説明

ノズルタッチ力の調整方法と調整装置

【課題】所定のノズルタッチ力で金型を押圧した際に、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化しても、基台へ支持される支持部材に掛かる曲げ応力値の安全性を確保しつつ、支持部材の曲げ歪や、繰返し使用による疲労破壊を防止するノズルタッチ力の調整方法と調整装置を提供することを目的する。
【解決手段】 基準位置で金型14,15を基準ノズルタッチ力Fで押圧した時に、基台上面位置で基台2へ支持される軸部材36に掛かる基準曲げ応力値σと、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化した全ての高さ位置において基台上面位置で軸部材36に掛かる曲げ応力値σが、常に一定になるようにノズルタッチ力Fを調整することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型型締装置と横置射出装置を備えた射出成形機に関し、特に横置射出装置を昇降できる装置を具備した射出成形機のノズルタッチ力調整方法と調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型型締装置あるいはインサート成形用ロータリ式縦型型締装置においては、成形品の種類に応じてサイズの違ったまた高さ方向でスプル位置やパーティング面の違った金型を載置して製品を成形している。
【0003】
このような成形に際し、射出装置のノズルから溶融樹脂を高さ方向でスプル位置やパーティング面の違った金型のキャビティへ射出充填するためには、射出装置に装着されたノズルを金型のスプル位置やパーティング面位置まで移動して、ノズルタッチ部位からの樹脂洩れを防止しつつ十分な射出圧力で充填可能に所定のノズルタッチ力で金型を押圧する必要がある。
【0004】
このような異なる高さ位置特に既定位置よりも上方でのノズルタッチ力による金型への押圧力は、ともすると縦型型締装置の基台へ立設する複数のタイロッドと射出装置の基台への支持部材に過度の曲げモーメントを誘発して、縦型型締装置の基台および射出装置の基台に歪が発生したり、縦型型締装置の複数のタイロッドと射出装置の支持部材に長期繰返し成形による疲労破壊が起こったり、縦型型締装置の湾曲に伴う金型のパーティング面の射出方向側からの開きによる成形品へのバリ等の成形不良が発生したりする。更に、ノズルタッチ力が強すぎると縦型型締装置に横からの力が働き、縦型型締装置の複数のタイロッドが撓み、ついには倒壊することになる。また、金型の疲労も早くなる。
【0005】
このような問題を回避すべく、ノズルタッチ力の調整装置としての旧来の技術としては、特許文献1、2、3、4に開示されている。特許文献1では、金型ユニット(6)のスプルブッシュ(11)を中心として、固定盤(3)のベース(2)側と対向する側にほぼ等距離に、係止部(16)を有するブラッケット(17)が射出装置側に張り出して取付けられている。この係止部(16)で、射出装置(4)の駆動機構部(20)の上部に取付けられたノズルタッチ装置(5)が連結されて、ノズルタッチ時の曲げモーメントを軽減し、固定盤(3)の倒壊を防止するノズルタッチ装置(6)が開示されている。しかし、この装置(6)は同一高さでのノズルタッチ力による固定盤(3)への曲げモーメントの軽減を目的に開発されたもので、高さ方向でスプル位置やパーティング面の違った金型を載置して成形する縦型型締装置と高さ位置を調節する昇降装置を具備する射出装置を要する射出成形機での適用には無理があり、本発明の解決手段とはならない。また、この装置は構造も複雑で製造コストも掛かる。
【0006】
特許文献2では、ノズルタッチ力の油圧回路が、移動シリンダ(5)、油圧ポンプ(6)、電磁切換弁(7)、第1のリリーフ弁(8)で構成され、第1のリリーフ弁(8)の設定圧力で金型ゲートへノズルタッチする従来の油圧回路に、移動シリンダ(5)の前進用油室(5a)側と電磁切換弁(7)と間に、前進用油室(5a)側から順に圧力スイッチ(11)、第2のリリーフ弁(12)、パイロットチェック弁(13)を配設し、第1のリリーフ弁(8)の設定圧力による従来のノズルタッチ力から第2のリリーフ弁(12)の設定圧力でノズルタッチ力に変化させるノズルタッチ力調整回路が開示されている。
【0007】
特許文献3では、特許文献2の実施例図1の油圧回路から圧力スイッチとパイロットチェック弁を取除き、更に、第2のリリーフ弁を、電磁切換弁(12)と減圧弁(11)で構成される圧力設定部を2個以上で置換えてあるいは1個の電磁式圧力制御弁で置換えて、充填工程の完了信号により切換る保圧工程で切換るノズルタッチ力調整方法が開示されている。
【0008】
特許文献4では、溶融樹脂を金型(22)内に射出した際に、可動部の慣性力の影響で射出加速時にはノズルタッチ面を押圧するノズルタッチ力が低下し、射出減速時にはノズルタッチ力が増大するため、この可動部の慣性力の影響によるノズルタッチ力の変化を射出加速度から求め、この加速度に対応させてノズルタッチ力発生装置の出力を増減して、ノズルタッチ力を既定値の一定値に保持するように制御する手段が開示されている。この解決手段としては、射出加速度を求め、この加速度に対応させて、[1]サーボモータ(3)をトルク制御して、[2]油圧シリンダ(61)の圧力を比例電磁リリーフ弁(65)で圧力制御して、[3]可動部の質量m、射出加速度a、ノズルタッチ力fn、スプリング(6)のバネ定数k、初期スプリングの伸縮量x、スプリング伸縮増加量(補正量)dx、からm×a+fn−k×(x+dx)=0が成立つので、dx=m×a/kになるように制御するとfn=k×xとなりノズルタッチ力を一定にできるので、dx=m×a/kになるようにサーボモータ(3)のトルクや油圧シリンダ(61)の油圧力を制御して、ノズルタッチ力発生装置の出力を増減させてノズルタッチ力を既定値の一定値に保持することで、成し遂げられている。
【0009】
これらの特許文献2,3,4においては、成形品の成形条件や射出加速度に合わせて射出時のノズルタッチ力を任意に調整可能な手段が提供されているが、ノズルタッチ力による型締装置と射出装置の基台への取付部材に掛かる過渡の曲げモーメントや取付部材固有の構造上に起因する過渡の曲げ応力による型締装置と射出装置の倒壊や、型締装置と射出装置の基台への取付部材の疲労破壊や、成形不良、金型の耐久性等の問題に対して何ら解決手段を有してはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−11162号公報(請求項1、図1)
【特許文献2】特開平11−320611号公報(請求項1、図1)
【特許文献3】特許番号第2588722号公報(請求項1、図1)
【特許文献4】特開2005−81721号公報(請求項1、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、縦型型締装置にスプル位置やパーティング面の違った金型を搭載して、樹脂漏れを防止しつつ十分な射出圧力で充填可能に所定のノズルタッチ力で金型を押圧した際に、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化しても、縦型型締装置の複数のタイロッドと射出装置の基台へ支持される支持部材に掛かる曲げ応力値の安全性を確保しつつ、タイロッドと支持部材の曲げ歪や、射出成形機の繰返し使用による疲労破壊を防止するノズルタッチ力の調整方法と調整装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明の請求項1に記載のノズルタッチ力の調整方法は、上金型と下金型とが近接離間する縦型型締装置と、上金型と下金型とで形成されるキャビティに溶融樹脂を射出充填する横置射出装置と、ノズルタッチ力を検出するノズルタッチ力検出手段を有し、スライドベース上に載置された前記射出装置を前後に移動可能で、かつ前記金型のノズルタッチ当接面にタッチさせて樹脂洩れを防止するためのノズルタッチ力を発生する駆動手段を有するノズルタッチ力発生装置と、前記スライドベース前部左右に配設されたネジ部に螺合し、前記スライドベース前部左右の高さを調節可能に基台上に配置される2本の調節ボルトと、前記スライドベース後部中央部に形成された凸部へ上下左右に回動可能に固設された揺動部材に頂部の凸部が嵌挿され、かつ上下動可能かつ回転不能に基台に配設される外周部に前記調節ボルトのネジピッチと同一のネジが施された軸部材で構成される3点で前記基台に支持され、前記基台から水平を維持したまま前記横置射出装置を載置した前記スライドベースを昇降する昇降装置とを具備した射出成形機のノズルタッチ力の調整方法において、前記昇降装置の基準位置で前記上下金型のノズルタッチ当接面を既定値のノズルタッチ力(基準ノズルタッチ力)で押圧した際の、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる曲げ応力値(基準曲げ応力値)と、前記昇降装置の昇降と共に前記基準位置からノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、変化したすべての高さ位置において前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる曲げ応力値(任意高さ位置での曲げ応力値)が、常に一定になるように、ノズルタッチ力を調整することを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、軸部材の曲げ強度を損なうことなく任意の高さでのノズルタッチ力を、高さ方向の変化と共に、強くする、一定にする、弱くするように制御することができるノズルタッチ力の調整方法を提供することができる。
【0014】
本発明の請求項2に記載のノズルタッチ力の調整方法は、高さ方向に変化した際の前記ノズルタッチ力が、高さの関数(高さ関数)と、高さの変化に応じて前記軸部材の断面係数が変化する断面係数変化関数と、前記基準ノズルタッチ力との積で構成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項3に記載のノズルタッチ力の調整方法は、前記高さ関数が、前記基台上面から、前記昇降装置の前記基準位置に配設された前記軸部材の頂部凸部の鉛直方向長さの中心線上に位置し、前記上下金型のノズルタッチ当接面を押圧する前記基準ノズルタッチ力の反力が作用する作用線上までの距離と、前記基台上面から前記昇降装置が昇降してノズルタッチ位置が変化し、ノズルタッチして前記金型を押圧した時の任意高さでの前記ノズルタッチ力の反力が作用する前記軸部材頂部凸部の作用線上までの距離の逆数との積で構成されることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項4に記載のノズルタッチ力の調整方法は、前記軸部材の前記断面係数変化関数が、前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、前記軸部材の内部に第一の空洞部を設けて、前記第一の空洞部の縦断面形状を高さ方向の変化に応じて変化するような数学関数によって形成して、構成されることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項5に記載のノズルタッチ力の調整方法は、前記数学関数が、ステップ関数、放物曲線関数、楕円関数、双曲線関数、アステロイド関数、ウイッチ関数、ストロフォイド関数、シッソイド関数、Descartes正葉線関数、Cassini橙形関数、指数関数、対数曲線関数、三角関数、トラクトリック関数、トロコイド曲線関数、サイクロイド曲線関数、エピ・サイクロイド曲線関数、ハイポ・サイクロイド曲線関数、極座標曲線関数、正葉線関数、コンコイド曲線関数、セロイド曲線関数、Booth紐状線関数、及びこれらの関数の組み合わせによる複合的な曲線関数で構成されることを特徴とする。
【0018】
このように構成することで、高さ関数と断面係数変化関数を、高さ方向の変化量のみで現すことができるノズルタッチ力の調整方法を提供することができる。
【0019】
特に、軸部材に設けた空洞部の縦断面形状を高さ方向の変化に応じて変化するような種々の数学関数を用いて形成したことから、高さ方向の変化量に応じて変化する種々の断面係数が創出できるので、断面係数変化関数も、種々の関数形態が創出でき、種々のノズルタッチ力の調整方法を提供することができる。
【0020】
本発明の請求項6に記載のノズルタッチ力の調整方法は、前記軸部材の前記断面係数変化関数が、前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、前記軸部材の内部に第二の空洞部を設けて、ノズル高さ位置が変化した全ての高さ位置での前記ノズルタッチ力が、前記基準ノズルタッチ力と同じノズルタッチ力で前記金型のノズルタッチ当接面を押圧可能に、前記第二の空洞部の縦断面形状を高さ方向の変化に応じて変化するように形成して、構成されることを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、高さ方向へ変化した全てのノズルタッチ位置で、軸部材にかかる曲げ応力値を一定に保ちながらノズルタッチ力を一定にすることが可能で、ノズルタッチ力の制御も簡単なノズルタッチ力の調整方法を提供することができる。
【0022】
本発明の請求項7に記載のノズルタッチ力の調整方法は、前記第一あるいは前記第二の空洞部を有する前記軸部材が、前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、前記軸部材の高さ方向の変化に際して、同一横断面形状で形成される第三の空洞部と、第三の空洞の下部に位置し第三の空洞部の径より大きな径を有する同一横断面形状で形成される第四の空洞部とで構成される定常横断面形状部材と、前記第四の空洞部の内周部に外周部が接し、前記第一あるいは前記第二の空洞部の前記縦断面形状を有する縦断面形状変化部材とで分離構成されて、前記縦断面形状変化部材を前記定常横断面形状部材の下部から前記第四の空洞部に挿入して、前記定常横断面形状部材とプレートで前記縦断面形状変化部材を挟着して一体に形成されることを特徴とする。
【0023】
このように構成することで、縦断面形状変化部材を使用条件に応じて交換することによって、軸部材の基台上面に掛かる曲げ負荷を一定になるように、同一高さでノズルタッチ力を基準ノズルタッチ力より、より強く、同じ力で、より弱くタッチすることができるノズルタッチ力の調整方法を提供することができる。
【0024】
本発明の請求項8に記載のノズルタッチ力の調整方法は、前記駆動手段が、加熱筒を固設したハウジング下部に回動不能に取付けられたナットと、一端が前記ナットに螺合し、他端が、前記スライドベース下面に固設された第一のプレートと第二のプレートでベアリングと前記ノズルタッチ力検出手段であるロードセルを挟着保持したベアリングボックスを回転自由に挿通し、且つ前記ナットと対向する側に第一のプーリを固設した、前記基台上部に位置し前記基台水平面に軸線が平行に配設するボールスクリュと、前記基台下部に固着され回動軸部に第二のプーリを固設したサーボモータと、前記第一と第二のプーリに張設されたタイミングベルトとで構成され、前記ロードセルの信号から制御装置の記憶部に記憶されたデータに基づいて得られたノズルタッチ力を、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる前記任意高さ位置での曲げ応力値が、前記基準曲げ応力値と常に一定になるように決定された前記ノズルタッチ力と一致するように、前記サーボモータをトルク制御して制御することを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項9に記載のノズルタッチ力の調整方法は、前記駆動手段が、油圧ポンプ、第一の電磁リリーフ弁、第一の電磁切換弁、比例電磁リリーフ弁、前記圧力検出手段である圧力検出器、油圧シリンダから構成される油圧駆動装置であって、前記油圧ポンプと前記第一の電磁リリーフ弁と前記第一の電磁切換弁で形成される油圧回路と、前記ノズルタッチ力を発生する前記油圧シリンダの油室側との間に、下流側に前記圧力検出器を上流側に前記比例電磁リリーフ弁を配設して、前記圧力検出器の信号から前記制御装置の記憶部に記憶されたデータに基づいて得られた油圧で押圧するノズルタッチ力を、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる前記任意高さ位置での曲げ応力値が、前記基準曲げ応力値と常に一定になるように決定された前記ノズルタッチ力と一致するように、前記比例電磁リリーフ弁を制御することで前記油圧シリンダの油圧力を制御して制御することを特徴とする。
