説明

ノンハロゲン樹脂組成物、ノンハロゲン絶縁電線、及びノンハロゲンケーブル

【課題】金属水酸化物を含まないノンハロゲン樹脂組成物、ノンハロゲン絶縁電線、及びノンハロゲンケーブルを提供する。
【解決手段】本発明に係るノンハロゲン樹脂組成物は、オレフィン炭化水素単位を含む高分子化合物と、高分子化合物に混和される金属酸化物と、金属酸化物の添加量より多く高分子化合物に混和され、燃焼時に不燃ガスを放出する金属塩とを備え、高分子化合物は、金属水酸化物を含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンハロゲン樹脂組成物、ノンハロゲン絶縁電線、及びノンハロゲンケーブルに関する。特に、本発明は、金属水酸化物を含まないノンハロゲン樹脂組成物、ノンハロゲン絶縁電線、及びノンハロゲンケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハロゲン化合物を含まない難燃性組成物として、ポリオレフィン系樹脂にノンハロゲン難燃剤としての水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を添加した組成物が知られており、当該組成物が被覆された絶縁電線が知られている。例えば、導体と、導体を被覆する内層と、内層を被覆する外層とを備え、内層は、エチレン系共重合体40〜90重量部と、エチレンアクリルゴム5〜50重量部と、アイオノマー又はエチレン−メタクリル酸共重合体0.5〜50重量部とからなるベースポリマ100重量部に対して、水酸化マグネシウム40〜200重量部、及び難燃助剤1〜20重量部を配合してなり、外層は、アイオノマー又はエチレン−メタクリル酸共重合体100重量部と、水酸化マグネシウム300重量部以下と、難燃助剤20重量部以下とを含有する樹脂組成物からなる絶縁電線が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の絶縁電線は、難燃性及び柔軟性に優れた樹脂組成物からなる内層で導体を被覆した後、耐外傷性に優れた外層で内層を被覆するので、耐外傷性、難燃性、耐寒性、機械的特性に優れた絶縁電線を提供できる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−132741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の絶縁電線は、内層及び外層に金属水酸化物を添加しているので、難燃性の向上を目的として金属水酸化物の添加量を増加させると、絶縁電線の伸び、及び引張強さ等の機械的特性が著しく低下する。また、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物は、酸性環境下又はアルカリ性環境下において変質、溶解するので、金属水酸化物が添加された樹脂組成物の体積抵抗率が低下する。
【0006】
したがって、本発明の目的は、金属水酸化物を含まないノンハロゲン樹脂組成物、ノンハロゲン絶縁電線、及びノンハロゲンケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、オレフィン炭化水素単位を含む高分子化合物と、高分子化合物に混和される金属酸化物と、金属酸化物の添加量より多く高分子化合物に混和され、燃焼時に不燃ガスを放出する金属塩とを備え、高分子化合物は、金属水酸化物を含まないノンハロゲン樹脂組成物が提供される。
【0008】
また、上記ノンハロゲン樹脂組成物は、金属塩は、金属正炭酸塩であり、不燃ガスは炭酸ガスであってもよい。また、金属酸化物は、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、及び酸化マグネシウムからなる群から選択されてもよい。そして、金属正炭酸塩は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、及びハンタイトからなる群から選択されてもよい。
【0009】
また、上記ノンハロゲン樹脂組成物は、高分子化合物は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、及びマレイン酸グラフト低密度ポリエチレンからなる群から選択されてもよい。更に、高分子化合物は、非金属水酸化物である難燃剤が更に混和されてもよい。
【0010】
また、本発明は、上記目的を達成するため、導体と、導体を被覆する外層とを備え、外層は、高分子化合物と、高分子化合物に混和される金属酸化物と、金属酸化物の添加量より多く高分子化合物に混和され、燃焼時に不燃ガスを放出する金属塩とを備え、金属水酸化物を含まないノンハロゲン樹脂組成物から形成されるノンハロゲン絶縁電線を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記目的を達成するため、導体と、導体を被覆する外層と、外層を被覆するシースとを備え、シースは、高分子化合物と、高分子化合物に混和される金属酸化物と、金属酸化物の添加量より多く高分子化合物に混和され、燃焼時に不燃ガスを放出する金属塩とを備え、金属水酸化物を含まないノンハロゲン樹脂組成物から形成されるノンハロゲンケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る絶縁電線によれば、金属水酸化物を含まないノンハロゲン樹脂組成物、ノンハロゲン絶縁電線、及びノンハロゲンケーブルを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[実施の形態]
