ネットワークコントローラ及びウェイクアップ制御方法
【課題】本発明はWake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークシステムにおいて、効率的な省電力運用を行うことができるネットワークコントローラ及びウェイクアップ制御方法を提供するものである。
【解決手段】情報処理装置に備えられるネットワークコントローラであって、パケットを送受信するパケット送受信部と、パケット送受信部により受信されたパケットのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力するパケット解析部とを備え、パケット送受信部は、情報処理装置が省電力状態にあるときに、GARP(Gratuitous Address Resolution Protocol)パケットを周期的にブロードキャスト送信する。
【解決手段】情報処理装置に備えられるネットワークコントローラであって、パケットを送受信するパケット送受信部と、パケット送受信部により受信されたパケットのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力するパケット解析部とを備え、パケット送受信部は、情報処理装置が省電力状態にあるときに、GARP(Gratuitous Address Resolution Protocol)パケットを周期的にブロードキャスト送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置等のような情報処理装置を省電力状態から起動させるための機能を有するネットワークコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
省電力状態にある印刷装置等のような情報処理装置を外部からLAN(Local Area Network)経由で遠隔的に起動させる技術として、Wake On LAN(以下、単に「WOL」という)がある。WOLにおいては、WOLに対応した情報処理装置を省電力状態から起動させる方法として、Magic Packetによる起動方法と、Wake Up Frameによる起動方法の2種類が広く知られている。
【0003】
図5は、WOLに対応した従来の情報処理装置の構成例を示す図である。
図5に示した情報処理装置101は、ネットワークコントローラ102、電源制御部103、処理部104を含む。ネットワークコントローラ102は、情報処理装置101を省電力状態から起動させるための機能を有したNIC(Network Interface Card)であり、パケット送受信部105とパケット生成・解析部106を含む。パケット送受信部105は、LAN(Ethernet(登録商標))を介してパケットの送受信を行う。パケット生成・解析部106は、パケット送受信部105が送信するパケットの生成や、パケット送受信部105が受信したパケットの解析等を行う。また、受信したパケットを解析した結果、そのパケットのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合には、ウェイクアップ要求(「Wake Up 要求」)の信号を電源制御部103へ送信する。電源制御部103は、情報処理装置101を起動状態から省電力状態へ移行させたり省電力状態から起動状態へ復帰させたり等の、情報処理装置101の電源制御を行う。例えば、電源制御部103は、情報処理装置101の図示しない制御部から省電力要求の信号を受信すると、情報処理装置101を起動状態から省電力状態へ移行させる電源制御を行う。なお、省電力要求の信号は、例えば、情報処理装置101において操作や処理が一定時間行われなかった場合等に出力される信号である。また、例えば、電源制御部103は、パケット生成・解析部106からウェイクアップ要求の信号を受信すると、情報処理装置101を省電力状態から起動状態へ復帰させる電源制御を行う。電源制御部103が情報処理装置101を起動状態から省電力状態へ移行させる電源制御を行ったときは、情報処理装置101において、ネットワークコントローラ102を含む必要最小限のユニットにのみ電力が供給される状態(通電状態)となり、その他のユニットには電力が供給されない状態(非通電状態)となる。一方、電源制御部103が情報処理装置101を省電力状態から起動状態へ復帰させる電源制御を行ったときは、情報処理装置101において、省電力状態時に非通電状態にされたユニットが通電状態にされる。処理部104は、各種の処理を行う。
【0004】
情報処理装置101がMagic Packetによる起動方法を採用したWOLに対応している場合、省電力状態にある情報処理装置101は、Magic Packetという特定のデータパターンを有するパケットを受信したときに、自身の電力を回復して起動する。
【0005】
図6は、Magic Packetのデータパターンの一例を示す図である。
図6に示したMagic Packetは、宛先アドレスが6バイトの0xFFすなわちブロードキャストアドレス「FF-FF-FF-FF-FF-FF」に続けて起動対象とする装置のMAC(Media Access Control)アドレスを16回繰り返したデータパターンを有する。
【0006】
一方、情報処理装置101がWake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応している場合、省電力状態にある情報処理装置101は、ネットワークコントローラ102に予め設定されている特定のデータパターンに一致するパケットを受信したときに、自身の電力を回復して起動する。Magic Packetによる起動方法の場合と異なる点は、受信したパケットを、予め設定されているデータパターンと比較する形式になっている点である。
【0007】
図7は、Wake Up Frameによる起動方法を採用している場合に行われる、受信パケットと予め設定されているデータパターンとの比較を説明する図である。
図7において、符号111は、受信パケットの一例であるTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)パケットを示し、そのデータ構造は、Ethernet(登録商標)ヘッダ部(14バイト)、IPヘッダ部(20バイト)、TCPヘッダ部(20バイト)、データ部を有する。また、符号112は、ネットワークコントローラ102のパケット生成・解析部106に予め設定(ウェイクアップ(「Wake Up」)設定)されている特定のデータパターンを示し、宛先MACアドレスとして自身のMACアドレス、宛先IPアドレスとして自身のIPアドレス、そして、宛先ポート番号を有する。ここでは、一例として、情報処理装置101が印刷装置であるとして、宛先ポート番号をlpr(line printer daemon protocol)ポートとしている。この場合、情報処理装置101は、TCP/IPパケット111を受信すると、そのパケットのEthernet(登録商標)ヘッダ部、IPヘッダ部、TCPヘッダ部と、パケット生成・解析部106に予め設定されている特定のデータパターン112である、自身のMACアドレス、自身のIPアドレス、lprポートとをそれぞれ比較し、それぞれが一致していれば、パケット生成・解析部106からウェイクアップ要求の信号が出力され、自身の電力を回復して起動する。なお、受信したパケットの他の部分との比較は行われない。
【0008】
ところで、WOLに対応したネットワークシステム、例えばオフィスのネットワークシステムやインターネットシステム等においては、ネットワークがサブネットで区切られることが一般的である。このような場合、ウェイクアップの指示を出すノードとその対象となる省電力状態のノードとの間が、ルーター又はゲートウェイ(以下、まとめて「ルーター」という)等の経路制御装置で仕切られる場合が多くある。
【0009】
図8は、そのような場合のネットワークシステムの一例を示す図である。
図8に示したネットワークシステム121では、ルーター122によって、ネットワークが2つのサブネットA、Bに区切られている。サブネットAには、ノードA1乃至A4とルーター122が接続され、サブネットBには、ノードB1乃至B4とルーター122が接続されている。このようなネットワークシステム121において、例えば、ノードA1がノードB4へウェイクアップの指示(「Wake Up 指示」)を出してノードB4を省電力状態から起動させる場合、ノードA1とノードB4との間がルーター122で仕切られることになる。なお、ノードA1乃至A4及びノードB1乃至B4の各々は、例えば、図5に示した情報処理装置である。
【0010】
ネットワークシステム121が、Magic Packetによる起動方法を採用したWOLに対応している場合、Magic Packetは、図6に示したようにブロードキャストパケットであることから、原則として、ルーター122を越えることはできない。そのため、例えば、ノードA1からウェイクアップの指示として送信されたMagic Packetが、ルーター122を越えてサブネットBのノードB4へ配信されることはない。
【0011】
これを解決するために、Magic Packetを中継することが可能な特殊なルーターを用いるという方法も考えられるが、このようなルーターは一般的ではないために特定用途の環境下でしか使用されていないのが現状である。従って、Magic Packetによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークシステムは、オフィス等の中規模以上のネットワーク環境下において現実的な方法であるとは言えない。
【0012】
一方、ネットワークシステム121が、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応している場合、ノードA1からウェイクアップの指示として送信されるパケットは、例えば図7のパケット111のように、通常の通信で使用されるパケットと同様のパケット構造を有することから、通信パケットを監視するルーター122の設定が適切であれば、ルーター122を越えてウェイクアップの指示をノードB4へ出すことが可能となり、オフィス等の中規模以上のネットワーク環境下において現実的な方法であると言える。
【0013】
また、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークコントローラにおいては、予め設定しておく特定パターンとして複数の特定パターンを設定することができるものも多数ある。このようなネットワークコントローラを備えたノードによれば、例えば、http(hyper text transfer protocol)のリクエストに対してはウェイクアップしない(無視する)が、lprやftp(file transfer protocol)のリクエストに対してはウェイクアップする等といったきめ細かいウェイクアップ条件を設定することができる。
【0014】
ここで、図8に示したネットワークシステム121での通信例を、TCP/IPによる通信を例に、より詳細に説明する。この場合、通信には、IPアドレスとMACアドレスが使用される。IPアドレスは、ノード毎に個別に割り当てることができる論理的な番号であり、MACアドレスは、各機器に一意に割り当てられる物理的な番号である。
【0015】
各ノードで実行されるアプリケーションは、IPアドレスを使用して通信を行うが、実際の通信に使用されるパケットではMACアドレスが使用される。このため、TCP/IPによる通信では、通信相手のMACアドレスを調べるために、ARP(Address Resolution Protocol:アドレス解決プロトコル)というプロトコルが用意されている。すなわち、通信を行うノードがIPアドレスを指定してARPパケットをブロードキャストすると、該当するIPアドレスを有するノードが自身のMACアドレスを付加したARP応答パケットを返信する。
【0016】
図9は、ARPパケットがブロードキャストされたときの通信例を示す図である。但し、図9では、説明の便宜のため、ネットワークシステム121の一部のみを示す。
図9に示したように、例えば、サブネットAのノードA1が、通信相手となるノードのMACアドレスを知るために、通信相手となるノードのIPアドレス「192.168.1.3」を指定してARPパケット(ARPリクエスト)をブロードキャストすると(S101)、該当するIPアドレス「192.168.1.3」を有するノードA3が自身のMACアドレスを付加したARP応答パケットを返信する(S102)。
