説明

ハイブリッド糖鎖

【課題】糖鎖を生活用品や食品などに利用して、ウイルスやバクテリアなどの細菌の感染を防止することができる、安全で健康的なより豊かな住環境や食生活を確保することができるハイブリッド糖鎖を提供すること。
【解決手段】動物のタンパク質や脂質に結合している、あるいは体液中に存在している動物の糖鎖2と植物繊維を構成している植物の糖鎖1とを共有結合させたものである。ウイルスやバクテリアなどの細菌は容易にヘテロ糖鎖と結合するので、このハイブリッド糖鎖を生活用品や食品などに結合させておけば、細菌が人体に侵入することを防止することができると共に、人体に侵入した細菌を人体の外に排出することができ、安全で健康的なより豊かな住環境や食生活を確保することができるハイブリッド糖鎖を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド糖鎖の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、糖鎖を利用したものとして、医薬関連等の検討がなされており、例えば特開平7−227280号公報(特許文献1)には、遺伝性疾患の治療のための医薬、癌転移抑制、ウイルス感染防止、炎症反応抑制などを目的として糖鎖を利用したものが開示されており、特開平9−173094号公報(特許文献2)、特開2005−187428号公報(特許文献3)や特開2005−306766号公報(特許文献4)にも糖鎖を医薬に利用したものが開示されている。
【0003】
しかしながら、糖鎖を生活用品や食品に利用した特許の開示は見当たらない。
【特許文献1】特開平7−227280号公報
【特許文献2】特開平9−173094号公報
【特許文献3】特開2005−187428号公報
【特許文献4】特開2005−306766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、糖鎖を生活用品や食品などに利用して、ウイルスやバクテリアなどの細菌の感染を防止することができる、安全で健康的なより豊かな住環境や食生活を確保することができるハイブリッド糖鎖を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために、へテロ糖鎖とホモ糖鎖とを共有結合させたことを特徴とするものである。
【0006】
また、動物の糖鎖と植物の糖鎖とを共有結合させたことを特徴とするものである。
【0007】
また、動物のタンパク質や脂質に結合している、あるいは体液中に存在している動物の糖鎖と植物繊維を構成している植物の糖鎖とを共有結合させたことを特徴とするものである。
【0008】
また、植物繊維を含む家具類に動物の糖鎖を共有結合させたことを特徴とするものである。
【0009】
また、植物繊維を含む生活用品類に動物の糖鎖を共有結合させたことを特徴とするものである。
【0010】
また、植物繊維を含む食品類に動物の糖鎖を共有結合させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハイブリッド糖鎖は、へテロ糖鎖とホモ糖鎖とを共有結合させたものであり、ウイルスやバクテリアなどの細菌は容易にヘテロ糖鎖と結合するので、このハイブリッド糖鎖を生活用品や食品などに結合させておけば、細菌が人体に侵入することを防止することができると共に、人体に侵入した細菌を人体の外に排出することができ、安全で健康的なより豊かな住環境や食生活を確保することができるハイブリッド糖鎖を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のハイブリッド糖鎖は、動物のタンパク質や脂質に結合している、あるいは体液中(特に乳汁)に単独で存在している動物の糖鎖2と植物繊維を構成している植物の糖鎖1とを共有結合させたものであり、例えば、図1に図示したように、植物繊維を構成しているセルロース(植物の糖鎖1)と動物のタンパク質や脂質に結合している、あるいは体液中に単独で存在している動物の糖鎖2、例えば、ヒト・トランスフェリンの複合型二本鎖という動物の糖鎖2とが共有結合している。動物の糖鎖2は、ウイルスやバクテリアなどの細菌が容易に付着するので、このハイブリッド糖鎖を生活用品や食品などに結合させておけば、細菌が人体に侵入することを防止することができると共に、人体に侵入した細菌を人体の外に排出することができ、安全で健康的なより豊かな住環境や食生活を確保することができるハイブリッド糖鎖を提供することができる。
【0013】
なお、植物の糖鎖1と動物の糖鎖2との共有結合の過程は、ヒト・トランスフェリンからヒドラジン分解で遊離させた複合型二本鎖の糖鎖をヒドラジド誘導体に変換し、これを酸化したセルロース(ゲル化させたもの)と反応させ、生じるシッフ塩素を還元してハイブリッド糖鎖を創製した。本実験では、セルロースの7〜8グルーコース当たり、一本の動物の糖鎖2が結合した。
【0014】
また、セルロースに結合した動物の糖鎖2は、Neu5Acα2→6Galβ1→を持つ糖鎖と結合するSNAレクチンと結合したことを確認した。
【0015】
動物の糖鎖2は、一般的にヘテロ糖鎖であり、植物の糖鎖1は、一般的にホモ糖鎖であるが、ヘテロ糖鎖は、動物の糖鎖2だけでなく植物の糖鎖1でも動物と同じような構造をもつ糖鎖が見出されており、動物と同じような構造をもつ植物の糖鎖1もへテロ糖鎖に含まれる。
【0016】
従って、本発明のハイブリッド糖鎖は、へテロ糖鎖(その一部であっても良い)とホモ糖鎖とを共有結合させたものであり、ウイルスやバクテリアなどの細菌は容易にヘテロ糖鎖と結合するので、このハイブリッド糖鎖を生活用品や食品などに結合させておけば、細菌が人体に侵入することを防止することができると共に、人体に侵入した細菌を人体の外に排出することができ、安全で健康的なより豊かな住環境や食生活を確保することができるハイブリッド糖鎖を提供することができる。
【0017】
なお、ヘテロ糖鎖とは生物のタンパク質や脂質に結合している、あるいは体液中に単独で存在している糖鎖を示し、ホモ糖鎖は主として同じ単糖から構成される糖鎖を示し、各糖鎖は天然のものや有機合成のもの、あるいは両者の組み合わせで作られるものである。
【実施例1】
【0018】
実施例1として、動物の糖鎖2を植物繊維を含む家具類に共有結合させた場合について説明する。例えば、障子戸に貼られた湿気を含んだ障子紙(植物繊維)に動物の糖鎖2を共有結合させることにより、部屋の空気中に飛散しているウイルスやバクテリアなどの細菌を動物の糖鎖2で捕獲することができ、細菌が人体に侵入することを防止することができる。
【0019】
また、畳(植物繊維)に動物の糖鎖2を共有結合させることにより、部屋の空気中に飛散しているウイルスやバクテリアなどの細菌を動物の糖鎖2で捕獲することができ、細菌が人体に侵入することを防止することができる。
【0020】
また、襖(植物繊維)に動物の糖鎖2を共有結合させることにより、部屋の空気中に飛散しているウイルスやバクテリアなどの細菌を動物の糖鎖2で捕獲することができ、細菌が人体に侵入することを防止することができる。
【0021】
更に、エアコンのフィルターや換気扇のフィルターなど植物繊維を含む家具類に動物の糖鎖2を共有結合させることにより、部屋の空気中に飛散しているウイルスやバクテリアなどの細菌を動物の糖鎖2で捕獲することができ、細菌が人体に侵入することを防止することができる。
【実施例2】
【0022】
次に、動物の糖鎖2を植物繊維を含む生活用品類に共有結合させた場合について説明する。例えば、マスク(植物繊維)に動物の糖鎖2を結合させることにより、部屋の空気中に飛散しているウイルスやバクテリアなどの細菌を動物の糖鎖2で捕獲することができ、細菌が人体に侵入することを防止することができる。
【0023】
また、タオルやガーゼなど植物繊維を含む生活用品類に動物の糖鎖2を共有結合させることにより、手や顔などに付着しているウイルスやバクテリアなどの細菌を動物の糖鎖2で捕獲することができ、細菌が人体に侵入することを防止することができる。
【0024】
また、コーヒーのフィルター(植物繊維)や茶濾しフィルター(植物繊維)に動物の糖鎖2を結合させることにより、飲料水に含まれるウイルスやバクテリアなどの細菌を動物の糖鎖2で捕獲することができ、細菌が人体に侵入することを防止することができる。
【実施例3】
【0025】
次に、動物の糖鎖2を植物繊維を含む食品類に共有結合させた場合について説明する。例えば、コンニャクのマンナン(植物繊維)に動物の糖鎖2を共有結合させることにより、コンニャクが胃の中でピロリ菌を付着させ、体外に排出してくれる。
【0026】
また、チューインガムに動物の糖鎖2を共有結合させることにより、歯周病の原因であるミュータンス菌がチューインガムに付着して口外に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例の主要部概要構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 植物の糖鎖
2 動物の糖鎖