本発明の実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物は、高分子化合物と、高分子化合物に混和される金属酸化物と、金属酸化物の添加量より多く高分子化合物に混和され、燃焼時に不燃ガスを放出する金属塩とを含んで形成される。そして、本実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物は、金属水酸化物を含まずに形成される。なお、混和とは、複数の化合物が略均質に相互分散している状態をいう。また、複数の化合物が相互に相溶性を発揮する場合に当該複数の化合物がそれぞれ混合されて得られる状態だけではなく、相互に相溶性を有していない場合であっても当該複数の化合物がそれぞれ略均質に分散する状態も含む。
【0014】
(高分子化合物)
本実施の形態に係る高分子化合物は、オレフィン炭化水素単位を含む高分子化合物を用いることができる。例えば、高分子化合物は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(VLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系熱可塑性エラストマ、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、及びマレイン酸グラフト低密度ポリエチレン等を用いることができる。
【0015】
ここで、ノンハロゲン樹脂組成物の難燃性を向上させることを目的として、エチレン単位を含む高分子化合物を用いることが好ましい。特に、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のエチレン共重合体を用いることが好ましい。
【0016】
(金属酸化物)
本実施の形態に係る金属酸化物は、ノンハロゲン樹脂組成物が燃焼する場合に、高分子化合物に対する脱水素触媒作用を発揮して難燃剤として機能する。具体的に、金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、又は酸化マグネシウムを用いることができる。金属酸化物は、ノンハロゲン樹脂組成物の燃焼時において、高分子化合物からの水素の脱離を促進させることにより、ノンハロゲン樹脂組成物を構成する高分子化合物の炭化を促進させる。これにより、金属酸化物は、ノンハロゲン樹脂組成物の表面及び/又は内部に高分子化合物からの炭化被膜を形成させて、ノンハロゲン樹脂組成物に難燃性を付与する。また、金属酸化物は、一次粒子径が100nm以下である金属酸化物を用いることができる。又は、金属酸化物は、一次粒子の短軸方向の長さと長軸方向の長さとの比、すなわち、アスペクト比が7以上である金属酸化物を用いることができる。
【0017】
(金属塩)
本実施の形態に係る金属塩は、例えば、金属正炭酸塩を用いることができる。そして、本実施の形態においては、燃焼時に不燃ガスを放出する金属塩を用いる。ここで、例えば、金属塩として金属正炭酸塩を用いた場合、放出される不燃ガスは炭酸ガスである。ノンハロゲン樹脂組成物の燃焼時に金属正炭酸塩の脱炭素により不燃ガス(炭酸ガス)が放出されることにより、ノンハロゲン樹脂組成物に難燃性を付与できる。
【0018】
金属正炭酸塩としては、具体的に、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、ハンタイト等を用いることができる。そして、本実施の形態において、ノンハロゲン樹脂組成物の燃焼温度に近い脱炭酸温度を有する化合物を用いると、ノンハロゲン樹脂組成物の燃焼時に金属正炭酸塩から炭酸ガスが放出されやすいことから、一例として、金属正炭酸塩は、炭酸マグネシウムを用いることが好ましい。なお、ノンハロゲン樹脂組成物の燃焼温度に対応させて、当該燃焼温度に近似する脱炭酸温度を有する金属正炭酸塩を用いることもできる。また、金属正炭酸塩は、平均粒子径が5μm以下の金属正炭酸塩を用いることができる。
【0019】
なお、金属炭酸塩としては、水酸基を含む金属塩基性炭酸塩と水酸基を含まない金属正炭酸塩とがあるが、水酸基を含む金属塩基性炭酸塩は耐水性に劣るので、本実施の形態においては、水酸基を含まない金属正炭酸塩を用いることが好ましい。
【0020】
(難燃剤)
