説明

ネットワーク接続装置およびネットワーク接続方法

【課題】経路切替性能を向上させたネットワーク接続装置を提供する。
【解決手段】上述した課題は、第1のポート110-1で受信したパケットに含まれる宛先情報に基づいて、ルーティングテーブル380を参照して、パケットを第2のポート110-2から送信し、第2のポート110-2の接続先に障害がある際の転送先である第3のポート10−3を事前に計算し、第2のポート110−2と第3のポート110−3との組み合わせを含むシナリオ情報を保持し、ポート110のいずれかに障害を検出したとき、シナリオ情報に基づいて、ルーティングテーブル380を更新することを特徴とするネットワーク接続装置により解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク接続装置およびネットワーク接続方法に係り、経路切換性能を向上させたネットワーク接続装置およびネットワーク接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の大規模ネットワークにおける、ルータの運用では、回線障害の検知と障害回復の短時間化が不可欠となっている。
【0003】
特許文献1には、高速なルーティングテーブル検索を可能とするルータ装置が記載されている。
また、非特許文献2には、ルータをControl Plane(コントロールプレーン)と、Forwarding Plane(フォワーディングプレーン)とに分割し、Control Planeでルーティングプロトコル計算を実施し、Forwarding Planeでデータ中継するルータが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−261078号公報
【非特許文献1】G. Jones、"Operational Security Requirements for Large Internet Service Provider (ISP) IP Network Infrastructure"、IETF、インターネット<URL:http://www.ietf.org/rfc/rfc3871.txt?number=3871>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回線障害の検知に関しては、BFD(Bidirectional Forwarding Detection)等が提案されている。しかし、障害回復の短時間化に必要な経路切替性能を飛躍的に向上させる技術は見当たらない。特許文献1および非特許文献1にも、上述の記載はない。
【0006】
本発明によれば、障害発生から障害回復までの期間の短いネットワーク接続装置およびネットワーク接続方法を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題は、第1のポートで受信したパケットに含まれる宛先情報に基づいて、ルーティングテーブルを参照して、パケットを第2のポートから送信し、第2のポートの接続先に障害がある際の転送先である第3のポートを事前に計算し、第2のポートと第3のポートとの組み合わせを含むシナリオ情報を保持し、ポートのいずれかに障害を検出したとき、シナリオ情報に基づいて、ルーティングテーブルを更新することを特徴とするネットワーク接続装置により解決できる。
【0008】
また、ルーティングプロトコル計算処理を実施するコントロールプレーンと、第1のポートと第2のポートと第3のポートとを接続し、ルーティングテーブルを参照して、複数のポート間でパケットの中継を実施するフォワーディングプレーンとからなり、コントロールプレーンは、複数のポートの出力先に障害が発生する際の転送先を計算し、フォワーディングプレーンは、コントロールプレーンが計算した障害発生ポートと転送ポートとの関係からなるシナリオ情報を保持することを特徴とするネットワーク接続装置により解決できる。
【0009】
さらに、第1のポートで受信したパケットに含まれる宛先情報に基づいて、ルーティングテーブルを参照するステップと、第2のポートの接続先に障害がある際の転送先である第3のポートを事前に計算するステップと、第2のポートと第3のポートとの組み合わせを含むシナリオ情報を保持するステップと、ポートのいずれかに障害を検出したとき、シナリオ情報に基づいて、ルーティングテーブルを更新するステップとを含むネットワーク接続方法により解決できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のネットワーク接続装置によれば、障害発生時の対応シナリオを事前に準備しておくので、経路切換性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態について、実施例を用いて図面を参照しながら説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
