説明

ネットワーク監視システム、監視方法、及び監視プログラム

【課題】ユーザの操作に起因するサービス断か否かに応じてユーザにサービス断を通知するか通知しないかを適切に判断することが可能なネットワーク監視システムを提供する。
【解決手段】回線終端装置10と、回線終端装置10における通信障害を監視し、通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かを検出する回線分岐装置11と、回線分岐装置11における通信障害を監視する中継網装置14と、回線分岐装置11から通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かに関する情報を含む第1の監視結果を受信するとともに、中継網装置14から第2の監視結果を受信するサービス断監視装置20と、を備え、サービス断監視装置20は、前記第1の監視結果と、前記第1の監視結果及び前記第2の監視結果の受信時刻の差と、に基づいて通信障害が発生しているか否かを判定する判定部22と、当該判定に応じて判定結果を通知する送信部24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、SNMP(Simple Network Management Protocol)を利用したネットワークに適用される、ネットワーク監視システム、監視方法、及び監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ネットワーク監視システムは、ネットワークに接続された装置に障害が発生すると、ネットワークサービスが使用できないこと(以下、サービス断と称する)を、当該装置または当該周辺の装置から通知され、通知を受けたネットワーク監視システムが上位システムにサービス断やサービス回復を通知することで、上位システムによってサービス断等をネットワークの回線契約者(以下、ユーザと称する)に通知することが、ネットワーク監視システムに要求されている。
【0003】
しかし、サービス断が装置等の故障によるものではなく、例えば回線工事などにより発生したため短時間で回復する場合などは、ネットワーク監視システムがユーザにサービス断が発生したことを通知する必要がない場合が多い。また、ユーザの宅内に設置された装置、例えば回線終端装置の電源が、ユーザの操作により落とされた(以下、電源OFFと称する)場合は、サービス断はユーザの操作に起因するものであるため、サービス断の発生を当該ユーザに通知する必要はない。
【0004】
ユーザがネットワークにアクセスするための端末が、例えば、ユーザ宅内に設置された回線終端装置と、ユーザ宅外に設置された回線分岐装置と、の区間を経由して、ネットワークの中継網区間の装置に接続されている場合に、例えば、回線終端装置がユーザ操作によって電源OFFされたことが起因となり、当該回線終端装置に接続された回線分岐装置が、当該回線終端装置のサービス断を検出して、これをネットワーク監視システムに通知し、さらに、当該回線分岐装置に接続した中継網の装置も、当該回線分岐装置のサービス断を検出して、これをネットワーク監視システムに通知する、というように、サービス断がネットワークに接続された複数の装置に波及し、サービス断がネットワーク監視システムに複数の装置から通知される(以下、波及警報と称する)。また、波及警報の最初の通知とそれ以降の通知が、ネットワーク監視システムに通知されるまでの時間差は短時間であることが多い。
【0005】
さらに例えば回線工事の場合も、回線工事対象装置のサービス断の発生通知とサービス断の回復通知までは短時間であることが多い。このことから従来技術では、サービス断の発生通知とサービス断の回復通知までが短時間である場合や、波及警報による複数の通知の時間差が短時間である場合に、ユーザに対して不要な通知を行わないことを実現するため、ネットワーク監視システムがサービス断の発生通知を受けてから、一定時間内にサービス断またはサービス回復の通知を受けた場合には、ネットワーク監視システムは当該サービス断を監視対象から外す、という処理を行っていた。
【0006】
すなわち、ネットワーク監視システムが、ネットワーク監視システムの上位システムに対してサービス断を通知する、と判定するまでの時間(以下、保護時間と称する)を設けることで、例えばユーザ起因か否かが不明である波及警報が保護時間内にネットワーク監視システムに通知された場合や、回線工事などにより保護時間内にサービス断の回復通知があった場合には、当該サービス断を監視対象から外していた。
