説明

ハイブリッド礁及びそれを使用した水生生物の共生環境の創出方法

【課題】水生生物の増殖、保護、及び育成を図ることが可能なハイブリッド礁及びそれを使用した水生生物の共生環境の創出方法を提供する。
【解決手段】鋼材、伐採材、及び石材を混成して用いたハイブリッド礁10は、稜線部が鋼材によって形成され周囲が開放された鋼製枠体11と、鋼製枠体11の上下方向中間位置及び底部位置にそれぞれ水平配置された第1及び第2の網部材12、13と、第1及び第2の網部材12、13の間に隙間を有して並べて配置された木材及び竹材のいずれか1又は双方からなる伐採材15と、第1の網部材12の上部に収納された複数の石材16とを有し、河川又は湖沼の底に設置して、多様な水生生物の増殖、保護、及び育成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、河川又は湖沼等に生息する水生生物の増殖、保護、及び育成を図るハイブリッド礁及びそれを使用した水生生物の共生環境の創出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川においては、利水、治水、及び洪水に伴う水害対策の観点から、多目的ダムの建設、河道の直線化、及び護岸工事が行われ、多くのビオトープ(水生生物の生活圏)が喪失している。このため、近年、ビオトープの保全、再生、及び回復に向けて、いわゆる「多自然型川づくり」が推進されている。例えば、護岸工事によって失われたビオトープを回復するため、親水機能を備えた空洞型のコンクリート魚巣ブロックや積み石型のコンクリート魚巣ブロック(例えば、特許文献1参照)を使用した護岸整備や、木材を井桁状に組み内部に石材を詰めた木工沈礁(例えば、特許文献2参照)を漁礁として配置する川底整備が行われ、治水上の安全性を確保しながら水生生物の生息空間の確保も図られている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−181742号公報
【特許文献2】特開2003−105740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のコンクリート魚巣ブロックや木工沈礁では、設置してから時間が経過すると、コンクリート魚巣ブロックの間隙内、木工沈礁に使用している詰め石の間隙内、コンクリート魚巣ブロック内の空洞内に土砂が侵入し堆積して間隙や空洞が消滅し、水生生物の生息空間としての機能が消失してしまうという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、土砂及び礫の堆積による水生生物の生息空間の消失を防止して水生生物の増殖、保護、及び育成を図ることが可能なハイブリッド礁及びそれを使用した水生生物の共生環境の創出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係るハイブリッド礁は、稜線部が鋼材によって形成され、周囲が開放された鋼製枠体と、
前記鋼製枠体の上下方向中間位置及び底部位置にそれぞれ水平配置された第1及び第2の網部材と、
前記第1及び第2の網部材の間に隙間を有して並べて配置された木材及び竹材のいずれか1又は双方からなる伐採材と、
前記第1の網部材の上部に収納された複数の石材とを有する。
【0007】
本発明に係るハイブリッド礁において、前記伐採材は所定長さに切断された間伐材からなって、複数の該間伐材が長手方向を上下にして水平方向に密接状態で並べて配置され、各列の間に前記隙間を形成するガイド部材が配置されていることが好ましい。
【0008】
本発明に係るハイブリッド礁において、前記伐採材は所定長さに切断された間伐材からなって、複数の該間伐材が長手方向を上下にして水平方向に並べて配置され、各列の間に前記隙間を形成する対となるガイド部材が設けられ、前記隙間には節抜きした一定長さの竹材を水平に配置することができる。
【0009】
本発明に係るハイブリッド礁において、前記鋼製枠体の側方向周囲には、内部に配置された前記伐採材及び前記石材の流出を防止する木材流出防止部材及び石材流出防止部材が設けられていることが好ましい。
【0010】
本発明に係るハイブリッド礁において、前記第1の網部材の開口寸法は前記第2の網部材の開口寸法より小さいことが好ましい。