【0026】
このように構成することで、ロードセルから得られた信号、あるいは圧力検出器から得られた信号を基に制御装置の制御部で得られたノズルタッチ力を、高さ関数と断面係数変化関数と基準ノズルタッチ力との積から制御装置の演算部で計算して得られたノズルタッチ力と比較し、計算して得られたノズルタッチ力に一致するように、サーボモータをトルク制御して、あるいは油圧シリンダに作用する油圧力を制御して、ノズルタッチ力を制御することができるノズルタッチ力の調整方法を提供することができる。
【0027】
本発明の請求項10に記載のノズルタッチ力の調整方法は、前記油圧駆動装置の前記第一の電磁切換弁と前記油圧シリンダの管路間の、前記圧力検出器と前記比例電磁リリーフ弁を取除き、前記第一の電磁切換弁と前記第一の電磁リリーフ弁との間に、前記第一の電磁リリーフ弁の設定圧力より低圧に維持される第二の電磁リリーフ弁と前記第二の電磁リリーフ弁の下流側に配設される第一の逆止弁とで構成される第一の回路と、第二の電磁リリーフ弁の設定圧力より低圧に維持される第三の電磁リリーフ弁と前記第三の電磁リリーフ弁の下流側に配設される第二の逆止弁とで構成される第二の回路を並列に設けて、更にその上流側に第二の電磁切換弁を配設して、前記第二の電磁切換弁の切換操作により前記第一の回路と前記第二の回路を切換えて、前記油圧シリンダに発生する油圧力を切換えるノズルタッチ力発生装置を用い、前記昇降装置の最下降位置から昇降範囲の中間地点に位置する第一の高さまでの間は、前記第一の回路の油圧力で、前記第一の高さを超えて前記昇降装置の最高位置である第二の高さまでの間は、前記第二の回路の油圧力でノズルタッチすることを特徴とする。
【0028】
このように構成することで、油圧力を制御することなしに、電磁切換弁の切換のみでノズルタッチ力を変えることができるので、複雑な制御装置を用いることなく簡易な手段でノズルタッチ力を調節できるノズルタッチ力の調整方法を提供することができる。
【0029】
上記課題を解決するための本発明の請求項11に記載のノズルタッチ力の調整装置は、上金型と下金型とが近接離間する縦型型締装置と、上金型と下金型とで形成されるキャビティに溶融樹脂を射出充填する横置射出装置と、ノズルタッチ力を検出するノズルタッチ力検出手段を有し、スライドベース上に載置された前記射出装置を前後に移動可能で、かつ前記金型のノズルタッチ当接面にタッチさせて樹脂洩れを防止するためのノズルタッチ力を発生する駆動手段を有するノズルタッチ力発生装置と、前記スライドベース前部左右に配設されたネジ部に螺合し、前記スライドベース前部左右の高さを調節可能に基台上に配置される2本の調節ボルトと、前記スライドベース後部中央部に形成された凸部へ上下左右に回動可能に固設された揺動部材に頂部の凸部が嵌挿され、かつ上下動可能かつ回転不能に基台に配設される外周部に前記調節ボルトのネジピッチと同一のネジが施された軸部材で構成される3点で前記基台に支持され、前記基台から水平を維持したまま前記横置射出装置を載置した前記スライドベースを昇降する昇降装置とを具備した射出成形機のノズルタッチ力の調整装置において、前記昇降装置の基準位置で前記上下金型のノズルタッチ当接面を既定値のノズルタッチ力(基準ノズルタッチ力)で押圧した際の、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる曲げ応力値(基準曲げ応力値)と、前記昇降装置の昇降と共に前記基準位置からノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、変化したすべての高さ位置において前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる曲げ応力値(任意高さ位置での曲げ応力値)が、常に一定になるように、ノズルタッチ力を調整することを特徴とする。
【0030】
このように構成することで、同一の射出装置で使用条件や射出条件の異なる種々の金型やスプル位置やパーティング面位置の異なる種々の金型に対応した射出成形が可能なノズルタッチ力の調整装置を提供することができる。
【0031】
本発明の請求項12に記載のノズルタッチ力の調整装置は、高さ方向に変化した際の前記ノズルタッチ力が、高さの関数(高さ関数)と、高さの変化に応じて前記軸部材の断面係数が変化する断面係数変化関数と、前記基準ノズルタッチ力との積で構成されることを特徴とする。
【0032】
本発明の請求項13に記載のノズルタッチ力の調整装置は、前記高さ関数が、前記基台上面から、前記昇降装置の前記基準位置に配設された前記軸部材の頂部凸部の鉛直方向長さの中心線上に位置し、前記上下金型のノズルタッチ当接面を押圧する前記基準ノズルタッチ力の反力が作用する作用線上までの距離と、前記基台上面から前記昇降装置が昇降してノズルタッチ位置が変化し、ノズルタッチして前記金型を押圧した時の任意高さでの前記ノズルタッチ力の反力が作用する前記軸部材頂部凸部の作用線上までの距離の逆数との積で構成されることを特徴とする。
【0033】
本発明の請求項14に記載のノズルタッチ力の調整装置は、前記軸部材の前記断面係数変化関数が、前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、前記軸部材の内部に第一の空洞部を設けて、前記第一の空洞部の縦断面形状を高さ方向の変化に応じて変化するような数学関数によって形成して、構成されることを特徴とする。
【0034】
本発明の請求項15に記載のノズルタッチ力の調整装置は、前記数学関数が、ステップ関数、放物曲線関数、楕円関数、双曲線関数、アステロイド関数、ウイッチ関数、ストロフォイド関数、シッソイド関数、Descartes正葉線関数、Cassini橙形関数、指数関数、対数曲線関数、三角関数、トラクトリック関数、トロコイド曲線関数、サイクロイド曲線関数、エピ・サイクロイド曲線関数、ハイポ・サイクロイド曲線関数、極座標曲線関数、正葉線関数、コンコイド曲線関数、セロイド曲線関数、Booth紐状線関数、及びこれらの関数の組み合わせによる複合的な曲線関数で構成されることを特徴とする。
【0035】
このように構成することで、高さ関数と断面係数変化関数を、高さ方向の変化量のみで現すことができる。
【0036】
従って、高さ方向に変化した際に、変化した全ての高さ位置で軸部材に掛かる基準曲げ応力値を常に一定になるように、種々のノズルタッチ力を発生することができるノズルタッチ力の調整装置を提供することができる。
【0037】
本発明の請求項16に記載のノズルタッチ力の調整装置は、前記軸部材の前記断面係数変化関数が、前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、前記軸部材の内部に第二の空洞部を設けて、ノズル高さ位置が変化した全ての高さ位置での前記ノズルタッチ力が、前記基準ノズルタッチ力と同じノズルタッチ力で前記金型のノズルタッチ当接面を押圧可能に、前記第二の空洞部の縦断面形状を高さ方向の変化に応じて変化するように形成して、構成されることを特徴とする。
【0038】
このように構成することで、高さ方向へ変化した全てのノズルタッチ位置で、軸部材にかかる曲げ応力値を一定に保ちながらノズルタッチ力を一定にすることができるので、制御装置を簡素化できるだけでなく射出成形機の構造上の負荷も軽減できる、ノズルタッチ力の調整装置を提供することができる。
【0039】
本発明の請求項17に記載のノズルタッチ力の調整装置は、前記第一あるいは前記第二の空洞部を有する前記軸部材が、前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、前記軸部材の高さ方向の変化に際して、同一横断面形状で形成される第三の空洞部と、第三の空洞の下部に位置し第三の空洞部の径より大きな径を有する同一横断面形状で形成される第四の空洞部とで構成される定常横断面形状部材と、前記第四の空洞部の内周部に外周部が接し、前記第一あるいは前記第二の空洞部の前記縦断面形状を有する縦断面形状変化部材とで分離構成されて、前記縦断面形状変化部材を前記定常横断面形状部材の下部から前記第四の空洞部に挿入して、前記定常横断面形状部材とプレートで前記縦断面形状変化部材を挟着して一体に形成されることを特徴とする。
【0040】
このように構成することで、異なる金型や異なる成形条件に応じて射出装置を外して軸部材を交換することは、作業者にとって不安全で煩雑な作業となるが、この交換手段を用いることで、作業者は安全で簡単かつ短時間な作業で軸部材を交換可能となるノズルタッチ力の調整装置を提供することができる。
【0041】
本発明の請求項18に記載のノズルタッチ力の調整装置は、前記駆動手段が、加熱筒を固設したハウジング下部に回動不能に取付けられたナットと、一端が前記ナットに螺合し、他端が、前記スライドベース下面に固設された第一のプレートと第二のプレートでベアリングと前記ノズルタッチ力検出手段であるロードセルを挟着保持したベアリングボックスを回転自由に挿通し、且つ前記ナットと対向する側に第一のプーリを固設した、前記基台上部に位置し前記基台水平面に軸線が平行に配設するボールスクリュと、前記基台下部に固着され回動軸部に第二のプーリを固設したサーボモータと、前記第一と第二のプーリに張設されたタイミングベルトとで構成され、前記ロードセルの信号から制御装置の記憶部に記憶されたデータに基づいて得られたノズルタッチ力を、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる前記任意高さ位置での曲げ応力値が、前記基準曲げ応力値と常に一定になるように決定された前記ノズルタッチ力と一致するように、前記サーボモータをトルク制御して制御することを特徴とする。
【0042】
本発明の請求項19に記載のノズルタッチ力の調整装置は、前記駆動手段が、油圧ポンプ、第一の電磁リリーフ弁、第一の電磁切換弁、比例電磁リリーフ弁、前記圧力検出手段である圧力検出器、油圧シリンダから構成される油圧駆動装置であって、前記油圧ポンプと前記第一の電磁リリーフ弁と前記第一の電磁切換弁で形成される油圧回路と、前記ノズルタッチ力を発生する前記油圧シリンダの油室側との間に、下流側に前記圧力検出器を上流側に前記比例電磁リリーフ弁を配設して、前記圧力検出器の信号から前記制御装置の記憶部に記憶されたデータに基づいて得られた油圧で押圧するノズルタッチ力を、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる前記任意高さ位置での曲げ応力値が、前記基準曲げ応力値と常に一定になるように決定された前記ノズルタッチ力と一致するように、前記比例電磁リリーフ弁を制御することで前記油圧シリンダの油圧力を制御して制御することを特徴とする。
【0043】
このように構成することで、ロードセルから得られた信号、あるいは圧力検出器から得られた信号を基に制御装置の制御部で得られたノズルタッチ力を、高さ関数と断面係数変化関数と基準ノズルタッチ力との積から制御装置の演算部で計算して得られたノズルタッチ力と比較し、計算して得られたノズルタッチ力に一致するように、サーボモータをトルク制御して、あるいは油圧シリンダに作用する油圧力を制御して、ノズルタッチ力を制御することができるノズルタッチ力の調整装置を提供することができる。
【0044】
本発明の請求項20に記載のノズルタッチ力の調整装置は、前記油圧駆動装置の前記第一の電磁切換弁と前記油圧シリンダの管路間の、前記圧力検出器と前記比例電磁リリーフ弁を取除き、前記第一の電磁切換弁と前記第一の電磁リリーフ弁との間に、前記第一の電磁リリーフ弁の設定圧力より低圧に維持される第二の電磁リリーフ弁と前記第二の電磁リリーフ弁の下流側に配設される第一の逆止弁とで構成される第一の回路と、第二の電磁リリーフ弁の設定圧力より低圧に維持される第三の電磁リリーフ弁と前記第三の電磁リリーフ弁の下流側に配設される第二の逆止弁とで構成される第二の回路を並列に設けて、更にその上流側に第二の電磁切換弁を配設して、前記第二の電磁切換弁の切換操作により前記第一の回路と前記第二の回路を切換えて、前記油圧シリンダに発生する油圧力を切換えるノズルタッチ力発生装置を用い、前記昇降装置の最下降位置から昇降範囲の中間地点に位置する第一の高さまでの間は、前記第一の回路の油圧力で、前記第一の高さを超えて前記昇降装置の最高位置である第二の高さまでの間は、前記第二の回路の油圧力でノズルタッチすることを特徴とする。
【0045】
このように構成することで、油圧力を制御することなしに、電磁切換弁の切換のみでノズルタッチ力を変えることができるので、複雑な制御装置を用いることなく簡易な手段でノズルタッチ力を調節できるノズルタッチ力の調整装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、昇降装置の基準位置で金型のノズルタッチ当接面を既定値の基準ノズルタッチ力で押圧した際の基台上面位置での軸部材に掛かる曲げ応力値(基準曲げ応力値)と、昇降装置の昇降と共に基準位置からノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、変化したすべての高さ位置において、金型のノズルタッチ当接面を押圧するノズルタッチ力による基台上面位置での軸部材に掛かる曲げ応力値(任意高さでの曲げ応力値)が、常に一定になるように、ノズルタッチ力を調整することにある。これを実現するために、基台から昇降装置の基準位置でのノズルタッチ力の反力が作用する作用線上までの距離と、基台から昇降装置の昇降と共に基準位置からノズルタッチ位置が高さ方向に変化した位置でのノズルタッチ力の反力が作用する作用線上までの距離即ち高さ方向の変化に応じて変化する距離の逆数の積で示される高さ関数と、軸部材内部に空洞部を設け、更にこの空洞部の縦断面形状を数学関数で表現して、軸部材の断面係数を高さ方向の変化に応じて変化するように構成した軸部材の断面係数変化関数と、基準ノズルタッチ力との積から、ノズルタッチ力を調整可能とした。その結果、射出装置を支持する軸部材に掛かる曲げ負荷を常に一定に保つことができるので、この軸部材に掛かる曲げ負荷の安全性を確保しつつ、軸部材の曲げ歪の発生や、射出成形機の繰返し使用による疲労破壊の防止を図ることができる。
【0047】
更に、軸部材空洞部の縦断面形状の選定によって、軸部材の曲げ強度を損なうことなく任意の高さでのノズルタッチ力を、大きく、一定に、小さくすることができるので、同一の射出装置で使用条件や射出条件の異なる種々の金型やスプル位置やパーティング面位置の異なる種々の金型に対応した射出成形が可能となる。
【0048】
また、数学関数で表現された縦断面形状で一体に形成された軸部材を、別の数学関数で表現された縦断面形状で一体に形成された軸部材に交換しようとすると、射出装置を基台から外す必要があり、大掛りな交換工事となるので、軸部材を真直ぐな空洞を有する部材と、数学関数で表現した縦断面形状を有する部材とで分離構成することにより、数学関数で表現した縦断面形状を有する部材のみを、基台下部から挿入して交換するようにしたことで、安全で簡易な手段で交換作業のできる、また簡単で安価に製作のできるノズルタッチ力調整装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態で使用するロータリ式縦型型締装置と電動式昇降装置を具備した電動式横置射出装置とで構成された射出成形機の全体概要図である。
【図2】本実施形態の図1に示した電動式横置射出装置の電動式ノズルタッチ力発生装置と電動式昇降装置の一部断面図を有する側面図である。
【図3】本実施形態の電動式昇降装置の配置を示す図2E−E矢視図である。
