説明

ハイブリッド車両のための流体力学的連結装置

【課題】複雑さが低減された、ハイブリッド車両のための流体力学的連結装置を提供する
【解決手段】ハウジング102と、該ハウジングに回転方向で結合されたシールプレート116と、ハウジング内に配置されたポンプ104と、ハウジング内に配置されておりかつ前記ポンプと流体連通したタービン106と、ハウジング及びシールプレートによって少なくとも部分的に包囲された乾燥チャンバ132とが設けられている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本願は、合衆国第35法典第119条(e)に基づいて、引用したことにより本明細書に記載されたものとする2007年6月20日に出願された米国特許仮出願第60/936443号明細書の利益を請求する。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して流体力学的トルク伝達装置、特にハイブリッド用途のための流体力学的連結装置に関する。
【背景技術】
【0003】
図1は、典型的な車両における、エンジン7と、トルクコンバータ10と、トランスミッション8と、ディファレンシャル/車軸アセンブリ9との関係を示す概略的なブロック線図を示している。自動車のエンジンからトランスミッションへトルクを伝達するためにトルクコンバータが使用されることがよく知られている。
【0004】
トルクコンバータの3つの主要な構成要素は、ポンプ37と、タービン38と、ステータ39とである。トルクコンバータは、ポンプがカバー11に溶接されると、シールされたチャンバとなる。カバーはフレックスプレート41に結合されており、このフレックスプレート41自体はエンジン7のクランクシャフト42にボルト留めされている。カバーは、カバーに溶接されたラグ又はスタッドを用いてフレックスプレートに結合されることができる。
【0005】
ポンプとカバーとの間の溶接された結合はエンジントルクをポンプに伝達する。したがって、ポンプは常にエンジン速度で回転する。ポンプの機能は、この回転運動を利用し、流体を半径方向外方及び軸方向へタービンに向かって送ることである。したがって、ポンプは、流体を小さな半径の入口から大きな半径の出口へ推進する遠心ポンプであり、流体のエネルギを増大させる。トランスミッションクラッチとトルクコンバータクラッチとを係合させるための圧力は、ポンプハブによって駆動される、トランスミッションにおける付加的なポンプによって提供される。
【0006】
トルクコンバータ10において、流体回路は、ポンプ(インペラと呼ばれる場合もある)と、タービンと、ステータ(リアクタと呼ばれる場合もある)とによって構成されている。流体回路は、車両が停止させられている場合にエンジンを回転させ続け、運転手によって望まれた場合に車両を加速する。流体回路は、車両が停止させられている場合にエンジンを回転させ続け、運転手によって望まれた場合に車両を加速する。トルク比は、入力トルクに対する出力トルクの比である。トルク比は、タービン回転速度が低い又はゼロである(ストールとも呼ばれる)場合に最も高くなる。ストールトルク比は通常1.8〜2.2の範囲である。これは、トルクコンバータの出力トルクが入力トルクよりも1.8〜2.2倍だけ大きいことを意味する。しかしながら、出力速度は入力速度よりも著しく低い。なぜならば、タービンは出力部に結合されておりかつ回転していないが、入力部はエンジン速度で回転しているからである。
【0007】
タービン38は、車両を推進するために、ポンプ37から受け取る流体エネルギを利用する。タービンシェル22はタービンハブ19に結合されている。タービンハブ19は、タービントルクをトランスミッションシャフト43に伝達するためにスプライン結合を利用する。入力軸は、トランスミッション8における歯車及び軸と、車軸ディファレンシャル9とを介して、車輪に結合されている。タービンブレードに衝突する流体の力は、トルクとしてタービンから出力される。軸方向スラスト軸受31は、構成要素を、流体によって与えられる軸方向の力から支持する。出力トルクが、静止中の車両の慣性を克服するのに十分であると、車両は動き始める。
【0008】
流体エネルギはタービンによってトルクに変換された後、依然として流体には僅かなエネルギが残されている。小さな半径の出口44から出てくる流体は、通常は、ポンプの回転に対抗するような形式でポンプに進入する。ステータ39は、ポンプの加速を助けるために流体を方向転換させるために使用され、これにより、トルク比を増大させる。ステータ39は一方向クラッチ46を介してステータシャフト45に結合されている。ステータシャフトはトランスミッションハウジング47に結合されており、回転しない。一方向クラッチ46は、ステータ39が低速比(ポンプがタービンよりも速く回転している)において回転するのを阻止する。タービン出口44からステータ39に進入する流体は、ステータブレード48によって方向転換させられ、回転方向でポンプ37に進入する。
ブレードの入口角度及び出口角度、ポンプ及びタービンシェルの形状、トルクコンバータの総直径とが、その性能に影響する。設計パラメータは、トルク比と、効率と、エンジンを"ランアウェイ"させることなくエンジントルクを吸収するためのトルクコンバータの能力とを含む。これは、トルクコンバータが小さすぎ、ポンプがエンジンを減速させることができない場合に起こる。
【0009】
低速比においては、トルクコンバータは正常に機能し、車両が静止した状態でエンジンを回転させ、増大した性能のためにエンジントルクを補足する。1よりも小さな速度比では、トルクコンバータの効率は100%に満たない。タービンの回転速度がポンプの回転速度に近づくにしたがって、トルクコンバータのトルク比は、約1.8〜2.2から、約1のトルク比まで次第に減少する。トルク比が1に達したときの速度比はカップリングポイントと呼ばれる。このポイントにおいては、ステータに進入する流体はもはや方向転換される必要はなく、ステータにおける一方向クラッチが、流体を、ポンプ及びタービンと同じ方向に回転させる。ステータが流体を方向転換していないので、トルクコンバータから出力されるトルクは、トルク入力と同じである。流体回路全体はユニットとして回転する。
【0010】
最大トルクコンバータ効率は、流体における損失に基づき92〜93%に限定される。したがって、トルクコンバータクラッチ49は、トルクコンバータ入力部を出力部に機械的に結合するために使用され、効率を100%に改善する。クラッチピストンプレート17は、トランスミッションコントローラによって命令されると、液圧によって作動させられる。ピストンプレート17は、内径においてOリング18によってタービンハブ19に対してシールされており、外径において摩擦材料リング51によってカバー11に対してシールされている。これらのシールは、圧力チャンバを形成し、ピストンプレート17をカバー11と係合させる。この機械的な結合は、トルクコンバータ流体回路をバイパスする。
【0011】
トルクコンバータクラッチ49の機械的結合は、ドライブトレーンに、より多くのエンジンねじれ変動を伝達する。ドライブトレーンが基本的にばね質量系であるので、エンジンからのねじれ変動は、系の固有振動数を励起することができる。ダンパは、ドライブトレーンの固有振動数を、駆動範囲から外れさせるように使用される。ダンパは、エンジン7及びトランスミッション8と直列に配置されたばね15を有しており、これにより、系の有効ばね定数を減衰させ、固有振動数を低下させる。
【0012】
