説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】燃料消費進行と燃料劣化進行の予測推定に基づき、燃料消費促進モードへの切り替えを適正に実行することにより、燃費の低下を招くことなく、燃料の劣化を抑制すること。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、燃料タンク14からの燃料量供給により駆動するエンジン1と、バッテリ4からの電力供給により駆動輪6,6を駆動する駆動モータ3と、車両統合コントローラ24(図3)と、を備える。燃料消費推定手段は、現在を起点として、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する日数t1を推定する(ステップS21)。燃料劣化推定手段は、現在を起点として、燃料劣化までに要する日数t2を推定する(ステップS22)。燃料劣化抑制制御手段は、燃料給油タイミング(t1)が、燃料劣化タイミング(t2)の後である場合(ステップS23でYES)、両タイミング(1),(2)のギャップ量に応じた燃料消費促進モードへ切り替える(ステップS23〜ステップS30)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクからの燃料量供給により駆動するエンジンと、少なくともバッテリからの電力供給により駆動輪を駆動するモータと、を搭載したハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した自動車として、内燃機関であるエンジンに加え、駆動モータと、外部から充電可能な蓄電装置(バッテリ)と、を備えたプラグイン・ハイブリッド車両が検討されている。このプラグイン・ハイブリッド車両においては、駆動モータのみで電気走行可能なモード(EV走行モード)を確保するため、外部充電が不可能であるハイブリッド車両に比べると電池容量の大きいバッテリが搭載される。そのため、普段の車両走行距離が短いユーザーにとっては、駆動モータのみのEV走行がメインとなり、エンジンを始動する頻度が少なくなる。このことより、長期間にわたり燃料タンク内のガソリンが消費されないことで、ガソリンが酸化により劣化してしまう、という問題があった。
【0003】
そこで、燃料の劣化を低減することを目的とし、推定した燃料劣化度に基づいてエンジン始動判定値、または、車両要求パワーを変更するエンジン始動タイミング変更処理を行うハイブリッド車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−18128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のハイブリッド車両の制御装置にあっては、燃料劣化度を推定するだけで、燃料タンク内の燃料消費の進行や燃料劣化の進行に関する情報を考慮することなく、エンジン始動タイミング変更処理を行うようにしていた。
【0006】
このため、燃料劣化度が所定の劣化度合いであると推定されたとき、例えば、燃料タンク内の燃料が残り少なく、燃料消費が短期間に進行する状況では、基本制御によるエンジン運転を継続しても、燃料タンク内の残燃料が劣化する前に燃料切れになることがある。つまり、燃料消費が短期間に進行する状況においては、エンジン始動タイミング変更処理の実行過剰により、燃費の低下を招く、という問題があった。
【0007】
一方、燃料劣化度が上記と同じ所定の劣化度合いであると推定されたとき、例えば、燃料タンク内の残燃料が多く、燃料消費に長期間を要する状況では、エンジン始動タイミング変更処理を継続しても、燃料タンク内の残燃料が先に劣化してしまうことがある。つまり、燃料消費に長期間を要する状況においては、エンジン始動タイミング変更処理の実行不足により、燃費の劣化を抑制することができない、という問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、燃料消費進行と燃料劣化進行の予測推定に基づき、燃料消費促進モードへの切り替えを適正に実行することにより、燃費の低下を招くことなく、燃料の劣化を抑制することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、エンジンと、モータと、燃料消費推定手段と、燃料劣化推定手段と、燃料劣化抑制制御手段と、を備える手段とした。
前記エンジンは、燃料タンクからの燃料量供給により駆動する。
前記モータは、少なくともバッテリからの電力供給により駆動輪を駆動する。
前記燃料消費推定手段は、現在を起点として、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する期間を推定する。
前記燃料劣化推定手段は、現在を起点として、燃料劣化までに要する期間を推定する。
前記燃料劣化抑制制御手段は、前記燃料給油もしくは前記燃料ゼロになるタイミングが、前記燃料劣化になるタイミングの後である場合、両タイミングのギャップ量に応じた燃料消費促進モードへ切り替える。
【発明の効果】
【0010】
よって、燃料消費推定手段において、現在を起点として、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する期間が推定され、燃料劣化推定手段において、現在を起点として、燃料劣化までに要する期間が推定される。そして、燃料給油もしくは燃料ゼロになるタイミングが、燃料劣化になるタイミングの後である場合、燃料劣化抑制制御手段において、両タイミングのギャップ量に応じた燃料消費促進モードへ切り替えられる。
すなわち、燃料給油もしくは燃料ゼロになるタイミングが、燃料劣化になるタイミングの前である場合には、燃料消費促進モードへ切り替えられることがない。したがって、燃料消費促進モードへ必要以上に切り替えられることによる燃費の低下やEV走行の機会減少を招かない。一方、燃料給油もしくは燃料ゼロになるタイミングが、燃料劣化になるタイミングの後である場合には、燃料消費促進モードへ切り替えられるが、両タイミングを近づけるようにギャップ量に応じて燃料消費が促進される。したがって、最小限の燃料消費促進に抑えながら、燃料劣化になるタイミングに符合して燃料タンク内の燃料が使い切られることで、燃料の劣化が抑制される。
このように、燃料消費進行と燃料劣化進行の予測推定に基づき、燃料消費促進モードへの切り替えを適正に実行することにより、燃費の低下を招くことなく、燃料の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の制御装置が適用されたシリーズ方式のプラグイン・ハイブリッド車両を示す全体システム構成図である。
【図2】実施例1の車両統合コントローラにおいて走行経験毎に実行されるEV走行時の電費やHEV走行時の燃費等の算出処理の構成および流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の車両統合コントローラにて実行される燃料給油タイミングと燃料劣化タイミングのギャップ量に基づく燃料劣化抑制制御処理の構成および流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1の燃料劣化抑制制御において燃料消費促進モードへ切り替えないで基本制御を維持するとき(a)と燃料消費促進モードへ切り替えるとき(b)の燃料給油タイミング(t1)と燃料劣化タイミング(t2)の関係を示すタイムチャートである。
