説明

ハイドロゲル粒子

【課題】使用感の良好なハイドロゲル粒子を提供する。
【解決手段】ハイドロゲル粒子は、非架橋型ハイドロゲルの連続相と、連続相に分散した分散相と、を備える。分散相のそれぞれは、油性成分として固体脂及び液体油を含有すると共に、内部に酸化チタン粒子が分散している。油性成分の固体脂は、高級アルコール及び固形パラフィンを含むと共に、分散相中の含有量が1〜12質量%である。ハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は10〜300μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非架橋型ハイドロゲルの連続相に油性成分を含む分散相が分散したハイドロゲル粒子及びそれを用いた紫外線防御化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等の分野において、非架橋型ハイドロゲルの連続相に油性成分を含む多数の分散相が分散したハイドロゲル粒子の適用が検討されている。
【0003】
特許文献1には、かかるハイドロゲル粒子として、油性成分が固体脂及び/又は液体油からなるものが開示されている。
【0004】
特許文献2には、分散相が油性成分を含む液相であると共に、分散相内部に紫外線防御能を有する酸化亜鉛粒子及び酸化チタン粒子が分散したハイドロゲル粒子が開示されている。
【0005】
特許文献3には、分散相が油性成分を含む固相であると共に、分散相内部に紫外線防御能を有する酸化亜鉛粒子が分散したハイドロゲル粒子が開示されている。そして、このハイドロゲル粒子によれば、酸化亜鉛粒子が分散した分散相が固相であるので、酸化亜鉛粒子が分散相内に固定化されて安定して存在することとなり、例えば、化粧料等に適用した場合、酸化亜鉛粒子がハイドロゲル粒子から漏出して他の配合成分と反応するといった不都合を回避することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−159838号公報
【特許文献2】特開2002−20228号公報
【特許文献3】特開2007−153835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、使用感の良好なハイドロゲル粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のハイドロゲル粒子は、非架橋型ハイドロゲルの連続相と、該連続相に分散した分散相と、を備え、
上記分散相のそれぞれは、油性成分として固体脂及び液体油を含有すると共に、内部に酸化チタン粒子が分散しており、
上記油性成分の固体脂は、高級アルコール及び固形パラフィンを含むと共に、上記油性成分中の含有量が1〜12質量%であり、そして、
体積基準平均粒子径が10〜300μmである。
【0009】
本発明の紫外線防御化粧料は、本発明のハイドロゲル粒子が配合されたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油性成分の固体脂として高級アルコール及び固形パラフィンを含むと共に、固体脂の油性成分中の含有量が1〜12質量%であり、しかも、ハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径が10〜300μmであるので、化粧料等に適用した場合でも、塗布時ののびが悪い、或いは、塗布後の感触がべたつく、といった不具合を低く抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(ハイドロゲル粒子)
本実施形態のハイドロゲル粒子は、非架橋型ハイドロゲルの連続相とその連続相に分散した分散相とを備えている。そして、分散相のそれぞれは、油性成分として固体脂及び液体油を含有すると共に、内部に酸化チタン粒子が分散している。また、油性成分の固体脂は、高級アルコール及び固形パラフィンを含むと共に、油性成分中の含有量が1〜12質量%である。このハイドロゲル粒子は、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等の分野への適用において有用である。
【0013】
ここで、本出願における「ハイドロゲル粒子」とは、ハイドロゲル中に油性成分を含有する分散相を分散させた1個乃至複数個の粒子をいう。なお、ハイドロゲル粒子の概念には、外層である外皮と内層である芯成分とからなる、内層と外層とが同心状のカプセルは含まれない。また、本出願における「ハイドロゲル」とは、水を溶媒としてゲル形成剤から得られたゲルをいう。
【0014】
ハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は10〜300μmであり、外観及び生産性の観点から、10〜250μmがより好ましく、30〜150μmが特に好ましい。なお、ハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所(株)製、型番:LA−910)を用いたレーザ回折散乱法によってそれぞれ測定することができる。
【0015】
ハイドロゲル粒子の形状は、特に限定されるものではないが、曲面で構成された回転体の形状を有することが好ましい。ここで、「曲面で構成された回転体」とは、仮想軸及び連続的な曲線で構成された閉じた図を仮想軸で回転させたものをいい、三角錐や円柱等の平面を有する形状は含まない。ハイドロゲル粒子の形状は、美観の観点から、球状体であることがより好ましい。
【0016】
本実施形態のハイドロゲル粒子は非架橋型ハイドロゲルの連続相を備えている。
【0017】
連続相のハイドロゲル粒子における含有量は、ハイドロゲル粒子の洗浄時及び化粧料等への配合時の崩壊を防止する観点から、30〜99質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。
【0018】
本出願における「非架橋型ハイドロゲル」とは、ゾル−ゲルの熱可逆性によってゲル化が生じるものをいう。非架橋型ハイドロゲルは、水への溶解温度が一般に75℃以上のものが好ましく、75〜90℃のものがより好ましく、また、水に溶解させた後に冷却したときのゲル化温度が30〜45℃のものが好ましい。
【0019】
連続相を構成する非架橋型ハイドロゲルは水性成分としてのゲル形成剤と水とを含んでいる。
【0020】