【特許請求の範囲】
【請求項1】
へテロ糖鎖とホモ糖鎖とを共有結合させたことを特徴とするハイブリッド糖鎖。
【請求項2】
動物の糖鎖と植物の糖鎖とを共有結合させたことを特徴とするハイブリッド糖鎖。
【請求項3】
動物のタンパク質や脂質に結合している、あるいは体液中に存在している動物の糖鎖と植物繊維を構成している植物の糖鎖とを共有結合させたことを特徴とするハイブリッド糖鎖。
【請求項4】
植物繊維を含む家具類に動物の糖鎖を共有結合させたことを特徴とするハイブリッド糖鎖。
【請求項5】
植物繊維を含む生活用品類に動物の糖鎖を共有結合させたことを特徴とするハイブリッド糖鎖。
【請求項6】
植物繊維を含む食品類に動物の糖鎖を共有結合させたことを特徴とするハイブリッド糖鎖。







【図1】
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【公開番号】特開2007−176977(P2007−176977A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373855(P2005−373855)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年8月25日 長岡技術科学大学テクノインキュベーションセンター・長岡工業高等専門学校地域共同テクノセンター・財団法人にいがた産業創造機構主催の「平成17年度長岡技術科学大学 長岡工業高等専門学校 技術シーズプレゼンテーション」において文書をもって発表
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】