トルクコンバータクラッチ49は、4つの構成要素、すなわちピストンプレート17と、カバープレート12及び16と、ばね15と、フランジ13とを有している。カバープレート12及び16はトルクをピストンプレート17から圧縮ばね15に伝達する。カバープレートウィング52は、軸方向保持のためにばね15の周囲に形成されている。ピストンプレート17からのトルクは、リベット結合部を介してカバープレート12及び16に伝達される。カバープレート12及び16は、ばね窓の縁部と接触することによって、トルクを圧縮ばね15に提供する。両カバープレートは、ばねの中心軸線の両側においてばねを支持するように協働する。ばね力は、フランジばね窓縁部との接触によって、フランジ13に伝達される。時には、フランジは、高トルク時にばねの過剰圧縮を回避するために、カバープレートの一部に係合する回転タブ又はスロットも有している。フランジ13からのトルクは、タービンハブ19と、トランスミッション入力軸43とに伝達される。
【0013】
エネルギ吸収は、望まれるならば、時にはヒステリシスと呼ばれる摩擦によって達せられることができる。ヒステリシスは、ダンパプレートの巻き上げ及び巻出しからの摩擦を含み、したがって実際の摩擦トルクの2倍である。ヒステリシスパッケージは、概して、ダイアフラムばね(又は皿ばね)14から成り、このダイアフラムばね(又は皿ばね)は、フランジ13と、カバープレート16の一方との間に配置されており、フランジ13を他方のカバープレート12と接触させる。ダイアフラムばね14によって加えられる力の大きさを制御することによって、摩擦トルクの大きさも制御されることができる。典型的なヒステリシスの値は、10〜30Nmの範囲である。
【0014】
ハイブリッドドライブトレーンは、車両を推進するためにエンジンに加えて電気モータを有する。米国特許第5789823号明細書は、トルクコンバータを備えた電気モータを有する。しかしながら、この配列は、付加的な一方向クラッチと、クラッチ作動のための5つの流体通路とを有する。欧州特許出願第1395454号明細書及び独国特許出願第10048843号明細書は電気モータをエンジンに直接連結する発明を開示しており、回生制動中の効率を低下させる。
【0015】
したがって、複雑さが低減されたハイブリッド車両のための流体力学的連結装置が長い間必要とされている。また、回生制動中の効率が高いハイブリッド車両のための流体力学的連結装置が必要とされている。
【特許文献1】米国特許第5789823号明細書
【特許文献2】欧州特許出願第1395454号明細書
【特許文献3】独国特許出願第10048843号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の概略的な目的は、複雑さが低減された、ハイブリッド車両のための流体力学的連結装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は広くは、ハウジングと、ハウジングに回転可能に結合されたシールプレートと、ハウジング内に配置されたポンプと、ハウジング内に配置されておりかつポンプと流体連通したタービンと、ハウジングとシールプレートトラクションバーによって少なくとも部分的に包囲された乾燥チャンバとを有する流体連結装置を含む。第1の実施形態において、装置は乾燥チャンバに配置されたダンパを有する。第2の実施形態において、装置はカバーをパイロットシャフトに駆動するように係合させるために配置された第1のクラッチを有し、第1のクラッチは、ダイヤフラムばねを有しておりかつ乾燥チャンバ内に配置されている。第3の実施形態において、装置は、第1のクラッチを之操作を制御するためにダイヤフラムばねを変位させるように配置されたピストンカップを有しており、ピストンカップは乾燥チャンバを少なくとも部分的に包囲している。ピストンカップとシールプレートとは連結装置の操作中は回転方向で固定されている。第4の実施形態において、装置はタービンをハウジングに駆動するように係合させるために配置された第2のクラッチと、第1の流体チャンバと第2の流体チャンバとを有する。第1及び第2の流体チャンバにおける流体圧力は、第2のクラッチとピストンカップとをそれぞれ操作するために独立して制御可能である。第5の実施形態において、装置は、ポンプ及びタービンを有するトルクコンバータと、ハウジングに結合されたロータを備えた電気モータとを有する。
【0018】
本発明は広くは、ハウジングと、ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、ハウジングに回転方向で結合されたポンプ及び出力ハブに回転方向で結合されたタービンを有する流体カップリングとを有する、流体力学的連結装置をも含む。流体カップリングはステータを含まない。第1の実施形態において、装置は、ハウジング及びタービンに回転方向で結合された第1のクラッチと、ラグプレート及びハウジングからトルク経路に配置された第2のクラッチと、第1の流体チャンバ及び第2の流体チャンバを有する。第1及び第2の流体チャンバにおける流体圧力は、第1のクラッチと第2のクラッチとをそれぞれ操作するために独立して制御可能である。第2の実施形態において、装置はトルク経路に配置されたダンパを有する。
【0019】
本発明はさらに、ハウジングと、ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、ハウジング内に配置されておりかつハウジングに回転方向で結合されたポンプと、ハウジング内に配置されておりかつポンプと流体連通したタービンとを有する流体力学的連結装置を含む。装置は、トランスミッションハウジングに配置されるように配置されており、トランスミッションハウジング内に配置されている場合、ハウジングは、トランスミッションハウジングと共に流体チャンバの部分を形成しており、電気モータは流体チャンバ内に配置されている。第1の実施形態において、装置は、ハウジング及びタービンに回転方向で結合された第1のクラッチと、ラグプレート及びハウジングからトルク経路に配置された第2のクラッチと、第1の流体チャンバ及び第2の流体チャンバを有する。第1及び第2の流体チャンバにおける流体圧力は、第1のクラッチと第2のクラッチとをそれぞれ操作するために独立して制御可能である。第2の実施形態において、装置はトルク経路に配置されたダンパを有する。
【0020】
本発明はさらに、ハウジングと、ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、ハウジング内に配置されておりかつハウジングに回転方向で結合されたポンプと、ハウジング内に配置されておりかつポンプと流体連通したタービンと、プレートと、プレート及びハウジングと接触した軸受とを有する流体力学的連結装置を含む。装置は、トランスミッションハウジングに配置されており、トランスミッションハウジングに配置されている場合、プレートはトランスミッションハウジングに結合されており、ハウジングは軸受によって半径方向にセンタリングされる。第1の実施形態において、装置は、ハウジング及びタービンに回転方向で結合された第1のクラッチと、ラグプレート及びハウジングからトルク経路に配置された第2のクラッチと、第1の流体チャンバ及び第2の流体チャンバを有する。第1及び第2の流体チャンバにおける流体圧力は、第1のクラッチと第2のクラッチとをそれぞれ操作するために独立して制御可能である。第2の実施形態において、装置はトルク経路に配置されたダンパを有する。
【0021】
