説明

ネットワーク管理における状態設定方法

【課題】
被管理装置の構成や運用状態を、ネットワーク管理者が容易に変更可能にする。
【解決手段】
ネットワーク管理者が管理する被管理装置A1のあるディレクトリに、SNMPのSetRequest要求パケット受信時に行う処理が記述されたテキストデータB1を置き、ネットワーク管理者は、該テキストデータB1に記述された処理を被管理理装置A1で実行するために、ネットワーク管理装置P1からSNMPのSetRequest要求を被管理装置A1に対して発行し、目的の処理をSNMPエージェントD1に実行させることによってネットワーク管理者により被管理装置A1の状態を変更可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネットワーク管理における状態設定方法に関し、さらに詳細にはネットワーク管理者が管理している被管理装置の構成や運用状態を、ネットワーク管理者が容易に変更することを可能とするネットワーク管理における状態設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の処理においては、ネットワーク装置の構成や運用状態を変更する場合、ネットワーク管理者が被管理装置に接続されている端末を用いて直接状態を変更するか、telnet等ネットワークに接続するためのアプリケーションを使用して該被管理装置の状態を変更するか、またはある処理専用にプログラムされた処理をSNMPのSetRequestを用いて行い、状態を変更するという方法が一般的である。例えば(特許文献1)がある。
【0003】
【特許文献1】特開2000−69010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネットワーク管理者が管理する被管理装置の状態を変更したい場合において、telnetのように「ログイン」、「コマンド実行」、「ログアウト」というような幾つかの手順を踏まなければならないアプリケーションを用いて管理している場合、被管理装置が多くなるに従い管理時間も大きくなり非効率であった。またSNMPのSetRequest要求を被管理装置に送ることによって、該要求を被管理装置のSNMPエージェントに実行させ、状態の変更を行うようにするためには、被管理装置のSNMPエージェントは実行したい全ての処理に対応したMIBを保持し、該MIBのSetRequest要求で状態の設定を行う機能を有している必要があった。
【0005】
本発明の目的は、被管理装置の構成や運用状態を、管理者が容易に変更することができる状態設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ネットワーク管理者が管理する被管理装置上に、該被管理装置が実行するために使用する識別子や処理内容を規則に従って記述するテキストデータが存在しない場合に、該被管理装置に新規に追加可能にし、被管理装置は管理装置から例えばパケットの形式で送られてきたテキストデータを受信し、被管理装置のテキストデータ実行処理部が該パケットを解析して実行し、被管理装置の状態を変更可能にする。
【0007】
本発明はまた、ネットワーク管理者が管理する被管理装置上のあるディレクタに、該被管理装置が実行するために使用する識別子や処理内容を記述してあるテキストデータを予め置いておき、被管理装置のテキストデータ実行処理部が該テキストデータの内容を実行し、被管理装置の状態を変更可能にする。
【0008】
本発明はまた、ネットワーク管理者が管理する被管理装置上のあるディレクトリに、該被管理装置が実行するために使用する識別子や処理内容が記述してあるテキストデータを置き、該被管理装置の変更(編集)機能により該テキストデータを変更し、被管理装置の状態を変更可能にする。
【0009】
本発明はまた、上記のテキストデータ実行処理を、SNMPプロトコルを用いて行なう。具体的には、被管理装置内のSNMPエージェントがサポートするMIPにおいて、上記の処理するための書き込み許可のあるMIBを1つ設定し、該MIBのSetRequest要求が送られてきた場合、該被管理装置上にあるテキストデータ内の識別子から行うべき処理を判断し、送られてきたフレームと同じ識別子の番号があった場合に、該識別子の際に実行する処理内容をSNMPエージェントが実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ネットワーク管理装置より発行された実行命令パケットをネットワーク管理者が管理する被管理装置のパケット受信部で受信した後、テキストデータ実行処理部が該パケット内に記述された識別子番号からテキストデータの該識別子に該当する命令を実行することにより、ネットワーク管理装置の変更処理時間を短縮でき、該テキストデータを管理者が作成することを可能とすることにより、実行したいコマンド処理を管理者は自由に設定可能となる。
【0011】
また、ネットワーク管理装置より発行された実行命令パケットをネットワーク管理者が管理する被管理装置のパケット受信部で受信した後、テキストデータ実行処理部が該パケット内に記述された識別子番号からテキストデータの該識別子に該当する命令を実行することにより、ネットワーク管理装置の変更処理時間を短縮でき、予め任意のコマンドを記述した該テキストデータを装置に設定しておくことで、ネットワーク管理者は新たにテキストデータに設定することなく、既存の実行コマンドが実行可能となる。
【0012】
また、ネットワーク管理装置より発行された実行命令パケットをネットワーク管理者が管理する被管理装置のパケット受信部で受信した後、テキストデータ実行処理部が該パケット内に記述された識別子番号からテキストデータの該識別子に該当する命令を実行することにより、ネットワーク管理装置の変更処理時間を短縮でき、被管理装置に設定した該テキストデータをネットワーク管理者が変更可能とする事で、実行したいコマンド処理を管理者は自由に設定可能となる。
