説明

ハウリング軽減装置

【課題】特別な回路を用いることなく、簡易な回路構成でハウリングを防止又は軽減できるハウリング軽減装置を提供する。
【解決手段】アナログ内線インターフェイス10に設けられたループ電流検出器14は、ハイブリッド回路11の2次側でループ電流のオン/オフを検出する。ハウリング軽減回路15は、ループ電流検出器14からの検出信号に応じて、ループ電流のオフが検出されると直ちに、ハイブリッド回路の1次側の音声信号を抑制又は遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウリング軽減装置に関し、特に、アナログ単独電話機が接続される電話機インターフェイスと組み合わされるハウリング軽減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電話機インターフェイス(アナログ内線インターフェイス)のハイブリッド回路は、その2次側に接続されたアナログ単独電話機が一次側に回線接続される対向端末と通話状態にあるとき(即ち、オフフック状態のとき)、1次側と2次側のインピーダンスのバランスが取れるように設計されている。このため、アナログ単独電話機がオンフックした状態では、ハイブリッド回路の1次側と2次側はインピーダンスのバランスが崩れた状態となる。
【0003】
アナログ単独電話機が通話状態からオンフック状態に変化したとき、電話機インターフェイスと対向端末との間が未だ通話状態にあると、対向端末からの音声信号は、ハイブリッド回路の一次側において受信側から送信側へ回り込む。この場合において、対向端末が、音声の回り込みのレベルが大きい端末(受話スピーカの音が送話マイクに入り易い端末、例えばハンズフリー端末やドアホン等)であると、閉ループが形成されハウリングが発生する。
【0004】
電話機インターフェイスは、アナログ単独電話機からのダイヤルパルスやフッキングを検出するために、アナログ単独電話機のオンフック状態が所定時間(例えば数百ミリ秒)以上継続した場合にオンフックしたと判断するよう構成されている。このため、アナログ単独電話機が対向端末より先にオンフックすると、上述したハウリングが発生する可能性がある。数百ミリ秒もの間継続するハウリングは、人間にとって無視できない(不快な)雑音となる。そこで、従来からこのようなハウリングを防止、低減する技術が提案されている。
【0005】
従来のハウリング軽減装置は、図5に示すように、電話機インターフェイス510に含まれるトランス511の2次巻線に接続されたツェナーダイオード512により構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
図5の電話機インターフェイス510では、ループ検出器513が単独電話機550のオンフックを検出すると、制御部514が通話路スイッチ515を制御して通話を終了する。このとき、ツェナーダイオード512は、単独電話機550がオンフックしてから通話路スイッチ515の制御により通話が終了するまでの間、トランス511の一次巻線側と二次巻線側とのインピーダンスを整合させ、通話相手端末でのハウリングの発生を防止する。
【0007】
また、他の従来のハウリング軽減装置は、図6に示すように、フォトカプラPC1により構成される通話検出回路を含む終話時インピーダンス回路610により構成されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
図6の終話時インピーダンス回路610は、ボタン電話機620のオンフックをフォトカプラPC1により検出すると、所定時間(即ち、コンデンサC1が充電されるまで)トランジスタTR1が導通し、インピーダンスバランス状態を維持する。
【0009】
【特許文献1】実開平05−080076号公報(特に、図1。)
【特許文献2】実開平07−001640号公報(特に、図1及び図2。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のハウリング軽減装置は、インピーダンスを整合させるものであるため、設計・調整が困難な特別な回路が必要であるという問題点がある。
【0011】
本発明は、特別な回路を用いることなく、簡易な回路構成でハウリングを防止又は軽減できるハウリング軽減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電話機インターフェイスに含まれるハイブリッド回路と共に用いられるハウリング軽減装置において、前記ハイブリッド回路の2次側に流れるループ電流がオフすると直ちに前記ハイブリッド回路の1次側に入力される音声信号及び/又は当該1次側から出力される音声信号を遮断又は抑制するようにしたことを特徴とする。
【0013】