【0017】
このように、通信を行うノードは、通信相手となるノードのIPアドレスを指定してARPパケットをブロードキャストすることにより、通信相手のMACアドレスを知ることができる。
【0018】
但し、各ノードは、このようなやりとりを通信毎に行っていたのでは非効率的であるので、実際の運用では、通信を行った相手のIPアドレスとMACアドレスの関連表(以下「エントリー」という)をテーブルとして自身のメモリ内に保持している。これをARPテーブルと言う。
【0019】
図10は、ARPテーブルの一例を示す図である。
図10に示したように、ARPテーブルには、通信を行った相手のIPアドレス(「Internet Address」)とMACアドレス(「Physical Address」)とが対応付けされて格納される。図10に示したARPテーブルによれば、例えば、IPアドレスが「192.168.1.2」のノードのMACアドレスは「00-19-d1-13-cb-a1」であることを示している。
【0020】
各ノードが、このようなARPテーブルを自身のメモリ内に保持しておくことにより、各ノードで実行されるアプリケーションは、通信に先立ってARPテーブルを参照し、これに通信相手のエントリーが含まれている場合には、エントリーに従ったMACアドレスを使用して通信を行うことができる。一方、ARPテーブルにエントリーが含まれていない場合には、通信に先立ってARPパケット(ARPリクエスト)をブロードキャストして通信相手のMACアドレスを取得し、当該MACアドレスを使用して通信を行う。
【0021】
なお、各ノードは、自身のメモリを効率的に利用するために、メモリ内に保持しているARPテーブルにおいて、一定時間使用されていないエントリーを削除するようにしている。
【0022】
図8に示したネットワークシステム121において、例えばノードA1とノードB4との間の通信等のように、ルーター122を越えた相手との通信が行われる際には、ルーター122がパケットを中継するため、ルーター122にも、各ノードと同様に、通信相手(中継先)のIPアドレスとMACアドレスのエントリーがARPテーブルとして自身のメモリ内に保持される。当然ながら、そのARPテーブルに通信相手のMACアドレスのエントリーが含まれていない場合には、ルーター122がARPパケット(ARPリクエスト)をブロードキャストしてMACアドレスを取得し、そのエントリーを自身のメモリ内に保持されているARPテーブルに追加する。
【0023】
図11は、このようにしてルーター122のメモリ内に保持されたARPテーブルの一例を示す図である。
図11に示したように、ルーター122のメモリ内には、サブネット毎に、ARPテーブルが保持される。すなわち、サブネットA側のARPテーブル131と、サブネットB側のARPテーブル132とが保持される。サブネットA側のARPテーブル131には、サブネットAに属するノードA1乃至A4の各々の、IPアドレス(「Internet Address」)とMACアドレス(「Physical Address」)のエントリーが含まれている。サブネットB側のARPテーブルには、サブネットBに属するノードB1乃至B4の各々の、IPアドレス(「Internet Address」)とMACアドレス(「Physical Address」)のエントリーが含まれている。
【0024】
ここで、ネットワークシステム121が、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応しているものとし、また、ノードB2が備えるネットワークコントローラに、lprとftpのリクエストに対してのみウェイクアップするという設定が行われ、その後、ノードB2が省電力状態になったとする。
【0025】
図12、図13は、このような場合に、ノードA1がノードB2に対して、lprやftpのリクエストを行う場合の通信例を示す図である。但し、説明の便宜のため、図12、図13では、ネットワークシステム121の一部のみを示し、図13では、サブネットB側のARPテーブル132として、その一部のみを示す。
【0026】
図12に示したように、lprとftpのリクエストに対してのみウェイクアップするという設定が行われてから省電力状態になっているノードB2に対し、ノードA1が、lpr又はftpのリクエストを行うとする。この場合、ノードA1とノードB2は別々のサブネットにあるものの、図13に示したように、ルーター122が保持するサブネットB側のARPテーブル132にはノードB2のエントリーが含まれているので、ノードA1から送信されたlpr又はftpのリクエストに係るパケットは、ARPテーブル132に従ってルーター122によってノードB2へ中継される。そして、そのパケットを受信したノードB2は、ウェイクアップの設定に従って、省電力状態から起動する。
【0027】
一方、仮に、ルーター122が保持するサブネットB側のARPテーブル132にノードB2のエントリーが含まれていない場合には、次のような通信が行われることになる。
図14は、そのような場合の通信例を示す図である。
【0028】
図14に示したように、まず、ノードA1が、省電力状態にあるノードB2のIPアドレスである「192.168.2.2」に対し、lpr又はftpのリクエストを行う(S201)。この場合には、ルーター122が保持するサブネットB側のARPテーブル132にはノードB2のエントリーが含まれていないので、ルーター122は、ノードB2のMACアドレスを得るために、ノードB2が属するサブネットBに対し、ARPリクエストをブロードキャストする(S202)。しかしながら、ノードB2は、lprとftpのリクエストに対してのみウェイクアップする設定となっているため、ARPリクエストに対して省電力状態から起動することはなく、ARP応答パケットを返信しない(S203)。従って、このような場合、ルーター122はノードB2のMACアドレスを得ることができないため、ノードA1からノードB2へのlpr又はftpのリクエストに係る通信は失敗することになる。
【0029】
そこで、このような通信の失敗を防止するため、ノードB2のネットワークコントローラに、ARPリクエストに対してもウェイクアップする設定を行っておく方法が考えられる。しかしながら、このような方法を採用すると、ルーター122が、サブネットB側のARPテーブル132にエントリーが含まれていない、サブネットBに属するノード宛のリクエストがあった場合には、その都度、サブネットBへARPリクエストをブロードキャストするので、省電力状態にあるノードB2は、その都度、起動することとなり、結果として、ノードB2の効率的な省電力運用を行うことができない。
【0030】
ところで、ネットワークシステムの一例として、例えば、SIP(Session Initiation Protocol)サーバの二重化を安価な構成により実現するために、2台のSIPサーバを異なる2つのネットワーク(通信系LAN、保守系LAN)により接続し、双方のサービスIPアドレスを同一のものとするようにしたシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。このシステムでは、SIPサーバの運用系として稼動中の何れかのサーバは、通信系LANに接続される全てのホストコンピュータに対し、GARP(Gratuitous Address Resolution Protocol)パケットを送出することで、サービスIPアドレスと運用系サーバとを対応させることができ、これによりクライアント端末は、SIPサービスを享受する際に、1つのサービスIPアドレスを参照するだけで良くなる、というものである。
【0031】
また、ネットワークコントローラの一例として、例えば、容易にリモートウェイクアップを実現するために、PC(Personal Computer)がスリープ状態の期間中、各パケットを第1データおよび第2データと比較するようにしたネットワークコントローラが知られている(例えば特許文献2参照)。ここで、第1データはネットワークコントローラ宛のARP要求パケットのデータパターンを示し、第2データはネットワークコントローラ宛のウェイクアップパケットのデータパターンを示す。このネットワークコントローラでは、到来したパケットが第1データと一致した時には送信データレジスタに格納されている送信データをARP応答パケットとしてLAN上に送出し、到来したパケットが第2データと一致した時にはウェイクアップ信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2007−142976号公報
【特許文献2】特開2008−301077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
従来、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークシステムにおいては、上述のとおり、効率的な省電力運用を行うことができないという問題があった。
【0034】
そこで、本発明はWake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークシステムにおいて、効率的な省電力運用を行うことができるネットワークコントローラ及びウェイクアップ制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記課題は本発明によれば、情報処理装置に備えられるネットワークコントローラであって、単位データ(例えばパケット)を送受信する単位データ送受信部と、単位データ送受信部により受信された単位データのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力する単位データ解析部とを備え、単位データ送受信部は、情報処理装置が省電力状態にあるときに、ネットワーク上に介在するアドレス解決プロトコルテーブルのエントリー情報がリフレッシュクリアされることを阻止する情報を所定の時期に送信することを特徴とするネットワークコントローラを提供することによって達成できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークシステムにおいて、効率的な省電力運用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】一実施の形態に係るネットワークコントローラを備えたプリンタの構成例を示す図である。
【図2】GARPパケットが使用されるネットワークシステムの一例を示す図である。
【図3】GARPパケットのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】一実施の形態に係るネットワークコントローラを備えたプリンタが行う動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】WOLに対応した従来の情報処理装置の構成例を示す図である。
【図6】Magic Packetのデータパターンの一例を示す図である。
【図7】Wake Up Frameによる起動方法を採用している場合に行われる、受信パケットと予め設定されているデータパターンとの比較を説明する図である。
【図8】ウェイクアップの指示を出すノードとその対象となる省電力状態のノードとの間がルーターで仕切られる場合のネットワークシステムの一例を示す図である。
【図9】ARPパケットがブロードキャストされたときの通信例を示す図である。
【図10】ARPテーブルの一例を示す図である。
【図11】ルーターのメモリ内に保持されたARPテーブルの一例を示す図である。
【図12】ノードA1がノードB2に対して、lprやftpのリクエストを行う場合の通信例を示す第1の図である。
【図13】ノードA1がノードB2に対して、lprやftpのリクエストを行う場合の通信例を示す第2の図である。
【図14】ルーターが保持するサブネットB側のARPテーブルにノードB2のエントリーが含まれていない場合の通信例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るネットワークコントローラを備えたプリンタ(印刷装置)の構成例を示す図である。
【0039】
