説明

ネットワーク試験支援装置、方法およびプログラム

【課題】安価で容易に試験用シナリオを作成して試験を実施する。
【解決手段】エンド・ツー・エンドのネットワーク試験を支援するネットワーク試験支援装置10において、ネットワーク上の被試験対象50に関する既存の測定器51A〜51Eからテキスト形式の測定データを取得する測定データ取得部と、取得された測定データに基づいて、被試験対象ごとの試験用シナリオを作成する試験用シナリオ作成部と、作成された被試験対象ごとの試験用シナリオに基づいて、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成する試験用シーケンス作成部とを設けた。既存の測定器から測定データを取得するので、さまざまな通信プロトコルの測定データを取得するしくみを構築する必要はなく、さまざまな通信プロトコルを対象として、安価で容易に試験用シナリオおよびシーケンスを作成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンド・ツー・エンドのネットワーク試験を支援するネットワーク試験支援装置、方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク上の被試験対象の通信プロトコルをモニターし、収集されたデータを解析し、解析結果に基づき試験用シナリオを作成し、被試験対象の対向設備として通信プロトコル試験を自動的に実施する技術が下記の特許文献1〜4に提案されている。この技術では、通信プロトコルの上位層から下位層まで広く試験対象とされている。
【特許文献1】特開2000−196705号公報
【特許文献2】特開2005−33289号公報
【特許文献3】特開2003−177979号公報
【特許文献4】特開平7−245641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1〜4に提案された技術を実現するには、現存するさまざまな通信プロトコルの各々について、通信プロトコルを解析し該解析結果に基づき試験用シナリオを作成して試験を実施するしくみを構築する必要があり、その構築には非常に多くの費用と労力を要する。そのため、安価で容易に試験用シナリオを作成して試験を実施するしくみが待望されている。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、安価で容易に試験用シナリオを作成して試験を実施することができるネットワーク試験支援装置、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係るネットワーク試験支援装置は、ネットワーク上の1つ以上の被試験対象に関する既存の測定器から、テキスト形式の測定データを取得する測定データ取得部と、前記測定データ取得部により取得された測定データに基づいて、被試験対象ごとの試験用シナリオを作成する試験用シナリオ作成部と、前記試験用シナリオ作成部により作成された被試験対象ごとの試験用シナリオに基づいて、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成する試験用シーケンス作成部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係るネットワーク試験支援方法は、エンド・ツー・エンドのネットワーク試験を支援するネットワーク試験支援装置におけるネットワーク試験支援方法であって、ネットワーク上の1つ以上の被試験対象に関する既存の測定器から、テキスト形式の測定データを取得する測定データ取得ステップと、前記測定データ取得ステップにて取得された測定データに基づいて、被試験対象ごとの試験用シナリオを作成する試験用シナリオ作成ステップと、前記試験用シナリオ作成ステップにて作成された被試験対象ごとの試験用シナリオに基づいて、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成する試験用シーケンス作成ステップとを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るネットワーク試験支援プログラムは、ネットワーク上の1つ以上の被試験対象に関する既存の測定器から、テキスト形式の測定データを取得する測定データ取得ステップと、前記測定データ取得ステップにて取得された測定データに基づいて、被試験対象ごとの試験用シナリオを作成する試験用シナリオ作成ステップと、前記試験用シナリオ作成ステップにて作成された被試験対象ごとの試験用シナリオに基づいて、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成する試験用シーケンス作成ステップとを、コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0008】
これら本発明によれば、ネットワーク上の1つ以上の被試験対象に関する既存の測定器から、テキスト形式の測定データを取得し、取得された測定データに基づいて、被試験対象ごとの試験用シナリオを作成し、そして、作成された被試験対象ごとの試験用シナリオに基づいて、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成する。
【0009】
このように被試験対象に関する既存の測定器を利用し、該既存の測定器からテキスト形式の測定データを取得するので、さまざまな通信プロトコルの測定データを取得するためのしくみを新たに構築する必要はなく、汎用性の高いテキスト形式の測定データを取得することができる。これにより、さまざまな通信プロトコルを対象として、安価で容易に、試験用シナリオを作成することができる。
【0010】
また、将来、新たな通信プロトコルが用いられるようになった場合でも、かかる通信プロトコル用の測定器を利用することで、当該新たな通信プロトコルにも対応することが可能となるため、利用の拡張性の面で優れている。
【0011】
また、被試験対象ごとのシーケンスではなく、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成することで、エンド・ツー・エンドの試験を安価で容易に実施することができる。
【0012】