【0011】
本発明に係るハイブリッド礁において、前記鋼製枠体の底部の外側には複数の脚が突出して形成されていることが好ましい。
【0012】
前記目的に沿う本発明に係る水生生物の共生環境の創出方法は、本発明に係るハイブリッド礁を河川又は湖沼の底に設置して、前記隙間を魚類の生息空間に、前記伐採材同士の間隙及び前記石材同士の間隙を水生小動物の生息空間及び稚幼魚の隠れ場所としてそれぞれ利用すると共に、前記石材及び前記伐採材の表面を藻類の着生基材及び有機物の付着基材として利用して、多様な水生生物の増殖、保護、及び育成を行う。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜6記載のハイブリッド礁においては、ハイブリッド礁が鋼製枠体の単位で構成されているため、工場でハイブリッド礁を作製して設置場所まで移動し、そのまま設置場所(河川又は湖沼の底)に据え付けることが可能になる。その結果、効率的かつ安価にハイブリッド礁の作製を行うことができると共に、ハイブリッド礁を短期間で設置することが可能になる。更に、ハイブリッド礁の設置に際しては、設置場所ではハイブリッド礁の搬入作業及び据え付け作業しか発生しないので、設置場所及びその周辺における環境破壊を防止することが可能になる。
また、鋼製枠体内に石材を収納することによりハイブリッド礁の重量が重くなって、ハイブリッド礁が設置場所から移動するのを防止できる。なお、隙間の上には第1の網部材が取付けられているので石材が隙間内に落下するのを防止できる。
【0014】
特に、請求項2記載のハイブリッド礁においては、ガイド部材が配置されているため並べた間伐材のずれを防止して隙間を長期間に渡って安定して維持することができ、隙間内に侵入した土砂を隙間内を通過する水流によって容易に掃去して隙間に土砂が堆積するのを防止することが可能になる。また、隙間を水生生物の生息空間として長期間に渡って確保することが可能になる。更に、間伐材を使用することで、森林整備における廃棄物の発生を減少させることが可能になる。
【0015】
請求項3記載のハイブリッド礁においては、節抜きした竹材を使用することで、隙間内に筒状空間を容易に形成することができ、筒状空間を好む水生生物(例えば、ウナギ)の生息空間を容易に形成することが可能になる。更に、竹材同士の間に形成される間隙は小さな水生生物の生息空間として利用できる。そして、竹材内及び竹材の周囲を水流が通過するので、侵入した土砂を通過する水流によって容易に掃去でき、竹材内及び竹材同士の間隙内に土砂が堆積するのを防止することが可能になる。なお、竹林整備により発生する伐竹材を使用するようにすると、廃棄物の発生を抑えながら健全な竹林の育成を図ることが可能になる。
【0016】
請求項4記載のハイブリッド礁においては、木材流出防止部材及び石材流出防止部材により、水量が増加したり、水流の速度が大きくなっても、ハイブリッド礁の損傷を防止することが可能になる。
【0017】
請求項5記載のハイブリッド礁においては、第1の網部材により隙間に礫が侵入するのを防止することができると共に、隙間に侵入した土砂や礫は降下して第2の網部材に達し、第2の網部材を通過して隙間の外に排出できるので、隙間に土砂や礫が残留するのを防止することが可能になる。
【0018】
請求項6記載のハイブリッド礁においては、脚を河川や湖沼の底にくい込ませるだけで、又は、据え付け作業で脚の先側を埋設するだけの掘削工事を河川や湖沼の底に施すだけで、ハイブリッド礁を容易に固定することが可能になる。また、脚の長さを調整することでハイブリッド礁の底部が河川や湖沼の底に接触するのを防止して、河川や湖沼の底を保全することが可能になる。
【0019】
請求項7記載の水生生物の共生環境の創出方法においては、石材には珪藻及び藍藻等の藻類が着生して増殖するのでアユ、モロコ等の藻食魚類の餌場となり、伐採材に付着する有機物及び餌料動物は魚類の餌料として利用され、石材及び伐採材の間隙はモクズガニ、ヌマエビ等の小さな水生動物及び稚幼魚の外敵からの隠れ場となるので、多様な水生生物の増殖、保護、及び育成を図ることが可能になる。その結果、河川又は湖沼にハイブリッド礁を設置することで、ハイブリッド礁内に多様な水生生物の共生環境を創出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係るハイブリッド礁の斜視図、図2は同ハイブリッド礁の正断面図、図3は同ハイブリッド礁を異なる高さ位置で切断した際の平断面図、図4は本発明の第2の実施の形態に係るハイブリッド礁の正断面図、図5は同ハイブリッド礁の部分側断面図である。