本発明はさらに、ハウジングと、ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、ハウジング内に配置されておりかつハウジングに回転方向で結合されたポンプと、ハウジング内に配置されておりかつポンプと流体連通したタービンと、ハウジングに回転方向で結合されておりかつハウジングの外側に配置されたダンパとを有する流体力学的連結装置を含む。ダンパのためのばねは、第及び第2の別個のプレートと、ハウジングとによって拘束されている。第1の実施形態において、装置はラグプレートを有しており、ダンパは、ラグプレートとハウジングとの間のトルク経路に配置されている。第2の実施形態において、装置は、タービンに回転方向で結合されておりかつハウジングからタービンへのトルク経路における第1のクラッチと、ハウジング及びポンプに回転方向で結合された第2のクラッチと、第1の流体チャンバ及び第2の流体チャンバとを有する。第1及び第2の流体チャンバにおける流体圧力は、第1のクラッチと第2のクラッチとをそれぞれ操作するために独立して制御可能である。第3の実施形態において、装置は、ポンプ及びタービンを有するトルクコンバータを備える。
【0022】
さらに、本発明は広くは、ステータシャフトとポンプハブとの間に形成された空間と、空間に配置されたスリーブとを有する流体力学的連結装置を含む。スリーブは空間を第1のチャネルと第2のチャネルとに分割している。第1の実施形態において、装置は、ハウジングと、ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、ハウジング内に配置されておりかつタービン及びポンプを有するトルクコンバータと、ハウジング及びポンプに回転方向で結合されておりかつ第1及び第2の流体チャンバにおける個々の流体圧力によって制御可能な第1のクラッチとを有する。第1のチャネルは第1の流体チャンバにおける流体圧力を制御するために配置されており、第2のチャネルは、第1の流体チャンバのためのシールの間に配置された流体を排出するために配置されている。
【0023】
さらに、本発明は広くは、ハウジングと、ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、ハウジング内に配置されたポンプと、ハウジング内に配置されておりかつタービンシェルを含むタービンと、タービンシェルに回転方向で結合された圧力プレートを含む第1のクラッチと、タービンシェルと圧力プレートとの間のシールと、圧力プレートに回転方向で結合されたクラッチプレートと、ピストンプレートと、ピストンプレートに結合された駆動プレートと、第1のチャンバ及び第2のチャンバとを有する流体力学的連結装置を含む。シールは第1のチャンバと第2のチャンバとを少なくとも部分的に分離しており、第1及び第2のチャンバにおける個々の流体圧力は第1のクラッチを操作するために制御可能である。第1の実施形態において、装置は、ハウジングに回転方向で結合されておりかつハウジングの外側に配置されたダンパと、ラグプレートとを有する。ダンパは、ハウジングに関して、ダンパのためのばねを拘束する第1及び第2の別個のプレートを有しており、ダンパはラグプレートとハウジングとの間のトルク経路に配置されている。第2の実施形態において、装置は、ハウジングとポンプとに回転方向で結合された第2のクラッチと、第3のチャンバとを有する。第3のチャンバにおける流体圧力は第2のクラッチの操作を少なくとも部分的に制御し、第1及び第3のチャンバは流体絶縁されている。
【0024】
本発明は広くは、ハウジングと、ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、ハウジング内に配置されたポンプと、ハウジング内に配置されておりかつタービンシェルを備えるタービンと、ハウジング及びポンプに回転方向で結合されたクラッチとを有する流体力学的装置を操作するための方法を含み、この方法は、ステータシャフトとポンプハブとの間に形成された空間を第1及び第2の別個のチャネルに分割するステップと、第1及び第2のチャネルを介してクラッチのための第1及び第2のチャンバにおける流体圧力を制御するステップと、クラッチを閉じるために第1のチャンバにおける圧力を低下させるステップとを含む。
【0025】
本発明はさらに広くは、電気モータをハウジングに回転方向で結合するステップと、ポンプ及びタービンをハウジング内に配置するステップと、第1のクラッチ及び第2のクラッチをハウジング内に配置するステップと、第1のクラッチがハウジングとポンプとを結合しかつ第2のポンプがタービンとハウジングとを結合し、カバーをハウジングに結合するステップと、ハウジング及びカバーによって形成された空間にダンパばね及びフランジを配置するステップと、プレートがばねをカバー及びハウジングに関して保持するようにプレートをカバーに固定するステップとを含む、流体力学的装置を組み立てる方法を含む。
【0026】
本発明の性質及び態様がここで、添付の図面を参照した発明の以下の詳細な説明により完全に説明される。
【0027】
本発明のこの目的及び利点並びにその他の目的及び利点は、本発明の好適な実施形態の以下の説明と、添付の図面及び請求項とから容易に認められるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
始めに、異なる図面における同じ参照符号は、発明の同じ又は機能的に類似の構造エレメントを表していることが認識されるべきである。本発明は、現時点で好適な態様であると考えられるものに関して説明されるが、請求項に記載の発明は開示された態様に限定されないと理解されるべきである。
【0029】
さらに、発明は、記載された特定の方法、材料及び変化態様に限定されず、もちろん変更することができる。ここで使用されている用語は、特定の態様だけを説明するためのものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではなく、発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定される。
【0030】
特に定義されない限りは、ここで使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者にとって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。ここに説明されたものと同じ又は均等のあらゆる方法、装置又は材料が発明の実施又は試験において使用されることができるが、好適な方法、装置及び材料がここでは説明されている。
【0031】
図7Aは、本願において用いられた空間的な用語を示している、円筒座標系80の斜視図である。本発明は、少なくとも部分的に円筒座標系に関連して説明される。系80は長手方向軸線81を有しており、この長手方向軸線は、以下の方向及び空間の用語のための基準として使用される。"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という形容詞は、軸線81、半径82(軸線81に対して直交する)及び円周83のそれぞれに対して平行な方向に関する。"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という形容詞は、個々の平面に対して平行な方向にも関する。様々な平面の配置を明らかにするために、物体84,85及び86が用いられている。物体84の面87は軸方向平面を形成している。すなわち、軸線81はこの面に沿った線を形成している。物体85の面88は半径方向平面を形成している。すなわち、軸線82はこの面に沿った線を形成している。物体86の面89は周方向平面を形成している。すなわち、軸線83はこの面に沿った線を形成している。別の例として、軸方向の移動又は配置は軸線81に対して平行であり、半径方向の移動又は配置は半径82に対して平行であり、周方向の移動又は配置は円周83に対して平行である。