図1において、プリンタ1は、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応した情報処理装置の一例であって、ネットワークコントローラ2、電源制御部3、データ処理部4、画像生成部5、用紙搬送制御部6を含む。
【0040】
ネットワークコントローラ2は、プリンタ1を省電力状態から起動させるための機能を有した例えばNICであり、パケット送受信部7、パケット生成・解析部8、GARP自動送信用フリーランニングタイマー(以下単に「タイマー」という)9、GARP送信用バッファ(以下単に「バッファ」という)10を含む。
【0041】
パケット送受信部7は、LAN(Ethernet(登録商標))を介してパケットの送受信を行う。
パケット生成・解析部8は、パケット送受信部7が送信するパケットの生成や、パケット送受信部7が受信したパケットの解析等を行う。また、受信したパケットを解析した結果、そのパケットのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合には、プリンタ1を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求(「Wake Up 要求」)の信号を電源制御部3へ送信する。すなわち、LANを介して接続される不図示のホストコンピュータからプリンタ1へ送られてくる印刷データ(プリントジョブ)は、lprプロトコルもしくはftpプロトコルの形式で送信されてくるので、LAN上にある種々のパケットの中から印刷データを送信するlprもしくはftpパケットの特定データパターンを識別した場合にのみ、プリンタ1を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求(「Wake Up 要求」)の信号をネットワークコントローラ2が電源制御部3へ出力することによってプリンタ1をスリープ状態から稼動状態に切り替える制御が行われる。なお、受信したパケットのデータパターンと、ホストコンピュータがプリンタに印刷処理を指示する情報であることを示す、予め設定されている特定のデータパターンとが一致するか否かは、例えば、図7を用いて説明したようにして行われる。また、特定のデータパターンは、管理者等により、任意に設定が可能であり、例えば図7に示した特定のデータパターン112のようなlprリクエストに係るデータパターンや、ftpのリクエスに係るデータパターン等である。また、上位装置から送信されてくるすべての印刷指示を識別するために、特定のデータパターンとして複数の特定のデータパターンを設定することも可能である。
【0042】
タイマー9は、管理者等により予め設定されている時間毎に、或いは、初期設定として予め設定されている時間毎に、周期的にトリガー信号(トリガーパルス)を出力する。
バッファ10は、パケット送受信部7から送信されるGARPパケットを記憶する。なお、GARPパケットは、例えば、パケット生成・解析部によって生成される。
【0043】
このような構成を有するネットワークコントローラ2において、例えば、パケット送受信部7は、プリンタ1が省電力状態にあるときに、タイマー9により周期的に出力されるトリガー信号に従って、バッファ10に記憶されているGARPパケットを周期的にブロードキャスト(ブロードキャスト送信)する。
【0044】
電源制御部3は、プリンタ1を起動状態から省電力状態へ移行させたり省電力状態から起動状態へ復帰させたり等の、プリンタ1の電源制御を行う。例えば、電源制御部3は、プリンタ1の図示しない制御部から省電力要求の信号を受信すると、プリンタ1を起動状態から省電力状態へ移行させる電源制御を行う。なお、省電力要求の信号は、例えば、プリンタ1において操作や処理が一定時間行われなかった場合等に出力される信号である。また、例えば、電源制御部3は、パケット生成・解析部8からウェイクアップ要求の信号を受信すると、プリンタ1を省電力状態から起動状態へ復帰させる電源制御を行う。電源制御部3がプリンタ1を起動状態から省電力状態へ移行させる電源制御を行ったときは、プリンタ1において、ネットワークコントローラ2を含む必要最小限のユニットにのみ電力が供給される状態(通電状態)となり、その他のユニットには電力が供給されない状態(非通電状態)となる。一方、電源制御部3がプリンタ1を省電力状態から起動状態へ復帰させる電源制御を行ったときは、プリンタ1において、省電力状態時に非通電状態にされたユニットが通電状態にされる。
【0045】
データ処理部4は、各種の処理を行う。例えば、パケット送受信部7により受信されたパケットをパケット生成・解析部8が解析した結果、それがlprリクエストに係るパケットであった場合、データ処理部4は、そのパケットに含まれるデータに対して印刷に必要な処理を行い、処理後のデータを画像生成部5へ出力する。なお、このような処理は、例えば、画像生成部5との間で同期を取りながら行われる。また、その処理結果は、例えば、パケット生成・解析部8に通知される。そして、その通知に係るパケットがパケット生成・解析部8により生成され、生成されたパケットがパケット送受信部7によりlprリクエストの送信元へ送信される。
【0046】
画像生成部5は、データ処理部4により出力された処理後のデータに基づいて用紙に画像生成を行うための処理等を行う。
用紙搬送制御部6は、画像生成部5により画像生成が行われる用紙の搬送に係る制御等を行う。例えば、用紙搬送制御部6は、用紙を搬送させるためのモータの制御等を行う。
【0047】
このような構成により、ネットワークコントローラ7を備えたプリンタ1は、省電力状態にあるときにGARPパケットを周期的にブロードキャストする機能を有することになる。
【0048】
ここで、GARPパケットについて説明する。
GARPパケットは、例えば、冗長的なルーティングシステムを含むネットワークシステムにおいて使用されるパケットである。
【0049】
図2は、GARPパケットが使用されるネットワークシステムの一例を示す図である。なお、図2に示すノードA1、A2、B1、B2のIPアドレス及びMACアドレスは、図12に示したノードA1、A2、B1、B2と同じであるとする。
【0050】
図2に示したネットワークシステム21では、2つのルーターA、Bによって、ネットワークが2つのサブネットA、Bで区切られている。サブネットAには、ノードA1、A2、ルーターA、Bが接続され、サブネットBには、ノードB1、B2、ルーターA、Bが接続されている。但し、2つのルーターA、Bにおいて、通常時は、ルーターAのみがアクティブとなり、ルーターBは非アクティブとなる。すなわち、通常時は、ルーターAのみが使用され、ルーターBは使用されない。ルーターBは、ルーターAに障害(トラブル)が発生した場合にのみ即座にアクティブとなり、ルーターAの代替ルーターとして機能する。なお、ルーターA、Bの間では、互いの状態を通知し合う通信が行われ、例えば、ルーターAに障害が発生した場合には即座にそれがルーターBに通知される。このような仕組みにより、ルーターAの障害がネットワークシステム21に与える悪影響を最小限にするようにしている。
【0051】
ネットワークシステム21では、このように、ルーターAに障害が発生すると、ルーターBがルーターAの代替ルーターとなることから、両ルーターのIPアドレスは同じである。しかしながら、MACアドレスは機器毎にユニークなものとして定義されていることから、両ルーターのMACアドレスは異なる。
【0052】
そのため、このままでは、次のような問題が生じる。
ネットワークシステム21において、通常時は、各ノードのARPテーブルには別のサブネットとの通信用に、ルーターAのIPアドレスとMACアドレスのエントリーが含まれている。例えば、ノードA1のARPテーブルには、サブネットBとの通信用に、ルーターAのIPアドレスとMACアドレスのエントリーが含まれている。このとき、ルーターBは、IPアドレスが重複してしまうため、非アクティブにされている。
【0053】
ここで、ルーターAに障害が発生してルーターBが代替ルーターとして機能したとすると、このままでは、各ノードが別のサブネットと通信を行う際のパケットの出力先は、自身のARPテーブルに従ってルーターAのMACアドレスになってしまうため、通信を行うことができない。
【0054】
そこで、ルーターBは、代替ルーターとして機能する際に、まず、GARPパケットをサブネットA内及びサブネットB内にブロードキャストする。すると、GARPパケットを受信した各ノードは、自身のARPテーブルに含まれるルーターAのエントリーにおけるMACアドレスを、受信したGARPパケットに基づくルーターBのMACアドレスへ書き換える。これにより、各ノードが別のサブネットと通信を行う際のパケットの出力先は、自身のARPテーブルに従って、代替ルーターであるルーターBのMACアドレスとなるため、ルーターBを介して通信を行うことができる。
【0055】
なお、ここでは、ルーターBがGARPパケットをブロードキャストした場合の例を示したが、各ノードがGARPパケットをブロードキャストした場合にも、それを受信した各ノードやルーターでは、同様の処理が行われる。例えば、ネットワークシステム21において、ノードB2がGARPパケットをブロードキャストした場合、それを受信したノードB1やアクティブになっているルーターは、自身のARPテーブルに含まれるノードB2のエントリーにおけるMACアドレスを、受信したGARPパケットに基づくノードB2のMACアドレスへ書き換える。但し、この場合、ノードB2の機器に変更が無ければ、書き換え前のMACアドレスと書き換え後のMACアドレスは同じとなる。
【0056】
図3は、GARPパケットのデータ構造の一例を示す図である。なお、図3に示したGARPパケットは、図2に示したノードB2からブロードキャストされたGARPパケットの一例でもある。
【0057】
図3に示したように、GARPパケットは、Ethernet(登録商標)ヘッダ部と、ARP要求部を含む。Ethernet(登録商標)ヘッダ部は、宛先MACアドレス、送信元MACアドレスを含む。ARP要求部は、送信元MACアドレス、送信元IPアドレス、宛先MACアドレス、宛先IPアドレスを含む。ここで、Ethernet(登録商標)ヘッダ部の宛先MACアドレスは、ブロードキャストアドレスを示す「FF-FF-FF-FF-FF-FF」となる。また、ARP要求部の宛先MACアドレスは、不明な宛先アドレスを示す「00-00-00-00-00-00」となる。また、Ethernet(登録商標)ヘッダ部の送信元MACアドレスと、ARP要求部の送信元MACアドレスは、GARPパケットを送信する機器のMACアドレス(この例では図2に示したノードB2のMACアドレス「00-22-64-b9-31-c4」)となる。また、ARP要求部の送信元IPアドレスと宛先IPアドレスは、GARPパケットを送信する機器のIPアドレス(この例では図2に示したノードB2のIPアドレス「192.168.2.2」)となる。すなわち、宛先IPアドレスは、送信元IPアドレスと同一となる。
【0058】
本実施形態に係るネットワークコントローラ2を備えたプリンタ1は、このようなGARPパケットを用いて、次のような動作を行う。
図4は、本実施形態に係るネットワークコントローラ2を備えたプリンタ1が行う動作の一例を示すフローチャートである。
【0059】
なお、本例では、プリンタ1が、図8、図11等に示したネットワークシステム121におけるノードB2であるとする。また、ネットワークシステム121は、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応しているものとする。また、そのネットワークシステム121に含まれる全てのノード及びルーターは、標準的な装置と同様に、自身が保持するARPテーブルの中に2分間(リフレッシュインターバル)使用されていないエントリーがある場合には、それを削除するように処理を行うものとする。
【0060】
図4に示したように、プリンタ1の電源がONされ、プリンタ1の各部に電力が供給されてプリンタ1が起動状態になると、まず、パケット生成・解析部8がGARPパケットを生成し、それがバッファ10に記憶される(S1)。なお、ここで記憶されるGARPパケットは、例えば図3に示したGARPパケットとなる。
【0061】
次に、例えば管理者等による設定に応じて、或いは、初期設定に応じて、タイマー9が1分間毎に周期的にトリガー信号を出力するように設定される(S2)。ここで、1分間という時間は、上述のとおり、ネットワークシステム121に含まれる全てのノード及びルーターでは2分間使用されないエントリーがARPテーブルから削除されるように処理が行われることを考慮して設定された時間であって、その2分間よりも短い時間の一例である。
