説明

ネットワークブートデバイス及びネットワークブート方法

【課題】利用者の認証が不要なネットワークコンピュータの起動を行うこと。
【解決手段】コンピュータ101からMACアドレスを取得したとき、ネットワークに接続するコンピュータ101及び自己機に異なるプライベートIPアドレスを割り当てるDHCP工程と、このDHCP工程により割り当てたプライベートIPアドレスをコンピュータ101に通知するIPアドレス割当部203と、ネットワーク105から認証を必要としないデータ通信用のプロトコルであるTFTP規格による通信をコンピュータ101に対して遮断することにより、コンピュータ利用者の認証を外部のコンピュータシステムの得ることなく起動し、ユーザの使用環境に合致したOSとプリケーションソフトを設定し、任意のユーザデータを取り扱うことができるネットワークブートシステム用のネットワークブートデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のコンピュータに設定されたアプリケーションソフトやユーザデータ等の使用環境を他のコンピュータにおいても使用するための起動(ブート)を行うことができるネットワークブートデバイス及びネットワークブート方法に係り、特に、ネットワークを介して他のコンピュータシステムの認証を得ることなく前記ブートを行うことができるネットワークブートデバイス及びネットワークブート方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータの動作に必要な、例えば、オペレーティングシステム(以下、OSという。)やアプリケーションソフト等のデータをコンピュータの外部に設置されたストレージ装置に保存し、ネットワークを介して取得することを可能とするネットワークブートシステムが下記の特許文献1に記載され、この特許文献1に記載の技術では、コンピュータの使用に必要なデータをコンピュータに内蔵されたハードディスクに保存することなくストレージ装置に集約して保存するために、OSやアプリケーションソフトの新しいバージョンヘの更新や、コンピュータウイルスの駆除といったストレージ装置のデータ更新処理を各コンピュータ使用者による自発的な実施に依存することなく、ネットワークブートシステムの管理者等が一括して行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/095875号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載された技術は、ネットワークを介して特定のコンピュータの使用環境を他のコンピュータにおいても容易に適用することができるものの、ネットワーク経由で他のコンピュータシステムに接続してブートすることを前提としているため、コンピュータ利用者の認証が必要となり、ネットワークを利用しない作業においてもネットワークに接続可能な環境が必要であるという課題があった。また、従来技術は、ネットワーク経由で各種サーバと通信することを前提としているため、ブート時においてはネットワークに接続する環境が整っていること及びネットワーク及び各種サーバが正常に稼動しているというシステム環境が整っていなければならないという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、前述の従来技術による課題を解決することであり、利用者の認証を得ることなくネットワークブートシステム用のコンピュータを起動することができるネットワークブートデバイス及びネットワークブート方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために請求項1記載の本発明は、オペレーティングシステムを読み込むBIOS及びネットワークを介してコンピュータを起動させるためのPXE機能と通信機器に対するプライベートIPアドレスを割り当てるDHCP機能を有するIPアドレス割当部と、前記IPアドレス割当部が割り当てたプライベートIPアドレスを格納するIPアドレス格納部と、ネットワークからの通信要求とコンピュータからの通信要求とを切り分けて処理するプロトコル切分け部と、特定のコンピュータの使用環境であるオペレーティングシステム及びアプリケーションソフトを格納するデータ格納部と、前記IPアドレス割当部とIPアドレス格納部とプロトコル切分け部とデータ格納部を制御する全体制御部とを備え、固有の識別子であるMACアドレスが設定されたコンピュータと、前記MACアドレスに対して固有のグローバルIPアドレスを付与する機能を有するネットワークとの間に接続され、固有の識別子であるMACアドレスが設定されたネットワークブートデバイスであって、前記IPアドレス割当部が、コンピュータからMACアドレスを取得したとき、前記ネットワークに接続するコンピュータ及び自己機に異なるプライベートIPアドレスを割り当てるDHCP機能及び前記DHCP機能により割り当てた前記プライベートIPアドレスを前記コンピュータに通知する通知機能を実行し、前記プロトコル切分け部が、ネットワークから認証を必要としないデータ通信用のプロトコルであるTFTP規格による通信をコンピュータに対して遮断する遮断機能を実行することを第1の特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記第1の特徴のネットワークブートデバイスにおいて、前記IPアドレス割当部が、前記コンピュータのMACアドレスをネットワークに送信することによって、前記ネットワークからグローバルIPアドレスを取得することを第2の特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記第1又は第2の特徴のネットワークブートデバイスにおいて、前記コンピュータのMACアドレス及びプライベートIPアドレス並びに自己機のMACアドレス及びプライベートIPアドレスとの対応を格納するIPアドレステーブル部を備え、前記IPアドレス割当部が、前記コンピュータ及び自己機に設定されたMACアドレス並びに前記コンピュータ及び自己機に割り当てたプライベートIPアドレスを前記IPアドレステーブル部に格納することを第4の特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記第4の特徴のネットワークブートデバイスにおいて、前記プロトコル切分け部が、前記IPアドレステーブル部に格納したコンピュータ及び自己機に設定されたプライベートIPアドレスを用い、前記コンピュータに前記データ格納部に格納したオペレーティングシステム及びアプリケーションソフトを送信する請求項3記載のネットワークブートデバイス。
【0010】
請求項5記載の発明は、オペレーティングシステムを読み込むBIOS及びネットワークを介してコンピュータを起動させるためのPXE機能と通信機器に対するプライベートIPアドレスを割り当てるDHCP機能を有するIPアドレス割当部と、前記IPアドレス割当部が割り当てたプライベートIPアドレスを格納するIPアドレス格納部と、ネットワークからの通信要求とコンピュータからの通信要求とを切り分けて処理するプロトコル切分け部と、特定のコンピュータの使用環境であるオペレーティングシステム及びアプリケーションソフトを格納するデータ格納部と、前記IPアドレス割当部とIPアドレス格納部とプロトコル切分け部とデータ格納部を制御する全体制御部とを備え、固有の識別子であるMACアドレスが設定されたコンピュータと、前記MACアドレスに対して固有のグローバルIPアドレスを付与する機能を有するネットワークとの間に接続され、固有の識別子であるMACアドレスが設定されたネットワークブートデバイスのネットワークブート方法であって、前記IPアドレス割当部に、コンピュータからMACアドレスを取得したとき、前記ネットワークに接続するコンピュータ及び自己機に異なるプライベートIPアドレスを割り当てるDHCP工程と、前記DHCP工程により割り当てた前記プライベートIPアドレスを前記コンピュータに通知する通知工程を実行させ、前記プロトコル切分け部に、前記ネットワークから認証を必要としないデータ通信用のプロトコルであるTFTP規格による通信をコンピュータに対して遮断する遮断工程を実行させることを第5の特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記第5の特徴のネットワークブート方法において、前記ネットワークブートデバイスのIPアドレス割当部に、前記コンピュータのMACアドレスをネットワークに送信することによって、前記ネットワークからグローバルIPアドレスを取得する工程を実行させることを第6の特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、前記コンピュータのMACアドレス及びプライベートIPアドレス並びに自己機のMACアドレス及びプライベートIPアドレスとの対応を格納するIPアドレステーブル部を備えたネットワークブートデバイスの請求項5又は6記載のネットワークブート方法であって、前記コンピュータのMACアドレス及びプライベートIPアドレス並びに自己機のMACアドレス及びプライベートIPアドレスとの対応を格納するIPアドレステーブル部を設け、前記IPアドレス割当部に、前記コンピュータ及び自己機に設定されたMACアドレス並びに前記コンピュータ及び自己機に割り当てたプライベートIPアドレスを前記IPアドレステーブル部に格納する工程を実行させることを第7の特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、前記第7の特徴のネットワークブート方法において、前記プロトコル切分け部が、前記IPアドレステーブル部に格納したコンピュータ及び自己機に設定されたプライベートIPアドレスを用い、前記コンピュータに前記データ格納部に格納したオペレーティングシステム及びアプリケーションソフトを送信する工程を実行させることを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるネットワークブート及びネットワークブート