【0032】
"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という形容詞は、軸線81、半径82又は円周83のそれぞれに対して平行な方向に関する。"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という副詞は、個々の平面に対して平行な方向にも関する。
【0033】
図7Bは、本願において用いられた空間的な用語を示している、図1Aの円筒座標系における物体90の斜視図である。円筒状物体90は、円筒座標系における円筒状物体を表しており、本願発明をどのようにも限定しようとするものではない。物体90は、軸方向の面91と、半径方向の面92と、周方向の面93とを有している。面91は軸方向平面の一部であり、面92は半径方向平面の一部であり、面93は周方向平面の一部である。
【0034】
図8は、本発明の流体力学的継手装置100の部分的な断面図である。好適な実施形態において、装置100は、例えばハウジング102等のトランスミッションハウジングの内部において、ハイブリッド用途のために使用される。流体力学的カップリング100は、ポンプ104と、タービン106と、ステータ108とを有する。ポンプとタービンとは、技術上知られているように流体連通しており、ハウジング109内に配置されている。駆動プレート110はタービンシェル112に固定されている。クラッチプレート114は、ばね118を備えてシールプレート116に駆動するように係合されている又は回転方向で結合されている。回転方向で結合又は固定されているとは、2つの構成要素が一緒に回転する、すなわち2つの構成要素が回転に関して固定されているようにプレートが結合されていることを意味する。2つの構成要素を回転方向で結合することは、必ずしも他の方向での相対移動を制限するわけではない。例えば、回転方向で結合された2つの構成要素が、スプライン結合を介して互いに対して軸方向移動を行うことが可能である。しかしながら、回転方向での結合は、他の方向での移動が必ずしも存在することを意味すると理解されるべきではない。例えば、回転方向で結合された2つの構成部材は、軸方向で互いに固定されていることができる。回転方向での結合の前記説明は、以下の説明にも適用可能である。言い換えれば、ばね118はプレート114及びプレート116に駆動するように係合しており、トルクをプレート116からプレート114へ伝達する。プレート110,114,118は、クラッチプレート122の軸方向延長部120を介して、例えば個々のスプライン結合を介して、回転方向で結合されている。プレート110,114,116,118,122及び摩擦面124はクラッチアセンブリ126を形成している。1つの実施形態において、プレート116はハウジング109の部分を形成しており、カバー127に固定されている。幾つかの態様において、プレート116は溶接によってカバー127に取り付けられている。
【0035】
複数の摩擦面124は、トルクコンバータクラッチアセンブリ126のための増大したトルク能力を提供する。チャンバ128における高圧はピストンプレート130をプレート116に向かって押し付け、クラッチを閉じ、プレート116からピストン130へトルクを伝達する。
【0036】
1つの実施形態において、クラッチアセンブリ126は、プレート116によって駆動される3つの面を有しており、単一プレート設計のトルク能力の3倍を生じる。
【0037】
シールプレート116は流体力学的カップリングアセンブリ100において乾燥チャンバ132の部分を形成している。プレート116は固定シール134によってピストンカップ133に対してもシールされている。有利には、プレート116及びカップ133は、2つのコンポーネントの間に相対回転が生じないように設計されているので、運動用シールである必要はない。すなわち、装置100の運転中、プレート116とカップ133とは回転方向で結合されている。1つの実施形態において、シール134は液圧シリンダに見られるものと同様の伝統的なOリングタイプであり、これは、運動用シールと比較した場合に漏れにくい。このことは、シール134がトランスミッションオイルを連結装置100内に保持し、車両からのオイル漏れを阻止しているので重要である。
【0038】
カップ132は運動用シール138を用いてタービンハブ136に対してシールされている。シール138及びハブ136はシール142を用いてトランスミッション入力シャフト140に対してシールされている。シール138及び142は、シール134がカップ133をプレート116に対してシールしながら、ピストンカップ133を変位させるためにチャンバ144における圧力変化を生ぜしめる。
【0039】
ばね146は軸方向でカップ133と整合している。圧力プレート148と駆動プレート150とは、すなわちスプライン結合(図示せず)によって、カバー127と駆動するように係合させられている。摩擦プレート152は、圧力プレートと、駆動プレートと、カバー127とに駆動するように係合させられており、またばね154及びフランジ156とも係合させられている。カバープレート158は、すなわちリベット(図示せず)によってカバープレート160に固定されている。圧力プレート148と、駆動プレート150と、摩擦プレート152とはクラッチパック162を形成している。ばね146の使用は、摩擦プレート152における摩擦材料の摩耗を補償し、ピストンカップ132の軸方向変位の変化を減じ、シール134及び142との適切な整合を保証する。
【0040】
カバー127は、軸受164及びパイロットシャフト166を介してエンジンクランクシャフト162に対してセンタリングされている。パイロットシャフト166の外径168はクランクシャフト162においてセンタリングされている。パイロットシャフト166は、すなわち溶接172によってラグプレート170に固定されており、すなわちスプライン174によってフランジ156と駆動するように係合させられている。フレックスプレート176は、ラグ178と係合させられたボルト(図示せず)を介してトルクをクランクシャフト162からラグプレート170へ伝達する。
【0041】
電気モータステータ180はトランスミッションハウジング102に固定されており、ロータ182はカバー127に固定されている。
【0042】
以下に説明するように、装置100は多数の操作モードを有する。
【0043】
例えば、装置100が装備された車両(図示せず)は、電気モータのみによって、トルクコンバータ又はトルクコンバータクラッチを介して推進されることができる。同様に、トルクコンバータ又はクラッチを介して車両を推進するために車両におけるエンジン(図示せず)が使用されることができる。また、車両を推進するためにエンジンと電気モータとが同時に使用されることができる。惰走中又はエンジンが停止させられている場合、エンジンはトランスミッションから切断され、電気モータにより回生制動のための効率を高める。
【0044】