具体的には、前記ハイブリッド回路の2次側に流れるループ電流のオン/オフを検出するループ検出部と、該ループ検出部からの検出信号に応じて、前記ループ電流がオフした後直ちに前記ハイブリッド回路の1次側二入力される音声信号及び/又は当該1次側から出力される音声信号を遮断又は抑制するハウリング軽減部とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電話機インターフェイスに含まれるハイブリッド回路の2次側に接続される電話機がオンフックすると、直ちに、ハイブリッド回路の1次側で回り込む音声信号を遮断又は抑制するよう構成されているので、ハウリングの発生を防止又は軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1に本発明の一実施の形態に係るハウリング軽減装置を含むアナログ内線インターフェース(電話機インターフェイス)10と、それに接続されたアナログ単独電話機20と示す。
【0017】
図1に示すように、アナログ内線インターフェイス10は、ハイブリッド回路11、受信増幅器12、送信増幅器13、ループ検出器14、及びハウリング軽減回路15を有している。このうち、ループ検出器14及びハウリング軽減回路15が、本発明のハウリング軽減装置として働く。
【0018】
ハイブリッド回路11は、トランスTrと、トランスTrの1次巻線側に接続された抵抗器R1,R2及びR3とを含む。ハイブリッド回路11の1次側、即ち、抵抗器R1とR2との接続点、抵抗器R1とR3との接続点及び抵抗器R2とトランスTrの1次巻線との接続点は、それぞれ受信増幅器12の出力端子、送信増幅器13の一対の入力端子の一方及び他方に接続される。また、ハイブリッド回路11の2次側、即ち、トランスTrの2次巻線の両端は、図示しない通話給電回路に接続されると共に、アナログ単独電話機20に接続される。そして、通話給電回路とアナログ単独電話機20とは通話ループを形成する。
【0019】
受信増幅器12及び送信増幅器13は、ハウリング軽減回路15を介して、図示しない通話パス制御部(内線電話システムの交換機あるいは主装置)に接続される。
【0020】
ループ検出器14は、例えば、フォトカプラなどの電流検出デバイスである。このループ検出器14は、図示しない通話給電回路とアナログ単独電話機20との間に接続され、通話給電回路とアナログ単独電話機20とによって形成される通話ループに流れるループ電流を検出する。通話ループは、アナログ単独電話機20がオフフック状態のときに閉状態となり、このときループ電流が流れる(オンする)。また、アナログ単独電話機20がオンフック状態のとき、通話ループは開状態となり、このときループ電流は流れない(オフする)。なお、ループ検出器14は、ダイヤルパルス、フッキング及びオフフックを検出するためのループ検出器を、そのままハウリング軽減装置用として利用(兼用)することができる。
【0021】
ハウリング軽減回路15は、ループ検出器14にも接続され、ループ検出器14からの検出信号に応じて、交換機から送信されハイブリッド回路11の1次側に入力される下り音声信号(受信信号)及びハイブリッド回路11の1次側から交換機へ送信される上り音声信号(送信信号)のうちの一方又は両方を、ミュート(減衰させる)又は遮断し、また、ミュート又は遮断した状態から元の状態に戻す。
【0022】
詳述すると、ハウリング軽減回路15は、ループ検出器14の検出信号がループ電流のオフを示すと、直ちに、(上り及び下りの両方又は一方の)音声信号をミュート又は遮断する。これにより、アナログ単独電話機20がオフフック状態からオンフック状態に変化した後、数十ミリ秒程度が経過する以前に音声信号をミュート又は遮断でき、ハウリングの発生を防止又は軽減することができる。また、ハウリング軽減回路15は、ループ検出器14からの検出信号がループ電流のオンを示すと、直ちに音声信号のミュートまたは遮断を解除して元の状態に戻す。
【0023】
以上のようにして、本実施の形態に係るハウリング軽減装置は、アナログ単独電話機が対向端末より先にオフフックした場合のハウリングの発生を防止あるいは軽減することができる。
【0024】
なお、本実施の形態では、ハウリング軽減回路15をアナログ内線インターフェイス10内に設けたが、ハイブリッド回路11の1次側で回り込む音声信号を抑制又は遮断できればよく、ハイブリッド回路11の1次側であればどこに設けてもよい。また、図示しない通話パス制御部をハウリング軽減回路15として利用することも可能である。
【0025】
また、上記実施の形態では、ハウリング軽減回路15のみでハウリング軽減部を構成したが、ループ検出器14からの検出信号を所定の信号形式の制御信号に変換する信号変換器と、その制御信号により制御されて音声信号の抑制又は遮断を行う実行回路とを用いてハウリング軽減部を構成してもよい。この場合、検出信号が示すループ電流のオフ状態継続時間を計測し、その継続時間に応じてアナログ単独電話機20のダイヤルパルスやフッキングの判定を行い、それに応じた動作を電話機インターフェイスの各部に実行させる制御回路(マイコン)を、信号変換器の代わりに用いることもできる。
【実施例1】
【0026】
図2を参照して、本発明のハウリング軽減装置の第1の実施例について説明する。
【0027】
図2は、本実施例のハウリング軽減装置に用いられるハウリング軽減回路15の構成を示すブロック図である。
