説明

ノルオキシモルホン化合物の精製方法

本発明は、実質的にノルオキシモルホン化合物からなり、汚染物としてα,β位不飽和ノルオキシモルホン類を含む植物抽出物の精製方法に関するものである。その方法は、(a)植物抽出物または特定のノルオキシモルホン化合物の合成における後の段階での生成物を、混合物中に存在するヒドロキシル基を式−ORの脱離基(Rは脱離基の挿入基を表す)に変換する反応で反応させる段階;(b)適宜に脱離基を脱離させる段階;(c)それによって得られた混合物について選択的水和を行って、不飽和ノルオキシモルホン化合物のα,β位に飽和結合を形成し、まだ残っている脱離基をそれぞれ水酸基に変換する段階;そして適宜に(d)純粋なノルオキシモルホン化合物を単離する段階を有する。本発明はまた、非常に精製されたノルオキシモルホンの製造、ナルトレキソンもしくはナロキソンまたはこれら化合物の塩、またはこれら化合物の4級誘導体に関するものでもある。本発明は最後に、本発明の化合物を含む医薬組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルオキシモルホン化合物の精製方法に関する。本発明はさらに、純粋なノルオキシモルホン化合物、特にはナルトレキソンおよびナロキソン、特には純粋なナルトレキソンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノルオキシモルホンは、化学的には7,8−ジヒドロ−14−ヒドロキシノルモルヒノンまたはα,β−ジヒドロ−14−ヒドロキシノルモルヒノンと称され、下記式に相当する。
【化1】

【0003】
ノルオキシモルホン化合物およびそれらの製造については、例えばDE2727805に記載されている。ノルオキシモルホンの特定の誘導体は、ナルトレキソンと称される化合物であり、それは下記化学式に相当する。
【化2】

【0004】
ナルトレキソンならびにそれの誘導体および塩、例えばナルトレキソン塩酸塩、N−メチルナルトレキソンブロマイド(メチルナルトレキソン)またはナルトレキソンメトブロマイドは、特には薬物乱用の場合の心理的な依存を軽減するのに用いられる公知の医薬活性化合物である。ナルトレキソンメトブロマイドは、例えば麻酔薬の副作用を防ぐためのミュー受容体の拮抗薬として用いられる。ナロキソン(CAS番号465−65−5)は、窒素原子上でアリル基によって置換され、同様に医薬活性である。モルヒネ誘導体であるこれらの化合物は、ヒナゲシのモルヒネ様アルカロイド類に由来する前駆体から合成される。この複雑な種類の天然物質の全合成は複雑であることから、ノルオキシモルホン化合物合成のための原料は、抽出によって植物源から得られる。しかしながら、このケシの場合、植物の抽出によって、一つの個別の化合物のみが選択的に得られるのでははなく、多くの構造的に類似する化合物の混合物が得られる。これらの抽出化合物の多くが有毒であるか、さらなる化学変換、例えばオキシモルホン、ノルオキシモルホンおよびナルトレキソンを得るためのさらなる合成の途中で有毒化合物を生じる。特に問題となる不純物は、α,β−不飽和化合物であることが認められており、例えば下記式(Ia)、(Ib)および(Ic)の化合物がある。
【化3】

【0005】
同様に、これら化合物の可能な前駆体、例えば相当するα−置換および/またはβ−置換アルコールが植物抽出物混合物中に不純物として存在する可能性があり、それらは次に、α,β−不飽和化合物、例えば式(Ia)、(Ib)および(Ic)の化合物を形成し得る。さらに、別のα,β−不飽和有毒化合物が、上記の植物抽出物を原料とするナルトレキソンの製造において形成される可能性があり、そのような化合物は、変異原性、催奇性および/または発癌性である可能性がある。従って、ナルトレキソンおよびナルトレキソン誘導体中でのこれら化合物の限界値は、100ppmまで下げられており、場合によっては10ppmとなっている。しかしながら、そのような規格は、公知の方法によって植物源から抽出された原料から出発して合成される生成物についてほとんど満足できないものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、ノルオキシモルホン化合物に加えて、相当するα,β−不飽和化合物とさらには不純物を含む植物抽出物、または特定のノルオキシモルホン化合物の合成における後の段階の生成物について、(a)混合物中に存在するヒドロキシル基を脱離基に変換する反応を行い、(b)これらの脱離基を適宜に再度脱離させ、次に(c)得られた混合物について選択的水素化を行うと、上記α,β−不飽和化合物について言及された10ppmという限界値を満足するかそれ以下とすることが可能であることが認められている。
【0007】
反応生成物について行う可能性がある単離を含めた段階(a)および段階(b)の後処理は、好ましくは非水系媒体中、やはり好ましくは非アルコール系媒体中で行う。脱離基を脱離させてから、水素化を行うことが好ましい。その水素化、すなわち段階(c)は、非プロトン性溶媒の存在下に、そして温和な条件下にて、水およびアルコール類などのプロトン系溶媒中で行うことができる。その水素化後、加水分解によって、まだ存在している脱離基をさらに脱離させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
混合物中に存在するヒドロキシル基の脱離基への変換[段階(a)]およびそれに続く適宜のこれら脱離基の脱離[段階(b)]の結果として、代表的には約1000ppmの量的レベルで原料中に存在する全ての重要な不純物が、それらがHPLCによってもはや分析的に検出されない程度まで水素化[段階(c)]で除去される。