【図5】実施例1の燃料劣化抑制制御において1日あたりの走行距離を見積もるケース例を示す走行距離履歴図である。
【図6】実施例1の燃料劣化抑制制御において1日あたりの走行距離に対する燃料給油までの日数を見積もるケース例を示す関係特性図である。
【図7】実施例1の燃料劣化抑制制御においてエンジン駆動率の拡大するケース例を示すバッテリSOC特性図である。
【図8】実施例1の燃料劣化抑制制御においてエンジン動作点をずらす制御でのケース例を示すエンジン性能特性図である。
【図9】実施例1の燃料劣化抑制制御においてプラグイン充電の抑制およびエンジン充電走行の動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたシリーズ方式のプラグイン・ハイブリッド車両の全体システム構成を示す。以下、図1に基づき全体システム構成を説明する。
【0014】
実施例1のシリーズ方式のプラグイン・ハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジン1と、発電モータ2と、駆動モータ3(モータ)と、バッテリ4と、減速差動機構5と、駆動輪6と、発電モータ用インバータ7と、駆動モータ用インバータ8と、充電変換器9と、切替器10と、充電ポート11と、燃料タンク14と、を備えている。
【0015】
このプラグイン・ハイブリッド車両は、走行モードとして、電気自動車走行モード(以下、「EV走行モード」という。)と、ハイブリッド車走行モード(以下、「HEV走行モード」という。)を有する。「EV走行モード」とは、バッテリ4に蓄えられた電力で駆動モータ3を駆動し、駆動モータ3のみを駆動源として走行しつつ、エンジン1は運転停止のモードである。一方、「HEV走行モード」とは、駆動モータ3を駆動源として走行しつつも、充電等のためにエンジン1により発電モータ2を駆動するモードである。
【0016】
前記エンジン1は、発電要求時、発電モータ2により始動され、完爆後、発電モータ2を駆動して発電する。そして、発電要求有りから発電要求無しに移行すると、エンジン1と発電モータ2は停止する。
【0017】
前記発電モータ2は、エンジン1に連結され、モータ機能と発電機能を発揮するモータジェネレータである。モータ機能は、エンジン1が停止状態で発電要求があったとき、バッテリ4の電力を消費し、エンジン1のクランキングに続いて点火させることによってエンジン1を始動するときに発揮される。発電機能は、エンジン1が駆動運転状態の場合、エンジン1から回転駆動パワーを受け、これを三相交流の電力に変換し、発電電力をバッテリ4に充電するときに発揮される。
【0018】
前記駆動モータ3は、減速差動機構5を介して車両の駆動輪6に繋がれ、モータ機能と発電機能を発揮するモータジェネレータである。モータ機能は、発進加速時や定速走行時や中間加速時、バッテリ4の電力を消費し、車両を駆動するときに発揮される。発電機能は、減速時や制動時等において、駆動輪6から回転駆動パワーを受け、これを三相交流の電力に変換し、発電電力をバッテリ4に充電する回生発電を行うときに発揮される。
【0019】
前記バッテリ4は、リチウムイオン二次電池や高容量キャパシタ等が用いられ、発電モータ2で発電された電力や駆動モータ3で回生発電された電力を蓄えると共に、駆動モータ3や発電モータ2に蓄えた電力を供給する。
【0020】
前記発電モータ用インバータ7は、発電モータ2とバッテリ4との間に配置され、三相交流と直流を相互に変換する。三相交流は、発電モータ2の駆動・発電に用いられ、直流は、バッテリ4の充放電に用いられる。
【0021】
前記駆動モータ用インバータ8は、駆動モータ3とバッテリ4との間に配置され、三相交流と直流を相互に変換する。三相交流は、駆動モータ3の駆動・発電に用いられ、直流は、バッテリ4の充放電に用いられる。
【0022】
前記充電変換器9は、バッテリ4と充電ポート11との間に配置され、プラグイン充電中、充電ポート11から供給される交流の外部電力を、バッテリ4に充電可能な直流の電力に変換する。
【0023】
前記切替器10は、発電モータ2と発電モータ用インバータ7と充電ポート11の間に配置され、発電経路・給電経路を切り替える。発電経路は、充電ポート11を切り離し、発電モータ2と発電モータ用インバータ7を接続するパターンとする。給電経路は、下記の3パターンの何れかを切り替え選択する。
・充電ポート11を切り離し、発電モータ2と発電モータ用インバータ7を接続することで、バッテリ4の電力を使用するパターン。
・発電モータ2と発電モータ用インバータ7と充電ポート11を接続することで、充電ポート11とバッテリ4の双方の電力を使用するパターン。
・発電モータ用インバータ7を切り離し、発電モータ2と充電ポート11を接続することで、充電ポート11の電力を使用するパターン。
【0024】
前記充電ポート11は、車体の外周のいずれかの位置に設定され、外部充電設備12の設定位置に車両を停車した状態でリッド等を開けて外部充電器12の給電プラグ13を差し込んで接続すると、充電変換器9を介してバッテリ4に充電(プラグイン充電)する。ここで、外部充電設備12とは、自宅で深夜電力を用いて低速充電するための家庭用充電設備や、自宅から離れた出先において急速充電が可能な急速充電スタンド、等をいう。
【0025】
前記燃料タンク14は、エンジン1に供給されるガソリンや軽油等の燃料を蓄えるための容器である。燃料タンク14に蓄えられた燃料は、図外の燃料供給通路や燃料噴射装置を介してエンジン1の燃焼室に供給される。
【0026】
実施例1のプラグイン・ハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ(ECM)20と、ジェネレータコントローラ(GC)21と、モータコントローラ(MC)22と、バッテリコントローラ(LBC)23と、車両統合コントローラ(VCM)24と、ナビゲーションコントローラ(NAVI/C)25と、イグニッションキースイッチ(IGN-SW)26と、燃料タンクセンサ27と、他のセンサ類28と、スピーカー29と、を備えている。
なお、各コントローラ20、21、22、23、24は、各種データを共有化できるように、情報交換が可能なCAN通信線30により接続されている。また、各コントローラ20、21、22、23、24は、プログラムを実行するプロセッサと、プロセッサによって実行されるプログラムを格納するメモリと、プロセッサに接続されたインターフェースと、を備える。
【0027】
前記エンジンコントローラ20は、車両統合コントローラ24からの制御指令にしたがって、エンジン1の吸入空気量・点火時期・燃料噴射量を操作することで出力トルクを制御する。
【0028】
前記ジェネレータコントローラ21は、車両統合コントローラ24からの制御指令にしたがって、発電モータ2の入出力トルクを制御するために発電モータ用インバータ7に操作指令を出力する。
【0029】