【0028】
図示のハウリング軽減回路15は、受信増幅器12の前段にアナログスイッチ(経路選択スイッチ)21と、選択経路22及び23とを有し、送信増幅器13の前段にアナログスイッチ(経路選択スイッチ)24と、選択経路25及び26を有している。なお、アナログスイッチ21は、選択経路22及び23の後段に配置されてもよい。同様に、アナログスイッチ24は、選択経路25及び26の後段に配置されてもよい。また、アナログスイッチ21と選択回路22及び23の組と、アナログスイッチ24と選択回路25及び26の組のいずれか一方を省略することもできる。
【0029】
アナログスイッチ21は、ループ検出器14と論理が一致するならば、ループ検出器14に直接接続される。論理が一致しない場合には、信号変換器(あるいは制御回路(マイコン))を介してループ検出器14に接続される。アナログスイッチ21は、ループ検出器14からの検出信号(又は信号変換器あるいは制御回路(マイコン)からの制御信号)に応じて経路切換を行い、選択経路22又は23を通話パスとする。選択経路22と23は互いに異なる抵抗値を持ち、一方は、入力される音声信号をほとんど減衰させることなく送信増幅器12に入力させ、他方は音声信号を著しく減衰させる(ミュートする)。即ち、ループ検出器14がループ電流のオフを検出すると、アナログスイッチ21は音声信号を減衰させるための選択経路22(23)を選択し、ループ電流のオンを検出すると音声信号をほぼそのまま通過させるための選択経路23(22)を選択する。
【0030】
アナログスイッチ22、選択経路25及び26については、アナログスイッチ21、選択経路22及び23と同様であるのでその説明を省略する。
【0031】
以上のようにして、本実施例では、互いに異なる抵抗値を持つ選択経路と選択スイッチという簡易な構成で、ループ電流がオフしたときにハイブリッド回路の1次側の音声電流を抑制することができ、ハウリングの発生を防止することができる。
【実施例2】
【0032】
図3を参照して、本発明のハウリング軽減装置の第2の実施例について説明する。
【0033】
図3は、本実施例のハウリング軽減装置のハウリング軽減回路15として、電話機インターフェース10が備えるCODEC(符号/復号器)又はDSP(ディジタル信号処理器)を利用する場合を示している。
【0034】
CODEC又はDSP31は、アナログ内線インターフェイス10内において、受信増幅器12の前段及び送信増幅器13の後段に接続されている。このCODEC又はDSP31は、その機能の有効/無効を切り替えるためのイネイブル/ディセイブル(Enable/Disable)端子を有している。CODEC又はDSP31の論理が、ループ検出器14の論理と一致するならば、このイネイブル/ディセイブル(Enable/Disable)端子にループ検出器14の出力端子が直接接続される。これらの論理が一致しない場合には、ループ検出器14は信号変換器(あるいは制御回路(マイコン))を介してイネイブル/ディセイブル端子に接続される。
【0035】
CODEC又はDSP31は、ループ検出器14からの検出信号(又は変換器あるいは制御回路(マイコン)からの制御信号)に応じて、その動作を有効/無効にし、ループ電流がオフしたときに音声信号を遮断する。こうして、本実施例では、ループ電流がオフしたときにハイブリッド回路の1次側の音声電流を遮断することができ、ハウリングの発生を防止することができる。
【0036】
このように、本実施例では、特別な回路を設けることなくハウリングを防止しあるいは抑制することができる。
【実施例3】
【0037】
図4を参照して、本発明のハウリング軽減装置の第3の実施例について説明する。
【0038】
図4は、本実施例のハウリング軽減装置のハウリング軽減回路15として、アナログ以内線インターフェイス10が接続される通話パス制御部(交換機あるいは主装置)41と、それを制御する制御装置(アナログ内線インタフェース10内に設けらていてもよい。)42とを用いる場合を示す図である。
【0039】
通話パス制御部41は、アナログシステムの場合はクロスポイントスイッチ、デジタルシステムの場合はPCMデータパスをつなぐタイムスイッチにより構成される。
【0040】
制御装置42は、ループ検出部14からの検出信号を受け、ループ電流がオフすると直ちに通話パス制御部41を制御して通話パスを切断する。また、ループ電流がオンすると直ちに通話パス制御部41を制御して通話パスを元に戻す。
【0041】
制御装置42は、また、ループ電流がオフしている継続時間を計測し、第1の所定時間内(例えば、20〜50ms)でオン状態に戻ったときは、ダイヤルパルスであると判断し、第2の所定時間内(例えば、数百ms)でオン状態に戻ったときはフッキングであると判断する。そして、ループ電流がオフしている継続時間が第2の所定時間を超えた場合(例えば、数百ms以上の時間が経過した場合)、アナログ電話機がオンフックされたと判断する。制御装置42は、判断結果に基づいてアナログ内線インタフェース及び通話パス制御部を制御し、所定の動作を行わせる。