【0021】
図1〜図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るハイブリッド礁10は、鋼材、伐採材、及び石材を混成して用いるものであって、稜線部が鋼材によって形成され、周囲が開放された鋼製枠体11と、鋼製枠体11の上下方向中間位置及び底部位置にそれぞれ水平配置された第1及び第2の網部材12、13と、第1及び第2の網部材12、13の間に隙間14を有して並べて配置された木材からなる伐採材の一例である間伐材15と、第1の網部材12の上部に収納された複数の石材の一例である自然石16とを有している。以下、これらについて詳細に説明する。
【0022】
鋼製枠体11は、例えば、平面視して長方形の各頂点位置及び各長辺の中央位置にそれぞれ立設される6本の柱材17と、長方形の短辺の両端位置の柱材17の上端部同士を連結する対となる第1の上部梁材18と、長方形の長辺の両端位置の柱材17の上端部同士を連結する対となる第2の上部梁材19と、長方形の短辺の両端位置の柱材17の下部同士を連結する対となる第1の下部梁材20と、長方形の長辺の両端位置の柱材17の下部同士を連結する対となる第2の下部梁材21とを有している。また、各柱材17は、第1及び第2の下部梁材20、21との連結部よりも下側の部分が鋼製枠体11の底部から外側に突出する脚22を形成している。
鋼製枠体11の稜線部を構成するこれらの柱材17、第1、第2の上部梁材18、19、及び第1、第2の下部梁材20、21は、それぞれ幅が、例えば5〜10cmの鋼製のアングルを用いて形成されている。なお、鋼製枠体11の寸法は、運搬手段(例えば、トラック)で搬送可能な大きさ(例えば、縦が100〜300cm、横が150〜600cm、高さが50〜200cm)にする必要がある。
【0023】
鋼製枠体11の側方向周囲、すなわち、短辺側及び長辺側の側部の上下方向中間位置には、それぞれ幅が、例えば2〜5cmの第1及び第2の木材流出防止部材23、24が柱材17間に水平に設けられ、内部に配置される間伐材15の流出を防止するようになっている。また、第1の上部梁材18と第1の木材流出防止部材23の上下方向中間位置及び第2の上部梁材19と第2の木材流出防止部材24の上下方向中間位置には、例えば2〜5cmの幅を有する第1及び第2の石材流出防止部材25、26がそれぞれ柱材17間に水平に設けられ、内部に配置される自然石16の流出を防止するようになっている。更に、対向する第2の上部梁材19の中央部間には、例えば2〜5cmの幅を有する補強部材27が2本並べて掛け渡されている。
【0024】
また、対向する第1の木材流出防止部材23には、所定幅(例えば、3〜10cm)のガイド部材28が、鋼製枠体11の幅方向に一定の間隔を有して、鋼製枠体11の長手方向に平行になるように掛け渡されている。ここで、ガイド部材28の間に形成される間隔は、間伐材15をその長手方向を上下にして挿入可能な寸法(例えば、5〜20cm)とする。なお、第1及び第2の木材流出防止部材23、24、第1及び第2の石材流出防止部材25、26、補強部材27、並びにガイド部材28は、それぞれ鋼製のアングルを用いて形成されている。
【0025】
鋼製枠体11の上下方向中間位置に水平配置される第1の網部材12の開口寸法は、例えば、1〜2cmとし、鋼製枠体11の底部位置に配置される第2の網部材13の開口寸法は、例えば、3〜5cmとして、第1の網部材12の開口寸法を第2の網部材13の開口寸法より小さくする。ここで、第1及び第2の網部材12、13には、例えば、エキスパンドメタルを使用することができる。
そして、第1及び第2の網部材12、13の間には、第1及び第2の網部材12、13間の長さと実質的に同一の長さに切り揃えられた間伐材15が、各ガイド部材28の間に互いに水平方向に密接状態で立設配置されている。更に、第1の網部材12の上には自然石16が多段に載置されている。
【0026】