【0062】
次に、電源制御部3が例えばプリンタ1の図示しない制御部から省電力要求の信号を受信したか否かを判定し(S3)、その判定結果がNoの場合には、再び、このS3の判定が繰り返される。一方、S3の判定結果がYesの場合には、電源制御部3がプリンタ1を起動状態から省電力状態へ遷移(移行)させる電源制御を行う(S4)。これにより、プリンタ1は、ネットワークコントローラ2を含む必要最小限のユニットにのみ電力が供給され、その他のユニットには電力が供給されない省電力状態となる。また、S4では、S2で行われた設定に応じて、1分間毎に周期的にトリガー信号を出力するというタイマー9の動作が開始する。
【0063】
次に、パケット生成・解析部8に予め設定されている特定のデータパターンに一致するデータパターンを有するパケットをパケット送受信部7が受信したか否かの判定が行われる(S5)。具体的には、パケット送受信部7がパケットを受信すると、そのパケットをパケット生成・解析部8が解析し、受信したパケットのデータパターンと予め設定されている特定のデータパターンとが一致するか否かを判定する。なお、この判定は、例えば、図7を用いて説明したようにして行われる。
【0064】
S5の判定において、その判定結果がYesの場合、パケット生成・解析部8は、電源制御部8へウェイクアップ要求の信号を出力し、それを受信した電源制御部8は、プリンタ1を省電力状態から起動状態へ遷移(移行)させる電源制御を行う(S6)。これにより、プリンタ1では、省電力状態時に電力が供給されない状態にされたユニットが、電力が供給される状態となり、起動状態となる。S6の後は、S3へ処理が戻る。
【0065】
一方、S5の判定結果がNoの場合には、タイマー9から1分間毎に周期的に出力されるトリガー信号の有無に応じて1分間が経過したか否かの判定が行われる(S7)。具体的には、トリガー信号が有りの場合には1分間が経過したと判定され、トリガー信号が無しの場合には1分間が経過していないと判定される。S7の判定結果がNoの場合には、処理がS5へ戻る。一方、S7の判定結果がYesの場合には、バッファ10に記憶されているGARPパケットをパケット送受信部7がブロードキャストする(S8)。そして、S8の後は、処理がS5へ戻る。
【0066】
このような動作により、プリンタ1が省電力状態にあるときは、1分間毎に、プリンタ1からGARPパケットがブロードキャストされるようになる。従って、プリンタ1からGARPパケットを受け取ることが可能なノードB1、B3、B4、ルーター122の各々では、プリンタ1が省電力状態になってから最初にGARPパケットを受け取った時に自身が保持するARPテーブルの中にプリンタ1のエントリーが含まれていた場合には、プリンタ1が省電力状態にある間、プリンタ1からのGARPパケットを受け取る毎に、そのARPテーブルに含まれるプリンタ1のエントリーが更新され続け、削除されることはない。このようにして、プリンタ1が省電力状態にある間、例えばルーター122が保持するサブネットB側のARPテーブル132にプリンタ1のエントリーが含まれ続けることになれば、サブネットAに属するノード(例えばノードA1)から送信されたプリンタ1宛のパケットは、ルーター122によってARPテーブル132に従ってプリンタ1へ中継されるようになる。従って、このような場合には、例えば、図14を用いて説明したようにルーター122のARPテーブル132にプリンタ1のエントリーが無いために通信に失敗するという問題は生じず、図12及び図13を用いて説明したようにlprやftpのリクエストに対してのみウェイクアップするという設定が可能になる。勿論、このような場合には、ARPリクエストに対してウェイクアップするという設定が不要になるので、プリンタ1は余計なウェイクアップをしなくても済む。
【0067】
以上、本実施形態に係るネットワークコントローラ2を備えたプリンタ1によれば、定期的にGARPパケットを発信してARPテーブルがリフレッシュクリアされるのを阻止しているので、同一サブネットに属するノードやルーターのARPテーブルからプリンタ1のエントリーが削除されることを防止することができると共にプリンタ1宛の通信時にARPリクエストを不要とすることで、省電力状態からのウェイクアップの条件となるパケットのプロトコルを細かく、印刷指示情報のみに限定して、設定することが可能となり、ホストコンピュータからプリンタに印刷指示が送られてきたときのみスリープ解除制御を行うことが可能になる。よって、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークシステムにおいて、効率的な省電力運用を行うことができる。
【0068】
なお、本実施形態においては、ネットワークコントローラ2を備えた情報処理装置の一例としてプリンタ2を採用したが、プリンタ2以外の情報処理装置を採用することも可能である。
【0069】
また、図4の説明において、ネットワークシステム121に含まれる全てのノードが、ネットワークコントローラ2を備え、プリンタ1と同様に、特定のデータパターンを有するパケットを受信したときに、省電力状態から起動するように構成することも可能である。
【0070】
また、図4の説明において、タイマー9に、1分間毎に周期的にトリガー信号を出力するように設定が行われたが、1分間を除く2分間よりも短い時間毎に周期的にトリガー信号を出力するように設定することも勿論可能である。
【0071】
また、図4の説明において、ネットワークシステム121に含まれる全てのノード及びルーターは、自身が保持するARPテーブルの中に2分間使用されていないエントリーがある場合にそれを削除するように処理を行うものであったが、例えば、2分間以外の所定時間使用されていないエントリーがある場合にそれを削除するように処理を行うように構成することも可能である。但し、この場合には、その所定時間よりも短い時間毎に周期的にトリガー信号を出力するように、タイマー9の設定が行われる。
さらに、上記実施形態において、所定期間の通信がないためにARPテーブルにエントリーされている情報が消えることがないよう、ダミー通信としてGARPパケットを送信する手法を説明したが、GARPパケットは、ARPテーブルのエントリー情報がクリアされないようにする以外に、特にそのほかの回線環境に大きな変化をもたらさないという意味で、本発明の最適な手法として選択されたものであるが、ARPテーブルのエントリーを維持させることができるもので、特にほかの回線環境に大きな影響をもたらさない通信情報であればその他の情報をネットワーク上に送出する方法であってもよい。
【0072】
本発明はいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下、本件特許出願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0073】
付記1
情報処理装置に備えられるネットワークコントローラであって、
単位データを送受信する単位データ送受信部と、
前記単位データ送受信部により受信された単位データのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、前記情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力する単位データ解析部と、
を備え、
前記単位データ送受信部は、前記情報処理装置が省電力状態にあるときに、ネットワーク上に介在するアドレス解決プロトコルテーブルのエントリー情報がリフレッシュクリアされることを阻止する情報を所定の時期に送信する、
ことを特徴とするネットワークコントローラ。
【0074】
付記2
周期的にトリガー信号を出力するタイマー部を更に備え、
前記単位データ送受信部は、前記情報処理装置が省電力状態にあるときに、前記タイマー部により出力されるトリガー信号に従ってGARPパケットを所定の時期にブロードキャスト送信することを特徴とする付記1記載のネットワークコントローラ。
【0075】
付記3
前記GARPパケットを記憶する記憶部を更に備えることを特徴とする付記1又は2記載のネットワークコントローラ。
【0076】
付記4
前記情報処理装置は印刷装置であることを特徴とする付記1乃至3の何れか一項に記載のネットワークコントローラ。
【0077】
付記5
前記特定のデータは、上位装置から送られてくる印刷を指示する情報であることを特徴とする付記1乃至4の何れか一項に記載のネットワークコントローラ。
【0078】
付記6
情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ制御方法であって、
前記情報処理装置に備えられたネットワークコントローラは、
前記情報処理装置が省電力状態にあるときにネットワーク上に介在するアドレス解決プロトコルテーブルのエントリー情報がリフレッシュクリアされることを阻止する情報を所定の時期に送信する処理と、
単位データを受信したときに、当該単位データのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、前記情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力する処理と、
を行うことを特徴とするウェイクアップ制御方法。
【符号の説明】
【0079】
1・・・プリンタ
2・・・ネットワークコントローラ
3・・・電源制御部
4・・・データ処理部
5・・・画像生成部
6・・・用紙搬送制御部
7・・・パケット送受信部
8・・・パケット生成・解析部
9・・・GARP自動送信用フリーランニングタイマー
10・・GARP送信用バッファ
21・・ネットワークシステム
101・情報処理装置
102・ネットワークコントローラ
103・電源制御部
104・処理部
105・パケット送受信部
106・パケット生成・解析部
111・TCP/IPパケット
112・特定のデータパターン
121・ネットワークシステム
122・ルーター
131・サブネットA側のARPテーブル
132・サブネットB側のARPテーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置等のような情報処理装置を省電力状態から起動させるための機能を有するネットワークコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
省電力状態にある印刷装置等のような情報処理装置を外部からLAN(Local Area Network)経由で遠隔的に起動させる技術として、Wake On LAN(以下、単に「WOL」という)がある。WOLにおいては、WOLに対応した情報処理装置を省電力状態から起動させる方法として、Magic Packetによる起動方法と、Wake Up Frameによる起動方法の2種類が広く知られている。
【0003】
図5は、WOLに対応した従来の情報処理装置の構成例を示す図である。
図5に示した情報処理装置101は、ネットワークコントローラ102、電源制御部103、処理部104を含む。ネットワークコントローラ102は、情報処理装置101を省電力状態から起動させるための機能を有したNIC(Network Interface Card)であり、パケット送受信部105とパケット生成・解析部106を含む。パケット送受信部105は、LAN(Ethernet(登録商標))を介してパケットの送受信を行う。パケット生成・解析部106は、パケット送受信部105が送信するパケットの生成や、パケット送受信部105が受信したパケットの解析等を行う。また、受信したパケットを解析した結果、そのパケットのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合には、ウェイクアップ要求(「Wake Up 要求」)の信号を電源制御部103へ送信する。電源制御部103は、情報処理装置101を起動状態から省電力状態へ移行させたり省電力状態から起動状態へ復帰させたり等の、情報処理装置101の電源制御を行う。例えば、電源制御部103は、情報処理装置101の図示しない制御部から省電力要求の信号を受信すると、情報処理装置101を起動状態から省電力状態へ移行させる電源制御を行う。なお、省電力要求の信号は、例えば、情報処理装置101において操作や処理が一定時間行われなかった場合等に出力される信号である。また、例えば、電源制御部103は、パケット生成・解析部106からウェイクアップ要求の信号を受信すると、情報処理装置101を省電力状態から起動状態へ復帰させる電源制御を行う。電源制御部103が情報処理装置101を起動状態から省電力状態へ移行させる電源制御を行ったときは、情報処理装置101において、ネットワークコントローラ102を含む必要最小限のユニットにのみ電力が供給される状態(通電状態)となり、その他のユニットには電力が供給されない状態(非通電状態)となる。一方、電源制御部103が情報処理装置101を省電力状態から起動状態へ復帰させる電源制御を行ったときは、情報処理装置101において、省電力状態時に非通電状態にされたユニットが通電状態にされる。処理部104は、各種の処理を行う。