また、既存の測定器から測定データを取得することで、プロトコルの下位層(例えば、物理層)を意識することなく、上位層(第2層以上)に関するエンド・ツー・エンドの試験を実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安価で容易に、試験用シナリオを作成して試験を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に関する実施形態を説明する。
【0015】
[ネットワーク試験支援装置の動作環境]
図1には、本実施形態におけるネットワーク試験支援装置10および被試験対象50を示す。この図1の例では、被試験対象50は、端末装置52とセンタ設備53間の通信設備であり、端末−移動機(Mobile Station(以下「MS」という))間の区間50Aと、MS50Bと、移動通信網の無線(エア)区間50Cと、移動通信網のコアネットワーク50Dと、コアネットワーク−センタ設備間のLAN50Eとから構成される。このようにネットワーク試験支援装置10は、端末装置52とセンタ設備53間のエンド・ツー・エンドのネットワーク試験を支援する装置である。
【0016】
上記の端末−MS間50A、MS50B、エア区間50C、コアネットワーク50DおよびLAN50Eには、それぞれのプロトコルに適合した測定器51A〜51Eが存在し、各測定器51A〜51Eはそれぞれの区間でデータを取得し、取得したデータに対しプロトコルに応じた解析を行って、該解析データをテキスト形式の測定データとしてネットワーク試験支援装置10へ出力する。
【0017】
ネットワーク試験支援装置10は、通常のパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という)により構成することができる。そこで、図2、図3を用いてネットワーク試験支援装置をパソコンで構成した場合の当該構成を説明する。
【0018】
図2、図3に示すように、パソコン20は、フレキシブルディスクドライブ装置、CD−ROMドライブ装置、DVDドライブ装置等の読取装置24と、作業用メモリ22と、本発明に係るネットワーク試験支援プログラムを記憶したメモリ23と、ディスプレイ25と、入力装置であるマウス26及びキーボード27と、データ等の送受信を行うための通信装置28と、プログラムの実行を制御するCPU21とを備えている。
【0019】
パソコン20がメモリ23からネットワーク試験支援プログラムを読み出し実行することで、パソコン20のハードウェアとネットワーク試験支援プログラムとが協働することとなり、パソコン20は、本発明に係るネットワーク試験支援装置として動作する。
【0020】
また、パソコン20は、図2に示すように記録媒体30が読取装置24に装填されると、記録媒体30に格納されたネットワーク試験支援プログラムを読取装置24により読み取って、該ネットワーク試験支援プログラムを実行することができる。この場合も、パソコン20のハードウェアとネットワーク試験支援プログラムとが協働することとなり、パソコン20は、本発明に係るネットワーク試験支援装置として動作する。
【0021】
[ネットワーク試験支援装置の構成および動作]
以下、パソコン20がネットワーク試験支援装置として動作する場合の当該ネットワーク試験支援装置10の構成および動作を説明する。
【0022】
図4には、ネットワーク試験支援装置10の機能ブロック構成を示す。この図4に示すように、ネットワーク試験支援装置10は、機能ブロック構成として、測定データ取得部11と、試験用シナリオ作成部12と、試験用シーケンス作成部とを備える。このうち測定データ取得部11は、図1の被試験対象50に関する測定器51A〜51Eからテキスト形式の測定データを取得する機能を持つ。試験用シナリオ作成部12は、測定データ取得部11により取得された測定データに基づいて、被試験対象ごとの試験用シナリオを作成する機能を持つ。試験用シーケンス作成部13は、試験用シナリオ作成部12により作成された被試験対象ごとの試験用シナリオに基づいて、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成する機能を持つ。
【0023】
図5には、ネットワーク試験支援装置10により実行されるネットワーク試験支援処理を示す。このネットワーク試験支援処理は、本発明に係るネットワーク試験支援方法の手順を実現したものである。図5に示すように、ネットワーク試験支援処理では、まず、図4の測定データ取得部11が、ネットワーク上の1つ以上の被試験対象50に関する既存の測定器51A〜51Eからテキスト形式の測定データを取得し(S1:測定データ取得ステップ)、試験用シナリオ作成部12が、S1で取得された測定データに基づいて、被試験対象ごとの試験用シナリオを作成する(S2:試験用シナリオ作成ステップ)。そして、試験用シーケンス作成部13が、S2で作成された被試験対象ごとの試験用シナリオに基づいて、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成する(S3:試験用シーケンス作成ステップ)。
【0024】
このS3では、例えば、図1の被試験対象50については、図6に示すシーケンス図が作成される。即ち、図6に示すように、端末−MS間の区間50A、MS50B、エア区間50C、コアネットワーク50D、およびLAN50Eの全ての被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスが作成される。
【0025】
さらに、S3で作成された試験用シーケンスに基づいてエンド・ツー・エンドの試験が実施される(S4)。図7には、エンド・ツー・エンドの試験実施態様の一例を示す。この図7に示すように、試験対象となる端末装置52−センタ設備53間は、1つのネットワーク試験支援装置で構成される仮想端末装置52S−別のネットワーク試験支援装置で構成される仮想センタ設備53S間のエンド・ツー・エンドで置換された形となる。
【0026】
[効果]
本実施形態によれば、被試験対象に関する既存の測定器を利用し、該既存の測定器からテキスト形式の測定データを取得するので、さまざまな通信プロトコルの測定データを取得するためのしくみを新たに構築する必要はなく、汎用性の高いテキスト形式の測定データを取得することができる。これにより、さまざまな通信プロトコルを対象として、安価で容易に、試験用シナリオを作成することができる。