方法は、前記IPアドレス割当部に、コンピュータからMACアドレスを取得したとき、ネットワークに接続するコンピュータ及び自己機に異なるプライベートIPアドレスを割り当てるDHCP工程と、前記DHCP機能により割り当てた前記プライベートIPアドレスを前記コンピュータに通知する通知工程を実行させ、前記プロトコル切分け部に、前記ネットワークから認証を必要としないデータ通信用のプロトコルであるTFTP規格による通信をコンピュータに対して遮断する遮断工程を実行させることによって、利用者の認証を得ることなく、ユーザの使用環境に合致したOSとプリケーションソフトを設定し、任意のユーザデータを取り扱うネットワークブートシステム用のPCを起動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態によるネットワークブートデバイスの接続状態を示す図
【図2】本発明の実施形態によるネットワークブートデバイスの内部構成を示す図
【図3】本発明の実施形態によるIPアドレス割当部の処理フローを示す図
【図4】本発明の実施形態によるプロトコル切分け部のPCから通信要求処理フローを示す図
【図5】本発明の実施形態によるプロトコル切分け部のネットワークからの通信要求処理フローを示す図
【図6】本発明の実施形態によるIPアドレス割当部の処理フローを示す図
【図7】本発明の実施形態によるプロトコル切分け部のPCからの通信要求処理フローを示す図
【図8】本発明の実施形態によるプロトコル切分け部のネットワークからの通信要求処理フローを示す図
【図9】本発明の実施形態によるIPアドレステーブル部の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態によるネットワークブートデバイス及びネットワークブート方法を図面を参照して説明するが、まず、本明細書で述べる用語の意味を次のように列記する。
(1)OS(Operating System)とは、コンピュータを動作させるための基本ソフトウェアをいう。
(2)BIOS(Basic Input/Output System)とは、コンピュータを初期化した後に起動し、OSを読み込むための初期プログラム(IPL:Initial Program Load)やコンピュータに接続される周辺機器を制御するための各種パラメータを設定させるためのプログラムとから成るプログラム群をいう。
(2)IPアドレス(Internet Protocol Address)とは、インターネットやイントラネットなどのIPネットワークに接続されたコンピュータや通信機器に割り振られた識別番号をいう。
(3)PXE(Preboot Execution Environment)とは、コンピュータ本体のファイル等を用意せずにOSやインストーラなどをネットワーク経由で起動するための規格であり、PXEブートとはこのネットワーク起動を利用したコンピュータの起動を行う機能をいう。
【0017】
(4)TFTP(Trivial File Transfer Protocol)とは、データを転送するための通信プロトコル(規約)であり、ユーザ名やパスワードなどの認証を必要としないという特徴がある。
(5)NAT(Network Address Translation)とは、インターネットに接続された環境下で、1つのグローバルなIPアドレスを複数のプライベートアドレスに変換して他のコンピュータで共有するための技術である。
(6)NATルータとは、プライベートアドレスとグローバルアドレスとの相互の変換を行うNAT機能を有し、ネットワーク上を流れるデータを他のネットワークに中継する中継機器をいう。
【0018】
(7)DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)とは、ネットワークに一時的に接続するコンピュータにIPアドレスなど必要な情報を自動的に割り当てるプロトコル(規格)をいう。
(8)MACアドレス(Media Access Control address)とは、LANの規格に適合したインタフェース機器に固有に付与された識別番号をいう。
(9)パケット(Packet)とは、コンピュータ通信における制御情報を付加されたデータの纏まりをいう。
(10)NAS(Network Attached Storage)とは、ネットワークに直接接続して使用するファイルサーバ専用の機器又は機能をいう。
(11)本明細書における自己機とは、ネットワークブートデバイスをいう。
【0019】
[構成]