【図4】本実施形態で別態様の図2に示した電動式横置射出装置の油圧式ノズルタッチ力発生装置図である。
【図5】本実施形態の計算モデル図である。
【図6】本実施形態の第一,第二、第三,第四実施例の軸部材4種類の縦断面図である。
【図7】本実施形態の第一実施例第一態様のグラフある。
【図8】本実施形態の第一実施例第二態様のグラフある。
【図9】本実施形態の第二実施例第一態様のグラフある。
【図10】本実施形態の第二実施例第二態様のグラフある。
【図11】本実施形態の第三実施例第一態様のグラフある。
【図12】本実施形態の第三実施例第二態様のグラフある。
【図13】本実施形態の第四実施例第一態様のグラフある。
【図14】本実施形態の第四実施例第二態様のグラフある。
【図15】本実施形態の第四実施例第三態様のグラフある。
【図16】本実施形態の第五実施例のノズルタッチ力発生装置である。
【図17】本実施形態の第五実施例第一態様のグラフある。
【図18】本実施形態の第五実施例第二態様のグラフある。
【図19】本実施形態の第六実施例の分割構成した軸部材5種類の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
次に、本発明の実施の形態を、図に示す実施例に基づいて説明する。図1は、本発明に関わるインサート成形用ロータリ式縦型型締装置10と、3点で基台2に支持されるスライドベース31に載置された電動式横置射出装置20と、同射出装置20とスライドベース31を一体に昇降させるための電動式昇降装置30と、電動式横置射出装置20を前後進移動可能にかつノズルタッチ力を発生させるためのノズルタッチ力発生装置60を具備した射出成形機1の全体概要図である。
【0051】
このタイプのインサート成形用ロータリ式型縦型型締装置10には、基台2に固設された固定盤11に図示しない駆動源によって回転または反転するインデックス12が取付けられると共にインデックス12の上部にターンテーブル13が取付けられる。そして、ターンテーブル13の一方のステージに固設された下金型14のキャビティにインサート品をセットしてから、ターンテーブル13を回転させて他方のステージへ下金型14を移動する。その後、型締装置10の固定盤11に立設された3本のタイロッド9の上部に固設された型締シリンダ16に挿間され可動盤18を固設した型締ラム17を図示しない駆動源によって下降して、下金型14に対向するように可動盤18の下面に取付けられた上金型15を、ターンテーブル13上の下金型14に圧接する。この圧接されたパーティング面から金型キャビティへ射出装置20のノズル21から溶融樹脂を射出して成形品を成形する。下金型14の移動を妨げない位置まで射出装置20を後退させると共に、成形品の冷却完了後上金型15を型開して、ターンテーブル13を反転させる。そして、一方のステージで突出装置19で成形品を突出した後、成形品を取出して、1サイクルの工程を終了する。
【0052】
このような射出成形機1においては、種々のインサート品の成形にあたり、金型の大きさやパーティング面の高さ位置や射出条件の異なる金型が数多く使用される。そのために、使用される金型のパーティング面の高さ位置に、ノズル21の高さ位置を合わせる必要があるため、ノズルの高さ位置を調節するための昇降装置30が必要となる。
【0053】
次に本発明に必要な昇降装置30について図2と図3を基に説明する。昇降装置30は、外周部にスプロケット32を固着し内部に中空部33を設けた2本の調節ボルト34と、
軸部材を構成する外周部全長に亘って調節ボルト34と同一のネジピッチを有し頂部に凸部35を設けた円柱形のピン36と、外周部にスプロケット32と同一形状で同一ピッチ円直径のスプロケット37を有しピン36外周部に螺合するナット38と、回動軸部にスプロケット39を固設したサーボモータ40と、基台2上部に同一水平を保つように配置された各スプロケット32、32、37、39の外周部に巻着するチェーン41と、サーボモータ40の回動によってスプロケット32、32、37を回動可能にチェーン41を張設するテンションローラ42と、スライドベース31の細長溝部43を移動して基台2に載置されたテンションローラ42と基台2の細長溝部44を貫通してカラー45を挟んでボルト46でスライドベース31に脱着できるシャフト47とで構成される。
【0054】
次に、この昇降装置30の昇降の機能について説明する。スライドベース31の前部に左右対称に設けられたネジ部に調節ボルト34を螺合し、調節ボルト34の中空部33に、調節ボルト34の頂部からボルト48を挿入して、ボルト48の下面にカラー49を挟んで調節ボルト34を基台2に固設して、第一の昇降部30aが形成される。スライドベース31の後部には、中央部に凸部50が形成されていて、この凸部50に上下左右に回動する揺動部材としてのベアリング51が固設されている。そして、このベアリング51にナット38を螺合したピン36の一端である頂部に形成された凸部35を圧入し、このピン36の他端である下端部を、基台2に固着されたボス52に挿通し、ナット38の下面を基台2上面に圧接してピン36を基台2に取付ける。この時、キー53とほぼ同形に形成されたピン36のキー溝と、ボス52に上下に貫通して設けられたキー溝間にキー53が挿入されているので、ナット38の回動によってピン36が回動不能かつ上下動自在に移動可能に取付けられて、第二の昇降部30bが形成される。この時、基台2と調節ボルト34の接触面及び基台2とナット38の接触面には、回動時の接触面の摩擦力を低減するために、図示しない低動摩擦係数を有する部材例えばスラストベアリング等が間挿される。更に、昇降装置30の駆動装置が、回動軸部にスプロケット39を固設したサーボモータ40と、チェーン41及びテンションローラ42とシャフト47で構成されて、第三の昇降部30cが形成される。そして、第一と第二及び第三の昇降部30a,30a,30b,30cに配設された各スプロケット32、32、37、39に第三の昇降部30cのチェーン41を巻着させてテンションローラ42とシャフト47で張設した後、サーボモータ40を回動することによってチェーン41を移動させて、第一と第二の昇降部30a,30a,30bを昇降させることで、スライドベース31全体が昇降する。
【0055】
次に、ノズルタッチ力を検出するノズルタッチ力検出手段を有し、スライドベース31に載置された射出装置20を前後進可能で、かつ上下金型15、14のノズルタッチ当接面にタッチさせて樹脂洩れを防止するための本発明に必要なノズルタッチ力発生装置について図2と図4を基に説明する。図2は電動式で、図4は油圧式の駆動手段を用いたノズルタッチ力発生装置60a、60bである。空圧式の駆動手段を用いたノズルタッチ力発生装置については、油圧式の駆動手段と類似しているので省略する。
【0056】
まず、図2を基に、電動式の駆動手段を用いた電動式ノズルタッチ力発生装置60aについて説明する。電動式の駆動手段を用いたノズルタッチ力発生装置60aは、加熱筒22を固設したハウジング61の下部に回動不能に取付けられたナット62と、一端がナット62に螺合し他端がスライドベース31下面に第一のプレート63と第二のプレート64でベアリング65とノズルタッチ力検出手段であるロードセル66を挟着保持したベアリングボックス67を回転自由に挿通し、且つナット62と対向する側に第一のプーリ68を固設して、基台2上部に基台2の水平面と軸線が平行になるように配設したボールスクリュ69と、基台2下部にブラケット73と共に固着され回動軸部に第二のプーリ70を固設したサーボモータ71と、第一と第二のプーリ68,70に張設されたタイミングベルト72とで構成される。そして、ロードセル66から発せられた信号から制御装置の記憶装置に記憶されたデータを基に得られたノズルタッチ力と、予め制御盤から入力された既定のノズルタッチ力あるいは予め制御装置の記憶部に記憶された数式に基づいて制御部の演算部で演算されたノズルタッチ力を、制御部の演算部で比較して、既定のノズルタッチ力あるいは数式に基づいて演算されたノズルタッチ力に一致するようにサーボモータをトルク制御して、既定のノズルタッチ力あるいは数式に基づいて演算されたノズルタッチ力で押圧するノズルタッチ力発生装置60aが形成される。
【0057】
次に、図4を基に、油圧式の駆動手段を用いた油圧式ノズルタッチ力発生装置60bについて説明する。油圧式の駆動手段を用いたノズルタッチ力発生装置60bは、油を回収及び貯蔵するタンク81、油圧を発生させるための油圧ポンプ82、油圧回路全体の最高圧力を決定し油圧回路を保護するための最高設定圧力がS1の第一の電磁リリーフ弁83、スライドベース31上をスライドさせて射出装置20を油圧力で前進あるいは後退させる、あるいはノズルタッチ力を発生させるための油圧シリンダ84、油圧シリンダ84の第一の油室85aと第二の油室85bへ送る油の油路を切換える第一の電磁切換弁86、油圧シリンダ84の第一の油室85aと第一の電磁切換弁86のAポートと接続した第一の管路87、油圧シリンダ84の第二の油室85bと第一の電磁切換弁86のBポートと接続した第二の管路88、第二の管路88上で第二の油室85b側へ配設された圧力検出手段である圧力検出器89、第二の管路88上で第一の電磁切換弁86のBポート側へ配設された最高設定圧力がS1よりも低く設定された最高設定圧力S2を有する比例電磁リリーフ弁90から構成される。この装置では、図示しないが、油圧シリンダ84がスライドベース31に固設され、加熱筒22が固設された射出装置20のハウジング61下部に、油圧シリンダ84のピストンロッド91の先端が固設されて、第一の油室85aと第二の油室85bへの油の供給状態によって、射出装置20が前進したり後退したりする。ここでは、タンク81、油圧ポンプ82、第一の電磁リリーフ弁83、第一の電磁切換弁86のPポートを管路で接続して形成される油圧回路から発生する油圧を、第一の電磁切換弁86のD側を作動させて、油圧シリンダ84の第二の油室85bに作用させる。そして、圧力検出器89の圧力値から制御装置の記憶装置に記憶されたデータを基に得られたノズルタッチ力と、予め制御盤から入力されて制御装置の記憶装置に記憶された既定のノズルタッチ力あるいは予め制御装置の記憶部に記憶された数式に基づいて制御部の演算部で演算されたノズルタッチ力を、制御装置の演算部で比較して、既定のノズルタッチ力あるいは数式に基づいて演算されたノズルタッチ力に一致するように比例電磁リリーフ弁90を制御することで、油圧シリンダ84に作用する油圧力を制御して、既定のノズルタッチ力あるいは数式に基づいて演算されたノズルタッチ力で押圧するノズルタッチ力発生装置60bが形成される。この回路では、第一の電磁切換弁86のC側を作動させると、射出装置20が後退するようになっている。
【0058】
次に、本発明についての理論構成について図5の計算モデルを基に説明する。本発明の趣旨は、昇降装置30の基準位置で上下の金型15、14のノズルタッチ当接面23を、既定値のノズルタッチ力即ち基準ノズルタッチ力Fで押圧した際の基台2の上面位置で、外径Dを有する軸部材であるピン36に掛かる曲げ応力値即ち基準曲げ応力値σと、ノズルタッチ位置が異なる金型や図示しない高さ方向に複数の樹脂供給口即ち複数のノズルタッチ位置を有する金型を搭載した際に、基準位置からノズルタッチ位置が昇降装置30の昇降と共に高さ方向にyだけ変化したすべての高さ位置において、基台2の上面位置でピン36に掛かる曲げ応力値即ち任意高さ位置での曲げ応力値σが、常に一定になるように任意金型のノズルタッチ当接面27のノズルタッチ力Fを調整することにある。
【0059】
ここで、射出装置20とスライドベース31の縦荷重は、前部は2本の調節ボルト34で受け、後部はピン36とナット38とで一体に受ける。ノズルタッチ力FやFによる横荷重は、調節ボルト34は中空部33を有しているので受けず、もっぱらピン36で受けることになる。よって、電動式あるいは油圧式ノズルタッチ力発生装置60a、60bによって発生するノズルタッチ力FやFは、そのままノズルタッチ当接面23や27を押圧するノズルタッチ力FやFとなり、その反力FやFが、ピン36頂部の凸部35の鉛直方向長さの半分の中央位置即ちスライドベース31の底面から上方Hの距離、即ち基台2の上面からLの距離やL+yの距離でかつスプルブッシュ24のスプル25からキャビティ26へ溶融樹脂を射出する基台2の水平面と平行な軸線方向と逆の方向に作用するものとして、理論をモデル化する。
【0060】
今、昇降装置30の基準位置での基準曲げ応力値σは、基台2からLの高さ位置での基準ノズルタッチ力Fの反力F、基台2上面でのピン36の断面係数Zとすると、曲げ応力値の定義が基台2上面位置でピン36に掛かる曲げモーメントF×Lとその位置でのピン36の断面係数Z0との比であるから次式で示される。
(数1)
σ=F×L/Z0
次に、基準位置からノズルタッチ位置が昇降装置30の昇降と共に高さ方向にyだけ変化して、金型のノズタッチ当接面27をノズルタッチ力Fで押圧した時に、ピン36の基台2上面に掛かる任意位置での曲げ応力値σは、基台2上面でのピン36の断面係数をZとすると、定義から次式となる。
(数2)
σ=F×(L+y)/Z
本発明は、基準曲げ応力値σと、全ての高さ方向の変化に対して、全ての高さ位置での曲げ応力値σが常に一定になる
(数3)
σ=σ
ように、任意の位置でのノズルタッチ力Fを調整することにある。よって、数1式、数2式、数3式から次式が成立する。
(数4)
F=(L/(L+y))×(Z/Z0)×F
ここで、高さ関数g(y)を
(数5)
g(y)=(L/(L+y))
とすると、基台2上面から、昇降装置30の基準位置に配設されたピン36の頂部凸部35に掛かる基準ズルタッチ力Fの反力Fの作用線上までの距離Lと、基台2上面から、昇降装置30が昇降してノズルタッチ位置が変化し金型のノズルタッチ当接面27を押圧した時の任意高さでのノズルタッチ力Fの反力Fが作用するピン36の頂部凸部35の作用線上までの距離L+yの逆数との積で構成されることが分かる。また、本実施形態では、ピン36内部に空洞部を設け、更にこの空洞部の縦断面形状を高さ方向の変化量yに応じて変化する数学関数によって形成するようにしたので、ピン36の断面係数Zを高さ方向の変化量yの関数として表記できる。よって、断面係数変化関数h(y)を
(数6)
h(y)=(Z(y)/Z0
と定義することができる。よって、数4式、数5式、数6式から、ノズルタッチ力Fを
(数7)
F(y)=g(y)× h(y)×F
と定義することができるので、任意高さ位置でのノズルタッチ力Fは、高さ関数g(y)と、断面係数変化関数h(y)と、基準ノズルタッチ力Fの積で現すことがでる。このことは、ノズルタッチ力Fが、高さの変化量yのみで決定できることを意味している。
【0061】
これから、本発明の実施形態の実施例について説明する。本実施例全てに亘って、昇降装置30の基準位置を昇降装置30の最下降位置に設定し、この地点に位置するピン36の基台2から基準ノズルタッチFの反力Fが作用する作用線上までの距離をL=85mmとし、この作用線上に基準ノズルタッチ力F=935kgfが作用するものとする。尚、ここで使用する全てのピンの外周部にはM64ネジ部が形成されており、そのネジの谷径がD=59.5mmとなる。そして、昇降装置30は最下降位置の0mmからC=100mmまで昇降するものとする。
【0062】
次に、本発明である第一の実施例について図6(a)と図7、図8に基づいて説明する。図6では、高さ方向である鉛直方向の変化量yである変数yは下向きを+とし、水平方向の変数xは、図6紙面左を+xとする。この形態では、ネジ部の谷径である外径Dを有し、低部からL+Cの位置即ちLの位置を基準に上方に内径dの円筒状の空洞部101と、L+CからLまでの範囲即ちL(y=0)からL+C(y=100mm)までの範囲を、数学関数である放物曲線y=xのうちm=1、n=1の1次関数で、かつ外径Dおよび内径dの中心軸線上に位置するy軸に対して左右対称に配置して形成される縦断面形状部102とを有するピン100が用いられる。今、基準ノズルタッチ力Fが作用しているとき、ピン100に掛かる反力Fの作用線上からLの距離でのピン100の断面係数Z0は、外径Dで内径dのドーナツ状の横断面形状を有するので、次式となる。
(数8)
0=π×(D−d)/(32×D×10