間伐材15の各列の間にガイド部材28が配置されているので、間伐材15の側面で両側が囲まれる隙間14(例えば、幅3〜10cm)を形成することができる。そして、ハイブリッド礁10を、その長手方向が河川の水流方向に一致するようにして河川の底に沈めると、ハイブリッド礁10内に形成されている隙間14の長手方向を河川の水流方向に一致させることができる。なお、ハイブリッド礁10を河川の底に沈めた際、各脚22の下端面にはハイブリッド礁10の重量が分散して加わるため、各脚22の先部は河川の底にくい込み、ハイブリッド礁10を河川の底に容易に固定することができる。
【0027】
そして、間伐材15の上には第1の網部材12が配置されているので、多段に載置された自然石16が隙間14に落下するのが防止される。また、水流に運ばれて自然石16の上面に到達した礫の中で、大きな礫は自然石16の間隙を通過できず、自然石16の層に捕捉される。また、自然石16の間を通過した礫は、第1の網部材12で捕捉されて隙間14内に侵入(落下)するのが阻止される。一方、粒径が小さく第1の網部材12を通過して隙間14内に侵入した礫及び土砂は、隙間14を通過する水流に押し流されて隙間14内を移動しハイブリッド礁10の外に排出される。更に、河川の底の地盤構造及び強度に応じて脚22の長さを調整すると、ハイブリッド礁10の底部を河川の底から離した状態でハイブリッド礁10を設置することができ、この場合は、隙間14に侵入した礫は第2の網部材13を通過して川底に排出される。
【0028】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係るハイブリッド礁10を河川の底に設置して水生生物の共生環境を創出する方法について説明する。
先ず、ハイブリッド礁10の設置場所として、例えば、固定堰又は可倒堰により水位の管理ができ、計画河床高さより低い河床となっている淵を選定する。計画河床高さより低い河床の淵に設置することにより、ハイブリッド礁10を設置しても水流の妨げにならず、治水上の問題が生じない。また、水位の管理が可能なことにより、ハイブリッド礁10を常時水没させることができ、ハイブリッド礁10の周辺に魚類を常時存在させることができる。
【0029】
次いで、水位の管理幅と淵の広さに応じてハイブリッド礁10の寸法を決める。ここで、ハイブリッド礁10の最大寸法は運搬手段の積載能力により決定されるので、淵の領域が広い場合は、ハイブリッド礁10を複数並べて淵の全領域が覆われるように設置する。ここで、ハイブリッド礁10は、予め作製した鋼製枠体11の底部位置に第2の網部材13を配置してから第1及び第2の木材流出防止部材23、24、並びにガイド部材28を取付け、ガイド部材28の間に間伐材15を立設配置してから第1の網部材12を配置し、更に第1及び第2の石材流出防止部材25、26を取付けてから第1の網部材12の上に自然石16を多段に載置することにより作製する。
なお、ハイブリッド礁10の上流側の底には蛇籠を設置することが好ましい。蛇籠を設置することでハイブリッド礁10に向けて流れ込む水流の勢いを減少させて、ハイブリッド礁10を設置した周辺の底が水流でえぐられたり、ハイブリッド礁10が水流で下流側に押し流されるのを防止することができると共に、ハイブリッド礁10に運び込まれる土砂及び礫の量を減少させてハイブリッド礁10が埋没するのを防止できる。
【0030】
以上のようにして河川の底に設置されたハイブリッド礁10では、自然石16の表面は特に藻類の着生基材として作用するため珪藻及び藍藻等の藻類が着生して増殖する。また、間伐材15の表面は藻類の着生基材及び有機物の付着基材として作用するため藻類や有機物を餌とする微小水生生物が棲息するようになる。このため、自然石16に着生した藻類を餌とするアユ、モロコ等の藻食魚類、間伐材に着生した藻類、付着した有機物、及び微小水生生物を餌とするモクズガニ、ヌマエビ等の小さな水生動物、並びに稚幼魚が集まる。そして、魚介類からの排泄物を養分として藻類及び微小水生生物が増殖することになる。更に、ハイブリッド礁10内の隙間14はアユ、モロコ等の藻食魚類の生息空間となり、間伐材15同士の間隙及び自然石16同士の間隙はモクズガニ、ヌマエビ等の小さな水生小動物及び稚幼魚の外敵からの避難場所やすみかとなる。その結果、ハイブリッド礁10内に多様な水生生物の共生環境が創出される。