【特許文献1】特開2004−260673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ユーザ宅内に設置された回線終端装置の電源OFF操作が起因となり波及警報が発生した場合は、波及警報がそもそもユーザの操作に起因するサービス断によるものか否かについて、従来のネットワーク監視システムは、波及警報の通知の時間差のみで判定していたため、ユーザにサービス断を通知するか通知しないかを適切に判断することができず、ユーザ操作が起因でない通信障害が発生した場合に、ユーザにネットワークに発生したサービス断を通知できないことがあった。
【0008】
本発明は前記の諸点に鑑みてなされたものであり、ユーザの操作に起因するサービス断か否かに応じてユーザにサービス断を通知するか通知しないかを適切に判断することが可能なネットワーク監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、回線終端装置と、前記回線終端装置における通信障害を監視し、発生した通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かを検出する第1の監視装置と、前記第1の監視装置における通信障害を監視する第2の監視装置と、前記第1の監視装置から通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かに関する情報を含む第1の監視結果を受信するとともに、前記第2の監視装置から第2の監視結果を受信する第3の監視装置と、を備え、前記第3の監視装置は、前記第1の監視結果と、前記第1の監視結果及び前記第2の監視結果の受信時刻の差と、に基づいてネットワークに通信障害が発生しているか否かを判定する判定手段と、当該判定に応じて判定結果を通知する通知手段と、を備えることを特徴とするネットワーク監視システムである。
【0010】
また本発明は、前記判定手段は、前記受信時刻の差が所定の閾値より短い場合は、通知すべき通信障害が発生していないと判定することを特徴とするネットワーク監視システムである。
【0011】
また本発明は、前記判定手段は、前記第3の監視装置が前記第1の監視装置から通信障害がユーザ操作に起因するものであるとの情報を含む第1の監視結果を受信した場合は、通知すべき通信障害が発生していないと判定することを特徴とするネットワーク監視システムである。
【0012】
また本発明は、前記回線終端装置における前記ユーザ操作は、電源を入れる操作あるいは電源を落とす操作であることを特徴とするネットワーク監視システムである。
【0013】
また本発明は、回線終端装置と、前記回線終端装置における通信障害を監視し、発生した通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かを検出する第1の監視装置と、前記第1の監視装置における通信障害を監視する第2の監視装置と、前記第1の監視装置から通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かに関する情報を含む第1の監視結果を受信するとともに、前記第2の監視装置から第2の監視結果を受信する第3の監視装置と、を備えるネットワークの第3の監視装置における処理方法であって、判定手段が、前記第1の監視結果と、前記第1の監視結果及び前記第2の監視結果の受信時刻の差と、に基づいてネットワークに通信障害が発生しているか否かを判定するステップと、通知手段が、当該判定に応じて判定結果を通知するステップと、を含むことを特徴とする監視方法である。
【0014】
また本発明は、回線終端装置と、前記回線終端装置における通信障害を監視し、発生した通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かを検出する第1の監視装置と、前記第1の監視装置における通信障害を監視する第2の監視装置と、前記第1の監視装置から通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かに関する情報を含む第1の監視結果を受信するとともに、前記第2の監視装置から第2の監視結果を受信する第3の監視装置と、を備えるネットワークの第3の監視装置のコンピュータに、判定手段が、前記第1の監視結果と、前記第1の監視結果及び前記第2の監視結果の受信時刻の差と、に基づいてネットワークに通信障害が発生しているか否かを判定する手順と、通知手段が、当該判定に応じて判定結果を通知する手順と、を実行させるための監視プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サービス断がユーザの操作に起因するものか否かをネットワーク監視システムが判定することができるため、ネットワーク監視システムは、ユーザの操作に起因するサービス断の場合はユーザにサービス断を通知することがなく、ユーザの操作に起因しない装置の故障等に起因するサービス断の場合はユーザにサービス断を通知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態におけるネットワーク監視システムを示した図である。当該ネットワーク監視システムは、回線終端装置10と、回線分岐装置11と、アクセス区間サービス情報ゲートウェイ12と、中継網13と、中継網装置14と、中継網区間監視装置15と、サービス断監視装置20と、上位システム30と、を備える。また、回線終端装置10と、回線分岐装置11と、は回線100で接続されている。回線分岐装置11と、中継網装置14と、は回線200で接続されている。中継網装置14と、中継網13と、は回線300で接続されている。なお、アクセス区間サービス情報ゲートウェイ12は、中継網13と接続されていてもよい。