【0042】
以上のようにして、本実施例においても、ループ電流がオフしたときにハイブリッド回路の1次側の音声電流を遮断することができ、ハウリングの発生を防止することができる。
【0043】
本実施例においても、ハウリングを防止あるいは抑制するための特別な回路は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態に係るハウリング軽減装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施例のハウリング軽減装置に用いられるハウリング軽減回路を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施例のハウリング軽減装置のハウリング軽減回路としてCODEC又はDSPを用いる例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施例のハウリング軽減装置のハウリング軽減回路として通話パス制御部と制御装置を用いる例を示すブロック図である。
【図5】従来のハウリング軽減装置を説明するための回路図である。
【図6】従来の他のハウリング軽減装置を説明するための回路図である。
【符号の説明】
【0045】
10 電話機インターフェース
11 ハイブリッド回路
12 受信増幅器
13 送信増幅器
14 ループ電流検出器
15 ハウリング軽減回路
21,24 アナログスイッチ
22,23,25,26 選択経路
31 CODEC又はDSP
41 通話パス制御部
42 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機インターフェイスに含まれるハイブリッド回路と共に用いられるハウリング軽減装置において、
前記ハイブリッド回路の2次側に流れるループ電流がオフすると直ちに前記ハイブリッド回路の1次側に入力される音声信号及び/又は当該1次側から出力される音声信号を遮断又は抑制するようにしたことを特徴とするハウリング軽減装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハウリング軽減装置において、
前記ループ電流のオン/オフを検出するループ検出部と、
該ループ検出部からの検出信号に応じて、前記ループ電流がオフすると直ちに前記音声信号を遮断又は抑制するハウリング軽減部と、
を備えていることを特徴とするハウリング軽減装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたハウリング軽減装置において、
前記ハウリング軽減部が、前記ループ検出部からの検出信号に応じて、前記ループ電流がオンすると直ちに前記音声信号の遮断又は抑制を解除するようにしたことを特徴とするハウリング軽減装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載されたハウリング軽減装置において、
前記ハウリング軽減部が、前記ハイブリッド回路の1次側に接続された切換スイッチと、前記切換スイッチによって択一的に選択され、互いに異なる抵抗値を有する複数の選択経路と、を含むことを特徴とするハウリング軽減装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載されたハウリング軽減装置において、
前記ハウリング軽減部が、前記電話機インターフェイスに含まれるCODEC又はDSPを用いて実現されることを特徴とするハウリング軽減装置。
【請求項6】
請求項2又は3に記載されたハウリング軽減装置において、
前記ハウリング軽減部が、前記電話機インターフェイスに接続された通話パス制御部を用いて実現されることを特徴とするハウリング軽減装置。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれかに記載のハウリング軽減装置において、
前記ハウリング軽減部が、前記検出信号を所定形式の制御信号に変換する信号変換部を含むことを特徴とするハウリング軽減装置。
【請求項8】
請求項2乃至6のいずれかに記載のハウリング軽減装置において、
前記ハウリング軽減部が、前記ループ電流のオフ状態の継続時間を計測し、当該継続時間に基づいて前記電話機インターフェイスに異なる動作を実行させるための制御部と、ハウリング軽減実行部とを含み、前記制御部が、前記検出信号に応じて前記ループ電流がオフすると直ちに前記ハウリング軽減実行部に前記音声信号の遮断又は抑制を実行させるようにしたことを特徴とするハウリング軽減装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−121126(P2006−121126A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303652(P2004−303652)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】