昇降装置30が上昇しy変化したとき、ピン100の外径Dは変わらないが、2個の1次関数で定義された縦断面形状部102によって、縦断面形状部102部の内径は、円筒状の空洞部101の中心から半径xの位置にあるので、2×xとなる。この位置でのピン100の断面係数Zは、次式となる。
(数9)
Z=π×(D−(2×x))/(32×D×10
今、定数をα、βとして縦断面形状部102の断面形状を1次関数
(数10)
y=α×x+β
で定義すると、y=0のときx=±d/2およびy=Cのときx=0の境界条件のもとで、定数α、βが決定される。その結果断面形状は、
(数11)
x=±d×(C−y)/(2×C)
となり、数4式、数8式、数9式、数11式より、次式が成立する。
(数12)
F=L/(L+y)×(D−(d/C×(C−y)))/(D−d)×F
ここで、
g(y)=(L/(L+y))
h(y)=(D−(d/C×(C−y)))/(D−d
となるので、数7式が成立する。
【0063】
以上の条件の基で、今、第一実施例で第一の態様の例を、d=40mmの場合について実施した。高さ方向の変化量yが0mmから100mmまで変化したときの、数11式に基づく縦断面形状部102の断面形状の変化を図7(a)に、数11式を代入した数9式に基づく断面係数Zの変化を図7(b)に、数12式に基づくノズルタッチ力Fの変化を図7(c)に示す。また、それらの数値を表1に示す。ピン100の基準曲げ応力値σとσは数1式と数2式から483.2kgf/cmとなり、使用したピン100の材質は応力値が9700kgf/cmのATM100(SCM440の改良材)を使用しているので、安全率Nが20となり、基準安全率8以上であるので、ピン100は十分な強度が保証される。ここでは、計算の便宜上、単位としてkgf、kgf/cmを使用しているが、1kgf≒9.8N、1kgf/cm≒0.098MPaであるから、必要応じてN、MPaに単位換算する。
【表1】