本実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物は、非金属水酸化物である難燃剤を更に混和させて形成することができる。この難燃剤としては、メラミン化合物を用いることができる。メラミン化合物としては、メラミン、シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミンシアヌレート、硫酸メラミン、ベンゾグアナミン等を用いることができる。これらのメラミン化合物は、非イオン性表面活性剤、又は各種カップリング剤により表面処理が施されていてもよい。
【0021】
なお、金属酸化物、金属正炭酸塩、及び/又はメラミン化合物の総混和量は、難燃化効果を向上させることを目的とする場合、高分子化合物100重量部に対して50重量部以上であることが好ましく、ノンハロゲン樹脂組成物の成形加工性を維持することを目的とする場合、250重量部以下であることが好ましい。
【0022】
また、難燃剤として金属酸化物及び金属正炭酸塩に加えてメラミンシアヌレートを混和することにより、ノンハロゲン樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。なお、ノンハロゲン樹脂組成物の成形加工性を維持することを目的とする場合、金属酸化物、金属正炭酸塩、及びグアニジン化合物の層添加量は、上述のように250重量部以下にすることが好ましい。また、難燃性の向上と耐アルカリ性の発揮とを両立させることを目的として、高分子化合物に添加するメラミン化合物の量は、40部以下にすることが好ましい。
【0023】
(その他添加材)
本実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物は、酸化防止剤(例えば、フェノール系酸化防止剤)、滑剤、安定剤、又は着色剤等の添加材を、更に添加して形成することもできる。
【0024】
(ノンハロゲン絶縁電線)
図1は、本発明の実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物を用いたノンハロゲン絶縁電線の断面の一例を示す。
【0025】
ノンハロゲン絶縁電線1は、導体10と、導体10を被覆する外層20とを備える。そして、外層20は、本実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物から所定厚を有して形成される絶縁体層である。導体10は、所定径を有する金属材料から形成される。例えば、導体10は、銅又は銅合金等の金属材料から形成される。導体10を形成する銅としては、純銅、タフピッチ銅、低酸素銅、又は無酸素銅のいずれも用いることができる。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物を用いたノンハロゲンケーブルの断面の一例を示す。
【0027】
実施の形態に係るノンハロゲンケーブル2は、導体10に絶縁体21を被覆した3線心を介在4と共に撚り合わせた撚り対線と、当該撚り対線の外周を被覆する押え巻きテープ5と、押え巻きテープ5の外周に押出被覆され、ノンハロゲンケーブル2の最外層を形成するシース3とを備える。そして、シース3は、本実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物から形成される。導体10は、所定径を有する金属材料から形成される。例えば、導体10は、銅又は銅合金等の金属材料から形成される。導体10を形成する銅としては、純銅、タフピッチ銅、低酸素銅、又は無酸素銅を用いることができる。また、絶縁体21は、本実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物、又はその他の絶縁性材料から形成することができる。
【0028】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物は、金属水酸化物を含まずに、燃焼時に不燃ガスを放出する金属正炭酸塩と金属酸化物とをエチレン単位を含む高分子化合物に混和すると共に、金属正炭酸塩の量を金属酸化物の量より多く混和して形成されるので、難燃性を有すると共に、耐酸性及び耐アルカリ性を発揮することができる。すなわち、本実施の形態によれば、金属水酸化物を含む樹脂組成物に比べて、酸素指数測定による難燃性評価が良好で、耐酸性及び耐アルカリ性が優れたノンハロゲン樹脂組成物を提供できる。
【0029】
また、本実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物は、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を含まないと共に、水酸化マグネシウムよりも難燃効果の高い難燃剤、例えば、非金属水酸化物であるメラミンシアヌレート等のメラミン化合物を添加したので、機械的特性、加工性の低下を抑制できると共に、特に、アルカリ性環境下においても体積抵抗率の低下を抑制することができる。
【0030】