【0009】
特に驚くべき点として、粗生成物、すなわち植物抽出物の本発明による前処理の結果として、前記水素化が非常に選択的に作用することで、全ての重要な副生成物が実質的に完全に除去されると同時に、所望のヒドロキシル基が、ノルオキシモルホン化合物中の脱離基から再度形成され、その際に存在するケト基は水素化されたり、脱離されたり、ヒドロキシル基に変換されたりしない。そのような高純度は、粗混合物の単純な水素化によっては得ることはできない。植物抽出物混合物中に不純物として存在するノルオキシモルホン化合物の推定される前駆体、例えば相当するα−置換および/またはβ−置換アルコールが、段階(a)または段階(a)と(b)で本発明の反応によって、それら生成物またはこれら反応からの後の生成物(例えば脱離生成物)が段階(c)における水素化によってメチレン基に変換される程度まで変化するものと予想される。しかしながら、本発明はこの説明に拘束されるものではない。
【0010】
本発明によれば、例えばノルオキシモルホンの製造において、またはそれのさらなる処理によるナルトレキソンもしくはナロキソンおよびそれらの塩への変換において、原料または中間体もしくは最終生成物、すなわちナルトレキソンもしくはナロキソン、好ましくは原料混合物もしくは中間体について、段階(a)および段階(b)で本発明の処理を行い、次に水素化することも可能である。
【0011】
その原料混合物は、下記のオキシモルホン:
【化4】

【0012】
からなるものであり、それは植物材料から抽出されるテバインまたはオリパビンの天然物質から製造されたものである。
【0013】
本発明は、本質的に下記式(II)のノルオキシモルホン化合物からなり、不純物として、α,β−不飽和ノルオキシモルホン化合物およびさらなる汚染物であるノルオキシモルホン化合物を含む植物抽出物の精製方法において、
【化5】

【0014】
[式中、Rは、水素、フェニル置換もしくは塩素置換されていても良い(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルケニルまたは自体が公知である分離可能な脱離基である。]、(a)前記植物抽出物または特定のノルオキシモルホン化合物合成におけるその後の段階の生成物を、混合物中に存在するヒドロキシル基を式−ORの脱離基に変換する反応[式中、Rは前記脱離基の導入基である]で変換し、(b)これらの脱離基を、再度分離させても良く、次に(c)得られた混合物について選択的水素化を行って、前記汚染されたノルオキシモルホン化合物のα,β−位に飽和結合を形成し、残留する脱離基をそれぞれヒドロキシル基に変換し、次に(d)純粋なノルオキシモルホン化合物を単離しても良いことを特徴とする方法に関するものである。
【0015】
本発明はさらに、本発明による方法によって精製される式(II)のオキシモルホン化合物またはそのような化合物の混合物、ならびにそのような化合物を含む医薬製剤に関するものである。
【0016】
は好ましくは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルケニルまたは脱離基であり;好ましくは(C〜C)−アルキル、アリルまたは水素、好ましくは(C〜C)−アルキルまたは水素である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
脱離基としてのRは好ましくは、(C〜C)−アルキルオキシカルボニル[(C〜C)−アルキル−O−C(O)−]またはフェニルオキシカルボニル[フェニル−O−C(O)−]、好ましくはエチルオキシカルボニル、イソブチルオキシ−カルボニルまたはtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、シクロヘキシルオキシ−カルボニル、好ましくはエチルオキシカルボニルまたはtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)である。その基の導入手順はそれ自体は公知であり、一般式(II)の化合物(式中、Rは水素または置き換え可能な基である)を、例えば無水Boc(Boc−O−Boc){[(CHC−O−C(O)]−O}またはBocカーバメート[(CHC−O−C(O)−N(C1−4−アルキル)]と反応させることで行う。そのような基およびそれらの窒素原子上への導入は、それ自体が公知である。
【0018】
式(II)の化合物が最終生成物である場合、その式中のRは好ましくは、メチレンシクロプロピル(−CH−C)またはアリル(−CH−CH=CH)である。Rがメチレンシクロプロピルでもアリルでもない化合物または化合物混合物を水素化することが好ましく、好ましい最終生成物は、その水素化生成物から製造される。
【0019】
「本質的に式(II)のノルオキシモルホン化合物からなり、不純物としてα,β−不飽和ノルオキシモルホン化合物およびさらなる汚染物であるノルオキシモルホン化合物を含む」という定義は、固体としての植物抽出物が合計でほぼ少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%および好ましくは少なくとも約90重量%のノルオキシ−モルホン化合物を含み、汚染物であるノルオキシモルホン化合物に対する式(II)のノルオキシモルホン化合物の比率が、約0.200重量%〜0.001重量%の汚染物化合物に対する99.800重量%〜99.999重量%の式(II)のノルオキシモルホン化合物という範囲にほぼあり、抽出物中に存在する全ての固体の合計が100重量%となることを意味する。