【0064】
次に、第一実施例で第二の態様の例を、d=50mmの場合について実施した。高さ方向の変化量yが0mmから100mmまで変化したときの、数11式に基づく縦断面形状部102の断面形状の変化、数11式を代入した数9式の断面係数Zの変化、数12式に基づくノズルタッチ力Fの変化を図8(a)、(b)、(c)に、またそれらの数値を表2に示す。ピン100の基準曲げ応力値は767.0kgf/cmとなり、安全率Nは12.7となるのでピン100は十分な強度が保証される。
【表2】

【0065】
以上のように、この第一の実施例では、ピン100に掛かる基準曲げ応力値σと、高さ方向への変化量yが変化した際に、変化した位置での曲げ応力値σが一定になるようにコントロールするには、高さ方向に変化した位置でのノズルタッチ力Fを、ノズルタッチ力発生装置60a、60bの制御装置の演算部にプログラム入力された数12式に基づいて演算して得て、そのノズルタッチ力と一致するようにノズルタッチ力発生装置60a、60bを制御して行う。そして、第一の態様では高さ方向の上昇と共に基準ノズルタッチ力Fよりもノズルタッチ力Fを弱くコントロールしなければならないが、内径dを大きくした第二の態様では、逆に高さ方向の上昇と共にノズルタッチ力Fを強くコントロールする必要がある。従って、第二の態様では、ノズルタッチ力発生装置60a、60bを制御して、ピン100の曲げ強度を損なうことなしに、昇降装置30の昇降に応じて、ノズルタッチ力Fを基準ノズルタッチ力Fよりも、強く、あるいは一定に、あるいは弱く調整できるので、種々なる成形条件に対応するノズルタッチ力Fの調整方法と調整装置を提供できる。
【0066】
次に、本発明の第二の実施例について、図6(b)と図9,図10に基づいて説明する。この実施例では、ネジ部の谷径の外径Dを有し、低部からL+Cの位置即ちLの位置を基準に上方に内径dの円筒状の空洞部101と、L+CからLまでの範囲即ちL(y=0)からL+C(y=100mm)までの範囲を、数学関数で放物曲線y=xのうちm=1、n=2の2次関数を採用した縦断面形状部112とを有するピン110が用いられる。今、基準ノズルタッチ力Fが作用しているとき、ピン110に掛かる反力Fの作用線上からLの距離でのピン110の断面係数Z0は、外径Dで内径dのドーナツ状の横断面形状を有するので、数8式が成立する。また、昇降装置30が上昇しy変化したとき、ピン110の外径Dは変わらないが、2次関数で定義された縦断面形状部112の断面形状によって、縦断面形状部112部の内径は、円筒状の空洞部101の中心から半径xの位置にあるので、2×xとなる。この位置でのピン110の断面係数Zは、数9式で示される。ここで、定数をα、β、γとして2次関数を
(数13)
y=α×x+βx+γ
と定義し、y=0のときx=±d/2およびy=Cのときx=0の境界条件のもとで、定数α、β、γが決定される。その結果、
(数14)
x=±d/2×((C−y)/C)1/2
となり、数4式、数8式、数9式、数14式より、次式が成立する。
(数15)
F=L/(L+y)×(D−(d/C×(C−y))/(D−d)×F
ここで、
g(y)=(L/(L+y))
h(y)=(D−(d/C×(C−y))/(D−d
となるので、数7式が成立する。
【0067】
以上の条件の基で、今、第二実施例で第一の態様の例を、d=40mmの場合について実施した。高さ方向の変化量yが0mmから100mmまで変化したときの、数14式に基づく縦断面形状部112の断面形状の変化を図9(a)に、数14式を代入した数9式に基づく断面係数Zの変化を図9(b)に、数15式に基づくノズルタッチ力Fの変化を図9(c)に示す。また、それらの数値を表3に示す。ピン110の基準曲げ応力値σとσは数1式と数2式から483.2kgf/cmとなり、安全率Nが20となるのでピン110は十分な強度が保証される。
【表3】

【0068】
次に、第二実施例の第二の態様の例を、内径d=50mmの場合について実施した。高さ方向の変化量yが0mmから100mmまで変化したときの、数14式に基づく縦断面形状部112の断面形状の変化、数14式を代入した数9式に基づく断面係数Zの変化、数15式に基づくノズルタッチ力Fの変化を図10(a)、(b)、(c)に、またそれらの数値を表4に示す。ピン110の基準曲げ応力値は767.0kgf/cmとなり、安全率Nは12.7となるのでピン100は十分な強度が保証される。
【表4】

【0069】
以上のように、この第二の実施例では、ピン110に掛かる基準曲げ応力値σと、高さ方向への変化量yが変化した際に、変化した位置での曲げ応力値σが一定になるようにコントロールするには、高さ方向に変化した位置でのノズルタッチ力Fを、ノズルタッチ力発生装置60a、60bの制御装置の演算部にプログラム入力された数15式に基づいて演算して得て、そのノズルタッチ力と一致するようにノズルタッチ力発生装置60a、60bを制御して行う。そして、第一の態様では高さ方向の上昇と共に基準ノズルタッチ力Fよりもノズルタッチ力Fを弱くコントロールしなければならないが、内径dを大きくした第二の態様では、逆に高さ方向の上昇と共にノズルタッチ力Fを強くコントロールする必要がある。従って、第二の実施例でも、第一の実施例のように、ノズルタッチ力発生装置60a、60bを制御して、ピン110の曲げ強度を損なうことなしに、昇降装置30の昇降に応じて、ノズルタッチ力Fを基準ノズルタッチ力Fよりも、強く、あるいは一定に、あるは弱く調整できるので、種々なる成形条件に対応するノズルタッチ力Fの調整方法と調整装置を提供できる。
【0070】
次に、本発明の第三の実施例について、図6(c)と図11、図12に基づいて説明する。この実施例では、ネジ部の谷径の外径Dを有し、低部からL+Cの位置即ちLの位置を基準に上方に内径dの円筒状の空洞部101と、L+CからLまでの範囲即ちL(y=0)からL+C(y=100mm)までの範囲を、数学関数としてステップ関数を採用した縦断面形状部122、123、124とを有するピン120が用いられる。今、基準ノズルタッチ力Fが作用しているとき、ピン120に掛かる反力Fの作用線上からLの距離でのピン120の断面係数Z0は、外径Dで内径dのドーナツ状の横断面形状を有するので、数8式が成立する。また、昇降装置30が上昇しy変化したとき、ピン120の外径Dは変わらないが、ステップ関数で定義された第一、第二、第三の縦断面形状部122,123、124の断面形状によって、第一、第二、第三の縦断面形状部122、123、124の内径は、円筒状の空洞部101の中心から半径xの位置にあるので、2×xとなる。このとき、変数xは変数yのステップ関数であるから、変数xを変数yの関数で記述することができる。そして、この位置でのピン120の断面係数Zは、数9式で示され、数4式、数8式、数9式から、次式が成立する。
(数16)
F=L/(L+y)×(D−(2×x))/(D−d)×F
ここで、
g(y)=(L/(L+y))
h(y)=(D−(2×x(y))/(D−d
となるので、数7式が成立する。今、ステップ関数を、
(数17)
0≦y<C/4 のとき x=±d/2
C/4≦y<C/2 のとき x=±d/3
C/2≦y<3×C/4 のとき x=±d/6
3×C/4≦y≦C のとき x=0
とすると、数16式、数17式より、次式が成立する。
(数18)
0≦y<C/4 のとき
F=L/(L+y)×F
C/4≦y<C/2 のとき
F=L/(L+y)×(D−(2×d/3))/(D−d)×F
C/2≦y<3×C/4 のとき
F=L/(L+y)×(D−(d/3))/(D−d)×F
3×C/4≦y≦C のとき
F=L/(L+y)×D/(D−d)×F
【0071】
以上の条件の基で、今、第三実施例で第一の態様の例を、d=40mmの場合について実施した。高さ方向の変化量yが0mmから100mmまで変化したときの、数17式に基づく縦断面形状部122、123、124の断面形状の変化を図11(a)に、数17式を代入した数9式に基づく断面係数Zの変化を図11(b)に、数18式に基づくノズルタッチ力Fの変化を図11(c)に、またそれらの数値を表5に示す。ピン120の基準曲げ応力値σとσは数1式と数2式から483.2kgf/cmとなり、安全率Nが20となるのでピン120は十分な強度が保証される。
【表5】

【0072】
次に、第三実施例の第二の態様の例を、内径d=50mmの場合について実施した。高さ方向の変化量yが0mmから100mmまで変化したときの、数17式に基づく縦断面形状部122、123、124の断面形状の変化、数17式を代入した数9式に基づく断面係数Zの変化、数18式に基づくノズルタッチ力Fの変化を図12(a)、(b)、(c)に、またそれらの数値を表6に示す。ピン120の基準曲げ応力値は767.0kgf/cmとなり、安全率Nは12.7となるのでピン120は十分な強度が保証される。


【表6】

【0073】
以上のように、この第三の実施例では、ピン120に掛かる基準曲げ応力値σと、高さ方向への変化量yが変化した際に、変化した位置での曲げ応力値σが一定になるようにコントロールするには、高さ方向に変化した位置でのノズルタッチ力Fを、ノズルタッチ力発生装置60a、60bの制御装置の演算部にプログラム入力された数18式に基づいて演算して得て、そのノズルタッチ力と一致するようにノズルタッチ力発生装置60a、60bを制御して行う。そして、第一の態様では高さ方向の上昇と共に基準ノズルタッチ力Fよりもノズルタッチ力Fを弱くコントロールしなければならないが、内径dを大きくした第二の態様では、逆に高さ方向の上昇と共にノズルタッチ力Fを強くコントロールする必要がある。従って、第三の態様でも、第一や第二の実施例のように、ノズルタッチ力発生装置60a、60bを制御することで、ピン120の曲げ強度を損なうことなしに、昇降装置30の昇降に応じて、ノズルタッチ力Fを基準ノズルタッチ力Fよりも、強く、あるいは一定に、あるいは弱く調整できるので、種々なる成形条件に対応するノズルタッチ力Fの調整方法と調整装置を提供できる。
【0074】
以上の第一、第二、第三の実施例では、縦断面形状部101、112、122から124を、放物曲線関数である1次関数や2次関数、あるいはステップ関数で形成したが、他の関数として、楕円関数、双曲線関数、アステロイド関数、ウイッチ関数、ストロフォイド関数、シッソイド関数、Descartes正葉線関数、Cassini橙形関数、確率曲線関数を含む指数関数、対数曲線関数、三角関数、トラクトリック関数、トロコイド曲線関数、サイクロイド曲線関数、エピ・サイクロイド曲線関数、ハイポ・サイクロイド曲線関数、極座標曲線関数、正葉線関数、コンコイド曲線関数、セロイド曲線関数、Booth紐状線関数、及びこれらの関数の組み合わせによる複合的な曲線関数や、ここに記述していない曲線関数等で形成することもできる。従って、基準曲げ応力値σと任意の高さでの曲げ応力値σが一定になるように種々なるノズルタッチ力が創生できるので、種々なる成形条件や射出条件に対応可能な幅広い射出成形機が提供可能となる。尚、軸部材の外径Dと内径dの大きさは、必要とする基準ノズルタッチ力Fと基準曲げ応力値σの安全率Nを考慮して決定すべきである。
【0075】
次に、本発明の第四の実施例について、図6(d)と図13、図14、図15に基づいて説明する。この実施例では、基準ノズルタッチ力Fが作用したときの曲げ応力値σと、高さ方向にy変化したときのノズルタッチ力Fが作用したときの曲げ応力値σが常に一定で、かつ高さ方向にy変化したときのノズルタッチ力Fも、基準ノズルタッチ力Fと常に一定になるように、ピン125の縦断面形状部126の断面形状を決定することである。この実施例では、ネジ部の谷径の外径Dを有し、低部からL+Cの位置即ちLの位置を基準に、上方に内径dの円筒状の空洞部101と、L+CからLまでの範囲即ちL(y=0)からL+C(y=100mm)までの範囲が、高さ方向のyの変化と共に変化する空洞部101の中心から半径xの円を有し、L位置かつd/2の地点で空洞部101と連続するように形成される後述する数19式の縦断面形状部126を有するピン125が用いられる。ここで、基準ノズルタッチ力Fが作用しているとき、ピン125に掛かる反力Fの作用線上からLの距離でのピン125の断面係数Z0は、外径Dで内径dのドーナツ状の横断面形状を有するので、数8式が成立する。また、昇降装置30が上昇しy変化したとき、ピン125の外径Dは変わらないが、縦断面形状部126の内径は、円筒状の空洞部101の中心から半径xの位置にあるので、2×xとなる。この位置でのピン125の断面係数Zは、数9式で示される。ここでF=Fかつσ=σであるから、これらの条件を満たす断面形状部126の断面形状は、数4式、数8式、数9式から、次式で定義される。
(数19)
x=±1/2×(D―(L+y)/L×(D−d))1/4
更に、ピン125に空洞部を形成できなくなるとき、即ちx=0mmのときのyの高さ位置は、次式の数20式で決定される。この高さ位置を越えた場合には、σ=σの条件が成立しなくなり、高さ方向の変化量yの増加につれて曲げ応力値σが増加するので、本発明が適用できなくなる。
(数20)
y=L×(D/(D−d)−1)
また、数19式から、y=100mmでx=0mmの条件、即ちyが0mmから100mmの昇降範囲で常に条件F=Fかつσ=σの条件を満たすようなピン125の内径dを決定する式は、次式となる。
(数21)
=(C/(L+C))1/4×D
【0076】
以上の条件の基で、今、第四実施例で第一の態様を、d=40mmの場合について実施した。数20式からx=0mmとなるとき、即ちピン125に空洞部を形成できなくなるときのyの高さ位置はy=21.819mmとなる。従って、F=Fかつσ=σの条件が成立する高さ方向の変化量yは0mmから21.819mmまでの範囲となり、この範囲では縦断面形状部126の断面形状は数19式が、断面係数は数19式を代入した数9式が成立するが、この範囲を越えて上昇してyが変化するときには数19式は成立しない。このときには、断面形状は全てx=0となり、数9式より、外径Dの円柱断面を有する断面係数Zとなる。そして、ノズルタッチ力一定F=Fのまま上昇すると曲げ応力値σは増加する。これらのことを考慮して、高さ方向の変化量yが0mmから100mmまで変化したときの、縦断面形状部126の断面形状の変化を図13(a)に、断面係数Zの変化を図13(b)に、ノズルタッチ力Fを図13(c)に、またそれらの数値を表7に示す。これらの結果から、高さ方向の変化量yが0mmから21.819mmまでの範囲内にあるときの曲げ応力値σとσは、数1式と数2式から483.2kgf/cm2となり、安全率Nが20となるので、ピン125は十分な強度が保証される。また、この範囲を超えて、F=Fのまま上昇してy=100mmの位置に達したときの曲げ応力値σが836.9kgf/cm2となるが、安全率Nが11.6となるので、その位置で射出成形してもピン125は十分な強度が保証され、構造上なんら問題なく使用できる。
【表7】