実施例を図1ないし図7を用いて説明する。ここで、図1はネットワーク接続装置のブロック図である。図2は障害発生から通信回復までの時間を説明する図である。図3は大規模ネットワーク接続装置システムを説明するブロック図である。図4は接続装置ネットワークを説明するブロック図である。図5はシナリオ情報データベースを説明する図である。図6はシナリオ情報更新を説明するフローチャートである。
【0012】
図1において、ネットワーク接続装置101Aは、計算処理部210を含むControl Plane200と、パケット中継部390を含むForwarding Plane300とから構成される。Control Plane200は、計算処理部210とルーティングテーブル管理情報DB220とからなる。計算処理部200は、さらにルーティングプロトコル計算処理部211と、Forwarding Plane指示部212とから構成される。また、Forwarding Plane300は、Forwarding Plane指示部が送信した指示を受信するシナリオ情報更新部310と、シナリオ情報DB320と、複数のポート310を接続するパケット中継部390と、パケット中継部390からのパケットを監視する転送制御部340と、転送制御部340が検出した障害に基づいてルーティングテーブルを更新する障害内容反映部330と、障害内容反映部330の指示に基づいてRouting Table380を更新するRouting Table更新部350と、Routing Table380とから構成される。
【0013】
Control Plane200は、ルーティング情報を一元管理する。ルーティンプロトコル計算処理部211は、経路変更が発生したとき、ルーティングプロトコル計算を実施する。ルーティンプロトコル計算処理部211は、ルーティングプロトコル計算の結果に基づいて、Routing Table管理情報DB220を更新する。ルーティンプロトコル計算処理部211は、また、ルーティングプロトコル計算の結果に基づいて、Forwarding Plane指示部212とRouting Table更新部350とを介して、Routing Table380を更新する。
【0014】
Forwarding Plane300のパケット中継部390は、ポート110−1からパケットを受信すると、受信したパケットのヘッダーに含まれる宛先情報をキーにRouting Table380を検索して、宛先情報に対応するNEXT HOP(ネクストホップ)に該当するポート110−2またはポート110−3から送信する。
【0015】
ルーティンプロトコル計算処理部211は、ポート110が接続されたパス(現用系パス)の障害を想定して、この障害を前提とした予備系パスを演算する。現用系パスと対応する予備系パスとの組み合わせを、シナリオと呼ぶ。また、複数のシナリオをシナリオ情報と呼ぶ。シナリオ情報は、Forwarding Plane指示部212とシナリオ情報更新部310とを介して、シナリオ情報DB320に登録される。なお、経路変更があった場合にも、シナリオ情報DB320は更新される。
【0016】
Forwarding Plane300の転送制御部340が、キャリア断、一定期間BFDパケットによるヘルスチェックが来ない等から、障害を検知すると、転送制御部340は、障害発生をControl Plane200のルーティンプロトコル計算処理部211に通知する。転送制御部340は、また、障害発生を障害内容反映部330に通知する。障害内容反映部330は、シナリオ情報DB320を参照して、障害の発生した現用系パスに対応する予備系パスを呼び出す。障害内容反映部330は、この予備系パスを用いて、Routing Table更新部350を介して、Routing Table380を更新する。Control Plane200のルーティンプロトコル計算処理部211は、障害発生通知を受信すると、ルーティングプロトコル計算を実施する。ルーティンプロトコル計算処理部211は、ルーティングプロトコル計算の結果に基づいて、Routing Table管理情報DB220を更新する。ルーティンプロトコル計算処理部211は、また、ルーティングプロトコル計算の結果に基づいて、Forwarding Plane指示部212とRouting Table更新部350とを介して、Routing Table380を更新する。なお、Routing Table380の更新は、シナリオに基づいて既に実施されているので、後半の処理は、削除しても良い。また、ヘルスチェックは、BFDパケット以外にHelloパケットでも良い。
【0017】
シナリオ方式の効果について、図2を参照して説明する。図2において、横軸は時間の経過であり、非シナリオ方式とシナリオ方式とを対比させている。非シナリオ方式では、回線障害が発生した後、障害検知、経路計算、切換の3ステップが必要である。一方、シナリオ方式では、回線障害の前に回線障害を前提とした、経路計算を実施済みなので、回線障害が発生した後、障害検知、切換の2ステップのみが必要である。すなわち、シナリオ方式では、非シナリオ方式に比べ、シナリオがあれば回線障害の発生から通信回復までの時間を短縮できる。
【0018】
