説明

ノイズフィルタ

【課題】プリント配線基板に各種電子部品を実装した後からでも装着が容易なノイズフィルタを提供すること。
【解決手段】ノイズフィルタ31は、誘電体シート3の上面に金属基部35を介してコイルバネ32を固定してなる。誘電体シート3は半田付け部3Aを介してプリント配線基板の導体パターン固定され、コイルバネ32の上端面は接地導体に圧接される。このため、ノイズフィルタ31は、コイルバネ32が圧縮状態となるようにしてプリント配線基板と接地導体の間に装着される。コイルバネ32は良好なインダクタンスを有するので、誘電体シート3と当該インダクタンスとが上記導体パターンと上記接地導体との間に直列に配設されることで、フィルタが形成され、ノイズを除去することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板の表面に形成された導体パターンに取り付けられ、その導体パターンを流れるノイズを除去するノイズフィルタに関し、詳しくは、上記プリント配線基板に各種電子部品を実装した後からでも装着が容易なノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント配線基板の表面に形成された導体パターンを流れるノイズを除去するため、その導体パターンとグランド等の定電位との間に、コイルとコンデンサとを直列に接続してなるノイズフィルタ、いわゆるLCフィルタを配設することが考えられている。また、この種のノイズフィルタでは、1つの素子にインダクタンスを得るための導体パターンとコンデンサを得るための導体パターンとを形成し、その素子から突出した端子を上記導体パターンとグランドとに接続することでLCフィルタを構成可能とすることも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−158025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1のようなノイズフィルタを使用するためには、ノイズ対策を施したい導体パターンの近傍にグランドが存在しなければならない。プリント配線基板の設計時から、ノイズ対策を施すべき導体パターンの近傍にグランドを設けておけばよいのであるが、プリント配線基板に各種電子部品等を実装した後から新たにノイズ対策を施すべき箇所が判明した場合などは、プリント配線基板の設計からやり直す必要が生じる。そこで、本発明は、プリント配線基板に各種電子部品を実装した後からでも装着が容易なノイズフィルタを提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達するためになされた本発明のノイズフィルタは、金属製のバネ材と、該バネ材の伸縮方向一端に、直接または導体を挟んで固定された誘電体層と、を備え、上記バネ材の他端または上記誘電体層の上記バネ材とは反対側の端面が、プリント配線基板の表面に形成された導体パターンに取付可能に構成されたことを特徴としている。
【0006】
このように構成された本発明のノイズフィルタは、金属製のバネ材の伸縮方向一端に直接または導体を挟んで誘電体層が固定されており、上記バネ材の他端または上記誘電体層の上記バネ材とは反対側の端面が、プリント配線基板の表面に形成された導体パターンに取り付けられる。一方、この種のプリント配線基板の表面には、接地導体,シールド板,筐体等の定電位となる導電板が間隔を開けて対向配置される場合が多い。そこで、本発明のノイズフィルタは、その導電板との間にバネ材が圧縮状態となるようにして装着される。すると、バネ材がインダクタンスを有していることから、上記導体パターンと上記導電板との間には、インダクタンスと誘電体とを直列に配設したフィルタが形成される。このため、本発明のノイズフィルタは、プリント配線基板に各種電子部品を実装した後からでも容易に装着することができ、プリント配線基板上の所望の導体パターンに対して容易にノイズ対策を施すことができる。
【0007】
なお、上記バネ材は、コイルバネであってもよく、その場合、次のような更なる作用・効果が生じる。すなわち、上記バネ材がコイルバネであると、巻き線数,径によってインダクタンスをコントロールすることができ、一層良好にノイズを除去することができる。
【0008】
そして、更にその場合、上記コイルバネの内側に、弾性変形していないときの当該コイルバネよりも短い磁性体の芯材が挿入されてもよい。この場合、コイルバネの内側に磁性体の芯材が挿入されたことにより、そのコイルバネのインダクタンスが一層向上する。このため、インダクタンスを一層良好にコントロールすることができ、より一層良好にノイズを除去することができる。また、上記芯材は、弾性変形していないときの当該コイルバネよりも短いので、そのコイルバネを上記のように圧縮状態となるようにして上記導電板との間に装着する際も、コイルバネの変形を阻害しない。
【0009】
また、前述のように上記バネ材がコイルバネである場合、上記誘電体層の上記バネ材とは反対側の端面が上記導体パターンに取付可能に構成されると共に、上記コイルバネの内側に設けられ、上記誘電体層と反対側の端面が自動実装機の吸着ノズルのための吸着面とされる吸着部を、更に備えてもよい。この場合、上記コイルバネの上記誘電体層とは反対側の端部からそのコイルバネの内側に上記吸着ノズルを挿入すれば、その吸着ノズルによって上記吸着部の吸着面を吸着して当該ノイズフィルタをキャリアテープ等から取り出すことができる。また、上記誘電体層の上記バネ材とは反対側の端面が上記導体パターンに取付可能に構成されているので、上記のように吸着ノズルによって吸着されたノイズフィルタは、そのまま誘電体層側を下にして上記導体パターンに実装することができる。従って、この場合、本発明のノイズフィルタの実装が一層容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例のノイズフィルタの構成を表す平面図(A)、正面図(B)、底面図(C)である。