ゲル形成剤としては、例えば、寒天、カラギーナン、ゼラチン等が挙げられる。ゲル形成剤は、これらのうち単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。ゲル形成剤としては、これらの中では寒天が好ましい。なお、非架橋型ハイドロゲルのゼリー強度は、化粧料等に適用した場合の使用時の感触の観点から、147kPa(1500g/cm)以下であることが好ましく、19.6kPa(200g/cm)〜127kPa(1300g/cm)であることがより好ましい。ゼリー強度は、日寒水式法により求めることができる。具体的には、ゼリー強度は、ゲル形成剤の1.5質量%水溶液を調製し、その水溶液を20℃で15時間放置して凝固させたゲルに、日寒水式ゼリー強度測定器((株)木屋製作所製)により荷重をかけ、20℃においてゲルが20秒間その荷重に耐えるときの表面積1cmあたりの最大質量(g)として求めることができる。
【0021】
ゲル形成剤のハイドロゲル粒子における含有量は、化粧料等に適用した場合の使用時の感触が良好であり、ハイドロゲル粒子の洗浄時及び化粧料等への配合時の崩壊を防止するという観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。また、ゲル形成剤のハイドロゲル粒子における含有量は、化粧料等に適用した場合の使用時の感触が良好であり、ハイドロゲル粒子の洗浄時及び化粧料等への配合時の崩壊を防止するという観点から、8.0質量%以下が好ましく、7.0質量%以下がより好ましく、6.0質量%以下がさらに好ましく、5.0質量%以下が特に好ましい。
【0022】
本実施形態のハイドロゲル粒子は連続相に分散した分散相を備えている。この分散相は、ハイドロゲル粒子中に複数個存在している。
【0023】
分散相のハイドロゲル粒子における含有量は、ハイドロゲル粒子の洗浄時及び化粧料等への配合時の壊れの防止の観点から、1〜70質量%であることが好ましく、7.5〜70質量%であることがより好ましく、10〜70質量%であることがさらに好ましく、20〜60質量%であることが特に好ましい。
【0024】
分散相の体積基準平均粒子径は、ハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。具体的には、分散相の体積基準平均粒子径は、化粧料等に適用した場合に皮膚上で滑らかに延ばすことができるという観点から、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。また、分散相の体積基準平均粒子径は、化粧料等に適用した場合の皮膚へのなじみ性が良好であるという観点から、0.01μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることがさらに好ましく、5μm以上であることが特に好ましく、10μm以上であることが最も好ましい。以上より、分散相の体積基準平均粒子径は、0.01〜100μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましく、4〜100μmであることがさらに好ましく、5〜50μmであることが特に好ましく、5〜20μmであることが最も好ましい。なお、分散相の体積基準平均粒子径は、粒子化前の分散液の状態で、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所(株)製、型番:LA−910)を用いて測定することができる。
【0025】
本実施形態のハイドロゲル粒子は各分散相が油性成分を含有している。
【0026】
油性成分の全分散相における総含有量は、化粧料等に適用した場合の使用時における感触が良好であるという観点から、1〜99質量%であることが好ましく、50〜99質量%であることがより好ましい。
【0027】
油性成分のハイドロゲル粒子における総含有量は、化粧料等に適用した場合の使用時の感触が良好であり、ハイドロゲル粒子の洗浄時及び化粧料等への配合時の崩壊を防止するという観点から、0.01〜60質量%であることが好ましく、7.5〜50質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
油性成分の融点は、40〜90℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。なお、油性成分の融点は、示差走査熱量測定法(DSC:Differential Scanning Calorimetry)によって測定することができる。後述の固体脂や液体油の融点もこれによって測定することができる。
【0029】
油性成分は固体脂及び液体油を含有する。
【0030】
本出願おける「固体脂」とは、融点が35℃以上の油性成分をいう。また、「液体油」とは、融点が35℃未満の油性成分をいう。
【0031】
固体脂の油性成分における含有量は1〜12質量%であり、2〜10質量%であることが好ましく、4〜10質量%であることがより好ましい。
【0032】
油性成分に含まれる固体脂全体の融点は、35℃以上であることが好ましく、40〜120 ℃であることがより好ましい。
【0033】
固体脂は固体の高級アルコール及び固形パラフィンを含む。その結果、本実施形態のハイドロゲル粒子は、分散相の表面に上記固体脂の封鎖膜が形成され、少量の固体脂でも酸化チタン粒子が分散相中に安定して存在し得ると考えられる。このように、固体の高級アルコール及び固形パラフィンを含む固体脂を用いることで、それを配合したハイドロゲル粒子を化粧料等に適用した場合、酸化チタン粒子がハイドロゲル粒子から漏出して他の配合成分と反応するといった不都合、および、塗布時ののびが悪く、また、塗布後の感触がべたつくといった不具合を回避することができる。
【0034】
固体の高級アルコールとしては、分子中の炭素数が14〜32であるものが好ましく、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、アラキディルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。固体の高級アルコールは、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。固体の高級アルコールは、これらの中では分子中の炭素数が14〜22であるセチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキディルアルコール、ベヘニルアルコールを含むことがより好ましく、これらの高級アルコールを2種類以上を含んでいることがさらに好ましい。高級アルコールの油性成分における含有量は1〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。