【0004】
情報処理装置101がMagic Packetによる起動方法を採用したWOLに対応している場合、省電力状態にある情報処理装置101は、Magic Packetという特定のデータパターンを有するパケットを受信したときに、自身の電力を回復して起動する。
【0005】
図6は、Magic Packetのデータパターンの一例を示す図である。
図6に示したMagic Packetは、宛先アドレスが6バイトの0xFFすなわちブロードキャストアドレス「FF-FF-FF-FF-FF-FF」に続けて起動対象とする装置のMAC(Media Access Control)アドレスを16回繰り返したデータパターンを有する。
【0006】
一方、情報処理装置101がWake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応している場合、省電力状態にある情報処理装置101は、ネットワークコントローラ102に予め設定されている特定のデータパターンに一致するパケットを受信したときに、自身の電力を回復して起動する。Magic Packetによる起動方法の場合と異なる点は、受信したパケットを、予め設定されているデータパターンと比較する形式になっている点である。
【0007】
図7は、Wake Up Frameによる起動方法を採用している場合に行われる、受信パケットと予め設定されているデータパターンとの比較を説明する図である。
図7において、符号111は、受信パケットの一例であるTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)パケットを示し、そのデータ構造は、Ethernet(登録商標)ヘッダ部(14バイト)、IPヘッダ部(20バイト)、TCPヘッダ部(20バイト)、データ部を有する。また、符号112は、ネットワークコントローラ102のパケット生成・解析部106に予め設定(ウェイクアップ(「Wake Up」)設定)されている特定のデータパターンを示し、宛先MACアドレスとして自身のMACアドレス、宛先IPアドレスとして自身のIPアドレス、そして、宛先ポート番号を有する。ここでは、一例として、情報処理装置101が印刷装置であるとして、宛先ポート番号をlpr(line printer daemon protocol)ポートとしている。この場合、情報処理装置101は、TCP/IPパケット111を受信すると、そのパケットのEthernet(登録商標)ヘッダ部、IPヘッダ部、TCPヘッダ部と、パケット生成・解析部106に予め設定されている特定のデータパターン112である、自身のMACアドレス、自身のIPアドレス、lprポートとをそれぞれ比較し、それぞれが一致していれば、パケット生成・解析部106からウェイクアップ要求の信号が出力され、自身の電力を回復して起動する。なお、受信したパケットの他の部分との比較は行われない。
【0008】
ところで、WOLに対応したネットワークシステム、例えばオフィスのネットワークシステムやインターネットシステム等においては、ネットワークがサブネットで区切られることが一般的である。このような場合、ウェイクアップの指示を出すノードとその対象となる省電力状態のノードとの間が、ルーター又はゲートウェイ(以下、まとめて「ルーター」という)等の経路制御装置で仕切られる場合が多くある。
【0009】
図8は、そのような場合のネットワークシステムの一例を示す図である。
図8に示したネットワークシステム121では、ルーター122によって、ネットワークが2つのサブネットA、Bに区切られている。サブネットAには、ノードA1乃至A4とルーター122が接続され、サブネットBには、ノードB1乃至B4とルーター122が接続されている。このようなネットワークシステム121において、例えば、ノードA1がノードB4へウェイクアップの指示(「Wake Up 指示」)を出してノードB4を省電力状態から起動させる場合、ノードA1とノードB4との間がルーター122で仕切られることになる。なお、ノードA1乃至A4及びノードB1乃至B4の各々は、例えば、図5に示した情報処理装置である。
【0010】
ネットワークシステム121が、Magic Packetによる起動方法を採用したWOLに対応している場合、Magic Packetは、図6に示したようにブロードキャストパケットであることから、原則として、ルーター122を越えることはできない。そのため、例えば、ノードA1からウェイクアップの指示として送信されたMagic Packetが、ルーター122を越えてサブネットBのノードB4へ配信されることはない。
【0011】
これを解決するために、Magic Packetを中継することが可能な特殊なルーターを用いるという方法も考えられるが、このようなルーターは一般的ではないために特定用途の環境下でしか使用されていないのが現状である。従って、Magic Packetによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークシステムは、オフィス等の中規模以上のネットワーク環境下において現実的な方法であるとは言えない。
【0012】
一方、ネットワークシステム121が、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応している場合、ノードA1からウェイクアップの指示として送信されるパケットは、例えば図7のパケット111のように、通常の通信で使用されるパケットと同様のパケット構造を有することから、通信パケットを監視するルーター122の設定が適切であれば、ルーター122を越えてウェイクアップの指示をノードB4へ出すことが可能となり、オフィス等の中規模以上のネットワーク環境下において現実的な方法であると言える。
【0013】
また、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークコントローラにおいては、予め設定しておく特定パターンとして複数の特定パターンを設定することができるものも多数ある。このようなネットワークコントローラを備えたノードによれば、例えば、http(hyper text transfer protocol)のリクエストに対してはウェイクアップしない(無視する)が、lprやftp(file transfer protocol)のリクエストに対してはウェイクアップする等といったきめ細かいウェイクアップ条件を設定することができる。
【0014】
ここで、図8に示したネットワークシステム121での通信例を、TCP/IPによる通信を例に、より詳細に説明する。この場合、通信には、IPアドレスとMACアドレスが使用される。IPアドレスは、ノード毎に個別に割り当てることができる論理的な番号であり、MACアドレスは、各機器に一意に割り当てられる物理的な番号である。
【0015】
各ノードで実行されるアプリケーションは、IPアドレスを使用して通信を行うが、実際の通信に使用されるパケットではMACアドレスが使用される。このため、TCP/IPによる通信では、通信相手のMACアドレスを調べるために、ARP(Address Resolution Protocol:アドレス解決プロトコル)というプロトコルが用意されている。すなわち、通信を行うノードがIPアドレスを指定してARPパケットをブロードキャストすると、該当するIPアドレスを有するノードが自身のMACアドレスを付加したARP応答パケットを返信する。
【0016】
図9は、ARPパケットがブロードキャストされたときの通信例を示す図である。但し、図9では、説明の便宜のため、ネットワークシステム121の一部のみを示す。
図9に示したように、例えば、サブネットAのノードA1が、通信相手となるノードのMACアドレスを知るために、通信相手となるノードのIPアドレス「192.168.1.3」を指定してARPパケット(ARPリクエスト)をブロードキャストすると(S101)、該当するIPアドレス「192.168.1.3」を有するノードA3が自身のMACアドレスを付加したARP応答パケットを返信する(S102)。
【0017】
このように、通信を行うノードは、通信相手となるノードのIPアドレスを指定してARPパケットをブロードキャストすることにより、通信相手のMACアドレスを知ることができる。
【0018】
但し、各ノードは、このようなやりとりを通信毎に行っていたのでは非効率的であるので、実際の運用では、通信を行った相手のIPアドレスとMACアドレスの関連表(以下「エントリー」という)をテーブルとして自身のメモリ内に保持している。これをARPテーブルと言う。
【0019】
図10は、ARPテーブルの一例を示す図である。
図10に示したように、ARPテーブルには、通信を行った相手のIPアドレス(「Internet Address」)とMACアドレス(「Physical Address」)とが対応付けされて格納される。図10に示したARPテーブルによれば、例えば、IPアドレスが「192.168.1.2」のノードのMACアドレスは「00-19-d1-13-cb-a1」であることを示している。
【0020】
各ノードが、このようなARPテーブルを自身のメモリ内に保持しておくことにより、各ノードで実行されるアプリケーションは、通信に先立ってARPテーブルを参照し、これに通信相手のエントリーが含まれている場合には、エントリーに従ったMACアドレスを使用して通信を行うことができる。一方、ARPテーブルにエントリーが含まれていない場合には、通信に先立ってARPパケット(ARPリクエスト)をブロードキャストして通信相手のMACアドレスを取得し、当該MACアドレスを使用して通信を行う。
【0021】
なお、各ノードは、自身のメモリを効率的に利用するために、メモリ内に保持しているARPテーブルにおいて、一定時間使用されていないエントリーを削除するようにしている。
【0022】
図8に示したネットワークシステム121において、例えばノードA1とノードB4との間の通信等のように、ルーター122を越えた相手との通信が行われる際には、ルーター122がパケットを中継するため、ルーター122にも、各ノードと同様に、通信相手(中継先)のIPアドレスとMACアドレスのエントリーがARPテーブルとして自身のメモリ内に保持される。当然ながら、そのARPテーブルに通信相手のMACアドレスのエントリーが含まれていない場合には、ルーター122がARPパケット(ARPリクエスト)をブロードキャストしてMACアドレスを取得し、そのエントリーを自身のメモリ内に保持されているARPテーブルに追加する。
【0023】
図11は、このようにしてルーター122のメモリ内に保持されたARPテーブルの一例を示す図である。
図11に示したように、ルーター122のメモリ内には、サブネット毎に、ARPテーブルが保持される。すなわち、サブネットA側のARPテーブル131と、サブネットB側のARPテーブル132とが保持される。サブネットA側のARPテーブル131には、サブネットAに属するノードA1乃至A4の各々の、IPアドレス(「Internet Address」)とMACアドレス(「Physical Address」)のエントリーが含まれている。サブネットB側のARPテーブルには、サブネットBに属するノードB1乃至B4の各々の、IPアドレス(「Internet Address」)とMACアドレス(「Physical Address」)のエントリーが含まれている。
【0024】
ここで、ネットワークシステム121が、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応しているものとし、また、ノードB2が備えるネットワークコントローラに、lprとftpのリクエストに対してのみウェイクアップするという設定が行われ、その後、ノードB2が省電力状態になったとする。