そして、本実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物は、ハロゲンを含む化合物、鉛、アンチモン等の重金属を含まないので、環境に配慮したノンハロゲン樹脂組成物及びノンハロゲン絶縁電線を提供することができる。
【実施例】
【0031】
本発明の実施例として、エチレン―エチルアクリレート共重合体(EEA)及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を高分子化合物として用い、金属正炭酸塩として、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、又はハンタイトを用いると共に、金属酸化物として、酸化チタン、酸化亜鉛、又はアルミナを用いたノンハロゲン樹脂組成物を製造した(実施例1ないし13)。また、比較例として、エチレン―エチルアクリレート共重合体(EEA)又はエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を高分子化合物として用い、水酸化マグネシウム、金属正炭酸塩又は金属酸化物を用いたノンハロゲン樹脂組成物を製造した(比較例1ないし8)。更に、エチレン―エチルアクリレート共重合体(EEA)を高分子化合物として用い、金属正炭酸塩として、炭酸カルシウムを用いると共に、金属酸化物として、酸化チタンを用いたノンハロゲン樹脂組成物を製造した(実施例14及び15)。
【0032】
具体的に、実施例1に係るノンハロゲン樹脂組成物は、EEA100重量部に対して炭酸マグネシウムを40重量部と酸化チタンを10重量部、混和すると共に、フェノール系酸化防止剤0.5重量部を添加して製造した。実施例2に係るノンハロゲン樹脂組成物は、実施例1の炭酸マグネシウムを炭酸カルシウムに代えた点を除き、実施例1と同様にして製造した。実施例3に係るノンハロゲン樹脂組成物は、実施例1の炭酸マグネシウムをドロマイトに代えた点を除き、実施例1と同様にして製造した。実施例4に係るノンハロゲン樹脂組成物は、実施例1の炭酸マグネシウムをハンタイトに代えた点を除き、実施例1と同様にして製造した。実施例5に係るノンハロゲン樹脂組成物は、実施例2の酸化チタンを粒径の異なる酸化チタンに代えた点を除き、実施例2と同様にして製造した。
【0033】
実施例6に係るノンハロゲン樹脂組成物は、実施例2の酸化チタンを酸化亜鉛に代えた点を除き、実施例2と同様にして製造した。実施例7に係るノンハロゲン樹脂組成物は、実施例2の酸化チタンをアルミナに代えた点を除き、実施例2と同様にして製造した。実施例8に係るノンハロゲン樹脂組成物は、実施例2に係るノンハロゲン樹脂組成物にメラミンシアヌレートを10重量部更に添加して製造した。実施例9に係るノンハロゲン樹脂組成物は、実施例1の酸化チタンを粒径の異なる酸化チタンに代えた点を除き、実施例1と同様にして製造した。
【0034】
実施例10に係るノンハロゲン樹脂組成物は、実施例1の炭酸マグネシウムの添加量を90重量部に増加させた点を除き、実施例1と同様にして製造した。実施例11に係るノンハロゲン樹脂組成物は、EVA100重量部に対して炭酸マグネシウムを90重量部と酸化チタンを10重量部、混和すると共に、フェノール系酸化防止剤0.5重量部を添加して製造した。実施例12に係るノンハロゲン樹脂組成物は、EEA50重量部及びEVA50重量部に対して炭酸マグネシウムを90重量部と酸化チタンを10重量部、混和すると共に、フェノール系酸化防止剤0.5重量部を添加して製造した。
【0035】
実施例13に係るノンハロゲン樹脂組成物は、EEA100重量部に対して炭酸カルシウムを200重量部と酸化チタンを50重量部、混和すると共に、フェノール系酸化防止剤0.5重量部を添加して製造した。実施例14に係るノンハロゲン樹脂組成物は、EEA100重量部に対して炭酸カルシウム200重量部と酸化チタン60重量部とフェノール系酸化防止剤0.5重量部とを添加して製造した。実施例15に係るノンハロゲン樹脂組成物は、EEA100重量部に対して炭酸カルシウム90重量部と酸化チタン10重量部とフェノール系酸化防止剤0.5重量部とを添加して製造した。
【0036】
なお、実施例1ないし15に係るノンハロゲン樹脂組成物はそれぞれ、各成分を130℃に予熱したロールで混練して製造した。
【0037】
比較例1に係るノンハロゲン樹脂組成物は、EEA100重量部に対して水酸化マグネシウム100重量部とフェノール系酸化防止剤0.5重量部とを添加して製造した。比較例2に係るノンハロゲン樹脂組成物は、比較例1の水酸化マグネシウム100重量部を炭酸マグネシウム50重量部に代えた点を除き、比較例1と同様にして製造した。比較例3に係るノンハロゲン樹脂組成物は、比較例2の炭酸マグネシウムを炭酸カルシウムに代えた点を除き、比較例2と同様にして製造した。比較例4に係るノンハロゲン樹脂組成物は、比較例2の炭酸マグネシウムをドロマイトに代えた点を除き、比較例2と同様にして製造した。
【0038】