【0017】
回線終端装置10は、ユーザの情報端末等(不図示)をネットワークに接続するために、回線分岐装置11等で用いられる信号形式と、前記情報端末で用いられる信号形式と、を相互変換し、回線分岐装置11と、前記情報端末と、の通信を中継する。また回線終端装置10は、ユーザの操作により電源を入れること(以下、電源ONと称する)、電源OFF、が行えるものとし、電源OFFになるとサービス断となる。また、回線終端装置10は、ユーザの操作により電源ONまたは電源OFFされると、当該操作がされたことを回線分岐装置11に通知する。回線終端装置10は、例えば、ONU(Optical Network Unit)として実現される。
【0018】
本実施形態において、回線終端装置10と、回線分岐装置11と、の区間をアクセス区間と称する。サービス断監視装置20が、ユーザの宅内で使用している回線についてのサービス断、サービス回復等に関するデータを取得したい場合は、アクセス区間サービス情報ゲートウェイ12を用いてデータを取得する。なお、アクセス区間の具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0019】
回線分岐装置11は、中継網装置14と通信する手段を備える。また1本の回線を複数本の回線に分岐する手段を備え、分岐先のひとつが回線終端装置10であるとする。なお、回線終端装置10以外の回線終端装置は不図示である。回線分岐装置11は、回線終端装置10からの通知により、回線終端装置10の電源ON、または電源OFF、の状態を検出し、アクセス区間サービス断通知としてアクセス区間サービス情報ゲートウェイ12に当該検出結果を通知する。回線分岐装置11は、例えば、PDS−U(Passive Double Star − Unit)として実現される。
【0020】
図2は、アクセス区間がサービス断等の場合に、回線分岐装置11からアクセス区間サービス情報ゲートウェイ12に通知されるアクセス区間サービス断通知に含まれるデータを示す。アクセス区間サービス断通知は、「オブジェクトID」「オブジェクトパラメータ」「IPアドレス」「スロット番号」「回線ポート番号」「発生時刻」を含む。
【0021】
アクセス区間サービス断通知の各パラメータは、回線終端装置10から電源OFFなどのユーザ操作を通知された場合などに、回線分岐装置11が設定する。「オブジェクトID」は、サービス断等が発生した回線終端装置10と、回線終端装置10の状態を示す情報である。また同様に、「オブジェクトパラメータ」は「オブジェクトID」についての付加情報を設定する。例えば「オブジェクトID」が「回線終端装置10電源障害発生」である場合に、「オブジェクトパラメータ」は、例えば「ユーザ起因電源OFF」と設定される。なお、「オブジェクトID」「オブジェクトパラメータ」等がどのような意味を持つのか、を記憶したデータベースは、例えば、SNMP(Simple Network Management Protocol)を利用したネットワークにおいて、MIB(Management Infomation Base)として実現されてもよい。
【0022】
アクセス区間サービス断通知に含まれる「IPアドレス」は、アクセス区間サービス断通知を送信した回線分岐装置のIPアドレスを示す。回線分岐装置が複数ある場合に(回線分岐装置11以外の回線分岐装置は不図示)、例えば、回線終端装置10が電源障害となった場合は、回線終端装置10に直接接続された回線分岐装置11がアクセス区間サービス断通知をアクセス区間サービス情報ゲートウェイ12に送信するので、回線分岐装置11により「IPアドレス」に回線分岐装置11のIPアドレスが設定される。
【0023】
「スロット番号」は、回線分岐装置11が備える通信インターフェースのスロット(差込口)番号を示し、回線分岐装置11が通信の開通や不通等を判断することなどにより、サービス断が発生している回線を特定するために用いられる。また「回線ポート番号」は、当該スロットが備える通信インターフェースが有するポート番号を示し、同様に回線を特定するために用いられる。「発生時刻」は、サービス断やサービス回復などのイベントが発生した時刻を示す。