さて、本実施形態によるネットワークブート方法を適用したネットワークブートデバイス103は、図1に示す如く、BIOSによって起動され且つPXEブート機能を有するコンピュータ(以下、PCという。)101と接続するPC側インタフェース102と、図示しないサーバに接続するためのネットワーク105に接続するためのネットワーク側インタフェース104とを外部接続インタフェースとして備え、PC101とネットワーク105との間でデータ授受などを行うものであって、その内部構成は図2に示す如く、PC101及びネットワークブートデバイス103(自己機)に対する適切なIPアドレスを割り当てるIPアドレス割当部203と、PC101及びネットワーク105を介する処理要求を切り替えるためのプロトコル切分け部207と、特定のコンピュータの環境であるOS及びアプリケーションソフト他を格納するデータ格納部206と、図示しない全体制御部とから構成される。前記インタフェース102及び104は、例えばUSBインタフェースやLANコネクタインタフェースやIEEE規格等のPC及びネットワークを周辺装置と接続し、PC101の電源投入及びブートイメージによってPC101をブート(起動)可能な一般のインタフェースである。また、前記ネットワーク105は、グローバルIPアドレスを付与する機能を有する。
【0020】
前記IPアドレス割当部203は、ネットワーク105から適切なグローバルIPアドレスを取得するDHCPクライアント部205と、PC101及びネットワークブートデバイス103のプライベートIPアドレスを格納するIPアドレステーブル部215と、前記DHCPクライアント部205が、取得したグローバルIPアドレス及びIPアドレステーブル部215を参照してPC101及びネットワークブートデバイス103に適切なプライベートIPアドレスを割り当てるDHCP及びPXEサーバ部204とから構成される。前記IPアドレステーブル部215に格納されるプライベートIPアドレス及びMACアドレスアドレスは、図9(a)に示す如く、ネットワークブートデバイス103とPC101間のみで使用するIPアドレスのPC側のPC用IPアドレスと、同様にネットワークブートデバイス103とPC101間のみで使用するIPアドレスのネットワークブートデバイス103側のPC側インタフェース用のIPアドレスの項目とからなり、例えば図9(b)に示す如く、PC用IPアドレスが「119.168.0.1」とMACアドレスが「10.0.0.1」、ネットワークブートデバイス用IPアドレスが「119.168.0.2」とMACアドレスが「10.0.0.2」のように格納されている。
【0021】
前記データ格納部206は、通信プロトコルを制御するTFIPアクセス機能部210を含むOS部209と、PC101用の周辺機器(ディスプレイ、マウス、キーボード、ネットワークなど)のドライバーを格納したデバイスドライバー部211と、ユーザが使用するアプリケーションソフトを格納するアプリケーションソフト部212と、ユーザが使用するユーザデータを格納したユーザデータ部213とから成る。
【0022】
前記プロトコル切分け部207は、PC101からの通信要求を処理するPC通信要求処理部208と、ネットワーク105からの通信要求を処理するネットワーク通信要求処理部216とから構成される。前記PC通信要求処理部208は、通信要求がTFTP手順である場合には、データ格納部206のTFTPアクセス機能部210によりOS部209に格納されたOSと、デバイスドライバー部211に格納されたPC101用機器(ディスプレイ、マウス、キーボード、ネットワークなど)のドライバーと、アプリケーションソフト部212に格納したユーザが使用するアプリケーションソフトと、ユーザデータ部213に格納したユーザデータとの入出力アクセスを行う機能と、TFTP手順でない場合には、IPアドレス変換を行うNATルータとして動作し、ネットワーク105へデータを送信する機能を有する。
【0023】
前記ネットワーク通信要求処理部216は、ネットワーク105からの通信手順がTFTP手順である場合には通信を遮断し、TFTP手順でない場合にはIPアドレス変換を行うNATルータとして動作し、PC101へデータを送信する機能を有する。
【0024】
[動作]
さて、前述のように構成されたネットワークブートデバイス103は、PC101のインタフェースに接続されて電源が投入されたとき、全体制御部の制御下において、図3に示す如く、PC101のBIOSのイニシャルプログラムロード(IPDL)機能によりPXEブート要求が起動してDHCP要求パケット321をネットワークブートデバイス103に送信するステップ301と、このDHCP要求パケット321を受信したネットワークブートデバイス103のIPアドレス割当部203がPC101のMACアドレスを取得するステップ302と、このMACアドレスを用いてコンピュータ101のIPアドレスを要求するためにネットワーク105に対してDHCP要求パケット322を送信するステップ303と、このDHCP要求パケット322を受けたネットワーク105がDHCPの応答を行うステップ304と、この応答によりグローバルIPアドレス323を受けたネットワークブートデバイス103のIPアドレス割当部203が前記グローバルIPアドレス323を取得するステップ305と、この取得したグローバルIPアドレス323を基にプライベートIPアドレスを生成し、このプライベートIPアドレスをDHCP応答パケット324としてPC101に発行するステップ324を実行することによって、PC101に対してプライベートIPアドレスを設定することができる。