図3を参照して、大規模ネットワーク接続装置を説明する。図1のネットワーク接続装置101Aでは、Control Plane200とForwarding Plane300とが1対1対応であった。一方、図3の大規模ネットワーク接続装置101Bでは、Control Plane200とForwarding Plane300とが1対4対応である。もちろん、Nを2以上の整数として1対N対応でも構わない。図3のControl Plane200とForwarding Plane300のハードウェア構成は、図1のそれらと同一である。
【0019】
図1との対比において異なるのは、大規模ネットワーク接続装置101BのControl Plane200に管理装置100が接続されている点である。しかし、逆にネットワーク接続装置101AのControl Plane200に管理装置100が接続されていても良い。ネットワーク接続装置101AのControl Plane200のRouting Table管理情報DB220と、Forwarding Plane300のRouting Table380とは、実質的に同じ情報を蓄えている。一方、大規模ネットワーク接続装置101BのControl Plane200のRouting Table管理情報DB220は、配下の全てのForwarding Plane300のRouting Table380の情報を全て含むのに対して、個々のForwarding Plane300-1〜300-4のRouting Table380には、自Forwarding Planeの情報のみを含んでいる。同様に、個々のForwarding Plane300-1〜300-4のシナリオ情報DB320には、自Forwarding Planeの情報のみを含んでいる。
【0020】
本実施例では、1面のControl Planeに複数面のForwarding Planeが接続されている。これは、一つの回線障害に対して、複数のForwarding Planeから一つのControl Planeに複数の障害通知が上がることを意味する。非シナリオ方式では、Control Planeでの経路計算負荷に、通信回復までの時間が依存する。これに対して、シナリオ方式では、シナリオを複数のForwarding Planeに配布しておくので、応答性能が低下しない効果がある。
【0021】
なお、上述のようにシナリオを複数のForwarding Planeに配布しておくことが、より好ましいが、Control Planeに一括して蓄えていても良い。これは経路計算が必要ではなく、単にテーブルを参照するだけだからである。
【0022】
図4を参照して、ネットワーク接続装置の動作を説明しよう。図4に示すネットワーク500において、左端のネットワーク接続装置101-0から、右端のネットワーク接続装置101-5に向けた通信が行われている。なお、円で示すネットワーク接続装置101には、「R」と数字で示す固有番号が付与されている。また、ネットワーク接続装置101と他のネットワーク接続装置101とを接続する直線で示すパスにも「P」と数字で示す固有番号が付与されている。以下、これらの固有番号を用いて説明する。また、R0のRouting Table380を、一点鎖線の矢印の先に拡大して示す。
【0023】
R0からR5への通信は、実線矢印で示すR31とR32とを経由する経路を現用系としている。このとき、R0とR31との間のP31に障害が発生したとしよう。R31からのヘルスチェックが一定期間到着しないことから、R0はR31またはP31の障害を検出する。R0は、この障害をP31の障害として、シナリオ情報を参照する。図5を用いて後述するシナリオ情報には、P31の障害の場合、NEXT HOPをR31からR11に変更することが記載されているので、Routing Table380を参照し、宛先情報欄3810にR5とあるレコードのNEXT HOP情報欄3820をR31からR11に書き換える。具体的には、R0は送信先ポートを、ポート101-3からポート101-1に変更する。この結果、R0からR5への通信は、破線矢印で示すR11とR12とを経由する予備系経路に変更される。
【0024】
図5を参照して、シナリオ情報データベースを説明する。図5において、シナリオ情報DB320は、イベント欄3210とアクション3220とから構成されている。アクション3220は、さらに操作欄3221と変更対象欄3222と変更データ欄3223とから構成されている。ここで、イベント欄3210には、想定される障害発生パスの固有番号を記載する。また、操作欄3221にはRouting Table380における操作を記載する。変更対象欄3222にはRouting Table380における変更前データを記載する。さらに、変更データ欄3223にはRouting Table380における変更後データを記載する。
【0025】
イベント欄3210に、「P31」と記載されたレコードは、図4の説明で用いたシナリオである。具体的には、P31に障害があることを通知された障害内容判定部330は、Routing Table更新部250に対して、Routing TableのNEXT HOP欄に、P31に対応する「R31」があるとき、全て「R11」に置き換える制御をする。