前記モータコントローラ22は、車両統合コントローラ24からの制御指令にしたがって、駆動モータ3の入出力トルクを制御するために駆動モータ用インバータ8に操作指令を出力する。
【0030】
前記バッテリコントローラ23は、バッテリ4の充電容量(残容量)や入出力可能パワー等の内部状態量を推定すると共に、バッテリ4の保護制御を行う。以下、バッテリ4の充電容量(残容量)を、バッテリSOC(SOCは「State Of Charge」の略)という。
【0031】
前記車両統合コントローラ24は、共有化した各種データに基づき、複数のコントローラ20、21、22、23を協調させながら、運転者の要求に沿ってモータ駆動出力を制御する。また、運転性と燃費(経済性)の両方を考慮しながら発電出力を制御する。この車両統合コントローラ24は、ナビゲーションコントローラ25、イグニッションキースイッチ26、燃料タンクセンサ27、他のセンサ類28からの情報を入力する。そして、運転者を含む乗員に通知すべき情報を、ナビゲーションコントローラ25およびスピーカー29に出力する。
【0032】
前記ナビゲーションコントローラ25は、衛星からのGPS信号を用いて自車位置を検出すると共に、DVD等に記憶された地図データに基づいて、目的地までの経路探索や誘導を行うナビゲーションシステムの制御機能を担う。ナビゲーションコントローラ25により得られた地図上での自車位置情報は、自宅位置情報や充電スタンド位置情報と共に、車両統合コントローラ24に対して供給される。このナビゲーションコントローラ25は、乗員が各種情報を入力するための入力装置(入力手段)を備えている。乗員は、入力装置を用いて目的地や予定走行距離を入力することができる。
【0033】
前記イグニッションキースイッチ26は、エンジン1の点火装置のスイッチである。このイグニッションキースイッチ26は、スターターモーター(セルモーター)のスイッチも兼ねている。前記燃料タンクセンサ27は、燃料タンク14に蓄えられた燃料の残容量を検知するセンサであり、例えば、燃料レベルゲージ等が用いられる。他のセンサ類28は、アクセル開度センサや車輪速センサ等の必要情報を取得する各種センサである。前記スピーカー29は、音声を出力する装置である。
【0034】
図2は、実施例1の車両統合コントローラ24において走行経験毎に実行されるEV走行時の電費やHEV走行時の燃費等の算出処理の構成および流れを示す。以下、図2の各ステップについて説明する。
【0035】
ステップS1では、イグニッションキースイッチ26がオンであるか否かを判断する。YES(IGN ON)の場合はステップS2へ進み、NO(IGN OFF)の場合はエンドへ進み、処理を終了する。
【0036】
ステップS2では、ステップS1あるいはステップS5でのIGN ONであるとの判断に続き、現時点でのバッテリ残容量SOCが、HEV走行モードに移行するSOC下限値に設定された閾値SOChより大きいか否かを判断する。YES(SOC>SOCh)の場合はステップS3へ進み、NO(SOC≦SOCh)の場合はステップS4へ進む。
【0037】
ステップS3では、ステップS2でのSOC>SOChであるとの判断、つまり、現時点でEV走行モードを維持するレベルのバッテリ残容量SOCが確保されているとの判断に続き、走行モードとしてEV走行モードを選択し、ステップS5へ進む。
【0038】
ステップS4では、ステップS2でのSOC≦SOChであるとの判断、つまり、現時点でHEV走行モードに移行する必要があるレベルまでにバッテリ残容量SOCが低下しているとの判断に続き、走行モードとしてHEV走行モードを選択し、ステップS5へ進む。
【0039】
ステップS5では、ステップS3でのEV走行モードの選択、あるいは、ステップS4でのHEV走行モードの選択に続き、イグニッションキースイッチ26がオフであるか否かを判断する。YES(IGN OFF)の場合はステップS6へ進み、NO(IGN ON)の場合はステップS2へ戻る。
【0040】
ステップS6では、ステップS5でのIGN OFFであるとの判断に続き、前回給油時からの経過日数(Td、単位「日」)、1回あたりの走行距離(D、単位「km」)、EV走行に使った電力消費量(FCev、単位「kWh」)、HEV走行に使った燃料消費量(FChev、単位「L」)を演算し、メモリに格納する。更に、EV走行モードでの走行時にバッテリ4から持ち出した電力消費量FCev(KWh)と、EV走行モードでの走行距離Dev(km)と、に基づいて、EV走行時の電費FCev/Dev(km/kWh)を算出する。一方、HEV走行モードでの走行時にインジェクターから噴射される燃料噴射量を積算することで算出した燃料消費量FChev(L)と、HEV走行モードでの走行距離Dhev(km)とに基づいて、HEV走行時の燃費FChev/Dhev(km/L)を算出する。そして、算出された1回あたりのEV走行時の電費FCev/Dev(km/kWh)やHEV走行時の燃費FChev/Dhev(km/L)に加え、前回給油時からの経過日数を記録し、エンドへ進む。
【0041】
図3は、実施例1の車両統合コントローラ24にて実行される燃料給油タイミングと燃料劣化タイミングのギャップ量に基づく燃料劣化抑制制御処理の構成および流れを示す。以下、図3の各ステップについて説明する。なお、ステップS23〜ステップS30は、燃料劣化抑制制御手段に相当する。
【0042】
ステップS21では、現在を起点として、燃料給油までに要する日数、もしくは、燃料がゼロになるまでに要する日数t1を推定演算し、ステップS22へ進む(燃料消費推定手段)。
【0043】
ステップS22では、ステップS21での給油までに要する日数、もしくは、燃料ゼロになるまでに要する日数の推定演算に続き、現在と起点として、燃料劣化までに要する日数t2を推定演算し、ステップS23へ進む(燃料劣化推定手段)。
ここで、燃料劣化までに要する日数t2の推定演算手法としては、例えば、特開2009-255680号公報に記載されているように、給油時期及び給油量履歴に基づいて、燃料劣化度合いを推定する。あるいは、特開2007-168512号公報に記載されているように、センサ出力や内燃機関の効率低下からの判断方法を用い、燃料劣化度合いを推定する。そして、推定された燃料劣化度合いが、燃料劣化判定閾値を超えると推定されるタイミングを燃料劣化までに要する日数t2として演算する。
【0044】
ステップS23では、ステップ22での燃料劣化までに要する日数t2の推定演算に続き、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する日数t1が、燃料劣化になるまでに要する日数t2より後であるか否かを判断する。YES(t1>t2)の場合はステップS25へ進む。一方、NO(t1≦t2)の場合はステップS24へ進む。
【0045】
ステップS24では、ステップS23でのt1≦t2であるとの判断に続き、高い燃費性能を目指して燃料消費を抑制する基本制御のままとし、リターンへ進む。
【0046】
ステップS25では、ステップS23でのt1>t2であるとの判断に続き、基本制御に比べて燃料消費量を促進する燃料消費促進モードへ切り替え、ステップS26へ進む。
