説明

ネットワークデバイス管理システム及びネットワークデバイス管理プログラム

【課題】 ネットワーク環境において、SNMPから情報を取得する時に負荷を小さくするとともに、クライアント装置側で情報を取得した場合に、その後にその情報を使用しやすくする。
【解決手段】 画像形成装置20は、クライアント装置10からの要求に応じて、オプション設定情報を整数値で表したオブジェクト識別子を生成して上記クライアント装置10へ返すオプション設定情報応答処理を行うSNMPエージェント21を搭載しており、クライアント装置10は、オプション設定情報と整数値との対応を示すデバイスオプションテーブル11Aと、整数値の値を持ったオブジェクト識別子を指定して画像形成装置20にオプション設定情報を要求して、上記画像形成装置20から要求したオブジェクト識別子で保持している整数値を取得し、取得した整数値をデバイスオプションテーブル11Aと照らし合わせて、上記画像形成装置20の装着オプションを判断するSNMPマネージャ11を搭載している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク上のプリンタやルータなどに代表されるネットワークデバイスを管理するためのネットワークデバイス管理システム及びネットワークデバイス管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスや会社に設置されているLAN(Local Area Network)には、プリンタやルータ等といった多くのネットワークデバイスが接続されている。これらのネットワークデバイスを効率よく管理または監視するために、従来から、簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP:Simple Network Management Protocol)が使用されている。SNMPでは、ネットワーク上の個々のデバイスに管理情報ベース(MIB:Mamagement Information Base)を利用して、情報の取得やパラメータの設定などが行われる。
【0003】
例えば、LAN上のパーソナルコンピュータ等であるデバイス管理装置が、LAN上のデバイスとの間で、SNMPプロトコルを用いた通信を行うことによって、各デバイスのMIBから必要な情報を取得してネットワーク管理に利用し、また、デバイス管理装置によって各デバイスのMIBに対して必要な情報の書き込みを行い、これによりデバイスの動作を制御する。なお、デバイス管理装置が取得する情報には、デバイスの状態を示す情報や、デバイスの機種名や構成を示す情報が含まれている。
【0004】
ここで、MIBは、木(ツリー)構造を有し、その各節にはラベル付けされたオブジェクトが対応付けられる。MIB上の各情報は、木構造の頂点からの選択肢番号列であるオブジェクト識別子(OID:OBJECT IDENTIFIER)で特定される。例えば、systemは、1.3.6.1.2.1.1で特定され、同様にSysObjectIDは、1.3.6.1.2.1.1.2で特定される。1つのオブジェクトIDは必ず1つのオブジェクトに対応している。すなわち、オブジェクトIDの特定によって情報(パラメータ)の操作(参照や設定)を行うことが可能である。このMIBの構造は、管理情報構造(SMI:Structure of Management Information)と呼ばれ、RFC1155 Structure and Identification of Management Information for TCP/IP-based Internetsで規定されている。
【0005】
MIBにおいて、上層の空間は共通空間であり、一方、下層の一部分の空間は開放されている。各デバイスのメーカーは、その開放空間を利用してデバイスに対する特有のパラメータ設定を可能にしている。それ故、デバイスのメーカーや機種が異なると、全体としてのMIBの種類が異なり、このため各デバイスに対するパラメータ設定の方法(特にオブジェクトIDの内容)が相違する。つまり、同じオブジェクトであってもMIBの種類が異なれば、それを指定するオブジェクトIDは異なる。
【0006】
現在使用されているPrinter MIB v2では、例えば、オブジェクトIDとして、例えば、[prtInputDescription(1.3.6.1.2.1.43.8.2.1.18)]、すなわち、iso(1).org(3).dod(6).internet(1),mgmt(2).mib-2(1).printmib(43).prtInput(8).prtInputTable(2).prtInputEntry(1).prtInputDescription(18)を指定すると、給紙段の名称が返ってくる。
【0007】
また、従来より、WWWブラウザプログラムを使用して、SNMP/MIBによるデバイスの管理を行うアプリケーションとして知られているHPのWeb JetAdminでは、WWWブラウザプログラム上でのユーザインタフェースを実現するために、独自のキーワードとHTML形式の記述で構成されるテンプレートファイルを使用している。
【0008】
テンプレートファイルは規則的に構成されていないので、デバイスから取得すべき情報を認識するためには必要なテンプレートファイルを全て解析する必要があり、ファイルの解析は字句解析を行っているので処理時間がかかる。
【0009】