なお、シナリオ情報DBにない障害が発生した場合は、Control Planeでの、ルーティングプロトコル計算処理部によるRouting Table更新を待つ。
【0026】
図6を参照して、シナリオ情報の更新タイミングを説明しよう。図6はルーティングプロトコル計算処理部211で実行されるフローである。ルーティングプロトコル計算処理部211は、経路変更の有無と、と予め定めた期間に到達したか否かを常に監視している。経路変更があったと判断すると(S701)、ステップ703のシナリオ情報更新処理に遷移し、タイマーをリセットした(S704)後、ステップ701に戻る。ステップ701で経路変更が無かったと判断すると、ステップ702に遷移し、前回のシナリオ更新から一定期間経過しているか判定する(S702)。ステップ702で、Yesならステップ703に遷移する。ステップ702で、Noならステップ701に遷移する。
【0027】
本実施例に拠れば、ルーティングプロトコルをネットワーク接続装置内に分散して配置するので、経路切換性能を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ネットワーク接続装置のブロック図である。
【図2】障害発生から通信回復までの時間を説明する図である。
【図3】大規模ネットワーク接続装置システムを説明するブロック図である。
【図4】接続装置ネットワークを説明するブロック図である。
【図5】シナリオ情報データベースを説明する図である。
【図6】シナリオ情報更新を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
100…管理装置、101…ネットワーク接続装置、110…ポート、200…Control Plane、210…計算処理部、211…ルーティングプロトコル計算処理部、212…Forwarding Plane指示部、220…Routing Table管理情報DB、300…Forwarding Plane、310…シナリオ情報更新部、320…シナリオ情報DB、330…障害方法反映部、340…転送制御部、350…Routing Table更新部、380…Routing Table、390…パケット中継部、500…ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポートで受信したパケットに含まれる宛先情報に基づいて、ルーティングテーブルを参照して、前記パケットを第2のポートから送信するネットワーク接続装置において、
前記第2のポートの接続先との通信に障害が発生した際の代替転送先と前記代替転送先との通信に用いる第3のポートとを障害発生前に決定し、前記第2のポートと前記第3のポートと前記代替転送先との組合せを含むシナリオ情報を保持し、前記第2のポートの接続先との通信に障害を検出したとき、前記シナリオ情報に基づいて、前記ルーティングテーブルを更新することを特徴とするネットワーク接続装置。
【請求項2】
ルーティングプロトコル計算処理を実施するコントロールプレーンと、第1のポートと第2のポートと第3のポートとを接続し、ルーティングテーブルを参照して、前記複数のポート間でパケットの中継を実施するフォワーディングプレーンとからなるネットワーク接続装置において、
前記コントロールプレーンは、前記複数のポートと出力先との間の通信に障害が発生する際の転送先を計算し、
前記フォワーディングプレーンは、前記コントロールプレーンが計算した障害発生ポートと転送ポートとの関係からなるシナリオ情報を保持することを特徴とするネットワーク接続装置。
【請求項3】
請求項2に記載のネットワーク接続装置であって、
前記フォワーディングプレーンは、前記ポートの接続先との通信に障害が発生したことを検出したとき、前記シナリオ情報に基づいて、前記ルーティングテーブルの更新を行うことを特徴とするネットワーク接続装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のネットワーク接続装置であって、
前記フォワーデリングプレーンを複数有することを特徴とするネットワーク接続装置。
【請求項5】
請求項4に記載のネットワーク接続装置であって、
前記複数のフォワーデリングプレーンが保持する前記シナリオ情報は、それぞれ異なることを特徴とするネットワーク接続装置。
【請求項6】
第1のポートで受信したパケットに含まれる宛先情報に基づいて、ルーティングテーブルを参照するステップと、前記ルーティングテーブルの参照結果に基づいて、前記パケットを第2のポートから送信するステップを含むネットワーク接続方法において、
前記第2のポートの接続先に障害がある際の転送先である第3のポートを事前に計算するステップと、前記第2のポートと前記第3のポートとの組み合わせを含むシナリオ情報を保持するステップと、前記ポートのいずれかに障害を検出したとき、前記シナリオ情報に基づいて、前記ルーティングテーブルを更新するステップとを含むことを特徴とするネットワーク接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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