【0013】
また、ネットワーク管理者が管理する被管理装置のSNMPエージェントが、Set機能対応のMIBの種類に制限されずに、管理者によって被管理装置に必要な情報のみをSetできるように処理することができるようになり、また、SNMPのSetRequest要求を送るのみで、被管理装置の状態を自由に変更可能とすることが可能になるために、多くの被管理装置がある場合の管理時間を短縮できることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に図面を参照して、本発明の一実施例について説明する。図1はネットワーク管理装置および被管理装置のネットワーク関係図を示す。図1において、ネットワーク管理装置P1に被管理装置A1がネットワークを介して接続されている。本実施例は、ネットワーク管理者が管理している被管理装置A1が、SNMPプロトコルを処理するためのSNMPエージェントD1を実装し、またこのSNMPエージェントD1は本発明の機能を有している。さらに被管理装置A1にはSNMPエージェントD1が実行するための処理が記述されたテキストデータB1が指定されたディレクトリに配置されていることとし、またネットワーク管理者側のネットワーク管理装置P1にはSNMPのSet要求を行うための機能を有している。C1はテキストデータ実行処理部、E1はパケット受信部である。ネットワーク管理者はネットワーク管理装置P1からSNMPのSetRequest要求を発行する。被管理装置A1には、要求された被管理装置A1内のSNMPエージェントがどのような処理を行うかを記述しておくためのテキストデータB1を備えておく必要がある。
【0015】
図2は、被管理装置A1のディレクトリに設定する、SNMPのSetRequestを利用してSNMPエージェントD1に行わせるための処理、およびその識別子が記述されているテキストデータB1の内容である。
図2のテキストデータの左端に記述されている番号が識別子である。また、その右側に記述されている文字列が、この識別子が要求されたときに実行されるべきコマンドの文字列である。実行されるべきコマンドは、任意に数字を設定したり、また文字列を実行できるようにしたりするために、“*”、“#”という制御用文字列を使用して記述する事とする。
【0016】
SNMPの仕様として、取得もしくは設定するMIBのオブジェクト識別子は、実際のMIBのオブジェクト識別子と、アクセスポイントを示すためのインスタンスと呼ばれる識別子とを結合したもので表される。本機能の説明の例として、図3にネットワーク管理装置P1から発行されるSNMPのオブジェクト識別子とインスタンスとを結合した識別子を表示したものを示す。
【0017】
ここで図3の項目1に示したMIB名称の欄の文字列が、本実施例で説明するために使用するMIB名称であり、またオブジェクト識別子の欄に記述されている数字とドットが交互に記述されている文字列が、このMIBをオブジェクト識別子の形式で表現した場合の表示方法である。
【0018】
図3で示したMIB名称「SnmpMibSetEx」のMIBをネットワーク管理装置P1から、SetRequest要求で被管理装置A1に送信することによって、被管理装置A1内のSNMPエージェントD1は該MIBのSetRequest要求により該当する処理を行う。ここではまず、図3の項目4を実行した場合の処理の流れについて図4を参照して説明する。
【0019】
まずネットワーク管理装置P1から「SnmpMibSetEx.3.0.1(=1.2.3.4.5.3.0.1)」がSetRequest要求で送信されてくる(STEP1)。該SetRequest要求の対象である被管理装置A1は、まずインスタンスがあるかの確認を行う。ある場合はインスタンス部の1つ目を確認し番号を得る(STEP2)。ない場合はSNMPのエラー応答をGetResponseとして応答する(STEP11)。この例題においては1つ目のインスタンスは3であり、被管理装置A1のSNMPエージェントD1は3を抽出する。さらに該SNMPエージェントD1は、図1に示した被管理装置A1内のテキストデータB1内に記述された識別子と、先に抽出した3とを比較し、一致するものがあるか検索する(STEP3)。もしもテキストに記述されていない数字であったり、検索に失敗して見つからなかったりした場合、SNMPエージェントD1はSNMPのエラー応答をGetResponseとして応答する(STEP11)。
【0020】
また検索によって見つかった場合は、該識別子の次に記述されている文字列を読み込む(STEP4)。このとき文字列には“*”、“#”が記述されている場合がある。記号“*”は2つ目以降のインスタンスの値を代入するための記号として扱う。また“#”は実際のMIBに設定する値としてSetRequestのパケット内に設定された文字列を代入するための記号である。
【0021】
まず“*”がなく、さらに“#”がない場合は、読み込んだ文字列をそのまま実行し、ネットワーク管理者の目的であった処理を行う(STEP10)。図2の項目1がこの処理に該当する。
