説明

ネフォパムの治療的使用

ネフォパムは、ADDまたはADHDなどの情動障害の治療のための薬剤を製造するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネフォパムの新しい治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ネフォパム、すなわち5-メチル-1-フェニル-3,4,5,6-テトラヒドロ-1H-2,5-ベンゾキサゾシン塩酸塩は、他の鎮痛薬と構造上の関連性を有しない中枢作用性の非麻薬性鎮痛薬である。ネフォパムは、痛みの動物モデルおよびヒトにおいて侵害受容反応の抑制を誘導することが示されている。
【0003】
ネフォパムのエナンチオマーを用いたin vitroおよびin vivoでの研究は、(+)-ネフォパム>(±)-ネフォパム>(-)-ネフォパムで示される有効性の順で、(+)-ネフォパムが(-)-ネフォパムより強力な鎮痛剤であり、より強力なドーパミン、ノルエピネフリンおよびセロトニンの取り込み阻害特性を有することを示している(Fasmerら、1987; RoslandおよびHole, 1990; Matherら、2001)。ネフォパムの個々のエナンチオマーを投与またはモニタリングすることを正当化するための説得力のある論理的根拠はないという結論を下したMatherら(2001)の研究とは対照的に、痛みおよび嘔吐の治療のためにネフォパムの単一のエナンチオマーを使用する有意な利点が示された。これらの有用性は、特にWO03/105832およびWO03/105833に開示されている。
【0004】
従来のネフォパムの放出製剤は、中程度から重度の痛みにおける使用のために何年間も市販されているが、ネフォパムの短い排出半減期(4時間)は、通常の投与周期(1日3回)に渡って鎮痛効果を維持することが困難であることを意味する。ネフォパムの用量増加は医薬品副作用の頻度の増加をもたらし、脈拍および血圧に対する副作用は治療用量のネフォパムの非経口送達後に観察されている(Heelら、1980)。ネフォパムが経口投与される場合、ネフォパムの心臓に対する変時作用および変力作用はない(Bhattら、1981)。
【0005】
注意欠陥障害(ADD)および注意欠陥多動性障害(ADHD)は、特に子供の間で一般的な疾患である。メチルフェニデートは治療に使用されるが、副作用を起こしうる。関連する疾患は、トゥレット障害、若年性行動障害(反抗挑戦性障害、行為障害および広汎性小児発達障害(persuasive child development disorder)など)、不安障害ならびに摂食障害(拒食症、無茶食い障害および過食症など)を含む。
【0006】
PCT/GB2006/001197(本出願の出願日には未公開)は、線維筋痛症の治療におけるネフォパムの使用を開示する。
【0007】
発明の概要
本発明は、ネフォパムが例えばADD、ADHD、トゥレット障害、若年性行動障害(反抗挑戦性障害、行為障害および広汎性小児発達障害など)、不安障害ならびに摂食障害(拒食症、無茶食い障害および過食症など)のような情動障害の治療に有用性を有しうるという認識に基づく。放出制御はその効果を延長し、即効型薬剤の血漿ピーク濃度に関連する副作用の発現を低下させうる。
【0008】
好ましい実施形態の説明
本明細書において用いられる場合、「ネフォパム」は、化学式Iの化合物
【化1】

