欠陥のサイズも変わるため欠陥の大きさを正確に把握することが困難であること、といった問題を有する。
さらに、上記目視検査は、裸眼で行う場合と魚眼レンズやマイクロスコープを用いて行う場合とに関わらず、当該検査を行う作業者の熟練度によって検査結果がばらつき易く、検査結果の信頼性を確保することが困難であるという問題を有する。
【0004】
ネジ穴の内周面の形状を検査する技術のうち、上記目視検査の他の技術としては、ネジ穴の内周面において欠陥がある部位(欠陥部分)は一般的に周囲よりも暗く見えるという性質を利用し、魚眼レンズやマイクロスコープをネジ穴に差し込んでネジ穴の内周面を撮像し、当該撮像された画像を二値化処理して暗部(黒い部分)を欠陥として検出する技術が知られている。
【0005】
上記二値化処理された画像に基づく欠陥の検出は、作業者の熟練度による検査結果のバラツキの問題を解消することが可能であるという利点を有する。
しかし、二値化処理された画像に基づく欠陥の検出は、欠陥部分と同様に撮像時に暗く見えるネジ山の谷底部分と当該欠陥部分とを区別することが困難であり、ひいては検査精度の確保が困難であるという問題を有する。
【0006】
また、上記ネジ穴の検査技術はいずれも、定量的でないにしても欠陥の有無に関してはある程度の検査が可能であるが、加工不良等によるネジピッチの微妙な変動等を検出することは困難であるという問題を有する。
【0007】
ネジ穴の内周面に限らず検査対象物の形状を撮像し、撮像した画像に画像処理を施すことにより検査対象物の形状等の良否を検査する技術としては、撮像された検査対象物の画像における検査対象物のエッジ認識処理をする技術、あるいは検査対象物を撮像した画像とマスター画像(欠陥が無いことが予め確認された検査対象物を撮像した画像)との間でパターンマッチングを行う技術等が知られている。
上記パターンマッチングを行う技術としては、検査対象物を撮像した画像を高速フーリエ変換したもの(変換画像)とマスター画像を高速フーリエ変換したもの(マスター変換画像)との間でパターンマッチングを行う技術が知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0008】
特許文献1に記載の技術は、高速フーリエ変換された画像の周波数特性等に基づいてネジ穴のネジピッチの微妙な変動等をも検出可能であるという利点を有するが、検査の精度を確保するためには多数のマスター変換画像を予め用意しなければならず、多数のマスター変換画像を記憶するための大容量の記憶媒体が必要であるとともに検査に要する演算量が多いという問題を有する。
【特許文献1】特開2005−61929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑み、ネジ穴を精度良く検査することが可能なネジ穴検査装置およびネジ穴検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、
ネジ穴の内周面の展開画像を撮像する展開画像撮像部と、
前記展開画像撮像部により撮像された展開画像に高速フーリエ変換を施すことにより変換画像を生成する変換画像生成部と、
前記展開画像撮像部により撮像された展開画像および前記変換画像生成部により生成された変換画像に基づいて前記展開画像におけるネジ山の長手方向と前記変換画像における点群を結んだ線の長手方向との成す角度である点群角度を算出するとともに、前記変換画像生成部により生成された変換画像に基づいて当該変換画像における点群の間隔のうち前記ネジ穴のネジピッチに対応する間隔である点群間隔を算出する点群角度・点群間隔算出部と、
予め取得された有効点群角度範囲と前記点群角度・点群間隔算出部により算出された点群角度とを比較するとともに予め取得された有効点群間隔範囲と前記点群角度・点群間隔算出部により算出された点群間隔とを比較することにより、前記ネジ穴のネジ形状に係る良否判定を行うネジ形状良否判定部と、
を具備するものである。
【0012】
請求項2においては、
前記ネジ形状良否判定部は、
前記点群角度が前記有効点群角度範囲の範囲内であるという第一形状要件および前記点群間隔が前記有効点群間隔範囲の範囲内であるという第二形状要件の両方を満たす場合には前記ネジ穴のネジ形状については良好であると判定し、
前記第一形状要件および前記第二形状要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴のネジ形状については不良であると判定するものである。
【0013】
請求項3においては、
予め取得された良好ネジ穴の内周面の展開画像に高速フーリエ変換を施すことにより生成された変換画像である良好変換画像と前記変換画像生成部により生成された変換画像との差分である差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像生成部により生成された差分画像に逆高速フーリエ変換を施すことにより欠陥抽出画像を生成する欠陥抽出画像生成部と、
前記欠陥抽出画像生成部により生成された欠陥抽出画像に基づいて前記ネジ穴の欠陥に係る良否判定を行う欠陥良否判定部と、
を具備するものである。
【0014】
請求項4においては、
前記欠陥良否判定部は、
前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分のそれぞれのサイズが予め取得された有効欠陥サイズ以下であるという第一欠陥要件、前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分のそれぞれの面積が予め取得された有効欠陥面積以下であるという第二欠陥要件、および前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分の個数が予め取得された有効欠陥個数以下であるという第三欠陥要件、の三つの要件を全て満たす場合には前記ネジ穴の欠陥については良好であると判定し、
前記第一欠陥要件、前記第二欠陥要件および前記第三欠陥要件の三つの要件のうち、少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴の欠陥については不良であると判定するものである。
【0015】
請求項5においては、
前記ネジ形状良否判定部による前記ネジ穴のネジ形状に係る良否判定の結果および前記欠陥良否判定部による前記ネジ穴の欠陥に係る良否判定の結果に基づいて前記ネジ穴の最終的な良否判定を行う最終良否判定部を具備するものである。
【0016】
請求項6においては、
前記最終良否判定部は、
前記ネジ形状良否判定部が前記ネジ穴のネジ形状について良好であると判定したという第一判定要件と前記欠陥良否判定部が前記ネジ穴の欠陥について良好であると判定したという第二判定要件の両方を満たす場合には前記ネジ穴が最終的に良好であると判定し、
前記第一判定要件および前記第二判定要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴が最終的に不良であると判定するものである。
【0017】
請求項7においては、
ネジ穴の内周面の展開画像を撮像する展開画像撮像工程と、
前記展開画像撮像工程において撮像された展開画像に高速フーリエ変換を施すことにより変換画像を生成する変換画像生成工程と、
前記展開画像撮像工程において撮像された展開画像および前記変換画像生成工程において生成された変換画像に基づいて前記展開画像におけるネジ山の長手方向と前記変換画像における点群を結んだ線の長手方向との成す角度である点群角度を算出するとともに、前記変換画像生成工程において生成された変換画像に基づいて当該変換画像における点群の間隔のうち前記ネジ穴のネジピッチに対応する間隔である点群間隔を算出する点群角度・点群間隔算出工程と、
予め取得された有効点群角度範囲と前記点群角度・点群間隔算出工程において算出された点群角度とを比較するとともに予め取得された有効点群間隔範囲と前記点群角度・点群間隔算出工程において算出された点群間隔とを比較することにより、前記ネジ穴のネジ形状に係る良否判定を行うネジ形状良否判定工程と、
を具備するものである。
【0018】
請求項8においては、
前記ネジ形状良否判定工程において、
前記点群角度が前記有効点群角度範囲の範囲内であるという第一形状要件および前記点群間隔が前記有効点群間隔範囲の範囲内であるという第二形状要件の両方を満たす場合には前記ネジ穴のネジ形状については良好であると判定し、
前記第一形状要件および前記第二形状要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴のネジ形状については不良であると判定するものである。
【0019】
請求項9においては、
予め取得された良好ネジ穴の内周面の展開画像に高速フーリエ変換を施すことにより生成された変換画像である良好変換画像と前記変換画像生成工程において生成された変換画像との差分である差分画像を生成する差分画像生成工程と、
前記差分画像生成工程において生成された差分画像に逆高速フーリエ変換を施すことにより欠陥抽出画像を生成する欠陥抽出画像生成工程と、
前記欠陥抽出画像生成工程において生成された欠陥抽出画像に基づいて前記ネジ穴の欠陥に係る良否判定を行う欠陥良否判定工程と、
を具備するものである。
【0020】
請求項10においては、
前記欠陥良否判定工程において、
前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分のそれぞれのサイズが予め取得された有効欠陥サイズ以下であるという第一欠陥要件、前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分のそれぞれの面積が予め取得された有効欠陥面積以下であるという第二欠陥要件、および前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分の個数が予め取得された有効欠陥個数以下であるという第三欠陥要件、の三つの要件を全て満たす場合には前記ネジ穴の欠陥については良好であると判定し、
前記第一欠陥要件、前記第二欠陥要件および前記第三欠陥要件の三つの要件のうち、少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴の欠陥については不良であると判定するものである。