【0024】
アクセス区間サービス情報ゲートウェイ12は、回線分岐装置11からアクセス区間サービス断通知を受信し、警告部21に転送する。なお、回線分岐装置11が「発生時刻」を付加せずにアクセス区間サービス断通知をアクセス区間サービス情報ゲートウェイ12に通知した場合は、アクセス区間サービス情報ゲートウェイ12がアクセス区間サービス断通知を受信した時刻を「発生時刻」としてもよい。
【0025】
中継網装置14は、回線分岐装置11から受信したデータを中継網13に中継するとともに、中継網13から受信したデータを回線分岐装置11に中継する。また、中継網装置14は、回線分岐装置11との通信の開通や不通等を判断することで、回線分岐装置11のサービス断やサービス回復を検出し、中継網区間監視装置15に中継網サービス断通知を通知する。
【0026】
図3は、サービス断の装置を検出した中継網装置が中継網区間監視装置15に送信する中継網サービス断通知に含まれるデータを示す。中継網サービス断通知は、「通知ID」と、「回線ID」と、「パラメータ」と、「故障アクセス回線ID」と、「発生時刻」とを含む。「通知ID」は、中継網サービス断通知の識別子である。
【0027】
「回線ID」は、サービス断やサービス回復等が発生した回線の識別子であり、中継網装置14等が通信の開通や不通等を判定することで、サービス断等が発生した回線が検出される。同様に「パラメータ」は「回線ID」に接続された装置と、当該装置のサービス断やサービス回復等を示す。「故障アクセス回線ID」は、中継網装置14に接続された回線分岐装置11が有するアクセス区間の複数の回線(回線100以外のアクセス区間回線は不図示)のうち、通信障害の発生している回線終端装置(回線終端装置10以外の回線終端装置は不図示)が接続する回線の回線IDを示す。例えば、中継網装置14に接続された回線分岐装置11が有するアクセス区間の複数の回線のうち、通信障害の発生している回線終端装置10が接続する回線は「回線100」のため、「故障アクセス回線ID」は、「回線ID100」となる。「発生時刻」は、サービス断やサービス回復等のイベントが発生した時刻を示す。
【0028】
ユーザの操作等により回線終端装置10が電源OFFになると、これが波及して回線分岐装置11も、回線終端装置10からの通信データを中継網装置14に送信することや、中継網装置14からの通信データを回線終端装置10に送信することができなくなる。したがって、中継網装置14は回線分岐装置11がサービス断になったことを検出し、中継網サービス断通知を中継網区間監視装置15に送信する(波及警報)。ここで、中継網サービス断通知のパラメータは、中継網装置14により図3に示す値に設定されたものとし、中継網区間監視装置15は、中継網装置14からの中継網サービス断通知を、警告部21に通知する。
【0029】
サービス断監視装置20は、警告部21と、判定部22と、時間監視部23と、送信部24と、を備える。サービス断監視装置20は、当該ネットワークにおけるサービス断、サービス回復等を監視し、時間監視部23の時間監視結果と判定部22の判定に応じて、当該ネットワークにおけるサービス断やサービス回復等を、上位システム30に通知する。当該判定手順については後述する。
【0030】
警告部21は、アクセス区間サービス情報ゲートウェイ12からの通知と、中継網区間監視装置15からの通知と、を受信し判定部22に警告通知を通知する。
【0031】
図4は、サービス断が生じた装置の回線を特定するために警告部21が用いる収容回線表である。収容回線表は、「IPアドレス」と、「収容回線終端装置番号」と、ネットワークに接続するためのインターフェースカードであるラインカードの「ラインカード番号」と、「回線ID」を含む。収容回線表を用いれば、「IPアドレス」と、「収容回線終端装置番号」と、「ラインカード番号」と、から「回線ID」を特定することができる。
【0032】
収容回線表の「IPアドレス」は、ネットワークに接続された回線分岐装置等のIPアドレスである。「収容回線終端装置番号」は、「IPアドレス」が示すIPアドレスを有する回線分岐装置が収容している回線の回線終端装置を示す。「ラインカード番号」は、当該回線終端装置が備えるラインカードを示す。「回線ID」は、当該ラインカードが接続されている回線の識別子である。
【0033】
回線分岐装置11は、複数の回線終端装置(回線終端装置10以外の回線終端装置は不図示)からの回線を収容しており、「収容回線終端装置番号」は、そのひとつが「回線終端装置10」からの回線であることを示す。さらに、回線契約情報(不図示)などから「回線終端装置10」が備えるラインカードの「ラインカード番号」が特定され、当該回線が「回線ID100」であることが示されている。