【0077】
次に、第四実施例の第二の態様の例を、内径d=50mmの場合について実施した。数20式からyの高さ位置はy=84.549mmとなる。従って、F=Fかつσ=σの条件が成立する高さ方向の変化量yは0mmから84.549mmまでの範囲となり、この範囲では縦断面形状部126の断面形状は数19式が、断面係数は数19式を代入した数9式が成立するが、この範囲を越えて上昇してyが変化するときは数19式は成立しない。このときには、断面形状は全てx=0となり、数9式より、外径Dの円柱断面を有する断面係数となる。そして、ノズルタッチ力一定F=Fのまま上昇すると曲げ応力値σは増加する。これらのことを考慮して、高さ方向の変化量yが0mmから100mmまで変化したときの、縦断面形状部126の断面形状の変化を図14(a)に、断面係数Zの変化を図14(b)に、ノズルタッチ力Fを図14(c)に、またそれらの数値を表8に示す。これらの結果から、高さ方向の変化量yが0mmから84.549mmまでの範囲内にあるときの曲げ応力値σとσは、数1式と数2式から767.0kgf/cm2となり、安全率Nが12.6となるので、ピン125は十分な強度が保証される。また、この範囲を超えて、F=Fのまま上昇してy=100mmの位置に達したときの曲げ応力値σが836.9kgf/cm2となるが、安全率Nが11.6となので、その位置で射出成形してもピン125は十分な強度が保証され、構造上なんら問題なく使用できる。
【表8】

【0078】
次に、第四実施例の第三の態様の例を示す。この例では、数21式からy=100mmでx=0となるとき、即ち昇降範囲である0mmから100mmに亘ってF=Fかつσ=σの条件が成立するときの内径dを求めてから、数19式に基づく縦断面形状部126の断面形状を決定して製作されたピン125が用いられた。ピン125の空洞部101の内径dは、数21式から51.018070974mmとなり、このときの、高さ方向の変化量yが0mmから100mmまで変化したときの、縦断面形状部126の断面形状の変化は数19式に基づき図15(a)のようになる。また、断面係数Zの変化は数19式を代入した数9式に基づき図15(b)に、ノズルタッチ力Fの変化は図15(c)のようになる。そして、これらの数値は表9に示される。これらの結果から、曲げ応力値σとσは数1式と数2式から836.9kgf/cm2となり、安全率Nが11.6となるので、ピン125は十分な強度が保証される。
【表9】

【0079】
以上のように、第一と第二の態様では、ピン125の空洞部101の内径dが決定されている場合の態様の例であり、更に、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、高さ方向に変化した全ての高さ位置でのノズルタッチ力Fを基準ズルタッチ力Fと常に一定にしたまま、基台2上面位置でピン125に掛かる曲げ応力値σを基準曲げ応力値σと常に一定にするように設定できる高さ方向の変化量yの最高の高さ位置が、数20式から決定されることを示した。逆に、第三の態様では、ノズルタッチ力Fを基準ノズルタッチ力Fと常に一定にしたまま、基台2上面位置でピン125に掛かる曲げ応力値σを基準曲げ応力値σと常に一定に保持できる高さ方向の変化量yの最高の高さ位置が決定されていて、その最高の高さ位置でピン125の縦断面形状部126の空洞部がない即ち半径x=0mmとなるときのピン125の空洞部101の内径dを、数21式によって決定する場合の態様の例を示した。そして、その最高の高さ位置まで、ノズルタッチ力FとFを一定にしたまま基台2上面位置でピン125に掛かる基準曲げ応力値σと曲げ応力値σを一定に保持できる。このように、0mmからこの最高の高さ位置までの範囲内で、数19式に基づく縦断面形状部126の断面形状を有するピン125を製作することで、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、高さ方向に変化した全ての高さ位置でノズルタッチ力FとFを一定にしたまま基台2上面位置でピン125に掛かる基準曲げ応力値σと曲げ応力値σを一定に保持できるノズルタッチ力の調整方法と調整装置が確立される。従って、この第四の実施例の態様を使用する場合は、電動式ノズルタッチ力発生装置60aや油圧式ノズルタッチ力発生装置60bでノズルタッチ力FとFを制御するよりも、図4で示したノズルタッチ力発生装置60bの比例電磁リリーフ弁90を、第一の電磁リリーフ弁83の設定圧力値S1よりも低圧S2で設定された図示しない電磁リリーフ弁に置換えることによって、常に一定の設定圧力値S2で油圧シリンダ84の第二の油室85bに油圧力を発生させ続けることができるので、電動式ノズルタッチ力発生装置60aや油圧式ノズルタッチ力発生装置60bを用いた場合よりもノズルタッチ力発生装置60の制御が簡単になるので、好適に採用されるべきである。
【0080】
次に、本発明の実施形態の第五実施例について図16に基づいて説明する。本実施形態で使用する油圧式ノズルタッチ力発生装置150は、図4に示した油圧式ノズルタッチ力発生装置60bの第一の電磁切換弁86と油圧シリンダ84の間の第二の管路88に配設された圧力検出器89と比例電磁リリーフ弁90を取除き、第一の電磁切換弁86と第一の電磁リリーフ弁83との間に、第一の電磁リリーフ弁83の設定圧力S1より低圧S2に維持される第二の電磁リリーフ弁151と第二の電磁リリーフ弁151より下流側に配設される第一の逆止弁156とで構成される第一の回路152と、第二の電磁リリーフ弁151の設定圧力S2より低圧S3に維持される第三の電磁リリーフ弁153と第三の電磁リリーフ弁153の下流側に配設される第二の逆止弁157とで構成される第二の回路154を並列に設ける。更に、その下流側に第二の電磁切換弁155を配設して、第二の電磁切換弁155の切換操作により第一の回路152と第二の回路154を切換えて、油圧シリンダ84に発生する油圧力を調整するように構成されている。そして昇降装置30の最下降位置から昇降範囲0mmからC=100mmの中間地点に位置する第一の高さ50mmまでの間は、第一の電磁切換弁86のD側と第二の電磁切換弁155のG側を操作して、第一の回路152の油圧力で金型のノズルタッチ当接面27を押圧するが、第二の回路154に配設した第二の逆止弁157によって、第二の回路154には逆流しないようになっている。また、第一の高さ50mmを超えて昇降装置の最高位置である第二の高さC=100mmまでの間は、第一の電磁切換弁86のD側と第二の電磁切換弁155のE側を操作して第二の回路154の油圧力で金型のノズルタッチ当接面27を押圧するが、第一の回路152に配設した第一の逆止弁156によって、第一の回路152には逆流しないようになっている。本実施例では第二の電磁リリーフ弁151の設定圧力S2=40kgf/cmに、第三の電磁リリーフ弁153の設定圧力S2=30kgf/cmに設定した。また、ピストンロッド91の第二の油室85bの外径がφ60mmの油圧シリンダ84を選定した。従って、ピストンロッド91を介して第一の回路152経由する油圧力で発生するノズルタッチ力F、Fは、1246kgfとなり、第二の回路154を経由する油圧力で発生するノズルタッチ力Fは935kgfとなる。
【0081】
以上のように構成した油圧式ノズルタッチ力発生装置150と、第四実施例の図6(d)と同様なピン125を用いて実施した。このピン125は、ネジ部谷径の外径Dを有し内径dの空洞部101と、高さ位置yが0mmから50mmまでは数19式で決定され、高さ位置yが50mmから100mmまでは後述する数22式で決定される半径xの空洞部を有する縦断面形状部126の断面形状を有するピン125が採用される。この理由は、全ての高さ位置でピン125の基台2上面での曲げ応力値σ、σが基準曲げ応力値σと同一であり、且つ高さ位置yが0mmから50mmまでは、ノズルタッチ力Fが基準ノズルタッチ力Fと同一の力で金型の当接面27を押圧するので、半径xの円形状の空洞部を有する縦断面形状部126の断面形状は、数19式で決定される。50mmから100mmまではノズルタッチ力がF=FからFに変化し、高さ方向にy変化しても常に一定のノズルタッチ力Fで金型の当接面27を押圧するので、数4式、数8式、数9式から縦断面形状部126の断面形状は、次式となる。
(数22)
x=±1/2×((D−F/F×(L+y)/L×(D−d))1/4
更に、ピン125に空洞部を形成できなくなるとき、即ちx=0mmのときのyの高さ位置は、次式の数23式で決定される。この高さ位置を越えた場合には、σ=σの条件が成立しなくなり、高さ方向の変化量yの増加につれて曲げ応力値σが増加するので、本発明が適用できなくなる。
(数23)
y=L×(F/F×D/(D−d)−1)
また、数22式から、y=100mmでx=0mmの条件、即ちyが50mmから100mmの昇降範囲でノズルタッチ力がF=FからFに変化したときにもσ=σ=σの条件を満たすようなピン125の内径dを決定する式は、次式となる。
(数24)
=(1−F/F×L/(L+C))1/4×D
数22式、数23式、数24式は、最初に基準ノズルタッチ力Fで基台2上面位置でピン125に掛かる基準曲げ応力値σを決定してから、同一位置即ちy=0mmの位置で、ノズルタッチ力Fに変更しそのノズルタッチ力Fで、y=0から100mmの範囲に亘って金型のノズルタッチ当接面27を押圧する場合にも、そのまま適用できる。
【0082】
以上の条件の基で、今、第五実施例で第一の態様を、数24式でy=C(100mm)のときx=0となるときの空洞部101の内径d=46.9510288mmを求め、高さ方向の変化量y0mmから50mmまで変化したときの数19式に基づく縦断面形状部126の断面形状と、高さ方向の変化量y50mmから100mmまで変化したときの数22式に基づく縦断面形状部126の断面形状を有するピン125と、ノズルタッチ力発生装置150を用いて実施した。高さ方向の変化量y0mmから100mmまで変化したときの、数19式と数22式に基づく縦断面形状部126の断面形状と、数19式と数22式を代入した数9式に基づく断面係数Zの変化と、ノズルタッチ力F=FとFとの変化を、図17(a)、(b)、(c)に、またそれらの数値を表10に示す。これらの結果から、曲げ応力値σとσ、σは数1式と数2式から836.9kgf/cm2となり、安全率Nが11.6なので、ピン125は十分な強度が保証される。
【表10】

【0083】
次に、第五実施例の第二の態様の例を、内径d=50mmの場合について、高さ方向の変化量y0mmから50mmまで変化したときの数19式に基づく縦断面形状部126の断面形状と、高さの変化量y50mmから100mmまで変化したときの数22式に基づく縦断面形状部126の断面形状を有するピン125と、ノズルタッチ力発生装置150を使用して実施した。高さ方向の変化量y0mmから100mmまで変化したときの、数19式と数22式に基づく縦断面形状部126の断面形状と、数19式と数22式を代入した数9式に基づく断面係数Zの変化と、ノズルタッチ力F=FとFとの変化を、図18(a)、(b)、(c)に、またそれらの数値を表11に示す。これらの結果から、曲げ応力値σとσ、σは数1式と数2式から1022.1kgf/cm2となり、安全率Nが9.5なので、ピン125は十分な強度が保証される。
【表11】