【0027】
また、将来、新たな通信プロトコルが用いられるようになった場合でも、かかる通信プロトコル用の測定器を利用することで、当該新たな通信プロトコルにも対応することが可能となるため、利用の拡張性の面で優れている。
【0028】
また、被試験対象ごとのシーケンスではなく、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成することで、エンド・ツー・エンドの試験を安価で容易に実施することができる。
【0029】
また、既存の測定器から測定データを取得することで、プロトコルの下位層(例えば、物理層)を意識することなく、上位層(第2層以上)に関するエンド・ツー・エンドの試験を実施することができる。
【0030】
[ネットワーク試験支援プログラムの構成]
最後に、パソコン20を本発明に係るネットワーク試験支援装置として動作させるためのネットワーク試験支援プログラムについて説明する。
【0031】
図8にはネットワーク試験支援プログラム40の構成を、記録媒体30と共に示す。この図8に示すように、ネットワーク試験支援プログラム40は、メインモジュール41と、図4の測定データ取得部11の機能(図1の被試験対象50に関する測定器51A〜51Eからテキスト形式の測定データを取得する機能)を実現する測定データ取得モジュール42と、図4の試験用シナリオ作成部12の機能(取得された測定データに基づいて被試験対象ごとの試験用シナリオを作成する機能)を実現する試験用シナリオ作成モジュール43と、図4の試験用シーケンス作成部13の機能(作成された被試験対象ごとの試験用シナリオに基づいて全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成する機能)を実現する試験用シーケンス作成モジュール44とを含んで構成される。
【0032】
このような構成のネットワーク試験支援プログラム40は、記録媒体30のプログラム格納領域30Aに格納された態様で流通可能である。なお、記録媒体30としては、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD、USBメモリ等が該当する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ネットワーク試験支援装置および被試験対象を示す図である。
【図2】ネットワーク試験支援装置として機能するパソコンの外観図である。
【図3】図2のパソコンの内部構成を示すブロック図である。
【図4】ネットワーク試験支援装置の機能ブロック図である。
【図5】ネットワーク試験支援処理の流れ図である。
【図6】ネットワーク試験支援処理により作成される試験用シーケンスの概要を示す図である。
【図7】エンド・ツー・エンドの試験実施態様を示す図である。
【図8】記録媒体に記録されたネットワーク試験支援プログラムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
10…ネットワーク試験支援装置、11…測定データ取得部、12…試験用シナリオ作成部、13…試験用シーケンス作成部、20…パソコン、21…CPU、22…作業用メモリ、23…メモリ、24…読取装置、25…ディスプレイ、26…マウス、27…キーボード、28…通信装置、30…記録媒体、30A…プログラム格納領域、40…ネットワーク試験支援プログラム、41…メインモジュール、42…測定データ取得モジュール、43…試験用シナリオ作成モジュール、44…試験用シーケンス作成モジュール、50…被試験対象、51A−51E…測定器、52…端末装置、52S…仮想端末装置、53…センタ設備、53S…仮想センタ設備。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上の1つ以上の被試験対象に関する既存の測定器から、テキスト形式の測定データを取得する測定データ取得部と、
前記測定データ取得部により取得された測定データに基づいて、被試験対象ごとの試験用シナリオを作成する試験用シナリオ作成部と、
前記試験用シナリオ作成部により作成された被試験対象ごとの試験用シナリオに基づいて、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成する試験用シーケンス作成部と、
を備えたネットワーク試験支援装置。
【請求項2】
エンド・ツー・エンドのネットワーク試験を支援するネットワーク試験支援装置におけるネットワーク試験支援方法であって、
ネットワーク上の1つ以上の被試験対象に関する既存の測定器から、テキスト形式の測定データを取得する測定データ取得ステップと、
前記測定データ取得ステップにて取得された測定データに基づいて、被試験対象ごとの試験用シナリオを作成する試験用シナリオ作成ステップと、
前記試験用シナリオ作成ステップにて作成された被試験対象ごとの試験用シナリオに基づいて、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成する試験用シーケンス作成ステップと、
を有するネットワーク試験支援方法。
【請求項3】
ネットワーク上の1つ以上の被試験対象に関する既存の測定器から、テキスト形式の測定データを取得する測定データ取得ステップと、
前記測定データ取得ステップにて取得された測定データに基づいて、被試験対象ごとの試験用シナリオを作成する試験用シナリオ作成ステップと、
前記試験用シナリオ作成ステップにて作成された被試験対象ごとの試験用シナリオに基づいて、全被試験対象を含んだエンド・ツー・エンドの試験用シーケンスを作成する試験用シーケンス作成ステップとを
コンピュータに実行させるためのネットワーク試験支援プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−200028(P2007−200028A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17935(P2006−17935)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(300064434)ドコモ・モバイル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】