【0031】
例えば、河川バイパス工事によりコンクリート及び矢板鋼護岸が整備された河川で、水位管理ができ、計画河床高さより低い河床となっている淵にハイブリッド礁10を設置した場合、設置から7〜8カ月経過後、潜水調査ではハイブリッド礁10の周辺で約10種の魚類の棲息が確認され、河川の一側からハイブリッド礁10を通過して他側に向かう方向における調査(河川横断ラインセクト調査)でもハイブリッド礁10の周辺に魚類が集中分布していることが確認された。更に、ハイブリッド礁10の上部ではアユが藻類を食べる「はみ行動」が観察され、自然石16の表面には藻類が部分的に噛み切られている「はみあと」が確認された。
【0032】
図4、図5に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るハイブリッド礁29は、第1の実施の形態に係るハイブリッド礁10と比較して、ガイド部材28の代りに隙間14より広い隙間32(例えば、20〜30cm)を形成する対となるガイド部材30を水平方向に複数配置し、隣り合う対となるガイド部材30の間には間伐材15を長手方向を上下にして水平方向に並べ、隙間32に節抜きした一定長さの竹材31を水平に積み重ねて配置することが特徴となっている。このため、同一の構成部材に対しては同一の符号を付して詳細な説明を省略する。なお、水平方向に配置される竹材31は、長手方向に間隔Cを設けて並べて配置する。
【0033】
竹材31としては、節を抜いた際に内側に3〜10cmの内径を有する筒状の空間部が形成される外径Dを有するものを使用する。そして、竹材31は長さLを、例えば、50〜100cmに切り揃えて、30〜50cmの間隔Cを設けて隙間32に配置する。竹材の長さLを50cm以上とすることで、例えば、ウナギ等の筒状の空間部を好む水生生物の棲息空間を形成することができ、100cm以下の長さとすることで、棲息空間への進入及び棲息空間からの脱出が容易になる。そして、間隔Cを設けて竹材31を配置することで、竹材31のいずれの側からでも進入及び脱出が可能になる。
【0034】
竹材31は、鋼製枠体11内でガイド部材30に沿って立設配置されている間伐材15の間で形成される隙間32に、その長手方向をガイド部材30の軸方向に沿って間隔Cを設けて順次配置するようにしてもよいが、隙間32に挿入できる幅と、第1及び第2の網部材12、13の間に収容可能な高さを有するように竹材31をその両端位置を揃えながら積み重ねて結束部材で固定した集合体を予め形成し、この集合体を間隔Cを設けて並べるようにしてもよい。
なお、本発明の第2の実施の形態に係るハイブリッド礁29を河川の底に設置して水生生物の共生環境を創出する方法では、隙間32に竹材31が配置されて竹材31の内側にウナギ等の筒状の空間部を好む水生生物の棲息空間が形成されることを除くと、ハイブリッド礁29の作用は第1の実施の形態に係るハイブリッド礁10の作用と実質的に同一である。このため、ハイブリッド礁29の作用についての説明は省略する。
【0035】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明のハイブリッド礁及びそれを使用した水生生物の共生環境の創出方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、第1及び第2の網部材にエキスパンドメタルを使用したが、パンチングメタル金網、及び合成樹脂製の網のいずれかを単独で又は組み合わせて使用してもよい。また、柱材の先部を鋭角にして、脚が河川の底に容易にくい込むようにしてもよい。更に、ハイブリッド礁の固定を確実にするため、脚を長くして脚と接触する河川の底の部分を掘削して脚のくい込み部分を大きくすることもできる。
【0036】
前記実施の形態では、伐採材として木材を使用したが、竹材を使用してもよい。また、木材と竹材を混在させるようにすることもできる。
更に、ハイブリッド礁を河川の底に設置する場合について説明したが、湖沼の底にすることもできる。湖沼では河川に比較して水流が無視でき、隙間内への土砂の侵入は軽微になるが、隙間の伸びる方向を湖沼で生じる波の方向に合わせると、隙間に侵入した土砂を水流で排出することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るハイブリッド礁の斜視図である。