【図2】そのノイズフィルタの使用状態を表す正面図である。
【図3】第2実施例のノイズフィルタの構成を表す正面図である。
【図4】第3実施例のノイズフィルタの構成を表す平面図(A)、正面図(B)である。
【図5】第4実施例のノイズフィルタの構成を表す正面図(C)、並びに、当該ノイズフィルタの芯材の構成を表す平面図(A)、正面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施例等により発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は下記の実施例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
【0012】
[第1実施例]
図1は第1実施例のノイズフィルタ1の構成を表す図で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。図1に示すように、このノイズフィルタ1は、バネ材2と、誘電体層の一例としての誘電体シート3とから構成されている。なお、後述のように、このノイズフィルタ1は、誘電体シート3をプリント配線基板91(図2参照)側(以下、下側という)に向けて使用される。
【0013】
誘電体シート3は、チタン酸バリウム,アルミナ,酸化亜鉛などの誘電体を矩形の薄板状に成形してなるものである。また、誘電体シート3の下面には、対向する一対の辺に沿って、半田付け用電極を塗布することにより半田付け部3Aが形成されている。
【0014】
バネ材2は、長尺の矩形に打ち抜かれたバネ性金属(例えばリン青銅,ベリリウム銅,SUS等)からなる1枚の薄板を折り曲げて形成されている。図1に示すように、バネ材2は、誘電体シート3の上面に固定される基部2Aを備えている。基部2Aの一端には、正面視アーチ状に湾曲した折り返し部2Bを介して、基部2Aの上方に傾斜して配設される傾斜部2Cの一端が連接されている。この傾斜部2Cの他端には、正面視アーチ状に湾曲した折り返し部2Dを介して、基部2Aと平行に配設される圧接部2Eの一端が連接され、更にその圧接部2Eの他端には正面視アーチ状に下方にカールした先端部2Fが連接されている。
【0015】
このため、圧接部2Eが何らかの物体によって下方に押圧されたとき、バネ材2は折り返し部2B,2Dを中心に弾性変形して、圧接部2Eが当該物体に圧接する状態になる。また、圧接部2Eの上面は誘電体シート3の下面と平行であり、当該上面は図示省略した自動実装機の吸着ノズルのための吸着面となる。
【0016】
図2は、ノイズフィルタ1の使用状態を表す正面図である。図2に示すように、ノイズフィルタ1は、エンボステープの窪み等に収納された状態から前述のように圧接部2Eの上面が自動実装機の吸着ノズルに吸着されることにより、プリント配線基板91の表面に形成された導体パターン(図示省略)上に載置され、半田付け部3Aを介してその導体パターンに固定される。続いて、圧接部2Eに接地導体92(シールド板や筐体等、他の導電板であってもよい)が圧接されると、ノイズフィルタ1は、その接地導体92とプリント配線基板91との間にバネ材2が圧縮状態となるようにして装着される。
【0017】
すると、バネ材2がインダクタンスを有していることから、上記導体パターンと接地導体92との間には、インダクタンス(バネ材2)と誘電体(誘電体シート3)とを直列に配設したフィルタが形成される。このため、ノイズフィルタ1は、プリント配線基板91に各種電子部品を実装した後からでも容易に装着することができ、プリント配線基板91上の所望の導体パターンに対して容易にノイズ対策を施すことができる。
【0018】
なお、誘電体シート3をチタン酸バリウムを主成分とする誘電体で構成した場合は、誘電体シート3は主にコンデンサとして作用し、通常のLCフィルタを上記導体パターンに接続した場合と同様にノイズを除去する効果が得られる。また、誘電体シート3を酸化亜鉛を主成分とする誘電体で構成した場合は、誘電体シート3は主にバリスタとして作用し、バリスタとインダクタンスとを直列接続したタイプのフィルタを上記導体パターンに接続した場合と同様にノイズを除去する効果が得られる。
【0019】
[第2実施例]
図3は、第2実施例のノイズフィルタ21の構成を表す正面図である。このノイズフィルタ21は、バネ材2の基部2Aの下面に誘電体シート3を固定する代わりに、圧接部2Eの上面に誘電体シート23を固定している。この場合、基部2Aの下面が上記導体パターン等にリフロー半田付け等によって固定され、誘電体シート23の上面が上記吸着ノズルの吸着面とされると共に接地導体92を圧接される。このように構成されたノイズフィルタ21でも、ノイズフィルタ1とほぼ同様の作用・効果が生じる。なお、ノイズフィルタ21では、誘電体シート23に半田付け部を形成する必要がない。
【0020】
[第3実施例]
図4は第3実施例のノイズフィルタ31の構成を表す図で、(A)は平面図、(B)は正面図である。このノイズフィルタ31では、第1実施例と同様の誘電体シート3の上面に、導体の一例としての金属基部35を介してバネ材の一例としてのコイルバネ32を固定している。金属基部35は、黄銅、リン青銅、ベリリウム銅、ステンレス等の板金製である。コイルバネ32は、ピアノ線、ベリリウム銅、ステンレス等の線材で形成されている。なお、両者とも、すずめっき等が施されることがある。