【0025】
図12、図13は、このような場合に、ノードA1がノードB2に対して、lprやftpのリクエストを行う場合の通信例を示す図である。但し、説明の便宜のため、図12、図13では、ネットワークシステム121の一部のみを示し、図13では、サブネットB側のARPテーブル132として、その一部のみを示す。
【0026】
図12に示したように、lprとftpのリクエストに対してのみウェイクアップするという設定が行われてから省電力状態になっているノードB2に対し、ノードA1が、lpr又はftpのリクエストを行うとする。この場合、ノードA1とノードB2は別々のサブネットにあるものの、図13に示したように、ルーター122が保持するサブネットB側のARPテーブル132にはノードB2のエントリーが含まれているので、ノードA1から送信されたlpr又はftpのリクエストに係るパケットは、ARPテーブル132に従ってルーター122によってノードB2へ中継される。そして、そのパケットを受信したノードB2は、ウェイクアップの設定に従って、省電力状態から起動する。
【0027】
一方、仮に、ルーター122が保持するサブネットB側のARPテーブル132にノードB2のエントリーが含まれていない場合には、次のような通信が行われることになる。
図14は、そのような場合の通信例を示す図である。
【0028】
図14に示したように、まず、ノードA1が、省電力状態にあるノードB2のIPアドレスである「192.168.2.2」に対し、lpr又はftpのリクエストを行う(S201)。この場合には、ルーター122が保持するサブネットB側のARPテーブル132にはノードB2のエントリーが含まれていないので、ルーター122は、ノードB2のMACアドレスを得るために、ノードB2が属するサブネットBに対し、ARPリクエストをブロードキャストする(S202)。しかしながら、ノードB2は、lprとftpのリクエストに対してのみウェイクアップする設定となっているため、ARPリクエストに対して省電力状態から起動することはなく、ARP応答パケットを返信しない(S203)。従って、このような場合、ルーター122はノードB2のMACアドレスを得ることができないため、ノードA1からノードB2へのlpr又はftpのリクエストに係る通信は失敗することになる。
【0029】
そこで、このような通信の失敗を防止するため、ノードB2のネットワークコントローラに、ARPリクエストに対してもウェイクアップする設定を行っておく方法が考えられる。しかしながら、このような方法を採用すると、ルーター122が、サブネットB側のARPテーブル132にエントリーが含まれていない、サブネットBに属するノード宛のリクエストがあった場合には、その都度、サブネットBへARPリクエストをブロードキャストするので、省電力状態にあるノードB2は、その都度、起動することとなり、結果として、ノードB2の効率的な省電力運用を行うことができない。
【0030】
ところで、ネットワークシステムの一例として、例えば、SIP(Session Initiation Protocol)サーバの二重化を安価な構成により実現するために、2台のSIPサーバを異なる2つのネットワーク(通信系LAN、保守系LAN)により接続し、双方のサービスIPアドレスを同一のものとするようにしたシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。このシステムでは、SIPサーバの運用系として稼動中の何れかのサーバは、通信系LANに接続される全てのホストコンピュータに対し、GARP(Gratuitous Address Resolution Protocol)パケットを送出することで、サービスIPアドレスと運用系サーバとを対応させることができ、これによりクライアント端末は、SIPサービスを享受する際に、1つのサービスIPアドレスを参照するだけで良くなる、というものである。
【0031】
また、ネットワークコントローラの一例として、例えば、容易にリモートウェイクアップを実現するために、PC(Personal Computer)がスリープ状態の期間中、各パケットを第1データおよび第2データと比較するようにしたネットワークコントローラが知られている(例えば特許文献2参照)。ここで、第1データはネットワークコントローラ宛のARP要求パケットのデータパターンを示し、第2データはネットワークコントローラ宛のウェイクアップパケットのデータパターンを示す。このネットワークコントローラでは、到来したパケットが第1データと一致した時には送信データレジスタに格納されている送信データをARP応答パケットとしてLAN上に送出し、到来したパケットが第2データと一致した時にはウェイクアップ信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2007−142976号公報
【特許文献2】特開2008−301077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
従来、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークシステムにおいては、上述のとおり、効率的な省電力運用を行うことができないという問題があった。
【0034】
そこで、本発明はWake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークシステムにおいて、効率的な省電力運用を行うことができるネットワークコントローラ及びウェイクアップ制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記課題は本発明によれば、情報処理装置に備えられるネットワークコントローラであって、単位データ(例えばパケット)を送受信する単位データ送受信部と、単位データ送受信部により受信された単位データのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力する単位データ解析部とを備え、単位データ送受信部は、情報処理装置が省電力状態にあるときに、ネットワーク上に介在するアドレス解決プロトコルテーブルのエントリー情報がリフレッシュクリアされることを阻止する情報を所定の時期に送信することを特徴とするネットワークコントローラを提供することによって達成できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークシステムにおいて、効率的な省電力運用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】一実施の形態に係るネットワークコントローラを備えたプリンタの構成例を示す図である。
【図2】GARPパケットが使用されるネットワークシステムの一例を示す図である。
【図3】GARPパケットのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】一実施の形態に係るネットワークコントローラを備えたプリンタが行う動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】WOLに対応した従来の情報処理装置の構成例を示す図である。
【図6】Magic Packetのデータパターンの一例を示す図である。
【図7】Wake Up Frameによる起動方法を採用している場合に行われる、受信パケットと予め設定されているデータパターンとの比較を説明する図である。
【図8】ウェイクアップの指示を出すノードとその対象となる省電力状態のノードとの間がルーターで仕切られる場合のネットワークシステムの一例を示す図である。
【図9】ARPパケットがブロードキャストされたときの通信例を示す図である。
【図10】ARPテーブルの一例を示す図である。
【図11】ルーターのメモリ内に保持されたARPテーブルの一例を示す図である。
【図12】ノードA1がノードB2に対して、lprやftpのリクエストを行う場合の通信例を示す第1の図である。
【図13】ノードA1がノードB2に対して、lprやftpのリクエストを行う場合の通信例を示す第2の図である。
【図14】ルーターが保持するサブネットB側のARPテーブルにノードB2のエントリーが含まれていない場合の通信例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るネットワークコントローラを備えたプリンタ(印刷装置)の構成例を示す図である。
【0039】
図1において、プリンタ1は、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応した情報処理装置の一例であって、ネットワークコントローラ2、電源制御部3、データ処理部4、画像生成部5、用紙搬送制御部6を含む。
【0040】
ネットワークコントローラ2は、プリンタ1を省電力状態から起動させるための機能を有した例えばNICであり、パケット送受信部7、パケット生成・解析部8、GARP自動送信用フリーランニングタイマー(以下単に「タイマー」という)9、GARP送信用バッファ(以下単に「バッファ」という)10を含む。
【0041】
パケット送受信部7は、LAN(Ethernet(登録商標))を介してパケットの送受信を行う。
パケット生成・解析部8は、パケット送受信部7が送信するパケットの生成や、パケット送受信部7が受信したパケットの解析等を行う。また、受信したパケットを解析した結果、そのパケットのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合には、プリンタ1を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求(「Wake Up 要求」)の信号を電源制御部3へ送信する。すなわち、LANを介して接続される不図示のホストコンピュータからプリンタ1へ送られてくる印刷データ(プリントジョブ)は、lprプロトコルもしくはftpプロトコルの形式で送信されてくるので、LAN上にある種々のパケットの中から印刷データを送信するlprもしくはftpパケットの特定データパターンを識別した場合にのみ、プリンタ1を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求(「Wake Up 要求」)の信号をネットワークコントローラ2が電源制御部3へ出力することによってプリンタ1をスリープ状態から稼動状態に切り替える制御が行われる。なお、受信したパケットのデータパターンと、ホストコンピュータがプリンタに印刷処理を指示する情報であることを示す、予め設定されている特定のデータパターンとが一致するか否かは、例えば、図7を用いて説明したようにして行われる。また、特定のデータパターンは、管理者等により、任意に設定が可能であり、例えば図7に示した特定のデータパターン112のようなlprリクエストに係るデータパターンや、ftpのリクエスに係るデータパターン等である。また、上位装置から送信されてくるすべての印刷指示を識別するために、特定のデータパターンとして複数の特定のデータパターンを設定することも可能である。
【0042】
タイマー9は、管理者等により予め設定されている時間毎に、或いは、初期設定として予め設定されている時間毎に、周期的にトリガー信号(トリガーパルス)を出力する。
バッファ10は、パケット送受信部7から送信されるGARPパケットを記憶する。なお、GARPパケットは、例えば、パケット生成・解析部によって生成される。
【0043】
このような構成を有するネットワークコントローラ2において、例えば、パケット送受信部7は、プリンタ1が省電力状態にあるときに、タイマー9により周期的に出力されるトリガー信号に従って、バッファ10に記憶されているGARPパケットを周期的にブロードキャスト(ブロードキャスト送信)する。
【0044】