【0035】
固形パラフィンとしては、例えば、JIS K 2235に記載されているパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス、セレシン、軟ロウ、日本薬局方のパラフィン等が挙げられる。固形パラフィンは、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。固形パラフィンの油性成分における含有量は1〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。
【0036】
油性成分が含むことができるその他の固体脂としては、例えば、固体のセラミド、固体のスフィンゴ脂質、ワセリン、固体のシリコーン、固体の油剤、及び固体の香料等が挙げられる。
【0037】
液体油の分散相における含有量は40〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。
【0038】
油性成分に含まれる液体油全体の融点は、35℃未満であることが好ましい。
【0039】
液体油としては、例えば、液体の皮膚保護剤、液体の油剤、及び液体の香料等が挙げられる。液体油は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0040】
液体の皮膚保護剤は、皮膚を柔軟にしたり、或いは、平滑にすることにより、肌荒れを防止する成分である。液体の皮膚保護剤としては、例えば、液体のパラフィン、液体のエステル油、液体の高級アルコール、液体のスクワラン、液体のグリセライドなどの液体油脂類;セチロキシプロピルグリセリルメトキシプロピルミリスタミドなどの液体のセラミド;1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノールなどの液体のスフィンゴ脂質が挙げられる。液体の皮膚保護剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。液体の皮膚保護剤の油性成分における含有量は10〜99質量%であることが好ましく、20〜95質量%であることがより好ましい。
【0041】
液体の油剤としては、例えば、液体の炭化水素油、液体の植物油、液体の脂肪酸等;液体のエチレングリコールジ脂肪酸エステル(脂肪酸の炭素数は12〜36)、液体のジアルキルエーテル(炭素数は12〜36)などの液体の油脂類;液体のシリコーン類等が挙げられる。液体の植物油としては、例えば、大豆油、ヤシ油、パーム核油、アマニ油、綿実油、ナタネ油、キリ油、ヒマシ油等が挙げられる。液体の脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、カプリル酸等が挙げられる。液体のシリコーン類としては、シラノール骨格を有するものであればよく、例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、シリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。また、液体の油剤としては、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシルなどの有機紫外線吸収剤も挙げられる。液体の油剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。液体の油剤の油性成分における含有量は10〜99質量%であることが好ましく、20〜95質量%であることがより好ましい。
【0042】
液体の香料としては、従来から使用されている一般的なものが挙げられる。液体の油剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。液体の香料の油性成分における含有量は10〜99質量%であることが好ましく、20〜95質量%であることがより好ましい。
【0043】
液体油は、これらの中では液体の油剤である液体のシリコーン類を含むことがより好ましい。
【0044】
本実施形態のハイドロゲル粒子は各分散相内部に紫外線防御能を有する酸化チタン粒子が分散している。
【0045】
酸化チタン粒子の分散相における含有量は、紫外線防御能の観点から、5〜60質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。酸化チタン粒子のハイドロゲル粒子における総含有量は、紫外線防御能の観点から、0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、1〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
酸化チタン粒子は紫外線防御能を有するが、「紫外線防御能を有する」とは、領域が280〜400nmの範囲の紫外線、特に280〜340nmのUVB、UVAIIを吸収又は散乱する効果を有することを意味する。
【0047】
酸化チタン粒子の一次粒子の平均粒子径は、塗布時の使用感の観点から0.001μm以上であることが好ましく、0.005μm以上であることがより好ましく、0.01μm以上であることがさらに好ましい。また、平均粒子径は、化粧料を塗布したときの透明性の観点から0.1μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがより好ましく、0.06μm以下であることがさらに好ましい。なお、特に指定のない限り、平均粒子径は、電子顕微鏡写真で測定した粒子径の数平均値である。
【0048】