【0021】
請求項11においては、
前記ネジ形状良否判定工程における前記ネジ穴のネジ形状に係る良否判定の結果および前記欠陥良否判定工程における前記ネジ穴の欠陥に係る良否判定の結果に基づいて前記ネジ穴の最終的な良否判定を行う最終良否判定工程を具備するものである。
【0022】
請求項12においては、
前記最終良否判定工程において、
前記ネジ形状良否判定工程において前記ネジ穴のネジ形状について良好であると判定したという第一判定要件と前記欠陥良否判定工程において前記ネジ穴の欠陥について良好であると判定したという第二判定要件の両方を満たす場合には前記ネジ穴が最終的に良好であると判定し、
前記第一判定要件および前記第二判定要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴が最終的に不良であると判定するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ネジ穴を精度良く検査することが可能であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、図1乃至図8、および図14を用いて本発明に係るネジ穴検査装置の実施の一形態であるネジ穴検査装置100について説明する。
【0025】
図1に示す如く、ネジ穴検査装置100は検査対象物1に形成されたネジ穴10を検査するものである。
ここで、「検査対象物」は単数または複数のネジ穴が形成されている物品等を広く指す。
「ネジ穴」は本発明に係るネジ穴検査装置および本発明に係るネジ穴検査方法の検査対象であり、通常はネジが螺合し得るネジ山が内周面に螺旋状に形成された穴を指す。
ネジ穴には、一端が検査対象物の表面に開口し他方が閉塞されているもの、および両端が検査対象物の表面に開口している(貫通している)もの、が含まれる。
「ネジ穴を検査すること」には、「ネジ穴の形状を検査すること(より詳細には、ネジ穴の形状が所定の寸法公差の範囲内に収まっているか否かを判定すること)」、「ネジ穴の欠陥を検査すること(より詳細には、ネジ穴に欠陥が有るか否か、欠陥がある場合にそのサイズ、面積、個数等が予め設定された許容範囲にあるか否か等の判定を行うこと)」等が含まれる。
【0026】
ネジ穴検査装置100は主として撮像ユニット110、制御装置120等を具備する。
【0027】
撮像ユニット110および後述する撮像動作制御部121bを合わせたものは本発明に係る展開画像撮像部の実施の一形態であり、ネジ穴10の内周面の展開画像51(図2および図3参照)を撮像するものである。
ここで、「ネジ穴の内周面の展開画像」は、ネジ穴の内周面を当該ネジ穴の周方向(ネジ穴の長手方向(軸線方向)周りに回転する方向)に展開した状態を示す画像を指す。
【0028】
撮像ユニット110は主として載置台111、コラム112、アーム113、ブロック114、プローブ115、投光素子116、受光素子117等を具備する。
【0029】
載置台111は検査対象物1を載置する台である。検査対象物1はネジ穴10の開口部を上方に向けた姿勢で載置台111の載置面(上面)111aの所定の位置に載置される。
【0030】
コラム112はZ軸方向(鉛直方向)に延びた形状の構造体である。コラム112は載置台111の載置面111aに設けられ、載置面111aに沿ってY軸方向(水平面に平行な方向であって図1において紙面に垂直な方向)に摺動可能である。コラム112は図示せぬY軸移動用モータの回転駆動によりY軸方向に移動(摺動)する。
【0031】
アーム113はX軸方向(水平面に平行な方向であって図1において紙面に平行な方向)に延びた形状の構造体である。アーム113の一端はコラム112に支持され、アーム113はコラム112に沿ってZ軸方向に摺動可能である。コラム112は図示せぬZ軸移動用モータの回転駆動によりZ軸方向に移動(摺動)する。
【0032】
ブロック114はアーム113に支持される構造体であり、アーム113に沿ってX軸方向に摺動可能である。ブロック114は図示せぬX軸移動用モータの回転駆動によりX軸方向に移動(摺動)する。
【0033】
プローブ115はZ軸方向(上下方向)に延びた細長い略円柱形状の部材であり、その一端(上端)はブロック114に相対回転(旋回)可能に支持される。
プローブ115は図示せぬ旋回用モータの回転駆動により、ブロック114に対して回転(旋回)する。
【0034】
投光素子116は所定の波長の光を投光(照射)するものである。
投光素子116はプローブ115の外周面の下端部に設けられ、プローブ115の半径方向(プローブ115の長手方向(軸線方向)に略垂直な方向)に光を投光する。
投光素子116の具体例としては発光ダイオード等の半導体素子が挙げられる。
投光素子116が投光する光はレーザー光であるが、本発明はこれに限定されず、ネジ穴の表面状態や検査対象物の材質等に応じて光の波長および強度を適宜選択することが可能である。
【0035】
受光素子117は投光素子116により投光されてネジ穴10の内周面(ネジ山)により反射された光を受光するものである。受光素子117は投光素子116と同様にプローブ115の外周面の下端部に設けられる。
受光素子117の具体例としてはCCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)やCMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)等の固体撮像素子が挙げられる。
【0036】
制御装置120は主として演算処理部121、入力部122、表示部123等を具備する。
【0037】
演算処理部121はネジ穴検査装置100の一連の動作を制御するものである。
演算処理部121は、種々のプログラム等(例えば、後述する動作制御プログラム、変換画像生成プログラム、点群角度・点群間隔算出プログラム、ネジ形状良否判定プログラム、差分画像生成プログラム、欠陥抽出画像生成プログラム、欠陥良否判定プログラム、最終良否判定プログラム等)を格納することができ、これらのプログラム等を展開することができ、これらのプログラム等に従って所定の演算を行うことができ、当該演算の結果等を記憶することができる。
【0038】
演算処理部121は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで相互に接続される構成であっても良く、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であっても良い。
本実施例の演算処理部121は専用品であるが、市販のパーソナルコンピュータやワークステーション等に上記プログラム等を格納したもので達成することも可能である。
【0039】
演算処理部121は撮像ユニット110に接続され、撮像ユニット110のコラム112のY軸方向の移動、アーム113のZ軸方向の移動、ブロック114のX軸方向の移動、プローブ115のブロック114に対する回転(旋回)、および投光素子116の投光を行うための信号をそれぞれ送信可能であるとともに、受光素子117により受光された反射光の強度に係る情報を受信(取得)することが可能である。
【0040】
入力部122は演算処理部121に接続され、演算処理部121にネジ穴検査装置100の動作に係る種々の情報・指示等を入力するものである。
入力部122により演算処理部121に入力される情報・指示としては、例えば検査日時、検査対象物1のロット番号、ネジ穴10の規格(直径、深さ、ネジピッチ等)、ネジ穴検査装置100による検査条件等が挙げられる。
本実施例の入力部122は専用品であるが、市販のキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、スイッチ等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
【0041】
表示部123はネジ穴検査装置100の動作状況、入力部122から演算処理部121への入力内容、ネジ穴検査装置100による検査結果等を表示するものである。
本実施例の表示部123は専用品であるが、市販のモニターや液晶ディスプレイ等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
【0042】
以下では、演算処理部121の構成の詳細について説明する。
演算処理部121は、機能的には記憶部121a、撮像動作制御部121b、変換画像生成部121c、点群角度・点群間隔算出部121d、ネジ形状良否判定部121e、差分画像生成部121f、欠陥抽出画像生成部121g、欠陥良否判定部121h、最終良否判定部121i等を具備する。
【0043】
記憶部121aはネジ穴検査装置100による検査を行うための種々のパラメータ(数値)やネジ穴検査装置100による検査結果等を記憶するものである。
記憶部121aは、実体的にはHDD(ハードディスクドライブ)、CD−ROM、DVD−ROM等の記憶媒体からなる。
【0044】
撮像動作制御部121bは撮像ユニット110の動作を制御するものである。
実体的には、演算処理部121が、演算処理部121に格納された撮像動作制御プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、撮像動作制御部121bとしての機能を果たす。
【0045】
まず、撮像動作制御部121bは撮像ユニット110にコラム112、アーム113およびブロック114を移動させるための信号である移動信号を送信する。
コラム112、アーム113およびブロック114は移動信号に従って、プローブ115の下端部(投光素子116および受光素子117が設けられている部分)が載置台111の載置面111aに載置された検査対象物1のネジ穴10の開口部からネジ穴10の内部に進入した状態となる位置にそれぞれ移動する。このとき、上方から見てプローブ115の中心軸(軸線)とネジ穴10の中心軸(軸線)は一致しており、プローブ115の外周面とネジ穴10の内周面との間の隙間は周方向に関して略均一となっている。
【0046】
次に、撮像動作制御部121bは撮像ユニット110に投光素子116が投光するための信号である投光信号を送信する。