【図2】同ハイブリッド礁の正断面図である。
【図3】同ハイブリッド礁を異なる高さ位置で切断した際の平断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るハイブリッド礁の正断面図である。
【図5】同ハイブリッド礁の部分側断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10:ハイブリッド礁、11:鋼製枠体、12:第1の網部材、13:第2の網部材、14:隙間、15:間伐材、16:自然石、17:柱材、18:第1の上部梁材、19:第2の上部梁材、20:第1の下部梁材、21:第2の下部梁材、22:脚、23:第1の木材流出防止部材、24:第2の木材流出防止部材、25:第1の石材流出防止部材、26:第2の石材流出防止部材、27:補強部材、28:ガイド部材、29:ハイブリッド礁、30:ガイド部材、31:竹材、32:隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
稜線部が鋼材によって形成され、周囲が開放された鋼製枠体と、
前記鋼製枠体の上下方向中間位置及び底部位置にそれぞれ水平配置された第1及び第2の網部材と、
前記第1及び第2の網部材の間に隙間を有して並べて配置された木材及び竹材のいずれか1又は双方からなる伐採材と、
前記第1の網部材の上部に収納された複数の石材とを有することを特徴とする鋼材、伐採材、及び石材を混成して用いたハイブリッド礁。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド礁において、前記伐採材は所定長さに切断された間伐材からなって、複数の該間伐材が長手方向を上下にして水平方向に密接状態で並べて配置され、各列の間に前記隙間を形成するガイド部材が配置されていることを特徴とするハイブリッド礁。
【請求項3】
請求項1記載のハイブリッド礁において、前記伐採材は所定長さに切断された間伐材からなって、複数の該間伐材が長手方向を上下にして水平方向に並べて配置され、各列の間に前記隙間を形成する対となるガイド部材が設けられ、該隙間には節抜きした一定長さの竹材が水平に配置されていることを特徴とするハイブリッド礁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド礁において、前記鋼製枠体の側方向周囲には、内部に配置された前記伐採材及び前記石材の流出を防止する木材流出防止部材及び石材流出防止部材が設けられていることを特徴とするハイブリッド礁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド礁において、前記第1の網部材の開口寸法は前記第2の網部材の開口寸法より小さいことを特徴とするハイブリッド礁。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド礁において、前記鋼製枠体の底部の外側には複数の脚が突出して形成されていることを特徴とするハイブリッド礁。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のハイブリッド礁を河川又は湖沼の底に設置して、前記隙間を魚類の生息空間に、前記伐採材同士の間隙及び前記石材同士の間隙を水生小動物の生息空間及び稚幼魚の隠れ場所としてそれぞれ利用すると共に、前記石材及び前記伐採材の表面を藻類の着生基材及び有機物の付着基材として利用して、多様な水生生物の増殖、保護、及び育成を行うことを特徴とする水生生物の共生環境の創出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−104992(P2007−104992A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300391(P2005−300391)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(591252116)株式会社新笠戸ドック (1)
【Fターム(参考)】