【0034】
図5は、アクセス区間サービス断通知を受信した場合に、警告部21が作成して判定部22に送信する警告通知に含まれるデータを示す。アクセス区間サービス断通知を受信した場合の警告通知は、「警告ID」「回線ID」「オブジェクトID」「故障パラメータ」「発生時刻」を含む。「警告ID」は、警告通知の識別子である。
【0035】
「回線ID」は、アクセス区間サービス断通知の「IPアドレス」と、収容回線表の「収容回線終端装置番号」「ラインカード番号」から特定された、サービス断やサービス回復等が発生した回線の識別子である。「オブジェクトID」は、アクセス区間サービス断通知に含まれる「オブジェクトID」と同じ値である。「故障パラメータ」は、アクセス区間サービス断通知に含まれる「オブジェクトパラメータ」と同じ値である。「発生時刻」は、アクセス区間サービス断通知に含まれる「発生時刻」と同じ値である。
【0036】
図6は、中継網サービス断通知を受信した場合に、警告部21が作成して判定部22に送信する警告通知に含まれるデータを示す。中継網サービス断通知を受信した場合の警告通知は、「警告ID」「回線ID」「オブジェクトID」「故障パラメータ」「発生時刻」を含む。「警告ID」は、警告通知の識別子である。
【0037】
「故障アクセス回線ID」は、中継網サービス断通知の「故障アクセス回線ID」と同じ値である。「オブジェクトID」は、中継網サービス断通知の「パラメータ」と同じ値である。「故障パラメータ」には「通信障害発生」または「通信障害回復」が設定される。ここでは、中継網サービス断通知の「パラメータ」が「回線分岐装置11サービス断」であることから、「通信障害発生」と設定されるものとする。「発生時刻」は、中継網サービス断通知に含まれる「発生時刻」と同じ値である。
【0038】
判定部22は、警告部21から受信したサービス断やサービス回復等の警告通知に応じて回線状態表を設定し、回線状態表に含まれるパラメータや警告通知に含まれるパラメータを時間監視部23に通知する。また判定部22は、時間監視部23からの通知に応じて、上位システム30に、当該ネットワークにおけるサービス断やサービス回復等を通知するか否かについて判定する。当該判定手順については、図9、図10のフローチャートで後述する。判定部22が、サービス断やサービス回復を上位システム30に通知すると判断した場合は、送信部24に、サービス断やサービス回復等のデータを通知する。
【0039】
図7は、判定部22がネットワークに接続された装置や回線における障害を監視するために用いる回線状態表である。回線状態表は、「回線ID」「オブジェクトID」「中継網区間状態」「電源状態」を含む。「回線ID」は、監視対象の回線の識別子であり、判定部22が警告部21から受信した警告通知の「回線ID」または「故障アクセス回線ID」と同じ値が設定される。「オブジェクトID」は、警告通知に含まれる「オブジェクトID」と同じ値が設定される。なお、1つの装置につき「オブジェクトID」は複数あってもよい。
【0040】
「中継網区間状態」は、回線状態表の「回線ID」と同じ「故障アクセス回線ID」を持つ中継網サービス断通知を受信した場合に、警告部21が作成して判定部22に送信する警告通知に含まれる「オブジェクトID」と同じ値である。「電源状態」は、回線終端装置10の電源状態を示す情報であり、アクセス区間サービス断通知を受信した場合に、警告部21が作成して判定部22に送信する警告通知に含まれる「故障パラメータ」と同じ値が設定される。例えば、図5の警告通知の「回線ID」と、図6の警告通知の「故障アクセス回線ID」と、が同じ回線ID100に関する警告通知であるため、回線状態表は、判定部22によって図7のように設定される。
【0041】
時間監視部23は、判定部22から「回線ID」「障害フラグ」「上位通知フラグ」「発生時刻」を受信することで、「回線ID」により識別される回線に発生したサービス断の継続時間を計測する。
【0042】
図8は、ネットワークにサービス断が発生してからの経過時間を時間監視部23が監視するための時間監視表である。時間監視表は、「回線ID」「障害フラグ」「上位通知フラグ」「発生時刻」「現在時刻との差」を含む。
【0043】
「回線ID」は、サービス断やサービス回復等が発生した回線の識別子であり、回線状態表や、警告通知に含まれるパラメータである。「障害フラグ」は、「回線ID」により
識別される回線において、サービス断の発生を示す「発生」や、サービス回復を示す「回復」、を判定部22が時間監視部23に通知することで、時間監視部23が時間監視表を更新する。なお「障害フラグ」は、警告通知の「オブジェクトID」「故障パラメータ」から判定部22が「発生」や「回復」を判定してもよく、あるいは時間監視部23が判定してもよい。
【0044】