投光素子116は投光信号に従って、対向するネジ穴10の内周面に光を照射する。投光素子116に対向するネジ穴10の内周面に照射された光はネジ穴10の内周面により反射され、受光素子117により受光される。
受光素子117は受光した光の強度を示す信号である受光強度信号を演算処理部121に送信する。
【0047】
続いて、撮像動作制御部121bは撮像ユニット110にプローブ115をブロック114に対して回転(旋回)させるための信号である回転信号を送信する。
プローブ115は回転信号に従ってブロック114に対して360度回転する。プローブ115が回転している間は、投光素子116によりネジ穴10の内周面に光が投光され、受光素子117により受光強度信号が送信される。
【0048】
このように、プローブ115が回転しつつ投光素子116がネジ穴10の内周面に光を投光し、受光素子117がネジ穴10の内周面からの反射光を受光することにより、演算処理部121は投光素子116の高さに対応する深さのネジ穴10の内周面の周方向における反射光の強度分布、すなわち、あるプローブ115のネジ穴10への進入深さ(プローブ進入深さ)Dにおけるプローブ115の回転角θと受光強度との関係)を取得することが可能である。
そして、アーム113が下方に移動することによりプローブ進入深さDを少しずつ深くするとともに、異なるプローブ進入深さ毎にプローブ115が回転しつつ投光素子116がネジ穴10の内周面に光を投光し、受光素子117がネジ穴10の内周面からの反射光を受光することにより、演算処理部121はプローブ115のネジ穴10への進入深さDとプローブ115の回転角θと受光強度との関係、すなわち、図2および図3に示す如きネジ穴10の内周面の展開画像51を取得することが可能である。展開画像51は記憶部121aに適宜記憶される。
【0049】
図2および図3に示す展開画像51は、説明の便宜上ネジ山の尾根部分(ネジ穴10の中心軸に近い部分)を白色で表し、ネジ山の谷部分(ネジ穴10の中心軸から遠い部分)を黒色で表す。従って、図2および図3では展開画像51は白色と黒色が交互に表れる斜めの縞模様として表され、ネジ山の稜線は展開画像51の白色部分の上下中心を結ぶ線として表され、ネジ山の谷底は展開画像51の黒色部分の上下中心を結ぶ線として表されることとなる。
【0050】
図2は良好なネジ穴10を撮像したときの展開画像51を表す例であり、図3は良好でないネジ穴10を撮像したときの展開画像51を表す例である。
ここで、「良好なネジ穴」は、ネジ山の形状(ネジピッチやネジ山の高さ等)が所定の寸法公差の範囲内に収まっており、かつ、ネジ山に欠損等の欠陥が無いネジ穴を指す。
また、「良好でないネジ穴」は、(a)ネジ山の形状(ネジピッチやネジ山の高さ等)が所定の寸法公差の範囲内に収まっていないネジ穴、(b)ネジ山に欠損等の欠陥が有るネジ穴、または、(c)ネジ山の形状が所定の寸法公差の範囲内に収まっておらずかつネジ山に欠損等の欠陥が有るネジ穴、のいずれかを指す。
【0051】
図3では、説明の便宜上欠陥に対応する部分(欠陥部分)をネジ山の谷部分以外のイレギュラーな位置における黒色部分として表している。
なお、本実施例の図3に示す展開画像51は、ネジ山の一部欠損を有するものの、ネジ山の形状(ネジピッチやネジ山の高さ等)については良好なネジ穴10について撮像されたものであるとする。
【0052】
変換画像生成部121cは本発明に係る変換画像生成部の実施の一形態であり、撮像ユニット110および撮像動作制御部121bにより撮像された展開画像51に高速フーリエ変換を施すことにより変換画像52(図4および図5参照)を生成するものである。
実体的には、演算処理部121が、演算処理部121に格納された変換画像生成プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、変換画像生成部121cとしての機能を果たす。
変換画像生成部121cにより生成された変換画像52は、記憶部121aに適宜記憶される。
【0053】
高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform;FFT)は、離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform;DFT)を高速で計算するためのアルゴリズムを指す。
高速フーリエ変換のアルゴリズムの例としてはCooley−Tukey型アルゴリズムの他、PFA(Prime Factor Algorithm)、Bruun型アルゴリズム、Rader型アルゴリズム、Bluestein型アルゴリズム等が挙げられるが、本発明に係る高速フーリエ変換は上記のいずれのアルゴリズムによるものでも良い。
【0054】
図4に示す変換画像52は、図2に示す良好なネジ穴10を撮像したときの展開画像51に高速フーリエ変換を施すことにより生成されたものである。
図4に示す変換画像52には、ネジ穴10の直径、ネジ山のピッチ、あるいはリード角等のネジ穴10の各種パラメータに起因した格子模様が表れる。
なお、図4においては説明の便宜上、格子模様を細かい点線で表すとともに格子点を黒丸で表しているが、実際の変換画像は周囲との輝度の違いで格子模様を表す。
【0055】
図5に示す変換画像52は、図3に示す良好でないネジ穴10を撮像したときの展開画像51に高速フーリエ変換を施すことにより生成されたものである。
図5に示す変換画像52には、ネジ穴10の直径、ネジ山のピッチ、あるいはリード角等のネジ穴10の各種パラメータに起因した格子模様だけでなく、欠陥に起因する別の格子模様も表れる。
なお、図5においては説明の便宜上、欠陥に起因する別の格子模様を粗い点線で表すとともに当該格子模様の格子点を白丸で表しているが、実際の変換画像は周囲との輝度の違いで当該格子模様を表す。
【0056】
点群角度・点群間隔算出部121dは本発明に係る点群角度・点群間隔算出部の実施の一形態であり、撮像ユニット110および撮像動作制御部121bにより撮像された展開画像51、および変換画像生成部121cにより生成された変換画像52に基づいて、展開画像51におけるネジ山の長手方向と変換画像52における点群を結んだ線の長手方向との成す角度である点群角度αを算出するとともに、変換画像生成部121cにより生成された変換画像52に基づいて変換画像52における点群の間隔のうちネジ穴10のネジピッチに対応する間隔である点群間隔βを算出するものである。
実体的には、演算処理部121が、演算処理部121に格納された点群角度・点群間隔算出プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、点群角度・点群間隔算出部121dとしての機能を果たす。
【0057】
図6に示す如く、点群角度・点群間隔算出部121dは、展開画像51におけるネジ山の長手方向(稜線方向)とその長手方向が一致する(互いに平行となる)線である直線51aを決定する。
直線51aは展開画像51における白色部分(ネジ山の尾根部分)の中央を通る線であり、例えば展開画像51に二値化処理、細線化処理、ハフ変換処理(直線抽出処理)を順に施すことにより得られる。
なお、直線51aを決定する方法はこれに限定されず、他の方法を用いて決定しても良い。
【0058】
点群角度・点群間隔算出部121dは、変換画像52における点群(図6において黒丸で表される格子点群)を結んだ線の長手方向とその長手方向が一致する(互いに平行となる)線である直線52aを決定する。
直線51aと同様に、直線52aは例えば変換画像52に二値化処理、細線化処理、ハフ変換処理(直線抽出処理)を順に施すことにより得られる。
【0059】
点群角度・点群間隔算出部121dは決定された直線51aおよび直線52aとの成す角度として点群角度αを算出する。
【0060】
図6に示す如く、点群角度・点群間隔算出部121dは、変換画像52における点群(図6において黒丸で表される格子点群)の間隔のうち、ネジ穴10のネジピッチに対応する間隔である点群間隔βを算出する。
【0061】
点群角度・点群間隔算出部121dにより算出された点群角度αおよび点群間隔βは記憶部121aに適宜記憶される。
【0062】
ネジ形状良否判定部121eは本発明に係るネジ形状良否判定部の実施の一形態であり、予め取得された「有効点群角度範囲」と点群角度・点群間隔算出部121dにより算出された点群角度αとを比較するとともに予め取得された「有効点群間隔範囲」と点群角度・点群間隔算出部121dにより算出された点群間隔βとを比較することにより、ネジ穴10のネジ形状に係る良否判定を行うものである。
実体的には、演算処理部121が、演算処理部121に格納されたネジ形状良否判定プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、ネジ形状良否判定部121eとしての機能を果たす。
【0063】
「有効点群角度範囲」は、ネジ穴10の設計寸法(加工時の寸法誤差が無い理想的な寸法)に基づいて理論的に算出される点群角度である基準点群角度αを含み、ネジ穴10の寸法公差(許容し得る寸法誤差)に基づいて理論的に算出される点群角度の最小値αminおよび点群角度の最大値αmaxをそれぞれ下限値および上限値とする範囲である。
基準点群角度α、点群角度の最小値αminおよび点群角度の最大値αmaxの間には、αmin<α<αmaxの関係が成立する。有効点群角度範囲は予め算出され、記憶部121aに記憶される。
【0064】
「有効点群間隔範囲」は、ネジ穴10の設計寸法(加工時の寸法誤差が無い理想的な寸法)に基づいて理論的に算出される点群間隔である基準点群間隔βを含み、ネジ穴10の寸法公差(許容し得る寸法誤差)に基づいて理論的に算出される点群間隔の最小値βminおよび点群間隔の最大値βmaxをそれぞれ下限値および上限値とする範囲である。
基準点群角度β、点群角度の最小値βminおよび点群角度の最大値βmaxの間には、βmin<β<βmaxの関係が成立する。有効点群間隔範囲は予め算出され、記憶部121aに記憶される。
【0065】