【0020】
式−ORの脱離基において、−ORは好ましくは、エステル部分、例えばホルミルエステル基[R=HC(O)−]、アセチルエステル基[R=CHC(O)−、メチルカルボニル]、トリクロロアセチルエステル基[R=CClC(O)−]、トリフルオロアセチルエステル基[R=CFC(O)−、トリフルオロメチルカルボニル]、ベンゾイルエステル基[R=CC(O)−]、置換されていても良いベンジルエステル基、またはRが好ましくはメチルスルホニル、ベンジルスルホニルもしくはp−トルエンスルホニルであるスルホン酸のエステルを形成している。あるいは、−ORは、Rが(C〜C)−アルキルオキシカルボニルまたはフェニルオキシカルボニル;好ましくはエチルオキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニルまたはtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、シクロヘキシルオキシカルボニル、好ましくはエチルオキシカルボニルまたはtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)である炭酸エステル部分を形成していても良い。
【0021】
例えばアセチルまたはtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)の導入の場合のように、エステル部分を形成する手順はそれ自体が公知であり、一般式(II)の化合物を無水酢酸もしくは塩化アセチルまたは無水Boc(Boc−O−Boc){[(CHC−O−C(O)]−O}と反応させることで行われる。この場合のアセチルおよびBocは、同様に反応する他の化合物、すなわちメチルまたはtert−ブチル基が同じ反応性の別の基によって置き換わっている化合物を表す。脱離基は通常、反応の途中で、例えば段階(b)または水素化で脱離されるが、それらはさらに、水素化後に自体が公知の方法で脱離させることができ、それは特定の場合には必要となる。
【0022】
酸塩化物または酸無水物、例えば無水酢酸、塩化アセチル、無水トリフルオロ酢酸、メタンスルホニルクロライド、無水メタンスルホン酸、トルエンスルホニルクロライドおよびそれ自体公知の関連化合物との反応による脱離基の導入または誘導体化が好ましい。
【0023】
の脱離基への変換は、Rがアルキル基である場合は、類似の反応についての文献から公知であり、本明細書においてさらに説明する必要はない。
【0024】
水が存在すると、水および恐らくはアルコールのα,β−不飽和化合物への付加の結果として、不純物、特にはα位もしくはβ位におけるアルコールの形成が生じ得ることから、脱水媒体中、好ましくはさらにはアルコールを含まない媒体中で段階(a)で得られた反応混合物についてさらに変換を行うことが好ましい。これは、段階(a)の後処理および反応生成物の可能な単離を含めた段階(b)による脱離基の脱離にも当てはまる。段階(c)による水素化は、水系および/またはアルコール性溶媒中温和な条件下で行うことができる。無水で好ましくはアルコールを含まない媒体中でのそのような処理においては、特には非プロトン系溶媒、例えばtert−ブチルエーテル類が好適である。
【0025】
段階(a)による脱離基は、反応混合物、適宜に加熱しながら、上記のアシル化剤で反応混合物を処理することで導入される。その後、有機溶媒、例えばMTBE(メチルtert−ブチルエーテル)を加えることで、生成物が沈殿する。
【0026】
段階(b)での脱離基の脱離手順は好ましくは、適宜に例えばTHF、ジオキサンまたは酢酸エチルなどの非プロトン性溶媒中のカリウムtert−ブトキシドもしくは水酸化リチウムなどの塩基を加えて、非水系溶媒中、適切であれば数時間にわたり、好ましくはTHF、ジオキサン、酢酸エチル、MTBE、DMF、DMSOなどの非プロトン性溶媒中にて段階(a)からの反応生成物を加熱するというものである。その生成物については好ましくは、次に非プロトン性溶媒を加えることで沈殿させる。
【0027】
水素化条件はそれ自体公知であり、例えばEP0158476、WO99/02529、WO95/32973またはWO91/05768で言及されている。本発明によれば、段階(c)おける水素化の場合、元素状の水素および/または元素状水素をin situで発生させる条件もしくは化合物を用いる水素化条件が好ましい。この文脈において、本発明によれば、段階(c)における水素化に関して、水素源としての元素状水素、シクロヘキセンおよび/またはシクロヘキサジエン(水素放出を伴って反応してベンゼンを与える)および/またはギ酸アンモニウム(水素放出を伴って分解して、二酸化炭素およびアンモニアを与える)または適宜に可溶化のために水を添加した極性有機溶媒類からの溶媒中における例えば水素化触媒を用いる水素化条件が好ましい。そのような水素化触媒について下記で説明する。転移水素化(transfer hydrogenation)は、標準圧力で行うことができ、それ自体公知である。
【0028】
均一もしくは不均一形態での貴金属触媒を用いる接触水素化が特に好ましい。そのような貴金属触媒は好ましくは、元素の周期表の遷移金属の族の化合物から選択され、特には周期表のVIII族の金属、それらの化合物および錯体から選択され、特別にはルテニウム(Ru)およびオスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)から選択される。ロジウム、パラジウムおよび白金、特別にはパラジウムが好ましい。これらの金属は、それ自体公知の方法で水素化触媒として用いられる。従って、不均一形態で水素化を行うことが可能であり、その場合、触媒は、担体材料に付与、好ましくは活性炭もしくはアルミナまたは自体が公知である他の担体材料、好ましくは活性炭に付与されている。