【0025】
次いでネットワークブートデバイス103は、PC101のBIOSによりOSの転送要求404によるTFTPファイル転送要求405が送られたとき、PC通信要求処理部208がデータ格納部206のOS部209に格納したOSのTFTPによるファイル転送407を行うステップ406と、このOSを受信したPC101がOSを起動するステップ408と、このOS起動によってBIOSが周辺機器であるハードウェアのセットアップを行うステップ409と、このハードウェアのセットアップによってコンピュータ101が周辺機器のドライバーの転送要求をTFTPファイル転送要求411として送信するステップ410と、このドライバーの転送要求を受けたネットワークブートデバイス103のPC通信要求処理部208がデバイスドライバー部211に格納したデイスドライバーをファイル転送(TFTP)413としてPC101に送信するステップ412と、これを受けたPC101がUSB他のインタフェースによるネットワークドライブを割り当てるステップ414とを実行することによって、ネットワークブートデバイス103はPC101のハードディスクのようにアクセスすることができる。
【0026】
次いで本システムは、コンピュータ101のOSがアプリケーションソフトの実行要求を発し、コンピュータ101がネットワークブートデバイス103にファイル転送(TFTP)416を用いて要求するステップ415を実行したとき、これを受けたネットワークブートデバイス103のPC通信要求処理部208が全体制御部の制御下において、アプリケーションソフト部212に格納したアプリケーションソフトをPC101に送信するステップ417とを実行することによって、PC101に任意のアプリケーションソフトを設定することができる。
【0027】
更に本システムは、コンピュータ101のアプリケーションソフトがユーザデータを要求し、コンピュータ101がネットワークブートデバイス103にユーザデータにファイル転送(TFTP)419を用いて要求するステップ418を実行したとき、この要求を受けたネットワークブートデバイス103のPC通信要求処理部208が、全体制御部の制御下において、ユーザデータ部213に格納したユーザデータをPC101に送信するステップ420とを実行することによって、コンピュータ101にて使用するユーザデータをPC101に転送することができる。
【0028】
このように本実施形態によるネットワークブートデバイス103は、前記ステップ404から420の一連の動作によって、ネットワークブートデバイス103がネットワークを介してコンピュータを起動するためのPXEブート機能とファイルを取り扱うためのNAS機能を備えたため、利用者の認証を得ることなく、ユーザの使用環境に合致したOSとプリケーションソフトを設定し、任意のユーザデータを取り扱うネットワークブートシステム用のPC101を起動することができる。
【0029】
更に、本システムは、コンピュータ101から通信要求421が発生したとき、ネットワークブートデバイス103のネットワーク通信要求処理部216が、全体制御部の制御下において、IPアドレスの変換423を行うことによって、PC101とネットワーク105間におけるネットワーク通信422及び424を行うことができる。
【0030】
このネットワーク通信要求処理部216は、ネットワークブートデバイス103がPC101であるように認識するためのプロトコル切り分け機能を有し、この機能を実現するプロトコル切分け部207は、図5に示す如く、ネットワーク105からTFTP送信508によりネットワークブートデバイス103に対してTFTPによるネットワーク通信521が送信された場合、このネットワーク通信521を符号509にて示す如く遮断する機能と、ネットワーク105からTFTP以外の送信511よりネットワークブートデバイス103に対してネットワーク通信(TFTP以外)523が送信された場合、このネットワーク通信523受信してIPアドレス変換510を行ってコンピュータ101にネットワーク通信522を行う機能とを備え、これら機能によってネットワークブートデバイス103は、ネットワーク105からはPC101であるように認識される。
【0031】
次に前記IPアドレス割当部203によるIPアドレスの割り当て処理の詳細を図6を参照して説明する。このIPアドレス割り当て処理は、図6に示す如く、IPアドレス割当部203が、PC101から送信されたIPアドレス要求602によりPC101のMACアドレスを取得するステップ603と、この取得したMACアドレスを使用し、IPアドレス取得605をネットワーク105に対して行うステップ604と、この取得したIPアドレスを用いて前記IPアドレステーブル部215を参照し、異なる2種類のIPアドレスのセットを持つネットワークブートデバイス103とPC101用のプライベートIPアドレスを取得するステップ609と、コンピュータ101に対して前記ステップ609により取得したプライベートIPアドレスを設定するステップ612と、このプライベートIPアドレスが割り当てられたコンピュータ101からのOS転送要求614によるOS転送要求を受け付けるステップ615と、この要求によりOS部209に格納したOSをコンピュータ101に転送するステップ618とを実行することによって、コンピュータ101へのプライベートIPアドレスの割り当て及びOS転送とが行われ、これら一連の処理によって、PC101におけるOSの起動や、デバイスドライバ−、アプリケーションソフト、ユーザデータの利用及びネットワーク通信を行うことができる。