本実施例の「有効点群角度範囲」および「有効点群間隔範囲」は、いずれもネジ穴10の設計寸法および寸法公差に基づいて理論的に算出されたものであるが、本発明に係る有効点群角度範囲および有効点群間隔範囲はこれに限定されず、加工が良好であることが予め分かっている複数のネジ穴についてそれぞれ点群角度αおよび点群間隔βを算出し、これらの算出結果に基づいて決定する(例えば、複数のネジ穴の点群角度αの算出結果の最小値および最大値をそれぞれ有効点群角度範囲の下限値および上限値とし、複数のネジ穴の点群間隔βの算出結果の最小値および最大値をそれぞれ有効点群間隔範囲の下限値および上限値とする)構成としても良い。
【0066】
ネジ形状良否判定部121eは、記憶部121aに記憶された「有効点群角度範囲」と点群角度αとを比較し、点群角度αが有効点群角度範囲の範囲内である場合(αmin≦α≦αmaxの場合)には「第一形状要件」を満たすと判定し、点群角度αが有効点群角度範囲の範囲外である場合(α<αminまたはαmax<αの場合)には「第一形状要件」を満たさないと判定する。
ネジ形状良否判定部121eは、記憶部121aに記憶された「有効点群間隔範囲」と点群間隔βとを比較し、点群間隔βが有効点群間隔範囲の範囲内である場合(βmin≦β≦βmaxの場合)には「第二形状要件」を満たすと判定し、点群間隔βが有効点群角度範囲の範囲外である場合(β<βminまたはβmax<βの場合)には「第二形状要件」を満たさないと判定する。
【0067】
ネジ形状良否判定部121eは、上記「第一形状要件」および「第二形状要件」の両方を満たすと判定した場合にはネジ穴10のネジ形状については良好であると判定する。
ネジ形状良否判定部121eは、上記「第一形状要件」および「第二形状要件」のうち、少なくとも一つの要件を満たさないと判定した場合(いずれか一方の要件を満たさない場合、または両方の要件を満たさない場合)にはネジ穴10のネジ形状については不良であると判定する。
【0068】
ネジ形状良否判定部121eによる「第一形状要件」の判定結果、「第二形状要件」の判定結果、およびネジ穴10のネジ形状についての良否判定結果は、記憶部121aに適宜記憶される。
【0069】
差分画像生成部121fは本発明に係る差分画像生成部の実施の一形態であり、予め取得された良好ネジ穴の内周面の展開画像61に高速フーリエ変換を施すことにより生成された変換画像である良好変換画像62と変換画像生成部121cにより生成された変換画像52との差分である差分画像53(図7参照)を生成するものである。
実体的には、演算処理部121が、演算処理部121に格納された差分画像生成プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、差分画像生成部121fとしての機能を果たす。
【0070】
「良好ネジ穴」はネジ山の形状(ネジピッチやネジ山の高さ等)が所定の寸法公差の範囲内に収まっており、かつ、ネジ山に欠損等の欠陥が無いことが予め確認されているネジ穴を指す。
従って、良好ネジ穴の内周面の展開画像61は、図2に示す如き良好なネジ穴10の展開画像51と略同じである。
また、良好変換画像62は良好ネジ穴の内周面の展開画像61に高速フーリエ変換を施すことにより生成された変換画像であることから、図4に示す如き良好なネジ穴10の展開画像51に高速フーリエ変換を施すことにより生成された変換画像52と略同じである。
良好ネジ穴の内周面の展開画像61および良好変換画像62は予め実験等により取得され、記憶部121aに記憶される。
【0071】
差分画像生成部121fは、良好変換画像62と変換画像52との差分である差分画像53を生成する。より詳細には、差分画像生成部121fは、良好変換画像62および変換画像52の間で対応する画素(同じ座標の画素)毎に輝度の差分を算出し、当該算出された「輝度の差分」をそれぞれ対応する画素(同じ座標の画素)の輝度とする画像を生成し、当該生成された画像を差分画像53とする。
良好変換画像62と図5に示す変換画像52との差分である差分画像53を生成すると、差分画像53は図7に示す如き欠陥に起因する格子模様(粗い点線)が残った画像となる。
差分画像生成部121fにより生成された差分画像53は、記憶部121aに適宜記憶される。
【0072】
欠陥抽出画像生成部121gは本発明に係る欠陥抽出画像生成部の実施の一形態であり、差分画像生成部121fにより生成された差分画像53に逆高速フーリエ変換を施すことにより欠陥抽出画像54(図8参照)を生成するものである。
実体的には、演算処理部121が、演算処理部121に格納された欠陥抽出画像生成プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、欠陥抽出画像生成部121gとしての機能を果たす。
【0073】
逆高速フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform;IFFT)は、高速フーリエ変換により変換されたもの(本発明の場合、変換画像)を元に戻すアルゴリズムを指す。
【0074】
差分画像53は図7に示す如き欠陥に起因する格子模様(粗い点線)が残った画像であるため、差分画像53に逆高速フーリエ変換を施すと図8に示す如き欠陥部分(黒い部分)のみが抽出された画像、すなわち欠陥抽出画像54となる。欠陥抽出画像54は記憶部121aに適宜記憶される。
【0075】
欠陥良否判定部121hは本発明に係る欠陥良否判定部の実施の一形態であり、欠陥抽出画像生成部121gにより生成された欠陥抽出画像54に基づいてネジ穴10の欠陥に係る良否判定を行うものである。
実体的には、演算処理部121が、演算処理部121に格納された欠陥良否判定プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、欠陥良否判定部121hとしての機能を果たす。
【0076】
欠陥良否判定部121hは、欠陥抽出画像54に基づいて欠陥抽出画像54における欠陥部分のサイズを算出する。
なお、図8に示す欠陥抽出画像54における欠陥部分は一つ(単数)であるが、欠陥抽出画像における欠陥部分が複数ある場合には欠陥部分毎にそのサイズが算出される。
「欠陥のサイズ」の例としては、(a)ネジ穴の深さ方向のサイズ、(b)ネジ穴の周方向のサイズ、(c)ネジ穴の深さ方向のサイズおよびネジ穴の周方向のサイズのうちいずれか大きい方、等が挙げられる。
【0077】
欠陥良否判定部121hは、算出された各欠陥部分のサイズと「有効欠陥サイズ」とを比較した結果、算出された欠陥部分のサイズ(複数の欠陥部分がある場合には複数の欠陥部分のサイズの最大値)が有効欠陥サイズ以下である場合には「第一欠陥要件」を満たすと判定し、算出された欠陥部分のサイズ(複数の欠陥部分がある場合には複数の欠陥部分のサイズの最大値)が有効欠陥サイズより大きい場合には「第一欠陥要件」を満たさないと判定する。
「有効欠陥サイズ」はネジ穴10において許容し得る欠陥のサイズの上限値であり、ネジ穴10の規格や使用条件(使用時に求められるネジ穴の強度)等により予め設定される。有効欠陥サイズは予め取得され、記憶部121aに記憶される。
【0078】
欠陥良否判定部121hは、欠陥抽出画像54に基づいて欠陥抽出画像54における欠陥部分の面積を算出する。
なお、図8に示す欠陥抽出画像54における欠陥部分は一つ(単数)であるが、欠陥抽出画像における欠陥部分が複数ある場合には欠陥部分毎にその面積が算出される。
【0079】
欠陥良否判定部121hは、算出された欠陥部分の面積と「有効欠陥面積」とを比較した結果、算出された欠陥部分の面積(複数の欠陥部分がある場合には複数の欠陥部分の面積の最大値)が有効欠陥面積以下である場合には「第二欠陥要件」を満たすと判定し、算出された欠陥部分の面積(複数の欠陥部分がある場合には複数の欠陥部分の面積の最大値)が有効欠陥面積より大きい場合には「第二欠陥要件」を満たさないと判定する。
「有効欠陥面積」はネジ穴10において許容し得る欠陥の面積の上限値であり、ネジ穴10の規格や使用条件(使用時に求められるネジ穴の強度)等により予め設定される。有効欠陥面積は予め取得され、記憶部121aに記憶される。
【0080】
なお、本実施例の有効欠陥面積は欠陥部分の個々の面積を対象とするものであるが、本発明はこれに限定されず、ネジ穴において許容し得る複数の欠陥部分の面積の和の上限値を有効欠陥面積とし、当該有効欠陥面積と欠陥抽出画像に基づいて算出された複数の欠陥部分の面積の和とを比較する構成としても良い。
【0081】
欠陥良否判定部121hは、欠陥抽出画像54に基づいて欠陥抽出画像54における欠陥部分の個数を算出する。
【0082】
欠陥良否判定部121hは、算出された欠陥部分の個数と「有効欠陥個数」とを比較した結果、算出された欠陥部分の個数が有効欠陥個数以下である場合には「第三欠陥要件」を満たすと判定し、算出された欠陥部分の個数が有効欠陥個数より大きい場合には「第三欠陥要件」を満たさないと判定する。
「有効欠陥個数」はネジ穴10において許容し得る欠陥の個数の上限値であり、ネジ穴10の規格や使用条件(使用時に求められるネジ穴の強度)等により予め設定される。有効欠陥個数は予め取得され、記憶部121aに記憶される。
【0083】
欠陥良否判定部121hは、上記「第一欠陥要件」、「第二欠陥要件」および「第三欠陥要件」の三つの要件を全て満たす場合にはネジ穴10の欠陥については良好であると判定する。
欠陥良否判定部121hは、上記「第一欠陥要件」、「第二欠陥要件」および「第三欠陥要件」の三つの要件のうち、少なくとも一つの要件を満たさない場合にはネジ穴10の欠陥については不良であると判定する。
【0084】
欠陥良否判定部121hによる「第一欠陥要件」の判定結果、「第二欠陥要件」の判定結果、「第三欠陥要件」の判定結果およびネジ穴10の欠陥についての良否判定結果は、記憶部121aに適宜記憶される。
【0085】
最終良否判定部121iは本発明に係る最終良否判定部の実施の一形態であり、ネジ形状良否判定部121eによるネジ穴10のネジ形状に係る良否判定の結果および欠陥良否判定部121hによるネジ穴10の欠陥に係る良否判定の結果に基づいてネジ穴10の最終的な良否判定を行うものである。
実体的には、演算処理部121が、演算処理部121に格納された最終良否判定プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、最終良否判定部121iとしての機能を果たす。
【0086】