【0009】
ならびにその塩、例えば塩酸塩、代謝産物およびプロドラッグ、ならびにできる限り光学的に純粋な(+)および(-)エナンチオマーを指す。例えば、相互作用によって起こりうる副作用を低下させるためには、(+)-ネフォパムが好ましいことがある。
【0010】
ネフォパムの類似体が使用されうる。このような化合物は、WO2004/056788およびWO2005/103019に記載される。
【0011】
本発明に従って、活性化合物は、情動障害を治療する方法に使用される。「情動障害」という用語は、一般的に双極性障害、単極性障害および統合失調性感情障害を含むと理解されている主要な情動障害を含み、また通常予想されるより統計的に高い率で主要な情動障害に伴って起こりうる関連した精神障害および内科的疾患の分類である情動スペクトラム障害をも含む。これらの障害は同種の薬物療法に対する共通の好反応によって同定され、家系に強く集中するため、根底に共通の遺伝的な生理学的異常を共有するかもしれない。
【0012】
従って、関連疾患は、双極性障害(躁うつ病)、単極性障害(うつ病)、および統合失調症などの主要な情動障害;注意欠陥多動性障害、身体醜形障害、神経性過食症および他の摂食障害、脱力発作、および気分変調などの情動スペクトラム障害;ならびに性欲亢進症、衝動調節障害、過敏性腸症候群、盗癖、多種化学物質過敏症、ナルコレプシー、強迫性障害、パニック障害、外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害および社会恐怖症などの全般的な不安障害を含む。
【0013】
以下もまた、情動障害に付随するスペクトラムの一部でありうる。すなわち、自閉症、慢性疼痛、湾岸戦争症候群、間欠性爆発性障害、病的賭博、人格障害、放火狂、薬物乱用および薬物依存症(アルコール依存症を含む)、ならびに抜毛癖である。
【0014】
特に、ネフォパムは本発明に従って、ADD、ADHD、トゥレット障害、若年性行動障害(反抗挑戦性障害、行為障害または広汎性小児発達障害など)、不安障害および摂食障害(拒食症、無茶食い障害および過食症など)を治療する方法に使用される。患者は治療を必要とするいずれの人でもよく、例えば多動児でありうる。
【0015】
任意の適切な投与経路が使用され得る。例えば、経口、局所、眼内、直腸、膣内、吸入および鼻腔内送達経路のいずれかが適切でありうる。活性薬剤の用量は、症状の性質および程度、患者の年齢および状態、ならびに当業者に知られている他の要因に依存する。一般的な用量は少なくとも1 mg、例えば10〜100 mgであり、1日あたり1〜3回投与される。即効型経口製剤のための一般的な用量は、少なくとも1 mg、例えば10〜100 mgであり、1日あたり1〜3回投与される。放出調節製剤については、一般的な用量は少なくとも1 mg、例えば10〜400 mgであり、1日あたり1〜2回投与される。
【0016】
活性薬剤の放出制御が必要とされる場合、当業者にとって既知の任意の種類の適切な製剤が使用されうる。放出調節は、溶解制御または拡散制御されたモノリシックデバイス(monolithic device)、ビーズ状にカプセル化されたシステム、浸透圧制御システム、ならびに適切なポリマー性および非ポリマー性の親水性および疎水性物質を組み込む改質膜コーティングシステムによって提供され得る。適切な放出制御製剤は、アクリル系もしくはメタクリル系のポリマーまたは共重合体、アルキルビニルポリマー、セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、多糖類、アルギン酸塩、ペクチン、デンプンおよび誘導体、天然および合成ゴム、ポリカルボフィル、キトサンを含むがそれらに限定されない親水性物質を含む。適切な疎水性物質は、疎水性ポリマー、ワックス、脂肪、長鎖脂肪酸、それらの対応するエステル、それらの対応するエーテル、およびそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。
【0017】
ネフォパムを別の薬剤と併用して使用することはしばしば有利である。このような別の薬剤は、精神刺激薬(デキストロアンフェタミン、アンフェタミン、メチルフェニデート、ペモリンもしくはデキサメチルフェニデートなど)、中枢性アルファ作動薬(グアンファシン、トロニジン、タリペキソール、チアメニジン、リナミジン(linamidine)、クロニジンもしくはチザニジンなど)、またはモノアミン再取り込み阻害型抗うつ薬(アトモキセチン、イミプラミン、デシプラミン、レボキセチンもしくはブプロピオンなど)でありうる。
【0018】
以下の実施例は本発明を説明する。
【0019】
ネフォパムおよび(+)-ネフォパムを、抗不安/精神安定作用を検出するモデルであるガラス玉覆い隠し試験で評価した。これは情動障害のための一般的なモデルである。
【0020】
その方法は、Broekkampら(1986 Eur. J. Pharmacol., 126, 223-229)によって記載されたものに従う。新規の対象(ガラス玉)に曝されたマウスは、それらをおがくずの床敷きに埋める。抗不安薬は、非鎮静用量で埋めるガラス玉の数を減少させる。
【0021】
マウスを個別に、床上に5 cmのおがくずを入れ、25個のガラス玉を各ケージの中央に集めた透明プラスチックのケージ(33 x 21 x 18 cm)に入れる。各試験ケージを逆さにしたプラスチックカバーで覆う。10匹のマウスを15分間ケージに放置することによって、ガラス玉を含む各試験ケージを事前にマウス臭で充満させる。これらのマウスはその後、実験においてさらなる役割を果たさない。おがくずによって(2/3またはそれ以上)覆われたガラス玉の数を、30分間の試験後に数える。
【0022】
すべての化合物を試験の30分前にi.p.投与し、ベヒクル対照群と比較した。同一の実験条件下で投与されたクロバザム(8 mg/kg i.p.)は、参照物質として使用された。
【表1】

【0023】
これらの肯定的データは、ネフォパムと(+)-ネフォパムとの両方がADHDおよび関連する疾患における有用性を有しうることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情動障害の治療のための薬剤を製造するためのネフォパムの使用。
【請求項2】
前記障害が注意欠陥障害または注意欠陥多動性障害である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記障害がトゥレット障害、若年性行動障害、不安障害または摂食障害である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記薬剤がネフォパムの放出制御または遅延放出を提供する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
ネフォパムが(+)エナンチオマーであり、実質的に(-)-ネフォパムを含まない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2009−502898(P2009−502898A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523457(P2008−523457)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002828
【国際公開番号】WO2007/012870
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(507303376)ソーセイ アールアンドディ リミテッド (16)
【Fターム(参考)】