酸化チタン粒子は、その粒子表面に表面活性抑制処理が施されていないものであってもよく、また、その粒子表面に表面活性抑制処理が施されて、粒子表面に表面活性を抑制する表面活性抑制剤が付着したものであってもよい。表面活性抑制剤としては、例えば、水酸化アルミニウム(或いはアルミナ)、含水ケイ酸、シリコーン(メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなどのアルキルシラン; トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどのフルオロアルキルシラン)、脂肪酸(パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸など)、脂肪酸石鹸(ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸など)、脂肪酸エステル(デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステルなど)等が挙げられる。酸化チタン粒子は、その粒子表面に表面活性抑制処理としてシリコーン処理が施されていることが好ましい。
【0049】
ところで、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマー等のイオン性水溶性高分子化合物を増粘剤として用いた化粧料等では、他の配合成分のイオン性基やイオン性物質との接触による相互作用により粘度を適切にコントロールすることが困難になる場合がある。例えば、紫外線防御化粧料において酸化亜鉛粒子や酸化チタン粒子を配合した場合、局所的な粘度の低下や上昇を起こしてしまい、その安定性の確保が困難である。これは、酸化チタン粒子等が水酸化アルミニウムや含水ケイ酸といった表面活性抑制剤によって表面処理されており、それがイオン性水溶性高分子化合物で増粘した水相に添加されると、表面活性抑制剤由来のイオンとイオン性水溶性高分子化合物との相互作用によって化粧料等の粘度の増加や低減を誘起するものであると考えられる。これに対しては、特許文献3に記載されているように、分散相を固相として酸化亜鉛粒子を分散相内に固定化することにより問題の解決が図られるものの、分散相を固相にするためには多量の固体脂の配合が必要であり、これを化粧料等に適用した場合に、塗布時ののびが悪い、或いは、塗布後の感触がべたつく、といった不具合が生じることとなる。しかしながら、本実施形態のハイドロゲル粒子によれば、油性成分の固体脂として高級アルコール及び固形パラフィンを含むと共に、固体脂の油性成分中の含有量が1〜12質量%であり、しかも、ハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径が10〜300μmであるので、化粧料等に適用した場合でも、塗布時ののびが良く、或いは、塗布後のべたつき感を抑える、といった効果を得ることができる。しかも、表面活性抑制剤がシリコーンであれば、酸化チタン粒子が、それで表面処理されて、粒子表面にその表面活性抑制剤が付着したものであっても、表面活性抑制剤に起因した化粧料等の粘度の増加や低減を遅延させることができ、従って、長期間の化粧料等の安定性を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態のハイドロゲル粒子は、上記と同様の理由により、固体脂の分散相における含有量が1〜12質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
【0051】
連続相は、非架橋型ハイドロゲルのゲル形成剤及び水以外に、特開2000−126586号公報に記載の糖類、多価アルコール、水溶性高分子化合物、水溶性香料等の水溶性有機化合物の成分を含有していてもよい。
【0052】
連続相及び分散相のそれぞれは、着色剤、防腐剤等の成分を含有していてもよい。着色剤としては、例えば、顔料及び染料が挙げられる。顔料としては、例えば、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の無機顔料、タール色素等の有機顔料が挙げられる。染料としては、例えば、油溶性染料、建染染料、レーキ染料等が挙げられる。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、イソプロピルメチルフェノール、エタノール、フェノキシエタノール、デヒドロ酢酸及びその塩類等が挙げられる。
【0053】
連続相及び分散相のそれぞれは、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等に用いられる保湿剤、制汗剤、抗菌剤、殺菌剤、粉体等の成分を含有していてもよい。
【0054】
連続相及び分散相のそれぞれは、紫外線防御能を有する酸化亜鉛粒子を含有していてもよい。酸化亜鉛粒子の一次粒子の平均粒子径は、塗布時の使用感の観点から0.001μm以上であることが好ましく、0.005μm以上であることがより好ましく、0.01μm以上であることがさらに好ましい。また、平均粒子径は、化粧料を塗布したときの透明性の観点から0.1μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがより好ましく、0.06μm以下であることがさらに好ましい。
【0055】
本実施形態のハイドロゲル粒子は、上記連続相及び分散相の他、有機紫外線吸収剤、感触調整剤などの油剤を含有し且つ酸化チタン粒子を含有しない油性分散相を備えていてもよい。
【0056】
(ハイドロゲル粒子の製造方法)
次に、本実施形態のハイドロゲル粒子の製造方法について説明する。
【0057】
<水中油型分散液の調製>
まず、連続相の構成成分である水性成分としてゲル形成剤をイオン交換水と混合し、その溶解温度以上の温度に加熱して十分に溶解させることにより連続相成分液を調整する。一方、分散相の構成成分を混合して加熱溶解させることにより分散相成分液を調整する。
【0058】
そして、ゲル化温度以上の温度で、連続相成分液と分散相成分液とを混合して水中油型分散液を調製する。水中油型分散液を調製する方法は特に限定されない。また、水中油型分散液を調製する際には、各種攪拌機、分散機等による公知の技術を用いることができる。
【0059】
このとき、水中油型分散液の安定性の観点から、連続相成分液及び/又は分散相成分液に乳化分散剤を添加することが好ましく、連続相成分液に乳化分散剤を添加することが特に好ましい。
【0060】