そこで、ネットワークデバイス情報の取得、設定を識別するコマンド識別子と、使用するテンプレートを識別するテンプレート識別子とを生成し、テンプレート識別子により指定されたファイルのヘッダ記述部から、前記コマンド識別子に対応したネットワークデバイスの情報を取得し、取得した情報に従いファイル本体記述部の変数を設定し、出力すべき形式に変換して、デバイスから取得すべき情報と、出力及び設定すべき情報を区別して解析することで、解析に要する時間を短縮するようにしたネットワークデバイス制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】特開2000−181831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、先に提案されているネットワークデバイス制御装置のように、テンプレートファイルをヘッダ記述部と本体記述部に分けて構築することにより、デバイスから取得すべき情報と、出力及び設定すべき情報を区別して解析することで、解析に要する時間を短縮することができるのであるが、MIB上で文字列で定義されているデバイスオプションの種類などの情報は字句解析する必要があり、負荷が大きいという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、ネットワーク環境において、SNMPから情報を取得する時に負荷を小さくすることにある。また、デバイス管理装置側で情報を取得した場合に、その後にその情報を使用しやすくすることにある。
【0013】
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るネットワークデバイス管理システムは、ネットワークに接続されたネットワークデバイスと、上記ネットワークデバイスとネットワークを介して接続され、上記ネットワークデバイスを簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP:Simple Network Management Protocol)を用いて管理するクライアント装置とを有し、上記ネットワークデバイスは、クライアント装置からの要求に応じて、オプション設定情報を整数値で表したオブジェクト識別子を生成して上記クライアント装置へ返すオプション設定情報応答処理を行うSNMPエージェントを搭載しており、上記クライアント装置は、オプション設定情報と整数値との対応を示すデバイスオプションテーブルと、上記整数値の値を持ったオブジェクト識別子を指定してネットワークデバイスにオプション設定情報を要求して、上記ネットワークデバイスから要求したオブジェクト識別子で保持している整数値を取得し、取得した整数値を上記デバイスオプションテーブルと照らし合わせて、上記ネットワークデバイスの装着オプションを判断するSNMPマネージャを搭載していることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るネットワークデバイス管理システムにおいて、上記デバイスオプションテーブルは、例えば、標準の管理情報ベース(MIB:Mamagement Information Base)で定義されている各種オプション名に対応する整数値を定義したものである。
【0016】
また、本発明は、ネットワークに接続されたネットワークデバイスをクライアント装置から簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP:Simple Network Management Protocol)を用いて管理するためのネットワークデバイス管理システムにおけるネットワークデバイス管理プログラムであって、上記ネットワークデバイスに備えられるコンピュータを、クライアント装置からの要求に応じて、オプション設定情報を整数値で表したオブジェクト識別子を生成して上記クライアント装置へ返すオプション設定情報応答処理を行うSNMPエージェントとして機能させ、上記クライアント装置に備えられるコンピュータを、整数値の値を持ったオブジェクト識別子を指定してネットワークデバイスにオプション設定情報を要求して、上記ネットワークデバイスから要求したオブジェクト識別子で保持している整数値を取得し、取得した整数値をオプション設定情報と整数値との対応を示すデバイスオプションテーブルと照らし合わせて、上記ネットワークデバイスの装着オプションを判断するSNMPマネージャとして機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
SNMPの標準で定義されているMIBでは、プリンタのデバイスオプションの種類は、文字列で定義されているが、本発明では、これを整数値にすることでネットワークへの負荷が軽減できる。また、デバイスオプションの値を整数値で受け取ることで、クライアント装置のソフトウェアが、受け取った値を扱いやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0019】
本発明は、例えば図1に示すように、クライアント装置10と複数の画像形成装置20A,20B,20C・・・がLAN(Local Area Network)などのネットワーク30を介して相互に通信可能に接続されてなる印刷管理システム100に適用される。
【0020】