運転中、エンジンをトランスミッションに係合させたり、トランスミッションから解離するために、クラッチパック162が使用される。チャンバ163における低圧と、ばね146からの力とが、ピストンカップ133をポンプ104に向かって移動させ、クラッチ144を解離させ、クランクシャフト162とカバー127との間のトルク伝達を妨害する。したがって、アセンブリ100は、非電気エンジン(図示せず)からの制限なしに自由に回転する。
【0045】
電気モータロータ180はカバー127と駆動するように係合されている、例えば固定されており、これにより、電気モータの回転がカバー127及びポンプ104を回転させる。ポンプ104によるポンプハブ186の回転によりトランスミッションオイルポンプ(図示せず)が圧力を生ぜしめる。ポンプ104と、タービン106と、ステータ108との間の流体力学的回路の作動は車両を推進する。直接接続が望まれる場合、チャンバ128における増大した圧力がトルクコンバータクラッチ126を係合させる。クラッチ144の係合は電気モータによるエンジンの始動を許容する。
【0046】
エンジンモードでの運転が望まれるならば、チャンバ163における高圧がピストンカップ133をカバー127に向かって移動させる。ピストンカップ133の移動はばね146をカバー127に向かって押し付け、クラッチパック162を圧縮し、パイロットシャフト166からカバー127へトルクを伝達する。トルクコンバータ及びトルクコンバータクラッチモードは上の電気モータモードで説明されたように達成される。シール132,138及び142はチャンバ128と132との間の流体連通を阻止するので、クラッチ126とクラッチ144とは他方から影響されずに作動する。また、車両を推進するためのパワーを高めるために電気モータはエンジンと共に使用されることができる。
【0047】
図9は、本発明の流体力学的継手装置200の部分的な断面図である。好適な実施形態において、装置200は、例えばハウジング202等のトランスミッションハウジングの内部において、ハイブリッド用途のために使用される。流体力学的カップリング200はポンプ204とタービン206とを備えた流体カップリング203を含む。ポンプとタービンとは技術上知られているように流体連通している。ポンプ204はカバー208に回転方向で結合されており、タービン206は出力ハブ209に回転方向で結合されている。
【0048】
クラッチ210はハウジング及びタービンに回転方向で結合されておりかつ、タービンシェル212に固定された駆動タブ211を有する。ピストンプレート214は駆動タブ211に駆動するように係合させられているか又は回転方向で結合されている(以下この用語は交換可能に使用される)。ピストン駆動プレート216は駆動タブ211を介してピストン214に、駆動可能に係合させられる。カバー駆動プレート218は板ばね220を介してシェル219に、駆動可能に係合させられる。複数の摩擦面222は、トルクコンバータクラッチアセンブリ210のための増大したトルク能力を提供する。チャンバ226における低圧はピストンプレート214をシェル212に向かって押し付け、タブ210を介して、シェル212からピストン214へのトルク伝達を生ぜしめる。1つの実施形態において、クラッチアセンブリ210は、カバー208によって駆動される3つの面を有しており、単一プレート設計のトルク能力の3倍を生じる。
【0049】
ピストンプレート214は運動用シール230によってポンプハブ228に対してシールされている。ハブ228は運動用シール234によってシャフト232に対してシールされている。フランジ236は、軸受238をハブに軸方向で保持するためにポンプハブ228から延びている。
【0050】
クラッチ239はラグプレート241からカバー208へのトルク経路に配置されている。クラッチ239は、運動用シール244を用いてタービン又は出力ハブ209に対してシールされたピストンプレート240を有する。ハブ209はシール248を用いてトランスミッション入力シャフト246に対してシールされている。シール244及び248はピストン240を変位させるためにチャンバ250内に圧力変化を生ぜしめる。カバー駆動プレート252は板ばね254を介してカバー208に、駆動可能に係合させられる。摩擦プレート256はピストンプレート240に駆動可能に係合させられており、ピストンプレート自体は、カバープレート258及び260と、ばね262と、フランジ263とに係合させられている。カバープレート260は、すなわちリベット(図示せず)によってカバープレート258に固定されている。圧力プレート240と、駆動プレート252と、摩擦プレート256とはクラッチパック239を形成している。カバープレートと、ばね262と、フランジとはダンパ264を形成しており、このダンパは、ラグプレート241からカバー208へのトルク経路に位置する。
【0051】
カバー208は軸受268とセンタリングプレート241とによってトランスミッションハウジング202に対してセンタリングされるのに対し、パイロットシャフト270は軸受272によってセンタリングプレート271に対してセンタリングされる。パイロットシャフト270は、すなわち溶接278によってラグプレート276に固定されており、すなわちスプライン282によってフランジ280に、駆動可能に係合させられている。フランジ280は運動用シール284を用いてカバー208に対してシールされているのに対し、センタリングプレート271とパイロットシャフト270との間のシール286は、オイルがアセンブリ200からでるのを防止するための付加的なシールを提供する。プレックスプレート288は、ラグ292と係合させられたボルト(図示せず)を介してトルクをクランクシャフト290からラグプレート276へ伝達する。
【0052】
センタリングプレート271はトランスミッションハウジング202をシールしており、これにより、電気モータを冷却するために使用されるオイルが保持される。すなわち、チャンバ、若しくはオイル浴293が、少なくとも部分的にハウジング202及びプレート271によって形成されており、オイルはチャンバ内に保持されている。センタリングプレート271は電気モータステータ294に取り付けられており、ステータ294をロータ296に対して半径方向でセンタリングする。電気モータステータ294はトランスミッションハウジング202に固定されており、ロータ296はカバー208に回転方向で結合されている。
【0053】
以下に説明するように、本発明の装置は多数の操作モードを有する。例えば、車両は、流体カップリング又はロックアップクラッチを介して電気モータのみによって推進されることができる。同様に、エンジンは流体カップリング又はクラッチを介して車両を推進するためにエンジンが使用されることができる。また、車両を推進するためにエンジンと電気モータとが同時に使用されることができる。惰走中又はエンジンが停止させられている場合、エンジンはトランスミッションから切断され、電気モータにより回生制動のための効率を高める。
【0054】
運転中、チャンバ298は常に高圧が与えられる。エンジンをトランスミッションに係合させたり、トランスミッションから解離するために、クラッチパック239が使用される。チャンバ250における高圧はピストン240に対する提供力を除去し、これにより、クラッチ239を解離させ、クランクシャフト290とカバー208との間のトルク伝達を妨害する。したがって、アセンブリ200はエンジンからの制限なしに自由に回転する。
【0055】