電源制御部3は、プリンタ1を起動状態から省電力状態へ移行させたり省電力状態から起動状態へ復帰させたり等の、プリンタ1の電源制御を行う。例えば、電源制御部3は、プリンタ1の図示しない制御部から省電力要求の信号を受信すると、プリンタ1を起動状態から省電力状態へ移行させる電源制御を行う。なお、省電力要求の信号は、例えば、プリンタ1において操作や処理が一定時間行われなかった場合等に出力される信号である。また、例えば、電源制御部3は、パケット生成・解析部8からウェイクアップ要求の信号を受信すると、プリンタ1を省電力状態から起動状態へ復帰させる電源制御を行う。電源制御部3がプリンタ1を起動状態から省電力状態へ移行させる電源制御を行ったときは、プリンタ1において、ネットワークコントローラ2を含む必要最小限のユニットにのみ電力が供給される状態(通電状態)となり、その他のユニットには電力が供給されない状態(非通電状態)となる。一方、電源制御部3がプリンタ1を省電力状態から起動状態へ復帰させる電源制御を行ったときは、プリンタ1において、省電力状態時に非通電状態にされたユニットが通電状態にされる。
【0045】
データ処理部4は、各種の処理を行う。例えば、パケット送受信部7により受信されたパケットをパケット生成・解析部8が解析した結果、それがlprリクエストに係るパケットであった場合、データ処理部4は、そのパケットに含まれるデータに対して印刷に必要な処理を行い、処理後のデータを画像生成部5へ出力する。なお、このような処理は、例えば、画像生成部5との間で同期を取りながら行われる。また、その処理結果は、例えば、パケット生成・解析部8に通知される。そして、その通知に係るパケットがパケット生成・解析部8により生成され、生成されたパケットがパケット送受信部7によりlprリクエストの送信元へ送信される。
【0046】
画像生成部5は、データ処理部4により出力された処理後のデータに基づいて用紙に画像生成を行うための処理等を行う。
用紙搬送制御部6は、画像生成部5により画像生成が行われる用紙の搬送に係る制御等を行う。例えば、用紙搬送制御部6は、用紙を搬送させるためのモータの制御等を行う。
【0047】
このような構成により、ネットワークコントローラ7を備えたプリンタ1は、省電力状態にあるときにGARPパケットを周期的にブロードキャストする機能を有することになる。
【0048】
ここで、GARPパケットについて説明する。
GARPパケットは、例えば、冗長的なルーティングシステムを含むネットワークシステムにおいて使用されるパケットである。
【0049】
図2は、GARPパケットが使用されるネットワークシステムの一例を示す図である。なお、図2に示すノードA1、A2、B1、B2のIPアドレス及びMACアドレスは、図12に示したノードA1、A2、B1、B2と同じであるとする。
【0050】
図2に示したネットワークシステム21では、2つのルーターA、Bによって、ネットワークが2つのサブネットA、Bで区切られている。サブネットAには、ノードA1、A2、ルーターA、Bが接続され、サブネットBには、ノードB1、B2、ルーターA、Bが接続されている。但し、2つのルーターA、Bにおいて、通常時は、ルーターAのみがアクティブとなり、ルーターBは非アクティブとなる。すなわち、通常時は、ルーターAのみが使用され、ルーターBは使用されない。ルーターBは、ルーターAに障害(トラブル)が発生した場合にのみ即座にアクティブとなり、ルーターAの代替ルーターとして機能する。なお、ルーターA、Bの間では、互いの状態を通知し合う通信が行われ、例えば、ルーターAに障害が発生した場合には即座にそれがルーターBに通知される。このような仕組みにより、ルーターAの障害がネットワークシステム21に与える悪影響を最小限にするようにしている。
【0051】
ネットワークシステム21では、このように、ルーターAに障害が発生すると、ルーターBがルーターAの代替ルーターとなることから、両ルーターのIPアドレスは同じである。しかしながら、MACアドレスは機器毎にユニークなものとして定義されていることから、両ルーターのMACアドレスは異なる。
【0052】
そのため、このままでは、次のような問題が生じる。
ネットワークシステム21において、通常時は、各ノードのARPテーブルには別のサブネットとの通信用に、ルーターAのIPアドレスとMACアドレスのエントリーが含まれている。例えば、ノードA1のARPテーブルには、サブネットBとの通信用に、ルーターAのIPアドレスとMACアドレスのエントリーが含まれている。このとき、ルーターBは、IPアドレスが重複してしまうため、非アクティブにされている。
【0053】
ここで、ルーターAに障害が発生してルーターBが代替ルーターとして機能したとすると、このままでは、各ノードが別のサブネットと通信を行う際のパケットの出力先は、自身のARPテーブルに従ってルーターAのMACアドレスになってしまうため、通信を行うことができない。
【0054】
そこで、ルーターBは、代替ルーターとして機能する際に、まず、GARPパケットをサブネットA内及びサブネットB内にブロードキャストする。すると、GARPパケットを受信した各ノードは、自身のARPテーブルに含まれるルーターAのエントリーにおけるMACアドレスを、受信したGARPパケットに基づくルーターBのMACアドレスへ書き換える。これにより、各ノードが別のサブネットと通信を行う際のパケットの出力先は、自身のARPテーブルに従って、代替ルーターであるルーターBのMACアドレスとなるため、ルーターBを介して通信を行うことができる。
【0055】
なお、ここでは、ルーターBがGARPパケットをブロードキャストした場合の例を示したが、各ノードがGARPパケットをブロードキャストした場合にも、それを受信した各ノードやルーターでは、同様の処理が行われる。例えば、ネットワークシステム21において、ノードB2がGARPパケットをブロードキャストした場合、それを受信したノードB1やアクティブになっているルーターは、自身のARPテーブルに含まれるノードB2のエントリーにおけるMACアドレスを、受信したGARPパケットに基づくノードB2のMACアドレスへ書き換える。但し、この場合、ノードB2の機器に変更が無ければ、書き換え前のMACアドレスと書き換え後のMACアドレスは同じとなる。
【0056】
図3は、GARPパケットのデータ構造の一例を示す図である。なお、図3に示したGARPパケットは、図2に示したノードB2からブロードキャストされたGARPパケットの一例でもある。
【0057】
図3に示したように、GARPパケットは、Ethernet(登録商標)ヘッダ部と、ARP要求部を含む。Ethernet(登録商標)ヘッダ部は、宛先MACアドレス、送信元MACアドレスを含む。ARP要求部は、送信元MACアドレス、送信元IPアドレス、宛先MACアドレス、宛先IPアドレスを含む。ここで、Ethernet(登録商標)ヘッダ部の宛先MACアドレスは、ブロードキャストアドレスを示す「FF-FF-FF-FF-FF-FF」となる。また、ARP要求部の宛先MACアドレスは、不明な宛先アドレスを示す「00-00-00-00-00-00」となる。また、Ethernet(登録商標)ヘッダ部の送信元MACアドレスと、ARP要求部の送信元MACアドレスは、GARPパケットを送信する機器のMACアドレス(この例では図2に示したノードB2のMACアドレス「00-22-64-b9-31-c4」)となる。また、ARP要求部の送信元IPアドレスと宛先IPアドレスは、GARPパケットを送信する機器のIPアドレス(この例では図2に示したノードB2のIPアドレス「192.168.2.2」)となる。すなわち、宛先IPアドレスは、送信元IPアドレスと同一となる。
【0058】
本実施形態に係るネットワークコントローラ2を備えたプリンタ1は、このようなGARPパケットを用いて、次のような動作を行う。
図4は、本実施形態に係るネットワークコントローラ2を備えたプリンタ1が行う動作の一例を示すフローチャートである。
【0059】
なお、本例では、プリンタ1が、図8、図11等に示したネットワークシステム121におけるノードB2であるとする。また、ネットワークシステム121は、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応しているものとする。また、そのネットワークシステム121に含まれる全てのノード及びルーターは、標準的な装置と同様に、自身が保持するARPテーブルの中に2分間(リフレッシュインターバル)使用されていないエントリーがある場合には、それを削除するように処理を行うものとする。
【0060】
図4に示したように、プリンタ1の電源がONされ、プリンタ1の各部に電力が供給されてプリンタ1が起動状態になると、まず、パケット生成・解析部8がGARPパケットを生成し、それがバッファ10に記憶される(S1)。なお、ここで記憶されるGARPパケットは、例えば図3に示したGARPパケットとなる。
【0061】
次に、例えば管理者等による設定に応じて、或いは、初期設定に応じて、タイマー9が1分間毎に周期的にトリガー信号を出力するように設定される(S2)。ここで、1分間という時間は、上述のとおり、ネットワークシステム121に含まれる全てのノード及びルーターでは2分間使用されないエントリーがARPテーブルから削除されるように処理が行われることを考慮して設定された時間であって、その2分間よりも短い時間の一例である。
【0062】
次に、電源制御部3が例えばプリンタ1の図示しない制御部から省電力要求の信号を受信したか否かを判定し(S3)、その判定結果がNoの場合には、再び、このS3の判定が繰り返される。一方、S3の判定結果がYesの場合には、電源制御部3がプリンタ1を起動状態から省電力状態へ遷移(移行)させる電源制御を行う(S4)。これにより、プリンタ1は、ネットワークコントローラ2を含む必要最小限のユニットにのみ電力が供給され、その他のユニットには電力が供給されない省電力状態となる。また、S4では、S2で行われた設定に応じて、1分間毎に周期的にトリガー信号を出力するというタイマー9の動作が開始する。
【0063】
次に、パケット生成・解析部8に予め設定されている特定のデータパターンに一致するデータパターンを有するパケットをパケット送受信部7が受信したか否かの判定が行われる(S5)。具体的には、パケット送受信部7がパケットを受信すると、そのパケットをパケット生成・解析部8が解析し、受信したパケットのデータパターンと予め設定されている特定のデータパターンとが一致するか否かを判定する。なお、この判定は、例えば、図7を用いて説明したようにして行われる。
【0064】
S5の判定において、その判定結果がYesの場合、パケット生成・解析部8は、電源制御部8へウェイクアップ要求の信号を出力し、それを受信した電源制御部8は、プリンタ1を省電力状態から起動状態へ遷移(移行)させる電源制御を行う(S6)。これにより、プリンタ1では、省電力状態時に電力が供給されない状態にされたユニットが、電力が供給される状態となり、起動状態となる。S6の後は、S3へ処理が戻る。
【0065】
一方、S5の判定結果がNoの場合には、タイマー9から1分間毎に周期的に出力されるトリガー信号の有無に応じて1分間が経過したか否かの判定が行われる(S7)。具体的には、トリガー信号が有りの場合には1分間が経過したと判定され、トリガー信号が無しの場合には1分間が経過していないと判定される。S7の判定結果がNoの場合には、処理がS5へ戻る。一方、S7の判定結果がYesの場合には、バッファ10に記憶されているGARPパケットをパケット送受信部7がブロードキャストする(S8)。そして、S8の後は、処理がS5へ戻る。
【0066】
このような動作により、プリンタ1が省電力状態にあるときは、1分間毎に、プリンタ1からGARPパケットがブロードキャストされるようになる。従って、プリンタ1からGARPパケットを受け取ることが可能なノードB1、B3、B4、ルーター122の各々では、プリンタ1が省電力状態になってから最初にGARPパケットを受け取った時に自身が保持するARPテーブルの中にプリンタ1のエントリーが含まれていた場合には、プリンタ1が省電力状態にある間、プリンタ1からのGARPパケットを受け取る毎に、そのARPテーブルに含まれるプリンタ1のエントリーが更新され続け、削除されることはない。このようにして、プリンタ1が省電力状態にある間、例えばルーター122が保持するサブネットB側のARPテーブル132にプリンタ1のエントリーが含まれ続けることになれば、サブネットAに属するノード(例えばノードA1)から送信されたプリンタ1宛のパケットは、ルーター122によってARPテーブル132に従ってプリンタ1へ中継されるようになる。従って、このような場合には、例えば、図14を用いて説明したようにルーター122のARPテーブル132にプリンタ1のエントリーが無いために通信に失敗するという問題は生じず、図12及び図13を用いて説明したようにlprやftpのリクエストに対してのみウェイクアップするという設定が可能になる。勿論、このような場合には、ARPリクエストに対してウェイクアップするという設定が不要になるので、プリンタ1は余計なウェイクアップをしなくても済む。