最終良否判定部121iは、ネジ形状良否判定部121eがネジ穴10のネジ形状について良好であると判定した場合には「第一判定要件」を満たすと判定し、ネジ形状良否判定部121eがネジ穴10のネジ形状について不良であると判定した場合には「第一判定要件」を満たさないと判定する。
最終良否判定部121iは、欠陥良否判定部121hがネジ穴10の欠陥について良好であると判定した場合には「第二判定要件」を満たすと判定し、欠陥良否判定部121hがネジ穴10の欠陥について不良であると判定した場合には「第二判定要件」を満たさないと判定する。
【0087】
最終良否判定部121iは、上記「第一判定要件」および「第二判定要件」の両方を満たす場合にはネジ穴10が最終的に良好であると判定する。
最終良否判定部121iは、上記「第一判定要件」および「第二判定要件」のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合(いずれか一方の要件を満たさない場合、または両方の要件を満たさない場合)にはネジ穴10が最終的に不良であると判定する。
【0088】
最終良否判定部121iによる「第一判定要件」の判定結果、「第二判定要件」の判定結果およびネジ穴10の最終的な良否判定結果は、記憶部121aに適宜記憶される。
【0089】
なお、ネジ形状良否判定部121eによるネジ穴10のネジ形状に係る良否判定または欠陥良否判定部121hによるネジ穴10の欠陥に係る良否判定のうちのいずれか一方を先に行い、当該先に行った良否判定結果において良好であると判定された場合のみ他方の良否判定を行う構成とした場合には、当該他方の良否判定により良好であると判定されたネジ穴10は実質的には最終良否判定部121iによるネジ穴10の最終的な良否判定において良好であると判定されたものと同じである。従って、このような場合には最終良否判定部121iを省略してもネジ穴10の最終的な良否判定を行うことが可能である。
【0090】
以上の如く、ネジ穴検査装置100は、
ネジ穴10の内周面の展開画像51を撮像する展開画像撮像部(撮像ユニット110および撮像動作制御部121bを合わせたもの)と、
展開画像撮像部により撮像された展開画像51に高速フーリエ変換を施すことにより変換画像52を生成する変換画像生成部121cと、
展開画像撮像部により撮像された展開画像51および変換画像生成部121cにより生成された変換画像52に基づいて展開画像51におけるネジ山の長手方向と変換画像52における点群(格子点群)を結んだ線の長手方向との成す角度である点群角度αを算出するとともに、変換画像生成部121cにより生成された変換画像52に基づいて変換画像52における点群の間隔のうちネジ穴10のネジピッチに対応する間隔である点群間隔βを算出する点群角度・点群間隔算出部121dと、
予め取得された有効点群角度範囲と点群角度・点群間隔算出部121dにより算出された点群角度αとを比較するとともに予め取得された有効点群間隔範囲と点群角度・点群間隔算出部121dにより算出された点群間隔βとを比較することにより、ネジ穴10のネジ形状に係る良否判定を行うネジ形状良否判定部121eと、
を具備するものである。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、従来の目視検査では困難であったネジピッチの微妙な変動やリード角の微妙な変動といったネジ穴10の内周面の形状(ネジ形状)に係る良否判定を精度良く行うことが可能であり、ひいてはネジ穴10の検査の信頼性が向上する。
また、従来の高速フーリエ変換による変換画像を用いた検査では検査精度を確保するために予めパターンマッチングに供されるマスター画像を多数用意する必要があったが、ネジ穴検査装置100は算出された点群角度αおよび点群間隔βをそれぞれ有効点群角度範囲および有効点群間隔範囲と比較することによりネジ穴10のネジ形状の良否判定を行うため、予め用意する必要があるのは実質的には有効点群角度範囲および有効点群間隔範囲だけで良い。従って、ネジ穴検査装置100の記憶部121aの記憶容量を従来の検査に供される装置に比べて相対的に小さくすることが可能である。特に、直径や深さ、ネジピッチ等がそれぞれ異なる複数種類のネジ穴について同一の装置を用いて検査を行う場合、従来はネジ穴の種類毎に多数のマスター画像を必要とするが、ネジ穴検査装置100はネジ穴の種類毎の有効点群角度範囲および有効点群間隔範囲を持っていれば良く、記憶容量を小さくすることが可能であるという効果が顕著となる。
さらに、有効点群角度範囲および有効点群間隔範囲はネジ穴10の設計寸法やその寸法公差等に基づいて理論的に算出することにより得られるものであるため、実質的には予め有効点群角度範囲および有効点群間隔範囲を得るために別途実験等を行う必要が無く、作業性に優れる。
【0091】
また、ネジ穴検査装置100のネジ形状良否判定部121eは、
点群角度αが有効点群角度範囲の範囲内であるという第一形状要件および点群間隔βが有効点群間隔範囲の範囲内であるという第二形状要件の両方を満たす場合にはネジ穴10のネジ形状については良好であると判定し、
第一形状要件および第二形状要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合にはネジ穴10のネジ形状については不良であると判定するものである。
このように構成することにより、ネジ穴10のネジ形状についての良否判定を一定の判定基準に従って行うことが可能であり、ひいてはネジ穴10のネジ形状についての良否判定の信頼性が向上する。
【0092】
また、ネジ穴検査装置100は、
予め取得された良好変換画像62と変換画像生成部121cにより生成された変換画像52との差分である差分画像53を生成する差分画像生成部121fと、
差分画像生成部121fにより生成された差分画像53に逆高速フーリエ変換を施すことにより欠陥抽出画像54を生成する欠陥抽出画像生成部121gと、
欠陥抽出画像生成部121gにより生成された欠陥抽出画像54に基づいてネジ穴10の欠陥に係る良否判定を行う欠陥良否判定部121hと、
を具備するものである。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、従来の展開画像に二値化処理を施した画像(二値化画像)に基づく検査あるいはマスター展開画像(良好なネジ穴の展開画像)との間の差分に基づく検査では、二値化の閾値の設定やマスター展開画像等の撮像時の輝度によってはネジ穴の谷底部分(暗い部分)と欠陥部分とを区別できずにネジ穴の谷底部分および欠陥部分の両方を一つの大きな欠陥として誤って認識し、あるいは複数のネジ山を跨いだ形状の欠陥(図3参照)をネジ山の谷底部で切り離された複数の小さい欠陥として誤って認識する(図14に示す二値化画像71を参照)といった事態が生じ、検査精度を確保することが困難であった。
これに対して、ネジ穴検査装置100は高速フーリエ変換された画像の間(良好変換画像62と変換画像52の間)で差分をとることにより、ネジ穴10のネジ山の尾根部分と谷底部分の輝度差等の影響を排除して欠陥のみを精度良く抽出することが可能である。
従って、ネジ穴10の欠陥に係る良否判定を精度良く行うことが可能であり、ひいてはネジ穴10の検査の信頼性が向上する。
【0093】
また、ネジ穴検査装置100の欠陥良否判定部121hは、
欠陥抽出画像54における単数または複数の欠陥部分のそれぞれのサイズが予め取得された有効欠陥サイズ以下であるという第一欠陥要件、欠陥抽出画像54における単数または複数の欠陥部分のそれぞれの面積が予め取得された有効欠陥面積以下であるという第二欠陥要件、および欠陥抽出画像54における単数または複数の欠陥部分の個数が予め取得された有効欠陥個数以下であるという第三欠陥要件、の三つの要件を全て満たす場合にはネジ穴10の欠陥については良好であると判定し、
第一欠陥要件、第二欠陥要件および第三欠陥要件の三つの要件のうち、少なくとも一つの要件を満たさない場合にはネジ穴10の欠陥については不良であると判定するものである。
このように構成することにより、ネジ穴10の欠陥についての良否判定を一定の判定基準に従って行うことが可能であり、ひいてはネジ穴10の欠陥についての良否判定の信頼性が向上する。
【0094】
また、ネジ穴検査装置100は、
ネジ形状良否判定部121eによるネジ穴10のネジ形状に係る良否判定の結果および欠陥良否判定部121hによるネジ穴10の欠陥に係る良否判定の結果に基づいてネジ穴10の最終的な良否判定を行う最終良否判定部121iを具備するものである。
このように構成することにより、ネジ穴10のネジ形状および欠陥の状況の両方を加味した良否判定を行うことが可能であり、検査の精度および信頼性が向上する。
【0095】
また、ネジ穴検査装置100の最終良否判定部121iは、
ネジ形状良否判定部121eがネジ穴10のネジ形状について良好であると判定したという第一判定要件と欠陥良否判定部121hがネジ穴10の欠陥について良好であると判定したという第二判定要件の両方を満たす場合にはネジ穴10が最終的に良好であると判定し、
第一判定要件および第二判定要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合にはネジ穴10が最終的に不良であると判定するものである。
このように構成することにより、ネジ穴10の最終的な良否判定を一定の判定基準に従って行うことが可能であり、ひいてはネジ穴10の最終的な良否判定の信頼性が向上する。
【0096】
以下では、図1および図9を用いて本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例について説明する。
本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例は図1に示すネジ穴検査装置100を用いてネジ穴10の検査を行う方法である。
図9に示す如く、本発明に係るネジ穴検査方法の実施の一形態は主として展開画像撮像工程S1100、変換画像生成工程S1200、点群角度・点群間隔算出工程S1300、ネジ形状良否判定工程S1400、差分画像生成工程S1500、欠陥抽出画像生成工程S1600、欠陥良否判定工程S1700、最終良否判定工程S1800等を具備する。
【0097】
展開画像撮像工程S1100はネジ穴10の内周面の展開画像51を撮像する工程である。