【0029】
これらの金属の化合物は好ましくは、均一触媒、好ましくはパラジウム化合物として用いることもできる。そのようなパラジウム化合物の例には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムならびに配位子トリ(2−トリル)ホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン類、トリ(tert−ブチル)ホスフィンまたは二座配位子dppm[1,1−ビス(ジフェニルホスフィノメタン)]、dppe[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]および関連化合物を有する相当する錯体およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム−クロロホルム錯体などのPd(0)化合物、ならびにPd(II)化合物、好ましくはPdCl、Pd(dppe)Cl、Pd(OAc)、Pd(dppe)(OAc)、π−アリル−Pd錯体、好ましくはπ−アリルパラジウムクロライド二量体がある。Pd(0)化合物が好ましい。これらの化合物、塩および錯体は自体が公知であり、文献に記載されている。
【0030】
触媒は、触媒量で使用し、粗反応物の重量基準で、好ましくは0.0005〜0.01重量%の貴金属量で、好ましくは約0.001〜0.005重量%の貴金属量で用いる。しかしながら、ここに指定した上限は必須のものではない。従って、より多くの量の触媒、例えば粗生成物基準で等モル量で用いることも可能である。しかしながら、これは通常は必要ない。
【0031】
前記水素化は好ましくは、水素ガスで、適宜に水を加えて、好ましくは不活性溶媒中、例えば有機酸、好ましくは氷酢酸、ギ酸、プロピオン酸またはこれら化合物の混合物中;アルコール中、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールまたはこれら化合物の混合物中;ニトリル中、好ましくはアセトニトリルおよび/またはプロピオニトリル中;ケトン中、好ましくはアセトンおよび/または2−ブタノン中;酢酸エチルなどのエステル中、極性非プロトン性溶媒中、好ましくはジメチルホルムアミド(DMF)もしくはジメチルスルホンアミド(DMSO)中にて行う。プロトン性溶媒が好ましく、特にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、または非プロトン性極性溶媒、好ましくはアセトン、DMF、アセトニトリル、適宜に1〜99重量%の水との混合物で、好ましくは有機酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ギ酸、好ましくは酢酸の存在下に、好ましくは0.1重量%〜99重量%の濃度とする。水素化は好ましくは、0℃〜150℃の範囲、好ましくは20℃〜100℃の範囲の温度で、好ましくは標準圧力〜100バールの範囲、好ましくは標準圧力〜10バールの範囲の圧力で行う。
【0032】
水素に代えて、反応、例えばギ酸アンモニウム、シクロヘキセンおよび/またはシクロヘキサジエンを用いる転移水素化でin situで水素を放出する化合物を用いることも可能である。この場合、試薬の触媒作用によって、前述の反応で水素が脱離する。
【0033】
本発明はまた、本質的にノルオキシモルホンからなり、汚染物であるノルオキシモルホン化合物を含む植物抽出物から純粋なノルオキシモルホンを製造する方法において、上記式(II)のオキシモルホン(Rはメチルである)を最初に植物抽出物として加え、(a)前記植物抽出物を、混合物中に存在するヒドロキシル基が式−ORの脱離基(Rは、Rについて前述したものなどの脱離基の導入された基、好ましくはアシル、好ましくはアセチルである)に変換する反応で反応させ;
(a1)N−メチル基[式(II)の化合物のRの定義に相当]を除去し、脱離基R(Rは、Rについて前述したものなどの脱離基であり、好ましくはアルキルオキシカルボニル、好ましくはエチルオキシカルボニルまたはBoc、好ましくはエチルオキシカルボニルである)によって置き換え;
(a2)脱離基RおよびRを、段階(a)および(a1)から得られた反応生成物から脱離させても良く;
(b)段階(a)、(a1)および/または(a2)で得られた生成物のうちの少なくとも一つ、好ましくは段階(a1)または(a2)で得られた生成物のうちの一つ、好ましくは段階(a2)での生成物について、上記の選択的水素化反応を行い、
(c)純粋なノルオキシモルホン化合物を単離しても良い
ことを特徴とする方法に関するものでもある。
【0034】
段階(a2)で得られた生成物をさらに処理して、好ましくはナルトレキソンもしくはナロキソンまたはこれら化合物の塩またはこれら化合物の4級誘導体、好ましくは塩酸塩、臭化水素酸塩、メトクロライドまたはメトブロマイド、好ましくはナルトレキソンの相当する塩もしくは4級誘導体を得ることもできる。
【0035】
選択的水素化は脱離基も脱離させるが、これらは段階(a2)で別個におよび/または必要な場合には水素化後の反応完了のために行っても良い。
【0036】
段階(a)において、オキシモルホンを無水酢酸によって好ましくはエステル化して、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を得て、無水条件下に後処理し、単離して、ジアセチルオキシモルホン(R=アセチル)を得る。