この印刷管理システム100は、簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP:Simple Network Management Protocol)が使用されており、図2に示すように、クライアント装置10に搭載されたSNMPマネージャ11と、ネットワークデバイスである各画像形成装置20A,20B,20C・・・に搭載されたSNMPエージェント21A,21B,21C・・・を備える。
【0021】
クライアント装置10は、アプリケーションプログラム10A、オペレーティングシステム10B、デバイスドライバ10Cなどで構成される所謂パーソナルコンピュータからなり、図3に示すように、装置全体の制御および各種演算処理を行うコンピュータ(CPU)からなる制御部12、制御プログラムやデータを格納するためのリードオンリメモリ(ROM:Read Only Memory)13、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するためのランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)14、各種のプログラムやデータを保存するための外部記憶装置としてのハードディスク15、各種情報の表示のための液晶ディスプレイなどの表示部16、各種指示の入力のためのキーボードやマウスなどからなる入力部17、上記ネットワーク30に接続するためのLANカードなどのネットワークインターフェースからなる通信部18等がバス19を介して相互に接続されており、上記制御部12にSNMPマネージャ11の機能が搭載されている。
【0022】
また、画像形成装置20(20A,20B,20C・・・)は、クライアント装置10から供給される印刷データを印刷する機能を備えたプリンタ装置であって、図4に示すように、装置全体の制御および各種演算処理を行うコンピュータ(CPU)からなる制御部22、制御プログラムやデータを格納するためのリードオンリメモリ(ROM)23、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するためのランダムアクセスメモリ(RAM)24、各種情報の表示および各種指示の入力に使用される操作パネル部25、電子写真式プロセス等の周知の作像プロセスを用いて、各種データを用紙などの記録媒体上に印刷する印刷部26、および上記ネットワーク30に接続するためのLANカードなどのネットワークインターフェースからなる通信部27などがバス28を介して相互に接続されており、上記制御部22にSNMPエージェント21(21A,21B,21C・・・)の機能が搭載されている。
【0023】
この印刷管理システム100において、クライアント装置10は、その機種特有のデバイスオプションテーブル11Aを保持する。また、クライアント装置10側のSNMPマネージャ11は、画像形成装置20側のSNMPエージェント21にオブジェクト識別子(OID:OBJECT IDENTIFIER)を指定して情報を取得に行く。そして、クライアント装置10は、ソフトウェア(各種ユーティリティ、プリンタドライバなど)により、画像形成装置20側のSNMPエージェント21から取得した値と、保持しているデバイスオプションテーブル11Aを照らし合わせて、画像形成装置20に装着しているデバイスの設定を判断する。
【0024】
ここで、クライアント装置10がソフトウェア(各ユーティリティ、プリンタドライバなど) で保持するデバイスオプションテーブル11Aは、例えば図5に示すように、標準の管理情報ベース(MIB:Management Information Base)で定義されている各種オプション名に対応する整数値を定義したもので、ROM13に格納されている。
【0025】
画像形成装置20は、SNMPエージェント21側で保持している拡張することができるオブジェクト識別子(OID:OBJECT IDENTIFIER)に当該画像形成装置20に装着されているデバイスオプションを表すための整数値を持つ。この整数値がクライアント装置10側で保持しているデバイスオプションテーブル11Aの内容と一致するようにしてある。また、画像形成装置20側のSNMPエージェント21は、クライアント装置10からの要求に応じて、指定されたオブジェクト識別子(OID:OBJECT IDENTIFIER)の値(整数値)をクライアント装置10側へ返す。
【0026】
このような構成の印刷管理システム100では、図6のフローチャートに示す手順に従って、クライアント装置10がネットワーク30を介して接続されている画像形成装置20の装着オプションを判断する。
【0027】
すなわち、この印刷管理システム100において、画像形成装置20は、デバイス設定のOIDに装着オプションに合わせた整数値を保持する(ステップS1)。
【0028】
また、クライアント装置10は、ソフトウェア(各ユーティリティ、プリンタドライバなど) により、デバイスオプションテーブル11AをROM13からRAM14上に読み出して保持する(ステップS2)。
【0029】
次に、クライアント装置10側のSNMPマネージャ11は、画像形成装置20側のSNMPエージェント21にオプション設定情報を要求するオプション設定情報要求処理を行う。この時に整数値の値を持ったOIDを指定する(ステップS3)。
【0030】
画像形成装置20側のSNMPエージェント21は、クライアント装置10側のSNMPマネージャ11からの要求に応じて、要求されたOIDで保持している整数値を当該クライアント装置10側のSNMPマネージャ11へ返すオプション設定情報応答処理を行う(ステップS4)。