【0047】
ステップS26では、ステップS25での燃料消費促進モードへの切り替えに続き、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する日数t1を、燃料劣化までに要する日数t2へ極力近づけるため、燃料消費を促進するようにエンジン駆動率を算出し、ステップS27へ進む。
【0048】
ステップS27では、ステップS26でのエンジン駆動率の算出に続き、エンジン駆動率の拡大に加え、燃料を消費させる手段として、エンジン動作点を燃費最適線からずらした燃料消費動作点へ切り替える判断を実施し、ステップS28へ進む。
【0049】
ステップS28では、ステップS27でのエンジン駆動率UP+エンジン動作点を燃料消費動作点へ切り替え判断実施に続き、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する日数t1が、燃料劣化までに要する日数t2以下となるか否かを判断する。YES(t1≦t2)の場合はリターンへ進み、NO(t1>t2)の場合はステップS29へ進む。
【0050】
ステップS29では、ステップS28でのt1>t2であるとの判断に続き、ステップS25〜ステップS27によるエンジン駆動率拡大とエンジン動作点の変更に加え、外部充電設備12から車両に搭載したバッテリ4へプラグイン充電するときの充電上限値を引き下げ、ステップS30へ進む。
【0051】
ステップS30では、ステップS29での外部充電時の充電上限値の引き下げに続き、基本制御でのHEV走行モードへの切り替え条件が成立するか不成立であるかにかかわらず、エンジン1を要求駆動力分に充電駆動力分を加えた出力にて駆動し、エンジン駆動による発電分をバッテリ4へ充電しながら走行するHEV走行モードに切り替え、リターンへ進む。
【0052】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の課題」の説明を行う。続いて、実施例1のプラグイン・ハイブリッド車両の制御装置における作用を、「燃料使い切りによる燃料劣化抑制作用」、「燃料給油タイミングの推定作用」、「エンジン駆動率の拡大作用」、「最適燃費線外しによるエンジン駆動作用」、「プラグイン充電量の制限作用」に分けて説明する。
【0053】
[比較例の課題]
ハイブリッド車両においては、バッテリに蓄えられている充電電力を使ってEV走行が行われることで、長期間にわたり燃料タンク内の燃料が消費されないことがあり、タンク内燃料が劣化してしまう懸念がある。この燃料劣化の懸念は、特に、高容量のバッテリに十分な充電電力が蓄えられるプラグイン・ハイブリッド車両において高くなり、燃料劣化を抑制する燃料劣化対策が必要となる。
【0054】
これに対し、例えば、特開2010-18128号公報では、推定した燃料劣化度に基づいてエンジン始動判定値、または、車両要求パワーを変更するエンジン始動タイミング変更処理を行う技術が提案されている。また、例えば、特開2007-168512号公報では、燃料の性状が適切でないと予測される場合には、車両渋滞が通常のEV走行条件を満たすときであってもEV走行を行わずにエンジンを運転させて燃料を消費するといった技術が提案されている。これらの燃料劣化対策として提案されている既知技術を比較例とする。
【0055】
しかしながら、これらの比較例技術は、いずれも燃料劣化が判定されると、エンジン始動をする、あるいは、エンジン始動をし易くするに留まる内容であり、下記に列挙する問題点1〜問題点3を有する。
【0056】
・問題点1
単にエンジン運転頻度を高めるに留まっており、燃料劣化タイミングに基づいた具体的なエンジン駆動負荷率を規定しておらず、エンジン運転頻度を高めても結果的に燃料が消費しきれず、燃料が劣化してしまう懸念が生じる。
【0057】
・問題点2
本来はエンジン運転領域を拡大しなくても、燃料が消費でき、劣化懸念が無いようなシーンでも、エンジン運転領域を拡大したことで、ランニングコストの低いEV走行をできる機会を減少させてしまう。
【0058】
・問題点3
本来、車両の使い方(例えば、1日の走行距離等)はユーザー毎に異なるのであるが、そのユーザー毎の車両の使い方の差異に対するエンジン運転動作を規定していない。このため、あるユーザーに対しては効果が出ても、あるユーザーに対しては効果が出ない、もしくは逆効果になる可能性があり、各ユーザーに対するロバスト性(堅牢性)を持った効果が低かった。
【0059】
[燃料使い切りによる燃料劣化抑制作用]
上記のように、燃料劣化対策としては、EV走行の機会を減少させることなく、燃料劣化の抑制効果に確実性を持たせることが必要である。以下、これを反映する燃料使い切りによる燃料劣化抑制作用を説明する。
なお、以下の説明において、燃料給油もしくは燃料ゼロになるのに要する日数t1によるタイミングを「燃料給油タイミング(t1)」といい、燃料劣化になるのに要する日数t2によるタイミングを「燃料劣化タイミング(t2)」という。
【0060】
燃料給油タイミング(t1)が燃料劣化タイミング(t2)以前のときには、図3のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→リターンという流れが繰り返される。このステップS24では、高い燃費性能を目指して燃料消費を抑制する基本制御のままとされる。
すなわち、図4(a)に示すように、現時点(t0)において、燃料給油タイミング(t1)より燃料劣化タイミング(t2)のほうが遅い、あるいは、両タイミング(t1),(t2)が一致すると想定されることで、燃料消費推進モードとすることなく、基本制御が維持される。この基本制御では、図2に示すように、バッテリ残容量SOCが、SOC>SOChである限りEV走行を維持する。そして、HEV走行が選択されても、可能な限りエンジン1を燃費最適線に沿って駆動する。
したがって、燃料給油タイミング(t1)と燃料劣化タイミング(t2)が一致するとき、あるいは、燃料給油タイミング(t1)より燃料劣化タイミング(t2)が遅いと想定されたときは、エンジン駆動率等を拡大しなくても、燃料が劣化する前に燃料を使い切ることができる。つまり、燃料劣化懸念が無いようなシーンであるため、比較例技術のように、燃料消費促進モードへの切り替えが必要以上に実行されることによる燃費の低下やEV走行の機会減少を招かない。
【0061】
燃料給油タイミング(t1)が燃料劣化タイミング(t2)より後であるときには、図3のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS25へと進む。このステップS25では、基本制御に比べ燃料消費量を促進する燃料消費促進モードへ切り替えられる。
すなわち、図4(b)に示すように、現時点(t0)において、燃料給油タイミング(t1)より燃料劣化タイミング(t2)のほうが早いと想定されることで、両タイミング(t1),(t2)のギャップ量に応じた燃料消費促進モードへ切り替えられる。この燃料消費促進モードは、両タイミング(t1),(t2)を極力近づけるようにギャップ量に応じて実行されるエンジン駆動率拡大やエンジン運転点変更、等により行う。