【0037】
段階(a1)において、非プロトン性溶媒、好ましくはアセトニトリル中でクロルギ酸エチルによる変換を行い、KCOなどでの塩基性条件下で脱メチルを行ってRがエトキシカルボニルであるオキシモルホン化合物を単離し、あるいは得られる化合物が相当するジアセチルオキシモルホンエトキシカーバメートであることが好ましい。
【0038】
段階(a2)において、段階(a)および(a1)から得られた反応生成物から脱離基RおよびRを脱離させる。このために、非水系溶媒中、好ましくはTHF、ジオキサン、酢酸エチル、MTBE、DMF、DMSOなどの非プロトン性溶媒中、適切であれば数時間かけて、適切であれば例えばTHF、ジオキサン、酢酸エチルという非プロトン性溶媒中のカリウムtert−ブトキシドもしくは水酸化リチウムなどの塩基を加えて、段階(a)または(a1)からの反応生成物を加熱する。次に、好ましくは、非プロトン性溶媒を加えることで生成物を沈殿させる。
【0039】
段階(b)では、単離された生成物、例えばジアセチルオキシモルホンエトキシカーバメートを、好ましくは氷酢酸に溶かし、パラジウム/活性炭を触媒として上記の条件下に水素ガスを導入することで水素化する。次に、反応混合物に40%硫酸を加えることで、残った脱離基RおよびRを脱離させて、硫酸ノルオキシモルホンを形成し、それを単離しても良い。例えばアンモニアのエタノール/水溶液を加えることによる塩基の添加によって、反応混合物を中和し、後処理することが可能となり、遊離ノルオキシモルホンを単離することが可能となる。遊離ノルオキシモルホンは弱アルカリpH、好ましくはpH8〜10で水/エタノール混合物に不溶であり、pHを調節すると結晶固体として沈殿し、それによってそれを濾過することができる。単離されたノルオキシモルホンでは、HPLCによってα,β−不飽和化合物は全く検出されない。そうして、このようにして得られるノルオキシモルホンをさらに処理して、好ましくは非常に純粋なナルトレキソンまたはナロキソン(CAS番号465−65−5)を得たり、塩または4級誘導体を得ることができる。好ましい塩は、塩酸塩および臭化水素酸塩である。好ましい4級誘導体は、化合物ナルトレキソンメトブロマイド(メチルナルトレキソンとも称される)またはナロキソンメトブロマイド[メチルナロキソン(CAS番号73232−50−5)とも称される]である。ナルトレキソン塩酸塩もしくは臭化水素酸塩およびナルトレキソンメトブロマイドが好ましい。
【0040】
本発明に従って製造されるノルオキシモルホンを処理して、例えば非常に純度の高いナルトレキソンもしくは非常に純度の高いナロキソンを得たり、またはこれら化合物の非常に純度の高い塩もしくは4級誘導体を得ることができる。
【0041】
この文脈において、本発明は、ノルオキシモルホン原料を適切なアルキル化剤、すなわちシクロプロピルメチルブロマイド(ナルトレキソンの場合)または臭化アリル(ナロキソンの場合)と反応させ、さらにはナルトレキソンまたはナロキソン生成物を酸、好ましくは希塩酸もしくは臭化水素と反応させて、相当する塩、ここで記載の場合では塩酸塩もしくは臭化水素酸塩を得るか;あるいは別のアルキル化剤、好ましくは臭化メチルと反応させて、ナルトレキソンメトブロマイドまたはナロキソンメトブロマイドを得ることによって、重要なオレフィン系不純物が検出限界以下であるナルトレキソンおよびナロキソンの非常に純度の高い塩および4級誘導体、好ましくは塩またはナルトレキソンの製造方法において、少なくとも出発原料または中間体もしくは最終生成物として得られた段階(a)もしくは(b)の生成物、好ましくは中間体として得られた段階(a)もしくは(b)の生成物、好ましくは段階(b)の生成物について、上記の水素化反応を行うことを特徴とする方法に関するものである。下記の実施例は、本発明を説明するものである。
【実施例1】
【0042】
[ジアセチルオキシモルホン(DAOM)の製造、脱離基の直接脱離による脱離基の導入]
オキシモルホン20gを、tert−ブチルメチルエーテル10gおよび無水酢酸21g(3.24当量)の混合物に室温で懸濁させる。反応溶液を還流下に5時間加熱する。その後、冷却し、tert−ブチルメチルエーテル70gを加える。その懸濁液を再度還流温度まで加熱し、冷却して0〜4℃とし、沈殿が完了するまでさらに攪拌する。生成物を吸引濾過し、tert−ブチルメチルエーテルで洗浄し、90℃で減圧下に乾燥させて恒量とする。収量:23g(使用したオキシモルホンに基づいて91%);HPLC純度:98%、生成物は、微量(約1000ppm)のα,β−不飽和化合物を含み、3,8,14−トリアセチルオキシモルホンは検出できない。
【実施例2】
【0043】
[微量の3,8,14−トリアセチルオキシモルホンを含むジアセチルオキシモルホン(DAOM)の製造;脱離基の導入]
オキシモルホン20gを、tert−ブチルメチルエーテル10gおよび無水酢酸21g(3.24当量)の混合物中に室温で懸濁させる。反応溶液を、最高30〜40℃で48時間加熱する。次に、冷却し、tert−ブチルメチルエーテル70gを加える。混合物を冷却して0〜4℃とし、沈殿が完了するまで攪拌する。生成物を吸引濾過し、tert−ブチルメチルエーテルで洗浄し、30℃で減圧下に乾燥させて恒量とする。収量:26.8g(使用したオキシモルホン基準で91%);HPLC純度:98%、生成物は微量の3,8,14−トリアセチルオキシモルホンを含む。
【実施例3】
【0044】
(ジアセチルオキシモルホンカーバメートの製造)