【0031】
そして、クライアント装置10側では、保持しているデバイスオプションテーブル11Aと、画像形成装置20側のSNMPエージェント21から取得した整数値を照らし合わせて、当該画像形成装置20の装着オプションを判断する装着オプション判断処理を行う(ステップS5)。
【0032】
このように、SNMPの標準で定義されているMIBでは、プリンタのデバイスオプションの種類は、文字列で定義されているが、この印刷管理システム100では、文字列で定義されたデバイスオプションの種類に対応する整数値を画像形成装置20からクライアント装置10に送るので、文字列を送るよりもネットワークへの負荷を軽減することできる。また、デバイスオプションの値を整数値で受け取ることで、クライアント装置10側のソフトウェアが、受け取った値を扱いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を適用したクライアント装置と複数の画像処理装置からなる印刷管理システムを示す図である。
【図2】上記印刷管理システムの構成を示すブロック図である。
【図3】上記クライアント装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図4】上記画像処理装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図5】上記クライアント装置が備えるデバイスオプションテーブルの一例を示す図である。
【図6】上記クライアント装置が画像処理装置の装着オプションを判断する処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
10 クライアント装置、
10A アプリケーションプログラム、
10B オペレーティングシステム、
10C デバイスドライバ、
11 SNMPマネージャ、
11A デバイスオプションテーブル、
12 制御部、
13 ROM、
14 RAM、
15 ハードディスク、
16 表示部、
17 入力部、
18 通信部、
19 バス、
20(20A,20B,20C・・・) 画像形成装置、
21(21A,21B,21C・・・) SNMPエージェント、
22 制御部、
23 ROM、
24 RAM、
25 操作パネル部、
26 印刷部、
27 通信インターフェース、
28 バス、
30 ネットワーク、
100 印刷管理システム、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続されたネットワークデバイスと、
上記ネットワークデバイスとネットワークを介して接続され、上記ネットワークデバイスを簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP:Simple Network Managment Protocol)を用いて管理するクライアント装置とを有し、
上記ネットワークデバイスは、クライアント装置からの要求に応じて、オプション設定情報を整数値で表したオブジェクト識別子を生成して上記クライアント装置へ返すオプション設定情報応答処理を行うSNMPエージェントを搭載しており、
上記クライアント装置は、オプション設定情報と整数値との対応を示すデバイスオプションテーブルと、上記整数値の値を持ったオブジェクト識別子を指定してネットワークデバイスにオプション設定情報を要求して、上記ネットワークデバイスから要求したオブジェクト識別子で保持している整数値を取得し、取得した整数値を上記デバイスオプションテーブルと照らし合わせて、上記ネットワークデバイスの装着オプションを判断するSNMPマネージャを搭載している
ことを特徴とするネットワークデバイス管理システム。
【請求項2】
上記デバイスオプションテーブルは、標準の管理情報ベース(MIB:Mamagement Information Base)で定義されている各種オプション名に対応する整数値を定義したものであることを特徴とする請求項1記載のネットワークデバイス管理システム。
【請求項3】
ネットワークに接続されたネットワークデバイスをクライアント装置から簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP:Simple Network Management Protocol)を用いて管理するためのネットワークデバイス管理システムにおけるネットワークデバイス管理プログラムであって、
上記ネットワークデバイスに備えられるコンピュータを、クライアント装置からの要求に応じて、オプション設定情報を整数値で表したオブジェクト識別子を生成して上記クライアント装置へ返すオプション設定情報応答処理を行うSNMPエージェントとして機能させ、
上記クライアント装置に備えられるコンピュータを、整数値の値を持ったオブジェクト識別子を指定してネットワークデバイスにオプション設定情報を要求して、上記ネットワークデバイスから要求したオブジェクト識別子で保持している整数値を取得し、取得した整数値をオプション設定情報と整数値との対応を示すデバイスオプションテーブルと照らし合わせて、上記ネットワークデバイスの装着オプションを判断するSNMPマネージャとして機能させる
ことを特徴とするネットワークデバイス管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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