【0032】
なお、前述のステップ609によるIPアドレスの割り当ては、ネットワーク105とネットワークブートデバイス103とPC101との間のネットワークアドレスの競合を防ぐため、ネットワーク105より取得したIPアドレスとネットワーク部アドレス(IPアドレスの先頭1バイト)が異なるIPアドレスが選択される。
【0033】
前記プロトコル切分け部207のPC通信要求処理部208は、コンピュータ101から受信したパケット要求がTFTPかファイル転送かによって処理を切り替える機能を有し、この機能は、図7に示す如く、受信した通信要求パケットがTFTPであるか否かを判定するステップ701と、このステップ701においてTFTP以外と判定したとき、ネットワーク105への通信としてPC101から送出されたパケットをグローバルIPアドレス宛に変換にネットワーク105へ送出し、PC101からネットワーク105への通信を可能とするステップ702と、前記ステップ701において受信した通信要求パケットがTFTPであると判定したとき、データ格納部206へのアクセス要求として認識し、要求されたファイルの入出力を行い、OS部209とデバイスドライバー部211とアプリケーションソフト部212とユーザデータ部213部への入出力を行うことを可能とするステップ703とを実行することによって行われる。
【0034】
前記プロトコル切分け部207のネットワーク通信要求処理部216は、ネットワーク105からの転送要求がTFTPかファイル転送かによって処理を切り替える機能を有し、この機能は、図8に示す如く、受信した通信要求パケットがTFTPであるか否かを判定するステップ801と、このステップ801においてTFTP以外と判定したとき、PC10への通信としてネットワーク105から送出されたパケットをプライベートIPアドレス宛に変換してコンピュータ101へ送出し、ネットワーク105からPC101への通信を可能とするステップ802と、前記ステップ801において受信した通信要求パケットがTFTPであると判定したとき、受信したパケットを破棄するステップ803とを実行することにより、図5に示したTFTPパケットの受信を遮断し、PC101におけるTFTP通信の誤動作を防ぐことができる。
【0035】
以上述べた如く本実施形態によるネットワークブートデバイス及びネットワークブート方法は、コンピュータを起動するためのPXEブート機能とファイルを取り扱うためのNAS機能を備えたため、利用者の認証を得ることなく、ユーザの使用環境に合致したOSとプリケーションソフトを設定し、任意のユーザデータを取り扱うネットワークブートシステム用のPC101を起動することができると共に、ネットワーク通信要求処理部216がネットワーク105からのTFTPの受信による通信要求パケットを遮断することによってコンピュータ101の誤動作を防止することができる。
【符号の説明】
【0036】
101 コンピュータ、102 PC側インタフェース、103 ネットワークブートデバイス、104 ネットワーク側インタフェース、203 IPアドレス割当部、204 DHCP及びRXEサーバ部、205 DHCPクライアント部、206 データ格納部、207 プロトコル切分け部、208 PC通信要求処理部、209 ネットワーク通信要求処理部、210 TFTPアクセス機能部、211 デバイスドライバー部、212 アプリケーションソフト部、213 ユーザデータ部、215 IPアドレステーブル部、216 ネットワーク通信要求処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレーティングシステムを読み込むBIOS及びネットワークを介してコンピュータを起動させるためのPXE機能と通信機器に対するプライベートIPアドレスを割り当てるDHCP機能を有するIPアドレス割当部と、前記IPアドレス割当部が割り当てたプライベートIPアドレスを格納するIPアドレス格納部と、ネットワークからの通信要求とコンピュータからの通信要求とを切り分けて処理するプロトコル切分け部と、特定のコンピュータの使用環境であるオペレーティングシステム及びアプリケーションソフトを格納するデータ格納部と、前記IPアドレス割当部とIPアドレス格納部とプロトコル切分け部とデータ格納部を制御する全体制御部とを備え、固有の識別子であるMACアドレスが設定されたコンピュータと、前記MACアドレスに対して固有のグローバルIPアドレスを付与する機能を有するネットワークとの間に接続され、固有の識別子であるMACアドレスが設定されたネットワークブートデバイスであって、前記IPアドレス割当部が、コンピュータからMACアドレスを取得したとき、前記ネットワークに接続するコンピュータ及び自己機に異なるプライベートIPアドレスを割り当てるDHCP機能及び前記DHCP機能により割り当てた前記プライベートIPアドレスを前記コンピュータに通知する通知機能を実行し、前記プロトコル切分け部が、ネットワークから認証を必要としないデータ通信用のプロトコルであるTFTP規格による通信をコンピュータに対して遮断する遮断機能を実行するネットワークブートデバイス。