「上位通知フラグ」は、サービス断発生から前記保護時間(ネットワーク監視システムが、ネットワーク監視システムの上位システムに対してサービス断を通知する、と判定するまでの時間)が経過した場合に、上位システム30にサービス断発生を通知するか否かを示す情報である。回線状態表の「電源状態」が「ユーザ起因」でない場合は、判定部22から時間監視部23への通知により「上位通知フラグ」が「予約」に設定される。この場合は、サービス断が発生してサービス回復しないまま保護時間が経過すると、上位システム30にサービス断の通知が送信される。
【0045】
また、回線状態表の「電源状態」が「ユーザ起因」である場合は、判定部22から時間監視部23への通知により「上位通知フラグ」が「不要」に設定される。この場合は、サービス断が発生してサービス回復しないまま保護時間が経過しても、上位システム30にはサービス断等の通知が送信されないものとする。なお、判定部22から「電源状態」等を通知されることで、時間監視部23が「上位通知フラグ」を判定してもよい。
【0046】
「発生時刻」は、サービス断やサービス回復等のイベントが発生した時刻を示し、判定部22が警告通知の「発生時刻」を時間監視部23に通知する。「現在時刻との差」は、「発生時刻」と現在時刻との時間差である。「現在時刻との差」が、時間監視部23が記憶する保護時間を越えた場合に、「障害フラグ」が「発生」であり、かつ「上位通知フラグ」が「予約」であれば、時間監視部23から判定部22に、保護時間を越えた「回線ID」が通知される。すなわち、時間監視部23は、サービス断等が発生しサービス回復せずに保護時間が経過した「回線ID」を、判定部22に通知する。なお、当該保護時間は「回線ID」毎に異なった値でもよい。
【0047】
判定部22は、通知された「回線ID」に対応する回線状態表のデータを送信部24に通知する。送信部24は、判定部22から通知された回線状態表のデータを、上位システム30に送信する。上位システム30は、送信部24から送信されたデータに応じて、当該ネットワークにおいて発生したサービス断やサービス回復等をユーザに通知する、などの動作を実行する。
【0048】
以下に、本発明の一実施形態によるネットワーク監視システムの動作を説明する。ネットワーク監視システムにおいて、ユーザの操作等によって回線終端装置10が電源OFF状態になったとする。回線分岐装置11は、回線終端装置10が電源OFF状態になったことを検出し、アクセス区間サービス断通知をアクセス区間サービス情報ゲートウェイ12に通知する。アクセス区間サービス情報ゲートウェイ12は、アクセス区間サービス断通知を警告部21に転送する。ここで、アクセス区間サービス断通知のパラメータは、図2に示す値に設定されたものとする。
【0049】
中継網区間監視装置15は、ユーザの操作等によって回線終端装置10が電源OFF状態になったことが起因となる波及警報により、中継網装置14から中継網サービス断通知を受信すると、警告部21に中継網サービス断通知を送信する。警告部21は、中継網監視部15からの中継網サービス断通知を受信すると、判定部22に警告通知を送信する。ここで、当該警告通知のパラメータは、図6に示す値に設定されたものとする。
【0050】
このように警告部21は、アクセス区間サービス情報ゲートウェイ12からアクセス区間サービス断通知を受信し、中継網区間監視装置15から中継網サービス断通知を受信するが、中継網サービス断通知がアクセス区間サービス断通知よりも先に警告部21に受信されることがあってもよい。また、アクセス区間と中継網区間とを区別せずに、「オブジェクトID」を用いて「回線ID」を特定するようにしてもよい。
【0051】
図9は、判定部22が時間監視部23に回線状態を通知する動作フローチャートである。判定部22は、警告部21から警告通知を受信し(ステップSa1)、回線状態表の「回線ID」ごとに「オブジェクトID」「中継網区間状態」「電源状態」を更新する(ステップSa2)。判定部22は、警告通知により更新された回線状態表のデータを時間監視部23に示すため、回線状態表の「回線ID」と「発生時刻」とを時間監視部23に通知する(ステップSa3)。判定部22は、受信した警告通知の「オブジェクトID」や「故障パラメータ」等に応じて、サービス断発生か、サービス回復か、を判定し(ステップSa4)、サービス断の場合は「障害フラグ」を「発生」として時間監視部23に通知する(ステップSa5)。サービス回復の場合は、判定部22は「障害フラグ」を「回復」として時間監視部23に通知する(ステップSa6)。
【0052】
判定部22は、回線状態表の「電源状態」がユーザ起因によるものか否かを判定する(ステップSa7)。「電源状態」が「ユーザ起因」である場合は、上位システム30への通知は不要のため、判定部22は「上位通知フラグ」を「不要」として、時間監視部23に通知する(ステップSa9)。また、「電源状態」が「ユーザ起因」でない場合は、判定部22は「上位通知フラグ」を「予約」として、時間監視部23に通知する(ステップSa9)。