ジアセチルオキシモルホン30gを、有機溶媒(アセトニトリル74g)中にてクロルギ酸エチル66g(8当量)および不均一塩基(炭酸カリウム1当量)とともに懸濁させ、高温(65〜68℃)で数時間(24〜28時間)加熱する。反応終了後、アセトニトリルおよびクロルギ酸エチルを減圧下に留去する。アセトニトリル73gを残留物に加える。次に、不均一塩基(KHCO/KCO)を室温で濾去する。減圧下にアセトニトリルを留去し、沈殿を完了させるために、tert−ブチルメチルエーテル60gを加える。還流温度まで加熱し、混合物を冷却して0〜5℃とし、さらに攪拌した後、沈殿固体を吸引濾過し、最初にtert−ブチルメチルエーテルで、次に水で洗浄する。無色生成物を、80℃で減圧下に乾燥させて恒量とする。HPLCによれば、生成物は>1000ppmのα,β−不飽和化合物を含む。
【0045】
収量:29g(使用したジアセチルオキシモルホンに基づいて86%)。HPLC純度:>95%。
【実施例4】
【0046】
[微量の3,8,14−トリアセチルオキシモルホンを含む3,14−ジアセチルオキシモルホン(DAOM)の3,8,14−トリアセチルオキシモルホンを含まない3,14−ジアセチルオキシモルホン(DAOM)への変換;脱離基の脱離]
微量の3,8,14−トリアセチルオキシモルホンを含むジアセチルオキシモルホン20gを、tert−ブチルメチルエーテル20gおよび酢酸3〜5gの混合物中に室温で懸濁させる。反応溶液を70℃で10〜15時間加熱する。その後、冷却し、tert−ブチルメチルエーテル70gを加える。混合物を冷却して0〜4℃とし、沈殿が完了するまで攪拌する。生成物を吸引濾過し、tert−ブチルメチルエーテルで洗浄し、30℃で減圧下に乾燥させて恒量とする。収量:15.7g(使用したジアセチルオキシモルホンに基づいて91%);HPLC純度:98%、生成物は約1000ppmのα,β−不飽和化合物を含み、3,8,14−トリアセチルオキシモルホンは検出できない。
【実施例5】
【0047】
(脱離基存在下での水素化)
実施例2に従って製造された微量の3,8,14−トリアセチルオキシモルホンを含むジアセチルオキシモルホン20gを、室温で氷酢酸60gに溶かす。含水パラジウム/活性炭0.6g(乾燥物基準で10%Pd、含水量約50%)をそれに加える。次に、内部温度50〜60℃および2.7バールで水素ガスを導入する。その水素化後、触媒を濾去し、溶液を減圧下に濃縮して半量とする。次に、MTBEを加え、混合物を冷却して0〜4℃とする。生成物を吸引濾過し、MTBEで洗浄し、70℃で真空乾燥する。純度:98%;α,β−不飽和化合物も3,8,14−トリアセチルオキシモルホンも検出できない。収率85%(使用したジアセチルオキシモルホンに基づいたジアセチルオキシモルホン)。
【実施例6】
【0048】
(脱離基の脱離を伴う水素化;ノルオキシモルホンの製造)
実施例3に従って製造したジアセチルオキシモルホンカーバメート30gを、室温で氷酢酸60gに溶かす。含水パラジウム/活性炭0.6g(乾燥物基準で10%Pd、含水量約50%)をそれに加える。次に、内部温度50〜60℃および2.7バールで水素ガスを導入する。水素化後、触媒を濾去し、減圧下に溶液を濃縮して半量とする。その濃縮氷酢酸溶液に、3倍体積の40%硫酸を加える。還流下に、カーバメートを煮沸して、遊離アミンを得る。この途中で、生成物は硫酸塩として析出する。形成された塩を濾過し、少量の冷エタノールで洗浄する。得られた固体を水/エタノールに溶かし、アンモニア水溶液でpHを9とする。このpHで、遊離ノルオキシモルホンは沈殿し、それを濾過する。α,β−不飽和副生成物はHPLC分析によって全く検出されない。収率:70〜75%(使用したジアセチルオキシモルホンカーバメートに基づいて)。
【0049】
HPLC純度:>98%、α,β−不飽和化合物も3,8,14−トリアセチルオキシモルホンも検出できない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に下記式(II)のノルオキシモルホン化合物からなり、不純物として、α,β−不飽和ノルオキシモルホン化合物およびさらなる汚染物であるノルオキシモルホン化合物を含む植物抽出物の精製方法において、
【化1】

(式中、Rは、水素、フェニル置換もしくは塩素置換されていても良い(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルケニルまたは自体が公知である分離可能な脱離基、好ましくはカーバメート基である)、(a)前記植物抽出物または特定のノルオキシモルホン化合物合成におけるその後の段階の生成物を、混合物中に存在するヒドロキシル基を式−ORの脱離基に変換する反応(式中、Rは前記脱離基の導入基である)で変換し、(b)これらの脱離基を、再度分離させても良く、次に(c)得られた混合物について選択的水素化を行って、前記汚染されたノルオキシモルホン化合物のα,β−位に飽和結合を形成し、残留する脱離基をそれぞれヒドロキシル基に変換し、次に(d)純粋なノルオキシモルホン化合物を単離しても良いことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記脱離基を脱離させてから前記水素化を行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応生成物の可能な単離を含む段階(a)および段階(b)の前記後処理を、非水系媒体中、好ましくは非アルコール性媒体中で行う請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水素化[段階(c)]を、非プロトン性溶媒またはプロトン性溶媒の存在下、好ましくは水およびアルコール類の存在下に行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水素化[段階(c)]後になお存在する脱離基を加水分解によって脱離させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