電気モータロータ296はカバー208に駆動可能に係合させられており、これにより、電気モータの回転は、カバー208と、ポンプシェル212と、ポンプ204とを回転させる。ポンプシェル212によるポンプハブ228の回転によりトランスミッションオイルポンプ(図示せず)が圧力を生ぜしめる。ポンプ204と、タービン206との間の流体力学的回路の作動は車両を推進する。直接接続が望まれる場合、チャンバ226における増大した圧力がロックアップクラッチ210を係合させる。クラッチ239の係合は電気モータによるエンジンの始動を可能にする。
【0056】
エンジンモードでの運転が望まれるならば、チャンバ250における低圧がピストン240をカバー208に向かって移動させる。ピストン240の変位はクラッチパック239を圧縮し、パイロットシャフト270からカバー208へトルクを伝達する。流体カップリング及びロックアップクラッチは上の電気モータモードで説明されたように達成される。シール244,230,234及び248はチャンバ226と250との間の流体連通を阻止するので、クラッチ210とクラッチ239とは他方から影響されずに作動する。すなわち、チャンバ226及び250における個々の圧力は、クラッチ210及び230を操作するために独立して制御可能である。言い換えれば、チャンバ226と250とは、例えば前記シールによって流体隔離されている。また、車両を推進するためのパワーを高めるために電気モータはエンジンと共に使用されることができる。
【0057】
図10は、本発明の流体力学的継手装置300の部分的な断面図である。好適な実施形態において、装置300は、例えばハウジング302等のトランスミッションハウジングの内部において、ハイブリッド用途のために使用される。流体力学的カップリング300は、ポンプ304と、タービン306と、ステータ308とを有する。圧力プレート310は、溝314に配置されたシール(図示せず)によってタービンシェル312に対してシールされている。ピストン駆動プレート316は板ばね320を介してピストン318に、駆動可能に係合させられる。圧力プレート310は、歯列結合324においてタービンシェル312及びクラッチプレート322と駆動可能に係合させられる。複数の摩擦面326は、トルクコンバータクラッチアセンブリ328のための増大したトルク能力を提供する。チャンバ330における高圧はピストンプレート318をシェル312に向かって押し付け、ピストン318及び駆動プレート316からタービン306へのトルク伝達を生じ、すなわちクラッチ328は閉じられる。外側キャリヤ332はリベット336を介して駆動プレート316及びポンプ304と駆動可能に係合させられる。幾つかの態様において、クラッチアセンブリ328は、外側キャリヤ332によって駆動される3つの面を有しており、単一プレート設計のトルク能力の3倍を生じる。
【0058】
外側キャリヤ332は流体力学的アセンブリ300において部分的にチャンバ338を包囲している。キャリヤ332は液密形式でステータシャフト340に対してシールされている。幾つかの態様において、キャリヤ332はシールチューブ342によってシャフト340に対してシールされている。キャリヤ332はシール346を用いてピストン344に対してもシールされている。したがって、ピストン344はチャンバ338の部分も形成している。シール346はピストン344を変位させるためにチャンバ338内に圧力変化を生ぜしめる。
【0059】
ハウジング348はカバー350に固定されている。内側キャリヤ352はハウジング348に取り付けられており、クラッチプレート354にスプラインされている。プレート354は、クラッチプレート358の隣接する対の間に配置されており、外側キャリヤ332に駆動可能に係合させられている。端部プレート360及びバッキングプレート362が端部プレート358に隣接して配置されている。ピストン344は、プレート354,360及び362を貫通して延びた軸方向突出部364と、軸方向突出部364の遠位端部に配置された半径方向突出部366とを有する。半径方向突出部366は、ピストン344が方向367に移動するとき、バッキングプレート362に力を加えるように配置されている。プレート362への力は、端部プレート306に対してプレート358及び354を圧縮し、クラッチを係合させる。
【0060】
外側キャリヤ332は軸受368によってハウジング348に対してセンタリングされている。ハウジング348はシールリング370によってキャリヤ332に対してシールされている。リング370はシール372を有する。シール372のうちの少なくとも1つは運動用シールである。チャンバ374内に高圧が存在する場合、運動用シール372を通じて僅かな流体の漏れが予想されるので、運動用シール376が、ハウジング348をさらにシールするために設けられている。ポンプハブ378はキャリヤ332に固定されている。
【0061】
ハブ378は、シール362と366との間に捕らわれた流体を排出するために、ハブ378に対してシールされておりかつ部分的にチャネル382を包囲したスリーブ380を有する。スリーブ380は、入力シャフト381に付加的な穴を穿孔せずに第4の流体チャネルを形成する。スリーブ380は装置300において示されているが、スリーブ380は、ステータシャフトとポンプとによって形成された空間を有するあらゆる流体力学的連結装置において、この空間を2つのチャネルに分割するために使用されることができることが理解されるべきである。例えば、図10において、スリーブは、ステータシャフト340とハブ378との間の空間をチャネル382及び385に分割している。装置300において、チャネル385はチャンバ336に流体圧力を提供する。
【0062】
カバー350は、軸受382及びパイロット384を介してエンジンクランクシャフト337に対してセンタリングされている。フレックスプレート339は、スタッド388を介してクランクシャフト337からフランジ386へトルクを伝達する。フランジ386からのトルクはばね390を介してカバー350に伝達される。カバー350は、ばね390が装着された後に(すなわち溶接によって)結合されたセグメント392及び394を有する。1つの実施形態において、セグメント392及び304はレーザ溶接によって結合されている。ばね396はフランジ386に軸方向の力を加える。摩擦リング398はプレート400及びカバー350によって、フランジ386と接触して保持される。
【0063】
電気モータステータ402はトランスミッションハウジング302に固定されており、ロータ404は駆動リング406に回転方向で結合されている。駆動リング406はポンプハブ378及びキャリヤ332と駆動可能に係合させられている。軸受368はハウジング348に対してロータ404をセンタリングする。
【0064】
以下に説明するように、本発明の装置は多数の操作モードを有する。
【0065】
例えば、車両は、トルクコンバータ又はトルクコンバータクラッチを介して電気モータのみによって推進されることができる。同様に、エンジンはトルクコンバータ又はクラッチを介して車両を推進するためにエンジンが使用されることができる。また、車両を推進するためにエンジンと電気モータとが同時に使用されることができる。惰走中又はエンジンが停止させられている場合、エンジンはトランスミッションから切断され、電気モータにより回生制動のための効率を高める。
【0066】
運転中、エンジンをトランスミッションに係合させたり、トランスミッションから解離するために、クラッチパック408が使用される。チャンバ338における高圧はピストン344を方向410へ移動させ、クラッチ408を解離させ、クランクシャフト337とポンプ304との間のトルク伝達を妨害する。