【0053】
図10は、時間監視部23の動作を示すフローチャートである。時間監視部23は、判定部22から、「回線ID」「障害フラグ」「上位通知フラグ」「発生時刻」を通知され(ステップS1)、通知された「回線ID」に対応するデータについて、時間監視表を更新する(ステップS2)。時間監視部23は、「発生時刻」から「現在時刻との差」を計算し(ステップS3)、「現在時刻との差」が保護時間を越えたか否か、を判定する(ステップS4)。
【0054】
保護時間を越えていない場合、時間監視部23は、ステップS1に戻ることで、「回線ID」「障害フラグ」「上位通知フラグ」の更新データを判定部22から取得することができる。ここで「回線ID」「障害フラグ」「上位通知フラグ」は、前回と同じ値でもよい。保護時間を越えている場合、さらに時間監視部23は、通知された「障害フラグ」が「回復」か「発生」か、を判定する(ステップS5)。「障害フラグ」が「回復」であった場合は、例えば、回線工事で短時間のサービス断が発生し回復したことが考えられ、上位システム30にサービス断発生やサービス断回復を通知しなくてもよい。この場合、時間監視部23は保護時間を待たず、時間監視を終了するために「回線ID」に対応するパラメータを時間監視表から削除して、当該「回線ID」に関する処理を終了する(ステップS6)。なお、回線状態表のデータを削除しないことで、判定部22は当該「回線ID」で識別される回線のサービス断等の監視を続けてもよい。「障害フラグ」が「発生」の場合、時間監視部23は、さらに「上位通知フラグ」が「不要」か「予約」か、を判定する(ステップS7)。
【0055】
「上位通知フラグ」が「予約」の場合は、時間監視部23は、保護時間を越えた「回線ID」を判定部22に通知する(ステップS8)。「上位通知フラグ」が「不要」の場合は、時間監視部23は、保護時間を越えた「回線ID」を判定部22に通知せずに、ステップS1に戻る。
【0056】
時間監視部23から保護時間を越えた「回線ID」が判定部22に通知されると、判定部22は回線状態表を参照して、「回線ID」と、当該「回線ID」に対応する「オブジェクトID」「中継網区間状態」等のパラメータを、送信部24に通知する。送信部24は、通知されたパラメータを上位システム30に送信する。上位システム30は、通知されたパラメータに基づいて、ネットワークで発生したサービス断やサービス回復をユーザに通知する、などの動作を実行する。
【0057】
以上、本発明の実施の形態により、サービス断がユーザの操作に起因するものか否かをネットワーク監視システムが判定することができるため、ネットワーク監視システムは、ユーザの操作に起因するサービス断の場合はユーザにサービス断を通知することがなく、ユーザの操作に起因しない装置の故障等に起因するサービス断の場合はユーザにサービス断を通知することができる。
【0058】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0059】
また、本発明に記載の第1の監視装置は、回線分岐装置11と、アクセス区間サービス情報ゲートウェイ12と、に対応し、第2の監視装置は、中継網装置14と、中継網区間監視装置15と、に対応し、第3の監視装置は、サービス断監視装置20に対応し、判定手段は、判定部22と、時間監視部23と、に対応し、通知手段は、送信部24と、上位システム30と、に対応する。
【0060】
また、図9、図10に示す各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、通信端末の実行処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
【0061】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0062】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態によるネットワーク監視システムを示した図である。
【図2】アクセス区間サービス断通知に含まれるデータを示す表である。
【図3】中継網サービス断通知に含まれるデータを示す表である。
【図4】収容回線表である。
【図5】アクセス区間サービス断通知を受信した場合の警告通知に含まれるデータを示す表である。
【図6】中継網サービス断通知を受信した場合の警告通知に含まれるデータを示す表である。
【図7】回線状態表である。
【図8】時間監視表である。
【図9】回線状態を通知する動作フローチャートである。