上記で読み込んだ文字列内に“*”がある場合は、文字列内の“*”の数と上記入力されたSetRequestパケット内の2つ目以降のインスタンス数が一致するかを確認する(STEP6)。一致する場合は文字列の“*”の箇所に、識別子として使用したインスタンスの次にあるインスタンス値を代入していき(STEP7)、完成した文字列をSNMPエージェントD1が実行することによりネットワーク管理者の目的の処理を行う事とする(STEP10)。例によると識別子は3であり、その次からの数字は0と1である。識別子3に該当する処理命令は“close nif * line *”である。このとき“*”の数は2つ存在し、また識別子との比較で使用した以外のインスタンスの数も2つであり、上記0および1を該当の処理命令の文字列に代入する。このときに得られる文字列は“close nif 0 linE1”であり、被管理装置B1内のSNMPエージェントD1は該命令を実行することとなる。
【0022】
さらに、テキストデータB1の識別子に該当する実行処理用コマンド文字列に“#”があるならば(STEP8)、SetRequestのパケットにMIB値が設定されているかを確認し(STEP9)、SetRequestパケットにMIB値が設定されていない場合は、SNMPエージェントD1はSNMPのエラー応答をGetResponseとして応答する(STEP11)。
【0023】
SetRequestパケットにMIB値が設定されている場合は、パケット内の設定文字列をそのまま“#”の箇所に代入し、完成した文字列をSNMPエージェントD1が実行することにより、ネットワーク管理者の目的の処理を行う事とする(STEP10)。上記処理を図3の項目5の例で示す。
【0024】
まずネットワーク管理装置P1から「MIB名称がSnmpMibSetEx.5(=1.2.3.4.5.5)、MIB値がethernet0/0」というSetRequest要求で送信されてくる(STEP1)。このSetRequest要求の対象である被管理装置A1は、インスタンス部の1つ目を確認し番号を得る(STEP2)。この例題においては1つ目のインスタンスは5であり、被管理装置A1のSNMPエージェントD1は5を抽出する。さらに該SNMPエージェントD1は、図1に示した被管理装置A1内のテキストデータB1内に記述された識別子と、先に抽出した5とを比較し、一致するものがあるか検索する(STEP3)。もしもテキストデータB1に記述されていない数字であったり、検索に失敗して見つからなかったりした場合は、SNMPのエラー応答をGetResponseとして応答する(STEP11)。
【0025】
また検索によって見つかった場合は、該識別子の次に記述されている文字列を読み込む(STEP4)。上記で読み込んだ文字列内に“#”がある場合は(STEP8)、文字列の“#”の箇所に、被管理装置A1に対し設定用MIB値として送られてきた文字列を代入し(STEP9)、完成した文字列をSNMPエージェントD1が実行することによりネットワーク管理者の目的の処理を行う事とする(STEP10)。例によると識別子は5であり、設定されたMIB値は“ethernet0/0”である。識別子5に該当する処理命令は“clear interface #”であるので、このときに得られる文字列は“clear interface ethernet0/0”であり、被管理装置A1内のSNMPエージェントD1は該命令を実行することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ネットワーク管理装置および被管理装置のネットワーク関係を示す図。
【図2】被管理装置内に設定するテキスト文を示す図。
【図3】実施例のためのMIBオブジェクトを示す図。
【図4】本機能のフローチャートを示す図。
【符号の説明】
【0027】
A1:被管理装置
B1:テキストデータ
C1:テキストデータ実行処理部
D1:SNMPエージェント
E1:パケット受信部
P1:ネットワーク管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実行するコマンド文字列を識別するための識別子とそれに該当するコマンド実行処理とを記述したテキストデータを用意し、該テキストデータが被管理装置内に存在しない場合は該被管理装置に新たに追加し、該被管理装置のテキストデータ実行処理部が、該テキストデータに記載の内容を実行し、該被管理装置の状態を変更することを特徴とするネットワーク管理における状態設定方法。
【請求項2】
実行するコマンド文字列を識別するための識別子とそれに該当するコマンド実行処理とを記述したテキストデータを用意し、該テキストデータを被管理装置内に予め設定し、該被管理装置のテキストデータ実行処理部が、該テキストデータに記載の内容を実行し、該被管理装置の状態を変更することを特徴とするネットワーク管理における状態設定方法。
【請求項3】
被管理装置内に、実行するコマンド文字列を識別するための識別子とそれに該当するコマンド実行処理とを記述したテキストデータを用意し、該被管理装置内に既に存在する該テキストデータに対して変更を行い、該被管理装置のテキストデータ実行処理部が、該テキストデータに記載の内容を実行し、該被管理装置の状態を変更することを特徴とするネットワーク管理における状態設定方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの項記載のネットワーク管理における状態設定方法において、前記テキストデータ実行処理部のテキストデータ実行処理が、SNMPプロトコルを用いて行われることを特徴とするネットワーク管理における状態設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−5604(P2006−5604A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179136(P2004−179136)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000152985)株式会社日立情報システムズ (409)
【Fターム(参考)】