展開画像撮像工程S1100において、撮像ユニット110および撮像動作制御部121bを合わせたものは、ネジ穴10の内周面の展開画像51を撮像する。展開画像51は記憶部121aに適宜記憶される。
展開画像撮像工程S1100が終了したら、変換画像生成工程S1200に移行する。
【0098】
変換画像生成工程S1200は展開画像撮像工程S1100において撮像された展開画像51に高速フーリエ変換を施すことにより変換画像52を生成する工程である。
変換画像生成工程S1200において、変換画像生成部121cは展開画像51に高速フーリエ変換を施し、変換画像52を生成する。変換画像52は記憶部121aに適宜記憶される。
変換画像生成工程S1200が終了したら、点群角度・点群間隔算出工程S1300に移行する。
【0099】
点群角度・点群間隔算出工程S1300は展開画像撮像工程S1100において撮像された展開画像51および変換画像生成工程S1200において生成された変換画像52に基づいて展開画像51におけるネジ山の長手方向と変換画像52における点群を結んだ線の長手方向との成す角度である点群角度αを算出するとともに、変換画像生成工程S1200において生成された変換画像52に基づいて変換画像52における点群の間隔のうちネジ穴10のネジピッチに対応する間隔である点群間隔βを算出する工程である。
点群角度・点群間隔算出工程S1300において、点群角度・点群間隔算出部121dは展開画像51におけるネジ山の長手方向(稜線方向)とその長手方向が一致する(互いに平行となる)線である直線51aを決定し、変換画像52における点群(格子点群)を結んだ線の長手方向その長手方向が一致する(互いに平行となる)線である直線52aを決定する。
点群角度・点群間隔算出部121dは決定された直線51aおよび直線52aとの成す角度として点群角度αを算出するとともに、変換画像52における点群(格子点群)の間隔のうち、ネジ穴10のネジピッチに対応する間隔である点群間隔βを算出する。算出された点群角度αおよび点群間隔βは記憶部121aに適宜記憶される。
点群角度・点群間隔算出工程S1300が終了したら、ネジ形状良否判定工程S1400に移行する。
【0100】
ネジ形状良否判定工程S1400は予め取得された有効点群角度範囲と点群角度・点群間隔算出工程S1300において算出された点群角度αとを比較するとともに予め取得された有効点群間隔範囲と点群角度・点群間隔算出工程S1300において算出された点群間隔βとを比較することにより、ネジ穴10のネジ形状に係る良否判定を行う工程である。
ネジ形状良否判定工程S1400において、ネジ形状良否判定部121eは点群角度αが有効点群角度範囲の範囲内である場合(αmin≦α≦αmaxの場合)には「第一形状要件」を満たすと判定し、点群角度αが有効点群角度範囲の範囲外である場合(α<αminまたはαmax<αの場合)には「第一形状要件」を満たさないと判定する。
また、ネジ形状良否判定部121eは記憶部121aに記憶された「有効点群間隔範囲」と点群間隔βとを比較し、点群間隔βが有効点群間隔範囲の範囲内である場合(βmin≦β≦βmaxの場合)には「第二形状要件」を満たすと判定し、点群間隔βが有効点群角度範囲の範囲外である場合(β<βminまたはβmax<βの場合)には「第二形状要件」を満たさないと判定する。
そして、ネジ形状良否判定部121eは、上記「第一形状要件」および「第二形状要件」の両方を満たすと判定した場合にはネジ穴10のネジ形状については良好であると判定し、上記「第一形状要件」および「第二形状要件」のうち少なくとも一つの要件を満たさないと判定した場合(いずれか一方の要件を満たさない場合、または両方の要件を満たさない場合)にはネジ穴10のネジ形状については不良であると判定する。
ネジ形状良否判定部121eによる「第一形状要件」の判定結果、「第二形状要件」の判定結果、およびネジ穴10のネジ形状についての良否判定結果は、記憶部121aに適宜記憶される。
ネジ形状良否判定工程S1400が終了したら、差分画像生成工程S1500に移行する。
【0101】
差分画像生成工程S1500は予め取得された良好ネジ穴の内周面の展開画像61に高速フーリエ変換を施すことにより生成された変換画像である良好変換画像62と変換画像生成工程S1200において生成された変換画像52との差分である差分画像53を生成する工程である。
差分画像生成工程S1500において、差分画像生成部121fは良好変換画像62および変換画像52の間で対応する画素(同じ座標の画素)毎に輝度の差分を算出し、当該算出された輝度の差分をそれぞれ対応する画素(同じ座標の画素)の輝度とする画像を生成し、当該生成された画像を差分画像53とする。差分画像53は記憶部121aに適宜記憶される。
差分画像生成工程S1500が終了したら、欠陥抽出画像生成工程S1600に移行する。
【0102】
欠陥抽出画像生成工程S1600は差分画像生成工程S1500において生成された差分画像53に逆高速フーリエ変換を施すことにより欠陥抽出画像54を生成する工程である。
欠陥抽出画像生成工程S1600において、欠陥抽出画像生成部121gは差分画像53に逆高速フーリエ変換を施し、欠陥抽出画像54を生成する。欠陥抽出画像54は記憶部121aに適宜記憶される。
欠陥抽出画像生成工程S1600が終了したら、欠陥良否判定工程S1700に移行する。
【0103】
欠陥良否判定工程S1700は欠陥抽出画像生成工程S1600において生成された欠陥抽出画像54に基づいてネジ穴10の欠陥に係る良否判定を行う工程である。
【0104】
欠陥良否判定工程S1700において、欠陥良否判定部121hは、欠陥抽出画像54に基づいて欠陥抽出画像54における欠陥部分のサイズを算出し、算出された欠陥部分のサイズ(複数の欠陥部分がある場合には複数の欠陥部分のサイズの最大値)が予め取得された有効欠陥サイズ以下である場合には「第一欠陥要件」を満たすと判定し、算出された欠陥部分のサイズ(複数の欠陥部分がある場合には複数の欠陥部分のサイズの最大値)が有効欠陥サイズより大きい場合には「第一欠陥要件」を満たさないと判定する。
【0105】
欠陥良否判定工程S1700において、欠陥良否判定部121hは、欠陥抽出画像54に基づいて欠陥抽出画像54における欠陥部分の面積を算出し、算出された欠陥部分の面積(複数の欠陥部分がある場合には複数の欠陥部分の面積の最大値)が予め取得された有効欠陥面積以下である場合には「第二欠陥要件」を満たすと判定し、算出された欠陥部分の面積(複数の欠陥部分がある場合には複数の欠陥部分の面積の最大値)が有効欠陥面積より大きい場合には「第二欠陥要件」を満たさないと判定する。
【0106】
欠陥良否判定工程S1700において、欠陥良否判定部121hは、欠陥抽出画像54に基づいて欠陥抽出画像54における欠陥部分の個数を算出し、算出された欠陥部分の個数が予め取得された有効欠陥個数以下である場合には「第三欠陥要件」を満たすと判定し、算出された欠陥部分の個数が有効欠陥個数より大きい場合には「第三欠陥要件」を満たさないと判定する。
【0107】
欠陥良否判定工程S1700において、欠陥良否判定部121hは、上記「第一欠陥要件」、「第二欠陥要件」および「第三欠陥要件」の三つの要件を全て満たす場合にはネジ穴10の欠陥については良好であると判定し、上記「第一欠陥要件」、「第二欠陥要件」および「第三欠陥要件」の三つの要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合にはネジ穴10の欠陥については不良であると判定する。
欠陥良否判定部121hによる「第一欠陥要件」の判定結果、「第二欠陥要件」の判定結果、「第三欠陥要件」の判定結果およびネジ穴10の欠陥についての良否判定結果は、記憶部121aに適宜記憶される。
欠陥良否判定工程S1700が終了したら、最終良否判定工程S1800に移行する。
【0108】
最終良否判定工程S1800はネジ形状良否判定工程S1400におけるネジ穴10のネジ形状に係る良否判定の結果および欠陥良否判定工程S1700におけるネジ穴10の欠陥に係る良否判定の結果に基づいてネジ穴10の最終的な良否判定を行う工程である。
【0109】
最終良否判定工程S1800において、最終良否判定部121iは、ネジ形状良否判定工程S1400においてネジ穴10のネジ形状について良好であると判定した場合には「第一判定要件」を満たすと判定し、ネジ形状良否判定工程S1400においてネジ穴10のネジ形状について不良であると判定した場合には「第一判定要件」を満たさないと判定する。
【0110】
最終良否判定工程S1800において、最終良否判定部121iは、欠陥良否判定工程S1700においてネジ穴10の欠陥について良好であると判定した場合には「第二判定要件」を満たすと判定し、欠陥良否判定工程S1700においてネジ穴10の欠陥について不良であると判定した場合には「第二判定要件」を満たさないと判定する。
最終良否判定部121iは、上記「第一判定要件」および「第二判定要件」の両方を満たす場合にはネジ穴10が最終的に良好であると判定し、上記「第一判定要件」および「第二判定要件」のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合(いずれか一方の要件を満たさない場合、または両方の要件を満たさない場合)にはネジ穴10が最終的に不良であると判定する。
最終良否判定部121iによる「第一判定要件」の判定結果、「第二判定要件」の判定結果およびネジ穴10の最終的な良否判定結果は、記憶部121aに適宜記憶される。
【0111】
以上の如く、本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例は、
ネジ穴10の内周面の展開画像51を撮像する展開画像撮像工程S1100と、
展開画像撮像工程S1100において撮像された展開画像51に高速フーリエ変換を施すことにより変換画像52を生成する変換画像生成工程S1200と、
展開画像撮像工程S1100において撮像された展開画像51および変換画像生成工程S1200において生成された変換画像52に基づいて展開画像51におけるネジ山の長手方向と変換画像52における点群を結んだ線の長手方向との成す角度である点群角度αを算出するとともに、変換画像生成工程S1200において生成された変換画像52に基づいて変換画像52における点群の間隔のうちネジ穴10のネジピッチに対応する間隔である点群間隔βを算出する点群角度・点群間隔算出工程S1300と、