【請求項2】
前記IPアドレス割当部が、前記コンピュータのMACアドレスをネットワークに送信することによって、前記ネットワークからグローバルIPアドレスを取得する請求項1記載のネットワークブートデバイス。
【請求項3】
前記コンピュータのMACアドレス及びプライベートIPアドレス並びに自己機のMACアドレス及びプライベートIPアドレスとの対応を格納するIPアドレステーブル部を備え、前記IPアドレス割当部が、前記コンピュータ及び自己機に設定されたMACアドレス並びに前記コンピュータ及び自己機に割り当てたプライベートIPアドレスを前記IPアドレステーブル部に格納する請求項1又は2記載のネットワークブートデバイス。
【請求項4】
前記プロトコル切分け部が、前記IPアドレステーブル部に格納したコンピュータ及び自己機に設定されたプライベートIPアドレスを用い、前記コンピュータに前記データ格納部に格納したオペレーティングシステム及びアプリケーションソフトを送信する請求項3記載のネットワークブートデバイス。
【請求項5】
オペレーティングシステムを読み込むBIOS及びネットワークを介してコンピュータを起動させるためのPXE機能と通信機器に対するプライベートIPアドレスを割り当てるDHCP機能を有するIPアドレス割当部と、前記IPアドレス割当部が割り当てたプライベートIPアドレスを格納するIPアドレス格納部と、ネットワークからの通信要求とコンピュータからの通信要求とを切り分けて処理するプロトコル切分け部と、特定のコンピュータの使用環境であるオペレーティングシステム及びアプリケーションソフトを格納するデータ格納部と、前記IPアドレス割当部とIPアドレス格納部とプロトコル切分け部とデータ格納部を制御する全体制御部とを備え、固有の識別子であるMACアドレスが設定されたコンピュータと、前記MACアドレスに対して固有のグローバルIPアドレスを付与する機能を有するネットワークとの間に接続され、固有の識別子であるMACアドレスが設定されたネットワークブートデバイスのネットワークブート方法であって、前記IPアドレス割当部に、コンピュータからMACアドレスを取得したとき、前記ネットワークに接続するコンピュータ及び自己機に異なるプライベートIPアドレスを割り当てるDHCP工程と、前記DHCP工程により割り当てた前記プライベートIPアドレスを前記コンピュータに通知する通知工程を実行させ、前記プロトコル切分け部に、前記ネットワークから認証を必要としないデータ通信用のプロトコルであるTFTP規格による通信をコンピュータに対して遮断する遮断工程を実行させるネットワークブート方法。
【請求項6】
前記ネットワークブートデバイスのIPアドレス割当部に、前記コンピュータのMACアドレスをネットワークに送信することによって、前記ネットワークからグローバルIPアドレスを取得する工程を実行させる請求項5記載のネットワークブート方法。
【請求項7】
前記コンピュータのMACアドレス及びプライベートIPアドレス並びに自己機のMACアドレス及びプライベートIPアドレスとの対応を格納するIPアドレステーブル部を備えたネットワークブートデバイスのネットワークブート方法であって、前記コンピュータのMACアドレス及びプライベートIPアドレス並びに自己機のMACアドレス及びプライベートIPアドレスとの対応を格納するIPアドレステーブル部を設け、前記IPアドレス割当部に、前記コンピュータ及び自己機に設定されたMACアドレス並びに前記コンピュータ及び自己機に割り当てたプライベートIPアドレスを前記IPアドレステーブル部に格納する工程を実行させる請求項5又は6記載のネットワークブート方法。
【請求項8】
前記プロトコル切分け部が、前記IPアドレステーブル部に格納したコンピュータ及び自己機に設定されたプライベートIPアドレスを用い、前記コンピュータに前記データ格納部に格納したオペレーティングシステム及びアプリケーションソフトを送信する工程を実行させる請求項3記載のネットワークブート方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−191948(P2011−191948A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56643(P2010−56643)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000152985)株式会社日立情報システムズ (409)
【Fターム(参考)】