【図10】時間監視部23の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10…回線終端装置 11…回線分岐装置 12…アクセス区間サービス情報ゲートウェイ 13…中継網 14…中継網装置 15…中継網区間監視装置 20…サービス断監視装置 21…警告部 22…判定部 23…時間監視部 24…送信部 30…上位システム 100…回線 200…回線 300…回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回線終端装置と、
前記回線終端装置における通信障害を監視し、発生した通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かを検出する第1の監視装置と、
前記第1の監視装置における通信障害を監視する第2の監視装置と、
前記第1の監視装置から通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かに関する情報を含む第1の監視結果を受信するとともに、前記第2の監視装置から第2の監視結果を受信する第3の監視装置と、
を備え、
前記第3の監視装置は、
前記第1の監視結果と、前記第1の監視結果及び前記第2の監視結果の受信時刻の差と、に基づいてネットワークに通信障害が発生しているか否かを判定する判定手段と、
当該判定に応じて判定結果を通知する通知手段と、
を備えることを特徴とするネットワーク監視システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記受信時刻の差が所定の閾値より短い場合は、通知すべき通信障害が発生していないと判定することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク監視システム。
【請求項3】
前記判定手段は、前記第3の監視装置が前記第1の監視装置から通信障害がユーザ操作に起因するものであるとの情報を含む第1の監視結果を受信した場合は、通知すべき通信障害が発生していないと判定することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク監視システム。
【請求項4】
前記回線終端装置における前記ユーザ操作は、電源を入れる操作あるいは電源を落とす操作であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1の項に記載のネットワーク監視システム。
【請求項5】
回線終端装置と、
前記回線終端装置における通信障害を監視し、発生した通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かを検出する第1の監視装置と、
前記第1の監視装置における通信障害を監視する第2の監視装置と、
前記第1の監視装置から通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かに関する情報を含む第1の監視結果を受信するとともに、前記第2の監視装置から第2の監視結果を受信する第3の監視装置と、
を備えるネットワークの第3の監視装置における処理方法であって、
判定手段が、前記第1の監視結果と、前記第1の監視結果及び前記第2の監視結果の受信時刻の差と、に基づいてネットワークに通信障害が発生しているか否かを判定するステップと、
通知手段が、当該判定に応じて判定結果を通知するステップと、
を含むことを特徴とする監視方法。
【請求項6】
回線終端装置と、
前記回線終端装置における通信障害を監視し、発生した通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かを検出する第1の監視装置と、
前記第1の監視装置における通信障害を監視する第2の監視装置と、
前記第1の監視装置から通信障害がユーザ操作に起因するものであるか否かに関する情報を含む第1の監視結果を受信するとともに、前記第2の監視装置から第2の監視結果を受信する第3の監視装置と、
を備えるネットワークの第3の監視装置のコンピュータに、
判定手段が、前記第1の監視結果と、前記第1の監視結果及び前記第2の監視結果の受信時刻の差と、に基づいてネットワークに通信障害が発生しているか否かを判定する手順と、
通知手段が、当該判定に応じて判定結果を通知する手順と、
を実行させるための監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−81391(P2010−81391A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248795(P2008−248795)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【Fターム(参考)】