が水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルケニルまたは脱離基;好ましくは(C〜C)−アルキル、アリルまたは水素、好ましくは(C〜C)−アルキルまたは水素であり、前記式(II)の化合物が最終生成物である場合、その式中のRは好ましくはメチレンシクロプロピルまたはアリルである請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記脱離基としてのRが、(C〜C)−アルキルオキシカルボニルまたはフェニルオキシカルボニル、好ましくはエチルオキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、またはtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、シクロヘキシルオキシカルボニル、好ましくはエチルオキシカルボニルまたはtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記式−ORの前記脱離基が、エステル部分、好ましくはホルミルエステル基、アセチルエステル基、トリクロロアセチルエステル基、トリフルオロアセチルエステル基、ベンゾイルエステル基、置換されていても良いベンジルエステル基である、すなわち前記−OR基中のRがホルミルカルボニル、メチルカルボニル、トリクロロメチルカルボニル、トリフルオロメチルカルボニル、フェニルカルボニル、置換されていても良い、置換されていても良いフェニルカルボニルであるか、−ORが、Rがメチルスルホニル、ベンジルスルホニルもしくはp−トルエンスルホニルであるスルホン酸のエステル部分である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
−ORが炭酸エステル部分であり;Rが、(C〜C)−アルキルオキシカルボニルまたはフェニルオキシカルボニル;好ましくはエチルオキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニルまたはtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、シクロヘキシルオキシカルボニル、好ましくはエチルオキシカルボニルまたはtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
がメチレンシクロプロピルでもアリルでもない植物抽出物を水素化し、Rがメチレンシクロプロピルまたはアリルである前記化合物をこの水素化生成物から製造する請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
固体としての前記植物抽出物が、合計でほぼ少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも約90重量%のノルオキシモルホン化合物を含み、前記汚染物であるノルオキシモルホン化合物に対する前記式(II)の前記ノルオキシモルホン化合物の比率がほぼ、約0.200重量%〜0.001重量%の汚染物である化合物に対して99.800重量%〜99.999重量%の前記式(II)のノルオキシモルホン化合物という範囲にあり、前記抽出物中に存在する全ての固体が合計で100重量%となる請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
元素状水素および/またはin situで元素状水素を発生させる化合物を前記水素化に用いる請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
極性有機溶媒類および水から選択される溶媒中、水素化触媒存在下に、元素状水素、シクロヘキセン、シクロヘキサジエンおよび/またはギ酸アンモニウムを、前記水素化に用いる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水素化を、好ましくは元素の周期律表の遷移金属の族、好ましくは周期律表のVIII族の金属の化合物、それらの化合物および錯体から選択される、好ましくはルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金から、好ましくはロジウム、パラジウムおよび白金、好ましくはパラジウムから選択される不均一もしくは均一形態での貴金属触媒を用い、水素で行う請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水素化を不均一形態で行い、その場合に、前記触媒が担体材料、好ましくは活性炭もしくはアルミナその他の自体が公知の担体材料、好ましくは活性炭に付与されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