乳化分散剤としては、例えば、高分子乳化分散剤、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。乳化分散剤は、単一種を添加してもよく、また、複数種を添加してもよい。乳化分散剤は、化粧料等に適用した場合の皮膚上での延ばしやすさの観点と、洗浄時及び化粧料等への配合時のハンドリング性が良好であることの観点とから、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又は両性界面活性剤と高分子乳化分散剤との併用が好ましく、非イオン性界面活性剤と高分子乳化分散剤との併用がより好ましく、高分子乳化分散剤単独使用がさらに好ましい。乳化分散剤として高分子乳化分散剤を用いる場合、界面活性剤の添加を低減又は無くすことができるので、化粧料等に適用した場合に皮膚に塗布した際の界面活性剤によるべとつきを低減させることができる。
【0061】
高分子乳化分散剤としては、例えば、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体、特開平7−100356号公報に記載された両性高分子化合物と高級脂肪酸とから合成される複合体、特開平8−252447号公報及び特開平9−141079号公報にそれぞれ記載された水溶性両親媒性高分子電解質、特開平9−141080号公報及び特開平9−141081号公報にそれぞれ記載された水溶性架橋型両親媒性高分子電解質、特開平10−53625号公報に記載されたアクリル酸系共重合体、特許第3329689号、特開平10−330401号公報及び特開平11−106401号公報にそれぞれ記載された多糖誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール或いはその誘導体、ポリアクリルアミド、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物の酸化エチレン付加物などの合成高分子化合物、グアヤガム、カラヤガム、トラガントガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、カゼインなどの天然高分子化合物等が挙げられる。
【0062】
これらの高分子乳化分散剤の中では、化粧料等に適用した場合に皮膚に塗布した際のべとつきを低減させる観点から、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体(例えば、日光ケミカルズ(株)製、商品名:PEMULEN等)、ポリビニルアルコール(例えば、日本合成化学工業(株)製、商品名:ゴーセノール等)、特許第3329689号公報に記載された多糖誘導体を用いることが好ましく、ポリビニルアルコールと特許第3329689号公報に記載された多糖誘導体とを併用することがより好ましい。
【0063】
乳化性及び分散性を向上させる観点から、中和された高分子乳化分散剤を添加してもよく、また、分散前又は分散後の連続相成分液及び/又は分散相成分液に、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を添加して高分子乳化分散剤を中和してもよい。中和後のpHは4〜8であることが好ましく、6〜7であることがより好ましい。
【0064】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0065】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルアミンアセテート、ステアリルアミン酸等が挙げられる。
【0066】
非イオン性界面活性剤としては、製造されるハイドロゲル粒子からの油性成分の漏出を防止する観点から、非イオン性界面活性剤のHLBが10以下のものを用いることが好ましく、8以下のものを用いることがより好ましく、5以下のものを用いることがさらに好ましく、3以下のものを用いることが特に好ましい。HLBは、「乳化・可溶化の技術」工学図書(株)(昭59−5−20)p.8−12に記載の計算式に基づいて求めることができる。
【0067】
これらの非イオン性界面活性剤の中では、製造されるハイドロゲル粒子を化粧料等に適用した場合に皮膚刺激性が小さいという観点から、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを用いることが好ましく、ソルビタンモノステアレートを用いることがより好ましい。また、非イオン性界面活性剤の中では、製造されるハイドロゲル粒子から油性成分が漏出するのを抑制する観点から、融点が35℃以上であるものを用いることが好ましく、40〜90℃のものを用いることがより好ましく、50〜90℃のものを用いることがさらに好ましく、60〜80℃のものを用いることが特に好ましい。
【0068】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、レシチン等が挙げられる。
【0069】
<水中油型分散液の粒子化>
続いて、水中油型分散液を調製した後、その水中油型分散液から一般的な滴下法、噴霧法、或いは、攪拌法によりハイドロゲル粒子を製造する。但し、ハイドロゲル粒子からの油性成分の漏出を抑制する観点から、攪拌法よりも滴下法、或いは、噴霧法で製造することが好ましい。
【0070】
滴下法は、孔から水中油型分散液を吐出させ、吐出された水中油型分散液がその表面張力又は界面張力によって液滴になる性質を利用し、その液滴を空気等の気相中又は液相中で冷却固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。なお、粒径の均一なハイドロゲル粒子を製造する観点から、孔から吐出される水中油型分散液に振動を与えることが好ましい。
【0071】
噴霧法は、噴霧ノズルを用い、噴霧ノズルから分散液を気相に噴霧させると共に、その表面張力によって液滴を形成させ、その液滴を気相で冷却させて固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。
【0072】
攪拌法は、水中油型分散液と実質的に混じり合わない性状を有し且つゲル化温度以上の温度に調整した液に水中油型分散液を投入し、攪拌による剪断力により水中油型分散液を微粒化し、界面張力によって液滴になる性質を利用し、その液滴を水中油型分散液と実質的に混じり合わない液中で冷却固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。
【0073】