比較例5に係るノンハロゲン樹脂組成物は、比較例2の炭酸マグネシウムをハンタイトに代えた点を除き、比較例2と同様にして製造した。比較例6に係るノンハロゲン樹脂組成物は、比較例2の炭酸マグネシウム50重量部を酸化チタン100重量部に代えた点を除き、比較例2と同様にして製造した。比較例7に係るノンハロゲン樹脂組成物は、比較例2の炭酸マグネシウム50重量部を100重量部に代えた点を除き、比較例2と同様にして製造した。比較例8に係るノンハロゲン樹脂組成物は、EVA100重量部に対して炭酸マグネシウム100重量部とフェノール系酸化防止剤0.5重量部を添加して製造した。
【0039】
そして、実施例、及び比較例に係る各ノンハロゲン樹脂組成物の特性を評価した。具体的に、(1)酸素指数測定による難燃性評価、(2)傾斜燃焼試験、(3)耐アルカリ性評価、(4)押出加工性評価、及び(5)総合評価のそれぞれについて以下に示す条件で評価した。
【0040】
(1)酸素指数測定による難燃性評価
JIS K 7201に準拠した。具体的に、各ノンハロゲン樹脂組成物からなる試験片(長さ80mm、幅6.5mm、厚さ3mm)を用いて測定を実施した。酸素指数が25以上の場合に難燃性について合格として「○」とした。一方、酸素指数が25未満の場合に難燃性について不合格として「×」とした。
【0041】
(2)傾斜燃焼試験
各ノンハロゲン樹脂組成物を用いて、図1に示すような直径φ3.4mmのノンハロゲン絶縁電線を製造した。そして、JIS C 3005に基づいて傾斜燃焼試験を実施した。傾斜燃焼試験に合格して燃焼試験後に導体がむき出しにならなかったノンハロゲン絶縁電線を合格「○」とした。一方、傾斜燃焼試験に不合格、及び傾斜燃焼試験に合格したものの燃焼試験後に導体がむき出しになったノンハロゲン絶縁電線を不合格「×」とした。
【0042】
(3)耐アルカリ性試験
各ノンハロゲン樹脂組成物を用いて厚さ1mmのシートを作成した。そして、作成したシートを液温50℃、濃度が3%の水酸化ナトリウム水溶液に30日間浸漬した。その後、各シートの体積抵抗率(Ω・cm)を測定して各シートの耐アルカリ性を評価した。その結果、体積抵抗率が1010(Ω・cm)以上を示したノンハロゲン樹脂組成物のシートを合格「○」とした。一方、体積抵抗率が1010未満を示したノンハロゲン樹脂組成物のシートは不合格「×」とした。
【0043】
(4)押出加工性評価
各ノンハロゲン樹脂組成物について40mm押出機で押出を実施した。押出機のモーターの負荷が正常範囲内で押出できたものであって、押出後の外観が良好な場合に合格「○」とする一方で、押出負荷がモーターの正常範囲外であった場合、又は押出後の外観が良好ではない場合に不合格「×」とした。
【0044】
(5)総合評価
上記(1)から(3)の特性評価において合格したノンハロゲン樹脂組成物については、総合評価を「○」とした。また、上記(1)から(3)のいずれか一つでも不合格であったノンハロゲン樹脂組成物については、総合評価を「×」とした。
【0045】
実施例、及び比較例に係る各ノンハロゲン樹脂組成物の詳細な材料組成と、各ノンハロゲン樹脂組成物の特性評価の結果を、表1及び表2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
表1を参照するとわかるように、実施例1ないし8、及び実施例10ないし13の全てのノンハロゲン樹脂組成物において、酸素指数測定による難燃性評価、傾斜燃焼試験、耐アルカリ性評価、及び押出加工性評価について合格であった。また、実施例9に係るノンハロゲン樹脂組成物は傾斜燃焼試験後に導体がむき出しになることはなかったものの、粒径が210nmと比較的大きな酸化チタンを用いたことに起因して、露出する部分が観察されたので評価を「△」とした。なお、実施例9に係るノンハロゲン樹脂組成物において傾斜燃焼試験の評価は「△」であるものの、実用上問題となる程度ではなかった。
【0049】
また、実施例10から12の特性結果が示す通り、EEA単体、EVA単体、及びEEAとEVAとの混和物のいずれを用いた場合であっても、酸素指数測定による難燃性評価、傾斜燃焼試験、耐アルカリ性評価、及び押出加工性評価について合格であった。また、実施例13に係るノンハロゲン樹脂組成物は、EEA100重量部に対して難燃剤(炭酸カルシウム及び酸化チタン)を250重量部添加して製造したが、係るノンハロゲン樹脂組成物であっても、酸素指数測定による難燃性評価、傾斜燃焼試験、耐アルカリ性評価、及び押出加工性評価について合格であった。よって、実施例1から13に係るノンハロゲン樹脂組成物の総合評価は、「○」(合格)であった。
【0050】
比較例1に係るノンハロゲン樹脂組成物は、水酸化マグネシウムを含んでいることに起因して、耐アルカリ性に劣っていることが示された。また、比較例2ないし5に係るノンハロゲン樹脂組成物は金属酸化物を含んでおらず、酸素指数25を満足することができないことが示された。また、比較例6に係るノンハロゲン樹脂組成物は、金属炭酸塩を含んでおらず、酸素指数25を満足することができないことが示された。更に、比較例7及び8に係るノンハロゲン樹脂組成物は、金属酸化物を含んでおらず、いずれも傾斜燃焼試験が不合格であった。