【0021】
金属基部35は、誘電体シート3の上面に固定される矩形薄板状の基板部35Aを備え、その基板部35Aの中心部には吸着部の一例としての突起35Bが立設されている。突起35Bは円筒状で、その上端面35Cは基板部35Aの表面と平行である。この上端面35Cは、上記吸着ノズルのための吸着面となっている。
【0022】
コイルバネ32は、内径がほぼ一定しており、下端部から2〜3巻きの範囲が突起35Bの全体に亘って嵌着させられている。コイルバネ32の上端面は、前述の接地導体92等に圧接される。このため、ノイズフィルタ31は、コイルバネ32が圧縮状態となるようにしてプリント配線基板91と接地導体92との間に装着される。
【0023】
このように構成された本実施例のノイズフィルタ31では、バネ材をコイルバネ32によって構成しているので、一層良好なインダクタンスを有する。このため、本実施例では、第1実施例と同様の効果に加えて、コイルバネ32の巻き線数,径によってインダクタンスをコントロールすることができ、一層良好に上記ノイズを除去することができるといった効果が生じる。また、コイルバネ32の内側に吸着ノズルのための吸着面(突起35Bの上端面35C)が配設されるので、ノイズフィルタ31はエンボステープの窪み等から一層安定して取り出すことができる。そして、このように吸着ノズルによって吸着されたノイズフィルタ31は、そのまま誘電体シート3を下にして上記導体パターン上に容易に実装することができる。
【0024】
[第4実施例]
図5(C)は、第4実施例のノイズフィルタ41の構成を表す正面図である、このノイズフィルタ41は、突起35Bの上端面35Cに、次のような芯材45を固定した点においてノイズフィルタ31と異なり、他はノイズフィルタ31と同様に構成されている。図5(A)の平面図、及び、図5(B)の正面図に示すように、芯材45は、コイルバネ32の内径よりも径が小さく、かつコイルバネ32よりも短い円柱状に、フェライト等の磁性体によって成形されている。芯材45の一端を突起35Bの上端面35C固定した状態では、弾性変形していないコイルバネ32の上端よりも芯材45の上端の方が低く配設される。このため、コイルバネ32を上記のように圧縮状態となるようにしてプリント配線基板91と接地導体92との間に装着する際も、コイルバネ32の変形が阻害されない。
【0025】
なお、ノイズフィルタ41では、芯材45の上端面が上記吸着ノズルのための吸着面となる。このように構成された本実施例のノイズフィルタ41では、コイルバネ32に磁性体からなる芯材45を挿入したことにより、コイルバネ32のインダクタンスが一層向上する。このため、一層良好にインダクタンスをコントロールすることができ、一層良好に上記ノイズを除去することができる。
【0026】
[他の実施例]
更に、本発明は上記各実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、第3,第4実施例でも、第2実施例と同様に、コイルバネ32の上端面に誘電体シートを固定してもよい。この場合、基板部35Aの下面が上記導体パターンに半田付けされる。また、前述のバネ材2やコイルバネ32の表面には磁性材を塗布,メッキ,蒸着,スパッタ等の手法によって付着させてもよく、その場合、インダクタンスを更に向上させて一層良好に上記ノイズを除去することができる。更に、誘電体シート3は端子を突出されてその端子を介して上記導体パターンに取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1,21,31,41…ノイズフィルタ 2…バネ材
3,23…誘電体シート 3A…半田付け部
32…コイルバネ 35…金属基部
35A…基板部 35B…突起
35C…上端面 45…芯材
91…プリント配線基板 92…接地導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のバネ材と、
該バネ材の伸縮方向一端に、直接または導体を挟んで固定された誘電体層と、
を備え、
上記バネ材の他端または上記誘電体層の上記バネ材とは反対側の端面が、プリント配線基板の表面に形成された導体パターンに取付可能に構成されたことを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項2】
上記バネ材は、コイルバネであることを特徴とする請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項3】
上記コイルバネの内側に、弾性変形していないときの当該コイルバネよりも短い磁性体の芯材が挿入されたことを請求項2記載のノイズフィルタ。
【請求項4】
上記誘電体層の上記バネ材とは反対側の端面が上記導体パターンに取付可能に構成されると共に、
上記コイルバネの内側に設けられ、上記誘電体層と反対側の端面が自動実装機の吸着ノズルのための吸着面とされる吸着部を、
更に備えたことを特徴とする請求項2または3記載のノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−100886(P2011−100886A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255165(P2009−255165)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】