したがって、燃料給油タイミング(t1)より燃料劣化タイミング(t2)が早いと想定されたときは、燃料給油タイミング(t1)と燃料劣化タイミング(t2)のギャップ量に応じて燃料消費促進を最小限に抑えながらも、燃料劣化タイミング(t2)に符合して燃料タンク14内の燃料が使い切られることで、燃料の劣化が抑制される。
【0062】
上記のように、実施例1では、現在を起点として、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する日数t1と、燃料劣化までに要する日数t2と、をそれぞれ推定し、燃料給油タイミング(t1)が燃料劣化タイミング(t2)の後にある場合、そのギャップ量に応じて燃料消費促進モードへ切り替える構成を採用した。
この構成により、燃料給油タイミング(t1)による燃料消費進行と燃料劣化タイミング(t2)による燃料劣化進行の予測推定に基づき、燃料消費促進モードへの切り替えが過不足無く適正に実行されることになる。
したがって、不要な燃料消費促進モードへの切り替えによる燃費の低下を招くことなく、燃料タンク14内の燃料使い切りにより燃料の劣化が抑制される。
【0063】
[燃料給油タイミングの推定作用]
上記燃料劣化抑制作用において、燃料消費促進モードへの切り替え必要性の判断精度を上げるには、給油または燃料ゼロまでに要する日数t1による燃料給油タイミング(t1)を、いかに精度良く推定するかが重要である。以下、これを反映する燃料給油タイミング(t1)の推定作用を説明する。
【0064】
図3のステップS21では、現在を起点として、燃料給油までに要する日数、もしくは、燃料がゼロになるまでに要する日数t1が推定演算される。
この時、日数t1を推定演算するのに必要なパラメータ値として、最低でも下記(1)〜(4)のパラメータ値を算出しておく。
(1) 燃費・電費
燃費と電費は、予め定めた値、もしくは、図2のフローチャートに基づく過去のユーザー燃費・電費値から演算する。
(2) 給油までの残燃料量
給油までの残燃料量は、実際に燃料タンク14内に入っている燃料タンクセンサ27から算出された燃料量、もしくは、エンジンコントローラ20等からの燃料噴射パルスを積分した値から算出した燃料量をもとに、ユーザーの残り何リットルを残して給油するのかのパターン学習した値を考慮して算出する。
(3) 1日あたりの走行距離
1日あたりの走行距離は、ユーザーの実際の過去の走行距離履歴から演算する。この時、平日と休日とで使われ方に特徴が出ている場合は、それぞれの平均距離を分けることが望ましい。更に、ナビゲーション情報で、ユーザーの通勤ルート設定や、これからの車両運転計画とルートが設定されている場合には、その値を用いることで、より高い精度で推定走行距離演算が可能となる。
(4) 乗車頻度
乗車頻度は、ユーザーの実際の過去の走行履歴より演算する。この時も同様に、車両使われ方が予めナビゲーションシステムに設定されている場合には、その情報より算出する。
そして、これら(1)〜(4)の情報に基づいて、燃料給油までに要する日数t1、もしくは、燃料ゼロまでに要する日数t1を見積もり、燃料給油タイミング(t1)を推定する。
【0065】
ここで、過去の走行距離履歴による「1日あたりの走行距離」の演算手法の一例を、図5に基づいて説明する。なお、図5では、給油後の経過日数[day]と、EV走行モード及びHEV走行モードでの走行距離[km/day]との関係を示している。
例えば、図5においては、給油後の経過日数が21日における、HEV走行モードでの走行距離が飛びぬけて多くなっているというように、過去の走行距離履歴の中でイレギュラーな走行距離履歴が存在する場合がある。仮に、このようなイレギュラーな走行距離履歴を加味して、1日あたりの走行距離を推定演算すると、推定演算された1日あたりの走行距離に基づいて算出される燃料給油までに要する日数t1、もしくは、燃料がゼロになるまでに要する日数t1に誤差が生じてしまう。そこで、1日あたりの走行距離を推定演算する場合、このようなイレギュラーな走行距離履歴を除いた平均値により演算することが望ましい。これにより、正確な1日あたりの走行距離を推定演算することができる。
【0066】
そして、例えば、EV走行距離=20km、燃費=20km/L、乗車頻度=0.5回/日、給油までの残燃料量30Lの場合、図6に示すように、1日あたりの走行距離と燃料給油までの日数との間に反比例の特性が描かれることになる。よって、1日あたりの走行距離が明らかになると、燃料給油までの日数t1を見積もることができる。
【0067】
上記のように、実施例1では、ドライバーの1日あたりの平均走行距離、乗車頻度、外部充電設備12からの充電パターン履歴を学習記憶する。これらの記憶情報に加え、外部充電設備12によるプラグイン充電後からの推定EV走行可能距離と推定燃費値より、給油が行われる、もしくは燃料がゼロになるまでに要する現在からの日数t1を推定する構成を採用した。
【0068】
したがって、ユーザー毎に異なる車両の使われ方の特徴をパラメータとして考慮することで、精度を高く燃料給油もしくは燃料ゼロになる燃料給油タイミング(t1)を推定することが可能となり、燃料消費促進モード切り替えの必要性判断の精度が上げられる。これにより燃料劣化前に燃料を使い切ってしまう、もしくは、燃料給油が行われると推定される時は、燃料消費促進モードへ切り替えないことで、基本制御によるEV走行性能が確保できる。そして、基本制御では燃料劣化前に燃料を使い切ることができないときに限って、燃料消費促進モードへ切り替え、燃料が劣化する前に、燃料を使い切る、もしくは、燃料給油をすることができる。
【0069】
実施例1では、ユーザーの消費燃料を推定する際の推定走行距離は、予めナビゲーションシステムでのユーザーセット情報があれば、それを用いる構成を採用した。
ここで、ユーザーセット情報とは、例えば、
1.ユーザーの平日の通勤ルート設定
2.ユーザーの車両の走行計画の、日付とその時のルート設定
の情報をいう。
したがって、平日の通勤ルート設定により、より高い精度でユーザーの走行距離を把握することができ、また、例えば、休日の遠出計画や、平日の出張等での遠出スケジュールとそのルート情報が事前に把握できることで、より高い精度で、燃料給油タイミング(t1)が把握される。これにより、不必要に燃料消費促進モードへ切り替えて燃料を積極的に使うことを抑制できることで、燃料劣化させることなく、極力長いEV走行距離を確保することが可能となる。
【0070】
[エンジン駆動率の拡大作用]
上記燃料消費促進モードへ切り替えられたとき、エンジン駆動率の拡大を、燃料給油タイミング(t1)と燃料劣化タイミング(t2)のギャップ量に対応して行うことが必要である。以下、これを反映するエンジン駆動率の拡大作用を説明する。
【0071】
燃料消費促進モードへ切り替えられると、図3のフローチャートにおいて、ステップS25からステップS26へと進む。そして、ステップS26では、燃料給油タイミング(t1)を、燃料劣化タイミング(t2)へ極力近づけるため、燃料消費を促進するようにエンジン駆動率が算出される。
このエンジン駆動率の算出方法としては、ドライバーが1回乗車するたびに、消費すべき燃料量(L)を以下のように算出する。