【0084】
以上のように、2種類のノズルタッチ力F=F、Fを発生できる油圧式ノズルタッチ力発生装置150を使用しても、ピン125内部の縦断面形状部126の断面形状を、数19式と数22式に合値するように製作したピン125を用いたことで、全ての高さ方向の変化量yに対して、基台2上面に掛かるピン125の曲げ応力値σ、σを基準曲げ応力値σと同一に構成することができる。更に、図4の油圧式ノズルタッチ力発生装置60bの比例電磁リリーフ弁90に換えて、図示しない電磁切換弁と電磁リリーフ弁の組合わせを多段に設けて、多段にノズルタッチ力F、F、F、・・・・を発生させて、数19式と数22式に合値するように縦断面形状部126の断面形状を形成したピン125を用いて、全ての高さ方向の変化量yに対して、基台2上面に掛かるピン125の曲げ応力値σ、σ2、σ・・・・を基準曲げ応力値σと同一に構成することも可能となる。
【0085】
次に、本発明の実施形態の第六の実施例について、図19に基づいて説明する。図19(a)は、ネジ部の谷径にあたる外径Dを有し、内部に低部からL+Cの位置から上方に内径dの空洞部101と、低部からL+Cの位置までの範囲を内径dよりやや大きめな内径dの空洞部131を有する定常横断面形状部材130と、プレート138とで、縦断面形状変化部材132,133,134,135,136の何れか一を挟持して4本のボルト139で固設して一体に構成されるピン140の断面図である。図19(b)は、高さがL+Cで外径dの円筒状の外形と、内部に縦断面形状部102の断面形状を有する縦断面形状変化部材132の断面図である。図19(c)は、高さがL+Cで外径dの円筒状の外形と、内部に縦断面形状部112の断面形状を有する縦断面形状変化部材133の断面図である。図19(d)は、高さがL+Cで外径dの円筒状の外形と、内部に断面形状部122、123、124の縦断面形状を有する縦断面形状変化部材134の断面図である。図19(e)は、高さがL+Cで外径dの円筒状の外形と、内部に縦断面形状部126の断面形状を有する縦断面形状変化部材134の断面図である。このように構成して、図6(a)、図6(b)、図6(c)、図6(d)のピン100、110、120、125の内径dの空洞部101を有する部材と、縦断面形状部102、112、122から124、126の断面形状を有する部材とを分離構成して、ピン100、110、120、125と同一の機能を持たせるように構成したことである。そして、第一、第二、第三、第四の実施形態と同一条件で本実施例を実施した。その結果、図7から図15、表1から表9までと同じ効果を得ることができた。次に、第六の実施例の別態様である図19(f)について説明する。図19(f)は、低部からL+Cまでは外径dの円筒状の外形を、低部からL+Cの位置から上方に外径dの円筒状の外形を有し、内部に内径dの円筒状の空洞部を設けた縦断面形状部137の断面形状を有する縦断面形状変化部材136の断面図である。この縦断面形状変化部材136の特徴は、内径dを変えるだけで種々の断面係数を創作でき、且つ縦断面形状部137を円筒状の空洞部で構成したので、安価で簡易に製作可能な種々な縦断面形状変化部材136が提供できることである。
【0086】
以上のように、定常横断面形状部材130に、縦断面形状変化部材132,133,134,135,136の何れか一を挿入することで、異なる金型や異なる成形条件に応じて変化するノズルタッチ力を、自在に選定できるようになる。また、異なる金型や異なる成形条件に応じて射出装置を外して軸部材を交換する必要も無くなり、作業者にとって不安全で煩雑な作業から開放され、安全で簡単かつ短時間な作業で軸部材を交換可能となる。
【0087】
以上、本発明の実施形態に限らず、基台2下面に他の機構により昇降する昇降装置上に、射出装置20が搭載されたスライドベース31を3点で固定支持して、この後部軸部材の形状の外径と空洞部形状を正多角形や、長方形、楕円等種々なる形状で形成して、昇降装置が昇降する全ての高さ位置において、基台2上面で軸部材に掛かる曲げ応力値σを基準曲げ応力σと常に一定にできるノズルタッチ力Fの調整方法と調整装置を提供することも可能である。また、本実施例では、昇降装置30の最下降位置で基準曲げ応力値σを設定したが、昇降装置30の最上昇位置や昇降範囲内の全ての地点でも基準曲げ応力値σを設定することができ、その場合でも、数1式から数24式全てがそのまま当てはまるので、巾広い分野にも適用可能となる。また、射出成形機に限らず、昇降するポール等にも好適に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
縦型型締装置10と、昇降装置30を具備し前部2点と後部1点の3点で基台2へ支持される横置射出装置20とで構成される射出成形機1にあって、基台2上面位置で後部軸部材に掛かる基準曲げ応力値σと、昇降する全ての高さ位置において、基台2上面位置で後部軸部材に掛かる曲げ応力値σが、常に一定になるように形成された後部軸部材を具備することによって、強度上の問題を誘発することがない射出成形機が提供できる。
【符号の説明】
【0089】
1 射出成形機
2 基台
9 タイロッド
10 型締装置
11 固定盤
12 インデックス
13 ターンテーブル
14 下金型
15 上金型
16 型締シリンダ
17 型締ラム
18 可動盤
19 突出装置
20 射出装置
21 ノズル
22 加熱筒
23 ノズルタッチ当接面(基準位置)
24 スプルブッシュ
25 スプル
26 キャビティ
27 ノズルタッチ当接面(任意位置)
30 昇降装置
30a 第一の昇降部
30b 第二の昇降部
30c 第三の昇降部
31 スライドベース
32 スプロケット
33 中空部
34 調節ボルト
35 凸部(頂部)
36 ピン
37 スプロケット
38 ナット
39 スプロケット
40 サーボモータ
41 チェーン
42 テンションローラ
43 細長溝部(スライドベース)
44 細長溝部(基台上面)
45 カラー
46 ボルト
47 シャフト
48 ボルト
49 カラー
50 凸部(中央部)
51 ベアリング
52 ボス
53 キー
60 ノズルタッチ力発生装置
60a 電動式ノズルタッチ力発生装置
60b 油圧式ノズルタッチ力発生装置
61 ハウジング
62 ボールナット
63 第一のプレート
64 第二のプレート
65 ベアリング
66 ロードセル
67 ベアリングボックス
68 第一のプーリ
69 ボールスクリュ
70 第二のプーリ
71 サーボモータ
72 タイミングベルト
73 ブラケット
81 タンク
82 油圧ポンプ
83 第一の電磁リリーフ弁
84 油圧シリンダ
85a 第一の油室
85b 第二の油室
86 第一の電磁切換弁
87 第一の管路
88 第二の管路
89 圧力検出器
90 比例電磁リリーフ弁
91 ピストンロッド
100 ピン
101 空洞部
102 縦断面形状部(1次関数型)
110 ピン
112 縦断面形状部(2次関数型)
120 ピン
122 縦断面形状部(ステップ関数型)
123 縦断面形状部(ステップ関数型)
124 縦断面形状部(ステップ関数型)
125 ピン
126 縦断面形状部(ノズルタッチ力一定型)
130 定常横断面形状部材
131 空洞部
132 縦断面形状変化部材
133 縦断面形状変化部材
134 縦断面形状変化部材
135 縦断面形状変化部材
136 縦断面形状変化部材
137 空洞部
138 プレート
139 ボルト
140 ピン
150 油圧式ノズルタッチ力発生装置
151 第二の電磁リリーフ弁
152 第一の回路
153 第三の電磁リリーフ弁
154 第二の回路
155 第二の電磁切換弁
156 第一の逆止弁
157 第二の逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上金型と下金型とが近接離間する縦型型締装置と、
上金型と下金型とで形成されるキャビティに溶融樹脂を射出充填する横置射出装置と、
ノズルタッチ力を検出するノズルタッチ力検出手段を有し、スライドベース上に載置された前記射出装置を前後に移動可能で、かつ前記金型のノズルタッチ当接面にタッチさせて樹脂洩れを防止するためのノズルタッチ力を発生する駆動手段を有するノズルタッチ力発生装置と、
前記スライドベース前部左右に配設されたネジ部に螺合し、前記スライドベース前部左右の高さを調節可能に基台上に配置される2本の調節ボルトと、前記スライドベース後部中央部に形成された凸部へ上下左右に回動可能に固設された揺動部材に頂部の凸部が嵌挿され、かつ上下動可能かつ回転不能に基台に配設される外周部に前記調節ボルトのネジピッチと同一のネジが施された軸部材で構成される3点で前記基台に支持され、前記基台から水平を維持したまま前記横置射出装置を載置した前記スライドベースを昇降する昇降装置と、
を具備した射出成形機のノズルタッチ力の調整方法において、
前記昇降装置の基準位置で前記上下金型のノズルタッチ当接面を既定値のノズルタッチ力(基準ノズルタッチ力)で押圧した際の、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる曲げ応力値(基準曲げ応力値)と、
前記昇降装置の昇降と共に前記基準位置からノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、変化したすべての高さ位置において前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる曲げ応力値(任意高さ位置での曲げ応力値)が、常に一定になるように、
ノズルタッチ力を調整する、
ことを特徴とするノズルタッチ力の調整方法。
【請求項2】
高さ方向に変化した際の前記ノズルタッチ力が、
高さの関数(高さ関数)と、
高さの変化に応じて前記軸部材の断面係数が変化する断面係数変化関数と、
前記基準ノズルタッチ力との積で構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のノズルタッチ力の調整方法。
【請求項3】
前記高さ関数が、
前記基台上面から、前記昇降装置の前記基準位置に配設された前記軸部材の頂部凸部の鉛直方向長さの中心線上に位置し、前記上下金型のノズルタッチ当接面を押圧する前記基準ノズルタッチ力の反力が作用する作用線上までの距離と、
前記基台上面から、前記昇降装置が昇降してノズルタッチ位置が変化しノズルタッチして前記金型を押圧した時の任意高さでの前記ノズルタッチ力の反力が作用する前記軸部材頂部凸部の作用線上までの距離の逆数との積で構成される、
ことを特徴とする請求項2に記載のノズルタッチ力の調整方法。
【請求項4】
前記軸部材の前記断面係数変化関数が、
前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、
前記軸部材の内部に第一の空洞部を設けて、前記第一の空洞部の縦断面形状を高さ方向の変化に応じて変化するような数学関数によって形成して、
構成されることを特徴とする請求項2に記載のノズルタッチ力の調整方法。
【請求項5】
前記数学関数が、
ステップ関数、放物曲線関数、楕円関数、双曲線関数、アステロイド関数、ウイッチ関数、ストロフォイド関数、シッソイド関数、Descartes正葉線関数、Cassini橙形関数、指数関数、対数曲線関数、三角関数、トラクトリック関数、トロコイド曲線関数、サイクロイド曲線関数、エピ・サイクロイド曲線関数、ハイポ・サイクロイド曲線関数、極座標曲線関数、正葉線関数、コンコイド曲線関数、セロイド曲線関数、Booth紐状線関数、及びこれらの関数の組み合わせによる複合的な曲線関数で、
構成されることを特徴とする請求項4に記載のノズルタッチ力の調整方法。
【請求項6】
前記軸部材の前記断面係数変化関数が、
前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、
前記軸部材の内部に第二の空洞部を設けて、ノズル高さ位置が変化した全ての高さ位置での前記ノズルタッチ力が、前記基準ノズルタッチ力と同じノズルタッチ力で前記金型のノズルタッチ当接面を押圧可能に、前記第二の空洞部の縦断面形状を高さ方向の変化に応じて変化するように形成して、
構成されることを特徴とする請求項2に記載のノズルタッチ力の調整方法。
【請求項7】
前記第一あるいは前記第二の空洞部を有する前記軸部材が、
前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、前記軸部材の高さ方向の変化に際して、同一横断面形状で形成される第三の空洞部と、第三の空洞の下部に位置し第三の空洞部の径より大きな径を有する同一横断面形状で形成される第四の空洞部とで構成される定常横断面形状部材と、
前記第四の空洞部の内周部に外周部が接し、前記第一あるいは前記第二の空洞部の前記縦断面形状を有する縦断面形状変化部材とで分離構成されて、