滴下法、噴霧法、及び攪拌法のいずれの場合も、吐出時、噴霧時、又は投入時の水中油型分散液の温度を、ゲル化温度以上で且つ100℃以下の温度とすることが好ましい。また、美観に優れた球状の粒子を容易に製造することができるという観点から、その水中油型分散液の温度を、ゲル化温度+10℃以上とすることが好ましく、ゲル化温度+20℃以上とすることがより好ましい。なお、この温度の上限は、水の沸点である100℃である。
【0074】
以上のようにして製造されたハイドロゲル粒子を必要に応じてさらに粉砕等により、微細なハイドロゲル粒子にしてもよい。
【0075】
<紫外線防御化粧料>
また、上記のハイドロゲル粒子を配合することにより、紫外線防御効果を有する紫外線防御化粧料を得ることができる。その場合、w/o型、o/w型のいずれの化粧料にも適用することが可能であるが、o/w型の化粧料に用いることが好ましい。
【0076】
紫外線防御化粧料中のハイドロゲル粒子の含有量は5〜80質量%が好ましく、10〜75質量%がより好ましい。紫外線防御化粧料中の酸化チタン粒子の含有量は0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0077】
紫外線防御化粧料に、さらに有機紫外線吸収剤を配合することにより、紫外線吸収効果をより高めることができる。このとき用いる有機紫外線吸収剤としては特に限定されず、油溶性、水溶性のいずれのものも好適に使用することができ、例えば、特開2006−225311公報に記載されたものを使用することができる。油溶性の有機紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系、サリチル酸系、桂皮酸系、ベンゾフェノン系のものが挙げられる。
【0078】
紫外線防御化粧料中の有機紫外線吸収剤の含有量は、肌のべたつきのなさ及び紫外線吸収効果の点から、1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
【0079】
紫外線防御化粧料は、感触調整の点で油剤を含有することができる。かかる油剤としては、特開2006−225311公報に記載された油剤などが挙げられ、特にエステル油及びシリコーン油が感触向上の点で好ましい。紫外線防御化粧料中の油剤の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0080】
紫外線防御化粧料には、上記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、界面活性剤、美白剤、殺菌剤、制汗剤、保湿剤、清涼剤、香料、着色剤等を配合することができる。
【0081】
上記紫外線防御化粧料は、肌に塗布することにより、肌のべたつきやかさつきを抑え、さらにはこれらの感触を持続させて、紫外線吸収剤等の有効成分を肌に長時間残留させることができる。
【実施例】
【0082】
(ハイドロゲル粒子)
実施例1〜4及び比較例1〜3のハイドロゲル粒子を調製した。それぞれの構成は表1にも示す。
【0083】
<実施例1>
固体脂として、高級アルコール(花王社製、商品名:KALCOL220−80、融点72℃、炭素数18〜22の混合物、ベヘニルアルコール含有量80質量%以上)、及び固形パラフィン(SONNEBORN社製 商品名:Multiwax835)、液体油として、ポリグリセリン変性シリコーン(信越化学工業社製 商品名:KF−6104)、及びシクロペンタシロキサン(信越化学工業社製 商品名:KF−995、融点−40℃)(以上、油性成分)、並びに疎水化処理酸化チタン微粒子(表面活性抑制剤としてシリコーンにより表面処理されたもの)を含む分散相成分液を調整した。このとき、得られるハイドロゲル粒子における含有量が、高級アルコール1.0質量%、固形パラフィン1.0質量%、ポリグリセリン変性シリコーン2.45質量%、シクロペンタシロキサン20.3質量%、及び疎水化処理酸化チタン微粒子12.25質量%となるように配合を行った。各成分の分散相成分液における含有量は、高級アルコール2.70質量%、固形パラフィン2.70質量%、ポリグリセリン変性シリコーン6.62質量%、シクロペンタシロキサン54.9質量%、及び疎水化処理酸化チタン微粒子33.1質量%である。従って、固体脂の分散相成分液における含有量は5.4質量%である。また、固体脂の油性成分における含有量は8.08質量%である。
【0084】
寒天(伊那食品工業社製 商品名:UP−16、ゼリー強度58.8kPa)、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製 商品名:ゴーセノールEG−05)、多糖誘導体(花王社製 商品名:SPS−S、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルステアリルエーテルヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム)、及び精製水を含む連続相成分(水性成分)液を調整した。このとき、得られるハイドロゲル粒子における含有量が、寒天1.0質量%、ポリビニルアルコール0.5質量%、多糖誘導体0.1質量%、及び精製水その他残部となるように配合を行った。
【0085】
分散相成分液と連続相成分液とを質量比37:63の割合となるように合計3000g準備し、分散相成分液を80℃及び連続相成分液を90℃でそれぞれ加熱溶解させた後、80℃の分散相成分液と80℃に冷却した連続相成分液とをアンカー式攪拌機を用いて攪拌混合し、それらの混合液を得た。
【0086】
次いで、この混合液を乳化機〔特殊機化社製 商品名:T.K.ホモミクサーMARKII2.5型〕を用いて回転数10000rpmで3分間攪拌して水中油型分散液を調製した。
【0087】
そして、その水中油型分散液を80℃にし、10kg/hrの流量で噴霧ノズル(スプレーイングシステム社製 商品名:SUE−28B)を用い、気液比(気体/液体)を1063として10℃に冷却された500L槽内に噴霧し、槽下部において、噴霧により形成された分散液の液滴が冷却固化されたハイドロゲル粒子を回収した。このハイドロゲル粒子を実施例1とした。実施例1のハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は61μmであった。なお、体積基準平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所(株)製、型番:LA−910)を用いたレーザ回折散乱法によって測定した。