燃料劣化までの推定乗車回数(N)=燃料劣化タイミング(t2)×乗車頻度(回/日)
1回あたりの乗車で消費すべき燃料量(L)=燃料給油までの残燃料(L)÷N(回)
これにより1回の乗車あたりに必要な消費すべき燃料量が求められ、この値と、推定EV距離、燃費値、ドライバーの平均走行距離より、エンジン駆動率を決定する。
【0072】
このエンジン駆動率の拡大イメージを図7に示す。例えば、50km/日を走行するケースにおいて、基本制御(Base)では燃料消費量1.5(L)であるとする。この場合、エンジン駆動率を3段階により拡大した場合、1段階目の仕様(a)では燃料消費量1.8(L)となり、2段階目の仕様(b)では燃料消費量2.0(L)となり、3段階目の仕様(c)では燃料消費量2.4(L)となる。なお、エンジン駆動率の拡大手法としては、例えば、図2のフローチャートにおけるバッテリ残容量SOCの閾値SOChを、基本制御による値から段階的に引き上げ、エンジン1を駆動するHEV走行モードに移行しやすいようにする。
【0073】
上記のように、実施例1では、燃料が劣化してしまうタイミングまでに、ユーザーの車両乗車機会がどれくらいあるのかを推定し、燃料を給油するまでの消費すべき燃料量もしくは、燃料タンク内の燃料量より、燃料劣化前に、1回あたりの乗車でどれくらいの燃料を消費すべきかを算出する。この1回あたりに必要な燃料消費量と、ドライバーの平均走行距離情報より、エンジン1の駆動拡大率を決定する構成を採用した。
したがって、最小限のエンジン駆動率の拡大により、燃料劣化タイミング(t2)になる前に燃料タンク14内の燃料が使い切られる。
【0074】
[最適燃費線外しによるエンジン駆動作用]
上記燃料消費促進モードへ切り替えられたとき、エンジン駆動率の拡大だけではギャップ量に対応できないときは、更なる燃料消費手法を加えることが必要である。以下、これを反映する最適燃費線外しによるエンジン駆動作用を説明する。
【0075】
燃料消費促進モードへ切り替えられると、図3のフローチャートにおいて、ステップS25からステップS26→ステップS27へと進む。そして、ステップS27では、エンジン駆動率の拡大に加え、燃料を消費させる手段として、エンジン動作点を燃費最適線から燃料消費動作点へずらす切り替えが実施される。
すなわち、エンジン駆動率拡大では1回あたりに消費すべき燃料量に不足する場合には、エンジン駆動率の拡大方法を決定する動作に加え、例えば、エンジン動作点をエンジン回転数が低い側へ動かす。この場合、図8に示すように、燃費最適線と等パワー線が交わるエンジン回転数から、音振・加速フィーリング優先線と等パワー線が交わるエンジン回転数へと低下させることで、音振性能向上が狙える。このため、本来、EV走行できるところでエンジン1を運転させることでの、EV阻害感を抑制することができる。
【0076】
上記のように、実施例1では、燃料を消費するための手段として、エンジンの動作点を最適の燃費効率作動線から外す、つまり燃料をより消費する動作点で運転させる構成を採用した。
したがって、エンジン動作点を、最適燃費線上の動作点から、例えば、音振性能を高められるエンジン回転数が低い動作点へ切り替えることで、EV走行中のエンジン運転感を抑制しながら、より多くの燃料消費することが可能になり、燃料劣化タイミング(t2)になる前に燃料タンク14内の燃料が使い切られる。
【0077】
[プラグイン充電量の制限作用]
上記燃料消費促進モードへ切り替えられたとき、エンジン駆動率拡大とエンジン動作点変更だけではギャップ量に対応できないときは、更なる燃料消費手法を追加することが必要である。以下、これを反映するプラグイン充電量の制限作用を説明する。
【0078】
燃料消費促進モードへ切り替えられると、図3のフローチャートにおいて、ステップS25からステップS26→ステップS27→ステップS28へと進む。そして、ステップS28でt1≦t2となりそうであると判断されると、図3のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS25→ステップS26→ステップS27→ステップS28へと進む流れが繰り返される。
【0079】
一方、ステップS28でt1>t2になりそうであると判断されると、ステップS28からステップS29→ステップS30→リターンへと進む流れが繰り返される。そして、ステップS29では、燃料促進モードに切り替えても燃料給油タイミング(t1)が燃料劣化タイミング(t2)より後になってしまうとの予測判断に基づき、外部充電設備12からバッテリ4へプラグイン充電するときの充電上限値が引き下げられる。次のステップS30では、バッテリ残容量SOCにかかわらず、エンジン1を駆動し、エンジン駆動による発電分をバッテリ4へ充電しながら走行するHEV走行モードに切り替えられる。
【0080】
すなわち、外部充電するときの充電上限値は、常に100%相当の満充電となっていたとすると、バッテリ充電量が多過ぎて充電余裕を持たないため、エンジン1の駆動機会が減少してしまい、その結果、燃料が劣化し、燃料を捨ててしまう懸念がある。そのため、このようなケースでは、図9に示すように、プラグイン充電するときの充電上限値をA%(<100%)まで引き下げ、プラグイン充電による充電量をB%からA%までに抑制させることで、走行中にエンジン充電走行を確保し、エンジン駆動率を高めさせる。
【0081】
例えば、充電上限値を、バッテリ充電容量最大値の30%とした場合、エンジン1は通常走行に必要なパワー出力運転に加え、車両に搭載されたバッテリ4へ充電する分だけ多く出力し、バッテリ充電容量100%相当まで充電していく制御へ切り替える。これにより、図9に示すように、走行必要パワー以上に多くのエンジン1を出力運転することが可能となり、劣化してしまう懸念のある燃料を消費することが可能となる。また、燃料劣化する前に燃料を使い切るだけでなく、この燃料を電気エネルギーに変換して、車両に搭載されたバッテリ4へエネルギー蓄積することになるため、次回、燃料給油後、十分な電池エネルギーを蓄えているので、給油終了後から、EV走行を行うことが可能になる。
【0082】
上記のように、実施例1では、エンジン駆動率を高めるのに加え、外部充電設備12からバッテリ4へプラグイン充電する際の充電量に上限値を設ける構成を採用した。
したがって、電気エネルギーの外部からの充電量を抑制することにより、エンジン駆動率が高まることで、より燃料を消費することが可能となる。
【0083】
実施例1では、外部充電設備12からの上限充電量による充電を実施した後に車両走行する際、エンジン1の出力を、要求駆動力分のエンジン出力にするのに加え、更にバッテリ4へ充電しながらエンジン1を駆動する構成を採用した。
したがって、車両が走行するのに必要なパワーをエンジン1が駆動するのに加え、更に車載のバッテリ4へ充電させることで、車両走行必要パワー以上の出力でエンジン運転をさせることができる。それにより、更に多くの燃料が消費することができる。加えて、この追加で消費した燃料は、バッテリ4へ電気エネルギーとして蓄積されるため、燃料を給油した後、電池エネルギーを蓄えている状態なため、EV走行から走行することが可能となる。
【0084】
次に、効果を説明する。
実施例1のプラグイン・ハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0085】
(1) 燃料タンク14からの燃料量供給により駆動するエンジン1と、
少なくともバッテリ4からの電力供給により駆動輪6,6を駆動する駆動モータ3(モータ)と、
現在を起点として、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する期間(日数t1)を推定する燃料消費推定手段(ステップS21)と、
現在を起点として、燃料劣化までに要する期間(日数t2)を推定する燃料劣化推定手段(ステップS22)と、
前記燃料給油もしくは前記燃料ゼロになるタイミング(燃料給油タイミング(t1))が、前記燃料劣化になるタイミング(燃料劣化タイミング(t2))の後である場合(ステップS23でYES)、両タイミング(1),(2)のギャップ量に応じた燃料消費促進モードへ切り替える燃料劣化抑制制御手段(ステップS23〜ステップS30)と、
を備える。
このため、燃料消費進行と燃料劣化進行の予測推定に基づき、燃料消費促進モードへの切り替えを適正に実行することにより、燃費の低下を招くことなく、燃料の劣化を抑制することができる。
【0086】
(2) 前記燃料消費推定手段(ステップS21)は、現在を起点として、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する日数t1を推定し、
前記燃料劣化推定手段(ステップS22)は、現在を起点として、燃料劣化までに要する日数t2を推定する。
このため、(1)の効果に加え、良好な推定精度を確保しつつ予測タイミングの遅れを抑えた日単位による燃料消費進行と燃料劣化進行の予測推定に基づき、燃料消費促進モードへの切り替えを適正に実行することができる。
【0087】
(3) 前記燃料消費推定手段(ステップS21)は、ドライバーの1日あたりの平均走行距離、乗車頻度、外部充電設備12からの充電パターン履歴を学習記憶し、これらの記憶情報に加え、外部充電設備12による前記バッテリ4への充電後からの推定されるモータ走行可能距離と推定燃費値より、現在から燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する期間(日数t1)を推定する。
このため、上記(1)または(2)の効果に加え、燃料給油もしくは前記燃料ゼロになるタイミング(燃料給油タイミング(t1))の推定精度が高まり、燃料消費促進モードへの切り替え必要性の判断精度を向上させることができる。
【0088】
(4) 前記燃料劣化抑制制御手段(ステップS26)は、燃料消費促進モードへ切り替えられると、現時点から燃料劣化タイミング(t2)になるまでの期間における1回あたりの乗車で必要な消費すべき燃料量とドライバーの平均走行距離情報によりエンジン駆動率を算出し、算出したエンジン駆動率によるエンジン運転を実施する。
このため、上記(1)〜(3)の効果に加え、燃費性能を低下させるエンジン駆動率の拡大を最小限に抑えながら燃料消費を促進し、燃料劣化タイミング(t2)に合わせて燃料タンク14内を燃料切れにすることができる。
【0089】
(5) 前記燃料劣化抑制制御手段(ステップS27)は、燃料消費促進モードへ切り替えられると、エンジン動作点を最適燃費線から外した燃料消費動作点による運転とする。
このため、上記(1)〜(4)の効果に加え、EV走行中におけるエンジン運転感を抑制しながら燃料消費を促進し、燃料劣化タイミング(t2)に合わせて燃料タンク14内を燃料切れにすることができる。
【0090】
(6) 前記燃料劣化抑制制御手段(ステップS29)は、少なくともエンジン駆動率を高めるのに加え、外部充電設備12から前記バッテリ4へ充電する充電量に上限値を設ける。
このため、上記(4)または(5)の効果に加え、バッテリ4への充電余裕を確保することでのエンジン駆動率の高まりにより、燃料消費を促進することができる。
【0091】
(7) 前記燃料劣化抑制制御手段(ステップS30)は、前記外部充電設備12からの上限充電量による充電を実施した後に車両走行する際、要求駆動力分に前記バッテリ4への充電駆動力分を加えたエンジン出力により前記エンジン1を駆動する。
このため、上記(6)の効果に加え、走行必要パワー以上の出力によるエンジン駆動により燃料消費を促進できると共に、追加した消費燃料を電池エネルギーに変換して蓄えることにより、燃料給油後の走行時におけるEV走行頻度を高めることができる。
【0092】
(8) 前記燃料消費推定手段(ステップS21)は、ユーザーの消費燃料を推定する際、予めナビゲーションシステムでのユーザーセット情報があれば、ユーザーセット情報を用いて走行距離を推定する。
このため、上記(1)〜(7)の効果に加え、高い精度で燃料給油タイミング(t1)を把握することにより、不必要な燃料消費促進モードへの切り替えが抑えられ、燃料劣化を抑制しながら、最大限に長いEV走行距離を確保することができる。
【0093】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0094】
実施例1では、燃料消費推定手段として、現在を起点として、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する日数t1を推定する手段を示し、燃料劣化推定手段として、現在を起点として、燃料劣化までに要する日数t2を推定する手段を示した。しかし、燃料消費推定手段の期間としては、現在を起点として、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する時間、あるいは、月などを推定する例としても良い。また、燃料劣化推定手段の期間としては、現在を起点として、燃料劣化までに要する時間、あるいは、月などを推定する例としても良い。さらに、燃料給油もしくは燃料ゼロに近づくほど、あるいは、燃料劣化に近づくほど、期間の単位を月→日→時間というように変更する例としても良い。
【0095】
実施例1では、図3のステップS21において、ドライバーの1日あたりの平均走行距離、乗車頻度、外部充電設備12からの充電パターン履歴を学習記憶する。これらの記憶情報に加え、外部充電設備12によるプラグイン充電後からの推定EV走行可能距離と推定燃費値より、給油が行われる、もしくは燃料がゼロになるまでの現在からの日数t1を推定する例を示した。しかし、ドライバーの1日あたりの平均走行距離として、平日と休日とのそれぞれの平均走行距離を求めるのが好ましい。また、給油までの燃料量は、燃料タンク内の燃料量でも良いし、過去のドライバーの給油を行う時の平均残燃料分を考慮することが尚良い。さらに、推定EV走行可能距離及び推定燃費値は、予め定めておいた値でも良いし、運転方法違いや、季節違いを考慮できる過去の電費値、燃費値の実績値学習でも良い。
【0096】
実施例1では、図3のステップS22において、特開2009-255680号公報や特開2007-168512号公報に記載されている燃料劣化推定演算手法を用い、燃料劣化までの日数t2を推定演算する例を示した。しかし、燃料劣化日数を推定演算する手法としては、例えば、燃料の酸化を直接または間接的に検出し、燃料の酸化値が劣化判定閾値を上回るタイミングを予測して燃料劣化までの日数を推定演算するような例としても良い。
【0097】
実施例1では、図3のステップS26において、HEV走行モードに移行するバッテリ残容量SOCの閾値SOChを基本制御による下限値から段階的に引き上げることで、エンジン駆動率を拡大する例を示した。しかし、エンジン駆動率の拡大手法としては、例えば、アクセル開度が所定値以上のとき、エンジンを駆動し、発電モータからの電力を駆動モータに供給する場合には、そのアクセル開度の所定値を段階的あるいは無段階に引き下げるような例としても良い。また、エンジン音が目立たない高車速域でエンジンを駆動し、発電モータにより発電を行う場合には、その車速の閾値を段階的あるいは無段階に引き下げるような例としても良い。
【0098】
実施例1では、図3のステップS27において、燃料消費を促進させる手段として、エンジン駆動率の拡大に加え、エンジン動作点を燃費最適線からずらした燃料消費動作点へ切り替え変更する例を示した。しかし、このエンジン動作点変更は、エンジン駆動率の拡大に加えても良いし、例えば、エンジン駆動率を拡大するまでの燃料消費が必要でない場合には、エンジン駆動率は変えずに、このエンジン動作点変更を行うだけでも良い。
【0099】
実施例1では、燃料消費を促進させる手段として、エンジン駆動率の拡大手段、燃費最適線からのエンジン動作点変更手段、プラグイン充電量の制限手段による例を示した。しかし、燃料消費を促進させる手段は、これらの手段に限らず、例えば、アイドルストップ車両では、エンジンのアイドルストップ運転を禁止する手段等、他の燃料消費を促進させる手段を用いても良い。更に、複数の燃料消費を促進させる2以上の手段を適宜組み合わせるような例としても良い。
【0100】
実施例1では、燃料消費促進モードへ切り替えられたとき、特にドライバーや乗員に報知することなく燃料消費促進モードを実行する例を示した。しかし、燃料消費促進モードへ切り替えられたとき、ナビゲーション画面やスピーカーによりドライバーや乗員に燃料消費促進モードであることを報知する例としても良い。この場合、ドライバーに燃料給油を促す効果がある。
【0101】
実施例1では、本発明の制御装置を発電モータと駆動モータ(2モータ)を備えたシリーズ方式のプラグイン・ハイブリッド車両に適用する例を示した。しかし、本発明の制御装置は、2モータを備えたパラレル方式のプラグイン・ハイブリッド車両や発電/駆動兼用のモータジェネレータ(1モータ)を備えたパラレル方式のプラグイン・ハイブリッド車両等に対しても適用することができる。更に、プラグイン充電が不可能なハイブリット車両においても、走行頻度が少ない場合や1回あたりの走行距離が短い場合等には、エンジン作動頻度低下による燃料劣化の懸念がある。このため、例えば、プラグイン充電が不可能なパラレル方式のハイブリッド車両等のように、EV走行を多用するようなハイブリット車両に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 エンジン
2 発電モータ
3 駆動モータ(モータ)
4 バッテリ
5 減速差動機構
6 駆動輪
7 発電モータ用インバータ
8 駆動モータ用インバータ
9 充電変換器
10 切替器
11 充電ポート
14 燃料タンク
20 エンジンコントローラ
21 ジェネレータコントローラ
22 モータコントローラ
23 バッテリコントローラ
24 車両統合コントローラ
25 ナビゲーションコントローラ
26 イグニッションキースイッチ
27 燃料タンクセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクからの燃料量供給により駆動するエンジンと、
少なくともバッテリからの電力供給により駆動輪を駆動するモータと、
現在を起点として、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する期間を推定する燃料消費推定手段と、
現在を起点として、燃料劣化までに要する期間を推定する燃料劣化推定手段と、
前記燃料給油もしくは前記燃料ゼロになるタイミングが、前記燃料劣化になるタイミングの後である場合、両タイミングのギャップ量に応じた燃料消費促進モードへ切り替える燃料劣化抑制制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記燃料消費推定手段は、現在を起点として、燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する日数を推定し、
前記燃料劣化推定手段は、現在を起点として、燃料劣化までに要する日数を推定する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記燃料消費推定手段は、ドライバーの1日あたりの平均走行距離、乗車頻度、外部充電設備からの充電パターン履歴を学習記憶し、これらの記憶情報に加え、外部充電設備による前記バッテリへの充電後からの推定されるモータ走行可能距離と推定燃費値より、現在から燃料給油もしくは燃料ゼロになるまでに要する期間を推定する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記燃料劣化抑制制御手段は、燃料消費促進モードへ切り替えられると、現時点から燃料劣化タイミングになるまでの期間における1回あたりの乗車で必要な消費すべき燃料量とドライバーの平均走行距離情報によりエンジン駆動率を算出し、算出したエンジン駆動率によるエンジン運転を実施する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記燃料劣化抑制制御手段は、燃料消費促進モードへ切り替えられると、エンジン動作点を最適燃費線から外した燃料消費動作点による運転とする
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記燃料劣化抑制制御手段は、少なくともエンジン駆動率を高めるのに加え、外部充電設備から前記バッテリへ充電する充電量に上限値を設ける
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記燃料劣化抑制制御手段は、前記外部充電設備からの上限充電量による充電を実施した後に車両走行する際、要求駆動力分に前記バッテリへの充電駆動力分を加えたエンジン出力により前記エンジンを駆動する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記燃料消費推定手段は、ユーザーの消費燃料を推定する際、予めナビゲーションシステムでのユーザーセット情報があれば、ユーザーセット情報を用いて走行距離を推定する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−166777(P2012−166777A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257735(P2011−257735)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】