均一触媒、好ましくはパラジウム化合物、好ましくは自体が公知であるPd(0)化合物を用いて前記水素化を行う請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒として、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、配位子であるトリ(2−トリル)ホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン類、トリ(tert−ブチル)ホスフィンを有する相当する錯体、または二座配位子であるdppm[1,1−ビス(ジフェニルホスフィノメタン)]、dppe[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]および関連化合物を有する相当する錯体、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム−クロロホルム錯体、Pd(II)化合物、好ましくはPdCl、Pd(dppe)Cl、Pd(OAc)、Pd(dppe)(OAc)、π−アリル−Pd錯体、好ましくはπ−アリルパラジウムクロライド二量体を用いる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒を、触媒量で、好ましくは粗反応物の重量に基づいて0.0005〜0.01重量%の貴金属、好ましくは約0.001〜0.005重量%の貴金属の量で用いる請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記水素化を、不活性溶媒中、好ましくは有機プロトン性もしくは非プロトン性極性溶媒中にて、適宜に1〜99重量%の水との混合物中にて、好ましくは0.1重量%〜99重量%の濃度の有機酸の存在下に、好ましくは0℃〜150℃の範囲の、好ましくは20℃〜100℃の範囲の温度で、好ましくは標準圧力〜100バールの範囲、好ましくは標準圧力〜10バールの範囲で水素によって行う請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
水素に代えて、好ましくはギ酸アンモニウム、シクロヘキセンもしくはシクロヘキサジエンを用いる転移水素化の形態で、前記反応でin situにて水素を放出する化合物を用いる請求項12に記載の方法。
【請求項21】
本質的にノルオキシモルホンからなり、汚染物であるノルオキシモルホン化合物を含む植物抽出物から純粋なノルオキシモルホンを製造する方法において、請求項1に記載の式(II)のオキシモルホン(Rはメチルである)を最初に植物抽出物として加え、(a)前記植物抽出物を、混合物中に存在するヒドロキシル基が式−ORの脱離基(Rは、請求項1、8および9に記載の脱離基の導入された基、好ましくはアシル、好ましくはアセチルである)に変換される反応で反応させ;
(a1)N−メチル基を除去し、脱離基R(Rは、請求項1、8および9に記載の脱離基の導入された基であり、好ましくはアルキルオキシカルボニル、好ましくはエチルオキシカルボニルまたはBoc、好ましくはエチルオキシカルボニルである)によって置き換え;
(a2)脱離基RおよびRを、段階(a)および(a1)から得られた反応生成物から脱離させても良く;
(b)段階(a)、(a1)および/または(a2)で得られた生成物のうちの少なくとも一つ、好ましくは段階(a1)または(a2)で得られた生成物のうちの一つ、好ましくは段階(a2)での生成物について、上記の選択的水素化反応を行い、
(c)純粋なノルオキシモルホン化合物を単離しても良い
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
段階(a2)で得られた前記ノルオキシモルホンをさらに処理して、ナルトレキソンもしくはナロキソンまたはこれら化合物の塩またはこれら化合物の4級誘導体、好ましくは塩酸塩、臭化水素酸塩、メトクロライドまたはメトブロマイド、好ましくはナルトレキソン塩酸塩、ナルトレキソン臭化水素酸塩、ナルトレキソンメトクロライドまたはナルトレキソンメトブロマイドを得る請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ノルオキシモルホン原料をシクロプロピルメチルブロマイド(ナルトレキソンの場合)もしくは臭化アリル(ナロキソンの場合)と反応させ、得られた生成物(ナルトレキソンまたはナロキソン)を、酸、好ましくは希塩酸もしくは臭化水素と反応させて相当する塩酸塩もしくは臭化水素酸塩を得るか、臭化メチルと反応させてナルトレキソンメトブロマイドまたはナロキソンメトブロマイドを得る請求項22に記載の方法であって、少なくとも前記出発原料または中間体もしくは最終生成物として得られた段階(a)もしくは(b)の生成物、好ましくは中間体として得られた段階(a)もしくは(b)の生成物、好ましくは段階(b)の生成物について、請求項12〜20のいずれか1項に記載の水素化反応を行う方法。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法によって得られる前記式(II)の高純度オキシモルホン化合物、またはそのような化合物の混合物。
【請求項25】
請求項24に記載の化合物を含む医薬製剤。

【公表番号】特表2008−530036(P2008−530036A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554413(P2007−554413)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000087
【国際公開番号】WO2006/084412
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(503061533)シラグ アーゲー (2)
【Fターム(参考)】