前記縦断面形状変化部材を前記定常横断面形状部材の下部から前記第四の空洞部に挿入して、
前記定常横断面形状部材とプレートで前記縦断面形状変化部材を挟着して一体に形成される、
ことを特徴とする請求項2及び請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のノズルタッチ力の調整方法。
【請求項8】
前記駆動手段が、
加熱筒を固設したハウジング下部に回動不能に取付けられたナットと、
一端が前記ナットに螺合し、他端が、前記スライドベース下面に固設された第一のプレートと第二のプレートでベアリングと前記ノズルタッチ力検出手段であるロードセルを挟着保持したベアリングボックスを回転自由に挿通し、且つ前記ナットと対向する側に第一のプーリを固設した、前記基台上部に位置し前記基台水平面に軸線が平行に配設するボールスクリュと、
前記基台下部に固着され回動軸部に第二のプーリを固設したサーボモータと、
前記第一と第二のプーリに張設されたタイミングベルトと、
で構成され、
前記ロードセルの信号から制御装置の記憶部に記憶されたデータに基づいて得られたノズルタッチ力を、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる前記任意高さ位置での曲げ応力値が、前記基準曲げ応力値と常に一定になるように決定された前記ノズルタッチ力と一致するように、前記サーボモータをトルク制御して制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のノズルタッチ力の調整方法。
【請求項9】
前記駆動手段が、
油圧ポンプ、第一の電磁リリーフ弁、第一の電磁切換弁、比例電磁リリーフ弁、前記圧力検出手段である圧力検出器、油圧シリンダから構成される油圧駆動装置であって、
前記油圧ポンプと前記第一の電磁リリーフ弁と前記第一の電磁切換弁で形成される油圧回路と、前記ノズルタッチ力を発生する前記油圧シリンダの油室側との間に、
下流側に前記圧力検出器を上流側に前記比例電磁リリーフ弁を配設して、
前記圧力検出器の信号から前記制御装置の記憶部に記憶されたデータに基づいて得られた油圧で押圧するノズルタッチ力を、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる前記任意高さ位置での曲げ応力値が、前記基準曲げ応力値と常に一定になるように決定された前記ノズルタッチ力と一致するように、前記比例電磁リリーフ弁を制御することで前記油圧シリンダの油圧力を制御して制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のノズルタッチ力の調整方法。
【請求項10】
前記油圧駆動装置の前記第一の電磁切換弁と前記油圧シリンダの管路間の、
前記圧力検出器と前記比例電磁リリーフ弁を取除き、
前記第一の電磁切換弁と前記第一の電磁リリーフ弁との間に、
前記第一の電磁リリーフ弁の設定圧力より低圧に維持される第二の電磁リリーフ弁と前記第二の電磁リリーフ弁の下流側に配設される第一の逆止弁とで構成される第一の回路と、
第二の電磁リリーフ弁の設定圧力より低圧に維持される第三の電磁リリーフ弁と前記第三の電磁リリーフ弁の下流側に配設される第二の逆止弁とで構成される第二の回路を並列に設けて、
更にその上流側に第二の電磁切換弁を配設して、
前記第二の電磁切換弁の切換操作により前記第一の回路と前記第二の回路を切換えて、
前記油圧シリンダに発生する油圧力を切換えるノズルタッチ力発生装置を用い、
前記昇降装置の最下降位置から昇降範囲の中間地点に位置する第一の高さまでの間は、前記第一の回路の油圧力で、
前記第一の高さを超えて前記昇降装置の最高位置である第二の高さまでの間は、前記第二の回路の油圧力でノズルタッチする、
ことを特徴とする請求項9に記載のノズルタッチ力の調整方法。
【請求項11】
上金型と下金型とが近接離間する縦型型締装置と、
上金型と下金型とで形成されるキャビティに溶融樹脂を射出充填する横置射出装置と、
ノズルタッチ力を検出するノズルタッチ力検出手段を有し、スライドベース上に載置された前記射出装置を前後に移動可能で、かつ前記金型のノズルタッチ当接面にタッチさせて樹脂洩れを防止するためのノズルタッチ力を発生する駆動手段を有するノズルタッチ力発生装置と、
前記スライドベース前部左右に配設されたネジ部に螺合し、前記スライドベース前部左右の高さを調節可能に基台上に配置される2本の調節ボルトと、前記スライドベース後部中央部に形成された凸部へ上下左右に回動可能に固設された揺動部材に頂部の凸部が嵌挿され、かつ上下動可能かつ回転不能に基台に配設される外周部に前記調節ボルトのネジピッチと同一のネジが施された軸部材で構成される3点で前記基台に支持され、前記基台から水平を維持したまま前記横置射出装置を載置した前記スライドベースを昇降する昇降装置と、
を具備した射出成形機のノズルタッチ力の調整装置において、
前記昇降装置の基準位置で前記上下金型のノズルタッチ当接面を既定値のノズルタッチ力(基準ノズルタッチ力)で押圧した際の、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる曲げ応力値(基準曲げ応力値)と、
前記昇降装置の昇降と共に前記基準位置からノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、変化したすべての高さ位置において前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる曲げ応力値(任意高さ位置での曲げ応力値)が、常に一定になるように、
ノズルタッチ力を調整する、
ことを特徴とするノズルタッチ力の調整装置。
【請求項12】
高さ方向に変化した際の前記ノズルタッチ力が、
高さの関数(高さ関数)と、
高さの変化に応じて前記軸部材の断面係数が変化する断面係数変化関数と、
前記基準ノズルタッチ力との積で構成される、
ことを特徴とする請求項11に記載のノズルタッチ力の調整装置。
【請求項13】
前記高さ関数が、
前記基台上面から、前記昇降装置の前記基準位置に配設された前記軸部材の頂部凸部の鉛直方向長さの中心線上に位置し、前記上下金型のノズルタッチ当接面を押圧する前記基準ノズルタッチ力の反力が作用する作用線上までの距離と、
前記基台上面から、前記昇降装置が昇降してノズルタッチ位置が変化しノズルタッチして前記金型を押圧した時の任意高さでの前記ノズルタッチ力の反力が作用する前記軸部材頂部凸部の作用線上までの距離の逆数との積で構成される、
ことを特徴とする請求項12に記載のノズルタッチ力の調整装置。
【請求項14】
前記軸部材の前記断面係数変化関数が、
前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、
前記軸部材の内部に第一の空洞部を設けて、前記第一の空洞部の縦断面形状を高さ方向の変化に応じて変化するような数学関数によって形成して、
構成されることを特徴とする請求項12に記載のノズルタッチ力の調整装置。
【請求項15】
前記数学関数が、
ステップ関数、放物曲線関数、楕円関数、双曲線関数、アステロイド関数、ウイッチ関数、ストロフォイド関数、シッソイド関数、Descartes正葉線関数、Cassini橙形関数、指数関数、対数曲線関数、三角関数、トラクトリック関数、トロコイド曲線関数、サイクロイド曲線関数、エピ・サイクロイド曲線関数、ハイポ・サイクロイド曲線関数、極座標曲線関数、正葉線関数、コンコイド曲線関数、セロイド曲線関数、Booth紐状線関数、及びこれらの関数の組み合わせによる複合的な曲線関数で、
構成されることを特徴とする請求項14に記載のノズルタッチ力の調整装置。
【請求項16】
前記軸部材の前記断面係数変化関数が、
前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、
前記軸部材の内部に第二の空洞部を設けて、ノズル高さ位置が変化した全ての高さ位置での前記ノズルタッチ力が、前記基準ノズルタッチ力と同じノズルタッチ力で前記金型のノズルタッチ当接面を押圧可能に、前記第二の空洞部の縦断面形状を高さ方向の変化に応じて変化するように形成して、
構成されることを特徴とする請求項12に記載のノズルタッチ力の調整装置。
【請求項17】
前記第一あるいは前記第二の空洞部を有する前記軸部材が、
前記軸部材の外周形状を鉛直方向に亘って同一形状の円または正多角形で形成すると共に、前記軸部材の高さ方向の変化に際して、同一横断面形状で形成される第三の空洞部と、第三の空洞の下部に位置し第三の空洞部の径より大きな径を有する同一横断面形状で形成される第四の空洞部とで構成される定常横断面形状部材と、
前記第四の空洞部の内周部に外周部が接し、前記第一あるいは前記第二の空洞部の前記縦断面形状を有する縦断面形状変化部材とで分離構成されて、
前記縦断面形状変化部材を前記定常横断面形状部材の下部から前記第四の空洞部に挿入して、
前記定常横断面形状部材とプレートで前記縦断面形状変化部材を挟着して一体に形成される、
ことを特徴とする請求項12及び請求項14乃至請求項16のいずれか1項に記載のノズルタッチ力の調整装置。
【請求項18】
前記駆動手段が、
加熱筒を固設したハウジング下部に回動不能に取付けられたナットと、
一端が前記ナットに螺合し、他端が、前記スライドベース下面に固設された第一のプレートと第二のプレートでベアリングと前記ノズルタッチ力検出手段であるロードセルを挟着保持したベアリングボックスを回転自由に挿通し、且つ前記ナットと対向する側に第一のプーリを固設した、前記基台上部に位置し前記基台水平面に軸線が平行に配設するボールスクリュと、
前記基台下部に固着され回動軸部に第二のプーリを固設したサーボモータと、
前記第一と第二のプーリに張設されたタイミングベルトと、
で構成され、
前記ロードセルの信号から制御装置の記憶部に記憶されたデータに基づいて得られたノズルタッチ力を、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる前記任意高さ位置での曲げ応力値が、前記基準曲げ応力値と常に一定になるように決定された前記ノズルタッチ力と一致するように、前記サーボモータをトルク制御して制御する、
ことを特徴とする請求項11乃至請求項17のいずれか1項に記載のノズルタッチ力の調整装置。
【請求項19】
前記駆動手段が、
油圧ポンプ、第一の電磁リリーフ弁、第一の電磁切換弁、比例電磁リリーフ弁、前記圧力検出手段である圧力検出器、油圧シリンダから構成される油圧駆動装置であって、
前記油圧ポンプと前記第一の電磁リリーフ弁と前記第一の電磁切換弁で形成される油圧回路と、前記ノズルタッチ力を発生する前記油圧シリンダの油室側との間に、
下流側に前記圧力検出器を上流側に前記比例電磁リリーフ弁を配設して、
前記圧力検出器の信号から前記制御装置の記憶部に記憶されたデータに基づいて得られた油圧で押圧するノズルタッチ力を、ノズルタッチ位置が高さ方向に変化した際に、前記基台上面位置で前記軸部材に掛かる前記任意高さ位置での曲げ応力値が、前記基準曲げ応力値と常に一定になるように決定された前記ノズルタッチ力と一致するように、前記比例電磁リリーフ弁を制御することで前記油圧シリンダの油圧力を制御して制御する、
ことを特徴とする請求項11乃至請求項17のいずれか1項に記載のノズルタッチ力の調整装置。
【請求項20】
前記油圧駆動装置の前記第一の電磁切換弁と前記油圧シリンダの管路間の、
前記圧力検出器と前記比例電磁リリーフ弁を取除き、
前記第一の電磁切換弁と前記第一の電磁リリーフ弁との間に、
前記第一の電磁リリーフ弁の設定圧力より低圧に維持される第二の電磁リリーフ弁と前記第二の電磁リリーフ弁の下流側に配設される第一の逆止弁とで構成される第一の回路と、
第二の電磁リリーフ弁の設定圧力より低圧に維持される第三の電磁リリーフ弁と前記第三の電磁リリーフ弁の下流側に配設される第二の逆止弁とで構成される第二の回路を並列に設けて、
更にその上流側に第二の電磁切換弁を配設して、
前記第二の電磁切換弁の切換操作により前記第一の回路と前記第二の回路を切換えて、
前記油圧シリンダに発生する油圧力を切換えるノズルタッチ力発生装置を用い、
前記昇降装置の最下降位置から昇降範囲の中間地点に位置する第一の高さまでの間は、前記第一の回路の油圧力で、
前記第一の高さを超えて前記昇降装置の最高位置である第二の高さまでの間は、前記第二の回路の油圧力でノズルタッチする、
ことを特徴とする請求項19に記載のノズルタッチ力の調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−39801(P2013−39801A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179652(P2011−179652)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】