【0067】
以上、本実施形態に係るネットワークコントローラ2を備えたプリンタ1によれば、定期的にGARPパケットを発信してARPテーブルがリフレッシュクリアされるのを阻止しているので、同一サブネットに属するノードやルーターのARPテーブルからプリンタ1のエントリーが削除されることを防止することができると共にプリンタ1宛の通信時にARPリクエストを不要とすることで、省電力状態からのウェイクアップの条件となるパケットのプロトコルを細かく、印刷指示情報のみに限定して、設定することが可能となり、ホストコンピュータからプリンタに印刷指示が送られてきたときのみスリープ解除制御を行うことが可能になる。よって、Wake Up Frameによる起動方法を採用したWOLに対応したネットワークシステムにおいて、効率的な省電力運用を行うことができる。
【0068】
なお、本実施形態においては、ネットワークコントローラ2を備えた情報処理装置の一例としてプリンタ2を採用したが、プリンタ2以外の情報処理装置を採用することも可能である。
【0069】
また、図4の説明において、ネットワークシステム121に含まれる全てのノードが、ネットワークコントローラ2を備え、プリンタ1と同様に、特定のデータパターンを有するパケットを受信したときに、省電力状態から起動するように構成することも可能である。
【0070】
また、図4の説明において、タイマー9に、1分間毎に周期的にトリガー信号を出力するように設定が行われたが、1分間を除く2分間よりも短い時間毎に周期的にトリガー信号を出力するように設定することも勿論可能である。
【0071】
また、図4の説明において、ネットワークシステム121に含まれる全てのノード及びルーターは、自身が保持するARPテーブルの中に2分間使用されていないエントリーがある場合にそれを削除するように処理を行うものであったが、例えば、2分間以外の所定時間使用されていないエントリーがある場合にそれを削除するように処理を行うように構成することも可能である。但し、この場合には、その所定時間よりも短い時間毎に周期的にトリガー信号を出力するように、タイマー9の設定が行われる。
さらに、上記実施形態において、所定期間の通信がないためにARPテーブルにエントリーされている情報が消えることがないよう、ダミー通信としてGARPパケットを送信する手法を説明したが、GARPパケットは、ARPテーブルのエントリー情報がクリアされないようにする以外に、特にそのほかの回線環境に大きな変化をもたらさないという意味で、本発明の最適な手法として選択されたものであるが、ARPテーブルのエントリーを維持させることができるもので、特にほかの回線環境に大きな影響をもたらさない通信情報であればその他の情報をネットワーク上に送出する方法であってもよい。
【0072】
本発明はいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下、本件特許出願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0073】
付記1
情報処理装置に備えられるネットワークコントローラであって、
単位データを送受信する単位データ送受信部と、
前記単位データ送受信部により受信された単位データのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、前記情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力する単位データ解析部と、
を備え、
前記単位データ送受信部は、前記情報処理装置が省電力状態にあるときに、ネットワーク上に介在するアドレス解決プロトコルテーブルのエントリー情報がリフレッシュクリアされることを阻止する情報を所定の時期に送信する、
ことを特徴とするネットワークコントローラ。
【0074】
付記2
周期的にトリガー信号を出力するタイマー部を更に備え、
前記単位データ送受信部は、前記情報処理装置が省電力状態にあるときに、前記タイマー部により出力されるトリガー信号に従ってGARPパケットを所定の時期にブロードキャスト送信することを特徴とする付記1記載のネットワークコントローラ。
【0075】
付記3
前記GARPパケットを記憶する記憶部を更に備えることを特徴とする付記1又は2記載のネットワークコントローラ。
【0076】
付記4
前記情報処理装置は印刷装置であることを特徴とする付記1乃至3の何れか一項に記載のネットワークコントローラ。
【0077】
付記5
前記特定のデータは、上位装置から送られてくる印刷を指示する情報であることを特徴とする付記1乃至4の何れか一項に記載のネットワークコントローラ。
【0078】
付記6
情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ制御方法であって、
前記情報処理装置に備えられたネットワークコントローラは、
前記情報処理装置が省電力状態にあるときにネットワーク上に介在するアドレス解決プロトコルテーブルのエントリー情報がリフレッシュクリアされることを阻止する情報を所定の時期に送信する処理と、
単位データを受信したときに、当該単位データのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、前記情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力する処理と、
を行うことを特徴とするウェイクアップ制御方法。
【符号の説明】
【0079】
1・・・プリンタ
2・・・ネットワークコントローラ
3・・・電源制御部
4・・・データ処理部
5・・・画像生成部
6・・・用紙搬送制御部
7・・・パケット送受信部
8・・・パケット生成・解析部
9・・・GARP自動送信用フリーランニングタイマー
10・・GARP送信用バッファ
21・・ネットワークシステム
101・情報処理装置
102・ネットワークコントローラ
103・電源制御部
104・処理部
105・パケット送受信部
106・パケット生成・解析部
111・TCP/IPパケット
112・特定のデータパターン
121・ネットワークシステム
122・ルーター
131・サブネットA側のARPテーブル
132・サブネットB側のARPテーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置に備えられるネットワークコントローラであって、
単位データを送受信する単位データ送受信部と、
前記単位データ送受信部により受信された単位データのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、前記情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力する単位データ解析部と、
を備え、
前記単位データ送受信部は、前記情報処理装置が省電力状態にあるときに、ネットワーク上に介在するアドレス解決プロトコルテーブルのエントリー情報がリフレッシュクリアされることを阻止する情報を所定の時期に送信する、
ことを特徴とするネットワークコントローラ。
【請求項2】
周期的にトリガー信号を出力するタイマー部を更に備え、
前記単位データ送受信部は、前記情報処理装置が省電力状態にあるときに、前記タイマー部により出力されるトリガー信号に従って前記リフレッシュクリアを阻止する情報を周期的にブロードキャスト送信することを特徴とする請求項1記載のネットワークコントローラ。
【請求項3】
前記リフレッシュクリアを阻止する情報としてGARPパケットを記憶する記憶部を更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載のネットワークコントローラ。
【請求項4】
前記情報処理装置は印刷装置であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のネットワークコントローラ。
【請求項5】
前記特定のデータは、上位装置から送られてくる印刷を指示する情報であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のネットワークコントローラ。
【請求項6】
情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ制御方法であって、
前記情報処理装置に備えられたネットワークコントローラは、
前記情報処理装置が省電力状態にあるときにネットワーク上に介在するアドレス解決プロトコルテーブルのエントリー情報がリフレッシュクリアされることを阻止する情報を所定の時期にネットワーク上に送信する処理と、
単位データを受信したときに、当該単位データのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、前記情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力する処理と、
を行うことを特徴とするウェイクアップ制御方法。
【請求項1】
情報処理装置に備えられるネットワークコントローラであって、
単位データを送受信する単位データ送受信部と、
前記単位データ送受信部により受信された単位データのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、前記情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力する単位データ解析部と、
を備え、
前記単位データ送受信部は、前記情報処理装置が省電力状態にあるときに、ネットワーク上に介在するアドレス解決プロトコルテーブルのエントリー情報がリフレッシュクリアされることを阻止する情報を所定の時期に送信する、
ことを特徴とするネットワークコントローラ。
【請求項2】
周期的にトリガー信号を出力するタイマー部を更に備え、
前記単位データ送受信部は、前記情報処理装置が省電力状態にあるときに、前記タイマー部により出力されるトリガー信号に従って前記リフレッシュクリアを阻止する情報を周期的にブロードキャスト送信することを特徴とする請求項1記載のネットワークコントローラ。
【請求項3】
前記リフレッシュクリアを阻止する情報としてGARPパケットを記憶する記憶部を更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載のネットワークコントローラ。
【請求項4】
前記情報処理装置は印刷装置であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のネットワークコントローラ。
【請求項5】
前記特定のデータは、上位装置から送られてくる印刷を指示する情報であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のネットワークコントローラ。
【請求項6】
情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ制御方法であって、
前記情報処理装置に備えられたネットワークコントローラは、
前記情報処理装置が省電力状態にあるときにネットワーク上に介在するアドレス解決プロトコルテーブルのエントリー情報がリフレッシュクリアされることを阻止する情報を所定の時期にネットワーク上に送信する処理と、
単位データを受信したときに、当該単位データのデータパターンが、予め設定されている特定のデータパターンと一致する場合に、前記情報処理装置を省電力状態から起動させるためのウェイクアップ要求信号を出力する処理と、
を行うことを特徴とするウェイクアップ制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−77892(P2013−77892A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215235(P2011−215235)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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