【0051】
実施例14に係るノンハロゲン樹脂組成物は、EEA100重量部に対して難燃剤を合計260重量部混和して製造したノンハロゲン樹脂組成物であり、押出加工性を満足しなかったが、(1)酸素指数測定による難燃性評価、(2)傾斜燃焼試験、及び(3)耐アルカリ性試験において合格であったので、総合評価は「○」(合格)であった。実施例15に係るノンハロゲン樹脂組成物は、EEA100重量部に対して平均粒径が8μmの炭酸カルシウム90重量部と、酸化チタン10重量部とを添加して製造した。炭酸カルシウムの平均粒径が5μmを超えることに起因して、押出後のノンハロゲン樹脂組成物の外観が良好とはいえなかったが、(1)酸素指数測定による難燃性評価、(2)傾斜燃焼試験、及び(3)耐アルカリ性試験において合格であったので、総合評価は「○」(合格)であった。
【0052】
以上の実施例、及び比較例の特性評価の結果から、以下の点が示される。すなわち、金属正炭酸塩と金属酸化物との添加量の割合は、難燃性を向上させることを目的とする場合、金属酸化物の添加量よりも金属正炭酸塩の添加量の方を多くすることが好ましい。なお、金属酸化物と難燃剤(例えば、グアニジン化合物)とを併用することでノンハロゲン樹脂組成物の難燃性は著しく向上する。
【0053】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物を用いたノンハロゲン絶縁電線の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るノンハロゲン樹脂組成物を用いたノンハロゲンケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ノンハロゲン絶縁電線
2 ノンハロゲンケーブル
3 シース
4 介在
5 押え巻きテープ
10 導体
20 外層
21 絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン炭化水素単位を含む高分子化合物と、
前記高分子化合物に混和される金属酸化物と、
前記金属酸化物の添加量より多く前記高分子化合物に混和され、燃焼時に不燃ガスを放出する金属塩と
を備え、
前記高分子化合物は、金属水酸化物を含まないノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項2】
前記金属塩は、金属正炭酸塩であり、前記不燃ガスは炭酸ガスである請求項1に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物は、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、及び酸化マグネシウムからなる群から選択される請求項1又は2に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項4】
前記金属正炭酸塩は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、及びハンタイトからなる群から選択される請求項1から3のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項5】
前記高分子化合物は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、及びマレイン酸グラフト低密度ポリエチレンからなる群から選択される請求項1から4のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項6】
前記高分子化合物は、非金属水酸化物である難燃剤が更に混和される請求項1から5のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項7】
導体と、
前記導体を被覆する外層と
を備え、
前記外層は、高分子化合物と、前記高分子化合物に混和される金属酸化物と、前記金属酸化物の添加量より多く前記高分子化合物に混和され、燃焼時に不燃ガスを放出する金属塩とを備え、金属水酸化物を含まないノンハロゲン樹脂組成物から形成されるノンハロゲン絶縁電線。
【請求項8】
導体と、
前記導体を被覆する外層と、
前記外層を被覆するシースと
を備え、
前記シースは、高分子化合物と、前記高分子化合物に混和される金属酸化物と、前記金属酸化物の添加量より多く前記高分子化合物に混和され、燃焼時に不燃ガスを放出する金属塩とを備え、金属水酸化物を含まないノンハロゲン樹脂組成物から形成されるノンハロゲンケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−111760(P2010−111760A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285195(P2008−285195)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】