予め取得された有効点群角度範囲と点群角度・点群間隔算出工程S1300において算出された点群角度αとを比較するとともに予め取得された有効点群間隔範囲と点群角度・点群間隔算出工程S1300において算出された点群間隔βとを比較することにより、ネジ穴10のネジ形状に係る良否判定を行うネジ形状良否判定工程S1400と、
を具備するものである。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、従来の目視検査では困難であったネジピッチの微妙な変動やリード角の微妙な変動といったネジ穴10の内周面の形状(ネジ形状)に係る良否判定を精度良く行うことが可能であり、ひいてはネジ穴10の検査の信頼性が向上する。
また、従来の高速フーリエ変換による変換画像を用いた検査では検査精度を確保するために予めパターンマッチングに供されるマスター画像を多数用意する必要があったが、本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例では算出された点群角度αおよび点群間隔βをそれぞれ有効点群角度範囲および有効点群間隔範囲と比較することによりネジ穴10のネジ形状の良否判定を行うため、予め用意する必要があるのは実質的には有効点群角度範囲および有効点群間隔範囲だけで良い。従って、従来の方法に比べて検査に供されるデータを相対的に小さくすることが可能である。特に、直径や深さ、ネジピッチ等がそれぞれ異なる複数種類のネジ穴について同一の装置を用いて検査を行う場合、従来はネジ穴の種類毎に多数のマスター画像を必要とするが、本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例ではネジ穴の種類毎の有効点群角度範囲および有効点群間隔範囲を持っていれば良く、記憶容量を小さくすることが可能であるという効果が顕著となる。
さらに、有効点群角度範囲および有効点群間隔範囲はネジ穴10の設計寸法やその寸法公差等に基づいて理論的に算出することにより得られるものであるため、実質的には予め有効点群角度範囲および有効点群間隔範囲を得るために別途実験等を行う必要が無く、作業性に優れる。
【0112】
また、本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例は、
ネジ形状良否判定工程S1400において、
点群角度αが有効点群角度範囲の範囲内であるという第一形状要件および点群間隔βが有効点群間隔範囲の範囲内であるという第二形状要件の両方を満たす場合にはネジ穴10のネジ形状については良好であると判定し、
第一形状要件および第二形状要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合にはネジ穴10のネジ形状については不良であると判定するものである。
このように構成することにより、ネジ穴10のネジ形状についての良否判定を一定の判定基準に従って行うことが可能であり、ひいてはネジ穴10のネジ形状についての良否判定の信頼性が向上する。
【0113】
また、本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例は、
予め取得された良好ネジ穴の内周面の展開画像61に高速フーリエ変換を施すことにより生成された変換画像である良好変換画像62と変換画像生成工程S1200において生成された変換画像52との差分である差分画像53を生成する差分画像生成工程S1500と、
差分画像生成工程S1500において生成された差分画像53に逆高速フーリエ変換を施すことにより欠陥抽出画像54を生成する欠陥抽出画像生成工程S1600と、
欠陥抽出画像生成工程S1600において生成された欠陥抽出画像54に基づいてネジ穴10の欠陥に係る良否判定を行う欠陥良否判定工程S1700と、
を具備するものである。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、従来の展開画像に二値化処理を施した画像(二値化画像)に基づく検査あるいはマスター展開画像(良好なネジ穴の展開画像)との間の差分に基づく検査では、二値化の閾値の設定やマスター展開画像等の撮像時の輝度によってはネジ穴の谷底部分(暗い部分)と欠陥部分とを区別できずにネジ穴の谷底部分および欠陥部分の両方を一つの大きな欠陥として誤って認識し、あるいは複数のネジ山を跨いだ形状の欠陥(図3参照)をネジ山の谷底部で切り離された複数の小さい欠陥として誤って認識する(図14に示す二値化画像71を参照)といった事態が生じ、検査精度を確保することが困難であった。
これに対して、本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例では、高速フーリエ変換された画像の間(良好変換画像62と変換画像52の間)で差分をとることにより、ネジ穴10のネジ山の尾根部分と谷底部分の輝度差等の影響を排除して欠陥のみを精度良く抽出することが可能である。
従って、ネジ穴10の欠陥に係る良否判定を精度良く行うことが可能であり、ひいてはネジ穴10の検査の信頼性が向上する。
【0114】
また、本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例は、
欠陥良否判定工程S1700において、
欠陥抽出画像54における単数または複数の欠陥部分のそれぞれのサイズが予め取得された有効欠陥サイズ以下であるという第一欠陥要件、欠陥抽出画像54における単数または複数の欠陥部分のそれぞれの面積が予め取得された有効欠陥面積以下であるという第二欠陥要件、および欠陥抽出画像54における単数または複数の欠陥部分の個数が予め取得された有効欠陥個数以下であるという第三欠陥要件、の三つの要件を全て満たす場合にはネジ穴10の欠陥については良好であると判定し、
第一欠陥要件、第二欠陥要件および第三欠陥要件の三つの要件のうち、少なくとも一つの要件を満たさない場合にはネジ穴10の欠陥については不良であると判定するものである。
このように構成することにより、ネジ穴10の欠陥についての良否判定を一定の判定基準に従って行うことが可能であり、ひいてはネジ穴10の欠陥についての良否判定の信頼性が向上する。
【0115】
また、本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例は、
ネジ形状良否判定工程S1400におけるネジ穴10のネジ形状に係る良否判定の結果および欠陥良否判定工程S1700におけるネジ穴10の欠陥に係る良否判定の結果に基づいてネジ穴10の最終的な良否判定を行う最終良否判定工程S1800を具備するものである。
このように構成することにより、ネジ穴10のネジ形状および欠陥の状況の両方を加味した良否判定を行うことが可能であり、検査の精度および信頼性が向上する。
【0116】
また、本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例は、
最終良否判定工程S1800において、
ネジ形状良否判定工程S1400においてネジ穴10のネジ形状について良好であると判定したという第一判定要件と欠陥良否判定工程S1700においてネジ穴10の欠陥について良好であると判定したという第二判定要件の両方を満たす場合にはネジ穴10が最終的に良好であると判定し、
第一判定要件および第二判定要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合にはネジ穴10が最終的に不良であると判定するものである。
このように構成することにより、ネジ穴10の最終的な良否判定を一定の判定基準に従って行うことが可能であり、ひいてはネジ穴10の最終的な良否判定の信頼性が向上する。
【0117】
なお、図9に示す本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例では、ネジ穴10のネジ形状の判定に係る工程(点群角度・点群間隔算出工程S1300およびネジ形状良否判定工程S1400)を行った後でネジ穴10の欠陥の判定に係る工程(差分画像生成工程S1500、欠陥抽出画像生成工程S1600および欠陥良否判定工程S1700)を行い、その後最終良否判定工程S1800を行う構成としたが、本発明に係るネジ穴検査方法はこれに限定されない。
【0118】
すなわち、図10に示す本発明に係るネジ穴検査方法の第二実施例の如く、ネジ穴10の欠陥の判定に係る工程(差分画像生成工程S1500、欠陥抽出画像生成工程S1600および欠陥良否判定工程S1700)を行った後でネジ穴10のネジ形状の判定に係る工程(点群角度・点群間隔算出工程S1300およびネジ形状良否判定工程S1400)を行い、その後最終良否判定工程S1800を行う構成としても同様の効果を奏する。
【0119】
また、図11に示す本発明に係るネジ穴検査方法の第三実施例の如く、展開画像撮像工程S1100、変換画像生成工程S1200を行った後、ネジ穴10のネジ形状の判定に係る工程(点群角度・点群間隔算出工程S1300およびネジ形状良否判定工程S1400)とネジ穴10の欠陥の判定に係る工程(差分画像生成工程S1500、欠陥抽出画像生成工程S1600および欠陥良否判定工程S1700)とを同時並行的に行い、その後最終良否判定工程S1800を行う構成としても同様の効果を奏する。
【0120】
さらに、図12に示す本発明に係るネジ穴検査方法の第四実施例の如く、ネジ穴10のネジ形状の判定に係る工程(点群角度・点群間隔算出工程S1300およびネジ形状良否判定工程S1400)を行った結果、ネジ穴10のネジ形状については良好であると判定された場合にのみネジ穴10の欠陥の判定に係る工程(差分画像生成工程S1500、欠陥抽出画像生成工程S1600および欠陥良否判定工程S1700)を行う構成とした場合には、最終良否判定工程S1800を省略した構成であっても最終良否判定工程S1800を行ったのと略同じ効果を奏する。
【0121】