【0067】
電気モータロータ404はキャリヤ332と駆動可能に係合させられており、これにより、電気モータの回転はキャリヤ332及びポンプ304を回転させる。ポンプハブ378の回転によりトランスミッションオイルポンプ(図示せず)が圧力を生ぜしめる。ポンプ304と、タービン306と、ステータ308との間の流体力学的回路の作動は車両を推進する。直接結合が望まれる場合、チャンバ330における増大した圧力はトルクコンバータクラッチ328を係合させ、ポンプ304とタービン306とを駆動可能に係合させる。クラッチ408の係合は電気モータによる非電気エンジン(図示せず)の始動を許容する。
エンジンモードでの作動が望まれるならば、チャンバ338における圧力が減じられる。チャンバ374におけるチャージ圧力はピストン344を方向367に変位させる。突出部366は軸方向の力をバッキングプレート362に加え、クラッチパック408を圧縮し、ハウジング348からキャリヤ332へトルクを伝達する。トルクコンバータ及びトルクコンバータクラッチモードは上の電気モータモードで説明されたように達成される。シール346及びシールチューブ342はチャンバ330と338との間の流体連通を阻止するので、クラッチ328とクラッチ408とは他方から影響されずに作動する。すなわち、チャンバ330及び338における個々の圧力は、クラッチ328及び408を操作するために独立して制御可能である。言い換えれば、チャンバ330と338とは、例えば前記シールによって流体隔離されている。また、車両を推進するためのパワーを高めるために電気モータはエンジンと共に使用されることができる。
【0068】
本発明は、ハウジングと、ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、ハウジングに配置されたポンプと、ハウジングに配置されておりかつタービンシェルと備えたタービンと、ハウジング及びポンプに回転方向で結合されたクラッチとを有する流体力学的連結装置を操作する方法も含む。方法は、分かり易くするためにシーケンスとして説明されているが、明らかに述べられない限り、オーダがシーケンスから推論されるべきではない。第1のステップはステータシャフトとポンプハブとの間に形成された空間を第1及び第2の別個のチャネルに分割する。第2のステップは第1のチャネルを介してクラッチのための流体チャンバにおける流体圧力を制御する。第3のステップは第2のチャネルを介して流体チャンバのためのシールの間の流体を排出する。
【0069】
本発明は流体力学的連結装置を組み立てる方法も含む。方法は、分かり易くするためにシーケンスとして説明されているが、明らかに述べられない限り、オーダがシーケンスから推論されるべきではない。第1のステップはハウジングに回転方向伝結合された電気モータを回転方向で結合する。第2のステップはポンプ及びタービンをハウジングに配置した。第3のステップは第1及び第2のクラッチをハウジングに配置する。第1のクラッチをハウジングとポンプとを結合し、第2のポンプはタービンとハウジングとを結合する。第4のステップはカバーをハウジングに結合する。第5のステップはダンパばねとフランジとを、ハウジングとカバーとの間に形成された空間に配置する。第6のステップは、プレートをカバーに固定し、これにより、プレートはカバー及びハウジングに関してばねを保持する。
【0070】
したがって、本発明の目的は効率的に達成されるが、請求項に記載された発明の精神及び範囲から逸脱することなく、発明に対する修正及び変更が当業者に容易に明らかであるべきである。本発明は、特定の好適な実施形態に関して説明されているが、請求項に記載された発明の範囲又は精神から逸脱することなく変更が成されることができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、ドライブトレーンにおけるトルクコンバータの関係及び機能を説明することを助けるための、自動車における動力伝達経路の概略的なブロック線図である。
【図2】自動車のエンジンに固定されて示されている、従来のトルクコンバータの断面図である。
【図3】図2に示された線3−3に沿って見た、図2に示されたトルクコンバータの平面図である。
【図4】概して図3に示された線4−4に沿って見た、図2及び図3に示されたトルクコンバータの断面図である。
【図5】図2に示されたトルクコンバータの第1の分解図であり、分解されたトルクコンバータを左から見たものとして示されている。
【図6】図2に示されたトルクコンバータの第2の分解図であり、分解されたトルクコンバータを右から見たものとして示されている。
【図7A】本願において用いられた空間的な用語を示している、円筒座標系の斜視図である。
【図7B】本願において用いられる空間に関する用語を説明する図7Aの円筒座標系における物体の斜視図である。
【図8】本発明の流体力学的継手ブレーキの部分的な断面図である。
【図9】本発明の流体力学的継手ブレーキの部分的な断面図である。
【図10】本発明の流体力学的継手ブレーキの部分的な断面図である。
【符号の説明】
【0072】
100,200,300 流体力学的継手装置、 102,202 ハウジング、 104,204,304 ポンプ、 106,206,306 タービン、 108,308 ステータ、 112,212,312 シェル、 116 シールプレート、 118 ばね、 126 クラッチアセンブリ、 128 チャンバ、 130 ピストンプレート、 132 乾燥チャンバ、 133 ピストンカップ、 134 シール、 136 タービンハブ、 138,142 シール、 140 入力シャフト、 142 シール、 144 チャンバ、 150 駆動プレート、 152 摩擦プレート、 154 ばね、 156 フランジ、 162 クラッチパック、 162 クランクシャフト、 164 軸受、 166 パイロットシャフト、 170 ラグプレート、 172 溶接、 174 スプライン、 176 フレックスプレート、 178 ラグ、 180 電気モータステータ、 182 ロータ、 186 ポンプハブ、 208 カバー、 209 出力ハブ、 316 駆動プレート、 318 ピストン、 328 クラッチ、 332 キャリヤ、 337 クランクシャフト、 330,338 チャンバ、 342 シールチューブ、 344 ピストン、 346 シール、 350 カバー、 358 プレート、 362 バッキングプレート、 366 半径方向突出部、 378 ポンプハブ、 380 スリーブ、 381 入力シャフト、 382 軸受、 384 パイロット、 385 チャネル、 386 フランジ、 396 ばね、 398 摩擦リング、 400 プレート、 404 電気モータロータ、 406 駆動リング、 408 クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体力学的な連結装置において、
ハウジングと、
該ハウジングに回転方向で結合されたシールプレートと、
前記ハウジング内に配置されたポンプと、
前記ハウジング内に配置されておりかつ前記ポンプと流体連通したタービンと、
ハウジング及びシールプレートによって少なくとも部分的に包囲された乾燥チャンバとが設けられていることを特徴とする、流体力学的な連結装置。
【請求項2】
ダンパが設けられており、該ダンパが前記乾燥チャンバ内に配置されている、請求項1記載の連結装置。
【請求項3】