【0088】
<実施例2>
固形パラフィンとしてSONNEBORN社製の商品名:Multiwax445を用いたことを除いて実施例1と同一構成のハイドロゲル粒子を調製し、これを実施例2とした。実施例2のハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は87μmであった。
【0089】
<実施例3>
固形パラフィンとして日本精蝋社製の商品名:HiMic1045を用いたことを除いて実施例1と同一構成のハイドロゲル粒子を調製し、これを実施例3とした。実施例3のハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は61μmであった。
【0090】
<実施例4>
得られるハイドロゲル粒子における含有量が、高級アルコール1.5質量%、及び固形パラフィン1.5質量%となるように配合を行い、分散相成分液と連続相成分液とを質量比38:62の割合となるように攪拌混合し、この混合液を80℃に調温したまま、12kg/hの流量でスプレーノズル(株式会社いけうち社製 空円錐ノズルK−010)から3.4mの高さにおいて、25℃の気相中に噴霧し、気相中を沈降した粒子を回収することで、ハイドロゲル粒子を得たこと以外は、実施例3の場合と同様にして実施例4のハイドロゲル粒子を作製した。この実施例4のハイドロゲル粒子では、各成分の分散相成分液における含有量は、高級アルコール3.95質量%、固形パラフィン3.95質量%、ポリグリセリン変性シリコーン6.45質量%、シクロペンタシロキサン53.4質量%、及び疎水化処理酸化チタン微粒子32.2質量%である。従って、固体脂の分散相成分液における含有量は7.9質量%である。また、固体脂の油性成分における含有量は11.7質量%である。実施例4のハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は220μmであった。
【0091】
<比較例1>
得られるハイドロゲル粒子における含有量が、高級アルコール2.5質量%、及び固形パラフィン2.5質量%となるように配合を行い、分散相成分液と連続相成分液とを質量比40:60の割合となるように攪拌混合したことを除いて実施例3と同一構成のハイドロゲル粒子を調製し、これを比較例1とした。この比較例1のハイドロゲル粒子では、各成分の分散相成分における含有量は、高級アルコール6.25質量%、固形パラフィン6.25質量%、ポリグリセリン変性シリコーン6.13質量%、シクロペンタシロキサン50.8質量%、及び疎水化処理酸化チタン微粒子30.6質量%である。従って、固体脂の分散相成分液における含有量は12.5質量%である。また、固体脂の油性成分における含有量は18.0質量%である。比較例1のハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は56μmであった。
【0092】
<比較例2>
固体脂に固形パラフィンを含めず、得られるハイドロゲル粒子における含有量が、高級アルコール3.0質量%となるように配合を行い、分散相成分液と連続相成分液とを質量比38:62の割合となるように攪拌混合したことを除いて実施例1と同一構成のハイドロゲル粒子を調製し、これを比較例2とした。この比較例2のハイドロゲル粒子では、各成分の分散相成分液における含有量は、高級アルコール7.89質量%、ポリグリセリン変性シリコーン6.45質量%、シクロペンタシロキサン53.4質量%、及び疎水化処理酸化チタン微粒子32.2質量%である。従って、固体脂の分散相成分液における含有量は7.9質量%である。また、固体脂の油性成分における含有量は11.7質量%である。比較例2のハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は58μmであった。
【0093】
<比較例3>
固体脂に高級アルコールを含めず、得られるハイドロゲル粒子における含有量が、固形パラフィン2.0質量%となるように配合を行ったことを除いて実施例1と同一構成のハイドロゲル粒子を調製し、これを比較例3とした。この比較例3のハイドロゲル粒子では、各成分の分散相成分液における含有量は、固形パラフィンが5.41質量%、ポリグリセリン変性シリコーン6.62質量%、シクロペンタシロキサン54.9質量%、及び疎水化処理酸化チタン微粒子33.1質量%である。従って、固体脂の分散相成分液における含有量は5.4質量%である。また、固体脂の油性成分における含有量は8.08質量%である。比較例3のハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は100μmであった。
【0094】
<比較例4>
実施例1と同様の組成で調整した分散相成分液と連続相成分液とを質量比37:63の割合となるように合計300g準備し、分散相成分液を80℃及び連続相成分液を90℃でそれぞれ加熱溶解させた後、80℃の分散相成分液と80℃に冷却した連続相成分液とをアンカー式攪拌機を用いて攪拌混合し、それらの混合液を得た。
【0095】
次いで、この混合液を乳化機〔特殊機化社製 商品名:T.K.ホモミクサーMARKII2.5型〕を用いて回転数10000rpmで1分間攪拌して水中油型分散液を調製した。
【0096】
その後、0.1質量%のポリエーテルシリコーン(信越化学工業社製 商品名:KF−6013)を溶解させたシリコーンオイル(信越化学工業社製 商品名:KF−96A20CS)を70℃に加温した。そして、70℃に保持されたシリコーンオイル中に、先に調製した混合液を100g/minの速度で滴下した。なお、滴下は、シリコーンオイルをアンカー翼で攪拌した状態で行った。
【0097】
混合液を全量滴下後、シリコーンオイルを10℃に冷却し、シリコーンオイル中に分散していた混合液を冷却固化させることによってハイドロゲル粒子を得た。なお、冷却は、シリコーンオイルをアンカー翼で攪拌した状態で行った。このハイドロゲル粒子を比較例4とした。比較例4のハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は400μmであった。
【0098】
【表1】

【0099】
(試験評価方法)
アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体(日光ケミカルズ社製 商品名:PEMULEN TR−2)、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(BASF社製 商品名ユビナールMC−80)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(東邦化学工業社製 商品名:ハイソルブEPH)、48%水酸化カリウム液(東亞合成社製 商品名:液体苛性カリ(48%))、エタノール(日本合成アルコール社製 商品名:95%合成アルコール)、及び精製水を混合して化粧料基剤を調製した。このとき、得られる化粧料における含有量が、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体0.20質量%、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル8.50質量%、エチレングリコールモノフェニルエーテル0.40質量%、水酸化カリウム液(48%)0.20質量%、エタノール7.0質量%、及び精製水その他残部となるように配合を行った。
【0100】
実施例1〜4及び比較例1〜3のそれぞれのハイドロゲル粒子について、サンスクリーンゲルへの使用適正を調べるべく、上記化粧料基剤と1:1の割合で混合して紫外線防御化粧料を調製した。それぞれの構成は表2にも示す。
【0101】
【表2】

【0102】
<実使用試験>
実施例1〜4及び比較例1〜4から調製した上記紫外線防御化粧料について、専門パネラー5名が前腕部に塗布し、肌のみずみずしさ、肌のなめらかさ、及び肌のみずみずしさの持続性の3つの評価項目に関する実使用試験を行った。そして、これら3つの評価項目のそれぞれについて下記評価基準で5人の平均スコアを求め、また、3つの評価項目の平均スコアをさらに平均した総合平均スコアを求め、下記判定基準に基づいて評価判定を行った。
【0103】
−評価項目及び評価基準−
○肌のみずみずしさ
スコア4…みずみずしい
スコア3…ややみずみずしい
スコア2…ややみずみずしくない
スコア1…みずみずしくない
○肌のなめらかさ
スコア4…なめらか
スコア3…ややなめらか
スコア2…ややなめらかでない
スコア1…なめらかでない
○肌のみずみずしさの持続性(塗布1時間後)
スコア4…みずみずしさが持続する
スコア3…みずみずしさがやや持続する
スコア2…みずみずしさが余り持続しない
スコア1…みずみずしさが持続しない
−判定基準−
総合平均スコア3.5〜4.0…A
総合平均スコア2.5〜3.4…B
総合平均スコア1.5〜2.4…C
総合平均スコア1.0〜1.4…D
<安定性試験>
実施例1〜4及び比較例1〜4から調製した上記紫外線防御化粧料について、調製直後及び50℃の温度雰囲気下で1ヶ月静置保管後のそれぞれの分離の有無について確認し、以下の基準で評価を行った。
【0104】
A:よい(分離なし)
B:劣る(分離あり)
(試験評価結果)
表2に試験評価結果を示す。
【0105】
これによれば、肌のみずみずしさは、実施例1が4、実施例2が4、実施例3が4、及び実施例4が3、並びに比較例1が1、比較例2が2、比較例3が1、及び比較例4が1であった。
【0106】
肌のなめらかさは、実施例1が4、実施例2が4、実施例3が4、及び実施例4が3、並びに比較例1が1、比較例2が2、比較例3が1、及び比較例4が1であった。
【0107】
肌のみずみずしさの持続性は、実施例1が4、実施例2が4、実施例3が4、及び実施例4が3、並びに比較例1が2、比較例2が1、比較例3が2、及び比較例4が2であった。
【0108】
そして、実使用試験の総合平均スコアは、実施例1がA、実施例2がA、実施例3がA、及び実施例4がB、並びに比較例1がD、比較例2がC、比較例3がD、及び比較例4がDであった。
【0109】
安定性試験は、実施例1がA、実施例2がA、実施例3がA、及び実施例4がA、並びに比較例1がA、比較例2がB、比較例3がB、及び比較例4がAであった。
【0110】
以上の結果より、実施例1〜4では、実使用試験及び安定性試験の結果が共に良好であった。一方、高級アルコール及び固形パラフィンが多量に配合された比較例1、固形パラフィンが配合されていない比較例2、高級アルコールが配合されていない比較例3、体積基準平均粒子径が300μmを超える比較例4は、実使用試験及び安定性試験の結果のいずれか一方又は双方ともに好ましくない結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、非架橋型ハイドロゲルの連続相に油性成分を含む分散相が分散したハイドロゲル粒子及びそれを用いた紫外線防御化粧料について有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非架橋型ハイドロゲルの連続相と、該連続相に分散した分散相と、を備え、
上記分散相のそれぞれは、油性成分として固体脂及び液体油を含有すると共に、内部に酸化チタン粒子が分散しており、
上記油性成分の固体脂は、高級アルコール及び固形パラフィンを含むと共に、上記油性成分中の含有量が1〜12質量%であり、そして、
体積基準平均粒子径が10〜300μmであるハイドロゲル粒子。
【請求項2】
上記酸化チタン粒子は、その粒子表面に表面活性抑制処理が施されている請求項1に記載されたハイドロゲル粒子。
【請求項3】
上記表面活性抑制処理がシリコーン処理である請求項2に記載されたハイドロゲル粒子。
【請求項4】
上記油性成分に含まれる液体油の融点が35℃未満である請求項1乃至3のいずれかに記載されたハイドロゲル粒子。
【請求項5】
上記高級アルコールは分子中の炭素数が14〜32である高級アルコールを含む請求項1乃至4のいずれかに記載されたハイドロゲル粒子。
【請求項6】
上記液体油はシリコーンを含む請求項1乃至5のいずれかに記載されたハイドロゲル粒子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載されたハイドロゲル粒子が配合された紫外線防御化粧料。

【公開番号】特開2010−150245(P2010−150245A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264266(P2009−264266)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】