また、図13に示す本発明に係るネジ穴検査方法の第五実施例の如く、ネジ穴10の欠陥の判定に係る工程(差分画像生成工程S1500、欠陥抽出画像生成工程S1600および欠陥良否判定工程S1700)を行った結果、ネジ穴10の欠陥については良好であると判定された場合にのみネジ穴10のネジ形状の判定に係る工程(点群角度・点群間隔算出工程S1300およびネジ形状良否判定工程S1400)を行う構成とした場合には、最終良否判定工程S1800を省略した構成であっても最終良否判定工程S1800を行ったのと略同じ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明に係るネジ穴検査装置の実施の一形態を示す図。
【図2】本発明に係る欠陥が無いネジ穴の展開画像を示す図。
【図3】本発明に係る欠陥が有るネジ穴の展開画像を示す図。
【図4】本発明に係る欠陥が無いネジ穴の変換画像を示す図。
【図5】本発明に係る欠陥が有るネジ穴の変換画像を示す図。
【図6】本発明に係る点群角度および点群間隔を示す図。
【図7】本発明に係る差分画像を示す図。
【図8】本発明に係る欠陥抽出画像を示す図。
【図9】本発明に係るネジ穴検査方法の第一実施例を示す図。
【図10】本発明に係るネジ穴検査方法の第二実施例を示す図。
【図11】本発明に係るネジ穴検査方法の第三実施例を示す図。
【図12】本発明に係るネジ穴検査方法の第四実施例を示す図。
【図13】本発明に係るネジ穴検査方法の第五実施例を示す図。
【図14】二値化画像を示す図。
【符号の説明】
【0123】
10 ネジ穴
51 展開画像
52 変換画像
100 ネジ穴検査装置
110 撮像ユニット
121b 撮像動作制御部
121c 変換画像生成部
121d 点群角度・点群間隔算出部
121e ネジ形状良否判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ穴の内周面の展開画像を撮像する展開画像撮像部と、
前記展開画像撮像部により撮像された展開画像に高速フーリエ変換を施すことにより変換画像を生成する変換画像生成部と、
前記展開画像撮像部により撮像された展開画像および前記変換画像生成部により生成された変換画像に基づいて前記展開画像におけるネジ山の長手方向と前記変換画像における点群を結んだ線の長手方向との成す角度である点群角度を算出するとともに、前記変換画像生成部により生成された変換画像に基づいて当該変換画像における点群の間隔のうち前記ネジ穴のネジピッチに対応する間隔である点群間隔を算出する点群角度・点群間隔算出部と、
予め取得された有効点群角度範囲と前記点群角度・点群間隔算出部により算出された点群角度とを比較するとともに予め取得された有効点群間隔範囲と前記点群角度・点群間隔算出部により算出された点群間隔とを比較することにより、前記ネジ穴のネジ形状に係る良否判定を行うネジ形状良否判定部と、
を具備するネジ穴検査装置。
【請求項2】
前記ネジ形状良否判定部は、
前記点群角度が前記有効点群角度範囲の範囲内であるという第一形状要件および前記点群間隔が前記有効点群間隔範囲の範囲内であるという第二形状要件の両方を満たす場合には前記ネジ穴のネジ形状については良好であると判定し、
前記第一形状要件および前記第二形状要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴のネジ形状については不良であると判定する請求項1に記載のネジ穴検査装置。
【請求項3】
予め取得された良好ネジ穴の内周面の展開画像に高速フーリエ変換を施すことにより生成された変換画像である良好変換画像と前記変換画像生成部により生成された変換画像との差分である差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像生成部により生成された差分画像に逆高速フーリエ変換を施すことにより欠陥抽出画像を生成する欠陥抽出画像生成部と、
前記欠陥抽出画像生成部により生成された欠陥抽出画像に基づいて前記ネジ穴の欠陥に係る良否判定を行う欠陥良否判定部と、
を具備する請求項1または請求項2に記載のネジ穴検査装置。
【請求項4】
前記欠陥良否判定部は、
前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分のそれぞれのサイズが予め取得された有効欠陥サイズ以下であるという第一欠陥要件、前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分のそれぞれの面積が予め取得された有効欠陥面積以下であるという第二欠陥要件、および前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分の個数が予め取得された有効欠陥個数以下であるという第三欠陥要件、の三つの要件を全て満たす場合には前記ネジ穴の欠陥については良好であると判定し、
前記第一欠陥要件、前記第二欠陥要件および前記第三欠陥要件の三つの要件のうち、少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴の欠陥については不良であると判定する請求項3に記載のネジ穴検査装置。
【請求項5】
前記ネジ形状良否判定部による前記ネジ穴のネジ形状に係る良否判定の結果および前記欠陥良否判定部による前記ネジ穴の欠陥に係る良否判定の結果に基づいて前記ネジ穴の最終的な良否判定を行う最終良否判定部を具備する請求項3または請求項4に記載のネジ穴検査装置。
【請求項6】
前記最終良否判定部は、
前記ネジ形状良否判定部が前記ネジ穴のネジ形状について良好であると判定したという第一判定要件と前記欠陥良否判定部が前記ネジ穴の欠陥について良好であると判定したという第二判定要件の両方を満たす場合には前記ネジ穴が最終的に良好であると判定し、
前記第一判定要件および前記第二判定要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴が最終的に不良であると判定する請求項5に記載のネジ穴検査装置。
【請求項7】
ネジ穴の内周面の展開画像を撮像する展開画像撮像工程と、
前記展開画像撮像工程において撮像された展開画像に高速フーリエ変換を施すことにより変換画像を生成する変換画像生成工程と、
前記展開画像撮像工程において撮像された展開画像および前記変換画像生成工程において生成された変換画像に基づいて前記展開画像におけるネジ山の長手方向と前記変換画像における点群を結んだ線の長手方向との成す角度である点群角度を算出するとともに、前記変換画像生成工程において生成された変換画像に基づいて当該変換画像における点群の間隔のうち前記ネジ穴のネジピッチに対応する間隔である点群間隔を算出する点群角度・点群間隔算出工程と、
予め取得された有効点群角度範囲と前記点群角度・点群間隔算出工程において算出された点群角度とを比較するとともに予め取得された有効点群間隔範囲と前記点群角度・点群間隔算出工程において算出された点群間隔とを比較することにより、前記ネジ穴のネジ形状に係る良否判定を行うネジ形状良否判定工程と、
を具備するネジ穴検査方法。
【請求項8】
前記ネジ形状良否判定工程において、
前記点群角度が前記有効点群角度範囲の範囲内であるという第一形状要件および前記点群間隔が前記有効点群間隔範囲の範囲内であるという第二形状要件の両方を満たす場合には前記ネジ穴のネジ形状については良好であると判定し、
前記第一形状要件および前記第二形状要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴のネジ形状については不良であると判定する請求項7に記載のネジ穴検査方法。
【請求項9】
予め取得された良好ネジ穴の内周面の展開画像に高速フーリエ変換を施すことにより生成された変換画像である良好変換画像と前記変換画像生成工程において生成された変換画像との差分である差分画像を生成する差分画像生成工程と、
前記差分画像生成工程において生成された差分画像に逆高速フーリエ変換を施すことにより欠陥抽出画像を生成する欠陥抽出画像生成工程と、
前記欠陥抽出画像生成工程において生成された欠陥抽出画像に基づいて前記ネジ穴の欠陥に係る良否判定を行う欠陥良否判定工程と、
を具備する請求項7または請求項8に記載のネジ穴検査方法。
【請求項10】
前記欠陥良否判定工程において、
前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分のそれぞれのサイズが予め取得された有効欠陥サイズ以下であるという第一欠陥要件、前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分のそれぞれの面積が予め取得された有効欠陥面積以下であるという第二欠陥要件、および前記欠陥抽出画像における単数または複数の欠陥部分の個数が予め取得された有効欠陥個数以下であるという第三欠陥要件、の三つの要件を全て満たす場合には前記ネジ穴の欠陥については良好であると判定し、
前記第一欠陥要件、前記第二欠陥要件および前記第三欠陥要件の三つの要件のうち、少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴の欠陥については不良であると判定する請求項9に記載のネジ穴検査方法。
【請求項11】
前記ネジ形状良否判定工程における前記ネジ穴のネジ形状に係る良否判定の結果および前記欠陥良否判定工程における前記ネジ穴の欠陥に係る良否判定の結果に基づいて前記ネジ穴の最終的な良否判定を行う最終良否判定工程を具備する請求項9または請求項10に記載のネジ穴検査方法。
【請求項12】
前記最終良否判定工程において、
前記ネジ形状良否判定工程において前記ネジ穴のネジ形状について良好であると判定したという第一判定要件と前記欠陥良否判定工程において前記ネジ穴の欠陥について良好であると判定したという第二判定要件の両方を満たす場合には前記ネジ穴が最終的に良好であると判定し、
前記第一判定要件および前記第二判定要件のうち少なくとも一つの要件を満たさない場合には前記ネジ穴が最終的に不良であると判定する請求項11に記載のネジ穴検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−14347(P2009−14347A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173019(P2007−173019)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】