カバーをパイロットシャフトに駆動可能に係合させるように配置された第1のクラッチが設けられている、該第1のクラッチがダイヤフラムばねを含みかつ乾燥チャンバ内に配置されている、請求項1記載の連結装置。
【請求項4】
第1のクラッチの操作を制御するために前記ダイヤフラムばねを変位させるように配置されたピストンカップが設けられており、該ピストンカップが少なくとも部分的に乾燥チャンバを包囲している、請求項3記載の連結装置。
【請求項5】
前記ピストンカップ及び前記シールプレートが、連結装置の操作中に回転方向で固定されている、請求項4記載の連結装置。
【請求項6】
トルクコンバータがポンプ及びタービンを有する、請求項1記載の連結装置。
【請求項7】
ハウジングに結合されたロータを備えた電気モータが設けられている、請求項1記載の連結装置。
【請求項8】
流体力学的な連結装置において、
ハウジングと、
該ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、
出力ハブに回転方向で結合されたタービンと、
前記ハウジングに回転方向で結合されたポンプとが設けられており、連結装置は流体ステータを有さないことを特徴とする、流体力学的な連結装置。
【請求項9】
車両のトランスミッションにおいて、
トランスミッションハウジングと、
ハウジング内に配置された流体力学的な連結装置と、
ハウジング内に配置された電気モータと、
連結装置とフレックスプレートとの間に配置されたセンタリングプレートとが設けられており、該センタリングプレートが、トランスミッションハウジングをシールしかつ電気モータをセンタリングするように配置されていることを特徴とする、車両のトランスミッション。
【請求項10】
電気モータが、少なくとも部分的にセンタリングプレートによって形成されたウェットチャンバにおいて作動する、請求項9記載のトランスミッション。
【請求項11】
前記センタリングプレートが、流体力学的連結装置をセンタリングするために配置されている、請求項9記載のトランスミッション。
【請求項12】
流体力学的な連結装置において、
ハウジングと、
該ハウジングに回転方向伝結合された電気モータと、
前記ハウジング内に配置されておりかつ前記ハウジングに回転方向で結合されたポンプと、
前記ハウジング内に配置されておりかつ前記ポンプと流体連通したタービンと、
プレートと、
該プレート及びハウジングと接触した軸受とが設けられており、装置が、トランスミッションハウジング内における配置のために配置されており、トランスミッションハウジング内に配置されている場合、プレートはトランスミッションハウジングに結合されておりかつハウジングは軸受によって半径方向でセンタリングされていることを特徴とする、流体力学的な連結装置。
【請求項13】
流体力学的な連結装置において、
ハウジングと、
該ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、
前記ハウジング内に配置されておりかつ該ハウジングに回転方向で結合されたポンプと、
ハウジング内に配置されておりかつポンプと流体連通したタービンと、
ハウジングに回転方向で結合されておりかつハウジングの外側に配置されたダンパとが設けられており、該ダンパが第及び第2の別個のプレートとハウジングとによって拘束されていることを特徴とする、流体力学的な連結装置。
【請求項14】
ポンプ及びタービンを有するトルクコンバータが設けられている、請求項13記載の連結装置。
【請求項15】
流体力学的連結装置において、
ステータシャフトとポンプハブとの間に形成された空間と、
該空間に配置されたスリーブとが設けられており、該スリーブが前記空間を第1のチャネルと第2のチャネルとに分割していることを特徴とする、流体力学的な連結装置。
【請求項16】
ハウジングと、
該ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、
前記ハウジング内に配置されておりかつタービン及びポンプを有するトルクコンバータと、
前記ハウジング及びポンプに回転方向で結合されておりかつ第1及び第2の流体チャンバにおける個々の流体圧力によって制御可能な第1のクラッチとが設けられており、第1のチャネルが第1の流体チャンバにおける流体圧力を制御するために配置されており、第2のチャネルが第1の流体チャンバのためのシールの間に配置された流体を排出するために配置されている、請求項15記載の流体力学的な連結装置。
【請求項17】
流体力学的な連結装置において、
ハウジングと、
該ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、
前記ハウジング内に配置されたポンプと、
前記ハウジング内に配置されておりかつタービンシェルを有するタービンと、
第1のクラッチとが設けられており、該第1のクラッチが、タービンシェルに回転方向で結合された圧力プレートと、タービンシェルと圧力プレートとの間のシールと、圧力プレートに回転方向で結合されたクラッチプレートと、ピストンプレートに結合された駆動プレートとを有しており、
第1及び第2のチャンバが設けられており、前記シールが少なくとも部分的に第1のチャンバと第2のチャンバとを分離しており、第1のチャンバ及び第2のチャンバにおける個々の流体圧力が、第1のクラッチを操作するように制御可能であることを特徴とする、流体力学的な連結装置。
【請求項18】
ハウジング及びポンプに回転方向で結合された第2のクラッチと、
第3のチャンバとが設けられており、該第3のチャンバにおける流体圧力が第2のクラッチの操作を少なくとも部分的に制御し、前記第1のチャンバと前記第3のチャンバとが流体隔離されている、請求項17記載の連結装置。
【請求項19】
ハウジングと、該ハウジングに回転方向で結合された電気モータと、前記ハウジング内に配置されたポンプと、前記ハウジング内に配置されておりかつタービンシェルを有するタービンと、ハウジング及びポンプに回転方向で結合されたクラッチとを有する流体力学的な連結装置を操作する方法において、
ステータシャフトとポンプハブとの間に形成された空間を第1及び第2の別個のチャネルに分割するステップと、
第1のチャネルを介してクラッチのための流体チャンバにおける流体圧力を制御するステップと、
第2のチャネルを介して流体チャンバのためのシールの間の流体を排出するステップとをふくむことを特徴とする、流体力学的な連結装置を操作する方法。
【請求項20】
流体力学的な連結装置を組み立てる方法において、
電気モータをハウジングに回転方向で結合するステップと、
ハウジング内にポンプ及びタービンを配置するステップと、
第1及び第2のクラッチをハウジング内に配置するステップと、第1のクラッチがハウジングとポンプとを結合しておりかつ第2のポンプがタービンとハウジングとを結合しており、
カバーをハウジングに結合するステップと、
ハウジングとカバーとによって形成された空間にダンパばねとフランジとを配置するステップと、
プレートがカバー及びハウジングに関してばねを保持するようにプレートをカバーに固定するステップとを含むことを特徴とする、流体力学的な連結装置を組み立てる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−2511(P2009−2511A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157383(P2008−157383)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany