説明

ハイブリッド電気自動車のラジエータ構造

【課題】エンジン,電装機器およびエンジン吸気の冷却性を向上させ且つ限られた自動車のスペースを活用することが出来るようにする。
【解決手段】 過給器付きのエンジン14,電気モータ23,24および電装機器13,15を機器室12内に備えるハイブリッド電気自動車の放熱機器構造である。この構造においては、電気モータ23,24および電装機器13,15の熱を空気中に放出する電装機器ラジエータ36と、エンジン14の熱を空気中に放出するエンジンラジエータ38と、過給器により圧縮された吸気の熱を空気中に放出するインタークーラ37と、電装機器ラジエータ36とエンジンラジエータ38とを接続し且つ電装機器ラジエータ36の外周とエンジンラジエータ38の外周とを覆うカバー部材51とを備え、このカバー部材51には、インタークーラ37が嵌入する凹部53を形成して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給器付きエンジンを備えたハイブリッド電気自動車に用いて好適なラジエータ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のエンジンを水により冷却する技術が一般的に知られている。このようなエンジンは、水冷式エンジンと呼ばれるものであって、ラジエータにより冷却水の放熱が行なわれるようになっている。
一方、近年、環境保護の観点から、エンジンと電気モータとを搭載したハイブリッド電気自動車の普及が著しい。
【0003】
しかしながら、このようなハイブリッド電気自動車に搭載された電装機器からは熱が生じる。また、これらの電装機器から生じる熱量は、エンジンから生じる熱量よりは少ないものの、無視出来るほどに小さなものでもない。
このため、ハイブリッド電気自動車においては、これらの電装機器を冷却するために水が用いられるようになっている。
【0004】
また、環境保護を実現するためのさらなる取り組みとして、エンジンの排ガスに含まれる有害物質の量を抑制することが求められている。なお、このような要求は、一般的なエンジンに限らず、ハイブリッド電気自動車に搭載されるエンジンについても同様である。
排ガス性能を向上させるための手法としては、燃料成分の調整,エンジンの燃料噴射タイミングの調整,触媒性能の向上など種々の手法が存在するが、ディーゼルエンジンの場合、過給器およびインタークーラを装着させるという手法もある。
【0005】
つまり、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる有害物質として代表的なものの1つとして窒素酸化物(NOx)が挙げられるが、このNOxの量はエンジンのシリンダ内における燃焼温度が高くなるに連れて増大することが知られている。したがって、燃焼温度を低くすれば、排ガスに含まれるNOx量を低減することができるのである。
このような理由により、インタークーラによってその温度が下げられた吸気をエンジンに供給することで、燃焼温度の低減を図り、排ガスに含まれるNOx量を抑制することが可能なのである。
【0006】
なお、エンジンを水冷する技術、および、電装機器を水冷する技術については、以下の特許文献1に記載がある。
また、水冷式エンジンラジエータとインタークーラとを、冷却風の流れに沿って直列に配設する技術は、以下の特許文献2に記載がある。
【特許文献1】特開2002−223505号公報
【特許文献2】特開2002−321533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エンジンラジエータ,電装機器ラジエータおよびインタークーラを配設する場合、種々の工夫が要求される。
つまり、これらのエンジンラジエータ,電装機器ラジエータおよびインタークーラを、冷却風の流れに沿って「並列」に配設すれば、エンジンの冷却,電装機器の冷却および吸気の冷却を最も効率よく行なうことが可能ではあるものの、限られた自動車のスペースを効率よく利用することが出来ないため、現実的ではない。また、このような並列配設の場合、エンジンラジエータ,電装機器ラジエータおよびインタークーラに対して個別に冷却ファンを装着する必要が生じるため、コストの増大を招いてしまうという課題もある。
【0008】
一方、これらのエンジンラジエータ,電装機器ラジエータおよびインタークーラを、冷却風の流れに沿って単に「直列」に配設すれば、自動車のスペースを効率よく利用することが出来ると共に、コストの増大も抑制できるものの、エンジン,電装機器および吸気の冷却効率を低下させてしまう。
つまり、エンジンラジエータが冷却するエンジン冷却水,電装機器ラジエータが冷却する電装機器冷却水およびインタークーラが冷却する吸気冷却水は、それぞれ、温度が大きく異なるため、エンジンラジエータ,電装機器ラジエータおよびインタークーラの配設を工夫する必要がある。
【0009】
また、一般的に、インタークーラのコア面積は、エンジンラジエータおよび電装機器ラジエータのコア面積よりも小さく、この点も考慮した上で、エンジンラジエータ,電装機器ラジエータおよびインタークーラの配設を工夫する必要もある。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、エンジン,電装機器およびエンジン吸気の冷却性を向上させ且つ限られた自動車のスペースを活用することが出来る、ハイブリッド電気自動車の放熱機器構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド電気自動車の放熱機器構造(請求項1)は、過給器付きのエンジン,電気モータおよび電装機器を機器室内に備えるハイブリッド電気自動車の放熱機器構造であって、該機器室内に車外からの空気を導入する開口部と、前面が該開口部に臨んで設けられ該電気モータおよび該電装機器の熱を該開口部から導入された該空気に放出する電装機器ラジエータと、該電装機器ラジエータの裏面側に配設され該エンジンの熱を該空気に放出するエンジンラジエータと、該電装機器ラジエータと該エンジンラジエータとの間に配設され該過給器により圧縮されて該エンジンに供給される吸気の熱を該空気に放出するインタークーラと、該電装機器ラジエータと該エンジンラジエータとを接続し且つ該電装機器ラジエータの外周と該エンジンラジエータの外周とを覆うカバー部材とを備え、該カバー部材には、該インタークーラが嵌入する凹部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項2記載の本発明のハイブリッド電気自動車の放熱機器構造は、請求項1記載の内容において、該インタークーラは、該エンジンラジエータに固定され、該カバー部材の凹部には、該インタークーラに密着する柔軟弾性部材が設けられていることを特徴としている。
また、請求項3記載の本発明のハイブリッド電気自動車の放熱機器構造は、請求項2記載の内容において、該インタークーラは、鋳造により形成されたサイドタンクを有し、該柔軟弾性部材は、該サイドタンクの表面に密着することを特徴としている。
【0012】
また、請求項4記載の本発明のハイブリッド電気自動車の放熱機器構造は、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の内容において、該電装機器ラジエータと該エンジンラジエータとを接続する接続ブラケットと、該接続ブラケットと車体とを接続する弾性固定部材とをさらに備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハイブリッド電気自動車の放熱機器構造によれば、エンジン,電装機器およびエンジン吸気の冷却性を向上させ且つ限られた自動車のスペースを活用することが出来る。(請求項1)
また、カバー部材の凹部には、エンジンラジエータの表面に固定されたインタークーラの表面に密着する柔軟弾性部材が設けられているので、カバー部材とインタークーラとの間に隙間が生じることを防ぐとともに、カバー部材がインタークーラの表面を傷つける事態の発生を防ぐことが出来る。(請求項2)
また、鋳造により形成されたサイドタンク表面に微細な凹凸が形成されていた場合であっても、カバー部材とインタークーラとの間に隙間が生じることを確実に防ぐことが出来る。(請求項3)
また、電装機器ラジエータとエンジンラジエータとが接続ブラケットによって接続され、且つ、接続ブラケットと車体との間には弾性固定部材が介装されているので、電装機器ラジエータとエンジンラジエータとの接続剛性を向上させながら、車体から接続ブラケットに入力される振動を減衰することが出来る。(請求項4)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面により、本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の放熱機器構造について説明すると、図1はバスの斜視図であって要部を示す模式的な部分透視図、図2は車体に固定された放熱ユニットを示す模式的な斜視図、図3は放熱ユニットの全体を示す模式的な斜視図、図4は放熱ユニットを示す模式的な側面図である。
また、図5は放熱ユニットのエアガイドを示す模式的な斜視図、図6は放熱ユニットのエンジンラジエータおよびインタークーラを示す模式的な斜視図、図7は放熱ユニットのエアガイドおよびインタークーラを示す模式的な斜視図、図8は図7の模式的なVIII−VIII矢視断面図である。
【0015】
図1に示すように、バス(ハイブリッド電気自動車)10には、後輪11よりも後側にエンジンルーム(機器室)12が設けられている。このエンジンルーム12内右側には発電機(電装機器)13が設けられるとともに、中央にはディーゼルエンジン(エンジン)14が設けられている。また、発電機13の上方にはインバータ(電装機器)15が設けられ、さらに、このインバータ15の後方には駆動システムECU(Electronic Control Unit)16が設けられている。また、エンジンルーム12の壁面17には開口部18が形成されている。この開口部18は、車外の空気をエンジンルーム12内に導入するためのものである。なお、ここで、“高電圧”とは、約650Vの電圧をいう。
【0016】
また、エンジンルーム12の前方で且つ客室(図示略)の床下には機器収納部19が形成されている。そして、この機器収納部19内右側には2つの駆動モータ21,22を有する駆動モータユニット(電気モータ)23が備えられるとともに、左側には補機モータ(電気モータ)24とエアタンク25が備えられている。
ディーゼルエンジン14は、駆動システムECU16により制御されて作動するようになっている。また、このディーゼルエンジン14は、発電機13と機械的に接続され、この発電機13を駆動するものである。なお、このディーゼルエンジン14は、機械的に後輪11と接続されていない。つまり、このディーゼルエンジン14は、専ら発電をするために用いられるものであり、エンジントルクは発電機13に伝達され、この発電機13によって生じた直流電力が、屋根26の上に設けられたバッテリユニット27に蓄えられるようになっている。
【0017】
なお、このように、エンジントルクを専ら発電に用いるハイブリッド電気自動車の方式は、一般的に、シリーズ式と呼ばれている。
バッテリユニット27は、複数のリチウムイオンバッテリが並列あるいは直列に接続されることによって構成され、比較的高圧の直流電力を蓄えることが出来るようになっている。
【0018】
また、このバッテリユニット27に蓄えられた直流電力は、エンジンルーム12に設けられたインバータ15によって比較的高圧の交流電力に変換され、その後、駆動モータユニット23および補機モータ24に供給されるようになっている。
駆動モータユニット23は、プロペラシャフト28およびディファレンシャルギアボックス29を介して後輪11と機械的に接続され、後輪11を駆動するようになっている。また、この駆動モータユニット23も、駆動システムECU16により制御されて運転するようになっている。
【0019】
補機モータ24は、いずれも図示しない空調用コンプレッサ,エアーコンプレッサおよびパワーステアリングポンプと機械的に接続され、これらの空調用コンプレッサ,エアーコンプレッサおよびパワーステアリングポンプを駆動するようになっている。
空調用コンプレッサは、バス10の客室内の空調に用いられるコンプレッサである。
また、エアーコンプレッサは、エアタンク25内を加圧するものである。
【0020】
また、パワーステアリングポンプは、図示しないパワーステアリング装置に供給される油圧を発生させる油圧源である。
さらに、エンジンルーム12には、ディーゼルエンジン14の左側に放熱ユニット31が設けられている。
図2に示すように、この放熱ユニット31は、車幅方向に延在し車体の一部を形成するAクロスメンバ32と、このAクロスメンバ32の後方に配設されたBクロスメンバ33との間に配設されている。なお、Aクロスメンバ32とBクロスメンバ33とは、車長方向に延在する2本の接続メンバ34,35によって接続されている。
【0021】
図3に示すように、この放熱ユニット31は、主に、電装機器ラジエータ36と、エンジンラジエータ38と、インタークーラ37と、エアガイド(カバー部材)39とを備えている。
電装機器ラジエータ36は、駆動モータユニット23,補機モータ25,発電機13およびインバータ15を冷却するものである。より具体的に、この電装機器ラジエータ36は、コア41を有し、駆動モータユニット23,補機モータ25,発電機13およびインバータ15の各機器に形成された水路(図示略)を流れる電装機器冷却水(電装機器冷媒)を、このコア41内に流通させるようになっている。そして、エンジンルーム12の開口部18からエンジンルーム12内に導入され、電装機器ラジエータ36のコア41を通過する空気に対し、電装機器冷却水の熱を放出することが出来るようになっている。
【0022】
インタークーラ37は、図6に示すように、コア42とサイドタンク43とを有し、エンジンラジエータ38の側枠部材44に対してボルト45により固定されている。このインタークーラ37は、図示しないターボチャージャ(過給器)により圧縮されてディーゼルエンジン14に供給される吸気をコア42の内部に流通させることで、エンジンルーム12の開口部18からエンジンルーム12内に導入され、その後、電装機器ラジエータ36を通過した空気に対し、吸気の熱を放出する放熱器である。
【0023】
エンジンラジエータ38は、ディーゼルエンジン14を冷却する放熱器であって、ディーゼルエンジン14内に形成されたウォータジャケット(図示略)を流れるエンジン冷却水(エンジン冷媒)を、エンジンラジエータ38のコア46の内部に流通させるようになっている。そして、エンジンルーム12の開口部18からエンジンルーム12内に導入され、その後、電装機器ラジエータ36およびインタークーラ37を経由してコア46を通過する空気に対し、エンジン冷却水の熱を放出することが出来るようになっている。
【0024】
また、図4に示すように、このエンジンラジエータ36の裏面にはシュラウド47が設けられ、このシュラウド47の円形開口内には、冷却ファン48が設けられている。
したがって、これらの電装機器ラジエータ36,インタークーラ37およびエンジンラジエータ38は、エンジンルーム12の開口部18から導入される空気(即ち、冷却風)の流れの上流側から、電装機器ラジエータ36,インタークーラ37,エンジンラジエータ38の順に配設されている。
【0025】
図5に示すように、エアガイド39は、電装機器ラジエータ36の外周とエンジンラジエータ38の外周とを覆う四角形の金属フレームである。また、電装機器ラジエータ36とインタークーラ37とが固定されたエンジンラジエータ38とは、エアガイド39を介して固定されている。
このエアガイド39の両鉛直部材52,52には、インタークーラ37が嵌入する凹部53がそれぞれ形成されている。また、この両凹部53,53の内周にはそれぞれラバースポンジ54が貼付されている。
【0026】
図7には、エアガイド39の両凹部53,53にインタークーラ37が嵌入された状態を示すが、この場合に、ラバースポンジ54がインタークーラ37のエアタンク43の表面に密着するようになっている。したがって、エアガイド39とインタークーラ37との間に隙間が生じることを防ぐとともに、エアガイド39がインタークーラ37を傷つける事態を避けることが出来るようになっている。
【0027】
また、図8に示すように、このラバースポンジ54は、インタークーラ37のサイドタンク43にのみ密着するのではなく、サイドタンク43とコア42との境目に密着するようになっている。これにより、エアガイド39とインタークーラ37との間に隙間が生じる事態を、さらに効果的に防ぐことが出来るようになっている。
また、このサイドタンク43は、鋳造により形成され、且つ、その表面は鏡面加工などの磨き処理を施すことなく、コストを抑制している。したがって、サイドタンク43の表面には図示しない微細な凹凸が形成されているのであるが、ラバースポンジ54は、この凹凸に関わらずサイドタンク43の表面に当接するので、エアガイド39とインタークーラ37との間に隙間が生じることを防ぎ、この隙間に空気が流れ込む事態を防止することが出来るようになっている。
【0028】
さらに、このエアガイド39は、電装機器ラジエータ36とインタークーラ37との間に隙間が生じることを防ぐだけではなく、電装機器ラジエータ36とエンジンラジエータ38との間に隙間が生じることも防ぐことが出来るようになっている。
これは、エアガイド39が、電装機器ラジエータ36の外周とエンジンラジエータ38の外周とを共に覆う構造になっていることによる。
【0029】
つまり、エアガイド39の両鉛直部材52,52が、電装機器ラジエータ36の両側枠部材56A,56B(図3参照)の外周と、エンジンラジエータ38の両側端部44,44(図6参照)との間を隙間なく覆っている。また、エアガイド39の両水平部材55,55が、電装機器ラジエータ36の両上下端部57,57(図3参照)とエンジンラジエータ38の両上下端部58,58(図6参照)との間を隙間なく覆うようになっている。もっとも、エアガイド39の両鉛直部52,52には、上述の凹部53がそれぞれ形成されているので、一見すると、これらの凹部53,53を通じて、電装機器ラジエータ36とエンジンラジエータ37との間に空気が流れ込むようにも見える。しかしながら、これらの凹部53,53には、上述のように、インタークーラ37が嵌め込まれるため、そのような事態は生じない。
【0030】
図3に示すように、電装機器ラジエータ36とエンジンラジエータ38とは、エアガイド39だけで接続されているのではなく、サポートブラケット(接続ブラケット)61〜66によっても接続されている。
つまり、放熱ユニット31には、以下の6つのサポートブラケット61〜65が設けられている。
【0031】
・電装機器ラジエータ36の一方の側枠部材56Aとエンジンラジエータ38の一方の側枠部材44Aとを、上端近傍で接続するA1サポートブラケット61。
・電装機器ラジエータ36の他方の側枠部材56Bとエンジンラジエータ38の他方の側枠部材44Bとを、上端近傍で接続するA2サポートブラケット62。
・電装機器ラジエータ36の一方の側枠部材56Aとエンジンラジエータ38の一方の側枠部材44Aとを、中央近傍で接続するB1サポートブラケット63。
【0032】
・電装機器ラジエータ36の他方の側枠部材56Bとエンジンラジエータ38の他方の側枠部材44Bとを、中央近傍で接続するB2サポートブラケット64。
・電装機器ラジエータ36の一方の側枠部材56Aとエンジンラジエータ38の他方の側枠部材44Aとを、下端近傍で接続するE1サポートブラケット65。
・電装機器ラジエータ36の他方の側枠部材56Bとエンジンラジエータ38の他方の側枠部材44Bとを、下端近傍で接続するE2サポートブラケット66。
【0033】
なお、A1サポートブラケット61とA2サポートブラケット62とは同じ形状であり、また、B1サポートブラケット63とB2サポートブラケット64とは同じ形状である。また、C1サポートブラケット65は、A1サポートブラケット61およびA2サポートブラケット62よりも僅かに高さ方向の寸法が大きいが、原則として、これらのA1サポートブラケット61およびA2サポートブラケット62と同じ形状である。したがって、以下、A1サポートブラケット61,B1サポートブラケット63およびC1サポートブラケット65について説明し、A2サポートブラケット62,B2サポートブラケット64およびC2サポートブラケット66の説明は省略する。
【0034】
図4に示すように、A1サポートブラケット61は、断面が略U字形の部品であって、2本のボルト66により電装機器ラジエータ36の側枠部材56Aに固定されるとともに、2本のボルト67によりエンジンラジエータ38の側枠部材44Aに固定されている。
1サポートブラケット63は、鉛直方向に立設する壁部71と、この壁部71の上端から水平方向に突設するフランジ部72とを有した部品である。また、このB1サポートブラケット63は、断面が略L字形であり、且つ、図4に示す正面視で略U字形に形成されている。また、このB1サポートブラケット63は、4本のボルト68により電装機器ラジエータ36の側枠部材56Aに固定されるとともに、4本のボルト69によりエンジンラジエータ38の側枠部材44Aに固定されている。
【0035】
また、図3に示すように、このB1サポートブラケット63の中央近傍には切欠部73が形成され、インタークーラ37のサイドタンク43がこの切欠部73内に納まるようになっている。
さらに、このB1サポートブラケット37には、2つのラバーマウント74,74が設けられている。
【0036】
これらのラバーマウント74,74は、図2に示すように、車体の一部を形成するBクロスメンバに固定されたシャシブラケット75とB1サポートブラケット63との間に介装された弾性固定部材であって、車体の振動が放熱ユニット31に伝達されることを抑制しながら、車体に対して放熱ユニット31を確実に搭載することが出来るようになっている。
【0037】
図4に示すように、C1サポートブラケット65は、電装機器ラジエータ36の側枠部材56Aとエンジンラジエータ38の側枠部材44Aとに当接する平板部76と、この平板部77と一体に形成され且つ平板部76の下端から下方に延在する三角形状のロッドサポート部77とから形成されている。
1サポートブラケット65の平板部76は、4本のボルト78により電装機器ラジエータ36の側枠部材56Aに固定されるとともに、4本のボルト79によりエンジンラジエータ38の側枠部材44Aに固定されている。
【0038】
また、ロッドサポート部77の頂部77a近傍には、ロッド81の一端が接続されている。なお、このロッド81の他端は、図2に示すように、シャシブラケット82を介してBクロスメンバ33に接続されている。
本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の放熱機器構造は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
【0039】
図4に示す冷却ファン48が回転すると、図4中矢印A1で示す空気(冷却風)が、エンジンルーム壁面17に形成された開口部18を通じて、エンジンルーム12内に流れ込む。そして、この空気A1は、まず、電装機器ラジエータ36のコア41を通過する。このとき、電装機器ラジエータ36のコア41内にある電装機器冷却水の熱が、空気A1に対して放出される。
【0040】
その後、空気A1がインタークーラ37のコア42を通過する。このとき、インタークーラ37のコア42内を流通するエンジンの吸気の熱が、空気A1に対して放出される。
さらにその後、空気A1がエンジンラジエータ38のコア46を通過する。このとき、エンジンラジエータ38のコア46内を流通するエンジン冷却水の熱が、空気A1に対して放出される。
【0041】
また、電装機器ラジエータ36内を流れる電装機器冷却水の温度T36,インタークーラ37内を流れる吸気の温度T37およびエンジンラジエータ38内を流れるエンジン冷却水の温度T38の間には、下式(1)の関係がある。なお、この下式(1)の関係が成立するのは、駆動モータユニット23,補機モータ25,発電機13およびインバータ15といった電装機器,ターボチャージャを備えるディーゼルエンジン14が通常の運転を行なっていることを条件としており、これらの機器になんらかのトラブルが生じたような場合をも含むものではない。
【0042】
36<T37<T38 ・・・(1)
また、空気A1は、電装機器ラジエータ36,インタークーラ37,エンジンラジエータ38の順に流れるため、空気A1の温度TA1は、下流側ほど高くなる。
しかしながら、上述のように、上式(1)が成立しているので、電装機器ラジエータ36のコア41を通過した空気A1がインタークーラ37のコア42を通過しても、インタークーラ37による吸気の冷却が妨げられることはない。また、インタークーラ37のコア41を通過した空気A1がエンジンラジエータ38のコア46を通過しても、エンジンラジエータ38によるエンジン冷却水の冷却が妨げられることはない。
【0043】
また、エアガイド39により、電装機器ラジエータ36とインタークーラ37との間、電装機器ラジエータ36とエンジンラジエータ38との間、および、インタークーラ37とエンジンラジエータ38との間が密閉されている。したがって、図4中、矢印A2で示すように、冷却ファン48の裏側から電装機器ラジエータ36の方向へ巻返し風が生じた場合であっても、電装機器ラジエータ36とインタークーラ37との間、電装機器ラジエータ36とエンジンラジエータ38との間、および、インタークーラ37とエンジンラジエータ38との間から、エンジンラジエータ38のコア46を通過して熱せられた巻返し風A2が、放熱ユニット31の内部に流れ込む事態が生じることを防ぐことが出来る。
【0044】
ここで、本発明が創作される過程において創案された、ハイブリッド電気自動車における放熱機器構造について、図9を用いて説明する。
図9に示すように、エンジンラジエータ101は、エンジン(図示略)に形成されたウォータジャケット(図示略)から排出された比較的高温の冷却水の放熱を行ない、放熱後の比較的低温の冷却水をエンジンに供給するものである。なお、この冷却水の流通は、図示しないエンジン用ウォータポンプに行なわれる。
【0045】
このエンジンラジエータ101の裏面にはシュラウド102が設けられると共に、このシュラウド102の開口内に冷却ファン103が配設されている。
また、このエンジンラジエータ101の表面側には電装機器ラジエータ104が設けられている。
これらのエンジンラジエータ102と電装機器ラジエータ104とは、Bブラケット105およびCブラケット106により接続されている。
【0046】
Bブラケット105は、エンジンラジエータ101の両側面および電装機器ラジエータ104の両側面に対し、ボルト107でそれぞれ固定されている。また、このBブラケット105は、エンジンラジエータ101および電装機器ラジエータ104の上下方向の中央近傍に配設されている。
また、このBブラケット105には、2つのラバーマウント108が設けられている。これらのラバーマウント108は、自動車のシャシフレーム(図示略)とBブラケット105との間に介装された弾性固定部材である。
【0047】
Cブラケット106は、エンジンラジエータ101および電装機器ラジエータ104の両側面に対し、ボルト109でそれぞれ固定されている。また、このCブラケット106は、エンジンラジエータ101および電装機器ラジエータ104の下端部近傍に配設されている。
また、このCブラケット109には、ロッド111の一端が固定されている。なお、このロッド111の他端は、シャシフレーム(図示略)に対してブラケット(図示略)を介して固定されている。
【0048】
しかしながら、この図9に示すエンジンラジエータ102および電装機器ラジエータ104に対し、吸気を冷却するインタークーラ(図示略)を単に追加すると種々の課題が生じる。
例えば、インタークーラを、電装機器ラジエータ104の表面側(図9中左側)に配設した場合、電装機器ラジエータ104による放熱が適切に行なわれなくなってしまう。これは、電装機器ラジエータ104によって冷やされる電装機器冷却水の温度が、通常、50〜60℃程度であるのに対し、インタークーラによって冷やされる吸気の温度が、通常、150℃程度であることによる。つまり、インタークーラを通過することにより熱せられた空気が、その後、電装機器ラジエータ104に吹き込むこととなり、電装機器冷却水の放熱を適切に行なうことが出来なくなるのである。
【0049】
逆に、インタークーラを、エンジンラジエータ102の裏面側(図9中右側)に配設した場合には、インタークーラによる放熱が適切に行なわれなくなってしまう。エンジンラジエータ101を通過することにより熱せられた空気が、その後、インタークーラに吹き込むこととなり、吸気の冷却を最大限に行なうことが出来なくなるのである。
そして、インタークーラを、電装機器ラジエータ104とエンジンラジエータ101との間に配設した場合、電装機器の冷却,吸気の冷却およびエンジンの冷却は、理論上、適切に行なわれることとなる。
【0050】
しかしながら、インタークーラのコア面積は、電装機器ラジエータ104のコア面積およびエンジンラジエータ101のコア面積よりもかなり小さい。これは、吸気の圧力損失を考慮したことによるものである。
このため、吸気インタークーラを、電装機器ラジエータ104とエンジンラジエータ101との間に単に配設した場合には、電装機器ラジエータ104とエンジンラジエータ101との間に隙間が生じてしまうのである。
【0051】
そして、この隙間には、エンジンラジエータ101を通過した熱い空気が、再び流れ込んでしまい、エンジンラジエータ101によるエンジンの冷却を妨げる事態が生じてしまうのである。
これに対して、本実施形態に係る本発明においては、エアガイド39が、電装機器ラジエータ36の外周とエンジンラジエータ38の外周とを覆うともに、このエアガイド39の両鉛直部材52,52にはインタークーラ37が嵌入する凹部53がそれぞれ形成されている。これにより、電装機器ラジエータ36とエンジンラジエータ38との間に隙間が生じることを防ぎ、エンジンラジエータ38によるディーゼルエンジン14の冷却を妨げる事態を回避することはもとより、インタークーラ37による吸気の冷却が妨げられる事態をも回避することが出来る。そして、インタークーラ37による吸気の冷却が良好に行なわれることによって、ディーゼルエンジン14における燃焼温度を抑制することが可能となり、ディーゼルエンジン14の排ガス成分の向上に寄与することが可能となる。
【0052】
インタークーラ37がエンジンラジエータ38の前面に固定され、且つ、エアガイド39が電装機器ラジエータ36とエンジンラジエータ38とを接続しているので、部品点数を増やすことなく、低コストで、電装機器ラジエータ36,インタークーラ37およびエンジンラジエータ38を高い剛性で接続することが可能となる。
なお、本実施形態に係る本発明においては、6つのサポートブラケット61〜66が用いられている場合を説明したが、これは、放熱ユニット31全体としての剛性をさらに高めるために設けられているものである。
【0053】
また、エアガイド39の凹部53には、エンジンラジエータ38の表面に固定されたインタークーラ37の表面に密着するラバースポンジ54が設けられている。これにより、エアガイド39とインタークーラ37との間に隙間が生じることを防ぐとともに、エアガイド39がインタークーラ38の表面を傷つける事態を回避することが出来る。
また、インタークーラ37は、鋳造により形成されたサイドタンク43を有し、ラバースポンジ54は、サイドタンク43の表面に密着しているので、サイドタンク43表面に微細な凹凸が形成されている場合であっても、エアガイド39とインタークーラ37との間に隙間が生じることを確実に防ぐことが出来る。
【0054】
また、電装機器ラジエータ36とエンジンラジエータ38とがサポートブラケット61〜66によって接続され、且つ、Cサポートブラケット63とAクロスメンバ32との間、および、Dサポートブラケット64とBクロスメンバ33との間には、それぞれ、ラバーマウント74が介装されている。これにより、電装機器ラジエータ36とエンジンラジエータ38との接続剛性を向上させながら、Aクロスメンバ32およびBクロスメンバ33からB1サポートブラケット63およびB2サポートブラケット64に入力される振動を減衰することが出来る。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
また、上述の実施形態においては、バス10にディーゼルエンジン14が搭載されている場合を例にとって説明したが、このような場合に限定するものではない。例えば、乗用車やトラックに本発明を適用することも可能である。
【0056】
また、上述の実施形態においては、エアガイド39の凹部53にラバースポンジ54を貼付した場合について説明したが、このような場合に限定するものではない。例えば、このラバースポンジ54に代えて、ウレタンスポンジやポリエチレンスポンジを用いるようにしても良い。
また、上述の実施形態においては、電装機器ラジエータ36の下流側にエンジンラジエータ38を配設した場合を例にとって説明したが、このような構成に限定するものではなく、場合によっては、電装機器ラジエータ36とエンジンラジエータ38とを入れ替え、エンジンラジエータ38の下流側に電装機器ラジエータ36を配設してもよい。
【0057】
また、上述の実施形態においては、冷却することが好ましい電装機器として発電機13およびインバータ15を例示したが、これらの機器に限定されるものではなく、例えば、制御ボックスやリレーボックスなども冷却することが好ましい電装機器に含まれる。
また、ある電装機器に印加される電圧が、上述の約650Vといった高電圧ではないとしても、当該電装機器を冷却することが好ましいようであれば、上述の発電機13およびインバータ15と同様、当該電装機器は、冷却することが好ましい電装機器として取り扱っても良い。
【0058】
例えば、トラックやバスでは約24Vの電源が用いられているが、この約24Vの電圧が印加されたリレーボックスが発熱するような場合は、冷却することが好ましい。したがって、この場合は、約24Vも高電圧であるとみなすことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の放熱機器構造が適用されたバスを示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の放熱機器構造がバスの車体に搭載された状態を示す模式的な斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の放熱機器構造を示す模式的な斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の放熱機器構造を示す模式的な側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の放熱機器構造におけるエアガイドを示す模式的な斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の放熱機器構造におけるインタークーラとエンジンラジエータとを示す模式的な斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の放熱機器構造におけるエアガイドおよびインタークーラを示す模式的な斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の放熱機器構造の要部を示す模式的な断面図であって、図7のVIII−VIII断面を示す。
【図9】本発明を創作する途中に創案されたハイブリッド電気自動車の放熱機器構造を示す模式的な側面図である。
【符号の説明】
【0060】
12 エンジンルーム(機器室)
13 発電機(電装機器)
14 ディーゼルエンジン(過給器付きのエンジン;エンジン)
15 インバータ(電装機器)
18 開口部
23 駆動モータユニット(電気モータ)
24 補機モータ(電気モータ)
32 Aクロスメンバ(車体)
33 Bクロスメンバ(車体)
36 電装機器ラジエータ
37 インタークーラ
38 エンジンラジエータ
39 エアガイド(カバー部材)
43 サイドタンク
53 凹部
54 ラバースポンジ
63 B1サポートブラケット(接続ブラケット)
64 B2サポートブラケット(接続ブラケット)
74 ラバーマウント(弾性固定部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給器付きのエンジン,電気モータおよび電装機器を機器室内に備えるハイブリッド電気自動車の放熱機器構造であって、
該機器室内に車外からの空気を導入する開口部と、
前面が該開口部に臨んで設けられ該電気モータおよび該電装機器の熱を該開口部から導入された該空気に放出する電装機器ラジエータと、
該電装機器ラジエータの裏面側に配設され該エンジンの熱を該空気に放出するエンジンラジエータと、
該電装機器ラジエータと該エンジンラジエータとの間に配設され該過給器により圧縮されて該エンジンに供給される吸気の熱を該空気に放出するインタークーラと、
該電装機器ラジエータと該エンジンラジエータとを接続し且つ該電装機器ラジエータの外周と該エンジンラジエータの外周とを覆うカバー部材とを備え、
該カバー部材には、該インタークーラが嵌入する凹部が形成されている
ことを特徴とする、ハイブリッド電気自動車の放熱機器構造。
【請求項2】
該インタークーラは、該エンジンラジエータに固定され、
該カバー部材の凹部には、該インタークーラに密着する柔軟弾性部材が設けられている
ことを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド電気自動車の放熱機器構造。
【請求項3】
該インタークーラは、鋳造により形成されたサイドタンクを有し、
該柔軟弾性部材は、該サイドタンクの表面に密着する
ことを特徴とする、請求項2記載のハイブリッド電気自動車の放熱機器構造。
【請求項4】
該電装機器ラジエータと該エンジンラジエータとを接続する接続ブラケットと、
該接続ブラケットと車体とを接続する弾性固定部材とをさらに備える
ことを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のハイブリッド電気自動車の放熱機器構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−302734(P2008−302734A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149293(P2007−149293)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】